2019-01-18 00:29:36 更新

その鎮守府は、銀髪の提督が運営していた。

最前線とまでは言えないが、激戦の繰り広げられている海域。

そんなところに配置される…銀髪の女提督にはとてつもない重圧がかかっていた。


重圧の原因はそれだけではないのだが。


この提督は陰でこう呼ばれている。

深海の魔女、銀の呪い。などと。



世界は、現状深海棲艦と一進一退の攻防を繰り広げている。

それもこれも艦娘の働きによるところが大きい。

しかし、艦娘の権利はなかなか拡大されない。

主に、陸軍や市民団体といった組織が抵抗を続けている。


この艦娘達を束ねるのが提督。

提督は人間だ。

この女提督ももちろん人間だ。


しかし


かつて深海棲艦が現れ世界の海から人類を駆逐していき、一部の陸上を制圧した頃。

誰もが見た。

おぞましい化け物と、

それを率いる


銀髪の女達。


人々の記憶に強く焼き付いたのは化け物だけではなかった。

その美しすぎる銀髪、透き通るような白すぎる肌。


そこから、今の状況に至るまで誰もそれらを忘れることはなかった。

そして深海棲艦への恨みつらみは強く印象に残った銀髪の娘に向けられた。

そして、銀の髪は忌むべき対象となったのだ。

もちろん、銀髪に対してあまり執着してない者も少なからずいる。

(でなければ、提督になどなれはしない)

だが、依然差別は根強くこの娘が提督になれたのも奇跡としか言いようがない。

一因としては今の元帥が実力さえあれば採用してくれる人であるから、と言うこともある。


なんにせよ、ここの鎮守府の提督は実績を重ねつつもあらゆるところからの妨害、嫌がらせを受けながら運営しているのだ。

並大抵の器ではないことは自明だ。


夕立「てーとくさん!遠征おわったっぽーい!」

元気よく金髪の女の子が執務室に入って来る。

提督「お疲れ様。夕立ちゃん」

夕立「ぽーい!大成功っぽい!!」

提督「よかった」

少しぎこちなくではあるが微笑む。

夕立「やっぱてーとくさんには笑顔が似合うっぽい!」

提督「…そう?ありがとう」

少しきょとんとしつつも答える。

夕立「ぽい!失礼しますっぽい!ごっはんーごっはん」

元気よく、語尾に♪が付きそうな感じで夕立が執務室を出ていく。


提督(可愛いなぁ)

夕立と入れ替わるようにして、秘書艦がやってくる。

鈴谷「てーとくー!お疲れ様~!」

提督「鈴谷も、ね?」

鈴谷「ありがとっ!お茶淹れてきたよ!」

提督「ありがとう。鈴谷」

提督がお茶を飲むしぐさ一つを見ても何か上品さを感じる。

それもそのはずこの提督、本名は神崎綾という。

神崎家はこの国で俗にいう上流階級に属するお金持ちのお家なのだ。

今でこそ本家との関係が冷え切ってしまって本人はお金持ちではないが。

本家にいたときに叩き込まれたものが今でも生きているのだ。

本家ではいい思いはしなかったが、このことだけは役に立ついいことだと思っている。


綾「ふぅ…。資源カツカツねぇ…」

鈴谷「やっぱ厳しい?」

綾「ええ。運営は何とかなるけれど大規模作戦には少し心もとないわ…」

鈴谷「大規模作戦かぁ…もう計画されてるのかな?」

綾「私には何も知らされてはいないけれど多分あるんじゃないかしら…」

鈴谷「何も知らされてないなんてあるの…?」

綾「まぁ…私はあまりあそこでは気に入られていないようだし…ね」

苦笑いを浮かべつつそう答える。

鈴谷「てーとくのこんなに綺麗な髪なのにね」

綾「その言葉だけで嬉しいわ」


鈴谷「はい!書類片付け終わったよー!」

綾「ありがとう。今日の書類は…これで終わりね」

最後の書類に判子をついて、執務を終わらせる。

綾「まだ昼間だけど…何しようかしら」

鈴谷「何しようねぇ…お出かけ…は無理か」

綾「お出かけ…行きたい?」

鈴谷「無理しなくて大丈夫だよ?てーとく!」

綾「んー…じゃあ次のお休み。お出かけしよう?」

鈴谷「いいの?やったぁ!」

久しぶりの綾とのお出かけに飛び上がって喜ぶ。


綾は銀髪のお陰で外に出るだけで陰口をあらゆるところから言われるのであまり外が好きではないのだ。

しかも、毎日のように鎮守府の前には艦娘反対派や人権擁護を自称する人間、銀髪を半ば公然と差別するようなことを言う団体達がたむろしているのだ。

いつ、綾が攻撃されるか。いや、鎮守府内の銀髪の娘が攻撃されるかもわからないのだ。

そのため、鎮守府の外周の壁には数十メートルおきに見張りの兵隊が付いている。

壁を乗り越えてくる不審者がいたら即刻撃つように言われている。

この者たちは綾のことを特段差別していない、どころか逆に好いているこの世界では物好きに入る部類の人間たちだ。


鈴谷と綾がワイワイ話しているときに扉がノックされる。

綾「入っていいよ」

明石「失礼します…」

少し遠慮がちに扉を開けて入ってくる。

綾「どうかしたの?明石」

明石「実は…」

ためらいつつ口を開く。

明石「翔鶴さんがまた例の人々に物を投げられて軽いけがを…」

綾「また…?」

明石「はい…。もう手当はしたので大丈夫ですが…」

綾「精神的ケアがいるね…」

明石「はい…やはりショックだったようで。瑞鶴さんと今は部屋にいます」

綾「あとで私も行ってみるね」

明石「お願いします」


外で構えてる者たちは時折、休日外出している艦娘(特に銀髪)に絡んでくることが多々ある。

ここ最近その回数は増えている。

守ってきた人々の中からそのように好意的でない絡み方をされて思い悩む娘も増えている。

やはり繊細な年ごろなのだ。

戦働きをしているうえにさらに心労をかければ、いつ心が壊れてしまうともわからない。


綾「はぁ…どうにかならないかなぁ」

鈴谷「表のアレ邪魔だよねぇ…」

綾「アレとか言っちゃダメよ」

鈴谷「優しいね…やっぱてーとくはさ」

綾「優しくあれるのは皆がいるからよ」

鈴谷「本当…?辛くない?」

綾「大丈夫よ」

そういって鈴谷を軽く抱きしめる。

鈴谷「無理だけはしちゃだめだからね、てーとく!」

綾「わかってるわ」


その後、執務室を鈴谷に少し任せて翔鶴の元へ向かう。

綾「翔鶴の部屋は…ここね」

扉をノックすると中から声が聞こえてくる。

瑞鶴「はーい」

綾「私よ」

瑞鶴「てーとくさん!入って入って!」

綾が入ると翔鶴と瑞鶴がベッドに座っていた。

綾「翔鶴…大丈夫だった?」

翔鶴「提督…はい。傷は大したことありませんから…」

少し寂しげな表情を浮かべながら答える。

綾「…ごめんね。翔鶴」

翔鶴「提督…!謝らないでください。提督は別に悪いんじゃないんですから…」

綾「でも私があの人たちを鎮められてないからこんなことに…」

翔鶴「気にしないでください…。そういう人がいることは…わかってますから」

綾「ごめんね…」


暫く話した後、綾が部屋から出てくる。

綾「じゃあ…あとはよろしくね」

瑞鶴「わかってるよ」


執務室に戻った後、今後どのようにするか対策を鈴谷と少し考えていた。

綾「どうしようかなぁ…」

鈴谷「下手に手出したらまずいよねぇ…」

綾「そうなんだよね…めんどくさい…」

鈴谷「大本営…」

綾「ダメね…私じゃ顔利かないもの」

鈴谷「きれいな髪なのに…」

綾「…もう慣れたわ」

鈴谷「なんかごめんね…」

綾「大丈夫よ…問題ないわ」


綾「鈴谷は今日正門のほう行った?」

鈴谷「朝少しだけ見に行ったけど…いつも通りにぎやかだったよ?」

綾「そっかぁ…」

鈴谷「てーとく近づかない方がいいよ?」

綾「そんなつもりはないよ」


綾「はぁ…八方塞がりね…」

鈴谷「どんなに厳しくても鈴谷はずーっと一緒にいるからね」

後ろからかぶさるように抱き着く。

綾「嬉しいわ…」

鈴谷「だから、悩みがあれば鈴谷に言ってね?全部受け止めてあげるから」

綾「うん…」


綾「少し気分が楽になったかも…ありがとね」

鈴谷「いいってことよー!」


綾「強制的に退去させることできないんだよね…」

鈴谷「でも、不法侵入未遂も少しずつ増えてるみたいだよ」

綾「いつかなだれ込んできてもおかしくないわね…」

鈴谷「そうなると…追い払うのが一番いいんだけど…」

綾「私たちの立場がつらくなるのよね」

鈴谷「でも…思い切ってやっちゃった方がみんないい気がする…しない?」

綾「お上は及び腰ね…ただでさえ戦いが長引いているもの」

鈴谷「そっかぁ…」

綾「私ももっと頑張って皆にいっぱい資源使わせてあげないと…」

鈴谷「無理しないでね…?てーとく。」

綾「わかってるけど、やっぱり必要なときはするわ」

鈴谷「鈴谷たちがいるってことは忘れないでね」

綾「はいはい」


綾「なんか少し気が楽になったわ」

鈴谷「ほんと?よかった」

綾「なんか食べに行きましょっか」

鈴谷「まじで!?じゃあ間宮いこーよ!」

綾「わかったわ」

鈴谷「やったぁ~」

小躍りしそうな感じで鈴谷が綾を間宮に引っ張っていく。


間宮に入ると、あまり人がいなく閑散としていたので間宮がすぐに声をかけてくれた。

間宮「あら、提督に鈴谷さん。いらっしゃいませ」

丁寧にあいさつしつつ席を案内する。

綾「ありがとね」

鈴谷「どれにしようかなぁ」

早速鈴谷がメニューを見てどれを頼もうか悩む。

綾「値段は気にしなくていいからね。好きなものを」


鈴谷「よし!パフェにする!」

綾「ん。わかったわ。じゃあ私はあんみつに」

間宮「畏まりました」

間宮が厨房の奥に消えていく。


暫くしたところで間宮がパフェとあんみつを持ってくる。

間宮「ごゆっくりどうぞ」

綾「ありがとね」


鈴谷「いっただきまーす!」

綾「いただきます」

先に鈴谷が口にパフェを運ぶ。

鈴谷「ん~!おいしい!」

綾「ん。おいしいわね」

鈴谷「クリームの甘みがなんとも…」

綾「こっちのあんみつもいいわよ」

鈴谷「ひと口ちょーだい!」

綾「はいはい」

ひと口分だけあんみつを取って鈴谷の口に運ぶ。

綾「あーん」

鈴谷「あーむっ」

綾「どう?」

鈴谷「おいしい!私のパフェもひと口あげる!」

綾「ありがとね」

鈴谷が先ほどと同じように一口とって綾の口に運ぶ。

鈴谷「おいしいでしょ」

綾「ええ。おいしいわ」

たまにしか見せない微笑みを見せる。


鈴谷「ごちそーさま!おいしかった~」

綾「ええ。おいしかったわね」

口を拭いて、飲み物に口をつけて少し店内を眺める。

綾「さて、そろそろ行く?」

鈴谷「だねぇ」

綾が席を立ってお会計に行く。

鈴谷は先に間宮を出て店先で待っている。

間宮「ありがとうございました~」


鈴谷「奢ってくれてありがとうね!てーとく!」

綾「いいのよ」

鈴谷が綾の腕に自分の腕を絡める。

綾「鈴谷?」

鈴谷「たまにはこうやってもどろーよ」

綾「いいけれど…」

鈴谷がテンションを上げていっしょに執務室へ戻る。


執務室に戻っても特に仕事は残ってないのでお出かけでどこに行くかを相談したりただ駄弁ったりしていた。

鈴谷「だんだん暗くなってきたねぇ…」

窓の外を見ればもう空が茜色になっていた。

綾「ほんとね…いつの間に」

鈴谷「そろそろてーとく帰る?」

綾「もう少ししたらね?」

鈴谷「バッグ持ってきておくね」

綾の持ち歩いてる小さな肩掛けバッグを持ってくる。

綾「ありがとう」

鈴谷の頭を撫でながら言う。

書類と電子機器をバッグに詰めて机上に横に置く。

鈴谷「おしゃれだよねぇ…てーとく」

綾「そう…?鈴谷の方が女子高生みたいで可愛いしおしゃれよ?」

鈴谷「嬉しいこと言ってくれるねてーとく!」

肘で綾の脇を小突く。

綾「もう…」


三十分ほどしたところで綾が帰ろうとする。

綾「そろそろ帰るわね…鈴谷」

鈴谷「はいはーい!見送るね!」

綾「ありがとう」


正面の門にはまだ人がいるため裏口の方からこっそりと出る。

鈴谷「なんで鈴谷達が裏口から…」

綾「しょうがないわね…正門から行っちゃったら私どんな目に合うか…」

鈴谷「そうなっちゃうもんねぇ…」

綾「早急に何とかしなきゃね…」


鈴谷「じゃあ、また明日ね!てーとく!」

裏口を出たところで鈴谷が綾に手を振る。

綾「ええ。また明日ね」

手を振り返して家路につく。

正門の方からはいまだに集団の声が聞こえる。


それを避けるように鎮守府に近い自宅に向かう。

その前に家で待つ妹とご飯を作るためにスーパーへ向かって材料を買っていく。

綾「さぁてと。お家に帰りましょ」


家の門の鍵をぎぎっと開けて、家に入りまた厳重に鍵を閉める。

そうしないと、何されるか、誰が入ってくるかがわからないからだ。

綾「はぁ…いちいち鍵いっぱい締めるのめんどくさいなぁ…」

ぶつぶつ言いつつ家に入る。


綾「ただいまー」

「おかえりなさい!お姉ちゃん!」

元気な声が会談の上から響いてくる。


綾「いい子にしてた?」

「うんっ!もちろんっ!」

綾「じゃあ急いでご飯作るからね」

「お手伝いする?」

綾「うん。お願いね」

「わかった!!!」

元気に妹が返事をしてさりげなく綾の荷物を持っていく。

綾「重くない?大丈夫?楓」

楓「大丈夫大丈夫!おっとと…」

大丈夫と言った瞬間にぐらりとよろける。

綾「ほら…言わんこっちゃない…」

楓「だ…大丈夫!」

体勢を立て直して頑張って台所まで持っていく。


この娘は、綾の妹の楓。

天真爛漫といった性格で、綾との中がとてもいい。

高校生活をそれなりには楽しんでいるようだが、一部の者からは疎まれている。

その人たちに何かしたわけではないが銀髪の身内を持っているだけで疎まれているのだ。

しかし、楓は姉のせいとは全く思ってもいないしその者たちの嫌がらせはほぼ無視している。

いちいち相手をしていたら身が持たないし、何よりめんどくさいからだ。


楓「何手伝えばいい?」

綾「そうね…じゃあこの野菜を洗ってくれる?」

楓「了解!」

袋から野菜を取り出して水で軽く洗い流す。

綾「後皮むきしてくれると助かるわ」

楓「ん!」

ピーラーを取り出して皮むきを始める。

楓の鼻歌を聞きながら綾も料理の準備をし始める。


綾「お手伝いありがとね」

楓から野菜を受け取って、リズムよく音を立てながら切る。

楓「お姉ちゃんの料理楽しみ~」

綾「楽しみにしててね」


綾の邪魔にならないように楓はリビングに行ってくつろぐ。

テレビを見ながらぼーっとしているとキッチンからほのかにおいしそうな匂いがしてくる。


楓「おいしそうな匂い!」

そろそろ作り終わるかと思いキッチンの方へ向かう。

綾「ん?もうちょっと待ってね」

楓「はーい!」


料理が完成したところで棚から皿を持ってきて盛り付ける準備する。

綾「ほっ!っと」

料理を丁寧に盛り付けるて楓に渡す。

綾「はい。持って行ってね~」

楓「うんっ!」

箸を一緒に持ちながらリビングまで運んでいく。

その間に綾が洗い物を簡単に済ませてからリビングへ向かう。


綾「じゃあ」

楓「いただきまーす!」

綾「いただきます」


楓がご飯と一緒におかずをほおばる。

楓「んーっ!」

綾「おいしい?」

口いっぱいに食べ物が入っているので、頷いて返す。

綾「よかった」


楓「お姉ちゃんの料理はいっつもおいしいよ!」

綾「嬉しいわ」

互いに笑みが広がる。


楓「ごちそうさまでした!」

早々と食べ終わって食器を片付けに行く。

綾「ごちそうさまでした」




翌朝

楓「行ってきまーす!」

慌ただしく楓が階段を下りてくる。

綾「いってらっしゃーい!」

返事もしないうちにドアの閉まる音がする。

綾「今日は一段と慌ただしいわね…」

苦笑いしつつ自分も鎮守府へ行く準備をする。


綾「行ってきます」

家には誰もいないが行ってきますを言ってから家を出る。


少し肌寒い空気を感じながら鎮守府へ向かう。

綾「だんだん寒くなってきた…暖房もう少ししたら入れなきゃなぁ」

ここら辺には結構人が住んでいるので出勤する人たちもたくさん駅へ向かって歩いている。

鎮守府とは逆の方向なので前からすれ違うような感じだ。


もちろん銀髪は隠して動いているため特に誰にも罵声を浴びさせられたりはしない。

偶に挨拶をしてくれる人がいるくらいだ。

もちろん、綾の素性が知れたらどんな反応するかはわからない。

少なくともいい結果にはならないだろう。


何だかんだ考えているうちに鎮守府に着いた。

綾「お疲れ様」

守衛にそう声をかける。

守衛もそれに応じて敬礼をする。

綾は敬礼を返してからまっすぐ執務室へ向かう。


執務室へついて荷物を下したところで上着を脱いで綺麗な髪を下ろす。

朝日に反射してキラキラして益々美しく、それでいて清楚に見える。


既に机の上には何枚かの報告書が置いてある。

まずはこれを片付けるところから始めようと、コーヒーを淹れてから椅子に座る。


コーヒーを片手に報告書を見ること数十分。

ある分を見終わってしまったので、秘書艦が来るまで何しようかと暫しぼーっとする。

いろいろと思い出してしまう。

嫌なこともいいことも。


ぼーっとしている間に扉がノックされる。

綾「あ、入っていいよ」

扉を開いて、矢矧が入ってくる。

矢矧「おはようございます、提督」

綾「おはよう。矢矧」


綾「今日の執務は何?」

矢矧「まず、工廠に行って新装備の話し合い。その後報告書を見てから攻略海域の編成。最後に雑務でおしまい」

綾「結構盛りだくさんだね。まぁ頑張ろう」

矢矧「全力でサポートするわ」

綾「ありがとう」


十分ほどして綾が席を立つ。

綾「じゃあ矢矧。工廠いこっか」

矢矧「わかったわ」

綾の上衣を矢矧が取って綾へ渡す。

綾「ありがとう」


綾「矢矧って冬の間その服で寒くないの?」

工廠へ行く途中ふと尋ねる。

矢矧「出撃の時はあんまり寒さが気にならないけど…普通の時は上に何枚か着たりするわね」

綾「へぇ…出撃の時は気にならないんだ…」

矢矧「ええ。こういう時は艦娘で良かったと思うわ」


綾「今日の工廠は静かね」

いつもと雰囲気の違う工廠に着く。

綾「明石ー!夕張ー!」

明石「はーい」

奥の方から明石の返事が聞こえてくる。

綾「どこー!」

明石「こっちですー!」

物陰から顔を出す。

綾「あぁ…いた」

明石「いやぁごめんなさい。いろいろとおいてあって…」

綾「大丈夫よ」


明石「で、新装備の話ですよね?」

綾「ええ。そろそろ艦載機の更新を進めていこうかと思って」

明石「となると…烈風開発ですね…」

綾「烈風かぁ…うまくいくかなぁ…」

明石「空母の皆さんの意見とかあればいっぱいほしいですねぇ…」

綾「そういうもの?」

明石「やっぱ使う人の意見は貴重ですよ」

綾「なるほどね。わかったわ。あとで空母の娘達何人かに来てもらうわね」

明石「お願いしますね、提督」


もう少し新装備について話し合ってから工廠を後にする。


綾「帰りがけに空母の娘達に声をかけて行こうかなぁ?」

矢矧「いま主力空母部隊は出撃中よ提督」

綾「あ、そうだったね…。帰ってきてからか…」

矢矧「夕方には帰投するはずよ」

綾「わかった」


綾「ふぅ…」

執務室に戻ってきたので上衣を脱いで椅子に掛ける。

矢矧が自然な動きで上衣を取って衣服を掛けるところにかけなおす。

綾「ありがとうね」

軽く礼をした後報告書の束を持ってくる。

矢矧「これで全部のはずよ」

綾「ありがとう。矢矧」


一枚一枚丁寧に目を通していく。

綾「あ、これは…」

矢矧「手配しておく?」

綾「お願い」


綾「んー…やっぱ衣服関係の申請が多いね…」

矢矧「どうあがいても女だものね…服飾が多くなるのも仕方ないわ」

綾「だねぇ。予算で落とせるから全然いいんだけどね」


綾「こっちは建物の修繕申請か…こういうのはすぐ直さないとね」

矢矧「士気にかかわるものね」


綾「戦闘結果の報告書はまぁ…皆勝ちばっかね」

矢矧「何週もしているし、当然と言えば当然ね」

綾「だね。練度上げも大変だ…」

矢矧「ただそれをしないとこの先もっと大変になるけれどね」

綾「頑張らなきゃ…だね」


綾「ふぅ…とりあえずこれで終わりかな?」

見た報告書をトントンとまとめて矢矧に渡す。

矢矧「ええ。これで全部よ」

綾「じゃあ…お昼にする?」


時計を見るとそろそろお昼の時間だ。

矢矧「そうね…おなかもすいてきたし…」

綾「決まりね。食堂にしましょうか」

矢矧「わかったわ」


矢矧と綾が並んで食堂へ向かう。


食堂には何人かの駆逐艦と軽巡たちがいた。

綾「ちょっと早かったかな…?」

矢矧「大丈夫よ」


電「ていとくさん…!」

綾「おお電ちゃん」

ひょこひょこと電達が寄ってくる。

電「提督さんもお昼なのです?」

綾「そうだよ。一緒に食べる?」

電「はいなのです!」

綾「じゃあ料理取ってくるから席で待っててね」

電がこくりと頷いて席の方へ行く。


綾「今日は…何にしようかな」

矢矧「私はラーメンにするわ」

綾「ラーメンかぁ…じゃあ私もラーメンにしようかな」


二人とも醤油ラーメンを注文する。

綾「安定よね」

矢矧「私はたまに豚骨行くけどね」

綾「へぇ」


ラーメンを盆の上に乗せて電達が待っている卓へ向かう。

綾「あそこかぁ」


電の隣が開いていたのでそこに腰を下ろす。

綾「いただきまーす」

「いただきまーす!」


綾「うん。おいしいわ」

ちゅるっと麺をすする。

電「提督さんはラーメンお好きなのですか?」

綾「それなりに好きだよ。麺類では一番かな」

電「そうなのですか…」

そういってカレーを一口食べる。

綾「そういう電ちゃんはカレー好きなのかな?」

電「好きなのです!」

綾「へぇ…じゃあ今度作ってあげるね」

電「いいのですか!?」

綾「もちろん。みんなにおいしいの振る舞うよ」

電「やったぁなのです!」

無邪気に喜ぶ。


綾「電ちゃん達最近変わったことはない?」

電「変わったこと…」

暁「特にないわ!」

綾「そう…ならいいわ。なにかしてほしいことがあったら言ってね」

電「はいなのです!」


綾「あー…美味しかった!」

矢矧「ごちそうさまでした」

電「デザート一緒に食べませんか…?」

綾「んー…」

ちらっと電の方を向いてから

綾「よし!いこっか!」

電「やったのです!」

暁「私もついていくわ!」

綾「はいはい。皆行こうね」


間宮の甘味処へ向かう。

間宮「いらっしゃいませ…って提督でしたか」

大きめの席に案内する。

綾「今日は私が出してあげるから好きなの頼んでね」

電「ありがとうなのです!」

綾「いーってことよ」


皆の注文が決まったところで綾が注文する。

綾「お願いします」

間宮「はーい。少々お待ちくださいねー」

そう言って奥へ引っ込んでいく。


十分ほどしてお盆に料理を乗せて持ってくる。

間宮「ごゆっくりどうぞ」


暁「いっただきまーす!」

電「いただきますなのです」

「いただきます」


電「おいしいのです!」

暁「おいしいわ!」

矢矧「うん。おいしい」

阿賀野「あーんっ」

阿賀野は酒匂と食べさせあいっこをしている。

酒匂「ぴゃぁ!おいしー!」

阿賀野「よかった~」

酒匂「はいっ!」

逆に阿賀野にスプーンでプリンアラモードを差し出す。

阿賀野「あーん」


綾「いいねぇ…平和だ…」

矢矧「そうね…」


暫くして大淀が間宮に入ってくる。

綾「おや?大淀どうしたの?」


大淀が真剣な顔つきでこちらにやってくる。

大淀「大本営からの通信です」

綾「…わかった。執務室いこっか」


先にお会計を済ませて矢矧だけを連れて執務室へ戻る。


電「なんだったんでしょう…」

暁「気になるわ…!」


執務室

綾「で、どんなことを言ってきたの?」

大淀「ここから十キロほど離れたところにある鎮守府が深海棲艦に襲撃され連絡途絶。とのことです」

綾「ふぅん…。でなにしろって?」

大淀「偵察、あわよくば撃退をしろ…とのことです」

綾「やっぱり…」

大淀「なお、あまり大所帯では向かうなとのことです」

綾「はぁ…。付近の住民の避難は?」

大淀「済んでいるそうです」

綾「わかった…。今から準備するよ」


主力の一部が出撃しているので、少ししか戦力を持っていけない。

ただし、陸の方から偵察に向かうので潜水艦が連れていけない。


綾「どうしようね」

矢矧「そうね…」

綾「偵察だから偵察機飛ばせるほういいかな」

矢矧「偵察ってこと考えると…偵察に来てるってことがばれるのはまずいんじゃないのかしら…」

綾「でも鎮守府内がどうなってるかも見ておかないといけないよ?」

矢矧「うーん…」

綾「バランスよく各艦種そろえていきましょ」

矢矧「そうね」


こうして、戦艦重巡軽巡駆逐空母まんべんなく一人二人ずつ選び出す。

綾「じゃあ私いない間の鎮守府よろしくね」

矢矧「ええ」


そう言って執務室を後にして明石のいる工廠に向かう。


綾「明石ー!」

明石「はいはーい!どうされましたー?」

奥の方から明石がにょきっと出てくる。

綾「あれ貸して欲しいんだけど…」


明石「あれ使うんですか…?」

少し厳しい顔をして問い返す。

綾「うん…今回はそれが必要…というかあったほういいかなって」

明石「…わかりました。少々お待ちを」

奥に引っ込んでいく。


暫くして、刀を一振りと銃を一丁持ってくる。

明石「こちらです」

綾「これが…」

明石「ええ。深海棲艦に抵抗できる試作品です」

綾「普通に使って大丈夫なのよね」

明石「もちろん。ただし、相手にできるのはせいぜい駆逐艦です。それもフラグシップ級は難しいです」

綾「人間で相手できるだけましよ」

明石「戦艦相手にはほんとにカスダメレベルです」

綾「あくまで補助的に、ってことね」

明石「ええ。皆さんに守ってもらってください」

綾「わかったわ」


二つの武器を手渡す。

明石「絶対に無理はしないでくださいね」

綾がこくりと頷いて受け取る。


数時間後招集された艦娘達が執務室に集まる。

綾「まずは集まってくれてありがとね」

綾「作戦についてはもう伝わってると思うけど、主に偵察、調査、安否確認、あわよくば奪還」


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2019-01-10 00:48:10

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2018-10-24 20:05:55

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2018-10-23 20:58:09

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3件コメントされています

1: 戦国小町 2018-10-23 21:00:16 ID: S:NENPVU

続き気になります。
どんな展開になっていくのか楽しみですね

-: - 2018-10-24 20:06:55 ID: -

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3: SS好きの名無しさん 2018-11-23 17:19:53 ID: S:nZ-ukO

鎮守府内に在住してる訳じゃないのかー


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-: - 2018-10-24 20:07:49 ID: -

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