2019-01-31 12:00:17 更新

*今作は"提督「死にたがりの化け物」"或いは、

"提督「化け物の花嫁」"の続編となっております。ご興味がありましたら是非そちらもお読み下さい!










やあ、読者諸君。私だ、宮本 會良だ。


君たちには、私が人間ではないということ、そして、ここが普通の鎮守府ではないということ、私の艦娘たちが普通でないことを、前作またはその前の作品で、散々述べたと思う。君たちの中での、"異常"という事態或いは性質がどこからどこまでの範囲で、具体的になんなのかは知らないけれど、しかしあれは平均的に明らかに異常なお話だっただろう。


読者諸君にはその前提を全く説明することなく、唐突に話を始めて、その中でなんとなく説明をしたつもりだが、こうも抽象的な説明ばかりでは、今後お互いに困ると思うから、



私はそろそろ、話そうと思う。



作者はどうやら、この物語のために散々伏線を張ったようだ。ならば私は、作者によって生み出された世界を君たちに伝える役割を持つ私は当然、それを一つ一つ回収していかなければならない。


今回の物語は私にとってかなりの重労働だ。ただしかし、その最大の理由は、張り巡らされた伏線の回収ではなく、誰も幸せにならない物語を語るという、どうしようもない仕事を全うしなくてはならないからである。



しかし語らねばならないと思う。なかったことにするにはあまりに大きくて、忘れるにしてもあまりにも残酷な、私という、宮本 會良という人間が死んだ話。今となっては仕方のないことだが、だからこそ私は問いたいのだ。私はあの時どうすれば良かったのか。
































[三年前]

〈鎮守府〉

気がついた時には、その男の首を刎ねていた。



上官の鎮守府の見学ということで、まだ春になったばかりの肌寒い季節に、私は私の鎮守府に始めて足を踏み入れた。その頃私は提督という役職ではなく、あくまで下っ端のような立ち位置であったから、基本大本営に勤めていた。


見学していたのは私以外にもいた。将来提督という仕事に就く者は、幾度か上官の鎮守府に見学に行き、その仕事の様子や艦隊運営を見習うのだ。首を刎ねた時、周りの人たちは目を丸くして私と床に転がった首を見ていたのを覚えている。


艦娘もいた。否、あの時艦娘がいなければ、私はおそらくあの男の愚行を知らなくて済んだはずだから、きっと今とは違う運命を辿ったはずである。しかしその時は艦娘がいて、それがきっかけで私は上官の首を刎ねたのであった。



「あ、あ、ああ…………」

「え?え、ええ?」

「…………」



真っ赤になった軍刀から血が滴る。先程まで下衆な笑いを浮かべていた上官は、その表情を固定したまま頭のみ着地し、切り口から真っ赤な噴水が発生する。


刀というものは、兵器としては十中八九役に立たない。しかし海軍内では、ある種の文化、或いは験担ぎのような意味を含めて、帯刀が許されていたのだ。許されていたという表現も適当ではない。身嗜みの一つとして当たり前の装備であった。



「し、死んだ………?」

「君………な、何を………」

「…………理由は察してくれ。すまないな、こんなことになってしまって」



我ながら冷静であった。首を刎ねた、つまり人を殺した直後だというのに、私はコンクリートのように硬く、氷のように冷たい感情を抱いていた。しかしその理由は、最も正義を貫いていたと思う。



とにかく、ここで伝えたいのは、私が私の艦娘との物語を始めるきっかけは、この地獄の幕開けは、彼女らの提督を私が斬り殺したというところから始まる。


罪悪感なんて、微塵も感じなかった。











[事件から一週間後]

そのあと私は、私と一緒に見学をしていた同僚に憲兵を呼ばせて、そのまま反逆罪という理由で大本営にある独房に放り込まれた。



憲兵も同僚も、上官も皆驚いていた。士官学校を卒業し、海軍に入りたての若造が、唐突に上官を、しかも一つの鎮守府を任されている上官を殺したということは、彼らにとってとても衝撃的だったようだった。


一緒に見学した同僚は、保身のために私が斬り殺したという点のみを事情聴取で伝えたいようだった。おそらく彼らも、あの男の愚行を愚行だと理解していただろうが、やはり私の正義を擁護する勇気まで持っていなかったらしい。


無論私はそれに怒りを感じることはなかった。今思えばあれは、全く利己的な行為であったように思える。しかしその時のわたしには、『艦娘を救ったんだ』という優越感の方が大きかった。





牢に入れられて一週間も経った時、軍法会議、ないし軍事裁判にかけられた。


色々と問答があった気がするが、覚えている範囲で言うと、



「宮本 會良。君は○月%日、○△鎮守府提督及び海軍の中将でもある佐藤 真二を殺害した。この事実に間違い或いは反論はないかね?」

「ありません」

「君は殺害の理由として、『艦娘を守るため』と述べたそうだが、それに間違いはあるかね?」

「ありません」

「殺害の動機として、『解体されることを拒絶する艦娘とそれを支持した艦娘複数名に対し暴力を振るった佐藤中将対し、人間または軍人として許せないことがあった』と述べているが、間違いはあるかね?」

「ありません」

「凶器として、当時所持していた軍刀、刃渡り68cmの刀が押収されているが、君はこれを使って佐藤中将を殺害したのか?」

「はい」

「……………殺害したことについて何か言いたいことは?」

「ありません。強いて言うなら、自分はどんな処罰も受ける所存です」





問答はあっさりしたものだった。わたしの返答がつまらなかったのか、誰も叱責せず、また呆れることもなく質問を続け、沙汰が下されたのはそれから二週間後であった。


私は自決するくらいの覚悟が殺した時からずっとあったので、特に恐れを抱くことはなかった。自分の運命がどうなろうと構わない、そんなことまで考えていた。



つまり私は自分の正義に絶対的な自信があり、今までの自分の過去も努力も、全て投げ捨てるような行為をしても、自分を反省することはなかったのである。










[一週間前 見学当日]

提督になるつもりなんてなかった。



深海棲艦と人類との戦争が始まって数十年が経った。戦局は互角、というかどちらも疲弊していた。好転することもなければその逆もなく、ただ膠着状態が長引き、戦時が延命するだけであった。


この戦争が始まった時からしばらくして動員された『艦娘』。人型艦船海上決戦兵器と、開発部に進んだ知り合いは語っていたが、つまりは人間の女の姿をした兵器。これが戦線導入され、かつて敗戦まで囁かれた人類はなんとか同じ土俵に立てたわけだが、それでも敵はしぶとかった。我が国は艦娘のさらなる進撃を求め、海軍は完全にその戦力を艦娘に依存するようになった。


艦娘には人間と同様に自我を持ち、そして人間に比較的忠実であった。そのため人類は少数で多数の艦娘を使役し、戦況の好転を目指し奮闘した。



艦娘を戦力の中心へと完全にシフトした海軍は、提督志願者を急募した。無論、多くの志高き者が志願した。しかし、提督職というものは慢性的に人員が不足していた。


まず、艦娘の管理の厳しさが原因である。兵器である彼女らは、燃料を飲み、鋼材を喰らい、弾薬を欲する。そのため資材の管理が難しく、なかなか適任な者が現れない。また、自我を持つ彼女たちを指揮する能力も問われるため、提督という役職は苦しい仕事であった。


次に艦娘側からの主張がある。艦娘を道具のように扱う提督や、適切な指揮ができない提督などには、艦娘は従うことはない。よって不満を訴える艦娘は少なくなく、その訴えが通れば新たな提督を立たなければならなかった。




以上のような背景がある今日の海軍では、私の憲兵として進もうとする意志さえ、


「憲兵になるくらいなら提督になれ」


という上層部の方針に一蹴され、私は嫌々見学に参加することになったのだ。






「どう思うよ、今から行く鎮守府」

「ん?ああ、そうだな………」



狭い車の中を詰めて乗り、海岸沿いを揺られながら移動していると、隣に座っていた同期の軍人が話しかけてきた。


茶髪が印象的だが、完全に日本人顔である。いつもへらへらしていて、真面目なところは見たことがない。そんな調子なので、無口な私とは初対面であったが、しかしそんな私の緊張を無視してきたのだ。



「まあ………あそこは前線防衛の要の一つだし、行ってみる価値はあるんじゃないか?」

「はぁん?おいおいマジかよ。お前はあの噂知らねぇのか?」

「なに?」

「今から行く鎮守府は佐藤中将が統括したんだけどよ、あそこ、中々のブラックらしくてな」

「ブラック………」



ブラック鎮守府。



俗に、労働環境や賃金などが一般のそれと比べ劣悪とされる企業がブラック企業と呼ばれるように、鎮守府にも、艦娘への対応や指揮などが悪い鎮守府を『ブラック鎮守府』と呼ぶ。


具体的には、多大な損傷を受けた艦娘を無理矢理出撃させたり、補給、入渠をさせなかったり、直接的な暴力を振るったり………。艦娘が導入された当初は今の数倍あったらしいが、今ではその数もほとんどない。



訪問先に否定的な同期(ここではAとする)に対し、異論を唱えたのは後輩(Bとする)であった。



「ま、待ってくださいよ。前線の要を任されてる人が、ブラックをやってる人とは思えません!」

「あ?お前さ、飛び級で昇進して来たくせに、わかんねぇのか?」

「え?」

「ずさんな指揮だろうが、艦娘を轟沈させまくるクズだろうが、戦績がいいならいいんだよ。大本営のお偉いさんたちはよぉ、結局敵をどれだけぶち殺せたかしか評価しねぇんだからな」

「そんな………」

「しかし、仮にそんな指揮をしているなら、艦娘からの反発があるんじゃないのか?」

「それがない理由っていうのを、俺たちはこれから学びに行くんだろうよ」

「…………まさか」

「俺は個人的にはそんなクズにはなりたくねぇが、それ以外学ぶことなんてないと思うぜ」



Bはすっかり青ざめてしまい、Aも興味がなくなったのか、窓の外をぼんやりを見ている。


「(艦娘というものに会ったことはないが………。人の姿をしていても道具と割り切れる者といるということか)」











「「「本日は、よろしくお願いします!」」」

「よく来たな。まあそう硬くならなくてもいいぞ」



その男、佐藤は中肉中背、口元に髭を蓄えた男であった。踏ん反り返る大本営の上官たちと違い、そこそこ好意的な印象を受けた。


白い軍服に、中将の地位を示すバッジをつけている。清潔感のある白、ニキビの一つもない肌、そして笑顔。この男がブラック鎮守府の長とは到底思えなかった。



「よし、とりあえず仕事を見せる前に、簡単に施設の案内をしよう」

「「「はい!」」」



そう言って最初に連れられたのは母港、つまりは、艦娘の出撃を見送る場所であった。



「後ろの工廠と直通していてね。建物か工廠かの違いはあれで、すぐに出撃できるようなつくりなんだ。えっと、確か今は遠征中だが、帰りはまだ先かな」

「なるほど〜。佐藤中将も、ここで艦隊を見送られるのですか?」

「ん〜?いや、俺はあんまりそういうことする暇はないかなぁ」

「へぇ〜」

「(艦娘の出撃時の姿を見てみたかったが…………。しかしこの建物の配置はいいな)」




次に件の工廠。

「ここが工廠だ。窓がなくて扉しか空気を取り込めないから、ちょっと変な匂いがするが、我慢してくれ」

「いえ、問題ありません」

「大丈夫ですよ。それより、ここでは何を?」

「艦娘の建造と兵装の開発とか、改装とかかな。確か…………おい、明石」



この時、我々は違和感を覚えた。


工廠の端の方で作業しているピンク色の髪をしている女の子。だいたい、高校生位だろうか?とにかく、佐藤中将はその子を読んだわけだが、


まず、「明石」と呼ぶときの声のトーンが、我々と会話するときよりもずっと暗いものであったこと。


そしてその呼ばれた女の子、明石が、一瞬怯えたような表情を見せ、そして無理矢理笑顔を作ったこと。



「は………はいなんでしょう、提督」

「君たち、紹介するよ、工作艦の明石だ」

「はじめまして。俺はAって言います」

「はじめまして。僕はBと申します」

「同じく、宮本といいます」

「あ………どうも。工作艦の明石です……」

「…………こいつには主に改修で働いてもらっている。他にも色々とやってもらっているが、とにかく、この工廠はこいつが常に使っているって感じだな」

「工作艦って、どこの鎮守府にもいるんですか?」

「あーっと、多分なんだが、ある程度の戦績があれば配属されるはずだぞ」

「なるほどなるほど」

「(明石…………。艦娘が人間に似ているとは聞いていたが、まるで少女ではないか。それに服装もまるで学校の制服………。いやそれよりも、彼女のあの顔………)」




寮舎は外観だけ案内された。艦娘の寝床をいちいち説明する必要はないだろうと、佐藤中将は笑って通り過ぎた。我々も何の疑問も持たずにそれに続いてしまった。


次に鎮守府本館、食堂やら執務室やらがあるところに案内された。


「ここが食堂だ」

「誰もいないですねー」

「結構広いですね。艦娘の分だけ席があるんですか?」

「…………いや、全員が同時に食事を摂る時なんてなんから、ある程度並べてあるだけだ。それに、誰もいないわけじゃないぞ」

「え?」

「あっ、あれは………」

「おい、間宮」

「ひっ…………。は、はい?」



また声のトーンが下がった。また艦娘が怯えた様子を見せた。


A、Bは気付いていないようだが、明らかにこの提督、艦娘に怖がられている……。


「こいつは間宮。この鎮守府の台所だ」

「給糧艦ってやつですね?」

「うむ。補給艦とも言われるが、こいつには主に、食堂で艦娘たちに飯を作ってもらっている」

「………」

「間宮さん、ここの料理って、例えば何があるんですか?」

「あ、はい………。例えば、海軍カレーとか、たまにパフェとかも……」

「パフェ?すげぇ………」

「(……ん?間宮の奥に…………割れた食器か……?何か大量に積み上げられているが……)あの、」

「なにかな?」

「中将殿は、なにが一番好きなんですか?」

「うーん、そうだなぁ………」

「…………ッ」

「やっばりカレーかな。士官学校を思い出す」

「ああ〜、でもあれ飽きません?」

「そうか?俺にとっては懐かしの一品なんだが」




そして、執務室を案内させられた。今思えば、ここがターニングポイントであったのだ。



「あっ………」

「ん?」

「あっ、艦娘」

「………」

「おお、紹介する、練巡の鹿島だ。秘書艦として書類の手伝いを任せてる」

「ど、どうも。練巡の鹿島と申します」

「よろしくお願いしまーす」

「よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします(秘書艦か………。まあ予想通りの反応だな)」



鹿島は作り笑いで対応しているようだが、例外ではなかったようだ。


この佐藤という男、一体なにを………?



「えーと、お前たちに教えることは………、ああ、これだな」パサッ

「んん、なんですかこの書類は?」

「……艦娘の名前と、資材の消費…?」

「お前たちも士官学校で教わったと思うが、提督としての最も難しい役割は資材の管理だ。どの資材をどれだけ使用して、どれだけ蓄え、どれだけ集めるか。上から補給されることもあるが、自分で調達しないといけないものもあるからな。例えば高速修復剤とか」



その書類には、既に終わったのだろう、遠征の戦果と資材の消費内訳が書かれていた。



「(練度の低い駆逐艦を中心に、旗艦は軽巡。習った通りの編成だ。戦果も悪くない)

つかぬ事をお伺いしますが、出撃の書類はありますか?」

「お、そうだな、それも見せておこうか」



佐藤中将はそういうと机の端に寄せられた紙の山から適当に一枚持ってきた。


しかし、その時その山の中に一瞬、気になる書類があった。



「(あれは………入渠と補給の申請書?この鎮守府ではわざわざそんなものを出すのか?いや、記録として残すのは結構だが、しかし………遠征に駆り出されている駆逐艦とかの補給が書かれていないな………)ありがとうございます」

「正規空母と軽空母…、空母中心の編成ですね」

「手強かった時にはな。しかしボーキが一気に減るから困るんだよなぁ……」

「駆逐艦とか、巡洋艦とかは出撃させないんですか?」

「…………」



一瞬間、佐藤中将から笑顔が消えた。というか、表情が消えた。我々は3人とも、その違和感に気づいた。気づいただけで、なにも言わなかったが、その違和感は無視できないものであった。



「……………ああ。そいつらは主に遠征とかで活躍してもらってる」

「へ、へぇ〜」

「そうなんですね、勉強になります」

「(どうやらここに問題があるようだ)」



机の側で佇んでいる鹿島は、駆逐艦という言葉が出るたび、悔しそうに下唇を噛んだ。













当然、少女が飛び込んでくるように執務室に入ってきた。



「遠征に向かっていた第二艦隊、帰投しました!!」

「え?」

「うわっ」

「………」

「お、そうか。すぐ向かう。いや待て…………、ちょうどいい、お前たち、俺についてこい」

「「「はい!」」」















〈入渠室 通称"風呂"〉

駆け込んできた駆逐艦は時雨というらしかった。何故旗艦の軽巡ではなく彼女が執務室に来たかということは、母港に帰投し、入渠室前で待機していた艦娘たちを見ればすぐわかった。



「こ、これは…………」

「なんてこったい………」

「………」

「………チッ」



駆逐艦は4人、時雨を含めれば5人いた。もう一人は軽巡。ほとんど無傷の時雨に対し、この五人のうち二人は重症、三人もそれぞれ怪我をしているように見えた。


この「ように見えた」という表現は、艦娘の怪我というものが、人間のそれと同様の基準で評価していいものか疑問だからである。




「て…………提督、どうか、どうか入渠させてあげてください!」

「お、お願いします!」

「うぅ…………」

「はぁはぁ…………うぐっ!………が……」



少女たちは苦痛を噛み殺して、縋るように佐藤中将に頭を下げた。重症の二人は目も開けられないほど痛いのか、ただ呻くだけだ。



ここで一つ疑問が生まれた。


何故彼女らは提督にここまで懇願するのだろうか?


艦娘が損傷するのはわかる。戦場に身を置く立場ゆえ、入渠するのは当然である。それを提督が把握して、許可するのも理解できる。


しかし問題は態度だ。何故ここまで必死なんだろうか。佐藤中将が首を縦に振れば済む話ならば、ここまで切羽詰まった言い方をせずともいいはず。これではまるで、艦娘の治療自体が、滅多にないことのように思える。




この疑問は、しばらく口を閉じていた佐藤中将の一言で全て理解した。









「ちょうどいい」

「「「…………は?」」」



少し笑って、佐藤中将はこう言ったのだ。



「二人は……、暁と雷は解体。三人は動けるな?時雨、旗艦の五十鈴の代わりにお前を旗艦としてすぐに次の遠征に向かえ」

「そ、そんな…………」

「ちょちょ、待ってください!」



Aはたまらず声をあげた。



「なにかな?」

「にゅ、入渠させてあげないんですか!?こんなにボロボロなのに………。それに、すぐに出撃って………!」

「君たち三人には、この駆逐艦二隻の解体と出撃時の様子を見学してもらう。たまたまこの時間に帰還してきたようだが……………うん、ノルマは達成してきたようだな。よし、こいつらが準備している間に、先に解体を見学してもらおうか」

「お待ちください!!」



今度はAでもBでもなく、私が声を張り上げていた。佐藤中将は不思議そうにこちらを向く。



「まだなにか?」

「解体って………、入渠させてやればいいだけの話ではありませんか!それに、そこの四人も補給と入渠させてやらねば沈ませてしまいます!!」



佐藤中将は特に表情を変えることはなく、苦しんでいる駆逐艦二隻と残りの四隻を少し見た。そして私のそばに歩いて肩に手を置く。



「いいかな、君ぃ」

「え?」

「君にはわからんだろうが、駆逐艦は優秀なんだよ」

「………?」

「なんたって、低予算で建造可能だし、燃費もいい。壊れたってまた新しいの作ればいくらでも戦い続けられる。海域攻略ならまだしも、遠征にはもってこいなんだ」

「なっ………!」

「でも補給や入渠をしたところで、それで戦艦や空母の補給が遅れたら困るだろう?だから俺は、こいつらの補給や入渠を工夫しているんだ」

「……それはおかしいです!彼女らは懸命に戦っているのに、そんな理由で………」

「大破した駆逐艦を治すより、解体した資材でほかの艦娘の補給に当てた方が効率がいい。ドッグを駆逐艦で満員にするより、ほかの強い艦娘を直した方が合理的だ」

「しかし、やはりそれは………ぐはっ!?」



反論を続ける私の腹部に、突如佐藤中将の拳が飛んできた。



「君のような新人に何がわかるってんだええ!?」

「うぐぅ………」

「道具と同じようなもんだ。壊れたら捨て新しいのを補充する。言わばこいつらは使い捨ての道具でしかないんだよ」

「あ、あなたは………ぐっ!?」

「あんまり怒らせないでくれよ…………!俺はもうずっと前から、こんな出来損ないどものせいでイライラしてるんだからさぁ!」



そのあと数度腹と顔を殴られ、私はたまらず膝をついた。


A、Bの両名は不憫そうに私を見つめ、そして静かに首を横に振った。「やめておけ」と言わんばかりに。



殴り飽きたのか、佐藤は二人の駆逐艦、暁と雷の襟元を掴んで、ずるずると引きづり始めた。



「いくぞ………」

「だ、大丈夫ですか!?」

「………」



まだ痛むが、なんとか立ち上がった。







「ま、待ってください!!」




二人を引きずる佐藤の腕を掴んだ。



「どうか、どうか入渠させてあげてください!二人は今までも頑張ってきたのに、ここで解体なんてあんまりです!!」

「し、し……ぐれちゃ……」

「や、やめ………」



必死の形相で止める時雨。まだ怒りが収まっていなかったのか、泣きたく時雨に対し、佐藤中将は容赦なく平手を喰らわせる。





ビシッッッッッッッ!!!




「………ッ!」

「俺の………俺の手を煩わせるな!!この出来損ないが!!」バッ



平手を喰らった時雨はよろめいたが、それでも腕を話さなかった。しかし佐藤は時雨を蹴り飛ばし、無理やり手を引き剥がした。



「あっ…………!」

「ふん!この間抜けが!さっさと次の遠征の準備をしろ!!さもなくば…………お前も解体だ!!」




我々三人は立ち止まって見ていた。



引きずられている二人は、もう諦めてしまったのか全く抵抗しなくなった。ただ引きずられるまま、呻くことすらやめて、死んだように沈黙した。


時雨は涙を流していた。声はあげなかったが、ただ二人の方へ手を伸ばして、とめどなく涙が溢れる瞳で二人を見た。


後ろの三人はたまらず目をそらす。何度も見てきたのか、見るのは初めてなのかは知らないが、ただ拳を握りしめて俯いた。


AもBも、軍帽を深く被り、同様に現実を無視した。



誰も、誰も助けなかった。誰も助けられなかった。目の前の理不尽をただ目をそらして、「自分は関係ない。自分のことでないのだから知らない」と自分に言い聞かせて、聞こえることのない悲鳴が聞こえぬように、心を閉じた。



反吐がでる。



そう思って、そう自分を見つめ直すとやはり、私もそれと同じだった。









「あ………あ………」



見ると、時雨が泣き腫らした顔をこちらに向けていた。


誰に向けていたかはわからない。Aかも知れなかったし、Bかもしれなかった。無論それは私でもよかった。ただ私はその時時雨を見たし、時雨もそれを見たのだろう。


だからこそ、彼女はこのあと言ったのだ。言わば化け物はこの瞬間に生まれたと言ってもいいかも知れない。でなければここが物語の始まりというだけだが、しかし私は私の内なるものを外に生み出したのだから。




「たすけて…………」





無意識に、私の軍刀は私の手に握られて佐藤の首へと向かったのだ。
















[事件発生から二週間]

〈大本営 地下 独房〉

上官、それも中将クラスを殺したとなれば、即刻斬首されるのが通例である。士官学校を卒業したばかりで、それも見学の最中に殺人が起きたということは、海軍内部でも相当話題になったようだった。


独房での食事は、栄養バランスは良いとは思うが量が少なく、淡白なものであった。食事の時間になるたび、「これが最後の晩餐か」と予想してみるが、一向に沙汰がない。特にやることもないので、一日中眠る。眠くなくなっても寝る。それでも目が覚めているなら、筋トレで無理やり疲労して、寝る。それを繰り返してなんとか暇を潰していた。



進展があったのは二週間後のこと。暇すぎて、いよいよ脱走でもしようかと妄想していた時分に、険しい顔をした男が、数人部下を従えてやってきた。


「出ろ」

「………」

「ついてこい」


この時はその二言しか言わず、周りも表情一つ変えずに、ただその男についてきた。



「これからお前を殺す」とは言えないルールなのか、それとも、私のことが心底嫌いなのかわからなかったが、とにかくあまりにも何も言わず、何も反応しないので、私は自分はこれから死ぬんだと思った。


この時も、罪の意識は特になかった。自分の正義に疑いの余地はなく、ただ、あの艦娘たちはどうなったのだろうと思うくらいで、あとは何も考えていなかった。だからこの後すぐ、自分の首がこの体から離れることになるとしても、別になんの恐怖も後悔もなかった。




「入れ」


通された部屋は、窓のない、天井も壁も全てコンクリートでできた、4畳ほどの部屋だった。中央にテーブルがあり、向かい合うようにパイプ椅子があった。明らかに、ここで殺される雰囲気ではなかった。


「座れ」


男は座りながらそう言った。


取り巻きは部屋の外で待機しているようだった。私たち二人は、この君の悪いコンクリートの箱に、二人きりで入ったわけだ。




男はコートを羽織っていたが、襟から軍服が見えたから、おそらく軍の人間なのだろう。おもむろに胸ポケットからタバコを出し、私の目の前でそれをふかし始めた。


密室に漂う煙は、天井付近で霧散し、直後私は煙の嫌な臭いを感じ取った。口にこそ出さなかったが、タバコはあまり好きではなかった。


そして、私と同じように煙を見ながら、男は低い声で切り出した。



「宮本、だったな」

「はい」

「俺は立場上、名も階級も教えられんが……、

一応お前の上司だ。簡単に言うと俺は、海軍内部の情勢を監督、ないし監視することだ」

「……それで?」

「…………タバコ、吸うか?」

「……いえ」

「それがいい。タバコはなんの得にもならん」


そう言って、まずそうに煙を吸い込む。


「お前はつい一昨日まで、反逆罪及び殺人の罪で、おおよそ死刑が確定していた。軍法会議で満場一致だったそうだ」

「はぁ……」

「だが」

「!」

「俺と、俺の部下があの、お前が見学に行っていた鎮守府に調査しに行った。事件の一週間後のことだ。その時既にお前の死は決定事項だったんだが…………」

「何か、あったんですか?」

「…………艦娘からの直談判があってな」

「え?」

「『これまで大本営に提出された資材運用などに関する書類には全て誤りがある』なんて言い出してな…………。要は、奴が資源を横領してたって話よ」

「横領…………?」

「佐藤は手に入れた資源を密かに隠し、実際より少ない分を大本営に報告していた。隠した分は他の鎮守府に横流しして、上官どもに媚を売ってたって話だ。一回の横領はさほど大量ではなかったが、それが何回もあったからな…………。艦娘たちはみんな知ってたらしいが、やはり報復を恐れて言えなかったんだと」

「………」

「でよ、それに元帥閣下がブチ切れてな。でも本人はもう死んじまって、お前が殺したって知ったら、『まずそいつの死刑は待て』だとさ」

「(元帥閣下…………。あまり面識はないが、ありがたい)………それで、その後は」

「その後俺たちは調査を続けると、なんと佐藤って野郎はとんでもねぇクズだってことがわかった」

「横領以外にも悪事を働いていたと?」

「そうだ。ずさんな艦隊運営に過剰すぎる遠征。公費で旅行や家具なんかを買ってるし、何より、艦娘に対して扱いが酷すぎるぜ」

「そう、ですか」

「戦績だけは良いからと思ってりゃ、とんだ害虫がいたってわけよ。で、これもまた元帥閣下がキレてな」

「はぁ」

「でも死んじまってるし」

「はぁ」

「となると、奴の知り合い、つまりは横領やらなんやらに関わってた連中を全員捕まえるとか言い出してよ」

「それって………」

「ああ。今んところ、3つくらい鎮守府が潰れた」

「ええ!?」



男はさらっと涼しい顔で言った。



鎮守府とは深海棲艦との戦争において、城であり、砦であり、武器であり、盾である。その重要度は計り知れず、そこを任される提督はそれなりの教養と判断力が必要である。


つまり鎮守府が潰れるということは、その貴重な人材と城を失うわけで、海軍全体ではかなりの痛手であるはずだ。



「まあ、身内が腐ってるのはダメだけどよ、ちっとやりすぎだよな。だはははは!!」

「笑い事じゃないでしょうに……」

「ああ。…………って、お前がきっかけで起きたことだけどな」

「あ」



ようやく、自分のしたことの重みがわかってきた。



「それでよ」

「はい」

「新しい提督が必要になったんで、さらに人材登用を増やそうとしたんだがな」

「…はい」

「元帥閣下とか上官たちが、その基準を引き上げて、結局人員が増えなかったんだわ」

「……はい」

「その上死人が出てるこの事件は、一気に海軍内に伝播して、尚更減少」

「………」

「潰れた鎮守府にいた艦娘たちの沙汰を決めなくちゃならなくて、今お偉いさんはドタバタしててよ」

「…………」

「つまり、今結構、やばいだよね」

「すみませんでしたぁぁぁぁ!」



こんなつもりではなかった!まさかこんなことになるなんて思わなかった!


あの時つい殺してしまったけれど、ここまで考えていなかった。後先考えずに行動して、全く私はなんて間抜けなんだ。



「で、」

「はい?」

「さっきさ、直談判があったって、言ったよな」

「ええ。艦娘からの……」

「そうだ。でよ、それは別に佐藤の悪事を密告しにきたってだけじゃねぇんだ」

「と言うと?」

「あそこは前線の要。頭である提督を失った今、圧政から解放された艦娘は一切出撃せず、その鎮守府で好き勝手やってるんだとよ」

「つまり、鎮守府が機能していないと?」

「ああ。でも、出撃しなくなったんで、あたりに深海棲艦が増えたらくしてな。でもみんな出撃してくれないんで、困ってるんだとよ」

「………はぁ」

「それなんで、新しい提督をこっちから何人か派遣したんだよ」

「なるほど。………え?何人か?」

「早え話、全く従わなくなっちまったんだよ。あいつら。佐藤のせいで人間はみんな敵だと思い込み始めてよ。派遣された奴らみんな、追い出されたんだ」

「ええ………」

「そっからは散々だ。帰ってきた新人どもは、鬱になるわ精神疾患になるわでてんてこ舞い。深海棲艦は増えるんで別の鎮守府の仕事は増えるばかり。せっかくの資源輸送路は敵に奪還され、あの鎮守府は本当に、ブラック鎮守府になっちまってなぁ………」

「………」



すると男は、まずそうな煙草を灰皿ですり消した。前のめりになり、若干声を潜めて言った。



「ここからが本題だ」

「はい」

「従わなくなっちまった鎮守府に対して、俺たち海軍は困ってる。でも、艦娘側としても、妥協案を提示してきてな……」

「…………なんですか?」

「『提督を殺してあの男ぐらいは、まだ信用できる』だと」

「…………………………それって!?」

「ああ。新任提督にお前をご指名だ」














[事件発生から一ヶ月後]

〈鎮守府〉

私の死刑が取りやめになり、それから新任提督として極秘にだがこの鎮守府に着任するまで、そう長くなかった。


反逆者&殺人鬼の二刀流で海軍内でも最悪のイメージであった私は、元帥閣下の意思によって、海軍内の毒を消し去った英雄的なイメージを植え付けられていた。


流石に全員が全員、私を受け入れてくれたわけではないが、同期の連中や上官たちは、大本営にいる間、特にこれまでと変わらず接してくれた。


そして2日前、元帥閣下から呼び出しをくらった。



『君が、宮本くんか』

『はい』

『君にはすまないことをした。戦争のどさくさの中で自分の利益を優先していたクズを成敗してくれたというのに、私は…』

『いえ、気にしないでください。それに、今ではもうただの一軍人ですから』

『そうか。君がそういうなら、この事はもう話すまい。…………それで、一軍人に戻った君に、早速だが命令だ』

『はっ!なんなりとお申し付けください!』

『佐藤中将がいたあの○△鎮守府、あそこは今、統率者がいなくなったことで無法地帯となっている。このままでは前線維持は困難だろう。そこでだ!』

『!』

『君を○△鎮守府の提督に任ずる!急ぎ鎮守府の混乱を鎮め、前線維持に努めよ!』

『了解!』









新米提督候補から犯罪者、そして次は新米提督へと、思いがけない大出世だ。


前線維持を任される鎮守府には、それなりに経験を積んだ者が配属される。よってその提督の大半は中将や大将クラス、つまりは海軍上位層になる。しかしここに私を配属したというのは、おそらく私の提督としての素質ではなく、あくまで詫びという意味合いが強いのだろう。ある程度鎮守府が安定したら、すぐに弱小鎮守府に異動させられるはずだ。




「ここが………」



あの時、研修できたあの時は鎮守府全体をざっと見学したわけだが、こう改めて外から眺めてみると、なるほど、流石前線維持を任されるだけはある。立派な鎮守府だ。


正門をみると、既に一人軍服をきた男が立っていた。おそらく、大本営がよこした案内人だろう。



目が合うと、まだ距離があるというのに敬礼をしてきた。私もそれに応える。


「今日からここに配属される、宮本 會良です。」

「自分は、大本営から派遣された、田代 正中(たしろ まさなか)軍曹です。今回は、宮本殿の鎮守府到着を見届け、提督着任に際しての諸注意を申し上げるために参上しました」



あたりには誰もいない。一般人が住むところからは遠く離れた海のそばの建物であるから、周囲に人間がいないのはわかる。が……。


「艦娘は、」

「それについては後ほど。まずは、この鎮守府の主な役割と、宮本殿の現在の階級について報告させていただきます」

「あ、はい」


大きな建物であるくせに、そこに人の気配はなく、ただ、冷たい館が海を静観しているだけであった。


物音1つ聞こえず、まるで鎮守府全体が、そこにあるだけオブジェに見えるほどに、それは機能していなかった。



「まずは階級から。鎮守府を任される以上、提督になる者はそれなりの階級に位置しているのが通例です。しかし今回は、あの事件のことも踏まえると、それほど高い階級に宮本殿を据えるわけにはいかないと、先の軍法会議で決定しました」

「(階級に興味はないが……。たしかに、今の私はどれほどの地位にいるのか気になるな。変わっていないのなら、未だ一兵卒のままだが)」

「また、中将が一人なくなったことにより、それ以下の階級が変動し………、つまり、かなり多くの人間の地位が繰り上がったことになります」

「はい」

「その他色々と要因はあるようですが………………、宮本會良殿、あなたの現在の階級は"少尉"であります」

「少尉…………」

「不服、ですか?」

「いえ、結構です」

「承認された、ということで報告させていただきます。正式な書類に関しては後ほど届けられるはずです」

「わかりました」

「階級につきましてはこれで以上です。次に、この鎮守府での業務上の注意ですが…」

「はい」

「まず、提督としての役割はこちらの書類に書かれております。このマニュアルは他の鎮守府と全く同じものですが、何か分からないことがございましたら、大本営に連絡をください」

「わかりました(結構多いな………)」

「そして…………ここからが、この鎮守府での注意点です」

「はい……」

「…………まず、これまで派遣された提督から聞いた話ですと、ここの艦娘は非常に人間に攻撃的です。死人こそ出ていませんが、これまで派遣された提督の中には、未だ入院生活を送っている方もいます」

「しかし、向こうは私を指名したと聞いていますが…」

「だとしても、です。万一のことがあればすぐにでも駆けつけますが、ご自身の安全のためです。十分にご注意ください。大本営からは、艦娘に対する武器の使用を、正当防衛という理由のもとならば、許可すると指示されています」

「それは……………、艦娘に対して暴力を振るってもいいと?」

「暴力ではなく武力、と大本営は解釈しています。身を守るためなら仕方がない、という名目ではありますが」

「……………わかりました。他には?」

「当面のこの鎮守府の目標は、最終的に奪取された補給路の奪還と前線の確保です。近くの鎮守府も応援してくれるかもしれませんが、そこは宮本少尉の手腕にかかっています」

「つまり、鎮守府としての活動を再開できるまでには、ここを復活されなければならない、と」

「我々大本営も、できる限りサポートしますが、なんせ事情が事情です。…………宮本少尉、あなたはこの鎮守府復活の最期の希望です。ここを失うのは、これまで戦ってきた全ての人の努力を捨てることになります」

「分かっています。ここは前線の要の1つ。なんとしても復活してみせましょう」

「ありがとうございます。…………お伝えすべきことは以上です。ここからは、宮本少尉、あなたの手に委ねます」

「はぁ…………大本営も、こんなことになるとは思わなかったでしょう」

「海軍の闇が生んだ事件の中では過去最悪のものですから……。宮本殿に全てを押し付ける形になって、大変申し訳ない」

「いいんです。元はと言えば私が啖呵きったこと。それに、どうやら私以外の人間では、どうしようもないらしい」

「………………ご武運を」ビシッ




田代軍曹は美しい敬礼をすると、私が乗ってきた軍用車に乗り込み、そのまま去って行った。




「…………ふぅ」



渡された大量の書類と、背負ってきた着替え一式。入隊したばかりの頃と同じような、或いはそれ以上の緊張がある。


しかし、これは当然私が果たすべき義務。こうなることは予想してなかったが、予想外のことが起きようと、あの時の覚悟は揺るがない。


『たすけて…………』



あの時から、死すらも恐れてはいない。



今日から私は、提督だ。




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SS好きの名無しさんから
2020-06-29 19:15:49

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2019-01-09 05:41:26

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2019-01-04 14:08:10

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生味噌さんから
2019-01-04 14:08:13

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3件コメントされています

1: 生味噌 2019-01-04 14:10:12 ID: S:88yQpi

このシリーズはお気に入りです、艦娘達の提督を取り合う修羅場の表現が面白くてその状況を想像すると笑えます。
所々誤字、脱字がありますが問題無いかと、続きを楽しみにしてます。

2: 生味噌 2019-01-04 14:13:37 ID: S:yFoDtf

このシリーズはお気に入りです、艦娘達の提督を取り合う修羅場の表現が面白くてその状況を想像すると笑えます。
所々誤字、脱字がありますが問題無いかと、続きを楽しみにしてます。

3: SS好きの名無しさん 2019-01-09 03:13:02 ID: S:_6zInr

とても面白かったです。

続きを楽しみにしてます!


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