2020-04-04 03:28:55 更新

概要

艦娘を作り上げるために実験され、同じ海の上で戦う提督と、共に戦う白露型の話です。


前書き

初投稿です。完全なオリジナルストーリーで、所々変な箇所があるかもしれない上、かなり特殊な内容です。駆逐艦提督って名前は色々とあながち間違ってないけど、この話の内容にロリコン要素は特に、ないです。時間がある時に誤字修正などで更新しています。基本は提督と白露型がメインで、主に提督目線で書いています。グロ要素ありです。


作品登場人物



・提督

艦娘のデータ回収のために被験者となった1人。

髪は茶髪、目は緑色で性格はしっかりとしている。

戦うことをやめ、提督として新たな人生を送ろ うと するが…?


・大淀

提督のサポート役。普段は大本営で働いている

が、提督から要望があれば駆けつけてくれる


・白露

白露型1番艦。何事にも1番を目指す白露型の

姉。ささいな事にも1番を目指そうとしているの

で妹達は手を焼いている


・時雨

白露型2番艦。 物事にはしっかりとしていて、

妹達によく頼りにされる。

過去に別の提督との関係により、人間には不信

を抱いている


・村雨

白露型3番艦。「いい感じ、いい感じ」や、「はい

はーい」が口癖。恋愛系の話が好きで、よく恋

バナを持ちかける


・夕立

白露型4番艦。語尾の「ぽい」が特徴的で、元気

で明るく、無邪気な性格。その性格か、いつも

犬のようにじゃれている


・春雨

白露型5番艦。料理や掃除が得意で鎮守府の世

話係。何故かいつも飯釜を持っている。姉達の

世話を毎日行っているしっかり者




駆逐艦提督



~大本営~



大淀「…はい!これで手続きは完了です。お疲れ様でした」



提督「あぁ、ありがとう」



たった今俺は提督としての手続きが終了したところだ。挨拶のために元帥殿の部屋へ向かっている途中に大淀に尋ねられる



大淀「つかぬ事をお聞きしますが、本当に提督になるんですね…」



提督「あぁ…もう、戦うのは御免だからな」



大淀「そうですか…でもあなたならきっと艦娘達から信頼を得られますよ」



提督「そうか?」



隣にあった大きな鏡の前に立ち止まった。自分の姿に失礼な箇所はないだろうか…



提督「…とりあえず、今はどこの鎮守府に行くか不安だな…」



大淀「きっと良い鎮守府に就きますよ」



提督「そう願いたいね」



大淀と雑談していると、あっという間に元帥殿の部屋に着いた



大淀「着きましたよ。ここが元帥殿の部屋です」



提督「ここか…」ドキドキ



いざ部屋を目の前にすると胸の鼓動が途端に早くなった



手紙でのやり取りはしていたが、実際に元帥殿と会うのは初めてだ。失礼のないようにせねば…



大淀「そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。では入りましょうか」



提督「あぁ…頼む」



大淀「元帥殿、失礼致します。新たに着任される提督を連れて参りました」



元帥「入って良いぞ」



提督「失礼致します」



元帥「ほう、君は…」



提督「お初にお目にかかります。今日から提督を務めさせていただきます。よろしくお願い致します」



元帥「うむ、礼儀があって良いことだ。噂には聞いている。どうやらあの実験に関わった一人らしいな」



提督「…はい」



元帥「まあ良い。ちょうど最近退職した提督がいたんだ。その鎮守府に就いてもらおう」



提督「ん?もう鎮守府は決まっていらっしゃるのですか?」



元帥「うむ、ここが今日から君の着任する鎮守府だ」ピラッ



渡された地図の場所は日本とはかけ離れた場所だった



提督「…ラバウル基地…」



大淀「え!?」



提督「え?」



大淀「あっ…いや…すみません、なんでもないです」



今何故大淀は驚いたんだ?



提督「…(嫌な予感しかしない)」



元帥「とにかく今は最前線が忙しい中だ。少しでも多くの戦力が欲しいので君もすぐに前線で戦えるように頑張って欲しい。車は手配してあるからすぐにいってもらっても構わない」



提督「はい…」



どうやら俺はほんとにとんでもない時期に着任してしまったようだ…



~ラバウル基地~



提督「ここがラバウル基地…」



思っていたものより立派な建物だった。



提督「結構立派な建物じゃないか。気分が高まるな」



大淀「え、えぇ…そうですよね…」



提督「なんでさっきからそんなに元気ないの…やっぱりこの鎮守府…」



大淀「あっいえ…後ほど説明します」



これ後で俺落胆とかしないよな?



ひとまず大淀にこの鎮守府の様々な施設を教えてくれたが、どこもしっかりと完備されていた。



ただし1つ問題があるとすれば…あまり掃除されていない。大きな場所には目立ったものはないが、隅や端っこにはホコリやゴミが散乱している



提督「(一体何故大淀はあそこまで活気がないんだ?確かに空気は悪いし、汚れは目立ってるけど…)」



だけどあの顔は恐らくそんなものではないと感じた。別の理由があるに違いない



だが、特にこれといったものもなく最後の場所へ着いた



大淀「ここが執務室です」



提督「おぉ…」



噂には聞いていたが、実際に目にするとやはり迫力が違うな



大淀「今日からここであなたの仕事が始まります。頑張ってくださいね」



提督「あぁ、ありがとう。大淀はこれからどうするんだ?」



大淀「私はこれから大本営へ戻って執務をしますがその前に…」



提督「ん?」



大淀「これからあなたと共に過ごす艦娘を紹介したいのですが…」



提督「あぁそうだったな」



一体どんな子なんだろうか。できれば真面目な子であってほしい。



大淀「5人いるのですが…」



提督「5人?」



そういえば元々ここに違う提督が着任してたって言ってたっけ…



大淀「どうぞお入りください」



ガチャッ



入ってきたのはどんよりとしたオーラで、まるでたったいま地獄を見てきたかのような顔をしていた5人だった



提督「え、何どうしたのあの顔」



大淀「実は…」



大淀によるとどうやら以前の提督は有名な程のブラックで艦娘達にかなりの負担やストレスがかかっていたらしい。そのためかほとんどの艦娘達はここを離れていき、残ったのはこの5人だけであるという



提督「(だから大淀は驚いていたのか)」



提督「とんでもない過去をもってるんだな…」



大淀「ひ、ひとまず紹介させますね」



提督「あ、あぁ」



白露「白露型一番艦…白露です…いっちばーん…」



時雨「僕は白露型二番艦の時雨…だよ…」



村雨「白露型駆逐艦…3番艦の村雨です…」



夕立「白露型駆逐艦4番艦…夕立ぽ…です」



春雨「白露型5番艦の春雨です…はい…」



提督「…」



提督「…これはひどい…」



大淀「かなりのトラウマを持っていますからね…」



提督「特に提督という存在には多分かなりきついよな…」



大淀「恐らくそうだと思います…」



とんでもない所へ着任した…何とかして事情を聞かなければ



提督「…なあみんな、ちょっとこっちに来てくれないか?」



白露型「…?」ギロッ



提督「(ひえっ…人を殺めるような目をしてる…)」



とりあえず5人をソファーまで呼んだ



提督「ひとまずそこに座ってくれ」



時雨「僕たちは座れないよ…」



提督「え」



時雨「艦娘たちは提督の前では座ることも許されてないんだ…だから座れないよ」



提督「その提督の俺が言ってるんだ。座ってくれ」



村雨「ほ、ほんとにいいのかしら…」



白露「さ、さぁ…?」



提督「いいからみんな座って。話したいことがあるんだ」



夕立「解体ですか…?」



提督「何でここまできて解体の話になるんだ…別の件で話したいだけだよ」



何とか説得してみんなを座らせたが…



とりあえず辛いだろうが、過去のことを聞いてみなければ



提督「口に出すのは辛いかもしれないが教えてくれ。君たちは一体前の提督に何をされた?」



春雨「…話してもいいんですか?」



提督「あぁ、遠慮なくぶちまけてもらっていい」



春雨「…あの方はとても身勝手な人で…」



村雨「ちょ、ちょっと春雨…!」



提督「いいんだ、村雨。春雨、続けてくれ」



春雨「何か自分に不都合な事があればすぐに私達に向かって怒るんです…」



時雨「暴力も振られたよ」



村雨「時雨姉さん…」



時雨「酷いものさ、僕たちが艦娘だからって理由で…」



白露「戦果を挙げられなければ補給も入渠もなし。私、いっちばん嫌いな人だよ」



夕立「すごく怖かった…」



村雨「…そうね、あの人ほんとに失礼しちゃう…」



提督「そうか…」



酷い過去だ。暴力に加えて補給なしに入渠もなしだと?他の艦娘がここを去るのも当然じゃないか



なのにこの子達は残っているなんて…



仕方ない。あまり公にしたくない話だが…



提督「なあ、聞いてくれ」



白露型「?」



提督「今の君たちには確かに提督というのは憎いし、怖い存在だと思う。」



提督「だけど俺も提督である以上課せられた任務は行わければならない」



白露型「…」



提督「気持ちは痛いほど分かる。全ての人間が良いやつってわけじゃない」



提督「俺も一部の人間を憎んでる。おかげで俺は半分人間をやめたからな」



大淀「提督…!?」



村雨「え…?」



春雨「人間をやめたって…」



提督「あぁ…俺は兵器化された…君たち駆逐艦を作るために実験台にされた駆逐艦試作型(プロトタイプ)0番艦だ」



駆逐艦提督と新たな生活



白露「試作型…?」



時雨「僕たちが作られるために…?」



夕立「どういうこと…?」



提督「すぐには理解できないよな。今からしっかり説明しよう」



提督「今から数年前…深海棲艦に制海権を奪われた直後の話だ」



提督「俺と他数人が政府に選ばれ、君たち艦娘を作り上げるための実験体として、数年前に地下の研究所に連れられた」



提督「もちろん俺に選択権はなかった」



白露型「…」



提督「ほぼ一日中実験台の上で何度も同じ苦しみを味わい、まともな食事も出ず、睡眠は仮眠程度、それが3ヶ月間続いた」



春雨「3ヶ月間…!?」



夕立「そんなの死んでしまうっぽ…しまうよ…」



提督「あぁ夕立、君の口癖は聞いている。遠慮なく言っていいぞ」



夕立「ぽ、ぽい〜…」



提督「それでまあ、実際に死にかけたさ。けど生き延びた。それが幸運か不運かは分からないけどな」



提督「実験は成功し、俺は一時的に開放された」



村雨「一時的に…?」



提督「そう、地獄はそこからだった。君達が作り上げられる間にも深海棲艦の猛攻は止まらなかった。だから俺達試作型がすぐに実戦投入されることになった」



提督「先の未来が懸かった最重要任務だ。俺達も全力を出した。2週間続いたが、俺達は敗北した。出来上がったばかりの素人で勝てるはずがなかった」



白露「敗北って…その後は…」



提督「すまない、ここから少し記憶が飛んでてな…ただ、その後の日本がどうなったかは教えようか」



提督「何とか艦娘達が実戦配備されて被害は抑えられたが、それでも多くの人を失った。大切な仲間も…さらに俺達は追放を受けた。色々あってそれは逃れたんだけどな」



白露型「…」



提督「それ以来俺は戦うのをやめて、新たな人生を送るために提督になった。気持ちは分かる。だから一緒に乗り越えよう」



白露「どっちかっていうと提督の方がやばかったような…」チラッ



提督「え?」



時雨「うん…僕たちより苛烈だったよね…」



村雨「確かにそうねぇ…」



夕立「すごく激しかったっぽい…」



春雨「私もそう思います…」



あれ?俺はてっきり同じくらいの辛さだと思って話したつもりなんだが…



提督「…なんかすみません」



村雨「いいえ、大丈夫よ。それよりもありがとう」



提督「え?」



村雨「提督のおかげで少し元気が出たわ。ね?春雨」



春雨「はい。少しだけ気分が楽になりました」



夕立「夕立もっぽい!」



白露「そうだよね。いつまでもどんよりしてちゃダメだよね」



時雨「提督…僕たちは提督と普通に接しても…大丈夫かな?」



提督「もちろんだ。君たちなりの元気を俺に見せてくれ」



時雨「うん、ありがとう」



提督「よし、じゃあこれを記念に何か掛け声でも作ろうか」



春雨「掛け声…ですか?」



提督「あぁ、場を高めるためにな」



白露「それなら最後はやっぱりいっちばーんって言おうよ!」



村雨「ちょっと白露姉さん!?」



提督「おっいいなそれ採用」



村雨「いいのね…」



提督「そうだな…」



~2分後~



提督「よし、それじゃあみんな、これからよりよい鎮守府にするために、俺達の目指す先は〜…」



みんな「いっちばーん!」



全員で上に向かって人差し指を掲げ、声を上げた。うん、すごくしっくりくる



大淀「ふふっ」



大淀「(…やはり私の予想は間違ってなかったみたいですね)」



大淀「(この方ならここの鎮守府を任せても問題なさそうですね)」



大淀「ではもう1つ記念に写真でも撮りましょうか」



提督「写真か、そうだな頼む」



大淀「ではみなさん撮りますよ」



カシャッ



提督「いい写真が撮れたな、ありがとう大淀」



この写真はきっといい思い出になる



大淀「はい、それでは提督、私はこれで失礼します。頑張ってくださいね」



提督「あぁ、今までありがとうな大淀」



大淀「また何かあったらご連絡ください」



話は終わり、村雨が秘書艦として残り、他の艦娘達はそれぞれ自由にさせて、俺は最初の執務をすることにした。



提督「…」カリカリ



村雨「…」ジー



提督「…(めっちゃ見てる)」



提督「村雨…どうかしたのか?」



村雨「え?あっ…提督、字が達筆だな〜って…」



提督「あっ、ありがとう。やはり提督として字は綺麗にせねばと結構練習したからな」



村雨「とっても綺麗だから見惚れちゃいそう…」



提督「おいおい、やめてくれ。恥ずかしくなる…」



村雨「あ、ごめんなさい。そうだ、お茶でも入れてきましょうか?」



提督「いいのか?ぜひ頼む」



村雨「えぇ、任せて」



~数分後~



コンコン



提督「どうぞ」



村雨「提督、お茶入れてきました」



提督「おぉ、助かる。ありがとな」ズズッ



提督「ふぅ〜落ち着くなぁ…」



村雨「書類が結構終わってる…さすがね」



提督「面倒なものはすぐに片付けるタイプだからな」



大体終わったから少し休憩するか…



~夕方~



提督「そろそろ夕飯の支度をした方がいいな」



村雨「そうね、みんなを呼んだ方が良いかしら?」



提督「あぁ、頼む。俺は先に食堂に行っておくからみんなに伝えておいてくれ」



村雨「分かったわ」



提督「さて、気合い入れて作るか」



~食堂~



白露「…これ本当に提督が作ったの?」



提督「まあ余ってた材料使っただけなんだけどな」



村雨「すごいわ…食べるのが勿体なくなっちゃう…」



夕立「夕立早く食べたいっぽーい!」



提督「そうだな。よし、んじゃ頂くとするか」



みんな「いただきまーす!」



パクッ



白露型「…」



料理を口にした瞬間5人が氷のように固まった…



提督「お、おいどうした?もしかして口に合わな…」



ポロポロ


うおっ!?5人が一斉に泣き出した!



提督「おいおい、なんでそんなに泣いてるんだよ…」



白露「だって…こんなに美味しい料理食べたの初めてで…」



村雨「初めてだけど、とても懐かしい味…」



初めてまともなものを食った人みたいな感想だな…でもこの子たちは本当に辛い生活を強いられていたようだ



提督「そんなに泣くなよ、こういう料理ならいつでも作ってやる」



白露「ほんとに!?やったー!」



村雨「村雨もこの料理だーいすき!」



夕立「夕立もずっと食べたいっぽーい!」



提督「あぁ、任せておけ」



~風呂場~



提督「ふぅ〜…」



今日の疲れが一気に吹き飛ぶくらいに気持ちよかった。やはり風呂が1番落ち着く



基本的に風呂は入渠ドックとしても使うが、普段は先に艦娘達が入り、後に提督が入るというルールがある



提督「ふう〜さっぱりした…さて、後はどこで寝るかだな…」



夕立「あっ、提督さん!もうお風呂は大丈夫っぽい?」



提督「あぁ、夕立か。さっぱりしたよ」



夕立「それじゃあ、夕立についてきて欲しいっぽい!」



提督「ん?何でだ?」



夕立「いいからいいから!」



特に理由もなく腕を引っ張られた



~白露型の部屋~



提督「…なんで君達の部屋なんだ?」



夕立「えへへ、提督さんは今日からここでお泊まりっぽい!」



提督「へぇ〜…ん?」



提督「夕立今なんて?」



夕立「今日からここでお泊まりっぽい」



提督「この部屋で?」



夕立「ぽい」



提督「俺が?」



夕立「ぽい」



提督「…」



おいおい…異性の部屋だぞ?それは色々まずいのでは…それに今日からって…



提督「夕立…さすがに俺は…」



夕立「大丈夫っぽい!みんなもいいって言ってたっぽい!」



提督「なんでみんな承諾してんの…」



夕立「いいから入るっぽい!」グイッ



提督「え、ちょっと!あ、失礼しまーす!」



夕立に腕を引っ張られ、部屋に強引に入れられた



白露「あ、提督!来たんだね」



提督「…夕立から俺のお泊まりを全員が許可したのは本当なのか?」



白露「うん、そうだよ」



提督「…ほんとにここで寝ていいのか?」



村雨「もちろん、今日一日で色々お世話になったしね」



提督「でもここは君たちも寝るんだろ?そこに男が混じるのはまずくないか?」



時雨「僕達は大丈夫だよ」



春雨「信頼しているんですよ」



提督「…」



信頼か…その言葉を聞いただけで安心する

…この子達には提督という存在に深い傷があるはずなのに…



提督「じゃあ、せめて俺はあっちの壁に寄って寝ておくよ」



夕立「ベッドじゃなくて大丈夫っぽい?」



提督「ベッド以外で寝ることには慣れてるからな」



夕立「提督さん鍛えられてるっぽい!」



提督「ははっどうも。あ、明日の予定言っとくな」



提督「明日は朝9時から昼までこの鎮守府を大掃除をしようと思う。その後15時から演習をするから各自しっかりと寝て明日の準備をしておくように」



白露「大掃除かー。ぴかぴかにしないとね!」



時雨「白露、張り切ってるね」



白露「もっちろん!一番を目指すよ!」



提督「ははっ、みんなも白露に負けないように頑張ろうな」



村雨「はいはーい、任せておいて♪」



春雨「掃除は少しだけ得意なんです、はい!」



提督「期待してるよ。それじゃ、みんなおやすみ」



真夜中…



提督「…うわぁ!…あ…」



こんな夜中に目が覚めてしまった。また同じ夢を見たからか…汗がびっしょりだ



提督「(風呂入ったのに…)」



もう一度風呂場でザッと体を洗った後部屋に戻り、ベランダに出た



このベランダからは海がよく見える



提督「ふぅ…」



そよ風が気持ちいい。さっき見た夢から癒されるような風だ



提督「静かな夜はやはり和むな」



時雨「…?」ムクリ



時雨「提督?そんな所でどうしたの?」



提督「時雨か。ちょっと海を見てたところだ」



時雨「僕も少し隣いいかな」



提督「構わないよ」



時雨「ありがとう」



そう言って時雨は俺の隣に立った。風が時雨の髪にあたり、その横顔は普通の女の子と変わらない可愛さだった



提督「(艦娘と言えども、やはり人間とは変わらないものだな)」



時雨「提督?僕の顔に何かついてる?」



提督「あっ…ごめん、つい…」



時雨「提督…僕たちに隠し事とか…してないよね?」



提督「ん?どうしたんだ?」



時雨「ごめん、提督に限って嘘はなさそうだけどやっぱり僕はまだ人が信用できないんだ」



提督「…」



時雨「春雨は信頼していると言っていたけど、僕は違うんだ。やっぱり同じ提督としてどうしても疑い深くなってしまうんだ」



時雨の言う通り、あれだけの過去があれば人を疑うのは当然だ



提督「…時雨」



時雨「何?」



提督「今日君達に話した事は事実だ。それにこれからも嘘つくなんて事は絶対にしない」



時雨「でも…」



提督「…明後日に出撃の予定がある。その時に君たちが本当に大切だという証拠を示す。だからそれまで待っていてくれ」



時雨「明後日…分かった。覚えておくよ」



提督「あぁ」



時雨「それじゃ、僕は先に寝るよ。おやすみ提督」



提督「おう、おやすみ」



時雨が部屋に戻り、自分は少しこの静かに波を立てる海を見ていたが、ふと母親を思い出した



提督「…母さん…」



もう何年も会っていない。心配してるかな…



提督「…この海の制海権を取り戻したらまた会えるかな…」



提督「(いつか必ず生きて戻るから、ずっと元気でいて欲しいな)」



無限に広がる海原に向かって心の中で囁いた



駆逐艦提督と朝の準備



~提督の夢の中~



ドーン ドーン



提督「ハア…ハア…」ザザー



?「こっちに来るんだ!早く!」



提督「くそっ…!間に合え…!」ハアハア



?「おい!危ねぇ!避けろぉ!」



提督「…!しまっ…」ドカーン



?「しっかりしろ!■■〜〜〜〜〜〜〜〜!!」



~早朝~



提督「…!」ガバッ



結局同じ夢を見てしまった。あまり眠れなかったし今日はちょっと不調だな…



提督「(…誰か起きてないかな)」



白露型「…」スヤ…



まあ寝てるよね。今5時だし。本当だったら8時くらいに起きるのがちょうど良かったのに。やはりあの夢には耐えられない



提督「(あの時の記憶を夢で苦しませるとは…)」



提督「…とりあえず顔洗うか」



洗面台に向かおうとしたものの、やはりまだ寝たい気持ちも出てくる



提督「(どうしよう…寝たいけどまたあの夢を見てしまったら…)」



そのままその場で動くこともなく、しばらく悩んでいたら6時になっていた。そして気づいたら誰かが起きていた



提督「(誰だ…?)」



起きていたのは春雨だった。こんな時間に起きるとはどうしたんだろうか



声をかけようとしたが春雨はこちらを見て何か伺っているようだ



すると春雨はせっせと着替え出した



提督「(あっ、あかん。これは見てはいけないやつだ)」



すぐに寝たフリをした



着替え終わると春雨はこちらに寄ってきた。まさかバレた…?



春雨「司令官、起きていますか?」



いやもうダメでしょこれ。せめてもの紛らわしをするしかない。ここは起きたフリしとこう



提督「うーん…」



春雨「あ、起こしてしまいましたか?すみません」



どうやら気づいてないみたいだ…あ、危ねぇ…



提督「…いや、大丈夫だよ。おはよう春雨」



春雨「あ、おはようございます」



小さな笑顔にドキッとした。…いかん、しっかりしなければ…



提督「…こんな時間に起きるとは立派だな」



春雨「早く起きることには慣れているので」



提督「良いことだ。無理せず続けてくれ」



春雨「…!はい!」



提督「でも早く起きすぎたな。どうしようか?」



春雨「私は今から食堂でみなさんの朝食の準備をしてきます」



提督「そうなのか?なら俺も手伝うよ」



春雨「え?いいんですか?」



提督「もちろんだ。いいだろ?」



春雨「は、はい!」



春雨との共同作業か。しっかりやらないとな



~食堂~



春雨「司令官は料理は得意なんですか?」



提督「得意というより、生きていくためにつけたかな。家を離れてからずっと母のいない生活だったから自分の独学で作ってたんだ」



春雨「あ、そうだったんですね…」



提督「…」チラッ



春雨の指には傷跡が数箇所残っていた。ずっと食事を作らされていたのだろうか…



提督「大丈夫、もう気にしてないことだから」



春雨「は、はい…」



これでは暗い雰囲気になってしまう…話を逸らすか



提督「それより、春雨の料理もすごくうまそうじゃないか」



春雨「これですか?春雨特製味噌汁ですよ」



提督「春雨特製味噌汁…春雨スープ?」



春雨「そっちの春雨じゃないです!」



提督「ひえ!すみません!」



春雨「もう…」



ぷいっとそっぽを向いてほっぺをぷくっとさせていた



提督「(なんだこの可愛い生き物は)」



春雨「す、少し味見してみますか…?」



提督「え、いいのか?」



春雨「司令官には特別です…」



提督「ではお言葉に甘えて…」



他の人の手作り料理は母の料理以来だ。もう何年も他人の料理は口にしたことは無かったが…



提督「…!」



提督「お、美味しい…」



とても美味しい。母親の味噌汁を思い出した



提督「めちゃくちゃ美味いぞ春雨。早く食べたいもんだ」



春雨「本当ですか?ふふっ結構力を入れたんですよ♪」



提督「完成が楽しみだ」



~10分後~



提督「ふう、これで一通り準備は終わったな」



春雨「そうですね。では私は姉さん達を起こしてきますね」



提督「あぁ、分かった」



7時か、少し早いが掃除もなるべく早く終わらせておきたいし、大丈夫だよな



白露「提督、おはよう〜…」



時雨「おはよう提督」



提督「みんなおはよう」



村雨「あら、とってもいい香りがするわね」



夕立「夕立、もうお腹ぺこぺこっぽーい」



提督「もうできてるよ。早速頂こうか」



朝食の時間は少しでも過去のことを忘れられるように色々と雑談を挟んだ。彼女たちからは笑顔が溢れ、食事に関しては、おいしーい!と何度も言っていた



提督「春雨の味噌汁も最高だな」ズズッ



春雨「ありがとうございます♪」



村雨「あらあら、春雨ったら気合い入れちゃった?うふふ」



春雨「む、村雨姉さん!」



提督「いいじゃないか、毎日春雨に頼みたいもんだ」



春雨「司令官が美味しいって言うなら…」ボソッ



提督「何か言ったか?」



春雨「いえ!何でもないです!」



提督「そうか?」



村雨「やっぱり気合い入れたのね!」



春雨「もう!村雨姉さん!」



提督「(微笑ましい光景だ…)」



一通り食べ終わったし、少し早いが大掃除に移ることにした



提督「予定より早いけど、大掃除を始めようか」



村雨「準備万端よ♪」



時雨「僕もいつでも大丈夫だよ」



夕立「お腹いっぱいでやる気いっぱいっぽい!」



提督「鎮守府は意外と広い上に俺たちしかいないからな。2人でチームを組んで掃除してもらう」



提督「まず1階と風呂場は時雨・夕立チームでやってもらう」



夕立「時雨一緒に頑張ろー!」



時雨「うん、よろしくね夕立」



提督「次に2階と食堂。村雨と春雨チームだ。」



村雨「春雨、時雨たちに負けないように頑張りましょ」



春雨「はい!」



提督「そして3階と工廠は俺と白露チームで行う」



白露「提督も一緒にやるの?」



提督「君達5人なのに誰と一緒にする気だったんだ…」



白露「よーし、じゃあいっちばんに終わらせるよ!」



提督「早さを競うのもいいがしっかりと掃除するんだぞ。以上、何か質問は?」



春雨「問題ありません」



時雨「大丈夫だよ」


提督「よし、それじゃ大掃除開始だ!」



白露型「おー!」



駆逐艦提督と鎮守府大掃除計画



~鎮守府3階~



さて、俺と白露は3階を掃除に来たわけだが…



白露「いっちばーん!」ドタドタドタ



さすが白露。一番という言葉に過剰なだけあってものすごい速さで雑巾がけしている



提督「白露〜早く終わらせるのもいいが、そんなに早いと転ぶぞ〜」



白露「分かってるって!あっ」ツルッドーン



あぁ言わんこっちゃない…言った側から転ぶとは…



提督「分かってないじゃん…おい大丈夫か?」



白露「痛〜い…顔面強打だよ…」



提督「だから転ぶぞと警告したのに…」



白露「うぅ…気をつけるよ」



提督「まあ大事に至らなくて良かった。それに君のおかげで床はあっという間に終わったよ」



白露「みんなより一番に終わったかな?」



提督「多分な」



白露「やったー!このままのペースでどんどんいくよ!」ドタドタドタ



提督「だから走るなっての!」



ズベッドーン



\イターイ!!/



提督「…」



こんな調子でどこも波乱万丈だった…特に工廠は…



~工廠~



白露「いっちばーん!」ダダダ



提督「ちょっ!そっちは燃料庫だって!」ダッ



白露「大丈夫だって!足元気をつければ…あ」ツルッ



提督「フンヌ!」ガシッ



白露「あ、危なかった〜…」



提督「白露…フラグ立つのが早すぎだ…」



白露「ごめんね!気をつけるよ!」ダダダ



提督「絶対フラグの意味分かってないだろ!」



提督「…って!待て白露!そっちは弾薬庫だ!」ダッ



提督「うおおぉ間に合えぇぇぇ」



ドガーン



\ギャアアアアア/



~風呂場~



ガラッ



提督「おっす、ちょっといいか…?」



夕立「あっ提督さん!ご用事は…ってどうしたのその格好!?」



提督「君達の姉を入渠させに来たんだが」ボロッ



白露「…」ボロッ



時雨「なんで中破してるんだい…」



提督「激しく走り回ってあちこちでぶつかってな。おかげで俺も中破だ」



白露「でもでも!私達は一番に終わったんだから!」



時雨「はいはい。提督、白露のことは後は任せてよ」



提督「あぁ頼む」



夕立「提督さんは大丈夫っぽい?」



提督「問題ない。汚れることは覚悟してたから、あとでゆっくり洗うとするよ」



提督「ひとまず、俺は村雨達の手伝いに行くよ」



時雨「分かったよ。気をつけてね」



夕立「提督さんまたねー」フリフリ



提督「おう、また後でな」



~食堂~



提督「村雨〜順調か?手伝いに来たぞ」



村雨「あっ提督…って何その汚れ!」



提督「想定外の事が起きた」



春雨「あっ、司令か…わ!どうしたんですかそれ!?」



提督「工廠でちょっとトラブってな…白露は入渠してるし…まあ問題は無いさ」



春雨「白露姉さん…」



村雨「せめて服だけでも着替えたら?食堂でその服は汚いわよ…」



提督「そうするか」



数分後…



提督「戻ったぞ」



村雨「あら?提督その服…」



提督「あぁ、トレーニングウェアみたいなものだな。今はこれしかなくて…」



村雨「トレーニングウェアというより戦闘服に近い感じね」



提督「あ〜…まあこれなら動きやすいし、掃除もしやすいからいいじゃないか」



村雨「そうね早く終わらせましょ」



提督「そうだな」



さらに数分後…



春雨「む〜…」フキフキ



提督「春雨、どうかしたか?」



春雨「あっ司令官、ここの汚れが中々取れなくて…」



提督「あ〜こりゃかなり染み付いてるな。あまり無理しなくていいぞ」



春雨「でもやっぱり気になっちゃうんですよね…」



提督「そういえば春雨は掃除が得意って言っていたな」



村雨「そうよ。春雨は誰よりもお利口さんなんだから」



春雨「ちょ、ちょっと村雨姉さん!」



村雨「気づいたら私達の周りを奉仕してくれてるぐらいだし」



提督「それはそれは」



春雨「うぅ…恥ずかしい…//」



提督「凄いことじゃないか春雨。むしろ誇ってもいいんじゃないか?」



村雨「春雨はあまりそういう性格じゃないのよね。むしろ内気というか…」



提督「そうなのか…」



春雨「村雨姉さん語りすぎです…」



村雨「あらあら、ごめんなさい。立派な妹を自慢しちゃいたくて…」



提督「いい姉さんだな」



村雨「うふふ♪」



春雨「もう…//」



この後は特に大きな問題もなく、無事に大掃除は終了した



~執務室~



提督「みんなお疲れさん。おかげで鎮守府は過ごしやすい場所になったよ」



白露「いっちばん綺麗にしたからね!」



時雨「逆に酷いことになった所もあるけどね…」



白露「いいじゃん、きちんと綺麗にしたんだから」



村雨「そうね、いい感じいい感じ♪」



夕立「ん〜気持ちいいっぽい〜」



春雨「とても新鮮な感じです。はい」



提督「みんなのおかげで早く終わったし、昼食を済ませたらゆっくり休憩をとっててくれ」



白露「そういえば、午後から演習があるんだよね」



提督「そうだ。まあきついものではない。軽い訓練だからな」



時雨「具体的にどういうことをするんだい?」



提督「そうだな、俺が君たちの連携力を測りたいのもあって艦隊行動、射撃訓練を主体に行う感じだ」



村雨「的とかはどうするの?」



提督「こちらで用意する。この後俺はそのための準備をしてくる」



春雨「手伝いましょうか?」



提督「いや、大丈夫だよ。簡単に終わるような作業だから」



白露「オッケー、分かったよ」



夕立「わくわくするっぽい!」



提督「他に聞くことはないか?…よし、では一旦解散」



駆逐艦提督と初めての演習



演習の準備を行うために俺は工廠へ赴いた



~工廠~



提督「ふぅ…」



倉庫の中に置かれていた訓練用の道具を見つけ、俺はとある人物を待っていた



提督「そろそろ来る時間帯だな」



大淀「提督、失礼します」ガチャッ



提督「おっきたか」



大淀「はい、ちゃんと連れてきましたよ」



明石「こんにちはー明石です。あなたがラバウルの新しい提督ですね。これからよろしくお願いします」



彼女は明石。工作艦で艦娘のちょっとした修理、装備の改修や修理を行ってくれる優秀な人材の1人だ



提督「よろしくな。早速で悪いんだけど、少し頼み事があるんだが、いいかな?」



明石「いいですよ。修理ですか?」



提督「あぁ、白露型の装備なんだが修理してもらいたいんだ」



明石「ふむふむ…なるほど、お任せ下さい!」



提督「ありがとう。大淀もわざわざありがとな」



大淀「いえいえ。じゃ、明石、提督に迷惑を掛けないようにね」



明石「大丈夫よ!安心して!」



大淀「相変わらずね。では提督、失礼します」



提督「あぁ、またな」



提督「それじゃあ早速頼むよ」



明石「お任せ下さい!」



30分後…



提督「明石〜どんな感じだ?」



明石「あっ提督、無事に終わりましたよ」



提督「さすがだな。じゃあ早速使わせてもらうよ」



明石「これから用事でも?」



提督「演習の準備だ。この演習の間に開発を頼んでくれるか?」



明石「いいですよ。どのレシピにします?」



提督「魚雷と電探を頼む」



明石「分かりました!」



~鎮守府付近の海~



提督「…よし」



演習の準備が整った。白露型を呼ぼうと思ったが、既に艤装を装備して待機していた



提督「準備がいいな。手っ取り早くて助かるよ」



村雨「早めの行動には慣れてるのよね」



白露「1番早かったのは私だったね!」



夕立「みんな同じぐらいだったっぽい」



時雨「提督、こっちはいつでも大丈夫だよ」



提督「よし、ならすぐにでも始めようか」



提督「最初は艦隊行動だ。出撃の基本といえども艦隊での動き方によって一気に勝敗が決まることもある。障害物をうまく避けながら動いてくれ」



結構複雑に障害物を置いたが彼女たちはどう動くか…



提督「こっちでは無線で白露に次の指示を出すから、白露頼んだぞ」



白露「オッケー!よーし、1番に行くよ!みんなついてきて!」



時雨「うん、ついていくよ」



村雨「はいはーい!」



夕立「ぽーい!」



春雨「はい、頑張ります!」



白露「よーし、行っくよー!」



提督「白露、聞こえてるか?」



白露「うん大丈夫、聞こえてるよ」



提督「この無線でルートの指示を送る。君だけしか聞こえないからしっかり彼女達を引っ張ってくれ」



白露「任せといて!」ザザー



…さすが姉妹艦だ。障害物を避けつつしっかりとあとをついている。まるで以心伝心だ。初めて白露の姉らしさを見れた気がする



提督「次はその先の的で砲撃演習だ。なるべく1発で的に当ててくれ」



白露「了解、みんな、前方の的に砲撃だよ!」



白露「よーい、ってー!」



ドーンッ



提督「全員命中か…流石だな。以前がブラックといえどもかなり鍛えられているんだな」



提督「白露、その先は障害物と的が複数ある。障害物をうまく回避しながら的を撃ってくれ」



白露「オッケー任せといて!みんな、艦隊行動をとりながら砲撃だよ!私の指示に合わせてね!」



ドーンッ



提督「…」カリカリ



素晴らしい成果だ。艦隊行動も砲撃演習もS評価だ。白露の動きにブレない行動。外すことなく的に当てた砲撃。文句なしだ。しっかり記録しとかねば



提督「白露、そこまでだ。砲撃を終了してこっちに戻ってくれ」



白露「了解!」



提督「みんなお疲れさん。完璧な演習だった。俺の予想を遥かに超えた結果だった」



村雨「うふふ、いい感じ♪」



春雨「少し嬉しいです。はい♪」



演習を見る限り、明日の実践は問題なさそうだが、彼女たちは過去に苦しい思いをしながら戦っていた。経験は豊富だがその代償も大きい



白露「提督、どうかしたの?」



夕立「顔が少し歪んでるっぽい」



提督「…ん?あぁすまない、明日の出撃について考えていてな」



時雨「そうか、明日は提督にとって初めてに出撃なるんだよね」



提督「そうだな。少し不安だが君達ならきっと大丈夫だろう」



提督「よし、今日は解散だ。各自明日に備えてゆっくり休息を取っておくように」



~執務室~



提督「ふぅ〜…ちょっと疲れたな…」



自分が演習した訳じゃないのになんでこんなに疲れてるんだろ…



提督「18時前か………ん?」



18時…何かあったような…



提督「あ!しまった!」



忘れていた…確か食堂に…



提督「やべぇ!笹食ってる場合じゃねぇ!」



早きこと風の如く、廊下を駆け抜け、あっという間に食堂に着いた。人を待たせていたのだ



提督「ま…間宮さん…いますか…」ゼェーゼェー



間宮「あっ提督…どうやら御察しして来たご様子ですね…」



提督「申し訳ない…初めて会っていきなり遅刻とは…」



給糧艦間宮。甘味処間宮として有名だが、今日から空いてる時間にここで食事を作ってもらうことにした



間宮「大丈夫ですよ。まさか全力疾走で来てくれるなんてビックリしました」



提督「ははっ…人を待たせるなんて最低ですから…」



間宮「そんなことないですよ!むしろ安心してます。少なくとも前の提督のような人ではないというのは分かったので」



提督「…やはり間宮さんも以前の提督と面識があるんですね」



間宮「はい…とても良い人ではありませんでしたから…」



提督「以前の提督がどこまで酷いかは分かりませんが、必ず艦娘達は命にかえても守ると約束します」



間宮「提督…私も信じてます」



提督「そんじゃあ、暗い話はここまでにして、夕食作りましょうか」



間宮「はい!」



間宮さんと共同で夕食を作ったが、間宮さんの料理が眩しく見える…



提督「(しゅ、しゅごい…語彙力がなくなりそう…)」



もちろん、白露型からも最高との評価だった。俺は毎日この食事を食べたいと思ったのでレシピをついでに教えてもらった



~工廠~



提督「明石〜いるか?」



明石「あっ提督、装備の開発ですか?」



提督「あぁ、状況を見に来た」



明石「無事に完成しましたよ。魚雷と水上電探です」



提督「いいねぇ、明日の出撃に役に立ちそうだ」



明石「建造の方は行わないんですか?現状の艦娘数だと建造をお勧めしますが…」



提督「あーそれなんだがな」



鎮守府では艦娘の保有数は限られている。今この鎮守府では5人しかいないが、過去にここから離れていった艦娘達が登録されたままなので、ルール上建造ができないのだ



提督「…まーそんなわけで、建造は申し訳ないが遠慮しとくよ」



明石「分かりました。提督も大変ですね…」



提督「全くほんとだよ…以前の提督のせいなんだけどな…無責任だよほんとに」



提督「だからといってもう今別の鎮守府に移るなんて気はサラッサラないけどな」



明石「提督、優しいんですね…みんな提督のような方であればいいのに」



提督「難しい話だな、人間優しい人は多くないんだ」



明石と駄弁っている内にすっかり一日が終わった。明日は出撃…時間と共に期待と不安が込み上げていた



駆逐艦提督と初めての出撃



~白露型の部屋~



提督「………」スピー



目覚まし時計「朝やで」カチッ



提督「…朝か」カチッ



提督の朝は早い。誰よりも早い。多分



提督「うっ頭が…」ズキズキ



昨日は明石と駄弁ってたら日付けが変わってて、すぐに寝ようとしたが、緊張と夢の件で眠れなかった。それが繋がって起きたら頭痛だ…



提督「最悪だな…とりあえず顔洗お…」



頭を殴られたような痛みを抑えながら何とか顔を洗い、執務室に向かった



提督「今日は…出撃か…」



コンディションは最悪だが、提督としての務めは最低限務めなければ



提督「(くそ…このままでは時雨との約束が果たせなくなる…)」



提督「とりあえず彼女達が起きるまで執務しとくか…」



~1時間後~



コンコン



提督「入って、どうぞ」カリカリ



白露「提督、おはよ〜!」



提督「白露、今日は1番か?」



白露「うん!1番に起きたよ!」



提督「いい心がけだな」



白露「提督、今日は出撃なんだよね?」



提督「そうだが?」



白露「時雨との約束が分かるんだよね?」



提督「聞いてたのか」



白露「なんかすぐに相談しにきたよ。大事な約束なんだよね?」



提督「まあ…そうだな」



白露「そっかぁ〜」



頭痛いけど確かに約束は果たさないとな…



30分後…



提督「よし、全員起きたな。1名はまだ夢を楽しんでいるようだが…」



夕立「ぽい〜…」スヤッ



春雨「夕立姉さん…!起きてください今執務室ですよ!」



提督「どうやって、執務室まで連れてきたんだ…」



春雨「1回起きたんですけど、そのまま立ったまま寝ちゃって…」



提督「えぇ…器用だな…」



夕立「春雨…夕立は麻婆春雨より春雨スープがいいっぽい〜…」



春雨「何言ってるんですか!」



提督「夕立、気持ちはわかるが…」



村雨「提督何言ってるの…」



提督「すまん、本音出た」



春雨「司令官〜…何とかしてくださ〜い…」



提督「あぁ分かったよ…夕立、今日の夕飯はハンバーグだぞ」



夕立「っぽい!?」バッ



提督「うお!あぶね!」ビュン



白露「あ、起きた」



提督「ゆ、夕立、おはよう…目は覚めたか…?」



夕立「あっ、提督さんおはよう!なんで海老反りになってるっぽい?」



提督「咄嗟の反射神経」



夕立「マト〇ックスみたいっぽい」



提督「弾避けれるかも」



時雨「提督…」



提督「おっと、冗談はここまでにして…今日は出撃だ。これが作戦海域だ」



執務机いっぱいに海図を広げた



提督「今回の作戦は鎮守府近海にいる駆逐イ級とロ級、そしてホ級の撃滅だ。数は多くないが、油断すれば痛い敵だ。昨日の演習をしっかり活かすように」



村雨「ホ級…軽巡がいるのね」



提督「大丈夫、君たちなら必ず勝てるさ」



提督「30分後に出撃出来るように準備しててくれ。みんなの幸運を祈る。以上、解散」



時雨「提督…」クイクイ



提督「ん?どうした時雨」



時雨「あの時の約束、出撃中に分かるんだよね?」



提督「そうだな。きっと分かる。だからそれまで集中して戦ってくれ」



時雨「うん、分かったよ」



30分後…



提督「こちら提督。みんな準備はいいか?」



白露「うん、バッチリだよ!」



提督「装備は問題ないな?」



時雨「大丈夫だよ」



提督「よし、第一艦隊の出撃を許可する」



白露「白露型1番艦、白露出ます!」



時雨「駆逐艦時雨、出撃するね」



村雨「村雨、いっきまーす!」



夕立「駆逐艦夕立、出撃よ!」



春雨「はい、白露型5番艦春雨、出撃です!」



提督「…ついに出撃か…不安だが、俺も覚悟を決めないとな」



~鎮守府近海~



白露「…!1番先に敵艦発見!前方!」



村雨「イ級2隻にロ級1隻、ホ級1隻ね…」



夕立「一気に片付けるっぽい?」



春雨「司令官、どうします?」



提督「奇襲をかけよう、まだそちらに気づいてないはずだ。まずはイ級2隻からだ」



白露「了解!みんな私についてきて!」



白露「よしここ!よーい、ってー!」



ドーン



イ級「イー!!」ドガーン



白露「よし!イ級1隻撃沈確認!次行くよー!」



ドーン



イ級「イー!イー!」ドカーン



ロ級「ギー!」



ドーン



白露「撃ってきた!避けるよー!」



提督「今のところは順調だ。そのままロ級を倒してホ級を狙うぞ」



…何となくだが嫌な予感がしてきた。今まで俺の嫌な予感は大体当たっていた…もし本当に予感が当たるなら…



提督「出るなら今だよな…」スクッ



ドーン



白露「あとはロ級とホ級だけ…」



時雨「僕が決めてくるよ」ザザー



白露「あ!ちょっと時雨!?」



時雨「(提督とした約束、結局あまり分からなかった…確かに僕達に損傷のないような立ち回りをさせていたけど、これじゃ本当に大切だという気持ちが伝わってこない。やっぱり人間は…)」



白露「時雨危ない!」



時雨「え…?」



ホ級「…」ガシャッ



時雨「(いつの間にかホ級が目の前に…)」



村雨「時雨姉さん!」



ロ級「ギー!」



ドーン



村雨「くっ…しまったロ級が…」



夕立「時雨ー!」



時雨「(嘘…こんな所で…)」グッ



ドカーン



時雨「………」



時雨「……?」パチリ



白露「あ、あれ…?」



村雨「ホ級がやられてる…」



夕立「誰がやったぽい…?」



春雨「…司令官…」



時雨「え?」クルッ



提督「…」



少し先で提督が立っていた…僕達と同じ武装だ



装備は駆逐艦と同じく右手に連装砲、左手には高角砲、両足には魚雷、そして腰には護身用の刀を装備していた。でも、背中の艤装はついていなかった



提督「…間に合ってよかった…危なかったな時雨」



時雨「提督…もう戦わないはずじゃ…」



提督「確かに戦わないと決めていた…けど君達の姿を見て考えが変わった。同じ辛い過去を背負っていても艦娘は戦わなければいけない。なのに俺だけ安全な場所にいるのは不平等だ」



提督「だからあの時約束をした。守られるだけじゃなく守る側にもならないとな」



時雨「…」



時雨「(全然違った。前の提督とは真逆だった。この人は本当に僕達を守ろうとしている)」



時雨「提督、僕間違ってたよ」



提督「それが当たり前だ。提督という同じ存在が来てすぐに信用することなんて出来ない」



時雨「でも、提督は違う。僕達を本当に大切にしてくれるんだね…」



提督「当然だ。それが提督としての務めだからな」



時雨「ありがとう…提督…」ポロッ



提督「おいおい、泣くなよ…あ!白露達は平気か?」



白露「うん!こっちも倒したよ!」



村雨「提督、その姿は…」



提督「これが俺の兵装だ。背中の艤装はないが、しっかりと動ける。駆逐艦をベースに作られた兵装だから素早く動けるんだ」



提督「これからは俺も戦いに加わる。俺がいる限り君達を必ず守ってみせる」



村雨「あら、それはお互い様じゃない?」



提督「え?」



春雨「私達も司令官を守る使命があります」



夕立「提督さんのために、夕立頑張るっぽい!」



提督「…そうだな、一緒に乗り越えよう」



ピピー



提督「ん?」



白露「提督、どうしたの?」



提督「あの方向に敵反応、ロ級複数だな」



春雨「戦闘を続行しますか?」



提督「あぁ、残らず始末するぞ」



提督「ここからは俺が指示を出す。臨機応変にいくぞ」



白露型「了解!」



~~



提督「よし、まだ敵は気づいていない。俺が突っ込むからみんなは援護を頼む」



白露「え、突っ込むの?」



夕立「夕立も行きたいっぽ〜い!」



提督「じゃあ、夕立も一緒に来てくれ。お互いに援護し合うぞ」



夕立「分かったっぽい!」



提督「いくぞ!」



ロ級「ギ?」



提督「遅い!」ドーン



ロ級「ギー!」ドカーン



提督「残り4体だ」



夕立「さあ、素敵なパーティーしましょ!」ドーン



ロ級「ギギャー!」ドガーン



提督「残り3体」



ロ級「ギー!」ガチャッ



村雨「やらせない!」ドーン



ロ級「ギギッ!」ドカーン



提督「2体、ここだ、魚雷発射!」バシュッ



ロ級「ギー!ギー!」ドカーン



提督「あと1体、一気に決める」シャキン



夕立「提督さん、刀でやるっぽい?」



提督「あぁ、夕立は足止めを頼む」



夕立「お任せっぽい!」ドーン



ロ級「ギッギッ…」



提督「これで終わりだ」



~~



提督「これで全て片付いたな」



夕立「提督さんすごくかっこよかったぽーい!」



村雨「すごい…あんな動きが出来ちゃうなんて」



春雨「動きに見とれちゃいました…」



提督「体が鈍ってなくて良かったよ」



白露「提督、もう過去の事は大丈夫なの?」



提督「もう吹っ切れたよ。これからは俺も共に戦う。もう誰も失わない、絶対に守り抜く」



時雨「提督…」



提督「いいよな?時雨」



時雨「うん…もちろんだよ」



提督「よし、じゃあ帰ろうか。今日の夕飯はハンバーグだからな」



夕立「ハンバーグっぽ〜い!」



駆逐艦提督と白露型の仲間探し



俺がラバウル基地に着任してから3ヶ月、白露型5人と共に何度か出撃して順調に進んでいるが、最近は敵の勢力がどんどん大きくなっている。今の戦力でこの先戦い続けるのははっきり言って無謀と言っていいだろう



~執務室~



提督「そろそろ新しい仲間が欲しいよな〜…」



時雨「急にどうしたんだい?」



提督「最近の深海棲艦強いやつが出てきていると思わないか?」



時雨「確かに最近はリ級やル級とか出てきてるよね」



提督「何とか凌いでいるが、こっちも無限に戦える訳じゃないからな。そろそろ戦力を増強したいもんだ」



時雨「でもたしか今は規定でこれ以上の建造はできないんだよね?」



提督「そうなんだよなぁ…」ウーン…



提督「そうだ!ここを出た艦娘達を探しに行こう」



時雨「えぇ!?」



提督「てかそれしかないしな。時間はかかるかもしれないが、きっと見つかるはずだ」



時雨「先に聞くけど手がかりはあるのかい?」



提督「ないです(即答)」



時雨「まあそうだよね。あ、でも特型駆逐艦の子がまだこの辺りにいるっていうのは聞いたよ」



提督「おっ、本当か?周辺なら探しやすいな」



時雨「でも闇雲に探すより人から聞いた方が早いんじゃないかな」



提督「だな。でも特型駆逐艦ってたくさんいるだろ?さすがに全員ってことはないだろ」



時雨「うん、少人数らしいよ。誰かも分からないんだ」



提督「ひとまずここらの人から聞き込むしかないな。今日は特に用事もないし、支度して行こう」



時雨「分かった。みんなを呼んでくるね」



提督「あぁ頼む」



特型駆逐艦か。特Ⅰ型とか特Ⅱ型とか様々だけど誰でもいい。1人でも多く見つけたい



コンコン



白露「提督ー艦娘探しに出るんだってー?」



提督「おっ、みんな来たか。そうだ、時雨から聞いたと思うが戦力を増やすために艦娘を探そうと思うんだ。とりあえず近くの街で聞き込みをするからそこまで行こう」



村雨「お出かけかしら?」



提督「そうだな、仲間探しのついでに買い物もするか」



夕立「お出かけ楽しみっぽ〜い!」



提督「んじゃあそろそろ行くぞ」



駆逐艦提督と白露型と仲間探し



町への聞き込みを行ったところ、どうやら町外れの小屋に艦娘らしい姿を見かけたの情報を得た



提督「確かこの先を行ったところに小屋があったはずだ」



白露「提督ってここに来たの初めてだよね?」



提督「そうだが?」



白露「なんでそんなに場所が分かるの?」



提督「あぁ、鎮守府に来る前にここら辺を一通り回ったからな。意外と記憶力には自信があるんだ」



白露「へぇ〜すごいね」



夕立「1週間前に食べたご飯覚えてるっぽい?」



提督「ハンバーグだ!」



夕立「シチューっぽい…」



提督「あれ」



白露「夕立ご飯のことになると記憶力は誰よりもいいんだよね」



提督「ばんなそかな…」



春雨「あ!見えましたよ。あの小屋ですか?」



提督「お、そうだあの小屋だ」



時雨「あまり人の気配はなさそうだけど」



提督「ひとまず近づくか」



提督「誰かいますかー?」コンコン



シーン…



提督「…反応無し」



夕立「!何か聞こえるっぽい!」



ヒソヒソ



提督「ほんとだ。何か喋ってるけど聞き取れないな」



夕立「突撃するっぽい?」



提督「やめとけって…」



村雨「中の子が怖がっちゃうわよ」



提督「あの〜艦娘を探しに来たんですけど」



?「艦娘…?」



提督「もしかして艦娘ですか?」



?「あなたは誰ですか…?」



提督「つい最近ラバウル基地に着任した提督です。艦娘を探しに来ました」



?「提督…!帰ってください!」



提督「…やはり艦娘か?」



春雨「提督という言葉に過剰でしたので恐らく…」



提督「違うんだ。俺は君達を助けに来たんだ。一旦出て話し合わないか?」



?「…私達は司令官に幾度となく裏切られました…あなたの言葉には従えません…」



時雨「じゃあ僕達と話すかい?」



?「…!その声は時雨ちゃん…?」



時雨「うん、それに僕だけじゃなくて白露型とも一緒だよ」



時雨「とりあえず外に出て話そうよ吹雪」



吹雪「…なんで時雨ちゃん達は司令官と一緒にいるの?」



時雨「信頼しているからさ」



提督「…」



時雨から信頼の言葉が…あっ涙出そう



吹雪「どうして!?今まであんなにひどい仕打ちをされてきてどうして信頼できるの!?」



時雨「確かに以前の提督は酷かったさ。でも今の提督は違う。僕達を本気で守ろうとしてくれている。この数ヶ月で分かったんだ」



吹雪「正気なの…?司令官がまたいつ裏切るかもわからないのに?」



時雨「その可能性はゼロとは言えないね。最初は僕もずっと疑ってたさ」



時雨「でもこの人ならきっと僕達を裏切ったりはしないはずだよ」



吹雪「…」



時雨「吹雪、そこに他に誰がいるんだい?」



吹雪「白雪ちゃんと綾波ちゃん…」



提督「ひとまずそこから出てお互いの状況を話そう。その話の後に俺といるのが無理なら離れてもらっても構わない」



時雨「提督、いいのかい?」



提督「いいんだ時雨。ここで彼女達を拘束するのは結局前の提督と変わらないだろ。だから話の後の判断は彼女達に任せる」



時雨「…そうだね、分かったよ」



提督「だから一旦そこから出て…」



ガチャッ



提督「あ」



吹雪「…」



提督「出てきてくれたか。ありがとう」



吹雪「…鎮守府で話し合うんでしたよね…」



提督「あぁ、君達には苦しい場所かも知れないけど我慢してくれ」



~執務室~



提督「さて、ここまでついて来てくれてありがとう」



吹雪「一体何を話すんですか…」



提督「そうだなぁ…まずこの場所は君達にとってどういう所だ?」



吹雪「…」



白雪「地獄のような場所です」



提督「やっぱそうだよな。じゃあ、ここに入ってきた時なにか気づかなかったか?」



白雪「…?」



綾波「何かありましたか?」



吹雪「前いた時より空気が綺麗だったような…」



提督「正解だ吹雪。この鎮守府を俺達で徹底的に掃除した」



吹雪「え?」



提督「まあ汚すぎだよなここ。執務ができるような状態じゃなかったし。前の提督は掃除してたか?」



吹雪「いえ…それどころか執務室から出た所を見たことありません…」



提督「え、まじかよ…ブラックな上に不衛生なの…?」



吹雪「私達はとにかく出撃していたので詳しくは分かりませんが…」



提督「んじゃあとりあえずその提督と俺の違いを分かる範囲で教えるよ」



以前の提督との違いや過去のことを吹雪達に話した



吹雪「え…私達は司令官のデータによって作られたのですか…?」



提督「まあそうなるかな、他に駆逐はいなかったし」



綾波「司令官にそんな過去が…」



白雪「ほ、ほんとに司令官は兵器になってしまったんですか?」



提督「まあこれが証拠じゃないかな」



懐から取り出したワッペンには【駆逐艦コード0】と書かれていた



吹雪「ほんとに駆逐艦なんだ…」



白露「提督、それ私達も初めて見たんだけど」



提督「だって初めて出したんだもん」



村雨「そのワッペンは初めて見たわ」



提督「じゃあ一緒に説明するか。俺達は名前で呼び合うのではなく、コード番号で呼びあってた」



夕立「名前で呼んじゃダメっぽい?」



提督「名前で呼び合えば親しみが深まるからな。親しみが深まってしまうと仲間を失った時に我を忘れてしまうということを考慮してコード番号だった。もちろん普段の交流もほとんどなかった」



提督「言ってしまえば独房生活みたいな感じだな」



吹雪「独房生活…私達もそんな感じでした」



提督「だよな。やっぱり俺達は似たような存在なんだ。どんなに苦しくても仲間がいれば乗り越えられるさ。だからここで一緒に戦わないか?」



綾波「司令官の言う通りですね…」



白雪「私も綾波ちゃんと同意見です。吹雪ちゃんは?」



吹雪「私は…」



提督「無理しなくていい。ほんとに嫌なら強制なんてしない。考えが変わったらまたここに来てもらえば…」



吹雪「いえ!私も同じ意見です!これから司令官について行きます!そうだよね?白雪ちゃん、綾波ちゃん」



白雪「はい!」



綾波「もちろん!司令官、これから迷惑をかけるかもしれませんがよろしくお願いします」



提督「!あぁ、よろしく頼む」



夕立「吹雪ちゃん、白雪ちゃん、綾波ちゃん!お帰りっぽい〜!」



吹雪「夕立ちゃん…またよろしくね」



提督「(感動の再開か…こういうの少し弱いんだよな…)」



~白露型の部屋~



村雨「無事に戻ってきてくれて良かったわね」



提督「あぁ、ほんとにそうだな。彼女達には家もないからな。戻ってきてくれて良かったよ」



村雨「ところで提督、それ何読んでるの?」



提督「あぁこれ?時雨と夕立のさらなる改装の設計図だけど」



村雨「へ〜…え?改装!?設計図!?えぇ!?」



駆逐艦提督と2人の改装



提督「なんでそんなに驚いてんだ…」



村雨「そりゃ驚くわよ!あの2人にさらなる改装ってさらに強くなるってことでしょ?」



提督「まあそうだな。どちらもかなり強い存在になってくれる」



村雨「2人には言ったの?」



提督「いやまだだ。ほんとは明日全員集まってから話そうと思ったが、村雨には特別に…な」



村雨「…私いけないこと聞いちゃった感じかしら…」



提督「そんなことないよ。いずれ全員に話すつもりだし」



村雨「そ、そうなのね…良かったぁ〜…」



提督「明日2人の改装の姿が楽しみだな」



村雨「ほんとね」



次の日



~執務室~



提督「え〜みんなに集まってもらったのは大事な連絡があったので報告しときます」



提督「つい先日、大本営から時雨と夕立のさらなる改装の設計図をいただきました」



白露「え!?時雨と夕立が!?」



村雨「(あぁこれは始まるわね…)」ヒソ



春雨「(始まりますね…)」ヒソ



時雨「さらなる改装…?」



夕立「それって夕立強くなれるっぽい!?」



提督「うん、なれるよ」



夕立「やったー!」



白露「妹に先越された…」ガックリ



村雨「あぁ、やっぱり…白露姉さんそんなに落ち込まないで…」



提督「村雨の言う通りだ。他の子達もいずれ来るはずだから多分」



春雨「(多分って…)」



白露「うぅ…妹に先越されたのは悔しいけど、ここは成長を祝うしかないよね」



時雨「白露…」



白露「おめでとう時雨、夕立!2人を妹に持てて私は1番幸せだから!」



時雨「ありがとう白露…これからも頑張るよ」



夕立「白露すごくお姉ちゃんっぽーい!」



白露「そりゃあんた達の1番のお姉ちゃんだからね!」



提督「良い光景だァ…」



村雨「提督、改装は?」



提督「おっといけね。姉妹の愛に見とれていた…2人とも準備はいいか?」



時雨「僕は大丈夫だよ」



夕立「早く強くなりたいっぽ〜い!」



提督「よーし、じゃあ工廠行くぞ〜。もちろんみんなもついてくるよな?」



白露「もちろん!」



春雨「姉さん達の改装…楽しみです。はい」



吹雪「白雪ちゃん、綾波ちゃん、私達も行こう!」



白雪「そうですね、行きましょう」



綾波「楽しみですね〜」



提督「じゃあ行くぞ」



~工廠~



提督「明石、改装の準備はできてるか?」



明石「提督お待ちしてましたよ。こっちは準備万端です」



提督「こっちも2人準備はOKだ。すぐに始められるか?」



明石「お任せ下さい!」



提督「よし、時雨、夕立。明石について行ってくれ」



時雨「楽しみだけど、少し緊張するね…」



夕立「夕立はワクワクが止まらないっぽい〜!」



提督「大丈夫だ時雨。痛くないから…」



村雨「提督、それは危ない人が放つ言葉よ…」



提督「事実を言ってあげただけなのに…明石、時雨と夕立を頼む」



明石「了解です。じゃあ2人ともこっちにきて」



夕立「〜♪」



時雨「さらなる改装…これで僕達はさらに強くなるんだね」



明石「そうねぇ、データによると2人ともかなりの性能を持つらしいからほんとに強くなれると思うよ」



時雨「そ、そうなんだ…」



明石「さ、ここに入って。準備ができたら始めるよ」



春雨「姉さん達、どういう姿になるんでしょうか」



村雨「きっと凛々しい姿になってくるに違いないわ」



提督「8等身になったりとか?」



村雨「それはちょっと怖いわ…」



吹雪「見た目だけじゃなくて装備も一新するんですよね?」



提督「そうだな。それもかなり優秀なやつだ。特に夕立なんかはな…」



数分後…



綾波「あっ2人とも帰ってきましたよ!」



提督「おっ改装した2人とご対面か」



時雨「みんな、ただいま」



夕立「改装完了っぽ〜い!」



みんな「お〜!」



吹雪「すごい!2人とも見違えたね!」



提督「しゅ、しゅごい…(語彙力)」



村雨「2人ともいい感じいい感じ♪」



春雨「とても美しいです、はい…」



白雪「これは…以前とは全く違う雰囲気ですね…」



白露「2人ともこんなに成長しちゃって…」



提督「悔しいか?」



白露「…いや、今はいっちばん嬉しいよ!」



時雨「白露…みんな、ありがとう」



提督「改装された2人は時雨改二、夕立改二と呼称するらしい」



村雨「改二…いい響きね」



提督「でも呼ぶ時に改二はめんどくさいからいつも通り時雨と夕立でいいよな」



時雨「うん、僕は気にしないから大丈夫だよ」



夕立「夕立も大丈夫っぽーい!」



提督「ありがとな。よし、2人とも無事に改装完了したし、パーっと祝うか」



夕立「お祝いっぽい!?ご飯食べれるっぽい!?」



提督「お、おう…食べれるからそんなに近づかなくても大丈夫だから…」



夕立「わーい!ごっはん、ごっはん♪」タッタッ



春雨「食事の準備しましょうか?」



提督「大丈夫だ。今日は間宮さんも来てるからな」



吹雪「あの…夕立ちゃんもう行っちゃいましたけど…」



提督「え!?あっ!おい!はえぇよ夕立!待てー!」ダッ



春雨「あっ!待ってください司令官〜!」



白露「あ〜!白露が1番だよー!」



吹雪「ちょ、ちょっと〜!?白雪ちゃん、綾波ちゃん!行くよ!」



白雪「え?は、はい!」



綾波「ま、待って〜!」



時雨「…取り残されちゃったね…」



村雨「ほんとね…もう、夕立も提督もせっかちなんだから…」



時雨「でもなんかいいよねこういうの」



村雨「?」



時雨「こうして平凡な毎日が送れたらなって勝手に思っちゃう自分がいるんだ」



村雨「あら奇遇ね、私もよ」



時雨「村雨もかい?」



村雨「えぇ、いつか、ずっとこうやって過ごしたいものね」



時雨「そうだね。それじゃあ僕達も行こうか」



村雨「そうね」



~食堂~



提督「それじゃあ時雨と夕立の改装を祝ってカンパーイ!」



みんな「カンパーイ!」



提督「あ〜うま〜…間宮さんの食事やっぱ最高だ〜」モグモグ



夕立「やっぱり最高っぽい〜」モグモグ



春雨「とても美味しいです、はい」



時雨「提督、今日はありがとう」



提督「気にすんなって。時雨も遠慮なく食べてくれ」



時雨「ありがとう、それじゃあ頂くよ」



白露「提督!時雨と夕立が来たんだから次は私だよね!」



提督「さあ〜どうだろうな。俺が決めることじゃないし、誰かはまだ分からんな」



白露「え〜次は絶対私だよ!」



提督「そういうのをフラグって言うんだゾ。ま、いつでも来ていいように練度を上げとかなきゃな」



吹雪「私達も頑張らなきゃ!」



綾波「そうですね!」



白雪「はい、頑張りましょう」



こうして2人の改装を祝うパーティはあっという間に終わり、1日を終えた



その夜…



~白露型の部屋~



提督「飲みすぎたな…」ズキズキ



俺はベランダに寄りかかり、頭痛を抑えていた



提督「全く…白露は1番1番うるさいし、村雨は俺に恋バナをめちゃくちゃ語りかけてくるし、夕立は食いすぎだし…ハチャメチャだったな…」



提督「(でも、いい時間だったな…)」



彼女達ともだいぶ馴染んできたし、これからもお世話になることだろう



提督「とりあえずもう横になるか」



部屋に戻ろうとした時、海の向こうで何か光ったのが見えた



そこには見覚えのない影が見えた



提督「(誰だ?こんな時間にここ一帯に誰かが通るという予定は聞いてないぞ?)」



まさか深海棲艦かと思ったが、もし深海棲艦ならもっと大勢で襲いに来るはず…



提督「少ないな…2人か?」



だがその影はやがて遠くへ去り、見えなくなった



提督「(何なんだ…深海棲艦の偵察か…?それなら偵察機が飛んでくるはずだが…)」



謎が多く、悩んでいたままその日の一夜が明けた



駆逐艦提督と夜戦任務



~執務室~



提督「…」ドヨーン



春雨「(司令官どうしたんだろう…朝からずっと元気がない…)」



春雨「あの…司令官…?」



提督「ん?」ギロッ



春雨「ひっ!」ビクッ



提督「あっごめん!驚かせてしまったか…」



春雨「だ、大丈夫です、はい…」



提督「何か用事だったか?」



春雨「あ、いえ…その、今日はいつもより元気がないですね…」



提督「あぁ…実は昨日の夜寝れなかったんだ…」



春雨「え!?寝不足ですか?」



提督「うん…まあ。頭が痛かったり、考え事してたらいつの間にか太陽が出てた」



春雨「お、お疲れなんですね…執務は少し休まれた方が…」



提督「そうだなぁ…でも今日の分の書類は終わらせたいからな」



春雨「無理はなさらないでくださいね?」



提督「ありがとう春雨。この書類が終わったら休むとするよ。この後の演習は任せていいか?」



春雨「は、はい!お任せ下さい!」



提督「助かるよ…」



しばらくして…



提督「終わったぁぁぁぁ」ダラーン



春雨「お疲れ様です…」



提督「春雨すまん…部屋までもちそうにな…」zzz



春雨「し、司令官!?…あっ寝ちゃった…」



春雨「あら?紙が…何か書いてる」



~18時に起こして。提督~



春雨「すごい走り書き…よっぽど眠かったんですね…」



提督「…zzz」



春雨「いつも本当にお疲れ様です、司令官」



春雨「(そういえば今日は夜戦任務があるんでした…司令官も参加するんでしたよね…)」



春雨「(ここはしっかり休ませておいた方がいいですね)」



白露「提督ー!遠征終わったよー!」バーン



春雨「白露姉さん!シー!」



白露「ん?なに春雨…あ、提督寝てるんだ」



村雨「あらあら、珍しいわね。こんなところで寝るなんて」



春雨「今日は夜戦任務もあってすごくお疲れなので夜まで休ませておいてあげてください…」



白露「そっかぁ〜そういえばそうだったね。ごめん、じゃあこれ、報告書出しといてくれる?」



春雨「はい、分かりました」



村雨「私達はもう行くけど、春雨、提督が寝込んでるところを襲っちゃダメよ〜?」クス



春雨「そ、そんなことしません!」



村雨「うふふ、冗談よ。じゃ、後でね」バタン



春雨「もう〜…村雨姉さんったら…」



~数時間後~



春雨「17︰50…そろそろ司令官を起こした方がいいですね」



提督「ん〜…」



春雨「(あれ?司令官少し苦しそう…?)」



提督「…う…うぐ…」



春雨「し、司令官…?」



提督「やめろー!」ガバッ



春雨「きゃあっ!」



提督「…はっ!ごめん春雨!大丈夫か!?」



春雨「は、はい…大丈夫です…」



提督「また驚かせてしまったな…」



春雨「一体どうしたんですか…?」



提督「ごめん…ちょっと嫌な夢見ちゃって…」



春雨「嫌な夢?」



提督「俺が…いやなんでもない…あまり覚えてなくて…すまない」



春雨「は、はい…」



提督「っと、ちょうどいい時間だったのか。春雨、みんなを呼んで出撃準備をするぞ」



春雨「…あの!司令官!」



提督「どうした?」



春雨「何か悩んでいることとかあったら遠慮なく私達に相談してください!」



提督「どうしたんだ突然…」



春雨「最近よく司令官が夜中唸り声を出してるんです。それもとても苦しい表情で…いつもいつも同じように苦しそうで…」



提督「…ご、ごめん…」



春雨「ち、違うんです!司令官は悪くないんです!ただ、もし悩み事があれば私達を頼ってください。きっとお役に立ちますから」



提督「春雨…ありがとう。お互い隠し事はなしだもんな。それじゃあ、いつかこの悩みを聞いてくれると嬉しいな」



春雨「はい!もちろんです!」



提督「ありがとな。よし、そろそろ行くか」



春雨「はい!」



~鎮守府近海~



提督「みんな装備の点検は大丈夫か?」



白露「みんな大丈夫だよー!」



提督「よし、時雨と夕立は改装して初めての出撃だな」



時雨「うん、頑張るよ」



夕立「素敵なパーティーにするっぽーい!」



提督「賑やかなパーティーになりそうだな。ドンパチ暴れてこい」



時雨「でもどうして今日は夜戦のみなんだい?」



提督「敵にル級が2体いることを確認したからだ」



村雨「2体もいるの…?」



提督「それにホ級にロ級も何匹か確認した。昼に挑めば確実に大破して泣かされてただろう。そう判断して夜を狙った」



提督「運がいいことに向こうもこの時間に襲ってくるとは思ってないんだろう。索敵機も回ってないし、今がチャンスだ」



白露「それで私達のこの装備構成は?」



提督「時雨と夕立は砲撃で、白露、村雨、春雨は雷撃でとどめを刺すという感じでお互いにその装備を充実させている」



春雨「私達は後方で雷撃…という感じですか?」



提督「一応そうしているが場合に寄っては近づく必要があるかもしれない。その時には合図を送る」



提督「だけど基本メインは時雨と夕立だ。2人とも頼んだぞ」



時雨「分かったよ」



夕立「お任せっぽい!」



提督「内容は大体そんな感じだ。質問がなければすぐ行こう」



白露「問題ないよ」



提督「よし。おっと、その前にあれしとくか」



春雨「あ、もしかしてあれですか?」



時雨「もう出撃前の恒例だね…」



提督「当たり前だよなぁ?」



白露「そうよ時雨。ほらみんな真ん中に手を置いて」



提督「俺達ラバウル艦隊、夜戦任務も…」



みんな「いっちばーん!」



~~



村雨「鎮守府から大分離れたね」



春雨「真っ暗でなにも見えません…」



提督「あまり敵には察知されたくないからな…もう少しだけ我慢してくれ」



白露「提督!あれじゃない?」



提督「!あぁあいつらだ。奇襲をかける!村雨、照明弾の準備だ」



村雨「はいはーい!」カチャ



提督「いいか2人とも、照明弾が上空で破裂した瞬間に一気に突っ込むぞ。まずル級に打撃を与える」



夕立「夕立そういうの得意っぽい!」



時雨「提督も行くの?」



提督「あぁ、相手は戦艦だ。2人だけを突っ込ませる訳にはいかないからな。だから…」



時雨「お互いに援護し合う…だよね」



提督「…そうだ。時雨はエスパーか何か?」



時雨「ふふ…いつも提督が言ってるからね。でも良い作戦だよ」



提督「俺はいつだって良い作戦しか練らないさ」



村雨「提督、照明弾の準備できたよ!」



提督「こっちもいつでも大丈夫だ!」



村雨「それじゃ、いっきまーす!」バシュッ



夕立「(照明弾が破裂したら…)」



ル級「?」



時雨「(一気に…)」



パァン



提督「(突っ込む!)今だ!」ザッ



時雨「いくよ!」



夕立「突撃するっぽい!」



ル級「!」ガシャ



提督「遅い!」ドンッ



ル級「ゥ…!」



提督「夕立頼んだ!」



夕立「ぽーい!」ドーン



ル級「!…」



夕立「1隻大破っぽい!」



ホ級「…」ガシャ



時雨「やらせないよ」ドン



ホ級「!…」



ロ級「ギー!」ガシャ



時雨「しまった!ロ級…」



ロ級「ギィィ!」ドガーン



白露「私達がいるのも忘れないでね!」



時雨「白露…助かったよ」



提督「大破したル級は俺がトドメを刺す!夕立、時雨はもう1体のル級を頼む」



夕立「分かったっぽい!」



ル級「…!」ガシャ


提督「これで終わりだ!」ザン



ル級「…!…」



提督「1体やったぞ!あともう1体は…」



時雨「提督後ろ!」



提督「んなっ!?」ガキ



危なかった…咄嗟に刀を上に構えてル級の急襲を抑えたが…



ル級「フ…」



提督「(しまった!この武装には砲塔が…!)」



ドガーン



提督「うぐぁっ…!」



村雨「提督!」



間近で砲撃をくらってしまい大きく吹っ飛ばされた。急襲を抑えたこともあって全身が痺れて動けない…



提督「(まずい、次砲撃が来たら避けれない…)」



夕立「提督さん!今行くっぽい!」



ホ級「…」ドーン



夕立「まだホ級が…!」



春雨「白露姉さん!司令官を助けないと!」



白露「駄目!今ここで攻撃したら提督まで巻き込んでしまう!」



春雨「そんな…!司令官!早くこっちまで!」ザッ



提督「くそっ…体が…」ググッ



ル級「フフ…」ガシャ



提督「はんっ…指揮官を倒せるって顔で嬉しそうだな…くそ…」



時雨「提督!」



夕立「提督さん!」



提督「(ちくしょう…)」



ル級「…」



提督「(…あれ?)」



ル級が撃ってこない…何故だ…?



いや…よく見るとル級の体に何か刺さってる…刀か?誰が…



ル級「ウ…ァ…」



?「間一髪って所だったな…コード1」



提督「…そうか…お前だったか…コード1…というよりも軽巡提督と言った方がいいか」



軽巡提督「コード1でいいさ。それにしても覚えてたのか。嬉しいもんだな」



川内「夜戦だぁー!私も混ぜてよー!」



軽巡提督「うるせぇよせっかくの再開なのに」



川内「あはは、ごめんってー」



白露「提督大丈夫!?…この人は?」



提督「あぁ大丈夫。こいつは昔の仲間だ。まあ提督だし、どこかで会えるとは思ってたけど」



コード1、今は軽巡提督。昔俺と共に戦った軽巡洋艦のベースにされた被験者の1人。性別は男、髪は赤色で、目は黒色で細く、少し悪っぽい顔をしているが、1番長く過ごしているので仲が良い



軽巡提督「よろしくな」



白露「仲間ってことはこの人も実験にいた人…?」



提督「そう…こいつは軽巡洋艦の実験にされた2人目だ。だからコード1」



夕立「提督さん!こっちは全部終わったっぽい!怪我は大丈夫?」



提督「すまないな夕立。こっちは大丈夫だ」



川内「ちぇっ…全部終わっちゃったのか〜」



提督「今は2人だけなのか?」



軽巡提督「あぁ、今は夜の巡回ってとこかな」



提督「ん?夜の巡回ってそれはいつからだ?」



軽巡提督「ん〜最近かなぁ〜」



提督「…もしかして昨日の夜ラバウルの海を渡ってたのはお前か?」



軽巡提督「…見ていたのか」



提督「ほんとに偶然だけどな。いつからここを彷徨いている?少なくともこの近くには鎮守府はないだろ」



川内「あちゃーばれちゃったね提督。だから言ったのに」



軽巡提督「はぁ…悪かったよ。事実を話すから許してくれ」



提督「分かった、聞こう」



軽巡提督「その前に立てるか?寝ながら話聞くのもなんだろ」



提督「ちょ、ちょっと起こしてもらえない…?」



軽巡提督「分かった。川内手伝ってくれ」



川内「分かったよ」



時雨「僕達も手伝うよ」



村雨「あまり無理しないでね?」



提督「みんなすまない…足が痺れてうまく立てないんだ…」



軽巡提督「そのまま支えてもらいながら聞いてくれ」



提督「あぁ…」



軽巡提督「実は政府からの命令でな、お前が提督として着任したというから監視してこいってさ」



提督「政府だと…?何故監視されなきゃいけないんだ?」



軽巡提督「何か目論んでるんじゃないかって、そんな事あるはずないのにさ。まあ反対したら俺も何されるか分かんねぇし」



提督「…まあ政府からの命令なら仕方ないな。従うしかない、今はな」



軽巡提督「今は…ってのは?」



提督「あいつらには頭を下げてもらわないとこっちの気が済まないんだ」



軽巡提督「気持ちは分かるが、簡単に下げるような奴らじゃないと思うが」



提督「いや、あれだけのことがあったんだ。何としてでも下げさせてやるさ」



軽巡提督「お前、昔と比べて変わったよな」



提督「そうか?」



軽巡提督「だって…いや、やはりあまり変わらないかな」



提督「どっちだよ…」



川内「提督、そろそろ戻った方がいいんじゃない?」



軽巡提督「あぁそうだな。それじゃ俺達はここで失礼するよ」



提督「鎮守府へ帰るのか?」



軽巡提督「あぁ。監視時間は決められてるからな。破ったら逆に怒られるんだよ。全く、意味がわからないな」



提督「お前も大変だな。でも久しぶりに会えて嬉しかったよ、今日はありがとな」



軽巡提督「俺もだ。また会おうな」



川内「またね〜」



提督「さて、俺達も帰るか」



白露「そうだね、疲れた〜」



夕立「夕立いっぱい動いてお腹空いたっぽい〜」



時雨「またお腹空いたの…?」



夕立「提督さん!早く帰るっぽーい!」



提督「ちょっ!だから早いっての!待て夕立…あ!足がぁ!」



夕立「わーい!かけっこぽい?負けないっぽーい!」



提督「違ーう!」



白露「ちょっと!だから私が1番だって!」



村雨「みんな待って〜!」



春雨「夕立姉さんらしいですね…」



時雨「敵がいてもおかしくないのに…提督もあんなに無茶しちゃって」



春雨「でもみんな昔よりいい顔してますよね。もちろん、私もですけど」フフッ



時雨「そうだね。僕もそう思う…だから僕も混ぜさせてもらうよ」ザッ



春雨「えぇ!?時雨姉さん!?ま、待って〜!」



?「…あれが彼の艦隊?随分少ないね」



?「そうだ。やはりコード1には任せられない。だからお前に頼んだ」



?「ふ〜ん…ま、任されたよ。彼は頑張りすぎだしね〜」



駆逐艦提督と呉提督



~医務室~



提督「痛ててて!もう少し優しく頼む…」



白露「提督我慢してよ…」



村雨「抑える身にもなってよね…」



明石「う〜ん…これは思ったより結構酷いですね…」



昨日の夜戦で受けた傷を治療中なのだが思ってより傷が深いらしい。身体中に包帯を巻き、額にも包帯…まるでミイラだ



提督「筋肉痛も混ざってっかなこれ…」



時雨「昨日の夜夕立とかけっこするからだよ…」



夕立「夕立は楽しかったぽい!」



提督「提督は辛かったぽい…」



時雨「もう…ちゃんと安静にしないと」



春雨「肩の包帯少し解いて湿布貼りますね」ペタッ



提督「いっ!?!?!?」



肩にビリビリと痛みが走った



春雨「あ、すみません…大丈夫ですか…?」



提督「だ、大丈夫…ありがとう…」



綾波「でも司令官が無事で何よりです…」



吹雪「大破して帰ってきた時はすごく心配したんですから」



提督「心配かけちゃったか…」



白露「みんな心配したよ」



提督「ごめんな…」



白露「謝る必要はないよ。提督は頑張ってくれたんだから」



提督「そうかな…」



春雨「そうですよ。それに…司令官とってもかっこよかったです」



村雨「私達ももっと強くならないとね」



時雨「そうだね。この海と、鎮守府…そして提督を守るために」



提督「時雨…俺もお前達を守れるように頑」



夕立「提督さんの後ろいただきっぽい!」ガバッ



白露「あっ傷が…」



村雨「え!?夕立!?」



提督「いっだあああああぁぁぁぁぁぁ!!」



?「…なかなかの騒ぎだね…」



?「えぇ、ほんとに奴が良い戦果を上げているなどとは思えませんね」



?「でもそろそろコソコソ聞かないでお邪魔するかな」



?「失礼するよ!」ガラッ



提督「うわ、ビックリした!…誰?」



?「私は呉提督。元々呉鎮守府にいたんだけど急遽ここの提督の面倒を見て欲しいと頼ませてね」



呉提督「こっちは私の憲兵だよ」



呉憲兵「…」



提督「は、はあ…よろしく。いやてか、面倒見るってどういうこと?」



呉提督「君は提督になる前、政府から貰った書類を覚えているかい?」



提督「…なんで政府が関係するんだ?」



呉憲兵「質問を質問で返すな。先に答えろ」



提督「…あぁ覚えてる」



呉提督「その中で君達プロトタイプが出撃可能な回数制限があることは知っていたかい?」



提督「月に10回までだったか」



呉提督「覚えているじゃないか。なのに君は着任してから1ヶ月後、ずっと10回以上出撃している。つまり違反しているんだ」



提督「それで?制限も守れないから子守を付けようってか?」



呉提督「そういうこと。つまり君は危険な状態だ。今月も既に10回以上出撃している。もしそれでも次出撃をした場合、違反とみなし、君を大本営に連れていかなきゃならない」



提督「それは大変なことだな。んで、連れていかれてどうなるんだ?叱られるのか?」



呉提督「君を解約するかどうかを決めるんだよ」



提督「…!」



時雨「ちょっと待ってよ」



呉提督「なんだい?」



時雨「さっきから黙って聞いてたけど、そんなの理不尽だよ。提督は海を守るために戦っているのにそんなことで提督を辞任だなんて理不尽すぎないかい?」



呉提督「私が決めた訳じゃない。政府が決めていることだ。彼等は元々プロトタイプ。それに深海棲艦への防衛戦で敗北している。そして提督という立場である以上過度の出撃は認められていない。死んだら誰がここの代理になるかも分からないのに」



時雨「深海棲艦への戦いは経験のない状態で戦ったからじゃないの?提督達は海を守ろうとして必死に戦い抜いた。ただ少しだけ経験が足りなかったから負けた。だよね?」



呉提督「何度も言うけど私が決めたんじゃないんだ。ただでさえ、追放を迫られた彼等が今こうして日本にいるのも幸運なんだ。政府には頭が上がらないんだよ」



提督「…」



白露「提督、大丈夫?」



提督「あぁ…」



時雨「提督は今も海を守るために僕達と戦っている。過去に戦わないと決めていたのに。僕達だって提督を必ず守る。死なせるなんて事は絶対にしない」



呉提督「その自信はどこから出てるんだい?必ず守れる確証なんてあるのかい?」



時雨「…」



呉提督「いつどこで襲われてもおかしくない。空からの空襲、海の中から攻撃、夜の奇襲、そして今いるこの鎮守府だっていつ攻撃されてもおかしくないだろう」



時雨「でも…」



呉憲兵「これ以上口答えをするな艦娘。口答えをするなら貴様を…」



提督「あんたこそ話に割り込むな」ガッ



時雨「提督…」



呉憲兵「くっ…!離せ!」バッ



提督「艦娘に手を出してみろ。あんたの顔の原型を留めなくしてやる」



村雨「ちょっと提督!落ち着いて…傷が深くなっちゃう…!」



呉憲兵「ふん!手を出せば貴様は違法で捕まるぞ」



提督「艦娘のためならいつでもその覚悟だ」



呉憲兵「こいつ…」



提督「…時雨、もういい。これ以上口論をしても無駄だ。彼女の言ってることは事実だ」



時雨「でも…」



提督「おい、あんた。ここにいるなら好きにすればいい。俺も出撃はしない。だが、艦娘に危機が訪れれば俺も大人しくいれないからな」



呉提督「お好きにどうぞ。私にはあんまり関係ないけど、その身体で出撃は到底無理だと思うけど」



提督「覚悟しているさ。こんな傷、昔と比べたら大したことないね」



春雨「司令官…」



提督「大丈夫だ春雨、心配するな」



呉提督「それじゃ、私は失礼するよ。執務室にいるから君も動けるようになったら来るといい。行くよ憲兵」



呉憲兵「…はい」



村雨「行っちゃった…」



吹雪「とんでもない人がきましたね…」



提督「…」



白露「…提督が出撃しなければいいんだよ!ね!そうでしょ?」



春雨「そうですね!私達が頑張ればいいんですよ!」



時雨「確かに僕達は本来そういう存在だ。だけど今までは提督に任せていたような戦いだった」



艦娘「…」



提督「大丈夫だ、みんな俺がいなくても十分に戦える。きっと何とかなるさ」



だが、あまりにも急な警告だった。提督を辞める?絶対に無理だ。この子達を見放すなんてできない



提督「(そうだ…出撃しなければいいんだ。出撃さえしなければ…)」



明石「一応大淀にも聞いときます?」



提督「…!そうだ、大淀に聞いてみよう」



プルルルルル…



大淀「…はい、こちら大淀です。どうされましたか?」



提督「大淀、うちの鎮守府に突然呉の提督が俺を監視すると言っていたんだが、そっちには何か話は通ってるか?」



大淀「呉の提督がですか?確認してみます」



提督「あぁ、頼む」



大淀「…はい、一応こちらにも報告は入っていますが、少々詳細が曖昧ですね…」



提督「詳細が曖昧って…それは承諾されているのか?」



大淀「最終的に元帥様に目を通してもらうのですが、元帥様のサインが書かれているということは恐らく承諾されていると思います」



提督「…(くっそ、あのじいさん絶対にきちんと目を通してないぞ…)」



大淀「…ひとまずそちらで何か怪しい行動が見られたら直ぐにこちらへ連絡をお願いします」



提督「分かった、ありがとう」



プー



提督「はぁ…」



綾波「司令官大丈夫ですか?ちょっと苦しい表情してますけど…」



提督「大丈夫だ。俺はそろそろ執務室に行くよ」



夕立「もう身体は大丈夫っぽい?」



提督「動けるぐらいにはなった」



時雨「もう動けるの?」



提督「半分人間じゃないからな。あの時の砲撃を普通にくらってたら死んでるよ」



春雨「執務室までついていきましょうか?」



提督「いや大丈夫だ。俺は呉提督と話があるからな」



白露「私はあの人ちょっと苦手だよ〜…提督よく話せるね」



時雨「政府との話があったよね。もしかして政府と関係してるのかな?」



時雨の言う通りあいつはおそらく政府に買収されている。政府の話が絡んできたのならほぼ間違いないだろう



提督「多分そうだろうな。よし、行くか」



~執務室~



提督「…」ガチャッ



呉提督「お〜早かったね」



提督「よくも堂々と執務机に座れるもんだな」



呉提督「監視かつここを任せられているからね。私がどこに座っていても問題ないだろう?」



提督「次の出撃をあんたが指揮するとでも?」



呉提督「そういうことだね。まあ一応君も指揮する立場だけど」



提督「聞きたいんだがあんた、もしかして政府に雇われた身だろ」



呉提督「…いきなりどうしたんだい」



提督「政府に頼まれてここに来たんだろう。俺を監視しろと…」



呉提督「どうしてそう言いきれるんだい?」



提督「例え頼んだのが大本営だとしても、前線が忙しい状況の中で提督を別の鎮守府に移すなんて暇はないはずだ」



呉提督「鋭いんだね君は。私はあまり好きじゃないんだけど」



呉憲兵「…」ガチャッ



提督「…何のつもりだ」



呉提督「これは警告しくとよ。これ以上私の事を詮索するのはやめることだ。政府からは私を深く探り求められた場合は射殺を許可されている」



提督「…元々俺達は用済みだったわけか」



呉提督「むしろこうやって普通に生かしてもらえてる方が奇跡なんじゃない?存在していることを承知の上で見逃してもらえているんだからさ」



これ以上の口論は無駄だな…



提督「分かった。もうあんたのことは探らない。大人しくしておくよ」



呉提督「急に素直になったね。気持ちが入れ替わったかい?」



提督「あぁ、指揮もあんたに任せるよ。好きにしてくれ」



提督「(政府に買われた犬め…必ず報わせてやる)」



駆逐艦提督と違法



呉提督の急なラバウル基地への着任から次の日、深海棲艦の空母を打撃するために作戦が練られていた



~白露型の部屋~



提督「はぁ〜…」



もちろんは俺は参加していない。執務室では全員が集まっているが、俺は1人悩み込んでいた



提督「(呉提督の経験が分からない以上どういう作戦か分からない。行くべきなんだろうが、ここは信じてみるしかないな)」



俺はこっそりと偵察機と妖精さんを連れていた



提督「妖精さん、次の出撃を上から見ていてくれないか。なるべく敵に探知されない範囲で」



妖精さん「!」ビシッ



提督「ありがとな」



ベランダを覗くと海へ出撃している艦娘達が見えた



提督「あいつら、もう出撃したのか」



遠眼鏡で見える限りの編成は白露・時雨・夕立・吹雪・白雪・綾波だ。



提督「よし、妖精さん頼んだ」



妖精さん「!」ブゥーン



提督「さてと…俺は執務室で待機だな」



~執務室~



提督「入るぞ」ガチャッ



呉提督「おやどうしたんだい?彼女達は今出撃中だよ」



提督「そうだろうな」



数分後…



ピピピー



妖精さんから通信が入った。こちらが劣勢な状況になっているらしい



提督「…」チラッ



呉提督「劣勢だって!?ちゃんと作戦通りに動いてる!?」



提督「…やはり信用ならなかったな」



呉提督「何を言っているんだい…」



提督「提督は提督でも経験の浅い提督を雇ったんだなって」



呉提督「そんなことはない!私は完璧な作戦を練ったんだ!」



提督「その完璧な作戦が今崩されているじゃないか」



呉提督「うぐ…!」



提督「俺は出撃するぞ。違法でも彼女達は見捨てられない」



呉憲兵「貴様!待て!」ガチャッ



提督「邪魔するな!」バァン



呉憲兵「うっ…」ビリビリ



護身用の銃で発砲した弾は憲兵の持っていた銃に命中し、憲兵から銃を手放させた



提督「体には当たっていない。ただの正当防衛だ。じゃあな」ガチャッ



呉提督「ま、待て!」



全く、どいつもこいつも政府に絡む人間はクズばかりだ



提督「(みんな待ってろ、すぐに行くぞ)」



~海~



白露「空襲が激しすぎる!一旦引こう!」



夕立「でも呉の提督さんは下がるなって言ってたっぽい!」



白露「そんなこと言ったってこの状況じゃ…!」



吹雪「きゃっ!」ドカーン



時雨「吹雪!」



綾波「綾波が守ります!皆さんは敵の数を少しでも減らしてください!」



白雪「でもこの不利な状況では…」



時雨「…!(この状況、昔にも似たような状況があった)」



夕立「時雨?どうしたっぽい?」



時雨「(仲間が沈む…?みんなやられる…?)」



白露「時雨!しっかりして!動かないとやられちゃうよ!」



時雨「(いやだ…そんなのいやだ…)」



ブゥーン



夕立「!時雨!直上ー!」



時雨「提督…助けて…!」



ドカーン



提督「あぁ、助けに来たぞ」ポン



時雨「あ…あぁ…提督…」



白露「提督…!来てくれたんだ…!」



提督「あぁ、違反なんか気にしてられるか。お前達をちゃんと鎮守府に帰らせるのが俺の役目だからな!」



吹雪「司令かあぁん!」バッ



提督「吹雪!?負傷したのか!?大丈夫か?」



白雪「空襲を受けて大破しています!」



提督「ひどい傷だ…綾波、白雪。吹雪を任せた。あの空母は俺達が1匹残らず駆逐する」



綾波「分かりました!」



白雪「お任せ下さい」



提督「よし、3人とも!俺が指揮する!行けるな?」



白露「もちろん!提督に合わせるよ!」



時雨「…大丈夫。行けるよ」



夕立「提督さんがいれば百人力っぽい〜!」



提督「よっしゃ、行くぞ!」



ヲ級「ヲ…」



提督「敵の艦載機だ!白露、時雨!頼んだ!」



白露・時雨「了解!」



提督「夕立!その間に一気に距離を詰めるぞ!」



夕立「了解っぽい!」



イ級「イー!」



提督「邪魔だ!」ドーン



ロ級「ギー!」



夕立「そこをどくっぽーい!」



ヲ級「ヲヲ…」



提督「ぐっ…」



やはり先日の戦いでの傷がまだうずく



夕立「提督さん!無理しちゃだめっぽい!」



提督「せめて指揮してるやつを倒さないと…」



ヲ級「ヲ!ヲ!」



提督「待て、あいつが指揮官か…!だったらここから狙い撃つ」ガチャッ



敵の勢力は日に日に大きくなっている。強敵だって現れる。だが、こちらも全く同じ装備で挑む訳ではない。対策はできている



夕立「提督さん、それは?」



提督「AMR。通称アンチマテリアル(対物)ライフルだ。人に撃てばまず体は砕け散る」



夕立「すごい威力っぽい!」



提督「だけどこちらも反動はほとんど制御できない。夕立、俺を抑えててくれるか?」



夕立「こんな感じっぽい?」ギュッ



提督「そうそう…ってちげぇよ!抱きつくんじゃなくて後ろから背中抑えててくれってこと!」



夕立「これで大丈夫っぽい!」



提督「狙いよし、撃つぞ!」ドォン



ヲ級「ヲーー!」



提督「うぐぅ…」ビリビリ



予想した通りものすごい反動だ…夕立に抑えられていてもぐっと押された



夕立「すごい衝撃っぽい…」



提督「くそ…耳もいてぇな…」キーン



でかい反動に大きな音で耳と腕に衝撃が走っている



提督「でも命中したぞ、やったな!」



夕立「提督さんさすがっぽい〜!」



ヲ級「ヲ…ヲ…」



提督「おいおい冗談だろ。体に穴ができてもまだ動けるのか?こっちは手がいてぇのに…」



夕立「あとは夕立が決めるっぽい!」



提督「夕立、頼んだ!」



俺は早くこの痺れから回復しないと…



提督「(…!どうやら夕立は空母を倒したみたいだ。俺は吹雪のところに戻らないと)」



白露「提督!凄い音がしたけどあれは提督なの?」



提督「あぁこいつの音だ。馬鹿でけぇ音だな」



白露「いつのまにこんなものを?」



提督「俺の秘密兵器ってところだ。威力は絶大だがデメリットも大きいから滅多に使うことはないだろうけど」



白露「す、すごいね…」



提督「すごいだろ?そうだ、吹雪は大丈夫か?」



白露「うん、少しはマシになったみたいだけどやっぱり戦闘続行は辛いみたい」



提督「そうか、分かった。敵の指揮官は倒したから撤退しよう。夕立!帰るぞ!」



夕立「帰れるっぽい〜!」



提督「吹雪、動けるか?」



吹雪「はい…すみません、司令官…」



提督「いいんだ。作戦のことより自分のことを優先するんだ。早く帰ろう」



吹雪「はい…(時雨ちゃんの言った通り、この人は良い人だな…)」



提督「全員撤退するぞ!鎮守府へ帰還だ!」



~鎮守府~



提督「着いた…もうすぐドックだからな吹雪。辛抱してくれ」



吹雪「はい、大丈夫です…」



呉提督「…」



鎮守府の入口に呉提督と憲兵が立っていた



提督「…先に吹雪をドックに連れていかなきゃいけないんだ。どいてくれ」



呉提督「そんなの別の艦娘に任せればいいじゃないか。君は別に行くところがあるだろう」



提督「…」



呉提督「君は制限以上の出撃を行った。これを違反とみなし、大本営へ連行する」



呉憲兵「大人しくしていろ」ガチ



後ろから憲兵に手錠かけられた



提督「…」



時雨「て、提督…」



綾波「そんな…」



呉提督「ほら行くよ」



提督「待て待て。ここの鎮守府はどうなるんだ」



呉提督「代理が来るから心配はいらない。今は君の処分が先だ」



提督「はぁ…くそ」



呉憲兵「ぼさっとするな。歩け」ガン



提督「いっつ…!」



春雨「司令官!」



村雨「ちょ、ちょっと!どこに連れていくの!?」



鎮守府から春雨と村雨が駆けつけた



呉提督「どこって決まっているだろう。違反をしたから大本営へ連れていくだけさ」



春雨「そんな…」



村雨「提督はどうなるの!?」



呉提督「そんなの元帥殿次第さ。ま、こんな違反じゃ到底難しいと思うけどね」




白露「そんな…早すぎるよ提督…せっかくここまで頑張ったのに…」



時雨「くっ…!」ガチャッ



提督「やめろ時雨!」



時雨「提督…!」



提督「ここで人に撃てば反逆したことになって解体される。人には絶対に撃つな」



時雨「でも!提督は…」



提督「まだ辞任するかどうかなんて決まってないだろ。希望はまだある」



白露「時雨、ここは提督を信じよう。今それが私達にとって提督にできることだよ」



時雨「…提督!絶対戻って来て!」



提督「…」ニッ



春雨「司令官…」



村雨「大丈夫よ、きっと戻ってきてくれるはず…」



白雪「そういえば、代理の提督って…」



?「よう」



村雨「!あなたは…」



~大本営~



提督「…」スタスタ



他の提督「お、おい…あいつって確か…」



他の提督「駆逐艦が作られるきっかけになったって言われてたやつだ…」



他の提督「ま、まじかよ…」



ザワザワガヤガヤ



かなりの提督が集まっている。そんなに大事な事をしたのか?それとも俺が普通の提督とはまた違うのか?



呉提督「ここに座って」



ここまで来る間に呉の憲兵に何度か殴られ顔が痛い。容赦ってものがないな



提督「いつつ…」



呉提督「元帥殿、違反を起こした者を連れてきました」



提督「(軽く裁判みたいだな)」



元帥「ふぅ…」



元帥殿が現れたと同時にその場に全ての提督が敬礼をした。自分は…とてもじゃないがこの状況じゃ無理か



元帥「それで違反を起こしたという者は誰だ?こんな忙しい時に違反など起こしおって…ん?」



提督「…」



元帥「お主は確か…」



提督「(もしかして覚えてくれてるのか?)」



元帥「誰じゃったっけ?」



提督「」



元帥「うーむ何か見覚えはあるんじゃが…」



提督「ラバウル基地に着任した改造人間ですよ…」



元帥「おぉ!お主か!いやぁ頭のモヤモヤが消えていい気分じゃわい」ガハハ



提督「(全くこのじいさんは…)」



元帥「…して、彼がした違反とはなんじゃ?呉提督よ」



呉提督「はい、この者は出撃回数制限がかけられているにも関わらず、幾度も制限を超えた出撃を行ったことです」



元帥「ふむ…それは間違いないのか?提督よ」



提督「…はい、間違いありません」



元帥「ふーむ、ではなぜ制限を越えた出撃をした理由を聞こうか」



提督「…私は元々出撃する気などありませんでした。ここで提督となり、新たな人生を送ろうとしていました」



元帥「ふむ」



提督「しかし、着任した鎮守府の艦娘達は自分と似たような過去を持っていたことを知り、気付かされたのです。どんなに辛い過去を持っていても艦娘は戦い続けなければならない」



提督「なのに自分は机に座り、彼女達の戦いを見届け、無事に帰ってくれることを祈るだけなのはあまりにも理不尽なことだと気づき、私も戦いに加わりました」



元帥「…」



提督「似たような過去を持っているからこそ同じ気持ちを持たねばならないと思うのです。上下関係とか兵器とか関係ない、艦娘も1人の人間、だからこそ平等でいなければならないのです」



提督「そして気づけば自分はいつも彼女達と海に出て共に戦っている…制限なんて必要ないんじゃないかって思います」



提督「これが自分の理由です」



元帥「うむ、分かった」



憲兵「元帥殿」ヒソヒソ



元帥「…ふむ…なるほど」



提督「?」



元帥「どうやらお主はほとんどの戦いで艦娘を庇うような戦いをしていたらしいな」



提督「はい…」



元帥「立派なことだな」



提督「え?」



元帥「先程のお主の理由もそうだが、艦娘との関係に上下関係は必要ない。ワシらもお主を見習った方がいいかもな」



提督「(え?え?俺を見習うだって?)」



呉提督「ちょ、ちょっと待ってください!」



元帥「ん?どうした呉提督」



呉提督「彼は違法を繰り返しているんですよ!もしかして、提督として続けされるつもりなんですか!?」



元帥「というか最初からそのつもりだったんじゃが」



呉提督「んな…!」



元帥「大体そんな制限超えたからって解任なんておかしいじゃろ。こんな前線が忙しく、1人でも多くの戦力が欲しい時期に」



元帥「まぁ度を超えた違反ならさすがにそれ相応処分はするが」



呉提督「ではあの時のサインは…」



元帥「ん?あぁ!眠くてしょうがなかったからとりあえずサインだけしといたわい!」



呉提督「…」



提督「(雑すぎるだろ…俺がどれだけ痛い目にあったと思ってるんだ…)」



元帥「ラバウルの提督よ」



提督「は、はい?」



元帥「お主、今すぐ前線に来る気はないか?」



提督「え!?前線ですか?」



元帥「うむ、お主のような戦えて戦果も十分に上げられている存在は中々珍しいからの。一緒に同じ海で戦ってくれんかの?もちろん、制限もなしだ」



まじか…前線へのお誘いとは…しかもあの元帥殿からの直接な頼み…普通なら快諾するのだが…



提督「お気持ちはすごく嬉しいのですが…」



元帥「む、まだ無理じゃったか」



提督「いえ!行きたい気持ちは十分にあります!ですが、今私の鎮守府は数少ない戦力で戦っているんです…」



元帥「どういうことじゃ?」



提督「最初にいた艦娘は5人だけ…元々そこに着任していた提督へのトラウマからかなりの艦娘があの鎮守府から離れているんです」



元帥「うーむ…やはりあの提督はブラックだったのか…もっと早く気づいておれば」



提督「ですから今は7月、あと2ヶ月待ってくれませんか?それまでには必ず十分な戦力を確保することを約束します」



元帥「2ヶ月か…分かった。その時にお主とまた会える時楽しみにしておこう。もちろん、前線でな」



提督「は、はい!ありがとうございます!」



元帥「ではもう解散だ!これにて終了!閉廷!」



提督「(やっぱり裁判だったのか…)」



呉提督「…なぜ…」



提督「おいおい、大丈夫か?あれだけ自信ありげだったのに」



呉提督「うるさい!もう私に構うな!」



提督「ひえ…怖い…」



そういえば政府と関連しているんだったな…結局何が目的だったのかは分からないが



提督「(ひとまず、あいつら心配してるかも知れないし、明日の朝さっさと帰るか)」



次の日…



~鎮守府~



提督「あ〜顔いて〜…」



無事に帰れたというものの、呉の憲兵に何度も殴られているので目が腫れてたり、口からも血が出ている



提督「ゲホッゲホッ…くそ、せめて治療してから帰ればよかった…」



春雨「司令官…?」



鎮守府の前にいたのは春雨だった。ポカンとした顔だったがすぐにこちらに走り寄ってきた



春雨「司令官ー!」



提督「春雨、元気だったか?」



春雨「そんなわけないじゃないですか!ずっと心配していたんですよ!」



提督「ごめんな、でも大丈夫だ。俺は勝ったよ」



春雨「え?ということは…」



提督「これからもよろしくな」



春雨「う、うわあぁん…」ポロポロ



提督「感動の再開でとても嬉しいんだけど、治療室連れてってもらえる…?」



軽巡提督「なら俺が連れていこう」



提督「はっ?何でお前…」



軽巡提督「ここを任されてたんだよ一時的にだけど」



川内「やっほー」ヒョコッ



提督「任せられたって、俺が戻らなかったらどうなってたんだ…」



軽巡提督「お前がここに戻ってくると分かっていての俺じゃねぇの」



提督「…」



白露「提督!提督が戻ってきてる!みんなー!」



軽巡提督「おっと、治療室に行く前に責任とってもらわないとな。みんなずっとお前の事ずっと心配してたんだからな」



提督「…あぁそうだな」



提督「その…ありがとな。色々と」



軽巡提督「いいんだよ。お前には世話になってたし。ほら行ってこい」



村雨「提督ー!」



吹雪「司令官ー!」



提督「みんな、ただいま」



駆逐艦提督と夏の対潜任務



8月。あれから色々とあったが、まだまだ忙しい時期はこれからだ。海水浴…という余裕もなく、新しい指令が次々と出されていた



~執務室~



提督「くそぉ…前線の推薦者とはいえ、この指令の数はおかしいだろ…」



白露「こりゃすごい数だね〜…」



提督「艦娘もまだ集まってもないのに…どっち優先しろってんだ…」



今現状は街で会った店員の助力により、朝潮、大潮、荒潮が戻ってきてくれていた



朝潮「司令官!ご命令を」



大潮「大潮はいつでも行けます!」



荒潮「指令はまだ〜?」



提督「こっちもそれで頭悩まされてるんだよ…それにいつかお前達に相応しい鎮守府も見つけてやるから」



現在、他の鎮守府と艦娘を渡し合うことができる。戦力が足りない場合や、その戦いに特化した艦娘などが必要な時に行われる。ポ〇モンと似たような感じだ



提督「でも今はまだ戦力が足りないから無理だが…一応色んな鎮守府へ申請を送っている最中だな」



白露「それって私達も入るの?」



提督「いや、入らない。俺が拒否しているからな」



着任当時からいてくれている艦娘を離れさせることはできない。これはただの俺のワガママだが…



白露「そっかぁ〜まあ私達もあまり乗り気じゃないけどね。今はここがいっちばん良いな」



提督「そうだな。おっ、この指令するか。対潜任務、駆逐艦にはお手頃な任務だ」



白露「いいね!対潜は得意だよ!」



提督「じゃあこれにするか」



朝潮「司令官、私達は何をすればよろしいですか?」



提督「この任務に連れていきたいところだけど練度がまだ低いからな…吹雪達と一緒に遠征に出てもらえるか?」



朝潮「了解しました!」



提督「よーし白露型集合だ。白露、あれ頼む」



白露「了解!」



提督「朝潮達これつけとき」スッ



大潮「耳栓ですか?」



提督「んまああいつの笛は結構くるからな」キュッ



白露「それじゃあいくよ」



ピィィィィィィィィ



朝潮・大潮・荒潮「!?」



白露の鳴らした笛は普通に吹くだけでかなり大きな音をだせる特殊な笛で、その笛の音は執務室いっぱいに、いやそれ以上に響き渡った



提督「くぅ〜耳栓つけててもやっぱすげぇ音だぜ」



荒潮「びっくりしちゃうわもう…」



時雨「提督、呼んだ?」



春雨「失礼します」



提督「おっす、今日は少し特殊な任務があってな。それに行こうと思って」



村雨「あらあら何かしら…対潜任務?」



提督「そう、だから白露型を呼んで…って夕立はどこいった…」



時雨「多分夕立なら…」



ドドドドドド



夕立「提督さーん!」



提督「へあ!?あああああぁぁぁ」ドンガラガッシャーン



入ってきたと同時に飛び込んできた夕立に見事に押し倒された



夕立「提督さん!お呼びっぽい?」



提督「お、おう…そうだな…説明するからどいてくれ…」



時雨「夕立、提督が苦しそうだよ」



夕立「どんな任務っぽい?」



提督「ふぅ…対潜任務だ。駆逐艦は得意分野な相手だろ」



夕立「得意っぽい!」



提督「つーわけでここの書類ひとつでも多く片付けたいので作戦考えたらすぐ行きまーす」



~海~



提督「ふぅ…結構暑いな…」



春雨「大丈夫ですか?」



提督「あぁ…今日はやけに気温が高いな」



海の上ということもあり、屋根の代わりになるものもあるはずがなく、暑さとの耐久戦だった



提督「こまめに水分補給しとかないとな…」ゴクゴク



村雨「提督に合わせるから無理しないでね」



提督「すまないな」



艦娘は人とは違い、いかなる時も気温の変更には対応できるように作られており、暑くても寒くてもその気温に適応できるように体内調節が自動で行われている



提督「よし、ここだな」



なんとか目的の場所に着いた。ここからは対潜哨戒を行いながら進む



提督「みんな準備できてるか?」



村雨「バッチリよ!」



提督「よし、ばら撒くぞ」



対潜哨戒は順調に進んだ



提督「(よし、順調に終わりそうだしさっさと終わらせて帰るか…)」



ピピー



提督「!?周辺に潜水艦の感知!全員警戒しろ!」



白露「え!?嘘、どこ!?」



時雨「そんな…ここまで対潜哨戒をして切り抜けてくるなんて…」



提督「(くそ…相手は潜水艦だからハッキリとした場所が分からない…)」



ガッ



俺の足元が何かに掴まれた



提督「!しまっ…」



ドボーン



村雨「提督!」



春雨「そんな…!司令官が…!」



夕立「早く救出するっぽい!」



白露「でもどうやって!?もう爆雷残ってないよ!」



~~



提督「…!」ゴボゴボ



提督「(まずい…このまま引っ張られ続けたら息が保てても肺が圧迫される!)」



咄嗟に出した刀で自分の足を掴んでいる深海棲艦にめがけて突き刺した



提督「(よし、離れた!)」



すぐに海上へ上がろうとしたが、周りを見て一気に凍りついた



提督「(嘘…だろ…)」



周りには潜水艦の深海棲艦が何体もいた。今までの哨戒が全く意味をなしていなかったかのような数だ



提督「(くそ…爆雷もないからここで仕留めるしかない!)」



海の中で使えるのは刀だけ…それに水のせいで刀を振るのにもかなりの力が要求される



提督「(!あぶな!)」ヒュン



自分にめがけて魚雷が飛んできた。相手には魚雷がある。ならば方法は…



提督「(一気に近づいてやるしかない!)」



~~



時雨「提督が戻ってこない…」



村雨「そんな…まさか本当に…」



夕立「提督さん…」



白露「何がダメだったの…?対潜哨戒はきちんと行ったはずなのに…」



春雨「司令官…」



提督「ぶは…!あ、あぶねぇ!今回はマジでやばかった…」



提督「!おーいみんな!こっちだ!」



白露「提督!」



村雨「提督!無事だったんだ!」



提督「ちょっと引き上げてくれない?」



時雨「うん!すぐ行くよ!」



夕立「無事で良かったっぽーい!」



春雨「ほんとに良かったです…はい」



提督「はあ〜…マジでどうなるかと思ったぜ…」



時雨「提督、大丈夫?どうやって上がってこれたんだい?」



提督「無理やり戦って全部沈めてやった」



村雨「すごいわ…海の中で勝っちゃうなんて…」



提督「いやでも本当にやばかったな…軽く死を覚悟したし…」



白露「ひとまず帰ろう!ここの任務は終わったし、何よりも提督も休んだ方がいいよ」



提督「そうだな…」



時雨「肩貸そうか?」



提督「大丈夫だ。まだ自分で行けそうだ」



夕立「無理しちゃダメっぽい」



提督「そうだな、ありがとう」



帰っている間も気温との戦いだった。むしろ上がっているようにも感じる



提督「う…」クラッ



春雨「司令官!本当に大丈夫ですか?容態が悪そうに見えますけど…」



提督「いや、ちょっとわる…」バシャン



春雨「司令官!?白露姉さん!司令官が倒れました!」



白露「え!?ちょっと提督大丈夫!?」



夕立「提督さんしっかりするっぽい!」



村雨「…意識がないわ…あそこの島で少し休ませましょう」



~とある島~



提督「うぅ…」



村雨「どうやら熱中症みたいね…やっぱりこの暑さには耐えられなかったみたい…」



時雨「仕方ないよ…こんな炎天下で海の上を走ってるんだ…提督にはきつすぎるよ…」



春雨「司令官、お水入れますね」



提督「…」ゴクゴク



時雨「提督、濡らしたタオル頭にかけるよ」



提督「…すまん…今日は迷惑かけてばかりだな…」



村雨「仕方ないわ。この暑さですもの。いつ倒れてもおかしくないわよ」



時雨「僕達でも少し暑く感じてしまうほどだしね」



提督「白露と夕立は…」



春雨「今は周りを警戒しています。まだ鎮守府からは距離がありますから」



提督「そうか…悪いな」



春雨「しょうがないですよこんな気温じゃ…」



村雨「提督、気分はどう?」



提督「まだ少し悪いが、鎮守府までなら行けそうだ」



時雨「じゃあ白露達のところまで行こう。提督、無理はだめだよ?」



提督「もう無理の利く体じゃねぇよ…日差しも強いからなるべく早く帰った方が良さそうだな」



春雨「手を貸しますよ」



提督「ありがとう、助かるよ」



一時はどうなるかと思ったが、無事に鎮守府まで到着した。これからはしっかりと体調管理は行わないとな…艦娘に迷惑をかけるわけにはいかない



~執務室~



提督「潜水艦相手は軽くトラウマだな…」



白露「まさかの事態だったからね…」



提督「全くだ。潜水艦も侮れないな」



プルルルル



提督「電話?誰からだ?」



白露「あっ!軽巡提督からだよ!」



提督「あいつから?何だろう?」ピッ



提督「もしもし」



軽巡提督「よう、元気にしてるか?」



提督「元気じゃねぇよ今日死にかけたわ」



軽巡提督「えぇ…何があったの…まあいいや、今はこっちの用件を伝えておこう」



提督「用件?」



軽巡提督「お前が申請した艦娘のことだ。うちの他に別の提督何人かが受理したよ」



提督「本当か?助かるよ。それで他の提督って?」



軽巡提督「明日みんなお前の鎮守府へ行くからその時のお楽しみだな。きっとお前は驚くと思うが」



提督「へっ?どういう…」



軽巡提督「つーわけでまた明日な、バイビー」プー



提督「バイビーって…パリピかあいつは…」



白露「どうだった?」



提督「艦娘の要請が受理されたらしいが、明日俺が驚く提督達が来るらしいと」



白露「驚く?誰なんだろう」



提督「さあな、明日の楽しみとしてとっておくか」



誰が来るのかは謎だが、どんな艦娘が来てくれるのも楽しみの一つだ。期待しておこう



駆逐艦提督と新たな仲間達



次の日



~執務室~



コンコン



提督「(来たか…)どうぞ」



軽巡提督「おっす」ガチャ



川内「お邪魔するよ~」



提督「いつもの二人か」



軽巡提督「と、お前に預ける艦娘だ」



阿武隈「こ、こんにちは~…」ヒョコッ



提督「阿武隈だったか、初めまして。よろしくな」



阿武隈「は、はい!よろしくお願いします!」



提督「ありがとな、人手不足で困ってたから助かるよ」



軽巡提督「まあもう1人いるんだけどな」



提督「もう1人?誰だ?」



軽巡提督「俺の隣にいるやつだ」



川内「夜戦なら任せてよね!」



提督「川内もか!?」



軽巡提督「あぁ、戦闘経験は十分だが、欠点夜戦夜戦うるせぇところだ。気をつけな」



川内「やだな〜提督、人を取り扱い注意みたいなこと言っちゃって〜」



軽巡提督「事実を話しただけだっつーの」



提督「…それより他にも提督がいるんじゃ?」



軽巡提督「あぁそうだった。おーい、入ってこい!お前はきっと懐かしむだろうな」



重巡提督「ちわーす!コード0久しぶりっすねー!」



提督「コード2!?マジかよ!」



コード2、今は重巡提督。重巡をベースに改造された被験者の1人である。性別は女で、髪は水色、目は青色で元気のあるやつだ



重巡提督「いやー久しぶりっすねー。数年だっけ?会ってなかったから嬉しいっすよ〜」



提督「いや俺もだけど…何?みんな提督してんの?」



軽巡提督「当たり。あと二人いるからな」



戦艦提督「久しぶりだな!」



空母提督「ご無沙汰しております」



提督「コード3とコード4まで…どうなってんの…」



コード3、今は戦艦提督。こいつも被験者の1人。性別は男、髪の色は黒色、目は赤色で、性格は誰より気合いの入ってる熱血系だ。



コード4、今は空母提督。被験者の1人。性別は女、髪の色は黒色、目は茶色で、性格は大人しく優しさのある大人のようなやつだ



提督「まさかここで昔の戦友と顔を並べることになるとはな…」



重巡提督「いやぁ〜懐かしいもんっすね〜」



空母提督「本当に懐かしいですね。みなさん元気そうで何よりです」



戦艦提督「俺はいつでも元気だ!」



提督「個性がありすぎて俺の艦娘が混乱しそうだな…」



軽巡提督「んなことよりここに預ける艦娘達待たせてるだろ?再開を喜ぶのはいいがさっさと紹介しようぜ」



重巡提督「そうっすね〜じゃあまずウチからしますよ。古鷹と鈴谷っす!」



古鷹「こんにちは。古鷹です。これからよろしくお願いします」



鈴谷「ちーっす!鈴谷だよ!これからよろしくね!」



提督「よろしくな」



戦艦提督「次は俺の艦娘だ!火力は正義!榛名だ!」



榛名「こんにちは。あなたが新しい提督ですね。よろしくお願いします!」



提督「あぁ、よろしくな」



空母提督「最後は私ですね。私は二航戦のお二人です。飛龍、蒼龍、どうぞ」



飛龍「航空母艦、飛龍です。空母戦ならお任せ!全力で取り組みます!」



蒼龍「航空母艦母艦蒼龍です。飛龍共々よろしくお願いします」



提督「二航戦か、よろしくな」



軽巡提督「これで一通り紹介は終わったな」



提督「いや〜こんなに心強い艦娘達が来てくれるなんてな…」



空母提督「前線に出られるんですもの。しっかりとした準備は必要ですもんね」



戦艦提督「そうだ!前線は地獄のような状況…俺達が昔戦っていた時期と似た感じだ!」



提督「昔か…」



共に戦っていた記憶はもちろんあるのだが、何故だろう、どこか忘れているような…



提督「それで、お前達は今どこで戦っているんだ?」



軽巡提督「みんな前線だ」



提督「え!?いいのか艦娘を預かってしまって…」



重巡提督「みんな立つ場所はいずれ同じだからいいんすよ!」



空母提督「そうですね。その時は共に頑張りましょう」



提督「…ちょっと白露型呼ぶわ」



重巡提督「え?ちょっと何するんすか?」



提督「決まってるだろ。すぐに前線へ出るんだ」



重巡提督「えぇ!?」



軽巡提督「お前マジかよ…」



提督「マジだ。戦力が整えばすぐに行くつもりだったからな」



戦艦提督「はっはっはっ!俺は嫌いじゃないぜ!」



提督「そりゃどうも。んじゃみんなこれつけて」スッ



空母提督「耳栓…ですか?」



提督「おう、付けとかないと耳壊れるぞ」



軽巡提督「何するつもりだよ…」



提督「こういうことだ」ピイイイィィィィ



提督4人「!?」



重巡提督「なんすかこの音!?」



提督「特殊な笛でな。普通に吹くだけですごい音が鳴るんだ」



ドドドドドド



白露「いっちばーん!」バーン



時雨「に、2番…」



村雨「はいはーい!3番!」



夕立「4番!っぽい!」



春雨「5番です!はい」



提督「よし、白露型みんないるな」



白露「あれ?軽巡提督と…」



重巡提督「重巡提督っす!」



戦艦提督「戦艦提督だ!」



空母提督「空母提督です。よろしくお願いします」



提督「みんな昔の仲間達だ。これからまた世話になる」



村雨「何だか賑やか…あっ!新しい艦娘もいるのね!」



夕立「夕立も混ざりたいっぽーい!」



春雨「挨拶しないといけませんね」



提督「そうだな。じゃあ白露から順に紹介しようか」



白露「はーい!白露型1番艦、白露です!1番艦です!」



時雨「白露型2番艦の時雨、これからよろしくね」



村雨「はいはーい!白露型3番艦の村雨よ!みんなよろしくね!」



夕立「白露型4番艦の夕立よ!よろしくっぽい!」



春雨「白露型5番艦の春雨です。よろしくお願いします」



提督「他にも紹介したい子があるんだけどあいにく今は遠征中でな…」



軽巡提督「構わない。この子達がお前の鎮守府の親衛隊だろ?」



提督「そうだな、主力部隊だ。こいつらと新しい子達と共に前線を支援する」



軽巡提督「そうか。おっと、俺達はそろそろ戻らないとな」



空母提督「そうですね。そろそろ戻りましょうか」



提督「もう帰るのか?」



軽巡提督「今は前線が大変だって言ってただろ?俺達もこういう時間には有限があるんだ」



重巡提督「また会えるっすよー!」



提督「そうだな。次は前線でだな」



軽巡提督「あぁ、待ってるぞ」



戦艦提督「艦娘達のこと、よろしく頼むぜ!」



提督「任せろ。必ず守り抜く」



空母提督「いいですか二人とも。提督の言うことはしっかり聞くのですよ」



飛龍「大丈夫!しっかりやります!ね、蒼龍?」



蒼龍「うん!大丈夫です!」



軽巡提督「せめてお前は夜戦夜戦うるさくする限度を少なくしろよ」



川内「え〜いいじゃん夜戦」



軽巡提督「お前…」



こうして俺の鎮守府には新たに7人の艦娘が預けられた。前線はかなりの激しい戦いになるだろうが、必ず越えてみせる



提督「あ、そういや忘れてた」



村雨「?どうしたの?」



提督「ほいこれ」ピラッ



白露「…?これ…え!?私と村雨の改二!?」



村雨「嘘!?本当に!?」



軽巡提督「いきなりすぎるだろ…」



時雨「何でそれを急に言っちゃうんだい…」



提督「いやぁ…仕事が多くていつもいつも忘れちゃうんだよね…」



春雨「姉さん達の改二…」



提督「春雨大丈夫だ…きっとお前もいつか来るから…」



春雨「は、はい…(あまり気にしてなかったけど…)」



川内「いいねぇ、これでもっと夜戦ができるね!」



提督「夜戦の数は関係ないだろ…」



阿武隈「もう…夜戦バカすぎるんですけど…」



提督「あっ…よく見たらこれで春雨以外みんな改二ジャマイカ…」



空母提督「あらら…」



古鷹「そういえば…」



鈴谷「みーんな改二だね」



榛名「あはは…」



戦艦提督「改二だらけだな!」ガハハ



提督「春雨ー!絶対改二来るから泣かないでくれ!」



春雨「は、はい…(泣いてはいないんですけど…)」



プルルルルル



夕立「提督さん!お電話っぽい!」



提督「んえ?」ピッ



提督「もしもし?」



大淀「提督!今から前線に出られるんですか!?」



提督「えっあぁ…ちょうど今からそっちに向かおうと思ったんだが…」



大淀「すぐに来てください!深海棲艦の大軍による進軍に前線が崩壊しかけています!」



提督「!すぐに行く!」



時雨「どうしたの?」



提督「すぐに前線に向けて出発だ!深海棲艦の大軍が押し寄せて来てるらしい!」



軽巡提督「!行くぞお前ら!」



空母提督「はい!」



重巡提督「お先に失礼するっす!またあとでー!」



戦艦提督「大軍か…!燃えてきたぜー!」



提督「俺達も行くぞ!」



白露「ちょっえぇ!?私達の改二デビューは!?」



提督「あぁーーー確かに!どうしよう!あああああぁぁぁ」



川内「提督少し落ち着きなよ」



提督「ふぅ」



鈴谷「そりゃ落ち着きすぎっしょ…」



提督「…白露、村雨!改二にするぞ!すぐに来い!」



白露「!オッケー!」



村雨「はいはーい!」



飛龍「あっ改二にするんだね…」



春雨「司令官らしいですね…」



時雨「改二したい気持ちが勝ったんだね」



夕立「白露と村雨が強くなるっぽい!」



俺達は少し遅れることになったが、前線は必ず守り抜かなければならない。崩壊すれば日本は終わりだ。必ず深海棲艦を食い止める。今度こそ…



駆逐艦提督と戦場の最前線



~鎮守府~



提督「それじゃ吹雪達、しばらくの間留守は任せたぞ」



吹雪「必ず戻ってきてくださいね」



白雪「無事に帰ってくることを願います」



提督「当然だ。俺達全員揃って帰ってくる」



綾波「作戦が無事に成功して帰還してくることを願っています」



提督「ありがとな綾波」



朝潮「司令官、ご武運を」



大潮「応援していますよ!」



荒潮「死んじゃダメよ〜?」



提督「あぁ、ありがとな」



春雨「司令官、そろそろ時間です」



提督「分かった。じゃあ、また会える日までしばしのお別れだ」



吹雪「頑張ってください!」ビシッ



提督「あぁ!」ビシッ



吹雪達と敬礼を行い、俺達は大本営へと足を向けた



~大本営~



提督「遅れましたぁ!」バァン



元帥「おぉ!…誰じゃったっけ」



提督「ラバウルの提督ですちくしょおおおぉぉぉ」



元帥「あぁそうじゃった!最近はやることが多すぎて人の名前を覚えている暇がないんじゃわい」



提督「(せめてどこの提督かぐらい覚えろよ…)」



元帥「さてと、お主に来てもらったのは他でもない。前線が崩壊しかけている」



提督「大淀から聞きました。俺達もすぐに前線へ…」



元帥「いや、行かなくてよい」



提督「え、どうしてですか?」



元帥「お主が行くのは前線ではなく…」



~前線~



重巡提督「こっちはもうもちそうにないっすよ〜!」



戦艦提督「こっちも限界だー!」



空母提督「こちらの艦載機もほとんど壊滅…まずいですね」



軽巡提督「あぁ…そうだな…」



大淀「こちら大本営の大淀です!たった今最終防衛戦の準備が完了しました!」



軽巡提督「…!あぁ分かった。こっちもそろそろ引き上げる」



空母提督「退却するんですか?」



軽巡提督「あぁ、あと任せられるのはあいつしかいない」



空母提督「…そうですね。こちらの艦隊もだめならもう彼に任せるしかなさそうですね」



軽巡提督「全員最終防衛ラインまで撤退だ!」



重巡提督「了解っす!」



戦艦提督「了解だ!艦娘達も引き上げさせる!」



軽巡提督「頼んだぜ…ラバウルの駆逐艦提督」



~最終防衛ライン~



提督「こんなところで食い止めるなんて責任重大すぎんか…?」



時雨「まあでもここで止めるのは僕達だけじゃないしね…」



提督「そうだな。改二になってさらに強くなったお二人さんもいるし」



白露「いっひひ!まっかせてくれちゃって!」



村雨「提督、さっきの作戦通りにしたらいいんでしょ?」



提督「そうだけど時間もない上に場所を変えられたもんだからバタバタ作戦考えただけだからな…うまくいくかは分からないが…」



春雨「司令官の作戦です。きっとうまくいきます」



提督「アリガトウ…」



榛名「提督!バリケード完成しました!」



提督「よし、こんな感じなら大丈夫だろ」



古鷹「バリケードもちますかね?」



提督「…ないよりマシってやつだな」



白露「大本営を囲むように作られてるんだね」



提督「一気に潰すならきっとここを狙いに来るさ。あいつらもそんなにバカじゃないはずだ」



飛龍「提督、艦載機の準備ができました!」



提督「了解した。蒼龍、さっき飛ばした偵察機から連絡は入ったか?」



蒼龍「…!前線にいた主力部隊が後退!深海棲艦の軍団がこちらに向かってきているとのことです!」



提督「よし、始めるか」



~~



戦艦棲姫「フフフ…」ドーン



軽巡提督「くそ!最終防衛ラインはまだなのか!」



重巡提督「もう少しっす!耐えるっすよ!」



戦艦提督「艦娘を援護しろ!全員が下がれるまで撃ち続けろ!」




空母提督「!見えてきました…ってあら?」



軽巡提督「!?なんじゃありゃぁ!」



重巡提督「バリケード…っすかね?」



戦艦提督「何してるんだあいつは…!」



提督「…!戻ってきたぞ!飛龍、蒼龍!艦載機発艦始め!」



飛龍&蒼龍「攻撃機、全機発艦!」バシュ



戦艦棲姫「!?」



提督「ここが最終防衛ラインだ!どっからでもかかってきやがれ!防衛は俺達が…」



みんな「いっちばーん!」



軽巡提督「なんだあの掛け声は…」



提督「さぁ!みんな行け!」



白露「さぁーて、張り切って、いっちゃいますかぁ!」



村雨「対艦、対潜、対空だって、やったげる!」



提督「俺はここに残って飛龍と蒼龍を援護する!残りは存分に暴れてきてくれ!」



鈴谷「了解!提督任せたよ!」



提督「ばっちこいだ!」



ブゥーン



夕立「提督さん!直上!」



提督「機銃一斉掃射!」ダダダダダ



時雨「すごい…敵の艦載機がどんどん落ちていく…」



川内「やるじゃん提督!」



提督「対空は任せておけ」



榛名「では榛名、全力で参ります!」



軽巡提督「おーい!通らしてくれないか!」



提督「無事だったか!」



軽巡提督「一応無事だが、負傷者が多い!すぐに治療が必要だ!」



提督「ここをまっすぐ行けばすぐ大本営だ!そこに明石がいる!」



軽巡提督「分かった!助かる!」



空母提督「コード0…あとは任せました」



戦艦提督「俺達はお前が勝つことを信じてるぞ!」



重巡提督「任せたっすよー!」



提督「あぁ任せろ」



あいつらの治療が済むまでの間、ここを必ず守らないといけない。だが、白露達が突撃した道に誰か一人立っていた



提督「…あれは誰だ?飛龍、見えるか?」



飛龍「はい…下にうつむいたまま立っていますね」



提督「フードを被ってるから分からないな…見たところ艦娘ではない…」



その瞬間、こちらを見て一気に突っ込んできた



提督「!?早い!」



蒼龍「武器を持ってます!ご注意を!」



提督「深海棲艦の1人か…!」シャキン



持っているものはおそらく刀か、こちらも刀で応戦しようとした



フードの男「フッ…」ユラッ



提督「消えた…!?」



飛龍「どこに…」



フードを被った男は目の前に現れた



提督「うわっ!」ガキン



攻撃を抑えた時に見えた頭にははっきりと角が見え、目は青色、肌は白かった



提督「フン!」キン



フードの男「…」



蒼龍「提督!大丈夫ですか!?」



提督「大丈夫だ!2人は艦載機を飛ばし続けろ!」



提督「(あの顔は明らかに深海棲艦だ…だが男のようだ…昔聞いた話じゃ深海棲艦は沈んだ艦娘とかじゃなかったのか…?)」



いや、俺達も艦娘達と似たような存在。いてもおかしくはないが…



フードの男「フン…」ユラァ



提督「また消えた…」



飛龍「提督、あれは一体…」



提督「顔は見えた、深海棲艦だ。だが、あんな深海棲艦は聞いたことがない。調べる必要があるな」



蒼龍「!提督!バリケードが!」



提督「しまった!いつの間に!?」



あのフードの男が現れる前は壊れていなかったのに…やつの仕業か…



飛龍「このままでは簡単に突破されてしまいます!」



提督「くそ!これがあいつの作戦か…!飛龍、蒼龍!耐えててくれ!少し前に出る!」



飛龍&蒼龍「了解!」



前線を切り抜けて攻め込んできた深海棲艦を1匹足りともバリケードには近づかせないようにしたが、1人で抑える事になったのでかなり体力を消耗してしまう事になった



だが、あのフードの男はあれ以降現れることは無く、その後も戦いは続き、2時間に及ぶ攻防戦は、ついに決着がついた



提督「ふぅ…まだ来るか?」ハァ…ハァ…



ピピピー



提督「通信だ…こちらラバウル提督」



大淀「提督、深海棲艦のレーダーから敵反応が消失、作戦成功です!」



飛龍「やったぁ!」



蒼龍「良かったぁ…!」



提督「やったぞおおぉ!」



夕立「提督さーん!」ガバッ



提督「夕立お帰り!よく頑張ったな!」ナデナデ



夕立「えへへ、嬉しいっぽい〜」



村雨「ちょっと〜村雨もなでなでして欲しいな〜」



提督「おぉ村雨!よく戻ったな!なでなでぐらい何回でもしてやるよ!」ナデナデ



村雨「うふふ、やったね♪」



時雨「提督、ただいま」



春雨「作戦完了ですね」



白露「ふぅ〜疲れた〜」



提督「あぁ…みんな戻ってる…良かったぁ…」



白露「どうしたの提督?なんかいつもと違うね?」



提督「当たり前じゃないか!防衛してる時ずっと心配してたんだ…」



軽巡提督「無事に終わったな」



提督「お前達も無事だったか!」



重巡提督「一時はどうなるかと思ったっすけどね〜」



戦艦提督「さすがはコード0だな!」



空母「はい。彼を信じて良かったですね」



軽巡提督「ほんとに凄いやつだよお前は」



提督「どうも、さっ、帰ろうぜ。治療したいし、何より腹減ったし」



夕立「ご飯たくさん食べたいっぽい〜!」



時雨「夕立はいつもお腹空いてるよね…」



村雨「あらいいんじゃない?私も今日はペコペコだわ」



戦艦提督「今日は祝杯だな!」



空母「そうですね。みなさん今日は本当によく頑張ってくれました」



提督「よっしゃあ!行くぞ夕立!」



夕立「ぽーい!」



春雨「えぇ!?もう行くんですか!?待ってくださーい!」



時雨「提督は元気だね…」



白露「ほんとに。さすがに私もヘトヘトだよ…」



軽巡提督「全くあいつは…俺達が手を貸してやる。それで大丈夫か?」



白露「え?いいの?ありがとう!」



空母提督「同じ海の上で戦う者同士、助け合わなければいけませんからね」



戦艦提督「艦娘を運ぶなら俺に任せろ!」



重巡提督「あんまり変な連れ方するとコード0から怒られるっすよ」



戦艦提督「んな事しねぇよ!」



軽巡提督「さ、帰るか」スタスタ



空母提督「そうですね」スタスタ



戦艦提督「おい、待てぇ!しないって言ってるだろぉ!お前らー!」



~大本営~



大淀「みなさん、今日は本当にお疲れ様でした!みなさんの力があってこその勝利です!」



元帥「うむ、ワシらも感謝せんといかんな」



他の提督「お前らすげぇよ!ありがとな!」



他の提督「お前達は俺達の英雄だ!」



ワーワー



提督「賞賛しすぎだって…」



白露「これ私達褒められているの…?」



提督「そうだ。みんな俺達を讃えてる」



時雨「こんなの…初めてだよ」



春雨「私も初めてです、はい…」



提督「俺もだ」



夕立「そんなことよりご飯食べたいっぽい〜!」



提督「お前ほんと頭の中ご飯のことばっかりだな…」



元帥「さて、この中で1番貢献をした者は誰かな?」



提督「え?ここにいるみんな貢献…」



軽巡提督「こいつです」



提督「え」



重巡提督「コード0っす」



提督「ちょっと…」



空母提督「はい、この方です」



戦艦提督「こいつがほとんど片付けました!」



提督「」



元帥「ほう…では艦娘の方も意見は同じかね?」



艦娘「はい!」



提督「お前ら…」



元帥「ではラバウルの提督よ。今お主何がしたい?」



提督「何がってそりゃ…」



大淀「ふふ…」



提督「勝利のお祝いですよ!」



夕立「ぽーい!」



元帥「その言葉を待っておった!」



提督「待ってたのかちくしょおおおぉぉぉ」



春雨「あはは…」



元帥「ここにいる全員で祝いじゃ!すぐに飯と酒を用意せい!」



憲兵「はっ!」



提督達「(絶対酒飲みたいだけだ…)」



その後に行われたお祝いは盛大に楽しめた。食べたり飲んだり、今日のことを他の提督にも話したり、白露型達と楽しんだりと…



~海辺~



提督「おええぇぇぇ…orz」



提督「(完全に飲みすぎた…頭も痛い…)」



時雨「提督、さすがに一気はダメだよ…」



村雨「周りから押されてたし仕方ないんじゃない?」



提督「全くだ…あいつら…」



村雨「時雨姉さん、とりあえず倒れたら介抱してあげましょう」



時雨「そうだね」



提督「悪いな…」



時雨「今日は提督ほんとに頑張ってたから当然だよ」



村雨「そうね。私達より頑張ってたんじゃない?」



提督「そんな事ないさ。みんなよく頑張ってくれた。俺はただ突っ込んだきたやつを倒しただけだったからな」



時雨「それでもすごいよ提督」



提督「そうかな…」



村雨「えぇそうよ」



提督「二人とも…ほんとにありがうええぇぇぇorz」



村雨「あぁ〜いい感じだったのにぃ〜…」



時雨「寝室まで送るよ」



提督「はい…」



駆逐艦提督と母親



大本営防衛戦から次の日



~寝室~



目覚まし時計「朝やで」



提督「うおおぉぉぉ」ガバッ



最近よく寝れていない気がする



提督「くそ…目覚めが悪いな…」



だが、これから作戦会議がある。昨日はお祝いで時間が潰れたので、朝早くから行われることになった



提督「早く着替えて会議室に行かないと…」



~会議室~



提督「いつつ…まだ頭が痛いな…」



軽巡提督「おはよう。目覚めが悪かったって感じだな」



提督「図星だよ…」



軽巡提督「隣空いてるから座れよ」



提督「あぁ、失礼する」



軽巡提督「朝から目覚め悪いとは、資料は全部持ってきてるか?」



提督「一応あるはずだが」



軽巡提督「…大丈夫そうだな」



提督「コード2達は?」



軽巡提督「あっちだ」



重巡提督「…zzz」



空母提督「コード2起きてください…会議室で眠るのはいけませんよ…」



戦艦提督「昨日よくはしゃいでたからな!」ガハハ



提督「…」



元帥「ふぅ、全員おるか?」ガチャ



提督達「はっ!」ビシッ



元帥「ふんふん…よし、全員おるようじゃな…1人死んでおるが…」



重巡提督「…zzz」



空母提督「申し訳ありません…あとで叱っておきます…」



元帥「あとでお主から説明しておけい…では本題に入るぞ」



元帥「今日はここから北の方で深海棲艦の動きがあった。この迎撃にはラバウルの提督に任せようと思っておる」



提督「お、俺ですか?」



元帥「うむ。これとは別の場所でも深海棲艦の動きがある。随時説明するがお主にはその北へ向かってもらう」



提督「質問ですが、どうして北の深海棲艦なのですか?」



元帥「駆逐艦にちょうどいい相手だからじゃ。あまり強敵のいる場所を選ぶのも苦だと思ってな」



提督「うち駆逐の他にもいますけど…」



元帥「あれ?そうじゃったっけ?」



提督「はぁ〜…分かりました、俺達は北へ向かいます」



軽巡提督「おい、いいのか?お前の艦隊ならもっと上の敵は倒せるだろ?」



提督「まだこの辺の海域にどんな敵がいるか分からないんだ。今は元帥殿の指示に従うよ」



軽巡提督「そうか、ならいいんだが」



その後、別の提督達への作戦の説明がされ、会議が終わった後、寝室に艦娘を呼んだ



~寝室~



提督「俺達は北の深海棲艦を倒すとのことだ」



村雨「どうして北なの?」



提督「俺達にお手頃な敵だからとさ」



白露「え〜私達ならどんな敵でもいっちばーん倒せると思うんだけどな〜」



提督「まあまあ、まだここらの敵をちゃんと把握していないからな。だから今回は榛名と川内、阿武隈も来てもらおうと思ってる」



榛名「榛名は大丈夫です!」



川内「夜戦するの!?」



提督「いや多分しないでしょ…」



川内「え〜」



阿武隈「夜戦バカには負けないんだから!」



鈴谷「鈴谷達はお休みなの?」



提督「まあそうだな。しっかり休んでてくれ」



飛龍「それじゃ、お言葉に甘えて休んどきます!」



提督「俺達は準備ができたら出撃するぞ」



村雨「はいはーい!」



~海~



提督「座標によるとこの辺だな」



春雨「何も見えませんね…」



夕立「あっ!あれっぽい?」



そこには深海棲艦と思わしき影が見えた。が、見えるのは一体だけだ。それにほとんど武装もしてなく、白いドレスのようなものを着ていた



提督「ほんとに深海棲艦か?」



白露「どうやって確かめる?」



川内「一気に突っ込めばいいじゃん!」



提督「ちょっ!川内待てって!」



川内「ふふーん、さっさと終わらせて帰って寝よっと…」



その瞬間、深海棲艦と思わしき影は川内に顔を向け一気に突っ込んできた



川内「うわ!早い!」



提督「川内!」



阿武隈「提督!?」



榛名「援護します!」



白露「行くよみんな!」



提督「(間に合え…!)」



川内「くっ!」ドーン



深海棲艦?「…」ヒュッ



川内「この距離で避けた…!?」



深海棲艦?「…」ガチャッ



川内「げっ!その髪砲台だったの!?」



提督「やめろ!」ガン



深海棲艦?「…!」



提督「川内!大丈夫か!?」



川内「う、うん…ありがとう」



阿武隈「もうー!勝手に突っ込まないでよね!」



時雨「僕達で足止めするよ!」



夕立「お任せっぽい!」



提督「俺も行く!」



深海棲艦?「…」ビュン



時雨「えっ!僕達を無視した!?」



夕立「提督さん!そっちに向かってるっぽい!」



提督「んな!」



深海棲艦はこちらにゼロ距離まで近づき、砲撃しようとしていた



提督「危なっ!」ガッ



深海棲艦?「フフフ…」



砲台を掴んだが、その時顔が見えた…肌は白く、目は青色だったが…



提督「あれ…その顔…」



顔を見た瞬間に掴んでいた手が緩んでしまった。砲台はこちらを向いた



白露「提督危ない!」ドーン



深海棲艦?「…!」ヒュン



春雨「司令官大丈夫ですか?」



提督「…」



ポカンとしていた。俺は頭が真っ白になっていた



春雨「司令官…?」



提督「まさか…そんなはずが…」



春雨「あ、あのぅ…司令官…?」



提督「そんなはずがない…!」ビュン



春雨「司令官!?」



時雨「提督!?どうしたんだい!?」



春雨「分かりません!」



俺は深海棲艦に向かって一気に突っ込んだ。もう一度あの顔を確認しなければ俺の気が済まない



深海棲艦?「…」ドーン



提督「まさかそんなはずがない!」バッ



砲撃避け、下から刀を振り、顔を覗いた瞬間に全てを悟った…



提督「…母さん…?」



白露「え…今提督なんて…」



村雨「お、お母さん…?」



阿武隈「嘘でしょ…」



榛名「そんな…」



提督「いやまさか…そんなことがあるはずが…」



深海棲艦?「ワタシノカワイイコ…コチラニイラッシャイ…」



提督「母さん…?」



白露「待って提督!あれはお母さんじゃないよ!深海棲艦だよ!」



提督「何言ってるんだ白露…あれは…俺のお母さんだよ…」



時雨「だめだ!提督が混乱し始めてる!」



夕立「提督さん!行っちゃダメっぽい!」



春雨「司令官!行かないでください!」



提督「放してくれ夕立、春雨…俺は母さんと帰るんだ…」



村雨「提督!目を覚まして!あれは深海棲艦よ!あなたのお母さんじゃない!」



提督「深海棲艦…?」



白露「そうだよ!あれは深海棲艦!私達の敵だよ!」



提督「…うぅ…」



榛名「提督!戻ってきてください!」



川内「提督!しっかりして!」



深海棲艦?「…」ビュン



川内「しまった!みんな危ない!」



夕立「来る!」



春雨「離れてください!」ドーン



深海棲艦?「ハナセ…」ドーン



春雨「きゃっ!」



白露「春雨!」



提督「春雨…?」



春雨「司令官…早く…戻ってきて…」



時雨「春雨離れるんだ!」



春雨「私達の司令官に戻って…」



提督「春雨…そうだ…俺には…」シャキン



深海棲艦?「ワタシノコ…」



提督「まだ守るべき者がいる!」ブン



深海棲艦?「クッ…!」



春雨「司令官…!」



提督「すまない春雨…助かった…」



春雨「はい…!」



白露「提督が戻った!良かった!」



時雨「提督!無事かい?」



提督「あぁ…けど悪い、撤退しよう。まだ頭の中が整理できてない…」



村雨「そうね、ここは一度退きましょう!」



深海棲艦?「マテ…!」



提督「ごめん、母さん…少し待ってて」ピン



抜いたのはフラッシュバン。破裂と同時に視界と聴覚を一時的に奪う投擲物だ



提督「また来るから!」ブン



バァン



深海棲艦?「ウッ…!ウゥ…」



提督「…」



~大本営~



元帥「お主の母親に似てたじゃと?」



提督「はい…恐らく…」



元帥「分かった…こちらからも調べておく。お前さんには辛いだろうが、深海棲艦ならば倒さねばならない。休みをやるから気持ちを整理しておいてくれ」



提督「はい…」



~寝室~



提督「母さん…」



村雨「提督…」



提督「まさか本当に深海棲艦だなんて…信じられるはずがない…」



時雨「提督…自棄にはならないでね…」



提督「あぁ…なんで……!」



そういえば昨日戦ったフードの男も何か関係しているのでは?そう考えたが、母は艦娘ではない。可能性は低いはずだが…



提督「なんで深海棲艦になったんだ…!どこから?どうやって?全く想像がつかない…」



春雨「司令官…」



白露「春雨…私達には今はそっとしておく事が1番提督にできることだよ…」



春雨「は、はい…」



時雨「提督…」



提督「どうして…帰ったら一緒にどこか出掛けようって約束したじゃないか…!それなのに…」



提督「どうしてなんだ…!どうして…こんな結末に…俺は…俺は…」



春雨「…」グスッ



夕立「提…督…さぁ〜ん…」ポロポロ



村雨「…」ポロポロ



時雨「…」



白露「提…督…」



提督「くそ…くそぉ…!」



一週間後



~会議室~



元帥「それでは今日の会議を始める。今日は…」



軽巡提督「…あいつ、今日も来ないな…」



空母提督「心にかなり深い傷を負っているはずです…致し方ありませんよ…」



ガチャッ



軽巡提督「!」



提督「ハァハァ…遅れてすみません…」



軽巡提督「お前…来たのか…」



元帥「お主…もう大丈夫なのか?」



提督「はい…心に覚悟を刻んできました…俺は…母さんと…戦います」



空母提督「ついに決心したんですね…」



重巡提督「やっぱりすごいっすよ…こんなに早く決心するなんて…」



戦艦提督「俺達には到底真似出来ないな…」



元帥「…分かった。では急遽作戦を変更する。北で発見された深海棲艦。それを排除する」



提督「待ってください!…ここは俺だけにやらせてください」



元帥「何!?よいのか!?」



提督「これは俺と母との親子喧嘩です。俺の最初で最後の、母への反抗期です」



提督達「…」



元帥「…分かった。親子の間に割り込むわけにはいくまい」



提督「ありがとうございます」



軽巡提督「元帥殿!いいのですか!」



元帥「じゃが、必ず帰ってこい。お主という大切な存在を失うわけにはいかないのでな」



提督「必ず…」



軽巡提督「絶対戻ってこいよ!死んだら許さないからな!」



重巡提督「そうっすよ!あの世なんか行かせませんから!」



空母提督「必ず生きて帰ってきてください…!」



戦艦提督「絶対に帰ってこい!絶対だ!」



提督「…あぁ」



~海~



提督「…」カチャ



俺は母との決着をつけるため大本営の前で装備の準備をしていた。



春雨「司令官…本当に行かれるんですね…」



提督「あぁ、決着をつけるよ」



時雨「絶対帰ってきてね」



提督「あぁ絶対帰ってくる」



白露「必ず戻ってきてね!提督は私達のいっちばんな提督なんだから!」



提督「…ありがとな白露」



村雨「提督…とても辛い戦いになるかもしれないけど負けないでね…」



提督「あぁもう決心したんだ。負ける訳にはいかない」



夕立「提督さんすごく強いからきっと帰ってくるっぽい!」



提督「ありがとな夕立。お前からはいつも元気をもらってるもんな」



準備が整った。俺は北に向けて出発しだした



提督「それじゃあ、行ってくる」



白露「あっ提督待って!」



提督「どうした?」



白露「みんな!私達の提督は…」



みんな「いっちばーん!」



提督「…!」



白露型全員で俺に向かってあの掛け声のポーズをしてくれた



白露「提督!私達はここで提督が帰ってくるまで待ってるから!」



提督「…グスッありがとう!行ってくる!」



~~



母「…」



提督「見つけたよ母さん…」



母「アア…ワタシノコ…」



提督「ごめん…俺、今から母さんに反抗するから!」シャキン



母「ウア…ウア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」



提督「っ…」



母「ワタシガイッショウケンメイニソダテタノニ!オマエハアアアァァァ!」



提督「ごめん…でもこうするしかないんだ…こうするしか!」ビュン



母「ウア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」ビュン



提督「うおおぉ!」ドーン



母「ヴァァァァ!」ドーン



提督「くっ…!」ダダダダダ



母「ヌゥ!」キンキンキン



お互いに撃ちつ撃たれつの状況が続いた。だが、お互いにいつかは弾切れを起こす



提督「くそ!弾が!」カチン



母「グアァ!」ビュン



提督「くっ!」ガシャン



雷撃を行おうとしたが、母はすぐそこまで来ていた



提督「くそっ!だめか!」ビュン



母「オノレチョコマカト!」ビュン



提督「!?髪を近接武器に使うのか!」



母「ニクキワガコ!シズメェ!」ブン



提督「くそ!抑えきれない!」ガキン



母「フフフ…シズミナサイ」



提督「うぁ!」ブン



母「グゥ!」ガキン



上から振り下ろした刀は髪に止められ、隙を見せている腹に1発拳が入ってしまった



提督「ぐふっ…」



母「フン!」バキ



提督「うぐぁ!」



大きな一撃が入った俺は大きく吹っ飛ばされ、近くの島の砂浜にうちあげられた



提督「いって…あばら何本かいったな…」



母「ハンコウスルヤツメ…ココデコロシテヤル…!」



提督「まだだ!」ピン



ここで抜いたのはスモークグレネード。起爆すると中から大量の煙が出てくる



提督「ふん!」ブン



バシュッ



母「ウッ…!」



母「クソ!ドコニイッタ!」



提督「こっちだ!」ザン



母「ウア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」



振り下ろした一撃で左腕を切り落とした



母「クソオオォォォ!」ブン



提督「うっ!危ない…」



母「シネ!シネエエェェェ!」ブン



提督「そろそろ終わりにしよう。母さん…」



カチン



母「ンナ!?」



提督「フラッシュバン」



バァン



母「ウグアアアァァァ!」



母「クソ!ドコダ!ドコダァ!」



ドスッ



母「ア…ァ…」



提督「俺の勝ちだよ母さん…」



心臓にめがけて刺した一撃は勝負の決着をつけた



母「ウァ…」ドサ



提督「母さん…」



母「ア…私の子…」



提督「母さん…?母さん!」



咄嗟に戻った声に母を抱き上げた



母「ごめんね…こんな姿であなたを攻撃しちゃって…母さんったらダメな親よね…」



提督「そんなことない!どうして…どうしてそんな姿になっちゃったんだよ…」



母「母さんね…久しぶりにお父さんと会ってきたの…」



提督「父さんと…?」



俺の父は、俺が生まれた時からずっと家にはいなく、いつも母が1人で家計の事も含めて俺を育てていたのだ



母「お父さんと出会ってね…私はお父さんの研究所まで案内させてもらったの…」



提督「研究所…」



俺自身もそれは初めて知った。父さんが研究所で働いているなんて…



母「でもそこからはあまり記憶がなくてね…いつの間にか私こんな姿になっちゃってて…」



提督「そんな…」



母「でもあなたと出会えて良かった…最後はあなたと喧嘩しちゃったけど、私はとても嬉しかったわ…」



提督「やめてよ母さん…」



自然と涙が出てき始め、空は曇り雨がポツポツと降り始めた



母「あなたがこんなに成長しているなんてお母さんびっくりしたわ…最後にあなたの姿が見れて良かった…」



提督「待ってよ…まだ話したいことたくさんあるのに…」



母「これからもたくさん苦労することがあるかもしれないけど…でもあなたは…今のあなたができることをしなさい…お母さんはそれを空から見守ってるから…」



提督「母さん…?」



母「…」



提督「………母さああああぁぁぁん!!」



降り注いだ雨は、俺自身の涙を表しているかのような悲しく、重たい雨だった



提督「うわああああぁぁぁ!!」



涙も雨も激しくなり、俺の顔はぐちゃぐちゃだった



そして1つの命散り際に島に咲いていた1輪の花は、雨によって散っていった



提督「あああああぁぁぁぁぁ!」



その時、母の最後の言葉を思い出した



提督「…今の俺にできること…」



俺は母の体を抱き上げ、大本営まで連れていった



提督「せめて…立派な土の中で眠ってほしいから…」



~大本営~



軽巡提督「おい!すごい雨だぞ!お前達も早く戻れ!」



白露「私達はここにいるよ」



川内「みんな風邪引いちゃうよ!」



時雨「提督もきっと同じ状況だよ。だから僕達もここにいなきゃ」



軽巡提督「なんて精神だ…」



村雨「提督はこんな状況でも海の上で戦っているの…せめて私達も同じ海の上で立っていないとね」



夕立「夕立こんなの全然へっちゃらっぽい」



春雨「司令官は絶対に戻ってきてくれます。だから、ここで待っています」



軽巡提督「(すごいな…ブラックと言われていたラバウルの艦娘達とここまで絆が深いなんて…)」



阿武隈「すごい雨…」



榛名「この状況で提督は戦っているのですね…」



古鷹「きっと帰ってきますよね…?」



鈴谷「いつもは雨気にしちゃうけど、今日は何故か全然気にしないんだよね」



軽巡提督「なら…俺も傘なんか差してられないな」



~それからしばらく経ち…~



川内「あれ?提督戻ってきたんじゃない!?」



時雨「あれ…提督だ…」



村雨「戻ってきてくれた…」



夕立「提督さぁ〜ん…」バッ



白露「待って夕立」



夕立「…?」



白露「あれ、お母さんを抱えていると思う…」



春雨「司令…官…」



時雨「っ…!」



提督「…」



軽巡提督「くっ…!…全員敬礼!」バッ



艦娘「…!」バッ



提督「…」



敬礼をしている艦娘達の間を俺は母を抱えて通り過ぎた。あまり周りを把握できなかったが、少なくとも艦娘達の顔は泣き崩れていたことは分かった



提督「…ありがとう」



駆逐艦提督とフードの男



母の葬儀から数日後、この数日、俺は1つの疑問があった



~寝室~



提督「(そういえばあれからフードの男と会っていない。やつはどこからどうやって現れるんだ?)」



あの日から突然姿を現してはそれ以降目にしていない。俺の知っている限りでは母の深海棲艦化に1番関係を持っているならフードの男だと考えた



提督「(やつを探さないと…でも手掛かりもないし…)」



コンコン



提督「誰だ」



時雨「提督、入ってもいいかい?」



提督「時雨か、いいぞ」



時雨「失礼するよ」ガチャッ



提督「どうしたんだ?」



時雨は何かが入った袋を持っていた



時雨「えっと、少しでも元気を出してもらえるようにって思って、みんなでクッキー作ってきたんだ…」



提督「そんな…俺なんかのために…」



時雨「僕達に何かできないかと思って、こんなのしか作れなかったけどいつもの提督の顔が見たくて…食べてくれるかな?」



提督「…ありがとう。もちろんいただくよ」



時雨「うん…!」



提督「(美味しいな…)」モグモグ



そうか、いつも俺は考えすぎなんだ。少しはこうやって頭と心を落ち着かせるのも大事だな



提督「ありがとう時雨。このクッキーとても美味しかったよ。みんなにも伝えておいてくれ」



時雨「うん、ありがとう。提督…お母さんのことは本当に残念だけど…早く元気になってね。提督の元気な顔を見れるのを待ってるから」



提督「…あぁ」



時雨「それじゃあね」



提督「…いつまでもくよくよしちゃダメだよな」



こんな姿、母はきっと望んでいないはず。気持ちを切り替えていつもの仕事に戻らないと



提督「…よし」



~その夜~



提督「元帥殿、失礼します」ガチャッ



元帥「…!お主、戻ってきたのか…!」



提督「はい。いつまでもあんな姿じゃ、母に怒られちゃいますから」



元帥「立派じゃの…母親の育て方に間違いはないようじゃ」



提督「母には感謝しています。こうして今ここにいるのも母のおかげですから」



元帥「そうか…」



提督「では、これからもよろしくお願いしま…」



ビービー!



提督「!?」ビクッ



元帥「何事じゃ!」



大淀「大変です!大本営敷地内何者かが侵入したようです!」



元帥「何!?警備はどうなっている!?」



大淀「それが…外の憲兵達は全員やられていて…」



提督「…俺が行きます!」



元帥「すまん!他のやつもすぐに呼んでくる!」



提督「はい!」



~~



提督「ハァ…ハァ…外は完全にやらているな…」



憲兵「うぅ…」



提督「…!おい!大丈夫か!?」



憲兵「うっ…フードを被った男が…」



提督「何…!」



フードの男「よぉ…見つけたぜ」



提督「…!」バッ



フードの男…間違いない。あの時のあいつだ



提督「こんなところまで何しにきやがった。深海棲艦め」



フードの男「おいおい、勝手に深海棲艦なんて決めつけんなよ」



提督「あの時の防衛戦にいたやつだろ。肌は白いし、目は青、おまけに頭から角が生えてちゃ深海棲艦ですって言ってるようなもんだ」



フードの男「ちっ、全部見てたのか」



提督「いい加減そのフードを外したらどうだ?とっくに敵にはバレてるんだ」



フードの男「ふん…いいのか?お前には衝撃が走ると思うぜ」



提督「どういうことだ…」



フードの男「ふっ…」スルッ



提督「…!?」



フードの中から現れたのは俺と同じ顔の深海棲艦だった



提督「何で…俺が…」



フードの男「説明するのは面倒なんでな…今はお前を殺すことが先決だ」ビュン



提督「っ…!」シャキン



海には出ていないため、いつもと同じ武装はなく、護身用の刀のみしかなかった



フードの男「遅いな」バキッ



提督「ぐぅ…!」



刀を取り出していた時には既に後ろに回られ、腰に蹴りを入れられた



提督「かはっ…」



フードの男「おいおい、もう終わりか?海の英雄はそんなもんじゃねぇだろ」



提督「くそっ…!」ブン



フードの男「おせぇんだよ」ジャキン



フードの男の右腕は刃と化し、俺に向かってものすごい速さで飛び込んできた



提督「うぐっ!」ガキン



フードの男「守ってばっかじゃ面白くねぇぞ。もっと突っ込んでこいよ」



提督「ふん…!」ブン



フードの男「遅い」ザン



提督「うああぁぁ!」ブシャア



横腹に一撃が入った。深くはないが、刃の切れ味が鋭いため、血が流れ出す



提督「ぬぐ…!」ブシュッ



出血した部分を止血するだけで精一杯だった



フードの男「こんなもんか…」



提督「ハア…ハア…」



フードの男「終わりだ」ブン



軽巡提督「ふん!」キン



フードの男「!」



空母提督「やぁ!」ブン



フードの男「薙刀か…」ガキン



フードの男の刃は右腕だけではなく、左腕まで変形した



空母提督「くっ…!コード3!お願いします!」



戦艦提督「うおおぉ!」ブン



フードの男「お前は拳か…ふん」ガキン



軽巡提督「うわっ!」



空母提督「きゃっ!」



2人が抑えられているかと思いきや、いとも簡単に弾かれた



フードの男「何人も鬱陶しいんだよ」ゴッ



戦艦提督「ぐはっ!」



フードの男の回し蹴りで戦艦提督は軽く吹っ飛ばされた。俺達の中で1番ガタイのあるやつなのにあんなに簡単に…



軽巡提督「コード3!」



フードの男「お前も邪魔だ」ドゴッ



軽巡提督「うぐっ!」



フードの男の右腕はさらに変形し、軽巡提督に重い打撃を与えた



空母提督「そんな…」



重巡提督「わわわ…何もできない自分が悔しいっすよ…」



フードの男「全く手間掛けさせやがって。俺はお前を殺すことなんだよ」シャキン



提督「…!」



フードの男「お前をゆっくりと苦しませてやりたいからな」



提督「ぬあ!」ブン



フードの男「まだあがくか」シュッ



提督「消えた!どこに…」



フードの男「おとなしくしてろ」ドゴッ



提督「ぐはっ…!」



大きくふっ飛ばされ、建物の壁に叩きつけられた



フードの男「さあ、苦しめ」



夕立「提督さん!」



提督「夕立!来るな!」



フードの男「ほう…」ビュン



夕立「えっ…」



フードの男「お前を殺して、あいつにゆっくり苦しみを味あわせてやろう」



白露「提督!大丈…夕立!?」



時雨「夕立!」



村雨「夕立危ない!」



春雨「夕立姉さん!」



フードの男「あんなに仲間がいるのか。まあいい。まずはお前から殺してあいつに最高の苦しみを与えてやろう」



夕立「あ…」



フードの男「死んでもらおう」ブン



提督「やめろー!」バッ



夕立「提督さ…!」



ザシュッ



提督「ぐあああぁぁぁ!!」ブシャアアアア



フードの男が突き刺したのは俺の左目に向かって刺さった



フードの男「ふん…庇ったか…」



夕立「提督さああぁぁん!!」



春雨「いやあああぁぁぁ!!」



村雨「春雨!見ちゃダメ!」



時雨「提督!!」



白露「嘘…」



フードの男「ふん…口ほどにもならんやつだな。庇うことしかできないやつめ」



提督「…」



夕立「提督さん!起きて!起きてぇ!」



白露「…春雨!明石さんを呼んで!早く!」



春雨「…は、はい!」ダッ



フードの男「…そうか、この大本営ごと潰してしまえば最高に苦しめるだろうな」



提督「…!」



フードの男「まずは先にこの建物ごとおさらばしておこう」ガシャン



フードの男の右腕はさらに変形し、砲台へと変わった。その瞬間俺の体は自然に立ち上がった



提督「…やめろ」ググッ



フードの男「もう遅い」ドーン



提督「やめろぉ!」ダッ



俺は無我夢中で大本営に向かって走り出した。全てが崩れる前に助けられるのはたった1人…



提督「春雨ーーー!!」



春雨「!司令か…」



提督「うおぉ!」バッ



春雨「きゃっ!」



春雨を庇った瞬間に建物が一気に崩れ出した



フードの男「ふん、最後まで仲間を庇って自ら死を選んだか。馬鹿め」クルッ



時雨「提督ー!」



白露「春雨!提督!」



村雨「夕立!大丈夫?立てる?」



夕立「あ…提督さんが…提督さんが…」



村雨「夕立…」



~次の日~



大本営は全て崩れたとはいかなかったが、半壊、数人かの提督や憲兵などの死者が出た。そして外では瓦礫に埋もれている人々を探す人命救助が行われていた



白露「提督!春雨!どこなの!返事をして!」



時雨「提督…!春雨…!お願いだから出てきてよ…!」



村雨「2人共お願い…生きてて…」



夕立「…」



軽巡提督「うぐっ…いたた…」



空母提督「大丈夫ですか?もう少しだけ我慢してください」



戦艦提督「いたっ!もう少し慎重に頼む…」



重巡提督「この中で1番怪我なかっただけ幸いっすよ…」



軽巡提督「コード0はまだ見つかってないのか…?」



空母提督「白露型のみなさんが必死に探していますが…まだ見つかっていないようです…」



戦艦提督「あいつに預けた艦娘達はどうなっているんだ?」



重巡提督「それがみんな待機していたから半壊した時に巻き込まれて…今はみんな明石のところっす…」



軽巡提督「今はあいつのことが心配だ…生きているかどうかも怪しいのに…」



提督「…」



提督「(ここは…?…そういえば大本営が崩れて春雨と…そうだ!春雨!)」



提督「春…雨…生きているか…?」



春雨「…」



提督「(良かった…意識はないがみたいだが生きているみたいだ…)」



俺と春雨は瓦礫に下敷きにされているみたいだ。どう脱出したものか



白露「…督!春…!どこ…の!」



提督「白露…?」



時雨「提…!春…!」



提督「時雨…」



近くにいる…どうにかこの場所にいることを伝えないと…何か…



提督「(これは…)」



腰に手をあてるとフレアガンがある事に気がついた。これなら彼女達に今いる場所を伝えられる



提督「頼む…気づいてくれ…!」バン



村雨「あれって…!」



白露「信号弾…!誰かいる!」



時雨「助けないと!」ダッ



提督「くっ…!」



今の空へ向けて上げた腕の力が精一杯だった。撃った後に腕はすぐに下がりだらんと瓦礫についた



提督「(ダメだ…意識が…)」



時雨「これ…提督の手!提督!」



白露「すぐに瓦礫をどかさないと!」



村雨「誰か!手伝える人はいませんか!提督が埋まっているんです!」



軽巡提督「…!」バッ



空母提督「あっ!…私も行きます!」



重巡提督「自分も行くっす!」



戦艦提督「俺も行く!…いたた…」



時雨「提督!今助けるから!」



軽巡提督「俺も手伝う!」



空母提督「私もお手伝いします!」



白露「みんな…」



重巡提督「コード3何やってんすか!力仕事なら1番っすよね!?」



戦艦提督「ちょっと待て…まだ腹が…」



重巡提督「コード1は重傷なのに手伝ってるんすから弱音吐かないでほしいっす!」



戦艦提督「わーったよ!どかすから手伝え!」



時雨「僕達もどかそう!」



村雨「えぇ!」



軽巡提督「急げ!早くどかすんだ!2人を早く助けないと!」



空母提督「うっ重たい…」



戦艦提督「どけコード4!俺に任せろ、」



空母提督「すみません、助かります…」



白露「提督!春雨!お願い出てきて!」



村雨「時雨姉さん!これ一緒にどかして!」



時雨「分かった!」



軽巡提督「いたぞ!2人一緒だ!」



村雨「春雨!」バッ



時雨「提督!」バッ



白露「提督…良かった…」ヘナッ



軽巡提督「すぐに向こうで寝かせよう!病院まで運ぶ準備をする!」



~~



春雨「…」パチ



村雨「春雨!起きたのね…!良かった…」ギュッ



春雨「村雨姉さん…ここは…」



村雨「大本営の外よ。あなた、提督と一緒に瓦礫に巻き込まれたから…」



春雨「司令官…そうだ!司令官は!」



村雨「提督は…」



白露「提督!起きて!ねえってば!」



時雨「お願いだよ提督!目を開けて!」



春雨「そんな…!司令官…!」ググッ



村雨「待って春雨!あなたはまだ無理して動いちゃダメ!」



春雨「でも!司令官が…!」



村雨「大丈夫…きっと提督は大丈夫よ…」



春雨「でも!私を庇って司令官が!私のせいで!」



村雨「あなたは悪くないの!今は…無理をしないで…」



春雨「…」ポロポロ



医師「ただいま到着しました!怪我をしている方はどなたですか?」



軽巡提督「彼です!急いでお願いします!」



医師「担架を!急いで!」



時雨「提督!絶対に死んじゃだめだよ!」



白露「もう少しだから!」



提督「…」



ほんの少し、ぼんやりと時雨と白露が見えた。2人共涙を浮かべているようだ。なんで俺はいつも艦娘達を泣かせてしまうんだろう…



~病院~



医師「何とか一命を取り留めました」



軽巡提督「良かった…」



医師「ですが、彼の体は人以上に重傷しています。本来なら死んでもおかしくない傷です」



軽巡提督「そう…ですか…」



医師「それにもう1つ問題があります…」



軽巡提督「何ですか…?」



医師「彼の体に病気が見つかりました」



軽巡提督「!!」



駆逐艦提督と大病



軽巡提督「一体病気ってどんな症状なんですか…」



医師「これまでの類をみない非常に珍しい病気でまだこちらでも解明のできていない病気です。一体どこで感染して、どんな時に感染したのかはまだ分かりきっていないんです」



軽巡提督「そんな…」



医師「ただ、この症状に感染した方々の言葉に一つだけ共通した点があるんです」



軽巡提督「それは…」



医師「フードを被った男に攻撃されたと」



軽巡提督「!」



医師「何か心当たりはありますか?」



軽巡提督「はい…あいつはそのフードの男と戦いました。それどころか俺もその戦いに身を投じた1人です」



医師「…ということはフードを被った男にやられても必ず感染する訳では無いということですね…」



軽巡提督「彼は助かるんですか?」



医師「こちらも全力を尽くして治療を行います。ですが、これまでにこの病気の治療に成功した例はありません」



軽巡提督「どうにかならないんですか!あいつにはまだ残されたものが沢山あるのに!」



医師「残念ですが…もし、残りの時間があるとしたら…余命は3ヶ月です」



軽巡提督「3ヶ月…たったの3ヶ月ですか…?」



医師「はい、1度彼を病室に送ります。よろしければ真実をお伝えください」



軽巡提督「…はい」



~病室~



提督「…」



ピッピッ



軽巡提督「…お前にこんなのなんて伝えたらいいんだよ…」



軽巡提督「あれだけ誰よりも必死に頑張ってきたお前があと3ヶ月で人生終了なんて…あまりにも理不尽すぎる…」



軽巡提督「それに…お前の仲間達にはどう伝えたらいいんだ…こんなの誰も受け止められない…」



2週間後…



提督「…」パチッ



今まで俺は寝てたのか…?何していたんだっけ…



提督「(左目が見えない…)」



左目は包帯で巻かれている……そうだ!俺はあのフードの男と…



提督「(フードの男…やつが俺か…)」



不思議とフードの男が自分自身という事実にはあまり驚かなかった



提督「う…」ググッ



何とか起き上がろうとしているがいつどのくらいまで寝ていたのか分からないから、筋肉がまだきちんと働かない



提督「ハァ…」ギシ



横になるのってただただ退屈だよな



提督「…何か聞こえるな」



話し声だろうか。数人の声だ。その声は段々と近づいてきてる



提督「…あいつらか」



軽巡提督「ここだ」ガラ



春雨「司令官…」ダッ



時雨「提督、分かるかい?僕だよ」



白露「提督、まだ寝てるのかな…」



提督「起きとるわ」



白露「うわ!びっくりした!」



村雨「提督起きてたんだ!」



軽巡提督「目が覚めたか…」



提督「あぁ…まだちょっと記憶が曖昧だが」



春雨「司令官!ごめんなさい!私が急いだばかりに周りが見えていなくて…」



提督「いいんだよ、あれは俺の意思でやったことなんだ。春雨が謝ることじゃない」ポン



春雨「う…すみません…」



時雨「提督、無事で本当に良かったよ…」



白露「ほんとに心配したよ」



提督「死んでもおかしくなかったんだがな…生きててよかったぜ」



軽巡提督「…」



提督「…コード1元気ないな。戦友の目覚めにはご不満か」



軽巡提督「い、いや!…そうだな…一命を取り留めて本当に良かったと思ってる」



提督「そうか…」



村雨「あの…提督、夕立がちょっとね…」



提督「?」



村雨「あの時、提督が夕立を庇った時、左目を失った提督の姿を見てかなりショックを受けててね…罪悪感でいっぱいらしいの」



提督「あの夕立が…珍しいな」



村雨「今は提督と顔も合わせられないんだって…良かったら退院した後提督が見に行ってあげて」



提督「分かった、ありがとう」



時雨「そういえば提督あとどのくらいで退院できるんだい?」



軽巡提督「1ヶ月だからあと2週間くらいだな」



白露「あと2週間だって!提督早く元気になって私達にいっちばんに挨拶しにきてね!」



提督「はは、了解だ」



軽巡提督「じゃあな、ゆっくり休めよ」



提督「あぁ」



軽巡提督「…(伝えられなかった…やっぱり無理だ…これを伝えればあいつの希望を奪うことになる…)」



さらに2週間後…



~大本営(臨時)~



元帥「よく戻ってきたなラバウルの提督よ。またよろしく頼む」



提督「はい。お世話をかけました」



元帥「むしろお主はよく頑張ってくれた。あの状態からも復帰するとは大したもんじゃ」



提督「お褒めに預かり光栄です」



元帥「これからも体に気をつけて執務に臨むように」



提督「はい!」バッ



~屋外~



夕立「…」



提督「こんなところにいたのか夕立」



夕立「…!提督さん…」



夕立は建物の隅で体育座りをしてうつむいていた。その隣に俺も座った



夕立「夕立はダメな子っぽい…提督さんの目が見えなくなったのは夕立のせいっぽい…」



提督「何言ってんだ。夕立が死んでしまうより、片目なくして生きてる俺の状況が1番良かっただろ」



夕立「でも…提督さんの目は…」



提督「確かに左目は見えなくなったさ。でも右目はあるだろ?」



夕立「え…?」



提督「完全に見えなくなってないんだ。今こうして夕立が見えているんだから」



夕立「提督さん…」



提督「大丈夫、俺は今まだ夕立が見えているだけで幸せだよ」



夕立「提督さあぁん!」バッ



提督「よしよし、またよろしくな。夕立」



夕立「うん…!よろしくね…!」



~寝室~



提督「…」ペラ



軽巡提督「読書中に失礼するぞ」



提督「ノックぐらいしろよ…」



軽巡提督「…」コンコン



提督「いや遅せぇよ!」



軽巡提督「相変わらずの元気だな」



提督「あぁ、これからも迷惑をかけるぜ」



軽巡提督「これからか…」



提督「どうしたんだ?」



軽巡提督「お前にいつかは言おうとしてたんだ…溜め込んでおくのは良くないよな…」



提督「一体どうしたんだそんなに改まって」



軽巡提督「実は…お前が入院した日…病気が見つかったんだ」



提督「…病気?別に俺はなんとも…」



軽巡提督「違う!急死するんだ!それもあと2ヶ月で…!」



提督「…!どういうことだよ…」



軽巡提督「どうもフードの男が関係しているらしいんだ…この病気かかったやつ全員がフードの男によって感染したと報告がある…」



提督「待てよ…そしたら俺は…3ヶ月しか余命がなくて、あと2ヶ月で死ぬのか!?」



軽巡提督「…あぁ」



提督「…何でそれを早く言わなかったんだ!それを言われなきゃ俺はあいつらにさよならも言わずに死んでたってことだろ!」



軽巡提督「すまない…お前がこれを聞いたら絶望するんじゃないかって」



提督「こっちはとっくの前から絶望してんだよ!」



軽巡提督「…!」



提督「こんな体にされた時から既に心に明かりなんか消えてた!それを少しだけ灯してくれたのがあいつら白露型なんだ!」



軽巡提督「…」



提督「何で俺はいつもいつも…頭を悩ませなきゃいけないんだよ…」



軽巡提督「…すまない…俺も言うのが辛くて…」



提督「あと2ヶ月だろ?その間にあいつらとできるだけ時間を取って、最後にフードの男を殺す」



軽巡提督「お前…あいつを倒すって言うのか?」



提督「当たり前だ。こんな体にされたのも全部あいつのせいだ。全部責任を取ってもらう」



軽巡提督「…そうか、なら止めはしない。今の俺にお前を止める権利はないからな」



提督「そうだな。誰に止められようと俺は行く」



軽巡提督「この話を他にやつに話すかどうかはあとはお前に託す。自由にしてくれ」



提督「…」



その夜…



~屋上~



提督「(ここに来てから災難続きだ…いやラバウルにいた時からか)」



今まで何度も命の危機にさらされそして母親という大切な存在も失くした。残されたのは白露型達…だが、2ヶ月後にはあいつらを残して俺もこの世を去る



提督「あいつらにはどう言ったらいいんだ…」



この屋上から見える海…夜だからか、海は黒く見えた。まさに俺の心を表していた



提督「白露…時雨…村雨…夕立…そして春雨…こんなこと話したらまた泣かせちゃうだろうな…」



こんな話を今話しても後に話しても結果は変わらないだろう。俺と同じ答えが出てくるはずだ。どうして早く言わなかった、と。既に1ヶ月経っているから言われても仕方がないだろう。彼女達は突然言われても受け止めきれないはずだ



提督「いつかは言わなきゃいけないな…」



いずれ真実を知ってもらわなければならない。隠し事はなしだと約束したんだから



駆逐艦提督と長期休暇



季節は夏も終わり、秋へと変わり、外の風景は少しずつ紅葉の色を見せてきた



~大本営~



提督「建物も大分直ってきたな」



村雨「すごいよね、こんなに早く仕上がっちゃうなんて」



提督「全くだ。最近の技術は侮れないな」



村雨「そういえば、今日の執務はどうするの?」



提督「…実は1ヶ月ほど休暇をもらったんだ。俺達だけな」



村雨「え!?1ヶ月も!?」



提督「元帥殿にお願いしたらすんなり承諾もらってさ…びっくりだろ?」



村雨「それはびっくりだけど、それよりもなんで1ヶ月も?」



提督「最近は執務が多すぎてお前達となかなか時間が取れなかったからな。だからこの長い休暇で色々思い出を作ろうと思って」



村雨「提督…そんなこと考えてたなんて…」



提督「行きたいところあるか?」



村雨「たくさんあるよ!みんなで決めましょう!」



提督「よし、寝室で話そう」



休暇をもらったのは他でもない残された時間の中で白露型との思い出をできるだけ多く作ること。元帥殿に病気のことと、休暇の件を話したら少々悩んだものの、すぐに了承してくれた



~寝室~



提督「ん〜…」



白露型が来るまでの間、旅行雑誌を読みながら待っていた



提督「海外旅行もいいけど、6人じゃさすがに出費でかいかな…」



提督「あっでも、ハワイとかいいかも…」



夏は泳げなかったし、まだハワイじゃ暖かいだろうし、いいんじゃないだろうか。出費もどうせここでしか使わないだろうと自分に言い聞かせ、候補にした



村雨「提督ー、みんな呼んできたよ」コンコン



提督「入っていいぞ」



白露「提督来たよー!」バーン



時雨「提督、おじゃまするよ」



夕立「お出掛けっぽーい!」



春雨「失礼します」



提督「みんないらっしゃい」



夕立「どこにいくっぽい?夕立楽しいところに行きたいっぽい〜!」



村雨「何か決まったの?」



提督「こ↑こ↓」



白露「いいねぇ!ハワイかぁ〜まだ泳げるかな?そしたらいっちばんに泳ぐんだから!」



時雨「待ってよ白露。さすがそこは譲れない」



白露「なにぃ!?私がいっちばんなんだから!」



ワーギャーシグシグ



村雨「ハワイね、水着もいるのかしら?」



提督「まああそこで泳ぐ泳ぐって主張してるからいるだろうな」



春雨「ハワイですか、1度行ってみたかったんです」



提督「ハワイはいいぞ〜。俺も行ったことないけど」



村雨「何で今さも行ったことのある感じで言ったのかしら…」



提督「…とりあえず、みんなハワイでいいか?」



村雨「何でそらしたのかしら…ま、い・い・け・ど・ね♪私は賛成だよ」



春雨「はい、もちろんです」



夕立「夕立もハワイ行きたいっぽい〜!」



提督「あの2人は…まだ言い争ってるけどまあ賛成でいいだろ」



ハワイへの準備のために色々と準備が必要なので、村雨と春雨とで服の買い出しに向かった



村雨「ねえ、3人はよかったの?」



提督「ずっと言い争ってるし、そこに夕立も混じったからしばらく終わらないだろうしな。帰ってくる頃には終わってるだろ」



春雨「おんなに長く続くものなんですね…」



提督「負けず嫌いな2人が言い争えば終わんないだろうな」



村雨「確かにそうね…」



春雨「司令官、そういえば前に街に出掛けた時と変わってカジュアルな服で来たんですね」



提督「試着とかするだろうし、それに制服で行くのも変だろ?」



春雨「ふふっ、何だか新鮮です」



提督「ありがとな」



村雨「さあ、早く洋服見に行きましょう。水着とかも、ね?」



提督「あぁ、そうだな」



~洋服店~



提督「何で俺をレディースに連れてくるんだ…」



村雨「やっぱりこういうのは男の人に見てもらわないとね♪」



提督「周りに女性しかいない部屋にただ1人男が取り残されてるような状態みたいじゃねぇか!」



村雨「まあまあ、春雨、試着した?」



春雨「は、はい…どうでしょうか…?」シャッ



村雨「あらあら、すごくいい感じ♪ほら提督、感想言ってあげて」



提督「すごく…いい…感じ…( ˘ω˘ ) 」ブシャア



春雨「いや〜!司令官〜!」



村雨「何でそんなに鼻血が出てくるのよ…」



提督「いつも同じ服だったからめちゃくちゃ新鮮に感じる…」



春雨「村雨姉さんも試着してみませんか?」



村雨「そうね」



提督「ちょっと待て、提督出血多量で死んじゃうから…!」



春雨「あれだけ出たらもう出ませんよ…」



~数分後~



村雨「じゃーん!どうかしら?」



春雨「村雨姉さんとっても素敵です!ね、司令か…」



提督「あぁ…綺麗だ( ˘ω˘ ) 」ブシャー



春雨「いや〜!今度は逆から〜!」



村雨「ほんとに死んじゃうわね…」



~さらに数分後~



提督「鼻両方塞がれて息できねぇんだけど」



村雨「両方出ちゃったから仕方ないでしょ…」



店員「いらっしゃいませ〜、まあ親子さんですか?」



提督「いや親子じゃ…」



村雨「お義父さんです♡」ギュッ



店員「まあなんて仲の良いこと…♪」



提督「…( ˘ω˘ ) b」スポンブシャー



春雨「いや〜!ティッシュが取れてまた鼻血が〜!」



店員「お客様〜!?」



それから何とか止血し、無事に用事も済んだので外に出た



提督「お前マジで今までの戦いで血が無くなってるんだからこれ以上俺の血を無くすな、マジで死ぬから…」



村雨「ごめんなさい…でも、今まだ生きているだけ奇跡よ!」



春雨「確かにある意味奇跡ですね…」



提督「何で生きてんだろう俺…」



春雨「ひとまず私達の分は終わりましたね。あとは司令官の分ですかね?」



提督「そうだな、しっかり決めないと」



~また別の洋服店~



村雨「やっぱり提督にはかっこいい服が1番よね」



提督「これから寒くなるし、上から羽織れるのが欲しいな」



春雨「こんなのどうですか?」



提督「ロングコートか、いいかも…」



春雨「試着してみてください!」



提督「分かった。着てみようか」



村雨「待って提督、これと合わせていいんじゃない?」



提督「いいねぇ…1回合わせようか」



~数分後~



提督「試着してみたけど…どうかな…?」



村雨「提督ったら、すっごくいい感じ♪」



春雨「とてもかっこいいです♪はい!」



提督「2人が満足ならこれでいいか。あまり悩むのもあれだし、ちゃちゃっと決めよう」



~~



提督「今日は良いもの買えたな」



春雨「はい、それにとっても楽しかったです♪」



村雨「うふふ、そうね」



提督「俺も楽しかったよ。鼻血の時以外はな」



村雨「もう、掘り返さないでよ…」



春雨「あはは…」



村雨「さ、無事に用事も済んだし、早く帰りましょうか!」



春雨「はい!」



提督「あぁ」



~寝室~



村雨「はい、これが白露姉さんね」



白露「わあ、ありがとね!」



村雨「これが時雨姉さんの」



時雨「ありがとう、村雨」



春雨「これは夕立姉さんのですね」



夕立「春雨ありがとうっぽい〜!」



提督「えーと、日焼け止めに、ビーチバレー用のボールに、サングラスに、浮き輪に、水着に…」



白露「提督遊ぶ気満々じゃん…」



時雨「何気に提督が1番楽しみにしてたんじゃない?」



提督「げっ、バレたか…」



村雨「まあでも、私達も同じくらい楽しみにしてるし、ね?」



時雨「そうだね」



夕立「夕立楽しみで今日は寝れそうにないっぽい〜」



提督「遠足行く前日の小学生かお前は…」



春雨「夕立姉さん、明日は早く起きなきゃいけないんですよ?」



夕立「ぽい〜…」



提督「俺は何故ハワイに行くのに輸送機で行くのか謎だけどな」



白露「まあお金もかからないしいいんじゃない?」



村雨「今から飛行機の便を予約は厳しいでしょうからね」



提督「それもそうか、よし、明日は早いから部屋に戻ったらすぐに寝るように。みんなおやすみ」



白露「はーい!みんな戻るよー」



時雨「じゃあ提督、明日ね」



村雨「おやすみなさい提督」



夕立「うぅ〜…おやすみっぽい」



春雨「おやすみなさい司令官」



バタン



提督「…最初で最後の旅行か…」



母との旅行の約束もあったが、それは叶わず終わってしまった。旅行には行ったことがないため、これが最初で最後の旅行になる。でもこの子達となら後悔なんてない



提督「みんなありがとう…」



駆逐艦提督とハワイ旅行



~大本営~



提督「ここまでありがとな」



重巡提督「お土産よろしくっす!」



戦艦提督「いい土産を期待してるぞ!」



提督「アッハイ」



空母提督「楽しんできてくださいね」



提督「あぁ一生の思い出にしてくる」



軽巡提督「…」



提督「…おい、お前が1番元気だして見送らなきゃいけないだろ」



軽巡提督「!あぁ!楽しんでこい!」



提督「よし、じゃあな」



空母提督「行っちゃいましたね…」



重巡提督「しばらくはコード0と白露型ちゃん達とは会えなくなるんすねぇ」



戦艦提督「何言ってんだ!いずれ帰ってくるんだ!その時に土産話を期待しておけばいい!な!コード1!」



軽巡提督「そうだな…期待してる」



空母提督「…?」



~輸送機~



春雨「わぁ…もう大本営があんなに離れて…」



提督「春雨、そろそろ危ないからハッチ閉めるぞ」



春雨「は、はい!すみません!」



村雨「楽しみねぇ、ハワイ」



白露「着いてハッチが開いたら別世界だよ!楽しみだなぁ」



時雨「提督、着いたらまずどうするの?」



提督「元帥殿の別荘に行くんだ」



時雨「元帥殿の別荘…?」



村雨「別荘持ってたんだ…」



提督「俺も最初は驚いたが、そこを特別に貸してくれるらしい」



夕立「早く海に行きたいっぽい〜!」



提督「海は明日だな。今日は移動に時間がかかるし、着いた頃には夕方か夜だからな」



春雨「結構時間がかかるんですね…」



提督「そうだな。だから、しばらく寝ておくといい。腹が減ったらここに弁当があるからな」



夕立「夕立はお休みするっぽい」



春雨「結局昨日あまり寝れなかったですもんね…」



村雨「私も少し休もうかしら」



白露「私も寝ようっと」



提督「あぁおやすみ」



~数分後~



春雨「3人ともすっかり寝ちゃいましたね…」



提督「よっぽど楽しみだったってのがよく伝わってくるよ」



時雨「あはは…そうだね。提督、少し話したいから隣いいかな?」



提督「構わないよ。春雨もおいで」



春雨「は、はい!失礼します」



時雨「提督、今日は旅行に連れて行ってくれてありがとう。いつか提督とどこかに出掛けたいってみんなで話してたんだ」



提督「そんな話してたのか…」



春雨「はい、出撃だけじゃなく、どこか行こうってみんなで考えてたんです。でも、司令官から先に言われちゃいましたね…」



提督「同じ気持ちだったんだな」



時雨「うん、みんな同じ気持ちだったんだ」



提督「俺の提案に間違いはなかったんだな」



時雨「そうだね」



提督「…俺達まだ出会ってまだ数ヶ月だって知ってるか?」



春雨「そういえば、まだ私達会ってから数ヶ月しか経ってないんですね」



時雨「その数ヶ月がかなり密度が濃いかったからね…」



提督「確かにこの数ヶ月で色々ありすぎたなぁ…」



数ヶ月か…1年も経たずに提督生活に幕を閉じるなんて…



提督「いやだなぁ…」ボソ



時雨「提督、何か言った?」



提督「いや、楽しい数ヶ月だったなって」



春雨「楽しくて、大変で、色々ありましたけど、やっぱり私は司令官と会えて良かったなって思ってます」



時雨「僕もそう思うよ」



提督「俺もだ。お前達に会えて良かった」



春雨「数ヶ月で何か面白いことありましたっけ?」



提督「たくさんあったな。例えば…」



時雨と春雨と一緒に話していたらもう昼になっていた



提督「ってもう昼か。弁当食っとくか」



春雨「あっそうですね。いただきましょう」



時雨「僕も食べるよ」



提督「3人は…食べ終わったあとに起こすか」



~~



提督「ふぅ〜美味しかった」



時雨「ごちそうさま」



春雨「ごちそうさまです。姉さん達を起こさなきゃですね」



提督「そうだな。おーい、3人とも昼だぞ。弁当食べないか?」



白露「んえ…?もう昼…?」



提督「おう、おはよう。昼だぞ」



村雨「ん〜…弁当?いただこうかしら…」



夕立「ぽい〜…」



提督「ちょっと俺は睡眠をとるよ。よく寝れない日が多いからな」



時雨「僕も少し休もうかな」



春雨「私も少しお休みします」



提督「あ、2人とも隣で寝るんだ…」



時雨「あっ…ダメだったかな…?」



提督「一向に構わん」



時雨「ふふっ、ありがとう」



提督「ふわぁ…寝よ…」



白露「…3人とも寄り添っちゃって」



村雨「む〜…ちょっとだけ羨ましいなぁ…」



しばらくして…



提督「…んあ、あ、おい、2人とも着いたみたいだぞ」



時雨「うぅん…」



春雨「ふわあぁ…」



提督「ん?んん?」



白露「…zzz」



村雨「…zzz」



夕立「ぽにゃ〜…zzz」



提督「何でみんな俺に集まってんだー!」



~ハワイ~



白露「わあ!ここがハワイかぁ!」



時雨「日本と全然違うね」



村雨「新鮮な空気ね〜」



提督「さて、別荘まで移動するか」



~別荘~



白露「わー!すごーい!」



提督「元帥殿が特別に借りてくれたんだ。感謝しないとな」



村雨「元帥様もたまにはいい事してくれるのね」



提督「仮にもお前の上の上だからな…」



白露「あー明日が楽しみ〜」



夕立「夕立も楽しみっぽーい!」



時雨「2人とも張り切ってるね」



提督「明日から海だしな。準備万端だぜ」



春雨「気合い入ってますね」



提督「いや〜、やりたいこと多すぎてな〜」



春雨「私も明日は楽しみです、はい」



移動中に寝ていたが、夜もすんなり寝れた



~次の日~



白露「海だー!いっちばーん!」ダッ



時雨「ここは譲れない」ダッ



提督「早い…」



夕立「夕立も行くっぽい〜!」ダッ



春雨「今日はよく晴れてますね」



提督「あぁ、快晴だな。てか暑い」



村雨「中に水着着てきてよかったね」



提督「あぁ、てかあいつら日焼けオイル塗らなくてよかったのか…?」



春雨「あ、本当ですね…」



提督「村雨と春雨塗っとくか?」



村雨「そうね、塗っときましょ」



春雨「はい、そうします」



~~



提督「ほらほら、これでどうだ?」



村雨「あ〜、いい感じいい感じ〜…」



春雨「村雨姉さん少し卑猥ですよ…」



提督「ほら春雨も」



春雨「ひゃっ!提督いきなり…ん…!」



村雨「春雨は敏感すぎるのよ…」



提督「敏感だな。すごく」



村雨「それにしても提督が水着姿を見て鼻血出さなくよかった」



提督「さすがに1回出たらもう出ねぇよ…」



村雨「提督も塗っとく?日焼けオイル」



提督「オッスお願いしまーす!」



~~



村雨「それじゃ、始めるね」



提督「なんで俺の体に乗ってんの…?」



村雨「いいからいいから♪」



提督「うつ伏せで上に乗るのはまずいって…」



村雨「ほら、春雨も塗ってあげて」



春雨「え?は、はい!」



提督「頼むゾ〜」



春雨「ど、どうですか?司令官」



提督「まず何で春雨まで上に乗るのかな?村雨ちゃん教えてもらおうかね」



村雨「雰囲気って大事じゃない?」



提督「何の雰囲気!?」



夕立「提督さん面白そうなことやってるっぽーい!」



春雨「あっ夕立姉さん」



提督「何っ!?待て夕立!」



夕立「ぽい!?」ズルッ



提督「背中日焼けオイル塗ってるから滑るんだ…」



白露「夕立〜何提督の上に乗ってんの…ってあー!日焼けオイル塗るの忘れてた!」



時雨「あっ僕もだ…遊ぶのに夢中で忘れてたよ…」



村雨「まだ提督に塗ってる途中よ」



提督「じゃけん、終わるまで待ちましょうね」



春雨「司令官、終わりましたよ」



提督「おっ、んじゃ白露達がビーチバレーの用意でもすっか」



春雨「いいですね。私も手伝います」



~~



提督「ビーチバレーって意外に疲れるんだな…」



村雨「提督がレシーブしてばっかりだっからね…」



提督「夕立のジャンプ飛びすぎじゃね?どこであんな飛躍力手に入れたの…」



夕立「足に力入れたらあれだけ飛べるっぽい!」



提督「みんな足に力入れてると思うよ?」



時雨「夕立は僕達とはまた違う力があるからね…」



提督「すげぇよ夕立は…とりあえず俺は疲れたから砂埋めしようかな」



時雨「じゃあ僕が砂かけるよ」



提督「おっありがとう」



~~



提督「あ〜あったけ〜」



時雨「ちょうど雲が太陽隠してくれたね」



提督「あぁ、これなら直射日光が当たらないぜ」



時雨「あっ太陽出てきた」



提督「ぎゃあああぁぁぁ目が、目があああぁぁぁ」



時雨「提督!僕が遮るから!」



そう言って上から時雨が遮ったものの目の前に胸部が…



提督「うわぁ!近い!時雨ありがたいけど近い!何がとは言わないけど近いよ!」



時雨「あっごめん!」バッ



提督「また鼻血出たぁ!村雨ー!」ブシャアアアア



村雨「はいはーい!」ダッ



白露「(騒がしすぎて周りから視線浴びてる…他人のフリしとこ)」



~~



提督「どうしてこんなにも鼻血は出るのか」



村雨「提督がちゃんとした男の子ってのが分かるね」



提督「しばらくここで休んどくか…」



村雨「そうね、パラソルもあるから少しは涼しいんじゃない?」



提督「そうだな…」



春雨「司令官、飲み物ありますよ」



提督「あぁ、いただくよ」



村雨「提督、私スイカ割りしたいなぁ」



提督「誰が割るの?」



村雨「もちろん提督よ」



提督「知ってた」



春雨「それじゃあ、スイカ持ってきますね」



~数分後~



提督「何も見えないのって変に緊張しちゃうんだよな…」



夕立「大丈夫っぽい!夕立達応援してるっぽい!」



提督「どこにあるか教えてよ…」



村雨「やっぱり提督なら1人で行けるよね?」



提督「マジか…余計なプレッシャーをかけやがって…」



白露「はい提督、目隠し巻けたよ!」



提督「よーし…」



提督「(大丈夫…最後に見えた位置なら、このまままっすぐに進めばいいだけ…)」



スイカ…スイカ…



スイカ「ここやで」



提督「でええぇぇぇい!」パカーン



白露「えぇー!すごっ!」



時雨「い、1回で割っちゃった…」



夕立「提督さんさすがっぽいー!」



提督「ふぅ…どんなもんだ」



村雨「提督それは面白くないわ…」



提督「お前俺に何を求めてんだよ…」



村雨「もっとこう姉さん達とかに当たったりとかね…」



提督「えぇ…破廉恥すぎるわ…」



夕立「そんなことよりスイカ食べたいっぽーい!」



春雨「そうですね。綺麗に分けていただきましょう」



~数分後~



村雨「おいしーい!」シャクシャク



時雨「うん、美味しいね」シャクシャク



夕立「ぽーい!」シャクシャク



提督「うん、美味しい」シャクシャク



白露「提督!最後にこれやろー!」



提督「ビーチフラッグ?何か俺参加したら災難起きそうだから審判していい?」



春雨「誰が競走するんですか?」



提督「もちろん白露型で」



春雨「えぇ!?」



~~



提督「あ〜審判超ラクだわ」



村雨「どうして私達も…」



夕立「楽しみっぽい!」



白露「ふっふっふっ、1番はこの私だよ!」



時雨「何言ってるんだい白露、ここは譲れないよ」



春雨「うぅ…不安です…」



村雨「じゃあ勝った人は提督から何かご褒美もらいましょ」



提督「は?」



夕立「ご褒美っぽい!?負けないっぽい!」



白露「それでも1番とってやるんだから!」



時雨「僕こそ負けないよ」



春雨「ま、負けません…!」



提督「参加しなくても災難が勝手に生まれた…今の内に財布と相談しとこ…」



提督「…とりあえずうつ伏せて。合図が鳴ったらスタートだからな」



白露「ふふん!いつでもいいよ!」



提督「はい、いきまーす。3…2…」パン



春雨「!」ダッ



村雨「!?ちょっと!?」



時雨「…!」ダッ



白露「そりゃ不意打ちだって!」ダッ



夕立「でも負けないっぽい!」ダッ



提督「あれ?白露とか時雨が抜けてくるかと思ったけど何か予想外だな…春雨が前に出てる…」



春雨「と、取りましたぁ!」ズサァ



白露「うわぁ!止まらない!」



時雨「うっ…!まずい!」



春雨「えっ?きゃあ!」



春雨の上に次々と乗っかっていった…



提督「あ〜こうなると予想してたから回避してて良かったぜ…」



春雨「う〜…姉さん達重たいです…」



時雨「ごめん春雨!大丈夫?」



春雨「は、はい…」



白露「くああぁ!悔しい〜!」



村雨「というわけでご褒美は春雨に決まりましたぁ!」パチパチ



春雨「…!す、少し嬉しいです!」



提督「全然嬉しくない人もいますけどね」



村雨「そんな事言わないでほら、春雨に何か言ってあげて」



提督「はぁ…春雨あめでとう。何か欲しいものはあるかい?」



春雨「欲しいものというか…お願い事なんですけど…」



提督「…?」



春雨「きょ、今日は司令官の隣で寝てもいいですか?//」



提督「ファッ!?」



時雨「うぐ…僕もそうして欲しかった…」



村雨「あらあら、結構大胆な事言っちゃうのね♪」



春雨「だ、ダメですか…?」



提督「あ、あぁ…いいよ」ポリポリ



春雨「あ、ありがとうございます!」



~~



提督「大丈夫か?狭くない?」



春雨「は、はい!大丈夫です!」



提督「珍しいな、春雨が隣で寝たいなんて」



春雨「そ、そうですか…?」



提督「いやそうだろ〜普段は真面目なのに」



春雨「そんな風に見られてたんですか…」



提督「だって何事にも頑張る姿は真面目以外の何でもないだろ?」



春雨「は、はい…ありがとうございます」



提督「あ、もう明日も早いからもう寝ないとな」



春雨「あっ!司令官、1つだけいいですか?」



提督「どうした?」



春雨「そ、その…司令官は誰かと…ケ、ケッコンしようとか考えてますか…?」



提督「え!?いきなり!?うーん…今のところというか、ケッコンをすることはできないな」



春雨「え…あ、そう…ですか…」



提督「だって好きなやつが5人もいるんだからケッコンなんて無理だろ」



春雨「…え…?」



提督「ケッコンをするということはその子が誰よりも特別な存在ということになってしまう。俺は平等に好きなのに1人を選んで特に特別な存在なんてしたくないんだ」



春雨「し、司令官…」



提督「だから今も好きな子が目の前にいてすごく緊張してるんだ」



春雨「あ…///」



提督「さあ早く寝よう。明日も早いからな」



春雨「(私司令官に今告白されたの…?///え?え?)」



ケッコンはできない。好きな子が5人もいるからというのは確かだがもう1つある。あと2ヶ月で俺はこの世にいなくなるからだ。指輪をはめたとして、2ヶ月後にはいなくなるなんて状況が逆だとしても俺は耐えられない。だからケッコンは考えなかった



それから数日間ハワイで遊び尽くした俺たちは、お土産を持って大本営まで戻った



~大本営~



提督「ほらよ、お土産」



重巡提督「おおおぉ!沢山っすね!」



空母提督「ありがとうございます」



軽巡提督「ハワイは楽しかったか?」



提督「あぁ、満喫できたよ」



戦艦提督「土産話はあるだろ?聞かせてくれ!」



提督「笑いあり、災難ありだったぜ。まずは…」



駆逐艦提督と艦娘達



提督「…」



休暇が終わるまでの数日、俺はのんびりと自分の時間を過ごしていた



提督「は〜…この人の小説はどれも面白いな…」



コンコン



提督「入って、どうぞ」



蒼龍「提督、こんにちは」ヒョコ



提督「蒼龍か」



飛龍「ついでに私も!」



提督「二航戦か」



飛龍「私だけ名前じゃない!」



提督「まとめて省いただけだ。どうしたんだ?」



蒼龍「今夜一緒にお菓子とお酒でもどうですか?」



提督「おー行くいく。いつもの縁側か?」



飛龍「はい!待ってますね!」



提督「おう。あとでな」



数分後…



鈴谷「チーっす提督、今時間ある?」



提督「…ビックリするからノックぐらいしろって…」



鈴谷「…」コンコン



提督「軽巡提督のマネするんじゃねぇ!んで?時間はあるけど」



鈴谷「それじゃあ、町行こ!阿武隈っちと榛名も一緒だよ」



阿武隈「あ、どうも…」ヒョコ



榛名「こんにちは!」ヒョコ



提督「よお、まあ暇だったし構わないよ」



鈴谷「やった!それじゃあ行こう!」



~町~



提督「相変わらず賑やかだな」



榛名「ここは1番盛んな町らしいですよ」



鈴谷「あっ!提督、あそこ寄ろうよ!」



提督「タピ…オカ…?」



阿武隈「何あれ…私知らないけど…」



鈴谷「ほら行くよ」グイッ



提督「ちょっと!」



阿武隈「わあ、人が沢山並んでる…」



榛名「とても人気なお店みたいですね」



提督「…不思議と女性が多い気がするんだが」



鈴谷「だいじょーぶだって!ん?あれは…」



阿武隈「あ…古鷹さん…」



提督「ほんとだ…」



古鷹「〜♪」



榛名「とてもウキウキしていますね…」



提督「おい」



古鷹「ひゃあっ!て、提督!?それに鈴谷に榛名さんも!?」



鈴谷「古鷹もここのアレ買いに来たの?」



古鷹「元は鈴谷から教えてもらったから来たんだけど…」



提督「その飲み物、底のやつはなんだ?」



古鷹「これ、タピオカです」



提督「タピ…」



別のものに見えたことは黙っておこう。何がとは言わない



提督「これが人気なのか?」



鈴谷「今大流行してるよ」



阿武隈「私初耳なんですけど…」



榛名「榛名も初めてお聞きしました…」



鈴谷「まあウチら艦娘にはあまり関係はないからね」



提督「(俺行かない方が良かったかも…)」



鈴谷「提督、これ買ったら次はあっちね!あ、もちろん古鷹も一緒にね」



古鷹「わ、私も!?」



鈴谷「別にいーじゃん?時間あるっしょ」



古鷹「ま、まあいいけど…」



提督「(この時間は白露型と同様に大変になりそうだ…)」



夜…



提督「(鈴谷達には色んな所へ連れていかれて疲れた…二航戦の2人とゆっくりしよう…)」



蒼龍「あ、提督!こっちこっち!」



飛龍「ちょうど良かったですね!」



提督「おう、ピッタリだな」



飛龍「はい、提督のお酒です」



提督「これはまた雰囲気あるな。縁側ってのもあって最高だな」



蒼龍「それじゃあ2人とも!」



3人「かんぱーい!」



提督「…」グイ



提督「は〜…生き返るぜ〜…」



飛龍「やはりお酒はいいものですね〜」



蒼龍「あ、お菓子もありますよ。どうぞ」



提督「ありがとう、いただくよ」



飛龍「こうして過ごすのもいいですね」



蒼龍「ほんと。ずっとこうやってできたらいいのになぁ…」



提督「…」



その言葉を聞く度に心に刺さる、胸が痛くなるほどに



飛龍「提督?どうしました?」



提督「あぁすまん!少し胸焼けがな…」



飛龍「え〜早くないですか?」



提督「このぐらいまだ平気だって。それにしても、今日は月が綺麗だよな」



蒼龍「確かに、今日の月はとても綺麗ですね」



飛龍「ほんとだ。満月ってのもいいよね」



提督「あぁ、ほんとにな…」



\ヤセーン!!/



提督「アイツの声さえ聞こえなきゃな…」



飛龍「もう、雰囲気ぶち壊しだよあの夜戦忍者は」



蒼龍「あはは…」



提督「なあ、2人が空母提督の所にいた時の事、話してくれないか?」



蒼龍「どうしたんですか?」



提督「空母提督とずっと会ってなかったからアイツが何してたか聞きたくてな」



飛龍「いいですよー!どこから話そうかな」



蒼龍「いっその事、私達が着任した所から話しちゃう?」



飛龍「蒼龍、それすごく長くなっちゃうよ…」



提督「いいっていいって。今日はとことん付き合ってやるよ」



蒼龍「ほら、提督もこう言ってることだし!」



飛龍「それじゃあそうしようか。まず私達が着任した時はですね〜…」



飛龍と蒼龍の思い出話は長く続いたが、とても楽しく過ごせた



駆逐艦提督と最後の1ヶ月



残り1ヶ月、俺はフードの男を倒すために特訓をしていた



~道場~



軽巡提督「よく頑張るなぁお前は…」ハア…ハア…



提督「そりゃあ、あいつに勝つためにはこれぐらい自分を追い込まないとな」



軽巡提督「悪くない心がけだが、無理はすんなよ」



提督「あぁそのつもりだ」



軽巡提督「それじゃあもっかいいくぞ!」



提督「よしこい!」



~寝室~



夕立「最近提督さんあまり見かけないっぽい?」



時雨「道場で特訓してるらしいよ。何でも前のフードの男に復讐をするためだとか…」



村雨「あの頑張りを私達も見習わなきゃね」



春雨「そうですね」



白露「みんな〜!演習の時間だよー!」



時雨「よし、頑張らないとね」



夕立「どんどん強くなるっぽい!」



~道場~



軽巡提督「ハア…ハア…まだやるのか…」



提督「まだ俺はいけるぞ…」ハア…ハア…



軽巡提督「マジかよ…両腕両足に重りつけてよく言えるよ…」



提督「それはお前もな…」



プルルルル



提督「悪い、電話だ」



軽巡提督「誰からだ?」



提督「…吹雪だ。少しでる」



軽巡提督「あぁ」



提督「もしもし…え!?あぁ分かった」



軽巡提督「どうした?」



提督「…ラバウルの近くの島に姫と鬼が集結してるらしい!」



軽巡提督「!?どういうことだ!?」



提督「分からない!とにかく…」



ザザー



大淀「提督の皆さん!これから緊急会議が始まります!すぐに会議室までお願いします!繰り返します!…」



軽巡提督「多分同じ事だよな?」



提督「間違いない!行くぞ!」



~会議室~



元帥「急な呼び出し申し訳ない。みなに集まってもらったのは、ラバウル基地の近くの島に姫と鬼が集結していることじゃ」



ザワザワ



他の提督「姫と鬼が…?冗談だろ…」



他の提督「どういうことなんだ?」



元帥「作戦を立てるから静かに聞けい。全ての艦隊は島を囲むように展開、姫と鬼を殲滅する」



空母提督「敵の数はどれほどなのでしょうか?」



元帥「分からん…姫と鬼の他にも深海棲艦が守るようにおる…数え切れん数じゃろう…」



軽巡提督「マジか…こりゃ激しい戦いになるな…」



提督「なぜそんなにも深海棲艦が集結しているんですか?」



元帥「誰かが統率している他に過ぎんな…」



提督「なら1人当てはまります」



元帥「誰じゃ?」



提督「フードの男です」



軽巡提督「そうか、アイツか…!」



元帥「確かに可能性はあるな…では各自、いつでもいけるように艦娘達に準備させておけ」



提督達「はっ!」



~寝室~



提督「…ということだ」



時雨「姫と鬼が集結しているなんて…」



村雨「そんなの勝ち目あるの…?」



白露「これは激しい戦いになるね」



提督「俺たちは作戦開始と同時にまずはラバウルへ戻る」



白露「へっ?どうして?」



提督「吹雪達を避難させなきゃいけない。アイツらじゃまず歯が立たない。戦いは避難させてからだ」



春雨「了解です」



夕立「避難中に敵が来たらどうするっぽい?」



提督「別の艦娘が守ってくれているから大丈夫だ。万が一の時は…お前達に任せる」



白露「まっかせてよ!」



提督「中心にいるのはおそらくフードの男だ。アイツを倒すことが今回の最終目標だ」



村雨「なんだってやったげる!」



提督「頼もしいな。心配する必要はなさそうだ」



時雨「それじゃあすぐに準備しないとね」



提督「…待ってくれ!その前にお前達に言っておかなきゃいけない事がある」



時雨「どうしたの?」



提督「お前達に話そうか本気で悩んだ。だけど隠し事はなしだと約束したからな…」



白露「どうしちゃったの突然…そんなにかしこまっちゃって…」



提督「俺は今…病気にかかっているんだ。それも大きな」



村雨「え…病気…?」



春雨「どういう病気…なんですか…?」



提督「…3ヶ月で死ぬと言われてる病気だ」



時雨「…!」



村雨「嘘…」



提督「ごめん…2ヶ月間黙ってて…残されたのはあと1ヶ月しかないんだ…」



白露「そんな…待ってよ!急にそんなこと言わないでよ!どうしていつもいつも…急に言っちゃうの…」



提督「俺だってこんなの話したくなかった!こんなの絶対悲しんでしまうって…」



白露「もうみんな悲しんでるよ!」



提督「え…」



白露だけではなく、5人全員が涙を浮かべていた



白露「あと1ヶ月で死んじゃうなんて急に言われたって私達どうしたらいいの!?もう泣くことしかできないじゃん!」ボロボロ



提督「…ごめん」



春雨「司令官は…悪くないんです…」ポロポロ



村雨「いつからそんな病気に…」



提督「フードの男と戦った日からだ…」



時雨「それって…」



提督「恐らく夕立を庇った時だろう。あそこで庇ってなければ、夕立は死んでいたかもしれないし、仮に生きていたとしてもこの病気にかかっていたかもしれない」



夕立「…!」



提督「あと1ヶ月だ…せめて最後は笑ってくれ…」



その後部屋は静かな状態が続き、そのまま作戦が開始された



~~



提督「お前達の健闘を祈っているぞ」



戦艦提督「お前も早く来るんだぞ!」



空母提督「ありがとうございます。コード0もどうかお気をつけて…」



提督「あぁ、それとお前達も今までありがとな」



川内「夜戦がなかったのは残念だけど、楽しかったよ」



阿武隈「今までありがとうございました!」



古鷹「一緒に戦えてよかったです!」



鈴谷「提督結構カッコよかったよ」



榛名「また戦場でお会いしましょう」



飛龍「提督、またお酒呑みましょう!」



蒼龍「またお菓子でも食べながらお話しましょう!」



提督「みんなありがとな。コード1、任せたぞ」



軽巡提督「あぁ、みんな行くぞ!」



提督「さて、俺達も行くか」



白露型「…」



提督「…ほらお前ら」



白露「…?あ…」



提督「こういう時のやつだろ?どんな時でも元気出して行くぞ」



村雨「…そうね、いつまでもくよくよしてちゃダメよね」



提督「おっとその前に…これ」



春雨「これは…?」



提督「頭に巻いてくれ。決戦なんだ、こういう時しか巻けないからな」



村雨「決戦モードね」



提督「あぁ、よしみんな」



俺達は手を重ね合う



提督「いいか、もし俺がいなくなっても…辛くても、笑顔を絶対に絶やすな。いいな?」



白露型「…はい!」



提督「よし、我らラバウル艦隊、目指すは…」



みんな「いっちばーん!」



提督「よし、行くぞ!」



~ラバウル基地~



提督「吹雪ー!みんないるかー!」



吹雪「司令官!」



提督「吹雪!作戦は聞いたな?」



吹雪「はい、私達は避難するんですよね?」



提督「あぁ、すぐに移動する。行くぞ」



吹雪「はい!司令官!」



~~



提督「よし、ここにいれば安心だ。道中無事でよかった」



吹雪「司令官ありがとうございました。それと…負けないでくださいね」



提督「負けないさ、ありがとな」



白雪「私達も参加できれば良かったのですが…」



提督「できればあまり海には出させたくないのが俺の気持ちだ。すまないが分かってくれ…」



綾波「司令官はやっぱり優しいですね」



提督「ありがとう、さあ後は俺たちに任せろ」



吹雪「無事に帰ってくることを祈ってますから!」



提督「…あぁ!」



~~



提督「遅れてすまない!」



軽巡提督「来たか、見ろ。生きてるのに地獄を見ている気分だぜ」



その島は姫と鬼の集団と数え切れないほどの深海棲艦で埋め尽くされていた



提督「まずはあの周りからか…見てて吐き気がするな…」



軽巡提督「今回は全て艦娘達が出撃している。普段見れないような艦娘もいるかもな」



提督「あれ大和だろ?」



軽巡提督「マジだ!あっさり見つけんなよ…」



提督「てかこっち来てない?」



軽巡提督「…来てるな」



大和「あのぉ…あなた方が噂の…」



提督「改造された提督だろ?俺達だ」



大和「わあ…!お会いしたかったんです!こんなにも近くで見れるなんて…!」



提督「俺達喜ばれてんのか…?」ヒソヒソ



軽巡提督「普通逆だよな…」ヒソヒソ



大和「…?」



提督「戦艦大和に喜ばれるとは光栄だな」



大和「そんな…私なんてあなた方に比べたらまだまだです…」



提督・軽巡提督「(絶対にそんな事ないと思うけど)」



武蔵「大和、そろそろ行くぞ」



提督「武蔵までいるのか」



武蔵「あぁ、うちの姉が迷惑をかけた」



大和「ちょっと武蔵!」



軽巡提督「まあ…お互い頑張ろうな」



大和「あっはい!では」



武蔵「失礼する」



提督「さてと、全部蹴散らしますか」ガチャッ



軽巡提督「あぁ、攻撃開始の信号弾を撃つぞ」



提督「いつでもどうぞ」



軽巡提督「行くぞ!」パアン



提督「周りの深海棲艦はいただいた!」ドーン



~~



パアン



白露「始まったね。みんな行くよ!」



時雨「うん、僕達も頑張らないとね」



村雨「村雨の1番いいとこ見せたげる!」



夕立「最高に素敵なパーティーにしましょ!」



春雨「絶対に守りきります!」



白露「提督に道を開ける為にも私達は戦い続けるよ!」



~~



提督「よし、こっち側の分はあらかた片付いたろ」



軽巡提督「全く多すぎだ…」



提督「…!敵の艦載機だ!」



軽巡提督「まずい!」



ブウーン



提督「おぉ…あの艦載機は…」



空母提督「お二人共!空は構わず進んでください!」



提督「すまない!さて、姫と鬼はどうする?」



軽巡提督「一体いても厄介なのに、あれはきついな」



重巡提督「突っ込むのは2人だけじゃないっすよ」



軽巡提督「あ…」



戦艦提督「俺達がいることも忘れるなよ!」



提督「そうだな…俺達には仲間がいるんだ」



軽巡提督「よし、姫と鬼は俺達に任せろ」



提督「は?何言って…」



軽巡提督「フードの男はお前が倒すんだ」



提督「…何か理由があるのか?」



軽巡提督「お前と顔が同じだったんだろ?」



提督「あぁ…」



軽巡提督「昔、お前はあの時の最初の戦いで沈んだんだ」



提督「…!?」



軽巡提督「沈んでから一年後にボロボロの状態で帰ってきたが、どうして戻ってきたかは分からない。ただお前は沈んだ時の記憶だけなくなっていたんだ」



そうか…今まで見ていたあの夢は…俺が沈んだ瞬間の夢だったのか…



提督「…とするとアイツは俺の怨念みたいなものか…」



軽巡提督「かもな…だから行ってこい。決着をつけるんだ」



提督「…分かった。援護を頼む」



軽巡提督「了解だ。行くぞ!」



島へと向かっていくと同時に何体もの姫と鬼が突っ込んでくる



提督「…!」



軽巡提督「させるかぁ!」



戦艦提督「邪魔をするなぁ!」



重巡提督「どくっすよ!」



提督「お前ら…!」



空母提督「コード0!行ってください!」



軽巡提督「俺達のことはいいから早く行けぇ!」



提督「…!すまない!」



俺は1人島の中心へと向かった。しかし途中で別の深海棲艦に阻まれる



提督「まずい…!早く倒さないと姫達が…」



ドーン



その時、別の場所から深海棲艦に向かって誰かの攻撃が当たった



提督「誰だ…?」



白露「提督!」



提督「お前達…」



時雨「あの島へ行くんだね…」



提督「あぁ…アイツと決着を着けるよ」



村雨「負けたりしちゃダメよ?私達の中で誰よりも強い提督なんだから」



夕立「提督さんならきっと帰ってくるっぽい!提督さんはどんな敵が来ても強いから!」



春雨「司令官…絶対に戻ってきてくださいね…」



提督「みんな…ありがとう…」



時雨「僕達はここで提督の邪魔をされないように守っておくよ」



白露「提督は気にせず戦って!誰もここを通さないから!」



夕立「夕立約束は守るっぽい!」



村雨「提督はみんなの希望なんだから!」



春雨「どんな敵が来ても守りきります!」



提督「みんな…必ず帰ってくる!」ダッ



白露型に見送られ、俺はフードの男への決着へ向かった



駆逐艦提督と…



~島~



提督「見つけたぞ、深海棲艦の俺」



深海提督「ふっ…」



深海提督は島の中心で堂々と座っていた



提督「あまりこっちにも時間がないんでな。さっさと死んでもらうぜ」ガシャン



深海提督「はっ、あの時つけた毒のことか」



提督「毒だと…?」



深海提督「その目から入った毒だ。もうすぐ命が毒に完全に蝕まれるところか」



包帯で巻かれた左目をそっと摩った



提督「病気じゃなかったのか…」



深海提督「それは人間共が勝手に決めつけてるだけだ。あれは深海棲艦の液と毒を混ぜた特殊な毒だ。人間共に治せるはずがない」



提督「ご丁寧に説明どうも。毒が回り切る前に殺してやるよ」ガチャッ



深海提督「やってみろよ」シャキン



提督「はっ!」ドーン



深海提督「ふん」ヒュン



提督「っ!」ダダダダダ



深海提督「無駄撃ちはよせ。弾が尽きるぞ」



提督「数撃ちゃ当たるさ!」ダダダダダ



深海提督「ならこちらからも撃たせてもらおう」ガチャッ



提督「武器人間かよあいつは…」ビュン



深海提督「はっ!」ドーン



提督「うおっ!あぶね…」



深海提督「落ち着いてる暇はねぇぞ」ブン



提督「くっ!すぐに近づいてきやがって…」シャキン



深海提督「刀を取り出したところでだ!」ドーン



提督「うぐっ!」ドカーン



もろに攻撃をくらい、大きく吹っ飛ばされた



深海提督「その武装で地上での戦いは慣れていないだろう」



提督「…そうだな…それじゃあこんなのいらねぇ」ガシャン



深海提督「ほう、刀以外の武装を捨てるのか」



提督「身軽になってやりやすくなったぜ」



深海提督「どの道結果は同じだ」ブン



提督「うっ!」ガキン



深海提督「守ってると左から弾が飛んでくるぞ」ドーン



提督「うぐあ!」ドカーン



深海提督「その程度か。あれだけ殺す殺すとほざいていた割には大したことないな」



提督「くそ…!」ビュン



深海提督「どこにいく?逃げても無駄だ」ビュン



提督「ちぃ!速いな…!」ブン



深海提督「ふん!」ガキン



提督「んな!?」



深海提督「もらった」ザシュ



提督「ぐぁ!」



深海提督「ふんっ」ガッ



提督「うぐっ!」



深海提督に首を捕まれ、簡単に持ち上げられた



提督「かはっ…」



深海提督「諦めろ、お前は俺に勝てない」



提督「ハア…化け物め…」



深海提督「化け物だと…?ふざけるな!」ドゴ



提督「ぐっ…」



深海提督「てめえがそうさせたんだろうがよぉ!」バキ



提督「かっ…」



深海提督「ふん!」ブン



提督「うぐあっ!」



深海提督に投げ飛ばされ、木に背中から衝突した…



深海提督「舐めやがって…すぐに楽にしてやる」



提督「くっ…!」ブン



深海提督「まだ抵抗するのか」



提督「当たり前だろ…俺はお前を倒す事を目標にここまできたんだ…簡単に死んでたまるか…」



深海提督「…なら1つ聞こう、何の為に俺を殺すんだ?」



提督「…!?急に何を言い出すんだ…?そんなの、仲間達への復讐の為だ」



深海提督「お前は人間が憎かったんじゃなかったのか?何故人を守る?何の為に?裏切られ、苦しい目に合わされ、それでも尚人間に寄り添うのは何故なんだ?」



提督「(俺の過去を知っている…?もう1人の俺だからなのか?)」



提督「…確かに俺は幾度となく酷い目に合わされた。こんな体になってしまったのも、お前という存在を生み出してしまったのも、全て人間だ。だから、恨みは持っている」



深海提督「なら何故!その人間を殺さないのだ!」



提督「そいつを殺しても過去の傷は癒えない!大切な人も戻ってこない!殺したところで意味は無いからだ!」



深海提督「ではなぜ人の為に戦う?命を張ってまで海に出る意味はなんだ」



提督「全ての人間が悪い人じゃない…良い人だって沢山いる!そして、この先に未来がある子供達だって!」



提督「艦娘も同じだ!人として生きて、人を守るべき存在として戦っている!今だってそうだ、誰かの為に戦って、己の使命を成し遂げるために!」



深海提督「…」



提督「だから俺も誰かの為に戦い続ける。仲間を…家族を…!守り抜く為に!」



深海提督「…じゃあ、守り抜いてみろよ。その体でできるかどうかは知らんがな」



提督「ぬああ!」ブン



深海提督「はあ!」ザク



提督「…!!」



大きく振り上げられた刃は、右腕を丸々切り落とした



提督「うあああああぁぁぁぁ!!」ブシャアアアアァァァ



深海提督「お前は何も守り抜けない。仲間も、人でさえも。その力では誰一人としてな」



提督「…」



深海提督「俺はお前のために人間を殺してやろうというのに。なぜなら、俺はお前の憎しみの塊なのだから」



提督「…!」



深海提督「そして1番の厄介者はお前だ。善のお前は邪魔でしかない。真っ先に殺す必要がある。この世に俺は2人も要らないからな」



深海提督「そしてお前を殺した暁には大量の人間の虐殺ショーだ。誰であろうと構わず全ての人間を殺す最高のショーになる!」



提督「……ねぇよ」ボソ



深海提督「あ?」



提督「まだ死なねぇよ…俺は…守らないといけない奴らがいるんだ…」



深海提督「まだ言うのか。今更強がっても右腕のないお前には何もできない。もう死ぬだけだ」シャキン



提督「はっ…こっちには切り札がある…」



深海提督「…!それは…」



取り出したのは注射器。その中身は母の血…深海棲艦の血だ。秘密裏に隠し持っていたが、使うなら今しかない



提督「ふん!」ブス



深海提督「お前!まさか…!」



提督「…うぐ!うがああああああああぁぁぁ!!」



強烈な痛みが全身に走り出す。大声を出しながら悶絶した



深海提督「馬鹿なヤツだ…人間が深海棲艦の血に耐えられるはずがないだろう」



提督「………」



深海提督「ふん…無様な死に方だ」



提督「フ…」



深海提督「何!?」



提督「フフ…」ユラッ



失っていた左目が青色に輝き、右腕は新たな腕が生えた



提督「これで十分だ…」



深海提督「お前…なんで…」



提督「お前は言ってたよな?俺は2人も要らない、と。確かにそうだ。この世界に同じ存在は必要ない。なら…」



深海提督「くっ!」ガチャッ



提督「この因縁、ここで断ち切る!」ビュン



深海提督「んな!もう後ろに!?」



提督「はっ!」バキ



深海提督「ぐはっ!」



提督「形勢逆転だな。これも母の血があってこそか」シャキン



どうやら俺も深海提督みたく、腕が変形するみたいだ



深海提督「くそ!何でだ!人間のお前が深海棲艦の血を抑えれるはずがない!」



提督「知らないのか?俺は半分人間じゃない。それにこれは深海棲艦の血でもあり、俺の母の血でもある」



深海提督「!」



提督「つまり深海棲艦の血に対しても抑止力だってある」



深海提督「ちぃ!」ビュン



提督「ふっ!」ビュン



お互いの攻撃が相殺し合う。島の木々は倒れ始めていた



深海提督「せあ!」ドーン



提督「おっと」ヒュン



深海提督「そこだ!」ブン



提督「はっ!」ガキン



深海提督「ぐっ!」



提督「うおぉ!」ザシュ



深海提督「ぐあぁ!」ブシャアア



提督「さっきまでの威勢はどこいった?」



深海提督「くそぉ…!くそくそくそくそくそくそくそぉぉ!!」ブン



提督「おっと、もう力はあまり残ってないようだな」



深海提督「…早く殺せよ…」



提督「…」



深海提督「お前みたいなやつ、いずれ自分を抑えきれなくなり、暴走し始める。血はお前の体を巡り支配する。結局は深海棲艦になるのさ…化け物め…」



提督「化け物に化け物呼ばわりされるのも悪くないな」



深海提督「ふん!」ドーン



提督「おっと、これで終わりだ!」ザン



深海提督「が…は…」



提督「…悪かったな、お前を生み出してしまって…」



深海提督「ァ………」



提督「…終わったよみんな…」パアン



空に向けて勝利したことを伝える信号弾を撃った



提督「うっ…」フラ



俺は力が抜け、地面に倒れ込んだ



白露「提督ー!」



時雨「提督!勝ったんだね!」



村雨「やった!やったぁ!」



夕立「提督さんが勝ったっぽい!」



春雨「司令官…勝利したんですね…」



提督「………もうもたないな……」



ゆっくりと立ち上がり、海へと向かった



駆逐艦提督と白露型



提督「ハア…ハア…」ヨロヨロ



時雨「提督!おかえ…」



村雨「提督…その姿…」



白露「肌が白い…もしかして…深海棲艦に…」



提督「…戦いには勝った…けど俺はもうもたない…今ここで殺してくれ…」



春雨「そんな…どうして…!せっかく勝ったのに…」



提督「他に選択肢がなかったんだ…仕方がないってやつだ…」



時雨「嫌だよ…殺したくない…」



提督「ダメだ…殺せ…」



村雨「殺せるわけないじゃない…!」



提督「早く殺せ!これは提督命令だ!殺さないと俺がお前達を攻撃してしまう!それだけ絶対にしたくないんだ!」



夕立「…!提督さん…」



提督「ゥ…ウグアアァァァ!」



深海棲艦の血が段々体を支配してきていることが分かった



提督「…俺はいズれ自分を抑えきれナくなる…そうなる前に早ク…殺ってくれ…」



白露「…分かったよ」ガチャッ



時雨「何やってるんだい白露!自分が何をしているか分かってるのかい!?」



白露「分かってるよ!提督が望んでいることを叶えようとしてるだけだよ!」



時雨「でもそんなことしたら…!」



白露「私だって…やりたくないよ…!だけど…こうしないと提督は…」



時雨「…」



白露「私、深海棲艦になった提督と戦いたくない…戦えないよ…私達を変えてくれて、いつも誰よりも育ててくれた人に対して戦うなんてできないよ!」



時雨「僕だってそんなこと…できない…」



春雨「う…ひぐっ…」



白露「もう楽にしてあげよう…提督は今まで頑張りすぎたんだよ…もう休ませてあげないと…」



提督「…分かッてくレて嬉しいよ白露…」



白露「提督…お疲れ様…ゆっくり休んでね…」



提督「…あぁ」ポロポロ



春雨「司令官!私、司令官が大好きでした!誰よりもずっとあなたのことが!」



村雨「私も、もう誰にも止められないくらい好きだよ提督!」



夕立「夕立も!提督さんのこと大好きっぽい!」



時雨「僕も大好きだよ!」



白露「私も…大好きだよ…提督…」



提督「俺モ…みんなを愛してる…」



白露「さようなら…提督…」ガチャン



提督「…」ニコッ



白露「…!」



ドーン



最後に響いた砲撃音は大きく、そして静かに消えていった



そして俺は…暗い海の底へと沈んだ



ラバウル基地の近くの島で1つの命が散っていった



次の日



~大本営~



全員が集まり、駆逐艦提督の葬儀が行われた



元帥「そなたは立派な戦士じゃった。今ここに称えよう」



軽巡提督「…」



重巡提督「う…うぅ…」



戦艦提督「あまりにも急すぎるぜこいつは…」



空母提督「どうして…」



軽巡提督「…今頃海の底だろうな…」



戦艦提督「仲間を置いて先に逝くなんてな…」



軽巡提督「きっとこれがあいつの最善の選択だったんだ。後悔はしてないはずだ」



空母提督「そういえば白露型の子達は…?」



軽巡提督「…無理に連れてこない方がいいだろう」



空母提督「そう…ですよね…」



憲兵「報告します!島にラバウル所属の提督のものと思われるものを発見しました!」



元帥「むっ、これは…」



軽巡提督「あいつの刀だ…!それとこれは…布…?」



重巡提督「これ…コード0と白露型の子達が巻いてたやつっすよ…!」



軽巡提督「…」



~寝室~



時雨「…提督…」



時雨が見ていたのは、駆逐艦提督の寝室に置かれていた駆逐艦提督がラバウル基地に着任した頃に撮った集合写真だった



夕立「時雨…元気出すっぽい…」



時雨「…うん、ごめん…」



コンコン



軽巡提督「失礼する」ガチャッ



白露「軽巡提督…どうしたの?」



軽巡提督「これをお前達に預けようと思ってな」



村雨「これって提督の…!」



軽巡提督「刀とアイツが頭に巻いてたやつだ」



春雨「私達が…いいんですか…?」



軽巡提督「アイツならきっとこっちを選ぶだろう。一緒にいさせてやってくれ」



白露「…ありがとう…」



軽巡提督「あぁ、それじゃあな」



時雨「ま、待って!」



軽巡提督「ん?」



時雨「僕達、これからどうしたらいいのかな…何も分からなくて…」



軽巡提督「ラバウルに帰るんだろ?」



時雨「でも提督は…」



軽巡提督「それなら安心しろ。もういるから」



時雨「え…?」



軽巡提督「さっき鎮守府異動願を出してきた。ラバウルにな」



白露「そ、それって…」



軽巡提督「アイツの代わりになるか分からないが、これからよろしく頼む」



時雨「…うん、よろしくね…」ポロポロ



軽巡提督「泣くなよ、アイツがガッカリしちまうだろ」



時雨「そうだね…もう大丈夫」



軽巡提督「さあ帰ろうか、ラバウルに」



数日後…



~ラバウル基地~



白露達は外に出て、海に向かって声をかけた



白露「提督ー!見てる?今はね、軽巡提督がラバウルに来てくれたんだ!」



時雨「僕達はまだまだそっちにはいけないけど、提督が悲しまないように頑張るから!」



村雨「私達はもっと強くなって誰でも守れる存在になるからね!」



夕立「いつか提督さんが驚くくらいに強くなるっぽい!」



春雨「司令官という偉大な人に育ててもらったことを胸に刻んで頑張りますから!」



白露「どんなに辛くても笑顔を絶やすな、だよね?提督」



海の波が白露の言葉に呼応するかのように、静かに波を立てる



白露「よーし!みんないくよー!」



白露達が円のように囲って集まり、中心にそれぞれ手を置く。その集まりには、一人分の枠が空いていた



白露「いい?私達を変えてくれて、育ててくれた提督は誰よりも…」



白露型「いっちばーん!」



その時の波は笑っているかのような波を立てた


後書き

これで駆逐艦提督と白露型の物語は終了です。その後の話も作ろうかなと思っています(まだ分かりません)。シリアスが多すぎた気がするので、もし続編を書くなら次はコメディにしようかなって考えてます。最後まで読んでくださり、ありがとうござました


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2020-01-06 17:19:00

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2019-06-15 08:44:10

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2019-01-23 12:23:37

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2019-01-22 22:05:57

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1: しおい 2019-01-22 22:05:51 ID: S:n-ovcO

うわぁぁぁぁぁぁ
思わず泣いちゃったよおおおお
お母さんの血で毒がなんとかなるルート作って欲しいですうううう


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