-黄昏に舞う-

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夕陽が好きだった

どこまでも広がるオレンジに

棚引く雲のカーテン

わずかに光る蛍のような星々

ある日に出会った少女は

その小さな背にそれらを背負い

蝶のように舞った

それを間近でみられた僕は

きっと特別なんだと思った

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今日もいつも通り、

小高い丘の頂上にキャンバスを立てかけて

準備をする

原っぱが少し茂っており、晴れた日は程良く地面が乾き

お昼寝などするには丁度良い。

白いキャンバスを染め上げる

絵描き「ふぅ…今日も良い絵が描けた」

絵描き「さて」ｳﾃﾞﾄﾞｹｲ ﾁﾗﾘ

絵描き「そろそろ、いつも通りだったら

そろそろくる頃かな…」

???「おーい!」

絵描き「きたきた」

???「はぁ、はぁ、ふぅ」

???「やっぱり今日もいたんだね♪

天気が良いし夕陽も綺麗だからいると思った」

絵描き「僕も、きっと今日も君が来ると思ってたよ」

絵描き「天気が良いし夕陽も綺麗で

地面も乾いているから、今日もここで

ダンスの練習だろう?」

???「うん!」

???「それにしても…考える事同じだね♪」

絵描き「うん」

絵描き「今日はどうだった?」

絵描き「けがはしてない?」

???「聞いて驚けぇ!」

絵描き「?」

???「なんとMVP!だぞぉ!」ﾌﾌﾝ

絵描き「一番ってことだよね、スゴいなぁ」

???「でしょでしょ!

無傷で帰投致しましたぁ!」ｹｲﾚｲ

絵描き「あっはは!スゴいスゴい♪」

???「」ｴﾍﾍ

???「今日の夕陽はどう?」

絵描き「いつも通り綺麗だよ」

???「キャンバス見せて!」

絵描き「ん」

???「…あ、今日はちょっといつもとオレンジの色違うのね!ほらココとか!」

絵描き「!」

絵描き「スゴい!良くわかったね!

そうそう!少し色彩変えてみたんだよ!」

???「伊達に

ココに来てあなたの絵見てないからね♪」

???「そ・れ・でぇ」

???「今日MVPだったし、色に気付いてあげたしぃ

…ご褒美下さいな♪」

絵描き「ええ～…突然言われても」

???「♪」ﾜｸﾜｸ

絵描き「うぅ～ん…」

???「♪♪」ﾜｯｸﾜｯｸ

絵描き「ごめん、なんも思いつかないや」

???「えぇー!なんかあるでしょぉ!

もうちょっと頭ひねってよぉ!」ﾕｯｻﾕｯｻ

絵描き「んん～」ｶﾞｸﾝｶﾞｸﾝ

???「じゃあ代わりに考えてあげる…

そうねぇ」

絵描き(ご褒美をせがむ人が、その内容を決めるとか…)

???「あ、わかった!」

絵描き「?」

???「私を『描いて』!」

…

絵描き「君を?」

???「そう!」

???「踊ってるとこ!あなたならかけるはずよ!」

絵描き「動きのあるものは中々難しいんだけど」

???「描いてよぉ～!」ﾕｯｻﾕｯｻ

絵描き「わ、わかったから揺さぶらないでぇ!」ｶﾞｸﾝｶﾞｸﾝ

???「ヤッタ♪」

…

???「じゃあいくよ!綺麗に描いてね♪」

黄昏を背負って舞う金の髪

頭の後ろで短くまとめられたそれが

舞う度にフワフワと揺れる

白いシャツの上に重ねられた黒のベストも

白い手袋も赤いリボンタイも

彼女の雰囲気にとても良く似合っている

黒のスカートから覗く白い腿も

ダンスで程良く鍛えられているせいか

はたまた彼女が『艦娘』という強靱な

存在だからだろうか重力を感じさせない

動きを支えている

その姿に思わず見惚れて筆が進まない

???「手が止まってるぞぉ」

その言葉に我に返りキャンバスに彼女の色を重ねる

シャツの『白』

ベストとスカートの『黒』

髪の『金』

リボンの『赤』

そして夕陽の『オレンジ』

彼女の笑顔にも色を付けてあげたいけど

例えようのないその笑顔は敢えて言うなら

『彼女色』

表現のしようがないからありきたりな色で

精一杯応えようと思った。

…

絵描き(描きあげたけど

陽がすっかり暮れてしまった)

絵描き「…どうかな?」

???「…」

絵描き「…」

???「うん!すっっっごい綺麗!」ﾆｺﾘ

絵描き「…良かった」

???「本当にもらっても?」

絵描き「君が望むなら」

???「ありがとう!とっても嬉しい!」

絵描き「…気に入ってくれたかい?」

???「…もちろん!鎮守府のみんなに自慢しちゃお♪」

絵描き(あんなにステップを踏んで…本当に

喜んでくれたみたい)

…

???「もう、お日様沈んじゃったね」

絵描き「…うん」

???「明日も晴れたら?」

絵描き「また来るよ」

???「わたしも」

絵描き「うん」

絵描き「じゃあ…気をつけて」

???「また、明日ね」

絵描き「また、明日…」

絵描き「ばいばい、『舞風』ちゃん」

舞風「ばいばい!絵描きさん♪」

白からオレンジに染まったキャンバスを抱えて

ちぎれんばかりに手を振る彼女を見送り

僕もここを去ることにした

また『明日』会う約束を交わして

ああ

明日も晴れますように

その次も、これからずっと

『風のように舞う』彼女を見守り続けられますように

草むらに散らばった絵の具を片づけながら

静かに手をつけるも強く夕陽に祈った。

黄昏に舞う

end