2019-01-17 17:41:06 更新

概要

カテリーナ鎮守府後編。戦艦悽姫になってしまった比叡に艦隊は敗走し…


カテリーナ鎮守府、執務室にて

夕陽が差し込める室内は重苦しい雰囲気が漂っていた。

作戦会議用に置かれた椅子には木曾、五十鈴、川内、加古、雪風、海風、不知火、近衛兵が暗い表情で座っており、カテリーナもまた思い詰めた表情で執務椅子に腰掛けていた。


カテリーナ「そう…比叡が…」

五十鈴「間に合わなかったのね…」

海風「こんなのって…あんまりです…!」


涙を拭う海風。

雪風もまた涙を流しており、不知火がそれをハンカチで拭って慰めていた。


近衛「入渠した金剛達はどうした?高速修復材使用の許可を出した筈だが…」

カテリーナ「身体はともかく精神的にやられたのよ。察してやりなさいよ」


その時執務室の扉がノックされる。

入室を許可すると大淀が資料を片手に入ってきた。


大淀「カテリーナ提督。木曾さんから頂いた情報を元に戦艦悽姫を調べてきました」


机の上に数枚の文書と写真が並べられる。


カテリーナ「これって…?」

大淀「同一種と思われる個体の目撃情報が数ヵ月前に。これはその時に撮られた写真です」

木曾「あぁ…間違いない…このデカ物…!」


写真を手に取り怒りで震えだす木曾を、五十鈴が何とか宥めている。


大淀「その巨大な生物が戦艦悽姫の艤装なのではと…私は考えてます」

近衛「成る程…確かにこの写真を見る限り本体に艤装らしきものが確認出来ないな」

木曾「じゃ、じゃあこのデカ物を倒せばヒリュウみたいに…!」

カテリーナ「…少し考えさせて。取り合えず解散、今は身体を休めてちょうだい」


カテリーナの言葉で後ろ髪を引かれながらも執務室を後にしていく一行。

だが五十鈴だけその場に残っていた。


近衛「どうした?下がって良いぞ?」

五十鈴「比叡さんが助からない可能性の方が高い…そう思ってるでしょ?」

カテリーナ「…だったら何よ?」

五十鈴「どんな結果になっても貴女を責める人は誰もいないわ」

カテリーナ「その代わり、金剛は一生自分を責め続けるわよ」

五十鈴「っ!…そうね、失言だったわ…ごめんなさい」

カテリーナ「お互い疲れているのよ…。ほら、次の作戦まで休みなさい」


五十鈴を執務室の外へ促す。

彼女も申し訳なさそうな様子でそれに従い、執務室を後にした。


カテリーナ「…ふう……」


椅子に腰掛け、天井を見上げながら深い溜め息を吐く。


カテリーナ「…悪墜ち、か…」

近衛「随分懐かしい言葉だな」

カテリーナ「アタシや提督…あと、ミーシャにとっては忌々しい言葉でもあるんだけど、その時はアンタはいなかったわね。まぁ、いいわ。今は…比叡をどうするか……」

近衛「助けられると思うのか?あぁなってしまってはもう手遅れだと思うが」

カテリーナ「……」


状況を整理し、対策を練るため目を閉じ、思考を巡らせる。

そして何かを決心したのかゆっくりと目を開け、近衛兵を見た。


カテリーナ「今からこの場所に行ってきて」


手頃な紙に住所を書いて近衛兵に渡す。

近衛兵はその住所を見て思わず目を見開いた。


近衛「ここはっ…!?」

カテリーナ「そこに大将御姉様が居る筈だから御姉様に会ってあれを借りてきて欲しいの」

近衛「なっ…弾薬や運用資材はどうするのだっ!?あれを運用するなど…!」


いつもの冷静さを失い動揺している近衛兵。

対称的にカテリーナは冷静に話を続ける。


カテリーナ「…資材はもちろんこっちのものを使うわ。弾薬はミーシャが残したデータを元に明石に頼むつもりよ」

近衛「………」

カテリーナ「大袈裟かもしれないのはわかってるわ。でも、今は彼女達を守る為になりふり構っていられないのよ…!」


カテリーナの決意に満ちた瞳が近衛兵を見つめる。

数分、いや数秒の沈黙の後、近衛兵は観念したように肩をすくめた。


近衛「やれやれ…わかった」

カテリーナ「大将御姉様によろしく伝えなさいよ?」

近衛「伝えておこう。では、準備が出来次第行ってくる」


近衛兵は呆れたような笑みを、カテリーナは悪戯っ子のような笑みを互いに見せた後、近衛兵は執務室を後にした。

一方その頃、木曾は自室へ戻ろうとする最中に長門と出会っていた。


長門「木曾…」


暗い表情で俯いている木曾を見て心配する長門。


木曾「…なんで」

長門「え…っ!?」


肩に手を置こうとした長門であったが、木曾の呟きでピクリと一瞬動きが止まる。

その瞬間木曾は長門の胸ぐらを掴み壁へ追い込んだ。


木曾「なんで来てくれなかったんだよぉ!!??お前が!お前が居てくれたら!!」

長門「っ!」


涙を流しながら長門を睨み付ける。

そんな木曾に反論出来ず彼女から目を逸らしてしまう。


木曾「何がビッグセブンだっ!何が戦艦だっ!!お前が…お前が…!!」

長門「…すまない」

木曾「謝んじゃねぇ…!お前の信念は…正義はこんな事の為にあんのかよ…!?」

長門「……」

木曾「…もういい……!」


反論出来ず黙りこくっている長門から手を離し、トボトボと部屋へ戻っていく木曾。

長門も自身の不甲斐なさに苛立ち、思わず壁を殴ってしまう。


長門「私は…!」


同時刻、蒼龍の部屋にて。

扉がノックされ、返事をする間もなく入ってきたのは加賀であった。


加賀「入るわよ」

蒼龍「勝手に入らないでよ……」


何処か自棄になってベッドに座っている蒼龍に対し、呆れた表情の加賀。


加賀「いつまでそうしてるつもりかしら?」

蒼龍「…はぁ?」

加賀「いつまでそうやって逃げているのと聞いているの。深海悽艦との戦いから、そしてヒリュウさんから」

蒼龍「…何よ…!」


立ち上がり加賀を睨み付ける。

加賀も表情ひとつ変えず冷酷な表情で蒼龍を睨み返す。


蒼龍「あんたに何がわかるのよ…!」

加賀「そうね、確かにわからないわ。目の前の現実から目を背けるだけでなく逃げてしまった艦娘の気持ちなんて」

蒼龍「あんただって!大事な相方を深海悽艦にされれば良いのよっ!!そうすればそんな顔していられなくなるわっ!!!」

加賀「いいえ」

蒼龍「はぁ!?」

加賀「例え赤城さんが深海悽艦として立ち塞がったなら、私は彼女を沈めるわ」

蒼龍「口先ではなんとでも!」

加賀「恐らく逆の立場になったとしても赤城さんは私を沈めてくれると思うわ。これが私達の…一航戦としての誇りだから」

蒼龍「っ!」

加賀「貴女には無いのかしら…二航戦としての誇りが」


加賀の問いに答えられず、悔しそうに黙ってしまう蒼龍。


加賀「今の貴女は五航戦以下よ。誇りがない空母なんて先が知れてるわ」

蒼龍「…うるさい…!」

加賀「だったら立ち上がってみなさい。二航戦の誇りはそんなもので」

蒼龍「うるさいうるさいうるさい!!!!」


もう聞きたくないと言わんばかりに加賀の話を強引に止める。

加賀はそんな蒼龍を見て軽く溜め息を吐く。


加賀「そう、わかったわ。勝手にしなさい」


そう言い残し、部屋を出る。


加賀「………」


扉を閉めたとたん加賀は悔しそうに顔をしかめて、しばらくそこに立ち尽くしていた。


ーーーーーーーーーー


場所は変わり、鎮守府から少し離れた場所にて。

執務室を後にした加古は、普段昼寝をする場所へ向かっていた。

鎮守府から少し離れたところに広場があり、そこに植えられている木々の内の1本の下。そこは海辺と鎮守府を一望でき、加古にとってちょっとした特等席であった。

だが、木の近くまで行くと先客が横たわっていた。


加古「北上…?」

北上「よっ」


北上は加古を見るなり手をヒラヒラさせて挨拶する。

何故彼女がこの場所を知ってるのか。そんな疑問を抱きながらも彼女の隣に寝転ぶ。


加古「入渠終わってからずっといたのか?」

北上「まぁね。皆執務室に行く様子無かったし、いいかなーって」


互いに顔を見ることなく、空を眺めながら話す。

北上は口調は変わらないものの、声のトーンが僅かに低く話していく。


北上「私ねぇ~今まで色んな深海悽艦を沈めてきたわけよ。金剛や木曾達も」

加古「まぁ…だろうな」

北上「けどあの事件があってからさ。皆何処か深海悽艦を沈めるのを躊躇ってるんだよねぇ。それまでその戦果を自慢してたのにさ~?」

加古「……」

北上「そんで今度は身内が深海悽艦になったら撃てませんときた……。これってさ、今まで沈めた相手にすごく失礼じゃないかなって…思うわけよ」

加古「…何となく、言いたいことは…わかるかな…?」

北上「だから…私は沈める覚悟で行く。金剛達に恨まれたって構わない。…だって、これ以上手を子招いていたら比叡は…誰かを沈める。それだけは絶対させたくないから」

加古「…良いんじゃねーの?ま、提督がどんな作戦を立てるかによるけど」

北上「ま、そーなんだけどねぇ~。でも、誰かに聞いてほしくってさ」

加古「アタシにはそういう覚悟とか決意なんてのはいまいちよくわかんないけど。北上のその思いは正しいと思うし、もしそうなったら全力で援護するよ」

北上「サンキュ~加古っち。やっぱ持つべきモノは友だねぇ~!」


北上の声のトーンがいつもの調子に戻っていく。

加古はそんな調子に戻った北上の声を聞いて思わず微笑む。


加古「ははっ、ったく、真面目な話聞いてたから眠くなってきたぜ…」

北上「風も気持ちいいし…ちょっと一眠りと洒落混みますかぁ~…」


ーーーーーーーーー


鎮守府、食堂にて


雪風、不知火、海風、そして川内の四人は執務室を出た後、部屋に戻る気にもなれず食堂に集まっていた。


雪風「うぅ…比叡さん……もう会えないのかなぁ…?」

不知火「…雪風」


再び涙を流し始める雪風。

そんな雪風の頭を川内は優しく撫でる。


川内「こら…幸運艦が泣かないの。幸運の女神が逃げちゃうよ?」

雪風「で、でもぉ…」

川内「ほら、鼻かんで」


近くにあったティッシュを数枚取り雪風の鼻に押し付ける。

その後チィーンという音を立てて鼻をかむ雪風。


雪風「ありがとうございますぅ…」

川内「良いの良いの。今回は失敗しちゃったけど、次こそは成功出来るよ。だってここには幸運の女神とそれに見合った実力の持ち主達が居るんだから!」


雪風の頭を撫でながら笑顔を見せる川内。

雪風もまたそれを見て次第に笑顔になっていく。


雪風「はいっ!次こそは頑張りますっ!!」


元気になり部屋へ戻る雪風と、川内にお礼を言って彼女を追っていく不知火。

そんな彼女達を見送り、視線を戻すと未だに暗い表情の海風が川内を見つめていた。


海風「川内さん…この戦いの終わりって何なんですかね…?」

川内「…どうしたのさ、急に?」


海風の隣に座り、彼女を見る。


海風「深海悽艦は私達艦娘を使って数を増やしてる…そんな気がするんです」

川内「……比叡さんみたいに?」

海風「はい…。そしてその深海悽艦を倒したり建造する事で私達艦娘が生まれて、そして戦って沈んだ艦娘は深海悽艦になって……。なんだか、大きな輪の上をぐるぐる回ってる気分です」

川内「成る程……それでこの戦いの終わりが見えない、か…。確かに、私達艦娘と深海悽艦は表裏一体な存在なのかもね」

海風「……」

川内「でもさ、私達にはカテリーナ提督もいるし、背中を預けられる仲間もいる。これって結構大事な事だと思うんだ」


川内の言葉の意味を少しだけ考え、答えを口にする。


海風「…誰も沈まない、沈ませないという事、ですか?」

川内「そう。奴らに仲間を増やさせない。それが奴らに対する最も有効な攻撃手段」

海風「でも今回は…」

川内「うん、流石に皆不覚をとっちゃったね。…でも、次はそうはさせない」


真剣な眼差しで海風を見つめる。

海風もそれに込められた意志に応じる様に頷いた。


ーーーーー


演習場にて

不規則に並べられた的を順番に、素早く砲撃していく那智の姿があった。


那智「…次っ!」


素早く目標を切り替え、砲撃していく那智。

だがその表情はどこか焦りのようなものがあった。


那智「次っ!」

近衛「もう撃ち尽くしているぞ」


ハッとなり振り向くと、大きなリュックを背負った近衛兵の姿があった。


那智「そうだったか…」

近衛「……」


名残惜しそうに撃ち抜いた的を見つめる那智。

近衛兵はそんな彼女の隣に立ち、那智が撃ち抜いた的の数々を眺める。


近衛「何を焦っている?」

那智「焦っているわけではない…。ただ……」


言葉に詰まる。

だが那智は深呼吸して、続きを話した。


那智「躊躇ってしまったんだ……。あの時、比叡に砲を向けるのを」

近衛「……」

那智「全く情けない事だ。覚悟していた筈なのに……いざ、その状況になるとこの様さ」

近衛「…あぁ、よくわかる」

那智「え…?」


近衛兵がボソッと呟いた言葉に驚く。

彼女は恥ずかしそうに頬を掻き、横目で那智を見ていた。


近衛「私にも、似たような経験があるからな…」

那智「……そうか…!近衛殿は元々…」

近衛「そう、元々はマグマ軍として女王陛下に仕えていた身だ」

那智「そう…だったのか…」


近衛兵に掛ける言葉が見つからず目を泳がせる那智。

それを察してか否か、近衛兵の方から話を始めた。


近衛「私は…女王陛下に忠誠を誓っていた……いや、盲信していたんだ」

那智「盲信?」

近衛「我が国は縦社会だ。その頂点たる女王陛下こそ正義、女王陛下の言葉が真実…とな。今考えると、何とも恥ずかしい限りだが。だから奴に捕まった時は屈辱でしかなかったが、アイツは私と数回会話した後、無条件で解放したのだ。捕虜となった私をだ」

那智「…愚策でしかないな」

近衛「私もそう思ったさ。そして解放した際こう言ったんだ。『盲信するんじゃなく忠を尽くせ、信じる相手に、そして自分自身に』と」

那智「忠を……それで?」

近衛「その後真っ先に女王陛下の元へ戻ったさ、私は盲信なんぞしていない。忠誠を誓っているんだという自信を胸に…。だが戻ってみたらどうだ?他の近衛に銃を突き付けられ、忠誠を誓っていた女王からは汚物を見る目で見られた。そしてそんな女王から死の宣告を受け…その瞬間私は怖くなったんだ。忠誠を誓っていた筈の女王が悪魔に見えてな……そして私は盲信していただけなんだと、気付いた」

那智「……」

近衛「女王から逃げ、国から逃げた私は何を信じれば良いかわからなくなった。今まで信じていたモノ全てが壊れた私は自然と奴らの駐屯地へ足を運んでいた。そして奴に、提督に保護された」

那智「それから提督殿の味方に?」

近衛「残念だがそう簡単にさせてくれなかったんだ。私も助けてくれた恩を返そうと共に戦う事を誓ったが、提督はそれを拒否したんだ。それじゃ…女王にいた時と変わらないと、あの時の哀しそうな顔は忘れられそうにない…。実際、無理矢理戦地に立ったが、同胞に銃を向けられなかった」


懐かしむ近衛兵だが、その表情はどこか哀しそうな表情だった。


近衛「だがそんな私を変えてくれたのがお前達の提督、カテリーナだった」

那智「カテリーナが?」

近衛「同じ国の出身の同胞として、そして提督の仲間として、私を叱咤した。そして最後に『まずは信じてみなさい。信頼してみなさい。忠を尽くすのはその後』と、私に手を差し伸べたんだ。しかめっ面を見せながらな」


フッと目を細める近衛。


近衛「その後彼女が隊長を務める部隊に配属されて、まずはカテリーナを信じてみることにした。その後部隊の仲間を、そして彼女達を束ねる提督を信じてみた…女王の元にいたときとは違う、何かが満たされるモノがあったんだ。そして初めて相手に忠を尽くす事の意味を知り、同胞に銃を向けるのを躊躇わなくなった」

那智「…近衛殿にそんな過去があったとはな…」

近衛「あぁ、まぁだからなんだと言われたらそうなのだが…その躊躇いを無くす切っ掛けになってくれれば嬉しい」

那智「忠を尽くす…か」


何かを考え込むように空を見上げる那智。

そんな彼女の肩をポンと叩き、近衛兵はその場所を後にした。


ーーーーーーーーー


金剛・比叡の部屋にて


ベッドに俯せになっている金剛。

その周辺にはさっきまで見ていたのであろうアルバムが転がっていた。


金剛「比叡……」


比叡との思い出が甦ってくる。

共に訓練した思い出、間宮の甘味を一緒に食べた思い出、改二になり共に喜んだ思い出…様々な思い出が金剛の脳裏を過っていく。


金剛「こんなお別れ、嫌デス……」


静かな部屋に金剛の悲痛な思いだけが響き渡る。

その声に応える者は誰もいなかった。


ーーーーーーー


翌朝、朝食を終えた第1艦隊、第2艦隊のメンバーは作戦会議室に集まっていた。

決意を固めた者、迷いを抱えた者…様々な思いを胸に椅子に座り、正面の作戦ボードの前に立っているカテリーナの言葉を待っている。


カテリーナ「集まったわね。現時刻、0930をもって戦艦悽姫比叡捕獲作戦を決行するわ」

金剛「捕獲……」


救出ではなく捕獲という言葉に俯く金剛。

そんな金剛を気に留めながらカテリーナは作戦の概要を説明しようとする。

その時、突然会議室の扉が開かれた。


長門「待ってくれ!」


入って来たのは長門と、彼女を止めていたのだろうか、息を切らしている大淀だった。


大淀「すいません提督!作戦会議中に」

カテリーナ「…何事なの?」


冷や汗を流しながら謝罪する大淀を下がらせ、長門を見る。

長門はカテリーナの前に立つと深々と頭を下げた。


長門「急にすまない……私も、作戦に加えてくれ」

木曾「っ…!」


長門の言葉に木曾を初めとした数人の艦娘達がどよめきだす。

カテリーナは無言で、頭を下げている長門を見つめていた。


長門「もう迷わない…もう躊躇わない…だから、戦わせてくれ…!」

カテリーナ「…」


少しだけ眉間を抑え、再び長門を見る。


カテリーナ「…さっさと座りなさい。時間がないのよ」

長門「……ありがとう…!」


長門の作戦参加を許可するカテリーナ。

そして長門は近くの席に座り、再び作戦ボードの前に立つカテリーナを見た。


カテリーナ「…それじゃ、改めて概要を説明するわ。作戦目標は比叡の確保、及び捕獲とするわ。…もう彼女は艦娘ではなく深海悽艦。説得等は無駄と判断したわ」


金剛を初めとした出撃メンバーに酷しい現実を突きつけていくカテリーナ。

金剛や木曾、雪風らは悔しそうに歯を食い縛っている。


カテリーナ「だけどこのままじゃ終われないわ!捕獲して元に戻せるように明石やアイツのいる鎮守府と協力するわ!」

金剛「…カテリーナ…!」

雪風「しれぇ…!」

カテリーナ「この作戦が彼女を止める最後のチャンスよ!比叡が深海悽艦として完全に敵に回ってしまう前に何としても捕まえる!!」


カテリーナの言葉に先程まで沈んでいた金剛達の表情が明るくなっていく。

カテリーナはそんな彼女達を見て力強く頷き、改めて作戦ボードを使って説明を続けた。


カテリーナ「まずは比叡を戦艦悽姫たらしめている艤装の破壊、その後人型深海悽艦用捕獲鎖で彼女を確保する戦法よ」

金剛「向こうの提督がくれた鎖ですネ!」

カテリーナ「そうよ。次に出撃メンバー。第1艦隊旗艦、金剛!」

金剛「イエスッ!」

カテリーナ「金剛、アタシも最後まで足掻いて協力するわ。だから…気合い入れて行きなさい!」

金剛「っ…!はい…絶対…絶対!!連れて帰りマスッ!!!」


涙を堪えながら力強く応じる金剛。

そんな彼女の姿を見て周りの艦娘達の表情も引き締まっていく。


カテリーナ「次、那智、木曾、北上、五十鈴、加賀」

五十鈴「えっ?」


第1艦隊メンバーに自分が選ばれている事に驚く五十鈴。


カテリーナ「アンタの能力なら第1艦隊に入れても問題ないわ。しっかりやりなさいよ」

金剛「よろしくデース!」

木曾「お前なら背中を預けられるぜ。よろしくな」

五十鈴「…えぇ、五十鈴に任せて!」

加古「じゃあ第2の旗艦って誰なんだ?」


加古の質問に舞い上がっていた五十鈴達も確かにと顔を見合わせる。


カテリーナ「第2艦隊旗艦は、長門…あんたよ。次に加古、川内、雪風、不知火、海風の順よ」

長門「なっ…」


旗艦の指名に驚く長門。そして次第に不安気な表情へ変わっていく。


カテリーナ「何驚いてんのよ?元第1艦隊旗艦。さっき見せた覚悟で皆を引っ張って行きなさい」

長門「しかし…私が旗艦で本当に良いのか…?」


不安気に第2艦隊メンバーである川内や雪風達の方を見る。


川内「あーあ、折角私が旗艦になれると思ったのに」

長門「っ…」

川内「でも、長門さんなら仕方ないか」


ニシシと笑い、納得した様子の川内。


加古「頼りにしてるぜぇ~?」

雪風「よろしくお願いいたします!」

不知火「ビッグセブンの実力、見させてもらいます」

海風「ブランクがある、なんて言い訳は無しですよ?」


他の皆も納得し、長門を歓迎していた。


長門「…ありがとう…!皆の期待は絶対裏切らない!!」


拳を強く握り締め、川内達に清々しい表情で宣言する長門。

カテリーナもその様子を見てどこかホッとし、直ぐ様気を引き締めて金剛や長門達に言い放つ。


カテリーナ「じゃあ皆、準備に掛かって!艦隊、出撃!!」

一同「了解!!」


全員起立し敬礼した後、会議室を後にする。

そして各々艤装を装着し、隊列を組んでいく。


金剛「第1艦隊、出撃デース!!」

長門「第2艦隊、出るぞっ!」


隊列を組んだ一行は再びトラック泊地へ進んでいく。

カテリーナはそれを執務室の窓から見送っていた。


カテリーナ「…絶対、連れて帰りなさいよ…」


その時、執務室の扉が開き大淀が入室する。


大淀「提督!近衛さんから連絡が入りました!」

カテリーナ「来たわね…!明石に例の準備をさせて!」



数十分後、一行は目的の海域まで数十メートルまで近付いてきていた。

川内と加賀はそれぞれ水上偵察機と艦載機を飛ばして偵察を行っている。


川内「敵艦反応あり!…これって…!」

長門「どうした!?」


険しい顔の川内と加賀を見て、緊張感が高まっていく。


加賀「敵艦隊多数…前方、およそ60…」

金剛「ホワッツ!?」


加賀の報告に、皆信じられないと目を見開く。

長門や加古は川内を見るが、川内も同じ結果だったのか静かに頷く。


木曾「なんて数だ…!」

不知火「奴等も警備を厳重にしたと言うの…!?」

那智「だが、退くわけにはいかない…!」

川内「そろそろ見えてくるよ!」

長門「くそっ…総員、砲雷撃戦用意!!」


主砲を構え、戦闘準備に入りながらも前進していく。

そして情報通り敵深海悽艦の姿が見えてきた。

空母級20、軽・雷巡級15、戦艦級20、駆逐級5の大部隊を前に冷や汗を流す金剛や長門。


長門「大歓迎だな…!」

金剛「…主砲一斉射用意!」

カテリーナ『その必要は無いわ』


狙いを定め、撃とうとした瞬間カテリーナから無線が入る。

それと同時に一行の後方上空から複数のミサイルが通過していき、前方にいる艦隊を攻撃した。


金剛「な…!」

長門「これは一体…!?」


全員の視線がミサイルを放った物体に集まる。

その正体に思わず足を止め、驚愕の余り数人が口をあんぐりと開けている。


カテリーナ『これがアタシのとっておき、遊撃要塞ブレストよ!!』

近衛『昨夜こいつの申請をするのに苦労したが、どうやらその甲斐があったな』

海風「近衛さん!今朝から姿が見えないと思ったら!」

那智「そうか、昨日の荷物はその為の物だったか…!」

カテリーナ『そんな雑魚はコイツに任せなさい!アンタ達はさっさと比叡を!』

金剛「カテリーナ…!サンキューデース!!」

那智「ふっ…近衛殿が忠を尽くしたくなるのも頷ける…!」

カテリーナ『行きなさいブレスト!久し振りに大暴れしちゃって!!』

ブレスト「ギュアアアアアアアアアアアアアァァァァァァアァァァアアアアアア!!!!!」


雄々しい雄叫びと共に左右の巨大な連装砲が火を吹き、深海悽艦を吹き飛ばしていく。

金剛達はブレストの攻撃で出来た艦隊の隙間を全速力で進んでいく。


加賀「艦載機より入電。前方に反応あり…比叡です」

金剛「了解デース…!」


加賀の報告からしばらくして、前方に1つの影が見えてくる。

それは紛れもない戦艦悽姫と化した比叡の姿であった。


ヒエイ「ウフフフフ…来タ来タ♪間抜ケナ艦娘ガ選リ取リミドリ♪」


艤装の腕部に腰掛け、遊び相手が来たとばかりに目をギラギラと輝かせる。


金剛「比叡…今度こそ連れて帰りマスッ!!」

ヒエイ「連レテ帰ルゥ?…フフフフ…!」


戦闘態勢に入っている金剛を見下し、不敵に笑う比叡。

だが突然鬼の様な形相へ変化し、憎しみの篭った目で睨み付ける。


ヒエイ「ホザケ艦娘風情ガ!!誰ガ貴様達ノ元へ行クカ!!!」


その瞬間、艤装から砲弾が放たれる。

金剛達は、第1及び第2艦隊で別れて比叡を包囲するように回り込み、反撃を開始する。


金剛「ファイアー!!」

長門「主砲一斉射!ってぇ!!」


金剛と長門の合図と同時に主砲を射っていく。

加賀も艦爆を発進させ、比叡目掛け爆撃を開始する。



後書き

近衛の回想長くなりすぎたよ……
後々改変するかも

登場キャラクターの項目、更新する度に何個か消えているのは何故じゃ…?


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