2019-01-15 11:22:44 更新

概要

海風が突然、「提督とデートをしたいです。」と持ち掛けてきて・・・


前書き

キャラ紹介、

提督:元提督、今は村雨と一緒に店を切り盛りしている。

村雨:駆逐艦の女の子、今は提督と結ばれ一緒に店を切り盛りしている。

海風:駆逐艦の女の子で村雨とは姉妹艦、提督と「デートをしたい」と持ち掛ける。

白露:駆逐艦の女の子、一番艦で文字通り村雨や海風たちのお姉さん。

時雨:駆逐艦の女の子、大人しげで静かな印象が特徴的。

夕立:駆逐艦の女の子、明るく天真爛漫で語尾が「ぽい」が特徴。

春雨:村雨の妹。

江風:海風の妹。



海風「提督、ごめんなさい・・・本当にごめんなさい!」


提督に向かって何度も謝る海風。


・・・・・・

・・・



海風「提督! お願いがあります!」


村雨の店に来た海風が、突然の一言。


海風「海風と・・・で、デートして頂けませんか?」


海風にしては珍しく、”デートしたい”との要望が、


提督「う~ん、悪いけど海風。 オレは嫁さんがいるしデートはなぁ~。」


提督が悩んでいると、


村雨「私は構いませんよ♪」


村雨が2人の間に入ってくる、


村雨「海風の事だし、デートと言って本当は何か悩みを聞いて欲しい口実だと思うので~♪」


村雨は海風の見て笑顔でいる。


海風「さ、流石村雨さん・・・お見通しですね。」


海風は渋々答える。


提督「そうか、じゃあデートではなく”相談”なら、構わないかな。」


提督は村雨に「少し店を空けるね」と言った後、海風と外に出た。


・・・・・・


提督「それで、相談とは何かな?」


提督の質問に、


海風「こ、ここでは話しづらいので・・・もっと人の少ない場所でお話してもよろしいでしょうか?」


海風の願いに、


提督「・・・そうか、分かったよ。」


提督は海風と一緒に一通りが少ない場所に向けて歩いて行く。



提督「結構歩いたな・・・店も見えなくなったし、海風のいる鎮守府だって見えなくなったぞ?」


辺りを見回すと、先ほどまで賑やかだった場所とは違い、人の気配がまるでない。


提督「ここなら落ち着いて会話が出来るだろう? そろそろ話してくれてもいいんじゃないか?」


提督の質問に、


海風「・・・・・・」


海風は何故か無言のままだ。


提督「海風、どうした? 何も言わないんじゃ相談にならない・・・」


突如感じた背中に当たる違和感、


海風「そ、そのまま進んでください。 振り向かず、歩き続けて下さい!」


海風が提督の背中に主砲を突き付けていた。


提督「海風? 何で? どうしてこんな・・・」


理由を知りたかった提督、


海風「進んでください! 少しでも振り向いたら撃ちます! 本気ですから!!」


提督「・・・分かったよ。」


提督は主砲を突き付けられた状態でそのまま歩を進める。


・・・・・・


しばらく歩き続けて辿り着いた先は、道の無い行き止まり。


いや、行き止まりとは言えない・・・その先は海であり、簡易な落下防止柵が打たれているだけで、


大人なら簡単に乗り越えられる高さだ。



海風「柵を乗り越えてください! 早くして!」


海風が提督に乗り越えるように指示する。


提督「・・・・・・」


提督は抵抗する様子もなく、海風の指示に従う。


提督「乗り越えたぞ、次は何だ? ・・・飛び降り自殺をしろって言うのか?」


提督は振り向き、海風の方を向く。


海風「飛び降りてください! そして二度と陸に上がって来ないでください!」


海風は主砲の構えを崩すことなく、提督に照準を合わせていた。


提督「どうして? 何でこんな事を? 海風はそんな奴じゃ・・・」


提督の質問に、


海風「ごめんなさい提督、本当に・・・本当にごめんなさい!!」


海風の目から涙が溢れる。


提督「・・・・・・」



提督は理由を聞かなかった、海風の泣く姿を見て悟ったのだ。



”上官の指示か? それとも、妹を人質にされた故の行動だろうか?”



海風の耳に聞こえない小声で発する提督。


海風「飛び降りて下さい提督!! 早く、飛び降りて!!」


海風はまた飛び降りる様に指示、しかし提督は、


提督「無理だ、オレは飛び降りられない。」


提督は拒否する。


提督「飛び降りる勇気がないんだ、オレはこれでも小心者でさ・・・」


そう言って、海風に近づく提督。


海風「来ないで・・・来ないでください!!」


海風の叫びに提督は応じず歩を進める、


海風「近づかないで! 近づかないでって言ってるでしょ!!」


海風は提督の顔に向けて構えるも、


海風「!!?」


一瞬の事である、主砲を提督に奪われてしまった。


海風「・・・ううっ。」


主砲を奪われた以上、抵抗する事も脅すことも出来ない。


提督「・・・・・・」


提督は海風をジッと睨む。


海風「ごめんなさい・・・提督、ごめんなさい。」


海風は必死に許しを請う、しかし提督は、


提督「いいよ、分かった。 死んでやるよ。」


海風「えっ!? て、提督?」


海風は一瞬何を言ったのかが分からなかった。


提督「あの子を・・・村雨を頼むよ。 オレにとってあの子だけが気掛かりだからさ。」


海風「・・・・・・」


提督「村雨を頼む・・・さようなら、海風。」


そう言って、海風から奪った主砲を額に突きつけ、引き金に手をやる。


海風「待ってください提督!! 待って・・・」


海風が止めようとするも、



ドォン!!!!



主砲から放たれる爆音、直後に飛び散る血しぶき・・・バランスを失った提督の体はそのまま海に落下する。


海風「提督! 提督!!」


海風は必死に叫ぶも、提督の体は徐々に海に沈んでいき、最後には完全に沈んでしまう。


海風「提督・・・ううっ、うわあああ・・・」


提督は二度と浮き上がる事は無かった。


・・・・・・


ここは深海、


ル級「? アレハ何ダ?」


偵察中の深海棲艦が何かを見つける。


ル級「・・・・・・」


見つけたのは、提督の死体。


ル級「・・・何ダ、人間カ。」


艦娘だと思っていた深海棲艦にとって、人間であった事にため息をつく。


ル級「艦娘デアレバ新薬ヲ使ッテ我ラノ仲間二出来ルト言ウノニ・・・」


興味を無くして立ち去ろうとするも、


ル級「・・・待テヨ、実験台トシテナラ使エルカモナ。」


再び振り向いて提督の体を担ぐと、拠点へと戻って行く。



ル級「丁度良カッタ。」


戦艦ル級が手に何かの注射器を持っており、


ル級「最近作成シタ新薬ノ効キ目ヲ試シタカッタ所ダ・・・本来ナラバ艦娘二試シタカッタガ仕方ガナイ。」


そう言って、提督の体に新薬を投入していく。


ル級「人間ノ体・・・コノ薬ノ効果二ドレダケ耐エウル? 下手ヲスレバ体ガ四散スルカモナ・・・」


投与を終えたル級は鍵を閉めて結果を待つ。


・・・・・・


ここは鎮守府、


司令官「よくやった海風。」


海風「・・・・・・」


海風は何も言えない。


司令官「海風、辛いだろうがこれでこの世界の脅威は去ったのだ、そう自分を責めるな。」


そう言って、司令官は椅子に戻り、


司令官「明日から通常通り、出撃と遠征が始まる・・・海風は主力部隊に参加してくれ。」


海風「・・・はい、分かりました。」


海風は礼をすると、執務室から出て行く。



深海棲艦の新たな攻撃、”感染弾”。これを受けると艦娘は高熱を発し徐々に肌が白く変色していき、


最終的に”深海棲艦化”してしまう。


これに対して、鎮守府側はワクチン開発施設を設立、深海棲艦化を防ぐためのワクチン開発に乗り出すも、


有効な治療薬が完成出来ず、最新でも”深海棲艦化を遅らせるだけ”までしか得られなかった。


当然、被弾した艦娘は治療出来ず、深海棲艦化するのだが・・・現時点で深海棲艦になった艦娘は1人もいない。


深海棲艦化する前に”自害”か”安楽死”を余儀なくされるのだ。


海風も例に漏れず、感染弾を受けてしまい徐々に体が深海棲艦化する体験をした艦娘である、


しかし、元提督が海風が感染したことを知り、1人でワクチン開発に取り組み、その結果新薬を開発。


海風は新薬の投与により、見事深海棲艦化を防ぐことが出来た。


元提督による新薬開発は艦娘たちに希望を与えるも、上官たちからの視線は冷たかった。


技術力を集結しても開発に至らなかった鎮守府側に対して、元提督は1人で開発してしまった事から、


鎮守府側はこの元提督を”危険人物”と断定、新たな新薬や兵器の開発までする事を恐れ、早々に処分する立案を建てた。


・・・・・・


司令官「海風、お前はあの元提督に近づける数少ない艦娘だ。」


執務室に呼ばれた海風は司令官から命令を受ける。


司令官「元提督に近づき、人通りの少ない場所まで誘導させ、元提督を殺すんだ!」


当然海風は、


海風「出来ません! 私の恩人である、あの人を殺すことなんて出来ません!」


過去に海風は元提督に助けられた事がある、今回も新薬が開発出来なければ海風は今頃深海棲艦化していたはず。


それを治療してくれた元提督を殺すこと等、到底出来るはずがなかった。


司令官「気持ちは分かる、しかしこれは最高司令官直々の命令なんだ。」


海風「・・・・・・」


司令官「もし、逆らえば・・・海風、お前や姉妹艦たちを反逆罪で地下牢へ入れることになるぞ。」


海風「・・・・・・」



究極の選択である、逆らって自分たちが地下牢へ幽閉されるか・・・それとも、恩人である元提督の抹殺か・・・


海風は葛藤する。



海風「分かりました・・・元提督を、私の手で処分致します。」


司令官「そうか・・・頼むぞ、姉妹艦たちの存続はお前に掛かっているのだからな!」


司令官の指示に従わざるを得なかった海風。



海風「提督、ごめんなさい。」


姉妹艦たちのためとはいえ、提督を手に掛けた事に後悔する海風。


実際は”元提督が海風の主砲を奪って自害した”が正しいが、


海風「私が殺してしまったも同然です。」


海風は暗い部屋で1人佇んでいた。


・・・・・・


ここは深海棲艦がいる拠点、


ル級「サテ、新薬ヲ投与シタ人間ハドウナッタカ?」


ル級は実験室の扉を開ける。


ル級「マサカ爆散シテ破片ガ飛ビ散ッテ無イヨナ? 掃除ガ面倒ダ。」


そう思いつつ、部屋の中に入るル級。


ル級「!? コレハ!? 一体ドウナッテイル!?」


ル級が見た光景は、


ル級「人間ガイナイ! ドコヘ行ッタンダ!」



部屋に鍵を閉める時まで、実験台の上にいたはずの提督・・・周囲には血の跡も破片も無い。


薬の影響で爆散したわけではないようだ。



ル級「クッ! コノ部屋ノ入リ口ハコノ扉シカナイ! ツマリ人間ハマダコノ部屋二イル!」


ル級は無線で応援を呼び、部屋内を詮索する。


ル級「ドコダ・・・ドコニ隠レテイル?」


すると、ル級の肩をトントンと叩く誰かが、


ル級「? 誰ダ? タ級カ?」


応援が来たと思い、振り向くル級。


ル級「!!? アガガ!!?」


突然何者かに顔を掴まれる。


ル級「誰ダ!? ・・・キ、貴様ハ!?」


ル級の掴んでいるのは、死んだはずの提督。


ル級は抵抗するも、あまりの力故に身動きが出来ない・・・そして、



グシャッ!!



ル級は顔を潰され、絶命する。


提督「ホゥ・・・コレガ深海棲艦ノ力・・・体ノ芯カラミナギッテ来ルゾ!!」


ル級を殺した提督は実験室から出て行く。


・・・・・・


戦艦棲姫「何ダ、何事ダ!!」


急遽、深海棲艦の拠点のサイレンが鳴り響く。


タ級「分カラナイ! 実験用ノ人間ガ逃ゲタトノ報告ト!」


すぐに実験室と周辺に応援が駆け付ける。



戦艦棲姫「コレハ!?」


応援部隊が見た物は、


戦艦棲姫「全員殺サレタダト!? タカガ人間1人ゴトキ二!!」


先に現場へ駆けつけた先行部隊は全て全滅、傷跡から察するに何かで切り裂かれた跡と強い力で握り潰された状態だ。


戦艦棲姫「!? ソコニイルノハ誰ダ!?」


応援部隊が一斉に主砲を構える。


戦艦棲姫「ナ、何ナノダ? アノ姿ハ!?」


応援部隊はぞっとする。



体中に深海棲艦の艤装が無数に装着されており、片方の腕には何かを掴むための巨大クレーンの様な腕、もう片方には、


何かを切り裂くような巨大な刃物が装着されている、そして体中には、深海棲艦たちに取っては見覚えのある光景が・・・



戦艦棲姫「アレハ・・・マサカ!!」


応援部隊は更にぞっとする。


戦艦棲姫「取リ込ンダノカ!? ・・・我ラ同胞タチヲ!?」


提督の体中には、生前生きていたであろうル級やタ級の一部の残骸が体に残っており、


提督「マダマダ足リナイ・・・オ前タチノ体ヲヨコセ!!」


そう言って、片方の巨大クレーンの様な腕を瞬時に伸ばして、1人の深海棲艦を掴みあげる。


タ級「ナッ!!」


ほんの一瞬、瞬きをしたかしないかの速さ、


掴まれた同胞はそのまま高く上げられ、凄い力で地面に叩きつけられる。


戦艦棲姫「クッ!! 全員撃テェ!! アノ人間ヲ殺セェ!!!!」


前に立ち、主砲を構えて提督に向かって無数の弾丸を撃ちまくる。


・・・・・・


戦艦棲姫「クソ・・・」


応戦した部隊は全滅、残るは瀕死状態の戦艦棲姫のみ。


戦艦棲姫「何ナノダ、コノ人間ハ? ル級ノ報告デハ新薬ヲ実験的二投与シタト聞イタガ・・・」


提督が戦艦棲姫との距離を縮める。


戦艦棲姫「確カ・・・純度100%ノ深海棲艦促進と上位種(鬼・姫)変換剤二強心薬ヲ合成シタ薬品ト・・・」


戦艦棲姫の目の前に提督が立つ。


戦艦棲姫「艦娘デスラ体ガ耐エラレルカ分カラヌノニ、人間等体ガ持ツハズガナイ・・・」


提督が巨大な刃物が付いた腕を振りかざす。


戦艦棲姫「ソ、ソウカ・・・コノ人間、稀二見ル抗体ヲ持ツ人間、薬ノ影響ハアルガ自我ハ失ワレテイナイ・・・


     我ラノ力ヲ人間ゴトキガ取リ込ンダノ・・・」



ザシュッ!!



言い終える前に絶命する戦艦棲姫。


提督「マダマダ足リネェ! 次ハ地上ノ人間共ヲ絶滅シテヤルカ!」


提督は戦闘形態を解除する、すると艤装は消え、姿は普段と変わらない服装に戻る。


提督「ふむ・・・これは中々便利だな。」


言動も普段通りに戻り、


提督「オレを殺そうとした人間たちに、報復してやるかな。」


そう言って、その場から立ち去る提督。


・・・・・・

・・・



海風「村雨さん、ここを開けてください。」


店の扉を何度も叩く海風。


海風「村雨さん、お願いです! 扉を開けて下さい!」


何度も何度も叩き、村雨を呼ぶも・・・出て来ない。


海風「・・・・・・」



あの時以降、村雨は突然店を閉め、”しばらく休業致します”との張り紙が店の扉に貼ってあった。


海風は事実を打ち明けていない、ただ・・・”提督が失踪しました”としか言っていない。



海風「・・・・・・」



逆に”私が提督を殺しました”とは言えなかった。


事実を言えば、いくら姉妹艦であっても村雨は絶対に海風の事を許さないだろう・・・


例え、それが姉妹艦を守るためであっても、提督を手に掛けた事に変わりは無いのだから。



海風「村雨さん・・・本当に、ごめんなさい。」


店の前で何度も謝った後、諦めて店から去る海風。


・・・・・・


その夜、


ドンドン。


店の扉を叩く音。


ドンドン。


叩く音は止まず、眠っていた村雨が目を覚ます。


村雨「・・・・・・」


元気がない村雨、体調を崩したのか、やつれていて辛そうだ。


ドンドン。



一向に鳴り止まない音、海風だろうか? いや、駆逐艦の就寝時間は当に過ぎている・・・海風は真面目だから


深夜にそっと鎮守府を抜け出す人間では無い、つまり扉を叩いているのは別の人間?



村雨「どちら様ですか? 今この店は休業中ですよ?」


村雨は扉を開ける、そこには・・・


村雨「!!!?」


村雨は目を疑う。



・・・翌日、村雨が突然失踪したとの情報が白露たちと海風の耳に入る。


・・・・・・


白露「何? 一体どうなってんの!?」


白露型の長女の白露と妹たちが部屋に集まって、会議を開いていた。


白露「提督はいなくなるし、村雨も突然いなくなって・・・一体2人に何があったの!?」


声を荒げる白露に、


時雨「落ち着いて白露! 気持ちは分かるけどさぁ。」


時雨が白露を落ち着かせる。


夕立「提督さん、いなくなって夕立寂しいっぽい~。」


春雨「村雨姉さん・・・」


夕立と春雨は元気がなく俯いている。


海風「・・・・・・」


皆をよそに海風は無言のままだ。


江風「姉貴、一体どうしたんだよ?」


江風が話し掛けて、


海風「えっ? べ、別に何でもありませんよ。」


平静を装って、答える海風。


江風「そう、ならいいんだけど。」


江風はそれ以上の言及をしなかった。


白露「とにかく! 2人を探すよ!! 皆、見つけたらすぐに連絡する事、分かったね!」


白露の号令に時雨たちが「分かった(っぽい~)」と返事をする。


・・・・・・


部屋のスピーカーから鳴るサイレン、



”近海に深海棲艦が出現、駆逐艦は直ちに出撃、殲滅せよ!” との指示が・・・



白露「もうっ! これから2人を探そうと思ったのに! 皆! 探す前に出撃するよ!!」



今、鎮守府には白露たちしかいない、他のメンバーは遠征に行ったり、別の出撃で鎮守府を空けている。



時雨「うん、分かった。 夕立に春雨、準備をして!」


夕立「分かったっぽい~。」


春雨「はいっ、分かりました。」


白露に続いて時雨たちも艤装を装着するために、工廠場へと向かう。


江風「よし、江風も出撃するぜ! 海風の姉貴、行こう!」


海風「・・・・・・」


海風は何か思い詰めた表情をしている。


江風「姉貴・・・姉貴ってば!!」


江風は声を荒げる、


海風「はっ!? な、何、江風?」


江風「白露の姉貴たちが工廠場へ向かっているよ!」


海風「・・・う、うん。 では私たちも、出撃の準備をしましょう!」


海風は早足に工廠場へと向かう。


江風「海風の姉貴・・・何かあったのかな。」


海風の行動に疑問を持ちつつ、一緒に工廠場へと向かう江風。


・・・・・・


白露「こちら白露型駆逐艦、深海棲艦が出現したエリアに向けて進軍します!!」


旗艦は白露、時雨たちと共に敵部隊が出現したと報告があった場所へと進軍する。



白露「! 敵駆逐艦と軽巡を発見! 攻撃するよ!」


白露たちの目の前に、敵駆逐艦と軽巡が現れる。


白露「皆、主砲を構えて!」


白露の指示で、時雨たちが一斉に主砲を構える。


時雨「目標確認! 僕はいつでも撃てるよ!」


夕立「夕立も準備出来たっぽい~!」


姉妹艦たちは砲撃準備が出来ている。


白露「敵は・・・こちらに向かって直進して来てる? このままでは敵と衝突しちゃう!」



いつもなら間合いを取って、砲撃してくるはずの敵部隊・・・しかし、今回は白露たちに向けて突撃してくる、


急に戦闘方針を変えたのか?



海風「・・・・・・」


海風は何かに気付く、



”突撃? いいえ、違う! 明らかに”何かから逃げているような行動”・・・でも、一体何に?”



白露「行くよ皆!!」


そう言って、白露が最初に砲撃をしようとした時、


海風「待ってください、白露さん!」


直前で海風が止める。


時雨「海風? 一体どうしたんだよ!」


いきなり止められて戸惑う時雨、


時雨「! しまった! 敵はもう目の前に!」


咄嗟に主砲を構えるも、


時雨「! えっ?」


敵は突撃、ではなくそのまま白露たちを素通りする。


白露「一体何? 何なの?」


白露も状況が読めていない。


敵部隊は白露たちに目もくれず、そのまま素通りして遠くへと離脱する。


白露「どう言う事・・・一体何がしたかったの?」


白露の問いに、


時雨「分からない、まるで”何かから逃げている”様な感じだったけど・・・」


時雨が推測して、


白露「逃げる? でも、一体何に?」


白露たちが考えていると、


提督「おや、白露たちじゃないか。」


白露たちの前に現れたのは、


白露「て、提督? 提督なの!?」


そこには、いなくなったはずの提督が立っていた。


海風「・・・・・・」


海風はその光景を見て背筋が凍る。


白露「急にいなくなって心配したんだよ! てっきり死んだかと思った位にね!」


白露が怒って提督に詰め寄る。


提督「そうか、それは悪かったね。」


提督は素直に謝る、


時雨「とりあえず、無事だったんだね・・・本当に良かったよ。」


時雨は安堵の息を漏らす。


夕立「提督さん、褒めて欲しいっぽい~♪」


夕立は何の疑いもなく、近寄る。


提督「お~よしよし。 夕立は本当に甘えん坊だなぁ。」


提督が夕立の頭に触れようとした瞬間、


海風「夕立さん! 提督から離れて!!」


咄嗟に叫ぶ海風、


夕立「ほぇっ? 海風どうしたの?」


夕立はきょとんとする、


海風「えっ、そ、それは・・・」


海風はそれ以上の事を言えない。



”提督は自分が殺してしまった”とは言えない、それに司令官の命令に逆らえば”姉妹艦を地下牢に幽閉する”と言う話は、


海風だけにしか伝えられておらず、白露たちは事情を全く知らない。



提督「よしよし~、夕立はいい子だ。」


提督は夕立の頭を撫でてあげる。


夕立「ぽい~♪ ぽい~♪」


夕立は上機嫌だ。


春雨「司令官、村雨姉さんを見ませんでしたか?」


春雨の質問に、


提督「? 村雨? 村雨がどうしたんだ?」


”村雨”と聞いて提督は過剰に反応する。


春雨「・・・司令官と同じ、いきなり失踪してしまったんです!」


提督「! 何だって!」


春雨の言葉に、


提督「そうか・・・分かった、オレも村雨を探すよ。」


春雨「あ、ありがとうございます。 司令官!」


提督の言葉に春雨は安心する。


海風「・・・・・・」



普段と変わらない提督と白露たちとの会話の光景・・・しかし、これには1つ間違いがある。


提督は”間違いなく死んでいる”のだ。 知っているのは海風だけで他の皆はその事実を知らない。


1人だけ事実を知っている上に海風は恐ろしくて怯えている。



時雨「? どうしたの海風?」


海風の体調が悪そうに見えたのか、時雨が心配になって尋ねる。


海風「い、いえ・・・な、何でもありません。」


海風は「何でもありません」とだけ答える。


時雨「そう・・・ならいいんだけど。」


時雨も江風同様にそれ以上の言及をしない。


白露「とりあえず、提督が見つかったわけだし、今日はひとまず帰還しよう、後は村雨を探さなきゃ。」


白露の言葉に、


時雨「そうだね、敵の姿は見当たらないし・・・皆で帰ろう。」


時雨も賛同すると、残りの夕立たちもそれに続き、一緒に鎮守府へと戻る。


海風「・・・・・・」


残ったのは、海風と提督の2人だけ。


海風「て、提督・・・」


海風は足をがくがく震わせている。


提督「? どうした海風?」


提督は心配になって近づく、


海風「ち、近づかないでください!」


海風は必死に拒否するも、


提督「・・・大丈夫だよ海風。」


提督は笑いながら、海風の耳元で、



”白露たちには危害は加えない・・・受けるのはお前だけで充分、そうだろう?”



急に重苦しい言動に変わり、



”これからオレヲ殺そうとシタ人間共二・・・復讐シテやるヨ。”



そう言って、提督はその場から消え失せる。


海風「提督!・・・あああ。」


提督は一瞬のうちに消え、海風は1人海上で佇んでいた。


・・・・・・


赤城「警戒! こちらは異常なし!」


加賀「こちら加賀! 異常ありません!」



ここは空母機動部隊主体の〇〇鎮守府、戦績は常に上位で、歴戦の艦娘が多く滞在している。



提督「確かこの鎮守府は空母の艦娘が多かったはずだな。」


提督は周囲を見回し、


提督「まずはこの場所で試してみようか・・・ハアァァ~~。」


その瞬間、深海棲艦形態に変わり、全身が艤装に包まれる。


提督「敵ノ拠点デ奴ラヲタクサン取リ込ンダカラナ・・・”取リ込メル”ッテ事ハ、”排出モ出来ル”ッテ事ダ。」



提督は体に付着している無数の敵の肉片であろう物を無数にばら撒く・・・すると、肉片が全て”空母ヲ級”と化す。



提督「マズハ小手調ベダ、無数ノ空母ヲ級・・・奴ラハ対処出来ルカナァ?」


提督が腕を上げると、空母ヲ級は一斉に突撃を開始する。


・・・・・・


赤城「!? 敵の気配を察知! この数は・・・」


赤城が異変に気付く。


加賀「敵の数は不明! おかしい、一体どこからこんな数が現れて・・・」


加賀も異変に気付き、すぐに偵察機を飛ばすも、


赤城「!? 偵察機が撃ち落とされた!?」


上空はヲ級の艦載機が無数に飛んでいる。


加賀「応戦します! 赤城さん、鎮守府の皆に報告を!!」


赤城「分かりました! 加賀さん、少しの間持ちこたえて下さい!!」


赤城は無線で鎮守府内の仲間たちに報告する、


加賀「くっ! 敵の艦載機が多すぎる・・・ああっ!!」


一瞬の油断、加賀は大破する。


赤城さん「!? 加賀さん!!」


赤城は弓を構えて応戦しようとするも、


赤城「!? 爆撃機!? 嘘・・・あれだけの数、とても防ぎようが・・・きゃあっ!!」


赤城までも被弾、加賀と同じ大破に追い込まれる。


艦娘「赤城さん! 加賀さん! 大丈夫ですか!」


仲間が次々に現れ、応戦を開始。


艦娘「押し返して! 私たちが防衛します、その間に赤城さんと加賀さんを救助して!」


仲間の一部は赤城たちの救援に、一部の仲間は応戦のため弓を構える。


・・・・・・


提督「お~やってる、まさに空母 対 空母だな。」


遠くで提督が見守り、


提督「無事に勝利してくれよ・・・でないと、オレの楽しみが無くなるからな。」


そう言って、提督はその場から去る。



〇〇鎮守府は空母艦娘たちの必死の抵抗も空しく、一方的に押し切られ制圧。


敵の襲撃から僅かに10分にも満たなかった。


・・・・・・


白露「皆、準備は出来た? あたしたちも出撃するよ!」



短時間で複数の鎮守府が次々に敵によって制圧される中、残された鎮守府が敵に対して総攻撃を決行。


当然ながら白露たちも出撃準備を行っている。



時雨「こんな短時間で鎮守府が制圧されるなんて、今まで無かったのに!」


夕立「これ以上敵の好き勝手にはさせないっぽい~!」


時雨率いる夕立や春雨、江風も準備が出来ている。


白露「じゃあ行くよ~! あたしたちの力を見せてやるのよ!」


白露の号令で白露型が一斉に出撃を開始する。


海風「・・・・・・」


海風だけが出撃をせず、鎮守府に残ったままだ。


海風「・・・・・・」


海風は手に何かを持っている・・・それは、手紙?


海風「・・・・・・」



出撃要請が下りる数分前、


艦娘「海風さん、あなた宛てに手紙が届いています。」


海風「? 私にですか?」


海風は手紙を受け取る。


海風「・・・・・・」


裏を見るとそこには、



差出人:村雨



海風「!? 村雨さん!?」


海風は封筒を破って手紙を読む、


海風「・・・・・・」


そこに書いてあったのは、たった1文だけで・・・



”店で待っているわ”



海風「村雨さん・・・」


海風は手紙を持って立ちすくむ。


・・・・・・

・・・



海風「・・・・・・」


海風は村雨の店の前に立っていた。



白露たちには「気分が悪い」等の理由で出撃を遅らせる旨を伝えていた。


海風「・・・・・・」


海風は扉を叩く、


海風「村雨さん、手紙に書いてある通りに海風は来ました・・・扉を開けてください。」


海風は何度も叩くが、村雨が扉を開ける様子は無い。


海風「・・・・・・」


おもむろにドアノブに触れる。


海風「? あれっ、鍵が空いてる?」


鍵が掛かっておらず扉は開き、海風は店内へと入る。


海風「・・・・・・」


海風が見た光景は、



店内に設置されていた机や椅子が端に置かれており、その中の1セットなのだろうか?


中心に机が1つと、椅子が2つ置かれていた。 机の上には火の付いた蝋燭が1本立てられており、


蝋燭以外の明かりは一切灯していない。



ガチャッ!!(扉の鍵が閉まる音)



海風「!?」


勝手に鍵が掛かる・・・海風が外に出ようとするが、


海風「開かない・・・どうして? さっきまで開いていたはずでは・・・」


海風が必死にドアノブを回そうとする中、


村雨「いらっしゃい、海風。」


海風の前に村雨が笑顔で立ちすくんでいた。


・・・・・・


村雨「飲み物は紅茶にする? それともコーヒーがいいかしら?」


海風を椅子に座らせて飲み物を聞く。


海風「・・・・・・」


海風は何も答えない、


村雨「・・・何も言わないと、飲みたい物が分からないんだけど?」


村雨は呆れつつ、


村雨「まぁいいわ、どちらにしろ海風は長時間この店に留まってもらう事になるから♪」


海風「えっ? ど、どう言う事ですか?」


村雨の言った事が分からない海風、


村雨「今から海風には”ある問題”に付き合って貰うわ、もちろん・・・海風に拒否権は無いけどね。」


海風「・・・・・・」


村雨「今、各鎮守府を深海棲艦に変貌した提督が襲撃をしてるでしょ?」


海風「!? ど、どうしてそれを!?」


村雨がその事実を知っていることに驚く海風。


村雨「知っているわ・・・提督が”復讐”のために鎮守府を襲撃している事、そして・・・」


海風「・・・・・・」


村雨「貴方が、”提督を手に掛けた”事もね♪」


海風「!!?」


海風はぞっとする。


村雨「それを踏まえて、私が考えた問題・・・”鎮守府側が提督を倒す”、もしくは”提督が全ての鎮守府を壊滅させる”、の


   どちらだと思うかしら?」


村雨は机の上に無線機とスピーカーを置き、


村雨「海風は当然、前者よね~・・・私はもちろん後者よ♪ もし、鎮守府側が勝利すれば私は”自害”するわ。


   でも、提督が勝利すれば・・・海風、貴方を殺すわ。」


海風「なっ!!?」


海風は驚き、村雨の事を恐れているのか、反論すら出来なかった。


・・・・・・


村雨「〇〇鎮守府・・・確かこの鎮守府は戦績トップ5の戦艦空母主体の鎮守府だったわね。」


無線機から流れる現在の通達をスピーカーで音量を上げる。


村雨「対する提督側は・・・戦艦棲姫と防空棲姫が合わせて10体も! 凄い戦力ですね!


   鎮守府側はきちんと防衛できるのかしら~♪」


村雨は無線機から流れる戦局を聞くたびに笑顔になる。


海風「・・・・・・」


海風は何も言えない。


村雨「ちょっと! 何も聞こえないじゃない! 壊れちゃったかしら? ・・・あっ、聞こえる聞こえる・・・え~っと。」


無線機から流れた情報は、”鎮守府側が壊滅した”との報せだ。


村雨「あら、また提督が勝利しちゃった~♪ 流石提督よね~♪」


村雨は笑っている。


海風「何で・・・どうして? どうしてそんなに笑っていられるのですか?」


海風が口を開き、


海風「鎮守府が壊滅してしまったんですよ? 仲間や司令官がやられてしまったんです・・・


   それを”良かった”って・・・あんまりじゃないですか、村雨さん!!」


海風は言葉を荒げる。


村雨「海風がそれを言う資格があるわけ?」


村雨は海風を睨みつつ言い寄り、


村雨「海風、貴方こそ私の大切な人を奪ったでしょ? それこそあんまりじゃない?」


海風「!? そ、それは・・・」


海風は何も答えられない。


村雨「それに、提督がいなくなり、鎮守府側も脅威が無くなり、さぞかし平和になったと思ったでしょうね。」


海風「・・・・・・」


村雨「でも、その考えが逆に事態を悪化させることになったわね。」


海風「・・・・・・」


村雨「提督はね、ただ皆を助けたい一心で治療薬を開発したのよ・・・それなのに、あんな仕打ちって何なの?」


海風「・・・・・・」


村雨「そして海風! 命令されたとはいえ、貴方は提督を殺そうとした・・・私は海風を絶対に許さない!!」


村雨は海風を怨恨如き表情で睨みつける。


・・・・・・


無線機から流れる戦闘状況、


鎮守府の壊滅と共に、艦娘たちの損傷も報告される中、


村雨「鎮守府近海で駆逐艦たちが待機しているわね・・・その中に、白露たちがいるわ。」


村雨は別の無線機を取り、耳に当てる。


村雨「戦闘が始まった・・・白露たちはどうなるかしら?」


机に置いてある無線機を切った状態で、村雨だけが戦況を把握している。


海風「・・・・・・」


海風はただ白露たちの無事を祈るだけだ。


村雨「白露は中破、時雨と夕立は大破で撤退をして・・・春雨は、小破で済んだのね、良かったわ。」


流石の村雨も、白露たちの安否を心配していた模様。


海風「む、村雨さん・・・あの。」


海風は何かに気付く、


海風「か、江風はどうなったのですか?」



今、村雨が口から出た情報を整理すると、白露は中破・時雨と夕立は大破・春雨は小破であるが・・・


江風の状態は何も報告していない。



村雨「・・・・・・」


村雨はまだ無線機を耳に当てたままだ。


海風「江風は・・・江風は無事なんですか?」


海風の叫びに、


村雨「江風? あら、言ってなかった? ごめんなさい。」


海風「・・・・・・」


村雨「江風はね・・・」


村雨が何故か口を閉じる。


海風「? どうしたんです? 江風はどうなったのですか?」


海風が問うと、


村雨「残念、江風は・・・沈んだわ。」


海風「えっ・・・」


一瞬何を言ったのか理解できなかった海風。


海風「む、村雨さん・・・今何て?」


海風の質問に、


村雨「だから、”江風は沈んだ”、つまり”死んだ”って事ね。」


村雨は躊躇わずに言うと、


海風「嘘・・・嘘、ですよね? 村雨さん! 嘘ですよね? 嘘って言ってください!」


突然海風は大声で村雨に詰め寄り、


海風「嘘って言ってください! ねぇ村雨さん! 嘘ですよね!!? 絶対にそんな事は!!」


海風は必死に否定するも、


村雨「嘘じゃない、何度も言ってるけど”江風は死んだ”わ。」


村雨は意見を変えない。


海風「そ、そんな・・・そんな事って。」


海風はショックのあまり俯き、そして、


海風「江風を・・・江風を返して! 江風を返して下さい、村雨さん!!」


狂ったように海風は、村雨に掴みかかり言い寄る。


村雨「・・・・・・」


村雨は無言のままだ。


海風「江風を・・・江風を返して!! 村雨さん、江風を返して! 返してよ!!」


まるで仇を討つときの様に睨みつける海風に、


村雨「だったら海風こそ、私の提督を返してよ。」


海風の手を払い、今度は村雨が海風に言い寄る。


村雨「店で一緒に生活していた頃の、優しかった提督に今すぐ戻してよ。」


海風「・・・・・・」


何も言い返せない海風、


村雨「司令官と海風のせいで、深海棲艦化してしまった提督を・・・今すぐ元の提督に戻してよ!!


   昔と同じ、人間だった時の提督に今すぐ戻してよ海風!!」


今度は村雨が大声で叫ぶ。


・・・・・・


その後も、鎮守府が次々に制圧されてしまう中・・・


村雨「残るは後1つ・・・最高司令部のみね。」



無線機の情報によると、最後の切り札として大和や長門たちが迎え撃つとの内容が、



村雨「あら、最高司令部も相当切羽詰まっているわけね~♪」


村雨は「どうなるのかしら~?」と結果を楽しみにしている。


海風「・・・・・・」


海風は何も言わず、俯いたままだ。



拠点を次々に制圧された挙句、妹である江風を失った事で、海風の精神は病んでいた。



村雨「そんなに落ち込まないの! 元を正せば海風、命令されたとはいえ、貴方がやった結果でしょ?」


海風「・・・・・・」



村雨の言っていることは最もで、今回の事態は自分の問題とも言える。



海風「もう、いいです。」


海風は顔を上げて、


海風「私を殺してください・・・江風はいなくなり、居場所までもが無くなった以上、


   私はこれからどう生きて行けばいいのか分かりません。」


村雨「・・・・・・」


海風「お願いします、もうこれ以上犠牲を増やさないでください、これ以上関係の無い皆さんを


   巻き込まないでください、お願いします!」


海風の願いに、


村雨「海風って本当に何も分かっていないのね・・・どうしていつも自分1人で抱え込むのかしら?」


海風「? えっ?」


村雨からの質問に海風は困惑する、


村雨「司令官に殺害を命令された時も、どうして白露や私に何も言ってくれなかったの? どうして、海風だけが、


   1人だけで悪者になろうとしたの?」


海風「・・・・・・」


村雨「”皆を巻き込みたくない”気持ちがあったのは分かるけど、結果的に皆を巻き込んでるじゃない。


   それならいっそ皆に打ち明けて助けて貰えば良かったじゃない!」


海風「む、村雨さん・・・」


村雨「でも、もう手遅れね・・・もう後には引き下がれない状況だし・・・それに。」



無線機から”最高司令部が壊滅した”との報告が流れる。



村雨「はい、全拠点の壊滅を確認・・・私の勝ちね♪」


海風「・・・・・・」



最初に村雨が言った事が確かなら、”海風は村雨に殺されることになる”が、


海風「・・・・・・」



海風は抵抗する気も、反論する気も無かった・・・ただ絶望し、無力感だけが残っている。


村雨「最後に何が飲みたい? 紅茶・コーヒー、それとも緑茶がいいかしら?」


村雨の質問に、


海風「こ、紅茶を、下さい。」


・・・・・・


紅茶を飲み終え、軽く深呼吸したその時、


海風「? えっ・・・きゅ、急に意識が?」


海風が急に意識が朦朧し、今にも倒れそうだ。


海風「む、村雨さん? まさか紅茶に毒を?」


海風の問いに村雨は笑顔で、


村雨「だから聞いたでしょ? ”最後に何が飲みたい?”って♪」


海風「・・・・・・」


海風はそのまま意識を失い、地面に倒れる。


村雨「海風・・・」


村雨は海風の顔に手をやって、


村雨「これから起きる事態に、海風はどう対処するのかしら?」


村雨は意味深な発言をして、


村雨「では、そろそろお開きに致しますか~♪」


そう言って、机に立てていた蝋燭の火を吹き消した。


・・・・・・

・・・



江風「海風の姉貴! 返事をしてくれ!!」


海風の隣で必死に叫ぶ・・・江風?


海風「・・・う、ううっ。」


何度も江風が叫び続けた事で海風の意識が戻る。


江風「!? 姉貴! 良かったぁ! 無事で良かったよ!」


江風は海風に寄り添う。


海風「!? か、江風!? ど、どうして!?」


海風は状況を分かっていない。


江風「匿名でこの場所に”青い髪の女の子が倒れている”って聞いて・・・もしかしたら、海風の姉貴だと思って、


   ここに来てみたら、やっぱり姉貴が倒れていたんだよ!」


海風「・・・・・・」



周囲を見渡すと、崩れた壁や散乱した書類が・・・どうやらここは制圧され破壊された鎮守府のようだ。



海風「・・・・・・」



どうして? 私はさっきまで村雨さんの店の中に・・・それに、江風は何で生きているの?



江風「姉貴! 白露の姉貴たちも探しているから! 早く姉貴たちがいる場所へ向かおう!」


海風「・・・・・・」



白露さんたちも待っている? 確か戦闘に参加して負傷していたはずじゃあ?



海風「・・・・・・」


海風は状況を把握できず、江風の言うがままに一緒に歩いて行く。


・・・・・・


白露「海風! 良かったぁ! いなくなったから皆心配してたんだよ!」


白露を含む時雨や夕立もその場にいて、海風の顔を見た瞬間皆が「無事で良かった」と喜ぶ。


海風「・・・・・・」



少し落ち着いた後、皆の話を聞くと状況が大まかに見えて来ました。



どうやら提督は鎮守府を襲撃する直前に白露さんたちを事前に用意していた施設に留めて置いたことが皆の


話から分かりました、理由は特に聞かせて貰えなかったそうです・・・


その後、”復讐”と称して全鎮守府を壊滅させたことは間違いないらしいです。


今、鎮守府内は復旧に全力を注いでいて、負傷した艦娘たちの治療や建物の修復をしたりと大忙しです。


驚くことに、あれだけの襲撃があったのに関わらず、死亡者(轟沈)は1人も出なかったとの事。


それに、村雨さんが言っていた内容の一部が”嘘”だった事が分かります、一体何故村雨さんは


あんな嘘を言ったのでしょうか?


・・・


分かりません・・・ですが提督があの時、私の耳元で呟いた、 ”白露たちには危害を加えない”の言った通りに


白露さんたちや江風には傷1つ付いていませんでした、提督は白露さんたちに最初から危害を加えるつもりは無かったようです。


提督と村雨さんは失踪したままの状態です・・・どこかで隠れて生活しているのか、もしくは違う環境下で新たな生活を


しているのかもしれません。


・・・


これは警告なのでしょうか? ”やろうと思えば簡単に壊滅出来る”と提督が力を示したようにも捉えられます。



江風「姉貴! ちょっと手伝ってくれよ!」


海風「あっ、はいっ!」



江風に呼ばれた・・・私はすぐに江風の元に向かう。


私も白露さんや江風と一緒に、現在鎮守府の復旧作業に大忙しです。


もちろん、いつ復旧出来るのかは見当もつきません・・・それでも、私たちは前に進むべきです。


海風「ふぅ~、ここは何とか片付きましたね。」


白露「海風~! これ持つの手伝ってよ~。」


今度は白露たちに呼ばれる、


海風「あっ、はいっ! 今すぐ行きます!」


そう言って、急いで白露たちの元に駆け寄る海風。


海風「よし、復旧作業! 頑張ります!」



あれだけ、絶望と無力感に押し潰されていた海風だが、今の彼女の表情は自信と希望に満ち溢れた表情に変わっていた。


・・・・・・

・・・



皆と一緒に復旧に力を注いでいた海風に、更なる地獄が待ち受けていた。


海風「・・・・・・」


現在、海風は鎮守府地下の牢屋に閉じ込められている。


海風「・・・・・・」


海風は常に俯いていたままで表情が見えない。

 

・・・・・・


それは復旧作業を続けて1か月が経つ頃、


海風「海風、お呼びでしょうか?」


司令官に呼ばれ、執務室に入った瞬間、


司令官「海風を捕縛しろ、この事件の首謀者だ!」


側近に取り押さえられる海風、


海風「首謀者って・・・一体何の事ですか!?」


海風は司令官が何を言っているのか見当もつかない。


司令官「この世界の鎮守府壊滅の発端となったのが、お前が”元提督を殺害した事”が原因だからだ。」


司令官の言い分に、


海風「そ、そんな・・・あれは最高司令官の命令で、司令官も逆らえずに私に”殺せ”と命令した事では!」


海風の言葉に、


司令官「オレは何も言っていない、それに最高司令官殿が命令だって? どこに証拠があるのだ?」


海風「!? そ、それは・・・」


海風は何も答えられない、


司令官「海風・・・お前が犯した事は重罪に値する・・・海風を地下牢へ閉じ込めろ!」


司令官の指示で側近らが海風を強引に連れて行く。


海風「離して・・・離して下さい!!」


必死に抵抗するも、海風は地下牢へと入れられてしまったのだ。


・・・・・・


司令官の差し金だろうか、白露たちの耳にも伝えられ、


白露「海風のバカぁ! 何でそんな事をしたのよ!!」


時雨「海風・・・君は真面目で優しいはずなのに・・・(失望)」


白露たちから罵声や怒号を浴びせられ、


江風「海風の姉貴・・・血も涙も無いね。」


妹である江風にも見放され、海風は再び絶望と無力感に支配されてしまう。


海風「どうして? 私はただ司令官の命令に従って・・・」


海風は何度も否定するが、


海風「結局私は・・・司令官に利用されただけ。」



最初から捨て駒にするのが目的だったのか、それとも、元提督の殺害後にこのような結末になると思わなく、


上層部が海風に全責任を負わせて雲隠れしようとしたのだろうか?



海風「提督・・・ごめんなさい。」


地下牢でただ1人、海風は呟いていた。


海風「私は司令官たちに踊らされていただけ・・・村雨さんの言っていた通り、皆に相談していれば・・・


   こんな事にはならなかったかもしれません。」


海風は今更ながらに悔やむ。


海風「提督、本当にごめんなさい・・・私があの時もっと冷静になっていれば、こんな事態にはならなかったかも


   しれません・・・その事態に巻き込んでしまった提督、本当にごめんなさい。」


海風は何度も何度も「ごめんなさい」と謝り続ける。


・・・・・・


翌日、地下牢にいる海風に伝えられた事は、



”翌日、海風を処刑する”と・・・



海風「・・・・・・」



妙ですね、準備が早すぎます・・・処刑でも最低1週間は掛かるはずなのに・・・


海風「・・・・・・」



早々に証拠隠滅を企てているんでしょうか? そんなに私が生きていたら迷惑なんですか?


海風「・・・・・・」



もう、いいです。 私にはもう守る物も、帰る場所もありません・・・今すぐにでも楽にして欲しいです。


海風はまた絶望と無力感に苛まれる。


・・・・・・


夜、明日が本当に処刑なら今夜が最後の夜になるはずだが、


?「海風、無事なの?」


地下牢に聞こえる小さな声に、


海風「? 誰ですか?」



この地下牢には私しかいないはず・・・一体誰の声でしょう?


海風「・・・・・・」


声のする方向に視線を向けると、


海風「・・・む、村雨さん。」


目の前には紛れもない、村雨がいた・・・当然、どのように地下牢に入って来たのかは不明である。


村雨「海風には同情するわ・・・命令に従ったのに、簡単に見捨てられたようね。」


海風「・・・・・・」


村雨「でも、これが世界の現状よ、今の人間たちは都合が悪くなれば、簡単に部下を切り捨て、責任を押し付けるのよ。


   少しは身に染みて分かったでしょう海風。」


海風「・・・・・・」


村雨「海風は明日早朝に処刑される・・・でも、海風がまだ生きたいと言うなら、私が助けてあげるわよ。」


海風「・・・・・・」


村雨「どうする海風? もちろん貴方が決める事よ。 素直に処刑されるのがお望みか、それとも、


   新たな生活をするのをお望みか・・・海風が選びなさい。」


海風「・・・・・・」


村雨の言葉に、


海風「海風は・・・生きたいです。」


海風は口を開き、


海風「お、お願いします・・・村雨さん!」


海風の必死の願いに、


村雨「そう・・・分かったわ。」


そう言って、村雨はどこかで入手したであろう鍵を出し、海風の牢屋の鍵を開けた。



翌日、海風がいない事を知る司令官たち。


すぐに捜索に乗り出すも、最後まで海風を見つけることは出来なかった。


・・・・・・

・・・



提督「やぁ、海風。」


村雨の案内で、2人の家(もしくは拠点)でゆっくり新聞を読んでくつろぐ提督の姿が、


海風「て、提督!」


提督に近づき、


海風「ごめんなさい! ・・・本当に、ごめんなさい!!」


海風は何度も謝る。


提督「・・・構わないよ、もう過ぎたことだし。」


提督は海風を恨んでいる訳ではない様子。


海風「でも! 私のせいで・・・。」


今にも泣きそうな海風に、


提督「だからもう済んだ事だって、海風も結局司令官たちに踊らされていただけだし・・・


   そんなに自分を責めるな。」


海風「・・・・・・」


提督「村雨、海風を用意した部屋に連れて行ってあげて。」


村雨「はい、分かりました。」


そう言って、村雨は海風を部屋に案内する。


・・・・・・


村雨「提督、お茶を用意しました。」


提督「うん、ありがとう。」


村雨からお茶を受け取る村雨。


提督「海風はどう?」


村雨「はい、大分落ち込んでいますね~。」


提督「そうか、上手く立ち直ってくれればいいんだけど。」


提督は海風の事をずっと気に掛けている。


村雨「・・・そう言う提督こそ、体は大丈夫なのですか?」


提督「? 体?」


村雨「はいっ、深海棲艦化したことはお忘れでは無いですよね?」


村雨の言葉に、


提督「うん、それがさぁ、不思議な事にね・・・」


提督が説明する、


提督「もう深海棲艦には変身出来なくなってね。」


村雨「! 一体どうして?」


提督「・・・多分だけど、体が”深海棲艦の力に適応してしまった”のではないかと。」


村雨「・・・・・・」


提督「確か、敵の1人が「稀に見る抗体を持つ人間」とか言っていたから、オレがそうなのかもよ?」


村雨「・・・本当に、体は大丈夫なのですか?」


村雨は心配するも、


提督「うん、この通り。 だからいつもと同じ普段通りに生活できるし、結果オーライだなっ。」


提督は笑いながら答える。



・・・提督の言葉には一部嘘が混じっている。


提督は実際に”一度死んでいる”、命を吹き返した要因に間違いなく”深海棲艦化”が影響している。


”体が深海棲艦の力に適応している”と言ったが、実際は提督が深海棲艦の力に支配されているのか、


それとも本当に力を制御しているのかは提督本人にしか分からない・・・


ただ、提督が確信したことは、



”深海棲艦化した事でオレは戦えるって事、つまり艦娘たちと共に出撃が出来るって事だな”



自我が失われておらず、普段通りに生活でき、敵の力を得た提督。


ある意味、今回の事態は提督にとって好都合な結果となったに違いない・・・


・・・・・・


現在、提督は村雨と一緒に新たな店の開業を目指している。


提督は建物の建造と室内の装飾に力を入れており、


村雨は艦隊のツテを辿って、有名なメイド長の元で料理の勉強に励んでいる。


海風はその後立ち直り、”提督と村雨さんの2人を支えたい”との決意で補佐役担当になる。


3人は新たな道を目指してこれから先も前に進み続けて行った。











「提督、ごめんなさい!」 終












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MARZさんから
2019-01-10 01:28:10

エメラグーンさんから
2019-01-09 02:09:57

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2019-01-13 14:06:05

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エメラグーンさんから
2019-01-09 02:09:58

SS好きの名無しさんから
2019-01-08 22:23:31

このSSへのコメント

8件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2019-01-08 23:07:12 ID: S:VO2cNa

続編に期待してます!!

2: SS好きの名無しさん 2019-01-09 02:09:26 ID: S:RnlPZI

提督女体化したり自刃したり村雨のメンタルそろそろ
ヤバいんじゃぁ

3: エメラグーン 2019-01-09 02:10:20 ID: S:INav_4

めっちゃいい所で今終わってる〜
執筆頑張ってください!

4: SS好きの名無しさん 2019-01-12 01:38:20 ID: S:ru112F

夜遅くに更新お疲れ様です。
最強夫婦が闇に堕ちると
ここまで強いとは…。

5: SS好きの名無しさん 2019-01-12 02:16:16 ID: S:r_3ZZP

なるほど。やっぱり女将村雨と元提督シリーズは基本パラレル世界が
一杯有る感じなんやね

6: しおい 2019-01-13 16:20:09 ID: S:J70VYo

誤字報告です!

海風「え、江風はどうなったのですか?」

江風はかわかぜと読みます!


村雨は意味部下な発言をして、

意味深いとか、意味不明ではないでしょうか?


そう言って、机に立てていた蝋燭の日を吹き消した。

火では無いでしょうか?

私の間違えかも知れないですけど報告でした

7: キリンちゃん 2019-01-13 16:26:56 ID: S:9XhrcB

6さん、誤字報告ありがとうございます! 直します~♪

8: エメラグーン 2019-01-15 22:16:46 ID: S:Ou3mUK

完結おめでとうございます!
お疲れ様でした!
凄く面白かったです!


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