2019-02-04 22:58:08 更新

概要

通称”ゴミ処理場”と呼ばれる、行き場を失った艦娘たちが集う施設の物語。


前書き

キャラ紹介、

時雨:この物語の主人公、”ゴミ処理場”と言う名の施設に入れられ、未来の無い生活に
   抗えずに生活するも、艦娘たちの出会いで気持ちが変わっていく。

大鳳:時雨が入れられてからしばらくして収容された装甲空母の女性。
   時雨と波長が合い、以降は時雨とお互い支えながら生活をする。

村雨:駆逐艦の女の子、理由があって時雨がいたゴミ処理場にやって来る。


この世界には通常の鎮守府以外に複数の施設が存在する。


障害艦娘施設・・・障害を持った艦娘たちが収容される施設、”リハビリ施設””とも呼ばれ、ここに入れられた艦娘たちは

         一定期間の間収容され、違う鎮守府へと再着任される。


重複収容所・・・「2人目以降の艦娘」が一時的に入れられる施設、1人目が轟沈後に自動で入れ替えられる仕組みであるが、

        この施設は艦娘たちの強い要望で破壊されてしまう。


最果て鎮守府・・・鎮守府の中で最も荒れ果てた鎮守府、手入れも全くされておらず室内は埃だらけで、

         この鎮守府に着任する提督や艦娘たちは「落ちこぼれ」の集まりである。



・・・と、いくつかの施設が挙げられるが、その中で最も過酷な施設がある、それが”ゴミ処理場”と言う名の施設である。



最果て鎮守府に着任する「落ちこぼれ」の艦娘でもなく、障害艦娘施設に入れられる障害を持った艦娘たちでもない。


この施設はその名の通り、「不要な艦娘」 「捨てても(解体しても)構わない艦娘」を収容する未来の無い施設である、


低確率であるが、各鎮守府の提督が立ち寄ることがあり、その時は引き取って貰いたい一心で皆が必死に訴える姿が見られる。


それでも、引き取ってもらえる艦娘は全体の10%に満たなく、後の90%は解体か敵部隊への突撃(死に役)のために


引き取られる艦娘がほとんどである。


今日も何人かの艦娘たちがこのゴミ処理場へと入れられた・・・


・・・・・・


時雨・・・彼女もゴミ処理場に入れられた1人である。



別の鎮守府では、更なる改装をして活躍中の時雨や、子供を産んで幸せに暮らしている時雨もいる。


この時雨は何人目の時雨かは不明であるが、どうしてこの施設に入れられてしまったのか。


「着任した瞬間に「解体確定」と宣言された。」


同じ施設に住む艦娘たちからの質問で打ち明けた時雨。


「僕はいらない艦娘なんだって・・・重巡の建造をしている途中で僕が誕生してしまって・・・


 「お前は必要ない、はいっ、解体確定!」の一言で僕はこの施設に入れられた。」


いい話ではないのに、躊躇いも無く話して行く時雨。


「悔しくないのかって? もちろん悔しいよ。 でも、どうしようもないじゃん。 「必要ない」って言われたら・・・」


口ではそう言っているが、


「悔しい・・・うん、とても・・・悔しい、よ。ぐすっ。」


仲間の前で泣きだす時雨。



数日後、何人かの艦娘が施設から引き取られた。


理由は教えて貰えない・・・あくまで引き取る側の権限であり、教える必要は無いのだ。


「鎮守府に着任するのかな・・・それとも、別の理由で?」



時雨は知らない・・・今日引き取られた艦娘たちは特攻部隊でその日の内に沈んでしまう事を。


「”頑張って””としか言えないよね・・・うん、それしか言えないよ。」


時雨は壁に持たれて床に着く。


・・・・・・


「寒い・・・この施設には暖房器具とかは無いの?」



この施設は”ゴミ処理場”と呼ばれる施設、暖房器具や道具などは一切置かれていない。


「あるのはボロボロに破れた布だけ・・・これで寒さを凌ぐしか無いのかな?」


時雨は不満そうに呟くも、


「仕方がない、よね・・・僕は「必要のない人間」なんだから、贅沢は言えないね。」


そう言って、数枚しかないボロ布で寒さを凌ぐ時雨と他の皆・・・側には寒さで力尽きた艦娘が数人いる事も知らずに・・・



翌日、息を引き取った艦娘たちは躊躇いも無く焼却された。


「僕も死んだらああやって燃やされるのかな? 生きたまま燃やされるのって苦しいんだろうね。」


焼却炉に焼かれて行く仲間の死体をただじっと見届けるしかない時雨。



「お腹が空いた・・・支給されるのは傷物か、腐りかけた果物や野菜だけ。」


異臭がしたり、蠅がたかっていたりと食べられる物ではないが、


「それでも我慢するしか・・・僕は「必要のない人間」なんだし。」


そう言って、残っている仲間と腐りかけた果物を頬張る時雨。


・・・・・・


「えっ、提督と人間たちを恨んでいないかって?」


仲間から質問された内容に、


「恨んでいない、は、嘘になるかな・・・でも、恨んだって僕の人生が変わるわけでも無いよね。」



仮に提督や人間を殺して鍵を奪い、この施設から出られたとしても、すぐに足がついてしまう。


即刻”死刑”にされるかもしれない・・・鉱山に行かされて強制労働させられるかもしれない。



「やるだけ無駄だよ、どうせ僕たちには未来なんて無いんだ。」


そう言って、仲間と距離を置いて1日を過ごす時雨。



この施設に数人の提督がやって来て、施設内に入って来た。


「何だこの中は? 汚くて異臭がするなぁ!」


1人の若い提督が発した言葉だ。


「私を引き取って! 絶対役に立つから!」


「いいえ、私の方が優秀よ! こんな奴より私の方が燃費も掛からないし!」


提督たちが来ると決まって、仲間たちが我先にと自分を猛アピールしていく。


「・・・・・・」



気持ちは分かる、こんな暗い施設で腐りかけた食べ物しか食べられない、暖房器具なんて一切無い。


すぐに出たい気持ちは僕にだって分かる、でも・・・


ずっとこの施設で皆で頑張って生活しているのに、自分自身をアピールして「こいつらなんて知らない」


みたいな態度を取る・・・はっきり言って、この光景は嫌いだ。


「ほぅ、お前が役に立つ? じゃあ証明してくれよ。」


1人の提督が銃を渡して来て、


「目の前にいる艦娘を殺して見せろ、そうしたらお前を引き取ってやる!」


銃を渡された艦娘は手を震わせながら目の前の艦娘に標準を合わせる。


「や、止めてよ・・・お願い、殺さないで!!」


命乞いをして助けて貰おうとする仲間の艦娘。


「ごめんなさい、私は・・・この施設から出たい、出たいの! だから・・・ごめん!!」


そう言って、涙ながらに引き金を引く。



パァン!!



また1人、仲間が減った。


「よしよし、気に入った。 じゃあ約束通りお前を引き取ってやるよ。」


「あ、ありがとう・・・ございます。」


半ば精神が崩れた状態で提督に連れて行かれた艦娘。


・・・後に、玩具奴隷にされて日々の暴力に耐えきれず、自害したと聞いたのはそれから数日後の事だった。


・・・・・・


また新しい仲間がこの施設にやって来た。


しかも、今度の艦娘は・・・装甲空母の大鳳さん、レア艦なはずなのに何でだろう?


「私は「必要ない」ですって、一度目の出撃で一発大破しちゃって「はいっ、ゴミ処理場行きね!」って・・・」


「・・・・・・」


レア艦だから将来が保証されるわけでは無いんだと実感する時雨。


「この施設にいる期間は長いの? 私も当面・・・いいえ、一生この施設で暮らすことになるでしょうから、よろしくね。」


「・・・・・・」



もう諦めている、大鳳さん・・・とても可哀そう。


「・・・・・・」


もし、もしだけど・・・また誰かが引き取られる事になったら、大鳳さんを真っ先に引き取ってもらう様に頼みたいかな。


・・・・・・


その後も次々と仲間が減っていく・・・力尽きた仲間もいれば、特攻部隊に引き取られた仲間、


運よく再着任が決まったらしい感じの仲間もいたり、いなかったり。


「・・・・・・」


気づいたら、僕と大鳳さんしか残っていなかった。


「もし、僕と大鳳さんのどちらかが引き取られる話が出たら、間違いなく大鳳さんが引き取られるね。」


普通に考えれば、駆逐艦よりの装甲空母を取るだろう、


「私はこの施設でいいわ。もし、そんな話が出たら時雨ちゃんが先に引き取られて。」


「・・・・・・」



大鳳さん、他の皆と違って再着任したくないの?


「もちろんそのチャンスがあればね。でも、2人の内1人だけって条件なら・・・私はここに残る。


 だって、時雨ちゃんの方が期間が長いでしょ? 本当はこの施設から出て行きたいんでしょ?」


「・・・・・・」



うん、出て行きたい・・・正直言って、もうここで生活したくない、この施設から解放されたいのが正直な気持ち。


「でも、やっぱり・・・僕は大鳳さんと一緒にこの施設から出たい、かな。」



ずっと生活していると分かる・・・今、僕に必要なのは着任するチャンスじゃなくて、仲間と一緒に


いるべきの方がずっと大事だという事。 でも、もう大鳳さんしか残っていないけど。


「時雨ちゃん、貴方はこんな酷い扱いを受けたのに、それでも純粋な心を持っているのね。」


「・・・・・・」



純粋な心? 僕が? ・・・初めて褒められた、提督も他の皆だって誰も僕を褒めてくれなかったのに・・・


「・・・・・・」


それから、僕は大鳳さんの側に居ることが多くなった。


・・・・・・


「寒い・・・もう僕は、駄目、かな。」


最早、ボロ布では寒さが凌げない位、氷点下の気温に達し、隙間風によって施設内の水が凍る程だ。


「時雨ちゃん、しっかりして!」


大鳳が時雨を抱いて自身の体温で温めようとする。



駆逐艦の体格は子供に分類される、空母は女性に分類され、生存確率は大鳳の方が高いと言える。


「大鳳さん、駄目、だよ・・・僕を抱いたら、大鳳さんだって・・体が冷えて・・・」


意識を失い掛けているのか、途切れ途切れに話す時雨。


「しっかりして! 大丈夫、私が側に居るから絶対に諦めないで!」


大鳳が必死に時雨を抱きかかえる。


「・・・大鳳さん。」


時雨は大鳳から感じる体の温もりを自身の体で受ける。


・・・・・・

・・・



気温が徐々に上がり、そこまで凍える事も無くなったある日の事、


このゴミ処理場に珍しい人間がやって来た。


「あの子は・・・村雨、かな。」


時雨の姉妹艦の村雨である。


「この施設に入れられる? いや、側に提督がいない・・・じゃあ通りすがりの艦娘って事かな。」



皮肉なもんだね、覗いている相手が姉妹艦と言うのは・・・


「この施設には時雨と大鳳さんしかいないの?」


村雨の質問に、


「見れば分かるでしょ? 僕と大鳳さん以外に誰かいるように見えるかい?」


不愛想で言葉を返す。



何の用でこの場所にいるのかは知らないけど、僕たちは見世物じゃないんだから・・・


用がないなら今すぐ消えてよ、はっきり言って迷惑だ。



そんな僕の気持ちとは裏腹に、村雨の口から思いもよらない言葉が出て来た。


「私は近いうちに料理店を開こうと思っているの。」


「・・・・・・」



へぇ~、料理店かぁ。 いつも美味しい食べ物が食べれて、腐っていない普通の新鮮な食べ物。


羨ましいねぇ、うん・・・本当に羨ましいよ。


「だけど人手が足りなくて、それで人員募集をしているんだけど・・・もし、2人が良ければ私の店の


 従業員として働いてくれない?」


「・・・・・・」



えっ、今何て言った? 僕たちに「働かない?」って聞いてきた?


「とても重要な事なの、今すぐにでも人員が欲しいの。 どう、私の店で働いてくれない?


 時雨に大鳳さん、どうかしら?」


「・・・・・・」



でもさ、村雨。 僕と大鳳さんは「必要のない人間」って烙印を押されてこの施設に入れられたんだよ?


そんな不必要な僕たちに「働いて欲しい」って聞くの?



時雨の言い分に、村雨から出た言葉は、


「うん、バカな提督の意見なんて興味は無いし、この世に生まれた命に「必要のない人間」なんて1人もいない、


 必要な存在だから、皆はこの世に生まれるのよ!」


「・・・・・・」



必要だからこの世に生まれる、かぁ。 うん、そうかもしれないね。


「それで? 来てくれるの? それともずっとこの施設で生活したい?」


「・・・・・・」



そんな事、決まっているじゃないか!


「ここから出たい! もうこんな場所での生活は嫌だよ! こんな寒くて暗くて何の希望も無いこの場所になんか、


 今すぐに出たい、出たいよ!!」


咳を切ったように僕は叫んだ。


「大鳳さんはどうですか?」


村雨が聞くと、


「時雨ちゃんと同じよ、私にも何か助けになる事が出来るなら、今すぐにこの場所から出たいわ。」


大鳳さんも僕と同じ気持ちだった。


「分かりました、では今日から2人は私の店の従業員となっていただきますね。」


そう言った後、鍵が開き僕たちは施設から解放された。


新たなる生活のため、希望のために僕と大鳳さんは村雨の後について行く。


・・・・・・

・・・



案内された場所はそこそこ大きな店で、店内には既に先客がいた。



また僕の姉妹艦、そして・・・海外の人かな? 飛行甲板を持っているから大鳳さんと同じ空母だよね?


「まずは挨拶・・・と言いたいところだけど。」


村雨は僕と大鳳さんに大きめのタオルを渡して来て、


「先に体を洗った方がいいわね、お風呂は沸いているから入って来て。」


村雨の入浴場を教えて貰って2人でお風呂に入る。



久しぶりの暖かいお風呂、あそこではいいとこ”ぬるくて濁ったお湯”の中に入っていたっけ?


「こんな所で働けるなんて、僕と大鳳さんは何て運がいいんだろう。」


「うん、そうね。 この店で働いて村雨さんに恩返ししましょう。」


「・・・うん、そうだね。」


久しぶりに思う、前向きな考え。



入浴後、1人ずつ自己紹介を行う。


僕と大鳳さんは軽い紹介で終わる・・・だって”ゴミ処理場にいた艦娘”と言えば、すぐに分かることだもの。


1人は姉妹艦の海風・・・知ってるからそこは省くね。


海外の人は、サラトガさん・・・スタイルもよくて、モデルと言われても通用しそうな人だ。


「明日から皆に指導をするので、今日はゆっくり休んでください。」


この店のリーダーである、村雨の号令で各1人ずつに部屋を与えられた。


・・・・・・


だけど、僕は大鳳さんと一緒の部屋を要望した。


何でかって? 仲間がいなくなったあの施設に、たった2人で支え合って生きていたから・・・


「この店で働けるのは凄く嬉しいけど・・・」


僕には少し不満な気持ちがある、


「何で、村雨は何不自由なく暮らしているのさ?」



僕と他人を比較する気は無い、でも頭では分かっていても、不公平と言う気持ちがよぎる。


「いいよなぁ~村雨は・・・僕の妹のくせに、姉より幸せな生活を送っていて。」



最初は「ずるい」「卑怯だ」とその感情だけを思っていた、本当は「羨ましい」と思っていただけなのに、


「僕と大鳳さんを拾ってくれたけど、村雨や海風たちには僕たちの気持ちなんか一生分かるはずないよ!」



その時まで僕は皆を悲観していた・・・でも、ある日の事。


「えっ、村雨は元々捨て艦だったの?」


姉妹艦の海風から聞かされた、信じられない話。


「はいっ、放棄された鎮守府で辛うじて生活していた時に、今の旦那様・・・提督が、村雨さんを


 鎮守府に引き取ってくれたそうなんです。」


「・・・・・・」



よくよく聞くと、海風とサラトガさんにも辛い過去があり、


「私はブラック鎮守府で毎日提督から虐待を受けていましたね・・・」


「サラは生まれつき心臓が弱くて・・・待機艦娘にされた挙句、完治出来ずに最後は簡単に捨てられました。」


「・・・・・・」



何だ・・・村雨も海風もサラトガさんも、僕と似た境遇だったんだ。


「・・・・・・」



それを知って、僕は妬んだり邪険に思ったりしなくなった・・・「皆、同じ境遇なんだ」、って。


「何不自由なく暮らして!」と言った僕はとても申し訳なく思った。


・・・・・・


「そうそう、時雨は覚えるのが早いわね♪」


指導中に村雨に褒められた、


「大鳳さんは盛り付けが上手いし、海風はスープの味付けが完璧、サラトガさんは肉料理が得意ですね♪」


村雨が各皆の得意な部分を言い挙げて褒めて行く。


「・・・・・・」



あの施設に入れられて、褒められたことは一度も無かったけど・・・やっぱり褒められるのはいいよね。


何て言うんだろう・・・”もっと頑張らなきゃ”って気持ちになるんだよ。


・・・・・・


指導も終わり、本格的に開店。


お客さんは僕たちと同じ艦娘だから、すぐに打ち解けて、この店で働くのが楽しいと思った。


「・・・・・・」



気づかなかったけど、僕の表情は自然に笑顔になっていた・・・言葉では表しにくいけど、これが「幸せ」って言うのかなぁ。


「・・・・・・」



じゃあもっと頑張らないと・・・もっと頑張ってこの店を人気にしないとね!


それから僕は、一生懸命働いた。


頑張りが評価されたのか、給料を上乗せしてくれたり、お得意様への料理提供を任されるようになった。


「今日の目玉はオムライスです。」


「お待たせしました、日替わりランチのエビフライです。」


「この料理にはこのワインが合いますよ? そうですか、注文ありがとうございます。」


毎日が楽しかった・・・仕事にやりがいを持っていた。


「人生ってどうなるのか分からないね・・・まさか僕が、接客業に向いているなんて想像もつかなかったよ。」



もちろん僕だけが頑張っているわけじゃない、


大鳳さんも海風もサラトガさんも、そして皆を支えている村雨もいるからこそ、この生活が成り立っているんだから。


・・・・・・


店が人気になった頃、村雨から突然の提案が・・・


「店をもう1店舗建てようと思って・・・だから、時雨がその店のオーナーをやってくれない?」


「・・・・・・」



僕が店のオーナー? いや、そんな事。 僕じゃなくて大鳳さんかサラトガさんにやらせる方がいいんじゃあ?


「気づいていないと思うけど、時雨には「人を幸せにする力がある」と私は思うの。」


「・・・・・・」


「もちろん、店を任せるわけだから店のルールは時雨が決めて構わないわ。 時雨が思っている事、試してみたい事、


 全て実現させて・・・そして他の皆に希望を持たせてあげて。」


「・・・・・・」



その時は気づかなかったけど、村雨が僕に何を言いたかったのかが、後で分かった。



「うん、分かった。 じゃあ大鳳さんを連れて行ってもいいかな? 僕は大鳳さんと一緒に店を切り盛りしたいんだ。」


僕の願いに村雨は快く承諾、2つ目の店の経営は僕と大鳳さんに任される事になった。


・・・・・・

・・・



そして僕はまたあそこにいる。


”ゴミ処理場”・・・でも、施設内ではなく外にいる。


「・・・・・・」


さっきも何人かの艦娘たちが収容されているのを見た。


「何よあんた? 私たちは見世物じゃないのよ、さっさと消えてよ!」


施設内の艦娘の1人が、僕に対して睨みつけて来た。


「・・・・・・」


それでも僕は、相手に対して笑顔で返す。


「何よあんた、そんな笑顔でいて? 私たちがこの施設に収容されているのがそんなに面白いわけ?」


また怒声が響く、それでも僕は笑顔で返す。


「・・・・・・」



村雨が言ってたね・・・僕の店なんだから、店のルールは僕が決めていいってね。


「君は・・・いや、満潮たちは外に出て働きたいかな?」


「はぁっ? 何であんたの質問に答えなければ行けないのよ?」


満潮がムスッとする中、後ろにいた別の艦娘が、


「働きたい、です。 こんな暗くて寒くて希望も何も無い施設から今すぐにでも出て、働きたいです!」


「・・・・・・」



そうだよね、僕だって昔はそう願った。


「これ食べる? 多分皆お腹が空いてると思って。」


僕は籠に入れた新鮮な果物とパンを差し出す。


当然、すぐに籠を取られて皆がすぐに頬張って・・・中には「美味しい」と言って泣いていた艦娘もいた。


「僕はね、今店を切り盛りしているんだ・・・それでね、今は人手が足りなくて・・・もし、満潮たちが良ければ。」


そして、皆に向かって僕は言ったんだ。





”僕の店で働かない?”ってね・・・











「ゴミ処理場」 終











このSSへの評価

7件評価されています


這い寄る混沌さんから
2019-10-18 23:47:05

タンク2号さんから
2019-03-21 22:59:25

トキヤですさんから
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2019-01-23 14:41:02

このSSへのコメント

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1: Abcdefg_gfedcbA 2019-01-23 14:51:06 ID: S:sVNqSa

キリンさんの作品は、残酷ながらも現実味を帯びていて、独特の味があって好きです

応援させていただきます

2: クリンスマン 2019-01-23 23:09:49 ID: S:DQ5Syu

1さんと同じです。
これからも期待してます(* ̄∇ ̄)ノ

3: キリンちゃん 2019-01-23 23:15:46 ID: S:YW8RK6

Abcdefgさん、クリンスマンさん、ありがとうございます~♪

-: - 2019-01-24 17:31:30 ID: -

このコメントは削除されました

5: クリンスマン 2019-01-24 23:02:53 ID: S:Z6WdbK

完結お疲れ様でした。
所で私も雇っていただけないのでしょうか?
世の中と言うごみ溜めにいるんですけど
(;゜∀゜)

6: キリンちゃん 2019-01-25 20:04:54 ID: S:JJhxcN

もちろんどうぞ~♪
時雨たちと一緒に新たな道を探して下さい~♪


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2件オススメされています

1: クリンスマン 2019-01-23 23:10:36 ID: S:rn31cL

残酷な世界に見出だす微かな希望が感じられます。

-: - 2019-01-24 17:31:54 ID: -

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