2015-05-01 00:26:43 更新

概要

建造したはいいが、待たせすぎな提督。着任したてで慣れていないせいか苦労が絶えない。
鎮守府で一番偉いはずなのに一番問題を起こしている。
最初が大事なのに最初からダメになって、さて今後どうする、どうしようか。


前書き

放置一か月以上


「やっべ!建造終わったの忘れてた!電、悪いがこの任務遂行一覧を一人で任務娘の所へ持って行ってくれるか?俺は急いで工廠へ行き、新しい艦娘を引き取ってくる!」

電の返事を聞かずに提督室を飛び出し、必死に走る。


廊下を駆け抜け


階段を二、三段抜かしで飛び下り


ドアのガラスが割れるくらいの勢いで開く。


鎮守府内の通りを駆け抜け工廠への直線に出る。


速度を出すために極端な前傾姿勢で走る。


帽子が落ちそうになったので一旦手で押さえ


上半身が揺れないように両腕を組んで足だけを必死に素早く動かす。


つま先で地面を蹴りつけるように何度も何度も加速する。


軽い足音が繋がるくらいの勢いで走り続ける。



見えた工廠だ。



急激なブレーキで靴底が焦げ臭いにおいを発すると同時に煙が舞い上がる。


思ったより速度が出ていたらしい、工廠の入り口までに止まれそうになかった。

「あ…」

そのまま工廠内に突っ込む形になる。

「火気厳禁! 衝突禁止!!」

そう聞こえた瞬間、前方を塞ぐようにフォークリフトが横から進入してきた。

ぶつかる。

鈍い音が工廠内に広がる。

「あっ…くぉぉ…」

言葉にならない音が漏れる。

ひたすら痛みに耐えていると先程ぶつかる原因を作った当人がフォークリフトから降りてきた。

「何、勢いよく突っ込んできてんだ。あぶねぇだろう?」

「進路を塞がれなければぶつからなかったんですがね!しかも衝突禁止って口にして突っ込んでくるのは明らかに矛盾してると思うんですがね!」

「あんな速度で、しかも摩擦熱で焦げ臭いにおいさせてる奴を工廠内に突っ込ませる方が危険だろうが、工廠内には様々なモノが置かれてんだワカルヨナ?」

据えた目つきでそう言い放ってきた。

…たしかに工廠内に突っ込んだのは事実なので反論しにくい。

しかし衝突ですんだから良いものの撥ねてたらどうするつもりだったのだろうか…

「で、何しにきたんだよ?」

「建造終了した艦娘を引き取りに来ました」

かなり考え込んでからようやく合点がいったのか背を向け歩き始めた。

「ついてきな」

大人しく付いていくと大きな扉の前に来た。

「この扉の中で建造が行われる。建造に使用する資材等の設定はこの操作盤を使って行う。また建造中は建造時間が表示され、それが終了したら扉を開閉出来るようになる。後は使って覚えろ」

「随分と雑ですね」

「おんぶに抱っこじゃお荷物だし、手順書頼りじゃいざって時に使い物にならん。経験して覚えて使いものになる。ほれ、開けるぜ?」

「頼みます」

工場長が操作盤をいじると大きな音を立てつつ扉が開いていった。

中からは煙と熱気、そして人影が見えた。


「黒潮や、よろしゅうな。司令官はん、ぎょーさん待ったでー?」


何か建造の際に不具合でもあったのだろうか。上方言葉って…それと予想通り突っ込みがきた。

「あ、ああ、すまん。それとよろしく頼む、黒潮。取り敢えず、鎮守府内の事とか説明するから付いて来てくれ」

「はいぃー。いまいくわー」

電を基準に考えていたため、この差は衝撃的だった。上方言葉は、と言うか西の言葉はちょっと難しいんだよなぁ…

工場長から建造報告書を受け取り、黒潮と共に提督室に戻る事にした。

戻ったら電に鎮守府を案内させるか、とか考え込んでいたら会話という会話が無いまま提督室のある建物に着いてしまった。

館内に入り階段を上っていると頭に何かがぶつかった。

「どんぐり?」

階上には誰も居ないし、後ろを歩く黒潮を見ても悪戯をしたような動きはなかった。

考え込んでも仕方ないので落ちてきたどんぐりはポケットにしまっておく。

提督室に戻る途中、任務の達成を報告しようと任務娘の所へ立ち寄る事にした。

「黒潮、任務達成の報告でちょっと寄り道をするから申し訳ないが君は一人で提督室に向かってくれるか。場所は案内図を見ればわかるな?」

「はいぃー。わかったわー」

素直な艦娘で助かる。

さて、任務娘の居場所へと向かうか。


「ここか」

ドアをノックし返事を待つ。

「はい、どなたでしょうか」

「提督です」

「どうぞ」

短いやり取りだが、礼節は大事だ。相手の返事を待ってから入室する。

「失礼します。【はじめての「建造」】任務実施のため報告にきました」

建造報告書を任務娘に渡して任務終了だ。

が、書類に目を通した任務娘が苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

「任務の件ですが、申し訳ありません少々説明不足でした、再度説明します。こちらをご覧ください、現在提督が受領可能な任務の一覧が掲示されています。また選択した任務には遂行中の記載が付いております。任務の申請書と報告書は別途提出になりますが、両方の書類を見て達成が確認された場合は報酬を得る事が出来ます」

「はぁ」

「それでですね、今回提督は任務選択した後に遂行したわけではないので不備があると見なし任務達成とは認められません。」

「えぇ?!何でですか、建造実績は報告書で確認取れますよね?」

「通常は任務選択後、遂行して報告した後に確認が取れて達成となります。ですが今回提督は任務選択以前に建造を実施しているので順番が違うのです。これでは任務を遂行するための建造なのか判断が取れないため、任務要件を満たしたとは言えません」

「えぇ…」

情に訴えて何とかならないかとか、説明不足が招いた問題だから責任を取って欲しいとか色々思う事はあったが、相手の言っている事が正式な順序である以上ごねても無駄だと判断した。

「わかりました。では任務選択後に遂行した内容であれば要件を満たすという事ですね。それと、これ以外で忘れている事とかは無いですか?」

「大丈夫です。今回の件は誠に申し訳ありませんでした」

謝罪と共に頭を下げられる。

偉そうな言い方だったかと思うがこちらも不利益を被ったのだから仕方ない。

「それではこれで一旦失礼します」

挨拶をしてから退室する、提督室では黒潮を待たせているし電もいるはずだ。

一旦戻るのも手だが、建造任務のためにまた工廠まで出向かないといけない。

待たせ続けるのは気が引けるが、ここは急ぎで追加の建造を行うべきだろう。

廊下を駆け抜け階段を飛び下り外に出る。

黒潮を迎えに行った時と同じ道順で工廠まで急ぐ。ただし先程の展開をなぞらない程度に急ぐ。

ふと自分以外の足音に気付く、しかもかなりの駆け足だ。

回りを見渡すが誰も視界には居なかった。

まただ、先程といい今回といい人の気配が無いのにこういった事が起きた。

何か呪われているのか不安になる、調査も検討かと思った所で工廠に着く。

急いで操作盤の前まで行き最低値で建造を実行したが、待ち時間が惜しい。どのくらい早くなるかわからないが高速建造材も追加した。

建造報告書に工場長の署名をもらいながら質問してみる事にした。

「もし、でいいんですが」

「あ?」

「先程から自分の身に不思議な事が起きまして。この鎮守府では何か呪いとかってあるのかと知りたいんですが」

「はぁ?どんな事があったのか言ってみろよ」

「階段を上ろうとしたら頭にどんぐりが落ちてきたり、外では駆け足の音が聞こえましてね。どちらも人の気配が無いので実はこの鎮守府って曰くつきだったりしませんか、と」

こちらの話を聞き終えた工場長が声を大にして笑い始めた。

何か可笑しい事でもあっただろうか、オカシイ事はあったのだが、工場長が大笑いする意味がわからない。

「いやいや、そいつは気にする必要はないね。呪いっちゃ呪いかもしれないけどねぇ。ただ安心しな、あんたの不利益にはならないから」

ニヤニヤした顔で言われても非常に気になるし不安なままなんですが…

追及したい所だが、建造が終了しているのに気付き話を打ち切った。

先程と同じように大きな音を立てつつ扉が開いていった。


「皐月だよっ。よろしくな!」


今度は聞きなれた言葉づかいの艦娘だった。

「提督だ、皐月よろしく頼む」

そういって右手を伸ばした。

皐月も同じように右手を差し出し握手しようとしてくる。

「所で皐月、今非常に時間が惜しくてな少々手荒だが提督室まで運ばせてもらう。すまん」

そう言い切り握った手を引き寄せおんぶする。

「ふわっ、わっ、わぁー」

背中で騒がれるが時間が惜しい、無視して走り出した。

工廠を飛び出し、提督室に急ぐ。

途中で諦めたのか途端に無口になった。が、背中が熱い。

提督室の前まで全力疾走しそこで皐月を降ろす。

皐月が俯いたままだったのでどうかしたかと顔を覗き込んだ。

「なんだよ~、見るなって。恥ずかしくてボク、マジで死ぬかと思ったぁー」

顔を押しのけられた…しかしボクっ娘か。

「取り敢えず、室内に他の艦娘を待たせてるから入るぞ」

そういってドアを開ける。

「戻ってきたのです」

「ちぃ~とばかし、待たせすぎとちゃうかなぁ?」

「すまんな、ちょっとばかり問題が出てな」

「あ、任務の事ですか?」

「ああ、もう解決したから大丈夫だ。さてみんな揃ったがもう日が暮れはじめる。電、三人で自己紹介でもしながら鎮守府の案内を頼む。夕食に遅れないよう、キリのいい時間で食堂に集合だ」

「はいなのです。その間、司令官さんはどうするのですか?」

「俺は書類整理」

電が任務娘から受け取ったのだろう。ダンボールの上に書類の束があった。

「了解なのです。それでは黒潮ちゃん…えぇと「皐月だよっ」皐月ちゃん鎮守府を案内するのです」

そう言って三人は提督室から出ていった。

退室の際に挨拶が無かったが、まぁまだ子どもだと思って流しておこう。

さて、俺は俺の仕事に取り掛かるとしますか。


書類の大半は大本営からの周知事項で後は鎮守府着任の誓約書と印鑑の必要な許可書だった。

誓約書と許可書を先に片付けてしまい、周知事項を読んでいる途中でドアがノックされた。

「任務娘です、提督はご在室でしょうか」

「はい、居ます。どうぞ」

失礼しますという声と共に任務娘が硬い表情で入室した。

「あの提督、先程変な噂を耳にしたのですが…」

「噂?」

何かあっただろうか、あ、先程工場長に質問した件でも広まったのだろうか、もしあの出来事が解決するなら助かる、そんな事を思っていたら任務娘から驚く事を聞かされた。

「提督が嫌がるどこぞの子供をおんぶして疾走していた、と」


…はい?


「その、強引に連れ込もうとしたんじゃないか等と話が広がっておりまして。まさか一日で二度もこのような事を起こすとは思いもしませんでした」


?!

「い、いや違いますからね!あの子は艦娘ですからね?」

「艦娘を手籠めにする方も居たりしますので、艦娘だからと言ってはいそうですかではこちらも納得出来かねます」

「俺は潔白です!あの子は先ほどの任務未達の話をした後に建造して出来た、睦月型 5番艦 皐月でおんぶして疾走したのは提督室に電と黒潮を待たせていたので少しでも早く戻ろうとしたためです」

「なるほど、提督の言い分はわかりました。で、肝心のおんぶされ嫌がっていた艦娘はどこに?」

絶対わかってねぇ!確実に犯罪者だと決めつけてる!

「今は電主導の元、鎮守府の施設を見に行ってます」

「探しに行くのはいささか非効率的ですね。いつ頃戻ってきますか」

「明確な時刻は決めてません。夕食に遅れないようキリのいい時間になったら食堂に集合と伝えてあります」

「仕方ないです。確認が取れるまで提督に同行させてもらいます」

監視ですか…という言葉を何とか飲み込み、犯罪者扱いに気分が落ち込むのをどうしようか思っていたら、提督室をノックする音がした。

「電です。司令官さん、居ますでしょうか?」

「ああ、いる。入れ」

もう三人して全部見回ってきたのだろうか。

夕食の時間くらいまでは掛かると想定していたから予想より速い。

だがある意味助かった、誤解は一秒でも早く解いておきたい。

「早かったな。もう全部見回ったのか?」

「終えたような、なのです…」

歯切れの悪い回答だった。それに三人共、ドア付近から近寄ってこない。

「皐月。すまないが少々時間をくれ」

「ひゃっ、はい!」

やけに上擦った返答だな、もしかして噂が耳に入ってたりしてるのか?

「皐月ちゃん、私は任務娘と言います。ちょっと聞きたい事がありますがよろしいですか?」

任務娘が部屋の片隅に皐月を連れていき話を聞き始めた。

皐月もハキハキ答えているし、これで誤解も解けるだろう。

余裕が出てきたので他の二人はどうしているか見て見たら電が後ろ手に何かを持っているのに気付いた。

「電、何を持っているんだ?」

「いえっ、何で も ない のですっ?!」

注視しようとしたら、それを嫌がったのか下がる電、後ろ手に持っていたものがドアにぶつかり鈍い音を立てる。

「電、気を付け!」

「なのです!」

電が直立不動の体勢を取ると同時に地面に何かが落ちた。


…錨だった。


「電…お前もか」

「はにゃあーっ?!」

「提督…電ちゃんが自衛手段を用意してるのは当たり前と存じますが?昼前にご自身が何をしたかもうお忘れで?」

「あははは…すいません」

「取り敢えず皐月ちゃんからの事情聴取より、提督の言っていた内容と相違がないのが確認出来ました。色々思う所はありますが、概ね問題なしという事で告知しておきます。鎮守府内に広まってるこの噂もじきに消えるでしょう」

完全に払拭しきれたわけじゃないのか…

「はぁ、ありがとうございます」

「では私はこれで失礼します」

「あ、ちょっと待ってください。艦隊編成任務の実施と報告書をお渡ししますので」

任務では二隻以上となっているので、電が旗艦で二番艦、三番艦に黒潮と皐月を組み込む。

「編成任務の達成を確認出来ました。報酬は吹雪型 2番艦 駆逐艦 白雪となります。大本営から呼び寄せますので着任は明日になります」

「了解しました」

「では、失礼します」

そういって任務娘が退室した。さて残った三人に対して謝った方がよいだろう。

「あー、誤解させるような事があってすまなかった。聞こえていたとは思うが少々回りが見えてなくて軽率な行動をとったようだ。以後気を付けるので、そう警戒しないで欲しい」

「わかったよ、司令官!」

「たまたまやろうし、気にせんて」

「びっくりしたのです」

「そうか助かる、んじゃ食堂に行こうか」

一日で二度も頭を下げるとは思いもしないよなぁ…と心の中で溜息をしつつ、これじゃ提督としての威厳もへったくれもないよなぁと嘆きたくなる。

嘆いていてもしょうがないので食事で気分転換としよう。

「夕食後だが、明日マルキュウマルマルに提督室に集合まで自由行動とする。夜間の出撃などは危険度が増すからな、それに初日というのもある…さすがに色々有り過ぎて休みたい」

自由時間と聞いた三人は嬉しいのか飛び跳ねたりして喜んでいる、ここら辺は見た目通りなんだなと心が温かくなる。

それと同時にこんな子ども達を戦闘に駆り出す事に胸が痛む。

自分は陸で安全な場所にいて命を懸けるのは艦娘達…

「歯痒いよなぁ…」

「何か言いましたか、司令官さん?」

「いや、何でもない」

「?」

電が耳聡くこちらの呟きを聞きつけたが誤魔化しておく。

言っても詮無い事だ。



夕食は昼と同じでチキンカレーだった…

黒潮と皐月は喜んで食べていたが自分と電は昼も同じだった事もあり大人しく食べるしかない。

明日も同じになったりしないよなと不安がよぎったがそこは信じるしかない。



夕食後、鎮守府内にある提督宅でくつろいでいると張りつめていた気が抜けたのか急激な眠気が襲ってきた。

何とか布団を敷き横になると同時に眠りに落ちる。

夢の中の自分は悩み、苦しみ、嘆いていた。だが夢の中で「絶対、大丈夫!」と元気をくれた誰かがいた。

その言葉に救われたのか夢の中の自分は大丈夫だという顔をしていた。

そして提督としての長い初日が終わる。



後書き

如何に書き続ける事が凄いかって実感させられた。言い訳とか一杯あるけどどんな事でもやり続けられるのは才能だなって思う。
それと面白い文章ってのを分かり易く且つコンパクトに纏めるってのがこんなにも難しいとは・・・
3000字くらいで読んでもらえるように努力したいのに実際は倍になるとか、難しいな文章。


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2017-02-19 09:50:29

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