2020-03-21 14:02:53 更新

概要

駆逐艦提督の過去の話です


前書き

駆逐艦提督と白露型の話の穴埋めの話です。駆逐艦提督が提督になるまでの前日譚を描いたストーリーです。


過去の真実



~執務室~



提督「今日も暇だーーー」



春雨「もうあまり仕事も入ってきませんね…」



提督「まあそれが平和の証拠だけどな。でも退屈だよな〜」



春雨「あ、それだったら司令官の昔の話を聞かせてくれませんか?」



提督「ん?俺の過去か?」



春雨「はい!ぜひ詳しく聞きたいと思ってて」



提督「あまり面白い話じゃないぞ?というか壮絶な過去だからな」



春雨「それでも、司令官のことはもっと知っておこうと思ってて…」



提督「ははっ…そこまで言われたら仕方ないな…分かった、どうせ暇だし、俺の過去を話そうか」



春雨「本当ですか!?ありがとうございます!」



提督「先に言っておくけど、もう過ぎた話だからあまりヘコむなよ?」



春雨「大丈夫です!はい!」



提督「それじゃあどこから話そうか…そうだなぁ…」



~~



これはまだ艦娘が海に立つ前の数年前、この海は突如として現れた深海棲艦によってあっという間に制海権が奪われた



そしてこれに対抗する為に人類は、昔の軍艦を擬人化させた艦娘を作り上げる。そのデータの収集の為に回収された数人の人間がここ、研究所に集まっていた



~研究所~



?「おい!離せよ!俺をどうするつもりだ!」



兵士「決まっているだろう。この国を守るためにお前達は政府から選ばれた実験台だ」



?「俺が実験台だと…」



兵士「そうだ。貴様は駆逐艦のプロトタイプとして実験される」



駆逐艦提督「俺が駆逐艦のプロトタイプ…?」



兵士「お喋りはここまでだ。貴様は今日からここで実験を手伝ってもらう」



駆逐艦提督「おい!どういうことなんだ!やめろ!離せ!」



兵士「うるさい!黙れ!」バキッ



駆逐艦提督「ぐはっ…!」



兵士「ふん、大人しくしておけ」



………



………



………ここは?目の前がぼやけてよく見えないな…



駆逐艦提督「…ぐっ…」ググッ



?「起きたか」



駆逐艦提督「…誰だ…」



?「名乗る名前などない。お前はただこの実験に付き合ってもらうだけでいい」



駆逐艦提督「なんだと…この…!」



?「無駄だ。お前の体は拘束されている。それにこの部屋から出ることはできん」



駆逐艦提督「…!」ジャラ



?「この世界を守るためだ。悪く思うな」



研究員「すみません、少しよろしいでしょうか?」



?「なんだ」



研究員「彼の駆逐艦のG細胞を入れた結果の報告です」



?「あぁ」



研究員「彼の駆逐艦としてのシンクロ率ですが、驚くことに92.9%という数値という結果になっています。他の艦種のプロトタイプとは比べ物にならないくらいの数値です」



?「ふむ…これは興味深いな…」



駆逐艦提督「(くそ…意識が…あいつらは何を話してやがるんだ…)」



………



…また眠っていたのか…今ここに来てどのぐらい経っているんだ…?



兵士「…」カツカツ



駆逐艦提督「…ゥ…」



兵士「立て」グイ



駆逐艦提督「うぐっ…」



兵士「今日で貴様はここから解放される。無事に実験は終わったからな」



駆逐艦提督「…俺は…ここに来てどのぐらい経った…?」



兵士「3ヶ月だ」



そんなにいたのか…今生きているのが不思議なくらいだ…



兵士「艦娘へのデータ移行が完了し終わった今、貴様はもう用済みだからな」



駆逐艦提督「…見返りなんてもんはないのか…」



兵士「当たり前だ。国の為に活躍できたと思えば光栄だろう」



駆逐艦提督「…クズどもめが…」ボソッ



~~



春雨「今の私達駆逐艦が存在しているのは全て司令官のおかげなんですね」



提督「まあ…一応そういうことになるな」



春雨「私達が生まれたのは司令官のおかげ…いわゆるお父さんってことなんですね」



提督「!?お、おい…」



春雨「うまく言えないですけど…いつも、感謝しています…ほんとです」



提督「…こちらこそ俺を変えてくれてありがとな」



春雨「ふふ…そんな駆逐艦のお父さんが今目の前にいるなんて奇跡ですね…」



提督「お父さんね…山風が言ってたパパはあながち間違ってなかったな…」



春雨「そうですね…それで…話を戻しますけど、その…研究所で見た名乗らなかった人は…」



提督「あぁ、きっと俺の父親だろう。自分の父親だと悟られたくなかったんだと思う」



春雨「研究所から解放された後は普通の生活を送れたんですよね?」



提督「あぁ、ほんの少しの間だったけどな。帰ってきた時は母がわんわん泣いてたよ。そこから数日後の話をしようか」



~~



数日後、俺は政府から突然の招集を受け、基地へと移動することになった



もちろん母からは反対を受けたが、政府からの招集を断る事などできるはずもないので、説得をした。母は悲しむ顔をしていたが、許可を出してくれた



母「気をつけてね…もうボロボロになって帰ってくる姿なんて見たくないから…」



駆逐艦提督「ありがとう、母さん。行ってくるよ」



母「絶対に帰ってくるのよ!」



駆逐艦提督「絶対に帰ってくるよ。必ず…」



~とある基地~



兵士からの確認を得て、俺と他のプロトタイプ達は手錠をかけられ、小さな部屋へと入れられた



兵士「ここが貴様らの待機所だ。ここで次の命令が出るまで待て」



駆逐艦提督「…」



?「全く…招集しといていきなり待機かよ…」



駆逐艦提督「…」



?「なあ…あんた…」



駆逐艦提督「…?」チラッ



?「あんた確か駆逐艦をベースに実験されたやつだろ?シンクロ率が異常に高かったとかなんとか」



駆逐艦提督「…あぁ」



軽巡提督「俺は軽巡洋艦をベースに実験された実験台の1人だ。よろしくな」



駆逐艦提督「…よろしく…えーと…」



軽巡提督「コード1だ」



駆逐艦提督「コード1…?」



軽巡提督「ほら、そのワッペン、もしかして知らなかったのか?」



駆逐艦提督「え…?」チラッ



腕にはコード0と書かれたワッペンのようなものがあった



駆逐艦提督「コード0…」



軽巡提督「これが俺達の呼び名だ。ということで、よろしくな。コード0」



駆逐艦提督「あぁ…よろしくな、コード1」



重巡提督「ちょっと、なに仲良くなってるんすかコード1」



駆逐艦提督「…?」



重巡提督「私達になぜコードネームがついたか忘れたんすか?」



軽巡提督「そう堅いこと言うなよコード2。そんなんじゃ友達0人だぜ」



重巡提督「私達の実名を隠し、戦いで余計な感情を持たせないためっすよ!」



軽巡提督「はぁ…つれないやつだなお前は」



重巡提督「それで結構っすよ」



空母提督「うぅ…」ブルブル



戦艦提督「…」



駆逐艦提督「(余計な感情…か…)」



兵士「おい貴様ら、上からの命令が出た。準備しろ」



軽巡提督「一体なんの準備だ」



兵士「戦いの準備に決まっているだろう。早くしろ」



軽巡提督「まったく…囚人の気分だな…」



駆逐艦提督「気にするな、行こう」



~海~



軽巡提督「おいおい、冗談だろ…」



戦艦提督「…」



海の先にはおびただしい数の深海棲艦がこちらに向かっていた



重巡提督「全ての深海棲艦がこの場所に向かって侵攻している…終わりの始まりっすね」



空母提督「なんという数…」



駆逐艦提督「…」ガシャン



戦艦提督「…コード0と言ったか」



駆逐艦提督「…?あぁ」



戦艦提督「あの数をどう戦う?」



駆逐艦提督「(…?いきなりおかしな質問をするんだな…)」



駆逐艦提督「…正面から突っ込めばただの的だ。全員で分散して弱いやつから潰していくしかない」



戦艦提督「ほう…」



駆逐艦提督「なぜ俺に聞くんだ?」



戦艦提督「お前のシンクロ率に興味があってな。きっと生き残れるか作戦を立ててくれると思ったからだ」



駆逐艦提督「…はぁ?俺がか?」



戦艦提督「あぁ、この数を俺たちだけで成せると思うか?」



駆逐艦提督「無理に決まってるだろ…この数をたった5人で戦わせる政府が間違ってる。例えて言うなら、料理店で入ってきたばかりの素人にレシピを見ずに最高級の料理を作れと言われているようなもんだ…」



戦艦提督「…そうか…分かりやすい例えだな」



駆逐艦提督「そりゃどうも」



空母提督「うっ…嫌だ…死にたくない…」ブルブル



軽巡提督「おいおい、せめてその弓だけでも握っててくれよ。あんたは後ろで戦う人間なんだからこっちよりかはリスクはないだろ」



空母提督「ど、どうして私達なんかが…」



軽巡提督「そりゃあ…政府から選ばれちまったからな」



重巡提督「はぁ…なんであんな政府の言いなりに従って死ななきゃいけないんすか」



軽巡提督「生き残れるかもしれんだろ、やってみなきゃわからねぇぜ」ガシャン



重巡提督「この数を見て勝てる見込みなんてあるんすか…大した度胸っすね」



軽巡提督「1%でも勝つ確率があるなら俺は戦う。負け戦になっても結果を残すのが俺の戦いだ」



重巡提督「はあ…それを諦めが悪いって言うんすよ」



軽巡提督「よく言われる」ダッ



駆逐艦提督「!おい!」



重巡提督「あんたも行くんすか?」



駆逐艦提督「…!俺は…」



戦艦提督「無茶しなくてもいい。この戦いに挑むという事は死にに行くようなものだ。ここで日本を離れて逃げてもいいんだ」



空母提督「私は嫌です!このまま逃げたい!」



駆逐艦提督「…」



俺達はプロトタイプ。武装があってもできあがりの素人だ。しかもこの戦いは艦娘が戦場に立てるまで時間稼ぎにすぎない。はっきり言ってこの戦いは無謀だ。だが…



駆逐艦提督「…この後ろには市民だっているんだ。この先の未来へ希望を持ったたくさんの人々が…その為にも、ここを通らせる訳にはいかない!」ダッ



空母提督「え…」



戦艦提督「その意気や良し!なら俺も見てるだけにはいかないよな!」ダッ



空母提督「え…?え?」



重巡提督「…まったく、バカばっかりっすよ、この集まりは」ダッ



空母提督「ま、待ってくださいよぉ!…うぅ、私も行きますから!」ダッ



戦艦提督「あんたは後ろから艦載機を飛ばせ!」



空母提督「は、はいぃ!」



~~



春雨「みなさんやはり最初は仲良くなかったんですね…」



提督「そうだな、初めて出会ったのが戦場だったからな」



時雨「空母提督って最初はすごく怖がりだったんだね」ヒョコッ



提督「うわ!どっから出てきてんだ!ていうかいつから…」



時雨「最初からずっと聞いてたよ」



春雨「時雨姉さん…」



提督「いるなら出てこいよ…えぇとそうだな、空母提督は戦うことを恐れていたんだ。元々は普通の人間だったから仕方ないが、今とは全然違うな」



春雨「その戦いは確か2週間続いたんですよね?」



提督「あぁ、深海棲艦を減らせてはいたものの、こちらもずっと戦える訳ではないからな。まずは1週間後の話をするか」



~~



1週間後の夜…



~臨時キャンプ~



駆逐艦提督「コード4は?」



戦艦提督「疲れ果てて眠ってるよ。あれだけの戦いがあったんじゃな」



駆逐艦提督「そうか…」



軽巡提督「もう、1週間も戦っているのか…」



戦艦提督「ある意味奇跡と言うべきか」



重巡提督「コード0の作戦がうまくいってるってことっすか」



駆逐艦提督「…」



軽巡提督「なーに黙ってんだよ、お前のおかげでみんな生きてるんだぞ?」



駆逐艦提督「…俺達はあとどのぐらい生き残れるんだろうな…」



軽巡提督「え?」



戦艦提督「急にどうしたんだ」



駆逐艦提督「倒しても倒してもキリがない…むしろ深海棲艦が侵攻は増すばかりだ…俺達の戦いに終わりはあるのか?」



軽巡提督「…」



重巡提督「今更そんなこと言ったってもう無駄っすよ。こんな体にされた以上、戦うしかないし、この戦いに背を向ければ政府にきっと追放される…生き残るには戦うしか選択肢はないんすよ」



駆逐艦提督「…そう…だよな…」



戦艦提督「…そろそろ寝よう。みんな疲れているだろう」



軽巡提督「そうだな、一足先に失礼するぜ」



重巡提督「自分も先に寝るっす」



戦艦提督「お前はどうする?」



駆逐艦提督「俺はもう少しここにいるよ。少ししたら俺も寝るから」



戦艦提督「そうか。では先に失礼する。火を消しておいてくれ」



駆逐艦提督「あぁ」



…綺麗な空だな…あと何回この綺麗な空を見れるんだろうな…



駆逐艦提督「…」チャリ



ポケットから取り出したのは母とのツーショットの写真だった。美しい笑顔だ…また会えるのだろうか



駆逐艦提督「母さん…」



空母提督「あ、あのぉ〜…」



駆逐艦提督「うぉ!?」バッ



空母提督「ひゃっ!ごめんなさい!」



キャンプからひっそり出てきたのは先程まで休ませていたコード4だった



駆逐艦提督「どうしたんだ…?」



空母提督「あ、えっと…少しお話をしたくて…隣、いいですか?」



駆逐艦提督「あぁ、構わない」



空母提督「ありがとうございます…!では、失礼します…」



俺とコード4は月に照らされる海を静かに眺めていた



空母提督「海、綺麗ですね…」



駆逐艦提督「そうだな…」



空母提督「あの…今って深海棲艦は襲いにこないんでしょうか?私達、何もしていませんが…」



駆逐艦提督「あぁ、あいつらにも休息というものがあるみたいだ」



空母提督「え?そうなんですか?」



駆逐艦提督「向こうもずっと戦えるわけじゃないみたいだな。結局は人間と同じという訳だ。それに、陸には陸で防衛されてるから簡単には突破できないさ」



空母提督「そうなんですね…」



駆逐艦提督「君は…戦いをすごく恐れているようだけど」



空母提督「あ…そうなんです…元々激しい運動とかはすごく苦手で…」



駆逐艦提督「幸せな家庭で暮らしていたんだな」



空母提督「は、はい!でも、私の祖父は弓道をしているんですけど、とても厳しくて…」



駆逐艦提督「なるほどな…」



空母提督「いざ実践の時でも怖くて…まともに戦えませんでした…申し訳ありません…」



駆逐艦提督「いや、いいんだ。むしろ君のような人の反応が当たり前なんだよ」



空母提督「え?」



駆逐艦提督「こっちから頼んだ訳でもないのに体を実験台にされ、しかも深海棲艦といきなり戦うなんて普通の人間なら怖気づいて動けないからな」



空母提督「では…どうしてコード0は…皆さんはどうして戦えるんですか…?」



駆逐艦提督「守るべき人がいるから。そして艦娘達へこの先の未来を託す為だ」



空母提督「…あなたには、決意があるんですね…」



駆逐艦提督「決意がないと戦えないんだ。俺は守るものがあるならどんなやつとでも戦う。それが深海棲艦じゃなくても」



空母提督「…私にもできるでしょうか…」



駆逐艦提督「なら君は何を守りたい?」



空母提督「私は…家族を…この国の子供達を守りたいです…!」



駆逐艦提督「決意はあるみたいだな。その決意が固まったら自然と体は動くんだ」



空母提督「…覚悟は決めました」



駆逐艦提督「あぁ」



空母提督「皆さんのお役に少しでも立てるように…頑張りますね!」



駆逐艦提督「うん、背中は預けたぞ」



空母提督「はい!任せてください!」



~~



時雨「決意によって空母提督が戦うようになった…やっぱり人を変える力を持ってる提督はすごいね」



提督「いや、あの状況で決意を固めた空母提督もさすがだよ」



春雨「人々に勇気づけることができるのは素敵だと思います!」



時雨「でもそこからまた激しい戦いが続いたわけだよね?」



提督「そうだな、そこから死闘は続き、さらに1週間後の話からだ」



~~



~臨時キャンプ~



5人「…」



既に戦いが始まってからから2週間が経とうとしていた。倒しても倒しても一向に減らない深海棲艦、弾はほとんど消費し、支給品も底を尽き、体は連戦で悲鳴を上げ、疲弊しきっていた



軽巡提督「俺達、どのくらい戦ったんだろうな…」



戦艦提督「もう2週間経っているんじゃないか」



重巡提督「…もう体が限界っすよ…」



空母提督「でも…逃げても私達の結果は変わりませんよね…」



軽巡提督「…くそ、どうしようもないのか…」



重巡提督「どうしようもないっすよ…もうやけくそに戦うしかないっすよ」



軽巡提督「やけくそってお前…!」



駆逐艦提督「コード2の言う通りだ」



軽巡提督「コード0…お前まで…」



駆逐艦提督「もう俺は弾が尽きた。残ったのはこいつだけだ」スッ



そう言って見せたのは護身用に付けられた刀だった



戦艦提督「俺もあと数発だけだ」



重巡提督「自分ももう尽きてるっす」カンカン



空母提督「私の矢もほとんど残っていません…」



軽巡提督「…ここまでなのか…」



駆逐艦提督「支給された物資も尽きる。決めるなら明日だ」



軽巡提督「…」



戦艦提督「覚悟を決めろということか」



駆逐艦提督「あぁ、もう腹を括ってくれ」



重巡提督「ここまで来たならもう背に腹はかえられないっすよ」



空母提督「私も…できる限り頑張ります…!」



駆逐艦提督「コード1はどうする?」



軽巡提督「俺もやってやるさ…最後まで足掻いてやる」



駆逐艦提督「決まりだな。どこまでやれるか、自分との勝負だ」



次の日…



~海~



ドーン



重巡提督「ハア…ハア…まだいるんすか…」



軽巡提督「くそ…そろそろ限界だ…」



駆逐艦提督「くっ…!」



体は深海棲艦と自分の血が染み付き、武装も戦闘服もボロボロだった。そんな時、後ろから悲鳴が上がった



空母提督「いやああぁぁぁ!」



駆逐艦提督「!」バッ



軽巡提督「コード4!」



戦艦提督「いつの間に姫が…」



戦艦棲姫「フフフ…」



空母提督「放して!やめてぇ!」バタバタ



駆逐艦提督「…っ!」ザン



戦艦棲姫「!」ブシャア



戦艦棲姫の腕を斬り、空母提督を手放させた



空母提督「うっ…!」バシャッ



駆逐艦提督「コード4!立てるか…なっ…!」



気づいたら深海棲艦は俺達の防衛線を突破していた



駆逐艦提督「そんな…深海棲艦が…」



俺達が守っていた日本は赤く燃え上がっていた



軽巡提督「そ、そんな…」ガクッ



空母提督「あ…あ…」ブルブル



重巡提督「コード4は私が持ち上げるから!みんなも早く撤退するっすよ!」



軽巡提督「でもまだ…!」



重巡提督「この戦いはもう負けたんすよ!今は自分達が生き残る事を優先するっす!」



戦艦提督「そうだな…!おい、行くぞコード0…」



駆逐艦提督「ダメだ…この数じゃ全員は逃げきれない…」



深海棲艦はいつの間にか姫や鬼が集まっていた



戦艦提督「ならどうするんだ!」



駆逐艦提督「俺が時間を稼ぐ…その間にお前達は離れるんだ」



軽巡提督「何言ってるんだ!お前を見殺しにできるか!」



駆逐艦提督「全員死ぬよりかはマシだ!それに…コード2も言ってただろ…戦いに余計な感情は持つなと…」



軽巡提督「…!」



重巡提督「…コード1、もう時間がないっす…自分は先に行くっすよ」ダッ



軽巡提督「おい!コード2!」



戦艦提督「俺達も行くぞ…コード0が時間を稼いでくれる内に…」



軽巡提督「くっ…!」ダッ



駆逐艦提督「うまく逃げてくれよ…」



レ級「あれぇ?あいつ1人だけ残ってるよ?」



軽巡棲鬼「死に損ないだねぇ…」



戦艦棲姫「無駄な抵抗を…」



駆逐艦提督「…よし、もう弾はないんだ…」シャキン



最後の抵抗に刀を取り出す。撃ち続ける相手の懐に飛び込むなどあまりにも無謀かもしれないが、一か八かだ



駆逐艦提督「先に死にたいのは誰だ?」



港湾水鬼「…」



レ級「シシシ…」



軽巡棲鬼「フフ…」



戦艦棲姫「シズメェ…」ガシャン



駆逐艦提督「強そうなのが勢揃いだな…けど、駆逐艦の速さを侮るんじゃねぇぞ!」ダッ



戦艦棲姫「フン!」ドーン



駆逐艦提督「…!簡単にはくたばらない!俺は戦ってやる!人として…いや、プロトタイプとして!」



~~



重巡提督「ここまで離れれば大丈夫っすよ…コード4、もう歩けるっすよね?」



空母提督「は、はい…申し訳ありません…」



戦艦提督「生きているのか…奇跡だ…」



重巡提督「2週間も戦って生きているなんて…運が良すぎるんすよ…」



軽巡提督「…俺は納得できねぇ…」



戦艦提督「何がだ?」



軽巡提督「コード0が1人で戦うなんて納得できないんだよ!」ダッ



戦艦提督「あっおい!」



重巡提督「行かせましょうよ、今ここで追いかけたらここまで逃げた意味がなくなるっすよ。コード0の行動を無下にするんすか?」



戦艦提督「…だが、俺も見捨てるなんて選択肢はやはりできないな」ダッ



重巡提督「はあ…もう勝手にするっすよ…」



空母提督「コード1!コード3!待って!」



軽巡提督「生きていろよ…」



戦艦提督「俺も行くぞ」



軽巡提督「…!あぁ!」



~~



ドーンドーン



駆逐艦提督「ハア…ハア…」



軽巡提督「!コード0!こっちだ!こっちに来るんだ!早く!」



駆逐艦提督「(!あいつら…!なんで!)」



ドーン



駆逐艦提督「…!くそっ…!間に合え…!」ダッ



戦艦提督「おい!危ねぇ!避けろぉ!」



駆逐艦提督「…!しまっ…」ドカーン



軽巡提督「コード0!おい!しっかりしろ!コード0!」



駆逐艦提督「…」



~~



提督「そこで俺の記憶は途切れた…ここで俺は沈んだんだろうな」



春雨「…」



時雨「政府もむちゃくちゃな命令をするもんだね。僕達が戦場に出るまでの間にたった5人で守れだなんて」



春雨「もっと私達が早く出ていれば…」



提督「結果的に今はうまく戦えているんだ、気にしなくていいよ。その後、一年後に俺は帰ってきたんだ」



時雨「結局どうして戻れたんだい?」



提督「そこの話はややこしくなるからな…とりあえずそこから話そう」



~~



駆逐艦提督「…」ザバッ



ここは砂浜か…意識がギリギリの状態で保っている…だがいつまでも持つわけではない…



駆逐艦提督「うぅ…」



市民「おい!生存者だ!君、立てるか?」



駆逐艦提督「あ…ぁ…」



市民「名前は?喋れるか?」



駆逐艦提督「…」バタッ



市民「!倒れたぞ!誰か!早く病院へ!」



………



駆逐艦提督「…」パチッ



軽巡提督「おぉ!起きたか!」



駆逐艦提督「…ここは…?」



軽巡提督「病院だ、まさかお前が生きてたなんてな…」



戦艦提督「驚いたぞ。人が倒れてるって事で向かったらまさかお前だったとはな」



駆逐艦提督「…ここまで運んでくれたのか」



軽巡提督「気にするな、今は体を休めることが先決だ」



駆逐艦提督「あぁ…」



重巡提督「あの…コード0…」



駆逐艦提督「お前は…コード2…だったか」



重巡提督「あの時は助かったっす…コード0のおかげで私達は助かったっすから…」



空母提督「わ、私からも!ありがとうございます!」



駆逐艦提督「それより、今どのくらい経ってるんだ?」



軽巡提督「記憶がないのか?」



駆逐艦提督「少しな…俺はあの戦いの後どうなったんだ?」



軽巡提督「…」



重巡提督「…」



空母提督「…」



戦艦提督「…あの戦いから1年経っている…お前はあれからずっと昏睡状態だったんだ」



駆逐艦提督「…!そうなのか…そんなに経っていたのか…」



軽巡提督「おい、コード3…」ヒソ



戦艦提督「今はまだあいつに真実は伝えられんだろう」ヒソヒソ



駆逐艦提督「俺達、これからどうなるんだ?」



空母提督「え?」



駆逐艦提督「戦いに負けた挙句、被害まで出てしまった…俺達はあの戦いに結果を残せなかった」



軽巡提督「本来なら追放だった。けど大丈夫だ」



駆逐艦提督「どういう事だ?」



軽巡提督「俺達の2週間の戦いを理解してくれたようだ。あそこまで戦えるやつらはいないって」



駆逐艦提督「そうか…けど俺はもう政府の言いなりは御免だぜ」



重巡提督「それは私も同じすっよ」



戦艦提督「俺もだ」



軽巡提督「俺も同意だ」



空母提督「わ、私もです!」



駆逐艦提督「…全員考える事は同じだったか…」



重巡提督「とにかく無事で良かったっす」



空母提督「今はゆっくり休んでくださいね」



駆逐艦提督「…ありがとう」



~~



提督「そこから体が完治した後、俺達は何度か艦娘達の届いていない海域を巡り、深海棲艦と戦っていたんだ」



時雨「昔別働隊が向かっているとかは聞いていたけど、それって提督達のことなのかな」



提督「多分な」



春雨「だから私達は会えなかったんですね」



時雨「僕達とはまた違う場所で一緒に戦ってたんだね」



提督「あぁ、その後は任務が終わった後、軽巡提督とどっちが実力が上かって騒いでて、勝負したんだけど…」



時雨「けど?」



提督「その勝負どっちが勝ったか覚えていなくてな…」



春雨「え?そうなんですか?」



提督「何故か思い出せないんだ…すまないな」



時雨「大丈夫だよ、その後のことは?」



提督「その後は戦いをやめようと決意したんだ。俺がその決意をしたのはあいつらの中で1番最後だった。確かここに来た時に話したやつだな」



時雨「それから提督として生きようとしたんだよね」



提督「そうだな、でもその間にかなりの日数があってな。この間に軽巡提督達が先に提督として着任してたみたいだ」



春雨「なるほど…」



提督「最後に大本営へ出かける前…実家で綺麗な母さんを見れたのはそれが最後だった」



~~



~駆逐艦提督の家~



駆逐艦提督「それじゃあ行ってくるよ母さん」



母「本当に行くの…?無理して提督なんてならなくてもいいのよ?」



駆逐艦提督「でもうちの家計が厳しい状況で何もしない訳にはいかないよ。それに、提督になるためにここまで頑張ったんだ。無駄にはできないよ」



母「そう…あなたがそう言うならお母さんは止めないわ…」



駆逐艦提督「ごめんね母さん。本当はずっとここで過ごしたい。でも、俺も何か母さんの力になりたいから」



母「大丈夫よ、ありがとね。向こうでもしっかり頑張ってらっしゃい」



駆逐艦提督「ありがとう、帰ったら、一緒に旅行へ行こう。母さんの好きな場所へ」



母「えぇ、楽しみにしてるわ。行ってらっしゃい」



駆逐艦提督「行ってきます」



それが綺麗な母との最後の会話だった。この先に最悪の別れを告げるとは知る由もなかった



~街~



ワイワイガヤガヤ



駆逐艦提督「…すごいな…こんな景色初めてだ…」



人々が活気に溢れ、笑顔で満ち溢れていた



駆逐艦提督「街を1度壊されても人々は協力し、ここまで生き延びた…やっぱり人ってすごいな…」



街の風景や、人々の生活に驚かされることばかりだった。それと同時に罪悪感も湧いた



駆逐艦提督「(俺がもし守れていたらこんな事には…)」



プロトタイプということがバレないように、人々と顔を合わせないようフードを深く被り、人目を避けた場所を駆け抜けた



~大本営~



駆逐艦提督「…ここが大本営…」



立派な建物に圧巻され、ただただ目の前で立ち尽くしていた。そこへ誰かが声をかけてきた



?「あのー!」



駆逐艦提督「は、はい!」



?「あなたが提督へ着任する方でしょうか?」



駆逐艦提督「あぁ…そうですけど…」



大淀「私があなたの案内役の大淀です。よろしくお願いします」ペコ



駆逐艦提督「あっ、こちらこそ…」ペコ



大淀「あなたは確か…深海棲艦の侵攻を防衛したプロトタイプの方ですよね?」



駆逐艦提督「うっ…なんでそれを…」



大淀「話は聞いています。あなたのような方は歓迎しますよ」



駆逐艦提督「え?でも俺はその戦いに負けて…」



大淀「結果的には負けましたけど、今深海棲艦を抑えられているのはあなた方のおかげですから」



駆逐艦提督「…それでも…多くの人間が死んでいったんだ…罪を償うにしても重すぎる…」



大淀「これから償えばいいんですよ」



駆逐艦提督「え…?」



大淀「艦娘を指揮し、深海棲艦を撃滅し、この世界に再び平和を取り戻すこと、それが亡くなった方々への償いになるのではないでしょうか?」



駆逐艦提督「!…そうだな」



大淀「さあ、案内します。こちらへどうぞ」



駆逐艦提督「…あぁ!」



駆逐艦提督「(艦娘…ようやく会えるんだ…守り抜いて完成した艦娘達に…!)」



~~



提督「そしてここから俺がラバウルに着任したと…」



春雨「ここに来る前からたくさんの出会いをして、苦しみを乗り越えてきたんですね…」



提督「そうだな、その後も大変だったけど、今こうしていることに幸せを感じているし、後悔もしてないよ」



時雨「やっぱり僕達の提督はこうじゃないとね」



提督「できるなら前任の提督をぶっ飛ばしたいものだけどな…」



時雨「大丈夫だよ、もう僕達に前の提督なんていないから」



提督「ん?どういう事だ?」



時雨「提督は提督だよ。ラバウルのたった1人の僕達の提督だから」



春雨「そうですね。私達には司令官ただ1人しかいません」



提督「ははっ…なんか照れるな…」



時雨「今日の話で提督のことをよく知れたよ」



春雨「はい♪」



提督「それは良かった。俺も全部話せてなんかスッキリしたよ」



時雨「ということで今から一緒にベッドに行こう」



提督「おい待て、どういう事だコラ」



時雨「さらに提督の事を知るにはやっぱり体で知らないとね」



提督「毎回毎回お前は良い雰囲気をぶち壊しやがって…」



春雨「時雨姉さん、少し落ち着いてください…」



提督「そうだよ(便乗)」



時雨「なんだったら春雨で我慢するよ」ガシッ



春雨「え」



提督「おっと、百合でも始まるのか?じゃあ俺はここでじっくり見させてもらおう」



春雨「ま、待ってください!時雨姉さん!そういうのはいけません!」



時雨「大丈夫だよ春雨…優しくしてあげるから…」



春雨「や、優しく!?///」



提督「程々にしとくんだぞ…」



時雨「そうだ、ここで提督も入れば3Pに…」



提督「俺を入れようとするんじゃない」



春雨「うぅ…司令かぁん…助けてくださぁい…」



提督「時雨が度を超えたら助ける」



春雨「度を超えるってどこが基準なんですか!?」



提督「冗談だって。時雨、もういいだろ」グイ



時雨「あっ…僕と春雨の愛の印が…」



提督「なに言ってんだおめぇ」



春雨「はぁ…助かりました…」



時雨「むぅ…なら提督、3人で街へ出掛けるのはどうだい?それならいいよね?」



提督「そうだな、どうせ暇だし少し街へ出掛けてみるか。行くか?春雨」



春雨「はい!行きます!」



白露「ちょっと待ったー!」バァン



時雨「うわ!白露いきなりどうしたんだい…」



白露「みんな今日どこ行くか忘れてるでしょ!」



時雨「何かあったっけ?」



春雨「…ありましたかね?」



提督「焼肉食べに行くんでしたっけ(笑)」



白露「ちがーう!みんなで街へ出掛けて買い物するんでしょ!」



時雨「あぁ…そういえば…」



春雨「そんなこと言ってましたね」



白露「なんで曖昧なの!?提督もだよ!」



提督「俺は寿司が食いたいゾ」



白露「食べ物の話じゃなーい!」



春雨「でも確かに少しお腹が空きましたね…」



時雨「買い物行くついでにお寿司食べに行こうよ」



提督「おっいいね〜それ採用」



白露「それなら大丈夫だよ!ほら、早く行こうー!」



提督「あぁ、行こうか。今日はどんな景色が見られるかな」



新しい景色を求め、今日も駆逐艦提督は街へ足を運ぶ


後書き

駆逐艦提督と白露型~過去編~は終了です。読んでくださりありがとうございました


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SS好きの名無しさんから
2019-06-23 12:11:54

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1: SS好きの名無しさん 2019-03-24 10:28:41 ID: S:fA5uE-

作品ではプロトタイプって色々美味しいポジションなのが現実と
比べて皮肉。レプリロイドとかギア細胞とかバイオウィルスとか


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