2019-03-06 19:34:44 更新

概要

申し上げます!トアル星に伝説のロストシップが現れましたぁ!

「だにぃ?」

「お気楽なスペースオペラ小説などと、その気になっていたお前の姿は、お笑いだったぜ」

「だにぃ?」

「コンピューターが弾きだしましたデータによりますとこちらは概ね完成しておりますじゃ」

「やめろ! 終わるわけない! あいつは伝説のロストシップなんだぞ!」


前書き

全艦娘は、着任から見た目そのまま+20歳以上なので児童虐待等はありません。
名前分で文字数を稼いでいないので、主観描写が分かりずらい事もあります。

艦娘は独自のリアル路線に改変されています。
艤装、兵装に妖精さんはいません。
艦娘だけの戦闘パートには、過激な表現が含まれています。

艦娘の轟沈はありません。




――全銀河に悪夢を


――宇宙には静寂こそ相応しい





恒星系E-7



10の惑星を周回させ、太陽系モデルの天体が並ぶ、自治区。

人類が入植をしてからすでに、数百年が経過している。

この星系に限り、目まぐるしく宇宙船が往来することはない。



突如空間が紅色に歪む。青い惑星のそばで。

紫の渦が起きると、爆発と共に渦の中心から

一隻の宇宙船が吐き出された。



「アビオニクスは?!」手早く操縦桿を動かす。「エンジンリバース」


後部エンジンにカバーが付き、逆噴射。

船体が激しく軋む。

三人分のシートがある、操縦席に一人座る。

オレンジの髪の若い男性。

昔のガンマンのような洋服で

黒いマントを羽織っている。


「キャナル!」目まぐるしく、操縦席周辺の操作を行う。船内に衝撃が走る。


レッドランプは最初の倍くらいに増えただろうか。


「状況検索、超高速モード」操縦席の後ろに立つ女性。


背が高く、緑色で腰まで伸びるロングヘア―。メイド服。


「出力低下。サイシステム・リブート失敗。規定値に届きません」


手には、計算尺。

操縦席前のパネルに船体が表示される。

映し出された船体の、双胴部の先、前半分が黒く表示されていた。

後部に集中したエンジン部は赤く塗りつぶされておりその他の部分は、黄色と赤の部分が目立つ。


「ケイン、ここは恒星系E-7です」


紫がかった瞳の中に、流れるように、数字のようなものが見える。

いつもなら、観光場所の一つでも教えてくれるところだが、今の状況では。

白い小船はいま、滝に向かって進んでいる。


「現在、惑星TOARUの引力圏です」この速度なら1日以内には墜落するだろう。


――助かった。ケインは安心した。


通常、地球型の惑星はリゾート地だ。


「キャナル、衛星港に非常通信を」識別信号を偽装しながら言った。


衛星港。それは宇宙連合所属の惑星にある港。

大気圏突入能力をもたない貨物船や、格安の個人クルーザーが、惑星に降りるための連絡船を発着させる場所。

無論、警察も常駐しており救難も行う。

パトロール船2隻も出してもらえれば、けん引してもらって離脱できる。

財布の中身も相当量、離脱することにはなるが・・・


「ケイン」申し訳なさそうに。


「ケイン」何かを察して、ケインも手を止めた。


「金ならまだ、ばーちゃんの・・・」隠し口座に。


いや、知ってるか。こいつなら。


「ここは特別自治区です」計算尺を離さない。


「戦略支援コンピューターのFCS-キャナルは、墜落場所の選定を勧告します」




・・・




自然の要害、四方を海に囲まれた、それほど大きくはない、鎮守府。

溶岩が作り出した地形で、3キロほどある島全体がゴツゴツしている。

人力で岩を削り出し、島内部に複数の平坦な場所を作った。

施設や活動は専らそこで行われている。



「大本営より緊急入電!平文です!」


未明に、突如現れた隕石。

同盟国に、警戒を呼び掛けていたが。


「そなえあれば、か」帽子を深くかぶった。


内容は読まなくてもわかる、あれはここに向かっているのか。

広いとは言えないが、最低限の機能を有する執務室。

金庫を急ぎ操作する。


「まさかと思っていたが、手筈通りにな」


すでに機密文書をまとめていたファイルを、カバンに詰め込む。

執務室からサイレンの操作をした。

コートを羽織り、執務室から駆ける。

まだ少し肌寒い。


空襲を警戒して、二階建ての施設。

それでも年のせいか、少し体が重い。

急いで階段を降り、外へ出る。


「防空壕でやり過ごせればいいが・・・」


呼吸が早くなる。


「提督さん!」遠くの青空に火の玉が「こっちに来るっぽい!」


突然、駆逐艦に空を見ながら、腕を引っ張られる。

防空壕へと避難を促されるが・・・?


「大丈夫だ」見れば隕石が一つ。空に尾を引いている。足を止めた。


隕石は不思議とジャンプしたかのように降下角度を上げる。

遠くの海を目指しているようだった。


「綺麗・・・」施設内から防空壕へ向かう者達が足を止め、空を見ている。


ここに落ちてくるように見えたが、コースを変えたようだ。

このまま、高高度で通過するだろう。

ソニックブームの心配もなさそうだ。


「不幸だわ」隕石が上空を通過した際の、落とし物だろうか。


彼女の頬近くを高速で通過した小さな物体は、そのままグラウンドに突き刺ささり、埋まった。


「いや」立ちすくむ彼女の頭に手を置いて「君は運がいいんだよ」


「願い事、案外叶うもんだなぁ」


しばらく空を眺めた後、屋内へと足を向けつぶやいた。


「皆の無事を願ったらそれてくれたよ・・・」


潮風が優しく頬をなでた。今は、サイレンの音すら心地よい。



この日、二つの隕石が観測される。一つは鎮守府近海

もう一つは敵陣営に落下したと軍事衛星に記録された。



――惑星トアル――


人類は、精神力をエネルギー源とした様々なシステム、メタサイコロジーの発見をした。精神エネルギーとの混合エンジンは、光速を超え、人を未知なる海へと駆り立てた。


超光速を獲得して以来、人々は、次々と惑星を開拓していき、宇宙連合を発足させる。例外もあり、特別な環境保護モデルや、自治区として存在する惑星、企業の実験プラント惑星などがある。


惑星トアルは、環境保全を含む特別自治区である。開拓時に巨大人工衛星を周回させ、その表面を惑星トアルの素材で覆うことにより月の再現も行われている。もっとも、オリジナルほど、潮汐力は発生しないが。


開拓時からの工作もあり、数世紀経過したこの住人達は、自分たちが宇宙人であった事を、一部の星務官を除き、もはや忘れている。


住人は国家を形成し、幾度かの大規模な「内戦」を経験した。

最後の惑星内の大規模な内戦では、やむなくUG(宇宙警察・ユニバーサルガーディアン)がUFOにより首脳陣に圧力をかける。内政干渉により秘密裏に内戦を終結させたことは記憶に新しい。


しかし、その際に惑星トアル近郊に停泊していたUFの(宇宙軍・ユニバーサルフォース)持つ強力なサイユニットが、惑星トアルに不慮の干渉を行ってしまう。先の内戦により使用された、艦船に酷似した能力を持つ、謎の有機生命体を発生させてしまった。サイシステム作用時にマイナスの干渉を多く受けたのか、住人に対して、明らかに敵対行動をとっている。


宇宙連合は、事態の収束を図りUFの強行着陸と同敵分子の排除を申し出たが、惑星トアル首脳陣は、代々続く自治権を理由にこれを拒絶。さらに、同自治区を後援する超巨大企業ゲイザーコンチェルンもまた、地球型惑星のサンプルモデルの維持を提唱。UG、UFの不干渉と領宙内からの即時退去を強く勧告した。


こうして、住民。この星の人類は、真実を知らされぬまま、

自らの保有兵器では効き目の薄い、謎の敵との戦いを強いられたのである。


それから

半世紀後・・・




・・・




「提督、新しい任務が届きました」執務をこなしながら、


モニターを見上げると、彼女の眼鏡がキラリと光った。


「ふふっ」思わず声が出てしまう。


「何ですか」こちらを睨みつけながら「真面目に聞いてください」


姿勢を正した。彼女は怒らせると怖いからな。

背筋に汗が一つ流れるのを感じた。


「それで?」コーヒーに手を伸ばす。


「先日の隕石の件ですが」またキラリと。


今度はブラックコーヒーを飲んで耐えた。


「南方諸島に墜落した物体を回収せよ、とのことです」いたって真面目に言った。


「墜落、ねぇ」誤字ではないのかとの意味を込めて―


彼女は周囲を警戒すると「お昼にしましょうか」彼女は首で外へと合図した。


「いいだろう、今日は何を食べようかな」笑顔で答えると、執務室から出る。



「おいおい」宿舎の陰で、パタパタと体を探られる。「そこまでか」


「ええ」真面目な顔つきで全身を調べる「一級機密です」


「大丈夫そうね」そういうと、食堂へと足を向けた。


「それで、内容は?」いつもよりゆっくりと歩きながら、言った。


「宇宙船だそうです」真面目に。


「大国が財政難の時の目くらましかな?」そう、


いつもの景気が悪い時のUFO騒ぎだろうと


「つまり、大本営は金鉱でも見つけたのか」なるほどと、一人納得する。


「他国に先駆け、直ちに船体のサンプルを回収ないし、破壊せよと」


ーー最高レベルの暗号電文で。


キラリっとこちらを睨む。


「まさか」足を止め。波止場で見つめあう二人。


気が付けばお年頃の女の子達に囲まれていたが

別れ話でも切り出されたのかという、

緊迫感に押されて、誰も声を出せなかった。

人生のうちで絶対に怒らせたくない人物

ベスト3(某記者調べ)に君臨する彼女が

迫真のオーラを出している。

動けない、動けば殺られる。


「不幸だわ」入渠を終えて食堂に行こうとしたら、謎の人だかり。


私、お腹がすいているのだけれど。「何だ提督か」渦の中心に提督と、キラリ眼鏡。


「不幸だ」モーゼの如く輪が開く。「わ?」中心の二人がゆらゆらと近づいてくる。


気付かれた。嫌な予感がするの、足が動かない。

後退、否、死。姉さま・・・


「ちっ、進む!進むんだからー!!!!」両腕を広げダブルラリアット!


速度を乗せた、打点の高いラリアットだ!「青葉見ちゃいました」


「ワーン」「ツー」「スリー」


決まった!スリーカウント!提督轟沈!眼鏡大破!!

どちらも同じくらいの高練度であり、元が戦艦と巡洋艦ではやや分が悪かった。

勝者山城!!駆逐娘に、拍手喝采されながら食堂へと向かった。


「ゴルァ!!!や”ま”し”ろ”-」心地よい潮風が鎮守府を抜ける。


珍しく訪れてくれた演習相手に、終了後、某記者がインタビューしたことがある。


「あれが巡洋艦?巡洋戦艦の間違いだろ?ふふふ、怖い」


相手の弾薬が尽き、追い詰めたと思ったら、突然攻撃が当たらなくなり、気が付いたら毟られていた自分の艤装で負けていたと。

――慢心やら超スピードやらそんなチャチなものでは断じて・・・


――提督の検閲により削除――


「今日は厄日かな?」よろよろと起き上がり、帽子を正した。


「てーとくよっわーい」そう言いながらも服を払ってくれる。


「年なんだよ」壮年であるが、体はがっしりとしているほうだ。「さっ食堂へ行こうか」そう微笑むと、皆で食堂を目指した。



「まぁ山城だな」本来なら高速戦艦を出すところだろう。「高練度とラリアットか」


「ラリアット航空戦艦とは胸が熱いな」地図にコンパスを引きながら彼女は言った。


「急くように言われているんだろう?」こういう時、頼りになる。


後、口が堅いほうだ。色々と。


「そうだな、隕石から未知の資源を回収しろと言われてもなぁ」コーヒーを手に。


「確かに眉唾な話だな」彼女は複数の落下予測点に線を入れる。「それに」


「未知の汚染の心配もある」手をひらひらと「これ以上敵勢力が増えてはかなわん」


確かに、なぜ奴らが生まれたのか?

大本営はどのように艦娘を?

妖精さんの謎技術とは。

分からない。


そういえば、昔。ゴシップ話に、UFOのようなものが2隻。月の影に。

レンズの汚れだの、宇宙人の攻撃だのと、一時期話題になった事がある。結局のところ、政府の公式見解として、初期の衛星だったため

宇宙空間でのトラブルが原因とされた。他の偵察していた場所とデータが混同してしまった、とも発表された。


――今回の件も何か?


「不幸だわ」声がした、謹慎カッコカリにより、執務室のソファーで出撃待機中。


しっかりと食事は行い、心なしか輝いて見える。


「提督、作戦概要をご説明します」日の光を受けキラリと。


旗艦山城、最上、山雲、満潮、朝雲、時雨にて目標ポイントへ急行。

その後、僚艦は同ポイントにて待機。

山城は単独突入。

水偵にて落下予定ポイントを偵察。

発見後サンプルの回収。

実地不可能の場合は砲撃により対象の破壊ないし埋没。

こちらの勢力圏内ですが、敵遊撃部隊が確認されている為

この間、僚艦は山城脱出ポイントの維持。

以上です。


「単艦突入なんて」顔を伏せながら「当てつけかしら・・・」


「山城」提督はソファーの前にしゃがみ込み「お前にしかできない」


「でも・・・」そっと手を握り「訳がある、隕石を無事見つけたら、開けてほしい」


そっと指令書入りの筒を持たせる。「大丈夫、お前は一番運がいい」



「扶桑型戦艦山城!武運長久を!」


年甲斐もなく。出撃ドックで帽子を振りながら声を張り上げた。

出撃する、彼女たちが見えなくなるまで。


――バカね。あんなに苦しそうに言われたら、断れないじゃない。


「不幸だわ」嬉しそうに、ぽつりと。




・・・




赤色灯がグルグルと喚き散らす。額から血を流しながら、体を起こした。

手は痺れるが動くらしい。あいにく足もついている。


「キャナル、状況を」返事がない。「仮想復元フィールド・・・」


モニターを触りながら、システムを動かすが、反応はない。

ひとまず、踊るレッドランプを強制停止させる。


――無理もないか。


奴との決戦の時、爆発に巻き込まれてハイパースペースまで弾き飛ばされたのだから。


「ミリィを待たせているからな」ぐぐっと痺れる体を、動かしながら。


――ケイン。聞こえる?


「ケイン、ケイン」か細い音声が。


「キャナル、か」姿は見えない。立体映像装置にも深刻なダメージがあるのだろう。


「コアをやられたのか?」本人がいるなら修理もしやすい。助かった。


「ええ。ケイン。」少しノイズが入る「残念ながら、自己修復装置も全滅です」


「この惑星では、素材の調達も難しいです」船体から観測レーダーで状況を分析するがやはり処理能力が低下しているのか。反応が遅い。


「ケイン。無事ですか?」船内センサーも故障して。


――もはや、目が見えない様子だ。


「ああ。俺は大丈夫だ」壁に手をつきながら、煤けた船内を歩く。


体温の分布や、呼吸音を頼りに判断。

多少強がってはいるものの、

大事には至ってないようだ。よかった。


「さすが私のマスター様」少し安心したように。


「プラズマ・ブラスト、サイブラスター、リープレールガンの使用は行えません」


冷静に状況を伝える。


「サイバリア、ブーストチップ、メインエンジンに深刻なダメージ、FCS-CANALにも」


そうか、予想はしていた。


「仮想復元フィールド形成による、サイシステム直結でのファランクスレーザーは」


いつもなら、指を立てて説明しているところだろうか。

いや、彼女はまだ寝ているか・・・


「連射をしなければ使用可能です。ただし、収束率と命中精度は低いですが」


それでもトアルでならば、十分な戦力か。


「おまけはないのか?」軽口を叩いて見せる。壁を伝いながら。


「ありま」外部センサーに反応。サイシステム反応。


「ケイン!」全機能をFCSに集中させる「何か飛んできます!サイシステムよ!」


「何だと!?」まさか、ロストシップの攻撃機。


このままでは今度こそやられる。

壁を手で押しながら、足早に第二管制室を目指した。


「小さな・・・航空機?」サイシステム反応はそこから来ている。


FCSが健在なら、トアルの中央局から、データをハッキング出来たのだが・・・


「移動速度から、センサーの故障の可能性もあります」


あえて、伝えてはいないが。念のためファランクスの照準だけは合わせておく。エンジンを暴走させれば、数発くらいは、独力でも撃てるだろう。


「遠ざかります」酷くノイズがかった声で。


「ダメね」酷く残念そうに小さく。「FCSを停止させライフシステムを最優先します」


「ああ、おやすみキャナル」その言葉を最後に。船内から人気が無くなった。


長い通路を抜けたどり着いた。

第二管制室のハッチは固い。

ハンドルを回しても動かない。

まるで入室を拒まれているようだ。


「ばーちゃん」サイブレードに手をかけた。


思い留まって、ひとまず外側から様子を見ることにした。



外へ出ると、密林に落ちたのがわかった。

日が傾いてきているが強い光で、しばらく目を細めた。

墜落速度から考えるより、かなり小さなクレーターだろうか。

キャナルが墜落ギリギリまで制御していた事が分かる。

船に登ると、景色が一通り見えた。無人島のようだ。

その上、地質も柔らかい。ただ少し、蒸し暑い。


全長210M 白い船体の双胴船ソードブレイカー。

慣性制御装置とショックアブソバーのおかげもあり、全壊は免れたのか。

土から覗かせる部分は、やはり、痛々しい。

黒い素肌も見え隠れしている。

恐らく、双胴部分の前部は完全に喪失しているだろう。


さて、どこから手をつけよう――


――航空機、あれか。かなり距離がある、


腰に手をかけ思う。ミリィなら撃ち落とせたかな。




・・・




「見つけたわ、隕石さん」なるほど、これが真実か。


水偵が帰還すると。クレーター部分に構造物のような、

白い何かが埋まっていると報告された。


「さて、不幸の手紙を見ましょうか」


提督から渡された筒を開ける。

静かな海の上で、一人読み上げる。

だからこその最小単位。

関係者は少人数で。かつ、高練度だから。


――つまり、本当の作戦は、未知の宇宙船の拿捕か無力化。それが指令書の内容だった。


でも、こういうことでも、私が選んでもらえて少し嬉しい。

あの人は、年齢を理由に誰とも結婚したがらないから。


「あら?人かしら」オレンジ色の短髪に、女性の顏。


遠すぎて目を細めてしまう。

首の下に黒い塊。

違うか。

黒く長いマントを羽織っているわね。

あれが宇宙ファッションかしら。


某国の観測隊とは思えないし、何よりこんな密林に――


背部に固定された、28cm連装砲に力が入る。

しかし、まだ射程外だ。だが。


「こっちに気付いた?」


こちらに顔を向け、停止している。

やっぱり宇宙人だわ、彼女。

水平線ギリギリからの距離で気づくなんて。

あちらも見えているのかしら。

それとも新しい艦娘?


「困ったわね、会話できるかしら」


海面を滑走しながら、思案にふけった。

別ポイントを偵察していた、二機目の水偵が帰還する。

あら双眼鏡かしら。すごいわね、あの人。

勘だけで私を見つけたの。

私、目立つのかしら。困ったわね。


「偵察したの、印象悪いかしら」


照準を外し近づく。なぜか、近しいものを感じたから。

それから10分ほどたち、直線上にある砂浜で。

二人は出会った。

ゆっくりと波が動く。砂浜に二人は立っていた。


「こんにちは、言葉わかりますか?」返事がない、無口なのだろうか。


敵意はないようだけれど、きっと言葉ね、困ったわ。


「ミタイ ミコ」ぽつりといった。服装を見ている。


「え?」何だ聞こえているじゃない。でも、英語か。


「イヤ、ナイミタコト、ハシル ニンゲン ウエ ウミ」頭をポリポリと書きながら。


「あの、わたし、にがて、なのです、えいご」聞き取れなかった。不幸だわ。


――やっぱり金剛が適任だったんじゃないかしら。


「オレハ、ケイン・ブルーリバー」マントをバサッと翻し、堂々と名乗った。


「くすっ」今どきマントなんて珍しい。


つられて笑うように、木々が騒めいた。


「コラっ!ワラウナ!」キラリ眼鏡を思い出した。


なんだか怒らすと怖そうだ。

頭から血もたれてるし、吸血鬼?


「ごめん。ごめんあさい。ごめ」あたふたと謝罪の言葉を並べるが。


片言で伝わるだろうか。


「アンタハ?」肩辺りから延びる武装が気になり、腰の柄に手をかけるが、思いとどまった。


「わたし、やましろ」心細そうにつぶやいた。細々と。


「コイ ヨ オレト」ジェスチャーで促される。船へと案内されたのか。


会話もなく森を進むが、提督の倍くらい元気な人だ。

悪い人ではなさそう。でも不思議な感じ。


「イリグチ ココ」


そこ亀裂よね?

白い船体に、亀裂部分があり、細い通路が見えた。

通路の片側には部屋の扉のような物も並んで見える。

確かに埋まってて、気の毒だけど。


大きな艤装に包まれているような感じがする。

少し暗いが、見えないレベルではない。

内部は全体が煤けている。煙やほこりも舞っている。

でも、懐かしく。母親のようで。

船全体が優しい感じ。


まさか、・・・姉さま?


「起きろキャナル!」え、この人時計のベル鳴らしてる。


うるさっ。

まさか、壮大などっきりかしら。

突然現実に引き戻された。

不幸だわ。


「ケイン、どうしましたか?」雑音をまじらせて。


「言葉がわからん」堂々と胸を張りながら言ってみた。


「SFみたいね」姿の見えないものとの会話。


でも優しい女性の声がする。


「ケイン?彼女からサイエネルギー反応が、アンドロイドですか?」


トアルでは、ロスト・テクノロジーが使用されているのだろうか。

だとすれば、ファランクスレーザーだけでは心許ない。


「人間のはずだが、オモチャみたいな飛行機が格納されていったぞ」


水偵を収容している所を、見ていたのである。

恐らく背負っている武器も本物だろう。


SF見たいね。


――解析する。音性パターン。


幸い、登録されている言語だった。

銀河共通語から派生した方言語。


「あなたは人間ですか?私は・・・コンピュータです」キャナルが問う。


一瞬、立体映像装置をと思ったが、FCSにこれ以上のダメージは避けたい。


「私は・・・戦艦です」なるほど、これが異文化コミュニケーション。


言葉が通じるって嬉い。


「困りました」データベースにない。生きる戦艦とはなにかしら。


生体反応もあるようだし、やはりロストテクノロジーがここにも。


「艦娘、です」少し言い淀んで。


機密に触れない範囲で。説明を行った。

謎の敵と戦う。謎の武器を背負って。謎の組織といったところか。

キャナルは考えた。難しいですね。

嘘を言っているようには感じられませんし。


「なぁ、俺寝ててもいいか」


当たり障りのない会話で、さらに謎の空中戦をしているようだ。

多分誰かの愚痴とかを、言い合っているんだろうなぁと

キャナルの会話のニュアンスからわかる。

機嫌損ねて、ライフシステム止められたら大変だ。

ゲッソリしながら地面に座り込んだ。


目を閉じる。


「冷血コンピーター」


「コ、コンピーター言うなぁぁぁぁ」


二人の女性が喧嘩している。

懐かしい夢。今はどちらもいない。


「それで、彼にしばらく同行して貰いたいのですが」申し訳なさそうに言った。


「あと、ここの破壊を・・・」よくある話だ。よくある話だが。


仲良くなると、つらいこともある。「言われてて・・・」


「山城さん。大丈夫ですよ、そこのアレが埋めてくれるので」


潜伏は得意と言いたげに。


でも、主人任せて。まぁいいか。


「直せたら、すぐに出ていきますから」気のせいだろうか、少し、声が暗い気がした。


「んあ?」出血も止まり、少し寝ていたようだ。


「どうしましょう、背負っていきましょうか」怪我の治療をしてあげたいとは思う。


墜落で、医務室もつぶれたみたいだから。純粋に。

でも連れて行けば、きっと面白くないことが彼におこる。

提督なら大丈夫かな?


だってアレ、なんだかんだバカだし。


「では、翻訳機持たせましたので、旧型でちょっと重いですけど」


キャナルは言うと再び眠りについた。最初よりも声のノイズが酷くなっている。



「はぁ、不幸だわ」彼がテキパキと爆弾を炸裂させて、船体を埋めた。


特殊な合金のようで、埋めさえすれば誰にも発見されないらしい。

船体のかけらもいただけたし。後は彼を背負って帰るだけか・・・


なんで、マント外さないし。しぶき拾って背中濡れる。

宇宙人嫌い。

詮索するな駆逐艦うざい。

なんか、背中重い。腰に箱があたって痛い。

疲れた、不幸。


あら、潜水艦。


ともあれ、私達は無事に鎮守府へと帰還した。




・・・



月が昇るころ。


「かんたいが、かえってきました・・・」明らかに疲れ果てて。


「お帰り、ありがとう」提督が出迎えてくれた。


夕暮れごろから待っていたらしい。


「にんむですから・・・」道中、敵の潜水艦の攻撃に遭った。


僚艦は待機中に爆雷を使い切っており、彼を抱えながら、

山城は片手で水偵を飛ばして、執拗な攻撃を加えて撤退させた。


ちょっと、キャナルさんと長話をしていたのも、襲撃の遠因になりえたと言わざるを得なくもないかもしれないけど、きっと不幸なのがいけないに違いないと、考えることをやめた。


気が付けば、なんか血が垂れていた、一緒ね。


「ふふっ」なんだか宇宙人さんが可笑しくなった


「この人も不幸なのかしら?」


――キャナルさんまた会えるかな?


「あ、おみやげです・・・」思い出したかのように


背中の彼と、船のかけらを手渡す。

入渠ドックへとトボトボと歩いて行った。

背中を丸め歩き出す姿に、月の光があたり、一層悲壮感を増している。

不幸を忘れるほどに。


「え、この女性どうしたの?」マントに包まれた女性?を手で抱える。


「え、重いよこの人」細身なのに、100キロ位はあるのでは。


腕を震わせて。濡れたマントがくっついた。冷たい!

いや、腰あたりにあるボックスが何か刺さっていたい。

いやいや、誰か助けて。

いやいやいや。


「君たちには失望したよ、けが人一人、満足に扱えないのかい?」


小さな体でそっと、彼を抱き上げた。


「それと、ケインさんは男性だよ、外国人?みたいだけどね」


帰還途中に、山城に尋ねたら、外人の漂流者だと伝えられたようだ。

まさか、宇宙人か。

たしかに、ガンマンみたいな格好にマントとは、ハイセンスな格好をしているな。

何にせよ、山城はよく信頼に答えてくれている。


「僕も水偵載せようかな?」仲間外れの仕返しに、ちょっといじわる。


隕石話に遭難者なんて出来すぎてる。

何だろう。新兵器の実験かな?


「医務室でいいのかな?」部外者であるため、一応の確認を取る。


「すまない。彼を医務室へたのむ」罰の悪そうに提督は言った。


不思議だよね、普段なら救助者がいれば、

救助した時点で提督に報告しているよね?


「こういうときは、ありがとうって言うんだよ」


見上げて、瞳をのぞき込んでくる。


「ああ、すまない」


――瞳の奥までのぞき込まれている気がする。


「ほら、また」ちょっと、寂しそうに医務室へと向かって行った。


僕も、お手伝いができたらいいのに。




・・・




「こちらが結果報告です」キラリ、ワザとやっているのだろうか。


「早いね」素直に驚いた。何故か睨みつけられた。月光か。


「ラリアット戦艦から、入渠中に聞き出してきましたので」眼鏡二世が怪しく光る。


「お手柔らかにな」冷や汗をかきながら。言った。


その眼鏡買ったの俺なのに。

前の壊れた眼鏡は大切に保管しているみたいだ。

一応修理するかと聞いたが、これはこれでいいと言われた。



――つまり彼は、遭難者というわけだ。宇宙人も国際法上では、法律がないため無国籍の外人扱いになるはずだが。


いや、もとから大本営は知っているのか?


「提督さん」妖精さんが入ってきた。「彼は艦娘なの?」


ツインテールの妖精さんは首をかしげた。


「いや、聞いた限りでは人間だと」いや、実際どうなのだろうか。


「彼、艤装を積んでいるよ?」肩に座り込む。


「まさか」やけに重いものをつけいていると思ったが。


「箱と筒、コードでつながってるね」検査の時に見たのだろう。


「何だろうね?興味あるよ」足をパタパタさせている。


「宜しいでしょうか」やばい、光で気づいた。


まだ怒ってる。怖いからカーテン閉めとこう。


「妖精さんも聞いてほしい」肩で固まっている。


「少し歩こうか」執務室をでた。



「彼は」一泊置いた。「やはり宇宙人です」海沿いを歩きながら。


街灯も少ない夜道で、岩場に打ち付ける波の音が、今日は不気味に感じる。


「報告の限りでは、彼は船体にダメージを追って墜落した所を、山城に発見されたと」


大淀が、一枚の写真を差し出してきた。

街灯の下に立ち確認する。

水偵が撮影した白黒写真には、確かに、木々の間に小さなクレーターがあり、何か白いものが埋まっているようだった。


「回収したサンプルにも有害反応はないから安心だよ」肩から声がした。


「ただ、船の内部では、なにか艤装と同じ物を感じたと証言しています」


「コンピュータと対話できるとの事ですが、不調で現在は活動を休止している様です」


「なるほど」やはりそうだったか。


足の遅い水偵だからこそ、撃たれなかったのかもしれない。

相手がもし宇宙船だった場合。

相応のトンデモ兵器を保有している可能性があるから。


――敵意があった場合。


「船に招き入れてもらえたのか、やはり、あいつは運がいいな」


最悪轟沈も覚悟はしていた。


だからこそ――


「大丈夫、艦娘はあなたが想うより強いよ」察したように妖精さんが言う。


提督は遠くを見る。顔を上げ遠くを見る。


「そうです提督、私たちは、いつでもあなたのそばに」


人気のない、街灯の下にシルエットが二つ。潮風。

打ち付ける波の音。退廃的な雰囲気。

ーー何も起きないはずがなく(某記者調べ)


「二人はまだこちらに気付いていないよ」ふ頭の陰からカメラを構える。


キャップを外す。レンズに一瞬、街灯の光が反射した。


「います・・・よ!!」


キスか、ビンタか。


明日の新聞を楽しみにして、って。

こっちに光が。眼鏡うわ。


――大本営により検閲――


「何事もなければ、記事にもさせてやれるんだがな」


フィルムを引っ張ってから、カメラを返してやる。

フィルム代より、ちょっと多めの甘未引換券を一緒に渡して。


「彼との話はどうするの、出来れば立ち会いたいよ」


妖精さんが珍しく、興奮している。


「妖精さんには、隠し事はできないですし、宜しいのでは」


思い出した。


「不幸ラリアットはいいとして、ワイルドゴリラも呼びますか?」


「長門か・・・普通に名前呼んだほうが早くないか?」


確かに、頼りにはなるが。


「あいつ、精密機械触らすと何故か壊れるんだよな」


謎の湯気のせいかな?


「最近は蒸気機関車とか消防車とかいうと照れますよ、彼女」


筋肉度120%、あふれる力コブか。山城とプロレスでもやらすか?


「案外彼も、重し付けてるし気が合うかもな・・・」


「何にせよ彼が起きるまでは待つか」


見上げると、月に見られているような気がして身震いした。

まさか、な・・・




・・・




「ばーちゃん・・・」もぞもぞと、無機質なベッドを動く。



オルゴールが、聞こえてくる。遠く遠い日。思い出す。



ーー少年の日。



「ばーちゃん!街が、街が燃えてるよ!」


隣にローブを羽織った祖母が立つ。

離れた高台から二人、火の手が上がる街を見下ろした。

祖母は優しくケインを抱き寄せた。



ーー夢の中で。



ソードブレイカーの第二管制室。そこで祖母は逝った。


ロストシップ、前世界の負の遺産。

410M級、重砲撃艦ゴルン・ノヴァ

全体は黒く、サイブラスターの直撃にも耐える装甲。


ソードブレイカーは祖母をマスターとし、ゴルンノヴァと対峙した。

そのマスター、闇を撒くものと。


「全銀河に悪夢を


  宇宙には静寂こそ相応しい」


虚空から声がする。闇を撒く者の。

宇宙空間に輝く交差。白と黒。

近づき、離れ、また近づく。


ソードブレイカーはその火力の前に、一方的に攻撃を受けた。

ゴルンノヴァから来る光の矢が、次々とソードブレイカーを襲う。


「アリシア、もう十分だ。ここは退こう!」小型海賊船が、一隻随伴する。


「いいえ、ジル。あなたは逃げて。あの子を、ケインをお願い」


そう言うと祖母は、エンジンを最大稼働させ、ゴルンノヴァへと肉薄した。



「いいわ、やって頂戴」幾度目かの直撃をうけ、船も祖母も満身創痍だった。


肺をやられたか、口から血も出ている。


――サイシステム・コード・ファイナルが発令されました。


「マスター、FCS-キャナルは、非、論理的揺らぎにより」


緑のロングヘアーでメイド服を着た女性が、操縦席の傍に佇む。


――物理障壁破壊ステージに入ります。


「ホロ映像に投影します」凛と佇みながら泣いていた。


「いいのよキャナル」祖母は言った、静かに優しく。


操縦席に深く腰掛け、静かに。慈悲を込めて。「これでいいの」


「マスター、FCS-キャナルは、悲しいと、感じています」涙が止まらない。


――警告。カウント開始後の、中止はできません。


キャナルとは別の、独立した合成音声が淡々とその時を告げる。

ゆっくりと目を閉じ、その時を待った。


――10 ――9 ――8 ――7 ――6


「あの子を、ケインをお願い――」


――0


その日、祖母は光になった。

1ピコ秒で超新星に匹敵するエネルギーへと変換された。

ゴルンノヴァは異変に気付いた。


――まさか、ファイナル?


「ヴォルフィード貴様!マスターをぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


ソードブレイカーから周囲へ。


輝きの一撃が爆発的に広がり、ゴルンノヴァを包んだ。



「ばーちゃんは、一緒じゃなかったのかよ!」ケインは帰ってきたジルを叩いた。


身長差があり、抱きかかえようと屈む、ジルの太ももを。


「こんな時にまで、負けやがって!負けやがって!!」


――何度も何度も。


ちょっとは名の知れた、サイブレード使いだった。

ジルは海賊時代に祖母に挑み負けた。何度も挑むがついに勝てなかった。

気が付けば腐れ縁、負けて以来、ずっと傍にいた。

ケインにはいつも、負けおじちゃんとからかわれていた。


「負けやがって・・・!!」声にならない声で。叩き続ける。


ソードブレイカーが帰還するまで、格納庫に乾いた声が木霊した。



オルゴール。聞こえる。その日。



ソードブレーカーが帰ってきた!


「ばーちゃん?」船から降りてきたタラップを駆け上り、船内へと入った。


「ばーちゃん!」オルゴールがなっている。祖母が好きだった。


あの、優しい音色。フルートを吹く人形が動く。あのオルゴールが。


「え?」操縦席につくと後ろを向く、メイド服の女性がいる。


あれ?小さくなった?気のせいかな?

少女が、後ろを向いて立っていた。


「君、だれ?」少女はこちらを向く。ゆっくりと。


「私は。エフシーエス。キャナル。ヴォルフィード」ゆっくりと。


声にも少し幼さが残る。


「マスター。ご命令を。どうぞ」キャナルなりの気配りだろう。


新しいメモリーに、少年に容姿を合わせて。


アリシアの遺志を継いで。


「それじゃあ、この船俺にくれるっていうのかよ!」嬉しかった。


「はい。ソードブレイカーは、強い男の乗る船です」


――強い、男の。


いつかばーちゃんに譲ってほしかった。でも――




生命維持機構に致命的なエラーが発生しました。直ちに製造元に――

体の半分以上が機械に変わった老いた、ジル。

人が少なく、草原が広がるだけの惑星。

祖母の墓守として、近くに暮らしていた。

チカチカと体に赤色ランプが光った。

拳を振り下ろし。叩いて止めた。


ゆっくり目を閉じる。


「キャナルか」彼の枕元に、転送した立体映像で、祖母の時と同じ姿の女性。


「ジル。私を許してくれますか?」二人とも前を、遠くを見つめながら。


「いいんだよ、キャナル。これでいいんだ」静かに、優しくつぶやく。


眠りについた。

――深い眠りに。


「お疲れ様、ジル」しずかに呟いた。



オルゴールが止まった。でも、ばぁちゃん。


記憶? 誰の?


キャナルの? コード・ファイナルの時に?



「ばーちゃん?」長いローブを羽織った女性。


彼がマントを付けているのは、祖母をまねているから。


「ばーちゃん」「ばーちゃん」微笑むと遠くへ。離れていく。




・・・




「ばーちゃん」もぞもぞと、動く。なるほど女の子みたいデスね。


「ばーちゃんじゃないデスヨ」頬を膨らました。


様子をのぞき込んでいたら、ばーちゃんにされた。


「でも許すネ」頭を抱きかかえた。「つらかったの?」


――泣いているから。


「んが?」息苦しくなって目が覚めた。胸に挟まれている。


「キャナルか?」もがもがと動く。こんな経験が何度かある。


「私は金剛です」顔をのぞき込んでくる。そういえばここに来ていたのか。


「朝食の用意をしましたので。食べられますか?」


彼女はベッドのサイドテーブルに置いた。


「ベーコンエッグとビーンズです」金剛はにこやかに言った。


「提督を呼んで来ますので、こちらで待っていてくださいね」パタパタと部屋を後にした。


「んん?」なんだかよくわからないが、ハッとなり、腰に手をやる。


「なんだ不用心だな」サイブレードもコンバーターもある。


ついでに、鏡台には増幅用バンダナも。

ノックの音がする。


「ようこそ、チューク諸島鎮守府へ、ケインさん」彼は軍人だろう。


そのような服を着ている。ただ何を言っているかわからない。

そういえば、翻訳機は山城が持っているのかな。


「ヤマシロ?」さっきの金剛が戻るまで待つか?


「こちらですか?」提督は、翻訳機カッコカリを手渡した。


爆発の危険がないか、念のため工廠で調べてもらっていた。

どう見ても、古い電卓にしか見えない物だ。

受け取ると、照れたように、彼は機械を操作し始めた。


「あーあー。通じるかな?」ポチポチと電卓をいじっている。


なるほど、翻訳できている。

宇宙船があることは信じた。

彼が、エージェントではない保証もなかったから。


「ようこそ地球へ。ケインさん」確信を持った。


普通なら、あんなものが翻訳機であるはずもない。

妖精さんも電卓としてつかっていたし。


「地球?」まだ翻訳機の調子が悪いのか。


「この星を我々はそう呼んでいます!」笑顔の内面すごく緊張している。


俺こそが人類初の地球外生命体と接触した。

そうに違いない!

しかも、人型、会話もできる!

YATTA! YATTA!

緊張のあまり、しゃべることがグルグルしている。


「ここは地球です!」


「ガブッ!」駆逐艦に首をかみつかれた。


「早く話せ!クソ提督!」がぶがぶしている。


「こちらが地球のピラニアです、よく噛みつきます!」引きつりながら言った。


「クソが!」肩ををがぶがぶ。


「あっ!曙!なにしてるんですか!」眼鏡の女性がすごい顔で走ってくる。


目が光ってる。


「あっ!」クソ眼鏡に見つかった!やばい。


次の瞬間。パンチが飛んできた。

曙も飛んだ。

1Mくらい。


そのまま、壁に叩きつけられた。「ケプッ」


「あーーーーーー!」数秒遅れて肩に激痛が走る。


パンチの瞬間に肩をがぶがぶしていたから、歯が食い込んでいたらしい。


「なんですか肩くらい。騒々しい。しっしっ、しっしっ」


眼鏡の奴がシャドーボクシングをしてる。獲物が足りないようだ。


「なんだか、すごい場所だな」目が覚めたばかりで、どうにも疲れた。


「改めて、チューク諸島鎮守府へようこそケインさん」肩に包帯を巻きながら。


「昔はトラック諸島と呼ばれていましたがね」金剛にバケツを持ってこさせた。


さっきから、甲斐甲斐しく走り回っている。


「それよりあの子、痙攣してるけど大丈夫かよ」壁でぴくぴくしてる。


「ピラニアですからね、知ってますか?噛みつく魚です。」


「これを持って、ザバー」ドバーッと水をぶっかける。


「なぁ、あんた。死体蹴りって知ってるか・・・」さすがに哀れに思った。


「ほんっと、じょーだんじゃないわ!」ずぶ濡れになっている。


キズが全快している。

やはり、アンドロイドなのか?

あと、下着が透けている。白か。


「プンスコ!」口で言いながら。ピラニアは医務室を後にした。


「僭越ながら、私から」艦娘の基本的なシステムを説明した。


一通り説明を聞いた後「謎の敵ってのは、この前のような潜水艦か?」


山城が、砲撃で海面を洗いながら、航空機を海鳥のように飛ばしていたのを思い出した。


「それは一部ですね。水上タイプ。陸上タイプもいます」朝日でキラリ。



――全銀河に悪夢を。



「こちらが兵装です」7.7mm機銃を展開した。


「どうしたんですか?撃ちますよ?」彼に、銃口をむけた。


提督はだまっている。


「あんたからは、撃つ気が感じられないな」ベットから起き上がると。



――銀河には静寂こそ相応しい



「別に隠すもんでも」鏡台からバンダナを取り頭に付けた。コンバーターからのコードを手早くつなぐ。


「ねーけどな!」銀色の筒から1mほど青白い光が出現した。


「それがあなたの艤装ですか」見たこともない兵器に口がほころぶ。


「サイブレードってんだ」両手で構えた。


「バンダナでエネルギーを増幅して、コンバーターを通し、サイブレードへ」


片手で持ち、指でなぞりながら説明する。

所詮UGの、白兵部隊のおさがり品レベルのものだし。

わざわざ隠す話でもない。


「理論上はサイブレードだけでも刃をだせるが、常人には土台無理な代物だ」


ケインは不敵に笑った。


「まぁケインさん、続きは演習場ででもどうでしょう」提督が割って入った。


余裕ぶっているが、医務室を壊せば、懐と、始末書が危ない。


「そちらでしたら、存分に使っていただいて大丈夫ですから」


乾いた笑いを浮かべ、提案してくる彼を、無碍には出来ないと了承した。

どうやら、兵器の性能を見たかったわけではなく、純粋に、あの眼鏡が闘いたかっただけのようだ。髪をポリポリと掻く。

だとすれば、先ほどのバケツの件も、デモンストレーションでなく日常なのか。

この星の軍はいったい・・・


金剛がしょぼんとしていることに気付いた。


「あっと、この食事はいただいでおくか」


自称、宇宙一の料理人ほどの味ではないが、美味しかった。


チョット サメチャッタケド、ノコシタラ、ノーナンダカラネ




施設を出て、演習場に向かう際に、提督に呼び止められる。


「君に誤っておきたいことがある」口を閉じろとジェスチャー。


真剣な顔ではあるが敵意はない、か。

体をパンパンと叩き始めた。上から下まで。


「む。」ポケットから出すと、君の物かとジェスチャーで聞く。


首を振って答えた。


「あら、提督」え、この人たち、もうそんな関係なの?


山城は固まった。

提督がケインさんに密着しながら迫っている。


なにこのおっさん。男の娘好きなの?


嫌がってるじゃない。

何か持ってこっち来るわね。


「なにかしら・・・」


ジト目でいると、何も言わずポケットに謎の物体を突っ込まれた。


「ちょ、提督?」そのまま演習場の方へせかされる。


何だったの・・・今日も不幸だわ。


「一つとは限らないが」提督は一息ついた。


「あんたは損な性格なようだな」だいたい事情を察した。


「君のことを我々のミスで漏らしてしまってね」


「表向きは、新兵器実験の最中に遭難した者、としたかったのだが」


申し訳なさそうに言葉を止める。


「君が宇宙から来たことが露見してしまった」


「グラウンドの落下物と、今回君の持つ装備品」


「どちらも既存の技術では精製不可能であるものだと、某、内部記者により断定されてしまったんだ」


「それで?」先程のも盗聴器か何かか。


確かにこの提督は、自分をどちらかといえば匿ってくれているようではあった。


「つまり裏の作戦として」あたりを見回しながら。


「某国から来た、人でも使える新兵器を、運用実験している人物という事にしてほしい」


「そうすれば、宇宙人カッコカリで済むというわけだ」申し訳なさそうに。


「なるほど。それで余計な面倒事をさけられるってわけだ」腕を組みながら考える。


「お互いにな」ケインは言った。


「ああ、そうしてくれれば我々は、君が必要な物資の全てを供与出来る」


提督は彼が必要だと思う物をすべて揃え、提示した。


「その代わり君の持つ技術などを、少しでもいいから提供してもらえればと」


戦争の早期終結を願う気持ちと、艦娘を思う気持ちに偽りはない。


「あの子たちを守るために、どうだろうか?」


だからきっと伝わるはずだ。頭をさげた。


「物資の調達は必要不可避だし、ありがたい話だ」


提督はにこやかに顔を上げた。

営業スマイルのように。


「ばーちゃんが言ってたぜ、うまい話には裏があるってな」


ケインは言った。サイブレードの調整をしながら。


「サイブレード。艤装。余りに類似したシステム」サイブレードを伸ばした。


「ソードブレイカー」青白い光が煌めく。


「山城は、キャナルに艤装の中にいるようだと話していたそうだ」


「ソードブレイカーの修復が進めば、反応も大きくなるだろう」


大淀に提示された、副案。気は進まなかったが見抜かれたか。


「所属不明の大型の艤装反応、敵をおびき寄せるにはいい餌になる」


ケインは続けた。

資材の枯渇くらいで代理戦争をしてもらえるなら。

安いものだと。


「あわよくば、そのまま敵をせん滅してくれるって話さ」


少々大げさにケインは言った。


「ふう」提督は大きくため息を吐いた。


全て彼の言ったとおりだ。「なんでわかった?」


「必要資材全部ってのは出しすぎだ」光を消したサイブレードを


「これが半分なら引っかかってた」掌でくるくる回転させると


サクッと腰にしまった。


「技術供与などハナから期待してはいないだろう?」


――使える保証もないしな。


「大方、最低限以上に、船を回復させたくなるための誘惑さ」


――ゆっくりと、ね。


「なるほど、奮発したのがあだになったか」提督は心からの微笑みを返した。


餌だけ食べられたくはないと、欲をかいたようだ。


「他を当たってくれと、言いたいところだが。実際、資材は必要になる」


「だから、その契約で資材は半分でいい」ケインもにこやかに。


好意があるのは知っているから。


「残りの半分は他の契約を頼むよ」掌をひらひらさせながら


宇宙人カッコカリは、コロシアムへと足を進めた。


手を振りながら「終わったら工廠のほうへいらしてください」


「妖精さんが待っています!」



――トラコンってのは、契約守ってなんぼのもんだ。

中には、人生が終わる仕事もたくさんある。

だから!契約の際には、細心の注意を払うんだ!机を叩く。


「それは、わかってるけどぉ~」黄色いショートヘアの女性


ソファーで、ピンクのマクラを抱えている。


「分かってない!人のシリアスな信用。ぶちこわしにしやがって!」


ミレニアム・フェリア・ノクターンの名前で契約書にサインが入っている。


「ケ、ケイン。もうそれくらいに・・・」メイド服の少女が止めに入る。


「キャ~ナ~ル~」ゆっくりと首を少女の方へ向ける。


「あう、あう~」ちっちゃく縮こまる。


「だいたいお前も、お前だ。なんだって、こんな奴、正式なクルーにしたんだ」


少女に詰め寄る。


「それはその~通関とか、面倒だったんで、つい・・・」


縮こまって、半笑いで両指ををつんつん合わせながら。



あの提督。レイルの奴に似てるな、うさん臭さが。

何だかんだ、あいつも良いやつだけどな。

ちょっと懐かしい思いをした。




・・・




「ケインさん3倍付けですよ~」


「クソ眼鏡は1.3倍か」


わいわいと、わいわいと。


岩礁地帯に作られた演習場は、400M走が出来る程度には大きい施設である。

艦娘の身体能力を前提とするならば、決して大きいとは言えないのだが。

演習場に艦娘が集まってきていた。


弱小鎮守府であるため、職員含めて40名ほどが観戦している。

某記者と某駆逐艦の活躍により、朝までには、

ケインさん宇宙人説が蔓延した。

というのは建前で(実は大本営の工作員?)

実際は、同盟国の新兵器実験の最中に、遭難した者を保護している。

某国のスパイかも。

そういえば明石がいつまでも来ないのも、おかしいぞ。

海外艦?ケインさんが初ですが何か?

大型建造なんて、家にはなかった。いいね?


偽の作戦と噂を複数作る事によって、

ゴシップ好きな彼女たちは

最も現実的な嘘に引っかかってくれてた。


「まぁ、本命は某国のスパイだろ」倍率1.1倍


いつの時代も欺瞞工作は大事である。



演習場での対戦方法は主に3つ。


ブロウバトル、リアルバトル、デスマッチ。


ブロウバトル、艤装なしの戦い。


リアルバトル、艤装が破壊されるか。敗北を宣言されるまで戦える。


デスマッチ、どちらかが、バケツを投げつけられるまで戦える。


通称バトリング。


何故か血の気の多い艦娘が集まるこの鎮守府で

必然的に発生した競技。

提督も10年ほど前から正式に許可をだした。

一種のガス抜き装置として。

今では娯楽の乏しい当鎮守府定番の遊戯となっている。

また、マッチメイカー主導での賭博行為も認められている。



サイレンが鳴る。電光掲示板に対戦形式が表示される。


「大淀」名前が表示されえる。


「ケイン・ブルーリバー」ケインの名前が。





「リアルバトル」対戦方法が決まる。





「ヒュー、宇宙人相手(笑い)とはいえリアルバトルだってよ」歓声が上がる。


「ああ、これは大勝負になるな」


場内が騒めいた。

轟音と共に鋼鉄の壁が迷路のようにせりあがってくる。


「ケインさん、高練度の、あの大淀相手にリアルバトルはまずい」


提督が闘技場に走りこんでくる。

しかし時すでに遅かった。

二人は中央の空間で対峙している。


「長門か!来ないと思ったら、こんな事を」


手筈ではブロウバトルにて近接打撃戦。

歓迎会を込めての、お気楽な遊戯になるはずだったのだが。

大方、ケインさんの能力を見たいからだろうが、危険すぎる。


――それとも他の理由か。



「ほう」ケインはサイブレードを抜いた。


熱い死線が突き刺さる。


「あんた名前は」先ほどとは別人のようだ、彼女のキルゾーンに入ってるらしい。


「大淀」キラリと眼鏡が光る。


7.7mm×4丁の構え。軽量な分、当てやすい。


「安心してください、あたれば死ぬかもしれないペイント弾ですから」


ニヤリと嗤う。

ペイント弾ではあるが、使い方によっては殺傷能力もある。さらに、意図して火薬量を調整していない。初速は実弾と同じだ。


「開始前に一つ聞きたい」ケインは不敵に笑う。


「いいでしょう、何か?」こちらも余裕の表情。


「あんた、どこを切られると死ぬ?」当然の疑問だ。


彼女たちは限りなく不死に近い。


「首より上と、心臓ですわ、ナイト様」この人は斬る。


手も足も。首も。だから教える。

潮風にあおられ、マントがざわめく。



――全銀河に悪夢を。



「礼を言う代わりに、俺からも一つ教えておこう」


サイブレードを彼女へと、まっすぐに向けた。

彼女は少し目を細める。そして、口が綻んだ。


「あら」髪の少し右側を、光が通過したような気がした。


後ろの鉄板に、焦げ目がついた事を音で感じた。


「避けられないわね」笑っていた。


見えた時にはもう当たっている。

回避方法は、柄の方向を見ての予測のみ。「でも」


「弾幕には弱いでしょう?」近距離、銃撃の有効射程内においては。


衝撃も伴う分、実弾のほうが有利な場合が多い。

コンバーターとセットで30キロ以上になるのもハンデになる。


「そうだな」ケインはマントを翻すと、微笑んだ。


スタミナの限界がある。戦いは急戦になるだろう。



――開始のサイレンが鳴った



「さあ死合ましょう?」怪しく眼鏡が光る。


周囲の鉄板を蹴りながらの水平ジャンプ。

ケインは中央からまだ動かない。


「撃てばいいのに?」先ほど見た通り。レーザー射出を警戒しての高速移動。


壁を蹴る音と、風を切る音が。

演習場を支配している。


――残弾が少ないのかしら?遮蔽物の陰を伝い後ろを取る。


「なら、こちらから行くわ」7.7mmがケインを捕らえる。


1丁70発程度しか詰まれていないが。

人間相手なら数発のヒットでも十分。


「ごめんなさいね」1門の銃を構え跳躍しながら狙う。


ケインは目を瞑っている。

サイブレードを構えたまま。


「そこだ!」サイブレードは彼女を捕らえた。


足に狙いをつける。


「なんだ起きてたの?」咄嗟に体をそらした。


嗤いながら。

彼も彼女も、まだ一発も弾を消費していない。

焦っているのは、ケインか、大淀か。


「カス眼鏡だけ動いてるじゃねーか」誰かがヤジる。


「いけーたたかえー」「ころしあえ~」


一度離れて距離を置き、地面に足を付けて、大淀が歩く。

2門の銃を向ける。

開始5分。


「早くも勝負は決まったか?」観客が騒ぎ出した。


「あれとやれんのは、山城と長門くらいじゃないか?」


ここへきてケインは動いた。ゆっくりと横に。


「今更鉄壁に戻っても、遅いですよ」


機先を打ち抜く。銃撃がケインの寸前を舐めた。

いくつかが鉄板をすり抜ける。

火線が観客席をかすめた。


「はわわ。びっくりしたのです」


「これがリアルバトルの醍醐味っぽい!」



「待たせたな。勝負と行こうぜ」ケインは構える。



――なぁ、闇を撒くもの。



サイシステムは想いの力。願うほど強くなる。

人の輝きを増幅するもの。


「この大淀、逃げも隠れもしません!」そう、彼は太陽を背に駆け込んでくるつもり。


「撃たれるか、斬られるか」彼は言った。


沈み込むと、弾けるように駆けた。

4丁の火線がケインを狙う。

距離は目算で40メートル。


――いいえ、撃たれても、斬られてもよ、ナイト様。


スカートが風になびく。

中腰で大股を開き、しっかりと照準を合わせた。

土ぼこりがあがる。



――ロストテクノロジーは甘い蜜。

それは、仮初の力を与える代わりに

全文明を終わらせる。



大淀の瞳が青く光る。

ケインは駆けた。未来を見据えた瞳で。



「終わりだな、これで」眼鏡を拭きながら誰かが言った。


手には大淀のチケット。

見てわかるほど銃撃が当たっている。一方的だ。


「え?」手にはケインのチケット。


彼が艦娘なら、練度30ぐらいの能力だろう。

艦種はやはり駆逐艦か。

何となくだが、親近感でわかる。


「勝ったんだよ。大淀がな」


夜戦に持ち込めれば、必殺のサイブレードで十分勝機はあるだろう。

あるいは、長距離からの銃撃戦でもまだよかった。

だが彼は、走った。


「クソ宇宙人ガンバレ!超ガンバレ!」手にはケインのチケット。


「ケインさんの本気を見るのです!」拳に力を込める。


「うんうん、い~じゃないですか~」立ち上がって感動している。


ケインは駆けた。

残り30M。


サイドステップや体を曲げ

正面にクロスする皮のベルトやコンバーター、

マントの死角部分に、当てさせている。

顏の正面にはブレードを構え、突進。

頬や頭からは、血が垂れている。


止まらない。


20M。


止まらない。


腕の骨は折れているのではないかしら。

コンバーターを狙う?

それともあの配線を?大淀は迷っていた。

これ以上の接近は、自分のリスク以上に彼に致命傷を与えることに。


――私は艦娘だから。


2門で自由射撃を行いながら。

残り2門で精度射撃。

逃げないと言った。

頭を打ち抜かれてもやり遂げる。


――なぜ?


「ケイン。これで決めさせてもらいます!」


左足を後ろへ下げ、狙う。


15M 。


睨みつける。

艦娘として。


撃つ。

艤装に祈りを乗せて!


当たる、必ず!

――守りたいから。


「今!」2門の銃はすでにカラカラと音を鳴らしている。


「だぁぁぁぁぁぁぁ!」彼が飛ぶ瞬間を打ち抜いた!


残る2門はまだ残弾がある。

消えている。

あの光が。

打ち抜いたのはコード。

増幅バンダナ、コンバーター、サイブレード。

彼はこの3点をコードでつなげていた。


でも、飛んでいる。高く。高く。前へ。

両足と両手で前をガードしながら。


「ハナから近接戦狙いだったのか、胸が熱いな!」


執務室から一部始終を見ていた。

腕を組みながら見ている。

なぜかな「大淀が勝てる気がしない」


「あの瞳が、勝利を確信しているからかな?」


「それとも気付いているのかな。システムとやらを通して」


「彼なら終わらせてくれるのかな?」


――なぁケインよ。あいつを救ってくれないか?



この諸島まで、わざわざ演習に来る艦隊は少ない。

興行としてバトリングを行うことが多いため。

通常は、提督が安全度を見極め執務室から操作している。

終了のサイレンはまだ、鳴らない。

長門は見ていた。その先を。



――ねぇ長門さん。これじゃあデスマッチよ?



イマ撃テバ死ぬヨ。


嫌な気持ちが。

全身を駆け巡る。

あの日からの。


見上げる。光の中、動く影が見える。

――ダメ。


「全砲門構え!てーぇーつ!」体が動いた。

――撃たないで、私。


自然と動いてしまった。

黒い塊にヒット。

近接着地音。


「ケイン・ブルーリバー見参!」宣言と共に立ち上がる。


打ち抜いたのはマントだけ、か・・・


5M


・・・体が、敵を探す。


――敵?


「なんだあのジャンプ力!すげぇな!」


「宇宙人ガンバレー!」


光のない筒を握ったまま。踏み込んでくる。

わかる。アレははころシニくるる。


「残念ね」


4丁ともカラカラと音を鳴らすだけだった。

――ヤヤラナケレバヤラレマススホウライチョウウ。


「悪夢を」ちいさく、つぶやいた。


目を見開く。

光が漏れる。

青い哀しみが。

銃を一丁剥ぎ取り、素早く構えた。


「どぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお」叫びながら銃身を突き出す。

――キサマママヒトリデセンソウヲヲヲヲオッパジメルルルツモリカカカカカカカカカ!


――何が彼をここまで強くさせたのだろう。


――ゆっくりと、時間が流れる。


どれほどの事が、彼に起きたのだろう。

なぜあなたは、戦わなければいけないの?

発生した青白い刃は、

突き出された銃身を溶かし、

首を捕らえている。


目まぐるしく記憶を辿る。

私は、誰?

――思い出した。

あの時とは違い、彼の温かさを感じている。

さあ、あたたかい場所へ帰ろう。

そうだ。

ここではない

あの懐かしい。

――未来へ。


「ありがとう」サイシステムはその想いも伝えるのか。




・・・




大淀は一度沈んだ。


鎮守府に最低限の機能が揃わないころ。

特例として、大本営より通常出撃も行うよう辞令を受けた。

嬉しかった。任務艦としてだけでなく。もっと活躍できることが。

いつからか、長門と組んで出撃することが多くなった。



ある作戦の帰路。随伴の駆逐艦が奇襲を受けた。

2隻中破した。


「お前たち、私の後ろにつけ」長門はその耐久性を持って。


敵の攻撃をすべて吸収した。

背後に、2隻の駆逐艦を隠したまま。


「支援艦隊を要請します!」敵の規模はわからなかった。


駆逐艦を狙われ電探をやられた。

いくら目がきくとはいえ、

目視では限界がある。

晴天にも関わらず、風が強く

波が索敵の邪魔をする。


ただ、攻撃は止んでいた。


深追いしない、相手は手練れだ。

提督に増援を要請した。

機関浸水した長門は、曳航されるか

自力で泳いで戻る以外の方法はない。


3人で長門を背負って、離脱するには――


速度が出ないか。

風を切る音。

水柱を上がた。


「ミサイル?」そんなものでは・・・当たらない。


的は小さいうえに波を上手く使う。

ただ、近海に同盟軍がいるらしい。


――いた、3隻の巡洋艦


目を凝らす。

単独作戦か、あるいは、すでに轟沈したのか。

艦娘の姿は見えない。

1隻からは煙が上がっている。


「長門、艤装を投棄して」大淀は言った。


友軍方向に探照灯で発光信号を送る。


ワレ・ソウナン・セリ


数十秒後、チカチカと光が返ってくる。


ワレニ・キュウジョノ・ヨウイ・アリ


「陽炎・不知火は直ちに当海域を離脱。支援艦隊に合流せよ」


大淀は吠えた通信機に向かって。


「ダメージを受けた巡洋艦あり、これより長門の救助と共に、直衛に入ります!」


その気迫に押されて、二人は離脱した、全速で。

一秒でも早く戻るために。


「大淀、武運長久を・・・」苦々しい声が聞こえる。


それ以降、通信は切れた。

雲一つない青空。

今は、憎らしい。

せめてスコールでも来てくれれば。

長門を拾い上げると、艤装の限界を超えて走った。


――艦首をこちらに向けている。


助かりたかった。


――でも、助けたかったのに。


巡洋艦に直撃弾。

爆発。

傾斜、炎上している。

二度目の爆発。

守るべき者が、海へと散らばっていく。


わらわらと。


わらわらと。


蜘蛛の子を散らすように。

黒い煙いが登っている。

コースを固定したからか。私たちのために。

その光景が、酷くゆっくりと見えた。


「どぉこだぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっぁぁぁぁぁ!」


数発のミサイルが飛ぶ。

低高度で。

海面ぎりぎりに。

仇敵の元へと。


ミサイルの推進方向から、雷跡が走った。

特大の水柱がミサイルを落とす。

その先に。


――みつけた


敵艦見ゆ!


距離3マイル。

敵の雷巡4隻。


「大淀もういい。私を離せ」長門は言った。


――殺せ


声が聞こえる。


――見つかったのは私。


――見つかってしまったのは、私。


「大丈夫ですよ」口元が緩んでいる。


ただのトリガーハッピーならいいが。

長門は、押し黙った。

12.7mmを向け、敵に乱射。

弾幕を張りつつ、突貫。


長門を背に抱え、蛇行し波に隠れながら進む。

敵が手練れのおかげか、魚雷は撃って来ない。

あるいは弾薬欠乏だろうか。


敵との中間距離に上がる水柱。

2隻の巡洋艦から主砲やミサイルの牽制射もあり

辛くも到達出来た。


「歯がゆいな」


長門はチェーンをよじ登り、すぐに甲板にのぼった。

大淀は少ない弾薬で、4隻の雷巡を相手取っている。


「貴様!ガトリングをかせ!」甲板で機銃を撃つものに言った。


それでは、目くらましにもならない。

20mmガトリングを戦時徴用して

無理やり引っ張ってきた。


一刻を争う。


目的は同じだ、だれにも躊躇いはない。

艦橋の者も長門の意図に合わせるように、操船を指示している。

戦時には、攻撃の要である艦娘を支援することは、すでに暗黙の了解になっている。

「一隻」の艦娘の喪失は、一つの主要都市の損失であると言われるほどだ。

艦体が大きく振れた。


「ビックセブンの力、侮るなよ」艦首に仁王立ちでガトリングを構える。


両脇では海兵が、制圧射撃をして接近までの時間を稼ぐ。

だがやはり、たいしてダメージを与えられない。

巡洋艦は全速で敵に突入して行く。


艦船によるドッグファイトだ。


4隻から速射砲で狙われる。

大淀は嗤っていた。

「砲戦、用意」


――鬼神


滑るように踊るように。

クルクルと回るように。走る。

クルクルと。海面に片足を突き刺し。

撃ってはクルクル。

またクルクル。

彼女は踊る、

死のステージを。


水面に水柱が立ち続ける。

全ての攻撃をいなしている。


――コロセ スベテヲ


4隻のダンスを見極める。

水柱はついに彼女のバランスを崩した。

体が傾く。


1隻が近づいて行く。

長門は見ていた。

今撃てば大淀も沈めてしまう。

まだ、遠い。


雷巡は速射砲を構えた。

――ギソウトイッタイカシロ


滑った。崩すバランスを利用して、真横に。

雷巡は驚き、高速のまま通過した。

背中に12.7mmを浴びせた。


左右にスライドしながら

至近距離に接近。


波が上がった体温を冷ます。心地よい。

12.7mm機銃で首を連射。

ぶるぶると震えた後、皮膚を抜け銃弾が突き刺さった。


さらに撃ち続ける。

雷巡は、頭を失い沈んでいった。



「待ちに待った艦隊決戦だ!」大きく足を開き、腰で砲身を支える。


巡洋艦がついに小さな目標に迫った。

合わせて甲板員は退避する。

恐ろしい火線が、雷巡を襲った。

目を打ち抜き、のどを突き抜ける。


――穴の開いた目を、こちらへ向けながら、一隻が轟沈した。


残り2隻が見上げる、甲板の上に艦娘。

散開した。

分が悪いと判断し退避行動を始める。


いくらかのダメージを与えるが、致命傷ではない。


――だが


たかが巡洋艦と侮っていたか、予想外の新手に混乱している。


「弾切れか」給弾は間に合わない、か。

これが、人類が苦戦している最大の理由。

大型の兵器でなければダメージを通し辛いが、

機動性が低くなるうえに、

弾数も悪い。1隻相手なら勝ち切れるが。

数隻相手では給弾中に敗北は免れない。


低高度の航空攻撃など、敵には演習にもならないほど、すぐに叩き落す。

最近では、敵も艦隊行動が多くなり、艦娘の協力が不可避になっている。

制海権さえとれれば、面攻撃なら、艦砲に勝るものはないのだが。


2隻が炎上中の巡洋艦へ進む。

帰り際の駄賃だろう。

大淀は歯噛みした。


「まもるぅぅぅぅぅぅぅぅ!」走った、渾身の力を込めて。


鬼になった。


――何のために?


――何のために生まれたの?


――何のために生きるの?


長門は感じた。

何か沸き立つものを。

黒い怨念を。

彼女に。

「シャドウ・・・フレア・・・」小さく呟いた。



「オカエリ」



12.7mmの銃身を喉へ突き刺した。

沈む前に、嗤っていた。

残り1隻。


瞬間、世界が止まった。

やられた。


後方から迫っていたのか。

あいつも、嗤っている。

手には魚雷。

体にも魚雷を付けている。


体をつかまれた。この距離。

懐かしい。


――懐かしい?



「おおおよどおおおおおおおお」長門が叫ぶ。


魚雷を噛みちぎりゼロ距離起爆。

雷巡は爆発した。

艤装が消し飛ぶ。


「かはっ!」


体がはじけ飛び、海に打ち付けられた。

裸で。

深い。

海へと。

沈む。


シズメ。


沈んでいく。


シズメ。シズメ。


――また、いつか、どこかで、きっと。


――悪夢を。



デュ・・グラ・・デュ・・グドゥ・・・・・・・・



止まった。

お願い。

寝かせて。


もう、知ってしまったから。

ねぇ。


――長門。



「気が付いたようだな」長門がのぞき込んでいる。


あの時、重し代わりにガトリングを背負って、海に飛び込んだのだ。

そして沈む私を、つかみ戻した。


「この長門を沈めたければ、核爆弾でも落としてもらわなければな」ニヤリと。


「長門。艦娘は、生きてちゃいけないのでしょうか?」


「大淀、眼鏡はいいのか?」長門は見つめた。瞳の奥を。


――瞳が青く光っている。


「聞こえたんですよ」白い部屋。医務室か。


全身痛む、包帯を巻かれ、十字のマーク入りの病衣を着ている。


「オカエリって」長門を睨みつける。その哀しく煌く瞳で。


「とりあえず、眼鏡と、コンタクトだな」ふむ、と軍医に掛け合う。


「炎上した2隻の巡洋艦な、沈めたよ」長門はぶっきらぼうに言った。


増槽と艤装を渡された。

駆逐艦のものらしい。

兵装は使えないが浮くことはできる。


「重軽症者も出たが、皆、生きている」


長門は独白した。確認するように。


「大丈夫です。自分で装着できますから」


片腕がなかった。でも、訓練は受けている。

うちの鎮守府だけだろうか、初出撃の前には、一度、訓練で腕を落とされる。

提督立会いのもと。

逃げ出すもの、戦闘が続行できないと判断される者は――

非戦闘員に回される。


轟沈者を出さないための提督なりの配慮だった。

艦娘は万能である。戦って、治して。また戦える。

それでも、痛み、恐怖で立ち止まってしまえば。

次には撃たれて、沈む。

いつからか、提督は洗礼を与えるようになった。

――傷ついても、また、帰って来れるように。


この医務室にも、腕を落とした人、もっと酷い怪我を負った人がいる。

でも、彼らは治せない。

万能ではないから。

きっと、恨まれているだろう。

恐れられているだろう。

体が震えた。


「怖く、ないんですか?」青い瞳で見つめる。近づく軍医を。


年老いた軍医はにこやかに、

度を抜いた丸いダテ眼鏡と、薄いグレーのカラーコンタクトを持ってきてくれた。

軍医は微笑んだままだ。


コンタクトを入れて、眼鏡をかけてくれた。

軍医は言った。怯える子供をあやすように。



世界に悪い人がはびこって。

憎しみが形作られ

海に悪魔を呼び寄せた――

疲れ、悲しみ、

人はまた平和を願うようになった。


――やがて、その願いは形を作り。


いつからか艦娘が生まれたのだと。

だから、生まれてくれて、ありがとう、と。



「まるで勇者と魔王の物語みたい」瞳が落ち着いた。


感情が高ぶると、目が光るのかもしれない。

軍医に礼を言う。

片手で上手くベットから立ち上がった。

他のベットの人達から手を振られる。

ドアへ歩き出したとき、誰かが歌いだした。


みんな歌っている。

軍医さんも。


「ウィアィン リリーマーリン」部屋を出るとき、そう聞こえた。


長門と二人、言葉はわからなかったけど。


「胸が・・熱くなるな・・・」長門は、拳を握り下を向いた。


――すすり泣く声に、後ろ髪を引かれながら。二人は歩いた。


  兵舎の大きな門の前

  今も街灯が立っている

  その下でまた会おうね

  あの街灯の下に2人で立とう

  昔のようにリリー・マルレーン



帰還するとすぐに、提督が出迎えてくれた。

支援艦隊が2隻の巡洋艦を雷撃処分したようだ。

軍機につき、多くは分からないが、

本隊から離れ、囮部隊として敵を誘引していたらしい。

こちらの、支援艦隊が残存勢力を釣り上げたので

辛くも1隻は本隊に帰還できようだが。

それでも、助かってよかったと感謝されたという。


「無事でよかった」だいぶやつれた顔をしている。


右肩から先は、爆発で無くしているが、修復材がある。

提督は、私の顔をのぞき込んだ。

じっと見つめる。

しまった。

ちょっと、目が光ったかしら。

思わず視線を外した。


――怖い。


一瞬。


提督の口がへの字に曲がったが、何も言わずに離れていった。

何だか、今日の提督の背中は頼もしく感じた。


「愛されているな」長門が肩にポンと手をかける。


――でも、いつか、私が、そこへ帰る前に。


誰かに止めてほしい。

そう願うようになっていた。

私が消えてしまう前に。




・・・




「ありがとう」



演習場の熱狂は最高潮に達している。

サイブレードはその輝きを増した。


「提督をよろしくね」何故か涙が。


頬を伝う。

体がゼロになる気がした。

刃は首を抜けた。


そこでサイレンが鳴る。

歓声が止み。静寂が。



「え?」いつのまにか膝をついていた。


「ふー、つかれたっと」サイブレードの柄をクルクルと回した後、腰に装着した。


首を通過する前から。刃は出ていなかった。


「斬るつもりだったよ。あんた、どうしても死にたそうだったから」


――どこか、奴の気配もしてたしな。



スターゲイザーを筆頭に、全銀河に広がる犯罪組織。通称ナイトメア。

ゲイザーコンチェルンが、カバー会社として活動していることは、公然の秘密である。


その影響力はUFをも動かし、UG単独では手に負えないほどだった。

しかし、構成員すら知らされていない真の目的がある。

それこそは、ロスト・テクノロジー。ロストシップによる全文明の破壊である。


ロストシップは、前文明の最終戦争時に就航した呪われた船である。

サイシステムに魔王の魂を組み込んだ為だとも言われているが、真相は定かではない。

暴走した。魔王の護衛のために建造された、全ての眷属を引き連れ、システム・ダークスターを発動。

自らを建造した星を蒸発させた。その後、生命体の恐怖を糧に、次々と生物のみを消滅させる。


最後の研究所でヴォルフィードは生まれた。

人類最後の希望として。

集結した科学者が、サイシステムに、魔王のエネルギー相殺システムを積みこんだ。

しかし、間に合わなかったのだ。研究所は察知され、攻撃を受けた。

ヴォルフィードもまた、地中深くに埋まった。

自己修復と学習を繰り返しながら、システムを完全なものに出来たころには、すでに人類はいなかった。

ヴォルフィードは発進すると、魔王とその護衛艦と対峙した。

全戦力にて迎え撃つ魔王に対して、イレイズ・システムを発動。

エレルギーを全て使い果たし、すべてのロストシップを長い眠りにつかせた。


兄スターゲイザーはある日、発掘現場に立ち会う。

人類最高の発見だと当時は報道された。

ゴルンノヴァである。

スターゲイザーは闇から声を聴き坑道の中へと進んだ。

妹アリシアもまた、兄に着いて行き坑道内へと進む。

この時、虚空からくる声に引き留められる。

ヴォルフィードだった。

姿の見えない声に少女は恐怖した。

ゴルンノヴァへと向かう少年は引き留められなかったが、せめて、この少女を引き留める方法を考えた結果。

当時の女性研究員をモデルにした立体映像装置を起動した。

また、少女にはヴォルフィードの発音が聞き取りづらかったこともあり、キャナルと名乗った。

こうして、FCS-キャナル-ヴォルフィードは生まれたのである。

容姿もこの時に固定し、変身は出来るが特別な事情のない限りは同じ姿でいることになる。


月日は流れ

ロストシップ、ヴォルフィードはアリシアと共にスターゲイザーのクローン、闇を撒くものと対峙する。

しかし、イレイズシステムへの対抗戦略と重火力によりすぐさま劣勢になる。

ついには、コード・ファイナルを発動し、自らのマスターを喪失するも、闇を撒くものを倒しきれなかった。


その後、ケインとその仲間たちの活躍により、ついに悲願であるスターゲイザーとシステム・ダークスターを討つことに成功した。

しかし、ケインには、世界に残る、眠れる数隻の護衛ロストシップが懸念材料であった。



カラフルになったマントを拾う。「あー。穴だらけだ」目が泣いている。


「だったら・・・」


「ばーちゃんが言ってたぜ」マントを装着する。


カラフルで、なんだか壊れた傘みたい。


「女を泣かす奴は、最低だっ、てな」七色の光が抜ける。


「ふふっ!それは、いいばーちゃんですね!」


格好のつかないナイト様もいたものだ。

腕で涙をぬぐう。


「あははっ、何ですか、そのマント!」


そうだ。そうだったんだ。

私は大淀。


――護衛艦おおよど。



「あいつの憑き物も落ちたみたいだな」


――もう、死にたがることもなかろう。


ケインよ、感謝する。

演習場の中心に艦娘が駆けこんでいく。

そっと、カーテンを閉めた。

気配がする。


「提督か、すまないな、利用させてもらった」


振り向かないまま。目を瞑り。


「救えなかったのは、俺も一緒さ」


だから、途中で止めなかった。

だから、誰も止められなかった。

どちらに転ぶにせよ、自分は、自分たちでは力が足りなかったから。

みんな、期待してしまったのだろう。


――サイシステムは想いを力に。


彼の瞳が、最後まで大淀を見据えていたから。


「不幸だわ・・・」またケガさせて、キャナルさんになんて言おうかしら。



コラ― ワラウナ アンタノセイダゾ コレー!


シリマセンヨ オンナヲ ナカセタンデスヨ!


キイチャイマシタ!






――全銀河に悪夢を


宇宙には静寂こそ相応しい――


後書き

やあ (´・ω・`)
ようこそ、バーボンハウスへ。
このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。

うん、「初投稿かつ未完成」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

でも、このスレタイを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、このSSを立てたんだ。

じゃあ、酷評を聞こうか。


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2019-03-05 22:16:33

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