2019-03-21 01:51:58 更新

概要

前任の提督に暴行したため反逆罪に問われ、処分待ちしていた横須賀鎮守府に新たな提督が着任するという話。
彼は見た目も評判も恐ろしい男だった。
果たして彼は艦娘達にとって敵か味方か…。


前書き

どうも。SSを読んで自分も書いてみたくなったので始めてみました。
初めてなので何かと変かも…。SSというよりどっちかというと小説よりになってしまいました。
一応、長編になる予定です。最後までできるかわかりませんが、何卒よろしくお願いします。


第一章 出会いと始まり


蛇目の男



???「ここが、そうか…。」


車の運転席から降りた海軍服の男は鎮守府の門の前でそう言った。

見た目だけ見れば、年齢は20代半ばといったとこか。

帽子を目深にかぶり、帽子の前のつばの部分がちょうど目を隠していたためどんな表情をしているか読みづらい。

そして、黙ったまま鎮守府の敷地内へと入っていくのだった。



龍田「来たようですわね。」

扶桑「そのようです。」



初霜「皆は…私が守ります。」

暁 「レディーはどんな時も動揺しないものよ」オロオロ

電 「あの人が……なのです。」

雷 「…」

響 「…」


鎮守府の門から歩いてくる男を窓から眺める艦娘達の姿があった。

彼女たちはこれから訪れる男を不安やまたは怒りがこもった瞳で見つめるのだった。



―艦娘のとある部屋―


加古「もうそろそろだよね…。」

衣笠「そうね。」

加古「私たちどうなっちゃうんだろう。」

衣笠「わからない…。」

衣笠「(青葉の言ってたことが本当なら私たちにまず良いことはないよね。)」

衣笠「(なんせこれから来る男は艦娘を自分のために平気で沈ます最悪の男。

…牢に入っていたのになぜ…。)」



―鎮守府正面入り口前―



古鷹「よ…ようこそ。お待ちしていました。私は重巡洋艦、古鷹です。」

龍驤「うちは、軽空母、龍驤や。」


???→男「私が大本営からの使者として遣わされた○○だ。」ギロッ


古鷹、龍驤「「ひっ!!」」


彼女たちがおびえてしまうのも致し方なかった。

大本営から来たというその男は、帽子で隠れていたその目を二人に向けた。

その目は非常に鋭く、蛇のような目をしていた。彼女たちは蛇に睨まれた蛙のようになっていた。


男 「執務室に案内してくれたまえ。それとここの鎮守府にいる艦娘をすべて執務室に集合させろ。」


古鷹「…は、はい。では執務室に案内します…。」

龍驤「じゃ、じゃあ…うちは皆を集めてくるよ…。」

古鷹「はい…。お願いします。」



駆け引き



その数分後、執務室に艦娘達がやってきた。

男は提督用の机のところで椅子に座っていた。

艦娘達は規則正しく並んだ。前の列に龍田や扶桑、龍驤、古鷹が、真ん中の列から後ろにかけて他の重巡の二人と夕張、駆逐艦の艦娘達というような順序で並んでいる。

艦娘達はそれぞれ自分の艦名を一人ずつ名乗り始めた。



夕張「(この人が…。)」

衣笠「(青葉の情報どおりの外見ね…。)」

雷 「(目つきが…。)」

電 「(こ…怖いなのです。)」ハワワ

暁 「(怖くない…怖くない…怖くない…。)」ブルブル

響 「(…)」ビクビク

加古「(噂通り怖い人だ…。古鷹は大丈夫かな…。)」

古鷹「(加古が震えてる…。無理もないよね。私も…。)」

扶桑「(山城…。あなたは…。)」

龍田「(天龍ちゃん…。)」

初霜「(どうにか皆を守れないでしょうか…。)」

龍驤「(うちらのためにも、解体だけは…。)」



誰かが艦名を名乗っている間、それぞれの艦娘達は、ただこちらをじっと見ているだけの、これから自分たちの処分を言い渡す男の顔を見ながら、ただただ不安と緊張が増していくのであった。


龍驤「以上がここの鎮守府に配属している者達です。」


男 「全員いるようだな。早速だが、これから大本営からのおまえ達の処分を…。」


龍田「待ってください。」


男 「何だね。」


龍田「その前に天龍ちゃんと山城さんのことを教えてください。」


男 「…。」


龍驤「龍田、それは…。」


龍田「二人が捕まった後、どうなったのか聞かされていないのです。扶桑さんも聞きたいのでは?」


扶桑「ええ…。私も…。」


男 「いいだろう。」

男 「彼女たちは今も艦娘専用の牢に拘禁している。ここから、そう遠くないところだ。まだ解体の処分は言い渡されていない。」


龍田「(まだ、生きてるのね。)」

扶桑「(山城…。)」ホッ


初霜「(あの二人はまだ…。)」

龍驤、古鷹「(良かった…。)」

夕張「(でも…。)」

衣笠「(まだ…というだけの話…。)」


男 「拘禁している彼女たちの先行きはある意味おまえ達にかかっている。」


龍田「それはどういう意味で…。」


男 「これから大本営からの命令を伝える。」

男 「おまえ達には二つの選択肢が与えられている。」

男 「私をここの新任の提督として迎え従うか、従わないか。」


艦娘達「!!。」


男 「おまえ達のことは聞いている。前任の提督を、拘禁している二人が暴力を振るい切りつけ執務ができなくなるほどの重傷を負わせた。だ が、そんな二人を見ていたあるいは後から見つけた他の者はすぐに止めなかったそうではないか。おまえ達全員が謀反の罪に問われている。」


扶桑「あれは! 二人は私のために…。」

龍田「前任の提督は扶桑さんに手を出そうとしたんです。優しい扶桑さんの性格を利用して…。もっと早く私も気づいていれば…私も…。」


龍驤「前任の提督はうちらのことをひどい扱いしててん。最近は日を重ねる毎にますます…。皆の気持ちを考えてしまったら止めることが出来んかった…。」


男 「理由はどうであれ、直属の上司に対して危害を加えたことに変わりはない。」


龍田「(くっ…。)」

他、艦娘達「…。」


男 「だがおまえ達はそれから武装蜂起するわけでもなく、事の発端となった二人は抵抗せずおとなしく投降。そして他の者は今日私が来て処分を言い渡されるまで逃げることなく残っていた。」

男 「その点を考慮された上での元帥の計らいだ。」


古鷹「もし…従わなかったらどうなるのですか…。」


男 「後に他の鎮守府などにおまえ達に引き取り手がいないかどうかの公布がされるだろう。運が良ければ申請があった所に転属だ。」


夕張「(そんなのあり得ない。どこの鎮守府も自分のところの艦隊運営をするだけの資材と資源をギリギリに賄っているのが現状。度重なる連敗で資源の確保だってままならい。新しい娘の建造どころか兵器の開発だって無理。大本営だってそれに悩まされているはず。)」


龍驤「(それに前任の提督に暴行した鎮守府の艦娘を誰が引き取るというねん…。)」


男 「引き取り手がいなかった場合は、解体だ。まあ、引き取り手がいたとしてもそれは他の鎮守府の提督ではないかもしれないし、引き取る理由も艦娘としてではない可能性もあるがな。」


艦娘達「…!」


男 「拘禁している二人はどのようにするかは元帥から決定を聞いてないが、もしかしたら引き取り手を探しているのか、はたまた利用価値がありそうな場所を検討しているのかといったとこだろうな。」

男 「解体するのにも資金はかかる。解体したところで大した資材にはならない。」


龍田「あなたは!!」

龍驤「やめるんや!龍田!」

龍田「くっ…。」


今にも飛びかかりそうな龍田を龍驤が止めた。

だが、そんなことに気にもとめず、何一つ態度が変わらない男は、


男 「さあ、どうする!? 従うのか、従わないのか!」


艦娘達「…。」


艦娘達は黙り込んでしまった。

解体はされたくない。それはもちろんの事だ。

だが、目の前にいるこの男を提督として従うという事は解体される以上の苦しみが待っていることでもある。


ここの鎮守府の艦娘達は元帥付きの秘書官である大淀から内密に大本営から遣わされる男の情報を手紙で知らされていた。

ある事件を起こして5年前から服役中の男だ。無期懲役の刑を言い渡され、もはや死んだも同然の人間だったはずだった…。

だが、わざわざ元帥がその男を解放し、直接対面してからその男を鎮守府に派遣するというのだから、もしやと思った大淀の勘は的中したようである。大淀の手紙にも『元帥のお考えがわからない。』と大淀も動揺しているようだった。


この事は大淀から別の鎮守府にいる青葉にもその知らせは伝わっていた。

他の鎮守府の艦娘達にも伝えるためだ。警戒しておくことに越した事はない。

青葉も独自に、男が服役する以前の経歴や当時の事件を知っている者などに聞き込み取材をした。


その内容はあまりよろしくないものだった。

男の養成学校時代では外見もあってかその時から他の訓練生から恐れられていた。噂程度のものであるが彼がある訓練生を貶めたらしい。

艦娘を沈ませたというのは5年前の事件がきっかけらしい。自分が生き延びるために艦娘をだましている。そのせいで沈んだ艦娘がいたのだ。その時の艦娘の指揮官も戦死している。


青葉からもたらされた情報は、最悪だった。

その男が自分に従えというのだから、彼女たちも決めかねてしまうのであった。



初霜「…それならば、あなたに従うために条件を要求したいのですが。」

重い空気の中、初霜が意を決したように前に出てきてその口を開いた。


男 「条件だと?」


初霜「はい。拘禁されてる山城さんと天龍さんを釈放してほしいのです。」

龍田「初霜ちゃん…。」


男 「この状況でそれをいえる義理があるのか。」


初霜「…私たちは艦娘です。海の上で戦って沈むのならば本望です。」

初霜「でも、それ以外のところで、艦娘としての命と誇りを失うのは屈辱でしかないのです。山城さんと天龍さんがしたことは、私たちを守るためにしたこと。私たちは見捨てることが出来ないのです。」


男 「私がその条件を呑まなければ従わないと?」


初霜「皆が従わないわけではありませんが、今後の艦隊士気に関わると思います。」

初霜「あの二人は助けられず、私たちはただ従って生き延びたとしても、不満と禍根を残したままになって以前とは何も変わらないのです。」

初霜「ですから、私たちが従うことに納得できる理由が欲しいだけなのです。」


男 「…。」


龍驤「うちからもお願いします。」

扶桑「私からもお願いします。」

龍田「私からも…。」

他、艦娘達「「「お願いします!!」」」


そうしてその場の艦娘達全てが頭を下げた。


男 「…。」


男は提督机の上に置かれた電話の受話器に手をかけ、何やらどこかにかけ始めた。


男 「鎮守府の○○だ。元帥はおられるか。」


……………


男 「元帥殿ですか。折り入って話が……そう……であるため……拘禁している二人の面会を…。」


ガチャッ 受話器を下ろした。


男 「元帥と話した結果、私だけならば面会を許すと言っていた。」


初霜「それでは…。」


男 「元帥殿は艦娘達がおとなしく従うというのであれば、二人の罪を不問までには出来ないが拘置所からの解放なら考えるそうだ。」


艦娘達の間に小さな歓声が上がる。


男 「だが、二人が従わないという場合もあるだろう。」


艦娘達「…。」


男 「ここに私が戻ってきたら、もう一度従うのか従わないのか問うことにしよう。」

男 「二人の結果次第で返答が変わる者もこの中にいるということだからな。」


艦娘達「…。」


男 「では、面会に行くとしよう。おまえ達は私が戻ってくるまで待機だ。」


古鷹「えっ…。もう行くのですか?」


男 「この案件に手間取ってる暇などない。大本営も私も。」


龍田「(まるで他人事ですわね。)」


男 「では、行ってくる。以上、解散。」


そう言って男は、艦娘達よりも先に執務室を後にしていくのだった。

艦娘達は呆気にとられていた。

あまりにも早く出て行く男に驚いたのか、それとも極限の緊張状態から解放されたからなのか、艦娘達は男が出て行った扉を見つめながら、皆が静まりかえっていた。


龍驤「それにしても、初霜が条件を突き出したときはどうなるかと思ったわ~。」

静けさに耐えかねたのか龍驤が少し気の抜けた声で話し始めた。


衣笠「ほんとだよ~。私ヒヤヒヤしちゃった。」

夕張「よくあの場で言えたよね。」

加古「かっこよかったぜ!」

暁 「立派なレディーだったわ!」

電 「すごかったなのです。」

雷 「頼れるお姉さんって感じだったわ!」

暁 「(ハッ…。)」ガーン

響 「ハラショー」


初霜「そんな…私は…。」

皆からの思わぬ賞賛に戸惑っている。


龍田「ありがとね。初霜ちゃん。あなたが切り出さなかったら私、我慢できずに切ろうとしてたわ~。」

龍田は左手を頬に添えながら穏やかな顔をしながら笑うのだが、艦娘の何人かはそれを見て一瞬背筋が凍る者もいた。


扶桑「私からもお礼を言わせてください。」

古鷹「うん。初霜ちゃん凄かったよ。あの人を前に堂々と。」

古鷹「(私も見習わないと…。)」

初霜「私はただ皆を守りたいって思っただけですよ。私だってあの人を見たとき凄く怖かったです。」


龍驤「あー、うちもあれには驚いたわー。」

加古「私も…。」

電 「怖かった…なのです。」

響 「…。」コクコク

雷 「世の中にはあんな人もいるのね。」

暁 「わ、私は大丈夫だったわ。」

夕張「(その割には体がまだ震えてるわね…。)」

古鷹「(よっぽど怖かったんだね。)」アハハ…

衣笠「青葉の情報通りだったわね。」

龍驤「『蛇』というのはよく言ったもんやわ~。」

扶桑「あの方が新たな提督…。」

龍田「天龍ちゃん大丈夫かしら~…。」



彼女たちが執務室で話している間、既に鎮守府を出て門のそばまで来ていた男は、先ほど男が乗ってきた車にすぐさま乗り込み、車を目的地へと走らせた。




中傷と脅し



―××拘置所―


二人が監禁されている拘置所は鎮守府からそう遠くないところにある。

規模もそれほど大きいわけではなく古い建物であるが、拘置所に地下が存在し、いくつかの部屋が用意されてる雑居房がある。

艦娘は人間より身体能力が遙かに高い。それにより、雑居房は壁が厚いため、艦娘を監禁しておくにはちょうど良い場所であった。


天龍と山城は同じ部屋に監禁されていた。

二人は部屋の壁にもたれるように座り込んでいる。

手や足に錠がされており、壁に鎖をつなげられていた。

最低限の食事は取っていたが、それでも少しやつれているようである。


山城「私たち、いつまでこうしているのでしょう…。」

天龍「俺に聞かないでくれ…。」

山城「ここに来てからずいぶんと日が経った気がするわ。」

天龍「すぐに解体処分されると思っていたんだがな。」

山城「解体するなら早くすればいいものを…。不幸だわ…。」


その時、足音が聞こえてきた。数人いる。

昼の食事は少し前に済ませた。夜の食事まではまだ時間があるはずだった。


山城「いやな予感がするわ…。」


彼女の口癖に等しい言葉だが、この時は正解と言えるだろう。

足音は部屋の厚い扉の前で止まった。


「おまえ達に面会だ。」


扉の格子のかかった隙間から監視の男が言ったあと、扉の錠が開く音がした。


???「一人で大丈夫だ。」


聞き慣れない男の声が聞こえた後、見慣れない男が部屋に入ってきた。


天龍、山城「…!!」


その男が海軍服を着ていることに驚きはしない。いつか来ると思っていたからだ。

それよりも、彼女たちを驚かせたのは、まるで蛇のようなかなり鋭い目。

睨まれた者は大抵たじろぐであろう。二人を驚かせるのには十分だった。


天龍「あんたは?」

天龍が威圧に負けまいと平静を装い、その男に質問した。


男 「私は大本営からの使者だ。」


山城「やっと来たわね。解体するのなら早く連れて行けばいいじゃない。」

ため息をつきながら、投げやりに言う。


男 「いや、おまえ達には選択肢が与えられている。」


天龍「はっ?」


男 「私を新たな提督として迎え従うか、従わないか。」


天龍と山城は一瞬呆気にとられるが、すぐに、


天龍「従うわけないだろう!」

山城「私たちがどうしてここにいるのか知らないわけではないでしょう!?」

山城「私たちはあいつにひどい扱いをされてそれに耐えかねたのよ!あろうことかお姉様に手を出して…!」

天龍「もう、あんな思いをするのはごめんだ。俺たちは解体されるのを覚悟でやったんだ!」

山城「だからもう、私たちを早く解体してしまいなさいよ!」


彼女たちは己の怒りを目の前の男にぶつけた。

錠と鎖がなければ、すぐにでも食ってかかりそうな勢いだった。


だが、男はひるむこともなければ何も動じなかった。

それよりも、先ほどよりもさらに不気味にも思えてくる冷たい視線を彼女たちに浴びせる。


男 「そうか。解体を望むか。ならば、あの鎮守府の艦娘達も全員解体だな。」


天龍「はっ!?何でだよ!?」

山城「そうよ!やったのは私たちだけ。姉様や他の皆は何もしなかったわ!」


男 「何もしなかったことが問題なのだ。おまえ達と同じ謀反の罪に問われている。」


山城「そんな…。」

愕然とする山城。


だが、男は追い打ちをかけるように

男 「あの鎮守府の艦娘達はかわいそうだな。おまえ達のせいで終わるのだから。」


天龍「何だと!?てめえっっ!!」


男 「だってそうであろう?

おまえ達がこんなことをしなければあの者達もこのような目に遭うことはなかった。」


天龍「だけど…!くっ…。」

それ以上は言えなかった。男の言うことにも一理あると天龍は思ったからだ。

それを考えるだけの理性を残してはいたが、この理不尽に対する怒りとこんなはずではなかったという苛立ちが彼女の体を駆け巡る。


男 「あの者達にもおまえ達と同じ質問をした。そしたら、おまえ達を解放して欲しいと言ってきた。」


山城 天龍 「「…!。」」


男 「おまえ達を解放すればおとなしく従うそうだ。そんなことを言える立場ではないはずなのによく言えたもんだ。」


山城「そんな…。みんな…。」


男 「元帥からも許しはもらっている。なるだけ穏便にこの案件を早く済ませたいそうだ。次の大規模な作戦の準備にも取りかからなければならないしな。」

男 「不問まではいかないが、私におとなしく従うというなら解放してもいいというお考えだ。」


天龍、山城「…。」


わかるようで疑問も多くなるこの処分だが、従えば全員解体されずに済む。

だが、果たしていいのだろうか。元帥はこの男に一任しているようだが、先ほどの少しのやりとりでわかる。

こいつは、クズだ。

従えば前と変わらない、いや、それ以上にもっと悪く扱われるかも。

犯罪を犯した艦娘として、むしろそれをネタに俺たちを脅してくるかもしれない。

それなら、いっそ…。

だが、龍田や扶桑、他の皆を守るために罪を被ってでもやったことなのに、逆に皆を追い詰めてしまった。

そればかりか、自分たちの身も顧みず、私たちを助けるために解放しろと条件を言ってきた。

私のために…。姉様…。


そんな思いや考えが二人の頭を駆け巡った。


男 「さあ、どうする…!従うか、従わないか。」


男が催促するが、答えが決まらない。


しばらくの沈黙がその場を支配した。重くて息が詰まりそうな空気だ。




山城「わかったわ…。」

山城が声を震わせながら答えた。


山城「姉様の命には代えられない。…あなたに従うわ。」

天龍「ああ…。俺もだ…。」

それはまるで、人質を取られ、為す術がなくなった被害者そのものだった。


心が折れた二人を見た男は、冷たい表情を変えず、

男 「ならば、今すぐ錠を解いて私とともに来い。車を用意してあるからそれに乗って鎮守府に戻るぞ。」


山城「今から行くのですか?」


男 「言ったはずだ。時間がないと。…監視の者に錠を解くように伝えてくる。」


山城「不幸だわ…。」

天龍「…。」

その後、二人は男が言うことすること、ただ聞きただ眺めるだけだった。


男に連れられ、車に乗り込んだ後は鎮守府に着くまで誰も一言も話すことはなかった。

天龍と山城は、男がどうとか大本営は、元帥は何を企んでいるのかなどを考えることより、鎮守府の皆とどのような顔で何を言って再会すればいいのか、それだけで頭がいっぱいだったからである。


こうして、追い詰められた艦娘達は蛇のような目の男を新たな提督として迎え、彼らの新たな物語が始まるのであった…。




第二章 新たな提督の着任



再会



三人を乗せた、車は鎮守府に着いた。

空は暗くなり、既に夜になっていた。


山城「(ああ…。姉様…。)」―

天龍「(こんな形で戻ってくるとは…。)」


二人は生きて再会できることの喜びと自分たちが迷惑をかけてしまった罪悪感が彼女たちの胸で複雑に絡み合っていた。


車は鎮守府の門を入ってすぐの少し空いたスペースに置かれ、三人は車から降りた。


鎮守府の入り口から入り少し廊下を歩いていると


扶桑「山城!」


三人が声のした方に振り返ると、廊下の向こうに扶桑がいた。その隣には龍田もいた。

目に涙を浮かべる扶桑と夢ではないかというような顔の龍田は天龍と山城の元へと駆け寄ってきた。


龍田「天龍ちゃん!怪我はしてない?何かされた?」

扶桑「山城…。良かった…。生きてて本当に良かった…。」


山城「姉様…。私…。」

扶桑「いいのよ。何も言わなくて…。無事に帰ってきてくれただけでうれしいから。」

山城「姉様!」

扶桑姉妹は涙を携えながら抱き合っている。


天龍「おう…。ただいま…。俺は大丈夫だ…。」

龍田「もう!天龍ちゃんはカッとなるとすぐ周りが見えなくなるんだから。」

天龍「でも、あの時は…。」

龍田「わかっているわ。どうしてあなたがそうしたのか…。」

龍田「でも、取り残されるというのは辛いものよ~。」

いつもの調子で話しているのだろうが、目に浮かべる涙は隠せないようであった。

それを見た天龍は、

天龍「ごめん。悪かった。」

彼女もつられるように涙を流していた。

龍田「もういいのよ。おかえりなさい。」

ヨシヨシ~、っと天龍の頭をなでる龍田であった。


龍驤「おお~!二人とも帰って来たんやな~。」

後から龍驤がやってきた。


山城「龍驤さん。この度はご迷惑をおかけしました。」

龍驤「いいっていいって~。二人とも無事で何よりや。」


再会の喜びに浸る彼女たちだが、それに水を差すように、

男 「再会を喜び合ってる暇はないぞ。もう一度、全員執務室に集まるように招集をかけろ。」


龍驤「わ、わかりました…。」

男の言葉に皆が黙り込んでしまった中、なんとか返事をした龍驤。

そして、そのまま男は執務室へと一人先を行くのであった。



再び執務室に艦娘達が集まった。

全員が集まったのを見計らって、提督用の椅子に座っていた男が立ち上がり話し始めた。


男 「では、今朝話したとおりもう一度おまえ達に問おう。」

男 「ここにいる者は全て私を新たな提督として迎え、従うのか? もしそうでない者がいるのなら前に出ろ。」


艦娘達「…。」


男→蛇提督「よし…。では、本日をもってこの鎮守府の提督として着任する。」


言葉が終わるとともに蛇提督は敬礼をした。

艦娘達もそれに合わせるように敬礼で返した。


蛇提督「今後のことについて話したいところではあるが、もう夜も更けてきた。明日話すことにしよう。」

蛇提督「全員、明日の07:00、執務室に集合だ。」


古鷹「て…提督はどうするのですか?」

古鷹は恐る恐る聞いてみた。


蛇提督「私はこれから自分の荷物を整理せねばならない。部屋に運んでおきたいし確認しておきたいこともあるからな。」


古鷹「手伝いましょうか…?」


蛇提督「いや、大した荷物の量ではない。一人で出来る。皆、明日に備えてよく体を休めておけ。」

蛇提督「これにて解散だ。それと、龍驤はここに残れ。話がある。」


龍驤「えっ…。あ、わかりました。」

龍驤「(なぜ…。うちが…。)」


古鷹「では…私たちはこれで失礼します…。」

そうして、龍驤以外の艦娘達は執務室を出る。そのうちの何人かは心配そうに龍驤の顔を見ながら執務室を後にするのだった。


蛇提督「龍驤、こちらに来い。」


龍驤 「はい…。」


龍驤を呼ぶとともに提督用の椅子に座った蛇提督。その机の前に恐る恐る近寄り立つ龍驤。


龍驤 「話とは何でしょう…?」


蛇提督「ここに来るまでにここの鎮守府のことに関して元帥から少しは聞いて来ているが、まだ詳しいことはわかってはいない。だからおまえにわからないことを聞こうと思ったのだ。」ギラッ


龍驤 「ああ、そういうことですか…。でもそれなら、うちより古鷹に聞いた方がいいですよ。あの娘、ここの鎮守府の初期から配属されていますから。」


龍驤はやはり蛇提督の目が怖いのか反射的に目を逸らしてしまう。

そんな龍驤の姿を見て、察したのかそうではないのか帽子で目を隠すように少し俯いた姿勢で蛇提督は話を続ける。


蛇提督「ああ、書類では古鷹と加古が一番ここの配属歴が長いな。」

龍驤 「それなら…。」

蛇提督「だが、今日見ていて思ったのが、おまえはここの鎮守府の艦娘達のまとめ役をしていると思ったのだ。」

蛇提督「とびかかりそうな龍田を一声で止めていたし、戦艦の山城からは敬われているようだった。初霜が条件を突きつけたときは冷静にその話を聞いていた。必要あれば初霜を助けるつもりでいたのではないか? まぁ、こればかりは私の推測だがな。」


龍驤 「(こいつ、今日のやりとりだけでそこまで見てたんか…。)」


蛇提督「書類を見る限り、実戦経験も他の娘に比べ多い。そういった意味でも皆から敬われているのかもな。」

蛇提督「それにおまえの方が私の質問に率直に答えてくれそうだ。最初は古鷹にしようかと思っていたが私を怖がりすぎて話が進まなさそうだったからおまえに聞くことにした。」


龍驤「そ…それは、どうも…。」

龍驤「(なんや…、うちが思うていたのと違うけど…。でも、油断させといてってのもあり得るから用心に越したことはないな。)」

龍驤は青葉からもたらされた情報のこともあるので、この提督の質問することには注意して答えようと思った。

普通の質問に見せかけて、こちらの弱みを探るつもりなのかもしれない。それなりの観察力があるとわかったのなら尚更だった。


蛇提督「単刀直入に聞いていこう。ここの鎮守府の資材や資源はどうだ?」


龍驤 「細かいことは古鷹の方が覚えていますけど、正直よろしくないです。」

龍驤 「出撃や遠征に出るための弾薬や燃料がないわけではないけど、その時の艦娘の被害状況によっては入渠に使うための資材や弾薬の補給が足りなくなる可能性もあります。高速修復材も大本営から支給されなくなって今は底をついています。」


蛇提督「では、足りない資材や資源はどのように賄っていたのだ。」


龍驤 「前の提督の時は十分な弾薬と燃料の補給、修復もされないまま、立て続けに遠征に行ってた娘もいます。命からがら帰投したときでも十分な資源を獲得してこなかったらひどく怒られました。」


蛇提督「…そうか。秘書艦はいつも古鷹がしていたのか?」


龍驤 「ほとんどがそうでしたけど、古鷹ばかりでは大変だったのでうちや初霜が折を見ながら交代してやっていました。」


蛇提督「工廠や入渠施設の管理もか?」


龍驤 「いいえ。それは軽巡洋艦の夕張が担当しています。機械に強いので…。艦娘達の艤装や兵器の整備、点検、管理も任せています。」


蛇提督「ならば、工廠や入渠施設の事や兵器の事も夕張に聞けばいいのだな?」


龍驤 「一番詳しいのは夕張で間違いないです。」


蛇提督「食料はどうだ? 管理や毎回の食事の担当とか。」


龍驤 「本部からの支給でなんとか回しています。十分な量とはいえませんが、なんとかやりくりしています。」

龍驤 「料理の担当は皆で交代でやっています。昨日は衣笠と古鷹がカレーを作りました。」


蛇提督「そうか…。食料のことも考えておかないといけないな。」

その後、蛇提督は腕を組んで少し考えているようだ。他に聞きたいことがなかったか考えているのかもしれない。

龍驤はそんな蛇提督を未だに緊張した面持ちで見ていた。


蛇提督「そうだ。おまえから私に何か聞きたいことはあるか?」


唐突だった。質問がないかと逆に聞いてきたからなのか、それとも再びあの鋭い蛇目で睨まれたからなのか、龍驤は、えっ…と言いながら少したじろいでしまう。


龍驤「あー…えっと…今回の件で提督に従うだけでは私たちの罪は不問というわけではないのでしょう? また後に大本営から新たに処罰の命令がされるんですか?」


やはり気になるところはそこだ。これだけの事件を起こしてこのような結果で終わるとは思えない。

それとも何か裏でもあるのか。この男がわざわざ牢から出したのと関係があるのか。

それを探るための質問だった。


蛇提督「いや、処置については今日伝えたことだけだ。その後に新たな処置が下るのか私もわからない。」

蛇提督「前にも言ったが、この案件に大本営も手間取ってる暇はないのだ。」


龍驤 「それは、なぜですか?」


蛇提督「詳しいことは明日話すのだが、大本営草案の大規模作戦が近いうちに行われる。その作戦にすべての鎮守府が参加する。」


龍驤 「えっ? うちらもですか?」


蛇提督「無論だ。これ以上深海棲艦どもに好き勝手されないために反攻作戦に出るようだ。私たちもそのために準備をしていかなくてはならない。」


龍驤 「(本土の防衛という名目で実質前線から外されてろくな出撃の命令もされなくなって…。正直、使えない艦娘の溜り場のような鎮守府になっていると思っとったのに…。)」

龍驤 「(ほな、その作戦を行うために私たちの処置は後回しになったってことかいな…? これはなんや、きな臭くなってきたな…。)」

龍驤 「では、その作戦指揮をするために前任の提督の代理としてきたということですか?」


蛇提督「まぁ、そういうことだろうな。ここ最近提督の素質を持った者がいないのが、私を呼んだ理由の一つだろうな。」


龍驤 「提督は妖精が見えるので?」


蛇提督「ああ、見える。」


提督の素質、それは単に艦娘たちのお手伝いをしている小人のような妖精が見えるかということである。

見えればそれなりの意思疎通もできるため、提督が妖精に直接命令を出すことも可能である。

だが見えないからといって、決して提督になれないわけではない。艦娘が提督と妖精の橋渡し役をすればいいだけのこと。不自由なことはない。

だから、いくら人材不足とはいえ、大罪を犯して服役をしていた男を牢から出す理由にはならない。

龍驤は聞けば聞くほど疑問が残ることに頭を悩ませていた。


蛇提督「他に質問は?」


龍驤 「いいえ。うちはもう無いです。」


蛇提督「そうだな。このくらいにしておくか。これ以上は遅くなる。明日のために体を休ませておけ。」


龍驤 「わかりました。失礼します。」


龍驤は敬礼をしてそのまま執務室を出て行った。


蛇提督「さて俺も身支度をせねばな…。」

そう言って彼は、執務室とつながっている提督用の部屋へと入っていくのだった。



龍驤「…。」

先ほどの蛇提督とのやりとりを思い出しながら考え込むように廊下を歩いていた。

その時、龍驤の前に龍田が現れた。待っていたという感じである。


龍田「何を話されたのですか?」


龍驤「それが…。」


龍驤は先ほどの蛇提督との会話のことを龍田に話した。



龍田「それは、妙な話ですわね~。」


龍驤「そうやろ。」


龍田「まぁ…明日になってみればわかるのでは~?」


龍驤「そうやな。今ここでうちらが考えても意味ない。」

龍驤「今日はもう疲れたで~。うちはもう早めに寝ることにするわ~。」


龍田「そうですね~。ではまた明日~。」


龍驤「ほな。お休み~。」


その夜、天龍と山城が無事に帰ってきたことを互いに喜び合った艦娘達だったが、しばらくその後はやけに静かになった。

鎮守府の艦娘達はそれぞれの思いを秘めながら床につくのであった。



  無謀な作戦と戸惑い


07:00 再び艦娘達は執務室に集合した。

最初の何人かが入ったときには既に蛇提督は提督用の机で椅子に静かに座っていた。

顔の前に両手で橋を作るように組みながら、机に肘をつけている。


夕張「あ、あれは…! 碇ゲン○○!」

アニメ好きの彼女だからこそわかる某有名ロボットアニメの司令のあのポーズ。

帽子を被っていることとサングラスをかけていないこと以外はほぼポーズは同じ。

だが、帽子と手の間から覗き見える細く鋭い蛇目がさらに恐さを増す。



蛇提督「では早速、今後のことについて話していくぞ。」

全員が揃ったのを確認した蛇提督は話を切り出した。


蛇提督「近々、大本営草案の大規模反攻作戦が行われる。その作戦に我々も参加する。」


古鷹 「反攻作戦ですか?」


蛇提督「そうだ。そしてその作戦の内容はこうだ。」

蛇提督「製油所地帯として不可欠である南西諸島方面を奪回するために佐世保鎮守府、呉鎮守府が合同でこの作戦の指揮をする。そして、以前の輸送ルートの拠点で会ったマニラ、レイテ周辺海域、またブルネイ泊地を経由しつつインド洋からの支援物資輸送ルート確保のためにシンガポール周辺海域を制圧することが今回の作戦の最終目標である。」


龍驤 「では、うちらはその後方支援ですか?」


蛇提督「いや、我ら横須賀鎮守府は敵の前線基地があると思われる硫黄島海域の攻略だ。」


夕張 「確か硫黄島はここから南に約1200㎞離れた無人島でしたよね?」


蛇提督「そうだ。本土の襲撃をする深海棲艦が集まる拠点であるとされているところだ。近くまで遠征していたこちらの艦隊の偵察機の報告でいくつかの深海棲艦の艦隊が目標の周辺海域に出没していることと、泊地棲鬼らしき姿も確認されている。我らでこの拠点を叩き、海域を制圧することが我らの目標である。」


衣笠 「その情報は聞いたことあります。その時の遠征艦隊は索敵の最中、会敵して応戦したものの敵は予想以上の数で、命からがら撤退してきたと聞いております。」


龍田 「そうなると、かなりの艦隊規模で攻略しないといけないですわよね~? 私たちの他にこの硫黄島攻略に参加する鎮守府は?」


蛇提督「いや、我々だけだ。」


初霜 「そんな!?まだ、大湊警備府と舞鶴鎮守府がいるじゃないですか?」


蛇提督「その二つは我々が作戦を遂行している間、本土の防衛ということで我々の留守を守る任務に入る。」

蛇提督「ほとんどの海域を深海棲艦の制海権となっている今、留守を狙って襲撃されることは簡単なことだ。それに新造艦を作れる呉鎮守府と佐世保鎮守府の工廠、及び陸路を通じての海外からの支援物資を輸送する唯一のルートである対馬海域の防衛は必須だ。」

蛇提督「よって硫黄島海域攻略の作戦は我々だけだ。あと、南西諸島方面攻略組より先に仕掛けなければならない。この作戦は資源確保が優先される作戦なので、南西諸島方面攻略組が挟撃されるのを防ぐためにこちらになるだけ引きつけなければならないからな。」


天龍 「それじゃあ俺たちは囮ってことかよ!?」


蛇提督「そういうことだろうな。」


天龍 「てめぇぇ!! 最初から俺たちを捨て駒にする気だったのか!?」


龍田 「天龍ちゃん! 落ち着いて!」


蛇提督「現状況を打開するためにはこれしかない。やらねばならないことだ。」

蛇提督「それに意味の無い作戦ではない。硫黄島海域の制圧をした後はさらに南のマリアナ諸島沖を目指しつつ、制圧に成功すればさらに南西諸島方面を東側から仕掛けられるようになる。敵の輸送ルートも探れるようにもなるので、作戦の幅が広がるのだよ。」


衣笠 「でもそれは制圧に成功すればの話ですよね? 硫黄島海域の深海棲艦の数が予想以上に多かったなどの理由で作戦が困難になった場合はどうするのですか?」


蛇提督「それでも硫黄島に潜む泊地棲鬼の撃滅を優先。それがかなわずともより多くの敵艦隊を撃滅しなければならない。南西方面に少しでも多く援軍を行かせないようにするためにもな。」


天龍 「つまり俺たちが死ぬまで敵を倒し続けろ…。そういうことでいいんだよな!?」


龍田 「だから天龍ちゃん! 落ち着いて!」

もう我慢できそうにない天龍は蛇提督につかみかかりそうだが、それを龍田が止めている。


二人がそうしている間に他の艦娘達も隣の者と何かを話したり、不安な表情を浮かべてただ立ちつくしていたりと妙に騒がしい雰囲気となっていた。


初霜 「て…、提督は…。」

初霜が言葉を発したとき、全員がそちらへと耳を傾ける。


初霜 「提督は、この作戦が成功できるものと信じているのですか?」

初霜の質問に今度は艦娘達が質問を問いかけた相手を見る。


蛇提督「成功するもしないもその結果はこれからの我々の取り組み次第だ。」

蛇提督「だが、この作戦を任された身である以上私は最後まで責任を持ってやるつもりだ。」


龍驤 「作戦決行の日はいつなんでしょうか?」


蛇提督「具体的な日付はこれからだが、三ヶ月後が目安だ。」


龍驤 「さ、三ヶ月後? ちょっと先のようなすぐのような…。」


蛇提督「ああ、出撃に使う必要な資源や資材を用意する期間が必要だからな。」

蛇提督「どちらの方面も海域の制圧に成功した後のことも考えればそれだけの蓄えが必要となる。」


龍驤 「でもそれは本部から必要な分の供給がされるんですよね?」


蛇提督「いや、我々の方はほとんど無いに等しい。」


龍驤 「えっ?」


蛇提督「硫黄島海域に出撃する艦隊の必要な片道の燃料の供給はされることになってはいるが、それだけだ。」


衣笠 「そ、そんな!? それじゃまるで帰ってくるなと言わんばかりに…。」


蛇提督「だからこそ、三ヶ月の猶予がある。攻略する方法、決行日などはこちらで戦力の把握をしつつ最適な戦いができるようにするための自由が与えられてる。」


龍驤 「せめて…、空母の一隻を他の鎮守府からこちらに応援として回せないのですか? 航空戦力がうちだけでは辛いのでは?」


蛇提督「それはできない。全ての航空戦力は南西方面の早期攻略のために使われる。ミッドウェーでの敗北で一航戦と二航戦を失っている今、こちらに回せる航空戦力は無い。」


龍驤 「…。」


蛇提督「それで具体的に何をしていくかいうことだが、まずはおまえ達の力量がどれほどのものか見極めていくためにも演習場を使ってのこの鎮守府内だけで演習を近々していきたいと思う。」

蛇提督「夕張、演習用の砲弾と艦載機、魚雷の製作は可能か?」


夕張 「えっと…妖精達と協力し合えばできなくはないですが、ただ資材がそれほど無いのでどれだけできるか…。」


蛇提督「ならば、この会議の解散後、工廠で資材の確認を。現在ある兵器や装備のいるものいらないものを仕分ける。後で私も工廠の様子を見に行こうと思う。」


夕張 「えっ!?あ、はい。(やばい!皆に内緒に作ってた私の作品、隠しておかないと!)」


天龍 「ちょっと待った。演習なんてやってる暇があんのか?」

天龍がけんか腰に質問をする。

天龍 「資材や資源の調達も考えるなら、そのための艦隊を編成してすぐさま出撃した方がいいんじゃねぇのか? 俺たちなら大体どこの海域で拾い物しやすいかわかってるしな。」


蛇提督「その艦隊編成のために演習でおまえ達の長短を見極めようというのだ。闇雲に出撃して何も獲得せずに帰ってきては時間の無駄だからな。」


天龍 「何だよ、それ? 俺たちが出来損ないとでも言いたいのか?」


蛇提督「太平洋のほとんどの制海権が奴らに奪われている以上、どのような艦隊がどのような規模でどのように哨戒、移動しているか索敵が困難な状態で情報が少ない今、出撃するのは危険だと言っている。」

蛇提督「それにもし出撃するのならば、硫黄島海域攻略作戦を想定しての艦隊を編成し鎮守府近海から徐々に索敵範囲を広めながら情報収集しつつ、その編成での実戦経験を積みながら行った方がより効率的であると思うがな。」


天龍 「…。」

龍田 「それなら出撃はすぐにしないとして…。工廠の仕分けでは足りなかった場合の資材の調達はどうするのですか?」


蛇提督「私が軽トラックを借りて近くの廃棄場や陥落宣言された鎮守府の跡地から使えそうなものを拾い集める。許可がもらえた公共施設の跡地からでも集める。」


古鷹 「それは大変すぎませんか? どれだけ集められるかもわからないのに…。」


蛇提督「出撃よりかはリスクが低い。」

蛇提督「古鷹、君にはこの鎮守府の倉庫に行って、資材と資源の在庫を調べて、その詳細を記した資料を私に提出してほしい。」


古鷹 「は…はい。わかりました。」


蛇提督「今日の料理担当は誰かね?」


扶桑 「私たちです。」

扶桑と山城が手を上げる。


蛇提督「そうか。すまないが私の分も作ってほしい。」


扶桑 「わかりました…。」


蛇提督「それと提督の補佐をする秘書艦だが、これは何日かおきに交代で皆に勤めてもらう。」

蛇提督「おまえたちのことは簡単な戦歴などが書かれた個人資料を読ませてもらってはいるが、それだけでおまえたちのことを理解できるとは思っていない。そのため、得意であろうとそうでなかろうとやってもらう。」


艦娘達「…!」


蛇提督「そして最初は…、龍驤、おまえが最初だ。」


龍驤 「あ…うちがですか?…了解です。(いや~な予感はしてたけどな…。)」


蛇提督「他の者は待機だ。」

蛇提督「既にしていると思うが、各自艤装の点検はしておけ。それ以外は命令されればすぐ動けるように待機。ある程度自由にしていてかまわない。」

蛇提督「何か質問がある者は…?」


艦娘達「…。」


蛇提督「無いようならば、これにて解散だ。」


古鷹 「失礼します。」

古鷹のかけ声と敬礼に合わせて、他の艦娘も敬礼をして龍驤以外は執務室を出て行った。



龍驤 「えっと…、よろしくお願いします…。」


蛇提督「昨日に続いてすまないな。」


龍驤 「いえ、うちは大丈夫です…。」


蛇提督「早速だが、ちょっとこっちの書類作業を手伝ってくれないか?」

そう言って彼は机の引き出しから書類の束を取り出し、机の上に置いた。


龍驤 「ぅえっ…。たくさんありますね。昨日来たばかりなのに多いんじゃないのでしょうか?」


蛇提督「私の分もあるが、ほとんどが前任の提督のやり残したものだ。事件の後、書類作業はしなかっただろう?」


龍驤 「はぁ…まぁ…そうなんですが…。」


蛇提督「私のわからないこともあるから教えてもらう。二人で協力してやればなんとかなるだろう。」


龍驤 「わかりました。」


蛇提督「さあ、ぼーっとしている暇はない。すぐに取りかかるぞ。」




――食堂――


天龍「チクショー! 上の奴ら最初から俺たちを捨て駒にする気だったんだ!」


執務室を出た艦娘達は朝食をとるために一同が食堂に集まっていた。


龍田「大方、あの提督も無茶な作戦の責任をとらせるためだけに雇われたというところね~。」


衣笠「それもだけど、この作戦を引き受けようとした人がいなかったのよ。他の鎮守府の提督も評判悪いって青葉から聞いているし。」


加古「しかも提督に暴行する艦娘がいるところにやってこようとする人なんていないだろうしね~。」


天龍「…。」


古鷹「加古!」

加古「あ!ごめん! 天龍や山城を責めてるわけじゃないんだ。」


龍田「毒には毒を、罪人には罪人を、っていったとこかしらね~。」


扶桑「皆さんお待たせしました。」

山城「さあ姉様特製カレーですよ。」


扶桑姉妹が朝食を持ってきた。


初霜「私も手伝いますね。」

雷 「初霜ちゃんがやるのなら私も手伝うわ。」

電 「わ、私も…、なのです。」

暁 「レ、レディーなら当然よ。」

響 「…。」


扶桑「あら、皆ありがとう。」


初霜たちが配り終え、皆で朝食を食べ始める。


扶桑「私、提督と龍驤さんに朝食を届けてきますね。」

山城「お姉様、それなら私も。一人で持って行くのは危険だわ。」

扶桑「じゃあお願いするわね。」

そう言って二人は食堂を出て行った。


古鷹「龍驤さん大丈夫でしょうか…。」

加古「昨日に続いて今日だからね。」

古鷹「変な意味で目をつけられてなければいいですけど…。」


龍田「昨日呼ばれた理由を龍驤ちゃんに聞いてみたけど、単に提督の質問を率直に返してくれそうだったからだそうよ~。」


天龍「どうだか。適当な理由つけて何か探ろうとしたのかもしれないじゃないか。」


龍田「聞いてきたことは現在の鎮守府の状況だけだったらしいわ~。」


夕張「今はそんなに心配する必要ないですよ。何か問題起こして都合が悪くのはあちらの方だと思いますし。」


加古「何でさ?」


夕張「仮にも彼は一生牢から出れなかったはずの人ですよ。それが決して良い条件ではないけど外に出て自由になれた。しかし、もし彼がまたは私たちの方で不祥事を起こしたとしても提督の管理責任ということで結局牢に戻ることになると思います。元帥もそれを見越して取引したのではないかと。だから、あちらも下手な動きができないと思います。」


衣笠「そうか、なるほど。だから最初は真面目に仕事するふりをするというわけね。」


夕張「そういうこと。演習を理由に出撃をしない理由もそのためである可能性もあるのよ。」


龍田「大規模な作戦の前に余計な損失や失態を避けたいということね。」


天龍「ふん。つまり奴はただの腰抜けということだな。」


初霜「でも、あの人は…。」


雷 「どうかしたのですか? 初霜ちゃん。」


初霜「作戦の指揮を任された以上、最後までやるって…。」


天龍「だからそれは嘘なんだよ。きっと今頃どう逃げるか考えているんだろうさ。」


初霜「別に何か特別なことをしてほしいとは言わないし期待してないけど、でも提督がいなければ私たちは作戦に参加するどころか海に出ることも許されない。一隻でも一人でも救うための戦いをする機会をくれれば私はそれだけで良い…。」


電 「初霜さん…。」

響 「…。」

暁 「わ、私は一人前のレディーとして見てもらえればそれでいいのよ。」

雷 「はいはい。」

暁 「何よ、雷。文句でもあるの?」

雷 「だって、唇の横にカレーをつけてる子が見てもらえるわけ無いでしょう!?」

暁 「えっ!? どこどこ!?」アセアセ


夕張「ごちそうさま。」


衣笠「ずいぶんと急いで食べてたわね?」


夕張「だってあの提督、後で工廠に来るって言ってたから、それまでにいろいろうと片付けないと。」

夕張「(見られるとまずい物も多いし…。)」

夕張は急いで自分が使った食器を洗い、食堂を出て行った。


古鷹「あっ、そうだ。私も早いこと倉庫に行って資材や資源の確認をしてこないと。」


初霜「それなら私も手伝いましょうか?」


古鷹「良いの?」


初霜「はい。特にやることもないので。」


電 「なら私も…。」

雷 「私も頼ってもらって良いのよ?」

暁 「妹たちが行くのならお姉さんである私も行くのが当然よね。」

響 「ハラショー」


古鷹「気持ちはありがたいけど、そんなに多く手伝う必要は無いよ。」

古鷹「そうだ。夕張さんの手伝いに行ってもらった方が良いかな。こちらには二人来てもらえれば大丈夫だから。」


雷 「わかったわ。それなら古鷹さんの方は初霜ちゃんと電に任せるわ。私と響と暁は夕張さんの方を手伝いましょう。」

暁 「ちょ、ちょっとなに勝手に仕切っているのよ。」

雷 「良いじゃない。これで良いと思ったことを言っただけよ。」

暁 「そういうのは一番の姉である私に権限があるでしょう!」モー!

雷 「暁じゃ頼りないし、私の方が適任だわ!」

暁 「何ですってー!」

電 「はわわ…。二人ともケンカはよくないのです。」

響 「…。」モグモグ


古鷹「え…えっと…。それじゃあ皆よろしくね…。」ハハハ…

古鷹「加古はどうするの?」


加古「私? う~ん…私は寝てようかな~。」


古鷹「もう加古ったら寝てばかり。いつも寝てるのを前任の提督にしょっちゅう怒られてたじゃない。」

古鷹「今回だって見つかったら、どうなるかわからないよ…。」


加古「大丈夫、大丈夫。今度はうまくやってみせるよ。」

古鷹「はぁ~…。」


食堂に扶桑と山城が戻ってきた。


扶桑「あれ? 夕張さんはいないのですか?」


衣笠「夕張なら今さっき工廠に行ったとこだよ。」


扶桑「あら、それでは行き違いになってしまいましたか…。夕張さんに伝えることがあったのに…。」


雷 「伝言なら任せて。私たち朝食終えたら工廠に行くつもりだから。」


山城「10:00に提督が工廠に行くと伝えておいてほしいわ。」


雷 「わかったわ。」


龍田「向こうの様子はどうでした~?」


山城「特にないわ。ただ黙々と書類仕事してたわ。ただ…。」


古鷹「ただ?」


山城「あいつが青葉のこと知ってたようなの。海軍養成学校にいたのなら当たり前かもしれないけど、青葉があいつのことを調べてることを知っているのなら青葉にも危険が及ぶかも…。」


衣笠「うそ!? は、早く青葉に伝えないと。」


天龍「あいつが今は何もしなくともいつか尻尾をだすさ。俺はあいつをなるだけ監視してるぜ。」


龍田「私や天龍ちゃんが秘書艦をやるときは良いとして、駆逐艦の娘達がやるときはよく注意しないといけないわね~。」


衣笠「とにかく皆で協力していきましょう。もう二人だけに辛い重荷を背負わせたくないわ。」


山城「衣笠…。」


衣笠「私もそろそろ自分の部屋に行こう。青葉に手紙を書きたいからさ。」


扶桑「私たちも朝食食べましょう。」

山城「はい。お姉様。」


そして、食堂にいた艦娘達は皆それぞれが自分のするべきことをするため、その場を解散した。


――― 時は少し遡り…… ―――



―――執務室―――


蛇提督「…。」カキカキ

龍驤 「…。」カキカキ


二人は無言のまま、書類仕事をひたすらやっていた。


龍驤 「(気まずい…。あれから一言も話していない。いやその方が良いんか…。)」

(グーーーー)

龍驤 「(あかん。お腹へってきてもうたわ。そういや朝食まだやったわ。)」


コンコンコン

ドアのノック音がした後、ドア越しに

扶桑 「提督、朝食をお持ちしました。」


蛇提督「そうか。入れ。」


龍驤 「(おお!ナイスタイミングやわ~)」


扶桑 「失礼します。」

扶桑姉妹が朝食を手に執務室へと入る。


蛇提督「そこの空いてるところに置いておけ。」


扶桑姉妹は提督机の書類が置かれていないところに朝食を置いた。

山城は警戒しているのかずっと蛇提督を睨みつけている。


蛇提督「それと君たちに伝言を頼みたい。」


扶桑 「何でしょう?」


蛇提督「夕張に10:00に工廠へ行くと伝えておいてくれ。」


扶桑 「10:00ですね。わかりました。」


蛇提督「龍驤、切りの良いところで中断して朝食を食べ始めておけ。」


龍驤 「提督はどうするんですか?」


蛇提督「私ももう少し書いたら切りが良いから、そしたら食べる。


扶桑 「…。」

扶桑は何か言いたそうである。


蛇提督「どうした? もう行っても構わんぞ?」


扶桑 「提督、少しお尋ねしてもよろしいでしょうか…?」


蛇提督「何だ?」


扶桑 「今度の作戦は提督が着任する前から案が出ていたのでしょうか…?」


蛇提督「ああ。そのようだ。本当は前任の提督が指揮を執るはずだったようだ。」


龍驤 「(せやから前の提督はあんなにイライラしてたやんな。作戦のために資源もほとんど支給されないのも同じやったのかも。)」


蛇提督「まぁそれができなくなったため、私が代わりに派遣されてきたということだろう。」


扶桑 「提督はこの作戦について疑問に思われなかったのですか? 他の鎮守府の協力を得られない以上、私たちだけの戦力で硫黄島海域を攻略できるのかどうか…。」


蛇提督「私もそのように考えたこともあったが、それ以外に方法がない。南西方面への進出も必要だが、すぐ目の前にある敵の前線基地を無視して通るのも不安がある。ならばいっそこちらからうってでるのが理にかなっているのだ。」


山城 「そんなこといって、自分が牢から出るためならば条件なんてどうでもよかったのでしょう?」


蛇提督「うん? ああ、そうか。私のことを知っているのだな。さしずめ、元帥付の秘書艦の大淀か取材好きの青葉あたりから聞いたのだな。」


山城 「(!? 大淀はともかく青葉のことまで知ってる。それなら青葉にも気をつけるよう衣笠から伝えてもらうようにしないと…。)」


蛇提督「今朝も言ったが作戦を任された以上は最後までやるつもりだ。たとえ勝利する確率が1割も満たないような作戦でもな。」


扶桑 「…わかりました。提督のそのお言葉を信じます。では失礼します。」


蛇提督「ああ。」


扶桑姉妹は執務室を出て行った。


蛇提督「さあ、朝食を済ませて書類仕事を片付けるぞ。」

龍驤 「は、はい。」



―――鎮守府廊下―――


山城「お姉様。さっきはなぜあのようなことを聞いたのですか?」

扶桑「えっ?」


扶桑は何か考えていたのか山城から聞かれた途端、扶桑は少し戸惑ったようにも見えた。


扶桑「前の提督も作戦については知っていたのか知りたくて…。」


山城「そうですね。きっと知っていたからあんなに遠征や資源確保に躍起になっていたのね。」


扶桑「でも、うまくいかずだんだん追い詰められていって…。」


山城「それでも姉様に手を出そうなんて言語道断よ。」


扶桑「…。」


山城「もしも今度のあいつも姉様や他の娘に手を出そうとしたら、その時私は…。」


扶桑「やめて。無茶はしないで。もう私のために山城を巻き込みたくないの。」


山城「姉様?」


扶桑「(もう誰かが傷つくのを見たくない…。)」


山城「姉様、どうかしたの? 具合でも悪いの?」


扶桑「平気よ。私たちも朝食がまだですわね。早く食堂に戻りましょう。」


山城「は、はい。」


山城は怪訝な表情で扶桑の後ろ姿を見ながら、その後を追いかけた。







龍驤の後悔


―――工廠―――


雷 「これをあっちに運べば良いのね?」

夕張「うん、そうよ。」


夕張の手伝いに雷、暁、響が来ていた。

工廠にいる妖精達も総動員して散らかったままだった資材やら何やらを整理していた。

そんなにひどい状況ではないのだが、あの提督のことだ、何を言われるかわからないからできる限り綺麗にしておいて損はないだろう。

夕張は以前に書いといってあった工廠の資材や武器のリストを見ながら確認作業をしている。

時間はそろそろ10:00になろうとしていた。


蛇提督「失礼するぞ。夕張はいるか?」

蛇提督と龍驤がやってきた。


夕張 「はい。私はここに。」


蛇提督「早速だが中を見させてもらうぞ。」


夕張 「あ、提督。こちらをご覧になってください。こっちの方がわかりやすいですよ。」


蛇提督「うん? おお、リストを作ってくれたのか。どれどれ…。」


蛇提督がリストを見ている間、夕張が龍驤にこっそり近づき、蛇提督に聞こえない程度の声で

夕張 「大丈夫でしたか?」

龍驤 「うちは大丈夫。今のところ特にないで。」

夕張 「そうですか。何かあったらとにかく大きな声で助けを呼ぶんですよ。」

龍驤 「おいおい。うちは子供じゃあらへんで…。」


雷 「夕張さ~ん。ゴミを捨ててきたよ!」

ゴミを捨てに行っていた雷、暁、響が帰ってきた。


雷 暁 響「「「…っ!!」」」

だが、既に工廠に来ていた蛇提督を見つけるなり、固まってしまった。


蛇提督「何だ、おまえ達もいたのか?」

至って普通の質問のはずなのだが、やはり目のせいもあるのかどこか威圧を感じて怯えてしまう駆逐艦の三人。


雷 「そ、そうですよ…。私はよく皆に頼られるのでこんな手伝いもお手の物なのですよ…。」

雷が声を引きつらせ、いつもの口調とはだいぶ違うがなんとか返事をすることができた。


蛇提督「そうか。」

雷の言動に一切触れず、一言言うだけでそのまま手に持っていたリストに再び目を戻した。


雷達は少し安堵の表情を浮かべていた。

そのやりとりを見ていてヒヤヒヤしていた夕張と龍驤も少し安心した。


蛇提督「夕張、これで全部なのか?」


夕張 「い、いえ。まだもう少しあります。あと少しで全ての確認を終えます…。」

少し慌てて答える夕張。


蛇提督「ならば、完成したらこの写しを私に提出しろ。」


夕張 「は、はい。」


蛇提督「現段階でわかる範囲でいらない物を廃棄して、そこからできた資材を使って演習用の武器を作ることは可能か?」


夕張 「可能です。どのくらいできるか資材を集めてみなければわかりませんが…。」


蛇提督「構わない。各艦の主砲の砲弾もだが演習用の艦載機もより多く作る必要がある。」


夕張 「それはどうしてですか?」


蛇提督「今度の作戦もその後も、対空戦闘の重要性があると踏んでいる。十分な航空戦力があればいいのだが今はそれを見込めないし、いつも空母を配備できるとは限らないからな。駆逐、軽巡、重巡の対空戦闘の練度を日頃から上げておく必要があるだろう。」


龍驤 「…。」


蛇提督「最初は魚雷も爆雷も作って対艦、対空、対潜全てを想定しておまえ達の練度を確認していく。資材が足りず全てできずとも資材の集まり具合などを見ながら、訓練の優先順位をつけて順番も考えていく。」


夕張 「わかりました。」


蛇提督「あとそれと…。」

そう言うと何やらあたりを見渡す蛇提督。


蛇提督「そこにいたか。」

艦娘達と蛇提督のやりとりをずっと見ていた妖精達を見つけ、近づいていく。


妖精達「ヒャアーー」

小さな物陰に隠れてしまう妖精達。


蛇提督「昨日着任したばかりの提督だ。よろしく頼む。」


妖精達「ワーイ!」


夕張 「(あ、あれ? 妖精さんが喜んでる?)」


前任の提督の時は彼がいやだったのか皆が避けるような感じだった。前任の提督が荒れ始める以前、初めて会ったその時からだ。

もしかしたら、妖精と言うだけにその人間の気質を感じ取る能力を持っているのではないかと夕張は考えていた。

それならば、今度の提督は…。

いやいや、妖精達すら騙せるほどの凄腕かもしれない…。

どちらにしろ今のところなんともいえないこの状況では今後の彼の動向を見ているしかないと、夕張は思った。


蛇提督「よし、次は倉庫の方へ行くぞ。様子だけ見ていく。」

龍驤 「は、はい。」

二人は工廠を出て行った。


二人の姿が見えなくなった後

雷 「ふぅ~、怖かったわ。 響、大丈夫だった?」

響 「…。」コクコク

暁 「さすが、響ね。我が妹ながら誇りに思うわ。」

雷 「そういう暁は怖くなかったの?」

曉 「と、当然よ!」

雷 「とか言って、立ちながら気絶でもしてたんじゃないの?」

曉 「そそそ、そんなことないわよ! あ、あるはずないじゃない!」


夕張「(すごい動揺してる…。)」


雷 「もうしっかりしてよ! ああいう時こそレディーの見せ所じゃないの?」

曉 「わ、私が出る幕では無いと思っただけよ。」

両手を腰に当てて、えっへんと言わんばっかりの強気な態度ではあったが、顔が心なしか引きつっているようにも見える。


夕張「あはは…。」



―――――資材倉庫―――――


古鷹「えっと…こちらの確認は終えたのでこれはあちらに片付けて今度はこれの確認を…。」

電 「はい、なのです。」

初霜「古鷹さーん。こちらの確認終えましたー。」


古鷹達が資材や資源の確認をしていた。


蛇提督「少し邪魔するぞ。」


古鷹達「「「…!!」」」


突然、蛇提督と龍驤が資材庫へやってきた。

来るとは聞いていなかったので三人は驚いた。


古鷹 「あ、提督に龍驤さん…。どうしたのですか?」


蛇提督「資材庫の様子を見に来ただけだ。鎮守府に来てからまだゆっくり見回っていなかったからな。」

蛇提督「龍驤に頼んで案内をさせてもらっている。」


古鷹が龍驤の方をチラリと見る。

古鷹の視線に気づいた龍驤は首を縦に少し振って、そうやでっと無言で告げた。


蛇提督「資材庫の整理はどこまで出来たのだ?」


古鷹 「八割方終わったといったとこでしょうか…。」


蛇提督「仕事が早くて何よりだ。」


古鷹 「前から私が管理していたので…。」


蛇提督「整頓も兼ねてやっているようだが、資材庫の中は全体的に綺麗だ。普段から管理が行き届いている証拠だな。」


古鷹 「私にはこのぐらいしかできませんから…。」


蛇提督からは何ともいえない圧を感じて、怯えながらもなんとか答えている古鷹。

それを同じように怯えながら見ている電と心配しながら様子をうかがう龍驤。

だが、初霜だけはただジーっと蛇提督を見続けている。


蛇提督「おまえ達も手伝いご苦労。」


初霜 「はい。」

電  「あ、はい…。なのです。」


二人の返事は対照的だった。

初霜はすぐさましっかりとした返事だったが、電は後から合わせるように慌てて返した。


初霜 「あ、古鷹さん。お昼の時間ですね。」


その言葉に近くにあった時計を皆が見やる。

時計の針は12:00を回っていた。


古鷹 「あ、もうこんな時間…。提督、一度休憩してお昼にしても構わないですか…?」


蛇提督「ああ、構わんぞ。龍驤も休憩がてら昼食を食べに行っても良いぞ。」


龍驤 「そ、そうですか…。ではお言葉に甘えて昼食を取ってすぐに戻ります。」


蛇提督「いや、急ぐ必要は無い。14:00に執務室に来ればいい。」

蛇提督「さて、自分の分の昼食を取りに行くとするか。ついでに食堂も見ていこう。」



―――鎮守府内廊下―――


蛇提督の後ろを少し離れて歩く龍驤、古鷹、初霜、電。

蛇提督に聞こえないようにしながら話をする。


龍驤「古鷹、さっきは大丈夫やったか?」

古鷹「はい…。」

電 「私も怖かったのです…。」

龍驤「まぁ、特に何も起きなくて良かったんやけどな~。」

初霜「皆さん大丈夫です。もし何かあったら大きな声で助けを呼んでください。すぐに私がかけつけますから。」

電 「頼りになるのです。」

古鷹「初霜ちゃんは強いですね…。」

龍驤「お、おう。(あれ?これうちも入っとる?)」


そんなことを話してるうちに食堂にたどり着いた。


―――食堂―――


蛇提督「ふむ、食材は先ほど言ったところで全てか?」


古鷹 「はい…。そうです。」


蛇提督が食材を確認していた。


蛇提督「カレーしか作れない材料しかないな。これでは他の料理を食べる余裕もなかっただろう。」


古鷹 「前任の提督が節約のためだと言って料理してもカレーだけだと言われていたので…。」


龍驤 「そんな提督も私たちの見てないところで違うのをどこかで買って食べてましたけど。」


蛇提督「鎮守府の資金も確かに多いと言えんが、食材のことも考えておこう。」


古鷹 「わかりました。お願いします。」


蛇提督「では、私は執務室に戻る。」


龍驤 「了解です。」


そう言って蛇提督は昼食であるカレーを手に食堂を出て行った。

それを見送った龍驤達はふぅーっと息を漏らした。


龍田「ひとまず安心したと言ったところだわね~」

天龍「そのようだな。」

龍驤「うわぁっ!?」


龍田と天龍がどこからか湧いて出てきた。


龍驤「二人ともいつからそこにおったん!?」


龍田「提督と龍驤ちゃん達が工廠へ行くときからずっと様子を見てたんですよ~。」

天龍「何かあればあいつをぶっ飛ばしてやったのによ。」

龍驤「そうだったんか…。」


龍田「近くで見ていてどうでした~?」


龍驤「どうにもようわからん…。」


天龍「というと?」


龍驤「見た目も声も怖いんやけど、見てる分には真面目に仕事をしている風にしか見えへんし…。最初に会ったときのように何か脅してくるっちゅうわけでもなく、むしろ必要最低限なことしか話さんしな…。」


天龍「それがあいつの狙いさ。最初は俺たちを安心させといて油断させるのさ。前のあいつだってそうだった。」


龍驤「そうかもしれへんけど…。」


龍田「何はともあれ、もうしばらく様子を見ましょう。龍驤ちゃん、何かあったら大きな声で助けを呼んでね。」


龍驤「あ、ああ。(うち…、皆にどう思われとんのや…。)」



―――鎮守府内廊下―――


その後、皆で昼食を済ました龍驤は14:00の時間が近づいていたため執務室へと歩いていた。

龍驤「はぁ~。うちは皆から頼りない奴って思われとんのかな~。ま、うちは確かに赤城や加賀のような正規空母じゃあらへんし…。見た目も強そうに見えへんし…。」


独り言をしながら執務室のドアの前にたどり着く。


コンコンコン

龍驤「龍驤です。失礼します。」


だが、ドアの向こうから蛇提督の声がしない。


コンコンコン

もう一度、ノックをしてみる。

だがやはり、返事がない。


龍驤「(まさか、皆が言っとったように逃げた?それとも怪しいことを…?中に入るのが怖いけどとにかく早く中を確認せんと…。)」


龍驤「失礼します。」


龍驤はドアをおそるおそる開け中を覗いてみた。

だが、蛇提督は提督用の机の座席に座っていた。

何やら考え込んでいるような雰囲気である。


龍驤 「あの。どうかしたんですか?」


蛇提督「うん?ああ、もう来ていたのか。すまない、少し考え事をしていてな。」


龍驤が机に近づいてみると、机の上に太平洋を中心にした世界地図が広げられていた。

西はインド洋がありインド半島の東海岸までが、北はアリューシャン列島などの北方海域、南はオーストラリア大陸北陸沿岸の海域、東はアメリカ大陸の西海岸までの地図であった。

そして、地図の上には何やらおはじきのような白い石と黒い石を各所に所々置かれていた。


龍驤 「何をしてたんですか?」


蛇提督「これか?これは深海棲艦と艦娘の戦争が始まってこれまでの索敵による報告や会敵した場所の記録を見ていたのだよ。」


そう言って地図に横に置かれていた本を手に取り龍驤に見せた。


龍驤 「なぜそのようなことを?」


蛇提督「敵を知り己を知れば百戦危うからず。深海棲艦の動きや狙いが少しでもわかれば今後の作戦の計画を立てやすくなるからな。」


龍驤 「それはそうなのですが、それを見て何がわかるというのですか?」


蛇提督「まだざっと見ただけで断定はできないが、ミッドウェーでの戦いを機に深海棲艦側の動きが違う気がする。」


蛇提督「ミッドウェー以前では、艦隊運営に必要な資源豊富な海域や輸送船をかぎつけるような形で出没することが多かった。だが、ミッドウェー以降はこちらの作戦目的や進攻ルート、輸送ルート、及び撤退するルートまで立ちはだかるように先回りされてることが多い。」


龍驤 「そ、それはつまり…。」


蛇提督「こちらの動きがほとんど読まれているということだ。」


龍驤 「そんなまさか…。確かに深海棲艦と戦ってきた数々の中で、あちらにも感情のような何かを感じたこともありましたし、艦隊決戦などのノウハウもわかりながら攻撃してくるとは思っていましたけど、そんなことまでできるとは…。」


蛇提督「深海悽艦との戦いが始まってから今年で10年だが、我々は彼らの事をまだまだ知らない事が多い。」

蛇提督「姫や鬼級と呼ばれる深海悽艦が現れたのも数年前からだ。奴らも戦いを経ながら進化しているのかもしれない。」

蛇提督「そのうち、人間並みの頭脳を持った奴が生まれても何ら不思議な事ではない。」


龍驤 「ミッドウェー以降、私たちが負け続けた理由がそこにあると?」


蛇提督「ああ、私はそう踏んでいる。」


龍驤 「(この男…。そんなことまで考えとったんか。ホンマにあの無謀な作戦をやろうってことかいな…?)」


提督「そういえば、おまえはミッドウェー攻略の作戦に参加していたのだったな。」


龍驤 「…!」


蛇提督「良かったらその時の話を聞かせてくれないか?」


龍驤 「え、えっと…。」

龍驤 「(どないしょ。話しても大丈夫やろか…。)」


蛇提督「もし話したくなければ、それでも構わない。話したくない思い出もあるだろう。」


龍驤 「い、いえ。大丈夫です。」


そうして龍驤は一呼吸置いてから語りだした。


龍驤 「私はその時はミッドウェー攻略部隊ではなく、アリューシャン列島攻略部隊である第五艦隊に配属されました。本当は赤城や加賀達と同じくミッドウェー攻略部隊として第一機動部隊に参加したく志願したのですが、当時は北方領域の方にも深海棲艦の艦隊が頻繁に現れるようになった報告もあり、ミッドウェー攻略に支障が出ないようにミッドウェー攻略部隊よりも先に出撃して陽動の意味も含めて海域の制圧に当たれと命令されました。」

龍驤 「そうしてその日はやってきて重巡洋艦の那智を旗艦に第五艦隊が出撃。北方海域に進入してまもなく会敵。軽空母ヌ級などもいましたが大した戦力ではなかったため、こちらの損害もほとんど無く順調に進んでいました。でも……。」



―――5年前 北方海域―――



那智『よし、目的の海域に到達した。水上機を発艦させて周辺の海域の索敵をさせつつ、こちらも哨戒任務に就くとしよう。』


漣 『最初の方はよく出てきたけど、もうあまり現れなくなりましたわね。』

潮 『もう全部倒したのかな…?』

曙 『まだわからないわ。』

摩耶『ふん、歯ごたえねぇな。ま、この摩耶さまがいるから当然だけどな。』

隼鷹『いやいや、あたしの艦載機運用能力が良いからさ~。』


龍驤『…。』


電 『どうしたのですか、龍驤さん?』

雷 『お腹でも痛いの?』


龍驤『いや、うちらが勝っているのはいいんやけど、なんやその度に胸騒ぎがしおってな…。』


高雄『胸騒ぎですか?まだここら辺に敵が潜んでいると?』


龍驤『いや…、それとはまたちゃう気がして…。』


那智『久しぶりにMVPを取ったから、信じられなくて不安になっているのでは?』


龍驤『MVPを取ったのは嬉しいんやけどな…。』


那智『そういえば、ミッドウェー攻略部隊もそろそろ作戦を成功させる頃ではないか? その知らせがあってもいい頃なんだがな。』

高雄『あちらはわが海軍の主力である第一機動部隊。一航戦、二航戦が揃っているのですよ。早々に負けたりしないですわ。』


龍驤『…!! そ、それや!』


龍驤は途端に急に南へと走り出す。


那智『お、おい!急にどうしたんだ!?』


龍驤『はめられたのは、うちらの方かもしれへん!!』


隼鷹『おい!待てよ! 一人じゃ危ないって!』

摩耶『あ、こら!この摩耶さまを置いていくな!』

曙 『私たちも行くわよ!』

潮 『えっ?あ、うん。』

漣 『もう仕方ないわね。』


那智『こら!おまえ達も勝手な行動を…。』


ツツーツーツー

その時、高雄に電報が来た。


高雄『……! そ、そんな…。』

那智『どうした!?』

高雄『第一機動部隊が…。』


―――現在 執務室―――


龍驤「その後、私は走り続けたんや。嫌な予感を振り払おうとするように…。でも、第一機動部隊の護衛部隊に合流できたときにはもう遅かった。既に艦隊はボロボロでしかも一航戦二航戦は全滅、轟沈してしまったんや。」


龍驤「悲劇はそれだけで終わらなかった。うちら第二機動部隊が第五艦隊を抜けた後、どこから現れたかわからない潜水艦の奇襲と艦載機の攻撃によって那智たち第五艦隊が被弾。撤退することになったんやけど、その時、同じく北方攻略部隊として参加していた初霜の姉である子日が轟沈…。」


龍驤「うちが勝手な行動をしたせいで艦隊に大きな損害を被ったんや。いや、もっと早くに異変に気づいていれば第一機動部隊も失わずにすんだかもしれへんし第五艦隊も無駄な戦いをせんで良かったかもしれへんし子日も沈まなかったんやないか!?」

龍驤「そもそも、うちが赤城たちのように正規空母並の力があれば最初から第一機動部隊として参加してミッドウェーの結果も変わっとったかもしれへん!」


龍驤は語っているうちに感情的になり、目に涙が浮かび始めていた。


蛇提督「龍驤もういい。おまえの話はよくわかった。」


龍驤 「あっ…。」


蛇提督の声を聞いて我に返った龍驤。


龍驤 「(しまった…。うち、つい感情的になって…、いらんことまで話してもうた…。しかも関西弁になっとったし…。)」


気まずくなった。

蛇提督は何やら考えているのか沈黙したままである。

一時の静寂の後…、


蛇提督「残念だが改修などにおいて、おまえを正規空母に改造するという話は聞いたことないし、それだけをする資材もない。」


龍驤 「(そりゃあそうやな…。)」


蛇提督「ミッドウェーの結果は文章と数字の記録でしか見ていないが、悲惨な結果だったという事はおまえの話も聞いてよくわかった。」


龍驤 「…。」


蛇提督「あえて聞くのだが、それで戦えるのか?」


龍驤 「……うちは。」

龍驤 「うちは…死んでいった仲間のためにも戦わないといかへん。」


蛇提督「…。」


龍驤 「一航戦や二航戦の仇を討つためにも、ここのみんなを守るためにもうちは戦わなあかん。そうじゃなきゃ、うちは本当に盆暗になってしまうねん。」


蛇提督「…。」


龍驤 「だけどうちは、あの時もそうやったし、今回のここの事件も止めることができへんかった。…やっぱりうちは頼りなくてダメなんやろか…。」


蛇提督「…そのような事はない。」


龍驤 「えっ?」


蛇提督「少なくとも今回の作戦ではおまえは必要な存在だ。」


龍驤 「それはどないして…。」


蛇提督「軽空母でありながら高速艦であることだ。」

蛇提督「今回の作戦では目的海域に到達するために突破口を開く艦隊が必要になる。その艦隊は小回りしやすく足の速い水雷戦隊などが好ましい。」

蛇提督「だが、直掩機が無いのではさすがに不安が残る。だから足の速い艦隊でもついていけるおまえの力が必要という事だ。」


龍驤 「(この男、そこまで考えとったんか…。)」

龍驤 「それなら高速艦である正規空母を一隻なんとかこちらにまわしてもらえるようにしてもらった方がええんじゃないですか? なんならうちと交換、または解体してでも…。」


蛇提督「前にも言ったはずだ。他の鎮守府がこちらに回す戦力の余裕などないし、解体してこちらに正規空母を回させるなど取引きする以前の問題だ。」

蛇提督「それに今のこの鎮守府の資源や資材の備蓄量では、正規空母に充分な航空戦力を持たしてやれない。軽空母がちょうどいいのだ。」


龍驤 「そ、そうですか…。」


蛇提督の言葉には怒気がこもっていた。同じ事を何度も言わせるな、龍驤にはそう言っているように感じた。


その後蛇提督は、はぁーっと息を吐き一呼吸置いたあと


蛇提督「だから自分を卑下する必要は無い。誰にでも長所と短所はある。むしろそれを把握しどのように運用するかは提督である私の仕事だ。」


龍驤 「はい…。」


蛇提督「私にとって、戦う意思があるのならばそれで十分だ。うまくおまえを使えるように努力しよう。」


龍驤 「(運用、使う、か…。この提督も艦娘を兵器として見てるんやろな。でもそれも当然なことか…。)」


蛇提督「…でも、おまえが感じたという胸騒ぎと嫌な予感。その感覚は忘れるな。」


龍驤 「えっ…?」


蛇提督「その感覚がまたしたとき、その時は私に言え。おまえが思うとおりに行動できるように最善を尽くそう。…今度はきっと誰かを救えるはずだ。」


龍驤 「は…、はい!」

龍驤 「(あ、あれ? うち、励まされた?)」


蛇提督「ふむ、話が長くなってしまったな。すまないがまた書類作業の方を手伝ってくれないか?」


龍驤 「ええですよ。」


蛇提督「ああそれと…。」


龍驤 「…?」


蛇提督「やはり関西弁の方が良いな。私と話すときは関西弁でも構わないぞ。」


龍驤 「んじゃあ、そうさせてもらうで…。」


その後はというと、やはり蛇提督が無口なのかほとんど会話をしなかった。

だが、龍驤は今まで胸に突き刺さっていた何かが少しとれたような気持ちを黙々と書類作業をしてる間一人感じていたのであった。


後書き

実際に自分で書いてみると…大変です…。
他のSS書いてる皆様は凄いな…。


このSSへの評価

13件評価されています


SS好きの名無しさんから
2019-03-21 19:40:38

SS好きの名無しさんから
2019-03-21 18:48:45

SS好きの名無しさんから
2019-03-21 18:03:32

雪ノ 狐さんから
2019-03-18 21:38:11

劣性遺伝子さんから
2019-03-18 19:16:16

SS好きの名無しさんから
2019-03-10 22:24:06

SS好きの名無しさんから
2019-03-10 10:56:17

SS好きの名無しさんから
2019-03-10 08:29:53

SS好きの名無しさんから
2019-03-10 06:54:43

SS好きの名無しさんから
2019-03-10 01:55:58

アルマゲドンさんから
2019-03-09 22:44:48

SS好きの名無しさんから
2019-03-09 18:05:49

トキヤですさんから
2019-03-22 14:44:14

このSSへの応援

10件応援されています


SS好きの名無しさんから
2019-03-21 19:40:40

SS好きの名無しさんから
2019-03-21 18:48:46

SS好きの名無しさんから
2019-03-21 18:03:33

雪ノ 狐さんから
2019-03-18 21:38:15

劣性遺伝子さんから
2019-03-18 19:16:18

らべんさんから
2019-03-11 21:04:45

SS好きの名無しさんから
2019-03-10 22:23:58

SS好きの名無しさんから
2019-03-10 10:56:18

SS好きの名無しさんから
2019-03-10 06:54:45

トキヤですさんから
2019-03-09 09:28:22

このSSへのコメント

8件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2019-03-09 04:01:09 ID: S:ho2hzE

竜の字が間違ってますよ
天竜×
天龍○

更新頑張ってください
楽しみにしてます!

2: 扶黒烏 2019-03-09 18:04:59 ID: S:OJRYLe

ご指摘ありがとうございます!
全部したかわかりませんが天竜→天龍に字を修正させて頂きました!

3: SS好きの名無しさん 2019-03-10 22:25:14 ID: S:c0J8WY

従うか従わないか!?にちょい草
従うか、従わないか?とかの方が圧力掛けてる感ある気がす

4: 扶黒烏 2019-03-18 17:13:34 ID: S:rGUcIT

言われてみれば確かにそうです。
さらに威圧がかかったように表現したかったけど逆効果ですねwwww

5: 雪ノ 狐 2019-03-18 21:38:04 ID: S:dWKVGO

 物語、ヒジョウに面白かったです!
 よく作り込まれてるように感じ、散りばめられている伏線やら、提督の犯した罪の全貌とか、凄く気になります……! 物語にかなり引き込まれました!
 けれど、所々艦娘の口調に違和感が。
 序盤の電のセリフで言うと、「怖いなのです」より「怖いのです」の方がまだ自然かな、などと感じたりしました。

 これから先の期待が止められない……! 頑張ってください!

6: 扶黒烏 2019-03-21 01:50:50 ID: S:AEtAM3

ありがとうございます!
読んでもらっただけでも感謝なのに、面白いって言ってもらえればSSを書いてみた甲斐があったと思えます!

口調に関してはSSを書くのに課題であるとこですね。
考えすぎなのかいつも悩みます。
電のセリフに関しては、「なのです」をどうしても使いたかった私のワガママです。すみません!

7: SS好きの名無しさん 2019-03-21 06:26:00 ID: S:v4TKDM

ヘビーな世界観ですね、蛇提督だけに


続きを楽しみにしています。

8: SS好きの名無しさん 2019-03-21 19:42:36 ID: S:DZY8aP

この先がどうなるか、楽しみでしょうがありません!
応援してます^^頑張って下さい!


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください