2019-03-13 22:04:35 更新

概要

ゴミ処理場から出られて店を任された時雨、仕事にもやりがいを持ち仲間と一緒に生活している中・・・ 


前書き

キャラ紹介、

提督:元提督、村雨と一緒に店を切り盛りしている、今回は出番は無し。

村雨:元駆逐艦、今は料理店のオーナー。

海風:駆逐艦の女の子、村雨とは姉妹艦。 事情があり、今は村雨の店で
   従業員として働いている。

時雨:ゴミ処理場に収容されていた”何人目かの時雨”。村雨の要望で店で働くことになり、
   今は2店舗目の責任者を担っている。

大鳳:時雨と同じゴミ処理場出身、時雨と一緒に2店舗目を切り盛りしている。

時雨(改二):鎮守府で活躍している”1人目の時雨”、ゴミ処理場出身の時雨と面識はない。 



店を任されて、結構経つかな。


「うん、これでいいかな。」


今僕は新作メニューを開発中、


「大鳳さん、ちょっと味見してくれない?」


出来たばかりのメニューを大鳳さんに試食してもらう。


「はい、いいと思います。 でも、出来ればもう少し塩を少なめにした方がいいかもしれません。」


「やっぱり? この出汁って味が薄いから、ついたくさん塩を入れちゃったよ(笑)」


そう言って、僕は大鳳さんと店に出す新たなメニューを考えていた。


・・・・・・


僕は時雨・・・出身地はゴミ処理場。


重巡の建造途中で僕が建造されて、提督から「お前は必要ない、解体確定!」と言われて、ゴミ処理場に入れられた。


ゴミ処理場って施設は名前通り、入れられた艦娘たちは”不必要なゴミ”扱いされて、暗い施設内で生活を余儀なくされて、


冷暖房器具なんか一切置かれていないし、食事も腐りかかった野菜や果物しか食べれない、希望も何にも無い場所だったよ。


しばらくは僕と同じ駆逐艦たちと生活していたんだけど、


皆、特攻部隊や提督達に引き取られたりして仲間が減って行って、


そんな時、大鳳さんがゴミ処理場にやって来た。


「1度目の出撃に大破したせいで、ゴミ処理場行き。」と言われたんだって。


僕が入れられた理由とは違うけど、この施設に入ったからには仲間だから、一緒に頑張って生活をしていたかな。


その後、店を開く夢を持った姉妹艦の村雨が「私の店で働かない?」って言って来て、


この施設から出たい一心だった僕と大鳳さんが”村雨の店の従業員”となる事を条件に出して貰えた。


ここから僕と大鳳さんの新しい人生が始まる。


・・・・・・


よく聞かれるんだ・・・「君(時雨)は何人目?」って。


正直言うと僕にも分からない。


更なる改装で活躍中の僕がいれば、ケッコンして子供を産んだ僕だっている。


実際何人目の時雨なの、って聞かれても僕は答えられないよ。


この世界では、”同じ艦娘が出会う事を禁じられている”らしく、その影響で僕はあまり店から出られないんだ。


だってね、さっきも説明した通り僕は「何人目かの時雨」、外に出れば僕と僕が会う確率が上がるって事。


実際会ったらどうなるかは知らないけど、噂では「どちらかが殺される」と聞いた気がする。


それは嫌だからね、せっかく店を任されて仕事にやりがいを持っている時に、殺されるなんてね・・・


それに相手だって嫌なはずだよ・・・どちらかが殺されるって事は相手だって同じ気持ちのはずだよ。


でも・・・もし、僕と更なる改装をした僕が会ったら、間違いなく僕が殺されるね・・・


戦力や活躍から考えたら、更なる改装をした僕を残す方が鎮守府にとって懸命だもん・・・僕みたいに不必要で、


ゴミ処理場に行かされた役立たずな僕と比べたらね・・・


・・・・・・


最近、オーナーである村雨の様子がおかしい・・・何かあったのかな?


心配になって聞いても、


「私の問題だから、時雨は気にしなくていいわ。」と返される。


多分、皆に心配を掛けたくない気持ちから気遣ってくれているんだろうけど。



何日も村雨が落ち込んでいるのを見ていると僕も辛くなる。


姉として、と言えばそうかもしれないけど・・・村雨には更なる改装をした僕(時雨改二)の本当の姉がいる。


つまり僕は村雨のお姉さんだけど、実際は本当のお姉さんとは言えない存在・・・ちょっとややこしいけど。


僕があまり店の外から出られない理由はまさにそれで、お客さんとして村雨のお姉さんが時々来店するんだ。


僕は会わないように大鳳さんに代わって貰って、裏で調理をするけど。



正直を言えば、時雨(改二)がとても羨ましい。


自由に生活出来て、姉妹艦もいて何不自由のない生活を送れているんだから。


それなのに僕は、建造途中で誕生してしまって即不要扱い、あの施設に行かされて希望も何も持てず、


誰にも悟られることも無くただ死を待つだけ・・・


村雨にはもちろん感謝している、そんな僕を拾ってくれて、僕に新しい生き甲斐を与えてくれたんだから。


でも、やっぱり僕は結局・・・自由に出歩けないし、ほとんど店で縛られっぱなし・・・


周りがどう思っているか分からないけど、良くは思っていないはずだよね?


”ゴミ処理場から料理店に変わっただけ”、そう思う事が多くなった。


・・・・・・


ずっと村雨が悲しい表情でいる。


声を掛けたかったけど、僕に何が出来るのかな?


大鳳さんも海風も、悲しんでいる村雨に声を掛けられないでいる・・・そんなに悲しい事があったのかな?


皆ですら出来ないのに、一体僕に何が出来るんだろう? そう思って僕は何も声を掛けてあげられなかった。



でも、何故だろう・・・”姉として何か出来るはず!”と思ったのか、村雨の力になりたいと思った。


村雨は決まった曜日に外出することを知っていたから、気づかれないように僕は後を追う。



着いた場所は、病院かな?


村雨は歩を止める事無く、施設内に入っていく。


「誰かが入院しているのかな?」


村雨にも他の人にも気づかれないように進んでいくと、


「・・・村雨が病室に入って行った。」


僕は扉をそっと開けて中の様子を伺う。


「・・・・・・」


そこにいたのは・・・ベッドで横たわっている、いや・・・正確には口にはチューブを取り付けられて、


意識がなく眠っている時雨(改二)と側で白露と夕立と一緒に悲しんでいる村雨の姿が。


「・・・・・・」


出撃の被弾で損傷したのだろうか? それとも、持病? どちらにしても僕には理由は分からない。


「君、そこで何をしているんだ!」


医師に見つかり、注意されてしまった。


「あっ、ごめんなさい!」


すぐに謝って僕は病院から出る。


・・・・・・


しばらくすると、村雨が帰って来て、


「さぁ今日も頑張って店の営業を始めましょう!」


いつもと同じ、満面の笑顔で皆に指示をして行く。



「ちょっと悪いけど、店を少し離れるわね。」


村雨がまた外出した・・・最近、店を空けることが多くなった気がする。


「・・・・・・」


「お姉さんの容体が悪化したのかな?」と真っ先に思う中、


「村雨ちゃん、外出が多いですけど・・・」


村雨の従業員であるサラトガさんが僕が思っていたのと同じ疑問を投げかけた。


「仕方がありません、村雨さんのお姉さんが・・・」


姉妹艦である海風がサラトガさんに事情を説明して行く。



側で僕も聞いていたけど・・・


どうやら出撃中に被弾、損傷箇所が酷くそのまま意識不明になり、すぐに搬送されたんだって。


場所で言うと胸の辺りで、肋骨は折れてはいたものの、肺の損傷はなかったらしい。


「・・・・・・」


そこまで聞けば、「じゃあ大丈夫なんだ」と安心する僕。 でも、海風の言葉から予想外の言葉が、


「心臓を酷く損傷してしまって・・・今は人工循環器で血液を送っていますが、長く持つかは分からないそうです。」


「・・・・・・」


海風の説明に僕は言葉を失う。



僕はまた病院に赴いていた。


見つかれば厄介になるけど、それでも僕は何度も病院に通った。


室内には入れないけど、扉を開けると村雨たちが何度も、


「目を開けて、お願いだから目を開けてよ!」


と、白露たちと混じって一緒に泣きながら叫んでいる姿がある、


「・・・・・・」


僕にはどうする事も出来ないよね?


村雨が・・・妹が心配で気になって後をつけて見たら、ただ室内を覗き見しているだけの僕だよ?


これじゃあ僕はただの野次馬と大差ないじゃん!


「・・・・・・」


もうこの病院に来るのは止めよう、と決意した。


僕がここにいても何か出来るわけでも無いし、見ているだけならただの野次馬。


こんな事をしていると知られたら村雨も怒るよね?


せっかく店を任せてくれたのに、その僕が仕事をサボって室内を覗き見だよ?


「・・・帰ろう。」


そう思って僕は病院から出て行く・・・これ以上僕が関わる必要は無い、と判断した。


・・・・・・


それから村雨は少しの間だけど、店を空けることが無くなった。


「・・・・・・」


「少しは容体が落ち着いたのかな?」と安心と心配の両方の気持ちを持つ僕。


「あのさ、村雨。 今日の新作メニューを考えて見たんだけど。」


僕は大鳳さんと一緒に考えた新作メニューを試食してもらう。


「・・・うん、いいんじゃない? 流石時雨ね! 味付けも見た目も文句なしの合格よ!」


「そう? えへへ~、ありがとう。」


いつもと同じで、褒められるとやっぱり嬉しい。


「村雨さん、お電話です。」


海風から受話器を受け取って、話し始める村雨。


「・・・・・・」


急に村雨が今にも泣きそうな表情をする。


「どうしたの村雨、何かあったの?」


その時僕は質問をした、でも実際は何があったのかはすぐに分かっていたけど。


「ごめんなさい、少し店を空けるわ・・・戸締りよろしくね。」


そう言って、村雨は店から出る。


「・・・・・・」


僕も気になって村雨の後を追う。


・・・・・・


「・・・・・・」


あれだけ、止めようと思っていたのにまた僕は室内を覗いていた。


「時雨、分かる? 白露と私に夕立よ!」


「・・・・・・」


僅かだけど、時雨(改二)が目を開ける姿が見えて、


「もうっ、心配掛けて! でも良かったぁ!!」


白露が叫び、時雨(改二)もそれに反応して、


「うん・・・心配を掛けてごめんね。」


時雨(改二)は胸を押さえながら何とか言葉を返していた。


「お姉さんと妹さん、少しいいですか?」


医師に呼ばれて病室から出るように言われる、僕はすぐに室内から離れる。



「大変申し上げにくいのですが・・・」


白露たちの前で医師は説明して行く。


「彼女の心臓の損傷は甚大で最早修復不能です・・・今は人工循環器で頑張っていますが彼女の体力が徐々に


 落ちて来ています、恐らく彼女は・・・」


その後の医師の言葉に皆は言葉を失う。



”彼女は持って今夜までです”



それを聞いた白露・夕立、そして村雨は堪えきれずに泣いていた。


・・・・・・


店に戻った僕と、後になって泣くのを堪える村雨が戻って来た。


「それでは、明日も頑張りましょう。 それでは皆、お疲れ様です!」


オーナーである村雨の号令で、皆が部屋へと戻る。



「どうしたの時雨ちゃん? そろそろ寝ない?」


一緒に生活している大鳳さんから声を掛けられて、


「う、うん。 じゃあ電気を消すね、おやすみなさい。」


そう言って、僕は電気を消して布団に入る。



「・・・・・・」


僕にはある”決意”が生まれていた。


でも、余計なお世話かもしれないよね? 


「そんな事をされる筋合いはない」って怒られるかもしれないね。


「・・・・・・」


でも、僕に出来る事はこれくらいしか思いつかない、僕を拾ってくれた村雨・・・あの子には返しても


返しきれない恩を受けたと思う。


「・・・・・・」


だったら僕は・・・うん、これなら恩を返せると思う、僕を拾ってくれた村雨に・・・僕に生きる幸せを


教えてくれたあの子に!


・・・・・・


「えっ、時雨・・・今何て言ったの?」


村雨に相談があるからと言って、村雨と僕、側に大鳳さんと海風も同席してもらって・・・


「時雨ちゃん、本気なの!?」


大鳳さんも驚き、


「時雨さん、気持ちは分かりますが、だからってそんな真似は!」


海風も止めに入る。


「僕は決めたんだ、それが最善な方法だって。」


僕の言葉に、


「出来るわけないじゃない! そんな事をしたらどうなるか分かっているの!?」


村雨の怒声が響き渡る、もちろん村雨は怒っているわけじゃない・・・僕を気遣ってくれているんだ。


「僕は構わないよ、だって僕、元は”不必要な艦娘”だったもん。」


僕は笑って返して、


「不必要でゴミ扱いされて、希望も何もない僕に村雨は拾ってくれて、更に店を任せてくれて・・・


 僕は嬉しかったし、新たな生き甲斐をくれて本当に幸せだったんだよ。」


「時雨・・・」


村雨はまた泣いてしまった・・・本当によく泣く、困った妹だね。


「だからお願い、僕の言う通りにして。 僕の代わりに大鳳さんを推薦するよ、大鳳さんなら安心して任せられるから!」


僕は笑顔で振る舞う。



何でかな・・・本当なら嫌なはずだけど、どうして僕はこんな事を望んだのだろう?


多分だけど、生まれた時から思っていた・・・”誰かを助けたい”と言う気持ち、それが叶う時が来たんだと思う。


「時雨・・・私に顔をよく見せて!」


村雨は両手で僕の顔を覆うと、また泣き出して、


「時雨、私にとってあなたはもう1人の姉でもあるわ・・・だからお姉さん、ありがとう!」


そう言って、村雨は僕を強く抱きしめて来た。


「・・・・・・」


ちょっと痛かったけど・・・妹の温もりを一身に感じた。


「じゃあ行こう、病院へ。」


そう言って、大鳳さんと海風に見送られて僕は村雨と一緒に病院へと向かう。


・・・・・・

・・・



僕の突然の来訪に時雨(改二)と白露たちは驚く。


咄嗟に村雨が「話があるから」と白露と夕立を外に出してくれて僕と僕(改二)の2人だけになる。


「・・・・・・」


時雨(改二)は胸を押さえながら僕を見つめ、


「やぁ・・・時雨って呼べばいいかな? まだ改装はしてないようだけど。」


「・・・・・・」


僕を見て邪険に思わない、それどころか普通に接してくれた。


「ここへは何をしに? 僕のお見舞いに来てくれたの? 同じ艦娘だから抵抗はあるけど、ありがとう。」


胸を押さえつつ、笑顔で振る舞う時雨(改二)。


「・・・初めまして時雨(改二)、今日がお互い初対面だね。」


お互い挨拶をして僕は本題を素直に打ち明ける。



”僕の心臓を使って”



もちろん時雨(改二)は驚き、


「そ、そんな事! 出来るわけないじゃないか!! そんな事をしたら君はどうなるか分かっているの!!」


胸を押さえながら時雨(改二)は叫ぶ。


「うん、分かってる・・・そんな事は覚悟の上だから。」


僕は時雨(改二)の近くまで寄って、


「僕は提督に”不必要”だからと捨てられて・・・そんな中、村雨が僕を引き取ってくれて僕に


 新たな生活を与えてくれたんだ。」


「・・・・・・」


「今度は僕が村雨に恩を返す番、それは時雨、君を助ける事・・・僕にしか出来ない事、分かるよね?」


「し、時雨・・・」


「だからさ・・・時雨(改二)。これからも精一杯生きて! いっぱい活躍して、皆の力になってあげて!!」


僕は叫んだ、同時に堪えていた涙も出て来て・・・


・・・・・・


「準備は出来てる?」


「うん、僕はいつでも。」


「・・・・・・」


手術室に時雨と時雨(改二)が運ばれる。


事前の麻酔が効いて2人は眠りにつく。


それでも、離すまいと2人の手は握ったままだ。



「これから心臓の移植を始める!」


医師の台詞と共に、オペが始まる。



「・・・・・・」


麻酔が効いて意識のない時雨(改二)、


「・・・!」


しかし、何かを悟り、時雨(改二)は無意識に泣き出す。



時雨の手が緩んだ・・・時雨は僕のために・・・



同時に息を引き取る時雨、しかし、彼女の表情は笑顔のままだった。


その後、心臓移植手術は無事に成功して、時雨(改二)はリハビリ後、無事に退院する。


・・・・・・

・・・



それからしばらくして、


「いらっしゃいませ~♪ あら時雨じゃない。」


店に時雨(改二)が来店する。


「やぁ村雨、相変わらずこの店は繁盛しているね。」


席に案内されて時雨は注文をする。


「? 丼ぶりを2つ?」


「うん・・・僕(改二)と僕の2人分ね。」


時雨(改二)の言葉に納得して、


「分かりました、少々お待ちください~♪」


村雨は調理を始める。



「1つは僕の分。」


そう言って、もう1つの丼ぶりを持って店の隅に持って行く。


「これは、僕・・・そう、君の分ね。」


店の片隅に置かれた仏壇と写真立て・・・そこには、時雨が写っていた。


「君のおかげで僕はまたこうして生きていられる・・・本当にありがとう。」


そう言って、出来たばかりの丼ぶりを仏壇に乗せて黙祷をする。


「君の分も僕は活躍するから・・・これからは僕と君は一緒だよ!」


胸に手を当てて、決意を表す時雨(改二)。


「・・・じゃあ僕の分を、頂きます。」


時雨は席に戻り、用意されたもう1つの丼飯を食べ始める。


「それはね、時雨が考えた新作メニューよ。」


生前、時雨が大鳳と一緒に考案していたメニューだった。


「うん、美味しいよ。」


時雨(改二)は、もう1人の自分を思い浮かべながら一口ずつ頬張っていた。












「時雨の決意」 終











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