2019-04-06 21:28:46 更新

2017年 10月上旬 LAB(ラボ)


LAB(ラボ)


東駅から、楽の通う凡矢理大学とはちょうど逆方向にある千棘の通うこの専門学校は、

日本全国でも有数のファッション・アパレルの専門学校で、

千棘のファッションデザイナーの師・柴田 スミレもここの卒業生である。


千棘 「え?ウチのクラスのアパレルショップって、一人一人がデザインした服を売るの?」


綾 「そうだよ〜〜、それぞれの生徒がデザインした服の売り上げを、クラス対抗の売り上げの競争とは別に、このクラスの中で競うんだよ〜〜。」


千棘 「へーー、面白そうー!

私、いい順位目指してみよう!」


皆川 「あら、あなたにそんな順位がとれるのかしら?」


千棘・綾 「!」


皆川 「あなたにお客さんの心を掴む服が作れるとは思えないわ。」


千棘と綾の会話に割って入って来たのは、2人のLAB(ラボ)のクラスメイト、皆川 由奈(みなかわ ゆな)


千棘 「み…皆川さん。」


綾 「ちょっと、皆川さん、それどういう意味よ!?千棘ちゃんにお客さんの心を掴め無いって?」


皆川 「そのまんまの意味よ。

大体、桐崎さんあなたは服を作る動機が不純なのよ。」


千棘 「ど…どういう意味よ?」


皆川 「だってあなた、聞いた話では、

今付き合ってる彼氏に釣り合う女の子になる為に、高3の夏にいきなりファッションデザイナーを志したんでしょう?」


千棘 「うぐっ、それは………」


皆川 「不純な動機ね。

付き合ってる男が大好きで、その人に好かれたいから服作りを頑張るなんて、

このLAB(ラボ)には私達みたいに、小さい頃から服もずっと好きでこの学校に来た子もたくさんいるのよ。」


綾 「ちょ、そんな言い方………」


皆川 「それにあなた、その人にやっと告白をOKして貰えて、大会社の女社長のお母さんのツテで、あの有名な柴田 スミレさんに弟子入りしたんでしょう?

いいわね〜〜、お金持ちの家の子は?」


千棘 「何ですって!?」


皆川 「そりゃあなたは、顔は可愛らしいけど、性格は短気で暴力的なところがあるからね〜〜、

大好きな彼氏さんにフラれ無いように、

あなたも必死なのかしら?」


スッ


皆川は余裕の表情で人差し指で千棘の顎を触って、顔を自分の方に向かせた。


千棘 「う…うるさい!

気安く触ら無いでくれる?」


パシッ


千棘は皆川の手を振り切った。


千棘 「もう、あったまきた!

皆川さん、あんたと私で学祭の服の売り上げ、勝負よ!」


綾 「ちょっと、千棘ちゃん!」


皆川 「いいわよ。どうせ私は、あなたには負け無いから。」



その夜、スペクトル 凡矢理705号室


千棘 「絶対にあいつには負け無いわよ!

ファイトよ私〜〜!」


ヌイ ヌイ ヌイ


楽 (なんか千棘、えらく気合い入ったな………)


グサッ


服の裁縫を急ぐ余り、千棘は縫い針を指に刺してしまった。


千棘 「いったあーい!」


楽 「あーもう、やっぱりやったか!

ほれ、手を出せよ。

絆創膏(ばんそうこう)貼ってやるから!」


千棘 「うん。ありがと、楽………」


第1巻 第179話 完





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