2016-03-24 17:33:48 更新

概要

オリジナルファンタジー物です。

魔法とか出てきます。下手くそな描写です。


前書き

初投稿です。地の文もあって読みづらいかと思いますが、下手くそな部分も大目にみてくれると嬉しいです。
完結させるまで更新します。コメントを頂けると励みになります。



魔の者と人間が争い合う時代があった。

魔の者は人間の領地を奪い、命を貪り、血を欲していた。そんな争いの中、人間の間に「勇者」と呼ばれる者が生まれた。勇者は立派に成長すると、たった一人で魔の者を倒しに魔界と呼ばれる魔の者の大陸へと向かった。火の海を越え、雷の鳴る谷を越え、氷の山を越えて、魔の者の根城へとたどり着いた。激しい戦いの末、魔の者の長、魔王を討ち滅ぼした。そして、勇者は人間に永久の平和をもたらす英雄となった。


ー絵本「勇者様の伝説」よりー



序章



闇に染まった空に朝日が差し込んで行く。

ガラッという音ともに部屋のカーテンと窓を開け、金色の髪で可愛らしい顔の青年が、ベッドの上で丸まっている布団をおもいっきりめくり上げた。すると、すーすーと寝息をたてて、丸くなっている猫のような女性がいた。


男「ルーチェ!朝だよ!起きようよ!」


ルーチェ「んああぁぁ…、あと五分…」


男「君!昨日同じこといって二時間起きなかったじゃないか!ほら!起きて!」


ルーチェ「うえぇぇ…アモールはけちだなぁ…」


アモール「へぇ~…じゃあ朝御飯は要らないんだ…?」


ルーチェ「!?」


ルーチェ「それは困る…」


アモール「…着替えは置いておくから、着替えたら降りておいでね」


そういってアモールは一階へ降りていった


ルーチェ「……よく寝た」


ルーチェは着替えを済ませアモールと同じく一階へ降りていった。


ー食堂ー


ルーチェ「はーやーくーめーしー」


アモール「あとはお皿をだすだけだからちょっと待ってね」


そういうとアモールは人差し指をくるっと軽く回した。するとイスの前にあるテーブルの上に小さめの皿が二つ、サラダが盛り付けてある大きな皿がひとつとパンの入ったバスケット、フォーク等の食器が現れた。


ルーチェ「いつみても凄いな、アモールの魔法」


アモール「そんな大層なものじゃないよ、誰でも出来る簡単な空間移動魔法さ」


ルーチェ「私は一個も出来ないからさぁ、羨ましいんだよ」


ルーチェはフォークを弄りながらそう呟いた。


アモール「ほんとに不思議だよね、僕も初めてそんな人見たよ」

そういいながら鍋からスープを小皿へ注いで行く。


ルーチェ「ん~いいにおいだ…もう食べていいか!?」


アモール「食い意地だけは立派だよ…どうぞ、食べていいよ」

 

ルーチェ「いっただっきま~す!」

するとバクバクとパンを頬張り、ずずずっとスープを飲み干し、二杯目に突入する瞬間ー


???「バウ!」


ルーチェ「ん?ほ、へんひふは」


アモール「ちゃんと飲み込んで喋ろうね」


ルーチェはごくん!と頬張ったパンを飲み込み、声の持ち主をなではじめた。


ルーチェ「ヘンリル~おはよう~きょうももふもふだなぁ」


ヘンリル「バウ!バウ!」


ヘンリルとはここの屋敷で飼っているタレ耳が特徴の大きなもふもふの犬だ。ようやく起きたらしい。


アモール「ルーチェもここの生活に慣れてきたみたいだね。もう4週間だっけ?」


ルーチェ「そうだなぁ…もうそんぐらいかなぁ…」

パンを次々と食べながらそう答える


アモール「あのときはびっくりしたんだよ…」



ー一ヶ月前ー


アモール「ふう…これで今日の分の作業も終わりだ…」


夕暮れ、そういいながら馬車で屋敷に帰る道中、人が倒れているのを見つけた。


アモール「いけない!人が倒れてる!」


馬車を降り駆け寄った先には、鎧を身につけ腰に剣を携えた長い黒髪の騎士が倒れていた。


アモール「大丈夫!?なにがあったの?」


ルーチェ「…ら…った…」


アモール「もう一回お願い!」

そういって耳をルーチェの顔に近づけた。


ルーチェ「腹が…減った…」


アモール「大変だ!ちょっと待ってて!」


そういって馬車に駆け込み、馬車にあった焼いて日が経っていないパンと新鮮なチーズ、そして牛乳を与えた。


アモール「ほら、食べて」


ルーチェは食べ物を受け取った瞬間、ガツガツと食べ始めた。


ルーチェ「うっま!なんだこれ!こんなうまいパン食べたことないぞ!」

そういってあっという間に平らげてしまった。


アモール「もう大丈夫?」


ルーチェ「ああ、ありがとう、見知らぬ商人、私の名前は、ルーチェ・グローリアだ」


アモール「僕はアモール…アモール・トラン。

この先にある村で酪農をやってる」


ルーチェ「アモール・トランというのか。うん、この名前は一生忘れることのない私の歴史になるだろう。では、世話になった」


そういってルーチェはその先にはもないはずの方向へと歩いていった。


アモール「何処へ行くんだろう…」


そういって馬車を走らせた。小一時間たった頃に地図を持った人影が見えた。


アモール「…あっ、君は確か…ルーチェ…さん?」


ルーチェ「あ、貴方はアモール・トランじゃないか…」

 

アモール「一体どうs」


ルーチェ「べ、別に道に迷った訳じゃないぞ!」


即答だった。


アモール「…まだなにもいってないけど…」


ルーチェ「!」


ルーチェ「…はめられた」


アモール(なにこの人、面白い)


アモール「それで、ルーチェは何処まで行こうとしてたの?」


ルーチェ「えっと、確か…、第一区境界線だったはず」


アモール「…どうしてそんなところに?」


ルーチェ「私は身なりの通り王立騎士団の者なんだ。境界線の現状調査と出没した悪魔の退治を命じられてる」


第一区境界線とは人間の領地と悪魔と呼ばれる魔の者の領地の間にある境界線を5つに分けたものの一つだ。数の年が増えるごとに人間にとって危険な環境であったり出没する悪魔の強さが増す。危険度が高くなるということだ。


ルーチェ「でも私は見た通りの方向音痴で、まだ今晩の宿も見つかってないんだ…」


ルーチェがしゅんとする。


アモール「…それなら、それなら僕の村においでよ。もう少しでつくしそれに、境界線にもそう遠くないよ」


ルーチェ「本当か!?…しかし、この辺に村があるなんて聞いたことが無いんだが…」


アモール「つ、つい最近出来たんだよ」



ルーチェ「…嘘をついてるわけじゃ無さそうだな、よし、お言葉に甘えるとするか」


アモール「じゃあ着くまで馬車の荷台に乗ってなよ」


ルーチェ「何から何まで世話になるな、ありがとう」


そういって馬車の荷台に乗ったかと思うと、すぐにルーチェは寝てしまっていた。


アモール「……」


馬車が揺れる。雲が沈んで行く太陽にむかって流れる。鳥の声はもう聞こえない。


これがルーチェとアモールの出会いの始まりだった。




ー現在ー


ルーチェ「そんな感じだったなぁ。それから、ここに住まわせて貰っているということになるんだよな。ていうかここの村に来て、まだ本来の仕事をやってないんだけど」


アモール「悪魔が襲ってこないってことはまだ大丈夫ってことだよきっと。そんなことより、今日も動物たちの世話だよ」


ルーチェ「そうだよな、一度行ったが、大分ここから近かったしな。…それで、世話には今日、アイツも来るのか?」


アモール「今日は手伝ってくれるって言ってたけど…」


ルーチェ「私、アイツ苦手なんだよなぁ~」


アモール「そんなこと言わずに。同じ女性なんだから」


ルーチェ「うええ~…、まぁ先に厩舎に行ってるから早く来いよ」


アモール「片付けが終わったら向かうよ」


ルーチェは一階の裏口から厩舎へ向かっていった。ヘンリルもルーチェの後に付いていっていた。


ルーチェ「んーん…いい朝だぁ~…」


裏口を出ると目の前には、草原が広がっている。草原には柵がしており牧場のようになっていた。裏口から左手すぐに、厩舎はあった。


ガララッと戸をあけるとモーモーやメェーメェーな声が一斉に聞こえてきた。


ルーチェ「おーみんなおはよう~いまだしてやるからなぁ~」


ルーチェが牛や羊の檻の扉を開き、ヘンリルがそれらを牧場へ誘導する。それだけなら楽なものなのだが、今日は厩舎の掃除があるから面倒くさい。


アモール「おおーい。皆出し終わった~?」


厩舎の外から声が聞こえた。するとすぐに別の声も響いてきた。


???「アモールさぁまぁ~!会いたかったですわぁ~!」


アモール「うわぁぁぁ!いきなり抱きつかないでぇ!」


アモールの悲鳴が聞こえる。


ルーチェ「おい!なにやってるんだ!」


顔を真っ赤にしたルーチェが厩舎から飛び出してきた。


???「貴女には関係ないことですわ。ささ、あちらでわたくしと愛を育みましょう!」


アモール「マリア、君って人は…ほら後で特製クッキーあげるから…」


マリア「むぅ、仕方無いですわね。今のところはそれで許してあげましょう。但し、いつか私と愛を育んでくださいね」


このマリア、と呼ばれる人物はマリア・エルフルトという。プラチナブロンドの絹のような髪、それなりにある胸、柔らかな雰囲気、そして美しい容姿、変態行動がなければ完璧超人というほどの人間であった。


ルーチェ「マリア!いつもいつもどういうつもりなんだ!」


マリア「どういうつもりもないですわ。わたくしはアモール様と一緒に居たいだけですもの」


そういってアモールの腕に抱きつく。


アモール「わわわ…マリア…!?む、胸が当たってる…」


ルーチェ「や、やめろ!アモールも嫌がってるだろ!」


アモール「」プシュー


マリア「あらぁ~、負け惜しみにしか聞こえませんわぁ。貴女の貧相な胸ではこんなこと出来ませんものねぇ」クスクス


ルーチェ「ぐぬぬ…、もう知らん!アモールもマリアも知らん!私は勝手にやってるからお前らも勝手にやってろ!」


そう怒鳴って、足早に牧場の方へ歩いていった。


アモール「ルーチェ!待ってよぉ~!」


アモールが追いかける。


マリア「あ~ん、アモール様お待ちくださ~い!」


マリアはアモールを追いかける。


ルーチェ「お前ら!追っかけてくんな!」


走って逃げるルーチェを追いかけるアモール、そのアモールを追いかけるマリア、といった異様な光景が草原で繰り広げられていた。


ヘンリル「バウ!」


しばらくたって、


ルーチェ「はぁはぁはぁ…」


アモール「ひぃひいふぅ…」


マリア「ハァハァハァ…」


ぐったりと三人が倒れてしまっていた。


ルーチェ「お前ら…いつまで…追いかけて…来るんだ…」


アモール「止まるわけには…いかないよ…」


マリア「アモール様が居るところに、わたくし有り、ですわ…」


ルーチェ「………ははは、あははははっ!」


アモール「どうしたの、いきなり笑って…」


ルーチェ「いや、なんか楽しかったなぁって…。…あ~…こんなに走ったし、いい天気だから、眠たくなってきた…」


アモール「そうだね…僕も眠たくなってきちゃった…」


マリア「ですなら、わたくしにお任せあれ、ですわ」


マリアは立ち上がり、こう言った。


マリア「土魔法(ノーム)!」


そういって、言葉を唱えると、芽が出て、ぐんぐん育っていった。そうして、草原にとって不自然極まりない、一本の立派な木が生えた。


アモール「成る程、木陰で休もうってことだね」


マリア「そういうことですわ」


マリアが唱えたこの土魔法とはこの世界に存在する「魔法」という技術の一種である。

種類として、火魔法(サラマンド)、水魔法(ディーネ)、風魔法(シルフス)、土魔法(ノーム)、氷魔法(フラウ)、雷魔法(ヴォルト)、光魔法(シャイン)、闇魔法(ダーク)、空間魔法(ルーン)、に大きく分けられる。この、魔法が使える量は個人差があり、その人の魔力量によって使える魔法が比例して多くなる。


ルーチェ「…おー涼しい…助かったよマリア」


マリア「ふん、貴女のためじゃなくて、アモール様の為に使ったのですわ!勘違いしてほしくないですわね」


アモール「ふふ、マリアも素直になればいい…の…に…」


マリア「わたくしはいつでも素直…で…すわ…」


そう言い残して、三人は木陰で眠ってしまった。




彼らが眠り続けて幾分か時間が経った。



アモール「zzz……はっ!寝てしまった……、えっーと、今太陽は……南!?ルーチェ、マリア!起きて!もう昼過ぎだよ!」


ルーチェ「騒がしいなぁ。もうちょっと寝させろよ…」


マリア「ふわぁぁ、おはようございます……、アモール様…」


アモール「なにいってるんだよ!昼過ぎてるんだよ!」

ルーチェを揺する。


ルーチェ「そんなわけないだろ…」


目をこすりながら答える。


アモール「太陽を見てみてよ」


ルーチェ「………ん…えっーとこの方向は、南…か。…南!?」


アモール「ほらぁ!どうしよう!まだ掃除も明日の準備もしてないよ!」


ルーチェ「…しっかたねぇなぁ。動物の手入れと世話と掃除は私達がするから、お前は明日の準備、してこいよ」


アモール「ルーチェ!本当!?ありがとう!お昼ご飯作ってくるからそれまでお願い!」


ルーチェ「おう、任せとけ、おいマリア行くぞ」


ずるずると寝ぼけたマリアを動物達の方へ引きずっていく。


ルーチェ「羊の毛を刈るのはマリアに任せた。私は牛のチェックとあと、アイツのチェックをしてくる」


マリア「分かりましたわ。さぁ~もこもこ羊ちゃ~ん。待ってなさいですわ~」


ビューんと羊の群れの方へ走っていった。


ルーチェも牛の方へ近づいた。


ルーチェ「よし…三匹とも異常なし…と。さて難関はアイツだ…」


アイツと呼ばれる動物はマリアが魔法で育てた木の木陰にいた。


???「ゴゴゴコゴ…」


ルーチェ「よーしそのまま寝ててくれよ…」


???「グゴ…?」


ルーチェ「あ、起きた。」


そういうとアイツは猛スピードで逃げてしまった。


ルーチェ「くっっっうう、また逃げられたぁ……」


アイツとは、クーリールと呼ばれる動物である。青い鱗の体と頭には大きな角が一本。前足は退化していて後ろ足が発達し、走ることに特化した体つきをしている。顔はトカゲの様だが、以外にも立派な草食動物である。


ルーチェ「ソニーめ…いつになったら逃げなくなるんだ……。アモールがやったら逃げないのに……」


ソニー「グゴゴゴゴ…」


アモール「おおーい、二人とも~、支度が終わったから作業切り上げて、部屋に入って~」


マリア「分かりましたわぁ~」


ルーチェ「りょーかーぁい」


ソニー「!!」


アモールを見たとたんクーリール、ソニーがアモールの方へ走り出した。


アモール「ソニー、今日も元気だねぇ~」


ルーチェ「あいつめ…アモールとかマリアにはなつきやがって…」


ルーチェ「アモール!そいつだけチェック終わってないからやっててくれないかぁ!」


アモール「えっいいけど…どうしてこの子だけやってないんだろうね。こんなに人懐っこいのにね」


そう言いながらソニーの首を撫でる


ソニー「クルルルルル…」


気持ち良さそうである。


アモール「えっと、角の色も変化なし、口の中に出来物もない…、と。うん健康健康」


マリア「わたくしは先に上がらせてもらいますわね」


アモール「うん。ルーチェも早くおいで~」


ルーチェ「うううう!納得いかーん!」


ルーチェの声がよく響く午後であった。



アモールの屋敷は広い一階と少し広い二階に分けられている。一階には浴場と、アモールの書斎、そして大きなリビングが広がっている。二階にはルーチェの部屋と置物部屋がひとつ、そして使っていない部屋が一つという構造になっている。


ルーチェ「昼飯~昼飯~」


マリア「まぁ、麺料理なんて珍しいですわね」


アモール「少し前に町へ出たとき、チーズと交換で麺を貰ったんだ。こんな辺境じゃ、麺なんて滅多に見られないからね。交換しておいて良かったよ」


ルーチェ「これはなんていう料理なんだ?」


アモール「これはパスタっていってね、麺を茹でて特製ソースをかけた物なんだけど…」


ルーチェ「へぇ~、初めて見るなぁ」


マリア「わたくしは以前町で頂いたことがありますわ」


アモール「それじゃあ食べようか。ヘンリルの分は何時ものところだよ」


ヘンリル「バウ!」


ドテドテと歩いて行く。


三人「頂きます~す(ですわ)」


ルーチェ「ん!ふはい!」


マリア「むむむ、わたくしの料理より美味しいなんて…」


アモール「あはは、良かった良かった。きっと麺の素材と、ソースが良かったんだね」


ペロリと三人は平らげてしまった。


アモール「さぁじゃあ僕は明日の準備進めるから、掃除、お願いね。マリア、羊の毛は明日使うから荷物箱にいれておいて」


マリア「分かりましたわ!さぁルーチェさん、掃除もぱぱっとやってしまいますわよ!」


ルーチェ「お、おー」


裏口から出ようとしたその時、


???「アモールさーん!アモールさーん!」


と、玄関の方から声が聞こえてきた。


アモール「お、この声は」


玄関まで行きドアを開ける。


アモール「ハルン!わざわざごめんね」


ハルン「ううん!大丈夫!はい小麦!」


アモール「良かったらゆっくりしていってよ。そこの二人も」


???「は…い…」


???「はーい!」


ハルン「こら!ユンス、お礼言いなさい。ヘルヴィも!」


ヘルヴィ「あり…がとうございます」


ユンス「ありがとう!おじちゃん!」


アモール「おじ…ちゃん…ね」ガクッ


ハルンと呼ばれる娘は16歳になる少女である。名はハルン・イナスといい天真爛漫で、赤色の髪をショートカットにしている華やかな美しい娘だ。


ヘルヴィと呼ばれる青年は15歳になる。

名はヘルヴィ・イナスといい、黒い髪で前髪が少し長めの、気が弱い青年だ。


最後に、ユンスと呼ばれる少年は10歳である。

ユンス・イナスという名前で、ヘルヴィと真反対の性格で活発的である。

茶髪の髪は短めである。


イナスという名前が共通するが全く血は繋がっていない。


アモール「ほら上がって上がって、ジュース出すから」


ハルン「お、お邪魔しまーす…。あれ?ルーチェさんは?」


アモール「厩舎の掃除に行ったよ。マリアと」


そう言いながら三人分のジュースを配る。


ハルン「そ、それまた奇妙な組み合わせですな…」


アモール「僕もこれから明日の荷物まとめがあるから、終わるまでゆっくりしてるといいよ、かといって何か有るわけでもないけど…」


ハルン「はいはいはーい!私も手伝いたーい!」


アモール「それは助かるけど…、ヘルヴィやユンスはどうするの?」


ヘルヴィ「ぼ、僕はやることあるから、ちょっと出掛けたい…」


ユンス「じゃあ僕はヘルヴィ兄ちゃんと遊ぶー!」


アモール「そっか、じゃあ遠くまでいかないようにね。ここら辺は魔物とかも出てくるから」


ハルン「アモールさん!早く早く!」


アモール「そんなにやりたいのか…」


ヘルヴィ「………」


ユンス「兄ちゃん!早くいこう!」


ヘルヴィ「う、うん」


ユンスに手を引っ張られ、賑やかだった屋敷には沈黙が訪れる。


ー外ー



アモール「じゃあ地下倉庫からミルクとパンと小麦粉とチーズと川魚を運ぶよ」


ハルン「はーい!」


アモールに連れられて来た地下倉庫はとても冷えていた。


アモール「光魔法(シャイン)」


そういうと天井に光の玉が現れ、暗闇の中の地下倉庫を照らした。地下倉庫には真ん中に魔法陣と、壁際に棚がおいてあり、そこに箱が積まれていた。


ハルン「さっぶ!いま夏ですよね!?」


アモール「ここの部屋には氷魔法(フラウ)の魔法陣が描いてあるからね。込めた魔力が切れるまでは永遠に魔法が発動し続けるんだ」


ハルン「ほぇ~。やっぱりアモールさんは凄いなぁ」


アモール「そんなことないよ。ハルンも少し魔法のことを知れば出来るようになるんだから」


ハルン「じゃあ今度アモールさんが教えてよ!」


アモール「勿論。近いうちにね」


ハルン「やった。アモールさんと一緒だ……うふふ」


アモール「ん?なにかいった?」


ハルン「ううん!何でもないよ!それよりぱぱっと運んじゃいましょう!」


アモール「そうだね。じゃあミルクから運んでしまおう」


そういうとミルクが入ったビンがつめてある箱を運び始めた。


ハルン「あれ?魔法は使わないんですか?」


アモール「魔法陣があるところで魔法を使うと誤差動が起きやすくなるんだ」


ハルン「へぇ~、魔法も万能じゃ無いんですね」


アモール「そういうことだよ」


他愛もない会話をしながら、作業を進めていくうちに、 地下倉庫には何もなくなっていた。


アモール「ここにこれ以上居ると風邪引くから、そろそろ出ようか。上の荷物にも氷魔法(フラウ)をかけたし」


ハルン「はーい」


そういって二人は地下室を後にした。


アモール「今日はほんとに助かったよ。ありがとう」


そういいながらハルンの頭を撫でる。


ハルン「!!」


アモール「うん?どうかした?」


ハルン「な、何でもありましぇん……」


アモール「そ、それならいいけど……」


???「アモオオオオオオオルウウウウ!」


アモール「うわっ!!」


マリア、ルーチェ「はぁはぁはぁはぁ……。な、な、な、なにやってんだぁぁぁぁ(ですの)!!」


アモール「な、何って手伝ってもらってただけだよ!?」


ハルン「マリアさん!?ルーチェさん!?」


マリア「若造は口を出さないでほしいですの!ま、まだわたくしにもあんなことしてくれてないのに!!」


ルーチェ「そうだぞ!あ、頭撫でるなんて…。しかも年下に…。犯罪だぁぁぁ!」


マリア「ふふふふ……、ちょっとこっちにきてお話しましょうね?アモール様?」


アモール「あ、あはは…顔が怖いよ、マリア…」


ルーチェ「つべこべ言わずにこっちへこおおおい!」


アモール「うわぁぁぁぁぁ!!」


服のえりをつかまれ、ひきずられてどこかへいってしまった。


ハルン「………いっちゃった」



ご、ごめんなさいいいいい!とアモールの悲鳴が裏庭の方から響いていた。

 

ー数十分後ー


アモール「うっ、うう…。こ、怖かった……」


ルーチェ「もうあんなことするんじゃないぞ!」


マリア「そうですわ。珍しくルーチェさんと意見が合います」


そう言うと、二人は屋敷の方へ戻っていった。


アモール「も、もう今日は作業を終えて休もう…」


そう言い残し、動物達を集め始めた。


アモール「今日はどっと疲れた……、お、おおお!」


アモールが何に驚いたかというと、それは、厩舎が新品同然なくらい綺麗になっていた。ルーチェとマリアに厩舎自体の掃除は任せたことが無かったが、ここまで出来るとは思ってもみなかった様だ。


アモール「うんうん、僕は感動だよ…」


動物達を誘導しながら感動に浸っていたアモールだった。


ルーチェ「おーい!アモール!」


アモール「どうしたのー?」


ルーチェ「きょ、今日はな珍しく私が料理を作ってやるぞ!」

 

マリア「わたくしも居ますわ」


アモール「急にどうしたの?」


ルーチェ「ま、まぁさっきちょっと言い過ぎたかなっておもって、マリアとそのことを話してたらこうなったわけだ…」


マリア「アモール様はお言葉に甘えて待っていて下さいまし」


アモール「うんうん、わかったよ。せっかくの好意を無下には出来ないしね。言われた通りお言葉に甘えることにする。その間に小麦畑でも見てこようかな」


玄関を出ると、目の前には夕焼けを反射して黄金色に輝く小麦が広がっていた。


アモール「いつみても立派だなぁ…。これもマリアの土作りのお陰だよなぁ…」

 

小麦畑の近くに大きめな家があり、そこにはハルン達三人が住んでいる。その家の先には小さな教会があり、そこでマリアは住んでいる。ピアノや本だったりと色々なものがあり、そこで勉強を教えたりしている様だ。


小麦畑を、周っているうちに時間が経った。


ルーチェ「アモール!飯できたぞ!」


アモール「はーい」


小麦畑の中でアモールの返事がオレンジ色の空に響いた。



マリア「さぁ出来ましたわ!自信作ですの!」


テーブルには鳥の照り焼きやら、色とりどりのピザ、新鮮なサラダ等が彩り豊かに並べれていた。その中、あるものが一際異色を放っていた。


アモール「…これ、ルーチェが?」


アモールが指差したのは、紫色で得たいの知れないものが浮かび上がっている、シチューとみられるものだった。


ルーチェ「えへへ…ど、どうだ…?上手くできたつもりなんだけど…」


アモール「う、うん…と、とっても美味しそう…」


ルーチェ「そ、そうか!さぁ!食べてくれ!」


アモール「マリア、僕が倒れたら、処置お願いね」


マリア「えぇ、気をつけてくださいまし…」


小声でマリアに告げる。


アモール「い、いただきます!」


パクりと一口、口に広がるのは苦くて、辛くて、甘酸っぱくてー、見事に手を取り合わないハーモニーだった。


アモール「」


マリア「アモール様!雷魔法(ヴォルト)!」


ビクンッとアモール電気が流れる。


アモール「ハッ!河が見えた…」


ルーチェ「お、おい!アモール大丈夫なのか!?」


マリア「きっと今日はアモール様、お疲れなのですわ」


アモール「そ、そうだよ。もう大丈夫だから御飯食べよう…」


ルーチェ「そ、そうか…なら良かった…」


アモール「マリア、シチュー食べ終わったらまたよろしく」


マリア「なにも食べきらなくてもいいんじゃないですの?」


アモール「折角のルーチェの料理なんだ。残すわけにはいかない」


マリア「そうですか…ならわかりましたわ。お任せ下さい」


そういうとアモール、ルーチェ、マリアは食事を始めた。ルーチェはずっとうまいうまいと言っていた。


アモール「よし!行くよ!」


ずずずっとシチューを飲み干した。


アモール「うっ…。大丈夫、大丈夫…いける…うぷ。大丈夫…」


マリア「凄い気力ですわ…」


アモール「ちょっと横になるね…」


マリア「それがよいですわ。では、わたくしがお風呂沸かしてきます」


アモール「助かる…よ」


そういってアモールはソファに横になった。


ルーチェ「マリア!風呂沸かすのか?」


マリア「ええ、ついでにわたくしもお借りするつもりですわ」


ルーチェ「じゃあさ!じゃあさ!わたしにも風呂の沸かし方教えてくれよ!」


マリア「別に宜しいですけど…」


ルーチェ「やった!じゃあ先に浴場に行ってるぞ!」


マリアもルーチェの向かった方へ歩いていった。



ー風呂ー


マリア「それにしても湯船大きいですわね…。以前まで一人で入っていたと考えにくい大きさですわ…」


アモールの屋敷には広めの浴場があった。湯船は軽く、5人は入りそうな広さだった。


マリア「ルーチェは魔法が使えないらしいですから…ここまで水を運ぶのは出来ますか?」


ルーチェ「ううう…ここでも魔法かぁ…。すまんなマリア。私にはなにもできそうにないよ」


マリア「まぁそれもそうですわね。それじゃあ見てて下さい」


マリアはそういうと湯船の方を向いてこういった。


マリア「水魔法(ディーネ)」


湯船の上に球体になった巨大な水の塊が現れたかと思うとそれはすぐさまバシャーンと音をたてて落ちて、湯船に水が溢れるほどに溜まった。


マリア「じゃあ外に行って、火を着けてきますわ」


ルーチェ「わ、私も行く!」


浴場の裏側まで行くと、湯船の下の方に魔法陣がえがかれていた。


ルーチェ「これは?」


マリア「火魔法(サラマンド)の魔法陣ですわ。アモール様がお造りになったのでしょう。…これは魔力を込めると熱を発する仕組みになってますわね。ある程度まで水が温まると効果を失うようになっているようですわ」


マリアは魔法陣に魔力を込めた。そうすると魔法陣が赤く光り、熱を発し始めた。


ルーチェ「魔法ってほんと便利だよな。私が知ってるのは、戦闘に使うものばかりだからかな。かといって私が魔法を使える訳じゃないが」


マリア「魔法を使うには知識が必要で、その魔法についてある程度理解していないと、魔法を唱えても発動しませんのよ。それに魔法陣というものは、王国魔道士レベルじゃないと扱えないぐらい構築が難解なものですの。一人前に魔法が使えるようには、理解する努力と魔力量、いわゆる才能が必要になる大変なものですのよ」


ルーチェ「じゃあマリアは魔法をどこで教えてもらったんだ?王都にしか魔法学校はないし、わざわざ王都で過ごしていた人間がここまで移り住むなんて、考えにくいし…」


マリア「そうですわね…。まだお湯が出来上がるまで時間はありますし、少し、昔話でもしながら答えましょう。……本当はわたくしは、日のあびる所にいることの出来ない人間。わたくしがここにいられるようになったのは10年前……」




ー10年前ー


王都、それは人間の大地を一つにまとめた王が住む華やかな街。商業が栄え、文化の最先端をゆく、人間界一の都であった。溢れる人混みの中、アモールはいた。


アモール「王都なんて初めて来たけど、これはすごいや……。珍しいものだらけだなぁ」


街には希少価値の高い宝石や、不思議な曲芸師、本能を刺激する旨そうな肉の薫り。そして城下町を抜けた先に立派な城が建っているのだった。


アモール「うわぁ、あの肉美味しそう…。ハッ!だめだだめだ。本来の目的は違うだろう。えっと、ここを行けば図書館に着くんだよな…」


そういって裏路地を進んだ。


幾分か時間が経った。


アモール「……ここ何処だ?」


ただでさえ、広く複雑な王都だ。ひとつまちがえば迷うことになる。


アモール「しかたない。人を見つけて、道を聞くか…」


すると、商人だろうか、陽気な声が聞こえてきた。アモールはその声の方へ向かった。


アモール「すいません…ちょっとお尋ねしたいことが……!?」


アモールは絶句した。それもそのはず、その商人が売っていたのは、「人間」だった。


奴隷商「おお!いらっしゃいませ旦那様。しかし、お越しいただいたところ申し訳ありませんが、今日はこの無愛想な小娘しか残っておりませんのです」


奴隷商は相手の機嫌を伺うようにニコニコ、ニコニコしていた。少女はみすぼらしい姿でうずくまり、震えていた。


少女「………」


王都では奴隷商は珍しくない。辺境の村の人間、宛のない子供をさらい、高値で売りさばくのだ。特に奴隷は貴族が好んで使用している為、多額の金でも売れる。貴族は、過酷な肉体労働から慰みもの等、その奴隷が壊れるまで乱暴に扱い続けるのだ。


アモール「………」


奴隷商「どうなさいましたか?」


アモール「……雷魔法(ヴォルト)」


奴隷商「あひんっ」


びくんっと商人が揺れる。

指先を商人の額に突き立て、電気を送りつけた。すると、たちまち商人は気絶した。


アモール「………」


アモールは無言で少女の足枷を壊した。


アモール「さぁ、いこう」


少女の手を引き、出来るだけ人目のつかない道を行き、王都の片隅にある小屋の前に預けてある、馬車の方までいった。


アモール「さぁ、乗って」


少女「……いやだ。わ、私、も、戻る…」


アモール「どうして?」


少女「勝手にいなくなったら、お、怒られる。いやだ、いやだ、いやぁぁぁぁぁぁ!」


アモール「…大丈夫。誰も君を怒らない。僕の勝手な、押し付けな言葉だけど、僕は、君を、守りたいんだ」


そういって、少女を強く、強く抱きしめた。


少女「ッ………」


そうしていると、先程の商人と他の男の声が響いた。少女とアモールを探しているようだ。 


アモール「さ、早くのって。布に身をくるんでいればきっとバレないから」


アモールは少女を馬車にのせ、門に向かって走らせた。


門番「お帰りですか?」


アモール「ええ」


門番「………そうですか。ではお気をつけて」


ギギギギと門が開く。早足に馬を走らせた。


大分、王都の門から離れた所で、


アモール「ふう、なんとかなったね」


少女「…何処までいく…ですの…?」


アモール「ずっと先に僕の村があるんだ。

まだ出来て間もないから誰も知らないよ」


少女「…ねぇ、あなたは何者…なの?」


アモール「僕はアモール。しがない酪農家さ」


アモール「それよりさっきの言葉遣い、もしかしていいところのお嬢様だったりして?」


少女「…うん…。マリア、マリア・エルフルト、これが私の名前……。ここに来るときに、言葉遣いと名前は教えてはダメって同じ奴隷の子が…。なんとしても生き延びてって言ってた……ですの」


アモール「確かエルフルトって確か絹織で有名な名家だったはず……。どうして貴族の子供が奴隷なんかに……」


マリア「…わたくしのお家は少し前、燃えてしまったのです…。お父様も、お母様も、お姉さまも……」


アモール「…ごめん。嫌なこと思い出させちゃったね…」


マリア「…大丈夫。その代わり、全部、全部話させて下さい…」


ーーーーーーーー


絹織で有名なエルフルト家は、王都より遥か西の地方に生産所を構えていた。エルフルト家の布は質がよくとても美しく、そして丈夫なもので、絹を織らせたら右に出るものは居なかった。エルフルト家は他の機織りの貴族達とは手を組まず、独自で商品を手掛けてきた。裕福な人間が多い王都では、少々値がはる絹だろうと、質がよければ惜しみ無く金を使う人間ばかりだった。そのせいでエルフルト家の技術を欲しがる人間が現れるのだった。


マリアの父「嫌です。私達は一族だけで繁栄してきたのです。技術を他の者に売るなんてもってのほかです」


貴族「何故ですか!私たちと組めば王都だけでなくほかの地域に進出し、さらなる儲けを得ることができるんですよ!?」


マリアの父「私達には誇りがありますし、今の生活に不自由は有りません。どうかお引き取りを」


強引に貴族を屋敷から閉め出した。


貴族「くそ……このままでは私の絹が売れず、我が一族が滅んでしまう……」


???「ふふふ、お困りのようですね。旦那様…」  


貴族「誰だ!?」


???「身構えなくても…。フフ。私は、ごく普通の商人ですよ……」


商人「ねぇ旦那様、わたしに名案がございますが…」


不気味な笑みで、貴族を見つめる。


貴族「……、話だけでも聞こうじゃないか…」


話をするため、近場の街の酒屋まで行った。



商人「実をいうと私、エルフルト家にある宝が欲しいのです」


貴族「宝……?絹の技術のことか?」


商人「違います。違いますよ。フフフフ、……宝とは、エルフルト家の跡継ぎのことです。フフ」


貴族「跡継ぎ!?まさか貴方は、人浚いなのか……?」


商人「違いますよ…わたしはあくまでも商人。エルフルト家の跡継ぎ、姉の方には、ある特別な力が宿っているらしいのです。私はその力を使って一儲けしたいのです。そして、今頃がその力を目覚めさせる時期ということも。」


貴族「特別な力?それは一体?」


商人「そこまでは言えません。が、これはどうでしょう?…火を…屋敷に火を…ね」


悪魔のような笑みで貴族を誘った。


貴族「!?そのようなことをしたら人殺しだ!私は降りるぞ!」


商人「まぁまぁ、よく考えてください。エルフルト家が滅べば、どうなると思います?」


貴族「それは…絹が作れなくなって…エルフルトの絹が減って…」


商人「そういうことです。エルフルトの人間が実質死んだことになれば、貴方の絹がエルフルトの絹の代わりに売れるようになり、生活は安泰、私は屋敷が燃えている間に宝を奪えば、私も益がでる。ねぇ?いい話でしょう?」


貴族「し、しかし…人殺しは…」


商人「…もう貴方には選択肢などないのです。さぁ…私の眼を見て…」


商人の眼を見つめた貴族の眼には光がなくなっていた。


貴族「…、うう、分かった…。こちらで、準備を…すすめよ…う」


商人「流石でございます。では次の満月の夜、この酒場の裏で…。フフフ」


そうして次の満月を迎えた。



貴族「…こちらで盗賊を雇った。こいつらに火をつけさせよう…」


貴族は俯く。


商人「フフフ……。自分では手を汚さないのですね…。さあ、では行きましょうか…」


悪魔のような笑みで、満月を見上げていた。



ーーーーーエルフルト家前ーーーーー



盗賊「では、屋敷を燃やしてきますぜ…」


商人「傭兵にバレないようにしてください……」


盗賊はそういって、傭兵が巡回してない裏の方へ子分を連れて回った。

商人「さぁ、さぁさぁ!」


油を、屋敷の壁にかけ、松明を投げた。とたんに屋敷の裏口は業火に包まれた。


傭兵「火だと!!?誰だ!そこにいるグエッ」


傭兵が隙を見せた時、後ろから首をナイフで一刺。どさりと倒れた。


商人「……フフフ。これで厄介な物は無くなりましたねぇ…。このナイフには毒が塗られていますか、貴方はもう…助かりませぇん… 。フフフ」


商人「では、目当てのものをさがしにいきますか……」


商人は業火の中に姿を眩まし、貴族は膝を地につけ力が抜けていた。


商人「おやおや、案外すぐに見付かりましたねぇ……」


炎に包まれた屋敷の中には、炎で焼け落ちたシャンデリアに潰されている母親らしき姿と、炎が移ってしまい、焼けてしまった父親らしき姿が屋敷のメインホールに転がっていた。その奥にうずくまっている子供が二人と、その二人を庇うような、黒服の男性があった。


召し使い「くそっ!お前が!お前がこんなことを!」


商人「時間をかけると私まで危なくなってしまいます。あまり邪魔をしないでください」


商人は懐から針を10本取りだし、黒服の男の方へ投げた。


召し使い「うぐっ!」


商人「ただの針ではありません。針には、毒が仕込んであります。しかも特級の麻痺毒です…。フフフ」


商人「さて、それでは本題へ行きましょうか。大きな方が姉ですかね…。フフフ」 


姉の襟をつかみ笑う。


召し使い「アンリ様から離れろ!」


商人「うるさいですねぇ!」


商人が隙を見せた時、


アンリ「火魔法(サラマンド)!」


商人の顔を力強い爆発が襲う。


商人「フフフ。効きませんよ。効きません……」


アンリ「なっ!」


商人「しかし暴れられても、面倒ですので、眠らせておきましょう」


アンリの首に針を刺すと、アンリは力を失った様にぐったりした。


商人「逃げられて生き残りが出るのも、あの方は気に食わないですからねぇ」


そういってマリアの方へ一本、針を投げる。


マリア「うっ……」


マリアの体に痺れが走る。


商人「さて、では私の仕事は終わりですから、おいとまさせていただきます…フフフ」


煙と熱によって視界が遮られた、業火に包まれる屋敷のなかを商人は進み、商人とアンリは姿を消した。


召し使い「…マリア様、手だけでも動かすことが出来ますか…?」


マリア「ええ、今のところは、大丈夫で…す」


召し使いはその言葉を聞くと、体を揺らしポケットから解毒薬を落とした。


召し使い「マリア様、これは解毒薬です。これを飲んで、そこの板を剥がしてください…。地下通路が続いています…。そこからお逃げください」


マリア「…わ、かりましたわ」


マリアは精一杯手を伸ばし、解毒薬を飲んだ。


マリア「さぁ貴方の分を飲まさして差し上げますから、薬を」


召し使い「…申し訳ありません。もう薬は…ないので…す」


マリア「!?どうして!なぜそれを先にいってくれなかったのですか!」


召し使い「それをいったら…マリア様はきっと、薬を飲んでくれません…から」


マリア「もういいです!貴方の分を探して来ます!」


召し使い「マリア様、お願いします…。逃げください…」


マリア「嫌ですの!絶対嫌ですの!貴方を置いていくなんて!」


召し使い「マリア様!私の最後のお願い、聞いてもらえませんか…」


マリア「うっ…うっ…。…………きっと、きっと生きていてくださいまし…。約束ですの…」


そういって地下通路へ走っていった。


召し使い「良かった…本当に…。…旦那様、奥様、今向かいます…」


焼け落ちた柱が召し使いを押し潰した。



いくつの距離走っただろうか。無我夢中で、生き残ることを、陽の光を浴びることを。マリアは強かった。涙はながしたが、後ろを振り返ることは絶対にしなかった。振り返ってしまうと約束がなかったことになってしまいそうで。



ーーーーーーーーーーー



ルーチェ「…すまん、悪いこと思い出させた…」


マリア「いいんですの。もう昔のことですから」


ルーチェ「アンリ……、お前の姉さんは結局その商人の所なのか…?」


マリア「違いますわ。死にましたの」


あっさり、マリアはあまりにあっさり答えた。


ルーチェ「……え」


マリア「私が逃げて奴隷になる前、そう、1週間たったぐらいに、捨てられた新聞で知りましたの。ある深い森に、惨殺された18歳頃の銀色の髪をした女性の死体が有ったらしいですわ。直感でしたわね。まぁ、おねえさまが銀髪だったことも有りましたが。それにお父様といざこざが有った貴族が犯人だと言って捕まっていたところも」


ルーチェ「…すまん……」


マリア「でも、、気になることがありますの。どうして他の貴族を利用したのか、そして、折角さらったおねえさまを何故わざわざ殺したのか。…必要がなくなったから?」


ルーチェ「…お前の所には何か力があって、それ目当てだったのかもな…」


マリア「まぁ、エルフルト家にそんな力有りませんわ。そうだとしてもおねえさまは養子でしたし。もっとさらう理由がわかりませんわ」


ルーチェ「…もしかしたら、マリ「あっお風呂が沸きましたわ。それでは戻りましょう」


ルーチェ「あ、ああ」


玄関に向かって、夜道を歩く。


マリア「…わたくしがここまで明るくなれたのはアモール様のお陰ですの。元々魔法が好きでしたから、その勉強を教えてくれて。行き場のない私をここまで育ててくれて。…本当に、アモール様に出会えていてよかった。わたくしはあの人のためなら、例え火の中、水の中、ですわ」


空を見上げて言った。つられて空を見上げると、今日は満天の星空で、違う世界に居るような孤独感と美しさが込み上げてきた。


ルーチェ「マリア……」


マリア「陰気くさい話しは終わりですの。アモール様を起こしてきてくださいまし。わたくしは教会に戻りますわ。おやすみなさい」


ルーチェ「…ああ、おやすみ…」


マリアは暗がりの道を歩いた。もう姿は見えない。


ルーチェ「…あいつも大変なんだな……。私も…」


ソファに寝ているアモールを揺さぶる。ヘンリルも横で寝ている。


ルーチェ「アモール、風呂。風呂沸いたぞ」


アモール「むふぅ……。あっ、寝ちゃってたんだ…」


ルーチェ「まぁ今日はな、色々有ったから」


アモール「ごめんね。ルーチェ、先はいる?」


ルーチェ「いいよ。先にはいって…」


アモール「そっか。わかった。じゃあ失礼するね」


ルーチェ「私はちょっと外にいるよ」


アモール「え、あ、うん。冷えないようにね」


ルーチェ「ああ」


アモールはそういって浴場へ向かった。脱いだ服をかごに投げる。湯気がこもった中に一人。体を流し、湯船に浸かる。


アモール「どうしたのかなぁルーチェ…。心ここにあらずって感じで……。なにか有ったのかな…」


アモール「考え事してたら眠たくなってきちゃった…。明日は早いし、もう上がって寝よう…」


着替えを済ませ、アモールは自分の部屋に戻る。


アモール「ルーチェ!僕はもう寝るよ!おやすみなさい!」


ルーチェ「ああ、おやすみ」


アモール達の長くて、平和で、楽しいいつも通りの一日が終わる。賑やかだった屋敷は星の世界に呑み込まれたように静かになった。



ーーー次の日ーーー


今日のアモールの一日は早い。隣の町まで商品を売りにいかなければならないからだ。


アモール「荷造りは終わったし……よし、行くかな」


まだ日が昇る前、馬車の用意を済ませ、川に架ける橋を渡る。何故平原が続く場所に川があるのか。それは村を東に少し言ったところに大きな自然豊かな山があり、そこから川が海に流れている。平原地帯に大きな山と川。その光景には理由があった。それは、元々アモール達の村の場所は山を囲むように森が広がっていたのだ。しかし大昔、境界線に近いこの場所では、悪魔との争いがあった。その争いの影響で森は焼け、再生できないほどの火を浴びた。そのせいで焼け残った山と少しの森をを残して周りに草原が広がってしまった。


アモール「ふぁぁぁ…眠たい…。」


隣町までいつもどうりの道を行く。次第に夜が明け、光が差し込む。



ーー村ーー


ルーチェ「zzzzz……」


ヘンリル「バウバウ!」


ルーチェ「ん~、アモール……もうちょっと…」


ヘンリル「クゥーン……」


ルーチェ「……ん、…あぁ、今日はアモール居ないんだったな………」


寝ていたソファから身を起こす。本当なら今頃アモールが朝食を作っているはずなのだが、売り出しにいっていて、アモールの代わりにルーチェとヘンリルの朝御飯が置かれていた。


ルーチェ「ほら、ヘンリル。お食べ」


ヘンリル「ハッハッハッハッ」


餌に飛び付き頬張る。


ルーチェ「……はぁ、いつ頃帰ってくるのかなぁ……」


寂しげな声でヘンリルに話しかける。


ルーチェ「アイツが帰ってくるまでに、作業終わらせて、ちょっと遊びにいこうかな」


そう決めると、朝食をいつものように食べ、動物の世話を済ませると、ハルン達が住む家へ向かった。


ルーチェ「おーい!ハルンー。ユンスー。ヘルヴィー………。あれ居ないのかな。じゃあマリアのところにでも行ってみるか」


教会の方へ行くとハルンの姿が見えた。


ルーチェ「おおーい!ハルン!」


ハルン「ルーチェさん!大変なんです!」


ルーチェ「!一体どうしたんだ?そんな切羽詰まって」


ハルン「ユンスとヘルヴィが!」


ルーチェ「ユンスとヘルヴィが?」


ハルン「居なくなったんです!この紙を置いて!」


そういってルーチェに紙を見せる。


『ハルン。僕達は煌星虫を見に行ってきます』


ルーチェ「煌星虫?なんだそれは」


マリア「煌星虫というのは、朝方にしか姿を見せないと言われる幻の虫ですわ。夜明け前に川の周りで煌めく星のように輝き、光を反射した水面が星空に見えることからそういわれていると聞きます」


ハルン「この辺で煌星虫が見れるって言えば、東の森の奥にある山位なんです」


ルーチェ「ということは、夜明け前、いやもっと前にユンスとヘルヴィは山に行ったってことになるな」


マリア「しかもあそこの山には猛獣や魔物が巣食っているらしいですわ」


ルーチェ「だったら早く見つけにいかないと!」


マリア「しかしどうやって…」


ルーチェ「ふふん!こうみえても私は剣術には自身があるんだ。この件任せてくれ」


マリア「剣術……そうですものね。忘れていましたが王立騎士団の方でしたものね」


ハルン「ええ!ルーチェさん、騎士様だったんですか!?」


ルーチェ「ははは。まぁな。任務を兼ねてこの村に滞在してるんだよ」


マリア「それで、その任務とやら、やってますの?」


ルーチェ「うっ!そ、それは…」


マリア「でしょうね……。…話しはここまでにして早く行きましょう。ルーチェさん、このクッキーを持っていって下さい」


ルーチェ「どうしてだ?」


マリア「これがあれば、ソニーがどんな相手を乗せようと、言うことを聞くようになります。アモール様お手製です」


ルーチェ「成る程、ソニーの大きさがあればユンスもヘルヴィも乗せて帰れそうだな。わかった。恩に着る」


屋敷へ剣と道具を取った後、牧場の方へ行き、ソニーが眠っている木陰へそっと近づいた。


ルーチェ「ソニー……。」


ソニー「ぐご?」


ルーチェ「これあげるからさ、少し言うこと聞いてくれないか…?」


ソニー「!!がう!がう!」


ルーチェ「すげえなこれ…効果覿面だな…」


そういってクッキーを一枚ソニーにあげた。そしてソニーにマタガリ、角を掴んだ。


ルーチェ「よし!ソニー!東の山に向かって出発だ!」


ソニー「がうう!」


ダッダッダッダッとソニーが走る。初めはゆっくりだったがだんだんとスピードが付いてきた。ソニー、クーリールは大人の馬の約2倍の速さで走ることができる。専用の乗鞍を使うことで乗り易さが安定する。


ルーチェ「おっ!早い早い!いいぞー!」


ソニー「がうう!」


調子をよくしたソニーは速度を増した。そして



ルーチェ「着いたな。徒歩で80分て所か」


ルーチェ「じゃあソニー。待っててくれ」


そういって森のを進んでいると、後ろにソニーが付いてきた。


ルーチェ「ソニー…。」


ソニー「がう!」


ルーチェ「仕方のないやつめ!」


にかっとルーチェは笑った。


森の奥まで着くと、山についた。山の中はとても神秘的で、見たこともない植物や動物等がある。その草木を掻き分け、進むうちに、村へ続く清流を見つけた。


ルーチェ「この川を上っていけば、煌星虫が好むカウチュの実があるはずと言ってたな」


カウチュの実とはきいろの果実で酸っぱいのが特徴だ。人間にも人気で市場でも良く見かける馴染み深い果実だ。


ルーチェ「おお!綺麗な鳥!」


清流の奥の方に、白く品のある鳥が、群れで水浴びをしていた。


ルーチェ「さて。そろそろいこうか!」


ソニー「がう!」


川を上って行ったはずなのだが、ルーチェは「旨そう!」といって川から外れて食べ物を取りに行ったり、ソニーは蝶につられてどこかへ行ったりとしているうちに訳もわからない場所へ出てしまった。


ルーチェ「どうみても川じゃないよな…」


ルーチェ達がついたのは泉だった。泉は木に囲まれ、葉っぱが空を覆い、光が少し差し込むようすが、とても神秘的だった。


ルーチェ「うーん。ここにいるわけもないし……ん?あれなんだ?」


ルーチェが見つけたのは、大きな白い物だった。


ルーチェ「でっけぇ卵…」


卵だった。それもルーチェの顔を余裕で覆い隠すぐらいの巨大さだった。


ルーチェ「これあれば、腹一杯食えそうだな……。よし!ソニー!持っててくれ!」


ソニーのルーチェの鞄を乗せ、その中に卵を押し込み、縄でバッグをくくった。


ルーチェ「よっし。じゃあ登ってみるか」


泉を後にし、ユンスとヘルヴィを探してさらに奥地へと進んだ。すると、


?「う、うわぁぁぁぁぁぁ!」


ルーチェ「なんだ!?ヘルヴィ達!?」


声がする方へ駆けていく。幸い道は開けており岩場の方へと続いていた。


ルーチェ「おい!大丈夫か!?」


ルーチェの視線の先には、毛は薄く肌が露出している部分が多い体とは裏腹に、顔は黒い毛でおおわれ嘴からは鋭い歯が見える、おおきな一匹の鳥に迫られて逃げ場が無くなっているところだった。


ユンス「ルーチェおねぇちゃぁぁぁん!」


ユンスが泣きながらルーチェに助けを求める。すると怪鳥がこちらを向いた。


ルーチェ「ユンス!ヘルヴィ!走ってソニーに

乗れ!私が引き付ける!」


怪鳥がヘンヴィを襲おうとしたとき、ルーチェが石を投げる。


ルーチェ「今だ!走れ!」


だだっとユンスを抱えソニーの方へ走る。


怪鳥「カカカカ」


ルーチェの方へ飛び掛かる。ルーチェは腰の剣を抜き、爪を受け止めた。


ルーチェ「王立騎士団……っ、舐めんな!」


受け止めた爪をはじき、隙ができた足元へ一撃。怪鳥はその場に悲鳴を上げ倒れた。


怪鳥「カカカカッッッ!」


ルーチェ「今のうちだ!逃げるぞ!」


ソニーに捕まりその場から全速力で逃げた。


ヘンヴィ「………逃げるったって何処へ行くんですか?」


ルーチェ「そんなんしらん!」


すると上空から、カカカカッッッと叫び声が聞こえた。怪鳥が血眼で追ってきたのだ。


ヘンヴィ「…ルーチェさん!……来ました!」


ルーチェ「しっかり捕まってろ!ソニー、走れええええ!」


ソニー「がううううううっ!」


全速力で走らせていると、なんと崖の方へ出てしまった。


ヘンヴィ「……どうするですか……ルーチェさん」


ルーチェ「多分、私じゃアイツは倒せない…くっどうすれば……」


そのすぐに怪鳥がルーチェ達を崖へ追い詰めるように歩いてきた。崖の下は森が広がり、その先に草原が見える。


ルーチェ「…なぁ、ヘンヴィ。下の森行けば、助かりそうか?」


ヘンヴィ「それは……、多分なんとか…」 


ルーチェ「…よし。わかった」


ヘンヴィ「わかったって…。…え、まさか…!?」


怪鳥がこちらに向かって走ってくる。


ルーチェ「いっけえええええ!」


ソニーに二人を乗せ、しっかりとルーチェに捕まらせて、ソニーに乗った三人と1つは勢い良く崖を走り、飛び降りた。


ルーチェ「ぅぅぅううううおおおおお!」


ヘンヴィ「うわぁぁぁぁぁぁ!」


ユンス「楽しいいいいいいい!!」


ルーチェ「ソニー!あの一際でかい木の枝に噛みつけ!」


ソニーは言われた通り木ノ枝に噛みつき、勢いを殺そうとしたが、勿論枝は折れた。


勢いを殺しきれず、ソニーから三人は投げ出されてしまった。このままでは無事では済まない。


ルーチェ「みんな、ソニーの足をつかめええええ!」


ルーチェはソニーの角を、二人はソニーの足を掴んだ。


ルーチェ「持ってくれよ…!」


剣を一際幹の太い木に刺し、二人と一匹と1つを支えようとした。 勢いをつけた子供二人と怪獣一匹をささえるのに腕に精一杯の力を込めた。


ルーチェ「ぐああああ!」


ルーチェの悲鳴が響く。沈黙が訪れる。


ルーチェ「…はぁはぁはぁ……。大丈夫か!」


ヘンヴィ「…僕達は平気で…す!ルーチェさんは!」


ルーチェ「…平気だ!先に降りろ!」


こんなことをすれば平気な訳がなかった。


ルーチェ「…はぁはぁはぁはぁ…、折れたか?…ん…?」


ヘンヴィ「…ルーチェさん!」


ルーチェ「あ、あぁ」


剣を抜き、地面へと降りた。


ヘンヴィ「…大丈夫です…か?」


ルーチェ「あぁ。それより…これ。なんて奇跡だ…。あんなことをしていて、腕が折れていない…」


ユンス「大丈夫!?おねぇちゃん!」


ルーチェ「ああ、なんともない。しかし、早くこの森を抜けないと…」


怪鳥「カカカカッッッ!」


怪鳥が空からルーチェ達を探している。


ルーチェ「不味いな……。迂闊に動けば見付かるだろうし…」


ヘンヴィ「ルーチェ…さん。僕、マリア先生に知らせるぐらいなら…できる…よ」


ルーチェ「本当か!?ならマリアに騎士団を要請するように伝えてくれないか」


ヘンヴィ「わかっ…た。……風魔法(シルフス)



魔法が唱えられた後、少し強めの風が吹き、半透明の燕のような鳥が、飛び立った。


ヘンヴィ「これ…は、風の魔力で、思いを伝える魔法…」


ルーチェ「良かった……。これでなんとかなりそうだ……」


ユンスが石を投げて遊んでいるとなにかに当たって石が跳ね返ってきた。


ユンス「ルーチェおねぇちゃん。なぁにあれ?」


ルーチェ「あれはな、大猪の仲間の……。え?大猪?」


傷を負った大猪が此方にのそのそと向かってきた。その表情は怒りに狂い、今にも襲ってきそうだった。


ルーチェ「は、はは。ちょっとヤバイかもな…」


大猪「ゴググググ…」


ルーチェ「……、に、にげろおおおおおおお!」


ソニーにまたがり全速力で逃げた。後ろから大猪が勢い良く襲ってくる。しかも上空には怪鳥が居るため、余り開けた場所には逃げられない。


ルーチェ「くうぅ…。不味いな…」


大猪から逃げていると空から奇声が響いてくる。


怪鳥「くかかかかかかっ!」


ルーチェ「やばい!見つかった!」


ひたすらに走り続けた。しかしソニーにも疲れが見え始め、しだいに二匹との距離は縮まっていった。


ルーチェ「…ユンス、ヘンヴィ。私がこの二匹を食い止める。…だから、頼んだ…!」


ヘンヴィ「え………」


ソニーから飛び降り受身をとって地面へと飛ぶ。


ルーチェ「私だって騎士団の人間だ…!かかってこい!」


大猪「グゴゴゴゴ…」


怪鳥「クカカカ!」


剣を鞘から抜き、構える。


ルーチェ「うらぁっ!」


怪鳥は受け止めるように、鋭い爪で応戦する。

ガキィン!と金属音が響く。


ルーチェ「か、硬い…!」


背後から突進音が近づいてきた。


ルーチェ「チィッ!」


ギリギリでよけることに成功する。


ルーチェ(しかし、この二匹を相手にするのは骨が折れるな…。猪の方はどうにかするしか…)


大猪がまたもやむかってくる。


ルーチェ「ぐっ、フゥン!」


大猪「ガフン!」


振り上げた剣が頭上にヒットし、地面に頭がたたきつけれた。


ルーチェ「これで、少しは余裕が出来たか…」


再び剣を構え、切りつける。


怪鳥「カッ、カァァァァ!!」


鋭い爪がまたもや、斬撃を受け止める。


ルーチェ「せいっ!」


爪を押しよけ、蹴りを脚に叩き込む。


怪鳥「グガァァァ!」


ドスンと倒れる音が森中に響く。


ルーチェ「ふう、なんとかいった…」


怪鳥「か、カァァァァ…」


ルーチェ「すまんな…。こうするしかなかったんだよ…。」


そう残して、森の出口へと、足を運んで行った。


三十分後ーーーー


ルーチェ「ふううううう!出れたぁぁぁ!」


森を抜け平原へと辿りついた。


ルーチェ「さて、後は迎えをまつだけか…」


座り込んでいると、森の方が騒がしくなってきた。


ルーチェ「ん…?なんだ…?」


ばざっと一瞬、ルーチェの姿が、空を翔る何かの影に埋れた。


ルーチェ「な、なんで…!?」


怪鳥「グガァァァァァッッ!」


空から巨大な嘴が襲いかかる。


ルーチェ「くそっ!剣が間に合わない!」


ダメかと思ったその時、


???「雷呪(ボルト)!」


怪鳥の嘴に、稲妻が走った。


ルーチェ「!?だ、誰だ!?」


???「…なんとか、ハァ、間に合った…」


ルーチェ「あ、アモール…!?」


アモール「えへへ…」


倒れ込んで居た怪鳥が起き上がり、再び襲いかかる。



怪鳥「グガァァァァァ!」


アモール「ッッ!…うらぁ!」


持っていた剣を抜き、防御の姿勢を取る。


ルーチェ「アモール!」


アモール「雷魔法(ボルト)…!」


右足に電気が溜まり始め、左足を軸にした、回し蹴りが怪鳥の顔にヒットした。


怪鳥「グエエエッッ!」


微弱な攻撃だが、その攻撃は怪鳥を怯ませるには十分だった。


アモール「全員!目を閉じて!」


そう声を荒らげると、アモールは一つの玉を怪鳥になげつけるやいなや、その玉は破裂し、真っ白な光が辺りを包んだ。


怪鳥「アアアアッッ!」


光が弱まり、辺りが見えるようになると、ルーチェはソニーの背中に乗せられ、その場を離れていた。


アモール「あ、あ、危なかった~…」


ルーチェ「な、なんだったんだ!あれは!いきなりお前は現れるし、どうなってるんだ!」


アモール「」


































































































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1件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2015-04-01 10:28:12 ID: IHhzU86_

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