2019-04-12 01:58:48 更新

2017年10月12日(木) PM:14:00


その日、楽は講義が無く、

大学祭の準備も午前中だけだったので、

同じくLABが今日は午前中だけで終わった千棘と、ゲームセンターにデートに来ていた。


千棘 「何だか、ゲームセンターでデートなんて久々ねえ。」


楽 「そうだな。

高校1〜2年の時は、デートネタが尽きたらすぐにここに来てたのにな。」


千棘 「そうだよね〜〜。

高1の時、色んなゲームで勝負して、勝ち越した方がジュースを奢って貰えるって勝負をあんたとして、

最後のゲームのパンチングマシーンで、

私がゲームの機械を壊しちゃって、

店員さんから記念品を貰ったっけ。」


楽 「ああ、あったなそんな事も(笑)。」


ハハハ………


千棘 「私、あの後、「勝負に勝って試合に負けた」感じになって、ここのゲーセンにしばらく来れなかったのよね。

あ!でも、あれから大分時間も経ったし、

今のあたしは星体技(ほしたいぎ)も使える様になったし、またパンチングマシーン、やってみたいかも。」


楽 「やめとけ、やめとけ!

お前は腕力だけですら、16歳でパンチングマシーンの鉄製の支柱をへし折ったんだぞ!?

19になって星体技(ほしたいぎ)まで覚えたお前のパンチなんか喰らったら、

今度はマシーン全体が木っ端微塵(木っ端微塵)になるぞ!」


千棘 「アハハ………冗談よ。」


楽 「で、今日はどれからやる?」


千棘 「そうねえ………あ!楽、アレなんかどう?」


楽 「ん?クレーンゲーム?」


千棘 「あのウサギのヌイグルミ、可愛くない?

私、あれ欲しー!」


楽 「なるほど。よーし、そういう事なら………」


楽、1ゲーム目


ウィーン ガシャンッ ポロッ


千棘 「あ!ウサギちゃん、落ちちゃったじゃ無い!」


楽 「まあ、待てよ千棘。

えーっと、今のヌイグルミの落ちた角度から、このアームの曲がり具合は………」


ゴニョゴニョ


千棘 「ん?」


楽、2ゲーム目


楽 「よいしょっと!」


ガシャンッ ウィーン ポロッ


楽は2ゲーム目で、いとも容易く、千棘の欲しがっていたウサギのヌイグルミを取った。


千棘 「すごーい!

何で?1回目は掴んでもすぐに、落としちゃってたのに!?」


楽 「フフ………1回目はこのゲームの機械のアームの先が曲がっている角度を確かめる為のテストプレイだ。

俺に取っては、一回あれば十分だぜ!」


千棘 「あんたって、スゴ!

やっぱり、小手先だけは器用なもやし君ねぇ。」


楽 「何だと?」


千棘 「アハハ………冗談よ、冗談。」


楽 「ほれ。お前が欲しがってた、ウサギのヌイグルミだ。」


スッ


楽は景品のウサギのヌイグルミを、千棘に差し出した。


千棘 「わぁ!近くで見ると、ますます可愛いーー!」


楽 「気に入ってくれたか?」


千棘 「うん!ありがと、楽!」


ニコッ


ドキッ


千棘の礼の言葉と笑顔に、楽はドキッとした。


千棘 「で、次はどのゲームやるの?」


楽 「そうだな………あ!

そうだ千棘、アレなんかどうだ?」


スッ


千棘 「え?パンチングマシーン?」


楽が右手の人差し指で刺した先にあったのは、パンチングマシーンだった。


千棘 「でもアレ、私がやるとマシーンが壊れちゃうって、さっき言ったばかりじゃ無い?」


楽 「いや、お前じゃ無くて、俺がやるんだ。」


千棘 「え?あんたが?」


楽 「ほら、俺も蒼也に戦闘と星神のトレーニングを受け始めて、もう半年以上経っただろ?

俺のパンチ力がどんだけ上がったのか、

ちょっと試してみたくなったんだ。」


千棘 「なるほどね………

いいんじゃない?やってみなさいよ!」


楽 「おうよ。」


スッ


楽はパンチングマシーンの前に立ち、

ゲームの料金の100円をゲーム機のコイン入れに入れて、グローブを着けた。


千棘 「そういえば楽、あんたの今までのこのパンチングマシーンの自己ベストって、何kg(キロ)だっけ?」


楽 「ああ、確か31kg(キロ)だったな。」


千棘 「ふーん。

で、男の子の平均記録って、何kg(キロ)?」


楽 「よ…40kg(キロ)。」


千棘 「ぷっ、やっぱりあんたって、

もやしよね。」


楽 「うるせーー、俺だって半年間蒼也のトレーニングメニューをこなして、耐えて来たんだ。

見てろよ千棘……………てやっ!」


バガァンッ


楽はパンチングマシーンを、思いっ切り殴った。


ピーー


パンチングマシーン 「55kg(キログラム)です。」


楽 「お!自己ベストが24kg(キロ)も上がった!」


千棘 「すごーい!やったわね、楽!」


店員A 「お!お客さん、凄いねー。

男性の平均値を15kg(キロ)もオーバーしたよ!」


楽 「いえいえ、そんな………」


千棘 「ふふっ、なんか嬉しいな。」


楽 「え?」


千棘 「ほら、私が日本に戻って来た日に言ったでしょ?

「あんたが強くなって、敵対するマフィアから私を守ってくれたら、私、惚れ直しちゃう!」って………

あんたはこの半年、蒼也くんの指導にも耐えて、少しずつ強くなって行って、モヤシだったあんたが、少しずつ立派な男の子になって行く………

私、それを見てると嬉しいわ!」


ニコッ


ドキッ


楽 「そ…そうか。」


楽はまた、ドキッとした。


楽 「なあ千棘、次はどこに行く?」


千棘 「そうねぇ………あ、そうだ!

楽、あんた覚えてる?

高2の終わりに行った、私があんたを元気付ける為のデート!」


楽 「ああ、もちろん覚えてるぜ。」


楽 (なんせ、あのデートで俺は、

「親友」だと思ってたお前の事を、

「好きな女の子」だと、本当の認識が分かったんだからな。)


千棘 「今からあのデートで行った場所に、

もう一度行ってみない?」


楽 「え?」


第1巻 183話 完






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