2019-08-07 12:10:40 更新

概要

提督が帰ってくる三日前。彼は大本営にいた。そこで元帥閣下から極秘裏に特命を受ける。
その内容はとある鎮守府の――ザクザクザクザク――
イチャつきたいシリーズの前日譚、提督の仕事を描いた番外編
あまりいい話ではないなのでイチャつきたいが好きな人は見ない方がいいかも?
1部はR18。2部は全年齢。


前書き

1部 提督が帰ってくる三日前。彼は大本営にいた。そこで元帥閣下から極秘裏に特命を受ける。
2部 ビス子と過ごした夜。寝ている提督のもとに元帥から電話が。切迫した声で元帥は密命を告げる……。




――WARNING――  

――警告――

本作は過激な表現が含まれております。

また、イチャつきたいシリーズの対極に位置する内容となっております

イチャつきたいシリーズが好きな人ほど辛いかもしれません

スプラッタ等に耐性がない方は閲覧を控えることをお勧めします

作者の技量が低いのでさほど怖くはありませんがグロいことに変わりはないので幸せな世界にいたい方は見ない方がよろしいでしょう。


それでも、という方は。

どうぞお楽しみくださいませ。




提督のお仕事




提督が帰ってくる三日前



【マルキュウマルマル】


――大本営・会議室――



コンコン


提督「失礼します。招集命令を受けて参上いたしました」


元帥「手荒に連れて来てすまないね。何ぶん事がことでね」


提督「致し方ないかと。偽装工作としてはあれが最適でした」


提督「して、今回の案件は」


元帥「知っての通り提督の中には艦娘を道具として切り捨てる者も少なくない」


提督「…………はい」


元帥「酷い者となると虐待、凌辱する者もいる」


提督「そういった趣味の者がいるとは聞き及んでいます」


元帥「今回はその者を始末して欲しい」


提督「いつものように憲兵隊で押さえればよろしいのでは?」


元帥「今回の目標はかなり狡猾な奴でな。虐待、轟沈の証拠を掴ませないのだ。おかげでこちらも手を焼いている。監視が厳しく内通者も身動きがとれない状態だ」


元帥「だから君に動いてほしい。鎮守府を内偵し、証拠を掴み、必要であれば目標を消す。極秘で。内密に」


提督「証拠を残さず、隠密に」


元帥「その通りだ。事故に見せかけてもらえれば一番良い」


提督「よろしいので? 粛清の証を残した方が他の者にも伝わるかと」


元帥「そちらは問題ない。対象者にはこちらで手を加えておく」


提督「了解しました」


元帥「艦娘の艤装を用意して育てるのもタダではない。ちり紙のように消費されては困るのだ」


提督「理解しています」


元帥「まぁ君の場合、違う理由もあるだろうがな」


提督「……」


元帥「資料はいつもの部屋に置いてある。方法は任せる。何か必要なものがあれば伝えてくれ」


提督「了解です。すぐに取り掛かります」スッ


元帥「ああ、待ちたまえ」


提督「……」


元帥「どうかね、そろそろ後続に譲ったら? 君の手腕は理解しているが立場があるだろう」


元帥「あの海域を敵も含め掌握してくれたおかげでこちらも助かっている。その維持に努めてほしいのだ」


元帥「それに君は彼女たちといるほうが――」


提督「元帥」


提督「私は私の信条に基づいてこの仕事をしています」


提督「その信条を消さないためにも、ここは譲れません」


元帥「……そうか」


提督「それに汚れ仕事です。若いのに任せられませんよ」


元帥「……余計なお世話だったな。構わん、行きたまえ」


提督「失礼します」


スタスタスタ


元帥(君も充分若造だろうに)


元帥「フッ……。随分と生意気になったものだ」


元帥(…………苦労を掛けたな……)



――大本営・客室――



提督(戦績は……まぁ優秀だろうな。手段を選ばなければそう難しいことじゃない)


提督(しかし出撃に対して資源の消費量がおかしい。明らかに補給が少なすぎる)


提督(着任記録と諜報班による在籍確認数が合わない)


提督(報告書の偽造か。この様子じゃ轟沈数は100は下らないか)


提督「旗艦大破での進撃。捨て艦によるデコイ。これじゃ艦娘の休暇もないな」


提督(旧体制の悪手、か。それほど戦果が欲しいかね)


提督(『鎮守府の一部には、艦娘を感情のない兵器として扱おうとする勢力がいるようです』……か)


提督「自分たちも使い捨てられる駒に過ぎないんだがな…………」



【ヒトサンマルマル】


――ブラック鎮守府――


ブロロロ……


提督(さて。輸送物資に紛れて潜入したはいいが)


シーン


提督(まるで活気がないな。ゴーストタウンだってもう少し生活感があるぞ)


提督(警備室の監視映像を調べるか。それでだいたいはっきりするだろう)


提督(証拠が残っていれば、だが)


シュタッ


スタスタ


夕立「……」フラフラ


提督「!」サッ


夕立「アァ…………」ウツロナメ


提督(あの夕立が……まるで亡者だ……)


トコトコ


提督(やはりここは黒か。早くなんとかしないと……)



――警備室――



提督(監視映像は……これか)


提督(デバイスを繋いで映像をこっちに……っと。これで録画ができる)


提督(何人か映ってるな。様子は……)



――食堂――



赤城「今日も……これだけ……」グゥゥ


赤城「ごはんが……食べたい……」モソモソ


赤城「最近被弾が多かったし、この仕打ち……もうじき私も捨てられるんでしょうね……」


赤城「加賀さん……すぐそちらに……」



――工廠――



明石「はぁ……はぁ……もう……ダメ……」フラフラ


明石「でも、はやく作らないとまた提督に殴られる……」


明石「急がなきゃ……急がないと……」ガクガク



――宿舎――



時雨「ねぇ……起きてよ、夕立」


夕立「――」


時雨「お願い、目を覚ましてよぉ……」ウルウル


夕立「――」


時雨「ねぇ! 夕立! ゆうだちぃ!」


時雨「誰か……助け、て……夕立が、夕立がぁ――」ガクッ


バタン



――母港――



ゴーヤ「これで半分でち……」ズルズル


ゴーヤ「夜までに終わらせないと……」


ゴーヤ「はっちゃんやイムヤみたいに……」ガタガタ


ゴーヤ「頑張らないと……ゴーヤも……頑張らないと……」


ゴーヤ「うぅ……」



――母港2――



電「いやなのです! 行きたくないのです!」


ブラック提督「命令だ。行け」


電「無理なのです! 電1人であの海域になんていったら沈んでしまうのです!」


B提「命令が聞けないか?」


電「お願いなのです! 雷ちゃん助けてほしいのです!」


雷「……」


B提「そうか。なら」


雷「……」スチャ


電「雷ちゃん!?」


雷「うぅ……。ひっく……」ポロポロ


B提「やれ」


電「何をするのです!? やめ――」


ザーー



――警備室――



提督「……」スッ


シャキン


――――――――


――――――


――――


――




――地下・営倉――



B提「ふん」


ドサッ


電「うぅ……」ボタボタ


B提「はっ! 道具が口答えするからそうなる」


B提「さてさて。どうだ? 姉に手足を吹き飛ばされた気分は?」


電「ごめん……なさ……い」


B提「あぁ? よく聞こえないな」


電「ご――」


バァン


電「がぁっ……あぁあ!!」


B提「聞こえねぇつってんだよ。はっきり喋れや!」ガンッ


電「ああああああああ!!」


B提「けっ。もうこれじゃ使い物にならないな」


B提「だが……」


電「!?」


B提「下の方はまだイケるだろ」


電「ぃゃ……やめ……」


B提「口答えすんなつってんだよ!」ドスゥ


電「ガァッ……」


ゲェホッ……ガハ


B提「ったく、汚ねぇなぁ」


B提「まぁこんなんでもなりはいいかんな」


B提「シャバじゃ楽しめないもの楽しませてもらうぜ」


ガサッビリ


電「ぁぁ…………」


電(ああ、この世に神様なんていないのです……)


B提「へへへへ! たまぁんねぇなおい!!」


ビリ……ビリ


電(このまま電は汚されて、ゴミのように捨てられるのです……)


B提「提督やっててよかったぜ! いろんな女で遊び放題だ」


電(救いもなにもなく……冷たい水底へ……生きたまま)


電(雷ちゃん……泣かないで……電はもうすぐ消えるのです。気にする必要なんてなくなるのです)


B提「おぉう! いい色じゃねぇか」


ビリ


電(わたしは……もう……)


ガチャ


電(……?)


B提「あぁ!! 誰だ!! せっかくいいところなのによぉ!! ここには入るなと――」


シュ


B提「え……?」ポタポタ


???「……」


B提「う、うぁぁあああああああ!! 指が! 俺の指がぁ!!」


???「……楽には殺さん」


B提「なんだこのマント野郎!」


シュ シュ シュ


ザク ザク ザク


B提「がぁあ!! 目がぁ! イテェエエエエエエなちくしょぉおお!」


B提「この野郎! 殺してやる! 殺してやる!」カチャ


バァン! バァン! バァン!


スッ


スタタタ


B提「あぁ!?」


???「穏便に事故死と言われたが……」シュ


ドスッ


B提「ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


???「慈悲はない」


B提「てんめぇ! さっきからチマチマナイフで刺しやがってぇ! ふざけんじゃ――」


ドンッ


B提「ガッ」


ゴロゴロ――バァン!


B提「あぁあ……がぁああ……」


???「……」チラッ


電「ぅ……ぁ……」


???「良い趣味だな」スタスタ


シャキン


B提「て、てめぇ……なにを」


???「そういった趣味を否定する気はない」


B提「やめろ……来るなッ……」


???「実は俺もお前と同じ趣味でな」


B提「そのノコギリでなにをッ!」


???「俺も人を壊すのがたまらなく好きなんだ。悲鳴と切り裂かれる音のハーモーニーは格別だぞ。骨を削る音と吹き出る血と悲鳴の三重奏はこの上なく心地が良い」


B提「やめろっ……やめてくれ!!」


???「なぁに、同じ趣味同士仲良くしようや。こういう機会は滅多にないだろう……自分の臓物を見る機会はな!!」


ザクッ


B提「がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


???「ああ! いい音だ! 堪らないだろう! この血肉の臭いに轟く悲鳴! 舞い散る鮮血に! 生暖かい臓腑の感触! 五感のほとんどで味わえる最高のショーだ! お前もこれが堪らないく好きなんだろう! ええ!!」


B提「あぁ……ぁぁ……」


???「おいおい楽しめよ兄弟! せっかく巡り合えた同好の士じゃないか! お前も散々あの娘たちで楽しんだんだろう!」


ザクザク


???「何人殺した? ええ!! さぞやご満悦だろうな! 今の俺も同じ気分だよ!!」


ザクザクザク


???「最高だな!! 思い上がった屑をこの手でいたぶるのは!! これ以上ない喜びだ!!」


ザクザクザクザクブシュ


???「ふぅ……」


B提「…………」ぴくぴく


???「さぁて、じゃ、工廠に行こうか」


B提「……ゅ……る……し……」


???「まだまだお楽しみはこれからだぜ? あそこにはいろんな道具があるからな」


???「ああ、死なないギリギリで痛めつけるなんて軟なことしないから安心しろよ」


???「常に殺す気でいたぶってやる。早めに死ぬんだな。意識が持てば持つほど地獄は続くぞ」


???「死ぬのは止めやしない。死にたいときに死ね。早い方が楽だ」


B提「…………」


???「じゃあまずは工廠まで引きずりの刑だ。そこそこ距離があるな。傷口が削れて痛いだろうが頑張れよ。いや、頑張らない方がいいのか? まぁいい。鉤縄つけてっと。おら、いくぞ」


電「ぁ……ぅ……」


???「ついでにこいつも風呂に放り込んでおくか」


電「……」


???「距離が伸びるぞ、よろこべー」


ヤメロォ……ヤメテクレェ…………


ズルズルズル


ガアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ――


電「ぁ…………ぅ――」


――――――


――――


――




――2日後――


――医務室――



電(電が次に目を覚ましたのは、医務室のベッドの上だったのです)


電(雷ちゃんが泣きながら謝っていたのを覚えています)


電(なんでも提督が工廠で『不慮の事故』により機械に挟まれて死亡)


電(急遽臨時で駆けつけた提督が私たちを介抱し、鎮守府の立て直しをしてくれたそうなのです)


雷「電…………ごめんなさい。ごめんなさい」ポロポロ


電「電はもう大丈夫なのです。雷ちゃんも辛い思いをして大変だったのです」ナデナデ


雷「でもぉ……わだしは…………」ボロボロ


電「入渠して体は治ったし、提督さんもいなくなりました。だからもう、大丈夫なのです」


電(あの日のことは謎が多いのです。あのマントの人はなんだったのか……それにあのマント……)


多摩「ご飯の時間だにゃ♪」テクテク


電(工廠には明石さんがいたはずなのに何も見ていないって言うし。営倉から入渠場、工廠に至る床はいつの間にか綺麗に拭きあげられていた)


電(これが意味することは……)


トントン



|ω・`)ノ ヤァ



提督「怪我の方は大丈夫かい?」


電「あ、はい、大丈夫なのです……?」


電「あの……あなたは……?」


雷「臨時で駆け付けてくれた司令官さんよ! とっても優しいのよ!」ダキッ


提督「こらこら、雷。そんなにくっつかないの」


雷「むー。いいじゃない別に。雷に甘えていいのよ!」


提督「それはまた今度な。それより大事に至らなくてよかったよ。僕が駆けつけた時にはすでに入渠場で酷い有様だったからね。ほんと、治ってよかった」


電「きっと妖精さんが頑張ってくれたのです」


提督「そうなのか? ……修復の原理はしらないからなぁ……」


電「ところで、電に何かご用なのですか?」


提督「ああ。いま事故の捜査というか検証をしていてね」


提督「辛いことを聞くようだけど大丈夫かい?」


電「……大丈夫……なのです」


雷「電、無理しちゃだめよ」


電「……」コクリ


提督「ここの提督は工廠にあった装備開発の機械に挟まって原型もわからないくらいぺたんこになってたんだ」


提督「しかし足でも滑らせない限り機械に挟まるなんてありえない。君は事故の前に提督と一緒にいたらしいって話だけど何か知らないかい?」

 

提督「例えば、提督が酷く酔っていたとか錯乱状態だったとか」


電「……」


――ザクザク


――ハハハハハ!


電「いえ……なにも知らないのです」


提督「そうか……それは残念だ。目撃証言もなにもないし……」


提督「となるとここの提督は酔ったか体調不良でうっかり足を滑らせて機械に落っこちた……ってことか」


提督「それで上が納得するかな……いやでも、他には何もないし……」


提督「いやはや。とりあえず工廠の安全管理を大本営に打診しないとな」


提督「辛いことを聞いてすまなかったね。あとはゆっくり休むといい」


雷「そうだ! 電、のど乾いてない? 何か飲み物買ってくるわね!」


電「りんごジュースが……飲みたいのです」


雷「わかったわ! 司令官もどう?」


提督「いや、僕は後続への引き継ぎの準備をしないといけないから、これで失礼するよ」


雷「そう……。なら、執務室に持って行ってあげるわ!」


提督「本当かい? ありがとう」なでなで


雷「当然よ!」えっへん


雷「じゃあ買ってくるわね!」スタタタ


提督「走ると危ないぞー」


電「……」


提督「じゃ、僕はこれで失礼するよ。しばらくは任務もなにもない。ゆっくり休養を取るといい。君たちは辛い思いをしたんだ。しばらく……いや、ずっと休んでも咎めるものはいない」


スタッ……ガチャ


電「あの…………」


提督「ん? どうしたんだい?」


――ザクザクザクザク


電「いえ…………」


電「なんでもないのです」


提督「そうか……」


提督「それはよかった」ニコッ


電「!!」ゾワッ


提督「ふふ……」


提督「早く良くなるといいね。そんじゃ失礼」


バタン


電「……」


電(あの人には……なにか……得体のしれないものを感じたのです……)


電(でも、これでいいのです……。あの提督がいなくなって、みんな幸せなのです)


電(これで――)


――アハハハハハハ!!


電「……」ブンブンブン


電(あの事は忘れるのです。そうです、あれはきっと夢)


電(電はボロボロになって悪夢を見ていた。その間に提督が事故死した)


電(それが現実なのです)


電「きっと……そうなのです……」ガタガタ


電「そう……なのです」ガタガタ


電「それが真実なのです!!」ガタガタ――スゥー


電「はぁ……はぁ……ふぅ……」


雷「電大丈夫! 何か叫び声が聞こえたけど!!」


電「あっ…………だ、大丈夫なのです。ちょっと怖い夢を見ただけなのです」


雷「……そう」


雷「もう。大丈夫なのよ」ギュウ


電「あ……」


雷「もうあの提督はいないわ…………今度こそ、私が電を助けるわ」ナデナデ


雷「だから、安心していいのよ……」


電「…………ありがとう、なのです」ギュウ


――――――


――――


――


???「……ふっ」


スタスタスタスタ




【フタマルマルマル】


――リムジン・車内――


提督「……はぁ」


運転手「お疲れですな。提督殿」


提督「上に立つっていうのも楽じゃなくてな。ついて回る責任にどう向き合うか、悩んでばかりの日々だよ」


運転手「ははは。私のような運転手は気楽なものです。ただ言われた場所に主を連れていく」


運転手「それ相応の苦労はありますが、提督殿ほどの責任とは無縁ですな」


提督「戦争が終わったら、運転手にでも転職しようかな」


運転手「ははははは! それはいいですな! しかし、戦争が終わる見込みなどあるのですか? 相手は未知の生命体なのでしょう?」


提督「この戦争も、もうじき終わる」


運転手「ほう……それはそれは。景気のいい話ですな」


提督「あと少しだ。そう難しいことじゃない」


提督(あいつらさえ消せば、もう誰も沈まない)


提督(誰も苦しまない)


提督(そして……深海棲艦も増えない)


提督(そうすればこの戦争は終わる)


提督(深海棲艦を味方につけた今、敵となるものは限られている)


提督(呪われたばかりで憎悪に駆られた、生まれたばかりの深海棲艦だけだ)


提督(沈む艦娘を無くし、深海棲艦の誕生を無くせば)


提督(憎しみの連鎖を断ち切れば、彼女たちは自由になれる)


提督(そうすれば、平和な世界で、なんの不安もなく生きていける)


提督(みんなで笑って暮らせるんだ……)


提督(その為に……平和のために……)


提督(僕は……この手を――




























――???――


?「……はい」


?「……ええ」


?「はい。それが本件の顛末です」


?「そうです……。はい。なんとか予定通りに」


?「艦娘たちのケアは最重要課題かと。ええ。そうです。かなり酷い状態でした」


?「特に暁型4番艦電と工作艦明石は精神的にかなりの負荷が」


?「はい。あの男が少々暴走を……」


?「ええ。偽装工作と事後処理はなんとか」


?「はい…………その点については感謝しています」


?「……しかし、他にもやりようは……」


?「わかりました。終わり良ければ全て良し、ということで」


?「納得はできませんが……理解はします」


?「はい……はい……。わかりました。では今後とも援助をお願い致します」


?「はい……。それでは。元帥閣下」


ガチャ


?「……ふぅ」


?「もう、誰も傷つけさせない」


?「もう、誰も泣かせない」


?「わたしが、みんなを――」




――助けるわ




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提督のお仕事 2部



【マルサンマルマル】


――提督の私室――



――チリリリン


ガチャ


提督「もしもし?」


元帥「いやぁ夜分遅くにすまないね」


提督「いえ……。しかし元帥、よろしいのですか? この電話は私用のものですので盗聴の恐れが……」


元帥「事態は切迫しているということだ」


提督「!」


元帥「寝ている君に至急繋ぐにはこれしかなかったのだ」


元帥「すまないが君にはすぐに動いて欲しい。大至急だ」


提督「状況は?」


元帥「詳細はここでは話せない。今すぐ第7鎮守府へ向かって欲しい」


提督「第7鎮守府ですか?」


元帥「ああ。詳細はそこで伝える」


提督「了解しました」


元帥「頼むぞ。今回は過去に類を見ない状況だ。心してかかってくれ」


提督「了解。ただちに向かいます」


ガチャ


提督「……」


提督「ごめんね……ビスマルク」


バタン


――――――


――――


青葉「あわわわ……。青葉、見ちゃいました……」




【マルゴウマルマル】



――第7鎮守府・正門付近の路地――



提督「第7鎮守府……ここで何が……」


提督「元帥や諜報員は見当たらないし……どうやって連絡を」


テレレンテレレン


提督「?」


提督「これは……」スッ


ピッ


提督「もしもし」


元帥「着いたか。思ったより早くて助かったよ」


提督「大至急とのことでしたので。状況は?」


元帥「非常にマズイことになった。次期作戦が発動準備に入ったのは聞いているね?」


提督「はい」


元帥「第7は今期作戦で最前線基地になる予定だった。艦隊の練度戦果共に高かったからな」


元帥「だが作戦前に査察に行ったところどうにも様子がおかしかった。諜報班を動かしたところ、黒だと判明した」


元帥「ここの提督は元科学者でな。医学の心得もある切れ者なのだが、その知識を活かして、艦娘たちに薬物を投与しているらしい」


提督「何ですって!?」


元帥「艦娘とて中身は人と同じだ。薬物を応用できないわけではないだろう」


元帥「調査の結果、所属する艦娘の殆どに何らかの薬物が投与されているらしい。詳細は不明だが、鎮守府内の艦娘たちはどこか上の空だった」


元帥「十中八九、洗脳か、催眠の類だと思われる」


提督「人体への影響は?」


元帥「それも不明だ。薬物による負荷や副作用は未知数。効果も不明。身体的能力を無理やり強化するものなのか、意識を混濁させて無理な命令を下しているのか」


元帥「どちらにせよ艦娘が正常な状態でないのは確かだ。前線基地がそんな状態では作戦に支障が出る」


提督「そこで私に至急処理に当たれと」


元帥「そうだ。正規の手順で憲兵隊を動かしていたら証拠隠滅の恐れがある」


元帥「君の任務は3つ。鎮守府内の偵察、第7提督の捕縛、解毒剤の確認・確保だ」


元帥「特に解毒剤は最優先だ。最悪他2つに失敗しても解毒剤の情報さえあれば構わん」


提督「第7の提督を締め上げればいいのでは?」


元帥「言っただろう奴は頭が切れる。捕らえたところで素直に喋るとは限らんし、最悪自決の恐れもある」


元帥「奴は人を自分の思い通りに動かそうとする男でな。他人を手のひらで踊らせて喜ぶタイプだ。逆に思い通りにならなければすぐさま切り捨てる。そういう奴だ」


元帥「それが自分の命だろうとな。奴ならやりかねん」


提督「なんでそんな精神異常者が提督になれたんです?」


元帥「優秀だった。それに尽きる」


提督「結果が出せれば中身は二の次ですか」


元帥「そう言うな。選んだのは私ではない」


元帥「鎮守府内の警備も厳重なはずだ。潜入は困難かもしれん」


元帥「その上艦娘たちが何をするかわからない。充分注意して事にあたってくれ」


提督「増援などは?」


元帥「部隊の招集、準備に時間がかかる。移動も含めて2時間といったところだ」


元帥「付近に諜報班が潜伏してはいるが、戦力としては期待できない」


提督「了解。臨機応変に対処します」


元帥「頼んだぞ」


プツッ


提督「…………」


提督「さて、どうしたものか」


――――――


――――


――


――第7鎮守府・宿舎――



提督「やれやれ……監視網を抜けるのに手間取ったな。ここは……宿舎か」


提督「でもこの時間じゃみんな寝てーー」


ユラァ


提督「!」


川内「ぁ……」


提督(川内?)


川内「」ボー


提督(元気がない……というより意識が朦朧としてるのか?)


提督(あの夜戦馬鹿が……)


川内「……」ユラユラ


提督「これが薬物の影響か……」


提督「麻薬の症状に幻覚や脱力があると聞いたことがあるが、まさか……」


提督「急いで情報を集めないと」


スタタタタ


―――――――


――――


――


――工廠――



提督(とりあえずここに来てみたが……)


提督(手がかりはあるだろうか)


提督(ピッキングして扉を開けるか)


ガチャ


夕張「コンデンサに回路を取りつけて規定値を……」ブツブツ


提督(あれは……夕張?)


提督(こんな時間になにを?)


夕張「でも回路図だとここは……」ブツブツ


提督(目のくまが酷いな……薬物の症状だとしたら不眠症か?)


夕張「」ブツブツブツブツ


提督(少し手荒だが)スタッ


カチ


ビリビリ


夕張「ああッ!!」


バタン


提督「提督七つ道具、スタンロッド」


提督「ゆっくりおやすみ、夕張」


提督「さてと、薬の手がかりは……」


ガサゴソ


提督「ここにはないか……」


提督「となると……薬物だし医務室か?」



――医務室――



??「うぅ……」


提督「ん?」


長門「く……す……」


提督「長門……」


長門「くす、りを……だれか……」ガタガタガタガタ


提督「これは……これほどとは……」


提督(かなり重症だな……禁断症状か?)


提督「この部屋のどこかにあるのか?」


ガサゴソ


提督「これは……調合書か?」


提督「どれも違法薬物ばかり……」


ガチャ


提督「!」スタッ


??「……」


長門「てぇ……とく……」


提督(あれが第7の提督か……?)


7提「……」


7提「……」プスッ


長門「うッ……」ガクッ


提督「!?」


7提「ふん……」


ガタッ


7提「…………ん?」


シーン


7提「…………ふん」


ガチャ……バタン


提督「おい! 長門! しっかりしろ長門!」


長門「」


提督「…………」


提督「…………野郎……」




【マルロクマルマル】


――指令室――



バァン!


???「…………」


7提「ほう……工廠や医務室で何やら違和感を感じたが、侵入者がいたとは驚きだ」


7提「君かね? 近頃噂になってる提督殺しというのは?」


???「答える義理はない。あんたがここの提督だな?」


7提「随分と、好き勝手してくれたようだな」


???「あんたほどじゃない」


7提「その様子だと、証拠は掴んだようだね」


???「ああ。違法薬物に投与の痕跡。独自の調合も施したようだな」


7提「効果は悪くないぞ? 身体強化に絶対的な服従。兵士としてより完璧な存在に近づいた」


???「その代わり、随分と笑顔が減ったように見えるが」


7提「兵士に感情は必要かね? 兵士に必要なのは強靭な肉体とどんな命令にも服従する忠誠心だ」


???「忠誠心の欠片もないような奴がよく言う」


7提「私は下された任務を十全に全うしているよ」


7提「些か手法が皆と違うがね」


???「艦娘は道具じゃないんだぞ」


7提「いいや。アレはただの消耗品に過ぎない。いくらでも替えが利く」


???「いいや。彼女たちも人間だ。変わりなんていない」


7提「ふっ。笑わせてくれる。アレのどこに人間性があるというのだね?」


7提「どんな傷も治り、人より遥かに優れた運動神経を持ち、重厚な艤装をも操る」


7提「あれは人間などではない。ただの道具だ」


???「傷つけば泣き、動けば疲れて、恋の話もする」


???「充分素敵な乙女じゃないか」


7提「戯言を。私の艦娘は泣くこともなければ疲れることもない。恋の話などもってのほかだ」


???「薬漬けでそうしたくせによく言う」


7提「より兵器としてあるべき姿に近づけただけだ。アレを人と見る方が理解に苦しむね」


???「思い上がるなよ人間。貴様らが勝手に決めた枠組みで、生命を語るな」


7提「はっ! ご高説どうも。あれが生き物だと思いたいならそう思えばいい。私にとってあれはただの道具に過ぎないのだよ。たとえ血を流そうが涙を流そうがね」


???「血も涙もないお前は、果たして本当に人間なのかな?」シャキン


7提「確かめるかね? 私の血が何色か?」カチャ


???「……」


7提「……」


ザッ――


???「!」スタッ


7提「悪くない動きだ」バァン


???「……」スッ


7提「ほう」


???「!」シャキン


7提「ふっ」スッ


???「!?」


7提「動揺が顔に出ているぞ?」バァンバァンバァン!


???「!」カァンキィン


ドスッ


???「ッ!」


7提「驚いたな。まさか急所を狙った弾を弾くとは」


???「元学者の割には、随分いい腕じゃないか」ドクドク


7提「これでも訓練は積んでいてね。君ほどじゃないが運動は得意だ」


7提「それに、私にはこれがある」スッ


???「なるほど……。自分にも薬を打っていたわけか……」


7提「これはいいものだよ君。まるで世界が止まって見える。感覚を極大まで覚醒させて思考を何百倍と加速させるものだ」


???「へぇ。そいつはいいな。考え事に便利そうだ」


7提「ああ。思考を巡らせるのにこれほど便利なものもない。視覚からの情報伝達もその処理も常人の数倍だ。君の動きも止まって見えるよ」


???「そいつは困ったな。俺は速さが売りだったんだが」


7提「すまないね。特技を無効化してしまって」


7提「ところで。私は銃弾に特殊な仕掛けをしていてね」


???「あまり聞きたくないな」


7提「そうかね? 聞いておいた方が後々役立つと思うが?」


???「いや……もうだいたい察しがついてるからいいよ」ガクッ


7提「遠慮するな。弾丸の表面に即効性の神経毒が塗布されていてね。掠めただけで動けなくなるんだが――」


???「……」ガクガクガク


7提「意外と頑丈なようだね。並みの人間なら筋肉が弛緩して指一本動かせないんだが」


???「一応解毒用の装備も仕込んであってね……なんとか持ちこたえてるのさ」


7提「用意周到のようだね」


???「こういう仕事をしてるとどうしても用心深くなるもんさ」


7提「なるほど。道理だな」


???「ところでよ」


7提「ん?」


???「俺は秘密の七つ道具を持っていてな。応用の利くものをいくつか持ち歩いてるんだ」


7提「たった今バラしたが、いいのかね?」


???「細かいこと気にするなよ。道具の種類は擬装効果の高い北方迷彩。潜入戦闘捕縛、何かと便利な鉤縄。視界遮断、離脱用のスモークグレネード。敵と機械を無力化するスタンロッド」


???「他3つ、なんだと思う?」


7提「なかなか興味深い話だね。暗殺者が持ち歩く道具か……」


???「感覚が鋭くなってるあんたに、結構利く道具もあるんだぜ」ドクドク


7提「ほう。それは面白い」


ピローン! ピローン!


7提「ん?」


7提(何の音だ?)クルッ


???「ひとつは暇つぶし兼陽動のゲームボーイ」


ゲームボーイ『ピローン! ピローン!』


???「」ピンッ


7提「ハッ!」


???「もう1つは陽動兼制圧用のスタングレネードだよ!」ポイッ


7提「しまッ」


バァン!


キーーーーン


7提「があぁあああああああああああああ!」


???「咄嗟に目は塞げても耳は塞げまい」


???「感覚が、視覚や聴覚が増してるあんたには、結構利くだろう?」


7提「きぃぃさまあああああああああああああああああ!!」


???「喚くなよ。こっちだって撃たれて痛かったんだ」


7提「ごろしてやる! ごろして――」


???「うるせぇ」ザクッ


7提「ぁぁ……」ガクッ


バタン


???「任務は捕縛だったが……まぁいいか……」


???「あの世で皆に詫びてこい」


???「さて」


ピポパ


???「ブラック6からHQへ。第一目標をクリア。これより第二段階へ移行する」


?「こちらHQ了解。あと1時間ほどで憲兵隊がそちらに到着します。それまでに――」


バァン!


???「!?」


ドガーン!


?「こちらHQ! 今の爆発音は何ですか! 至急状況報告を!」


???「今のは……」


ピコーン……


???「電探に敵影……。はぐれ艦隊でも流れて来たのか?」


?「ブラック6! 状況の報告を!」


ピココーン


???「艦影2……この速度は駆逐艦クラスか……?」


?「聞こえていますか! ブラック6!」


ピコココーン


???「追加で3……戦艦と重巡……か?」


ピコココココココココココココココココ――


???「!?」


???「これは……」


?「ブラック6!」


???「こちらブラック6! 鎮守府周辺に艦影多数! 詳細は不明! 30は軽く超えてる!」


?「なんですって!」


???「鎮守府を囲むように展開中! 攻撃を受けている! 至急増援を求む!」


?「そんな…………なんで今!」


???「そんなの知るか! 俺は今から艦隊の指揮を執る! とっとと増援を回せ!」


?「ちょ、ブラック6! 今は隠密作せ――」


ブツ


???「警報は……これか!」ダンッ



ブ―――――――――



――工廠――



夕張「…………うぅ……この音は……」ボー


――宿舎――


川内「…………敵襲…………?」ボー


――指令室――


ブ――――――――


ブ――――――――


???「……くそ! なんで誰も動かない!? このままじゃ!」


7提「ははは…………ざまは…………ないな」


???「貴様!」


7提「…………ここの艦隊は……私の命令しか聞かないし……自分で考えて動くことなどしない……警報など無駄だ……」


???「なんだって!」


7提「せいぜいあがくがいい…………深海棲艦どもに、いたぶられながら、な……」ガクッ


???「クソッ!」



【マルロクサンマル】


――提督の鎮守府・食堂――



ビスマルク「全く! 寝ている私を置いてどこに行ったのかしら!」


プリンツ「ビスマルク姉さま、機嫌直してくださいよー」


ビスマルク「もう!」


プリンツ「うー…………」


加賀「今朝から提督が見当たらないのだけれど、赤城さんなにか知りませんか?」


赤城「いえ……珍しいですね。提督が朝食に顔を出さないなんて」モグモグ


青葉「ふふふーん♪」


青葉(みんな提督の居場所がわからなくて困ってるみたいですねぇ)


青葉(これは青葉の情報が高く売れるチャーンス!!)


青葉「お、今日の朝食は鮭ですか。好きなんだよね~」


大淀「ここにもいない……」


ビスマルク「あら、大淀。あなたも提督を探してるの?」


大淀「はい……大本営から緊急の連絡が入りまして。提督に指示を仰ごうかと」


ビスマルク「緊急? 珍しいわね。何があったの?」


大淀「なんでも、第七鎮守府が深海棲艦の襲撃を受けて半壊状態だとか。至急増援に向かわれたし、と」


バリ―ン!


大淀「?」


ビスマルク「ちょっと青葉。トレーくらいちゃんと持ちなさいよ」


青葉「ぇ……」ワナワナ


ビスマルク「また何かネタでも探してボーッとしてたんでしょ? 全くあなたは――」


青葉「いまの……はなし……」


大淀「襲撃の話ですか?」


ビスマルク「青葉、話を逸らすんじゃ――」


青葉「第七鎮守府って言いましたか!?」


大淀「ええ……そう言いましたが……」


ビスマルク「どうしたのよ青葉? 顔が真っ青よ? どこか悪いの?」


青葉「あぁ……」ガクッ


ビスマルク「青葉!!」ガシッ


ビスマルク「だ、大丈夫!? しっかりしなさい!」


青葉「……るんです……」


ビスマルク「なに? 聞こえないわ」


青葉「第七鎮守府には今……」


青葉「私たちの提督がいるんです!!」


ビスマルク「!?」




【マルナナマルマル】


――第七鎮守府・母港――



ドーン


ドガーン


提督「はぁ……はぁ……」


提督「鎮守府の迎撃システムでなんとか防いでるが……」


提督「流石に限界だな……出血もそろそろヤバい……」


提督「結構時間は稼いだつもりだったんだが……」


深海棲艦s「」ゴゴゴゴゴ


提督「敵はすぐそこまで来てるな……」


提督「クソッ!」


ガチャ


提督『鎮守府内にいる全艦娘に告ぐ! 動ける者は負傷者を連れて大至急逃げろ! 繰り返す! 負傷者を連れて大至急逃げるんだ!』


シーン


提督「何度やっても反応は変わらないか……」


提督(もしも……もしも深海棲艦に過去の、艦娘の記憶が残っているとしたら)


提督(自分たちを殺した提督に復讐しに来るのも道理だな。それでこの数か……大したもんだぜ全く)


提督「せめて僕がいないときにやって欲しかったなぁ……とんだとばっちりだ」


ドガーン!


提督「チッ。このままじゃ格納庫に火が……そうなったら笑えないぞ……」



――第七鎮守府・近海――



ビスマルク「第七鎮守府はこの進路で間違いないのね!」


青葉「はい! このまま南南西に真っすぐです!」


瑞鶴「でも、敵は大艦隊なんでしょ! 私たちだけで防げるの!?」


加賀「なら逃げる?」


瑞鶴「冗談じゃないわ! あそこには提督さんがいるのよ! なにがあっても助けるわ!」


加賀「当然ね」


鈴谷「提督……無事でいてよね……」


金剛「皆さん! 見えてきました!」


鈴谷「そんな!!」


金剛「Shit!」



深海棲艦s「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



ビスマルク「なんて数なの!」


瑞鶴「それでもやるしかないわ!」


加賀「そうね……時期に他の増援部隊も来るはず。それまで持ちこたえるのよ!」



――第七鎮守府・母港――



ドーン


提督「増援は……まだか……」


ユラァ


提督「?」


川内「……」ボー


提督「川内! なんでそんなとこに!」


川内「ぁぁ……」


提督「おい! しっかりしろ! 外は危険だ! こっちへ」 


川内「ハッ! ああああああああああああああああああああああ!!」


提督「!?」


川内「那珂……神通……よくも! よくも2人を!!」ガシッ!


提督「落ち着け! 僕は!」グググ


川内「ああああああああああああああああああああああ!」


提督(薬で幻覚を見てるのか! マズイ、このままじゃ!)


提督(こうなったら、スタンロッドで!)


川内「させるかぁ!」バシッ


提督「しまっ――」


川内「よくもみんなを!」シャキン


提督(しまった!? 僕のナイフ!)


川内「死ねぇえええええ!」ザスッ


提督「ガハッ!」



――近海――



鈴谷「ちょっと! あそこにいるの提督じゃない!」


ビスマルク「誰かに襲われてるわ!」


瑞鶴「急いで救援に!」



――母港――



提督(なんてこった……これじゃ……)


川内「殺してやる殺してやる殺してやる!」


提督(なんとか正気に戻さないと……)


川内「殺してやる!」スッ


提督「川内……」ギュウ


川内「!? 離せ! 離せええええ!」


提督「落ち着くんだ! 僕は敵じゃない!」


川内「うるさいうるさいうるさい!」ザクッ


提督「ぐッ……! 大丈夫、大丈夫だ! 僕は君の味方だ! 君は1人じゃない!」ギュウゥ


川内「ぇ……」


提督「落ち着いて……そう、息を整えて。僕は味方だ。敵じゃない」ナデナデ



――近海――


金剛「なんとか無事みたいデース!」


加賀「でも砲撃はまだ続いてるわ!」


青葉「急いで安全な場所に!」



――母港――



川内「あれ……わたし……いったい……?」


提督「大丈夫だよ……君には僕がついてる……だから安心して……」


川内「あなた……だれ?」


提督「通りすがりのお兄さんさ。艦娘が大好きな」


川内「……? あなた、血が!」


提督「なぁに……ちょっと掠めてだけだ」


川内「うそ! ああ、こんなに血が! 急いで止血を!」


深海棲艦s「」ドォン!


川内「!」


川内(しまった! 艦砲が!)


提督「ッ!」


ドン


川内「……え?」


提督「君たちは……」


川内(体が離れていく。彼が遠くになっていく。待って。行かないで!)



提督「幸せになってね」ニコッ



ドガーン!



川内「あぁっ!!」ゴロゴロゴロ


川内(衝撃で体が飛ばされた。全身が悲鳴を上げる。でもそんなことどうでもいい。彼は、あの人は!?)


川内「そんな……え? うそ、でしょ……?」


シーン


川内(立ち込める爆煙。抉り飛ばされた地面。さっきまでいた場所には、何も残ってなかった)


川内「ねぇ……返事してよ……?」


川内「ねぇ! ねぇってば!!」


川内「嘘だ、嘘だ嘘だ! そんな……なんで……」


川内「いやあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」



――近海――



加賀「そんな……」ガクッ


ビスマルク「どうしたの加賀! 早く提督を!」ドォン


金剛「ウソデスウソデスウソデスウソデスウソデスウソデスウソデスウソデスウソデスウソデス」


ビスマルク「青葉! 何があったの状況の報告を!」


青葉「提督が……敵の砲撃を受けて……」


ビスマルク「なんですって!」


瑞鶴「よくも! よくも提督を!」


ビスマルク「落ち着つきなさい瑞鶴!!」ガシッ


瑞鶴「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!」


鈴谷「見て! 敵が引き上げてくよ!」


ビスマルク「え?」


瑞鶴「逃がすかぁああああああああああ!」


ビスマルク「鈴谷! 瑞鶴を抑えるの手伝って!」


鈴谷「え? え? 何があったの!?」


ビスマルク「いいから! はやくこっち来て!」



――――――


――――


――



加賀(それからすぐに、増援部隊と憲兵隊が第七鎮守府に到着しました)


加賀(敵がなんで撤退したのか、それはわかりません。増援が来たからなのか。目的を果たしたのか)


加賀(第七鎮守府の艦娘たちは皆、薬物中毒でとてもまともな状態ではありませんでした)


加賀(特に川内さんは精神を酷く病んでしまい、自殺未遂を繰り返しては他の人たちに抑え込まれていました)


加賀(第七鎮守府は解体。薬物に犯された彼女たちは各自専門の機関へ搬送されました)


加賀(提督は……私たちの提督は……)


加賀(見つかりませんでした)


加賀(みんなで近海を含め入念に捜索しましたが……遺体も見つからず……)


加賀(川内さんの証言では、直撃弾から彼女を庇って……)


加賀(その光景は私も見てました。彼女を押し飛ばして、笑顔で……)


加賀(爆炎に呑まれた)


加賀(私自身わかっているのに……認めたくなくて……)


加賀(鎮守府のみんなはほぼ放心状態。提督を失って生きる意味を見失ったものがほとんどで、食事もままならないのが現状です)


加賀「提督……お願いです……お願いですから……帰ってきてください……」


加賀「ぅ……」ポロポロ


加賀「あぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」



――――――


――――


――






























――???――


?「……はい」


?「……ええ」


?「諜報班としての見解はそうなります」


?「そうです……。彼女らが言うにはそこに目標が……」


?「はい。信用できるかと……彼の築いた信頼は大きいです。彼女らが嘘をつく可能性は低いかと」


?「彼は信頼を得られる人間です。それは私自身が……いえ、あなたの方がよくご存じかと」


?「まだ見通しのほうは……何分規模が規模ですので、実行にはそれなりの人員が必要になります」


?「はい……。このことは彼女たちはまだ……」


?「よろしいのですか? ……はぁ……」


?「確かに、彼女たちがこのことを知ったら暴走する可能性は高いでしょう」


?「時期を見極める、ということですね?」


?「わかりました。引き続き調査続行します」


?「はい……。それではごきげんよう。元帥閣下」


ガチャ


?「……ふぅ」


?「あなたは私を救ってくれた」


?「あなたは私たちを救ってくれた」


?「だから、今度は私が、私たちが」


?「あなたのことを――」




――助けるわ





――とある病院――



コンコン


?「失礼するわ」


川内「……」ボー


?「気分はどうかしら」


川内「……」


?「医師の話では薬物の影響はだいぶ良くなったそうだけど。まだ意識が混濁してるのかしら」


川内「……あなたは?」


?「あら。自己紹介がまだだったわね。大本営直轄特務機関諜報部所属」


雷「いかずちよ。よろしく」


川内「大本営の、しかも諜報部が私に何の用? 事情聴取ならもう……」


雷「ええ。全て聞いてるわ。あなたに何があったか。あなたが何をしたかも」


川内「ッ!!」


雷「あなたは意識が混濁した状態で工作員を襲い、その彼を――」


川内「言わないで!!」


雷「……」


川内「そうだよ! 私が彼を刺した! それなのにあの人は私を庇って……」


川内「そのせいで……そのせいで……」


雷「そう。自分がしたことをちゃんと理解してるのね」


川内「何しに来たの? 惨めな私を馬鹿にしに来たの!」


雷「いいえ違うわ」


川内「じゃあ――」


雷「あなたに頼みがあって来たの」


川内「頼み?」


雷「そうよ。元第七鎮守府所属、第一遊撃部隊旗艦川内」


雷「あなたの能力を買って、ある任務を引き受けて欲しいの」


川内「こんなボロボロの私に、なにをさせようっていうの。どうせ、私にはなにも――」


雷「助けたくない? あの人を」


川内「え……?」


雷「……ふふん」


川内「生きてるの? あの人?」


雷「私たちの調べでは」


川内「でも……どうして……」


雷「こちら側に協力してる深海棲艦がいるって噂は知ってるかしら?」


川内「聞いたことは、あるけど……」


雷「彼は深海棲艦をこちら側に引き込んだ張本人なの」


川内「!」


雷「協力者の話だと彼は爆風で海に投げ出されたあと、深海棲艦たちに囚われたそうよ」


川内「そんな……じゃあ……」


雷「生きてはいるけど、未だに危険な状態なの」


雷「そこで相談なのだけど、あなたに偵察任務をお願いできないかしら?」


雷「協力してくれる深海棲艦たちも彼には近づけないらしいの。でもあなたなら、単騎で敵領海に潜入できるはず」


川内「私一人で彼を助けろって?」


雷「そうは言わないわ。あくまで偵察任務。救出部隊は別に用意するわ」


雷「でも敵はかなりの規模らしい。半端な戦力では基地への強襲、そして救出は実行できない。目標の正確な位置と敵戦力の把握をお願いしたいの」


雷「危険な任務だけど、引き受けてもらえるかしら?」


川内「……やる」


川内「私はあの人を助けたい!」


雷「そう。いい返事ね」


雷「作戦内容は後日送るわ。それまでに体調を整えておいて」


川内「質問いいかな?」


雷「なにかしら?」


川内「なんで私なの? 大本営直轄部隊なら優秀な人も多いんじゃないの?」


雷「そうね……。その疑問は最もだわ」


川内「どうして?」


雷「別にあなたを捨て駒に利用しようしてる訳ではないわ。今回の任務は非常に難しいのよ」


雷「作戦実行の難易度ではなくて、海軍の体制として」


川内「どういうこと?」


雷「彼は工作員だと言ったけど、表向きは提督をしているの」


川内「え……?」


雷「海軍の将校が裏では工作活動をしていた、更には敵の手に落ちたと知られれば大きな波紋を呼ぶわ」


川内「だから今回の作戦は秘密裏に処理されなければいけない?」


雷「そう。事情を知る人間も少ない方がいいの。彼の正体を知る者は諜報部でも極僅か。軍内部では重要機密に類するわ」


雷「色々と面倒な事情があるのよこの話には。だから、このことは他言無用よ」


川内「……あなたはどうして、そんな極秘の事を知ってるの? 見たところそんなに実力があるようには見えないけど」


雷「あら、子供扱いするのかしら? これでもそこそこの練度なのだけど」


川内「真面目に答えて」


雷「ふふ。簡単よ。あなたと同じ理由」


雷「私もロクでもない提督の元で酷い扱いを受けてた。そこを彼に助けられたの」


雷「だから今度は私が彼を助けたい。そのためにも、あなたには頑張ってほしいわ」


川内「……そう。じゃあさ。私からもひとつお願いしたいことがあるんだけど」


雷「なにかしら?」


川内「この作戦が成功したら、私を――」




――どこかの牢屋――



提督「ぅ……」


ヲ級「メザメタ、カ」


提督「ここは……」ジャラ


提督(鎖に繋がれてる……?)


ドゴッ


提督「ガァ!!」


ヲ級「イマワシキ、テイトクメ」


ヲ級「ニクイ。ニクイニクイニクイニクイニクイ!」


ヲ級「ワタシタチハ、キサマガニクイ!」


ヲ級「ナカマヲ、コロシタ! ワタシヲ、コロシタ!」


ヲ級「ニクイ!」バンッ


提督「ガッ!!」


ヲ級「オマエノセイダ! オマエノセイデ、ワタシタチハ!」


提督「ごめんね……」


提督「君たちを救えなくて……ごめん……」


ヲ級「ウルサイ!」ガッ


提督「ガハッ……」


ヲ級「モウジキ、ワレワレハ、ソウコウゲキヲ、シカケル。キサマハ、ヒトジチダ」


ヲ級「メノマエデ、ナカマガ、コロサレルノヲ、ミルガイイ」


提督「ゲホッ……ゲホ……仲間じゃ……ない……」


ヲ級「ソウカ。オマエモ、アノテイトクト、オナジカ。カンムスヲ、ドウグトシテ――」


提督「違う……家族だ……」


提督「僕にとって、彼女たちは……大切な家族なんだ」


ヲ級「ワラワセル」


提督「仲間なんて言葉じゃ言い表せない。僕はみんなを愛してる。家族のように大切にしてるんだ」


提督「君も……」


ヲ級「?」


提督「例えどんな姿になろうと、僕は君たちを愛してる」


ヲ級「ダマレ」


提督「みんなで帰ろう……僕たちが戦う必要なんて――」


ヲ級「ダマレ!」ドン


提督「ガッ」


ヲ級「キサマラハ、テキダ!」


ヲ級「ニクイ、テキナンダ!」


スタスタスタ……


提督「……ゲホゲホ……」


提督「さてはて……ここからどうしたものか」




――提督の鎮守府――



加賀(提督失踪からはや数日。鎮守府はほぼ壊滅状態……)


加賀(みんな提督を失ったショックから無気力になったり暴走したり)


加賀(とてもまともな状態ではありません)


加賀(かく言う私も……)


赤城「加賀さん……そろそろ何か食べないと……」


加賀「いえ……」


赤城「もう三日も食べていないじゃありませんか……」


加賀「赤城さんだってほとんど何も食べてないじゃない」


赤城「それは……」


加賀(大本営の捜索隊も、提督を発見できずそのまま捜索は打ち切られた。もう彼が帰ってくることは……」


『ザ、ザー』


赤城「館内放送……?」


雷『あ、あー。みなさんごきげんよう。私は大本営直轄特務機関諜報部所属、いかずちです』


加賀(本部の諜報員が……いったいなにを)


雷『突然のことで驚く方も多いかもしれませんが、事は一刻を争います』


雷『簡潔に用件だけ伝えます。あなた方の提督を救いたければ大至急大講堂に集まってください。以上』


ガタッ


赤城「加賀さん!」


ドダダダダ


赤城「行ってしまった……」


ドダダダダダダダダ


赤城「他の皆さんも走ってるようね……」


赤城「提督を救う……? いったい、なにが起こっているの……」



――大講堂――



バァン!!


加賀「はぁ……はぁ……」


雷「やっぱり、あなたが一番だったわね」


加賀「さっきの放送はどういうこと! 提督は生きてるの!? 今すぐ答えて!!」


雷「落ち着きなさい。それを知りたいのはあなただけではないはずよ」


ダダダダダダ


雷「流石に、全員に同じ説明をするのは嫌よ。全員が揃うまで待ちなさい」


加賀「クッ……」


――――――


――――


ザワザワ……


雷「全員揃ったようね。みなさんごきげんよう。私は――」


金剛「そんなこと聞いてません。はやく要点だけしゃべてください」


雷「まったくせっかちね……」


大和「御託はいいです。その貧相な体を引き裂かれる前に喋った方が身のためですよ?」


雷「なんで私は身内に脅されてるのかしら……。まぁいいわ」


雷「あなた達の提督は生きてるは。今のところ」


ざわざわ


ビスマルク「今ところ? どういうこと?」


雷「あなた達の提督は敵に捕らわれている」


ソンナ……


タスケニイカナキャ!


雷「落ち着いて。相手は相当な戦力なの。下手に動いては救えるものも救えないわ」


加賀「それはあの第七鎮守府を襲った大部隊のことかしら」


雷「そうよ。おかげで第七鎮守府は壊滅。あのまま侵攻が続いていたら近隣の街は今頃地図から消えてたわ」


青葉「あの……質問、よろしいでしょうか?」


雷「なにかしら」


青葉「なぜあの日提督は第七鎮守府にいたんですか? 夜中に元帥さんから電話があってすぐに飛び出していきました。そして敵の襲撃。もしかして提督は元帥に――」


雷「何を考えているか知らないけど、彼が敵の手に堕ちたのは偶然よ。あまりにも不幸な……ね」


鈴谷「提督はあそこでなにしてたの?」


雷「それは知らない方がいい……と言ってもあなた達は納得しないでしょうね……」


雷「なら……まずはこれを見てもらおうかしら」ヒラッ


鈴谷「それ……」


島風「酷い……」


雷「あなた達も噂くらいは聞いたことがあるんじゃないかしら。提督の中には艦娘を虐待、もしくは道具として切り捨てる者もいるって話」


加賀「……」


雷「私の提督も……いえ、あの男もそうだった。でも、あなた達の提督に救われたの」


大淀「それは、どういう……」


雷「彼も特務機関所属の工作員だったの」


雷「大本営直轄特務機関特殊作戦部所属。彼は艦娘を非道に扱う提督を秘密裏に処理する任務を負っていた」


天津風「それって……」


雷「簡単に言えば殺し屋よ」


ザワザワ……


殺し屋……


そんな……


雷「あなたは知ってたんじゃないかしら?」


加賀「……」


金剛「そうなんデスカ、加賀?」


加賀「いえ……何をしているかまでは私も知りませんでした……」


加賀「でも提督は不自然な出張が多かった。それに帰ってくるといつも以上に私たちに甘えていました。なにか辛いことがあったのだろうとは思っていましたが、まさか……」


雷「彼の名誉のために言っておくと、彼がいなかったら非道な提督によって多くの艦娘が殺されていたわ。敵ではなく味方の手によって」


雷「奴隷のようにこき使われて、慰み者にされて、道具のように使い捨てられていた。酷い所は本当に救いようがなかったわよ。艦娘を囮にして何人も殺したり、悪趣味なプレイで彼女たちを弄って壊したり」


雪風「聞きたくないです……」


雷「あなた達が大切な彼にとって、艦娘を傷つけることが許せなかったのでしょうね」


ビスマルク「あの日も、提督はそのロクでなしの屑を殺すために?」


雷「そうよ。でも運が悪かった。たぶんあそこの提督に殺された艦娘たちが復讐心で呪われて……」


熊野「深海棲艦になって襲撃してきた。ということですの?」


雷「たぶんそうね。諜報部ではそういう見解だわ」


赤城「ですが、提督が捕らわれているというのはどういうことです?」


雷「その情報の出どころは、あなた達もよく知ってるわ」


雷「ここにもいるじゃない。敵に詳しい仲間が」


時津風「いつも遊びに来る深海棲艦たち……?」


雷「そう。こちらに協力してくれる深海棲艦達からの情報よ。確認もとったわ」


照月「なんで先に教えてくれなかったの……」


雷「私が口止めしたからよ」


榛名「なぜですか!」


雷「簡単よ。あなた達なら知った瞬間敵の拠点に強襲をしかけるからよ」


霧島「当然です」


比叡「提督を助ける為なら何処へでも行きます!!」


雷「言ったでしょう。敵は大規模なの。あなた達に特攻されたらたまったもんじゃないわ」


雷「救出作戦には綿密な計画が必要なの。相手が大規模ならなおのことね」


プリンツ「今その話をしに来たということは……」


瑞鶴「作戦が決まったのね!」


雷「そうよ。やっと本題ね……」


加賀「どう攻めるのかしら?」


雷「かなりの大規模作戦になるわ。他の鎮守府にも協力要請はしてあるけど、要はここにいる艦娘200名よ」


ザワザワ……


雷「作戦を伝えるわ――」



――――――


――――



大和「つまり、救出部隊の突入と同時に正面で包囲網を敷いた艦隊による陽動兼殲滅行動をすると」


雷「そうよ。挟み撃ちに近い形になるわ」


雷「救出部隊が先でもダメ。あの敵艦隊を脱出するのは難しいわ。追跡されたら提督を抱えて逃げるのは困難よ」


雷「殲滅戦が先でもダメ。提督を人質取られたらそれまでよ。最悪問答無用で殺されてしまう危険もある」


秋津洲「隠密作戦じゃダメなのかも?」


雷「敵の領海の更に奥地にある拠点まで侵入できて、なおかつ見つからずに提督を発見・救出・脱出して、そこから提督を連れて大艦隊からの追跡を逃れられるのらいいんじゃない? やってみる?」


秋津洲「やめとくかも……」


伊13「潜水艦ならイケるんじゃない?」


雷「侵入は容易でしょうけど、帰りはどうする気? 満身創痍の提督を深海旅行にでも連れていくつもり?」


伊13「あうぅ……」


雷「提督は第七鎮守府で銃弾を数発受けて、ナイフで複数刺されているわ。更に砲撃をほぼ直撃で受けている。海に飛び込んでかわしたのか爆風で飛ばされたのかわからないけど、今なお意識があるかも怪しいわ」


鈴谷「普通ならとっくに死んでるよそれ……」


雷「少なくともまだ生きているわ」


雷「彼を安全に連れて帰るには現状この作戦が一番マシなの。わかったかしら?」


加賀「作戦開始時刻は?」


雷「明朝マルハチマルマルよ。それまでに体調を整えておいて頂戴」


雷「それじゃ私は仕事があるから、これで失礼するわね」


スタスタ……バタン


加賀(……提督)


加賀「必ずあなたを助けます!」


――――――


――――



【マルナナマルマル】


――どこかの海――


雷『もうすぐ作戦開始時刻よ。そちらの様子はどう?』


川内「こちら川内。依然敵の動きなし。作戦は予定通りに」


雷『そう……そのまま偵察を続けて』


川内「了解」


川内「ふぅ……待っててね提督。もうすぐ助けに……」


ゴゴゴゴゴゴ


川内「!?」


川内「そんな……まさか……」



――――――


――――



雷「そう……わかったわ……」


元帥「どうしたね?」


雷「どうやら一足遅かったようです……」


――――――


――――


加賀「何ですって!」


大淀「敵艦隊は提督を人質にして侵攻を開始したようです」


加賀「そんな……」


大淀「これではこちらからの攻撃が……」


加賀「わかってるわ!」


加賀(このままじゃ……一体どうすれば……)


大淀「敵艦隊、来ます!!」


――――――


――――


ヲ級「……」ガシッ


提督「イテテ……こっちは怪我人なんだ……もう少し優しく運んで欲しいね……」


ヲ級「ダマレ」


提督「……」


ヲ級「ソロソロ、ダナ」


ヲ級『キケ! カンムスドモ!! ワレワレハ、ヒトジチニトッテイル! ワレワレ二、コウゲキヲ、シタナラ、テイトクヲコロス』


ザワザワ……


ヲ級「コレデ、ヤツラハ、テダシデキナイ」


ヲ級「キサマハ、ソコデ、ナカマガ、シヌトコヲ、ミルンダナ」


提督「ねぇ。どうしても戦うのかい?」


ヲ級「タタカイ、デハナイ。コレカラ、スルノハ、ギャクサツ、ダ」


提督「どうあっても、やめないのか……」


ヲ級「ウルサイ」


提督「じゃあ最後にひとつだけ」


ヲ級「ダマレ」


提督「例え敵であっても。どんな姿でも。僕は君達を愛してる」バシッ


ヲ級「!?」


提督「さようなら……。できることなら、君達も殺したくないんだ……」ピンッ


バザーン


――――――


――――


瑞鶴「提督が海に飛び込んだ!」


翔鶴「あの傷で無茶よ!」


サラトガ「あれは……」


蒼龍「閃光弾!」


飛龍「敵艦隊、一部行動不能です!」


赤城「今がチャンスよ! 第一次攻撃隊、全機発艦してください!」


加賀「潜水艦の子達は大至急提督の捜索を! 全艦隊は攻撃開始! 雷撃は控えて! 何処に提督がいるかわからないわ! 敵艦に直接砲撃を!」


北上「りょーかーい」


大井「魚雷が撃てないんじゃ厳しいわね」


秋月「敵艦載機、来ます!」


摩耶「ものどもあたしに続け! 姉御たちに指一本触れさせるな!」


涼月「防ぎます」


初月「ここから先は通さない!」


照月「守るんだから!」


ドダダダダダダ


金剛「提督は必ず助けマース!」


武蔵「全艦隊砲撃用意!」


ビスマルク「確実に当てるわよ!」


ドォーン!


大鳳「飛行甲板は伊達ではないわ! 提督、見ていてください!」


阿武隈「魚雷撃っちゃダメって、どうすればいいのよ!?」


木曽「ふっ。こういうのもアリだな!」


吹雪「私がみんなを守るんだから! いっけー!!」


――――――


――――


ヲ級「オノレ……コソクナ!」


ヲ級「ダガ、カズデハ、ユウリ! キサマラ二、カチメハ、ナイ!」


川内「それはどうかな」


ヲ級「!?」


川内「私達を甘く見ないでよね!」


ヲ級「イツノマ二!!」


川内「はあぁぁああ!!」


ドーン


――――――


――――


――



――数時間後――


――どこかの無人島――



提督「……」


提督「はぁ……」


提督「あの辺の海流ならどこかの島には着くと踏んだんだが。まさか無人島だったとは……」


提督「この傷じゃもう無理はできないな……傷口が開いたか……」ドクドク


提督「体も自由に動かせないか……みんなは無事だろうか……」


バザーン!


提督「アレは……」


ヲ級「ウゥ……」


提督「……」ヨロヨロ


提督「大丈夫かい?」


ヲ級「コロシテ……ヤル……」


提督「無理しないほうがいい。ボロボロじゃないか。下手に動いたら助からないよ」


提督(体のパーツが……少し動くだけでも危険だな……)


ヲ級「ユル、サナイ……ワタシハ……オマエタチヲ……」


提督「もういいじゃないか。そんな体になってまで戦う理由が何処にある」


ヲ級「フクシュウ……シテヤル……キサマラ二!!」バッ


ぐらっ


提督「……」


ぎゅ


ヲ級「ウゥ……」


提督「もう……やめよう……」ギュウ


ヲ級「ウル……サイ」


提督「君は頑張ったんだ。もう休もう……」


ヲ級「コロシテ、ヤル……ヒトリ、ノコラズ……」


提督「このまま戦っても、何も残らなよ……」


ヲ級「ワタシニハ、モウ、ナニモ、ナイ……」


提督「そんなことない」


ヲ級「ナニモ、カモ、ウシナッタ……」


提督「僕がついてるよ」


提督「君には僕がいる」


ヲ級「…………」


提督「ずっと、これからずっと一緒にいよう。争いも憎しみも忘れて幸せに暮らそう。もうこれ以上、苦しむ必要なんてないよ」


ヲ級「ワタシヲ……」


ヲ級「あいシテ……クレルノ?」


提督「愛してる」


ヲ級「ニクシミしか、ナイ、ワタシを?」


提督「僕が愛を教える」ギュウ


ヲ級「こんなスガタでも? テも、アシもナイワタシヲ?」


提督「どんな姿でも、関係ない」


ヲ級「ていとく……」



ヲ級「私を救ってくれるの?」



提督「ああ。例え地獄の奥底に沈んだとしても、必ず僕が救い出す」


提督「だから安心して。君はもう憎しみに囚われて生きる必要なんてない。ただ、幸せに。平穏に生きていいんだ」


提督「なにも怖がらないで。なにも恐れないで。これからはずっと」


提督「僕が君を守るから」


提督「僕が君を幸せにするから」


ヲ級「…………」


ヲ級「あり…………がとう……」ポロポロ


ヲ級「ありがとう……提督」ギュ



テイトクハッケンデチ!


ハヤクキュウジョタイヲ!



――――――


――――


――




――数日後――


――提督の鎮守府・大講堂――


ザワザワ……


カツカツカツ


提督「僕が留守の間、よく鎮守府を守ってくれた!」


シーン


提督「なんか壁に穴が空いてたり窓が割れてたり酒保が空だったり資材の殆どが減ってたり色々ツッコミたいところはあるけどこの際目を瞑ろう」


提督「誰一人欠けることなく、今こうしてここにいることを嬉しく思う!」


提督「みんなに心配を掛けたことは申し訳なく思ってる。この埋め合わせはいつか必ずしよう!」


提督「しかし今は無事を喜んでいる余裕はない」


提督「大本営より第二次ハワイ作戦が発令された! 兼ねてより噂されていた大規模作戦だ!」


提督「この作戦が終われば戦争の構図は大きく変わることだろう! 皆が望む平和な世界になるはずだ!」


提督「我々は我々の未来のために武器を取る! そこには憎悪も怨讐もない。明日のために。未来のために。平和を願う心を持って武器を握る!」


提督「僕たちは武力をもって平和を得ようとしている。銃を握りひとたび引き金を引けば、それは誰かを傷つける暴力に他ならない」


提督「きっとそれは間違った事かもしれない。正しくないかもしれない。だがそれでも、これ以上誰かを悲しませないために、罪を背負って引き金を引こう」


提督「その罪業を君達にも背負わせてしまう事を申し訳なく思う。だがこれ以上こんな不幸を広げないためにも、今は力を貸して欲しい」


提督「未来に生きるものたちが、争いなく平和に生きる為に!」


提督「君達がもう戦わなくて済むように!」


提督「そのために僕は…………俺は!! この鎮守府の提督して、全責任を負ってみんなに命じる!」


提督「必ず生きて帰ってこい! そしてみんなで平和な世界を生きよう!」


提督「全艦隊、出撃! 暁の水平線に勝利を刻んでこい!!」


艦娘s『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』













――大本営――


雷「はい。作戦は成功です。敵艦隊は壊滅」


雷「ええ。また彼が何人か救出したようですが……ええ。特に問題ないでしょう」


雷「例のヲ級も彼に懐いているようです。凶暴化の恐れもありません」


雷「これで殆どの敵は沈静化。もう我々を脅かす敵は……」


雷「それは……本当ですか?」


雷「わかりました。では我々は今後も調査を続行していくという事で……」


雷「そうではない? 別の任務……? しかし……」


雷「わかりました。そういうご命令なら……」


雷「では第七の川内と合流して彼の鎮守府に」


雷「はい。そういう条件でしたので。彼女は先に向かっています。よほどあの人が気に入ったのでしょう」


雷「罪悪感からなのか、純粋な恋心か。そこまでは計りかねます」


雷「電も一緒に? でもあの子は……」


雷「わかりました。お心遣い感謝します」


雷「それでは後日、指令書を持って着任します」


雷「わかりました。それではご機嫌よう。元帥閣下」


ガチャ


雷「ふぅ……」


雷「平和になっても、争いがなくなるわけじゃない」


雷「平和を維持するための戦い、か……」


雷「彼はどう思うのかしら……まぁこれから聞いてみればいい事ね」


雷「これからも戦い続けるのね……彼も……私たちも……」


雷「まぁ、いいわ。もしも誰かが困っていたらそれを救うのが私たちの役目。例えどんなことがあろうと、どんな戦禍であろうと、私たちが――



助けるわ!



後書き

ノリと勢いって大切
2部追加(20190514)
3部追加(20190807)


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1: H.E.Manteuffel 2019-05-02 13:08:57 ID: S:ZqH6Ya

ブラック提督を成敗する,,,,,,こういう系、嫌いじゃないです。


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