2019-05-07 12:54:59 更新

概要

堅物で不器用だけど優しい提督と、提督のことが好きな艦娘たちとのお話です。


前書き

僭越ながら、SSは初めて書きます。
稚拙で大変恐縮ですが、どうぞよろしくお願い致します。


ーー午前、鎮守府の執務室にてーー


提督「待て待て、急にどうした?」


大淀「いい加減、ケッコンしていただかないと困ります」


大淀「艦娘もほとんどが練度99に到達しているというのに、誰一人としてケッコンしようとしない……」


大淀「なぜですか?」


提督「そう言われてもな……誰か一人とケッコンしたら、贔屓になってしまうのではないか?」


提督「だからといって何十人もいる艦娘と同時にケッコンなんて、指輪の数も足りないし」


大淀「ですが、そろそろ決めていただかなければ困ります。艦娘たちも、これ以上強くなれない状態なんです」


大淀「大体皆、提督のことを少なからず想っています。贔屓なんて思わないと思いますよ?」


提督「待て待て……だからそこが勘違いなんだ」


大淀「なんですか?」


提督「たしかに練度こそ大台に達したが、俺のことが好きだとか、そういうのはないはずだ」


大淀「ずいぶんと言い切りますね」


提督「俺は淡々と指示を出して執務をこなす。皆は作戦を淡々と遂行する」


提督「たしかに、中には好意的に接してくれている娘もいるが……」


提督「でもそれは俺が上官で彼女らが部下だからって話だ。それ以上はない」


大淀「……提督は変わりませんね」


大淀「そろそろ、彼女たちのスキンシップを受け入れてあげてもよろしいのではないですか?」


提督「過度なスキンシップは威厳が示せない……。却下だ」


大淀「……わかりました」


大淀「私はこれから休憩に入りますが、気が変わったらおっしゃってくださいね?」


大淀「いい加減、指輪を渡していただかないと鎮守府全体が成長しませんから」


提督「……ああ、善処する」


ガチャ バタン


提督「…………」


提督「……行ったか」


提督「……」


提督(……たしかに、大淀の言うことは最もだ)


提督(カッコカリとはいえ、艦娘たちとのケッコンを済まさなければ、鎮守府として前に進めない)


提督(……そう、理由はなんとなく自分でもわかっている。……私は、怖がっているのだ)


提督(おそらく彼女たちは私が指輪を渡せば、素直に受け取ってくれるだろう)


提督(ここに着任してから四年……関係は円滑にするよう、全力で務めてきたつもりだ。十中八九、そうなるはず)


提督(だが、受け取らない、拒絶する……仮にそうなるのであれば、私にとってはそのほうがいい)


提督(私は彼女たちが、上司部下の関係で、個人の心情など関係なく……)


提督(ただ鎮守府のためだけに指輪を受け取ってしまうのが、たまらなく怖いのだ)


提督(我ながら我が儘だな……心から、個人として想ってくれた上で受け取ってほしいなどと)


提督(私から好意を伝えたことなど、一度もないというのに……)


提督(……)


提督(……やはり、いままでの私ではだめだ。私から向かっていかなければ、打開はありえない……)


提督(まずは彼女たちと積極的にふれあわなければ……)


コンコンコン

??「てーとくさん、入るっぽいー!」


提督(夕立か……)


提督「入れ」


夕立「失礼するっぽい!」ガチャバタン


夕立「無事、遠征から帰還したっぽい!」ケイレイ


提督「そうか、ご苦労だった。とくに変わったことはなかったか?」


夕立「なかったっぽい!」


提督「うむ、了解した……。積んできた資材の詳細は、先ほど大淀から預かっている」


提督「あとは……とくに伝えることはない。夕立は明日まで待機だ。下がっていいぞ」


夕立「……」モジモジ


提督「……ん? どうした」


夕立「提督さん、そのー……」


提督「……?」


夕立「……ううん、やっぱりなんでもないっぽい! それじゃぁ提督さん、また明日っぽい!」


提督「……」


提督「いや、待て! 夕立ーー」バンッ


夕立「ど、どうしたの、提督さん???」フリムキ


提督「い、いや……その……」


提督「……」グッ


提督「……よく、やったな、夕立。いつも助かっている……」


夕立「……」


夕立「ーー!」パァァァ


夕立「ありがと提督さん、明日も頑張るっぽい!」


ガチャバタン ダダダダダダ……


提督「……」


提督「……ふふ」


提督「褒めて褒めてー……か」


提督「そういえばここしばらく……褒めて……いなかったな……」



***



ーー同日の正午ーー


コンコンコン


提督「入れ」


ガチャ バーン!

金剛「Hey提督ゥー、tea timeネー!」


提督「金剛……。いまは執務中だ」


金剛「そんなツレナイコト言わないデー! 休憩も大事ヨー?」


提督「いや……忙しいのでな。またの機会に頼む」


金剛「またまたぁ、本当は提督も疲れてきたデショー? そういうときはtea timeネー!」


提督「金剛」


金剛「ウ……」


金剛「……そーデスカ……。ウーン、残念デース」ガクーン


提督(断られることをわかっていて、よくも本当に毎日飽きずに……)


提督「……」


提督「……」グッ


提督「……待て、金剛」


金剛「……テー……トク?」


提督「丁度いま、きりがいいところで仕事が片付いた。どちらにせよ、健康のためにも昼飯は食わなければならない」


提督「あまり時間はとれんが……金剛さえよければだが……一緒に、食べるか?」


金剛「……」


金剛「……!」パァァァァ


金剛「いいんデスカー! 提督!」


提督「ああ。時間がもったいない……行くならさっさと行くぞ」


金剛「ハイ、提督ゥー!」



***



ーー五分後、金剛型姉妹部屋の前ーー


提督「tea timeって……ここでするつもりか?」


金剛「そうデース! だめでしたか?」


提督「い、いや、だめというわけではないが、てっきり食堂やらでするものだとーー」


金剛「まぁでもせっかくここまで来たんですし、提督なら妹たちも歓迎間違いなしデース!」


提督「お、おい」


金剛「Hey妹たちー! いま帰ったデース!」ガチャ バーン


榛名「あらお姉様、お帰りなさい!」


霧島「提督のところへ行ってらしたのですか?」


金剛「そうデース!」


比叡「それで今日も断られたんでしょー?」


金剛「ふっふっふー……」チッチッチ


金剛「なんと今日は妹たちにサプライズがありマス……!」


比叡「サプライズ?」


金剛「ーーこちら、提督デース!」ジャジャーン!


榛名「て、提督?」


提督「や、やぁ……ご苦労……」


金剛「今日は提督を招待して、私たちの部屋でtea timeデース!」


霧島「……」


比叡「……え」


榛・霧・比「「「ええええええええっ!?」」」


金剛「榛名、提督の分もお食事の用意デース!」


榛名「あ、は、はい!」


霧島「比叡姉様、もうひとつ座布団の準備を! 私は部屋の片付けをします!」


比叡「わ、わかった!」


ドタバタドタドタバタ……!


提督「な、なんだかお邪魔してしまっただろうか……」


金剛「皆、提督が来るって思ってなかったからネー! 提督はお気遣いはNoー、デース!」


金剛「さぁ提督ゥー! あがってあがってー!」


提督「あ、あぁ……」



***



霧島「すみません、お時間をかけてしまって……」


提督「いや、こちらこそすまない、急にお邪魔してしまったからーー」


霧島「そんな、滅相もありません! 提督とお食事を共にできるだけでも、身に余る光栄でございます!」


提督「そ、そうか」


金剛「そんなことより早く食べましょう、提督ゥー。ご飯が冷めてしまうデース!」


提督「わかった」


榛名「こちらが提督のお席です!」


提督(上座……)


提督「あ、ありがとう」


比叡「提督、部屋の空調は丁度良いでしょうか?」


提督「あ、ああ、大丈夫だ」


金剛「それじゃー、いただきますデース!」


榛・霧・比「「「いただきます」」」


提督「……いただきます」


提督(……)


提督(……なんだかこれは思った以上に)


提督(上司部下の関係が出来てしまっている気がする……!)


提督(いままでプライベートな会話はほとんどしたことがなかったが……)


提督(良く言えば、上司としてしっかり接せられていたと言うべきだろうか)


提督「…………」


提督「あー……ときに金剛」


金剛「なんデスかー? 提督ゥー」


提督「……いつも誘ってくれているのにすまんな。なかなか一緒に食べられなくて」


金剛「ーーっ!」


提督「比叡に榛名、霧島も。私でよければ、また誘ってくれると嬉しく思う」


榛・霧・比「ーーっ!」


提督「それでも、私が忙しくないときに限るが……」


榛名「いいえ、榛名は、そのお気遣いだけでもとっても嬉しいです!」


比叡「本当にいいんですか?!」


金剛「それじゃー提督ゥー、これからもジャンジャン誘いに行っちゃうからネー! 覚悟しておくデース!」


霧島「こ、金剛お姉様」アワワ


提督「はは、構わんよ。もちろん、ほどほどにな」


金剛「イエース! ほどほどに、毎日誘いに行くデース!」


提督「それじゃあ、いままでと同じだな」ハハ


提督「他の者も、いつでも来てくれたまえ。時間の許す限りではあるが、お供しよう」



***



提督「それでは、私は執務に戻る。お邪魔したな」


比叡「また来てくださいね、提督!」


金剛「また来るデース!」


提督「今日のご飯は榛名がつくったのか?」


榛名「え……あ、は、はい!」


提督「そうか」


榛名「えっと、そのあの、もしかして、お口に合わなかったのでは……!」


提督「とんでもない。許されるのなら、またぜひとも食べてみたいくらいだ」


提督「また……お邪魔してもいいか?」


榛名「ーーっ! は、はい提督! いつでもいらしてください!」


霧島「……」フカブカ


提督「それではな」


 提督は執務室へと足を運んだ。


提督(……)


提督(……話そうと思えば、思ったよりも上手く話せるものだな)


提督(私はいままで、彼女たちのプライベートな部分までは詮索しようとはしなかった)


提督(だが、これからは……もしケッコンをしていくのだとしたら、彼女たちともっと話すべきだ)


提督(これは完全な、私の自己満足だな……。我ながら、情けない)


提督(しかしそれでも私は、彼女たちとしっかりと心を通わせた上でケッコンを済ませたい)


提督(大淀も心配している。早く、他の艦娘たちとも仲良くならなければ……)



***



ーー午後の執務室ーー


提督(……)フゥ


提督(……午後一時か)


コンコンコン


提督「……入れ」


??「失礼致します」ガチャ


朝潮「今日の午後の秘書官を務めさせていただきます、朝潮です」ケイレイ


提督「ご苦労」


提督「早速だが……ここにある資料をまとめておいてくれ」


朝潮「かしこまりました」


提督「よろしく頼む」


 朝潮は提督の机とは少し離れた場所にある、秘書官専用の机に腰掛けた。


提督(……朝潮か)


提督(大淀や霧島と並んで、真面目筆頭を担う艦娘だ)


提督(過去にも何度か秘書官をしてくれているが、執務上の会話以外をした覚えがない)


提督(上司部下という格式の関係から変えるのは難しいかもしれん……)


提督(……)


提督(そういえば、いまさらになって疑問に思ったが)


提督(彼女たちはケッコンカッコカリというシステムを把握しているのだろうか?)


提督(大淀には、伝えろとも伝えるなとも指示した覚えはない)


提督(しかし、彼女たちの口からも、そういった言葉を聞いたことがない)


提督(普段からあまり仕事以外で関わろうとしたことがないからかもしれんが……)


提督「…………」


朝潮「提督」


提督「……」


朝潮「……? 提督?」


提督「ーーはっ、すまん。少し考え事をしていた。どうした?」


朝潮「いえ。こちらの資料の処理についてなのですが」


提督「どれ……」


提督「……ふむ。これは大淀や明石と相談しなければ、はっきりとわからんな」


提督「この資料に関しては、こちらで預かっておこう」


朝潮「わかりました」


提督(……)


提督(……やはり、艦娘に直接聞くのはリスクがあるな)


提督(仮に知らされていなかったとすれば、それが発端で噂が広まる可能性もある)


提督(それに、どちらにせよ……仲良くなっていけば、ゆくゆくはわかり得ることだ)


提督(それよりも……どうやっていまの堅い関係を払拭するかが先決だ)


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1: SS好きの名無しさん 2019-05-05 18:02:25 ID: S:sXCxQ4

鈴谷・熊野ジョーク

艦これ10周年

鈴谷『私、何度も『結婚してくれ。』と言われたの。』

熊野『知ってますわ。言ったの貴女のご両親でしょう。』

2: SS好きの名無しさん 2019-05-05 18:06:59 ID: S:YoRCMB

結婚に関する中国の諺

中国の老人『結婚とは攻防中の砦みたいなものじゃ。外にいる者は中に入りたがる。中にいる者は外に出たがる。』

3: SS好きの名無しさん 2019-05-05 18:11:55 ID: S:CWXu5o

金剛・榛名ジョーク

提督が榛名と結婚した。(注、この設定では金剛型四姉妹は金剛以下、全員、英国国教会の敬虔な信者)

榛名『御姉様、大変です。』

金剛『榛名、どうしました?』

榛名『提督が無神論者で神も悪魔も天国も地獄も信じない。と言うのです。』

金剛『私と貴女で信じさせてやれば良いデース。』

4: SS好きの名無しさん 2019-05-05 18:13:10 ID: S:NHAUkT

鈴谷・熊野ジョーク

艦これ10周年

熊野『鈴谷(独身)貴女、いくつになりました?』

鈴谷『私、結婚するまでは30にはならないわ。』

5: SS好きの名無しさん 2019-05-05 18:15:00 ID: S:7jiuMU

文が読みやすくてとても良いですね!

6: SS好きの名無しさん 2019-05-05 22:37:38 ID: S:d_n1_5

鈴谷ジョーク

『夜戦』の後

鈴谷『ねえ。私達、結婚しない。』

提督『俺達みたいなのと他に誰が結婚してくれるんだ。』

7: SS好きの名無しさん 2019-05-05 22:45:25 ID: S:PT6DgT

下記の話

深海棲艦に捕らえられた提督

拷問担当『リ級』

監視しているのが『戦艦棲姫』

リ級があの『黒ビ.キ.ニ・Tバック姿』で提督を『鞭』打っている。ちなみに戦艦棲姫が『死ぬ。』といけないから『手加減』するように。とリ級には注意している。

その『趣味』の『提督』には『御褒美』である。

リ級『戦艦棲姫様、この男、しぶといです。私も疲れました。』

戦艦棲姫『しぶとい男ね。嫌いじゃないわ。』

提督『『リ級のあの『オ.ッパイ』がプルンプルン揺れて、あのお尻が躍動し、時々、奥の『ア.ナ.ル』『も』チラチラ見え、リ級がTバックをずらして直す姿も見える。痛いが『天国』は深海にあった。』』

8: SS好きの名無しさん 2019-05-07 07:49:40 ID: S:aus30K

イイネ

9: SS好きの名無しさん 2019-05-12 07:21:28 ID: S:EMU_qE

楽しみにしてます


このSSへのオススメ

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1: SS好きの名無しさん 2019-05-05 18:05:06 ID: S:vIWH0q

提督ジョーク

提督『私は天国も地獄も信じませんでした。結婚するまでは。』

提督が『深海棲艦』の『捕虜』になり、ありとあらゆる『拷問』を加えられたが耐えた。

戦艦棲姫『強情な男は嫌いじゃないわ。でも貴方、何故、ここまで耐える事が出来るの?せめて、それだけでも教えて下さらない。』

提督『結婚しているからな。』


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