2019-05-15 04:27:11 更新

2017年10月20日(金) 16:00


その日は、クラスでの学祭の準備が特に無かった楽と千棘は、

学校の講義だけを終えて、早めにスペクトル凡矢理に帰っていた。



ザーーザーー………


千棘 「うー〜、スゴい雨ねーー………。」


楽 「天気予報で、雨が降るかもっては出てたけど、

まさかここまでドシャ降りになるとはな。

降っても、小雨だと思ってたぜ。」


千棘 「どうすんのよ?

私もあんたも傘は持って無いし、

このままじゃあ、ずぶ濡れになっちゃうじゃない!」


楽 「………持ってねーもんは仕方ねーだろ。

とにかく、走ってスペクトル凡矢理まで帰るぞ!」


千棘 「うん!」


タタッ


楽と千棘は、バッグを傘がわりにしながら、

スペクトル凡矢理まで走りました。


楽 「ハァ…ハァ………

結構疲れたな。」


千棘 「あんた、蒼也くんに鍛えられてる割に軟弱ね。」


楽 「そういうお前は、

雨の中あんだけ走ったのに、なんで殆ど息切れしてねーんだよ………。」


千棘 「でも、お陰で大分ウチまで近づいたわね。」


楽 「そうだな。

あと、10分か20分も走ればマンションに着くんじゃねーのか?」


千棘 「そうね。

早く行きましょう、楽。」


楽 「ああ………!」


千棘 「?どーしたの楽、いきなり顔を赤くして………!」



千棘は、楽が顔を赤くした理由が分かった。


カバンでは傘ほど完全に雨を防ぎきれなかったので、千棘の服が濡れて、

ピンク色のブラジャーが服の上からうっすら見えてしまっていた。



千棘 「もう!

何まじまじと見てんのよ!

このヘンタイ!」


楽 「うわっ!

わ、わりぃ………。」


千棘 「もう!

この前の遊園地のオバケ屋敷で私が転んだ時も、

パンツ見るし………あんたってホンット、

エロもやしよね。」


楽 「………ほれ、これ着ろよ。」


スッ


千棘 「え?」



楽は千棘に、自分が着ていた上着を差し出した。


楽 「俺の上着、俺のカバンはお前のより大き目だったからあんま濡れてねーし、

これなら下着も透けて見えねーだろ?」


千棘 「………ありがと。」


ガバッ


千棘は楽から上着を受け取り、自分の服の上に羽織った。


千棘 「………さっきは悪かったわよ。

オバケ屋敷の時も、今もあんたは見たくて見たわけじゃ無かったのに………。」


楽 「いや、俺もじっと見ちまったし………。」


千棘 (………ホントは、あんたになら、

もう下着くらい見せても良かったんだけどね。)



ドンガラガッシャーン


その時、2人の近くで雷が鳴り落ちた音がした。


楽 「うおっ!?」


千棘 「キャアァッ!」


ギュッ


楽 「わわっ!ち、千棘!?」


千棘は、楽に抱きついた。


千棘 「ゴ、ゴメン楽!

でも、あんた私が雷苦手なの知ってるでしょ?」


ムニュッ


千棘が抱きついたので、楽の胸板には千棘の濡れた胸が当たった。


楽 (うぅ〜〜………千棘の胸が、俺の胸板に当たってる………

今までも何度か胸が当たった事はあったけど、

こうして濡れてると、まるで水に濡れた果物みたいだ。

スッゲー気持ちいい………。)


千棘 「うぅ〜〜………。」


千棘は、怯えきっていた。


楽 「おい千棘、大丈夫か?」


千棘 「むり〜〜。

腰が抜けちゃって、立てない〜〜。」


千棘は涙を溜めた目で、楽を上目遣いで見上げた。


楽 (うぅ〜〜、可愛い〜〜。)


楽 「でも、このままここでじっとしてたら、

もっと怖い事になるぞ?

もしかしたら、雷が俺たちに落ちてくるかも………。」


千棘 「!やだ、怖い事言わないでよ!」


楽 「わ、わりぃ!」


千棘 「あんたがそんな事言うから、ますます立てなくなっちゃったじゃ無い!」


楽 「………ったく、しょうがねーな。」


ガバッ


千棘 「え?」



楽は、千棘をおんぶした。


千棘 「ら、楽!

あんた何を………。」


楽 「お前が自分じゃあ動けないんなら、

こうするしか無いだろ?」


千棘 「そりゃそうだけど、

いきなり恥ずかしいじゃない、こんなの!」


楽 「我慢しろよ!

俺だって恥ずかしいんだから!」


千棘 「うぅ〜〜………

こんな事になるなら、心の準備くらいさせてくれってのよ、全く………。」


楽 「ん?なんか言ったか?」


千棘 「なんでも無いわよ!」



楽は、千棘をおんぶしたまま、

スペクトル凡矢理の方に向かって歩き出した。


スタスタ スタスタ………


通行人A 「お、見ろよあのカップル、

彼女をおんぶしてるぜ。」


通行人B 「熱いねーー。」


千棘 「うう………。

恥ずかしい………。」


楽 「我慢しろよ。

もうすぐ、スペクトル凡矢理に着くから。」


千棘 (雨も、たまには悪く無いかもね………。)


第1巻 第209話 完


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