2019-05-15 00:00:57 更新

概要

ある日の鎮守府。着任したばかりの提督と艦娘たちを描く懐かしき思い出の日々。


【マルナナマルマル】


――ある日の鎮守府――


提督「さてさてみんなおはよう。朝ごはんはしっかり食べたかな?」


艦娘s『はーい!』


加賀「……」


提督「よろしい。それでは今日も一日頑張っていこう!」


艦娘s『おーう!』


提督「とりあえずまずは出撃しよう。現状遠征に回す人員はない。出撃して褒賞艦や日勤の報酬で建造材を用意する!」


吹雪「白雪ちゃんは鎮守府近海での褒賞艦だったもんね」


白雪「明るい鎮守府でよかったです」にこ


提督「本日は製油所地帯沿岸へ出撃する! 周辺に出没する敵艦隊を殲滅、制海権を確保する!」


提督「加賀さん」


加賀「はい」


提督「この海域には戦艦の目撃情報もある」


提督「十分注意してください。あなたの艦載機が頼みです」


加賀「鎧袖一触よ。心配いらないわ」


提督「旗艦は白雪! 2番艦は潮! 先輩の威厳を見せてやれ」


白雪「了解です」


潮「頑張り……ます」


提督「3から5番艦は順に初雪、初霜、如月だ。まずは落ち着いて戦って欲しい」


初雪・初霜・如月『了解!』


提督「そして、6番艦。加賀さん」


加賀「お任せを」


提督「各艦は加賀さんを守るように展開してくれ。加賀さんはみんなを守るよう艦載機で先制してくれ」


艦娘s『了解!』


提督「まずはチームワーク。各艦の連携が大切だ。各々の役割をしっかり果たしてくれ」


艦娘s『了解!』


提督「あ……」


雷「司令官どうしたの?」


提督「ごめん。まずは演習行こうか。いきなり実戦はキツイでしょ。演習の予定忘れてたわ」


加賀「はぁ……」


加賀(この人は本当に大丈夫かしら……)


ーーーーーー


ーーーー


ーー



【ヒトヒトマルマル】


提督「ブッキーそこの書類とってー」


吹雪「はい! どうぞ!」


提督「サンキュー」


ガチャ


雷「司令官、吹雪! お茶を持ってきたわよ!」


提督「ありがとねー」


吹雪「ありがとうございます! もっと頑張れますね!」


ガチャ


白雪「演習終了。艦隊が帰投いたしました」


提督「はいおつかれー。5連戦だったけど大丈夫だった?」


初雪「ほとんど……ダメだった」


如月「流石に練度が違うわね……」


潮「うぅ……ごめんなさい……」


初霜「お力になれずすいません」


加賀「……」


提督「まぁそう落ち込まないで。まだまだ僕たちは新人だ。これから成長していけばいい」


加賀「ですが……」


提督「過ちを気に病むことはない。ただ認めて次の糧にすればいい。それが大人の特権だ」


吹雪「かっこいい……」


提督「僕の言葉じゃないがね」


提督「気にするなって。万能の人も全能の神もこの世にはいないんだ。どこかで必ずつまずく。初めのうちはたくさんつまずくし、転ぶことだって多い。そこからどう立ち上がるかだ」


加賀「……」


提督「それともみんなは言われればなんでも正確にできる完璧人間だったかい?」


艦娘s『……』


提督「生きて帰ってくれば別に何も言わないよ。いくらでも失敗すればいい。命を懸けてまで頑張ることなんてこの世にそうそうないんだ。その時が来ない限り、いくらでも失敗は許される」


加賀「では、もし」


提督「ん?」


加賀「もし、命を懸けるほどの危機が迫った時に失敗してしまったら、どうするんですか?」


提督「そんなの簡単だ。死ぬだけだよ」


加賀「……」


提督「だから、そこで死なないために今失敗しとくのさ」


提督「さて諸君。演習も済んだことだしここからは本番だ」


白雪「……」ゴクリ


潮「……」ブルブル


提督「今度こそ製油所地帯沿岸へ出撃する。これは実戦だ。敵は実弾を撃ってくるし、運が悪ければ死ぬ」


如月「あらあら」


初霜「……」ドキドキ


初雪(帰りたい……)


提督「しかし、これは命を懸けるほどのことじゃない」


加賀「……え?」


提督「別に今日この作戦に失敗したら僕たちが死ぬわけでも世界が滅ぶわけでもない」


提督「結局はただの哨戒任務だ。やばくなったら逃げ帰ってこい。誰も責めやしない」


加賀「それでよろしいのですか?」


提督「別に構わないよ。どうせあの辺を通る船舶が困って僕の評価が下がるくらいだ。そんなことのために命を危険に晒す方が馬鹿らしい」


提督「僕たちは戦い続けなきゃいけない。これからもずっと。そのためには生き残らなくてはいけない。戦いにおいて最も難しいのは生き続けることだ。体が死んでも、心が死んでもおしまいだ」


提督「自分の命を最優先にしろ。できれば仲間の命も。辛くなったらいつでも言ってくれ。休暇なんていくらでもくれてやる」


提督「あとの事はその辺の犬にでも食わせておけ。気にするな価値もない」


提督「それに……」


加賀「それに、なんですか?」


提督「僕はみんなと食事をするのが好きでね。できれば早めに帰ってきてほしい」


加賀「……」


初雪「プププ……」


白雪「今日の昼食、期待してますね」


提督「ああ。今日は僕の手料理だ。食費も節約しないとね」


雷「わーい! 提督の手料理楽しみだわ!」


提督「そういう事だ。製油所地帯沿岸へ出撃。やばくなったらすぐに帰ってくること。命を大切に。晩飯はカレー。期待して帰って来るように」


提督「それじゃ第1艦隊、出撃!」


艦娘s『了解!!』


加賀(こんな調子で、本当にいいのかしら……?」


加賀(優しさが常にプラスに働くとは限らないのよ……提督)



【ヒトフタマルマル】


ーー母港ーー


白雪「作戦完了。艦隊が帰投しました」


提督「ご苦労様。吹雪、雷、負傷者を至急入渠させろ」


吹雪・雷「了解!」


潮「ごめんなさい……」


如月「ごめんなさいね……」


提督「気にするな。ゆっくり休んでおいで」


白雪「すいません。私が力不足だったために……」


提督「とりあえず報告を聞こうか」


白雪「はい……。潮ちゃんと如月ちゃんが大破。加賀さんが中破。他の全員が小破です。敵主力艦隊は全滅。作戦は完了……しました」


提督「まぁ……みんな生きて帰って来たわけだし勝利も納めた。及第点でしょ」


白雪「すみません……こんなに被弾してしまって……」


ポン


提督「よく生きて帰ってきた。そう自分を責めるな」ナデナデ


白雪「ですが……」


提督「いいんだよ。誰もお前を責めてないだろ? 潮も如月も。僕もそうだ。自分で自分を責めても苦しいだけだぞ。みんなお前を評価してる。そう落ち込むな」


白雪「すいません……うぅ……グス」


提督「次はもっと安全に勝てるよう僕も考える。君だけのせいじゃない。君は悪くないんだよ。泣かないで」ナデナデ


白雪「……ありがとう……ございます……」グス


加賀「……」


ーーーーーー


ーーーー


ーー食堂ーー


加賀「提督」


提督「あ、加賀さんお疲れ様」


提督「傷の方は大丈夫?」


加賀「はい。高速修復材のおかげでなんとか」


提督「それは良かった。ちょっと待っててねー。もうすぐできるから」グツグツ


加賀「何故、お叱りになられないのですか?」


提督「んー? なにが?」


加賀「先ほどの作戦、明らかに現場の……私たちの判断ミスでした」


加賀「提督にあれほど言われたにも関わらず無理を押して進撃して、結果として多大な被害を被りました」


提督「そうだねー」


加賀「……ッ! 何故怒らないんですか! 勝手な行動で隊を危険に晒したんですよ!」


提督「だって怒る必要ないでしょ。君たちは充分責任を感じてる。そうでしょ?」


加賀「そ、それは……」


提督「たしかにあれだけ言ったのに無茶して大怪我したことには怒ってるよ。でも君たちは充分責任を感じてるし、その意味も理解してる。そこに僕が怒鳴り散らしたらプレッシャーが大きくなるだけで逆効果でしょ」


加賀「……」


提督「わかってないようだったらぶん殴ってたよ? 口でダメなら体に直接叩き込むしかないからね。でも君たちはしっかり物事を理解してる。だから改まって言うことはない」


加賀「そう……ですか」


提督「白雪にも言ったけどそんな自分を責めるなよ。誰も君を責めてないだろ。旗艦の白雪も。随伴艦のみんなも」


加賀「ですが……私が及ばないばかりに……」


提督「だから、誰も君のせいだなんて思ってないよ。君が強ければ完勝できたわけでもないでしょ」


提督「自分で自分を押し潰す、負のループというか自家中毒状態はやめた方がいい。自分じゃ抜け出せなくなる上に視野も狭くなる。自分で自分の自信を削ぐ行為だ。もっと客観的に見ないと」


加賀「私は提督に期待していて下さいと大口を叩いたのに、こんな……」


提督「はぁ……」


ギュウ


加賀「!?」


加賀「あの! な、何を!」


提督「今、どんな気持ち?」


加賀「こ、困ります! 急にこんな!」


提督「さっき言ったよね。口で言ってダメなら体にわからせるって」


提督「あんまりダメなようだと体に直接わからせるよ?」


加賀「な、何をするんですか」///


提督「ふふーん。ヒミツ」


スッ


加賀「あっ……」


提督「さ、変な考えも今ので吹き飛んだでしょ。つまんないこと考えてないで昼食にするよ」


提督「みんなの分の食器出してもらっていい?」


加賀「あ……はい」


加賀(急にあんなことするなんて……軽くパニックになってしまったわ……)///


加賀(でも……お陰で気持ちが切り替えられた)


加賀(それに……なんだか気持ち良かった……)


加賀(ふふ……やっぱり変な人ね)


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