2020-03-07 14:59:37 更新

概要

オリジナルストーリー、オリジナル能力、オリジナル鎮守府、ゲームキャラ登場などを含んだSSとなります。それでも良い方はどうぞゆっくりとお楽しみに下さい。誹謗中傷などのコメントはお控え下さい。そして、アルティさんにopとed、戦闘BGMの許可は頂いております。


OP デュラララ! 「裏切りの夕焼け」


ED ドラゴンボール改 「拝啓、ツラツストラ」



前書き

この物語は二人の青年が艦これの世界に転生し、ブラック鎮守府に囚われた艦娘達を救う物語。その二人の青年はブラック鎮守府に着任し、艦娘達の信頼を得ていく…




−医務室−




春雨「スゥ…スゥ…」ダキツキ



黎斗「いやいやいや!何で俺はこの娘に抱きつかれているんだ!全く覚えがないぞ!いやマジで!というかこの娘は…」



黎斗は初めてガイア泊地に来た事を思い出した。艦娘全員の怪我を治して周り、そして最後の一人の怪我を治した。その最後の一人がこの娘だった。



黎斗「頭の中でこの娘の名前が…春雨って言うのか。とりあえず何で抱きつかれてるのか気になる…起こしたいんだが…」



春雨「スゥ…スゥ…」ダキツキ



黎斗「こんなに気持ち良さそうに寝てたら…起こしづらいよな…」



春雨「スゥ…スゥ…」ダキツキ



黎斗「……可愛い」ナデナデ



春雨「んぅ…司令官〜…むにゃむにゃ…」ダキツキ



黎斗「一日でこんなになるものなのか?てかマジでどうしよう…起こした方がいいのk」



ガチャリ



シロル「黎斗?もう起きて…る…」



黎斗「あっ…」



シロル「えっ…何してるの…」



シロルは医務室のベッドで横になっている黎斗を見て言葉を失った。何せ黎斗は春雨に抱きつかれている状態となっている。一見すると、黎斗と春雨が一晩を共にしたように見える。



シロル「酷い!私と言うものがありながらその娘を選ぶなんて!私とは遊びだったんだね!?」



黎斗「はぁぁ!?馬鹿言うな!これは誤解だ!俺は何もしていない!というか俺とシロルはそんな関係じゃないだろ!」



シロル「冗談だよ。黎斗がそんな人じゃないって知ってるし」



黎斗「焦るからやめてくれ…」



シロル「それで、何でその娘に抱きつかれてるの?」



黎斗「それは俺が聞きたい…起きたら春雨が抱きついてたんだ…理由は分からない」



シロル「春雨?」



黎斗「この娘の名前だ」



シロル「えーと、春雨ちゃんに何かしたとかは?」



黎斗「全く覚えがない。あるとしても初めてここに来た時に怪我を治した事だけだぞ」



シロル「それが理由じゃないの?」



黎斗「普通怪我を治しただけでこんなになるか?強く抱きつかれて離れないんだが…」



シロル「どうだろうね。実際この鎮守府に居るみんなは黎斗の事が気になってるみたいだし」



黎斗「マジかよ…」



シロル「とりあえず、春雨ちゃんを起こさないの?」



黎斗「こんなに気持ち良さそうに寝てるのにか?」



シロル「うーん…そうだね」



黎斗「俺はここに居る。春雨が起きるまでな」



シロル「分かった。それと、後で執務室に来てほしいんだけど…」



黎斗「あぁ、分かった」



シロル「じゃあまた後でね」



ガチャリ バタン



黎斗「行ったか…もう大丈夫だ。春雨ちゃんよ」



春雨「…スゥ…スゥ…」ダキツキ



黎斗「起きてるのは分かってるからな」



春雨「っ!」ギクッ!



黎斗「俺が起きる前から起きてたよな」



春雨「…どうして…分かったのですか…?」



黎斗「何となく…だな」



春雨「そうですか…」



黎斗「さて、春雨は何故俺に抱きついてるか聞きたいんだが」



春雨「それは…その…」



黎斗「………」



春雨「司令官は…怪我が酷かった私を助けてくれました…前の司令官から守ってくれて…それで…司令官がここに来た時…お礼が言いたくて…跡をつけたんです…それで…司令官が医務室で寝ていて…私も…」



黎斗「抱きついて寝たと…」



春雨「はい…」



黎斗「…じゃあ起きようか」



春雨「え…?」



黎斗「もう起きる時間だからさ」



春雨「怒らないのですか…?」



黎斗「怒る理由がない。それに君は前の提督に酷い扱いを受けていたんだろ?だからこれくらいの事はさせてやりたいんだ」



春雨「本当に…いいのですか…?」



黎斗「勿論だ。これからは俺とシロルがここの提督なんだ。だから君は兵器としてじゃなく、人間として生きてほしいんだ」



春雨「司令…官…」ポロポロ



黎斗「もう我慢しなくていい。溜め込んでいる物を全て吐き出してくれ」ナデナデ



春雨「うぅ…ぐすっ…」ポロポロ



黎斗の言葉に春雨は涙を流し、抱きつきながら泣き続けた。恐らく医務室の外に聞こえているかもしれない。それ程、春雨は耐え続けていたのだろう。



そして数十分後…



春雨「スゥ…スゥ…」ダキツキ



黎斗「いや寝るのかよ…!」



ガチャリ



シロル「誰かが泣いてる声が聞こえると思ったら…春雨ちゃんだったんだ…」



黎斗「やっぱ外まで聞こえてたか」



シロル「うん」



黎斗「相当溜め込んでいたんだ。春雨と同じ様な娘が居るかもしれない」



シロル「許せないよね…前の提督は」



黎斗「あぁ、そうだな…」



(そんな奴ら…”消えればいいのに”…)



シロル「後さ、白露ちゃん達が春雨ちゃんの事探してたよ」



黎斗「そうか。じゃあ春雨を頼む。俺は執務室に行くから」



シロル「うん。春雨ちゃんの事は任せて」



黎斗は寝ている春雨をシロルに引き渡し、執務室へと向かった。





−執務室−




黎斗「執務室に来たのはいいんだが…」



書類「ドッサリヤデ」



黎斗「フフフ…アッハッハッハ!」



黎斗「この程度で俺を止められると思うなよ!」



それから黎斗はあらゆるモンスターのスピードと神様からもらった情報で書類を書き始めてから、30分も経たずに約1年分の書類を終わらせてしまった。



ガチャリ



シロル「黎斗居る?」



黎斗「シロルか。居るぞ」



シロル「黎斗も見た?あの量の書類…を…」



書類「ウソダドンドコドーン!」



シロルから見た視点では、前任がしなかった書類も含め、一年分はあった書類は見事に消化されていた。



シロル「黎斗…もしかして…」



黎斗「俺が終わらせた」



シロル「もう黎斗だけでいいと思う…」



黎斗「てかこんなに書類があるんだったら早く言えよ」



シロル「だって…こんなに書類があるとは思わなくて…」



黎斗「ごめん。別に責めた訳じゃないんだ。ただやりかけの書類があったからさ。一人でやってたんだろ?」



シロル「うん…」



黎斗「何かあれば俺に言ってくれ。俺も手伝うからさ。シロルだけに無理はさせない」



シロル「黎斗…」グスッ



黎斗「おいおい…泣くなよ。親友なんだから当たり前だろ?だから泣かないでくれ」



シロル「…うん…ありがとう。けど…」



黎斗「ん?」



シロル「親友から……に変えてあげるから…」ボソッ



黎斗「何か言ったか?」



シロル「何でもないよ」



黎斗「とりあえず書類は終わらせたとして、後は何をするか…」



黎斗(それにしても、前の提督はあの娘達を奴隷扱いしたうえに仕事もしてないとは…何でそんな人間が提督になれたんだか。今は刑務所で終身刑の罪になっているが……まぁいい…)



シロル「それなら艦娘のみんなに会おうよ。みんな黎斗に会いたがってたよ」



黎斗「そうだな。まずはみんなに会うか」



シロル「じゃあ行こう」



黎斗「あぁ」



ガチャリ バタン



黎斗とシロルは鎮守府に居る艦娘達に会いに行く為に執務室を出た。その数秒後…



キィーン…キィーン…



?「………」



執務室に置いてある鏡が震え、歪みだした。誰も映っていないその鏡からは人が映った。その鏡に映った相手は…




     『黎斗そっくりだった…』




?「俺がお前の望みを叶えてやる…」



?「俺は……『お前』だからな…!」



鏡に映った黎斗そっくりの男は、そのまま鏡の中に消えてしまった…




−廊下−




黎斗「まずは適当に歩くか。その内会えるだろ」



シロル「そういえば黎斗って神様に何か能力を貰ったんだよね?」



黎斗「あぁ、能力プレゼントしますガチャー!!でな」



シロル(やっぱり他にもやってたんだ…)



黎斗「シロルもだろ?」



シロル「うん、私は『あらゆるものを治療する』って言う能力だったよ」



黎斗「あらゆるものを治療する?」



シロル「どんなに治せない怪我や病気を治療する事が出来る能力だよ」



黎斗「なるほど…つまりヒーラー系か」



シロル「黎斗はどんな能力なの?」



黎斗「俺は『モンスターハンター』の能力だ」



シロル「モンスターハンター?ゲームの?」



黎斗「モンハンのアイテムや武器を取り出したり、モンハンに関する物全てを自由自在に扱う事が出来るらしい。それも、モンスターの能力を使ったり、呼び出したりもな」



シロル「それってチートだよね…」ニガワライ



黎斗「安心しろ。俺も思った」



如月「あら?司令官達?」



黎斗「ん?君は……如月か」



皐月「僕達もいるよ!」



振り返るとそこには睦月型の如月、皐月、弥生、長月、菊月の5人がいた。



弥生「司令官達…おはようございます…」



黎斗「うん、おはよう」



シロル「おはよう!」



長月「二人はここで何をしているんだ?」



提督「実はシロルから艦娘のみんなが会いたがってると言われてな。それで今からみんなに会いに行こうと思ったんだ」



菊月「それは丁度良い…私も司令官には会っておきたいと思っていた所だ…」



如月「そうね。本当は昨日の内に会いたかったのだけれど…」



黎斗「あぁ…昨日は食事の支度や片付けで忙しかったからな。講堂の時しか顔を出せなかった。ごめんな」



皐月「謝らないでよ。僕達は司令官に感謝してるんだよ!」



弥生「そうですよ…」



黎斗「いや、俺は大した事はしていない。俺は君達を指揮する提督として当り前の事をしただけだ。君達は兵器なんかじゃない。同じ人間だからな」



長月「優しいんだな。司令官は」



黎斗「そうか?」



菊月「そうだ…私達は司令官の様な優しい人には会った事も見た事もない…」



黎斗「…とにかく、君達と会えて良かった。改めてよろしく頼む」



如月「えぇ、よろしくお願いします♪」



皐月「よろしくな!」



弥生「よろしくお願いします…」



長月「あぁ、よろしく頼む」



菊月「よろしく頼むぞ…」



シロル「それじゃあ黎斗、次行くよ」



黎斗「そうだな」




それから次々と艦娘達に会いに行き…




金剛「Hey!テートク!」



黎斗「ん?」



金剛「バァァニングゥ!ラァァァブ!!!」ダキッ!



黎斗「ヒャクエン!」バターン!



比叡「お姉様ぁ!?」



榛名「提督!大丈夫ですか!?」



黎斗「」黎斗が気絶しました



霧島「大変!司令が気絶しています!」



シロル「あはは…」




時津風「しれぇ!」



黎斗「ん?」



時津風「かーかれぇ!」ダキッ!



ダダダダダッ!



島風「おっそーい!」ダキッ!



黎斗「ニヒャクエン!」バターン!



雪風「しれぇ!?」



天津風「ちょっと貴方達!?何してるのよ!?」



黎斗「」黎斗が気絶しました(2回目)



シロル「大丈夫かな…?」




−執務室前−




あれから黎斗とシロルは様々な施設に行き、艦娘達に会いに行った。艦娘達はそれぞれ個性的な艦娘達で、とても元気な娘ばかりだった。一通り艦娘達に会った二人は執務室に戻っていた。



シロル「とりあえず、一通り会う事が出来たね」



黎斗「そうだな」



ガチャリ



大淀「…っ!」アゼン



明石「…っ!」アゼン



青葉「…っ!」アゼン



執務室に入ると大淀、明石、青葉の三人が机に置いていた一年分はあった書類を見て唖然としていた。



大淀「あっ、提督!」



黎斗「大淀?どうしたんだ?明石と青葉まで」



明石「あの…この書類って」



黎斗「その書類か?前任がしなかった分を含めた書類だが」



青葉「これ…全部やったんですか?」



黎斗「あぁ、全て終わらせた」



三人「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」



シロル「それが普通の反応だよね…」



大淀「先程書類を確認したのですが…これほどの量で一文字も間違いがありませんでした…」



明石「提督って何者なんですか?」



黎斗「失礼だな。人間に決まってるだろ」



シロル「うーん…誰でもそう思うよ?」



青葉「まさかこの量を一人で…」



黎斗「俺だけじゃないぞ?シロルもやってくれたからな」



シロル「私は…何もしてないよ…」



黎斗「いや、シロルがある程度やってくれたお陰で早く終わらせる事が出来たんだ。だから自分に自信を持て」



シロル「黎斗…」



大淀「お二人は仲がいいんですね」



黎斗「親友だからな」



明石「恋人とかではないんですかー?」



黎斗「それはない」即答



明石「アッハイ」



シロル「……」シュン



明石(あれ?何か落ち込んでる?)



黎斗「というか、何故三人はここに居るんだ?」



大淀「こちらの書類なんですけど…」



黎斗「ん?どれどれ…」



…………………………



黎斗「工廠で開発と建造の許可と…取材の許可か」



明石「……」



青葉「……」



黎斗「別にいいぞ。というか書類で許可申請しなくても言ってくれれば許可するつもりだが…」



明石「えぇ!?そんな簡単に許可していいんですか!?」



青葉「そうですよ!」



提督「工廠の場合は建造で新たな仲間を迎えたり、装備を開発して艦娘達の戦力を上げるには重要な役割だからな。取材は艦娘達の意見を聞いて新聞を作る事で心のケアになる。これからは許可を取らずに自由にしてくれ」



明石「提…督…」グスッ



青葉「司令…官…」グスッ



黎斗「まぁ…注意として、工廠の場合は建造や開発の結果を報告してくれ。取材の場合は嘘の情報は書くなよ」



二人「「はい!ありがとうございます!」」



大淀(提督…貴方はどうして私達に優しいんでしょうか…?)



シロル(やっぱり…黎斗は優しいよね…)



明石「早速、工廠で開発をしてきますね!」



黎斗「あぁ、分かった」



青葉「ではでは!司令官二人に取材してもいいですか!?」



黎斗「勿論だ」



シロル「私も?いいけど…」



大淀「私はこの書類を持って行きますね」



黎斗「かなり多いから気をつけてな」



青葉「それでは取材させて貰いますね!」



提督「まず、最初に何が聞きたい?」



青葉「はい!えっとですね…」



それから黎斗とシロルは青葉の取材を受けていた。取材をしていた青葉は嬉しそうな顔をしていた。今まで取材をする事が許されなかったが、黎斗は取材を許可し、青葉の質問に真剣に答えた。青葉はこれまで満たされなかった心の穴が埋まっていく様な感じがしていた。



青葉「最後に、司令官達は私達艦娘の事をどう思っていますか?」



黎斗「そうだな。一言で言えば…仲間だな」



シロル「私も同じ」



青葉「…」パチクリ



黎斗「どうした?何か変だったか?」



青葉「いえ…司令官達」



黎斗「ん?」



青葉「私達の事をよろしくお願いしますね。取材、ありがとうございました!」



黎斗「あぁ、任せろ」



シロル「お疲れ様」



青葉「はい!」ニコッ



ガチャリ バタン



時刻1830



黎斗「気がつけばもう夕方か」



シロル「時間が経つのって早いよね」



黎斗「そうだな。食堂にでも行くか」



シロル「うん!」






−食堂−




ガヤガヤ



黎斗「この時間は艦娘達が多いな。これは出直すべきか」



シロル「間宮さんと鳳翔さんの作る料理は絶品なんだって。だからみんなこの時間に来るんだよ。出直したら食べれなくなっちゃうよ?」



黎斗「じゃあシロルだけ行ってくれ。俺は外で」



ガシッ!



シロル「ふふふ…逃さないよ」



黎斗「…分かった…分かったから離してくれ」



シロル「嫌だよ」ニコニコ



黎斗「oh……」




シロル「間宮さんか鳳翔さん居ますか?」



間宮「あら?提督!今日はここで食事をされるんですか?」



シロル「はい!私達は間宮さんと鳳翔さんの料理を食べたくて来ました!」



黎斗「俺何も言ってなi」



シロル「何か言った?」ニコニコ



黎斗「………何でもない」



シロル「それじゃあ…日替わり定食をお願いします!」



黎斗「俺もそれで頼む」



間宮「はい!分かりました!鳳翔さん!提督二人が日替わり定食を注文しました!準備をお願いします!」



鳳翔「はい!分かりました!」



シロル「後は待つだけだね」



黎斗「……こんがり肉が食べたい」



数十分後…



間宮「お待たせしました!日替わり定食です!」



シロル「ありがとうございます!これ代金です。お釣りはいりません」



鳳翔「いいんですか?」



シロル「勿論です!それじゃあ黎斗、席探そうか」



黎斗「あぁ…」



二人は料理を持って空いている席を見つけ、そこに座った。



長門「ん?提督達じゃないか。ここで食うのか?」



黎斗「お?長門か」



陸奥「私も居るわよ」



黎斗「二人もここに来たのか。この席が空いていたからシロルと食べようと思ってな。丁度四つ席があるから一緒に食べるか?」



長門「いいのか?」



黎斗「勿論だ」



シロル「私も大丈夫だよ?賑やかの方が楽しいし」



長門「それはありがたい。ここで食うとしよう」



陸奥「私もそうさせて貰うわね」



黎斗「あぁ」



それから四人は話をしながら食事をとり、最後は食事を終え、長門と陸奥は部屋に戻って行った。黎斗とシロルは一度執務室に戻った。




−執務室−




シロル「間宮さんと鳳翔さんの料理美味しかったね」



黎斗「そうだな」



シロル「えーと、この後はもうやる事がないんだよね」



黎斗「書類仕事も当分無いからな」



シロル「じゃあ…私はお風呂に入ってくるね」



黎斗「分かった。風呂の後は自分の部屋でゆっくり休んでろよ」



シロル「うん!」



ガチャリ バタン



黎斗「…後から俺も行くか」



そして数十分後…




−浴室−




黎斗「中は思ったよりも広いな。まるで温泉に居るみたいだな。前の提督と憲兵達が使ってたから当たり前か」



とは言ったものの、一人だけで温泉並みの広さを使うのには少し抵抗があった。そこへ…



ワーイオフロダー!


イェーイ!


トウッ!



バッシャーン!



黎斗「うわっ!誰だ!?」



何者かが次々と浴槽の中へ飛び込んできた。黎斗は警戒しながらも相手の姿を確認した。その姿はあまりにも小さく、約二頭身で、手で摘める程の小人の様な少女達だった。



黎斗(頭の中でこの少女達の情報が…『妖精』か。建造や修理をしたりする妖精と、艤装や艦載機に乗って艦娘の手助けをする妖精の二種類がいるのか。妖精は心の優しい者にしか姿を見せないらしい。だから初めて来た時には妖精の姿も無かった訳だ)



テイトクモハイロー!


キモチイヨー!


ハヤクハヤクー!



黎斗「ここ男専用なんだが…まぁ妖精だから?別にいい…のか?…まぁいいか」



考える事をやめ、気にせず湯に浸かりながら、妖精達と仲良く話した。そして頭や体を洗い、一通り洗い終わってからまた浴槽に浸かり、最後は浴室を出た。



時刻2000



黎斗「もうすっかり夜だな。この後は何もする事がない。少し早いが寝るべきか…」



黎斗「…外で散歩して来るか」



タッタッタッ…




−浜辺−




ザッザッザッ…



黎斗「この場所に来るのは久々…でもないか」



この場所は、黎斗が深海棲艦との戦いを終え、初めて陸に降り立った場所がこの浜辺だった。そしてシロルとの再開の場所でもあった。



黎斗「ここは潮風が最高だな。それに景色も良い。お気に入りスポットにして頭に入れておくか」



そうして一人砂浜を歩いていると…



黎斗「ん?あれは…女の子か?何故こんな暗い夜の浜辺に…というか倒れてるじゃねぇか!とにかく助けないと!」



急いで倒れている少女の方へと駆け足で向かい、肩を揺らしながら声をかけた。



黎斗「君!大丈夫か!?しっかりしろ!」ユサユサ



?「……」



黎斗「ちょっと待てよ…これは…艤装…?」



少女の他に目に映ったのが、艦娘が持つ艤装。彼女の服装は、袖の無い白と青のセーラー服に、同じ色のミニスカートを着ていた。



黎斗(頭の中でこの娘の名前が…『五月雨』か…って事は艦娘だな。身体中ボロボロじゃないか…何があったかは分からないが…とりあえずガイア泊地で入渠させるか。その前に…)



黎斗「ガノトトス!ラギアクルス!」



空間から水竜ガノトトスと海竜ラギアクルスを呼び出した。



黎斗「しばらくの間、海域と別の鎮守府を偵察して来てくれ。くれぐれも艦娘には見つかるなよ」



ガノトトス「グギャアァァ!」



ラギアクルス「グオォォォ!」



二匹は指示で海に潜り、海域と別の鎮守府を偵察しに行った。



黎斗「俺もこの娘を運ぶか」



ザッザッザッザ



黎斗「待ってろよ…すぐに治してやるからな」




−ガイア泊地 入渠ドック前−




黎斗「………」



シロル「黎斗…」



黎斗はガイア泊地に戻り、五月雨を急いで入渠ドックに入れた。この事は艦娘全員に知れ渡り、白露型の娘達が五月雨の付き添いをしていた。



シロル「五月雨ちゃん…大破してたみたいだけど…高速修復材を使ったから大丈夫だよ…だから安心して」



黎斗「あぁ…そうだな」



シロル「けど…五月雨ちゃんに一体何があったのかな…浜辺で倒れてたみたいけど…深海棲艦にやられちゃって流れ着いた…って事なの…?」



黎斗「分からない…何故あんなに傷だらけなのか…仮に深海棲艦にやられて流れ着いたとしたら、五月雨の鎮守府の艦娘達が捜索している筈だ。もしくは大本営に連絡して、各地の鎮守府に捜索要請を出す事もある」



シロル「大本営から何か連絡は…?」



黎斗「いや、今のところは…」



シロル「そっか…」



黎斗「……少し浜辺に行って調べてくる」



シロル「うん…分かった」



タッ…タッ…タッ…



シロル「五月雨ちゃん…」




そして数分後…




ガチャリ



入渠ドックの扉が開き、白露、時雨、村雨、夕立、春雨、そして五月雨が出てきた。



五月雨「ひっ…!」ビクッ



白露「大丈夫、この人は五月雨の知ってる提督じゃないよ!」



時雨「そうだよ。それに、僕達の提督は優しいんだ。提督はもう一人いるんだけど、その人も優しい人だよ」



五月雨「うん…」



シロル「えっと…身体はもう大丈夫?」



五月雨「はい…助けてくれてありがとうございます…私…白露型の6番艦…五月雨って言います…」



シロル「初めまして。私はこのガイア泊地の提督、シロルだよ。助けたのは私じゃなくて、もう一人の提督が、浜辺で倒れてた五月雨ちゃんをここに運んでくれたんだよ」



村雨「あれ?もう一人の提督は何処にいるの?」



シロル「今は五月雨ちゃんが倒れていた浜辺にいるみたいだけど…」



春雨「あの…司令官の所に行ってもいいですか?この事を伝えたいので…」



シロル「いいけど…夜は暗いから気をつけてね」



春雨「はい、それでは行ってきます」



タッタッタッ



シロル「えっと…五月雨ちゃんは何処の鎮守府に着任しているの?」



五月雨「松島鎮守府…です」



シロル「松島鎮守府ね。じゃあ…五月雨ちゃんはどうして大破してたのかな?身体中ボロボロだったけど」



五月雨「私は…鎮守府から逃げてきたんです…」



シロル「逃げてきた……って事は…!?」



……………………………




−浜辺−




黎斗「……来たか」



バッシャァァァァーン!



ガノトトス「グギャアァァ!」



ラギアクルス「グオォォォ!」



黎斗「良くやってくれた。それで、結果は?」



ガノトトス「グギャア!」



黎斗「海域には異常なしか…」



シレイカーン!



黎斗「っ!?ガノトトス!ラギアクルス!戻れ!」



大急ぎで指示すると、ガノトトスとラギアクルスは空間の中へと去って行った。



春雨「司令官!」



黎斗「春雨…!どうしたんだ?こんな所で…もしかして五月雨の事か?」



春雨「はい。五月雨ちゃんの入渠が終わって意識も取り戻しました」



黎斗「そうか…」



春雨「あの…実は…」



黎斗「ん?」



春雨「五月雨ちゃんの鎮守府の事なのですが…」



黎斗「五月雨の鎮守府?」



春雨「五月雨ちゃんの鎮守府は…前の私達と同じ…『ブラック鎮守府』です…」



黎斗「……そういう事か……それで」



春雨「え?」



黎斗「五月雨が居た鎮守府の名前は…?」



春雨「確か…松島鎮守府です」



黎斗「分かった…春雨…俺は少しやる事がある…先に鎮守府に戻っててくれ…30分後には戻る」



春雨「えっ…?あの…!」



黎斗「そしてもう一つ…俺が今からやる事は誰にも言うな…」



ギュイィィーン!バシュゥゥゥゥゥゥゥーン!



黎斗は背中にバルファルクの変幻自在の翼脚を生やし、龍のブレスを噴射して高速で飛行した。



春雨「きゃっ!司令官!!」



ロケットの様な広範囲の風圧で、春雨は目を開ける事が出来ず、気がつけば黎斗はその場に居なかった。




−松島鎮守府 門前−




ズドーン!




黎斗「ここだな…ブラック鎮守府の提督がいる場所は…!」



今の黎斗は完全に怒り狂い、その勢いで殺してしまいそうな程の怒りだった。



黎斗「一瞬で終わらせる…!」



シュバッ!




−執務室−




松島提督「……」イライラ



艦娘達「……」フルフル



松島提督「ちっ!…五月雨はまだ見つからないのか…!」



艦娘達「……」フルフル



松島提督「もし見つけられなかったらお前達全員解体だからな!」



艦娘達「……!」ビクッ



松島提督「分かったらさっさと行って来い!」



黎斗「その必要はない…」



バリンバリン!



艦娘達「っ!」



松島提督「誰だ!?」



黎斗「名乗る必要はない…!」



松島提督「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



黎斗は窓を破壊して執務室に入り込み、即座に松島提督をフルボッコだドン状態にした。執務室に居た艦娘達は何が起きているか分からず、ただ黎斗と松島提督を見ていた。



1分後…



松島提督「う……あ……」



黎斗「正直物足りないが…このくらいでいいか」



暁「貴方…一体誰なの…?」



執務室に居た艦娘達の中の一人が声をかけた。



黎斗「俺は…ガイア泊地の提督だ。悪いがこいつは貰っていく…君達はこいつに苦しめられていたんだろう?」



響「そうだよ…私達はずっと…」



黎斗「その生活は終わりだ…こいつは大本営に連れて行く…時間がないからこれで失礼するぞ…じゃあな…」



シュバッ!



雷「消えた…!あの人は一体…!?」



電「なっ…なのです…!」





−大本営−




元帥「そうか…松島鎮守府がブラック鎮守府だったとは…」



黎斗「なので俺が少しばかり痛めつけておきました」



元帥「恐ろしいな君は…」



黎斗「そういう人間は許せない主義なので」



元帥「そうか…だが、君のお陰で松島鎮守府の艦娘達は救われた。感謝しているよ」



提督「元帥…有難きお言葉です」



元帥「さて、君の鎮守府の艦娘達が待っているのだろう?早く戻ってあげなさい」



提督「分かりました。それでは失礼します」



ガチャリ バタン



黎斗「急いで戻るか…」



タッタッタッ…





−ガイア泊地 執務室−




シロル「黎斗…遅いね…」



シロル達は春雨が帰ってきてから、黎斗を待っていた。30分後には帰ってくると言われたが、流石に遅すぎる。そう思っていると…



ガチャリ



黎斗「ただいま」



シロル「黎斗!」



白露「提督!良かったぁ!」



時雨「遅いよ。どこに行ってたんだい?」



黎斗「あぁ…それは…だな…」



村雨「どうしたの?何か言えない事?」



黎斗「いや、五月雨居るか?」



五月雨「…っ!…はい!」ビクッ



黎斗「実際に会うのは初めてだな。俺はガイア泊地の提督、黎斗だ。君に良い知らせがある」



五月雨「良い知らせ…ですか…?」



黎斗「君が着任していた松島鎮守府、そこの提督を大本営に引き渡してきた」



艦娘達「え!?」



シロル「そういう事だったんだ…通りで遅かった訳だね」



夕立「提督さん!どういう事っぽい!?」



黎斗「春雨に五月雨の鎮守府を聞いてそこに向かったんだ。そして、そこの提督を叩きのめした後、大本営に引き渡しに行った」



五月雨「待って下さい!この鎮守府からかなり離れている筈です!どうやってこんな早くに…!」



黎斗「それは…聞かないでくれると助かるんだが…あまり話したくないんだ」



五月雨「えっと…分かりました…その…ありがとうございました…!私を助けてくれて…!」



黎斗「そしてもう一つ、君は本来なら元の鎮守府に戻らないといけない」



五月雨「はい…」



黎斗「そこで提案なんだが、このガイア泊地に着任しないか?」



五月雨「えっ!」



黎斗「あの鎮守府には新しい提督が着任するが、君はもうあの鎮守府には戻りたくないんだろ?」



五月雨「いいんですか…?」



黎斗「あぁ!歓迎するさ!」



シロル「私も賛成!」



白露「私も!」



時雨「僕もだよ!」



夕立「賛成っぽい!」



春雨「私もです!はい!」



五月雨「うぅぅ…はい…私は…ここに着任します…うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」



五月雨は涙が止まらず、大声で泣いていた。そして白露達も五月雨を抱いて泣いた。



シロル「ふふっ、良かったね。五月雨ちゃん」



黎斗「ふっ…」




この日から、五月雨はガイア泊地の艦娘として歓迎されたのだった。




それから三日後…




−私室−




黎斗「」パチッ



黎斗「もう朝か…起きるとする…」



ムギュッ



黎斗「………はあぁぁぁぁぁぁぁ…」バサッ!



時雨「スゥ…スゥ…」ダキツキ



夕立「スゥ…スゥ…」ダキツキ



春雨「スゥ…スゥ…」ダキツキ



黎斗「もう慣れた…そんなに経ってないが…」



何故か、抱きつかれてる事が日常茶飯事になっていた黎斗であった。



春雨「んん…司令…官?」



黎斗「おはようございます」



春雨「はっ!ごっごめんなさい!司令官に抱きついて寝ちゃいました!」



黎斗「別に大丈夫だ。それに俺はこれくらいの事はさせてやりたいって言ったからな」



春雨「司令官…」



黎斗「けど何で時雨と夕立までいるんだ?」



春雨「時雨姉さんと夕立姉さんが…司令官の事気になってて…それで昨日、三人で司令官の所に行ったんです…司令官は寝てたので…」



黎斗「まぁ…別にいいけどな…」



時雨「ん…提督…?」



夕立「んんん…提督さん…?」



黎斗「二人共、おはよう」



時雨&夕立「おはよう!(っぽい!)」



黎斗「それじゃあ起きるか」






−執務室−




シロル「そろそろ黎斗は起きた頃かな?ちょっと様子を見てこようかな」



ジリリリリ!



執務室の机に置いてある電話が鳴り、シロルは電話に手を取った。



カチャ



シロル「はいもしもし、こちらガイア泊地です」



元帥「シロル君か!」



シロル「元師!?そちらから掛けて頂けるなんて。どうしたんですか?」



元帥「実は…前任の事なのだが…」



シロル「前任…確か黎斗が大本営に連れて来た…」



元帥「その前任がな…」




元帥「何者かに…殺害されたのだ…!」



シロル「殺害って……えぇぇぇ!?」



元帥「殺害されたのは前任だけではない…!」



シロル「他にも…?」



元帥「三日前、黎斗君が大本営に引き渡してくれた松島鎮守府の提督も…殺されたのだ…!」



シロル「嘘…!?犯人は誰なんですか!?」



元帥「犯人の姿は未だに分かっていない…そもそも…彼らが収容されている刑務所はとても頑丈な構造でな…警備も厳重なのだが…彼らだけが牢屋の中で殺害されていた…しかも…無残に引き裂かれてな…」



シロル「無残に…」



元帥「その事態で…前任と一緒だった憲兵達が脱走したのだ…この事は黎斗君にも伝えてほしい…」



シロル「分かりました…伝えておきます」



元帥「頼んだよ…シロル君」



カチャ ツー ツー



シロル「すぐに伝えなきゃ!」



タッタッタッ




−廊下−




夕立「ごっはん〜♪ごっはん〜♪」



時雨「夕立、そんなに走ったら転ぶよ?」



春雨「夕立姉さん、すごく楽しそうです。はい!」



黎斗(確かに楽しそうだな。最近のみんなは徐々に明るくなっている…前の提督のせいで相当辛い思いをしていたから当然か。何にせよ、みんなが明るくなって良かった…)



ダダダダダッ!



シロル「黎斗ー!!」



夕立「ぽい?」



時雨「え?」



春雨「ふぇ?」



黎斗「ん…シロルか。どうした?」



シロル「三人共ごめんね!ちょっと黎斗借りるね!」ガシッ



黎斗「おいちょっと待…」



シロル「とりあえず来て!」



黎斗「…はいはい、三人共また後でな」ズルズル



時雨「あっ…」シュン



夕立「ぽい…」シュン



春雨「はい…」シュン






黎斗「何?前の提督が殺された?」



シロル「うん…それに松島鎮守府の提督も…」



黎斗「おいおい…三日前大本営に引き渡した奴もなのか?殺した相手は分かってるのか?」



シロル「それが分からないみたいなんだ…」



黎斗(…恐らく別世界の存在だな。何故そいつらだけが殺されたかは知らないが…)



シロル「その事態で前の憲兵達が脱走したみたいなんだよ…」




黎斗「そうか……シロル、この事はみんなには秘密にしてくれ」



シロル「どうして!?」



黎斗「その話は鎮守府で起こった訳じゃないんだろ。殺された相手が前の提督だったとしても、そいつらとはもう何の関係もない。それにみんなは前の提督の話なんか聞きたくもないだろ」



シロル「それはそうだけど…」



黎斗「憲兵達の件は俺が何とかする。もしこの鎮守府で何かあれば、俺が守る。誰一人死なせない」



シロル「分かった…でも気をつけてよ」



黎斗「あぁ、勿論だ」




キャアァァァァァァァー!



シロル「っ!?」



黎斗「食堂から声が…とにかく行くぞ!」



シロル「うん!」



食堂の方から艦娘の誰かの悲鳴が聞こえ、二人は食堂へと向かった。




−食堂−




ドアバーン!



黎斗「どうした!?」



シロル「……っ!?」



叢雲「…な…何よ…これぇ…」ミヒラキ



吹雪「う…うぇぇ…」オロロ



食堂に行くとほとんどの艦娘達が手で目を覆い隠していたり、吐いたりしていた。何故なら…



黎斗「この臭い…まさか死体…しかもこの死体は!」



黎斗が目にした物は、人の体が半分に引き裂かれ臓器や脳が散らばっていた。その無残な死体は、元師の報告で刑務所から脱走した憲兵達だった。その憲兵達が無残に殺されていた。



天津風「ぅ…ぅぷっ」クチオサエ



時津風「おえぇぇぇぇ!」ビシャビシャ



シロル「時津風ちゃん!?」



黎斗「一体何があったんだ…!?」



白露「てい…とく…」ビクビク



黎斗「白露!?大丈夫か!?」



白露「提督…怖いよぉ…」ビクビク



ダキッ



黎斗「安心しろ…俺はここにいる…ゆっくりでいい…何があったか話してくれないか?」ナデナデ



白露「…きゅ…急に憲兵の人達が来て…『ここの提督は何処だ!?』…って暴れ始めて…あたしの腕を掴んで…それで…すっごく怖くて…目を瞑ってた…それで気がついたら…」ビクビク



黎斗(なるほど…話は大体分かった。要するに憲兵達は俺に復讐する為にここに来たんだな。そして、白露に危害を加えようとした。そこから憲兵達は無残に殺された訳か)



黎斗「そうか…怖かったな…もう大丈夫だ…俺が守ってやるからな…」ナデナデ



白露「てい…とく…うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」



黎斗「よしよし…」ナデナデ



キィーン…キィーン…



?「ふっ…哀れだよな…」



黎斗「っ!誰だ!?何処にいる!?」



白露「提督…?」



シロル「黎斗、どうかしたの…?」



?「俺はここにはいない…俺は鏡の中にいる…」



黎斗「鏡の中だと?一体何者だ!?」



?「…鏡の前に立つといい…俺の正体が知りたければな…」



黎斗「シロル…白露を頼む…みんなを部屋に戻すように指示してくれ」



シロル「えっ?ちょっと、何処いくの!?」



黎斗「これだな…よし!」



キュイーン!



黎斗は机に置いてあった鏡の前に立ち、その鏡に吸い込まれた。



白露「提督!?」



シロル「黎斗!?」




−?−




黎斗「ん…ここは…食堂…ってなんだここは…」



鏡の中に吸い込まれた黎斗は食堂で目が覚め、文字や道具、ありとあらゆる物が左右に反転していた。



?「ここは…鏡の中の世界だ…」



黎斗「なっ…なん…で…!」



黎斗は驚きのあまり言葉が出なかった。何故なら、黎斗と全く同じ姿をした男が目の前に現れた。




BGM 「仮面ライダー龍騎 クライマックス4」




黎斗?「ふっ…直接会うのは初めてだな…」



黎斗「君は…一体何者だ?何故俺の姿を…」



黎斗?「俺はお前だ…鏡の中の…いや…鏡の世界のな…」



黎斗「鏡の世界?」



黎斗?「そうだ…この世界は…存在しなかった鏡の中の世界…お前の世界とそっくりだが…左右が反転している…人間や動物は存在しない…そして…鏡の世界で生まれたのが…この俺だ…」



黎斗「そうか…なら答えてくれ。憲兵達を殺したのは君なのか?」



黎斗?「あぁ…俺だ…そいつら以外にも…黒提督と松島提督を殺した…」



黎斗「っ!何故そんな事を!?」



黎斗?「お前が望んだ事だ…」



黎斗「俺が?」



黎斗?「お前は…艦娘を奴隷の様に扱う提督を憎んでいる…殺したい程にな…彼女達は元々…深海棲艦から人類を守る為に造られた存在…それが人類に殴られ…蹴られ…彼女達を造っておきながら何故そんな事をするのか…そしてお前は言った…そんな奴ら…”消えればいいのに”…とな…」



黎斗「違う…」



黎斗?「俺が殺してやった…艦娘を奴隷の様に扱う提督を…共犯である憲兵達もな…」



黎斗「だからって…殺す事なんて無かっただろ!」



黎斗?「これはお前が望んだ事だ…」



黎斗「俺は殺したいなんて思ってない!それにあいつらは終身刑の罪で刑務所から一生出られなかったんだ!そんな奴らを殺す意味なんて!」



黎斗?「あるさ…艦娘を奴隷の様に扱う人間が生きているせいで…彼女達は地獄の様な日々を味わった…実際…白露は憲兵達に危害を加えられそうになった…そうなる前に殺した…もう二度…彼女達に地獄を味合わせないようにな…」



黎斗「………」



黎斗?「あいつらに生きる価値なんて無い…寧ろこの世から消した方が彼女達の為にもなる…もう彼女達が傷つく事はない…」



黎斗「いや…それは違う」



黎斗?「何…?」



黎斗「確かに、彼女達を奴隷の様に扱う提督は消えればいい…俺はそう思った。君は彼女達を守る為にやった…けどな、その行動が逆に彼女達を傷つけたんだ!」



黎斗?「何だと…俺が…?」



黎斗「あぁそうさ!憲兵達が…人間達が無残に殺されて…!たとえどんな相手でも…あいつらは人間だ!彼女達が守るべき人間なんだよ!それが目の前で殺されて…少なくとも…彼女達は心にトラウマを持った筈だ!君のやった事は…ただの自己満足だ!君は彼女達を傷つけたんだ!」



黎斗?「………」



黎斗「彼女達の気持ちも知らないで…君は勝手な事をしただけだ!君は…『俺』なんかじゃない!」



黎斗?「……ふふ…ふははははは…!」



黎斗「っ!?何が可笑しい!?」



黎斗?「お前が俺じゃない…だと…?ならば…俺がお前になるだけだ…!」



 装備『プライドofドゥーム』



黎斗「なっ!その能力は!?」



黎斗?「はあぁぁ…!」



黎斗「くっ!」



 装備『THEアポカリプス』



ガギン! ガギギギギギギギ!



鏡の黎斗は鏡像が重なって出来たゴア・マガラの最終強化した大剣を装備し、黎斗に襲いかかった。瞬時にシャガルマガラの大剣を装備し、二つの大剣が激しい音と共にぶつかり合った。



黎斗(この能力は俺のと同じ…!俺のよりも遥かに強い!!)



黎斗?「当然だ…俺は…お前だからなっ…!」



ドゴォ! ガァン!



黎斗「っと!」



ぶつかり合った大剣は片方の大剣になぎ払われ、鏡の黎斗は強烈な回し蹴りを喰らわせようとしたが、素早く大剣でガードした事でなんとか防ぎきれた。



黎斗「何故…俺の心の声が!?」



黎斗?「言った筈だ…俺はお前だと…お前の心が読めるのは当然だ…さぁ…話は終わりだ…!」



黎斗「やるしかないか!」



ダダダダダッ! ザシュン! ガギギィーン!



鏡の黎斗は高速で移動し、大剣を大きく斬り上げた。黎斗も高速で移動し、勢いよくジャンプ溜め斬りを繰り出した。お互いの大剣は激しく火花が散り、周辺の物全てが吹き飛ぶ程の威力同士だった。しかし…



黎斗?「ふっ…甘いな…!」



ガガガガガ! ガアァァァァーン!!



黎斗「ぐわぁっ!」



鏡の黎斗の方が威力は上手で、黎斗の繰り出したジャンプ溜め斬りは簡単に打ち落とされた。



黎斗?「どうした…?お前の力はそんなものじゃないだろう…?」



黎斗「だったら…狩技…地衝斬!」



ギィン! ギィィィィィン! ザザザアァーン!



重量のある大剣の刃先を地面に擦りつけながら前方ヘ走り、勢いよく剣を振り上げ、大きな衝撃波を発生させた。しかし…



黎斗?「…狩技…震怒竜怨斬…!」



ギィィン! グォン!グォン! ザザザァァン!



気合と共に大剣を掲げ、力を大きく溜めて斬り下ろす狩技。この狩技の発動中に攻撃を食らった際は、決して怯んだり吹き飛ばされたりもせず、そのダメージを反撃の力と変えて、威力を上乗せする事が出来る。狩技のタイミングを見計らい、カウンターを発動させた。



ザシュン!



黎斗「ぐはぁぁぁぁぁぁ!」



狩技の発動後は反動で一時的に動けなくなる為、ガードも回避も出来ないまま自身の狩技で威力を上げてしまった震怒竜怨斬を喰らってしまった。



黎斗「ぐっ…ふぅ…ぅ…」



バタリ



圧倒的な差をつけられ、流石の黎斗にも限界が来てしまい、その場で力尽きてしまった。



黎斗?「お前には失望した…この程度の力だったとはな…」



ガシッ



黎斗「」



黎斗?「まぁいい…お前の体を取り込めば…俺とお前は一つになれる…これで俺達は一心同体だ…鏡の世界も…現実の世界も…ふふふ…ふはははは…!」



意識を失っている黎斗の腕を強引に掴み、高笑いをしていた。その直後…



バァン!



ガキン!



銃の弾丸らしき物が鏡の黎斗めがけて飛んできた。鏡の黎斗は弾丸らしき物に気づき、大剣で弾き飛ばした。



黎斗?「ふっ…こんな弱い弾で俺を止めれるとでも思ったか……お前は…」



?「ごきげんよう♪申し訳ありませんが…そのお方には手を出さないで頂きたいのです♪それに…そのお方を取り込んでも、私達の様な存在はあちらの世界で生きる事は出来ませんわよ?」



黎斗?「………」



?「取り込んでしまえば…貴方は確実に消えてしまわれますわ…この世界でようやく出会えたんですもの…この様な事で貴方が消えてしまわれては…私は…」



黎斗?「……はぁ…気が変わった…こいつを取り込むのはやめだ…元の世界に戻そう…」



?「でしたら私がそのお方の治療を致しますわ♪」



黎斗?「好きにしろ…」



キューン…キューン…ピキャーン!



?「治療は完了致しましたわよ♪」



黎斗?「そうか…ならば元の世界に戻すぞ…」ヒョイ



黎斗「」



黎斗?「俺のやり方は変わらない…お前が憎む悪人は…必ず殺す…」ポイッ



キュイーン!



黎斗?「……行ったか…」



?「…えい!」ダキッ



黎斗?「うおっ…何故抱きついてくる…?」



?「私に抱きつかれるのはお嫌いですか?」



黎斗?「そうじゃない…何故抱きついてくるのか聞きたいだけだ…」



?「私がそうしたいからに決まってますわ♪」



黎斗?「そうか…お前はこれからどうするつもりだ…鏡の向こうの自分にでも会うのか…?」



?「それも良いのですが…今は私と行動を共にさせて頂けませんこと?」



黎斗?「俺と…何故だ…?」



?「私は鏡の向こうの私から生まれた存在…人間に対する怒りと悲しみから生まれた様なものですわ」



黎斗?「そういう事か…いいだろう…だが…無理だけはするな…お前には戦う力がほとんど無い…」



?「勿論承知していますわよ。それでは…これからよろしくお願い致しますね♪『ダーク』」



黎斗?「ダーク…?」



?「貴方のお名前ですわよ♪あちらのお方と同じお名前では紛らわしくなるでしょう?」



黎斗?「ダーク…か…悪くないな…」



?「お気に召して良かったですわ♪」



ダーク「ならば…次はお前の名前だ…」



?「私の…お名前ですの…?」



ダーク「理由はお前が言った事と同じだ…鏡の向こうのお前と同じ名前だと紛らわしくなる…」



?「では……『ネガ』とでも名乗りましょうか」



ダーク「ネガか…改めてよろしく頼む…」



ネガ「よろしくお願い致しますわ♪」




−食堂−




キュイーン!



ゴロゴロゴロ



黎斗「」



鏡の世界から転がり込んで戻ってきた黎斗は鏡の黎斗こと、ダークとの戦闘で意識を失っていた。食堂には誰の姿もなく、静寂に包まれていた。そこへ…




ガチャリ



シロル「…っ!?……く…黎斗!?」



食堂の扉が開き、シロルが入って来た。倒れている黎斗を見た途端、急いで駆けつけた。



シロル「黎斗!大丈夫!?」ユサユサ



黎斗「」



シロル「…気を失ってる…とにかく医務室に運ばないと!」




NowLoading…




−?−




黎斗「はっ!」ガバッ



神様「お目覚めかな?」



黎斗「うおっ!神様!?」



神様「君と会うのは3度目だね」



黎斗「まぁそうですけど…確か俺は、鏡の俺と戦ってて…けど俺は負けて…」



神様「やっぱり…」



黎斗「何か知っているんですか?」



神様「最近になって、別世界の存在が大量に迷い込んできてる。その一つが…鏡の世界なんだ」



黎斗「鏡の世界…あの時戦った俺も!」



神様「別世界の存在だね。と言っても、君が戦ったもう一人の君は『君自身』だけどね」



黎斗「それは……」



神様「彼は君の裏の存在。悪人をこの世から消したいと言う感情から生まれたみたいだけどね」



黎斗「くっ…」



神様「この事は君に任せる事しか出来ないんだけど、僕から言える事は一つ」



黎斗「………」



神様「彼は君…君は彼だ。どう解決するかは君次第だよ」



黎斗「………」



神様「それじゃあ頑張って」




………………………




−医務室−




黎斗「」パチッ



黎斗「ここは…医務室か。鏡の俺と戦った後からの記憶はないが…誰かが運んでくれたのか。今の時刻は0900…どのくらい経ったんだ?」



ガチャリ



シロル「っ!?」



黎斗「おぉ、シロルka「くろ…と…!」ん?」



シロル「くろとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」ガバッ



ダキッ! ギュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!



黎斗「うおっ!?ちょちょちょ!いきなりどうしたんだ!とりあえず離れろ!色々当たってる!」



シロル「だってぇ…3週間もずっと眠ったままだったからぁ…嬉しくてぇ…!」



黎斗「3週間!?そんなに経ってるのか!?」



シロル「うぅぅ…ぐすっ…うぐっ……」ギュウ



黎斗(まさか3週間も経っていたなんてな…鏡の俺との戦いで負けたせいか…あの能力は俺と同じ能力だったが、俺のよりも圧倒的に強い…)



ガチャリ



白露「失礼しま…す…って…!」



黎斗「あっ」



時雨「提…督…?」



村雨「提督…?」



夕立「て…提督…さん…?」



春雨「司令…官…?」



黎斗「嫌な予感」



白露達「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」ガバッ



黎斗「知 っ て た」





←to be continued


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