2019-09-12 08:26:14 更新

概要


退役した提督とその秘書艦だけが知る、2人だけの物語。











提督「お前、これから先どうするんだ」



友提督「あー...そうだな...」



友提督「とりあえず軍から離れて、実家にでも帰るさ」



提督「...退役するのか」



友提督「そういうことになる。ま、上から金はたんまり貰えるし、もう軍にいる意味はねぇよ」



友提督「そういうお前こそ、これからどうするんだ」



提督「俺は...」



提督「そうだな、退役して海の見える場所でのんびり過ごしたい」



提督「こうなったら一軒家でも建てて、ひとりでな」



友提督「うへぇ、ひとりなのに一軒家かよ」



提督「仕方ないだろ。終戦へ特に貢献した俺たちが貰う金は相当なんだ」



友提督「まぁな。億超の金なんて使い道すら思いつかねぇ」



友提督「俺もいっそのこと家でも建てちまうか」



提督「...お前なら、全額を投じかねないな」



友提督「な、それどういう意味だよ」



提督「さぁ。自分の頭で考えたらどうだ」



友提督「...馬鹿にされた気がするのは気のせいか」



提督「気のせいだ。...っと、そろそろ別れの時間だな」



提督「迎えの車が来ている」



友提督「お、もうそんな時間かよ」



提督「あぁ。意外と話し込んでたようだ」



提督「またな」



友提督「おう。いつでも連絡寄こせよな」



友提督「あと家建てたら教えてくれ。すぐ見に行ってやる」



提督「ついでに泊まる気だな、お前」



友提督「いいじゃねぇか。士官学校時代からの仲だろ」



提督「...」



提督「気が向いたら泊めてやる」



友提督「おっし。期待してるぞ」



提督「期待はするな。もう行くぞ」



友提督「わかった。...またいつか、会えるといいな」



提督「...」



提督「腐れ縁だ、また会える」









───────

────











提督「...」



提督「さて。運転手に言って都内に降りたのはいいが、これから何処に行こう」



提督「ひとりで飲み...それとも飯か」



提督「...」



提督「人が多いな」



提督「居酒屋が並んでいるからかもしれんが、夜中だってのに人がまだ居る」



提督「静かすぎるよりかは幾分マシだがな」



提督「...ん」



提督「いつの間にメールが」





『秘書艦と再会して飲んでる。今度飲みに行こうぜ』





提督「また今度な」



提督「...」



提督「結局、あいつは秘書艦と付き合わなかったんだな」



提督「ケッコンカッコカリまでしていたのに」



提督「...」



提督「...俺も言えたことではない、か」



提督「ケッコンカッコカリはしていたとはいえ、彼女たちからすれば練度の上限解放に過ぎない」



提督「俺の秘書艦も、きっとそんなことを思っていたはずだ」



提督「...元より好かれる努力をしなかったんだがな」



提督「...」



提督「...でも」



提督「それでも、好きだった」



提督「たとえ、君が振り向いてくれなくとも」



提督「...」



提督「...未練たらたらじゃないか、俺は」









───────

────











提督「...雨」



提督「今日の予報では降らないはず」



提督「...」



提督「予報は予報、当たる時もあれば外れる時もまた然り」



提督「...ホテル、取らないとな」



提督「寝床が外では風邪を引いてしまう」



提督「...」



提督「もう、意味無いか」



提督「雨で濡れてる時点で風邪確定みたいなものだし」



提督「...歩こう」



提督「宛なんてない。気の向くままに」



提督「適当に歩けばどこかしらに着く」



提督「我ながら、計画性の無い」



提督「...」



提督「何か、買うか」



提督「濡れていたら身体も冷えたし、温かい飲み物でも」



提督「自販機は...」



提督「っと、目先にあるじゃないか」



提督「...」



提督「無難にコーヒー、買っておこうか」



提督「紅茶でもいいんだが...」



提督「...」



提督「...コーヒーだな、やっぱり」









───────

────










提督「結構、歩いたな」



提督「気付けば雨も小雨になっている」



提督「寝床は...未だ確保出来ないが」



提督「この際、公園のベンチにでも横になろうか」



提督「このコートを下に敷けばなんとかなる」



提督「...」



提督「スマホ、電池切れ」



提督「この辺りがどこなのかもわからないし、無闇に歩いて迷うのもな」



提督「こうなれば野宿しかない」



提督「...久々だな」



提督「...」








『計画性が無いところ、直した方がいい』



『あまり司令官に口出しはしたくないけれどね』









提督「...」



提督「彼女の言葉、今でも覚えているなんて」



提督「...」



提督「これからは彼女のことを忘れ、普通に暮らそうと思っていた」



提督「いまだに未練のある自分が嫌だったから」



提督「...数年間を共にした相手だとしても、好意が芽生えるなど」



提督「彼女が俺に恋をする。有り得ないことだ」



提督「...」



提督「忘れよう」



提督「もう話すことは無いんだ」



提督「...」









『私はついていくよ、司令官』



『独りになんてさせないさ』










───────

────













提督「...ベンチ、やっぱり硬い」



提督「ベッドとしては最悪だ」



提督「...」



提督「ふかふかな布団と枕、恋しくなってきたぞ」



提督「毛布も追加で欲しいところだ」



提督「あぁ。それと温かいコーヒーもな」







「なら、私の家に来るかい」



「いまならコーヒー付き、毛布もあるよ」







提督「...」



提督「それは良い物件だ」



提督「ぜひ向かわせてもらおう」



提督「...」



提督「...ん」



提督「いま聞こえないはずの声が聞こえたんだが」



提督「私もとうとう幻聴が聞こえるように」







「残念だけど幻聴ではないよ」



「ほら、目の前に居るじゃないか」







提督「...」



提督「...幻、では無さそうだ」



提督「見覚えのある顔」



提督「銀色の髪」







提督「響」






───────

────









提督「...なぜ、ここに」



響「たまたま、さ」



響「窓から外を見ていたら、見覚えのあるコートを着た人が歩いていたんだ」



提督「...」



提督「人違いとは思わなかったのか」



響「思ったさ。けど、近くで見てはっきり分かったんだ」



提督「...」



提督「...身体が濡れるというのに」



提督「傘もささず、よく来たな」



響「急いで、飛び出してきたから」



提督「...そうか」



提督「で、何しに来た」



提督「俺と君は他人、もう仲良しごっこをする必要は無いだろう」



響「...」



響「ここで会わないと、司令官とは一生会えない気がしてね」



提督「...一生か」



提督「別に一生会えなくてもいいんじゃないか」



提督「提督と艦娘という関係ではない以上、無理に会話をすることは無い」



響「...司令官は私が嫌いなのかな」



提督「...」



提督「どちらでもない」



提督「上司と部下、たったそれだけの関係だったろうに」



響「そうかもしれない。...けれど」



響「この指輪も、それだけの関係と言えるのかな」



提督「...ケッコンカッコカリの指輪か」



響「そうだよ。司令官が、私にだけ送ってくれた指輪」



響「大切で、大事なモノ」



提督「...」



提督「艦娘ではなくなった以上、その指輪は意味を成さんぞ」



提督「所詮は練度上限の解放。今となっては不用品同然だ」



響「...だけど、私は大切にするよ」



響「司令官がプレゼントしてくれたモノ。理由はそれで十分さ」



提督「...」









───────

────










提督「家に入って本当に良かったのか」



響「構わないよ」



響「むしろ、話し相手が出来て嬉しいくらいだから」



提督「...俺じゃ話し相手は務まらんぞ」



提督「分かるだろう。俺のような人間は話を繋げるのが苦手なんだ」



響「大丈夫。司令官は自分の思っている以上に話し上手さ」



提督「...」



響「いまタオルを持ってくるから、玄関で待ってて」



響「あ、それとコートは預かっておこうかな」



提督「...濡れていてすまない」



響「仕方ないよ。急に雨が降ったんだ」



響「...コーヒー、淹れておくからね」



提督「ありがとう」



提督「...ふと、疑問に思ったんだが」



提督「ここには響しか住んでいないのか」



提督「てっきり暁たちと同居しているものかと」



響「...ここに住んでいるのは私だけ、さ」



響「みんなはほかの人たちと一緒に暮らしてる」



提督「なら、君は」



響「...」



響「...タオル、持ってくるから」








「独りになんてさせないよ」



「私は司令官についていくって決めたんだ」









───────

────











提督「風呂まで借りてしまった」



提督「本当ならば公園で別れるはずだったのに、俺としたことが」



提督「結局、彼女に甘えてしまうんだな」



提督「...」



提督「...響はいま、風呂にいる」



提督「この間に家から出ようか」



提督「長居しても邪魔になるし、代金は手持ちの金を置いていけばいい」



提督「...」



提督「本当に、出て行ってもいいんだろうか」



提督「彼女がいない隙にこそこそと」



提督「...」



提督「...分からない」



提督「...」







「何なんだ、このもどかしさは」








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2019-09-11 13:48:38

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このSSへのコメント

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1: SS好きの名無しさん 2019-09-09 22:33:27 ID: S:2M1Pgc

これは期待 こういう主人公すこ

2: SS好きの名無しさん 2019-09-10 10:22:23 ID: S:OR0fxk

甘えること。そして本人はきっと人の愛情が怖くて見えない降りをしているんだね。響くんも不器用な所がソックリだ。
ならば暁型皆で教えてあげればいい。
何でこの子が一人選んだのか?それは指令の為に姉妹ではなく司令官を選んだのだと。外から教えるしかない。究極兵器。女の子の涙と責任取ってよ!で止めを指すんだ。レッツゴー暁型!

3: 彩霞 2019-09-10 17:21:35 ID: S:1CUVnS

>>1
なかなか不定期更新となりそうですが応援宜しくお願いします。
>>2
女の子の涙は心を釘付けにする程の力があるのでしょう。これからの行く末を見守ってあげてください。

4: maotada 2019-09-11 02:03:16 ID: S:ZH8Ccf

続き待っています

5: 彩霞 2019-09-11 19:49:29 ID: S:Y2hWxm

>>4
ありがとうございます。近日中には更新予定ですのでお待ちいただけると幸いです。

6: SS好きの名無しさん 2019-09-12 10:17:15 ID: S:977vT-

もどかしさを感じる。人は其を未練
そして愛というのだ!素直に成るんだ!

7: 彩霞 2019-09-12 13:18:10 ID: S:-Ko3TV

>>6
愛が伝わる日は来るのでしょうか。素直になれない2人を今後とも宜しくお願いします。


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