2019-11-08 19:06:26 更新

概要

早霜さんがみんなをもてなしながら怖い話をします。
でも大体お酒が入っているのでぐだぐだです。
お話でないことも…あるかもしれません。


前書き

19/11/8 最終 ・弐以降を投稿し、ひとまず完結とします。1か月と少しの間でしたが、ご愛読ありがとうございました。
19/11/8 誤字脱字等を一部修正しました。

初投稿です。
登場人物について独自の設定があります。が、説明は極力入れないフロム脳スタイルでいきます。
基本は台本形式ですが、別な書き方をすることがあります。
「www」や「……」などイメージしやすい表現を無限に使用します。
方言はエセです。


第一夜

皆様、こんばんは… 夕雲型駆逐艦17番艦、早霜です。

はじめまして、という方もいらっしゃるでしょうか。

今、私のバーで、陽炎さんたちと楽しく…?お話しているところです。



簡単に経緯を説明いたしますと…


今週頭に、陽炎さんが『金曜の夜、土曜が非番のみんなで集まって怖い話をしよう』と呼びかけたそうで…

ですが、思いのほか人が集まらず…そういった話に詳しそうだから、という理由で私…と夕雲姉さんが誘われ…

特にお断りする理由も、ありませんでしたので…お受けした次第です。



念のため司令官に報告したところ、

寮でやるよりはバーでやったほうが他の子の迷惑にならないだろう、と提案されまして。

ただの飲み会になってしまわないかという不安もありましたが…

いろいろ私に都合がいいこともあり、皆さんの了解を取りまして、ここを提供しています。



さて、夜の10時から始まって今0時過ぎ…ひとつ前の番、黒潮さんのお話も佳境に入ってきました。







黒潮「―――なんやかやで、ラストオーダーも済んでな?」


陽炎「はい。」


黒潮「もちろんみんな出来上がってしもて。人数多いけどあんまり広い部屋やなかってんから、もォ全員汗たらして。」


谷風「おーおー」


天津風「女子力のかけらもなさそうね」


黒潮「やかましわ。でな?なんや幹事の浦風はんが能面みたいなシケたツラしてはんねん」


早霜「あの浦風さんの真顔…想像できませんね」


黒潮「さっきまで赤ら顔でヘラヘラしとってムレムレのムラムラした子がやで?こけしみたいな無表情で」


陽炎「エロいね」


浜風「顔変わりましたね」


黒潮「ええねんそういうのは。んでどしたんって聞いたら『ウチな、怖い話してもえぇ?』言うねん」


夕雲「あらまあ…」


黒潮「もう終わりっちゅータイミングでなんやえらい雰囲気出すなあ思て。」


陽炎「そうね。あのコそういう感じじゃないもんね?」


浜風「でも結構お茶目なところありますよ?」


谷風「んだねぇ。谷風さんもよくちょっかいかけられてるよ?」


黒潮「まあそこはええねん。ほんでええよー言うてみーって言うてさ、身構えるやんか。どんな話来んのやろって。」


黒潮「そしたらえらいタメた後にボソっとな?」


黒潮「……『もしかしたらウチ、会費なくしてしもたかも』て」


早霜「…フフ」クスッ


陽炎「うふふふふwwww怖っわww」


浜風「うわぁ…ww」


谷風「いやぁーそれはしんどいねぇ…ww」


天津風「何やってんの…くっくっくwww」


黒潮「もービックリして『えええぇぇ~~~!』いうたらよそで話してた子たちもなんやなんやってなって大騒ぎになるやん」


黒潮「もうちょい静かにしてもらえますかーて店員さん来てまうぐらいもうめちゃくちゃやってん」


浜風「ひどい迷惑ですね」アキレ


夕雲「全くです」ウフフ


天津風「それでどうしたの?www」フックック


黒潮「んやあ。会費さっき集めたのにどっかいくわけないやん、ちゃんと探そーってなって。」


黒潮「ほいで浦風はんが腰に結んどったジャケットから出てきてん」


陽炎「おー良かったじゃない」


天津風「なんでそんな危なっかしいところに…。バッグとかに入れとかなかったの?w」


黒潮「浦風はんはどっかいったらアカンやつを肌身離さず持っとくようにしとるんやって」


早霜「IDカード入れに部屋の鍵を入れてますからね、浦風さん」


浜風「外出証も首から下げて上着の胸ポケットに突っ込んでるの見ますね」


天津風「へぇ~…」


黒潮「みんなジャケットに気づかんくて3分ぐらいわちゃわちゃしとったわ」


谷風「何、封筒とかに入れてたんかい?」


黒潮「せやで?」


谷風「なんで脱いだ時に気が付かんかねぇあの子はww気付かんか重さとかカドとか気になってww」


天津風「あたしもそこ気になったけどさあww」


浜風「谷風、一応お姉さんなんですから…」


\アハハハ/




黒潮「ってなわけでウチの『怖い話』っちゅー怖い話は終わり。どうもおおきに!」


陽炎「いいね。面白かった」b


夕雲「怖い話でそれもどうかとは思いますが」フフ


谷風「怖い話かねこれが?w」


天津風「それいつの話?wwフフフおっかしいわ、ちょっとまだ引きずってるんだけど」


早霜「横須賀にいたときって仰ってましたね」


黒潮「せやねん。せやから…3年ぐらい前かなぁ」


陽炎「よく覚えてるわねーそういうの」カラン


谷風「ほら、関西の人だからさ」


黒潮「そーそーこういうのいつでも使えるようにメモってんねん後で」


浜風「フフ、使いきれるんですかそのストックは」


黒潮「えーねん細かいなあ自分wwまさに今消化したとこやないか!」アハハハ



早霜「おかわりはどうします?」


陽炎「ん?あーもう水でいいや。…いや、お茶あるかな?冷たいの」


早霜「市販のでよろしければ」


陽炎「いーよ」


早霜「爽健美茶かミネラル麦茶、あと綾鷹ですね」


陽炎「じゃ麦茶お願ーい」


早霜「はい」



天津風「浦風は覚えてるのその話?」


黒潮「あー本人には聞かんほうがええで。それ言うと怒鳴り散らかすから」


谷風「なんでさ?」


陽炎「どうせイジりたおして怒らせちゃったんでしょー?あ、ありがとね」ムギチャノム


黒潮「え、うそやんなんでわかるん…?」ヒキ


浜風「わざとらしい…w」


陽炎「こないだも親潮イジってそっぽ向かれてたじゃん」


夕雲「何したんですか…」ハァ


早霜「セクハラしてましたね」


谷風「セクハラぁ!?」


黒潮「あれはちゃうねん。えーとなんや… あれ、どれや」


谷風「かっかっかっwwwwww」バンバン


天津風「どんだけ前科あんのよ…ww」


陽炎「火曜の朝。東弐の報告書出しに行ったときお尻触ってたでしょ」


早霜「私と司令官の目の前で…」フフ


黒潮「あーあれか。ちゃうねん。朝ラジオで今日のラッキーカラーは黒ーいうてたから」


黒潮「親潮はんのスカートも黒やーって触っただけやん」


天津風「それで『おぉ!?中も黒や』みたいなことやったんでしょ」


谷風「はっはっはっwwwwwそんな馬鹿なww」


黒潮「え、うそやんなんでわかるん…?」ヒキ


浜風「フッフッフwww」


谷風「んで当たってんのかいwww最低だねコイツぁwww」


陽炎「それ三回目だかんね」


谷風「さんかww」ブッフ


天津風「何やってんの…ww」


黒潮「だってかわええやん親潮はん~~。イジってくださいて顔に書いてあるんやもん~~」


夕雲「セクハラしてくださいとも書いてなさそうですが」


早霜「黒潮さんが書いているのでは」


黒潮「ド真面目なクセしおってテンパるとどんどんカワイイが溢れてくんねんキュートの洪水や突ついたこっちまでドザエモン」


陽炎「やんなきゃいいじゃんw あと司令の前でやんのはやめなさいよw」


黒潮「でも回したいんやもん親潮はんのあざといガチャ~。ちょっと照れながらつんけんする顔とかSSRやで」グデー


谷風「めんどくせぇww」


浜風「タチが悪い…w」


天津風「可愛いのはわかるけどさw」


夕雲「美人よねー親潮ちゃん。」


陽炎「どっちかっていうと親潮よりアンタの頭がラッキー…いやハッピーカラーだわ」


谷風「アタマに黒ついてるってかww巧いねぇww」


黒潮「誰が頭キラキラのハゲやねん」


天津風「言ってない言ってないww」ククク


浜風「光ってるというか沸いてますよねw」


黒潮「自分けっこうイジってくるな!?」アハハハ




黒潮「まあウチはもうええねんな。ちょっと尺使いすぎてしもーたわ」


天津風「もう怖い話完全にどっかいってたわね」


陽炎「私も煽りすぎちゃったなー。お酒入れるといつもこうなっちゃって」


浜風「姉さん、酔ってるように見えないんですけど…」


谷風「アネゴは酒強ぇんだよなぁ…」


夕雲「そうなのですか?」


早霜「陽炎さんは強いというより酔うとクールになるタイプですからね」


陽炎「そー。実は結構キてんの今。うん。お酒おいしいとつい飲んじゃうね」


早霜「…皆さんは大丈夫ですか?」


浜風「平気です。そんな飲んでないので」


天津風「私も」


黒潮「ウチはまだ全然イケるで。もう飲まんけど」


夕雲「私はシラフですから~」


谷風「谷風さんはちょーっとまずいかもしんない。頭痛くなってきた」


天津風「大丈夫?」


陽炎「テンション高かったもんねー…お茶飲む?」


谷風「おねがぁい」


早霜「常温のほうがよさそうですね」


陽炎「爽健美茶と麦茶と…あー、生茶あるよ」


谷風「ん~~麦茶~」


早霜「はい」


浜風「生茶じゃなくて綾鷹ですね」


陽炎「それだ」


黒潮「よう覚えとんな」


浜風「メモしてますから」ドヤ


黒潮「やかましいわw」


陽炎「じゃあそろそろ終わりにしましょうか。早霜、シメの話お願いできるかな」


夕雲「あら、いよいよですね」


早霜「…ハードルを上げられている気がするのですが」


谷風「わりーねぇ早霜。うちのアネキたちが無茶振りしちまって」グデー


天津風「こら、突っ伏さないの。…黒潮、そっちにおしぼりあるでしょー?」


黒潮「これかー?」


天津風「違うばっちいのじゃなくて封切ってないやつ。…その後ろの。そうそれ」


黒潮「ほいパース」ポイ


天津風「サンキュ。谷風、これ使って」


早霜「麦茶もどうぞ」


谷風「あんがと。ちょっと楽になったかもー」


陽炎「無茶振り、ね。確かにそうかもね」


浜風「今日の話だって急に決まったのにいろいろ準備させてしまって」


天津風「ごめんなさい、迷惑かけちゃったわね」


早霜「いえ…ここはいつも、こんな感じですから」


黒潮「達観しとんなァ」


早霜「皆さんが楽しくお話していらっしゃるのを見るのが好きなので。この幸せに比べれば、準備の手間なんてあってないようなものです」


谷風「いい子だねぇ…」


陽炎「そういえば今日は飲んでないよね?いつもシラフなの?」


早霜「入れる時もありますよ。例えば――」ゴソ


カキンッ トクトクトク…


黒潮(ウイスキーや…)


浜風(『那智』って貼ってあるけど…)


コク コク  コク


夕雲(あらぁ…)


天津風(普通に飲んじゃってるし)


谷風(ゲップしたいけどゲロかもしれねぇ…)ウップ


早霜「ふぅ…少し、気合を入れたいとき、ですとか」カラン


陽炎「…なんか、色っぽいね」


天津風「陽炎さんまでセクハラ?」


黒潮「出たよ。ちょっと目ぇ離すとすーぐ口説くねんなこの女は」


陽炎「違う、オトナだねって言いたかったの。ウチにはそういう子いないから新鮮でさ」


浜風「…胸なら負けませんが」


谷風「胸だけなら牛でも構いねぇってなもんよ」ヒック


黒潮「私怨がにじみ出とらんか」





早霜「では、始めましょうか。そうですね…どの話にいたしましょうか…」チラ


陽炎「ん?あれ、もう1時か~」


夕雲「あっという間ねえ」


早霜「…ああ、そうですね。あの日も確か、このぐらいの時間だったような気がします」


黒潮「なんや…えらい雰囲気出してくるやん」


浜風「た、確かに我々と違って…」


天津風「そうね…同じ光でも太陽と月ぐらいの差ね」


黒潮「どしたん急にポエムして」


天津風「い、いいじゃない別に」


早霜「夜のイメージがあるのは否定できませんね」フフ


早霜「ああ、そうだ陽炎さん」


陽炎「ん、なに?」


早霜「今日の会費、落としたり無くしたりしていませんか?」




陽炎「………え?」ポーチサワル




黒潮「ぶっwww」


天津風「ふくくくwww」


浜風「…?」


谷風「…ンフフフww」


陽炎「あ、あぁ、なぁんだ冗談か! 大丈夫よほらここにあるから」フウトウ


早霜「それは何より。では皆さんの緊張も解けたところで――」


浜風「手慣れてる感じですね」ヒソヒソ


天津風「意外とノリいいのかもしれないわね」ヒソヒソ







【覗き見】



おととしのレイテ沖海戦――エンガノ沖の深海鶴棲姫を撃破して、三日四日経ったころ。

新しく所属する艦娘たちの手続きや、消費資源や費用の確認、出撃報告書の整理…

机の上の大規模作戦は、まだまだ終わりを迎えそうにありませんでした。

その日もあいにくの残業…。私と那智さんと司令官で、キリのいいところまで頑張ろうと

お互いに励ましあいながら書類を捌いていたところです。

…荒潮さん? 荒潮さんは隣の仮眠室で。ええ。


ふと時計を見やるともう1時。私が持っていた仕事が終わって、那智さんにチェックを頼みました。

それが済めば私はあがりで、お二人のために夜食でも作ろうかと思っていました。

当然、チェックには時間がかかりますから…その間にお花を摘みにいくことにしたんです。


…いえ、浜風さん。お花を摘むというのは――…

…ありがとうございます。天津風さん。



ここ本棟の不浄は一階と二階の2か所。

はい?……そうですか。ではそのように。


ええと…。執務室は二階にありますから、もちろん二階のトイレに行きました。

すると明かりがついているんです。こんな時間に…。


ええ、そうです。誰かが入ろうとすると照明が点くんです。

ですから最初は、夜勤の子が使っているのかなと思ったんです。


個室が4つありますね?左手に3つと、右手に1つと用具入れ。

左側の真ん中だけ扉が閉まっていました。鍵も『使用中』になっていまして。

なんとなく、右側の個室に入って用を足しました。


すると、あの個室から「ううっ… うううっ…」と苦しそうな声が聞こえてきたんです。

…いえ、そんなに大きくはありません。かすかに漏れ聞こえる、という程度です。

はじめは気のせいだろうと思っていましたが…結局私が個室から出て、手を洗ってもまだ続いていて。

もしかすると、今夜のようにどこかで宴会があって、お酒を飲みすぎたかで、

調子を悪くしてしまった人かなと思いましたが、すぐにそれは間違いだと気が付きました。





音がしなかったんです。声以外に何も。


衣擦れの音。息遣い。靴と床の擦れる音。便座が軋む音。…えづく声、あるいは、水音。

何も聞こえませんでした。不気味なくらい静かでした。

かえって私の立てる音がわずらわしく思えるほどに。





それに気が付いて、私は選択を強いられました。すぐに離れるべきか、助けるべきか。


言い換えるなら、得体のしれない何かがそこにいるのか、ただの艦娘なのか。


私は不安を覚えながらも、後者を選びました。

個室をノックしながら聞きました。「大丈夫ですか?どうかしましたか?」と。

しかし言葉は返ってきませんでした。

代わりにうめき声が少し大きくなりました。

…確かに、個室にいた時より距離は近づいています。

ですが、それ以上に大きくなっているように感じられました。


さらに心配になって、これは手段を選んではいられないと、

隣の個室に入って、便器を踏み台に、上から様子を窺おうとしました。

しかし、思ったほど上に隙間がなく…中の様子はほとんどわかりませんでした。


ならばと今度は下から覗こうとしました。

靴を履きなおして、個室から出たとたん、うめき声が一段と大きくなりました。

もはや、うめき声ではありませんでした。…唸り声です。ぐうう、がうううっ、という声でした。


…女性の声でしたよ。

あまり思い出したくありませんが…どちらかといえば、お年を召した方ではない…という印象を受けました。

…いえ、お気になさらず。



個室の下の隙間は、こぶし一つ分より少し広いぐらい。

床に頬っぺたをつければ、なんとか片目だけでなら覗けるかもしれないという程度です。

トイレの床に髪を垂らすのは、生理的に抵抗がありましたが、そんなことを気にしている状況ではありませんでした。

腰を下ろして体を倒し、目の前から聞こえるうめき声を否応にも聞かせられながら、個室を覗きました。












目が合いました。



こちらを両目で見据えてくる、なにかと。



いえ、目ですらなかったかもしれません。



その空間だけ切り取られてしまったような…ブラックホールみたく、吸い込まれてしまいそうな、



一切の色のない、真っ黒で、深い深い谷底を覗いているようでした。





何秒そうしていたかわかりませんが、我に返って飛びのいて、あとはもう、無我夢中でした。

がたがたと震える足で、転びながら、廊下を必死で走りました。

トイレの床につけた手や頬を洗うことも忘れて。


執務室に駆け込んで、入口に近いところに立っていた那智さんに抱き着きました。

体温を感じたとき、なんだか自分が現実に戻ってきたように思えて、そのままずるずるとへたり込んだのを覚えています。

司令官も那智さんも、ひどく動揺していたようですが、私をなだめて、落ち着かせようとしてくれました。

ですが、お二人の顔を見ることができませんでした。




もし、もしそこにある目が。瞳が。


あのおぞましい無の色であったなら。


私はもう、私でなくなってしまうような気がして。




それでも一時間ぐらい経つと、何とか気持ちが落ち着いてきて、

トイレで何があったかをお二人に話すことができました。

どちらかといえば、嘘だと思われたかもしれません。

ですが、お二人はとりあえず今夜だけでも私が安心して過ごせるように計らってくれました。


結局その日は、司令官のお部屋に泊まらせていただいて。

…そうです。二階は執務室とつながっていますから。

…ええ、那智さんも一緒です。

情けない話ですが、どこかであの目が見ているんじゃないかと気になって…

私はずっとうつむいたまま、何をするにも怖くて…

目の前に置かれたコップを手に取ることすら…一人ではできませんでした。


…本当ですよ。水が飲めませんでしたから。

水に映る自分と目が合ってしまうかもと思うと…とても。


…ええ。何とか入れました。那智さんに付き添っていただいて。

…そうです。お恥ずかしながら。全て那智さんに。

膝を抱えるように座っているだけでした。

髪をすくのも乾かすのも、全て。

文句も言わず、ただただ優しくしていただきました。


…眠れませんよ。目を閉じるのすら、恐ろしくて恐ろしくて…。

それでも、那智さんが作ってくれたホットミルクを飲みながら、

明け方までお話していたら…いつの間にかベッドの上で。もう、お昼前でした。

那智さんの声が聞こえたので振り向いたら目が合ってしまって。

昨夜のことが一気に思い出されてしまって、もう、心臓が胸を破って出てくるんじゃないかと思うぐらいドキッとしましたが…

いつもの優しい笑顔と、暖かい瞳でした。


「おはよう、昨日は辛かったな。大丈夫。早霜はちゃんとここにいる。どこもおかしくなんかないぞ。」

そういって頭をなでてくれました。

暖かい手のぬくもりとやわらかな感触に、なぜだか涙が溢れてきて、那智さんにすがってわんわん泣きました。


その日は熱を出してしまっていたので、一日中看病していただいたのですが、

翌日からはなんとかいつも通り過ごすこともできるようになって…。

今でも時々夢に見てしまいますが、こうしてお話し出来る程度にはなりました。


…トイレですか?それは、大丈夫です。ふふっ、一人でもですよ。

…いいえ、使いませんよ。司令官の部屋のトイレをお借りしています。

…そんなことはありません。あの夜のうちに、司令官が荒潮さんと龍驤さんを起こして、例の個室を確認したそうです。


…いえ、残念ながら。何もなかったそうですが、簡素なお祓いをしたと聞いています。

龍驤さんは式神を使われますから、そういった類の知識もあるのではないかと、司令官が。

あと、個人的に頼りにしてるから、ということでしたが。ふふっ。

後日、私自身も龍驤さんにお祓いしていただきました。龍驤さんに「これでもう大丈夫や」と言ってもらえて。


…もちろん実体験ですよ。…ただ、かなり疲れていましたから、

もしかしたら、ストレスからくる幻覚だったかもしれませんね。



――まあ、あの出来事の全てが幻や、あるいは夢だったとしても…


あの二階のトイレだけは、もう二度と、使う気にはなれませんね。



第一夜・After


早霜「…いかがでしたでしょう?」


陽炎「……すごいの聞いちゃったね」


黒潮「いやぁ~… 困ったわぁ。もうあそこのトイレ行かれへんよ」


天津風「…それ、本当にほんとの話なの?」


早霜「そこまで聞かれると不安になりますが…本当です。那智さんや司令官にも聞いてみたらいかがですか…?」フフフフ


天津風「ご、ごめん。なんか、その…」


浜風「ええ。そんな怖い目にあっていたのに…力になれなくて…」


早霜「今はもう平気ですが、当時は話題が話題ですし、秘密にしようと、周知するのは控えていたんです」


早霜「荒潮さんも龍驤さんもとても口が堅いですから。今でもご存じの方はごくごく少数だと思います」


陽炎「そうでしょうね… トイレに幽霊が出た、なんて広まったら大パニックだものね…」


谷風「あのさ、早霜」


早霜「なんでしょう?」


谷風「いや、ほじくり返して悪ぃんだけどさ。その、個室にいたやつも艦娘でさ。」


谷風「そいつも早霜と同じように床に顔つけて見てた、ってことはないかい?」


浜風「そうか、その可能性もなくは…」


夕雲「ああ…それは……」フルフル


天津風「いや、無いわね」


黒潮「せやろな」


浜風「え?」


谷風「…どしてさ?」


陽炎「早霜は片目で覗いてた。でもそいつは両目で見てた」


陽炎「早霜ぐらい背が小さい子が頑張って片目なのに、両目で見られるなんてどう考えても目の位置おかしいからね」


浜風「あっ…!」


谷風「そっか…そうだぃな。ダメだねどうも頭が回んねーや」


早霜「今となっては、個室にいたバケモノがどんな形をしていたか、全く思い出せません…」


天津風「い、いいっていいって!もう十分聞いたからさ」


夕雲「早霜さん、無理をしないで…」


陽炎「そーそー。そこまではね。だいじょぶだから」


早霜「すみません…」シズ


浜風「いえ、早霜さんが謝ることでは…。」


黒潮「いやぁ~…それにしたって早霜はんな?」


早霜「…何でしょうか」


黒潮「ウチとのな、話の落差考えてくれや。角度つきすぎて首痛なるわ。整体に通う歳ちゃうねんから」


早霜「………?」ポカン


黒潮「千賀のフォークか」テブリ


浜風「…w」クス


陽炎「ンフっ…ww」


黒潮「なにが『ハードル上げられてる気がする』やねん平気で跨いていくやん和田〇キ子もビックリしてはるわ」


天津風「ぶっ…ww」


谷風「くくく…w」


黒潮「ガチの空気持って来んといてや?なー?『あなたらしい格好で来てください』って私服で行ったらみんなスーツやったみたいになるやん」


浜風「フッフッフww」


陽炎「それは面白くない」


黒潮「じゃかあしいわw」


浜風(えっ?)


黒潮「そんで黙んまりかい自分。なぁ。なんとか言うたらどないなん?」


早霜「……」


陽炎「……」


夕雲「……早霜さん?」


浜風「……」


谷風「……」


天津風「……」



早霜「……黒潮さん、この話はメモしておいてください」シレ


浜風「んぐっww」


谷風「ぶふっっwwww」ブシャ


黒潮「やっかましいわw しらこい顔でこいつホンマに…w」


天津風「くっくっくwww あーもう谷風きたない!ほら拭いて!もう…ww」


陽炎「はい、じゃあオチもついたし、これで終わりね」


谷風「ういー」


浜風「お疲れ様でした…」


天津風「立てる?谷風」


谷風「当たり前だいーっとおうーっとっとーぃ」グラグラステーン


陽炎「あはははwww」


浜風「ちょっと谷風!?」


夕雲「だ、大丈夫ですか…w」


谷風「心配するねぃ、それでも地球は回ってらい」


天津風「回ってるのはアンタの頭よ…ほらつかまって」ドタバタ


陽炎「パンツもケツも丸出しよみっともなーい」


谷風「うぃ~そりゃあ一大事だぁ」モゾモゾ


黒潮「何やっとんのや自分ら…」


早霜「黒潮さん?」


黒潮「なんや?便所なら一人で行ってき」


早霜「気を遣っていただいて、ありがとうございます」ペコ


黒潮「…ええよええよ。ウチの仕事みたいなもんやし」


黒潮「ウチこそ寛仁な、茶化してもーて…キミからしたらシャレにならん話やのに」


早霜「いえ…。そろそろ自分の中でも一区切りつけたいと思いまして」


早霜「他の方に話すのは初めてだったのですが…すみません、こんな重たい話で」


黒潮「まあ…そういうんは他人に話すとラクになる言うさけな。ええと思うで」


早霜「すみません…」


黒潮「ちゃうちゃう、そゆときはおおきに言うねん。ウチらは迷惑してへんよ」


黒潮「今日はぎょーさん世話してもらったさけな」ケラケラ


早霜「…ありがとうございます」ニコ


黒潮「ん、ええ顔や。人間笑顔が一番や。あ、せや一応聞いておきたいんやけど」ヒソ


早霜「何です?」


黒潮「ホラーでなくてもええから他に引き出しある?」ヒソ


早霜「いろいろ取り揃えていると自負してますが」ヒソ


黒潮「ほーそかそか…。いやな?キミめっちゃ話せるやんか。今度は普通にご一緒したいなー思て」


黒潮「陽炎にもキミの電話番号登録してこい言われてんねん」アイツ


早霜「それは構いませんけれど…不知火さんに教えてもらえばよかったのでは」ハイスマホ


黒潮「すまんな。あの子教えてくれへんねや『早霜さんを陽炎たちのヨタ騒ぎに巻き込むわけにはいきませんので』言うて」コエマネ


早霜「あら…不知火さんがっかりするかもしれませんね」フフ


黒潮「合意の上なら諦めもつくやろ…おっけ。あとでメッセ送るわ」


早霜「ええ。何かありましたらご連絡いただければ」


黒潮「キミもな。ウチらでよければなんでも付き合ったるさかい」ニカ


陽炎「なに話してんのさ二人でー」


黒潮「自分の代わりに早霜口説いてたんやないか…」スマホミセル


早霜「ほだされちゃいました」


陽炎「おほーぉ。さすがあたしの妹。手が早いね」


黒潮「自分に言われたないわ」


天津風「じゃあ早霜ー。今日はありがとねー」オンブ


谷風「楽しかったぜい」オブサリ


浜風「すみません、お先に失礼します」ペコ


早霜「お疲れ様でした」


陽炎「お疲れー。谷風よろしくねー」


黒潮「まっすぐ帰れよー」


天津風「はいはい」ヨッコイセ


浜風「では早霜さん、おやすみなさい」ペコ


早霜「ええ、おやすみなさい」ニコ


陽炎「じゃ、早霜。お会計…足りるかなこれで」


黒潮「なかなか飲んでたからなぁ…」


早霜「もう夜も遅いですし…あとで黒潮さんにメールしますよ。お代はそのあとでまた改めて」


黒潮「それはええんやけど…これなおさんでええの?」ゴチャア


陽炎「手伝おうか?」


早霜「いえ、たった6人分ですから。このくらいなら一人で大丈夫ですよ」


黒潮「ホントにええの?」


陽炎「まあ、早霜が言うならいいじゃん。手伝うとかえって迷惑かもしれないし」


黒潮「うーん…。それもそやな。じゃ早霜、お疲れさんな」


陽炎「楽しかったわ。今度は一人で来たいかも、なんてね」


黒潮「まーた口説いとるわ」


陽炎「うるさい。じゃ、早霜またね。おやすみなさい」フリフリ


早霜「はい、おやすみなさい」


黒潮「おやすみなー」


スタスタ… バタン





早霜「……」カチャカチャ



夕雲「早霜さん♪」ヒョコ


早霜「…一人でいいと言いましたのに」カチャカチャ


夕雲「お姉さんですから。」


早霜「…それで、何でしょう?」ジャー


夕雲「あら、鋭いですね。じゃあ……どこまで本当ですか?さっきの話」


早霜「天津風さんに言ったとおりです。全部本当ですよ」


夕雲「ほんとですかー?」ウフフ


早霜「本当ですよ」


夕雲「ふーん…。ねえ早霜さん、ウソを信じさせるコツって知ってるかしら?」


早霜「…いいえ」シャコシャコ


夕雲「全部が全部デタラメ、という風にしないで…本当の話の中にウソを少し混ぜるんです」


早霜「……」シャコシャコ


夕雲「さっきの早霜さんの話だと…例えば那智さんにお風呂に入れてもらった、とかって言ってましたけど…」


早霜「……」カシャカシャ


夕雲「実は那智さんじゃなくて……提督だったりして。」


早霜「……」カシャカシャ


夕雲「……」ニコニコ


早霜「……さあ、どうでしょうね」キュッキュッ


夕雲「あらまあ、早霜さんのイ・ジ・ワ・ル♪ …うふふ、ふふふふふ」ニコニコ


早霜「フフフフ」ニコニコ



                                          第一夜 了








第二夜


皆様、こんばんは。早霜です。

前回のお話は…いかがでしたでしょうか。


陽炎さんたちは方々で私とバーを宣伝したみたいです。

2日後に青葉さんの府内新聞に記事が出ていた時は、正直目を疑いました。

一週間も過ぎると、陽炎さんや黒潮さんはともかくとして、

普段あまりご一緒する機会のない瑞鶴さんや最上さんなど空母や航巡の皆さん…

ビスマルクさんや、ガングートさんといった海外艦の方からもお誘いの電話がかかってきて、驚きました。

陽炎さんたちの影響力、侮れません。



さて、今夜のご予約は、睦月型の皆さん。…少し、予定があって、出られない方もいるようですが。

あまり、お酒を嗜まれる方はいらっしゃいませんが…バーの雰囲気を味わってみたいそうです。

明日遠征で朝が早い方もいらっしゃるということで、夕食会という形にしました。

隣で居酒屋を開いている鳳翔さんのご厚意で、注文した料理を、バーに持ってきていただけることになりまして。

私のほうでカクテルや、ノンアルコールのお飲み物をお出しするといった形です。

…少し趣は異なりますが、皆さんにより楽しんでいただけるほうが、私としては嬉しいので。



夕食会は6時にスタートして、8時を回ったところです。

一通り料理は食べ終わって、あとはお時間までしばしご歓談を、といった感じなのですが…

場所が場所ですし、話題は自然と私に寄っていき…結局怪談の流れになってしまいました。






皐月「――でね、神通さんって普段どこにいるんだろーって気になって…気になるよね?」


睦月「そーだねー。睦月、神通さん訓練してるとこしか見たことないよ」


如月「そぉねぇ…」


三日月「そういえば、趣味があるという話も聞きませんねー…」


弥生「お休みをとったって話も…聞いたこと、ないかも…」


長月「宴会にもほとんど出ないみたいだしな」


皐月「うんうん。だから、こっそり後をつけてみることにしたんだ。」


水無月「おー、さっちん、探偵か刑事さんみたいだね」


長月「げ、元気だな。神通さんの訓練のあとだろう?」


皐月「うん」ケロ


弥生「すごい……」


如月「昔はスゴい顔して食堂にフラフラやってきて…ごはんも満足に食べられなかったのにねぇ」


三日月「食堂とトイレを行ったり来たりしてましたね…」


望月「三日月、一応まだ食事中だぜ~」スマホイジル


三日月「はっ、ご、ごめん、もっち」


水無月「へぇ~…さっちんとランニングするとすーぐ追いてかれちゃうんだけど…昔はそうじゃなかったんだねー」


長月「ああ。自分から巡洋艦と同じ訓練メニューにしてくれって司令官に頼んでな」


如月「それで神通さんの班になって。今じゃ私たちの中で練度一番だものね」


睦月「自慢の妹がサイヤ人みたいになっていくにゃし…」トオイメ


皐月「な、なんだよみんなしてボクをバケモノみたいに…」アセ


皐月「…って、そうじゃなくて!神通さんの話だよっ」


弥生「ノリツッコミ…?」


望月「ちょっと違う気すんなぁ」


皐月「とにかく!神通さんの後をつけてみたの!」フンス


水無月「あははは、さっちんかわいー」


三日月「それで、どうなったんですか?」


皐月「えーっと、ここの向かいにさ。事務室があるでしょ?」


長月「ああ…5部署並んでるな」


早霜「経理、資産管理、庶務、対外、通信諜報課で5部屋ですね」


弥生「全部、覚えてるの…?」


如月「秘書艦隊の人たちってすごいのねぇ」


皐月「事務所を左側にしてずっと歩いてくとどんつきで左に物品庫があるよね?」


睦月「あるね」


望月「あそこの照明暗いんだよね~…」


皐月「神通さんがそこを右に曲がってさ。トイレとかあるほう…こっちに向かうほうね」テブリ


長月「ん?じゃあここ出てすぐそこじゃないか」


三日月「まっすぐ進むと居酒屋とバーがあるところで、左に行くと西入り口でしたよね」


皐月「うん。で曲がり角からそっと覗いてみたら、神通さん居なくて」


弥生「……いない?」


水無月「外に出たんじゃなくて?」


皐月「ボクもあわてて入口のほうを見たんだけどさ、すっごい静かで。誰もいなかったんだ」


皐月「ちゃんと数えてなかったけど、神通さんが角を曲がってからボクが行くまで5秒ぐらいだったよ。」


睦月「入口は2重の手動ドアにゃし。どんなに走っても間に合わないはずだよね…」


望月「…反対側の廊下にはいなかったん?」


皐月「すぐ見に行ったけど…」フルフル


弥生「だれもいなかったの…?」


皐月「ううん、大井さんが歩いてたから、神通さんが通らなかったか聞いたんだけど、見てないって」


三日月「えぇ…?」


望月「…大井さんはしょーもない嘘つく人じゃねーかんなー」ノビ


如月「え、それじゃあ神通さん…」


長月「き、消えちゃった…のか?」


皐月「う、うん…。」


一同「……」



早霜「…神通さんがいわゆる『一軍』の皆さんの間で何と呼ばれているか、ご存じでしょうか」


望月「鬼軍曹。」クイギミ


水無月「それはもっちーだけで… いやそうでもないか」


睦月「睦月はむかーし一軍にいたけど… 聞いたことないにゃし…」


長月「皐月も少し前まで一軍にいただろ?知らないのか?」


皐月「んー、一軍って言っても…輸送連合艦隊のときぐらいしか出番なかったし…」


皐月「結局一軍の人とあんまり仲良くなれなかったんだよねー…」


弥生「私も… わからない…」


三日月「それで、早霜さん。何て呼ばれてるんですか?」


早霜「…皐月さんと似たような経験をされた方は、結構いらっしゃいます」


早霜「神通さんがいつの間にかいなくなっていたり… 逆に気配もなく現れたり…」


早霜「陸だけではありません。海上でも、神通さんの位置取りは非常に巧妙です」


長月「確かに…。何度か対抗演習で相手したことあるが、いつの間にか背後を取られるんだ」


水無月「そうだね。急に大破させられて、振り返るといるんだよね~…」


望月「わかるよそれ。後ろになんか居る!って思った瞬間にもう喰らってんだよね」


如月「え、えーと…神通さんってそんなに…なのかしら?」


睦月(この話のほうがよっぽどホラーじゃないかにゃぁ…)


早霜「…長月さんたちの言う通り、音もなく忍び寄って、気づいたときにはもう遅く。」


早霜「淡々と敵艦を静かに、かつ神出鬼没、縦横無尽に仕留めていく神通さんに…」


早霜「ついたあだ名が『亡霊』です」


弥生「亡霊…?」


水無月「ゴースト、かー」


早霜「あだ名というよりは二つ名でしょうか。蔑称に近いニュアンスがありますので、面と向かっては言わないそうですけれど」


如月「それは、そうよねぇ…遠回しにバケモノ扱いしてるんだものね」


皐月「さっきのボクみたいにね」ジトメ


水無月「あはは、ごめんごめん」ナデナデ


皐月「ていっ」ハライノケル


三日月「一軍の人たちがそこまで恐れるなんて…」


望月「『あの人ホントは妖怪の類なんじゃねーの?』って感じかねぇ」


長月「早霜、ちょっと待ってくれ」


早霜「…何か、ありましたか?」


睦月「どしたの?長月…」


長月「肝心なところがぼやけてる。亡霊と呼ばれてるのはわかったが…」


長月「だからって神通さんが本当に体を消したり瞬間移動できるわけじゃないだろう。結局神通さんはどこに行ったんだ?」


一同「……」ウーン



早霜「皐月さん」


皐月「うえっ!? え、えーと、何かな?」


水無月「さっちんビビりすぎ…w」


早霜「そのお話には…続きがありませんか?」


三日月「えっ、続き…?」


弥生「…終わりじゃ、ない?」


望月「オチはついてんじゃねーの?」


如月「どうなの?皐月…?」


皐月「いや、そうなんだけど… 神通さんに言っちゃダメって言われてて…」ポリポリ


長月「…おい、それってまさか…」


睦月「ホントに幽霊…だったりするのかにゃ」


水無月「いくらなんだってそんなことはないと思うけど…」


早霜「それは神通さんなりの冗談ですよ。どうしても脅しに聞こえてしまうようですが」


皐月「じょ、冗談…?」


望月「…詳しいね」ジロ


早霜「似たようなお話を何度も聞いたことがあると申しましたでしょう」


如月「顔が広いのね、早霜さんって」


長月「ボトルキープしてるのも、重巡に戦艦、空母に水母…いろんな艦種がいるみたいだからな」


弥生「潜水艦のひとたちのも…ある…」


水無月(19さんのボトルが5本ぐらいあるのは…どうなんだろう)


三日月「本当だ… でも逆に私たち駆逐艦はいないみたい。」


睦月「この間陽炎型のみんなが来て、それから睦月たち駆逐艦が来るようになったんだから、これからじゃないかにゃ」


如月「それで皐月ちゃん…神通さんと何があったの?」


皐月「えぇ~~… 言わなきゃダメ?」ウワメヅカイ


如月「うっ…」タジ


水無月「ここまで来たら言っちゃいなよ。ラクになるよ~」


睦月「大丈夫!何かあっても睦月たちが守ってあげるにゃし!」


皐月「でも…」


望月「…早霜さ、冗談っての、本当なんだよね?」


早霜「ええ。どうせなら…川内さんにでも聞いてみましょうか。今夜は執務室にいらっしゃるはずですし」スマホトリダシ


望月「んや、いい。その様子だとウソじゃないみてーだし」


三日月「そうですね。こんなに証人がいるのに、皐月姉さんを陥れようとするのは不自然です」


長月「信用してもいいということか…」


如月「こーら3人とも。早霜さんに失礼でしょっ」


皐月「うーん、じゃあ…」ン゙ンッ


皐月「そのあと、ボクはフリーだったんだ。訓練が終わった後だから、当たり前なんだけど…」


睦月「うん」


皐月「晩ごはんの時間まで部屋で天龍さんに借りたマンガでも読もうと思って、寮に行ったんだ。」


水無月「うんうん」


皐月「途中で何人かとすれ違って。一応、神通さんを見なかったか聞いたんだけど、全員知らないよって。」


皐月「見間違いじゃなかったのに、おかしいなあって思いながら寮について。部屋のドア開けてね。」


皐月「靴脱いでドア閉めて、鍵かけて、ベッドに座ろうかなって振り返ったらさ。」フルエコエ


長月「おい、まさか…」


皐月「神通さんが部屋の真ん中に立ってて…」カタカタ


水無月「うわああああああ!!」ガタッ

如月「ひゃああああああああ!!」ダキアイ

三日月「きゃああああああああ!!」ダキアイ


望月「…耳が痛いよ」キーン


弥生「びっくりした…もう少し、声、小さくして欲しい…」ドキドキ


三日月「ああっご、ごめんねっ」


睦月「や、やっぱり亡霊なんじゃ…」アワワ


長月「常人とは思えんな…」ドンビキ


早霜「……!すみません、着信が来たのでちょっと失礼を」カウンターニカクレル


皐月「ボクも、腰が抜けちゃって。なんか、いろいろさ。言おうとしたんだけど、もう、声でなくってさ」


皐月「そしたら神通さんが『皐月ちゃん。尾行というのは、いかに気づかれないかが重要です。まだ訓練が必要ですね』って笑って…」


長月「じゃあ見失ってから、ずっと皐月の後ろにいたのか!?」


望月「それでドアを開けた時に一緒に入ったのか」


皐月「多分、そうだと思う…ドアを開けた時には、いなかったから…」


如月「り、理屈じゃそうかもしれないけど!」カタカタ


弥生「途中で…他の人とすれ違ってるのに…」


三日月「おっ、おかし、ですって…!」ナミダメ



早霜「早霜です。――ええ、すみません。怪談に興じていたもので。」


早霜「――はい。ご迷惑をおかけしました。」


早霜「――大丈夫です。きっかり9時には。食器は持って行きますので。」


早霜「――はい。なるべくそうならないように、努力はします。」


早霜「ええ。重ね重ね、申し訳ありません。そちらの方々にもよろしくお伝えください。」


早霜「ああ、その前に一つお聞きしたいことが。」


早霜「今日のお手伝いはどなたですか?……妙高さんと綾波さん。わかりました。」


早霜「いえ、あとで私もお邪魔しようかと。はい。では…」プツ


早霜「……」ゴソゴソ



皐月「なんとかやっと『どうして』って言えてさ。」


睦月「うん…」


皐月「そしたら『それは皐月ちゃんが考えてみてください。あと、このことは皆さんには言わないようにしてくださいね』って」


皐月「それで普通に外出て行って、それで終わったんだけど…」


水無月「妖怪だよ…絶対人間じゃないよ…」


望月「まああたしら人間じゃないしねぇ」


水無月「そういう意味じゃなくってっ」


長月「結局姿が見えなくなったカラクリはわからずじまいか…」


如月「考えたくもないわ…」アタマカカエ


弥生「ニンジャって…すごいね…」


睦月「ニンジャはマンガの中だけにしてほしいにゃし…」


早霜「皆さん?」


皐月「ん、なーに?」


睦月「どうかした?」


三日月「な、なんでしょう」


早霜「鳳翔さんから注意が入りまして。もう少し遠慮していただければということでした。」


長月「う…面目ない」


水無月「ほらぁ!さっちんのせいだよ!」


皐月「ええっ!?ボクのせいなの!?」


如月「ごめんなさいね早霜さん…でも、神通さんが非常識すぎたのよ…」


三日月「そうですね…そうです…そのはず…」ウツロ


望月「んや、あたしらは悪くないでしょ」


弥生「…そうかもしれないけど」


早霜「いえ、望月さんの言う通りです。私が皐月さんを焚きつけてしまったのが原因ですから」


早霜「申し訳ありません」ペコリ


睦月「んにゃあ、睦月も煽っちゃったし…」


如月「私も、ちょっと反省しなきゃ…」


水無月「うっ…」


皐月「水無月も、話してーって、言ってたよね?」ジロ


水無月「ご、ごめん…」


長月「まあまあ、そのぐらいにして…」


早霜「少々、暗い雰囲気になってしまいましたので、お詫びと言ってはなんですが…」ゴソ


睦月「おっ、何ですか何ですか~?」


早霜「手品をお見せしましょう」トランプ


望月「…器用だね」


三日月「手品、できるんですか!?」キラ


皐月「いいね!見せて見せて!」


弥生「あんまり…見たことない…」


早霜「蒸し返して申し訳ありませんが、先ほどの皐月さんのお話と、カードマジックが似ていると思いまして」


如月「えっ」ビク


望月「例えがよくないなあw」


早霜「すみません。…つまり、あると思っているものがなかったり、逆にないと思ったものが出てきたり…」


早霜「そうした現象を楽しむのがカードマジックです」


長月「なるほど。確かに似ているかも」


睦月「そうかにゃあ」クス


早霜「マットを使わさせてくださいね。まだ初心者なもので」ヒロゲル


水無月「おー、本格的」


早霜「では…始めますね。拍手をお願いできますでしょうか。」


\パチパチパチ…/


早霜「ありがとうございます。ではお楽しみください。」





――ええ、堪能していただきましょう。


――本来の「楽しむ」という意味ではありませんが。






足柄「ん…?早霜ちゃんからメッセ来てる。」


電「早霜ちゃん?隣で睦月ちゃんたちと怖い話してるんですよね?」


足柄「そのハズよね。…えーっと?『あと10分ぐらい後にまたうるさくなりますので、皆さんに断っておいて頂けませんか』だって。」


電「なんで足柄さんに…?メッセじゃなくても電話かければいいと思うのですが…」


足柄「さっき鳳翔さんクレーム入れてたから頼みにくいんでしょ。となると…」フム


足柄「――多分妙高姉さんね。姉さんがいる日は大体あたし飲んでるし。今は忙しくないからなおさら居ると思ったんでしょうね」


電「妙高さんもスマホは持っているのです」


足柄「料理で手が離せないかもしれないからじゃない?そうじゃなくたって厨房にいたら普通スマホは見ないわよね」


電「納得なのです」オー


足柄「了解、っと…結構悪知恵が働くのよあの子。覚えておきなさい」フフ


足柄「妙高ねえさーん。ちょっといいかしらー?」





【地獄耳】





こちらは何の変哲もない普通のトランプです。

このトランプ、バイスクルというブランドのものでして、カードマジックではとても広く使われているものです。

三日月さん、ご興味があるようでしたので…結構安く取り寄せられますから、いかがでしょうか。

…ええ、紙製です。手触りであったり、滑りやすさであったり…。マジックがとてもしやすいように出来ています。


さて、54枚のうち、ジョーカーは使いませんので…抜いておきましょう。箱にしまって、と。

ああ、これは本当に使いませんので。じっくり見なくても大丈夫ですよ。

残ったカードは一度シャッフルしましょうか。


…ふふっ、ありがとうございます。

よくショットガンシャッフルと呼ばれることがありますが、正しくはリフルシャッフルといいます。

片手でもできるそうですが、すみません、まだ練習中で。


では…皐月さん。

今からトランプをこのように…落としていきますので、

お好きなところで「ストップ」と言ってください。はい、ここですね。


ええと…あー…ごめんなさい。

緊張して手順を忘れてしまいました。

すみません、ちょっと確認させてください。


…はい。失礼しました。では続けますね。

さて、皐月さんが止めたカードは、と…。


ダイヤの5ですか。これは…厄介なカードを引いてしまいました。

実は私が使っているトランプなんですが、何枚か地獄耳のカードがあるんです。

このカードは一番耳がよくて…私が指を鳴らすと、勝手に一番上に来てしまうんですよ。

これをデックの中ほどに入れて、指を鳴らすと…ほら。このように。


もう一度やってみましょうか。このカードを真ん中に入れて…

はい、横から…確かに真ん中あたりに入ってますよね?

ですがカードをそろえて指を鳴らすと… 上に来てしまうんです。困った子ですね。


…指を鳴らさないとどうなるか、ですか?

では同じようにカードを入れまして…

どうぞ望月さん。めくってみてください。…何のカードですか?


スペードの8。違うカードでしたね。では一番上に戻して… はい。

…ありがとうございます。このように、指を鳴らすと来てしまうんですよ。



では今度はカードを真ん中に戻した後…よく切って混ぜてみましょうか。

この切り方、ヒンズーシャッフルと言いまして、日本では割とポピュラーな切り方ですね。

一度だけだと不十分かもしれませんから、もう一度やりましょうか。

はい、切り終わりました。では指… 何でしょう。


…なるほど。では見てみましょうか。…ハートのジャックです。

元に戻しまして指を鳴らすと… じゃあ今度は水無月さん、めくっていただけますか。

…ふふふ。どうしてと言われましても…練習したんですよ。頑張って。



ああ、カードに細工がしてある、と疑う方も何人かいらっしゃいましたね。

ではこのダイヤの5のカード…どうぞ皆さんで調べてみてください。

…他のカードも?ではデックもどうぞ。


特にキズがあったり、バックの柄が違ったりということはありませんよね。

カードの大きさも変わりません。当然ですね、変えていませんから。

そろそろデックを置いていただけますか。…ありがとうございます。


さて、私が指を鳴らすとどうしても一番上に来てしまうこのダイヤの5。

これを箱に入れてしまえば、一番上に来ることはないはずですね。

箱の中身はごらんのとおり、ジョーカーが2枚とダイヤの5です。

しっかりと閉じまして…如月さん、預かっておいてください。

箱にもおかしなところがないか見てみてくださいね。



…大丈夫でしょうか。

では残り51枚のデックをまたよく切って混ぜます。

長月さん、この切り方をなんと呼ぶか、覚えていますか?

…はい、お見事。ヒンズーシャッフルですね。たまにタネを見破ろうと躍起になっていて、覚えていない方もいるんです。


さて、切り終わりました。

一番上のカードは…スペードの2です。

では指を鳴らすとどうなるでしょうか。





――めくる前に。

弥生さん。ダイヤの5はどんなカードでしたか?


…そうです。地獄耳のカードです。

自分のウワサを聞くと、感づいてやって来てしまいます。















では……睦月さん。




どうぞ、めくってみてください。

















足柄「もうそろそろ10分経つけど…」ヒソ


電「何も起こらないのです…?」ヒソ


足柄「みんな意識しちゃって、静かになってるわね」ヒソ


電「せっかくのおいしいお鍋ですのに――」



いやああああああああああああ!!!



足柄「うにゃっ!?」

電「はにゃっ!?」



無理だよぉおおおっ!

もうやだ、もうやだああああ!

待って、置いてかないでええええええ…


こら!うるさいぞ!何を騒いでる!


どいて!長門さんどいてったら!

うわああああああああん!!


お、おい!待て!廊下を走るな!



ザワザワ


足柄「…………」


電「…………」


足柄「さすがに居酒屋の外まで根回しするって発想はなかったわ」


電「何があったんでしょうか…」


足柄「気にしないほうがよさそうね… それとも、あとで本人に聞いてみる?」


電「遠慮しておくのです…」




第二夜・ネタばらし



早霜「やりすぎたでしょうか」


望月「さすがにこいつは、趣味が悪ぃよ」


(  神  通  と太字で書いてあるダイヤの5)


弥生「ぜんぜん、わからない…どうやったの?」


早霜「箱の中身を見てください」


望月「箱ぉ? あれどこ行った…?」


弥生「如月ちゃん、投げちゃったから… あ、あった」


望月「どれどれ…?」


(ジョーカー2枚とダイヤの5)


望月「あれっ!?ちゃんとあるぞ…!?」


弥生「じゃあそのカードって…」


早霜「別のバイスクルから抜いてきたカードです。ポケットに隠しておきました。」


早霜「皆さんにカードを調べていただいているときに出して、手の裏に隠しておいたんです」


望月「なるほど、そのまま手を乗せて山を取れば自然に混ぜられるのか…」


弥生「あの時、『デックを置いて』って言ってたのは、そういう…」


早霜「そのタイミングでもいいですが、箱を調べてもらっているときに混ぜることもできますよ」


弥生「カードにマジックで書いてあるけど、これはいつ…?」


早霜「鳳翔さんから電話がかかってきたとき、そのままカウンターの裏で」


望月「ちゃっかりしてやがんぜ…」カタスクメ


弥生「えっ?でも、あのダイヤの5は皐月がストップって言ったやつ…だよ?」


早霜「あの後、上の山と下の山をかなりズラして重ねましたよね」


望月「ああ、そういえば…」


早霜「本来皐月さんが選んだカードは、上の山の一番下のカードになります」


弥生「上からカードを落としていたから、そうなるね」


早霜「ですが、ダイヤの5は下の山の一番下にあったカードなんですよ」


早霜「私は下の山を取って、一番下のダイヤの5を皆さんに見せたんです」


望月「マジか…全然気づかなかった…」


弥生「もしかして、手順を忘れたって言ってたのも…」


早霜「大ウソです。少し時間をおいて、皆さんの認識をあやふやにする必要がありました」ニコ


弥生「じゃあダイヤの5は最初から一番下にあったの…?」


早霜「そうです。例のカードを用意するとき、あらかじめ確認しておきました」


望月「ちょっと待て。皐月に選ばせる前に一回シャッフルしたろ?」


弥生「…!そうか、リフルシャッフル…!」


早霜「そうです。あの時の混ぜ方は、リフルシャッフル。リフルシャッフルは最初に落としたカードが一番下になります」


望月「あー、ダイヤの5が下にあるほうを先に落として混ぜればいいわけか…」


早霜「はい。こうしてダイヤの5を自分で選んだように錯覚させて、あとはマジックを行うだけ…」


早霜「意外と…難しくないでしょう?」


弥生「そういわれると…そうかもしれないけど…」


望月「気づかれないように出来るかっていうと、難しいな…」


弥生「あの、指を鳴らすと上にくるやつは…?」


早霜「そこは教えられません。今お話しした部分は、今回のように、いくらでもアレンジできますが…」


早霜「手品そのものの部分は、今後も使う可能性がありますので」


弥生「残念…」


望月「まあ、全部教えてもらってもな。また見してくれよ」


弥生「楽しかった…教えてもらったやつは、みんなには内緒にしよう…」


望月「だな。あたしらだけの特権ってことで」


早霜「ふふふ。ではその代わりにと言ってはなんですけれど…」


望月「これ鳳翔さんとこ持ってくの、手伝えってんだろ?」ゴチャア


弥生「仕方ない… 片づけるまでが、食事だから…」


早霜「ええ。すみませんが、よろしくお願いします」


コンコン


早霜「どうぞ」


望月「…誰だ?」


鳳翔「こんばんは、早霜さん」ニコォ


弥生「あ」


望月「あ」


早霜「こんばんは。どうもご迷惑をおかけいたしまして」フカブカ


鳳翔「ええ、ええ。そうですね。」ニコニコ


早霜「後でお邪魔しますとお伝えしましたが…」


鳳翔「うふふ。わかっていらっしゃるようで何より。お片付けが終わりましたら、ぜひいらしてくださいね」ニッコリ


早霜「もちろんです」


鳳翔「では」バタン


望月「…なあ、大丈夫なのか?」


弥生「ものすごく…怒ってた…」


早霜「ないはずのものがあったり… あるはずのものがなかったりすると、恐怖を感じるものですが…」


早霜「あると予想できる恐怖に勝るものは、なかなか無いようですね」フゥ


望月「ほとんどオマエのせいだけどな」



                                        第二夜 了


第三夜



皆様、こんばんは。早霜です。


この間の件では、お叱りを受けてしまいました。

あの後鳳翔さんのお店のカウンターで、鳳翔さんと妙高さんお二人にこんこんと。

翌朝に執務室で長門さん、そして神通さんからそれはもうたっぷりと。

司令官と那智さんは、困ったように笑っていましたが。



私には三つの処分が下されました。

一つはバーの駆逐艦・海防艦の利用を、発令日までに予約されている分以降、当分禁止すること。



もう一つは神通さんの訓練を3日間受けること。

ほぼほぼ神通さんの私怨ではありますが、私に弁解の余地はありませんでした。

ですが、神通さんとはよくお話ししますし、決して仲が悪いというわけではないんですよ。


訓練内容は…あまり、聞かないでください。思い出したくありません。



最後に合計20時間の奉仕活動。

奉仕活動といいましても、世間一般にいうボランティアなどではなく、

端的に言えばヘルプです。他部署等のお手伝いをしなさいということです。

今回ご迷惑をおかけしましたので、鳳翔さんのお店を手伝わせていただくことにしました。



鳳翔さんのお店を手伝っているときに、天龍さんと龍田さんとお話しする機会がありまして。

天龍さんに軽くお叱りを受けた後、バーを通じて私のことを知りたい、

今後駆逐艦の子たちがまた通えるようになった時、本当に使わせていいのかどうか見極めたい、

とのことで、龍田さんとお二人でバーにいらっしゃることになりました。


…ちょっとエキサイトして、途中から口論のような感じになってしまっていたのですが、

那智さんに助け舟を出していただいて、同席してもらえることになりました。

最初は私の個人的な問題かと思い、お断りしたのですが…この間の達磨のツケだと言われてしまいまして。

那智さんは、こういう時に取り立てるのが賢いやり方だと笑っていました。

…やはり、隠し事はもっとうまくやらないといけませんね。




…隠し事といえば。

真実を知っている者は、それをどのように伝えるか、あるいは伝えないかを

自分の裁量でコントロールすることができます。

相手を話術で楽しませるときのコツだと思っているのですが、いかがでしょうか。






天龍「―――そういや旦那はほっといていいのかい?」


那智「荒潮と川内がついている。問題ない」クイ


龍田「あら、川内ちゃんに取られても構わないのぉ?」


那智「ふぅ…。そんなことはあり得ない。奴には根性も甲斐性もないが、最終的に私を選ぶことはわかっている」


龍田「随分な自信ですこと」グイ


那智「5年も一緒にいれば嫌でもわかるようになる」


龍田「はん、照れ隠しのつもりかしら。聞いた天龍ちゃん?」ヘベレケ


天龍「…なんでアンタが龍田の隣に行ったか、やっとわかったぜ」ハァ


那智「酔っ払い二人に挟まれてしまっては、素面だと面倒だろうからな」


龍田「いやだあ那智さんたらあ~人のこと面倒くさいだなんてぇ」グリグリ


早霜「仲がいいのか悪いのか…」ヤレヤレ


龍田「ひょっとして早霜ちゃんもあたしのこと面倒な女だと思ってるのォ?」


早霜「正直かなり」


天龍「ぶっ…ww」


龍田「ちょっとぉ!そこはオブラートに包んでくださぁい」ブーブー


天龍「ちきしょう鼻に入った。ティッシュくれ」エホエホ


早霜「どうぞ」フフ


那智「貴様も普段からそうやって素を出してればもっと好かれそうなものを…」


龍田「だってヤじゃない。裸の付き合いっていうの?そこまで見せないと仲良くしたくないっておかしくありません?」


天龍「おかしかねーだろよ…本性知らずに命預けられるか」ケホッ


那智「私も龍田のやり方は好きじゃないが、考え方は理解できるし、そういう手合いも少しはいないと困る」


龍田「あーひどーいそうやって私をいじめるのねー??」


那智「ちゃんとフォローはしてるだろう」


龍田「不十分ですー」ブー


天龍「…おいおい大丈夫かよ、顔真っ赤だぞ?」


龍田「心配してくれるの天龍ちゃん!?やだ嬉しいわぁ~~チュ~しちゃ~う」ダキツキ


天龍「はいはい離れろ。嬉しいのは分かったから。チューはいいから離れろ。……離れろコラ!」グイイ


那智「やれやれ…」カラン


早霜「おかわりはどうされます?」


那智「ふむ……何か薄めに作ってくれないか」


早霜「かしこまりました」


龍田「あら、そんなのもできるのぉ?じゃあ私にも何かおねがぁい」ヒック


天龍「切り替え早ええな…」


早霜「リクエストはありますか?」


龍田「ん… めんどくさいでしょーし、那智さんと似たようなやつで~」


早霜「了解です」


天龍「同じにすりゃいいのに」


龍田「同じじゃつまんないんだも~ん」


天龍「何が『つまんないんだも~ん』だ…」ハァ


那智「なかなか似てたぞ」


天龍「そこは突っ込まないでくれると…」


龍田「かわいい~天龍ちゃんそんな声も出せるんだぁ」ブリッコ


天龍「大体同じ声だからな…!」オシノケ


那智「それで、天龍」


天龍「はい?」


那智「どうだ、感触は」


天龍「悪くない。オレずっと素面だけど、いろいろ考えてくれてるし」


天龍「しっとり飲みたいって気分も、わかる気がするよ」


那智「そうか」フフ


早霜「……」シャカシャカ


天龍(早霜見てるだけでも退屈しねぇしな)


龍田「結構お金かかってるらしいのよこのお店~」ケラケラ


那智「ま、酒好きの連中から援助してもらってるからな」


天龍「…ああ、どうりでウイスキーが多いわけだ」


龍田「海外の人たちは強いの好きだからね~」


那智「お国柄もあるかもしれんがな」


早霜「お待たせしました。ギムレットです」コト


那智「ん、ありがとう。…うん、軽いな」


早霜「もう少し強いほうがお好みでしたか?」


那智「いや、構わない。迎え酒にはちょうどいい」


早霜「ありがとうございます。…龍田さんにはこちらを」コト


龍田「あら、モスコミュール?」


早霜「ええ。お好きかと思いまして」


天龍「見た目、全然違うように見えるんだけどさ…」


龍田「おこちゃまねぇ」


天龍「うるせえ」


那智「ジンをライムジュースで割ったのがギムレット」


龍田「モスコはウォッカをライムジュースで割って、ジンジャーエールを少し足したものよ」ゴク


天龍「ほーん、ライムジュースが共通してんのか」ナルホド


那智「どちらかというとウォッカ入りのジンジャーエールだな。意外と軽いが、飲みすぎるとよくない」


龍田「…あっ、ちょっと甘い。ハチミツ?」


早霜「はい。龍田さんワインがお好きなようでしたので。少し甘くしてあります」


龍田「んふふ。おいしいわぁ、よく見てるのね」


早霜「なんとなく、ですけれど」


天龍「ほーん…」


那智「どうだうちのは。なかなかやるだろ?」


天龍「違いねえな。ただ…」


早霜「どうかされましたか?」


天龍「ここまでは気分良くしてもらってるが…問題はこっからだ」


那智「……」


龍田「どしたのよ急に変な空気出して」


早霜「……いつもやっているわけではありませんが…」


天龍「最近姐さんらの間でも話題なんだ。オレにも披露してもらいたい」


天龍「それに、駆逐艦の連中がまた来ることになったら、頼んでくるやつらもいるだろ?」


那智「だろうな」


龍田「あれ?天龍ちゃん怖いの嫌いなんじゃないの?」


天龍「程度による。ホラーやスプラッタ映画なんて見る気もしねぇが、ちょっとぐらいなら平気だ」


龍田「ほんとぉ?」


天龍「お前にウソついたことねぇだろが」ハハ


那智「……だそうだが、どうする早霜」


早霜「どうするも何も、やるしかありません」


早霜「…これは私と天龍さんの喧嘩なんですから。真っ向からお相手します」


早霜「私なりの方法で、ですが」


那智「やる気だな。さて、前回はおイタが過ぎたみたいだが、今回はどうする?」


早霜「この間は、全く警戒していないところに、怖いオチを出した…というのがいけませんでした」


早霜「なので、今回は逆に…怖い話でも、怖くなくなるような手法を試してみたいと思います」


龍田「ふうん…?」


早霜「天龍さん、ウミガメのスープをご存じですか?」


天龍「ウミガメのスープ?…潜水艦乗りが食ってたっていうやつか?」


那智「水平思考問題…ラテラルシンキングパズルというやつだ」


天龍「ラテラル…なんだって?」


龍田「例えば、天龍ちゃんはみかんを…8つ持っているとしましょう」


天龍「ん?おう」


龍田「それを駆逐艦の子3人に均等に分けたいとき、どうすればいいと思う?」


天龍「どうって… 8は3じゃ割れねえから、剥いてひと房ずつ配ってくぐらいだろ」


龍田「それはロジカルな考え方ね~」


天龍「ロジカル…論理的?」


那智「そう。ロジカルの対義語がラテラル。」


那智「論理的思考はタテの考え方だ。なぜこうなったか、どうすれば良いかを掘り下げていくと自然と正解にたどり着く」


早霜「それに対して水平的思考はヨコの考え方で、明確な回答がありません。柔軟で、大胆な発想そのものが肝要です」


早霜「さきほどの龍田さんの問題でしたら、例えばみかんをすべてジュースにしてしまってから分けるとか」


天龍「ああ…そりゃ、うまい手だな」


那智「私なら自分で2個もらって残りの6個で2つずつ分けるな」


龍田「あら~お二人ともかしこぉい」パチパチ


天龍「そういう手もあるか。いや、頭硬ぇな」ポリポリ


早霜「ですが、私たちの回答は天龍さんより優れているとも言えないのです」


天龍「…なんでだ?」


龍田「だって、普通ジュースにしないでしょう?美味しくできないかもしれないし、生のみかんのほうがいいって子もいるし」


那智「私の答えも一見平等に見えるが、人によっては自分で取らずにもっと分けてやれと思う者もいるだろう」


天龍「そう言われると、そうだな…」


早霜「限りなく公平に近いのは、天龍さんのようなロジカルな考え方と言えます」


早霜「しかし、問題にぶつかったとき、ラテラルな考え方ができると、新しいロジックを生み出すこともできます」


早霜「ウミガメのスープとは、ラテラルに脳を働かせて回答を導き出していく問題のことなのです」


天龍「なるほど…ちょっと待ってくれ。一つ聞きたい」


早霜「何でしょうか」


天龍「なんで『ウミガメのスープ』っていうんだ?」


那智「水平思考問題が有名になったきっかけとなった問題がある。その問題でウミガメのスープが出てくるんだ」


天龍「へぇ?」


龍田「その答えがあまりに衝撃的でね~。その問題のタイトルがそのまま代名詞になってしまったのよ」


天龍「なるほどなぁ…」


早霜「まずは一問、練習してみましょうか。」




――暗くなったので、部屋の電気を消した。いったいなぜ?




天龍「……はっ?」


早霜「回答する人は、出題者に質問をすることができます。」


早霜「ですが、出題者は質問に対し、基本的に『はい』『いいえ』もしくは『答えられない』としか答えません」


那智「要は、『はい』か『いいえ』で答えられるような質問をしないといけないということだ」


那智「例えば季節を特定したいと思っても、『それはいつ頃の話ですか』ではダメで、都合3回は聞かなければならない」


龍田「それで、どう答えたかをもとに情報を整理して突き詰めて、全容がわかったら答えるっていうゲームなの」


天龍「はー……なかなか頭使うんだな」


龍田「慣れると面白いのよ?メッセに専用のグループがあるぐらいだもの」


天龍「ほーん…」


那智「さて、じゃあ私から聞いてみるか。『部屋の電気とは、照明のことを指すのか?』」


早霜「『はい』。蛍光灯のようなものだとお考えください」


天龍「…そんなこと聞いても何も進展しないんじゃ?」


龍田「それもロジカルな考え方ね。水平思考の問題は、出題者が前提の部分だったり、重要な部分を隠していることが多いの」


龍田「だから、一見当たり前のような何でもない質問でも、正解に結びついたりすることがあるわ」


天龍「あー…なるほどな。じゃあオレからも質問だ。『暗くなったのは部屋なのか?』」


早霜「『はい』」


龍田「ふんふん…。天龍ちゃん、二つの質問の答えを整理すると、問題文が変わっていくでしょう?」


天龍「えーと…」



――部屋が暗くなったので、蛍光灯のスイッチを切った。いったいなぜ?



天龍「って感じか。」


那智「そういうことだな。もう私は見当がついてる」


龍田「あら?お答えになってもよろしいんじゃありませんこと~?」


那智「ここは天龍に答えさせてやりたいからな」


天龍「そりゃどうも。さて、なんで暗くなったのに電気消すんだ…?」


早霜「お二人も一度は経験されたことがあると思いますよ」


天龍「何だって…?」


龍田「…うん。うんうん。じゃあ早霜ちゃん。『電気を消す前、部屋は明るかった?』」


早霜「……『はい』、ですね。どこに何があるかはっきりわかったでしょうね」


天龍「オイ待ってくれ。『部屋は暗くなったんじゃなかったのか?』」


早霜「『はい』。暗くなりましたよ」


那智「……ふふ」ゴク


天龍「どういうこった…」


龍田「ああ、なるほど!早霜ちゃん、『「暗くなった」っていうのは相対的な話?』」


早霜「『はい』!その通りです。部屋は確かに暗くなりましたが、部屋の外と比べるとあまり暗くはなっていません」


天龍「あん?あー……うーん……」ガリガリ


龍田「もうちょっとのとこまで来たわ天龍ちゃん。あとは頑張って」


天龍「つってもさ、何聞きゃいいか思いつかねえんだ…」


那智「初めてやるとみんなそう言うんだ」ハハ


那智「天龍は、どんな情報が欲しい?」


天龍「なんで電気消したかを考えるんだろ?だからそこだよ」


那智「じゃあ天龍はどんな時に電気を消す?」


天龍「……外出るときとか、もう寝るときだけどよ…」


龍田「それをそのまま聞いてみるの」


天龍「うーん…『電気を消したのは、外出するから?』」


早霜「『いいえ』」


天龍「『じゃあ、もう寝ようと思ったから?』」


早霜「『いいえ』」


天龍「どっちも違ぇじゃねぇか…」ガックリ


天龍「いや待てよ、ってことはだ」ハタ


龍田「……」ワクワク


天龍「…『電気を消したのは、部屋を暗くしたいから?』」


早霜「『いいえ』、違います!」


天龍「『じゃあ、明るくするため?』」


早霜「…そうですね。『はい』、と言えるでしょう!」


天龍「ああ~~…! やっとわかった、そういうことだったのか…」


那智「では天龍、この問題の核心となる部分について、質問してみよう」


天龍「うっし…じゃあ早霜、『部屋の蛍光灯が切れたから、交換するために電気を消したんだな?』」


早霜「『はい!お見事です』。蛍光灯が故障したり、切れてしまうと部屋は暗くなります。」


早霜「そして蛍光灯を交換するときは、安全のためにスイッチは切りますよね、という問題でした」


龍田「天龍ちゃんよく頑張りました~」イエーイ


天龍「なるほどなあ、蛍光灯を交換するってとこだけ伏せると不思議な話に聞こえるもんだな」ハイタッチ


早霜「今回は日中の時間帯を想定しましたが、少しミスリードになってしまったかもしれませんね」


那智「真っ暗な中電気を消す奴は少ないだろうが、部屋に蛍光灯が一つしかないのも考えにくいから、どちらとも言えんかな」ハハ


天龍「しかしすげぇな那智さん…あんなすぐわかっちまうなんて」


那智「ひらめき勝負だからな。正解にたどり着くまでの時間はあまり参考にならないよ」


早霜「では…もう一問いきましょうか。」


龍田「オッケー」


早霜「…世の中には、知らないほうがいいこともあります」


天龍「…?おう」


早霜「お布団を干したときのお日様のにおいは、死んだダニが発する匂いだとか」


早霜「エビのしっぽはゴキブリの羽と成分がほとんど同じとか」


早霜「虫歯菌はもともと持っていないのに親からのキスで移されるとか」


那智「…そう言われているな」


天龍「マジかよ、オレエビフライも海老天も尾っぽまで食ってたわ…」


龍田「いやだぁ、気持ち悪ぅい」クネクネ


早霜「ですが、こうした雑学程度のものは、知ってがっかりはしますが、人生にまで影響はしないでしょう」


天龍「まあ、そうだろうな」


早霜「…『世の中には、知らないほうがいいこともある』」


早霜「知ってしまうことで、自分の一生が大きく変わってしまうとしても、なお知りたがるのは、ヒトの性なのでしょうか。」


那智「……」グビ


龍田「……」フム


天龍「……?」イブカシゲ


早霜「では、問題です」





【扉】





あるところに、女の子が両親と3人で暮らしていました。


女の子は…名前を仮に、ジェーンとしましょうか。


ジェーンは両親に、


「地下室の扉は決して開けてはいけないよ。見てはいけないものを見てしまうからね」


と言い聞かされていました。


ジェーンは生まれてから一度も、そこに何があるか、見たことがありませんでした。


ところがある日、ジェーンは両親が留守にしている間に、その扉を開けてしまいました。


…さて、ジェーンは何を見てしまったのでしょうか。




天龍「なるほどな。すっかり忘れてたぜ。怖い話か」ハハ


龍田「あら、まだそうとは決まってないんじゃない?」クス


那智「ふむ。どこから攻めたものかな…」


龍田「そうねえ、どうしましょうか…」


天龍「オレはストレートにいくぜ。…早霜、『両親は地下室に何かを隠していた?』」


早霜「……『どちらとも言えません』。隠していたといえばそうなるのかもしれませんが…」


龍田「えー…?」


天龍「…肩透かしだな。しかし、どっちでもねえってのはどういうことだ…?」


那智「では、『地下室には何かがあったのか?』」


早霜「『はい』」


龍田「こっちは即答ね」


天龍「みたいだな。とりあえず、地下室から掘り下げていくって感じか」


那智「うむ…見てはいけないもの、怖い話とくればこうだな。『地下室には生き物がいたのか?』」


早霜「『はい』」


龍田「あら、キナくさいわぁ」


天龍「生き物、ね」


那智「生き物といっても、特定はしにくいが、少なくとも常識的に生き物と呼ばれるものなのは確かだな」


天龍「あー、例えば…ロボットみたいな、自分で動くけど生き物とは言いにくいのは除外していいってことか」


龍田「そうね。じゃあローラーかけちゃおうかしら」ウフフ


天龍「ローラー?」


那智「特定作業のことだ。例えば…同じでいいか。季節が重要な情報だとしよう」


那智「その季節は春ですか、夏ですか、秋ですか… と聞いていって、『はい』が出るまで繰り返すんだ」


天龍「ずいぶんと乱暴だな…」


龍田「情報を確定させるのも大事なことよ。さてさて」


龍田「『その生き物は空想上の生き物?』」


早霜「…『いいえ』」


龍田「『鳥?』」


早霜「『いいえ』」


龍田「『魚?』」


早霜「『いいえ』」


龍田「うーんと…『動物園にいる?』」


早霜「……『はい』でしょうか。あまり気にしないでください」


龍田「おっと…とりあえず続けるわね。『爬虫類?』」


早霜「『いいえ』」


龍田「『両生類?』」


早霜「『いいえ』」


龍田「『哺乳類?』」


早霜「『はい』」


龍田「よし、だいぶ絞れたわね~」


天龍「テンポ早ええな…途中ちょっと言いよどんだよな」


那智「『動物園にいる』のところ、歯切れが悪かったな」


龍田「動物園にいるかどうか怪しい哺乳類の生き物…?」


天龍「あー、いや、ちょっと待ってくれ…」カンガエル


龍田「あら?どうかしたの?」


天龍「もう一回聞くぞ。『その生き物は空想上の生き物なのか?』」


早霜「鋭いですね…。『いいえ』なんですが、全ていいえとも言いにくいんです」


早霜「ただ、あまり気にしないでください。ミスリードになりますので」


那智「…ふむ」


龍田「何か思いつきました?」


那智「いや、まだ何とも」


天龍「うあっ!?」ガタ


那智「うわっ、どうした?」ビク

龍田「きゃっ!?」


早霜「……」


天龍「いや、悪ぃ。もしかしたら、ちょっと、思いついちまって…」


龍田「な、なあに天龍ちゃん。そんなオバケでも見たような顔して…」


天龍「つじつまが合わねえんだ。オレの思い過ごしだ」


那智「…そうとは限らないぞ、天龍。聞いてみたらどうだ」


早霜「ええ。まさかと思っていても、それがあり得るのが水平思考問題ですから」


天龍「う… じゃ、じゃあ聞くぞ、早霜」


早霜「どうぞ」ニコ




天龍「『その生き物ってのは…… 人間か?』」




早霜「…『はい』、その通りです」


那智「ほぉ~…」


龍田「らしくなってきたわね」ウフフ


天龍「人間なら、哺乳類だし、『動物園にいる』からな。展示されてるとは言ってねえ」


龍田「でも、職員さんを考えたら、『はい』って即答できてもおかしくないのに…」


天龍「空想上の生き物っていうのも、つまづくとこじゃねえし…」


那智「いや、そこは考えなくていいところだろう。答え方から邪推するのは良くない」


那智「とりあえず地下室にいたのは人間というのは確定したことだし、ここから話を広げようか」


龍田「そうね…ああ、すっかり酔いが醒めちゃったわぁ」


天龍「ホントにな。さっきまでメロメロだったのに」


龍田「マジメモードに入っちゃった。気合い入れましょ」パン


龍田「人間を地下室に入れてたっていうなら…『地下室にいた人間は子供?』」


早霜「『はい』。大人でも成り立ちますが子供だとお考え下さい」


那智「なるほど…。では、『その人間はジェーンに関係がある?』」


早霜「…『はい』。大いにあるといっていいでしょう」


天龍「女の子に関係がある…?」


龍田「そういう線ね。じゃあ私も…」


龍田「『その人間はジェーンより年下?』」


早霜「『いいえ』」


龍田「『じゃあ年上?』」


早霜「…『いいえ』」


天龍「同い年…?」


那智「うん、わかったかもしれない」


龍田「そうね… 天龍ちゃんは、ピンとこない?」


天龍「いや、わかんねぇ…」


那智「女の子と関係があって、年上でも年下でもないとしたら…」


那智「…『両親はジェーンの双子の片割れを地下室に隠していたんじゃないか?』」


天龍「はー…!! そういう話か」


龍田「一つの家庭で持てる子供の数が制限されてる国もあったみたいだし…」




早霜「『いいえ』。違います!」




天龍「…え?」


龍田「…あら?」


那智「…何だって?私はてっきり…」


龍田「ええ、私もそうとばかり…」


早霜「仮にそうだとして、『見てはいけないものを見てしまう』とまで釘を刺す必要があるでしょうか」


天龍「まあ、そう言われるとな…」


龍田「でも、ジェーンちゃんを守るためなら、しょうがないとも思うけど…」


那智「…とりあえず、地下室にいたのはジェーンと関係があって、同い年だが、双子ではない…」


龍田「う~ん…じゃあ、『地下室にいた人間はジェーンのお友達?』」


早霜「『いいえ』」


龍田「友達でもないの~…?」ウーン


天龍「そんな奴、いるか?」


那智「わからん…」


早霜「…少々ヒントを差し上げましょう。この問題の答えは『ジェーンが何を見たのか』です」


龍田「だから何よう」ブー


那智「地下室の扉を開けたんだろう?だから地下室に何がいたのかを探って――」


天龍「わかった」


龍田「…え?」


那智「…本当か?」


天龍「いや、答えじゃない。問題をよく考えるとおかしいんだよ」


龍田「…おかしい?」


天龍「だってよ、『地下室にあったものは何でしょう』って聞き方すんだろ普通は」


天龍「だから地下室にいた奴と女の子が見たものは、イコールじゃねえって可能性がある」


龍田「なにそれ…ますます、わけがわからないわ…」ウーン


那智「…いったん、落ち着こうか。私が一番浮ついている気がしないでもないが」


那智「では早霜。『ジェーンが見たものは、人間か?』」


早霜「…『いいえ』!」


龍田「えぇ!?」


那智「どうして違うんだ…」グデー


天龍「……」カンガエコム


那智「天龍の言った通り…か。いやいや、話がつながらんだろ…」


龍田「うーん、まだ双子説を引きずっちゃってるわ…」


天龍「……わかった」


那智「……!」ガタ


龍田「今度は、本当に?」


天龍「あとの質問は、オレにやらせてくれねえか、二人とも」


龍田「…ええ、じゃあお願いしちゃおうかしら」ニコ


那智「私は、まだわからん…よろしく頼む」


早霜「全て、お分かりのようですね」


天龍「確信を持ってるってわけじゃねえが…これ以外は考えらんねえ」


早霜「…では、どうぞ」


天龍「『その家で暮らしてるのは、3人でいいんだな?』」


早霜「『はい』」


那智「うっ…そうか、そこを確認していればよかったか…」


龍田「……」ゾワ


天龍「ってことはだ、『地下室にいたのはジェーンってことにならねえか?』」


那智「あっ!?」


龍田「…イヤだ、鳥肌立っちゃった」サスサス


早霜「『はい』、そうです」


那智「そうか…そういう話だったか…」ガク


天龍「つまりジェーンは、生まれた時からずっと、地下室から出たことがなかった…」


天龍「親御さんからずっと、外は悪いもんがいっぱいあるって、教わってきたんだろうな…」


那智「うむ…」


龍田「…」


天龍「……最後の質問の前に、一つだけ」


天龍「『親御さんは、ジェーンを大切に想っていたか?』」


早霜「……『どちらとも言えない』でしょうか」


天龍「違ぇな。お前はどう思うか聞いてんだぜ」


早霜「…『はい』ですね。とても大切に、愛情を注いでいたと思いますよ。」ニコ


天龍「気が合うな、早霜。オレもそう思うぜ。さて…」

















「ジェーンが見たのは…なんてことない、普通の世界なんだろ?」

















地下室の扉を開けたジェーンが見たものは、階段でした。


階段を上ると、眩しい光が、瞼を閉じさせます。


光に慣れたジェーンがようやく目を開けると、


そこには大きな窓に、ソファに、テーブル、カーペット…


ありふれたリビングがありました。


ですがジェーンは、なぜだか恐ろしくなって…


階段を下りて、重い扉のその先に、戻っていきました。





第三夜 After





那智「……おっかない話だな」


龍田「そうね」


天龍「…そうかな」フフ


早霜「いかがでしたでしょうか」


龍田「ちょっと、しんみりしちゃったわね~」


天龍「でもまあ、悪くなかったぜ」


那智「私もまだまだ頭が硬いな…」フフ


龍田「そういえば、答えに詰まってたところだけど…」


早霜「ええ、お話しします」コホン


早霜「最初の天龍さんの質問ですが…ジェーンは『隠している』というと語弊がある気がしました」


那智「まあ確かに…監禁とか、隠匿というのとはニュアンスが違うな」


早霜「ですが、第三者から見ると、そう捉えられてもおかしくはありませんので、YESNOとしました」


龍田「それは仕方ないわね~」


早霜「次に、空想上の生き物か、というと、このお話が架空なのですから、ジェーンは空想上の生き物と言えます」


早霜「しかし人間は実在しますし、今まさにしている話の中の人物ですので、いいえと答えていいだろうと」


天龍「その辺の判断は難しいわな」


早霜「動物園にいるか、というのも同様です。人間は動物園にいますが、ジェーンという特定の個人はいません」


早霜「先ほどと違い、ジェーンは地下室にずっといるのですから、今度は間違いなくいいえと答えるべきなのですが…」


早霜「ここでいいえと答えてしまうと、正解が出せないのではと思い、はいと答えました」


那智「なるほど…あそこでいいえなら、空想上の生き物でないが、動物園にいない動物を探す流れになっただろうからな」


龍田「クジラとかシャチとか全部聞いて、全部いいえで大混乱になっちゃうわね」


早霜「納得いただけたようで、ほっとしてます」フフ


天龍「そっか、問題出す側も解かせる体でやんないといけないんだな」


早霜「そうですね。解く楽しさと、解かれる楽しさとがあって、相手の立場になるとまた面白みが増すと思います」


龍田「いい問題だったわぁ。早霜ちゃんもグループ入ってこない?」


早霜「あまりお相手出来なさそうですが…私でよろしければ」


龍田「うふふ。あとでメッセ送るわね」


天龍「早霜さ」


早霜「はい?」


天龍「今度はガキどもを連れてくるよ。静かにやりたいときは、ここが良さそうだ」


早霜「…ええ、いつになるかはわかりませんけれど、お待ちしてますね」ニコ


龍田「あら、お墨付きね~」


那智「天龍がそう言ってくれるのは、私も嬉しいよ。ありがとう」


天龍「まぁ、オレだってちょっとオフレコにしたい話もあるもんでね」


天龍「このマスターはちょっと性格に難はあるが、信用できそうなんでな」


早霜「恐れ入ります」


天龍「図太いやつだぜ…。んじゃそろそろ時間だ。オレは帰るぜ」


龍田「ちょっと天龍ちゃん、お会計は」


天龍「あ?那智さんの奢りだろ?」


龍田「え?」


那智「まあ、そういうことだ」


龍田「いつ決めたのそんなこと~!奢りだって知ってたらそんな飲まなかったのに…」


早霜「那智さんは軽巡より小さい艦種の人には奢るんですよ」


龍田「知らないわよそんなの~…私那智さんと飲むの初めてだったんだからぁ」


那智「不服なら、この店をひいきにしてやってくれ。それで返してくれればいい」


龍田「もう二人してしっかり宣伝してくるんだもの…」


天龍「じゃあ那智さん、ご馳走さん。早霜も、サンキュな」


早霜「ええ、ありがとうございました」ペコ


龍田「ああ、待って天龍ちゃん! 那智さん早霜ちゃん、ありがとね」フリフリ


バタン



那智「…で?最近になってオカルト話をし始めたのはどういう了見なんだ」


早霜「それは秘密です」キッパリ


那智「ほー…まあいい。一人で抱えきれないと思ったら早めに相談するんだぞ」


早霜「……?」キョトン


那智「なんだその顔は」ジト


早霜「いえ、もっと食い下がってくるものかと…」


那智「話してもらいたいのが本音だが、早霜がそうしたいというのならそれを尊重しよう。それだけだ」


早霜「…ありがとうございます」


那智「では、また明日な」


早霜「はい、おやすみなさい」

             

                                   


ガチャ


早霜「ふう…」ヤツレ


夕雲「お疲れさま、早霜さん」


早霜「姉さん… 起きてらしたのですか」パタン


夕雲「ええ。早く寝ようと頑張りすぎてしまって」ウフ


夕雲「そんなことより、どうしたんですか…?ひどくやつれていますよ」


早霜「0時から英国淑女3名のお相手を」


夕雲「あ、あら…それは…」


早霜「ラム酒のストレートは後で効いてきますね…」ゲッソリ


夕雲「ああ、そんな千鳥足で」アワワ


早霜「水を…飲まなければ」ガチャ


夕雲「今日も午後から執務なんでしょう?大丈夫ですか?」


早霜「……」ングング


早霜「ふぅーっ…。ちょっと厳しいかもしれませんね」バタン


夕雲「あらまあ…。じゃあ、すぐお風呂に行かないと」


早霜「気力が…ありません。シャワーは、起きたら浴びることにします」パチパチ ファサ


夕雲「こ、こら、そんなはしたない格好で」


早霜「すみませんが、もう寝ます…ちょっと、もう、限界で…」


夕雲「もう…しかたありませんね」クス





夕雲「早霜さん」


夕雲「…毎日、お疲れ様です」サワ


早霜「……」zzz


夕雲「…でも、今日は少し、残念です」


夕雲「いつも寝る前に、いろんな話をしてくださるのに…」


夕雲「…今夜はネルソンさんたちと、どんなお話をしたんですか?」


夕雲「どんなお話をしてあげたんですか?」


早霜「んん… ねえさん…」zzz


夕雲「あら、いけない… 起こしてしまうかもしれません」


夕雲「また明日、のんびりお話ししましょうね」フフ


                                  第三夜 了



第四夜




皆様、こんにちは… 駆逐艦、早霜です…。

…調子が悪そう、ですか? …ええ、察していただけると、助かります…。


今、私は…本棟の屋上で、微かに硝煙の混じった潮風を、五感で感じながら、

パラソルの下で、チェアに寝そべっています…。



…案の定、仕事になりませんでした。2時間ぐらいしたところで、

見かねた司令官が、今日はもういいから、休むようにと。

今は忙しくない時期なので、休むことにあまり影響はないのですけれども…

これでお金を頂いているわけですから。つまり、プロということですので…

体調管理、自己管理はもう少し…きちっとやらないといけませんね。

押しの強い方から、お酒を断る練習も…実践を交えて、していかなくては。



もう、夕暮れ時です。

鮮やかな暖色の空と、灰色と白の雲が、まるで夕焼けの海と、照らされる岩礁を、鏡に映したようです。

とても、美しいです。空をこんな気分で見上げることは…あまり、なかったような気がします。



…足音が、聞こえますね。

ここにずっといると、髪がべたついてしまうので、

滅多に人は来ないはずなのですが…





スタ、スタ、スタ


不知火「体調はどうですか」スワル


早霜「…あら、不知火さん…だいぶ、回復してきましたよ」ムク


不知火「それはよかったです…。この間は、伺えなくてすみませんでした」


早霜「仕方ないですよ、不知火さんは遠征の予定があったんですから」


早霜「それより、珍しいですね。不知火さんが屋上にいらっしゃるなんて」


不知火「ああ…。先ほど、東壱の報告に行ったんですが、早霜がいないので気になって。」


不知火「司令に聞いたら、体調不良で早引きさせたというので。部屋にも救護室にもいませんでしたので、ここだろうと。」


早霜「あら、心配してくださるなんて… 優しいのね」クス


不知火「いえ、別にそういうわけでは…いや、違いませんけれども…」//


早霜「不知火さんはもう上がりですか?」


不知火「ええ。夜間訓練もないので、夕食までゆっくりしようかと。それに…」


不知火「最近は、早霜と会話が出来ていなかったかと、思いまして」


早霜「…そうですね。あの日以来、バーが忙しくなって、お休みの日が減ってしまいましたから」


早霜「二人だけでお話しするのは、とても久しぶりですね」フフ


不知火「ええ。早霜に声をかける人も、とても多くなったように見えます」


早霜「はい。正直なところ、気が休まらないといいますか… 皆さん、熱のある方が多くて」フフ


不知火「早霜はもっと静かな雰囲気が似合う人です。…個人的にですが、そういう方たちとは、馬が合わないかと」


早霜「それは、私もわかっているつもりです。適度にお付き合いさせていただいています」


早霜「あまりお酒にも強くありませんからね」


不知火「…早霜が皆に気に入られるのは、嬉しいです。早霜はそれだけの魅力がある人ですから」


不知火「でも同時に…少し、不快です。不知火は、ずっと前から、それをよく知っていたので…」


早霜「……この間の事、怒っているんですか?」


不知火「そんなことは。…不知火と陽炎が姉妹である以上、時間の問題ではありましたので」


不知火「嬉しさ半分、残念半分、そんな感じです」


早霜「…ご相談もなく、黒潮さんに教えてしまったのは、ごめんなさい」


不知火「いえ…。早霜の判断ですから。不知火がとやかくいうことではありません」


早霜「…ありがとうございます」


不知火「ただ、陽炎たちが存外…ご迷惑をおかけしていないようで。そこは安心しました」フフ


早霜「そうですね。何度かバーに来られましたが、ルールは守っていただけています」


不知火「バーの利用禁止と聞いたときは、またやらかしたかと気が気でありませんでしたが」フゥ


早霜「ふふっ」


不知火「その原因が早霜にある、ということのほうが驚きでしたよ」チラ


早霜「…間違いありませんよ。私が睦月さんたちを無為に驚かせて、騒ぎになった。それは事実です」


不知火「そこは疑ってはいません。貴女は嘘をついて保身に走るような方ではない」


早霜「……」


不知火「詳細は弥生に聞きましたが…とても、茶目っ気があるというか…子供らしいと思いました」


不知火「私の知る早霜とは違う、別な一面がある……そこに、驚きました」


早霜「……」


不知火「誰しも、相手によって対応を変えるものです。不知火と早霜との間でも、それは変わらない…」


不知火「不知火は、早霜のことを全てわかった気でいたのかもしれません」フッ


不知火「笑ってください」ハハ


早霜「……笑えない冗談ですね」


不知火「フフッ、そう言うと思いました」


早霜「フフフ」ニコ


早霜「でも、不知火さんだって、そうではありませんか」


不知火「不知火が…?」


早霜「先ほど、私の魅力が皆さんに伝わるのは嬉しいけれども、少し不快だと言いましたよね」


不知火「…そうですね」


早霜「意外と乙女なんだなあって、思いましたよ?」クス


不知火「不知火だって、女の端くれです…そうからかわないでください」プイ


早霜「それに…不知火さんに見せていない面があるとしても…」


早霜「それを意識する必要もないと思うんです」


不知火「…なぜ?」


早霜「よほど身なりに特徴がないかぎり、話をする前から、この人にはこう振舞おう、と決めてかかることはできないはずです。」


早霜「何度か話をしているうちに、どうすれば相手のペースに合わせられるかを考えて、自然と振る舞いが決まっていくものです」


早霜「つまり見せる必要がないから、今まで見せてこなかった。見せなかったから、仲良くなれた。そう、考えられませんか?」


不知火「……」フム


不知火「一理あると思います。ですがその言い方だと…」


不知火「それを見せてしまったら、不知火との関係が壊れてしまうかもしれない…そう恐れているように聞こえますよ」


早霜「…間違いではありませんよ。私は、疎まれるのは構いませんが、懇意にしている方から嫌われてしまうのは、嫌です」


不知火「不知火もそうです。早霜にこれを打ち明けたら、幻滅されるかもしれない。そんな趣味もあります」


早霜「……これでは、気が休まりませんね」フフ


不知火「久しぶりで話す内容ではないでしょうね」フフ


早霜「不知火さんは…そういう話をしに来たんですか?」


不知火「…いえ。特に話題は用意していませんでした。ですが、やぶさかではありません」


不知火「こういう機会は、そうありませんから」


早霜「…不知火さんのことですから、そう深刻なお話ではないと思っていますが」


不知火「早霜にとっては、そうかもしれません」


不知火「いわゆるカミングアウトというは… なかなか、度胸がいるもので」フー


早霜「何も今でなくても構わないでしょうに」クス


不知火「それはそうですが、早霜がこれから駆逐艦たちを多く相手することを考えると」


不知火「バレてしまうのも時間の問題だと思いまして」


早霜「…まあ今なら、私以外に聞く人もいませんからね」


不知火「…話しても、いいですか?」


早霜「…ええ、どうぞ」


不知火「実は、私…」




不知火「魔法少女が、好きでして…」///




早霜「…魔法少女?」


不知火「よ、横須賀にいた時に、日曜日の非番があって、なんとなくテレビをつけたら、その…やっていて。」


不知火「そこから、なんとなく見続けて…ちょっと、その…ハマってしまいまして…」///


早霜「…テレビアニメですか?」


不知火「ええと、はい。そうです。その…『〇たりはプリキュ〇』というタイトルなんですが…」チラ


早霜「ああ、知ってますよ。内容まではわかりませんが」


不知火「ああ、よかった…。いや、良くはないかもしれませんが、とにかく、シリーズを通して一通り見る程度には」


早霜「ええ」


不知火「その…こちらに来てからは、なかなかDVDが手に入りませんで、船便で買い付けたりもしていて」


早霜「ええ」


不知火「お恥ずかしながら、その、司令とか、経理の方々には、筒抜けになってしまっているのですが」


早霜「はい」


不知火「なぜ経理の方かというと、その、船便が届くと…検品するじゃないですか。それで、バレるんです」


早霜「……」


不知火「恥を忍んで、どうにか私の、うー、それが来る日は、検収する人を同じにしてくれと頼んだりもして」


早霜「あの」


不知火「もちろん陽炎たちも、知っています。なので、正直いつバレてもおかしくなくて」


早霜「不知火さん?」


不知火「は、えっ、ああ、はい。はい?…ええと…すみません」ハァハァ


早霜「私は素敵だと思いますよ」クス


不知火「すっ、えーと、すてき、ですか。はあ、良かったです…」ホッ


早霜「夢中になれるものがあるって、いいじゃないですか。不知火さんの場合は、そのアニメだったというだけですよ」


不知火「でも、変身グッズとか、タペストリーとか、そういうのも、たくさんあるんですよ?」


不知火「最近は、収納が足りなくなってきて、陽炎たち以外は、部屋に入れられないくらい…」


早霜「本当にお好きなんですね」ニコニコ


不知火「…意外ですよね?こんな、冷徹が服を着て歩いているような私が、魔法少女だなんて」


早霜(冷徹というイメージは湧きませんが)


早霜「…ねえ、不知火さん」


不知火「…はい」


早霜「私に嫌われたいんですか?」クス


不知火「いえ!! そんな…ことは。そうですね。早霜に、失礼でしたよね」


早霜「意外でないと言えば嘘になります。でも、女の子の趣味なら、不思議はありませんよ」


早霜「いえ。語弊がありますね。たとえ不知火さんが男性だとしても、幻滅なんてしません」


不知火「そうですか…よかったです…」


早霜「どういうところがお好きなんですか?」


不知火「…我々の仕事は、あまり褒められることはなくなってしまいました」


不知火「海の上で、深海棲艦と戦い続けて、もう6年。我々の戦争は営みになりつつあります」


早霜「…そうですね。深海棲艦と話し合うべきだ、などという平和団体もいますから」


不知火「そうした中で、私たちと同じような少女が、突然与えられた力で、自分たちの世界を守るために戦う…」


不知火「仲間たちと意見の差でぶつかることもあります。何が正しいのか。なぜ戦わなくてはいけないのか。」


不知火「それでもお互いを認め合い、力を合わせて、戦って。その姿が妙に重なって思えました」


早霜「……」ニコニコ


不知火「画面の中で、ある時は可憐に、ある時はコメディ・チックに。ある時は傷だらけになりながら戦う彼女たちの姿と、」


不知火「プリキュ〇に助けてもらった人たちの感謝の言葉や、笑顔を見ていると、」


不知火「私のやっていることもきっと誰かの笑顔に繋がっている…そう思わせてくれるんです」


早霜「…ええ、そうですね。間違いありませんよ」


不知火「個人的には初代が好きなんです」


早霜「どうしてです?」


不知火「初代はまだ方向性が決まっていなかったので、敵と戦うとき、肉弾戦が主なんですよ」


早霜「あら…?珍しいですね」


不知火「ええ。膝の裏を蹴ったり、関節技をかけたり、投げ技が出てきたりして、かなりリアルなんです」


不知火「衣装とのギャップもあるのですが、その武骨さがかっこいいんですよ」フフ


早霜「へえ~…それは、面白そうですね」


不知火「よかったら、お貸ししますよ。もちろんその時は、内密にしていただければ」


早霜「ええ、わかっています。今はちょっと時間がありませんから、落ち着いたらぜひ」フフ


不知火「いつでも連絡を頂ければ、手配しますよ」ニコ


不知火「…ふーっ」ノビ


早霜「…どうしました?」クス


不知火「いえ、肩の荷が下りたというか、胸のつかえがとれたというか。体が軽くなったようです」


不知火「思いのほか、打ち明けてしまうのも、悪くないのかもしれません」


早霜「きっと、受け入れてもらえますよ」


不知火「…早霜がそういうなら、そうなのでしょうね」フフ


早霜「さて、次は…私の番ですか」


不知火「いえ、早霜が付き合うことは」


早霜「私も一つ、隠し事がありまして」サエギル


不知火「…隠し事ですか」


早霜「ええ。誰かに打ち明けるべきか、秘密にしておくべきか、ずっと迷っていて…」


早霜「極めて個人的な問題なので、私だけでなんとかしようと努力はしているのですが」


早霜「どうにも上手くいかなくて」フフ


不知火「……」


早霜「私は不知火さんのように、勇敢ではありません…」


早霜「なので……例え話をしましょうか」


不知火「それは、どのような」


早霜「怖い話ですよ。不知火さんの苦手な」クス


不知火「…正直なところ乗り気ではありませんが、心して聞きましょう」


不知火「不知火のカミングアウトに付き合っていただいたお礼です」


早霜「ふふっ、ありがとうございます」





【友達】






ジョンはいつでもいじめられっ子。

からかわれて、馬鹿にされ、靴を隠され、脅かされ、

食事の時も帰り道も、隣に誰もいることはなく。


ジョンはいつでもひとりぼっち。

みんなが仲良く遊んでいても、ジョンは一人でうろうろ、うろうろ。

誰かに会えば、いじめられ。だから皆がやってこない、秘密の場所をめぐります。


今日はお墓にやってきた。

みんなはびくびく怖がって、だれも来ないし近寄らない。

ここなら僕はヒーローだ。なにをやってもいちばんだ。


いつものように遊んでいると、一人の男と目が合った。

派手な模様の服を着て、鼻だけ赤くて、顔は真っ白。

彼はおおげさにおじぎして、両手を広げてこう言った。



「やあやあ坊や、こんにちは。僕はクラウン・マイケル。

 みんなの夢をかなえて旅する、さすらいの魔法使いさ」



ジョンは彼に尋ねた。

「ねえねえおじさん、どうしてこんなところにいるの?」


マイケルは優しく答えた。

「ああ、ああ、坊や。驚かないでね。実は僕は幽霊なんだ、墓場が一番落ち着くのさ」


ジョンは目をぱちくりさせて、

「全然そうは見えないよ。僕と同じで手足があって、何も変わらないじゃない。」


マイケルはたいそう喜んで、

「坊や、とっても嬉しいよ。みんなに幽霊だと言うと、すぐに逃げてしまうんだ。

 そうだ、坊やにとっておきの、素敵なショーを見せてあげよう。」



マイケルはトランプ、ボール、クラブと、

なんでもポケットからとりだして、ジョンに芸をしてみせた。

ジョンは久しぶりに、大声で笑って、跳ねて、拍手して。

お日様がうとうとするころには、二人はすっかり、もう友達。



「ねえねえマイケル、明日もショーを見せてくれる?」


「いいとも、ジョン。僕らは友達。

 君の言うこと望むこと、なんでも叶えてみせるとも。」



それからジョンは毎日毎日、静かなお墓でささやかに、

マイケルのショーを楽しんだ。



ある日、ジョンはまた尋ねた。

「マイケル、僕も友達が欲しいんだ。

 マイケルなら知っているでしょ?友達はどうしてできるのか。」


マイケルは微笑みかけながら、

「もちろんだとも。僕がジョンにしたように、すぐに友達を作ってみせるよ」


ジョンは肩を落として、

「でもマイケルは幽霊だ。みんな怖がるに違いない」


マイケルは指を鳴らして、

「ジョン、僕は魔法使いさ。きみの身体を一日貸して。

 そうしたら君の身体でショーをして、友達を作ってあげられるよ」


ジョンは顔をほころばせて、

「本当?マイケル、ありがとう。さっそくやってほしいんだ」


マイケルは大きくうなずいて、


「いいとも、ジョン。僕らは友達。

 君の言うこと望むこと、なんでも叶えてみせるとも。」



ジョンはお墓で一日ずっと、マイケルが戻ってくるのを待った。

マイケルが誇らしそうにやってきて、次の日ジョンは人気者。

明るく声をかけられて、いっしょに話して、笑いあい。


ジョンは新しくなった日々のことを、マイケルに話して聞かせて。

そのたびにマイケルは、自分のことのように喜んで、

そしてまたショーをして、二人の時間は過ぎていった。



それからジョンはことあるごとに、マイケルに身体を貸していた。

勉強が嫌になって、パパと大喧嘩して、あの子をガール・フレンドにしたくて、

また友達が欲しくなって、自分じゃうまくいかなくて。


どんなに小さな理由でも、

どんなにわがままな理由でも、

二日、三日と延びていっても、

マイケルは必ず助けてくれた。



あるとき、ジョンはマイケルに、

ジョンの姿をしたマイケルに尋ねた。


「ねえねえマイケル、なんだかとても眠いんだ。

 すまないけれど、僕の代わりに、うまくやっておいてくれないかい」


マイケルはやはり優しく答えた。


「いいとも、ジョン。僕らは友達。

 君の言うこと望むこと、なんでも叶えてみせるとも。」








それからさらに時は過ぎ、ジョンはすっかり大きくなった。

カレッジを出て、パパとも仲良く、ガール・フレンドもたくさんいて、

友達に困らなくなって、何もかもが順調で。


今日も彼はたくさんの人の前で、

派手な模様の服を着て、鼻だけ赤くて、顔は真っ白、

大げさにおじぎをひとつして、両手を広げてこう言った。




















「やあやあみなさん、こんにちは。僕はクラウン・ジョン。

 みんなの夢をかなえて旅する、さすらいの魔法使いさ」





















第四夜 その後




不知火「……ふーっ…」


早霜「…もし、私がマイケルのような幽霊だったとして」


早霜「不知火さんは、私に体を貸してほしいと言われたら、どうしますか」


不知火「お貸ししますよ」ニコ


早霜「…不知火さんの代わりに、不知火さんとして生きていくとしても?」


不知火「構いませんよ」


早霜「何故です?」


不知火「早霜は私の親友です。そんなことをするはずはないと信じていますし…」


不知火「貴女に裏切られても、それで貴女が幸せになれるのなら、構わない」


早霜「……」


不知火「貴女が、深い事情を抱えていることは、伝わりました」


不知火「そして私では、おそらく、その助けになれないであろうことも…」


早霜「…すみません」


不知火「それでも、月並みではありますが、私でよければ、いつでも相談に乗ります」


不知火「役には立てなくとも、貴女の重荷を、いくらか受け持つことはできる」


不知火「メッセージでも、こうして直接でもいい。話して楽になるなら、お付き合いします」


早霜「ありがとうございます、不知火さん…」



早霜「月が、綺麗ですね…」


不知火「…『死んでもいいわ』と返すところでしょうか」フフ


早霜「よしてください、縁起でもない…」クス


不知火「そろそろ、夕食の時間です。行きましょう」


早霜「そうですね…では、エスコートをお願いします」


不知火「…いいですとも。私たちは親友…あなたがそう望むなら、何でも力になりましょう」


早霜「ふふっ、ありがとう、不知火さん」



早霜「ああ、DVDの件はまた追ってご相談を」


不知火「台無しですよ」


                                   第四夜 了


第五夜


皆様、こんばんは。早霜です。


いつも近況報告では芸がありませんので、趣きを変えてみましょう。



「信頼できない語り手」というものをご存じでしょうか。

読書を嗜まれる方なら、ご存じかもしれません。

そうでない方のために、一つ例を挙げましょうか。



 外で悲鳴が聞こえた。出てみると歩道に女性がへたり込んでいて、一方へ指をさしている。

 その先に首を向けてみると、黒い上着の男が走って逃げていくのが見えた。



さて、この語り手は、逃げた男は黒い上着を着ていると言っていますが、

例えば語り手に色覚異常があって、赤色が黒く見えてしまう場合はどうなりますか。


そうです。逃げた男の上着は赤色である可能性が出てきます。


このように、語り手は第三者の視点、いわゆる神の眼を持っているので、

読者に対して常に公平で、正しい情報を提供するものである…という先入観を利用して、

語り手の主観と作中の事実にギャップを作ってミスリードをする手法を「信頼できない語り手」と呼びます。


推理小説などでしばしば用いられる叙述トリックでして、

…これを言ってもいいものかわかりませんが、

「犯人は〇ス」で有名なあの物語にもこの手法が使われているんです。



ミスリードというと悪意があるように思われるかもしれませんが、

聴き手や読者を楽しませたいという考えもありますので、一概には言えません。


タネを見破ってやろうと熱心に展開を推理しながら嗜むのがよろしいか、

何も考えずに、無邪気に、悪く言えば愚直に物語を楽しむのがよろしいか。



皆様はどちらでしょうか。






【聞き込み】







「やあやあ、せっかくの日曜だというのに、朝から申し訳ありませんな」


「いえいえ、とんでもありません」


「夕べ遅く、このあたりで強盗があったようなんです」


「エッ、強盗ですか?」


「ええ。なんでも夜道を歩いていた女性を刃物で刺して、バッグを奪っていったそうなんですよ」


「被害者の方は大丈夫なんですか?」


「残念ですが…」


「ああ、なんということ…。一刻も早く、犯人を捕まえてくださいな。怖くて眠れませんわ」


「もちろんです。…それで奥さん、犯行は夕べの10時ごろだったという話なんですが、何か心当たりはございませんか?」


「そういえば…夕べ主人が酔って帰ってきたとき、走っていく男を見たと言っておりました」


「なんと!ご主人はほかに何か…?」


「…ああ!顔をはっきり見たとも言っておりましたわ。酔っていて相手にしなかったのですが、まさか…」


「よく見えましたな…」


「あそこに街灯がありますでしょう。あれで見えたそうなんです」


「なるほど…ご主人はいらっしゃいますかな?」


「それが昨日の今日だというのに朝から酒盛りだといって出ていきまして」


「うーむ残念…お話を伺いたいのですが、どちらに向かわれたか、お伺いしても?」


「役場の近くにパブがあるでしょう。主人のツテでして、今日は朝から開けているそうですわ」


「ふむ、わかりました。そちらに行ってみましょう。貴重なお話をどうも」


「ええ、お勤めご苦労様です」








五月雨「えーと…終わり、ですか?」


早霜「はい」


五月雨「うーん??」クビカシゲ


夕張「うん、ふんふん」コクコク


五月雨「え、夕張さん、どうしたんですか?」


夕張「五月雨ちゃんにはちょーっと早かったかなあ」アハハ


五月雨「あーっ!またそうやってからかうんですねわたしのこと!」プンスコ


夕張「まーまーまーまぁ。いいじゃない。こういう怖い話もあるってこと」ドウドウ


夕張「よね?」チラ


早霜「ええ」フフフ


五月雨「むー……」ムスー


夕張「ふくれっ面しないの。あんまり本気でやっちゃうとカットになっちゃうでしょ」チョキチョキ


早霜「本当に良かったのでしょうか、このようなお話を…」


夕張「そこはまあリスナーさんの希望だから。他にも…ああこれもそうね。こっちも」ゴソゴソ


五月雨「どれくらい来てたんですか?」チラ


<10通ぐらい


五月雨「え、そんなに」


早霜「それにしても、ラジオ番組の体なのに怪談をしてほしいとは…」クス


夕張「まだ4回目だから。いろいろ試してる時期なの。」


夕張「でもやっぱりこういう感じになっちゃうわよねー…」ノビ


早霜「もう少しダイレクトな話にするべきでしたか?」


夕張「ああ気にしないで。ゴーサインは私が出してるんだし」


夕張「どうしてもアレならカットしちゃうから」


五月雨「あ、お疲れ様ですディレクター!」ケイレイ


夕張「んー苦しゅうない、楽にせい」フンゾリ


<www


夕張「私は結構好きよ、さっきの話。ちょっとゾクっとしちゃった」クス


早霜「それはなにより」


五月雨「…えーっと!というわけで『ゲストさんに3つの質問』でした!次のコーナーの前にCMいれましょう!」


夕張「あ、はぁーいww」クスクス


五月雨「もーっ!」//



♪♪~~ ♪♪~~~♪~♪~♪~♪~






五月雨「さて、ここまで早霜ちゃんとお送りしてまいりましたムアラ鎮守府通信、そろそろ終わりのお時間です」


早霜「あら…」


夕張「結構撮っちゃったかも。何分ぐらい?」


<38分


夕張「ああ、そうでもないのね」


五月雨「ええぇ?毎回収録時間伸びてってますよ?」


夕張「いいのいいの。30分って体だけどそのうち1時間越えとかザラになるって」


五月雨「ちょ、ちゃんとカットできるところはしてくださいよディレクターさん」アワワ


夕張「…ヤバいとこ以外は基本カットいたしません!」バーン


五月雨「これからどうなるんでしょうかこの番組は!w」


<www


早霜「この番組、実際は音声データ配布なんですよね?」


夕張「そうそう。だから1時間だろうが2時間だろうが問題はないのよ」


夕張「一応秘匿情報とか出ないように構成考えて編集もしてるから漏洩は大丈夫」


五月雨「もしなっちゃったらウチの鎮守府大変なことになっちゃいますからね」


夕張「そういう面から考えると自分でもちょっと腑に落ちないところがあるのよね」


五月雨「えっ」


早霜「それは、どのような?」


夕張「なんでさみちゃんレギュラーにしたんだろうって」


五月雨「えええっ!?どっ、どうしてですか!」


<wwwww


五月雨「皆さんも笑わないでくださいー!」


早霜「…フフフww」カタカタ


夕張「早霜ちゃんも笑ってるww」


早霜「すっ、すみません…ww」


五月雨「そっ、いくらなんでもそんな、機密漏洩はしませんって!」ブンブン


五月雨「あたしだって秘書適正艦なんですからね!?初期候補艦の一人なんですからね!!?」


夕張「あはははごめんごめん、大丈夫よもっとどうでもいいとこでやらかすってわかってるから」


早霜「んふっ…ww」クックッ


五月雨「ちょっ…もー、夕張さぁん!」


<www


早霜「フフフ…ごっこ遊びの延長にしては、セキュリティもしっかり考えてらっしゃって」


夕張「最初で言ったけど提督公認になっちゃったからねー。責任者としてはなおさら、いろいろ手打たないといけないの」


夕張「もちろん詳しいことはお口チャックだけど」チー


早霜「ええ、それは」コク


五月雨「うー…リスナーさんがたもデータの管理はキチっとお願いしますねっ」


五月雨「では…こほん。早霜ちゃん。いかがでしたか?今日は」


早霜「ええ。お二人と楽しくお話しできて。素敵な時間を過ごさせていただきました」


早霜「あまり勝手がわからなかったもので、いつもバーでしているように振舞ったつもりなのですが…」


早霜「もっと前に出たほうがよかったでしょうか」


夕張「んーや全然。話しやすかったし、むしろ私たちのほうが喋りすぎちゃったかなぁ」


五月