2020-02-13 16:58:32 更新

概要

秋刀魚とハロウィンの時期なので。今年は鰯もだそうで。秋刀魚×ハロウィンとか、思えばものすごいかけ合わせですよね。

そんなわけで季節ネタ。短編ですので、塩焼き片手にお楽しみください。





…………個人的には鯖が好き。


前書き

提督「そらお前ぇ、10月末に街のいたるところでバカ騒ぎするイベントだろ」

青葉「……??」

提督「あーそっか、戦時中だからやってなかったか…。街でも仮装はしない感じか?」

青葉「仮装?仮装するんですか?」

提督「うん。妙高さんは知ってます?」

妙高「はろうぃん…そんなことより、秋刀魚の時期ですよ」

提督「そうですね。じゃあそういうわけで青葉、また今度な」ヒラヒラ

青葉「ちょーっと待ったぁ!!」グイッ

提督「ぐぇっ」

青葉「知らないことを知らないままにしてジャーナリズム掲げられますか。さぁ語ってもらいますよ解説してもらいますよ。青葉が納得するまで、今から司令官は「はろうぃんナビゲーター」です」

妙高「……青葉さん。秋刀魚の収穫は、国への支援も兼ねた立派な任務なんです。一刻も早い復興のためにも、秋刀魚の漁獲量は多ければ多いほどいいんです。その手を放してください。提督はしばらく秋刀魚づけです」

提督「まるでオレを缶詰に入れるみたいなこと言わないで。ンまぁ青葉、すまんがこれは仕事だ。いかにアホっぽい内容でも、これで救われる方々がいる。ボーナスステージと楽しみこそそれ、気を抜いてかかっていいものではないんだ。許せ青葉、また今度だ」

青葉「青葉は弟じゃないんでおでこに指突き立てられてもうれしくないです。えー、じゃあ仕事終わりでもいいですか?」

提督「つかそれくらい調べりゃいいだろ、スマホあるんだしよ。そんな解説するほどのもんじゃねーよ」

青葉「むーっ、話題にならない」

提督「仕事だって言ってんだろ」

青葉「私と仕事、どっちが大切なの!!」

提督「仕事終わりに癒してくれる君がいい。んじゃ、そゆことで」ノシ

妙高「あまり提督にご迷惑をおかけしないでくださいね」

青葉「かわされた…ちぇーっ」

提督「あ、そうそう。せっかくだし本場の連中に聞けば?」

青葉「本場?」

提督「欧州勢。ぱつきんガールだ」

………

……



青葉「というわけで、はろうぃんって何ですか?」


伊8「……え。なんではっちゃんに?」


青葉「目についたので」


伊8「目につくって…わざわざプールにまで来て?」


青葉「いいですよねこのプール。温度調整も出来るんですか」チャプチャプ


伊8「足湯じゃないんだけど」


青葉「首まで水につかるって、なんだか怖くって…潜水艦はすごいですね」


伊8「ああ、沈んじゃうみたいだもんね…。慣れ、だよ。スキューバとか、やってみる?」


青葉「面白そうですね。でもまた今度で。それで、はろうぃん、って知ってます?」


伊8「うんまぁ…知らないの?」


青葉「無知でお恥ずかしい。単語としては知っていても、本物というかマジもんを見たことがなくって…。ほら、今は戦時中でしょう?」


伊8「それははっちゃんも同じだけど…。なぁに?由来とかそういうのを語ればいいの?」


青葉「ええ。はっちゃんさんなら、欧州のほんまもんを知っているかと」


伊8「……Bismarckさんとかに聞けばいいのに」


青葉「やぁ~、苦手意識ってんじゃないんですけど、ちょっと躊躇しちゃいまして。ほら、「こんなことも知らないの?」ってなりません?」


伊8「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥。それに、仲間に分からないことを聞くのは、恥じゃないよ。嗤ったり馬鹿にしたりするのは、仲間なんかじゃない」


青葉「うう、ごもっとも」


伊8「でもいいよ。はっちゃんでいいなら。はっちゃんも丁度ヒマしてましたし。ハロウィン…古代欧州に住んでいた人たちがやっていたお祭りが語源。秋の収穫を祝ったり、悪い霊を追い払ったり。今じゃ本来の意味は失われて、形骸化した習わしを民間で楽しんでる。っていうのが由来。仮装をするっていうのは、悪い霊を追い払うのに霊が怖がるくらいの恰好をして挑んだのが始まりとされてるね」


青葉「ほうほう。やはり博識ですね」


伊8「開戦前は、夜の大通りをみんなで仮装して練り歩く、みたいなこともされてたみたい。楽しそう」


青葉「仮装ですかぁ…ちょっとやってみたいかもです」


伊8「そしてハロウィンと言えば、「ジャックオランタン」と「トリックオアトリート」。ジャックオランタンは、有名なかぼちゃのお化け。この国じゃあまり見ない、オレンジでおっきなかぼちゃをくりぬいて人の顔にして、内側から照らすランタンだね。折り紙とか他のもので再現されてたりするみたい。でも今は戦争中だし、そういうのは内地だけかも」


青葉「海沿いはそれどころじゃないですし、そもそも民家なんてないですからね」


伊8「もう一つはトリックオアトリート、お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ、だね。仮装をした子供たちが地域の家々を回って、この掛け声とともにお菓子を貰うの。これがメインのイベントだね。だけどこれは本来のハロウィンイベントとは関係なくって、地域の大人と子供たちが交流するために行われた習慣らしいよ」


青葉「へぇ…悪い霊を追い払うのは二の次になっちゃったわけですね」


伊8「お祭りは楽しいほうがいい。これはどこの国でも同じみたいだね。これは余談だけど、悪霊じゃなくって死霊をメインにしたお祭りもあるみたい。北米の一国で行われてる「死者の日」っていうのが代表例だけど、これはお盆みたいなもの。みんなで死者の恰好をすれば、帰ってきた死者の霊も居心地がいいんじゃないか、っていうお祭り」


青葉「死者って聞くとこうゾッとするものがありますが、優しいイベントですね」


伊8「死者を悼み、懐かしむのは生者の特権。大切だったあの人を忘れず、そして前に進むための儀式だね。こういうのって、はっちゃんたち艦娘にはない考えだよね」


青葉「そうですね。司令官に教えられこそそれ、そうでなかったら死はただの「消費」ですからね。これによって人として大切な何かを、学べるかもしれません」


伊8「……?」


青葉「ねね、せっかくですし、このハロウィンイベント、やってみませんか?ちょっと仮装してお菓子を貰う、でもそれによって交流が生まれ仲間の結束が強まるなら、これ以上の事はないでしょう?きっとお願いすれば、司令官も許可くれますよ」


伊8「なるほどね。いいかも。お仕事の合間で良かったら、お手伝いするよ」


青葉「ありがとうございます!じゃあ青葉、ちょっと妙高さんのところに行ってきますね!」テテテ…


伊8「……忙しい人だなぁ」


伊58「あーここにいた。ほら、シフト交代でち。さっさと行くでちよ」


伊8「はぁい」


………


……




青葉「で!そういうわけなんで許可下ろしてもらえませんか!」


妙高「さっきお仕事と言ったでしょう…」


青葉「イベント自体は簡単なもので、秋刀魚漁の間にもできます。気軽にぱぱっとできて、結束が強まるならそれにこしたことはないでしょう?」


妙高「しかし準備は?」


青葉「手すきの人たちから有志を募ってやってみようかと思います。お菓子や、飲み物、衣装なんかは用意したいですから、ちょっと予算を貰えませんか?」


妙高「まだ許可を出していないでしょうに…」


足柄「いーんじゃない?面白そうじゃない」


妙高「はぁ、予算は提督より預かった大切な資金なんですよ?元をたどれば国から与えられた戦争予算であり、さらには国民の皆さまの税金です。そんな簡単に動かせるお金ではないのですよ」


足柄「いっつも飲み会してるくせに」


妙高「限度があるんです。祝勝会や交流会だって、過度に行えば規律が緩む原因になります」


足柄「じゃあこういうのは?お菓子とか衣装は自腹で用意してもらうの。お菓子作り…もとい、「レーション」を独自で作ってはいけないだなんて言われた覚えはないし、「服装」の自由は提督に保障されてるじゃない。これなら理由付けにもなるわよね?」


妙高「そういうことを言っているのでは…!」


足柄「固いのよん。結局、毎年豊漁祭はやるんだし、一緒じゃない。それで士気が高まるってんなら、押しとどめる必要はないんじゃない?」


妙高「「士気が高まる」を理由に、どんちゃん騒ぐのがいるから困っているんですよ」


足柄「じゃあ「そういうの」は禁止すれば?お酒とか。いっつも豊漁祭では飲んでるけど」


妙高「~~ッ!ハァ、分かりました。では青葉さん。イベントを行うのは構いませんが、くれぐれも羽目を外しすぎないように。それと、予算は最低限のみです。仮にも鎮守府の広報を担うのであれば、うまく皆さんを誘導し、まとめ上げてください」


青葉「むっ。なんかバカにしてませんか」


妙高「そう思うのでしたら、その腕を発揮して、私を唸らせてください。いい加減なゴシップ記事を書くだけが能じゃないことを、証明してくださいな」


青葉「いーですよやってやりますよ!ぎゃふんと言わせてやるんだから!」ダッ


バタン…


妙高「はぁ…」


足柄「今の、提督の真似?」


妙高「……何がです?」


足柄「焚き付け。最初っから許可は出そうと思ってたでしょ?」


妙高「似て、ましたか…?」ニヘラ


足柄「まったく。でも提督ならそうしてやる気を出させただろうなーって。思っただけ」


妙高「そう…」


足柄「あなた、提督の事になると表情豊かになるわよね」


妙高「どーも!」プイーッ


足柄「拗ねないの。それで?この件は提督に伝えなくていいの?」


妙高「提督はすでに予想されてました。最初に質問してきた時点で、おそらくこうなるだろうと。判断は私に一任されましたが、実行には前向きでした。なので今やってる会計の書類と共に、事後報告でいいでしょう」


足柄「そ。……って、どの書類?」


妙高「この、書類です」


足柄「書類の束は見えるけど…?」


妙高「ええ、目がいいんですね。これらすべて、会計の書類ですよ。忘れましたか?もう月末ですよ」


足柄「げぇー!やっぱり帰る!」


妙高「もう遅いですよ。観念して、協力なさい」


………


……




青葉「どーもー!青葉です!」ババーン!!


Bismarck「あらPaparazzo」ガコンガコン


Гангут два「どうかしたのか?貴様も鍛錬か?」ガコンガコン


青葉「いえ取材、じゃない、依頼をしに。お二方は、今お暇ですよね?」


Гангут два「そう言ってくれるな。今は勝負中なんだ」ガコンガコン


Bismarck「見ての通り、ベンチプレスの回数競ってるのよ」ガコンガコン


Prinz Eugen「168、169…あれ?169だっけ?170?あれ?」


Bismarck「ちょっと。しっかりしてよ」


Prinz Eugen「これって正直私が数える必要ない気がするんですけれど姉さま。同じタイミングでカウントしてけば、先にダウンした方の負けでいいじゃないですか。171」


Bismarck「嫌よ数字で明確にしておきたいの」ガコン


Prinz Eugen「はあ…」


青葉「お取込み中でしたか。これはお邪魔しました」


Гангут два「はっはっはっ。なに、話があるのならば聞くぞ同志よ。いったい何を依頼したいのだ」ガコン


青葉「はい、Гангут дваさんはハロウィンって、知ってます?」


Гангут два「む?ああ、まぁ単語としては…。実物を見たことはないが、私の月のイベントだからな。知識としては知っているぞ」ガコン


青葉「私の月?」


Гангут два「Октябрьская революция、十月革命だ。さして関係のあることではないが、しかし名を冠していては調べずにはいられなくってな」ガコン


Bismarck「社会常識じゃないの?」ガコン


青葉「少なくともここに知らない非常識が一人」スッ


Bismarck「あらそう。ああ、だから来たのね?」


青葉「非常識を否定してほしかったです。ええ、まぁそんなところです」


Bismarck「貴方が非常識なのは今に始まった話ではないと思うけれど。ふぅん、じゃあ教えてあげるわ。Halloweenっていうのはね…」


Гангут два「おい待て。私が話す流れだっただろう」


Bismarck「いいじゃない別に。減るもんじゃないし」


Prinz Eugen「カウント止まってますけどいですよね?」


Гангут два「いや構う。戦果の横取りなど許さん。戦艦なら誇り高くあるべきだ」


Bismarck「ただの会話じゃないなんの関係があるのよ!」


Гангут два「常在戦場という言葉を知らんのか。常日頃から戦場と心を同じくせよというサムライの言葉だぞ!戦艦の誇りはいつだって忘れていいものではない!」


Bismarck「はぁ!?私が忘れてるって言いたいの!?いい、そもそも貴方の方がいつも不躾にずけずけずけずけと…!!」


Гангут два「うるさい!いいから私がやるんだ!」


Bismarck「むっかつくわね私よ!」


Prinz Eugen「あーもー!いつもの始まった!姉さまГангут дваさん!間をとって私が!」


Гангут два「どうぞどうぞどうぞ」


Bismarck「どうぞどうぞどうぞ」


青葉「……ホントは仲いいでしょお二方」


Bismarck「よくない!」


Гангут два「よくない!」


Prinz Eugen「大変よろしいようで。それで青葉さん、私でよければ説明しますけど…」


青葉「ああいえ!ハロウィンが何かはもう分かりました!それで、お願いというか提案なんですけど、ハロウィン、やってみません?」


Bismarck「Halloweenを?」


青葉「ええ!」


Гангут два「しかし同志、今はサンマの季節だろう?これも結構な催し物ではないか?そんなことをやっている暇があるのか?」


Bismarck「漁業組合だかなんだかとの協定があるんでしょ?獲れ高の少しと引き換えに、ソナーとか装備を使って漁船を誘導、護衛、それから漁を手伝う。おかげで私たちまで駆り出される羽目になってるじゃない」


Гангут два「燃料弾薬を消費してまで行うことかと疑問には思うが…しかしそれで国民が勇気づけられるのであれば、否やはない。なにより任務だしな」


青葉「ごもっともです。青葉もノルマ掛けられました。しかしノルマは一人一回は出撃すること。加えて、燃費がかかる重巡以上は出撃は二十回までと規制がかかってます。だからほら、私たちは忙しいとは言っても暇な方でしょう?」


Prinz Eugen「まぁ…軽巡駆逐と比べれば…ね?」


青葉「そう、そこで、です。彼女たちが準備している間にこちらは鎮守府で準備を進め、豊漁祭の時に同時開催をし、彼女たちを労い共に楽しむ!どうです?」


Bismarck「ええ…とんでもなく合わない気がするけど…」


Гангут два「心意気は汲み取れるものはないか?確かに、毎年豊漁祭で騒ぐわりには、私たちは褒めらるべき仕事量をこなしているとは言い難い」


Bismarck「赤のくせに言うじゃない」


Гангут два「馬鹿者。知らんのか?この国では、労働とは「労く働く」と書くのだ。報酬は労働者にこそ支払われるべきなのだ。いいか、そもそもマルクス主義とh」


Bismarck「あーいいいい!悪かったわ!長くなるからやめて。それで?やってもいいって言いたいわけ?」


Гангут два「うむ。私たちも働いていないというわけではないが、しかし人々に感謝される漁獲量を挙げているのは、間違いなく彼女らだ。私たちも労う側に回るべきだし、また同時に楽しむ権利もある。都合のいいことに、私たち重量級は発育がいい。中身も外身も、このやり方なら公平と言えよう?なぁ?そういうことだろう同志青葉」


青葉「そう!そういうことです!」


Bismarck「言いたいことは分かるけど、時期が重なるからと言って由来も内容も違うお祭りを同時に開催していいものなのかしら。特にHalloweenは内容的に、戦時中に合わないわ。勝利や復興にまったく関係がないじゃない。まったく属性の違うものを混ぜ合わせては、変な混乱を生むだけよ」


青葉「う…まぁ、そう…です、よね…」


Prinz Eugen「あの、姉さま。多分それは、この国でなら可能なんではないでしょうか?」


Bismarck「?」


Prinz Eugen「この国はまったく毛色の異なる文化を受け入れることに躊躇がありません。しかし、それはすぐに他の色に染まってしまうのではなく、取り入れて、独自の文化に変えてしまいます。漢字や、食べ物、宗教だって。何より、ここはあの提督の鎮守府。あの人がいるからこそ、お二方は仲良くできているんじゃないですか?」


Bismarck「ん…」


Гангут два「ふっ…」


Prinz Eugen「こういうことを企画するってことは、すでに提督の許可が下りているんですよね?だったら絶対に大丈夫ですよ」


Bismarck「ん…そう、かしらね」


青葉「変なトコで株が上がってるなぁ司令官」


Prinz Eugen「だから姉さまの心配は杞憂だと思いますよ?」


Гангут два「貴様はいつもいつも細かい!もっと大きく構えないか。ん?」


Bismarck「Halt's Maul。そう、考えすぎかしらね。まぁ、誰よりも早く染まったPrinzが言うなら、それを信じましょうか。それで?具体的には何をするのかしら?」


青葉「はい!ですのでハロウィン形式で豊漁祭を行おうと思うんですけれど、やっぱりほら、じゃ、じゃ…「じゃっくおーたん」と「とりっくおあとりーと」。それと仮装は外せませんよね?お菓子に飲み物は後でプロに相談するとして、装い関係で何か準備をしようと思っているんですけれど、協力してくれませんか」


Гангут два「無論だ。力を貸すのはやぶさかではないが、しかし私は本物を知らないぞ。そもそも祖国にはそういうのを良しとしない風潮まである。あまり知識は出せないぞ。貴様はどうなんだ?」


Bismarck「戦時中だから大々的にやってるわけないし、そもそも私たちは目覚めてからすぐにこっち来たから見たことないわよ。概念的な理解しかないわ」


Prinz Eugen「うーん、最も知ってるのはやっぱり提督だろうなぁ。開戦前の本物を経験してるんだし」


Bismarck「じゃあまずは人員と資料集めからかしらね。資料は文献だけじゃなくっても色々あるでしょ」


青葉「ああ、過去のネットブログとかいいかもしれませんね」


Prinz Eugen「仮装に使う衣装はどうしよう…」


青葉「予算はそんなにないです。最低限だそうで。そこら辺も、やりくりには頭を使う必要がありますね」


Гангут два「自腹を切れと。ふむ、妥当なところだろうな。よろしいっ。同志青葉と日本語に明るいPrinzは資料集め、我ら戦艦は人に声をかける。いかがか?」


Bismarck「えー貴方とぉー?」ジトー


Гангут два「また勝負と洒落こもうではないか。今日の勝負は流れてしまったんだ、これを代わりにしよう」


Bismarck「ったくしょうがないわね。いいわよそれで。ま、私はまだ余裕だったけど」


Гангут два「なに、私もあれしきまだまだ準備体操にしかなっていなかったがな!」


Bismarck「無理しなくてもいいのよ先に音を上げたくせに。今日のは引き分けにしてあげるから」


Гангут два「ふぅむ?貴様には読解力というものが欠如しているようだ。さすがは欧州最大の戦艦殿。見事な「うどの大木」っぷりだな!」


Bismarck「うどの…?なんだか分からないけど喧嘩売ったわね乗ってやろうじゃないの!!」


Гангут два「はっ!言語分野ではまだまだ未成熟だな戦艦様ッ!!」


Bismarck「戦艦は戦うのが本領なのよ!!演習場に来なさいッ!!」


Гангут два「やってやろうじゃないか!!口先だけでないことを祈ろうかッ!!」


ツカツカツカ…


青葉「行っちゃった…」


Prinz Eugen「あーこれいつもの流れだ。じゃあ私たちは調べに行きましょうか」


青葉「な、慣れてますね~」アハハ…


………


……




五十鈴「ほらー!そこ!隊列乱れてるわよーっ」ザザーッ


狭霧「はぁ、はぁ…!は…いッ!」ゼェゼェ


天霧「大丈夫か?あたしが持とうか?」


五十鈴「こーら。それじゃ訓練にならないでしょ」


天霧「そっすか、すいません教官。わりぃ狭霧、頑張ってくれ」


狭霧「大、丈夫…!まだ、いけ、ます…!」プルプル


五十鈴「……。ガンビー、索敵してちょうだい」


Gambier Bay「へっ!?あ、ははははははい!ヤリマスッヤリマスッ!!」アタフタ


五十鈴「……焦らなくていいわ。ゆっくりでいいから確実にやって」


Gambier Bay「はいぃぃぃ…!」アセアセ


パシュン


ブーン…


五十鈴「しっかし暑いわねぇ。私の記憶じゃこの時期はこんな暑さじゃなかったんだけれど」パタパタ


天霧「それってン十年前っすかね…」


五十鈴「いいことを教えてあげるわ。人の身、それも女性に対しては年齢の事はご法度だそうよ?それに、艦歴ならあなたの方が上でしょう?」


天霧「あたしは気にしないんスけどね」


五十鈴「他の人が気にするかもしれないでしょ。女性に対してはうかつに年齢の話題を出さない方がいいわよ」


天霧「はぁい」


五十鈴「いい返事ね」


漁船「」ドッドッドッドッ…


五十鈴「私たちはここまで。行ってらっしゃい。気をつけてね」ノシ


ドッドッドッドッ…


五十鈴「ん。漁船だから返事がないと分かってても、なんか声かけたくなっちゃうのよね。後輩見てる感じがして」ガシャンッ


ドーンッ!


ヒューッ…モクモクモク…


天霧「これ、この先はいいんで?」


五十鈴「あなたブリーフィング内容忘れたの?私はともかく、あなた達はまだ外洋に出るには練度不足でしょ。この先は遠征部隊が護衛するわ。ほら、あそこ」


モクモクモク…


五十鈴「むこうも気付いて煙弾撃ったわね。漁船が漁港を出たら私たち訓練段階の艦娘が湾内を護衛、そして外洋に出たら遠征部隊が護衛の任を引き継ぐの。引き継ぎはこの煙弾。漁船はこの煙弾をたよりに向こうの艦娘まで進む」


天霧「その間の護衛は?」


五十鈴「常駐で湾内警備の別動隊がいるわ。こっちは秋刀魚関係なく常日頃いなきゃいけない部隊だから、任務内容を共有こそすれ、特段動く必要はないの。ほら、あそこの子たち」ノシ


阿賀野「」ノシ


五十鈴「あれはあなた達の先輩。訓練後の軽巡駆逐は、だいたいまずあの湾内警備部隊に配備されるわ。ここ東京湾は絶対とはいけないけれど比較的安全、けれど首都防衛もそうだし艦娘の出撃、帰還を安全に確実に行うためには絶対に安全を維持しなければいけないのよ」


天霧「へぇ、先輩方がスムーズに出れるようお膳立てしなきゃならないんスね」


五十鈴「そうよ。後輩はまず廊下の掃除から始める、どこでも同じよ。低練度で割り当てられるとはいえ、舐めてかかれば後でたっぷり絞られるわよ。とくに秘書艦様にね」


天霧「へぇ…」ニヤッ


五十鈴「神通に稽古つけてもらいたいなら個別に打診なさい。さぁガンビー、索敵はどうかしら」


Gambier Bay「えっと、えっと…!多分大丈夫、です!敵は見えません!」


五十鈴「そう。じゃあ休憩おしまい。狭霧も息整ったでしょ」


狭霧「はいっ!」


五十鈴「じゃあ戻ってもう一回繰り返すわよ。あなた達はいい時期に訓練受けているのよ?船団護衛なんて訓練段階じゃそうそう体験できないんだから」


天霧「うっしゃあ!やるぞーッ!」


………


……




提督「秋刀魚…秋刀魚…」ビチビチッ


春風「あの、司令官様?な、なにを…?」


提督「ああ春風ごきげんよう。いやさなに、歴史の偉人の言葉に従い、秋刀魚を理解しようとしているのだ。敵を知り、己を知れば百戦危うからず、ってな」ビチビチ


神風「それで、どうして床に寝そべって跳ねてるの?あ、もしかして秋刀魚の真似!?」


提督「イグザクトリィ。しかし何故だ、まったく秋刀魚になれた気がしない」


神風「そりゃそうでしょ。というか物真似して分かるものじゃないでしょ」


提督「何を言う。古より大陸に存在する武術には、自然界の動物を真似たものもある。虎、蛇、蟷螂…蟷螂はよく分からんがな。形から真似るというのは、よくある手なんだぞ。猿の研究家には、猿とともに生活するという猛者までいる」


神風「そ、そう…」


春風「それで、なにか分かったんですか?」


提督「うーん、お前らの袴が長すぎて下着が見れない」


神風「ッ///へ、変態!」メリッ


提督「ははははは!顔踏んでる踏んでる」


神風「見ないで変態ッ!これ、さっきの獲れ高!!確認しといてッ」バシッ


バタンッ


春風「か、神風お姉様…」


提督「むぅ。あいつはなかなかガードが高くていらっしゃる。好感が持てるな」ムクリ


春風「まったく、奇行に走っても司令官様は司令官様ですのに。あんな無礼な…」


提督「奇行って言っちゃってる。あ、それ。書類見せて」


春風「はい」スッ


提督「うーん、まぁぼちぼちってところか。例年だとそろそろ秋刀魚の群れが逃げる。次で海域を変えるか。この時期は長門がいないからなぁ、昔みたいに仕事が山積みだ」


春風「長門さんはどこに?」


提督「戦艦ども引き連れて収穫を下ろしてる。一応、積み荷に深海棲艦が紛れていないか検査をな。それとあいつら、艤装なしでも比喩抜きにゴリラだからな。重いぶん海にゃそんなに出してやれんのだが、しかしだからといって運動不足にするのも勿体ない。ゆえに、漁港でクレーンやフォークリフトの代わりになってもらってる」


春風「大変そうですね」


提督「いい筋トレになるとか言って武蔵とか喜んでるぞ。ま、戦争以外でその腕が誰かの役に立つんだ、悪い気はしなかろうて」


………


……




武蔵「そぉらっ!!次いくぞっ!!」キラキラ


長門「もたもたするなよ!!戦艦の名を冠する私たちが、名もなきクレーンなぞに劣ってたまるか!!」ポイッポイッ


陸奥「張り切ってるわねぇ」ポイッ


大和「ふふっ武蔵ったら」ポイッ


Rome「さすがgiapponese…働き方がおかしい…」ポイッ…


Warspite「お、重い…」グギギ…


Iowa「You should put on more muscle!AHAHA!」ポイッポイッ


Warspite「It's! Not! Efficiently!」ポイッ!


クレーン「」ウイーン…


………


……




青葉「ふーむ。なるほど、これがジャックオランタン…こんなかぼちゃ、ここにはありませんね」


Prinz Eugen「種類が違うのかもね。わざわざこんな大きいの、わざわざタンカーに積んでこないだろうし…うちにあるかぼちゃで代用できないかな」


青葉「これは間宮さん案件でしょう。あとでお菓子と共に打診しましょう。仮装…魔女、お化け、怪物など…あ、なんかのキャラのコスプレも珍しくないそうですね」


Prinz Eugen「わ。凄い人だかり…へー、楽しそう。これ、自分で作ったのかな?」


青葉「情報によると、雑貨量販店でも売っていたそうですよ。でも今は生産中止でしょうね。Armor Zoneではすでに販売中止、中古品ですら自粛してますね」


Prinz Eugen「私たちが手で作れそうなの…やっぱり、ペーパークラフトとかかなぁ。でもそれだけじゃーなー」


青葉「どうにかして仮装はしたいですよねー。これがなくっちゃあハロウィンとは言い難いでしょうし…」


Prinz Eugen「これ、手作りしても間に合わないよねぇ」


青葉「なんとか実現してみましょう。あっはは!楽しくなってきました!」


Prinz Eugen「楽しい?」


青葉「ええ!苦難に直面するのはいつものことでしょう?だって、私たちは人類存亡の危機という苦難を乗り越えるために生まれてきたんですから!うっふふふ、こうやって難題にぶち当たると、「いきてるなぁ」って、実感が湧きません?」


Prinz Eugen「とんでもなく前向きだなぁ。……でも、うん、そうかも。「姫級討伐」こそ、艦娘の誉れだもんね!」


青葉「っしゃあ、じゃあまずは出来ることをやってみますか!取材はいつだって体当たり!さ、行きますよ!」


Prinz Eugen「うんっ!で、最初はどこに?」


青葉「まずは我らが二大マム、鳳翔さんと間宮さんのところです。まずはそれらしいお菓子があれば、なんとか繕えるでしょう」


テクテクテク…


青葉「たのもォーっ!!」ガララッ


鳳翔「は、はい…?まだお店はやっていませんよ…?」


青葉「よかった、いらっしゃいました。やー鳳翔さん、少しお時間いただいてもいいですか?」


鳳翔「……??ええ、大丈夫ですよ」


青葉「実は、折り入って相談がありまして。鳳翔さんはもちろん、この時期の秋刀魚に関する任務についてはご存じですよね?」


鳳翔「ええ、もちろん。やっぱりみなさん動き回りますから、お腹が空いちゃうみたいで。運動の秋、なんですかね?」


青葉「ちょっと違う気もしますが、まぁほぼほぼ安全に戦果を山ほど取れるって意味では、スポーツじみたところはありますよね。では、このシーズンに対する意気込みを一つ」


鳳翔「皆さんがおいしく秋刀魚を食べれるように、頑張ります♪」


青葉「メモメモ…っと。はい、ありがとうございます」


Prinz Eugen「え?取材しに来たの?」


青葉「おっと職業病。いえ鳳翔さん、話というのはこのシーズンの最後、豊漁祭についてなんですよ」


鳳翔「豊漁祭?」


青葉「はい。毎年やっている海の幸尽くしのこの豊漁祭、今年はちょっと「ひねり」を加えたいと思いまして。10月末と言えば、鳳翔さん、ハロウィンという世界的なイベントをご存じですか?欧州のほうが発祥のお祭りなんですけれど」


鳳翔「はろうぃん…いいえごめんなさい、知りませんでした。そのようなお祭りが?」


青葉「ええ、あるんです。目で見たほうが早いですよね。ちょっと失礼…このスマホの画像があるですけれど…ああ、あったあった。これです」スッ


鳳翔「わ、綺麗ですね…夜に行われているんですか?」


青葉「別段夜じゃなくってもいいらしいんですが、見た通りお化けが主役のちょっと変わったお祭りなので、やはり夜がメインになるみたいです。開戦前の十数年前まで、この国でも盛んにおこなわれていたそうなんですけれど、今や忘れられて久しい。私たちが活動を始めて数年がたちますが、青葉も最近になってそのワードを知ったんです。それで鳳翔さん、相談というのはこれなんです。ちょっと、今年の豊漁祭はこれ風にやってみませんか?」


鳳翔「ええ!?こ、これを?で、でも私、なんの知識もありませんよ?」


青葉「大丈夫、うちで経験者といえば提督しかいません。欧州勢…まだ独露にしか聞いてませんが、現地人でも経験者はいませんでした。まったくの手探り状態ですが、みんなで力を合わせて形にしてみようと、そういう企画です」


鳳翔「へぇ…それで、どうして私を…あ、もしかしてお料理ですか?」


青葉「ザッツライト。ハロウィンにはかぼちゃがつきもの。しかして、鳳翔さんというわけです」


鳳翔「お力になれるのでしたら勿論なんですが…具体的にはどういった?」


青葉「うーん、お菓子系のを依頼したいんですが……うん、こんなの」スッ


鳳翔「できなくはないですが…間宮さんの方が得意そうですね」


Prinz Eugen「やっぱり」


青葉「それと、豊漁祭ということなので、なんか秋刀魚に合いそうなのを頼めますか?」


鳳翔「秋刀魚にあう…?それは、普通のお料理ということで?」


青葉「ですです。パーティーといいますか宴会でですね、みんなで食べれそうなものを。いつもやってることに一品加えてそれっぽくしてほしいんです」


鳳翔「それっぽい…簡単なようで難易度が高いですね、それ。うーん…」


青葉「あまり肩肘張って考えないで大丈夫です。まだホントに手当たり次第に当たってるだけなので」


鳳翔「豊漁祭までは少しお時間ありますよね。少しお時間をいただいてもいいですか?色々試してみます」


青葉「ありがとうございます!」


Prinz Eugen「ありがとうございます!」


鳳翔「間宮さんにも当たるのでしたら、今は食堂にいますよ」


青葉「おお、どうもどうも。じゃ、行ってきますね!」


Prinz Eugen「ではでは~!」ガララッ


タタタッ…


鳳翔「……聞こえていましたよね?」


赤城「はいっ!?」ガタッ


鳳翔「たったいま裏口から入って銀蠅しようとしたことは見逃してあげます。その羊羹を置いて、空母のみなさんにも話を広めなさい」


赤城「は、はい~っ!行ってきます!」ダッ


鳳翔「はぁ。まったくあの子は…」


………


……




Гангут два「やあ同志金剛。調子はどうだ?」ポンッ


金剛「デース?ああ、ガンちゃんデスカ。見ての通り、疲労困憊デース」グデー


Гангут два「サンマ帰りか。お疲れさまだ」


金剛「長門のあれに付き合いたくない一心で海に出てましたが、さすがに疲れたデース」


Гангут два「好き嫌いが分かれるからな、あれは。普段から海に出る高速戦艦は、行かなくてもいいのか」


金剛「強制じゃないデース。あくまで運動不足の解消、ダイエットにはいいかもデスが…なんだか艦娘って何だったか忘れそうになるから出来ればパスしたいところネ」


Гангут два「やはり体は、海を求めるか。では金剛よ、今は暇とみていいんだな?」


金剛「休息を暇と捉えるなら、ええ暇デスヨ」


Гангут два「体を動かす案件ではない。少し話がしたくてな。金剛は、宴会というものは好きか?みなで騒ぐようなものだ」


金剛「……??好きデスヨ?楽しいのは大好きデース」


Гангут два「そうか、それはいい。実は、少し貴様に提案したいことがあってな。金剛はハロウィンというものを知っているか?」


金剛「ハロウィン…ああ、霧島の本に書かれてましたっけ。かぼちゃを投げ合って人にぶつけるイタリアのお祭りデスヨネ」


Гангут два「そんな祭りは知らんぞ!?なにかを間違えていないか……?あれだ、仮装してお菓子を貰うあれだ」


金剛「デース?そうでしたっけ。それで、それがどうかしたんデスカ?」


Гангут два「このサンマの季節の最後には、豊漁祭をするだろう?ちょうど時期的にハロウィンと被る。ついでに一緒にやってみないか、と同志青葉が企画していてな。漁業支援で私たち以上に重労働の軽巡駆逐たちを労いつつ、私たちも楽しもうというものだ」


金剛「おお。いいデスネ!」


Гангут два「今はとにかく人手が欲しい。賛同してくれたなら、伝手を当たってみてほしいのだが」


金剛「オフコース!金剛型はもちろん、他の戦艦たちもきっと賛同してくれるネ!」


Гангут два「素晴らしい。では、同志金剛、頼むぞ」


金剛「デース!」


………


……




コンコン


Bismarck「Bismarckよ。ちょっと話があるの」


筑摩「はい…?どうかしましたか?」ガチャ


Bismarck「こんにちは。利根はいるかしら?」


筑摩「利根姉さん?あいにく今は漁に出ていますよ。なにか、言伝ですか?」


Bismarck「コトヅテ…?相談をしに来たんだけれど」


筑摩「そうですか…。もう少しで戻るとは思いますが、中でお待ちになりますか?」


Bismarck「あらそう、じゃあお邪魔しようかしら」


筑摩「どうぞ。ゆっくりしていってください♪」


Bismarck「へぇ…同じApartment だから同じ構造だけど…ずいぶんJapanなのね。畳があるわ」


筑摩「利根姉さんの趣向で前の寮の畳を持ち込んだんです。やはり、い草…畳に使われている植物なんですが、その匂いがいいと」


Bismarck「ふぅん。ああ、それでJapanの感じがするのね。匂いってすごいわね」


筑摩「五感の新鮮さは、今でもぬぐえるものではありませんね。驚きの連続と言いますか、改めて気付かされることが多いです。Bismarckさんの所はやはり、向こうの家具などを?」


Bismarck「持ち込めたらよかったんだけどね。こっちに来る時には最低限しか持ってこれなかったし、そもそも私の家具なんてなかったし。それっぽくはしてるんだけど、あまりこだわりはないわね」


筑摩「はやく家具類なども、輸送できるようになるといいですね。お茶とコーヒーがありますが、コーヒーにしますか?」


Bismarck「せっかくだからGrüntee…リョクチャがいいわ。雰囲気を楽しみたいの」


筑摩「ではお茶請けは和菓子にしましょう。普通の羊羹で申し訳ありませんが」


Bismarck「構わないわ。おしかけちゃったのはこっちだし」


筑摩「どうぞ、粗品ですが」コト


Bismarck「Danke。……セイザって、するべきかしら」


筑摩「いえ、どうぞ楽にしてください。すいません、座椅子は置いていなくて…」


Bismarck「ザイス?」


筑摩「座布団に背もたれのついた物です。こういった場でくつろぐには最適なんです」


Bismarck「ふぅん。知らなかったわ。昔からあるの?」


筑摩「さぁ…。家具については疎くて。でもおそらくですが、先の大戦以降だと思いますよ」


Bismarck「時代は進むものね」


筑摩「そうですね」


Bismarck「……」


筑摩「……」


Bismarck「……」ゴクゴク


筑摩「……」


Bismarck「そういえば、この前Romaと話したんだけど、SpaghettiとSoba…Spaghettiはスパゲティーでいいんだっけ?あの麺類」


筑摩「ええ」


Bismarck「そう、それとソバの食べ方の違いについて話し合ったんだけど、スパゲティーは啜らないことがいいとされるけど、ソバは啜るのが「ツー」だとかなんだとか。この「ツー」っていうのがよく分からなくってね?あれは美徳とか美意識とか、そういう認識でいいのかしら」


筑摩「いいと思いますよ。慣れている、精通している、提督流でしたら「小洒落ている」、とも言うのでしょうか?」


Bismarck「「オモムキブカイ」とか「マジマンジ」とか、日本語ってたまに意味が曖昧なのがあるわよね…。それで、あるあるっていえばあるあるなんだけど、この「ツー」の概念を理解しがたくてね?いったい何をどう考えて啜ることを良しとしているのかしら。撥ねるじゃない汚いじゃない」


筑摩「流石に服や他の方にまで飛ばして啜るのはいかがかと思いますが、この場合の「啜る」とは、香りも楽しむというのが通説ですね。香りを鼻からではなく、喉の奥から感じると言えばいいのでしょうか。喉越しと共に楽しむと言えば……ええと、上手く言葉にできません…」


Bismarck「喉の奥、ねぇ。Romaは引き合いにWeinを出したけれど、例えばリョクチャはどうなのかしら?これもそうなの?」


筑摩「お茶は高温ですから流石に火傷しますよ。でも、紅茶と同じで香りを楽しむものではありますよね。あとは、器とかでしょうか」


Bismarck「器…うーん、私からすると、ただの土器にしか見えないわ…。Teetasseとか、そう言うのだったらちょっとは分かるんだけど…」チラッ


筑摩「文化の違いですよね。……正直なところ、私もこの器の何がいいのか…。利根姉さんや提督は、この器をとても高く評価していましたが…」


Bismarck「やっぱりJapanは独特な文化持ってるわよねぇ。案外、これも何とかなっちゃいそうね」


筑摩「これ…?」


Bismarck「ええ、ここに来た理由なんだけど、青葉がね…」


ガチャ


利根「筑摩よ戻ったぞ。…む?誰か来ておるのか」


Bismarck「私よBismarckよ」


利根「おおビス子か。珍しいのぅ我が家を訪ねてくるとは」


Bismarck「ここが一番確実かと思ってね。貴方に用があって来たのよ?」


利根「む。そうか。それはすまんの。待たせてしまったか」


Bismarck「気にしないで。楽しませてもらってるわ。ところでこれ、これの何がいいの?」


利根「茶器か?ああ、見方を知らねば楽しめるものでもないしの。どこが「ツボ」かは人によるが、見所はいくつかあっての。全体的な造形、部分的な意匠、貫入というヒビ割れ、そしてやはり肌。入門者に分かりやすいのはこの肌かの。ようは茶器の表面なんじゃが、素材、釉薬によって千差万別。同じ製法でもどれ一つとして同じものが出来上がらない一期一会もまた、奥行きが深い。我輩もいずれはこの手で作ってみたいとは思っておるんじゃが、いやはやなかなか時間がなくての。というのも…」クドクドクド…


Bismarck「半分以上聞きとれないわ…。貴方あれね、そういうところはAdmiralに似てるのね」


利根「あやつの下賤な趣味と一緒にするでない。彼奴、何をどう見ればこれが煽情的に見えるのか…。女性的な曲線であることは認めるが、この落ち着きと安定感、むしろ包み込むような母性があろう?…そもそも、そういう目線で見るものではないしの」


Bismarck「分かんないわよ」


利根「そうか…。ま、興味を持ってくれただけでも嬉しいの。ああ、それはやろう。近づきの証にの。筑摩よ、そこな桐箱に入れるのじゃ」


Bismarck「Danke。部屋でゆっくり眺めるわ」


利根「して?用とは何じゃ。セクハラのクレームは妙高か憲兵じゃぞ」


Bismarck「いいことを聞いたわ。覚えておくと役立ちそうね。でも違うわ。実は、青葉が提案したんだけど…」


ハロウィン?


エエソウヨ


??「……」


シュンッ


………


……




青葉「ふう、やはり間宮さんでもオレンジのお化けかぼちゃは持っていませんでしたか…。パンプキンパイで上手いことやってみると言ってましたが…うーん、やっぱり本物が一つくらい欲しいところです…」


Prinz Eugen「それと仮装かぁ…。こっちも伝手なし。予算に限りもあるし、手作りをしても間に合わない…」


青葉「さて、どうしたもんでしょう。やるなら本気、ちゃちなレベルで終わらせたくないです」


Prinz Eugen「一回戻って、情報共有しよう?姉さまも何か情報を得られたかもしれないし」


青葉「そうですね。向こうでも何か有益な情報を得られたかもしれません」


Prinz Eugen「スマホで声かけてみるね」カコカコ


青葉「あ。はっちゃんさんも呼ぼっと」カコカコ


テクテクテク…


青葉「あ、いたいた…ってあれ。なんだかけっこういません?」


比叡「あ、来た来た」ノシ


愛宕「青葉ちゃーん、聞いたわよー?面白そうな事やってるってー」ノシ


山城「なんで私が……帰ってきたばっかりだったのに……」ブツブツ


伊勢「いーじゃん別に。時雨ちゃん満潮ちゃんたちを喜ばせたいんでしょ?」


山城「それはそうだけど…シャワーくらい浴びたかったわ……」


最上「山城さん!ボクも頑張るから、一緒に頑張ろう?」


Richelieu「なんだか楽しそうなお誘いを受けたんだけれど」


Pola「お酒が飲めると聞いて!」


Zara「お願いだからそういう言葉から流暢にならないで…!あと違う全然違う…!」


伊401「はっちゃん今出ちゃってるから代わりに来たよー☆」


筑摩「随分と集まりましたね」


金剛「まずはこんなもんデスカネ」


Bismarck「さ、手ごろなのをかき集めてきたわよ」


Гангут два「とりあえずは、今すぐに動ける連中だ。今で払っている戦艦にも声はかけてあるぞ」


青葉「おお、大釣果のようですね!この調子だと、人手には困らなさそうですね」


彩雲「」ブーン…


青葉「およ?」


瑞鶴「見ーっけ。鳳翔さんから聞いたよー。何かやるんでしょ?」


翔鶴「空母会より、増援に参りました」


金剛「助かりマース!」


Bismarck「で、そっちは?何か進展あったかしら」


青葉「鳳翔さんと間宮さんに掛け合ってきました。お菓子とお料理に関してはなんとかなりそうですが…問題が二つ。ジャックオランタンを作るおっきなかぼちゃが無いこと、仮装の衣装がお店にもなさそうなことです」


Prinz Eugen「衣装は手作りをしようにも技術も時間もありません。あと、本物のハロウィンを知っている人が、おそらく提督しかいません」


比叡「ひぇー。いきなり難題ですか」


金剛「衣装…艦娘用の衣装を作ってるところに依頼ってダメなんデスカ?」


山城「どうやって依頼するのよ。お祭りするための衣装作ってくださいって?反対されるわよ」


青葉「そもそも予算そんなにないです。料理の材料費で全部吹っ飛ぶレベルです」


山城「ほぼ詰みじゃない…」


翔鶴「かぼちゃって、栽培してないんでしょうか…?」


青葉「私たちが知ってるかぼちゃとはちょっと違うらしくて…。飾りかぼちゃ、っていうんでしたっけ?食用とはまた違う種類なので、ハロウィンが行われなくなって久しい今では、狭い土地でわざわざ手間暇かけて育ててる農家もないでしょうし…。うーん…」


山城「もう普通のかぼちゃでいいんじゃない?」


青葉「ううー本物…ビッグサイズ…」


愛宕「なんでも大きければいいってもんじゃないらしいわよぉ~?形、硬さ、持久力、それと…気持ち。大きすぎたって困るだけよ」


金剛「なんの話をしてるんデスカこのド痴女」


愛宕「かぼちゃでしょ?やっぱりいい形ののがいいし、ふにゃふにゃじゃ物足りないし、ある程度長い間日持ちすること、それから精一杯頑張ること。まずはそういったところをカバーすれば、サイズが小さくっても受け入れてくれるわよ」テブリミブリ


金剛「そのいかがわしい手ぶり身振りを今すぐやめるデース。別の意味に聞こえるデース」


愛宕「だから小さいからって卑屈にならないで。相手を満足させる方法は他にもあるわ☆」


金剛「黙れ」


青葉「うーんそういうもんですか…。じゃあ最悪、普通のかぼちゃも視野に入れますか」


伊勢「仮装の方は、まずは手持ちの服でどうにかしてみようよ。一から作る時間がなくっても、改造する時間くらいはないかな?」


Richelieu「Je suis d’accord。Richelieuもその意見に同意するわ。工夫することは大切よね」


山城「……技術はあるの?」


瑞鶴「みんな縫い付けくらいの技術はあるでしょ。アップリケとか出来るんじゃない?」


最上「誰か縫物とかが得意な人とかっていないのかな?簡単なレクチャーでも受ければいいんじゃない?」


青葉「真っ先に思いつくのが鳳翔さん」


瑞鶴「この鳳翔さんの万能感。でもお料理に充てたんでしょ?だったら別の誰かにしようよ。さすがに忙しいって」


Bismarck「誰か人形とか作る人いないのかしら」


比叡「みんな、女性的なスキルを磨きたくなる理由のほとんどが司令だからなぁ。やっぱりお料理関係になっちゃうよね」


伊勢「それを比叡が言ってもなぁ…」


比叡「む!なんででですか!」


Гангут два「では料理担当から鳳翔さんを外すのはどうだろうか。多少料理が出来るのは数いるのだから、多才な彼女は最も人手不足なところに投入すんだ」


Bismarck「あら、貴方にしては建設的な意見ね」


Гангут два「貴様は私をなんだと思っているのだ…」


山城「私もその案に賛成。衣装組と料理組に分けるんだったら、鳳翔さんは衣装組にするべきよ」


比叡「間宮さんや伊良湖さんも参加するんですよね?だったら大丈夫じゃないでしょうか」


青葉「大衆料理はどうしましょう」


瑞鶴「おつまみ系だったら隼鷹とかできるし、瑞穂さんもそこそこ。ハロウィンの料理ってなんだか分からないけど、秋刀魚関係の料理だったら、今までの豊漁祭で手伝ってた子たちを充てればいいかも。あとカレーあるし」


青葉「ハロウィン豊漁祭でカレーとかもはや意味不明ですけどね」


伊401「大鯨さんとかも出来ると思うよ!」


Prinz Eugen「異文化交流会の時みたいに私たちの祖国の料理も出せば、彩り豊かになりますよね」


Pola「なぁにそれ」


Zara「あなたが来る前にやった大きな宴会よ」


Pola「お酒!清酒!大吟醸!」


Zara「すぐお酒に直結するのやめて…」


Bismarck「とりあえずざっくり人員配置しない?それぞれの分野で出来ることやらないと、早くしないとあっという間よ?」


青葉「じゃあ分かれますか。料理、衣装、装飾とこんな感じでいいですかね?司会進行や出し物は装飾に入れる感じで。立候補でいいですよ」


Richelieu「Richelieuは衣装がいいわ」


瑞鶴「衣装かなぁ。人手たりなさそうだし」


Prinz Eugen「装飾!やってみたい!」


Pola「お酒!料理!」


Zara「絶対にダメッ!ごめんなさい、ZaraとPolaは料理以外で!」


ジャーエットネー…


ワタシリョウリ!


ヒエイハリョウリスンナ!


??「……」


シュンッ


………


……




サンマイッパイトレタネー


ソロソロオシマイカー


時雨「じゃあ提督代理。また行ってくるね」


長門「ああ。残りわずかだが、気を抜かないようにな」


時雨「うん。任せてよ」


ガチャ…バタン


青葉「……まずいッ!」


陸奥「…ちょっと。そろそろ漁終わっちゃうわよ」


青葉「知ってますよッ!」


長門「企画から一週間…。時が経つのは速いものだな」


陸奥「で、どこまでいったのよ」


青葉「……料理に関しては滞りなく。お菓子も含めて、出すにふさわしいレベルにまで高まっていました。例年の料理に加えて出せば、豊漁祭としても盛り上がるでしょう。装飾も…まぁ肝心のジャックオランタン以外はいいと言えるでしょう。妥協策であるミニランタンは試作に入っていますが、やはりコレジャナイ感がぬぐえません。それ以外はおおむね順調、あとは当日に飾り付ければ、モノになるでしょう。しかし…」


長門「仮装か」


青葉「ええ。こちらが遅々として進まなくて。そもそも私たち艦娘は共通して私服の数が少ないので素材が少ないうえに、裁縫の技術もなし。縫い付けくらいは出来るようにはなったんですが、しかしやはり素材が足りない。「ハロウィンっぽい素材」がなければ、アップリケだろうが効果が薄いんです」


長門「もう最後はかぼちゃでも頭に乗せろ」


青葉「それでハロウィンを言い張れるならそうしますねハイ」


陸奥「茶化さないの。それで、代案はないのかしら?最悪仮装は出来なくっても、場の雰囲気さえ整えれば、みんな受け入れてくれると思うわよ?」


長門「夏祭りとか秋祭りの恰好も許可したらどうだ」


青葉「それはまぁ、オッケーの範囲にはしようとは思ってるんですけど…とくに海外の皆さんは、こっちの文化に興味津々ですし。最終的なチョイスはご本人たちにお任せしようとは思っているんです。もー最後は別にジャージでも。でもやっぱり欲しいじゃないですか、仮装衣装」


陸奥「そうね、気持ちは分かるわ」


長門「だがまずは期限だろう?衣装云々は、来年への課題として持ち越すことも視野に入れておくべきではないか?」


青葉「そ…ッ!それは……そう……です、けど…」


陸奥「あまり追い詰めちゃ可哀想よ。それって、数日の内には解決しそうな問題なの?」


青葉「いえ…このままだと間に合いません」


陸奥「予算を増やしてもらうっていうのは?」


青葉「や。それは……妙高さんに見得きった手前、泣きつくわけにはいかないですよ」


陸奥「そう…」


長門「まぁ…なんだ、衣装以外でカバーすればいいじゃないか。初の試みとは、大体こういうものだろう?」


青葉「……っ。出来うる限り、頑張ります…」


トボトボ…


バタン


陸奥「……大丈夫かしら」


長門「やらせてやるしかないだろ。きっと提督も、分かっていて放置しているはずだ。だったら提督代理たるこの長門が、能動的に動くのも変な話だ」


陸奥「うーん、なんとか出来ないかしら…」


長門「出撃回数を減らして、延期にするわけにもいかないしな」


トボトボ…


衣笠「おっつかれさん」


青葉「ああ、ガサ…。どーも」


衣笠「なぁにーぃ?元気なさげね」


青葉「当たり前ですよ。あと数日ですよ?衣装に関しては遅くても前日には鎮守府全体に渡しておかなきゃですのに…。まだこれといった完成形にたどり着いていません」


衣笠「私は好きだけどね、あのシーツに穴開けて被るベタなお化け」


青葉「あれが最高のクオリティって時点でお察しですよ」


衣笠「お面案は間に合いそうじゃない?画用紙に絵を描いて切り抜く。秋雲ちゃんほどの画力も必要ないし、手間もコストも一番かからない」


青葉「豆まきですかい」


衣笠「高い理想を持つことも大事だけど、及第点がどこかっていうのも見極めようよ?もう料理も装飾も企画も形にはなってるんだし、異色のコラボレーションの初回としては、悪くない出来なんじゃない?誰も本物を知らないで手探りで始めたにしては、大躍進じゃない」


青葉「私はッ!……私は、もっとこう………いい感じに、したかったんですよ。なあなあで誤魔化すB級じゃなくって、ちゃんと一つのイベントになって、堂々と胸を張って「やりきった!」って言えるような、そんなやつに…」ギリッ…


衣笠「……そっか」


青葉「でも、まだあきらめません。何とかしてしましょう。もう他分野をさっさと完成させて、残り時間を全て衣装に回しましょう」


衣笠「ん。んじゃ、出来うる限りのことをしましょうか」


スタスタスタ…


??「……」


球磨「……クマ?」ピタッ


荒潮「あらぁ?どうしたのかしら?」


漣「忘れ物でもしたんすかパイセン」


菊月「お前じゃないんだからするはずないだろう…」ハァ


綾波「そういえば、すれ違った青葉さん、なんだか元気がなさそうでしたね…。何かあったのでしょうか…?」


如月「またこってり絞られたんじゃないかしらぁ」


球磨「……ああ、そゆことか」


菊月「隊長?」


球磨「……や。何でもない。ちょっと考え事クマ。さ、残りもわずかクマ。ちゃっちゃとやっちまおう」


漣「やーボノと競争してんすよー。遠征部隊には負けられないーとか勝負吹っ掛けられましてね?それで言ってやったんすよ…」


菊月「さっそく脇道にそれるな馬鹿者め。あとその話は聞いた」


スタスタスタ…


??「……」


ストンッ


川内(うー、バレたか。ついでに察せられた…。こりゃ完全敗北だなぁ)


キョロキョロ


川内「他に感無し。ま、潮時だし報告しよっと」


シュンッ


………


……




川内「ばばーんと登場!みんな大好き川内ちゃんだよー!」ババーン!!


妙高「……ノックをしてください」ガサッ


川内「なんでー?こんな倉庫で提督とエロいことでもしてたの?だったら混ざりたいんだけど」


神通「重要書類の整理です。ぶち殺されたくなかったら黙って出ていってください」イラッ


妙高「不用心に扉を開ける癖、直したほうがいいですよ」


川内「ちゃんと索敵してからやってるもん。で?提督どこ?」


神通「話を聞いていましたか出ていけと言ったんですよ?」


提督「提督は、いつも君のそばにいるよ」ササヤキ


川内「ッ!?」ビクッ


提督「お前の索敵もまだまだだよなー。「人が何人いる」ってのは分かっても、「どこに誰がいる」までは分かってないだろ」


川内「そんな潜水艦みたいなことできないよ」


提督「普段から夜戦夜戦言ってるんだからさー、もちっとそっち方面のスキル磨こう?そろそろ影分身はできるようになった?」


川内「私忍者でもニンジャでもないんだけど」


提督「やっぱりこのご時世、分身の術くらいはできないと、履歴書には書けないよなぁ」


川内「聞いちゃいねぇ」


神通「……姉さん」イライラ


提督「あーわりぃ神通。オレが頼んだんだ」


神通「…はい」


提督「じゃあ川内、聞こうか」


川内「あーい」


カンムスセツメイチュウ…


川内「って、感じだね」


提督「ははは。なかなか面白そうなことになってるじゃない」


川内「いいの?提督のテコ入れ無しでどんどん話が進んでるけど。お祭りとはいえ、鎮守府のお金使うんでしょ?」


提督「人の金使って夜戦に繰り出してる奴が言うことか」


川内「ちゃ、ちゃんと戦果は持ち帰ってるじゃん!」


提督「せっかくあいつらが自発的に動いてんだ、やらせてやろうや。財布の紐は妙高さんが握ってる、そうそう派手にはなるまい。ならオレは立って木から見るだけだ。独創性を育む機会に水を差す真似はせんよ」


川内「そか。じゃあじゃあ、私はこれでお役御免?」ウキウキ


提督「ン。いいよ」


川内「よっしゃ!じゃあそれ!はやくそれちょーだい!」


提督「……ったく、ジャンキーが」ポイッ


川内「やったー!夜戦ブリーフィングファイル!」


提督「一箇所だぞ」


川内「っとねぇ…どこにしよっかなぁ!」ウキウキ


妙高「私の目の前で不正な取引をしないでください」


パラパラパラ…


川内「〜〜♪」ウキウキ


パラパラ…


川内「〜、〜…」


パラ…


川内「……提督。おっきなかぼちゃと衣装、ないんだって」パタン


提督「お?……ああ、ハロウィン?うん、さっき言ってたね」


川内「私も…さ、なんか出来ないかな」


提督「あいつらの定義だと、お前らを労うものらしいが?」


川内「そんなの、関係ないよ。仲間が困ってるのを知ってるのに見過ごすなんて、そんなの本当の仲間じゃない。そんなの、私じゃない」


提督「……それで?」


川内「提督。どーせ何か考えてるでしょ。それ、私にやらせてよ」


提督「ふふっ、ふふふふふ。いやぁ川内、お前も成長したな。や、それとも元々か。ただの夜戦バカって評価を改めるよ。かぼちゃに関してはなんともだが、衣装なら心当たりがある。ほれ、これだ」スッ


川内「名刺…?」


提督「学友の一人がな、大手雑貨店に勤めてるんだが…会社は戦争が始まって以来季節ごとのイベントが出来なくなって、コスプレ用品やグッズが山ほど在庫で残っちまってんだと。正月、節句、クリスマス…そしてハロウィン。生産こそ中止してるものの、工場には既製品が余り余っている。工場を取り潰そうにも、そこは国より撤退を命じられた海沿いの工場地帯。一般人は立ち入れん。売ろうにも売れず、でも土地代だけはしっかりとかかって困ってる…とかなんとか。忘年会で言ってたっけ」


川内「お、おお?」


提督「この際だ、話をつければコスプレ用品含めて工場ごと二束三文で売ってくれよう。軍事徴収だと言えばNoはない。川内、お前はそこに行って、工場と衣装の安否を確かめてくる。交渉云々はオレがしよう。今日の「夜戦」は「沿岸部危険地帯の強行偵察」で、どうだ?」ニヤッ


川内「うんっ…!提督大好きッ!」


提督「よし、準備してこい!」


川内「~♪」


タタタッ


神通「……まったく、扉も閉められないんですかアレは。提督、姉が失礼しました」バタン


提督「ああいうところ、あいつの魅力だよな」


妙高「……良かったのですか?」


提督「はい?」


妙高「その「コスプレ工場」…大本営から管理を押し付けられそうな、「いらない土地」とおっしゃってた場所ですよね?拒否する方向で交渉をまとめるのではなかったのですか?」


提督「たった今必要になったじゃん」


妙高「それは…そうですが、しかしこれは大本営が関わっている以上、下手に手を出すのは危険だとおっしゃっていたではないですか」


神通「今回、かの土地を譲渡しようと言いだしたのも「主流派」の一人。魂胆は見え透いていますよ」


提督「うるへー。「こっち」のお話はまだだ。表面化するとしたって、最速であと一年。向こうさんも準備が必要じゃろ。それに、引き受けた際のルートも考えてある。ぬかりはない。裏も表も殺伐とした戦争の世界だ、こういう時くらい楽しもうや。お前も、青葉も頑張りを知っているんだろ?」


妙高「……はい」


提督「どうやらあいつ、司令部の援助を受けたがっていないしな。それはそれでよし。オレはただ、川内に「特殊任務」を頼んだだけ、それ以外は何も知りません。いいね?」


妙高「了解しました」


神通「仰せのままに」


提督「さ、「お電話」だ。戻ろっか」


………


……




武蔵「……ふぅ。もうそろそろ積み下ろしも終いか…寂しくなるな」コキコキ


大和「私たちは極端に出撃回数が少ないものね」


武蔵「分かっている。備蓄の関係上、私たちはそうそう動かせる駒ではない。だが…あまり動かないと筋力も落ちてしまう。海上ではないがこうやって誰かのために力を使えるなら、これ以上の事はない。そういうことだ」


大和「でも…。やっぱり動いた後はお腹が空くわよね~」ノビー


武蔵「豊漁祭か。なんでも、今年は趣が違うのだろう?」


大和「西洋のお祭りも兼ねているんですって。面白そうよね」


武蔵「長門陸奥は向こうの手伝いに回ったが…うーむ、私たちも手伝わなくって良かったのだろうか」


Rome「いいんじゃない?仕事はしてたんだから」


Iowa「Japaneseの仕事をしないと落ち着かない性質は、battle shipでも健在なのね」ガラガラ


Warspite「……」ゼェゼェ


大和「あら?それは…?」


Iowa「いいでしょ?「混ざってた」んですって」


Rome「これで、私たちも「仕事」をしたことになるでしょ」


武蔵「ほう…こんな立派なものを、漁師が?」


Iowa「この世界情勢で、専業漁師なんかいるわけないじゃない。作ってたら、どうやら種が違ったみたいよ」


大和「なるほど…。ちょうどいいですね」


Warspite「……なんで、私が、運ぶの……」ゼェゼェ


Iowa「筋肉つけて欲しいからよ」


Warspite「……」ゼェゼェ


武蔵「では、日も暮れるし戻るとするか。あー!今日も働いた!」


………


……




青葉「もう夜…うう、これだけやって、とりあえず形になったのは数着…」


瑞鶴「むっず。え、世の中のお母さんがたってこーゆーの当たり前に出来るの…?」チク…チク…


翔鶴「きっと花嫁修業で血もにじむような努力を…」チク…チク…


瑞鶴「痛いよ。ホントに血がにじんでるよ」


龍驤「戦争に勝つのも大変やけど、家庭を支えるのも大変ってことやな」チク…チク…


瑞鶴「思ったんだけど、これって軽空母は渡される側じゃないの?龍驤さん出ずっぱりだったじゃん」


龍驤「ええんよええんよ!うちはそういうの似合わへんやん!」


瑞鶴「え?クリス…マス…」


龍驤「ありゃ皆やったやん」


加賀「口よりも手を動かしなさい五航戦のダメな方」


瑞鶴「仕事はきっちりこなしてます一航戦の教え方が下手な方」


加賀「……」チクッ


瑞鶴「いったッ!待ち針刺さないでよ!」


加賀「あらすいません。針山と間違えました」


瑞鶴「「針山」ならあなたの方が持ってませんかねぇ二つほど!」チクッ


加賀「ッ。頭に来ました」


龍驤「いや逆ギレ逆ギレ」


葛城「作業しながら器用に喧嘩しないでくださいよ」ハァ


雲龍「……痛い」チクチク


飛鷹「あああまた指縫い付けてるわよ雲龍」


青葉「あれ、これ…なんか変なの混じってますよ」


Richelieu「変なのじゃないわよ失礼ね。Mascaradeの材料よ。着こなしである程度誤魔化せるでしょ」


青葉「マスカレードて。仮面舞踏会でも開くんですか」


Richelieu「似たようなものでしょ」


青葉「これ、黒いシーツ被れば「かおなし」になるんじゃ…センヲダセ。遊んでる場合じゃないか」


鈴谷「せんせー。これどぉーお?」


熊野「わたくしも作ってみましたわ」


Richelieu「なにこの…なに?」


鈴谷「なんかカワウソっぽいの」


熊野「動物っていいと思いまして。キリンっぽい何かですわ」


Ark Royal「ほう…なかなか」


千代田「へぇー可愛い!」


Richelieu「え?……え?前衛…芸術…?」


青葉「採用。もうなんでも採用」


衣笠「ねぇ。これもう私服着て「一般人のコスプレ」って言い張ればよくない?」


龍驤「アイデアが迷走始めとるで」


コンコン


青葉「はーい?」


武蔵「戦艦だ。入ってもいいか」


青葉「はーいどうぞー」


武蔵「よぉ。どんな感じだ?」ガチャ


青葉「見ての通りです」


武蔵「……分からん。何人分ほどできたのだ」


鳳翔「形になったのはおよそ30人分…あるかないか」


武蔵「むぅ。難儀しているな」


青葉「うう、面目ない…」


武蔵「そう言うな。その奮闘は皆が認める。それで、足しになるかは分からんが、思わぬ収穫があってだな。持ってきた」


青葉「なんですー?」


武蔵「Warspite。いいぞ」


Warspite「いいぞじゃないわよいつまで待たせるのよ……重い……」プルプル


青葉「…??」


武蔵「……お前、駆逐艦より筋力ないんじゃないか?」


Warspite「人間尺度で見れば軍人以上よ…ッ!」ドスンッ


瑞鶴「うおっ!?」


Richelieu「あら」


青葉「あ…ッ!」


Warspite「……これ、必要だったんじゃない?Pumpkins」


葛城「へぇ~おっきー!これかぼちゃ!?」ペチペチ


瑞鶴「色全然違うわね!」


愛宕「硬くて太くて大きいわね」


高雄「愛宕黙って」


青葉「こ、これ…!どこで…!?市場になんかなかったのに!」


Iowa「お手伝いした港でね、お礼に他の野菜と一緒に貰ったの」


Rome「栽培してたかぼちゃの種の中に混ざってたんだけど、食用じゃないから売れなかったんだって。これだけじゃなくって、いくつかあるわ。これで、雰囲気は出るんじゃないかしら」


青葉「あ…あ……ありがとう、ございます…!」ジワッ


衣笠「ほーら泣かないの。まだゴールじゃないよ」


武蔵「もうひと踏ん張りだ、頑張ろう」


青葉「あ゛い…!」


………


……




川内「へー。ここかぁ」


伊58「まっさか夜戦バカと一緒に行動するとは思わなかったでち」


川内「だってこれに駆逐艦関わらせるわけにはいかないじゃん。そういえば地味に珍しい?今回は陸上なんだから艦種関係ないもんね」


伊58「こっちゃ静かにしたいのに…」


川内「騒いでない。今日は騒いでない」


伊58「毎回思うけどなんであそこまで騒げるでち?」


川内「なんかハイになる」


伊58「ヤクでもキめてるでちか。バトルジャンキーにバーサーカーにあの…訳の分からん奴。川内型はぶっ壊れでち」


川内「いーのーいーの!提督についていければなんでもいーの!」


伊58「これを制御できるんだから、やっぱ提督が一番ヤバいでち。それで、この工場はなんでち」


川内「コスプレ工場…で、いいのかな?季節のイベントとかで使う衣装とかグッズを作ってた工場。もう動いてないけどね」


伊58「ああ、ハチが言ってたやつでちか。それで?これをどうするでち?」


川内「この土地丸ごとうちの管轄になるっぽいんだけど、取り潰しちゃうんだってさ。だからその前に、欲しいのをかっぱらっちゃって、もぬけの殻にしちゃうってわけ」


伊58「なーる。じゃあ連れてきて正解でちね」


プップー


まるゆ「隊長ー!遅くなりましたぁ」


あきつ丸「まさか陸での任務につけるとは、感激でありますな」


伊58「持っててよかった大型免許、っと。おらー!さっさと荷台から降りてくるでち!運び入れるでちよー!」


ガチャッ


伊168「うぷっ…酔った……ちょっと待って…」


伊401「がくんがくんしたねー」


伊8「ここら辺は工場地帯でも海沿いだから…道路が砲弾でめちゃめちゃ」


伊19「これ帰りもばいんばいんしてくのー?」


伊26「ほら、起きて」


呂500「んにゃぁ…?ついたの…?」ウトウト


伊58「ったく昼間は秋刀魚の追い込みやったってのに…やっぱ潜水艦隊は仕事量がおかしいでち」


川内「あははー。お疲れ様!」


伊58「棒読みでちな」


川内「そんなことないって」


伊58「また明日も仕事でち。朝までには帰りたいから、やるならさっさとするでち」


川内「あいあいっと。それじゃあ、「特殊任務」を開始しますか!」


………


……




青葉「……ハッ!いけないいけない、ウトウトしてまし…うわ朝だ。がっつり寝ちゃった」ゴシゴシ


シーン…


青葉「みんな、寝ちゃってます…。ごめんなさい、無理させちゃって…」


瑞鶴「気にしなくて、いいよ」


青葉「ありゃ。起こしちゃいましたか、すいません」


瑞鶴「んーん。目つぶってただけ。私もさ、やってみたかったし。これでもさ、けっこう楽しいんだよ?知らなかったことに、やったことなかったことに挑戦するって。だからさ、感謝こそすれ、怒るだなんてありえないよ」


青葉「ですか」


瑞鶴「うん。ですよ」


加賀「ン…朝、ですか…」ムクリ


瑞鶴「やーい寝ぼすけー」


加賀「はい…」ウツラウツラ


瑞鶴「あはっ、寝ぼけてる。寝起きは面白いんだよね」


青葉「なんというか、可愛いです」


白露『いっちばーん!起きてくださーい!』ソウインオコーシ


衣笠「あれ、朝だ…」


龍驤「もうこんなに…」


武蔵「……朝か」


オハヨー


アサダー


青葉「皆さんお疲れ様でーす。おはよーございまーす。ちょっと空気入れ替えましょうか。ガサ、窓開けて。青葉は扉を開けるから」


ガチャッ


ゴツン


青葉「あり?引っかかった…?外になんかあるんですかね」


瑞鶴「うー、お腹空いた…。あ、鳳翔さんはもう行ってるのね。さすがだなぁ」


翔鶴「昨日の深夜過ぎには出ていったわよ」


瑞鶴「出来上がった衣装のほとんどが鳳翔さんのだし。あー、もう鳳翔さんと結婚しようかな」


衣笠「ありだね」


飛鷹「自分で覚えるっていう選択肢はないの?」


瑞鶴「ない。私これ向いてない。ね、加賀さん」


加賀「うん…」


飛鷹「まだ寝ぼけてる…」


瑞鶴「朝ごはん食べないとこうだよ」


青葉「ギャーーーーーーーーっ!?」


瑞鶴「!?」


翔鶴「!?」


加賀「!?」ビクッ


衣笠「どうしたの青葉。朝から騒ぐのは行儀悪いよ」


青葉「ここここれッ!!外ッ!!外にッ!!」


衣笠「何よまった…く……」


コスプレ素材「」ドッサリアルデ


衣笠「ちょっ…!?なにこれ!!なんでこんなのあるの!?」


瑞鶴「うわー!衣装だー!」


Richelieu「素材だけじゃなく既製品もあるわ。それにmarchandises、小物まであるわ」ポイッ


Ark Royal「お?おお?これは…杖?」


飛鷹「魔女帽子もある。それにキャンドル、クラッカー、あとなにこれ。ネコハンド」


衣笠「でもいったい誰が…」


瑞鶴「あ。置き手紙」


??『拾ったでち。頑張ってなのね。頑張ってね!ドライブ楽しかった!任務達成しました!健闘をお祈りするであります!がるるー。おやすみ!応援してるよ。がんば!』


瑞鶴「寄せ書きだ。これ…潜水艦…?。あ、青葉。青葉あてのメッセージあるよ」


青葉「ど、どなたでしょう…?」フルフル


瑞鶴「分かんない。名乗ってない。『約束したのにあんまり手伝えなくてごめんね。またプール来てね』だって」


青葉「はっちゃんさん…!」


衣笠「さすが潜水艦。「水面下」の動きはまったく見せないね」


Richelieu「これだけあれば素材は十分よね」


青葉「ええ、ええ!これだけあれば十分です!頑張れば間に合いますよ!」


瑞鶴「じゃーぱっぱとやっちゃいますか!ね!」ポンッ


加賀「気やすく触らないで」ペッ


瑞鶴「あ、もう目覚めてる」


加賀「お腹が空きました」


衣笠「そだね、まずは朝ごはんだね」


………


……




提督「……と、いうわけで」


パンッ


提督「みんなお疲れさまでした!今年も一杯取れて、市場に魚が出回り、このシーズンは寿司を食うことが許されますた!現時刻を持って漁業支援任務の全てを完了、これより後段作戦「豊漁祭」を開始します」


イエーイ!


オツカレサマー!


提督「ご覧の通り、今年も多くの団体から寄付をいただき、こうして豊漁を祝う機会を得られた。喜ばしいことに食材等も年々質が上がっている。オレもさっそく一献といきたいところだが、どうやら今年はいつもと大きく変わった点があるようだ。不思議なことに、それについて、まだ誰からも「報告」が上がっていない。まったく寂しいじゃあないか。これについて、誰か艦娘を代表して「報告」をしてほしい。はーい、先生と目が合った人ねー。……はい、じゃあ青葉」


青葉「重巡洋艦青葉です!」スクッ


提督「じゃあ青葉。今年と去年で大きく違うところを、説明してもらおうかな」


青葉「はいっ!今年は、例年の限定的漁業解禁とその成果を祝う豊漁祭に加え、かつてはこの国でも行われていた西洋のお祭りハロウィンを再現する試みを実施しました!」


提督「ほうハロウィン。懐かしい響きだ。「しました」とは、これを企画したのは青葉とみていいのか?」


青葉「発案は青葉ですが、こうして実現に至ったのはひとえに鎮守府皆の助けがあったからです。誰もが実物を知らない中、まったくの手探りの状態で作業を進めました。誰一人欠けていても、成しえなかったことだと理解しています」


提督「そうか。ならば責任をとってこの作戦の指揮、執ってもらおうか?」


青葉「拝命いたします」


提督「任せた」ポイッ


青葉「っとと。マイク投げないでくださいよもう。……ンン゛ッ、それではみなさん、衣装は届いたでしょうか?届いてますよね?はい、じゃあ改めまして、艦隊のアイドル、青葉ちゃんでーす☆」


那珂「ちょっと!?」


青葉「そういうわけでハロウィンです!ギリギリすぎて、ホント実現したのは奇跡ですよまったく。セッティングに協力してくださった皆さん、青葉の無茶に付き合っていただきありがとうござました!」


Pola「早くお酒ー!」


Zara「黙って!今いいとこなんだから!」


青葉「あはっ、そうですよね。いい加減長いですか。ではでは、さっそく始めようと思うんですが、ハロウィンでの挨拶は「トリックオアトリート」です。イタズラかお菓子か、相手に迫っちゃいましょう。お互いに声を掛け合って、お菓子を交換して楽しみましょう。それでは皆さん飲み物を手に」


スッ


青葉「トリックオアトリート!」


トリックオアトリート!!


夕立「ぽいー!腹減ったっぽいー!そっからそこまで全部夕立のだから!」


村雨「ちょっと夕立!話聞いてなかったでしょ!?」


夕立「がるる~!!ぽいっ!!はい、やった!!」


村雨「やってない!」


春雨「え、えっと姉さん!トリックオアトリート!」


時雨「うん、トリックオアトリート。これ、ボクからだよ」スッ


春雨「それじゃ、私からもです」スッ


時雨「ありがとう」


春雨「えへへ」


暁「響!と、と…と……!」


Верный「トリックオアトリート?」


暁「と!!」


Верный「分かったよ。はいこれ、そこにあったシフォンケーキ」


暁「ありがと!」


Верный「……多分、こういうのではないと思うよ。ほらあそこ、あそこで貰うものだと思うよ」


暁「??挨拶じゃないの?」


Верный「うん、誤解するよねあの言い方」


電「と、とっりくおあとりーと!」


間宮「うふっ、可愛い悪魔さんだこと。イタズラされたら困るわ。はい、じゃあこれ」


電「ありがとなのです!」


Warspite「Trick」


利根「とりっく」


Warspite「or」


利根「おあ」


Warspite「treat」


利根「とりーと」


Warspite「Trick or treat」


利根「ちょりっくあーとりー」


Warspite「なんか違うわね」


利根「むぅ、難儀なものじゃ」


愛宕「あら朝潮ちゃん可愛い魔女ね」


朝潮「あ、愛宕さんは…すごいですね…」


愛宕「うふふーイタズラしちゃうぞ~♡」


朝潮「えっ、あ、えっ」オロオロ


金剛「なに晒しとんじゃこのサキュバス!」


愛宕「……誰?」


金剛「金剛デース!気付けデース!!」


愛宕「シーツ被られると分かんないわよ」


朝潮「金剛さん!と、とりっくおあとりーと!」


金剛「デース!金剛型特製のスコーンデース!」


比叡「……」ニコニコ


吹雪「……エヘヘ」サッ


多摩「……」サッ


龍田「ごめんねぇ」サッ


敷波「……ヒッ」ダッ


比叡「……あれぇ……あれぇ?」グスン


Gambier Bay「Sara、I wana go to Hei。What does she have?」


Saratoga「I wouldn't do that。That's not dishes、that's weapons」


Gambier Bay「!?」


ワイワイガヤガヤ


長門「……何人かトリックオアトリートの意味分かってないぞ」


陸奥「いいんじゃない?これがうちのスタイルで」ウフッ


睦月「あ!長門さん!トリックオアトリート!」


長門「む?おお睦月か、見違えたぞ」


睦月「にゃしい。魔王にゃしい!」


長門「これは随分と手ごわそうな魔王様だ。ふふっ、長門型より献上品だ。お納め願おう」スッ


睦月「どうもありがとう!」


伊168「ねぇねぇゴーヤ!またお菓子貰っちゃった!」


伊19「こんなにたくさんのお菓子は見たことがないのね」


伊58「ああ、そう…」


呂500「でっち、どうしたの?体調悪い?」


伊58「や、眠い…」


伊401「せっかくなんだし、楽しもうよ!」


伊19「もっと食べないと胸おっきくならないのね」」


伊58「必要ないでち…」


伊8「あ…!」


青葉「見つけましたよ、はっちゃんさん。潜水艦の皆さんもご協力してくださり、ありがとうございました!まだちゃんとお礼を言えてませんでしたね」


伊168「いいっていいって!それに、お礼ならまるゆとあきつ丸さんに言ってあげてよ。運転したのあの二人だし」


青葉「そうだったんですか!いやあ、ホントに助かったんですよ。あれがなかったら間に合いませんでした」


伊19「成功おめでとうなのね。とっても楽しいのね!」


青葉「そういってもらえて嬉しいです。最初にはっちゃんさんに相談して、正解でしたね」


伊8「また何かやるなら、協力するね。……あんまり一緒に出来ないけど」


伊58「……しかたねーでち。うちらは仕事量が鬼のようでち」モシャモシャ


呂500「でっち寝ながら食べるのは行儀悪いよ…」


伊58「眠い腹減った動きたくない」


伊168「なんて堕落的」


卯月「ヘイ司令官!トリックオアトリック!!」


提督「うん、はいこr…うん!?」


卯月「よっしゃあイタズラだぁ!そこら辺のお菓子に、辛いの混ぜといたぴょん!」


提督「おま、なんてことを…!」


漣「うごァ!?」ボフッ


卯月「ヘッ」ニヤッ


提督「こいつホンマおそろしいでぇ…!」


ポンポン


提督「はーい?」


五十鈴「提督、お疲れ様。トリックオアトリート」


球磨「……クマ」ゲッソリ


提督「よぉお前ら。お疲れさんだ。はいこれ、司令部からはカップケーキだ」


五十鈴「あら可愛い。お手製?」


提督「焼きは間宮さん。上のちょこっと装飾を手伝った」


五十鈴「嬉しいわ。ありがとう」


球磨「どーも」


提督「なんだ球磨、浮かない顔して」


球磨「胸やけクマ…海外勢のは甘すぎるクマ…」


提督「ああ、色からして違うもんな。分かる、めっちゃ甘かった」


球磨「塩…塩がほしい…」


提督「刺身でも食ってろ」


球磨「そうする」ヨロヨロ


五十鈴「球磨はこういうとき得するわよね。見た目がさ、ほら可愛いから。声かけなくても、向こうから寄ってくるのよ」


提督「お前だって可愛いやろがい」


五十鈴「あらありがとう。もう一個頂戴」


提督「はいどうぞ」


五十鈴「ホントはね、気付いてたのよ、私たち。青葉がなんかやってるのは、ちらほら見えてたし。それがまさか、私たちに向けられてただなんてのは、後から知ったんだけどね?」


提督「空気読んでたって訳か」


五十鈴「だってあんなに一生懸命だったんだもん。口挟むのは野暮じゃない?」


提督「同感だ」


五十鈴「ここに着任して数年たつけど…随分と様変わりしたわよね。私が育てた…あなたの「先輩」たちがこれを見たら、なんて言うかしらね」


提督「やめろよ比較に出すの。なにやってんだー!って、怒られるわ」


五十鈴「そうね、ホントに何をやっているのかしら。かつては火花を散らした艦艇と、後の世で人の姿で邂逅して和解して。共に戦い共に笑う。こんなのを、あの時は想像すらしてなかったわ」


提督「できるわきゃねーだろ」


五十鈴「……ありがとう、型破りで予測不可能なお馬鹿さん。あなたが提督で、本当に良かったと思ってるわ。どんな戦果よりも、どんな勝利よりもきっと、尊いものをくれて、感謝しているわ」ニコッ


提督「なーに?告白?」


五十鈴「さぁどうかしら。それじゃ、またね」テクテクテク…


提督「……あいつ、どこでそんなテクニック覚えたんだろ」


青葉「確実に司令官のせいだと思いますよ、ええ」


提督「いつからいた」


青葉「今です今。どもー青葉です。どうですかこれ?唯一実物を知っている司令官には、あえて今まで全貌を隠していたんですが」


提督「あえて?……ははーん、答え合わせか」


青葉「そです。「まずは形にする。質問はそれから」。司令官が前に教えてくれたことです」


提督「殊勝な心掛けだ。そうね…75点ってところか?」


青葉「およ。案外高い」


提督「事前告知が遅かったから、みんなに認識が伝わりきってなかった分の減点と、今後に期待しての点数だ。合格はしてるよ」


青葉「やった♪」


提督「よくやった。また来年も頼むよ」スッ


青葉「ええ、頑張ります……えー、なんですか手を伸ばして。こんな所でセクハラですかー?しょうがないなぁ」


サワッ


青葉「ン…」


ナデナデ……


青葉「あ、ありゃ?頭?」


提督「よくやった、と言ったろ。青葉、今回のお前には本当に感心してるんだ。誰に言われるでもなく自分で考え動き、協力を求めなんとか為そうとする。非常に人間的であるし文明的だ」


青葉「な、なんですか手放しで褒めて。恥ずかしいです!」


提督「よくやった。よくやったぞ」ナデナデ


青葉「~♪……ッ、どーして、そこまで褒めるんです?そりゃ嬉しいですけど、でもたかがお祭り一つ成功させただけですよ?」


提督「ああ、たかが、だな。たかが祭り一つ、たかが後夜祭だ。だが、これはお前が、お前たちが成し遂げた、確かな「たかが」だ。お前たちは海戦においちゃ世界最高峰だが、だがまだ生まれて間もない。どうして子供の「一人あんよ」を喜べぬ親がいようか」


青葉「どこに目ン玉つけたら青葉が子供に見えるんですか!もう!」


提督「そうだな。お前は案外、実ってるほうだもんな」モニュッ


青葉「けっきょく揉むんですか」


提督「お前たちは成し遂げた。小さくも偉大な一歩を、小さくもかけがえのない一瞬を、何にも代えがたい一時を、確かに刻んだ。それはオレがかねてより望むものであるし、お前たちに後々大きな意味を持つだろう。つまりはそんな、「たかが」だ」


青葉「くっさい台詞ですね。どうしてそういうことをキメ顔で吐けるんですか。それにあれですよ、これはそんなに大したことじゃないです。ドラマみたいな台詞は、もっと大層な長編にこそふさわしいですよ」


提督「そうだな、これじゃせいぜいショートショートだ」


青葉「じゃあ司令官、そろそろ青葉もいいですか?」


提督「うん?……ああ、いいぞ」


青葉「では!トリックオアトリート!!」


後書き

はい、こんな感じで。

分類としては番外編、過去編です。本編じゃないです。ガンビーが一番新米の時期です。球磨とでち公は原作と性格を変えています。ご了承ください。

今年は鰯もあると聞いて、書いてみました。でもとくに鰯は関係ないです。
鰯はやっぱり酢漬けですかね。寿司ってなんだよ。

今後も時間と気分によって季節ネタとかやっていこうかと思います。書きだめとかそんな高等な事できないので、季節に入ってから書き始めます。なのでかなり雑になるかと思いますが、それでもよろしければお目汚し下さると嬉しいです。

これからもよろしくお願いします!


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2020-09-17 14:16:11

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このSSへのコメント

6件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2019-10-31 19:32:23 ID: S:FAL4tQ

ハロウィン

日本人留学生が昔、ハロウィンの時、アメリカ🗽で強盗と間違えられて射.殺されている。

クリントンが大統領の時

『フリーズ(止まれ。)』を『プリーズ(どうぞ)』と間違えて撃たれた。

2: 陽炎型・村雨のファン 2019-11-01 00:57:46 ID: S:TN_tRY

面白いものを投稿して貰えて読者として嬉しいです。嬉しすぎて鼻水がだばだばです。止まらないです。


P.S.提督が秋刀魚の物真似をしているところで、途中春風が春雨になってましたよ

3: ポチという名のネコ 2019-11-01 01:03:55 ID: S:cKCIGX

あ゛。

ありがとうございます。修正します。

よくやるんです、春雨春風、磯風磯波、浦風浦波…。
たぶん今後もやります。

ご指摘ありがとうございます!

4: SS好きの名無しさん 2019-11-02 00:38:55 ID: S:3meTje

1の方のコメントの話は聞いた事あります。
今回も面白い話をありがとうございます。

5: SS好きの名無しさん 2019-11-06 20:34:06 ID: S:w4ugRA

控えめに言って最高です

本編も待ち遠しいですが、この回みたいな番外編も、もっと出してくれていいんですよ?←

いやしかし、五十鈴にあんなこと言われたら襲っちゃいますね!

6: ポチという名のネコ 2019-11-07 21:42:40 ID: S:KPDmUr

コメント、評価、応援等をくださり、ありがとうございます!とても嬉しいです!

本編の進行が遅くてすいません…。ゆっくりですが、頑張って書いています。少々お待ちを。月一投稿のペース、なんとか早めたいなぁ。

これからも、よろしくお願いします!






秋刀魚、全然あつまらない…(´;ω;`)


このSSへのオススメ

2件オススメされています

1: SS好きの名無しさん 2019-10-31 19:30:40 ID: S:7gR7FD

ハロウィン

ホラー映画だな。ブギーマン

2: SS好きの名無しさん 2019-11-06 20:36:02 ID: S:H6YutJ

オススメコメントを入力してください(500文字いない)

無理だな、本気でオススメコメント書くとしたら500文字じゃ足らないね!

そのくらいオススメ


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