2019-12-10 20:11:45 更新

概要



『行くぞ』
「 、___っ!!」
「来ちゃだめっ!」
「っ!」

 赤き騎士は竜の脚に鎖で縛った少女を付けた。
そして、今まさに飛び立とうとしたその時、赤き騎士の頭部の真横を何かが凄まじい速度で通った。
 速度が死に地に落ちたそれは、鋭く歪な刃が特徴の短剣だった。

『ぬ!?』
「___!!」
「や、やめて!お姉様まで連れていかれるわ!」

 それを投げた張本人は鎖に繋がれている少女と瓜二つの銀髪の少女であった。
しかし、その小さな体と細い腕からは考えられないほどの速度で短剣を投げたのだ。

【知るかんなこと。妹に、《結晶》に手ぇ出した奴は、餓鬼であろうがぁ、老人であろうがぁ、女であろうがぁ・・・・・】

 その少女の眼は、最早人の物ではなかった。

【それがお高く決まった《整合騎士》様であろうがぁ・・・・

 そして、幼い少女ははっきりと・・・・・竜が怯え、騎士の中で古い番号を持つ《紅蓮の弓使い》も恐れるほどの明確な殺意を込め、身体からも《死》を具現させ、歪な、しかしはっきりとした憎悪の言葉を放つ。

【殺ロ縺】

【鬨主」ォ?ヲ縲∝⊃繝ェ縺ョ鬨主」ォ繝イ縲?ヲ悶r蛻亥叙RI縲√た繝守?繧抵セ鍋㏍縺域カ医そ縺」 『繝?ぅ繝溘が繧ケ』ッッ!!!】










「うにゅ・・・・・・もう、朝か・・・・・・」
 目を覚ますと、見慣れた鉄の天井ではなく、見慣れた木製の天井が目に入る。彼女、『ヴォルグリム』は『様々な世界』を彷徨い『様々な現実』を巡り渡り、《人の心》を知った少女だ。《機密機関 ラース》の一員でもある彼女は《真世界干渉実験》という実験で仮想世界にダイブ。しかしログアウト不可な状態で覚醒した。
 朝になり、いつものように決まった時間に碧色の瞳を持つ少年が起こしてくれる。
「ヴォル、早く起きないとまた怒られるよ?」
 この世界の住人は全て『NPC』___しかし、目の前にいる少年は人間と何ら変わりない感情を持っている。
 そして、彼女___ヴォルグリムはある目的を持っている。この世界から出るために必要な装置__《システムコンソール》を探すこと。そして【命令】を遂行するために自分の双子の妹を見つけ、救い『連れ』だすという目的を。
 妹の名は、《アリス》。ヴォルグリムの本名と同じ名を持ち、彼女、彼らが絶対に忘れてはいけないはずの少女である。

 これは、《壊れた人形》の、美しくも醜く、歪で混沌とした救済の物語。





※このssは、原作である小説の語り部分を一部引用しております。
 では、新作【ソードアート・オンライン《鬼煉機》】、《インフェルノ・アリス》をお楽しみください!


前書き



 「黒大樹ぅ、お前は簡単に壊れないでクレヨォ?」
      ヴォルグリム § 月を思わせる可憐さをもつ謎多き少女。深紅の黒炎を司る剣《煉獄の剣》を華麗に操る。
             極が付くほどの超酒豪で、宴会や祭りの席ではこっそりダウンロードした『スピリタス』をがぶ飲みする。
             【彼女たち】が歩んだ戦場は幾年の時が経とうとも、消えることのない劫火で覆い尽くされる。

 「さて、僕達も行くよ!」
      ユージオ § ヴォルグリムと幼馴染の心優しき少年。氷を司る剣《青薔薇の剣》を扱う。
           剣の腕はまだまだだが、ヴォル曰く『かなりの物になる』らしい。



 「《剣士の誓い》ってやつだ」
 「誓い・・・・・・なにを、誓ってくれたの?」
      セルカ § 太陽のような輝きの笑顔を持つヴォルグリムの妹。神聖術の成長性が凄まじく、料理は天下一品。
          いつも姉の無茶無謀っぷりにユージオと手を焼かされている。



 「男の方はさっさと殺しちまおうぜ!」
 「女のほうは俺が一番にもりゃう・・・・? あぇェ、おらノかリらGA・・・・・・
 「あん?どうしt、ッッ!!?」
      蜥蜴殺しのウガチ § 果ての山脈に通じる北の洞窟に潜んでいたゴブリン族の隊長。
               彼がみたモノ、それはただの《肉塊》であり、血肉を貫き、貪る《剣》だった。






蒼氷と業火



 朝の 起床の鐘の音により自分は重い瞼を上げる。

今日の天気は快晴。雲一つとしてないよくある天気だが、素晴らしい日だ。

 UndertailのSansの台詞を借りるとすれば【今日はいい天気だ。 鳥は歌い、花は咲き誇っている。】かな?

 自分はいつものように夜更かしをして、重くなっている身体を起こし朝食をとるため一階へ向かう。


「ふぁ~・・・・おはよ~」(´ぅω=`)ネムイ

「おはようヴォル」

「ヴォル姉様おはよう!」

「おぉう、いつも朝っぱらから元気なことで」


 そういや名前言ってなかったな。自分・・・・・俺の名前はヴォルグリム。ヴォルグリム・ツーベルク。愛称は『ヴォル』だ。

朝食の準備をしていて、翠色の瞳と甘栗色のショートヘアの方は幼馴染の《ユージオ》。そして朝食を作っており、腰にまでかかるほど長い金髪を持ち、修道士見習いである彼女は《セルカ・ツーベルク》、俺の妹だ。


 俺の特徴は、自分で言うのもなんだが美少女だ。正確には膝裏にまでかかる長髪。その髪はセルカの髪とは真逆の白銀色であり、前髪に黒髪のメッシュがかかっている。何故かアホ毛付。瞳は血を表したような深紅である。

 そして、全身と右目を包帯で覆っている。これは、以前事故によって大火傷を負ったからだ。なお、左目の視力は悪い方なので、右目が見えないと視界が少々ぼやける。

 ここまでの特徴から、正直セルカとの共通点は顔以外あまりない。

 それに俺は女だが、完全な男の性格をしている。ユージオに裸を見られても別に何も感じないし、部下達といっつも一緒にふろに入ってるしなwww まぁ、その部下達が顔赤らめたり目をそらしたり、怒られるんだが・・・・・・特にディミちゃんとエルちゃんに。

 容姿はアリス、『アリス・ツーベルク』という俺の双子の妹とうり二つ。星で例えるならアリスが太陽。俺は月だろう。


ヴォル「お、今日もうまそうだな」

セルカ「その前に顔洗ってきてください」

ヴォル「うい」(=_=)


 そうしてヴォルは顔を洗いに洗面所へと向かう。


ヴォル「・・・・・・」

ヴォル「ふい~、すっとしたぜぇ~」キラーン


 朝の冷たい水での洗顔は最高だ。眠気を一瞬にして消してしまうからな。


ヴォル「洗ってきたぞ~」

ユージオ「ちょうど良かった。もう朝食の準備終わったところだよ」

セルカ「冷めないうちにいただきましょ?」

ヴォル「うい」


 三人はまず食事をとる前に、日本で言う『いただきます』の合掌をしながらステイシア神に感謝の言葉を言った。だが、ヴォルは何故かいつもこの行為に対しての不満や不服を持っているが、それを悟られないように我慢している。


 そして三人は朝食をすまし、ヴォルとユージオは今日の仕事を終わらせるために準備をしている。今日の二人は一段と張り切っていた。


ヴォル「さぁて、今日はいよいよあの黒大樹を斬れる日かもな」

ユージオ「でもそんなことできるの?」

ヴォル「お前なぁ、ここ最近の見てなかったのか?」


 二人は会話しながら身支度をし終えた。しかし、今日はいつもとは違う装備である。

木こりに必要な斧は勿論持っているが、二人の腰にはユージオは青い剣、ヴォルは黒い剣が携えられている。


ヴォル「こいつらは俗に言う《神器》だ。さっきもみたが天命値は一切減ってない。逆に黒大樹の方が死に向かっているんじゃね?」

ユージオ「確かにそうだけど・・・・・」

ヴォル「それに俺達の剣は《樹》とは属性の相性がいい」

ユージオ「属性?」

ヴォル「あぁ。俺の《煉獄の剣》は火属性。自然にとって火は最悪の敵だ。次に、ユージオの《青薔薇の剣》は氷属性だ」

ユージオ「自然と氷って相性がいいの?」

ヴォル「勿論。自然であれ、生き物でアレ凍らせれば生命は死ぬ(例外は在るが)。植物ってのはその中に水が流れているのは知ってるな?」

ユージオ「勿論だよ」

ヴォル「水は気温が零度になると凍り始めるんだ。《青薔薇の剣》にはあたりの気温を下げる能力がある。

    気温が零度に達した時、黒大樹の水は徐々にだが、最終的に凍結する。すると生命維持機能が停止する。=弱体化するってこった」

ユージオ「な、なるほど・・・・・流石はヴォル、博識だね」

ヴォル「ふつうに一般常識なんだがなぁ~………ま、今日こそは本気(マジ)中の本気(マジ)で行きますか」

ユージオ「うん!」


 そうして二人はセルカが用意してくれた昼食を___ユージオは小さいのを、ヴォルはかなり大きなビスケットを___持って、ヴォルが黒大樹と呼ぶ、悪魔の樹《ギガスシダー》を斬り倒すため自然あふれる草原へと足を進める。




Nowloading~~(少女&少年移動中)




ヴォル「さぁぁて、今日は絶ッテェーぶったオス!」

煉獄の剣《キィィィン!!》

ユージオ「まぁまぁ、ギガスシダーは逃げないんだから」


 ヴォルは意気揚々としながら剣を抜く。剣の刀身が現れるのと同時に《煉獄の剣》が静かだが、しっかりと金属音を放った。

 この現象は最初こそ驚いたものの、毎日この現象が現れていたため何時しか慣れていった。まぁ、八年以上も見ていたらそりゃなれるわ。

 彼女曰くこの現象は、『え?相棒としてだけでなく、自分自身、命、魂としてずっと一緒に居れば出てくるぞ?』と何故か当り前じゃない? って感じで疑問形で答えた。


 え?逆にどういう意思をもてばそこまで会話っぽく出来るんだよ・・・・・。と思ったが、試しにそういう感じに接してみると少しだが意思疎通のようなものがいつの間にかできていた。___本当にどういう原理?


ヴォル「っと、ドーピングしとくか」


 『ドーピング』。ヴォルが言うには競技や試合の前に自分自身を薬などで強化しておく、正々堂々の行為の場では違法として禁止されている行いらしい。しかし、ヴォルが言う今のドーピングは神聖術による身体強化だ。普通に身体強化と言えばいいのでは?と言ったが、『言いやすい』と言い、こういう時はいつも使っている。

 それに、たまに衛兵の人たちとの特訓や訓練、決闘の時とかでもこっそりとそのドーピングをしている。そのことを以前指摘したのだが

『バレばなきゃ犯罪じゃないんですよ』と、何故かどや顔で言ってきて少々イラッと来たのは言うまでもない。でもヴォルの強さならドーピングする必要はないのだが。


ヴォル「『煉獄の炎をその身に宿し』」ゴォォォォォォ・・・・!!

ユージオ「っ!」


 ヴォルが神聖術としては短く、神聖語でもなく通常の言語でその術を唱えた。その直後、彼女の足元から紅蓮の炎が噴き出し剣もろとも詠唱者を包んだ。そしてその炎は徐々に彼女の持つ《煉獄の剣》に吸収された。その剣は噴き出した剣を吸い終えるとその刀身を赤黒く発光している。

 ヴォルはこのような術を幾つも持っている。しかしそのすべての術名が恐ろしいのだ。一部は術名だけでなくその行動もだ。

 ある術は神聖語で言っているが、手の甲から謎の模様と光の陣が現れ、その手には《心臓》が握られていた。そしてそれを強く握った瞬間

目の前にいたゴブリンが左胸を抑え苦しみだし、握りつぶされた瞬間絶命した。その直後のヴォルの姿は血塗られながら恍惚の笑みを浮かべている、その不気味さ気味悪さをも忘れさせるような、美しい少女だった。

 しかし、これもかれこれ八年以上も見続けているので慣れている。正直僕も頭が狂ってるんじゃ、と思うことがしばしばある。ので、気にしてもしょうがないが。


ヴォル「黒大樹ぅ、お前は簡単に壊れないでクレヨォ?」

煉獄の剣《キィィィィィ____!》

ユージオ「さて、僕達も行くよ!」

青薔薇の剣《キィン!》


 その日、少女・少年は何世代にもわたりこの地に根付き、生き続けている悪魔の樹/黒大樹こと《ギガスシダー》に今まで特訓し続けてきた剣術を叩きこむ。


ヴォル「燃えろっ!」ゴォォォ!

ユージオ「せぁっ!」


 まず最初に、ヴォルが炎を纏っている煉獄の剣で既にある傷口に【水平四連撃秘奥義《ホリゾンタル・スクエア》】を叩きこんだ。

 【ホリゾンタル・スクエア】:剣を左脇に構え、右→左→一回天からの左→左上という順序で斬撃を繰り出す。

 次にユージオが単発斜め斬りの【ザッカライト流《蒼風斬》】を発動させる。これも傷口に命中する。

 二つの秘奥義は黒大樹の切口のど真ん中に命中したので、ユージオの言う『いい音』が__ヴォル四回、ユージオ一回、計五回__した。


ヴォル「お?いい線いってるぅ?」

ユージオ「そうだね。二つの秘奥義で26センくらい削れてる・・・・・・このままいけばっ!」

ヴォル「っしゃぁぁっ!!ガンガン削り取ってやるぜぇぇ!!」WRYYYYYYYY!!!

ユージオ「あぁ!」


ヴォル「ラァァ!!」

ユージオ「はぁぁっ!!」


 ヴォルは再び、ユージオも【ホリゾンタル・スクエア】を放つ。

この二つの秘奥義も傷口に命中する。黒大樹の傷口が削られ《当たり》の場所が変わったため、ヴォルが二回、ユージオが一回外した。


ヴォル「チィ!二回目は流石に全弾命中しないか・・・・」


 そう悪態付きながら既に次のソードスキルを放とうとしている。

 【ノルキア流《雷閃斬》】こと【単発垂直斬り《バーチカル》】だ。黒大樹に斜めの一本傷が走った。しかし、ヴォルは休むことなく次の攻撃を放つ。縦横無尽に剣を振り、黒大樹の圧倒的耐久度に嫌気がさしたのか腰から二本目の得物を抜く。大型の短剣だ。

 ヴォルは片手直剣の使い手でありながら短剣も使いこなせ、右手に直剣、左手に短剣を装備した時の攻撃は凄まじいのなんの。

まるで、得物自体が意思のあるように動いているように見える。


ヴォル「これで50センは削ってやるよォ!!」キラーン!!


 ヴォルは絶技を見せた。右手の直剣、左手の短剣の秘奥義を同時に繰り出したのだ。

 片手直剣で【レイジ・スパイク】、短剣で【ミスティ・エッジ】を放つ。

 【ミスティ・エッジ】:低く構え、前方に数メル高速移動。その間に目視不可な斬撃を無数に繰り出す。

 《レイジスパイク》と《ミスティ・エッジ》の突進で考えられないほどの速度が生まれた。黒大樹へ超高速の突進が撃ち込まれたので爆風生じ、土煙が発生した。


 煙が晴れた時、目の前にいるのはギガスシダーに直剣の切っ先を傷口に刺していて、短剣の刃をめり込ませたまま硬直しているヴォルの姿だった。


ヴォル「ぐっ・・・・おうっ!?」


 いや、硬直していたのではなく樹に刺さっている《煉獄の剣》を抜こうとしているようだ。煉獄の剣は刃がところどころ禍々しているためその切っ先が挟まって抜けないのだろう。(釣り竿の針のような感じになっていると考えてくれ。)

「うにゃっ!」

 剣が抜け、尻もちを勢い良く着いたヴォルがその容姿に似合う可愛い悲鳴を漏らす。因みに剣が抜けた傷口は結構ひどく抉れている。それに、抉れた部分を除くだけでもヴォルの言った通り50センは削られている。


ユージオ「す、凄いよヴォルっ!50セン削れてる!僕が一生かけて削る分まであと少しってことだよ!」

ヴォル「そうか。あぁ~しっかし、ほとんどが外しているからな・・・・・全部当たってれば60センは行ってたかな」

ユージオ「よぉしっ!僕も負けてられないな! ヴォル、どっちが先にこの樹を切り倒せるか競争だ!」

ヴォル「いいぜ。で、何を賭ける?」

ユージオ「そうだな・・・・・負けた人は勝った人の命令を何でも聞くってのはどうかな?」

ヴォル「お、いいなそれっ! 期限はどうすんだ?」

ユージオ「そうだね、この数百年かけて斬り倒すものを斬ったわけだから一週間でも足りないし・・・・・」

ヴォル「いやよ、一日で良くね?」

ユージオ「それだったら割に合わないよ」

ヴォル「んなもんより体第一。そう簡単に人の人形にはなりたくない。だから一日で十分だ」

ユージオ「そ、そうかい?ヴォルが言うんならそうするけど・・・・」

ヴォル「うっし。そうと決まったら早速斬るぞ~。先手頂きっ!」

ユージオ「あ、ズルいぞ! ラァァッ!!」


 二人の競り合いは昼食や水分補給を忘れて夜まで続いた。夕食時になっても帰ってこない二人を心配したセルカとガスフトが様子を見に来た時、視界に移ったのはギガスシダーの根元で仰向けになっている姉と、うつ伏せになっている親友の姿であった。

 セルカは急いで父親に告げ、荷台を持ってこさせ二人と二本の剣を乗せ家に着いた途端顔に水をぶっかけた。それで起きた二人は充分な水分補給と大量のご飯を食べさせ、風呂にゆっくりとつからせ寝るようにさせた。その夜は二人のいびきがひどかったという。

 次の日、昼頃に起きた二人はガスフトにこってりと叱られた。


 しかし、夜で暗かったと言え、セルカと父ガスフトは見ていなかった。黒大樹・悪魔の樹と呼ばれ続けられていた《ギガスシダー》の支えるための幹が、傷口を通し横に切られており、幹が残り【4/1】になっていたことに。

 この事は、ギガスシダーでユージオとヴォルが木こりをしていると思っていた友達が見に行き、ツーベルクの家に大急ぎで報告しに行ったことで発覚、張本人たち以外驚愕し、白目をむいて気絶。これはすぐに村全体に広がった。



***



 二人の木こりがぶっ倒れた三日後、黒大樹/悪魔の樹こと《ギガスシダー》の周りには樹が切り倒される瞬間を、木こり二人の美しい剣技を見ようとする者で__村の人の約4割が__集まった。特に子供と老人が多く、その子供全員が二人が携えている《蒼い剣》と《黒い剣》に向けて目を輝かせていた。


 二人の木こりは大樹に最後を与えるべく、深紅の瞳を持つ少女は黒き剣を、自然を表した翠色の瞳の少年は蒼き剣を、同時に抜く。

 炎が燃え盛っているような轟音と共に抜かれた黒き剣の刀身は黒く、その剣は這うように蠢くようにして深紅の筋が発光している。対して蒼き剣は、静かに鞘からその刀身を現す。剣全体が氷のように冷たく光を反射する。

 ___静寂。そして二人が神聖術を紡ぐ。


「『煉獄の炎をその身に宿し』」

「『オフェンシブ』!」


 ヴォルグリムは紅蓮の炎を剣に纏わせ切っ先を上にし、胸の前に右手を持ってくる。所謂騎士の構えだ。ユージオは蒼き輝きを一段と放つ蒼き剣の柄を両手でしっかりと握り、右斜めに構える。


「幾年もの時を経て、なおもこの地に根付き生き続ける黒大樹よ。今この日、汝に永遠なる死を賜らわん」


 ヴォルグリムがそうつぶやき、煉獄の剣が一段と炎の勢いを増す。それに合わせユージオも青薔薇の剣の輝きを増させる。


「焼き尽くすっ!」

「凍れぇっ!」


「『フレイム・ウェーブ』!!」

「『カイザー・ハック』!!」


 黒き剣士が《業火》の剣を、蒼き剣士が《蒼氷》の剣を、黒大樹の傷口に沿うようにして残りの幹を削らんとする。


 限界までに強化され、二つの膨大な力がぶつかり混ざり合ったことで爆風が起こり、見ていたものは全員目を両手でかばう。十数秒後、暴風が止み土煙が落ち着いたころ、傍観していた者達が見たのは黒大樹/悪魔の樹《ギガスシダー》を支えていた残りの幹が文字通り木っ端みじんに粉砕され、上部の幹に大傷を付けられた大樹が地に倒れ、二人の剣士が剣の刃を交えさせている光景だった。











暗黒領域の『人間』と『凶人』の憤怒



 黒大樹が切り倒され、その樹を回収しガリッタのおやっさんに武器にできないか頼んだ。数百年にもわたり枯れること、朽ちることなく神聖素因を吸収し続けた樹だ。武器や防具、道具にしたり用いたりすれば凄いものになるだろう。その分、加工が大変なので《鍛冶スキル》で鍛えて、《スキル》なしでも出来るように練習してきた俺ことヴォルグリムも手伝っている。

 しかし、この世界では《ステータス》など意味をなさないので、出来るはずがなかった。ガリッタのおやっさんの提案で央都のサードレという細工師に預けることにした。おやっさん曰く『美しき青銀の剣に優るとも劣らぬ』らしい。


 剣にすればヴォルグリムの攻撃パターンが増えるのと同時に、また一段と強さの高みへと登れるからだ。加え、使わないもの余った物等は彼女が持つ武器の糧として使い、強化を図っている。これは彼女の【目的遂行】の為でもある。


ヴォル「さて、っと。今日は何する?」

ユージオ「今日は神聖術の練習をするって言ってたじゃないか・・・・・」

ヴォル「あ、そうだったそうだった。場所は~、いつもの場所でいい?」

ユージオ「うん。村からそんなに離れてないし、それにお昼をとるには絶好の場所だ」

ヴォル「んじゃ、行きますか。親父~、行ってくるぞ?」

ガスフト「いってらっしゃい。特訓はいいが気を付けろよ?」

ヴォル「へいへい」

ユージオ「はい!いってきます」

セルカ「お昼は私が持っていくから、一緒に食べましょ?」

ユージオ「うん。いつもありがとうね」

セルカ「えへへ。私からも、いつも残さず食べてくれてありがとね♪//////」

ユージオ「う、うん!セルカの作るご飯はすっごく美味しいからね!///」

セルカ「えへへ~///」(n*´ω`*n)


ヴォル「親父ぃ・・・・」

ガスフト「なんだぁ?」

ヴォル「帰ったら話がある」

ガスフト「奇遇だな。私からも話がある。内容は言わずもがな、か?」

ヴォル「そうだな。明日辺りに赤飯にするか?」

ガスフト「まだ早いだろ。 ほら、行ってこい」

ヴォル「へいよ。 ユージオ、イチャイチャせずに行くぞ~」

ユージオ「な!?いちゃついてなんかないよっ!!」

セルカ「そ、そうですよお姉様!」

ヴォル「はいはい」┐(ー∀ー )┌ヤレヤレ


ヴォル(あんな短い会話でも、喋ったのはいつぶりかな・・・・・・?)


 ヴォルとガスフトは何を察したのか夜に何か《重要》な話をするらしい。外へ出るときに、ヴォルは後ろで座っているガスフトに向かって二人に見えないように親指を立て、それに対しガスフトも親指を立てた。

 「あれ?そういやなんで親父、《あっち》の世界の『伝説26ネタ』知ってんだ? ま、いいか」

 彼女はいつものように眠そうな目をあけ、腰に煉獄の剣をさし、木剣を肩に担ぎながら外へと向かう。

 外に出て少し経たないうちに、出るのを待っていたのか村の子供たちがいた。ヴォルと特に仲がいい『レウス』と『レイア』兄妹がヴォルに抱き着く。


兄妹『姉貴/ヴォルお姉さん!』

ヴォル「ん~、お前らどうした?」(´ぅωー`)?

レウス「今日は神聖術の練習するんだろ?」

ヴォル「うにゅ」(ーдー )))ウン

レイア「あのね、わたし達見に行ってもいいかな・・・・・?」

ヴォル「まぁ、いいが・・・・ユージオはどうだ?」

ユージオ「うーん・・・・・練習だけだから大丈夫だと思うけど、何かあるかもしれないからなぁ。親御さん達には言ってきたの?」

子供たち『( ´∀`)bグッ!』

ヴォル「んじゃ、問題はないか」

レウス/レイア「「それじゃぁ・・・・」」

ヴォル「ついてきてもいいぞ。だが、何かあったら俺達の傍に絶対来いよ?そんときは守っちゃる。な、ユージオ?」

ユージオ「あぁ!」

子供たち『ありがとう!!』

ユージオ「それじゃ、歩きながら行こうか!」

ヴォル/子供たち『(は~い)はーい!』




Nowloading~~~ 少年・少女・子供たち移動中~~




ユージオ「じゃぁ、僕たちは特訓するから離れててね?」

子供たち『は~い!』

ヴォル「退屈になったら言えよ? 遊んでやるから」

レウス「ありがと!」

ヴォル「んじゃ、ちゃっちゃとやりますかぁ。ちょいとばかし本気で行くからな?」

ユージオ「うん」

ヴォル「『煉獄の炎をその身に纏い』」ゴォォォ!

レウス「うお!?」レイア「きゃぁ!」

ヴォル「コォォォォォ・・・・・・来い、ユージオォ」

ユージオ「行くよ! 『オフェンシブ』!」ダッ!




特訓割愛~~

「おいぃぃ!!?文の裏じゃぁ俺たち頑張ってんだぞォォ!!!?」

獄蟲「すいません許してください。何でもしますから!」

「ん?今何でもするって?」

獄蟲「はい!ナンでもしますんで、許してください」

「・・・・・・」

獄蟲「・・・・・・?ヴォル?」

「な、なら・・・・・・クレープとやらを、食べさせてはもらえぬか?///」

獄蟲「・・・・・・んん?」(。´・ω・)?

「~~~!クレープを毎日食わせろと言ったのだっ!!」

獄蟲「わ、分かりました!今日の分、今すぐ買ってきますっ!!」ダッ!!


「・・・・・・」

「また、やってしまった・・・・・・何故我は、こうも《主》とうまく接すことが出来ぬのだろうか・・・・・・」

「嫌われておるよな・・・・・・むっ、いかんいかん!我はこちらに集中しなければならぬな」

「それに・・・・・・人形は人形らしく、主の、《人間様》のいう事をただただ聞いておけばよいのだから・・・・・・」




「・・・・・!・・・きて!」

ヴォル「ん・・・・・・んん~~」

セルカ「お姉様そろそろ起きて。みんなと遊ぶんでしょ?」

ヴォル「セルカ? 他のみんなは? あ、おはよう」

セルカ「おはようございますお姉様。みんなはもう鬼ごっごして遊んでいますよ?」

ヴォル「マジカ・・・・・・ん、っしょと。ニュア~~~」;つД`)≪あくび

セルカ「寝起きですが遊ぶのですか?」

ヴォル「まぁね。眠気覚ましの運動しましょうか。さ、セルカも行くわよ?」

セルカ「・・・・・・」( ゚д゚)

ヴォル「セルカ?どうしたー?」

セルカ「( ゚д゚)ハッ!い、いえ!なんでもありません!」

ヴォル「そうか。 んっじゃお前らぁぁ!俺もまぜろぉぉぉ!!」


ヴォル!? ホントウノオニガキタゾーー! オイレウス、ドウユウイミダァ?!! オニイチャン!シツレイダヨッ!タシカニオコッタラオニミタイデコワイケド・・・・・ レ~イ~ア~?オ・ハ・ナ・シ、シ~マーショ?♪ ハニャーーーーー!!!


セルカ「ふふふ♪」


 セルカは、子供たちと遊んでいる姉の表情をみて安心した。先ほど、寝ているときの姉の顔は何処か苦しんでいるようだったからだ。

 しかし、今のヴォルの顔は口では怒っているが内心は楽しんでいる。ヴォルは子供たちに《鬼ごっこ》や《かくれんぼ》という々な不思議な遊戯を広めた。このことでいつもは退屈だった時間が減り、みんな楽しんで遊んでいる。その証拠に前と比べて村が明るくなった。


セルカ「・・・・・・」

ヴォル「お~~い!セルカーー!お前も来いよー!!」


 ヴォルはレウスを肩車し、レイアを抱えてセルカを呼んでいる。レウスとレイアはいつもより興奮しているようだ。恐らく、レウスは高いところから見る光景に、レイアは大好きなお姉ちゃんにだっこさせられているからだろう。


セルカ「はい!今行きます!」タッタッタッタッタ・・・・・・


 せっかくの休日だから、楽しまなきゃね♪♪



 そして・・・・・・お姉様、ユージオ・・・・・・『ごめんなさい』。




Nowloading~~ 二人の剣士と子供たちが遊び終わり、その後・・・・・・




 ヴォルとユージオが子供たちと遊び終わって一時間後。村は騒がしくなった。


ライア「西は駄目だっ、生き物の影すらねぇー!!」

ユージオ「東もダメだった!あとは・・・・・・」

ガスフト「南と北、だけか・・・・・・」


 ツーベルク家では別の意味で騒がしかった。地図を取り囲んでユージオ、友人のライア、ヴォルの父親ガスフトが

その時、家の扉が勢いよく開けられた。


「ハァ、ハァ・・・ハァ・・・・・!」


 現れたのは村の衛士隊の一員である青年、『ガイア』。ヴォルとも仲がよく、ユージオの兄の一人である。

ガイアはルーリッドの村の南にあるザッカリアと街に全速力で探しに行き、央都セントリアに入りに行く者達にも聞きにいったのだ。


ガスフト「どうだった!!」

ガイア「ハァ、ハァ・・・・・・い、いません!街に人も、セントリアの人達も誰一人として『セルカ』ちゃんを見てないと・・・・・!」

ユージオ「なんだって!!?」


 村が騒然としている理由。それは、ヴォルの妹セルカが遊び終わった後から姿が見えないからだ。


ライア「西も東も、南もいない・・・・・・となると、残るは北だけだ」

「「「っ!!」」」


 考えたくもない、想像もしたくないことが突き付けられる。


ガスフト「しかし、ならなんでセルカは北になんか・・・・・・」

ユージオ「ガスフトさん、まだセルカがあそこに行ったって決まったわけじゃ・・・・・・」

ガイア「・・・・・・!ユージオ、危ないっ!!」

ユージオ「なっ!?」


 ユージオがガスフトの言葉を否定しようしようとしたとき、窓が割れ何かが入り床に突き刺さった。


ライア「これは、短剣!!?」

ガスフト「ヴォルのか?!」

ガイア「なぁ、柄に紙が括り付けられているぞ?」

ユージオ「紙?」


 床に突き刺さっている大型の短剣の柄には紙が結ばれていた。文字のようなものが赤く透けて見えている。どうやら手紙のようだ。


ガスフト「何が書いてある?」

ユージオ「えぇーとっ!」


《手紙》

『 北 洞窟 』


 手紙に書かれていたのは三つの文字。しかし、この三文字は場にいた全員を絶望へ堕とすには十分だった。


ユージオ「そ、そんな・・・・!」

ライア「くそっ、まさか北にいたのか!」

ユージオ「行ってくる!!」

ガイア「まてユージオ!」


 ユージオが青薔薇の剣を持ち、外へと飛び出そうとしたところで兄のガイアに止められる。


ユージオ「なんで止めるんだ!!?」

ガイア「聞け!ここ最近北の洞窟にゴブリンがいるという報告があった。それに、あそこまではかなりの距離がある!」

ユージオ「こうしてる間にもセルカが危険な目に遭ってるのかもしれないんだぞ!!」

ガイア「考えてみろ!何故ヴォルが一人で、ゴブリンがいるあそこに行ったと思う?これ以上被害を出さないためだ!」

ユージオ「で、でもっ!!」

ガスフト「ユージオっ!!」

ユージオ「っ!!ガスフト、さん・・・・・・?」

ガスフト「まずは落ち着け。お前も、ヴォルも何時も言っているだろう?【ステイ・クール】、『冷静に』と」

ユージオ「っ・・・・!!」

ガスフト「・・・・・・ガイア、ライア、念のため衛士を集めておいてくれ」

ガイア・ライア「「はいっ!!」」ダッ!


ガスフト「ユージオ、これを使え」

ユージオ「こ、これは・・・・・・?」

ガスフト「ヴォルが『緊急の時に使え』と言っていた」

ユージオ「・・・・・・まさか!」

ガスフト「どう使うかは、お前が決めろ」

ユージオ「・・・・・・」


 ユージオが受け取った物、それは一枚のカードだった。それには文字が刻まれている。


ユージオ「行ってきます!必ず、セルカを連れ戻してきます!」

ガスフト「あぁ、頼んだ」

ユージオ「『ディメンションワープ』!」


 ユージオの足元に不思議な光の陣が現れ、ユージオの身体を通り頭を通った直後、彼自身も発行し光陣と共に消滅した。

 この術式は『転移』の術しきであり、使用者が強く願ったものの所まで瞬時に移動させることが出来る。なお、ヴォルグリムのオリジナル術式だ。

 家にはガスフト・ツーベルクだけが残された。


ガスフト「ヴォル・・・・・・何故お前は、危険なことに自分から突っ込んでいくのだ・・・・・・?」


 呟いたその言葉に、答えてくれる者はいなかった。しかし、床に突き刺さっている禍々しい短剣が一瞬だけ刃に光を通らせた。




ヴォルグリムside~~~


ヴォル「来たか、ユージオ」


 俺は以前、緊急時の時の脱出手段で父・ガスフト・ツーベルクにあるカードを渡した。そのカードは俺の血を媒介にして造った物だ。そしてそのカードの効果は、その触媒にした血の持ち主の場所に約1秒でワープさせる能力だ。

 今、俺の目の前にはワープで来たユージオが立っていた。


ユージオ「あれは、やっぱり君のだったんだね・・・・・・」

ヴォル「そうだ。因みに、さっきのはまだ試作品だからそれが最初で最後の一枚だ」

ユージオ「そうなんだね」

ヴォル「ユージオ、簡潔に言う。セルカはこの洞窟の奥だ」

ユージオ「!!? それなら早く行かなくちゃ!!」

ヴォル「俺に作戦ある。走りながら言うからよぉく聞いとけよ?」

ユージオ「分かった!」


 ヴォルとユージオは洞窟の中へと走って行った。


ヴォル「いいかユージオ。恐らくセルカはゴブリン共に捕まり暗黒領域に連れて行かれる」

ユージオ「な、なんで!」

ヴォル「ゴブリンってのはRPGじゃぁ雑魚だが、本来は心ん中は女を犯す事しか考えてない屑中の屑どもだ。例外はいるが」

ユージオ「なんだって?!」

ヴォル「だが、どんな馬鹿な奴でも敵がいる領域では犯すはずがない。まだ洞窟内、おそらく奥にまだいるはずだ」

ユージオ「・・・・・・どうすればいい?」

ヴォル「さっそく作戦について質問か? 作戦は簡単、お前がセルカを救い出せ」

ユージオ「なっ!?ゴブリンたちの間を縫って助けろって!!?」

ヴォル「安心しろ、助ける隙は作る」

ユージオ「その後は!?」

ヴォル「俺があいつらを一匹残らず、灰すらも残さぬよう殺す」

ユージオ「殺すだって?! ヴォルの強さは僕が一番知っている。でも相手はダークテリトリーの奴等なんだぞ!」

ヴォル「言ったろ? ゴブリンはゲームじゃ雑魚中の雑魚。チーターを除いてLV1の初期装備のPYがLV999の怪物に勝てるとでも思うか?」

ユージオ「何を言ってるのか全く分からないけど、危険すぎる!!」

ヴォル「ユージオッッ!!!」

ユージオ「!!?」

ヴォル「俺は今気が立ってるんだ・・・・・・なるべくいう通りにしてくれ。さもないと・・・・・・」


『お前を殺しちまいそうだから』


ユージオ「っ!!」


 その時、ユージオは心臓を鷲掴みにされるような感覚を覚えた。そして本能がこう叫んでいる、「逆らうな」と。


ユージオ「わ、わかった」

ヴォル「それでいい。 さぁ、ゴブリン共ぉ、貴様らは屑で腐っていても、生物だァ。動くのなら肉がある、血が流れている」

  「貴様らの肉で腹を満たし、血で喉を潤すことが出来るかァ? いや、満たしてくれよぉ?!」

ユージオ「・・・・・・」


 ユージオは途中から耳をヴォルから目を背けた。ヴォルは怒ったりすると狂い、このような恐ろしい台詞を吐くからだ。

 以前、手に持った心臓を潰し、一匹だったが脅威となるゴブリンを殺した時だって、ユージオを助けるために殺したのだ。しかし、ユージオは怖かった。血で染まったその少女が、指や手、腕に着いた血を長い舌で舐め、顔を赤らめ恍惚の笑みを浮かべているその少女が。だが、逆にそこに惹かれた。その美しさに惹かれてしまったのだ。その時からユージオはヴォルの狂気的行いを見ても忌避感を感じることはなくなった。それはつまり、自分自身も狂ってしまったからだ。


 走り続け、気が付けば周りの光景は岩だけではなく、辺り全体が青く光っていて氷の結晶が目立ってきた。


ヴォル「いるんだったらここら辺だと思うんだがなぁ」

ユージオ「もう少し奥に進んでみよう」

ヴォル「お、そうだな」


 二人はさらに奥へと進む。進んだ先は広い空洞になっており、地面だけでなく壁や天井にも大きな氷の結晶が付いている。

 ふと、ヴォルが足を止めユージオを手で静止させる。そしてその手を下に動かした。この動作は「しゃがめ」という意味だ。それに従いユージオはしゃがむ。


ユージオ「どうしたの?」

ヴォル「話し声が聞こえる。恐らく、いや絶対にゴブリン共の声だ」

ユージオ「!」

ヴォル「・・・・・・このまま近づくぞ。  おぅぇ・・・・・・」

ユージオ「だ、大丈夫?」

ヴォル「チィッ・・・・・・大丈夫だ。いいか、作戦通りに行くぞ?なるべく身体発火しないように火力は抑えるから、我慢してくれ」

ユージオ「わかった」


 僕には聞こえないが、ヴォルにはゴブリンたちの話し声が聞こえるらしい。

 ヴォルが口元を抑えている。これは多分ゴブリンたちの話で吐き気を催したのだろう。以前聞いたことがある。強姦などの強制的な性行やそういう話を聞くと吐くと。そして、だからこそ殺さなければならないという事も。ヴォルはそういう人間を極度に嫌い、それを頻繁に行っているらしいゴブリンを殺している。


ヴォル「セルカのバカ妹がぁ、帰ったらもみくしゃの刑だぁ」

ユージオ「それは止めたげなよ。アレ、やられてる側が可哀そうになるから・・・・・・」


 ヴォルが言う「もみくしゃ」とは、くすぐりの刑である。それも敏感帯と言う敏感な部分をずっとくすぐり続ける。ヴォルが相手の反応をみてくすぐる場所をちょくちょく変えるので、耐性ができない。しかもエスカレートすると、秘部まで弄ってくる。前に被害に遭った女の子にした後のヴォル曰く『いやぁ~、反応が可愛すぎてついヤちゃった☆テヘッ♪♪』だ。それにライアも前に被害に遭った。ライアは結構女顔なので、麦わら帽子をして、女物の服を着れば完全な女の子になるだろうという容姿持ちだ。それに声も少し高い。被害直後のライア曰く『もう、ね。されたくないアレ。気を抜いたりしたら女にされてた・・・・・・』。結論・・・・・・ヴォルのくすぐりはヤバイ。


ヴォル「!止れユージオ・・・・・・」

ユージオ「どうした?」

ヴォル「奴等だ。 ヒィ、フゥ、ミィ・・・・・・取り巻き4体、ボスらしき奴が1体、計五体」

ユージオ「そ、そんなに・・・・・・」

ヴォル「少ないってことは、恐らく偵察部隊かもしれん。だがつい最近ってことはまだ洞窟の入り口は見つかってない」

ユージオ「じゃぁ・・・・・・」

ヴォル「一石三鳥。セルカを助けるのにあいつらを殺し、村への被害が減る。それに、俺とコイツの餌にもなる。まさにこの言葉が似合う」

ユージオ「・・・・・・」

ヴォル「んじゃ、大き目の隙を作っから見逃すな。セルカを頼んだぞ?」スゥゥゥ・・・・・・

ユージオ「わかった!」


 ヴォルとユージオは腰に差している愛剣を抜き、氷の結晶の影から出てゴブリンたちの前へと姿を出す。

 二人の姿を視認したゴブリンたちが一斉に口を開け、言葉を発す。


「おいおい、どうなってんだぁ、また白イウムの餓鬼が二匹も転がり込んできたぜぇ!」

「どうする、こいつらも捕まえるかぁ?」

「男のイウムは殺せ。女の方は捕まえろ」


チッ・・・・・・


 隣のヴォルから舌打ちの音が聞こえた。ふと彼女の顔を見ると右目の包帯から血が滲み出ていた。額に血管がくっきりと見えるほど、頭に血が昇っているのが分かる。相当怒っているようだ。

 追加事項。ヴォルは怒ると右目から血が出てくる。これについては頭に血が昇るからだとか。そして、こういう時に限って____


ヴォル「すまんユージオ、作戦変更だ」

ユージオ「・・・・・・どんな作戦?」

ヴォル「こいつら先に殺す」

ユージオ「わかった。下がっておく」


 怒ってるときに限り、急な作戦変更が来るのだ。

 ユージオはヴォルの後ろに下がる。対してヴォルは二歩前に出て剣を下に下げる。下げた剣の切っ先が結晶に当たり甲高い音が響く。


「男の方はさっさと殺しちまおうぜ!」


 一匹のゴブリンがそう言う。


「女のほうは俺が一番にもりゃう・・・・?」


 二匹目のゴブリンが言葉を発する。しかし、その声は途中から呂律が回っていない。


「あん?どうしt、ッッ!!?」


 他のゴブリンよりもひときわデカイゴブリン、恐らく隊長が二匹目のゴブリンの話し方に疑問を覚えそっちを見る。隊長ゴブリンの口から出たのは悲鳴にも似た声だった。


「あぇェ、おらノかリらGA・・・・・・  ドグチャ・・・・・・


 何故なら隊長ゴブリンがみたモノは、頭から下にかけて文字通り真っ二つとなり、傷口が綺麗なため死にきれずに今だ立っている二匹目のゴブリンの姿だった。そして、その目の前には黒すぎる剣を上げている、剣を振り上げた後のヴォルグリムの姿だった。

 それと同時に、ヴォルがいたはずの結晶の地面に血が滲んだ包帯が降りてきた。


ヴォルグリム「ゴブリン風情が、俺達の太陽に触ってんじゃねぇぞぉ」ギロッ


 ヴォル、否。ヴォルグリムの右目は白目が黒く、黒目が紅い。そしてその紅目を縦に裂くかのように、まるで龍の目のように、真っ黒な瞳孔が開いている。それは怒り、憎しみ、悲しみ、嘆き、・・・・・・絶望が混ざり合ったようなどす黒い目。


「ひ、ヒィィィィィ!!!!」


 目の前にいた仲間が殺されたと視認した三匹目のゴブリンが、悲鳴を上げて逃げていく。≪敵に背中を向けて≫。ヴォルが言った、どんな状況でも敵がいるのなら背を向けるな。それが、人を殺せる力があるのなら絶対に背を向けてはいけない。もし逃げたのなら、、、、、ソレは、殺す側にとって、ただの格好で絶好の的だ。


ヴォルグリム「逃げんなよクソども。さっさと肉になれや」ザシュッ!

「ひぃぃあぁああああ・・・・・・」ドグチャァ・・・・・・


 逃げていたゴブリンの悲鳴が途中で止まる。そして、その体が縦に先ほど死んだ同族と同じように裂ける。こちらもやはり死に切れてないのか、倒れた後でも動いている。


「」ピクピク、ピ・・・・・・


 そして、絶命した。


ヴォルグリム「さぁて、次はお前♪」ニコッ・・・・・・


 そのときのヴォルの笑顔はすさまじく可愛らしかった。しかし、その笑顔はゴブリンたちにとっては死を表すモノであり、全員が洞窟の奥の出口へと全力で走り逃げるのは一秒とかからなかった。

 しかし、怒り狂った《凶人》がそれを許すはずがない。最後尾のゴブリンの後ろに一瞬で着けば、片手で持っている大剣を振り下ろす。その数秒後にゴブリンが裂け始める。それと同時に凶龍は次の最後尾の獲物へと剣を斜めに振る。そのゴブリンも真っ二つに綺麗に裂ける。残るは隊長ゴブリンだけとなった。


「な、なんなんだぁ、あの餓鬼はァ・・・・・・!!?」


 いけない!ヴォルが取り巻き達を潰していたせいで隊長の方は出口に到達していた。あの先はダークテリトリーの地が広がっている。例えヴォルでも、禁忌目録にあるダークテリトリーに侵入してはいけない、此れは守るはずだ。


ユージオ「ヴォルッ!!」

ヴォルグリム「逃げるとは、暗黒領域人、いや・・・・・・ゴブリン失格だぜぇ?」


 ヴォルは投球の体勢に入る。引かれている右手には前方に切っ先を向け、逆手で持っている煉獄の剣だ。まさか剣を投げるのか?!


「抜ければ、俺様の勝ちだっ!!次は千人連れて殺してやるぞ!!貴様らの村の全員をなぁ!!」


 ゴブリンが勝利を確信した声で叫ぶ。


ヴォルグリム「次、か・・・・・・寝言は寝て言え」ブンッ!!


 ヴォルグリムがその体が霞む速度と勢いで黒炎を纏う大剣を投げた。直後に耳をつんざく轟音が洞窟内に鳴り響く。そして、剣の切っ先はゴブリン。


 ザシュッ!! パァァン!!


 肉を貫く音が聞こえた。直後、何かがはじける音が聞こえた。ゴブリンを見ると首に剣が突き刺さっているが走っている。【首から上が無い状態】でだ。数秒後、ゴブリンの身体がダークテリトリー側の地面に着いたと同時に剣の重さで、背中から倒れた。そして、頭が無くなった首の切口から血を噴射させ、刺さっている煉獄の剣をまた一段と赤黒く染め上げた。


ヴォル「さて、ユージオバカ妹を頼んだ」

ユージオ「ん、了解」

ヴォル「・・・・・・」


 ___俺がユージオにセルカを任せた理由はいくつかある。一つは、前の作戦で俺がゴブリン共を殺すからその間に救出もあるが、なにより『もみくしゃの刑』を宣言してしまった。俺がおぶると、いつの間にかだっこして脇やら脇腹やら敏感帯等を刺激しまくるかもしれないからだ。それに、『人』を殺した手であまりセルカを触りたくない。あの穢れの一片もない全てを包む太陽を穢したくはないからだ。


ユージオ「ヴぉ、ヴォルっ、大変だっ!!」

ヴォル「あぁ?どうしたぁ?」

ユージオ「せ、セルカが怪我して血を流してる!!」

ヴォル「なんだと!!?」バッ!

ユージオ「ここだ!脇腹部分!!」

ヴォル「これは・・・・・・傷が深い!それに長時間の治療なしの出血だ。・・・・・・正直、ここまで生きているのが奇跡だ」


 荷台に縛られて気絶しているセルカは、脇腹に深い傷があり、顔が青を通り越して白くなっている。出血しすぎている証拠だ。


ユージオ「ど、どうする!?」

ヴォル「ユージオ、修道士の姉ちゃんが言った高位神聖治癒術こと、覚えてるか?」

ユージオ「そ、それって・・・・・・他の人たちを手を繋いで天命を削って死にかけの人を治すやつ?」

ヴォル「そうだ。それをやる」

ユージオ「で、でも!あれは・・・・・・!!」

ヴォル「それに、術式を組み唱えるのはお前だ、ユージオ」

ユージオ「な、なんだって?!」

ヴォル「いいかユージオ。この治癒術は天命値が多い方から優先的に天命を削る」

ユージオ「で、でも、術式が僕より得意なヴォルの方が適任なんじゃ!」

ヴォル「いいか、これは天命を減らす術だ。俺の方が天命値は圧倒的に多い!なら俺のが削られ、お前への負担を消したほうが良い!」

ユージオ「っ!」

ヴォル「もう時間がない、すぐに始める。俺が術名を言うから、お前が復唱して唱えろ」

ユージオ「わかった!」


 ヴォルはユージオの左手を繋ぐ。ユージオは右手を広げ、セルカの胸に触れる。


「『システム・コール』!」


 術式を唱えるにあたり必要な前術式を唱える。ユージオには意味は分からないが、不思議な響きに聞こえた。しかし、ヴォルは違う。この世界で言う『外の世界』からやってきた彼女は、この世界を創った《神》の一人である彼女は、外の世界からの迷い人は、その意味を理解している。だからこそ、この世界が《仮想世界》だということを認識させられる。

 ヴォルとユージオがほとんど同時に唱え、復唱する。


「___『トランスファー・ヒューマンユニット・デュラビリティ、ライト・トゥ・レフト』!!」


 きーんという音が洞窟内に反響し、耳に刺さる。直後、ユージオを中心とし、青い光の柱が屹立した。

 かの『聖なる光』と同等の眩しさだ。巨大ドーム内の隅々までライトブルーで染め上げている。俺は眩しさになれているため目を開いたままだったが、ユージオに握られた手が異様な感覚を覚えたので、左目を細める。

 まるで、身体が、魂そのものがその光に溶け、右手からユージオに流れていくような感覚だ。

 歪な目と普通の目で、握り、握られている手を見る。実際に、俺の身体から光の粒子がユージオの左腕を通り、右腕へと伝わり、セルカの身体へと入り込んでいっている。

 『トランスファー/デュラビリティ』。英語が全然ダメな俺でも、意味はなんとなく分かる。この現象と合わせれば、人から人へと天命を移動させる神聖術ということが一目で分かる。左手で『ステイシアの窓』こと『ウィンドウ』を出す。天命値を見ると、結構ある天命値が数千減っていた。

 数千、結構多いな。そう思っただろう。しかし、俺だけはこの世界でのHP、つまり天命値は諦観用に設定されているので、軽く9桁は行っている。この世界の平均天命値は10000・・・・・・。俺は、HPを管理していたをした同僚にやりすぎだ馬鹿、と心の中で叫んだ。10桁、1000000000以上は本当にやりすぎだゴラァ!!帰ったらもみくしゃの刑じゃぁ! あ、彼奴ドⅯだったわ・・・・・・意味ネェ(#^ω^)

 そんなことを思っていると、セルカの出血が止まり、傷口が治りつつあった。治癒を始めて数十秒でほぼ治ってきた。流石膨大な天命値を移しただけはある。しかし、傷口を塞ぐにあたり、傷口から流れ込んだ天命が空に散ったのだろう。傷は小さくなってきたが完全な治癒にはなっていない。しかも、骨だけでなく内臓にまで達していた傷だ。遅いのは当然だ。

 だが、詠唱者のユージオの負担が心配だ。どんな術式でも、詠唱者には負荷がかかる。それが高位術だったらなおさらだ。


ヴォル「大丈夫か?」

ユージオ「あ、あぁ・・・・・・何ともない・・・・・・」

ヴォル「そうか。あまり無理はするな。きつくなったら、すぐにやめろ。セルカが目ぇ覚ました時親友の死体を見たくはないだろ?」

ユージオ「・・・・・・わかった」


 なんともない。その割には結構息が上がっている。俺が止めなければ疲労死するLEVELだ。

 直後、ユージオの身体がぐらりと揺れた。 マズイ!無理をさせ過ぎた! ユージオには、俺の持つこの世界ではあり得ないほどの膨大な天命が直接流れている。それが天命最大値10000の身体という器に耐えられるだろうか。その答えは、否だ。どんな器でも、容量には決まりがある。それを超える物を入れてしまえば、零れ落ち、器に負荷がかかる。ユージオを止めるために俺は動く。

 しかし、動くよりも早く、ユージオが俺を見た。その眼を見た俺は動きを止めた。何故か身体が動かない。


ヴォル「ぐおっ・・・・・・!?」


 その時、俺の身体が悲鳴を上げた。しまった、天命の急速な消費で、俺自体に備わっている防衛機能が起動したのだ。


ヴォル(クソッ!クソッ!クソっ!!クソがァっ!!こんな時にィィ!!)


 動こうにも動けない。これじゃ【あの時】と同じだ。あの時の光景と今の光景が重なった。俺の心に恐怖が、絶望が生まれた。俺が、死よりも恐れているもの、《孤独の恐怖》・・・・・・。



 ふと、両肩に、誰かの手を感じた。

 暖かい。まるで、太陽の光が全身を包み込んでいる感覚に似ている。心の中で凍りついていた《恐怖》がゆっくりと溶けてゆく。

 俺は、この手を知っている。小鳥の羽のように華奢で、触れてしまえば壊れてしまいそうな・・・・・・しかし、誰よりも力強く未来を掴もうとしていた手。


 ・・・・・・だれだ、お前は・・・・・・?


 声ではなく、心の中で呟いた言葉だった。

 しかし、俺は知っている。自分と最も近い存在の彼女を・・・・・・。


『お姉様、ユージオ・・・・・・待っているわ、いつまでも・・・・・・セントラル・カセドラルのてっぺんで、をずっと、待ってる・・・・・・』


 ・・・・・・お前は・・・・・・アリス、なのか・・・・・・?


 黄金の光が太陽のように煌き、俺の内部を満たす。その光の圧倒的エネルギーは俺の背中を押すには十分すぎるほど輝いた。俺は体を動かし、小さな声で【天命急速逆流遅延術】を発動させる。セルカを助けるために暴走気味の親友のうなじへと唇を近づけ、『甘噛み』した。











祭りの余興に舞い降りる満月



 あの誘拐事件から数日が立った。

 ここはツーベルク家のユージオの部屋。俺は、上半身を起こしているユージオの隣に座り、持ってきた果物の盛り合わせの中から真っ赤な林檎を一つ取り出し、常備している短剣の中から、切り分けようの小さめの短剣を取り出し、林檎を切る。


ヴォル「体調はどうだ?」

ユージオ「寝てたらよくなってきたよ。迷惑かけてごめんね?」

ヴォル「ならよかった。次に無茶したら《甘噛み》じゃすまさんぞ?」

ユージオ「わ、わかったよ。あれは本当にびっくりしたんだからね」

ヴォル「いやぁ、うなじが敏感帯で助かったわ!あそこ狙いやすかったし!」

ユージオ「思い出しただけでも恥ずかしいよ・・・・・・」

ヴォル「はっはっは! ほれ、りんご」

ユージオ「あ、ありがとう///」


 ユージオは、ヴォルから食べやすいように切られた林檎を受け取った。しかも、そのリンゴはウサギ型だ。


ユージオ「あ、かわいい。この形はうさぎ?」

ヴォル「おうよ。皮を半分取って、もう半分をその半分まで切り取らないように浮かして、その浮かしたところを三角に切れば耳ができる」

ユージオ「それでウサギの出来上がり、ってわけだね。こういうところは器用だよね」

ヴォル「しゃっしゃっしゃ! これでも習得するのに苦労したんだぜ?」


 この世界ではないところでだが、嘘は言っていない。 ちなみに、作者は皮ごと食うのでやったことはあまりない。


ユージオ「セルカの様子はどう?」

ヴォル「お前が無茶してくれたおかげで、天命値の容量上限がOverしたから、元気が有り余って逆に困ったもんだよ」

ユージオ「おー、ばー・・・・・はよく分からないけど、元気そうでよかったよ」

ヴォル「そうだな。ま、困りもんだが、夜の準備で徐々に消費していってるよ」

ユージオ「そうか」

ヴォル「ところで、俺達には祭りで激しい運動が待っているが、大丈夫か?」


 そう。本来はセルカが洞窟にさらわれた日の夜のは、ギガスシダー倒木の祝いとして村全体で祭りを行う予定だった。

 しかしセルカが失踪したため、親父がこの件が漏れないように色々と理由を付けて延期にさせてもらった。


ユージオ「うん。さっき剣を持ってみたけど、普通に持てたよ」

ヴォル「それなら大丈夫そうだな。 ほい二個目」

ユージオ「ありがと」ス・・・

ヴォル「なぁ~んてな♪♪」ヒョイッ パクッ

ユージオ「あぁー!なんで君が食べるのさ!」

ヴォル「シャクシャク ひゃにいってんらぁ?ゴクン 俺がとってきたもんなんだから、食ったって問題なかろう?」

ユージオ「まぁ、確かにそうだけどさ・・・・・・」

ヴォル「んじゃ、俺は手伝いがあるけん、行ってくるさね」

ユージオ「うん。気を付けてね?」

ヴォル「あぁ」スク・・・・・・


 ヴォルは椅子から立ち上がり、扉を開ける。そして僕は驚く。なぜならあれほどあった果物の山は、食べやすいように均等に切られていて、ヴォルの手の上のお皿に綺麗に盛られているからだ。

 そして、僕の前にある机の上のお皿にも、何時の間にか切ったのであろう、一口大の果物が盛られている。


ユージオ「ほんっと・・・・・・剣の扱いはすごいんだから」


 ヴォルの事だ、多分林檎を切っているときに、ついで感覚で全部切り分けてしまったのだろう。


ユージオ「さて、っと。・・・・・・ん~~!準備は後でしとこっと」


 祭りの主役の一人であり、一応病人のユージオは、夜まで安静にしとけとの事で横になっている。てな訳で暇なのだ。だから、また寝ようと思う。






【ルーリッドの村___???】



「あ゙ん? なんか飛んできたな。飛ぶってこたぁ、飛竜くらいしかいねぇから整合騎士か。赤の奴じゃねーな」


 俺は、ユージオの様子を見て外に出た後、お気に入りの場所で夜までのんびりすることにした。木の影で休んでいたら、上空で何かが通った気配がしたので影から身を出し、空を見上げる。

 この世界で飛べるのは飛竜くらいしかいないので、それを従える整合騎士が飛び通ったのだと考える。


「はぁ・・・・・・もしかして、ゴブリンの件かぁ? ま、あそこに来た奴にサプライズ置いてあるし、喜んでくれると嬉しいなぁ♪♪」


 セルカの治癒で倒れたユージオと、眠っているセルカを家で寝かした後、俺はもう一度洞窟の奥地へと赴いた。次に来る人達へのサプライズ兼メッセージを残すためだ。

 その内容は、巨大ドームの人界側の出入り口側の壁に、顔が無くなった隊長ゴブリンの身体を、耐久値無限の予備の剣で突き刺し、固定する。加え、殺した取り巻きタチの身体をさらに解体し、惨殺現場に見せ、放置することで、次に来る奴に恐怖と忠告を与えるためだ。

 ついでに言うと、ゴブリンの血で、天井や壁や床に神聖語と日本語、その他さまざまな国の文字で同じ意味の分を書いた。


「『次は、お前の番だ』・・・・・・。はっ、書いてる時に気づいたが、暗黒領域の人間だけでなく、整合騎士にも向けたメッセージになるとは」


 俺は、整合騎士が憎い。特に、この身体を燃やし、俺の愛しい彼女を連れ去った《弓使いの赤騎士》が。そして、それを黙って見ていた大人たちが。勿論、ユージオもそれに含まれてはいる。しかし、当時は、まだ幼かった彼は、整合騎士のその覇気と、禁忌目録を破ることを阻止するための謎のErrorの痛みに耐えきれなかったので、仕方ない。


「ま、何時かは剣を交えるんだし、お互いに首を洗って待っとこうぜェ?」


 剣を交える。其れ即ち、整合騎士と戦争を起こすという事。なぜなら、この世界から脱出するためにはこの世界に2,3個あるシステムコンソールという装置を必要とする。因みに、その装置も場所は特定している。というか、設計に関わっているので場所は事前に把握済み。

 一つは、このルーリッドの村から南にある都《セントリア》の中央に聳え立つ白亜の塔、教会《カセドラル・セントラル》の頂上にある。

一つは、暗黒領域の荒野のどこかに存在する、大型のシステムコンソールがある。教会の装置に関しては、話し合いが絶対と行っていい程無理なので、突撃して、強引な手段で頂上まで突破するからだ。だから、何人いるかもわからない最強の騎士達と闘わなくてはならないのだ。

 ま、争いはべつにいいとして、まずは外の連絡手段として、場所が特定していてなにより近いところにある《カセドラル・セントラル》を目指すことにする。

 《全人類の希望》の回収は、連絡が取れた後でも行えるし、何より、確実な方法を聞けるからだ。


「待っていろよぉ、整合騎士の駒共ォ・・・・・・。真の人形は、貴様らと我、どちらなのだろうな?」ニタァ


 彼女は右手にもっている、この世界に来る前に密かにダウンロードしていた超アルコール度数の酒___スピリタスを飲みながら、口を目を歪ませ呟いた。

 右目に巻いてある真っ白な包帯が深紅に滲み、溢れすぎた深紅の涙は包帯を抜け出し、頬を伝い、地面に落ちた。

 十分後、洞窟がある場所から南に向かって、大きな影が彼女の頭上を通り過ぎた。その影を背に酒をもう一度口に含み、飲み込んだ彼女はもう一度空を仰いだ。






【ルーリッドの村《夜》___中央広場】



ヴォル「・・・・・・10数年よぉ、この村で暮らしてきたがぁ・・・・・こんなに人がいたんだな」


 俺は、清酒の入ったジョッキを口を飲み干し、そう呟いた。てか、なんで清酒がこの世界にあるんだ? そういやぁ~、酒好きの奴がなんか入れとったっけか・・・・・・。酒豪の俺としちゃー、有難いが・・・・・・。あいつ怒られても知らんぞ?俺が言える口じゃねーが・・・・・

 ルーリッドの村中央広場では、松明の光が集まった人々を赤く照らしていた。噴水の傍らでは、ドラムやバグパイプのような楽器や、長笛による即興の楽団が音楽を奏で、それに合わせて踊る人々の靴音や、手拍子が響き渡っている。

 そんな中、祭りのどんちゃん騒ぎの場から少し離れた場所で座っている自分は、また__今度は瓶ごと清酒を飲んだ。

 正直に言う。俺は人が大勢いる処が苦手だ。リアルでも『現実』でも引きこもっていた俺は、コミュニケーション能力はほぼない。まぁ、人が苦手ってのもあるのだが・・・・・・。


ユージオ「僕も、村の人がこんなに集まるのを見たのは初めてかもしれないな。 年末の大聖節のお祈りよりも多いよ、絶対」


 そう言うのは、俺の向かい側の椅子に座っているユージオだ。右手に持った林檎酒__のような林檎ソーダ__を少しずつ飲みながら顔をほころばしている。

 この林檎酒は好みの味ではあるが、一番弱いアルコール度数の酒なので、ウォッカをがぶ飲みする俺にとってはジュースと同じだ。しかし、弱かろうが酒だ。まだ未成年であるユージオは一杯飲んだだけで顔を赤らめている。

 俺は、ユージオの顔を見ながら可愛いなと思いつつ、傍らの皿に盛られてある肉を頬張る。

 やべー、この世界に来てから肉をあまり食ったことねーからぶち嬉しい。

 肉・・・・・・。肉と言えば向こう、リアルの方を思い出す。リアルでは、家族や仲間たちと一緒に同じ屋根の下で同じ釜の飯を食い、同じ床で寝起きし、共に戦場へ赴いたころを………。

 この世界は、リアルの方で時間の加速を設定できる。それに、本物の肉体が朽ちない限り、この世界で死ぬことはない。例として、現実世界で加速度を『100倍』にしよう。現実では一日立っていても、このアンダーワールドでは100日経過している。『STL(ソウル・トランスレーター)』を使用していればの話だが、つまりこの世界では、現実世界からの訪問者は実質『不老不死』となるのだ。俺はこの世界で約13年は過ごしている。物心がついたのが4歳だったので、そのころにこの器に憑依する形でログインしたのだろう。


ヴォル「あっちの世界じゃ、まだ数日・・・・・・もしかしたら一日しか経ってないのかな?」


 そう小さく呟きながら、最後の焼き肉を口に入れる。皿には肉が山ほどあったのだが、向こうのことを想っているうちに全部食ってしまったようだ。

 一応、向こう側と情報を共有したい。俺がダイブする時点でこの世界ではアリスが生まれていた。そして俺が、アリスの双子の姉として生まれたこと。これは彼奴らを驚かすには十分なネタになるだろう。


ヴォル「なぁ、ユージオ~・・・・・・」

ユージオ「何だい?」

ヴォル「お前さ、セルカのこと・・・・・・」


 だが、続きを言う前に、俺が出そうとしていた話題の中心人物の甲高い声が頭上から降り、気づくと、俺は何者かの影に覆われている。


セルカ「こんな所にいた! お祭りの主役二人が何やってるのよ」


 その影の正体は、椅子に立ち、俺を上からのぞき込んでいる妹のセルカだった。

 いつも三つ編みにしている髪を解き、紺色のドレスを纏っていた。はっきり言おう。


ヴォル「天使だ・・・・・・。 天使がおるぞぉ・・・・・・」


 天使や。天使がおるんや。可愛い。まじで可愛い。結婚しよ。

 『いやアンタ・・・・・・女でしょ』。・・・・・・しまった、俺女だったよ・・・・・・。


ユージオ「どうしたの、セルカ?」

セルカ「どうしたもこうしたも・・・・・・。 なんで主役がこんな端っこにいるのよ!」

ユージオ「あ、いや・・・・・・僕、ダンスは苦手だから・・・・・・」

ヴォル「人、大勢いる場所、嫌い・・・・・・。 てなわけで此処にいる」ドヤァ

セルカ「なにどや顔してるのよ! それに、やっていれば何とかなるわ!」

ヴォル「いやいや、俺さっきまでこれ(清酒)飲んでたし、パス・・・遠慮するわ」

セルカ「だめよ。 お姉様はそのくらいじゃ酔わないってことは知ってますから! だから、踊るわよ!」

ヴォル「ウァッツ!?」

ユージオ「えぇと・・・・・・。 拒否権は?」

セルカ「ないわ!」

ユージオ「・・・・・・ですよねー」


 そして、俺とユージオの二人は天使に手を掴まれ、椅子から引きはがされた。セルカは俺達を広場の真ん中まで引っ張られ、どーんと勢いよく突き飛ばされた。途端に周りからうるさい歓声が上がり、一緒に踊らされる。

 幸い、俺はリアルの方で円舞をしている仲間がいて、暇なときや宴会の場で披露していたのですぐに踊る事ができた。

 何故か俺は女の子からのアプローチが多く、その子たちと踊り、今はレイアと踊っている。健康的な赤い頬で無邪気に笑い、ダンスになれてないのか、こけそうになりながらも俺に合わせようとする。俺は、その姿を見て微笑む。俺がエスコートしながら、ちょっとずつ教えながらレイアと踊る。レイアもこけそうにならなくなり、息が合って綺麗に踊れている。その姿に俺は、"妹"を重ねる。

 ___こう踊っていると、キリトやアスナ、ユウキたちとALOで空中円舞をしたことを思い出す。妖精との円舞・・・・・、まさに『フェアリーダンス』だ。その光景を思っていたら、頭の奥が少々痛む。

 唐突に音楽の音が鳴りやんだ。楽団の方を見ると並んだ楽器の隣にある演台に、父のガスフトが立っていた。

 村長は両手をぱんぱんと叩く。


ガスフト「みんな、宴もいいが、ちょっと聞いてくれ!」


 村人たちは、火照った身体を林檎酒を飲んで冷やす。そのジョッキを掲げ、村長の次の言葉を待つ。


ガスフト「___ルーリッドの村を拓いた先祖たちの大願は、ついに果たされた!

    肥沃な南の土地からテラリアとソルスの恵みを奪っていた悪魔の樹が倒されたのだ! 我々は、新たなる麦畑、豆畑、

    牛や羊の放牧地を手に入れるだろう!」


 ガスフトの声を、歓声がかき消す。村長は両手を上げて歓声を静まらせると、続けた。


ガスフト「それを成し遂げた若者__私の娘ヴォルグリム、オーリックの息子ユージオよ、ここに!」


 父が、広場の真ん中でそれを見ている俺とユージオ二人を手招きする。ユージオを見ると、緊張した顔の親友がいた。その隣には、やや小柄な壮年男性がいた。たしか、ユージオの父親だったな。

 さて、俺も呼ばれた理由は自分も黒大樹を切り倒したからだろう。しかし、正直めんどくさいのと、人前に出るのが嫌なので、ユージオにこの場は預けるとしよう。


ヴォル「悪いが、俺は遠慮する。やるならユージオだけにしてくれ~」


 はぁ、この世界で『パス』っつー言葉がないのが不便利だ。俺は、片手に腰のベルトに結びつけていた、携帯用のスピリタスの入った瓶を抜き、飲みつつその場から去ろうとするが、それは二つの手によって止められた。


ヴォル「おい、何故止める? 我が妹にして天使セルカ。そして、我が幼馴染にして親友ユージオよ」

セルカ「何処に行こうとしてるのですか~?」ニコニコ

ユージオ「そうだぞ~。僕だけに任せるのは、いけないなぁ~」ニコニコ

ヴォル「oh、Shit!!」


 くそったれ、ダメだったようだ。俺はユージオとセルカによって演台に立たされる。俺は瓶の中身を全部飲み干し、ため息をつく。


ガスフト「掟に従い___」


 村の人たちは口を閉じて耳を澄ました。


ガスフト「見事天職を果たしたヴォルグリムとユージオには、自らの天職を選べる権利が与えられる!

    このまま森で木こりを続けるもよし、父親の仕事を継ぐもよし、牛飼いになろうと、商売をしようと、

    なんなりと己の道を選ぶといい!」


 天職の選択か。俺はもう決まっているが、ユージオはどうするか・・・・・・。一応このことに関しては事前に話し合っている。その時は、まだユージオは『考えさせて』が答えだった。

 だが、あれから数日たっている。もう決めたのだろうか? いいや、決めてもらわなければ俺が困る。

 俺がユージオの覚悟について考えてると、父が続きを言う。


ガスフト「まず、私の娘ヴォルの答えを聞きたい。 だが、今でなくてもいい。じっくり考える時間はある」


 時間、か。んなもん、10数年も貰ったわいな。俺の答えはあの日、《希望の結晶》が連れて行かれたあの日に既に決まっていた。父を見て、次に村人の輪を見回し、セルカを見る。セルカの目にはなにかを悟ったような眼をしていた。


ヴォル「俺は剣士になる。・・・・・・そして、剣をさらに極め、セントリアに上がり、更なる高みへと上る」


 静寂の後、村人の間にざわめきが走る。ある者は哀れみ、ある者は夢物語という。ガスフトは娘の言葉に__否、その覚悟に驚いている。ユージオも目を開いている。事前に言っておいたのだが、やはり驚いたようだ。

 しかし、セルカはそれを見越していたようだ。セルカは悲しそうな顔をし、俺を見ている。


ガスフト「ヴォル、お前はまさか___」


 そこで言葉を切り、一瞬悲しそうな顔をしてまた続ける。


ガスフト「・・・・・・いや、理由は聞くまい」


 理由を聞かない。それはつまり、剣士になる理由が理解したという事だろう。

 さらに村人たちのざわめきが一層高まる。


ガスフト「さて、次はユージオだな・・・・・・」

「待ってもらおう!!」


 人垣を割って壇の前に飛び出したのは、大柄な男だった。

 朽葉色の短髪といかつい造作、そして左腰につられたシンプルな長剣に見覚えがあった。確かぁ、いつも南の詰め所に立っている衛士のジンクだったはず。

 その男は、壇上にいる俺と張り合うように胸を張り、太い声で叫んだ。


ジンク「ザッカリアの衛兵隊を目指すのは、まず第一にこの俺の権利だったはずだ! ヴォルグリムが村を出ることを許されるのは、

   俺の次じゃないとおかしいだろう!」

「そうだ、その通りだ!」


 ジンクが叫び声を発した後、中年のデブ男が進み出た。

 はぁ、一人でもうるさい奴が二人になった・・・・・・。めんどくさ。と思っていると、二人の言い分を聞いた親父が、言った。


ガスフト「しかしジンクよ、お前はまだ衛士の天職に就いてまだ六年だろう。

    掟では、あと四年経たなければザッカリアの剣術大会に出ることはできんぞ」

ジンク「ならばヴォルグリムもあと四年待つべきだ! 剣の腕が俺より下で、それに女であるヴォルグリムが俺を差し置いて

   大会に出るのはおかしい!」

ヴォル「・・・・・・」ブチッ

ユージオ「? ・・・・・・!?ぼ、ヴォル・・・・・・?」


 ___何か張ったものが切れるような音が左隣から聞こえたので、そちらを見てみると、額に血管を浮かせながらニコニコしているヴォルがいた。

 あ、まさかさっきの『剣の腕が俺より下・・・・・・』『それに女で・・・・・・』というジンクの言葉が逆鱗に触れたのだろう。右目の包帯が赤くなっている。


ガスフト「ふむ。ならばどうやってそれを証明するのだ? お前の方がヴォルより腕が立つことを?」

ジンク「なっ・・・・・・」


 ガスフトさんの方を見ると、この人もヴォルと同じで額に血管が浮き上がっている。娘を馬鹿にされて怒っているのだろう。こういうところはやっぱり親子だ。ヴォルはガスフトさんの事を、避けているが、馬鹿にされると怒る。

 それに、怒ったときに浮き出る血管の場所が、同じ位置にある。


「ルーリッドの長と言えど、その暴言は聞き捨てなりませんな! 息子の剣が、木こりごとき、ましてや小娘に遅れをとると申すのなら、

この場で手合わせさせてみてはよいでしょう!」

ガスフト「いいだろう! こっちは、娘の事を馬鹿にされて聞き捨てならんのだよ!」


 ドイクだけでなく、他の村の人たちも驚いた。それはそうだ、いつも温厚な村長が初めてと思うほどに本気で怒っているのだから。

 しかし、村人たちは、思いがけぬ祭りの余興を楽しめそうだと見て、ジョッキを掲げ、足を踏み鳴らし、試合だ試合だとわめく。


ヴォル「勝手に決めんなよ、親父ぃ」

ガスフト「すまん。どうしても我慢ならなかった・・・・・・」

ヴォル「ま、いいさね。暇つぶし程度には・・・・・・にもなりそうにないが、軽く遊んでやらぁ」ニタァ

ガスフト「お前の強さは俺もよく知っている。加減はしろよ?」

ヴォル「安心しろい、剣は使わなねーよ。 正直剣と剣の斬りあいは飽きた」

ガスフト「ん? ならどうやって試合するんだ?」

ヴォル「それは、ひ~み~つ♪」ニコッ

ガスフト「? まぁ、やりすぎるなよ?」

ヴォル「はぁ~い♪」


 ___ヴォルは戦いや、争いの場では何故か素直な笑顔になる。普段も普通にあの笑顔をしてくれればいいのに・・・・・・。言っても馬の耳に念仏、か。

 ヴォルは壇から降り、少し離れた場所にいるジンクに向かって一礼した。

 壇の上でガスフトさんが両手を叩き、静粛に! と叫んだ。


ガスフト「それでは__予定にはなかったが、これより、この場で衛士長ジンクと、剣士ヴォルグリムの立ち合いを執り行なう!

    剣は寸止めにて、初撃決着制にする。互いの天命を損なうことを能わず! よいな!!」


 その言葉が終わるや否や、ジンクがジャリンと音を立てて腰の剣を抜く。それに対しヴォルは、祭りが始まってからずっと気になっていたのだが、腰にさしてあるもう一つの剣の様なものの柄に手をかける。『剣の様なもの』と言うのは、剣にしては細いし、垂直ではなく、すこし反っているいるからだ。あの剣は今まで見たことない。ガスフトさんなら何か知っているのだろうか?


 場が騒然とする。セルカも目を見開いていた。しかし、ガスフトさんだけは平然としていた。僕はガスフトさんに聞いた。


ユージオ「ガスフトさん、あの剣のこと知っているのですか?」

ガスフト「あぁ、ヴォルが生まれてきた夜に、どこからともなく現れた剣だ。詳細は一切わからんが、これだけは言える。

    あの『刀』は、ヴォルの物だと」

ユージオ「え! ヴォルの武器って煉獄の剣だけじゃなかったの!? それに、かたなって?」

ガスフト「ああ。ヴォルがそう呼んでいたからな。 それに合わせて私もそう呼んでいる」

ユージオ「そう、なんですか・・・・・・」


 本当に、幼馴染であり一番の親友であると思っている僕も、いまだに彼女の事はよく分からない。


ジンク「ヴォルグリム、その剣は本当にお前の物か!? もし借り物なら、俺には使用を拒否する権限が・・・・・「無論我のだ」 なに?」

ヴォルグリム「聞こえなかったのか?なら致し方ない。もう一度言う。 この武器、『刀』は我の物だ。故に、貴殿に拒否する権限はない。

      嘘だと思うのなら、我が父に確認すればいい」


 ジンクはガスフトの方を見る。それに対し、ガスフトは首を縦に振る。肯定の意味だ。村長の肯定に、村人たちが低くざわめき、ジンクは言葉を詰まらせる。

 ___それにしても、先ほどのヴォルの口調が気になる。あのような口調は今まで聞いたことがない。

 ジンクは何も言わず、両手で自分の直剣を大上段に構えた。

 対してヴォルは、鞘からその長剣ならぬ長刀を抜く。その刀の刃が現れたと同時に、おおぉという感声が聞こえた。僕やセルカ、村のみんながその刀身に目を奪われていたからだ。その理由は、ルナ・・・ヴォルが言う『月』の光を受け、白銀の刃が美しく輝いているからだ。


ヴォル「今宵の月は、曇り一つも無き満月だ。 貴様のような小童には、勿体無いくらいの美しき死日だな」

 

 ヴォルは力を抜いたのか、腕を、全身を脱力した。その証拠にフラフラと、今にも倒れそうな雰囲気を出している。

 数百人の村人が息をつめて見守る中、ガスフトさんが右手を高く掲げ、「始め!」の声とともに振り下ろした。


ジンク「ウオオオオオッ!!」


 ジンクはヴォルに向かって、野太い気合を放ちながら、寸止める気はあるのか?と思わすぐらいの勢いをつけ、真っ向から唐竹割を___


ユージオ「・・・・・・なっ!?」


 僕は思わず驚愕の声を漏らしてしまった。ジンクの剣が、空中で大きく軌道を変えたのだ。上段からの斬り下ろしと見せかけての右水平斬り。しかも、ヴォルはいまだに脱力した状態でその場から動いていない。あのままでは、水平斬りが左横腹に入り一本取られてしまう・・・・・・


ヴォル「・・・・・・」ス・・・・・・


 ヴォルは少し体を動かした。そして、僕はほんとうに息が詰まった。

 ヴォルが動きを止めた後、彼女が立っていた場所は、剣を振りかぶった後のジンクの背後だったからだ。

 異変に気付いたジンクが後ろを振り向く。その直後、剣の刃が粉々に砕けた。__否。破片をよく見ると、全ての破片の形が綺麗に整っている。砕かれた、というよりは《斬られた》と言ったほうが正しいだろう。

 ジンクが、村人の全員が、何があったのか分からない風に唖然としていると、またしても新たな驚き。ジンクの服が破れ、地に落ちた。これも、剣の刃同様に何かに斬られたような跡がある。

 そのような技、神業ともいえる行為をしたのは一人しかいない。彼女にしかできない。


「で、誰が貴様より剣の腕が下だって? 先に言っておくが、ユージオも貴様よりも遥かに強いぞ」

ジンク「な・・・・・・」


 その神技を見せた彼女、ヴォルグリム・ツーベルクは、背後で体を小さく震わせているジンクを見た。

 彼女は低い姿勢から普通の姿勢に戻るのと同時に、刀を右斜め下に振り、刃を鞘の穴の縁に沿わせ、刃を収める。やはり、直剣とは何かが違う。


ヴォルグリム「剣って言うのはよぉ、その重さを利用して相手を斬る。いわば『叩き斬る』なんだよなぁ。

      だがぁ、刀はよぉ、斬ることのみに特化した東洋製の剣だ。その軽さと形状を利用して、相手の攻撃をいなすこともできる」


 僕には、何を言っているのかが理解できなかった。しかし、これだけは分かる。あの刀と呼ばれる見慣れない謎の剣は、使い手によっては、危険すぎるものだということが。

 誰も予想だにしなかった、しかし見事な剣技、不可思議な決着にわっと湧く村人たちに交じって、彼女に向かって両手を盛んに叩きながら、僕は、本当に追えるのだろうか、一緒の高みへと上れるのだろうかと思った。

 その時、ふと、背中に人の気配を感じる。その次に、両肩に、誰かの手を感じた。

 暖かい___まるで、ソルスの光に包まれているみたいな感覚だ。


 ・・・・・・・・・きみは、誰・・・・・・・・・?


 でも、僕はこの手を知っている。


 『ユージオ、あなたなら大丈夫よ・・・・・・あなたならできる。なんたって、あの人の相棒なんだから・・・・・・』


 身体の内に黄金の光が入ってくるのを感じる。その光が落ち着くと、先ほどまでに思っていた不安などは綺麗に無くなっていた。

 さっきの現象を考えていると、ヴォルが僕を呼んだ。僕は手を振る。彼女は笑顔で、腕を伸ばしピースを作り、僕もピースして返す。そして、一番の親友のもとへと歩く。



 親父が、先ほど中断されたユージオの天職選択権を再開した。

 ユージオは___その翠色の瞳には覚悟という炎が燃えていた。


ユージオ「僕は___僕も剣士になります。ザッカリアの街で衛兵隊に入り、腕をもっと磨いて、いつか央都に上がります。

    それに、ヴォルと共に高みを目指したいんです」


 更なるざわめきが起こると思ったが、村人の皆が逆に沈黙していた。

 ユージオが困惑していると、直後村全体に響いたのは歓喜の叫びだった。



 ジンク親ドンヨリとしたオーラを纏いながら引き上げていくと、すぐに音楽が再開された。祭りはさらに盛り上がり、お開きとなったのは教会の深夜零時を告げる頃だった。

 先ほどのつまらない余興__いや、戯れにもならない立ち合いの際にだした熱を冷ますため、氷水で冷やしておいたスピリタス瓶一本を飲んだ。しかし、超極酒豪とは言え酔うものは酔う。酩酊状態で、比較的仲のいいおやっさんやお姉さんたちと楽しく駄弁っていると、セルカに「帰るよ!」呼ばれたので俺とセルカは教会へ、ユージオは自宅に帰った。ユージオのお母さんが「立派になったね」と泣きながら息子を抱きしめ、その息子は照れ隠ししながら「ただいま」と抱き返しながら言ったのが聞こえた。

 俺は、ユージオと別れる際に明朝の旅立ちの約束をした。酔っているので視界がぼやける。ただでさえ視力が悪い左目がさらに霞み、右目が見えない状態なので、視界が完全にアウトになった。セルカに引っ張られるように寝室へ向かい、ベッドに座り込む。


セルカ「まったくー、お祭りだからって呑み過ぎですよお姉様。 はい、お水です」

ヴォル「おぉう、あんがと」


 セルカは、俺の手にコップであろう容器を持たせ、手を包み、俺の口へと運んでくれる。コップの中身は井戸水だった。キンキンに冷えていたので、酔いも冷めてくる。

 俺はベッドに背を預け、隣で心配顔でベッドの端に座っている妹を見上げる。


セルカ「? どうしたの?」


 こちらの視線に気づいたのか、俺の方を向くセルカに謝罪した。


ヴォル「あ~・・・・・・悪かったな。もっとユージオと居たかっただろう?」


 途端に、まだドレス姿の天使の頬が、桜色に染まった。


セルカ「何言いだすんです、急に」

ヴォル「だってよ~ぉ、明日の朝にはもう旅立っちまうんだぜぇ? 元凶俺なんだけどな・・・・・・。

   俺が推さなければ、もしかするとあいつは木こりを続けて、何時かセルカと結婚することになってたのによぉ・・・・・・」


 俺が言い終わるな否や、ぼんっという音が似合うほどに、セルカは顔を赤くした。


セルカ「け、けけけ、結婚って・・・・・・!!わ、わたしが、ユージオと!?」

ヴォル「そうだよ」(肯定)


 めっちゃ驚いているセルカ。可愛い(迫真)。

 動揺しまくっているセルカは、深呼吸をして冷静になる。


セルカ「・・・・・・ふぅ。___それは、ユージオが村から出て行っちゃうのは寂しいけど・・・・・・

   でもね、あたし、嬉しいの。アリス姉様がいなくなってからずっと、何もかもを諦めたみたいに生きていたユージオがさ、

   あんなに笑うようになったんだもの。自分からアリスお姉様を探してくれるって言って、決めてくれた時にね、本当にうれしかった。

   お父様も喜んでいたわ。ユージオが、アリスお姉様をずっと忘れないでいたことをね」

ヴォル「・・・・・・そうか・・・・・・」


 セルカは頷き、窓の向こうの満月を見上げ続けた。


セルカ「あたしね・・・・・・少しでもアリス姉様近くに行きたかったの。自分の行けるところまで・・・・・・これ以上進めないところまで行って、

   そして、確かめたかった。あたしはアリスお姉様の代わりにはなれないんだってことを・・・・・・」

ヴォル「いや、セルカはすごいさ。普通の子なら入り口近くでもう引き返してる。

   セルカは、お前にしかできないことをしたんだ。 流石は俺とアリスの自慢の妹だ! お前は俺達の誇りだ」

セルカ「ヴォルお姉様と、アリスお姉様の・・・・・・自慢の、妹・・・・・・?」


 目を丸くし、涙目のセルカに大きくうなずく。


ヴォル「人は、決して人の代わりになる事など出来ない。 セルカ、お前には自分だけの才能がある。

   その才能をゆっくりと育て、開花させていけばいいんだ」


 セルカは、神聖術の成長のスピードが速い。このまま積み上げていけば、凄まじい才能という花が咲くと、俺は確信している。

 セルカは、心の中ではやはりアリスを求めている。セルカ本人も、自分もダークテリトリーの地に触れれば一緒の場所へ・・・・・・と思っていることを自覚しているのだろう。


ヴォル「・・・・・・セルカ」

セルカ「・・・・・・なに?」

ヴォル「《剣士の誓い》って知ってるか?」

セルカ「剣士の、誓い・・・・・・?」


 俺は体を起こし、セルカの前で片膝を床につける。そして、顔を近づけ、その白い手の甲に唇を付けた。

 セルカはぴくっと体を一瞬震わした。数秒後、俺が顔を離すと、耳まで真っ赤にし、目を真ん丸にして見下ろしている。


セルカ「な、なにしてるの・・・・・・?」

ヴォル「言ったろ、《誓い》だって」


 この世界では、俺の覚えのない《謎のCHORD》によって唇への口付けなどの行為が制限されている。この世界の住人には失礼だが、やはり、俺が作った、縛られるものが一切ついていないこの身体は楽でいい。

 俺がそんなことを考えていると、俺の顔を凝視しながら、セルカは自分の右手を左手で触れると、小さく呟いた。


セルカ「でも、手じゃなくて・・・・・・にしてたら、今頃整合騎士が飛ん来るのは分かってるのよね・・・・・・?」

ヴォル「今頃?まっさか、セントリアからここまでは、飛竜であろうが一日はかかる。そうなったら、整合騎士は間抜けだ。

   なぜなら、罪人に数時間という逃亡、或いは迎撃の準備等の時間を与えているのだから。 ・・・・・・それに」


 俺は、整合騎士への罵倒を言いながら次の言葉を誰にも聞こえないように、小さく小さく、口に出す。


ヴォルグリム「例え整合騎士だろうが、縛られし者が、たかが数百年生きた餓鬼如きが、創られた人間が・・・・・・

      《抹消者》にかなうはずなかろう」

セルカ「? それに?」

ヴォル「・・・・・・いや、何でもない」


 俺は、この世界の住人に、この世界の人間ではないと今はまだ知られるわけにはいかない。そう、《今はまだ》だ。

 白亜の塔に囚われているであろう《希望の結晶》を連れ出しこの村に帰る。そして俺は正体を曝し、例え悪役になろうとも、この世界の家族から悪と呼ばれようと、《希望の結晶》を必ず回収しなければならない。しかし、殺しはあまりできない。この世界に住まう人々は、全て赤子で生まれ、血が流れ、生きている。それに、上の連中からも殺しは控えろとの指示も出ている。

 俺がまた考えていると、セルカが口を開いた。


セルカ「それで・・・・・・何を、誓ってくれたの?」

ヴォル「うん? 決まっているだろ。・・・・・・俺はユージオと共にアリスを連れて帰る。この村に太陽を再び昇らせる。約束しよう・・・・・・」


 少し間を置き、ゆっくりと、懐かしい二つ名を口にする。


ヴォル「この俺・・・・・・《天帝》の、名に懸けて」






 今日もいい天気だ。こんな日は、草原の丘の木陰でワインをあおるに限る。

 セルカが作ってくれた弁当が入った風呂敷を、俺は左手に、ユージオは右手に持って、南に向かって歩いていた。

 俺の背中には煉獄の剣と、最低限の荷物。腰には二本の長刀を差している。ユージオは、腰に青薔薇の剣を差し、自分の荷物を背負っている。

 俺達は村を出るときに、各家庭に赴き挨拶をした。レウス、レイアを含む子供たちには泣かれたが、ちゃんと戻ってくると言ったら俺が教えた『ゆびきりげんまん』で約束をした。

 ゆびきりげんまん・・・・・・こうして約束事をしたのはかなり久しぶりの気がする。右手の小指だけを立てて、それを見つめる。


ユージオ「さぁ、行こう、ヴォル!」


 ふいに声がしたので顔をを上げる。すると、未知の世界、村の外の世界への期待に輝くユージオの笑顔が眼に入る。


ヴォル「・・・・・・そうだな。行くかぁ!」


 俺は、生まれてからずっと一緒に居る幼馴染であり、親友の少年と肩を並べ、南へ___この世界《アンダーワールド》の中心、全ての『核』、全ての謎の答えがある場所へ延びる道を、歩き始めた。






インフェルノ・アリス 終



後書き



 この物語は【あるはずのない】、しかし【もしかしたら】の世界線のお話。
 【伝説の浮遊城】では《黒の剣士》の相棒、【妖精住まう箱庭】では《姫》を救うべく勇者と共に偽りの王を打ち倒し、
 【銃声轟く荒野】では《死銃》の弾丸となり、【解放された妖精の世界】では《絶剣》と《閃光》、《眠る騎士団》を導き、救う者となり、
 【仮想化された現実】では、全てを《削除(デリート)》する敵として生きた。  
 《人》の心を知り、《魂》が芽生えた《操り人形》が【アンダーワールド】に迷い込んだら。
 【箱庭のアリス】【踊るアリス】【鳥籠のアリス】【道化師アリス】【嘘つきアリス】【盲目アリス】【純白のアリス】【穢れのアリス】
 【首吊りアリス】【断首のアリス】【炎塊のアリス】【氷塊のアリス】【継ぎ接ぎアリス】【忘却のアリス】【啼哭のアリス】
 【大罪のアリス】【断罪のアリス】【贖罪のアリス】【虚無のアリス】【灰燼のアリス】【混沌のアリス】【渾沌のアリス】【煉獄のアリス】・・・・・・・・・・
 様々な人形の《絶望の想い》の結晶、全世界を蹂躙し、支配し、救済し削除する少女の物語。

 今、もう一つの《現実世界》に【煉獄の唱歌】【混沌の鎮魂歌】【百鬼行進曲】・・・・・・・・・世界に、三つの咆哮の音色が轟き、響き渡る。





【煉獄の剣】
 ヴォルが肌身離さず帯剣している黒い剣。両手剣に匹敵するほどの大きさだが、ヴォルは片手で軽々と振るう。深紅の黒炎を自在に操る。

【青薔薇の剣】
 ユージオの愛剣であり、相棒の様な存在。長き年月を渡った氷からできた物。ユージオの呼びかけに応え、助けてくれる。

【嘘魂喰 獄雷葬】
 ヴォルが持つ、白銀に煌く刃を持つ刀。彼女が世界に生まれた満月の夜に、突如として現れた刀の一本。深紅の雷を纏っている。


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1件コメントされています

1: 虚無の獄卒 獄蟲 2019-12-06 16:54:34 ID: S:ecovXN

 読んでいて思ったんですが、ソードスキルでギガスシダーが㎝単位しか削れないって、どういうこっちゃって思った方。
 分かる。すげーよく分かる。自分も読んでいて思いましたから。

 まぁ、そこはギガスシダーが原作よりも硬いってことにしておいてください。


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