2020-02-23 18:02:29 更新

概要

オリジナルss 炎竜討伐に成功した。が、その後にとんでもない事実を知る…


どこかの森 炎竜討伐後


炎竜を討伐した後、遺体をそのままにしておくわけにはいかなく、俺の指示の元、炎竜を解体する作業をカイゼルと3人の騎士たちに手伝ってもらった。


グレン「ふぅ、こんなもんかな」


綺麗に解体された炎竜の部位をそれぞれ布に包んで持ち運べるようにする。竜の部位丸々使えるなんて貴重だし、せっかくなので持って行こうということだ。


カイゼル「ところで、今更なのだが...」


カイゼルが突然声をかける。


グレン「なんだよ、まだ俺たちを連行するつもりか?」


カイゼル「いや、もうそのつもりはない。逆に私達を助けてくれたことにお礼がしたい。客人として王都にきてほしい」


グレン「...ほんとか?そんなこと言って俺たちを牢にぶちこむつもりじゃないだろうな」


カイゼル「騎士の誇りにかけてそんなことはしない」


グレン「.......」


まぁ見た目からして超真面目そうだし、騙すなんてことはしないとは思うが。


ナル「まぁ良いのではないか?どちらにせよ街に行かねばならんのだからな!」


ナルが隣にやってきて、そう言葉にする。


グレン「...そうだな、んじゃついてくわ」


カイゼル「感謝する...ところで、貴殿の名前を教えてもらってもよろしいか?」


グレン「ん?あぁー...」


会った時にも思ったがこいつは俺の顔を知らないのか。色々な国を周ったつもりなんだがな。


ここは勇者としての名を言っておくか。


グレン「グレン=ヴァーミリオンだ。よろしくな」


カイゼル「グレン...ヴァーミリオン...?」


その名を聞いた途端カイゼルの表情が変わる。疑問符を浮かべた後、盛大に笑い出した。


カイゼル「はっはっは!まだ私を疑っているとは参ったな!ただ、いくら強いといってもその"偽名"はやめといたほうがいいぞ」


グレン「...!!?」


ぎ、偽名?何を言っているんだこいつは…


だが最初に会ってから今まで本当に俺のことを知らないみたいだった。


わけがわからなくなり混乱していると続けてカイゼルが話し出した。


カイゼル「グレン=ヴァーミリオンといえば、200年前に魔王を倒した勇者の名前じゃないか。たしかに貴殿は恐ろしく強いが。第一グレン様は男だしな」


グレン「待てっ、今なんて言った!?」


カイゼル「むっ?魔王を倒した勇者と...」


グレン「その前だ!」


カイゼル「200年前に、だが」


グレン「っ......!!」


思わず思考が停止する。今自分が聞いたことが理解できない。


グレン=ヴァーミリオンと言う名の勇者が200年前の人物。そしてそいつが魔王を倒した。


名前だけならまだしも名字まで同じなどと言うことがあるだろうか。それに昔の文献で違う勇者がいたなんて聞いたことがない。


俺は頭を抱える。死にかけて、目覚めたら200年経ってました?誰が信じるんだよそんなもん!だが嘘を言っているようにも見えないし第一ここで嘘をついてもメリットはない。


カイゼル「大丈夫か?今までにないくらい苦悩しているが」


グレン「だ、大丈夫だ...それと俺の話を少し聞いてくれるか?」


カイゼル「それは構わないが...」


グレン「はぁ...んじゃまずは...」


カイゼルに俺の身に起きた事情を話す。


自分は200年前の勇者であること。そこで死にかけ気を失い、気がついたら女になっていてこの森にいたこと。ナルのこと。


こいつになら話しても問題ない気がしたので全て話した。


カイゼル「ふむ...にわかには信じ難いが...その強さに神剣のこと、そして竜を熟知していたこと...嘘にしては出来過ぎている」


グレン「嘘じゃないけどな」


カイゼル「だが、そうか...200年前勇者は魔王を倒した後帰還していないという記述を読んだことがある。貴殿が本物だとしたら...その説は納得がいく」


帰還していない、か。それがわかったのは多分、カルとミナが転移後に再び魔王城にでも戻って探してくれたのだろう。あいつらならやりかねない。そして1つの真実にたどり着く。


やはりここは未来の世界。俺が本来生きていないはずの世界。何故ここに連れてこられたのか、未だにわからないが。


...これも勇者としての運命なのか?


カイゼル「貴殿が本物の勇者様ならば...これまでの非礼をお詫び申し上げます」


グレン「え?なんだよいきなり」


カイゼル「いえ、信じられないこととはいえ、勇者様にとんだご無礼を...この贖罪として私の首を…」


グレン「いや、いやいや急に改まんなくていいから!キモいし!ほんとどこも騎士団長はクソ真面目だな!?」


カイゼル「き、キモ...く、クソ...?」


グレン「とにかく!俺には敬語なんて使わなくていい。最初会った時みたいにしとけ!わかったか?」


カイゼル「勇者様にそんな言葉など...」


グレン「わかったか?」


カイゼル「はい...」


カイゼルは肩を落とし悲しげな表情をする。おっさんがしょんぼりすんな!可愛くないわ!


カイゼル「こほん...ところで勇者さ...勇者殿は...その、男ではなく女の勇者だったと?」


グレン「あんた俺の話ちゃんと聞いてたか?」


カイゼル「しかし、性別が変わるなど信じられん...貴殿はずっと男として育てられたからきっと今まで男と勘違いをしてたのでは」


グレン「するか!俺の大切な俺がなくなってんだぞ!?」


カイゼル「勇者殿、女性がそんなはしたない事を...」


グレン「俺を女扱いすんな!!」


このおっさんいい加減しばこうか?俺は男だっつーの...今は女だけど!


カイゼル「すまない冗談だ...失礼を承知だが、名前を少し変えてみたらどうだろうか。そのままでは女性の名としては少し違和感があるのでな」


グレン「む...たしかにそれもそうだな」


どうするか、名前。そうだなぁ...


グレン「レン、そう呼んでくれ」


カイゼル「レン殿か。なぜそのような名前に?」


グレン「え、まぁ...なんとなくだよなんとなく」


カイゼル「そうか」


カイゼルはこれ以上は聞いてこなかった。これ以上聞き出すものでもないと思ったのか、俺の心情を察したのか。


名付けが苦手なだけなんですけどね。


カイゼル「うむ、そしてそちらが...」


カイゼルがちらりとナルの方を見る。ナルはふふんっと鼻を鳴らし髪をファサッとかきあげる。


ナル「ふっ、わたしはナル。マスターの嫁だぁいだぁ!?」


ナルの脳天に軽く拳を落とす。ナルは頭を抑えこちらを涙目になって睨みつけてきた。


ナル「い、痛いではないか!何をするのだ!!」


グレン「ナルが適当なことを言うからだ。」


ナル「別に間違ってはおらんだろうに、毎日夜は一緒に寝てたではないか、えへへ」


グレン「それは剣の時だろうが!」


この神様、遠慮のないからかいようである。


やがてからかうのに飽きたのかこほんっと咳を鳴らし話を戻した。


ナル「わたしはナル。神剣である。よろしく頼むのだ。あ、わたしも敬語を使わんで構わんぞ」


カイゼル「えぇ!?さすがに神様にそれは...」


なんだかデジャヴな会話だな。カイゼルはあれよあれよとナルに丸めこまれ諦めたのか浅くため息をつき、いつもの言動に戻った。


カイゼル「わかった、ナル殿と呼ぼう。」


ナル「ふっ、勝ったのだ...」


お前は何と勝負してたんだ。


カイゼルが上空を見上げ日の光を確認する。昼を過ぎてから数刻が経っているのか、先ほどよりも辺りが若干暗くなっていた。


カイゼル「後のことは王宮で話そう。今は王国に戻るとしよう。それで構わないか?レン殿」


グレン「あぁ、俺も色んなことが起き過ぎて疲れた、早く休みたい」


ナル「わたしもなのだ...」


ナルはぐったりしていて今にも倒れそうだ。しかしこの神様、何もしていない気がするんだが...まぁいいか。


荷物を運び出ししばらく歩き、森の出口にある馬車の荷台に炎竜の素材とイビルボアの素材を積む。


こんな近くに出口があったのか、後少し先だったんだな。


グレン「ところでカイゼル、その王国の首都ってなんて名前なんだ?てか、ここはどこの大陸なんだ?」


何気なしに聞いてみる。200年前の王国と言ったら東大陸ゼノギアにある首都バルロッサしかない。


カイゼル「東大陸国ゼノギア、首都リーネというところだ。」


グレン「...は?」



はたして俺は今日1日で何度驚かなければいけないのだろうか。そんなことが頭の中をよぎった。



ーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーーーーーー


一行は森を後にしガラガラと馬が荷台を引き騎士の2人が脚者となり手綱を引いている。残りのメンツは荷台に乗っていた。


馬車に揺られながら首都のことについて話していた。


グレン「まさかリーネが首都になっているとはな...」


今この世界ではリーネが東大陸の首都になるらしい。元々リーネは俺の生まれた故郷、リーネ村だった。


カイゼルの話によれば俺が魔王を倒した後リーネ村が俺の故郷だと知りえた王国旧首都バルロッサの王家の方々がリーネ村を開拓し、数百年かけて首都を移したらしい。


ただ、俺にはもう家族がいなかったのでリーネ王国の王家と血の繋がりがあるとは思えない。


そして旧首都バルロッサは今は冒険者が集う大都市になっているらしい。勇者の偉業というのは国さえも変えてしまうようである。


カイゼル「もしもレン殿が生きて帰還していたらゼノギア国の王になっていたかもしれんな」


グレン「いやぁどうだろうな、王なんて柄じゃないし。どっか適当に冒険者か旅人になってただろうな」


俺に人を導くことはできそうにないしな。勇者なんてもてはやされてはいるが結局のところ戦う以外のことは正直苦手である。


一通りの会話を終え次なる疑問に移る。俺はカイゼルと戦った時のことを話し始めた。


グレン「その防具と武器の構造、今まで見たことないんだがなんなんだ?魔法石が埋め込まれていることはわかったんだが...」


魔法石は魔法吹き込ませることで魔法石内に魔法を封じ込めることができる石だ。ただ、魔法石を使うには魔法を吹き込んだ本人の魔力でしか作動しない。そしてその魔法石の魔法は補充をしない限り一度しか使えない。


要は使い捨てのアイテムみたいなものだ。


魔法石のメリットは2つ。


1つは普通に魔法を使う際の魔力消費が通常より少なく済むこと。


2つめは魔力を練りあげ魔法陣を展開する過程を飛ばして即座に出せること。


ちなみに例外として転移魔法石という誰でも使えるものがあるんだが...それは俺がカルとミナを逃した時に使ったもので最後の一個だったのでもうないだろう。あれは簡単に作れるもんじゃない。


だから、この武具を見た時に驚いた。


カイゼル「魔装具のことか」


グレン「魔装具?」


聞き慣れない単語だ。この200年の間で新たな装備ができたのだろうか。


カイゼル「魔装具とは魔力を良く通す金属を使って作った武器や防具でその装備に直接魔法陣を刻み込み、細かく砕いた魔法石をその魔法陣の中に埋め込むことによって、魔力を注ぎ込むだけでその魔法陣の魔法を発動させることができる」


グレン「んん?おおぅ...全然わからん」


カイゼル「簡単に言えば、この魔装具に魔力を注ぎ込めば誰でも魔法が使えるということだ」


つまりは魔力を通せば誰でも何度でも使えるということか、便利になったもんだ。


魔法は適正がなければ使えない。魔力の練り具合、陣の展開速度、それを制御する処理能力。全てが兼ね備えなければ魔力を持っていても高度の魔法を使うことができない。


俺が典型的な例だ。魔力の練り上げは常人より早いのだが、高度な魔法になると陣を展開した際の処理能力が足りず魔力が分散してしまう。


わかりやすくいうならば、問題から式を組み立てるのは早いがその解き方がわからない、だから簡単な式しか解けない。みたいな感じである。


それに比べて魔法武術は魔力を練り上げるだけでいいから本当に俺向けの技術だなあれは。


グレン「魔法陣を予め武具に刻んでおき、その陣を伝うように魔力を流し込めば魔法の効果が得られる...か。そして魔力を効率よく伝えるための特殊な金属...すげぇな、誰が作ったんだよそれ」


カイゼル「かつての大英雄の1人、"賢神"ミナ=エルラン様だ」


グレン「え"っ?ミナが...!?」


カイゼル「ん?そうか、レン殿はよく知っているだろうな。あの方の広めた魔法技術はとても素晴らしいものだ。ミナ様のおかけで日常生活に役立つ魔法が誰でも使え、魔法学が発展していったのだからな」


グレン「そうか...あいつ...」


仲間が褒められているのは嬉しい。さらに大偉業を成し遂げているとは恐れ入った。


元々天才魔法使と呼ばれていたからな、割と疑いもなく納得がいく。


カイゼル「ミナ様は西大陸の魔法国で研究に努めたと記述が残っている。あの国はすごい、人口のほとんどが魔法使らしい。」


グレン「へぇ、魔法を扱える時点でただの戦士じゃ相手にならないな」


しばらくして落ち着いたらその西大陸に赴こうかね。


グレン「そんじゃ、もう一つ。カル=ラッセルの記述は残ってるか?」


カイゼル「もちろんだ。カル様は"戦神"と呼ばれていて各地でその戦闘技術を活かして危獣種との戦い方を広めたお方だ。カル様のおかけで全国の兵士の実力が上がり今やどの国も危獣種が出ても対応できるようになったという。」


グレン「ふーん、あの筋肉バカがなぁ...」


意外だ、あいつは人に教えるのが苦手そうなのにな。その記述だけは嘘なんじゃないかと思ってしまう。


だってシュババッ!とかザザザっ!とか効果音で教えてくるようなやつだぞ?きっと各地の兵士達は苦労したんだろうな...


みんなには代わりに謝っておこう...うちの筋肉バカがすみません。


カイゼル「更に南大陸に実力者が集う傭兵の国を作ったそうだ。そしてカル様に腕試しをする輩を片っ端から薙ぎ倒していった伝説がある。今ではその国で一番強い者が長になり、その長に挑める大会があるらしい。私も詳しくは知らないが」


そういうところはあいつらしい。魔法ありきならわからんが単純な近接戦闘ならばほぼあいつに勝てるのはいないだろうな。俺でさえ剣術のみなら勝てる自信がない。


グレン「2人ともあの後に色々やってるんだな...」


カイゼル「ところでレン殿」


グレン「ん?」


カイゼルが改まって質問をしてくる。


カイゼル「素朴な質問なのだが、人類最大の敵と言われていた魔王をたった3人で倒したのか?」


グレン「ん?まぁな。ギリギリもいいところだったけど」


魔王は強かった。3人の力を結集させてようやく倒すことができたんだ。まぁ奴が最後の力を無駄に振り絞ったせいで大量の悪魔に襲われることになったんだが。できればあんなのとは二度と戦いたくないな。


カイゼル「そうか...ではずっと3人で旅を?」


グレン「........」


俺はその言葉を聞いた途端ある人物が浮かびこむ。胸が張り裂けそうに痛むがなんとか堪えカイゼルの質問に返す。


グレン「いいや...元々は4人で旅をしていたよ」


カイゼル「.....その1人は、どうされたのだ?」


グレン「あぁ、それは...」


目を閉じそのもう1人がいた光景を思い出す。俺が、一番思い出したくない光景だ。


しばらくの沈黙の後、閉じていた口を再び動かす。


グレン「その1人は...旅の途中で死んだよ」





後書き

前に書いてたものをss風に直して書きました。ほぼ思いつきです、ご了承ください。


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