2020-03-07 21:13:42 更新

概要

オリジナルss 主人公視点 炎竜の謎を解き、真なる敵と対面する。


毒蛇戦の数十分前...


カイゼルと別れた後炎竜を引きつけていた俺はすぐには片をつけず、未だに炎竜と対峙していた。


「グワァァァ!!!」


炎竜が火を吹き地面を焼き払っていく。あまり周りに被害を出したくはないのだがどうしても気になる事があった。




最初に出会った炎竜...その動きがどこかおかしいことを思い出しこの炎竜の動きもみていてやはりおかしく思った。



動きが単純すぎる...まるで戦い方が幼い。


成体になった竜は数々の狩をこなしその個体に合った戦い方を身につけているはずだ。実際に勇者時代に戦ってきた竜に比べると、とてつもなく弱い。


時代が進んで竜の戦闘力が下がった...?いや、単純な攻撃力、ブレスの威力は変わらないように思える。ならば何故...


グレン「...ん?なんだあれは」


炎竜をよく観察すると額になにか輝いているものが見える。明らかに鱗などではない、あれは...


ここからではよく見えないな。跳び上がってみてみるか。


脚力を強化し、空に跳び上がる。さらにエアークライムで炎竜の額に近づいた。


「グワァァァァァァァ!!!」


目の前に迫ってきたのが鼻についたのか大きな口を開けてそのまま噛み付こうとしてきた。


グレン「.....!」


もちろんそんなわかりやすい攻撃は避け、炎竜の頭に回り込み、額の輝いているものを直視する。


きらきらと赤く光る石...手のひらサイズはある、あれは魔法石か?額に無理やり埋め込まれているような感じだった。


竜に魔法石が埋め込まれているなんて聞いたことも見たこともない...あれが炎竜の動きをおかしくしている可能性があるのか?


どちらにせよこの炎竜は無力化しないといけない。早くカイゼルのとこに行かなくちゃならないからな。


エアークライムを駆使しつつ再び炎竜の額に近づく。俺が空を飛んでいるのが気にくわないのか、容赦なく炎を吹いてきた。


グレン「当たらないよ」


当然避けながら近づき頭の上に足をつけ額の魔法石の間に剣を突き立てた。


スコップで掘り出すように剣を押し剣先で魔法石を押し出した。


グレン「よし、取れた...うおっ!?」


「グワァァァァァァァ!!!?!?」


魔法石を取った途端、炎竜の咆哮がさっきまでとは違い、苦しく吠える。


押し出した魔法石を手に取り炎竜から離れた。その際炎竜は羽ばたきを止め、勢いよく地面に落下した。



なんだなんだ?急に炎竜の動きが止まった。本当にこれが原因なのか...?


地面に降り立ち倒れた炎竜に警戒しながら近づいていく。ピクッと動き出し、身体だけゆっくり起こしてきた。


...さっきまでとは雰囲気が違う?敵意が無くなっている。


炎竜「.....オ前ガ、俺ヲ助ケテクレタノカ?」


グレン「...!!喋れるのかあんた!?」


炎竜「当然ダ、竜ダゾ俺ハ」


グレン「だってさっきまで...いや、なんとなく察しはつくがもしかしてこれか?」


手に持った魔法石を見せる。すると炎竜の目が怒りに満ち溢れていくのがわかった。


炎竜「ソノ魔法石...アノニンゲン...!ソレデ俺ヲ洗脳シタンダ!」


炎竜「やっぱ操られてたんだな。竜があんな稚拙な戦い方するはずないもんな」


炎竜「ホウ、ニンゲンニシテハヨク分カッテイルジャナイカ!」


竜ってのは基本的に自分を最強だと思ってる節がある。まぁ間違っていないのだがどいつもこいつも超上から目線だからウザくてしょうがない。


グレン「そんなことはどうでもいい、あんた人間に洗脳されたって言ってたな?どんなやつだ?」


炎竜「グヌ、ニンゲンガ...俺ノ炎デ焼キ尽クシテ...」


グレン「洗脳されてるとはいえ俺と戦ってなにも感じなかったのか?早く答えないと角をへし折るぞ」


炎竜「ス、スマン...」


竜の社会は実力主義だ。自分より強いと分かれば大体は話を聞いてくれる。もちろん中には聞いてくれないやつもいたけど


炎竜「トハイッテモ、イチイチニンゲンノ顔ナド覚エテオラン」


グレン「だよね!」


基本人間を見下してるこいつらに記憶力を求めていたのが間違いか...ならこんなやつ放っておいて早くカイゼルのとこに向かうか...


炎竜「顔ハ知ランガ妙ナコトヲ言ッテイタナ」


グレン「なに...?」


炎竜「四聖騎士ガドウトカ...ヨクワカランガナ」


グレン「四聖騎士...」


名前からして胡散臭いな。第一自ら聖騎士を名乗るなんて誇張が激しいにもほどがある。


グレン「そうか、あんま役に立たなかったけどありがと。あんたももう洗脳されないように気をつけろよ」


炎竜「マテニンゲン。聞キタイコトガアル」


グレン「なんだよ?」


炎竜「...モウ一体の炎竜をミカケナカッタカ?」


グレン「.....」


もう一体の炎竜ってあれだよな...先日襲ってきたあの...


俺は多少気まずくなりながらも炎竜にあの日の出来事を伝える。


グレン「あぁ、いた。だけど生憎だが、もうそいつは死んでる」


炎竜「...ソウカ、感謝スル」


グレン「は?」


竜同士で仲間意識が薄いとはいえ同族を殺されて感謝を述べるなんて...なに考えてるんだこいつ。


グレン「恨み言言ったり怒ったりしないのか?」


炎竜「ソリャウラムゼ、ダケドオ前ニジャナイ。アノニンゲンニダ。ナンセ俺ノ兄貴ダッタカラナ」


グレン「兄弟だったのか」


炎竜「アァ、ダケドアノニンゲン二洗脳サレテ...理性ガ壊レチマッタンダヨ。アンナ兄貴ヲミルクライナラ俺ガ...ッテ思ッタンダガ結果ハコノ様ダ」


なるほど...あの魔法石で長時間洗脳した結果だろうな。脳へのダメージは計り知れなかっただろう。こいつももう少し遅ければ理性を完全に破壊されてたかもしれない。


グレン「だったらもうこの場で引け。そいつは俺が倒す」


炎竜「ナンダト?フザケルナ!俺ガアノニンゲンヲ殺ス!」


グレン「あんたの怒りもわかるがこっちにも事情があるんだよ...用が済んだらそいつを焼くなり食うなりしていいから」


俺は博愛主義でもなんでもない。守りたいと思ったものを守るだけだから害になりそうなやつならばどうなろうと知ったことではない。


炎竜「グヌヌ...仕方ナイ、ソレデ妥協シテヤロウ」


グレン「わかってくれたようでなによりだ」


その場を後にしようとし森の入り口に足を運ぼうとするが、またもや炎竜に止められてしまう。


炎竜「チョットマテニンゲン」


グレン「まだなんかあんのか?」


炎竜「イヤ...モウヒトツ言ッテオコウト思ッテナ」


グレン「なんだよ?」


炎竜「ソノニンゲンノ魔法二気ヲツケロ」


グレン「その言い方だと汎用魔法以外のことか...もしかして固有魔法を使うのか?」


炎竜「アァ、ヤツハ...毒ヲ使ウ。俺モソレデ動キヲ封ジラレタ」


グレン「...それが本当ならまずいな」


毒を使うと初めからわかっていれば対策のしようがあるが、先に向かったカイゼルは当然知らない...もしそいつが聖堂にいるのならば、カイゼルの身が危険かもしれない。


グレン「今のはいい情報だった、ありがとよ」


炎竜「フン、恩ヲ返スノハ当然ダ」


炎竜は自身気に胸を張る。本当に大丈夫なのだろうか、こいつアホっぽいし同じことされそうで不安だ。



まぁ今は一刻も早く聖堂を目指すとしよう。その前に...


馬車を停めていた最初の森の入り口に向かう。割と離れていたので炎竜の攻撃は一切来なかったはずだ。


無傷の馬車を確認する。木に寄りかかっていた騎士も無事みたいだ、相変わらず炎竜からの恐怖か震えているが。


ナル「お、マスター!おかえりなのだ!」


グレン「おうナル。っと、早速で悪いんだが一緒に来てもらうぞ」


ナル「む?それは構わんのだが...んひゃ!?」


馬車の側にいたナルを脇に抱え脚力を強化し上空へ跳び上がる。そのままエアークライムを駆使し森の上からまっすぐ進んでいく。


ナル「な、ななななにをするのだマスター!!?」


グレン「すまん、だが緊急事態なんだよ。地をいくより空から突っ切って行った方が早いからな。ナルを置いていくわけにもいかないし」


ナル「ふん!絶対に許さないのだ!ちょっと怖かったのだ!」


グレン「ごめんって、後で甘いもの好きなだけ食わしてやるから」


ナル「マスター大好きなのだ!」


ほんとちょろいなこの神様。甘いものにつられてほいほいついて行かないか心配になってしまうぞ。



空を進むと森の中央に大きな空間があった。その上を通るときに下を確認する。


これは炎で焼き払われた後だな。誰かがここで炎竜と戦ったのだろう。周辺には黒焦げになった何かが横たわっているが、まさかあれ...


カイゼルもここを通ったんだよな。あいつの心境を思うとやるせないな。


それによくみると新しい死骸があるな。あれはブラッドウルフか?なんで北大陸の危獣種がここに。


四騎士、北大陸、聖堂襲撃。まだまだパーツが噛み合わない。一体なにが目的だ、聖堂を襲う理由はなんだ?聖堂にはなにがある?


考えても埒が明かないか、直接言って確かめるしかない。いつもそうやってきたんだ。


ーーーーーー



森を通過し、大草原が見えてきた。やはりここら辺も炎竜に襲われたのだろうか、辺りが焼き払われて焦げている。


聖堂の前まで止まらずに空を進んでいく。入り口前に差し掛かり、地へと着地した。


それと同時に中から衝撃音が響いてきた。なにか壁に叩きつけられたかのような。


やはり、首謀者は中か。カイゼルが戦闘しているんだろう。さっきの音はカイゼルのか、それとも...


脇に抱えてたナルを降ろし、ナルに指示をする。


グレン「ナル、この聖堂には裏口がある。そこから中に入ってきてくれ」


ナル「うむ、了解した。マスターはどうするのだ?」


グレン「もちろん真正面からいくさ。ナルは裏口に着いたら頃合いを見て入ってきてくれ」


ナル「うむ、ではなマスター」


グレン「あぁ気をつけろよ、ナル」


ナルが裏口に向かったことを確認し聖堂の入り口へと近づいた。外まで伝わってくるピリピリとした雰囲気、嫌な空気だ。



入り口の奥の方を見ると人影が3つ。神官のローブを着た人が2人、黒い髪をした妙な男が1人。カイゼルは...どこだ?


そう思っていた矢先、男は神官の人の首に手を伸ばしながら変わった口調で喋り出す。


「フヒヒヒ!!誰も助からねぇよぉ!この俺がいる限りなぁ?フヒヒヒッッ!!」



あぁ...これを聞いただけでこいつはとんでもないクソだということがわかる。


俺の中でその男に対する敵意が芽生えた。炎竜を使い沢山の命を奪い、更に自らの手で命を奪いとろうとする...野放しにしてはおけない。


それによりによって...ユリハの育ったこの聖堂で。


入り口に入りその男に言い放った。


グレン「随分楽しそうだな」


「あぁ...?」


男は不機嫌そうに声を出す。まるで歓迎されていないみたいだ、歓迎されても困るがな。


ふと横に視線をやるとそこにはカイゼルが満身創痍で倒れていた。さっきの衝撃音はカイゼルが壁に叩きつけられた音だったのか。


鎧は所々ひび割れていて痛々しさが垣間見える。身体が動かないのだろうか、視線をこちらに向けるだけで口も動かすこともできないようだ。


炎竜が言っていた毒で身体の自由が奪われているのだろうか。だとしたら急いで来て正解だったな、ここでカイゼルには選手交代してもらおうか。


グレン「待たせたな、カイゼル」


そう呼びかけ俺が来たことを知らせる。カイゼルは身体こそ動かないものの目を見て安堵したのがわかった。


ここからは俺が片付けてやる、この男に誰を敵に回したか...その身を持って教えてやる。




後書き

前に書いてたものをss風に直して書きました。ほぼ思いつきです、ご了承ください


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