2020-03-11 06:05:21 更新

概要

オリジナルss 一行はある情報を得るため、次なる街へ目指す。


王宮 客室


グレン「ということで、次はバルロッサにいくぞ」


例の通り王宮の客室に戻ってきた俺はそう告げた。


クレハ「バルロッサ…?」


ナル「マスターは世話しないのー」


グレン「これはナルの問題でもあるんだぞ」


ナル「わたしの問題??」


グレン「そうだ、まず神力についての情報をそこで入手する。1つ聞くがナル、神核はどうなってる?」


ナル「む?んー…今は活動が上手く出来ないのだ…剣化は確実に出来ん…後能力も多分使えないのだ」


グレン「つまり?」


ナル「すっからかんなのだ!」


えっへん、と無駄に自信に胸を張る。神力と一緒に頭の中も空なのではないのか?


神核というのは…簡単に言うと神様の心臓みたいなものだ。これがあるおかげで神剣は無限の神力を持つのだが…この世界に来てからナルは神核が機能していない。そのため神力が一向に回復しないんだ。


グレン「聖水を使うという手段もあるがナルが神力を制御できない以上無駄にしかならない。まずはバルロッサに行って情報を集めて、神力が集まりそうな泉を探す」


ナル「ほぇー」


クレハ「……」


グレン「…?どうしたクレハ」


神力についての話をした途端なにやら黙り込んでしまった。少し反応があった気がしたが気のせいか…?


クレハ「いえ、なんでもありません」


グレン「そうか」


クレハ「……」


…なんだかまだ慣れないな、絶妙に気まずい空気が流れてしまう。俺もしっかりしなければな。


グレン「とりあえずクレハはまだここにいた方がいい。俺とナルだけで行ってくるよ」


クレハ「え…」


グレン「今は、その…心の整理が必要だろ?」


クレハ「……」


これは俺自信にも言えることだ。正直これ以上一緒にいるとこっちの気が参ってしまいそうだ。


クレハ「そうですね…わかりました」


ひとまずクレハは納得してくれたようだ。しかしこの顔で敬語で話されるのはだけは慣れないな…


グレン「そういうことだから。ナル、早く準備して出発するぞ」


ナル「うむ!…あっ、マスターは先に行っててくれなのだ」


グレン「…??おう、早く来いよ?」


ナル「わかったのだー」


なんだかわからないが、俺は一足先に馬車がある城門前へ向かった。


ーーーーー


残されたナルとクレハに少し重い空気が漂う。


ナル「で、いつまで隠す気かの」


クレハ「…なにをですか?」


クレハは顔色ひとつ変えずそう答える。


ナル「わたしを前に誤魔化しても仕方ないことなどわかっているだろうに…」


クレハ「……」


ナル「まぁどうでもいいがの。さて、マスターのところにいくかのー」


荷物を纏め、ドアノブの前に手をかける。だがそこで手を止め、後ろ向きのままクレハには振り返らず話を続ける。


ナル「…主が万が一マスターの敵になろう者ならば」


クレハ「え…?」


ナルはクレハに顔だけを向けて軽く睨みつける。


ナル「わたしはお前を…容赦なく消してやる」


クレハ「……!!?」


ナル「そうならないように、祈っているのだー」


クレハ「………」


ドアを開け、ナルはそのままグレンのところへ向かっていった。



ーーーーー


ーーーーー


ーーーーー



城門前 馬車着き場


グレン「っと、こんなもんかな」


一足先に馬車着き場に着いたので次の街まで行くための荷物を馬車に積んでいた。食料、飲水、着替え、その他諸々必要なものを一箇所にまとめた。


途中の通過点に物資補給できる町があるみたいだが、用心に越したことはないだろう。と言っても200年前とは違い、道も整備されているので2日もあれば着いてしまうらしいが。


初めてバルロッサに行った時は軽く1週間はかかったんだがなぁ。


騎士「レン様、準備は整いましたでしょうか」


騎士がそう問いかけた。ちなみにこの騎士はバルロッサにある別拠点の騎士団の人らしい。街に戻るついでに乗っけてくれるようカイゼルが手配してくれた。


グレン「もう少し待ってくれ」


騎士「まだ足りない荷物があるので?」


グレン「いや荷物自体はもう大丈夫。連れがまだこなくて…」


まったく、ナルのやつなにをやっているんだ。準備といっても大した荷物なんてもってないはずなのに…


ナル「おまたせなのだー」


と、思っているうちにようやく来たらしい。特に悪びれる様子もなく、のほほんとしていた。


グレン「おまたせじゃないわこの」


ナル「うぅーいだだだだだほっへひっはらないでましゅたぁー」


罰として無駄にもちもちしている頰を引っ張り上げてやった。柔らかいなこいつ。


グレン「なにしてたんだよ」


ナル「うぅー…乙女はなにかと準備が掛かるのだ」


グレン「誰が乙女だ、正直に言え。さもないと…」


再び頰を引っ張ろうと手を伸ばそうとする。が、ナルに素早く距離を取られてしまった。


ナル「本当になにもないのだ!だから引っ張るのはやめてほしいのだー!?」


グレン「…はぁ」


そこまで聞きたいわけじゃないし別にいいけどさ。なーんか怪しいんだよなこいつ。


ナル「な、なんなのだマスター」


グレン「別に、ほらさっさといくぞ」


ナル「わかったのだー!」


なにやら疑問が残る中、俺たちは馬車に乗り込み旧首都バルロッサを目指し出発した。


ーーーーー


ーーーーー


ーーーーー


バルロッサの道中 補給路


馬車を出して1日、ようやく半分まで来ただろうか。俺たちは通過点の町に差し掛かっていた。



今日のところはここに一泊していくのだが、それよりもとても大変な事が起きていた。




ナル「ふっ…マスターだからといって、わたしは手を抜く気はないのだ」


グレン「同感だ、俺もナルだからといって…いや、ナルだからこそ全力で相手をしてやる」


バチバチと睨み合う中この2人の空間だけやけに気迫がある。


ナル「ゆくのだ!マスタぁぁぁ!!」


グレン「望むところだ!!」


両者が拳を振り抜きまるで殴りかかるかのように拳を前に突き出そうとする。


真剣勝負の真っ只中、この2人がなにをしているのかと言うと…





グレン「じゃん!」


ナル「けん!」


「「ぽい!!」」




じゃんけんをしていた。



ナル「ぬわぁぁぁ!!負けたのだぁぁぁ!!」


グレン「当然だな、俺に勝とうだなんて1000年早い!」


俺は鼻高々に余裕の勝利を収めた。


ナル「ずるなのだ!マスターはずるをしている!!」


グレン「ナル…負けたからってそれなないぞー」


ナル「むきー!マスターはわたしの出す手を見てから出しているのだ!後出しなのだ!」


グレン「出すタイミングは同じなんだから反則じゃないだろ…ちょっと動体視力高めでナルの手の開き具合を判断して手を出してるだけじゃんか」


ナル「それがずるいのだー!じゃんけんは反射神経で勝負するものではないのだ!」


通常ではおよそ不可能な反射神経を持つ…これは俺が今まで戦いの中で培ってきた技術そのものだ、これを武器にしない手はない。


グレン「なんと言おうと約束は約束だ、きちんと守ってもらうぞ?」


ナル「う…いやだ…いやなのだ…!?」


何故こんなことをしているかというと…それは夕食の時間のことだ。


ーーーーー


町の宿でいつも通り食べていると、妙にナルの食いつきが悪くて気になり、聞いてみたんだが…


ナル『このやさい、とかいうの嫌いなのだ…』


とか言うので食べるように促すと駄々をこねられてしまったのだ。野菜の苦味が苦手な子どもそのものだこれは。


このままでは栄養バランスに偏りが出る…いや、神様にそれは関係あるのかはわからないが少なくとも食べ物を粗末にすることは俺自身が1番許せないことだ。


だけど余りにも駄々をこねるものでどうしたものかと考えたのが…さっきのじゃんけんだ。


俺に勝てば食べなくてよし、負ければ当然食べてもらう。そういう勝負だったのだ。


ナル「いやなのだ…いやなのだ…」


というのに未だに駄々をこねている。困った神様だよほんと。


グレン「そんなに嫌なら…もう飴玉は無しだな」


ナル「なぬぅ!?それは嫌なのだ!!?」


グレン「なら食べなさい」


ナル「うぅ…マスターの鬼畜ぅ、人でなしぃ、お母さん…」


おい、今聞き捨てならない単語が聞こえたぞ、誰がお母さんだ。せめてお父さんにしろ…まだそんな歳じゃないけど。


グレン「ほら、口を開けろ」


ナル「い、嫌なのだ…」


グレン「苦いのは一瞬だけだ」


ナル「いっ、いっ……!?」



ーーーナル「嫌なのだァァァァァァァァァ!!!??!?!?!?」


グレン「あ、こら!逃げるなぁ!!」


こうしてナルの苦手強制克服が始まったのである。


ーーーーー


ーーーーー


ーーーーー



翌朝 バルロッサ到着前


翌朝になり馬車を走らせて早数刻、特に問題なくバルロッサの前までたどり着いた。元首都なだけあって遠目からでもその街の広さがわかるくらい繁栄していた。


当たり前かもしれないが200年前よりも確実に広くなっている。だがなんだか懐かしい気分になった。


ーーーーー


馬車を街前の馬車着き場に停めて、ようやく降りることができた。座りっぱなしで凝り固まった身体をほぐし深呼吸をする。


旅で慣れてるとはいえ、長時間身体を動かせないのはつらいな。


ナル「うへぇー、やっと着いたのだー」


どうやらナルもくたくたのようだ。座り続けるというのも楽そうに見えて案外疲れるからな。


ナル「昨日は酷い目にあったのだ…」


グレン「自業自得だ」


ナル「ぐぬぬ…」


騎士「お疲れ様です。私はこのまま騎士団に戻りますので、ここで失礼します」


グレン「ありがと、助かったよ」


騎士「いえいえ」


騎士の男はそのまま街の中に入っていった。俺たちもそろそろ行動に移すか…


っと、その前に


グレン「なにか食べにでも行くか?」


ナル「むむ!良いのか!?」


グレン「まぁな、昨日は頑張ってたし、ちょうど小腹も空いたしな」


ナル「やったのだぁ!!」


馬車から荷物を取り出して街中へ向かう。ここらへんの入り口は初めて来た時とあまり変わらないなー。


街中へと入りどこか食べれそうなところを探す。確か入り口から歩いてすぐに食事処があったはず…


グレン「おっ、ここか」


外装はかなり変わってはいるが場所は変わっていなかったのですぐ見つかった。初めて訪れた時にもここで食事を取ったんだ、懐かしいな。


ドアを開け中へ入る。中はテーブル席がいくつかあり1人用のカウンター席もある広すぎずしかしゆったりとした造りになっていた。


店主「いらっしゃーい」


カウンター席前の調理場にいる店主らしきおばさんがそう声かける。軽く会釈して適当なテーブル席に着いた。


ナル「いい匂いがするのだ…ごくり」


調理場から流れてくる料理の匂いにナルがつられる。確かにいい匂いだ、食欲が唆られるな。


店主「どーもー、注文はなににするんだい?」


調理場から店主のおばさんが注文を取りに来た。とりあえずテーブルに置いてあるメニュー表を一瞥する。


ナル「マスター、肉!お肉が食べたいのだ!」


グレン「はいはい、肉好きだな」


ナル「当然なのだ!」


鳥の雛は最初に見たものを親だと思ってしまうかのように、人化して最初に口にしたのが肉だったのが原因なのだろうか、ナルは大の肉好きになってしまった。


最初に野菜を食わせておくべきだったな。


グレン「じゃあこの肉盛りセットと日替わり定食で」


店主「あいよー、金貨8枚ね」


グレン「んと…どうぞ」


店主「丁度ね、少し待ってなー」


注文を終えて店主はそそくさと調理場へと戻って行った。


グレン「ふぅー…」


一息つき、これからの予定を頭の中でおさらいする。


まずはこの街にある冒険者ギルドに行き神力、又は神力に縁がありそうな場所の情報をもらう。それでその場所でナルの神力が補給できればそれでいいのだが最悪複数箇所当たらなければいけない可能性がある。


それは面倒なので出来るだけ避けたいのだが…これは情報次第だな。


次にナルの神力の制御の方だが…これもまた対策の仕方がわからない。こればっかりはナルに頑張ってもらう他はないだろう。


店主「おまちどうさま、これ肉盛りセットね」


ナル「わぁー…!!」


色々考え込んでいたらいつのまにか料理ができてしまっていたらしい。ナルの前に数種類のこんがり焼かれた肉が置かれる。


豚、牛、鳥…それぞれの肉を味わうことができるみたいだ。香草の匂いがよく効いてて食べてもいないのに美味しさが想像できてしまう。


店主「ほい、こっちが日替わり定食ね。今回は魚がメインさ」


グレン「おー…!」


俺の目の前にも料理が置かれる。魚は揚げ物とムニエルで調理されておりそのほかにパン、野菜を使ったスープが並んでいた。


ナル「マスター…!」


グレン「ああ、食べるか」


「「いただきます!」」


それぞれ出された料理に口を運ぶ、当然ながらその反応は…


「美味い!」「美味いのだ!」


言葉が被るほどの美味しさだった。

リーネの串焼きの時も思ったがやはり料理の水準が上がっている。文明が発達すると飯も美味しくなるんだなぁ…最高だ。


気分揚々と食べ進め、あっという間に2人とも平らげてしまった。満足感も得られ、食後に少し休憩することにした。


ナル「美味かったのだー…幸せなのだー」


グレン「異論なーし」


議論する余地無しだな。


しばらく食事の余韻に浸かっていると向かいのテーブル席にいた男の客がこちらの席に近づいてきた。


男はにやにやとこちらを見つめる。なんだこのおっさんは…


おっさん「いやーお嬢ちゃんたちかわいいねー」


グレン「…たち?」


ナル「…?」


なにをいっているんだこの男は…女はナルしかいないはず…


グレン「…俺のことかぁぁぁ……」


おっさん「え?どうしたの?」


思わず頭を抱えてしまった。気を抜くと自分が女だったことを忘れてしまいそうになる。いや女ではないがな、女だけど。


…わけがわからなくなってきた。


おっさん「ねぇねぇお嬢ちゃんたちさー、俺とどこか遊びに行かない?」


グレン「なんであんたと遊ばなきゃいけないんだよ」


おっさん「そんなこと言わずにさー、俺と楽しいことしようよ?」


グレン「……」


…あれ?これってもしかして俺、ナンパされてる?


そう理解した途端全身に鳥肌が立ったかのような感じがした。


いや、いやいやありえないだろ。ナルみたいな美少女ならともかく俺までナンパするのか?てかどうしよう…


こんな状況は想定してない!ナンパされるなんて生まれて初めてだぞ…あ、当たり前か。


おっさん「ねぇー、聞いてる?」


グレン「……」


最初こそ戸惑いがあったがにやにやしているおっさんを見ているとなんだか冷静になってきた。


…なんか少しウザくなってきたな、外に埋めてくるか?


店主「こらー!うちの店でナンパなんてしてんじゃないよ!営業妨害だ!」


おっさん「ひぃっ!?ごめんなさい!」


店主がナンパ男に向かって怒声を上げるとすかさずナンパ男は出口の方へ逃げるように向かっていった。


店主「二度と来るんじゃないよ!」


おおぅ…店主強し。こればっかりは正直助かった。


グレン「あの、ありがとうございます」


店主「いいっていいって!ああいうのにはキチンと言わないとねぇ!」


なかなか豪快な店主のようだ。だがいい人であるのは間違いなさそうだ。


店主「あんたかわいい顔してんだからこれからもああいうのには気をつけないとねぇ!」


グレン「…はい?」


今なんか変な単語が聞こえた気がするんだな気のせいか?


グレン「あの、もう一回言ってもらえます?」


店主「ん?なんだ聞こえなかったのかい?あんたかわいい顔してんだから気をつけなって」


グレン「かわ、いい…?誰が?」


店主「何言ってんだい、あんたに決まってるじゃないか!あ、そっちの金髪娘もかわいいけどねぇ!」


グレン「え…嘘だろ?」


ナル「むー?」


恐る恐るナルを見る。内心今聞いた言葉が幻聴なんじゃないかと思い込んでみるがナルは現実を突きつけるように口にする。


ナル「うむ、わたしから見てもマスターはかわいいのだ!」


グレン「……………」


また一つ、俺の悩みが増えたような気がした。




後書き

前に書いてたものをss風に直して書きました。ほぼ思いつきです、ご了承ください


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