2020-03-27 18:11:47 更新

概要

突如現れた『最強』を名乗る能力者。使う能力は念動力に電撃にテレポート……、何でもありかと思うほど多種多様な能力を使用する。その圧倒的な能力で、科学と魔術の両方の世界を引っ掻き回す!!   これは、『最強』を名乗る能力者がとあるの世界で奮闘する物語


前書き

時系列的には原作の16巻の後、アックアとの戦闘が終わり、まだイギリスでクーデターが起こってない頃です。
一応原作の設定はいじってないつもりだけど……
オリジナルのキャラが少し出てきますが、そんなに多くないです。自分なりに、幻想殺しの正体について迫っていきたいと思います


ー窓のないビルー



アレイ「来たか…」



土御門「いったい何の用だ。こんな時期にここに呼び出すなんて」




しんと、静まり返った空間に、2人の” 人間 ”がいた

ともに科学と魔術の混在するこの世界をよく知る人物だ




アレイ「人間というものは常に面白いものだな。常に想像の範疇を越えてくる。

    だからこそ、私のプランにも多少亀裂が入っているのだがね」



土御門「そいつは残念だな。お前のお得意の人間観察も、もうじきできなくなるだろうな」



こんなものは、2人にとっては世間話のようなもの

そこには皮肉こそあれ、他の感情は一切含まれていない




土御門「で、今回は何の用だ」



探り合いは無駄だと言わんばかりにさっそく、本題に入る




土御門「暗部絡みのことなら、いつものように電話で内容を伝えればいいだろう」



学園都市に不法侵入してくる奴らは、『グループ』として排除すればいい

もしそれが魔術師ならば、『魔術師』として倒してしまえばいい

どちらにしろ、やることは変わらない



大切な日常を守るために、彼は戦い続ける

今までずっとやってきたことであり、これからもそれは変わらない




アレイ「なに、今回は君に依頼をしようというわけではないのだよ」



土御門「何ッ……!!」



アレイ「今回はこちらからの一方的な情報提供だ。後は好きにしてしまって構わない」




しばしの沈黙

疑問はないのだと捉え、アレイスターは話を続ける





アレイ「そこに資料があるだろう。目を通してもらっても構わないよ」



アレイ「とは言っても、あまり有益な情報は残っていないと思うがね」





言われた通り、資料に目を通していく

確かにあまりいい情報は記載されていない

所々の記載が不明瞭で、どの記述も具体性に欠ける

とても情報伝達の最先端を行く学園都市のものとは思えなかった







が、気になる点があるとすれば1つ




土御門「『絶対能力』……これを見る限り、俺の知ってるものとは” 別の意味 ”で使われているようだが……」




知っているのは絶対能力進化実験

学園都市第一位の一方通行をレベル6へと昇華させるもの


この場合、絶対能力とレベル6は殆ど同じ意味で用いられていると考えていい

むしろ、同一視しても問題はないだろう





だが、今回のものはどうやら使用用途が異なるようだ






アレイ「その辺の質問は一方通行にしてみるといい」


土御門「何、一方通行に……」


アレイ「あの出来事を覚えているのは一方通行だけだ。

    あの時、意識を刈り取られながらも、ギリギリのところで抑え切ったようだしな」





何のことを言ってるのかサッパリだ

そして、何故自分にこの情報を渡したのかも




土御門「……いったい何を企んでいる」




こいつが『幻想殺し』を主軸に妙なプランを立てているのは知っている

そのために、何度か自分が動いたことも知っている

上条当麻と接触し、彼を問題の渦中に放り込んだことも多々ある



しかし、同時にその行動が何を意味するのかはしっかりと考えていた

命令の裏を読み、考え、そして1つの結論に至る

いつも、ほとんど無意識的にやっていること



最近になっては、行動の意図が読み取れないなんてことは殆どなかった

それは、アレイスターにおいても同じこと

現段階で、彼はアレイスターのプランの概要をほとんど言い当てる段階にまで至っている




だが、今回ばかりは分からない

全くもって、その意図が読めないのだ





アレイ「単純に私はただ知りたいのだよ」



アレイ「君たちの示す "答え” がどのようなものか」



土御門「……」ギリッ






それを聞いて、土御門はその場を後にした

それがこの場からいなくなるのを見て、みて、視て……

アレイスター=クロウリーは口角を釣り上げて笑った











『汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん』





ーー同時刻 イギリスーー




ステイル「……ずいぶんと派手にやってくれたようだね」



少女「そうかしら……」




ステイルは、目の前に広がる光景を見て思わず声を漏らした

その長身の青年と対峙するのは身長150㎝くらいの少女

うすい茶色のパーカーを着ており、その帽子を深々とかぶっている




少女「シスターがざっと30人、その他の魔術師が約20人……

          よくもまあ1つの施設にこれだけの護衛がいたものね」



少女「それで、あんたが最後ってことでいい?」



ステイル「ああ、そうだ。一応ぼくもこの場所の護衛を任されているんだ。一時的なものだけれどね」




ステイルがここにいるのはほんの一時的なもの

手を回せる人が他にいなかったからである




少女「……そう」



少女「それじゃああなたに、1つ面白い質問をしてみようかしら」



ステイル「面白い質問……?」









   『理不尽な運命を呪ったことは、今までにある?』







ステイル「…ッ!!」ジリッ




恐怖か、威圧か、緊張か……


一瞬、心臓が突然止まったかのような衝撃が走り、身体が動かなかった……!!





ステイル「……」



ステイル「もちろん、そんなこと……」



ステイル「両手の指じゃ数え切れないほどには、運命を呪ったね!!」




浮かび上がるのは今は遠くにいる1人の少女

たとえ自分のすべてを捨ててでも守りたいと思った少女

そして、ついには自らの手で救いの手を差し伸べることのできなかった少女




自分では、彼女の『幻想』を殺すことができなかった!!




いくら自らの行動を悔やんでも

いくら自らの運命を呪っても

心に残った傷は永遠に消えることはない



そう、あの『右手』は


何があっても助けたいと願っていた少女の幻想を殺し、救い出すとともに

ステイルの抱いていた『幻想』も殺してしまったのだ




ステイル(憎いとは思っても、別に恨もうとは思わない。形はどうであれ、あの子を救ったのは彼だから……)




ステイル(だが、別にぼくはあの子に尽くすことを諦めたわけじゃない!!)





『Fortis931』 その意味は、我が名が最強である理由をここに証明する



切り札に込めた想いは、必ず殺す



その魔法名に従い、あの子に迫る危険を殺す




ーーーすべては、あの少女を守り抜くために!!




少女「……へぇ」



少女「それなのに、宗教なんかやってるんだ。神頼みなんかしたって、結局目の前で起こる悲劇さえ止められないのに」



ステイル「……何が言いたい」



少女「神様が不幸から助けてくれる、それを本気で信じてるのが宗教でしょ。

   本当に神様がいるのかは置いとくとしても、救われない現状をどうして憎く思わないのか、私にはわからないわね」



少女「『魔術』は人間に力を与える。それと同時に世界に『希望』と『絶望』を与える。

   それを知らない愚かな魔術師は力の側面ばかりに目が眩んでそれが与える『混乱』に目も向けない」




少女「それが、どれだけ自分の首を絞める行為なのかも知らずに……ね」



ステイル「だが、ぼくには関係のないことだ」



少女「ごもっとも。あなたが絶対に譲れない何かを抱えているのはなんとなく分かったからね」




さっきの質問は、そのためだったのかと思った

だが、たぶん違うだろう




少女「あなたが何か大きなものを抱えているのは分かった。それのために命を捨てるほどの覚悟を持っていることも」



少女「それなら私にとっての今抱えているものは絶対にこの目的を達成することなのかもね」




少女「たとえ、あなたの覚悟をへし折ってでも……!!」




ステイル「言ってくれる……!!」ゴオッ



ステイルは、右手から炎を発生させる

言わずもがな、人が触れてしまえば無事では済まないものだ




少女「……ふふっ」




それを見て、少女はくすりと笑い、




ステイル「なっ……!!」シュッ




ーー何の前触れもなく、炎が消失した!!





ステイル(何かアクションを起こしたようには見えなかった。第一、そんな前触れもなかったはず…)



ステイル(それに、何の魔術の記号も見当たらなかったのに……!!)



少女「ふふっ…」



そうして、少女は口元に笑みを浮かべた




理解不能、解析不能

自分の知らない領域の力で一方的に制圧される

わけのわからない巨大な力で自らの魔術を封じられる



その少女の姿を見て、ステイルの脳裏にある映像が浮かび上がる




かつて、自分を叩きのめしたとある少年も、

今と同じ炎を消し、口元に笑みを浮かべていなかったか!!






ステイル(これじゃあまるで……!!)ギリッ




嫌だ。絶対に認めない

あれだけは、絶対に認めてはダメだ




ステイル「イノケンティウス!!」




彼の切り札

触れるだけで、身を焼き焦がしてしまうような炎の化身




ステイル「行け!!」




真っ赤に燃え盛るそれは、物凄い熱量を発しながら現出する

少なくとも、並みの魔術師程度ではあれに正面から対抗できない

たとえどんな相手だろうと、その炎の灯が消えてしまうことは決してない

かつて数多の魔女を殺した炎の化身が少女に向かって襲い掛かっていく











ーーーはずだった





少女「面白いじゃん」ボソッ



にやりと笑い、少女は右手を前に突き出した

その表情を崩すことなく、炎の化身へとその手のひらを向け……




ズッ!!……という鈍い音が響き渡り



炎の化身は跡形もなく、その姿を消した!!





ステイル「」




そして彼が見つめるのは、

イノケンティウスが消失してなお笑みを浮かべる少女と

周囲にちらほらと見える倒れてしまったシスターや他の魔術師たち



そして、炎の化身が来えてしまったにもかかわらず

いまだなお働き続けるルーンの紙切れ




ステイル「いったい……何が………!?」



あまりにも、理不尽な力

常識を遥かに上回る圧倒的な力




不覚にも、今この瞬間あの『幻想殺し』を持つ少年と重なって見えた!!




相手の『幻想』を殺してしまうほどの圧倒的な暴力

有無を言わさず、その力の前に押し倒される




少女「これで、チェックメイトね」





『幻想』を殺す少女が、戦場に蹂躙する……!!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ー同時刻 学園都市ー



上条「はあ……」



思わず、ため息が漏れる

ため息をすると幸せが逃げるというが、そんなのはどうでもいい

そもそも、そんな ”幸運” はもとより持ち合わせていないから逃げる心配はない




上条(分かってたよ分かってましたよさすがの上条さんでも!!

  どうせ退院したら補習フルコースが待ってることくらいこんちくしょう!!)



不幸の申し子、高校1年生の上条当麻

アックアとの戦闘で重傷を負い病院へ、そんな彼への見舞いはどっさりと溜まった課題の山



『戦闘』はできても『勉強』はできない

『強敵』は倒せても『難題』は解けない



そして、これまた厄介なことに彼の右手に宿る『幻想殺し』は


『幻想』は殺せても『現実』は殺せない




つまり、何が言いたいのかと言うと、

彼のトレードマークである右手は、日常では何の役にも立たないのだ

当然、課題もテストも倒せない





上条「」





上条当麻、哀れなり





上条「ん……、あれは御坂」



上条「あんなところで何やって……」




そう呟きながら、彼女の方へと足を進める

なんだか動きが挙動不審だが大丈夫だろうか?




上条(そういえばあいつは……)



思い出すのはあの夜

病院を無理矢理抜け出して、戦場へと向かっていく途中

かなり意識が朦朧としていてあんまり記憶に残っていることは多くないが

それでもこれだけは覚えている



あの時、彼女は自分の秘密を知っていた

自分の失った『もの』を知っていた

はったりを言っているようにも思えなかった



今まで、誰にもばれないように隠し続けてきた記憶喪失

それが何らかの拍子にばれてしまったようだった



そんな想いを胸に、彼は彼女に声をかけた

その後、なぜか彼女が「ふにゃ~」という声をあげながら能力を暴走させてしまうのだが

なぜ彼女の能力が暴走してしまったのかは彼に分かるはずもなかった






ーー???ーー



上条当麻が日常のコマにいる間、とある少女は非日常の中にいた


つまり、裏の世界だ




裏の世界では、現在進行形で世界中が大混乱だった


しかし、それは水面下で


もっと厳密に言うなら『魔術』を知るものの中で





『幻想殺し』



それが広く知られるようになったのは7月の終盤


それからと言うもの、魔術界ではその話題は常にホットな状態にある


ネットで言うなら、常に大炎上しているようなものだ





”ありとあらゆる異能を無効化し、消し去る力”



すべての魔術に対して、脅威と成り得る存在



そんな反則技が有名にならないはずがない




次第に、『幻想殺し』は1つの勢力として危険視されるようになっていった


それほどまでに、その力の持つ可能性はインパクトが大きすぎたのだ









ーーーそんな反則技を使う者がもう1人存在するとしたら……!!





少女「さてと、魔術側ではだいぶやりたい放題やったし、次の標的は……」




大きすぎる力は収集のつかない混乱を呼ぶ



『幻想殺し』による混乱がピークを迎えるほぼ直前に、新たな『爆弾』を投じればどうなるか





少女「学園都市に決定ね」









科学と魔術が交差するとき、物語は始まる!!





ー同時刻 学園都市ーー



土御門「……来たか」



一方「大至急っつったのはてめェの方だろうが」ガチャッ



一方「ンで、何なンですかァ、電話じゃ伝えられない内容ってのは」




ここは暗部組織グループのアジトの1つ

テーブルと椅子が置かれている以外ほとんど何もない部屋

一言でいえば殺風景だった



一方(……他の奴は来てねェみたいだが)



土御門「そんなに勘ぐらなくても他の奴らは呼んでいない」



一方「あァ?」



土御門「上の方からちょっと面倒なオーダーが下りてきてな。今回はお前だけにしか用はない」




俺にしか用はない?

たしかグループは集団で取り掛かる任務ばかりではなかったか?



土御門「それで、ちょっとお前に聞きたいことがあるんだが……」



土御門「『5年前の事件』と『絶対能力』、何かこの2つで思い出すことはないか?」



そう言いながら、一方通行に資料を渡す

そして、一方通行はその資料に次々と目を通していく



土御門「俺も一応目を通したが、何のことだかさっぱりなんだ。

    それで、お前に聞けば分かるかもしれないって言ってたんだが……」



一方「俺に聞けば分かる……?」ボソッ



土御門「?」



一方(5年前……、俺に聞けば……)




与えられたキーワードを頭の中で反芻する

何かが引っ掛かっているようなもどかしい感じがするのはいったい何だ?





一方「……おい土御門、この資料渡してきたのはどこのどいつだ」



土御門「…アレイスターだよ」



一方「……」



土御門「お前が何を考えてるのかは分からないが、今回はこの街の統括理事長直々の命令だ」



土御門「まあ、命令とは言ってもあいつはどうでもよさそうだったが……」



一方「……」




『5年前の事件』

『絶対能力』

『俺に聞けば分かる』






『知らないわね』


『そんな子いたかしら』


『ここにいるのはお前だけだ。他には誰もおらんよ』


『ついに頭までいかれちまったか?』


『お前以上のバケモンが居てたまるかよ』






一方「……ッ!?」ガタッ!!



土御門「おい!一方通行、お前何か分かって」



一方「ちょっと調べたいことができた。死にたくなけりゃ、ついてくんじゃねェ」ガシャッ




カツカツと、つえを突く音だけが反響する

どうやら本当に出て行ってしまったようだ

土御門だけが1人、殺風景な部屋に取り残される



土御門「……」



土御門(あの様子じゃ、一方通行が何か知ってるのはほぼ確定か)



一方通行はクロ

アレイスターの言う通り、何かを知っている




土御門(だが、あの慌てようはなんだ?確かに絶対能力と言う記述はあったが妹達や打ち止めとはまったくの無関係のはず……)



一方通行が守ろうとしているのは妹達

そして、あんな感情を向けるのも彼女たちしかいないはずだ

だが、今回の内容が彼女たちに関係しているようには思えなかった



では、あの慌てようは一体なんだ?




土御門(これが科学側の問題である以上、かみやんとの関係もなさそうだし、こっち側の問題にかみやんはあまり巻き込みたくない)



土御門(……)



土御門(……一応、海原と結標にも連絡しとくか)



そう思って、携帯を取り出そうとした。その時だった




prrrrrrrrrrrrr!!





土御門(こんな時に電話?一体どこから)



土御門(……!?)



土御門(ネセサリウス!?)




携帯画面に表示されていたのは

イギリスに本部を置くイギリス清教からだった



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ー???-




男「一体…何なんだよお前は!!」



少女「あらあら、とっくにご存じなんじゃないの?」



ガラガラッ!!と激しい音を立てて建物が崩れ落ちる

廃墟となってしまったビルの一部が崩れ落ちてしまったのだ


崩れてしまったのはこの少女のせいだが……




少女「四葉彼方……」



男「……?」



少女「私の名前よ。一応、能力名じゃない方ね」



四葉彼方と名乗った少女は薄い茶色のパーカーを着ていた

帽子を深々とかぶっているので、顔はよく見えなかった




彼方「と言うか、あんたたちも災難よね。よりにもよって侵入者が私なんだから」



彼方「不幸っていうかなんて言うか……」



彼方「ホント、ついてないわね」



少女はやれやれと言った感じだった




男「お前、学園都市の能力者じゃないのかよ!!電撃に念力にテレポートまで、おまけに俺たちの能力を消して!!」ビクビク



彼方「ビビってる割にはいろいろ聞いてくるんだね。仲間をやられて絶望してるかと思ったのに……」



少女と男の周りにあるのは

砕け散った瓦礫と気を失い倒れている数人の人間

倒れているのはこの男と一緒に少女を襲った能力者たち

少女の学園都市への侵入に対して攻撃を仕掛けたのだ




彼方「でも、この人気のないところに誘ったのは失敗ね。だってあなたたち全滅しちゃったんだから」



彼方「たった1人の女の子相手に」



男「……あ………ぐぅ…」




仲間をやられて、圧倒的な力を見せられて、怯えることしかできなかった

10人以上はいた能力者集団がほんの数秒で全滅し、男は最後の1人なのだから



彼方「でもやっぱり満たされないのよね。こんな一方的な勝ちじゃ……」



彼方「弱者をいたぶる趣味はないけど、私から見たら全員が弱く見えちゃうからね。

   どうせ世界中どこを探しても私と勝負して勝てる奴なんていないだろうし、いるなんて思ってない。

   それでもやっぱり、私のこの力についてこられるようなやつがいないか期待しちゃう気持ちもあるのよね」



彼方「まあ実際、今の私の目的もそれに近いところがあるし」



話していることは嘘偽りない本音のようだった

語っているときの目は、至って真剣だった




彼方「せっかくだし、最後まで残ったあなたに質問してあげる」




くるりと回って、にっこりと笑みを浮かべる

とても楽しそうに、一切の曇りのない無邪気な笑顔で



彼方「あなたがさっき言ってた電撃とかテレポートとか、私はそれを1人で操っています」



彼方「さあ、私は一体、何をしているでしょうか?」





それを戦闘と呼ぶには、あまりにも一方的だった



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彼方「さてと、こんなもんかしらね」



静まり返ったその場に、少女の声だけが響く




彼方「にしても、今回の襲撃はやけに早かったわね。侵入してまだ5分も経ってないのに場所まで特定されてたし……

   まるで私が来るのをあらかじめ分かっていたかのような早さ」



彼方「もしかして、魔術側で好き放題やってたのが警戒されちゃったかな?」



先ほどまで、イギリスでステイルと交戦していた少女

その少女は今は学園都市にいる

ちょうど侵入者撃退に動いていた能力者たちを黙らせたところだ




彼方「でも、それにしてはぶつけてくる刺客がこいつらだなんて、私のことほんとに分かってんのかしらね」



何のダメージも食らうことなくイギリス清教の施設を壊滅させた

もしそれを知っているならばさっきのレベル2やレベル3の能力者集団では不十分だ




彼方「ねぇ、あなたもそう思うでしょ?」



すると、少女は口元に抑えきれないほどの笑みを浮かべる

誰もいないはずの空間で、誰かに問いかけるように




彼方「一方通行!!」



カツンッ、カツンッ、という音がこだまする

学園都市が手をまわしたのか誰一人として一般人の入り込まない戦場へ

たった1人の少年がやってきた



彼方「学園都市の頂点に君臨する気分はどう?一方通行!!」


一方「ハッ、そんなこと言わなくとも分かるだろうがよォ」






一方「元学園都市第一位のてめェならなァ!!」



ーーーーーーーーーーーーーー


それは、意図しないことだった

本当に当事者である少年は何も悪くなかったと言えよう


しかし、その力があまりにも大きすぎたために起こった悲劇だった



『一方通行』と言う通り名がまだなかった頃

そして、自分の力についてまだよくわかっていなかった頃


俺は、公園にいた歳の変わらない男の子とケンカした

どうやら俺の態度にイラついたようだ

四の五の言わず、その男の子は俺を殴ってきた





ーーだが、その瞬間その男の子の腕が折れた!!




その後は、まるで流れるようにことが進んでいった



泣き叫ぶ男の子を見て周りにいたやつが

偶然通りかかった能力者が

通報を聞いてきた風紀委員が

武装をした警備員が




たった1人の少年へ一方的な敵意を向けた




しかし、その敵意はすべて反射された

他ならぬ、自らの能力によって

その結果、周りはズタズタになり、俺は無傷



俺は、そこにただ突っ立っていただけだった

たったそれだけで周りが勝手に壊れていった

俺個人に向けられた敵意だけで全て壊れていったんだ




そこに、少年の意図はなく、ただボーっと眺めていただけ

自分へ向けられた敵意が何の関係もない周りを壊していく様を



この時初めて、自分が『化物』なんだと認識した




その事件以降、彼はその力の強大さのあまり研究所をたらい回しにされるが

それは彼の強大すぎる能力を扱いきれなかったからだ


そして、自分が化け物だと分かってからはずっと自らのことをこう呼んだ





『一方通行』と……






ー5年前 とある研究所ー



研究員「ここだ」



ひと際大きな扉の前で立ち止まった

普通のドアじゃない。まるで核シェルターのようだった




一方「何なんですかァ、次の実験は。まさかこの街のゲテモノ兵器とでも戦えって言うんじゃねェだろうな」



戦闘機にでも使われるような分厚い装甲

これだけ見れば、何をするかなんてすぐに想像がつく




研究員「いいや、違う。今回君が相手をするのは機械じゃない、人間だよ」



一方「あァ?」



研究員「君と同じ、能力者のね」



分厚いドアには金庫のようなダイアルがあった

それをまわしながら研究員は答える




研究員「ちょうど僕も彼女の担当でね。今回の実験は楽しみにしているんだ」



一方「…そォかよ」



この研究員はたぶん闇に染まってない奴だ

人間をモルモットとしか見ていない奴よりは救いようがある

殆どが頭のいかれた研究者だが、目の前の男はどうやら違うらしい




研究員「開いたよ」ガチャ



中は、真っ白だった

天井も高く、学校のグラウンドくらいの広さはある

そして、その部屋の真ん中に少女が1人



研究員「それじゃあ、後はよろしく頼むよ。戦闘は自分たちのタイミングで始めてもらって構わないから」




中へ入ると、すぐに扉は閉ざされた

この部屋には少年と少女が1人ずつ、他には何もない



少女「あなたが聞いてた対戦相手ってことでいい?」



少女「ここならそんな簡単に壊れないはずだからね。

   高位能力者同士の戦闘のデモンストレーション、加減なんかしてたら何も始まらないから」



一方「……そォかよ」



少女「なんでも、測定器じゃ到底測り切れないから戦闘でデータを取るみたいだけどね。

   能力が強すぎて測定装置のキャパを越えてるとか言ってて」



つまり、システムスキャンのようなものだろうか

それならば、なんでここに呼び出されたのかも納得がいく

あんな化物のような力を、通常のやり方で測定できるわけがないから




一方(ってことは、こいつも相当強力な能力者ってことか……)



今から自分と戦闘を行うような奴だ

少なからず、目の前の少女が相当な高位能力者なのは分かった

研究者がさじを投げたくなるくらいには……




少女「それじゃ、今回の実験の話はここまで」


少女「私の名前は四葉彼方、あなたは?」


一方「……一方通行だ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして、舞台は現在へ



5年と言う時を経て、2人の能力者が再び相対する!!



彼方「学園都市第一位ねぇ……。やっぱりその称号は私には似合わないわ。

   そもそも私がその地位にいたのはほんの一瞬よ。第一位の座はあなたの方がお似合いよ」



一方「どうせお前が仕組んだんだろ。お前は突然姿を消しやがったからなァ」



彼方「私がこの街から姿を消したのはここではもう学ぶことはないと思ったからよ。

   外に出てからやってみたいこともあったし、ちょっとした留学のようなものね」



一方「お前が居なくなってからすぐに能力者がランク分けされた。レベル0からレベル5まででな」



彼方「そりゃよかったじゃない。わかりやすいランク分けができて。5年前はレベル5に位置する能力者があまりにも少なかったからね。

   相手が実際に使ってる能力が強いかどうかであくまで主観的に高位能力者と低位能力者を分けてたくらいだし」



彼方「絶対的な基準を作ってくれて相手の強さの判別が少ししやすくなったじゃない」



彼方「それに、あなたは私がいなくなってからずっと不動の第1位なんだし」



一方「……」





彼方「とまあ、昔話はこれくらいにして」



彼方「ここに何しに来たの?一方通行」



一方「テメェこそ何しにここに戻って来やがった?まさか何の用もなく戻ってきたわけじゃないンだろ」



彼方「私?私は今とある計画の実行中だから。

   それを達成するために、いろいろやらなきゃなんないのよね」



一方「あァ…計画?」



彼方「そうよ。もちろん私が計画したんだけどね」



計画というものにいい思い出はない

まあそれも、頭のいかれた研究者ばかり見てきたからかもしれないが




彼方「まあ止めろって言われてやめる気はないわよ。止めるんなら力づくで止めることね」



彼方「もっとも……」ニヤッ



彼方「ここに来てる時点で答えは決まってるようなもんか」グッ



一方「当たり前だくそったれ!!」カチッ



首元にあるチョーカーの電源を入れる

能力使用モード、この間だけ、彼は学園都市『最強』の超能力者になる



ダッ!!



一瞬だった


電源を入れると同時に一方通行が踏みつけた地面がコンクリートごと崩れ、巨大な地割れが引き起こされる



彼方「おぉ!!やっぱ凄いねぇ。5年前とは比べ物にならないじゃん。

   あの時できたのは『反射』と『操作』だけじゃなかったっけ?」



一方「ずいぶんと余裕そうだなァ!!オイ」





この一瞬で、一方通行と肉薄する!!




ーー触れたら即死



生体電気や血流の流れを狂わされて死ぬ!!





彼方「そう簡単にいくと思う!!」ビリビリッ!!



一方「……ッ!?」




閃光が瞬いた

少女を中心にして、まばゆい光が駆け巡る

光が晴れたときにはもう少女は目の前から消えていた



一方「電気……か」



一方「目眩ましにしちゃずいぶん派手な演出じゃねェか」



さっきのはただの目眩まし

反射膜に触れた能力は威力の高いものではなかった

つまり、一方通行の視界を遮ることが主な目的




彼方「別に驚くことでもないでしょ?電撃系の能力なんてありふれた能力なんだし。

   あんたのベクトル操作と違ってスタンダードな部類だし……」



彼方「ね!!」バチバチッ!!



さっきのものとは異なる威力を兼ね備えた電撃

食らってしまったら一溜まりもない






キィンッ!!






電流はあっけなく"霧散した”





一方「あァ?」



彼方(さすがに一発じゃ無理か……)



一方(俺はデフォじゃ反射に設定してるはずだ。なんで反射しねェ?)




おかしい。演算式に狂いはなかったはずだ

どうして『反射』されずに『消失』した

装置は正常なはずなのに、どうして誤作動が起こったんだ




一方(そォいや、前に戦った時も正体不明の力を使ってやがったが……)



前に戦った時にも感じた違和感

あの時は、まだ自分の力を使いこなせてなかったからと言う理由で説明がつく



しかし、今と昔では事情が異なる




仮にも第一位に君臨する一方通行が分からないなんてことあり得るのか?





彼方「一応言っておくけど、私の方が演算能力が高いだなんて思わないでね

   あなたより正確に早く演算できる奴なんてたぶんいないから」



単純な演算能力で押し負けたのではない!!

しかし、それは一方通行本人が最もよくわかっていること

正体不明の何かによって演算が狂わされたのだ




一方(あるはずだ。あいつを特別にしてるものが……

   さっきの電撃は普通じゃねェ。そんなことは俺が一番分かってる)




嫌と言うほど電気系の能力は見てきた

違和感に気づかない方がおかしいくらいには……





彼方「反射の壁を突っ切るための条件……」



彼方「どの能力を使っても基本は可能だけど、やっぱり使い慣れてるやつが一番みたいね。

   少しでも調整を失敗したらこっちとしては大惨事だし」



彼方「私の友達に電気系の能力の友達がいるのよね。

   その子が能力使うのを ”観察” してるうちに、自然と使うのうまくなっちゃったのよね」



彼方「こういう風に!!」バチバチッ!!




一方「…ッ!?」(少ししびれが…!!)





感じたのは静電気のようなほんの少しの電流

命中した右手は今も少し痛みが残っている




1度目の電撃は『霧散』した

2度目の電撃は『貫通』した



確実に相手は照準を合わせてきている

完全に電撃が『直撃』するのも時間の問題だ




一方( だが、これであいつが何してンのか分かるはずだ。

   あいつより早く『解析』しちまえばこっちの勝ちなンだよ!!)



食らってしまったがこれでいい

電撃の性質はさっきの一瞬で記憶した



すべての動いている物質はベクトルを持つ

たとえそれが、この世に存在しない物質であっても!!




第二位『末元物質』



実際に発見されず、理論上も存在しない物質を創り出す能力

存在しない物質によって物理法則を捻じ曲げることができる




たとえば水をダイヤモンドよりも硬く


たとえば鉄をゴムよりも弾性のある物質へ


たとえば太陽光線を人を殺す殺人光線へ




そうして一方通行が無害だと認識しているものを有害なものへと変換した


一方通行が知らない法則によって!!




だが、最終的に勝利したのは一方通行


既存の物理法則には本来含まれないダークマターを含むものとして法則を再定義し、

ダークマターさえも自分の知る範囲に納めたのだ


戦闘中にダークマターを解析するという荒業によって!!




『未知』から『既知』へ


そういう変換のことを解析と呼ぶ


そして、解析とは『一方通行』という能力の本領である




一方( やってやる!!あのくそったれの第二位の時みたいに……)




かつて、研究者がさじを投げた難題

それはあの少女の能力が解析できず、特定できないこと


だったら、第一位たる自分がやってやる



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ー英国 必要悪の教会ー



必要悪の教会、通称ネセサリウス

魔術的な手段によって主に魔術師を狩り、英国を守る組織

一般的な警察などとは異なり、表舞台ではなく裏舞台で彼らは主に活躍している


そんな組織の空気は重かった



ステイル「それじゃあ、僕が守っていたあの場所では、何が行われたのかも分からないってことかい」



神裂「ええ。調査に向かった時にはここの支部の人間が倒れていただけ

   霊装にも手を付けられていませんでしたし、魔導書にも一切触れていなかったと」



ステイル「それじゃあ結局、何が目的かさえもわからないってことか」



神裂「そういうことになりますね」




ステイル「それじゃあ、他のシスターたちが忙しくしているのは?」



神裂「護衛の準備をしているそうですよ。襲撃者の情報があまりにも分からないので、

   とりあえず最優先で守るべきものを守るのだとか」




無駄だろう、そう思った

実際に対面したから言えることだ

あれは人数とかそういうもので勝てるものじゃない



神裂「ですが、現在その襲撃者の行方も分からなくなっているので、その捜索に当たってる人数の方が多いようですが」



ステイル「……」



ステイル「無駄だろうね」



神裂「無駄?」



ステイル「捜索のことだよ。おそらく襲撃者は魔術師ではない。

     能力らしきものを使っているとき、魔術的記号が一切感じられなかったからね」



今でも鮮明に覚えている

何のアクションも起こしていなかった

何かをしているようにも思えなかった


だというのに、得体のしれない力に一方的に叩きのめされた




神裂「…未知の魔術が使用されているということは?」



ステイル「それはあり得ないね。僕はルーンの魔術を使っているおかげで魔術的な記号には詳しいんだ。

     解析することは無理でも、魔術かどうかなら見間違うことはないさ」



まあ、おそらく間違いはないだろう

彼は嘘をつくような人物ではないし、魔術の腕も相当なものだ




神裂「それと、相手の能力について確認しておきたいんですが…」



ステイル「確認も何も、僕にもさっぱり分からない。

     強いて言うなら、魔術そのものを消し飛ばしているようだったね」




炎は突然消えた

イノケンティウスは謎の力で消された


原理は分からないが、視覚的にも感覚的にもそんな感じだった





神裂「魔術を消し飛ばす……ですか」



ステイル「そうさ。組み上げた術式そのものを壊しているようだったよ」



それから少し会話したが有益な情報は得られなかった

分かったのはその少女はもう近くにはいないのではないかと言うこと

ただそれも、別に確定されたことではない


結局、英国側の対策は警備を固めるだけであった



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ー学園都市ー



一方(ったく、どォいうことだ……)



戦闘を行うこと数分

一方通行は攻めるに攻めきれなかった




一方(あいつの力は解析可能だ。だが、解析が終わったところで能力の性質そのものが変わりやがる)



性質が変わる

それは解析する一方通行からしたら最も迷惑なこと




一方(だが、一体どォいうことだ。能力は1人につき1つ、例外なんてありえねェ)



だというのに目の前の少女が使うのは電撃だけじゃない

念動力、空間移動、発火能力、風力操作……

このように、ジャンルに縛られることなく様々な能力を使用してくる




一方(頭の湧いた研究者どもは多重能力が存在したらとか言ってやがるが、そんなの存在するわけがねェ。

  パーソナルリアリティは1人につき1つ、そんなもンが2つも3つもあったら人格が複数存在することになる。

  そうなったら人格を保てるわけがない。人格同士がぶつかり合って意思がぶっ壊れるはずだ)



超能力を扱うのに必要になるのが『自分だけの現実』

そんな自分にとっての現実が2つも3つも存在するわけがない




一方(チッ!結局はまた振り出しだ。表面上の情報は解析できるが根幹の部分が掴めねェ)



一方通行の解析は相手の能力に触れることで様々なデータをリストアップし

それから自分の知る既存のルールと見比べ、照合する


そして、自分の知らない法則に対しては戦闘中に得た莫大なデータによって

相手の能力を観測し、そこから新たな法則を見出し、その見出した法則を適用している



この芸当はベクトルを操れる一方通行だからこそできること

そうでもなければ、法則を見出せるほどの莫大なデータを得ることはできない




が、今回の相手はその解析がうまくいかない相手だった



得られた莫大なデータからでは、法則を推測することさえもできなかった

できるのは一度使用された能力の性質に対して壁を設けるくらい



超能力は自分だけの現実によって支えられている

その『現実』は決してブレるはずのない1つのフィルターのようなものだ

超能力者はその特殊なフィルターを通して世界を見ている



一方通行がやっているのはそのフィルターの解析

莫大なデータに基づいて、フィルターを通して見える世界を翻訳する



本来ならそれでどのような能力にも対応できるはずだ

翻訳によって未知を既知に変換できるのだから



できない理由はそのフィルターがころころ変わるから

解析したら、他のフィルターに取り換えられる




その繰り返し






彼方「ほら、私って最強の能力者だからさ」



一方「あァ?」



彼方「実際外に出ても私より強い奴なんていなかったのよね」



一方「……だいたいなんで外にまで出たんだテメェはよォ」



彼方「私の能力は解析不能だったからね。あのまま学園都市に残ってても解析は出来なさそうだし、

   それだったら外の方が有意義な体験ができると思っただけよ」



一方通行の能力は科学的には証明されていた

彼が化物扱いされたのはその出力があまりにも強かったから

どのような能力なのかは明らかだった



だが、目の前にいるコイツは別だ

コイツの能力はまさに正体不明、解析不能

調べても調べても謎の解けない本物のブラックボックスだった



一方通行自身もそれを今痛感している

コイツはダメだ。本当に底がつかめない




現時点で一方通行が出した結論は、『解析』は無理だということ






彼方「あなたも出てみたら?きっと世界は広いんだなってことを認識することになると思うわ」



一方「…ずいぶんと頭ン中がお花畑になっちまったよォだな」



彼方「気にしないでよ。この性格はもともとだから」





彼方「まあ随分話しちゃったけど今じゃ私は計画の途中だからね。

   あんたが邪魔しようと意地でもやり遂げなきゃいけないのよね」ダッ!!



少女は一方通行の方へと駆ける


飛んでくる瓦礫は電撃で防ぎ

巻き起こった風は風力操作で流し


そして、2人が肉薄する!!




一方(むしろ好都合……!!)グッ



『解析』を行っていた一方通行だが、勝利条件はそれだけではない


触れれば勝ちなのだ!!





『解析』は無理



ならば、次なる手は



迷うことなく右腕を突き出した



そして、そして、そして……









キィン!という甲高い音が鳴り響き、2人の身体が接触した!!





一方「チッ」



彼方「そんな簡単に、やられるわけないじゃない……!!」




両者とも、五体満足で立っていた!!





彼方「さすがに私も何の策も無しにあんたに突っ込んでいかないわよ」



一方「……俺のわざとけりを入れて反射されるとは、なかなかぶっ飛んだことしてくれるじゃねェか」



彼方「確かにあのとき腕で触られてたら私はこうして立ってられなかったかもね。

   あんたが触れてる間はベクトルの制御権はすべてあんたが握っちゃうんだから」



血流操作や生体電気の操作

そんなことをされては一溜まりもない

どんな人間だろうと一瞬で狂わされてしまう

人間の身体を維持するために循環する血流や生体電気を操ることはまさに『必殺』と言えよう




そして、その『必殺』は一方通行にとってそれは容易に行えることだ


彼が触れるだけですべてのベクトルが掌握されてしまう!!



だが、それは無意識化で行うことはできない


たとえば、今回一方通行は腕で触れて操作しようと考えていた

そうすれば、自然と意識は腕の方に向かい、他のところにはまわらなくなる

当然、あまり意識していない胴体に触れられたほんの一瞬で操作するなんて不可能だ



なぜなら、『操作』をするには演算が必要だから

無意識下で相手のベクトルをコントロールできるほど演算は単純ではない



そして、一方通行が無意識下で行っているのは『反射』

胴体を蹴ればそのまま衝撃は反射される


意識下では『操作』を行おうとしていても、無意識化では『反射』をしている

意識している腕では『操作』、あまり意識していない部分では『反射』を




ーー四葉彼方と言う少女はそれを見抜き、利用して見せた!!






彼方「私だって一応人間よ。人間離れしたことはいろいろやってるけどね」



あはは~、と無邪気に笑っていた

まるで、小さな子供が楽しく遊んでいるかのように





少なくとも、一方通行にはそう見えた!!




一方「俺に触れられたら即死って分かっててその態度かよ。これは頭のねじが足りねェってだけじゃ説明不足だな」



彼方「そう?ずっと『子供』でいることって大切だと思うけど」



一方「テメェを見てるとどっかのメルヘン野郎が頭に浮かンでくるンだよ」



彼方「よくわかんないけどそれだけは勘弁してほしいところね」






だが、終わりは突然訪れる!!




彼方「でもねぇ、真面目な話をするとそろそろ時間の猶予がなくなるのよね。

   これ以上時間かけちゃうと計画の方に支障が出るかもしれないし」





ーー本気だ



目を見れば分かる

身にまとう雰囲気で分かる



これまで以上に警戒しなくては、確実にやられる!!




彼方「だから…」シュンッ!!





ーー背後!!




見えたわけじゃない

だが、直感が必死に語り掛ける


その直感に従って背後に右手を突き出した!!



彼方「そろそろ決着を着けようと思ってね!!」ビリビリッ!!



一方「……がァ!?」





ーー間に合わない!!




少女の放った電撃は、ついに反射の壁を『貫通』した!!




彼方「調整完了……ってね」



彼方「何も、相手の能力を解析してたのはあなただけじゃないってことよ」



一方「……クソったれが」



今までに殴られたことはあった

だが、電撃を食らうのは初めてだった


痛い。殴られるのとは異なる痛さ

痺れるという言葉は知っていても、それを体験するのは初めてだった





彼方「いいじゃない最強、何もかも力でねじ伏せられる存在。

   常に勝者でいられるっていうのは別に悪い気はしないと思うけど」



彼方「別に自慢するわけじゃないけど、私は自分のことを最強の能力者だって思ってるわ。

   今まで一回も負けたことがないし、負けそうになったこともない」



最強とは、絶対に負けない存在である

だって、この世界で最も強い存在であるから



彼方「だから、私は世界とケンカをする。こんな計画を立ててまでね」



英国で戦った炎の魔術師

その魔法名は『Fortis931』、我が名が最強である理由をここに証明する



それを知ったとき、いい魔法名だなと思った

だから、あんな質問をしたのだ

世界の運命を呪ったことがあるのか……、と


あんな魔法名を背負うものが何を考えているのか、単純に気になった



得られた回答は ”大切な誰かを守るため”



その大切な何かを守るために最強であろうとしたのだ






ーーでは、この少女は何のために戦う?






一方「やらせると思うか?」



だが、いずれにせよ最強であることを示すには戦わなければいけない

戦うにはまず相手が必要だ



『最強』の超能力者は少女の前に立ちふさがる!!




一方「テメェが何考えてるか知ったこっちゃねェがよォ……

   その御大層な計画とやら、誰も止めらンねェとか思ってンなら俺が止めてやンよ」






ーーあぁ、あの目だ




この学園都市最強はアイツと同じ目をしている……!!







彼方「面白い…」ニヤッ



彼方「やれるもんならやってみなさいよ」






ーーならば、こちらも同等の覚悟で立ち向かわなくては!!






彼方「何かを守るために、『最強』でありたいのなら…」




一方通行は頭をフル回転させる


コイツを倒すためにはどうすればいい?


目の前の奴を叩き潰すにはどうすればいい?




『反射』はダメ


『操作』も無理


『解析』は不可能




普通のやり方じゃあいつに及ばない


通常のプロセスを踏んだところで勝ち目はない







ーー思い出せ!!





木原を倒した時、自分はいったい何をした?



第二位の奴を叩き潰した時、自分はいったい何をした?









ーー圧倒的な力による蹂躙!!





トリガーはもはや必要ない


偶然に身を任せずに、きちんと自らの意志で


壊したいものを壊し、守りたいものを守り抜け





瞬間、一方通行の背中から、黒いなにかが渦のように噴出した!!




一方「…TガPf潰kしkfp」



人が話す言葉ではない

まるで、演算領域の言語を翻訳せずにそのまま吐き出したような

ノイズの混じった音が響いていた




彼方「やってくれるじゃない……」



人が絶望するには十分な力の塊

どんなに頭の狂った研究者だろうと、人外の力を扱う超能力者だろうと

この力の矛先を向けられれば立ち向かうなんてことはできない



人は、絶対にかなわないと確信したものには必ず従う




黒い翼は、絶望の象徴だ





彼方「ほんと、……やってくれるわね」フッ




しかし、少女はそれを見てにやりと笑みを浮かべる



彼方「確かにやれって言ったのは私だけど、まさかここまでやるなんて……

   そのノイズ音って天使の領域に踏み込んでる証拠でしょ?」



彼方「これって下手したら、本場の天使より強いんじゃない?」




黒い翼は容赦なく吹き荒れる

周囲の廃ビルを粉砕し、コンクリートを軽々と抉る




彼方(乱れはあるけど、ほとんどは私の方に照準が向いてるようね。

   闇雲に力を振るってるわけじゃないってことか……)



彼方(それに、あんなのに当たったが最後、かすっただけでもたぶん即死)




コンクリートを抉る

廃ビルを粉砕する

そんな力を受ければ即死、そんなのは分かっている



分かっているからこそ、全力で攻撃をかわしているのだ




彼方「でも、あいにくとあんまり付き合ってる時間はないのよね。

   やれるもんならやってみろって言ったのは私だけど」



彼方「私の能力、どうやら解析しきれなかったようだけど、私の専門分野は ”こういう事” なのよ。

   今から身をもって体験するんだから嫌でも分かると思うわ」



この言葉が届くわけでもない

そもそも届くとは少しも思っていない

少女はうっすらと口元に笑みを浮かべていた



まっすぐと、右手を一方通行の方へと突き出す




彼方「と言うわけで、そのバランス……」




彼方「容赦なく突き崩させてもらうわ!!」ギッ




ズッ!!……と、どこか鈍い音が響き渡った


何かが砕け散る甲高い音ではなく、何かのバランスが突き崩されたような……



ステイルの切り札であるイノケンティウスが消失した時と同じ感覚


何か莫大な力で対抗するわけでもなく、ただわけの分からない何かが作用して、崩れる




結末は同じ、抗うことなくその力は消失する




一方「bgガtpKゼqyd……!!」ガッ



彼方「うっそでしょ!?」シュンッ!!




ーーことはなかった!!




放たれた黒翼をとっさに回避する




彼方「危ない危ない。天使まがいの力なんて食らったら一溜まりもないじゃない」



彼方「それにしても、あの力のバランスは確かに崩したはず。

   あれだけの膨大な力が一度でもコントロールから外れたら力を維持するなんて不可能なはずなのに」



『人間』である以上天使と同等の力を扱うのは不可能

人という器には天使の力はあまりにも膨大すぎて入りきらない

当然、超能力者だろうと人間なのであんな力を扱いきれるわけはない

絶対にどこかで背伸びをしないと届かない領域の力なのだ



そして、そのバランスを一度でも崩したら立て直すにはそれ以上の力が必要だ

身の丈に合わない力を使っていた奴が、バランスを崩されて立て直せるわけはないはず



彼方(だけど、現に一方通行は持ちこたえている。私がバランスを崩したにもかかわらず…

   あんな状態は能力の暴走状態と言っても過言じゃない状況なはず)



彼方(でも、一旦能力が暴走してるかそうじゃないかは置いとくとして、あんな規格外な力を制御するのって可能なの?)



彼方(私が一度バランスを崩してからも黒い翼みたいなものはこっちに照準を合わせている。

   つまり、暴走しているように見えても根っこの部分では一方通行の制御下に置かれているということ)




彼方「ん?…制御?」



彼方「……!?」



彼方「なぁんだ。そういうことか」フッ



彼方「これはまたとんでもないものを作ってしまったわね。

   まったく、5年前じゃ到底考えられないような代物よ、アレイスター」



彼方「よくもまあこの力を制御下に置いたものね。それもほとんど力技で……

   不安定に見えるけど暴走はしていない。バランスを崩されても立て直せるほどの安定性」




彼方「完璧なコントロールじゃない」




あの吹き荒れるような力の塊を


見ただけで人を絶望のどん底へ突き落すような象徴を


『一方通行』という能力によって裁いている




彼方「『超能力者』最強は間違いなくあなたね。これは間違いないわ。

   他の超能力者がどんなに歯を食いしばって頑張ってもこれには届かないわ」




そして、自らを最強と称した少女は認める




一方通行は『超能力者』最強であると





彼方「でもね、私は『能力者』最強だから……」



彼方「科学の領分で第一位になったところで、私にはまだ届かないのよ」シュンッ!!





黒い翼を避けながら一方通行との距離を詰めていく



1度たりとも当たってたまるか



学園都市最強の力がその身をバラバラにするぞ!!




彼方「遠距離からじゃあれくらいが限度だけど、直接触れればどんなものでも崩壊させられるのよ!!」グッ




吹き荒れる力を蹴散らし、一方通行に詰め寄る



そのまま彼の肩に右手を置いて




彼方「解除……」






今度は、何の音もなかった



今の今まで轟音が鳴り響いていた戦場は、静寂に包まれた



無音、ただそれだけがこの場を支配する



もう既に、黒い渦のような何かは噴出していない





原因は1つ



”勝者である彼女が元栓を閉めたから”





力なく倒れた一方通行をそのまま見つめていた




彼方「…」



彼方「…」



彼方「…たぶん、私はあなたの道標になる。

   科学で無知なあなたがもっと世界を知っていくための……」



彼方「そしていつか、世界と向き合わなきゃいけなくなる時が来る」



彼方「その身に宿す力が、突然消えてしまうようなことでもない限り……」




彼方「たぶんこれが、力を持った者の宿命なのかもしれないけどね」フフッ




その言葉は、一方通行に向けられているようで、一方通行に向けられているようではなかった

少女の発したものは、何の応答も得られることなく虚空へと消えていった




人気のない道路

その真ん中に立つ少女とそばに倒れている少年

周囲には戦闘によってボロボロになってしまった建物




イン「そこで何してるの?」



その場に似合わない1人の少女が紛れ込んだ




彼方「何をしてるって……」




「見れば分かるでしょ」と、答えようと思っていた

だが、声を発した少女を見て、それを取りやめてしまう




彼方「あれ、あんたは……」




白い修道服

あまりにも特徴的なその服を着ている人物を見間違えるわけがない




彼方「インデックス」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ー約4か月前 6月 某所ー



「あなた、いったい何者ですか」



Tシャツとジーンズ、腰には日本刀

今対面している人物の容姿を説明するならこうだろう



彼方「私からしたらそっちが何なんだって話だけどね。あんたたちが追い回してる、……インデックスだっけ?

   あの子が言ってたよ。自分は今追われてるんだってね」



彼方「あんまりにも必死だったからあっちの方に逃がしといたけど」




そう言って自分の後ろの方を指さした




「そうですか。では、私はあなたに構っている時間はありませんので」



彼方「まあそう言わないでよ。それに、今追いかけても無駄だと思うよ。

   あと1時間くらいは絶対に見つからないだろうし」



「1時間……ですか」



彼方「なんたって、私がまじないをかけておいたからね」



「まじない?」



彼方「ああ、あんたたちにも分かりやすいように言うなら…魔術だよ」



その瞬間、目の前の人物の目つきが変わったように感じた

魔術と言う単語を聞いた途端、明らかに私に対して敵意を見せているようだった




「そうですか。あなたはあの子を狙う魔術師ってことですね」



彼方「まあ、厳密には魔術師でもないんだけどね」



そう、私は魔術師ではない。だから使ったのも魔術ではない

しかし、その女は私のつぶやきには耳も貸していない様子だった




彼方「私が使ったのはステルスみたいなもんだよ。一時間もあれば効果はなくなるだろうけどね」



彼方「それに、私の目的はあの子じゃないよ。あいつがどんな重要なものを持ってるのか知らないし、

   そもそもあいつとはここで偶然会ったんだし」



「そうですか。では、あなたの目的は…」



その女はどこか安心しているようだった

私があの子を狙うと何か困ったことでもあるのだろうか?



まあ、そんなことはどうでもいい




彼方「私の目的はあんただよ」シュンッ!!



テレポートをして背後にまわった

そしてそのまま思いっ切り蹴り飛ばそうとしたが、””素手で受け止められてしまった””



彼方「さっすが!!やっぱ私の目に狂いはなかったね。あんた、聖人だろ」グッ



「……!?」



危険と思われたのか距離を取られてしまった



彼方(しかも、聖人の中でもかなりの使い手。テレポートで移動した私をすぐに察知して攻撃を防ぐほどの反射神経。

   そしてさらに力を加えようとしたところで危険を察知できるほどの高度な危険察知能力…)



彼方「やっぱ人間の領域からかなりはみ出てるねぇ。聖人っていうのは」



腰にある刀に手をかけている

戦闘準備は既に整っているようだ



「あなたがあの子を狙っていようとそうでなかろうと私はあの子を保護しなくてはなりません。だからあまり時間がないんですよ」



彼方「保護……ねぇ」



彼方 (私に対して敵意はあるが殺意はない。こんなやつが女の子追いかけまわすとは思えないけど……)



彼方 (まあ、それも関係ないこと。別に私はお悩み相談をやってるわけじゃないんだし)



「それでも私の邪魔をするのならあなたとここで戦わなくてはなりません」



彼方「こっちとしては願ったり叶ったりだね」



それを聞いて、相手は身構える



彼方「それじゃあ、改めて自己紹介」



彼方「私の名前は四葉彼方。ちょっと変わった能力者だよ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ー現在 学園都市 某所ー



彼方 (そういや、あの時インデックスに会ったんだっけ。それと、あの聖人にも……)



彼方 (それにしても、こんなところで再開するとは……これも何かの縁なのかな?)



インデックスはこちらをきょとんとした表情で眺めていた

何がどうなっているのかまったく分かっていない様子だった



彼方「インデックス、どうしてこんなところにいるの」



イン「それは…、前に感じたテレズマに似た力を感じたから」



前に感じたテレズマに似た力?

一体何のことかと思ったが見当はすぐについた

十中八九、一方通行が放っていた黒い渦状の翼のようなもののことだろう



イン「それより、かなたはどうしてここにいるの?前に会ったときは外だったよね」



彼方「私はあちこち旅してる能力者だからね。世界各地どこでも、神出鬼没なのよ」



それを聞いて、何か妙に納得しているようだった




彼方「それじゃあ、話は変わるんだけどあなたにもこの質問しよっかな」



イン「?」







    『理不尽な運命を呪ったことは、今までにある?』





それは、ステイルにした質問と全く同じもの

世界に絶望した人がふと思いつくような哲学的なもの

しかし、この少女にとっては何らかの意味がある質問である



イン「……」




5秒、10秒、30秒……

いくら待っても返事は返ってこない

インデックスという少女は考え込んでしまった




彼方 (なるほど。””これ””が答えってわけね)





彼方「まあ、……あなたに聞いても返答は1つか」



すべてを悟ったかのように答えたつもりだった

そして、インデックスと言う少女もこの質問の真意がつかめているように思えた







ーーだが






イン「かなた、何か雰囲気変わったね」



彼方「そう?」



イン「うん。かなたの姿を初めて見たとき、かなただって気づかなかったから……」




だからあんなにきょとんとした顔をしていたのだろうか?





彼方「ねぇ、インデックス。私が1つおまじないをしてあげよっか?」



イン「おまじない?」



彼方「そう。私の力は魔術とは違う、ちょっと特殊なものだから」



イン「特殊……」



彼方「それに、シスターのあんたにはぴったりだと思うからね」




私はゆっくりと彼女の方に歩み寄っていった

疑うはずもない。この子は私がここで何をやっていたのかなんて知らない

一方通行は私の後ろの方に倒れているからインデックスからは見えないだろうし



優しく、彼女の頭の上に手を置いた

なでるようにではなく、そっと添えるようにして……



イン「えっと……、かなた?」オドオド



彼方「あなたはシスターなんだから、神様には束縛されても人間に縛られる必要はないと思うのよね」



イン「…………!?」



甲高い音が響いたわけではない

鈍い音が鳴ったわけでもない

ピカッと光ったわけでもない



傍から見ていれば何が起きたのか、そもそも何かされたのかすら分からない

視覚と聴覚では今起こった現象を説明するには明らかに不十分だ




しかし、当の本人であるインデックスはしっかりと感じ取った



光や音としてではない



第六感とも呼べる、自分の感覚そのもので感じ取ったのだ





カチリッ………と





どこか、ずっと遠くだけれど、もっと自分のそばのような場所で



だけど、絶対に自分では触れられないような場所で



ずっと自分を縛り付けていた手錠のようなものが外れたような気がして




そして、





その記憶を最後に彼女は意識を手放してしまった




スルリッと力なく白い修道服の少女は倒れこんでしまった




彼方 (……ちょっと余計なことしちゃったかな?

   でもまあいっか。これで捻じ曲げられた運命のレールは元に戻せたし)



彼方 (それじゃあ、そろそろ仕事にとりかかって……)




『離れろよ』



その言葉で思考が中断される

インデックスが来たのと同じ方角、そちらから声がした




彼方「ありゃ、また乱入者?」



彼方「ほんとうに、次から次へと……」




彼方「……って、あんたは」




その声の主は少年だった

インデックスのように直接の面識があるわけじゃない

だけど、四葉彼方は目の前の少年を知っていた




「お前が、何をしようとしてたのか俺にはわからない」



「だけど、お前がインデックスに何かしようとしてたってのは分かる」




すぐに殴り掛かってはこないようだった

彼から見れば私は完全に悪者

だってそれもそうだ。目の前にインデックスが倒れているのだから



だが、今のところその衝動を抑え込むだけの理性は残っているようだ




彼方「……信用するかどうかは分からないけど、インデックスは少し気を失ってるだけよ。

   彼女にとって””害のあること””は何もしていないわ」



彼方「ちょっと見られちゃまずいものを見られそうになったからね」



「まずいもの?」



彼方「あれのことよ」ユビサシ



「……っ!?一方通行!!」



彼方「あなたなら分かるでしょ、上条当麻。

   以前に、『絶対能力進化実験』を止めるために彼と戦ったあなたなら」



この言葉を聞いて彼も身構えてしまう

戦う気満々のようだ




彼方「だけど、もう私にはあまり遊んでる時間がなくってね。戦う気はないのよ」





ーー少なくとも、今は





彼方「でも、お別れを言う前に1つ、あなたには少し違う質問をしようかしらね」



上条「違う質問?」



彼方「そう。ちゃんと正直に答えなさいね」




彼方「一番失ってはいけないものって何だと思う?」





上条「失ってはいけないもの……」



彼方「まあ、答えはあなたの心の中に……ってね」




彼方「でも、そんなに迷わなくてもすぐに答えは分かるはずよ」



彼方「なぜなら……」シュンッ!!



上条「っ!?」



まさに一瞬のことだった

少女の姿が消えるのと同時、自分の首元に少女の手が置かれていた!!




彼方「私が今からまじないをかけるから」



上条 (今のはテレポート!?それに身体が動かない!!)



上条の右手に宿るのは『幻想殺し』

異能の力なら問答無用で無効化することができる

だが、それは直接触れることができたらの話



上条 (それにしても、いったい何の力を使ってるんだよ!!

   テレポート使ってるなら超能力者かと思ったけど、違うのかよ)



思考を巡らせるが、一方通行が解析不能な能力を当てられるわけもない

右手の幻想殺しは全く作用することなく、身体は指先さえも全く動かない




彼方「それじゃあ、準備完了。ヒントはあげるから、ちゃんと自分の力で質問の答えを見つけるんだよ」




その言葉が最後だった

上条当麻は急に視界が真っ暗になり、意識は途絶えてしまった




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







アレイ「ふむ、……まさかこれほどとは」



アレイ「だが、あれはあれでいい刺激になったはずだ。『一方通行』にとっても、『幻想殺し』にとっても……」



アレイ「プランの軌道を少々変更するとするか。それで138ステップもの手順を省略できるはずだ」フッ





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ー???ー




「へ~、それじゃあかなり大変だったみたいじゃん。流石の彼方でも手間とっちゃったみたいな」



彼方「ばーか、そんなわけないでしょ。一方通行との戦闘はたぶん避けられないかなって思ってたけど、

   インデックスと上条当麻は完全な予想外よ」



「それにしても、あの2人に偶然現場を見られるなんて、やっぱり彼方って不幸と言うか何というか……」



彼方「……あんた、今絶対哀れんだ表情してるでしょ」



「あぁ……ばれた?」



彼方「電話越しでも丸分かりよ!!」




彼方「まあ、それより私の方はちゃんと仕事はこなしといたけど、そっちは?」



「ばっちりよ!!当分は見つからないと思うけど」



彼方「そう、それならいいわ」




「それで、学園都市の方は一旦片が付いたんでしょ。次の場所は?」



彼方「イギリスよ。前に襲撃した郊外じゃなくて、もっとお城の近くのところ」



「へぇ~、じゃあ頑張ってね!」



彼方「ちょっと!?私のこと心配とかしないわけ!!」



「えぇ~、別にしないよ」



彼方「何でよ?今度はイギリスと全面戦争みたくなってもおかしくないのよ」



「なるかもしれないね。だけど、心配なんてするだけ無駄でしょ?」






『だって彼方は最強の能力者じゃん』







彼方「…」



「なーに、もしかして心配でもしてんの?別に負けるならそれでいいじゃん。

 誰も届かないような領域にいる彼方に届く存在が現れたってことでさ」



彼方「……あんたってほんとブレないわね。ちょっとカマかけてみただけなのに」ハァ



「私がブレないのはたぶん彼方のせいだと思うけどね」



「それじゃ、衛星でもハッキングして戦闘の様子は見ておくつもりだから。イギリスでの大乱闘楽しみにしておくよ」フフッ



彼方「ハイハイ、了解ですよ」




電話を切って、携帯をパーカーのポケットに入れた

前回は帽子を深々とかぶっていたが、今回は帽子はかぶらない




彼方「待ってなさいよ」




彼方「最高のショーにしてあげるから」フフッ





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俺は、生まれたときから不幸だった

幸運に恵まれるどころか普通でいられることもできず、運勢と言う者には全く縁がなかった

どうやら、俺は神様ってやつからとことん嫌われているらしい



だから、なのだろうか



「こっち来んなよ!!」


「あっち行けよ疫病神!!」


「お前といると不幸が移るんだよ!!」



俺は神様だけでなく、人にも嫌われた

理由は俺といると不幸な目にあってしまうから

その結果俺についたあだ名は『疫病神』

その場にいるだけで相手を不幸にしてしまう悪い神様だ


そんな妙な噂は瞬く間に広がった

子供だけでなく大人までもがその噂を信じ切っていたのだ




幼上条「うぅ……」グスッ



俺はまだ幼かったから、難しいことは分からなかった

『疫病神』とか言われても、正直何のことかはよく分からなかった



だけど、それでも相手のドロドロとした醜い感情はストレートに伝わってきて

幼かったからこそ、感受性が強い幼い時期だったからこそ、お友達が1人もいなかったからこそ





ーー辛かった





今もベンチで1人で泣いている

こんなところ、お母さんとお父さんには絶対に見せられない

だって、俺が泣いてるのを見たらたぶんすっごく悲しそうな顔にしちゃうから

あの2人に困った顔はしてほしくないから



だから、俺が頑張らないと




幼上条「……」



「どうしたの?」



幼上条「 」ビクッ



「そんなに驚かなくても……、」



幼上条「え、えっと……、ごめん」




女の子に話しかけられた

俺より背がかなり小さいからたぶん年下だ




「わたし、最近ここに引っ越してきたから、よく分からないの」



幼上条「そう、なんだ」



今思ったら人とまともに話すのっていつぶりだろう

『疫病神』と呼ばれるようになってからずっと会話なんてしたことなかった


もう、自分がいつからこんな風に呼ばれるようななったかも覚えていない




幼上条「えっと、僕のこと怖くないの?」オドオド



「何で?別に怖くないよ」



幼上条「ほんとに?」



「ほんとだよ」



どうやらこの女の子は知らないようだった

自分がみんなから何て呼ばれているのか




ーーだけど




「ねぇ、一緒にあそぼうよ」



幼上条「え……」



見ると、少女はこっちに手を差し出していた




「あっちに公園があるからさ。一緒にいこうよ」




その言葉がどれだけ嬉しかったか

どれだけ自分が待ち望んでいたことか




幼上条「……うぅ」グスン



「え、どうしたの!?泣いちゃって」



幼上条「ううん、何でもないの」




幼上条「ちょっと、……うれしかっただけだから」



ほんとうに、うれしかった

友達と仲良くしたかったのに、仲良くできなかった少年にとっては


今までの絶望はほんの少しの希望によって塗り替えられていた




「それじゃあ、いこっか」



幼上条「うん……」




俺は少女の手を握った。しっかりと右手で

少女に引っ張られるように向かいの公園に向かって歩いていた



嬉しくて嬉しくて

それでもやっぱり涙は止まらなくて

あふれてくる涙を左手で拭った



そのおかげで今までぼんやりとしていた景色がくっきりと見えた






ーー自分の方に猛スピードで向かってくる大型のトラックが






キキイィィィィィィ!!!!!





ガシャーン!!








幼上条「あ、……あぁ………」




そして、最後に見えたのはトラックに跳ね飛ばされて真っ赤になった少女だった




幼上条「うぅ、……うあぁ………」




震えが止まらない




怖い




怖い






こわいよぉ







幼上条「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」ダッ




たまらなくなってそこから逃げ出した



何で、どうして僕は普通じゃないの?



どうして友達と遊ぶことさえできないの?



大切なものはすべて目の前で霧散していった




この日、『希望』と言う幻想はあの大型トラックによって壊されてしまった






走って、走って、走り続けて……




俺の思考は限りなくネガティブになっていた


皆が言うように俺はその疫病神なのかもしれない

俺がいるせいでみんなが不幸になっていくのかもしれない

俺はたぶん、一生幸せになんてなれないで、不幸を背負っていくんだ



そんなことを考えていた時だった!!




「お前のせいで……」




男の人の声がした




「お前のせいなんだよ……」



手にはきらりと光るものが握られていた。……たぶん、包丁だ

それを隠そうともせず、男はこっちに近づいてくる




幼上条「うわぁ……、こないで……よぉ………」




1歩、2歩と後ずさる

身体全体が恐怖で震える中必死に声を出した

だが、かすれるような声しか出なかった




「お前のせいで俺は不幸になったんだよ!!」




次の瞬間、おなかに激痛が走った

見ると、赤い液体がぽとぽとと垂れていた



あの女の子とおんなじ、真っ赤な液体だった

道路いっぱいに広がっていくそれと同じものが、自分のおなかからあふれ出ていく



最後に感じた感触は『冷たいな』っていうこと

体の芯から全部カチコチの氷漬けにされたみたいに冷たかった

たぶん、身も心もそれくらい冷え切ってしまったんだ



暖かかった涙は零れ落ち、冷たくなった身体だけがここにはある



現実は冷酷だ

暖かさなんて微塵もありはしない





崩れ落ちる意識の中、最後に僕は何を思ったのだろう?






後日、借金取りの男が男の子を刺したというニュースが流れた

犯人の男は警察に取り押さえられ捕まったらしいが、少年の方は命に別状は無いという



そんなニュースを聞いたような気がする

そこからの記憶はあんまり覚えていなかったけど、お父さんとお母さんはよく2人で話し込んでいたようだった

真剣なお話のようだった


話の内容は聞こえてたけど、頭には入ってこなかった

お父さんやお母さんに話しかけられても、何を話したかなんて覚えてない



だけど、心に残っている言葉なら1つだけ




「当麻、学園都市に行ってみないか?」





ー学園都市 第7学区 病院ー




上条「うぅ……」



土御門「かみやん、目覚ましたか!!」



上条「あれ?土御門?」キョトン



土御門「大丈夫か?ずいぶんうなされてたみたいだが」



上条「うなされてた?」



ここでようやく状況を理解した

ここはベッドの上、いつもの病院だ



上条 (あぁ、そっか。俺、子供のころの夢を見てて……)



上条 (父さんが言ってた疫病神ってこういう事か。俺も大変だったんだな)



上条 (あれ?でも俺は記憶がなくなってるはずじゃ……)



上条 (……、まあ今はいいか)




上条「あぁ、大丈夫だ。ちょっと嫌な夢見てただけだから」



土御門「そうか」




土御門「それじゃあ一応今の状況を伝えておくが、かみやんは1度あいつと対面したんだったよな?」



上条「あいつ?」



土御門「まさか忘れたなんて言うなよ。ここまで運んできたのは俺なんだぜ」



上条「運んできた?……あ、そっか」



なぜだろう、思い出すのに時間がかかる

さっきの夢があまりにも現実的で衝撃的だったからだろうか


そうしてゆっくり思い出していく

あのとき、気を失う前に体験したことを



上条「そうだ、一方通行!!あそこに一方通行倒れてなかったか」



土御門「大丈夫だ。心配しなくても、一方通行は隣のベッドに寝てる。それと、インデックスの方も隣の病室にいると思うぜい」



土御門「2人とも、目立った外傷もないから意識が戻ったらここを出ていいんだとよ」



上条「…そっか」



無事だと聞いてほっと胸をなでおろす

だが、安心するのはまだ早い。話の本題はこれじゃない




土御門「それで、かみやんが遭遇したあの襲撃者、俺からも話をしてやりたいところだがまだ情報不足なんだ」



上条「情報不足?」



珍しいな、と思った

いつも何らかの手掛かりをつかんでいる、それが土御門だ

そんな彼が、こんなことを言うのはとても珍しい



土御門「ああ、分かっているのはイギリス清教の支部の1つを何の痕跡も残さず単独で壊滅させたことくらいだ」



上条「はあ!?」



土御門「これはさっき連絡があったんだ。特徴も一致してるしまず間違いない」



土御門「後はかみやんの知っての通り。学園都市に現れたそいつは一方通行とかみやんと禁書目録の3人を気絶させた」



土御門「目立った外傷をただの1つもつけることなく…」




それが、どれだけとんでもないことなのか

外傷をつけることなく勝利するっていうのはただ勝つことの何十倍も難しい

自分が相手の力を遥かに凌駕する力を持っていないとできないことだ


まさに、完全勝利と言えよう





「あいつは元第1位だ」



上条「!!」



土御門「……どういうことだ、一方通行」




声を上げたのは一方通行

機嫌の悪そうな顔をしながらベッドの上に座る




一方「まァ、あいつ自身は否定してやがったがな」




一方「……第1位から第7位のランキングが作られたのも、レベル0からレベル5のクラス分けが作られたのも両方5年前だ。

   そのランキングが作られる直前に俺はあいつは姿を消しやがった。学園都市全員分の記憶を消してな」



上条「記憶を……」



土御門「じゃあ、あいつはもともと学園都市の住人だったってことか」



一方「そォいうことだ。俺は能力使ってたから記憶を失ってなかったンだ。たぶんあいつの能力を反射できたんだろうよ。

   あいつが居なくなった翌日に研究者どもは何も覚えてなかったから全員頭がおかしくなったと思ったがよォ」



一方「名前は四葉彼方、バンクで調べても痕跡すら残ってないだろうよ」



土御門 (なるほどな。だからアレイスターは一方通行に聞けば分かるかもしれないと……)



土御門 (イギリス清教からの情報じゃ、あいつは魔術を一切使っていないと聞く。

    実際に一方通行と戦闘していたあの場所にも魔術の痕跡は一切見られなかった)



土御門 (となると、科学側の力ってことになるが……、一方通行に勝てる能力なんて存在するのか?)



単純な疑問

魔術サイドならともかく、科学サイドの法則はすべて網羅しているであろう一方通行

そして、法則さえわかれば何でもかんでも反射が可能な能力

そんな壁を突き破れる能力は果たして存在しうるのか




土御門「なあ、一方通行。そいつの能力とか分からなかったか?」



一方「知るかよ。あいつ自身何でもできるって言ってたし、実際何でもできる。

   空間移動に念動力に電撃、しかも俺の反射にはほとんどお構いなしってなァ」



一方「ちょうど、そこにいる三下の右手みたいになァ」ギロッ



上条 (どうして一方通行は上条さんにだけ不機嫌オーラ全開なのでせう)ヒイッ



土御門 (幻想殺し……か)




一方「まァ、強いて言うなら『自由自在に超次現象を引き起こす能力』だろうよ。そいつの右手が訳の分からない力で俺の反射を

   無効化するんだったら、あいつは俺の理解できない領域の力で反射の壁を越えてくるってことだ」



一方通行は機嫌が悪そうに舌打ちをするとそっぽを向いてしまう

土御門は何やら考え込んでるようだった




上条 (まあ、それも当然か。あいつがやってることはテロ行為と何ら変わりがないことだし)



上条 (今までの魔術の問題と違って能力の性質が分かってないんだ。焦るのも仕方ないこと……)



上条 (って言うか、思ったより俺も冷静なんだな。こんなとんでもない状況だって言うのに……)



あんな悪夢のような夢を見た後だからだろうか

それとも、まだ頭の整理が追い付いていないからだろうか

もしかしたら、いつも冷静な土御門が焦っている様子だったからかもしれない

上条は思っている以上に今冷静だった


そうしてそのままぼんやりとした視線を自分の右手に移す



上条 (幻想殺し……、みんなはそう呼んでるけど、結局これは何なんだろうな。記憶を失う前の俺は知ってたのか……?)



上条 (土御門が言うには四葉彼方ってやつは魔術を使ってないって話だ。でも、学園都市第1位の一方通行はあれのことを正体不明って

   言っていた。)



上条 (ってことは、科学でも魔術でもないってことだ)



上条 (……まあ、ここまで考えたところで上条さんには理論の”り”も分からないんだけども)



上条 (だけど、何でだろうな。あいつが悪いことやってるのは分かってるけど、俺には何か別の理由があってやってるようにしか

   思えないんだよな。そんな悪いことするような様子でもなかったし)




思ったらすぐに行動する上条当麻としては珍しく、思考を巡らせるのだった

そしてその思考は、意外と的を射ていたりいなかったり






ー???-



彼方「さてと、こんな感じでいいかな」



誰もいない、静かな町の郊外

周りは建物に囲まれており、薄暗い

だが、その壁には簡易的な魔法陣が書き記されている



彼方「まあ、私は魔術は使えないけど、今回のはかなり魔術に似せてあるからたぶん包囲網に引っ掛かるでしょ」



彼方「警戒をあおるためにイギリスをあらかじめ突いておいたんだしねぇ」



その様子は鼻歌を歌っているようだった

本当に楽しそうに、満面の笑みを浮かべて




彼方「さあ、見てなさいよ。宣言通り最高に面白い戦闘にしてあげるから」



グッ!!……と力を込めた

それと同時に魔法陣に神々しい光が宿る



別に大爆発が生じたわけではない

燃え盛るような炎が現出されたわけでもない



だが、””宣戦布告””には十分だった





ー英国 イギリス清教ー




「先日の襲撃者と近似した反応が出ました!!」



そんな声が響いたのはちょうど少女が宣戦布告を行った直後

英国のほぼ全域を探査していたレーダーに反応が見られたのだ



ステイル「どうやら、足がつかめたようだね」



神裂「そう……、ですね」



返ってきたのはとても歯切れの悪い返事だった

どうしてそんな返事をするのか、それはステイルにも分かっている



ステイル「まあ、今さらになって手掛かりを与えるような真似をするのは妙だと思うけど」



神裂「ですが、たとえ罠であっても行かないわけにはいきませんからね。何かを傷つけることが分かっていて

   それを見過ごすなんてできません」



そう言って神裂は立ち上がる

何をしに行くかなんて言うまでもない

部屋を後にしてせっせと目的地までいってしまう


部屋には1人、ステイルだけが取り残される

特にこれと言った外傷は追っていないが、身体を休めるよう言われていた

いつもなら無視するところだが、今回ばかりは素直に従っていた




ステイル (僕も困ったものだな。戦える状態なのに、戦場に向かわないなんて……)



おそらく、戦闘は可能だ

だが、今回はあえて戦場に向かわなかった

そんならしくないことをしたためか、変なことも考えてしまう



ステイル (英国が抱える魔術師の数は相当なものだ。対して襲撃者はいくら強いとはいえ1人、いくら何でも負けることはないはずだ)



ステイル (それに、もし万が一のことがあったとしても王室の方は何かとっておきを隠しているようだし、おそらくあの女狐も

     何らかの策を隠しているはずだ)



ステイル (だが……、)




本当にらしくないとは思う

だが、1度敗北した身としてはどうしても考えてしまう



本当に、あの少女に勝てるのだろうか……、と




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神裂「反応があったとされる地点は確かこのあたりでしたね」



神裂は単身でここに赴いていた

幸いなことに反応のあった場所はそこまで遠くないところだった

そのため、聖人である神裂はその並外れた身体能力によって向かった方が早かったのだ



神裂 (身長は150cmほどで、薄い茶色のパーカーを着ていたと聞いていましたが、服装の方は変わっている可能性がありますね)



神裂 (ですが、身長の方は英国の中では小さい方、これを目印に探していけば……)



反応が検出されていち早く現場に向かったのは神裂だ

まだそれほど時間も経過していない。近くにいる可能性は十分にある




「あれ、もしかして1人?」



と思っていた矢先、声がした

後ろの方から、歩いてくる足音も聞こえる



「せっかく分かりやすい目印をあげたのに……、まあ、これからもっと集まってくるか」



薄い茶色のパーカー

150cmくらいの身長

そして、言っているセリフからもおそらく間違いはない




だが1つ、意外なことがあるとすれば……




神裂「あなたは……!!」



彼方「ありゃ、これは思ってもみなかった再開だね。4か月ぶりかな?」




神裂とステイルがまだインデックスを追いかけまわしていた時、本当に偶然この2人は遭遇し、戦闘した

その時のことをお互いに思い出す



彼方 (インデックスに一方通行にこの聖人とは……、ほんとに今日は数少ない知り合いに遭遇する日だな)



彼方 (まあ、知り合いだからって別に関係ないか……)



そう、今は関係のないことだ

戦闘の幕は開けている。ならば敵同士戦うのみ!!




彼方「四葉彼方……。一応そう名乗っとこうかしらね」



神裂「……神裂火織と申します」



彼方「覚えてるんなら別に話さなくてもいいわね。

   私はこの日のためにいろいろ準備を整えてきた。あなたと会った時よりずっと前から……」



彼方「今回の騒動もその一貫、前回みたいな興味本位の接触じゃないわ」



神裂「英国そのものを叩くつもりですか」



彼方「必要なのはここだけじゃないわ。世界中のいろんなポイントに行かないといけないから」



神裂「……そうですか」