2020-05-22 02:55:01 更新

概要

後編です。

独自解釈のオンパレードです。大丈夫な方だけ読んでくだち。大丈夫じゃない方は覚悟して読んでくだち。
関係ないけど比叡改二丙きてたんですね。絶対領域が眩しいのと唇が色っぽい…。ヒェーイカイニマジヤベーイ!


前書き

………

……



コンコン

球磨『球磨だクマ』

提督「提督だテイトク」

ガチャ

球磨「邪魔するクマ~」

比叡「こんにちは」

球磨「およ。取り込み中だったクマ?」

提督「んーん。そんな急ぎじゃない。いつものあれよ」

球磨「ああ、了解クマ」

比叡「司令、私は大丈夫ですよ」

提督「そうか、すまんな。こっちのは長くなるし、お前の報告を先に聞くよ」

球磨「すまんクマ」

比叡「いえいえ」

球磨「で。演習終わったクマ」ボロッ

提督「おう。楽しかった?」

球磨「ンな訳あるか。一人狙いされたクマ」

提督「時には刺激も必要ちゃう?」

球磨「確かに遠征任務よりはあいつら相手にした方が刺激的クマね。深海でもあんな狂ったのそうそういないクマ」ハァ

提督「ひっどーい」

球磨「誰の手駒だ、誰の」

提督「それで?査定のほどは?」

球磨「うーん、浜風はまだ判断力が遅いクマ。艦隊行動で誰かが手綱を握る分にはいいけど、隊長はもちろん、副隊長や補佐にはまだまだ。旗艦をやらせるのだって反対するクマ」

提督「むぅ。そうか」

球磨「改装だけで強くなれるわけないクマ」

提督「優しいね」

球磨「……そこは「厳しいね」じゃ?」

提督「部下や艦隊、それに浜風本人を慮ってるじゃんか。傷つくリスクを考えてる」

球磨「艦隊の利益と勝利を最優先に考えてるだけクマ」

提督「ふふっ、ツンデレめ」

球磨「ほっとけ」

提督「しかし…演習システムももっと改良を加えたいところだ。実戦に近い乱雑とした環境を提供できていない点は、明確な欠点だ」

球磨「でも最低限だが最短で「使える」レベルにはなってるクマ。通常の哨戒任務や戦闘、短距離の遠征くらいなら何の問題もないクマ」

提督「戦線は今後も広がる。頭数は揃うんだが……」

比叡「あの予想、ですか?」

提督「ああ。そのためにも、より上質な戦力を増強したい。神通クラスとは言わんが、ゆくゆくは球磨や五十鈴並のを半数は揃えたい」

球磨「自分で言うのもなんだけど、そんな簡単にできることじゃないクマよ?」

提督「うむ。数年規模の長期的な育成計画を戦略に練り込む必要がある。ここら辺はまた今度の議題にしようか」

球磨「りょーかいクマ」

提督「よし。戻って休んでくれ。ありがとうな」

球磨「お安い御用クマ。じゃ」クルッ

提督「ん」ノシ

パタン

提督「……。さて、比叡。話の続きだが」

比叡「はい。いつもと同じでいいですか?」

提督「ああ、構わん。場所は指令書の通り、ここ。ここら一帯の…」

………

……



カタン


不知火「……フゥ」


阿武隈「お疲れさまですー」


不知火「ええ。ありがとうございました」ペコリ


カララッ


浜風「あっ」


阿武隈「あ。浜風ちゃんおつかれ~」


浜風「おつかれ、さまです…」


トトト…


浜風「……」


不知火「早く入っては?浜風。更衣室のドアを開けっぱなしにしていると、司令に覗かれますよ」


浜風「あ、はい。失礼します」


不知火「……。先ほどの演習、手応えはどうでしたか」


浜風「実力の差を、思い知りました」


不知火「不知火も…まだ訓練が足りませんでした。四人がかりであっさりと崩されるとは」


浜風「私は戦力になっていませんでしたよ…」


不知火「それについてですが、浜風、あなたと谷風は艦隊行動には問題がありませんよ」


浜風「え?」


不知火「技術においては特段問題がありません。教練通りの手堅い動きでしたよ」


浜風「でも……白雪さんのやったような「弾き」は…」


不知火「セルフイージス…たしか司令はそう名付けていましたね。それも延長線上ですよ。動体視力を鍛えて、「砲弾が飛んで「きた」」を「砲弾が「どこに」飛んで「くる」か」へ昇華したものです。場数をこなせば、自ずと身に着く技術ですよ」


浜風「そうですか…」


不知火「あなたに足りないのはその前段階。即応力です。ころころと変わる状況に、追いついていなかった。とりあえず白雪さんや荒潮さんの後に続いて撃っていた…違いますか?」


浜風「はい、そうです」


不知火「これも場数…それも、より乱雑とした、処理能力を求められるような状況に飛び込まないといけませんね。そうなるとやはり最前線…」


浜風「最前線…夕立さんや綾波さんのいる…」ゴクリ


不知火「なんなら、神通さんに師事しますか?」


浜風「え゛っ。そ、それは…まだ早いかと…。神通さんのご迷惑になるかと…」


不知火「そんなことを気にする人ではありませんよ。もとより、あの人は一人で敵艦隊を全滅させにかかりますので。ただ付いていくだけでもだいぶ経験値になりますよ」


浜風「じゃ、じゃあ今度…」オズオズ


不知火「談判は本人でどうぞ。では、不知火はこれで」


浜風「はい!お疲れさまでした…!」


カララッ


………


……




陽炎「じゃあね~」ノシ


Nelson「ああ、間宮ありがとう」


Gotland「色々教えてくれてありがとうございまーす」ノシ


陽炎「さて、帰ろっか。まだ疲れとれてないでしょ」


親潮「はい。……ごめんなさい、頼りなくて」


陽炎「だから訓練なんでしょ?いいじゃない、自分でそれが分かるだけ。あれよ~?まだここが出来て間もない頃なんてひどかったんだから。着任当日で最前線送りとか珍しくもなんともなかったんだから」


親潮「か、過酷ですね…」


陽炎「艦娘は色々とぶっ飛んでるからねぇ~。なんでも、基礎理論の確立する前に生まれたらしいわよ?私たち」


親潮「基礎理論?」


陽炎「そ。私たち艦娘が兵器なのか、人造人間なのか改造人間なのか…。そんな定義すら曖昧だって、司令が言っていたわ。定義するなら「艦娘」だって。だから、司令みたいな人が指揮を執るにしても、戦術はおろか育成方法だって手探り状態。私たち自身、自分の「使い方」をはっきりと分かっていないでしょう?」


親潮「ええ…。正直なところ、なにも」


陽炎「私もよ。だから、こうして色々やってるの。あんまり真似してほしい技術じゃないけどね」


親潮「できませんのでご安心を」


陽炎「まだまだ分かんないことだらけだけどさ、私はこれはこれで結構嬉しいのよ?」


親潮「嬉しい…ですか」


陽炎「だって、「前」は物言わぬ鉄塊だったんだもん。こうして姉妹で話せるのも、私たちが艦娘だからでしょ?」ニパー


親潮「ええ、そうですね」ニコッ


………


……




那珂「艦隊のアイドルぅ!!那ッ珂ちゃんだよーっ!!」イエーイ!


オオオオオ…??


ナンダナンダ


嵐「横須賀鎮守府の那珂をよろしくお願いしまーす」シブシブ


萩風「歌って踊って戦えるアイドル!応援、どうかよろしくお願いしまーす!」


野分「CD無料配布しておりまーす!」


舞風「~~♪」


ヤンヤヤンヤ


嵐「うう、慣れねぇ…!!」カアァ


野分「耐えてください。これも立派な広報活動。知名度が上がればまた遠征任務の依頼が来ます。鎮守府の躍進のためにも、必要な事です。どうぞ!一枚いかがですかー!」


嵐「ぜってー本人はそんなこと考えてないって」


舞風「ほら嵐!スマイルスマイル!」ニパー


嵐「に、にぱー…」ニバー…


萩風「でもすごい人だかりですね。あ!ありがとうございます!よろしくお願いします!」


那珂「シリアスな世界をぶっ壊せ!那珂ちゃんパワーを受け取れぇー!」シュビビビビ


イイゾー!


ガンバッテクレー!


野分「こんな世の中です。荒廃した状況下では、人はなにか救いを求めるんだそうで。司令いわく、アイドル活動なら娯楽で大衆への慰問やストレス解消につながり活気が戻る、また鎮守府の名が広まり新たな輸送任務が依頼されることで各地で凍結しかけた産業が復活し経済が回る。それと艦娘への理解も高まり、軍や行政への協力度も増す…とかなんとか。一石二鳥どころか数鳥な、非常に合理的な活動だそうで」


嵐「足元見てんじゃんか。あくどいなぁ…」


野分「計略無くして国は救えない、と仰ってましたよ。たしかに、戦後の復興活動をより迅速に行うためには、戦中からある程度の国力を回復させる必要があります。一回の巡業で得られる利益は少なくとも、こういうのはじわじわ効くといいます。それに…」


嵐「それに?」


野分「「かつて」、戦い壊すことでしか国に人に貢献できなかった野分たちが、こうして直接、誰かの幸せに貢献できるとしたら…。それって、すごく嬉しいじゃないですか」ニパー


嵐「…フッ。なるほどね」


野分「さぁ、分かったら嵐も笑顔になるんです」


嵐「でもそれはそれ!これはこれ!オレは戦いたいぃぃ…」


野分「えぇ…」


萩風「まだ枚数はありますから、順番に列になってお待ちくださーい!」ノシ


………


……




比叡「準備完了!行ってきまーす!」ノシ


提督「いてら~」ノシ


………


……




コポッ…


………


……




秋雲「~~♪」


ガダンッ!


秋雲「んっ!?」ビクッ


巻雲「あーきーぐーもーォ…」キシャー!


秋雲「ん!?どったの!?」


巻雲「しらばっくれないでくださいッ!!よくも巻雲をォ…!!」


秋雲「何かしたっけ!?」


巻雲「本気で忘れてる!?」


秋雲「え、待って待って?ちょっと待ってね?えーっと…?」


巻雲「え……わ、忘れてませんよね?冗談ですよね?」


秋雲「分かんない。ちょっと話し合おうよ。そこ座って?」


巻雲「あ、はい」ポスン


秋雲「何か飲む?ジュースとか」


巻雲「じゃあオレンジジュースで」


秋雲「はいはい。……っちゃー、在庫切れてるわ。ちょっと買ってくるね」


巻雲「え、いいですってそんな」


秋雲「いいからいいから。ちょっと待っててね」ヨッコイショ


巻雲「はい…」


ガチャ


パタン


巻雲「行っちゃった…」


ダッ!!


タタタタタタ…!!


………


……




雪風「しれぇー!」バーン!


提督「ゆきかじぇー!」


雪風「しれぇ、お手伝いにきました!」


提督「お。それは助かるな。ちょうど今は人がはけててな、人手が欲しかったところだ」


雪風「なんでも!おもーしつけくださいっ!」


提督「そう?じゃあちょっとここに座って?そんで、この蛇行してる線を見ながら、好きなタイミングでマウスをクリックして?」


雪風「はーいっ!」


妙高「提督?何をしているんですか?」ニコニコ


提督「げ」


妙高「何を。なされているんですか?」ニコニコ


提督「……いつからいたんです」


妙高「たった今、戻りましたよ」


提督「……そう」


妙高「まさか…。まさか、ま さ か お金に関することではありませんよね?」


提督「……」アセダク


雪風「?」


妙高「雪風さん。その画面の一番大きな文字を読んでください」


雪風「に、にちけい?へーきん…かぶ、か…??ですっ!」


妙高「……」ニコニコ


提督「……」ニコニコ


妙高「……」ニコニコ


提督「……」ニコニコ


妙高「ッ!!」クワッ


提督「っ!!雪風!耳塞いでっ!!」


妙高「提督ーッ!!」ドンガラガッシャーン!!


アナタハドウシテイツモイツモ…!!


ガミガミガミ…!


加古「んごっ」ビクッ


青葉「うわっちゃあ…」


古鷹「久しぶりに落ちましたね。妙高さんの雷」


衣笠「なにやったんだか」


青葉「相手が想像できるあたり、あの人も業が深いですね」


古鷹「はぁ。まったく」


妙高「私に隠れてお金の操作をしないと約束しましたよね!!それもましてや株!!なんですか!?賭け事に手を出しましたかッ!?」


提督「い、いや!反論させてもらいますけど株は賭けでなく情報戦です!いかにはやく情報を仕入れ、さばき、流れを作るか!情報戦という意味では、オレは職業上有利な立場であって、けっして賭け事と切り捨てるには」


妙高「なお悪いです!!権力者がお金に執着しだしたらどうなるか分かっておいででしょう!?それに艦娘はともかく提督は立派な公務員!!下手すれば明確な法律違反ですよっ!!」


提督「だ、だから雪風に…」


妙高「屁理屈こねないッ!!」


提督「はいっ!」


妙高「…どうしたんですか?また何か入用ですか?ある程度の額でしたら、なんとか捻出しますよ…?」


提督「うーん。手軽に5億くらい?」


妙高「手軽じゃないですよ。株でだって大当たりの部類じゃないですか。何に使うんです」


提督「廃業寸前の町工場を個人的に雇って軍需転換させて、小回りの利く小規模な生産ラインを作ろうかと…」


妙高「それは本来大本営のお仕事…ああ、なるほど。そういうわけですか。「あの計画」ですか」ジトー


提督「うん」


雪風「??」


妙高「それはまだ実行に移すべきではありません。第一、目星はついているんですか?」


提督「うんにゃ。とりあえず元手を用意しておこうかと」


妙高「リスクが高すぎます。あと、私に隠さないでください」プクー


提督「ごめんて。冗談にしてもやり過ぎたって」


………


……




ホー…ホー…


………


……




ピコッ


ピコピコピコ…


不知火「ただいま戻りました」ガチャ


陽炎「あ。おかえりー」カチャカチャ


時津風「ぎゃー強い~!おかえりなさーい」カチャカチャ


清霜「ここで、コンボを…っ!!ったァ!!」カチャカチャ


朝霜「ちょ、きよしー!!狙いすぎ!!一人狙いすんなって!!」カチャカチャ


ピコッ


ピコピコピコ…!!


秋雲「交代まだ~?」


黒潮「順番やで~」


夕雲「おかえりなさい不知火さん。おじゃましてます」


不知火「夕雲さん。どうぞゆっくりしていってください」


時津風「あ゛!!待って!!やめっ、やめァァァアアアアアアア!!!」チュドーン


天津風「あらあっけない」


時津風「強すぎるよぉ~」


陽炎「負けた人から交代ねー」


秋雲「っしゃあ交代!」


時津風「それ陽炎姉さんが独占するやつ~」


陽炎「だったら倒してみなさい♪」


秋雲「言ったな?じゃあ今から秋雲さんの天下ね!」


陽炎「やってみなさいよ!」


秋雲「よっしゃァきよしー!!覚悟!!」


清霜「えっこっち!?」


夕雲「賑やかね」フフッ


不知火「うるさいとも言えますが。まったく、陽炎も長女だというのに」


夕雲「そこが彼女のいいところじゃない?率先して前面に立つじゃない」


不知火「あれは素ですよ」


夕雲「……どこぞの誰かに似てて嫉妬してるの?」ウフッ


不知火「ヌイィ…。違いますよ」


夕雲「でも似てるわよねぇあの人に。並んだら実の親子なんじゃないかって思えるわ」


陽炎「ちょっと聞こえてるわよっ!私はあんなセクハラ野郎じゃないんだから!」


夕雲「あらあら」ウフフ


秋雲「勝負の最中に油断とはいい度胸ですなァ!!」カチャカチャ


陽炎「わ、わわ…!!」カチャカチャ


浜風「ただい…ま……。帰りました」


谷風「……たでーま。谷風さんはもう寝るよ」フラフラ


浜風「おやすみなさい。あ、私も今日は…」


不知火「ええ。ゆっくり休んでください」


陽炎「あ。そうだぬいぬい」


不知火「ぬいぬいではありません。どうしました?」


陽炎「明日さ、時間ある?」


不知火「時間…??ええ、特に予定はありません」


陽炎「じゃあさ、親潮の自主練つきあってよ」


不知火「親潮の。はい、いいですよ。肝心の親潮は?」


陽炎「寝かせたわ」


不知火「それがいいでしょう」


陽炎「私もこれで寝るかな~。さ、秋雲。やりなさいよ」


秋雲「ちょッ!?そんな興醒めな!?」


陽炎「不知火待ってただけよ。どーせ不知火、また訓練の後m」


ガダンッ!!


巻雲「お邪魔…しまァす…」ゴゴゴゴゴゴ


夕雲「巻雲さん。どうしたの?」


秋雲「あっやべっ」ガタッ


陽炎「ん」ガシッ


夕雲「ん」ガシッ


秋雲「ぐえっ」


巻雲「秋雲ォォォォォ」


陽炎「あんた…何したの」


巻雲「あのまま待たせてぇぇぇ…!!」


秋雲「ごめ、すっかり忘れてた!」


巻雲「巻雲の一日が無駄に終わっちゃったじゃないですかー!!」


夕雲「またくだらないことを…」


秋雲「ごめんて!!」


陽炎「はい」


夕雲「じゃあ」


不知火「……あまりやりたくはないですが」


陽炎・不知火・夕雲「「「お説教の時間です」」」


秋雲「ちょぉ!?この時間から!?」


………


……




秋雲「説教した後に吊るすかなぁ…」プラーン


………


……




コポ…


コポポッ…


………


……




チュン…チュン…


陽炎「翌朝!」


不知火「…はい?」


陽炎「いや、言っといた方がいいかなと思って」


不知火「変な人ですね。……さぁ親潮、準備はいいですか」


親潮「はいっ!」


不知火「司令部には不知火が届け出ておきました。今日のコースはここ、鎮守府には近いですが訓練コースとは違い猿島ではなく大島を周回します。これは哨戒任務のルートの一つで、手軽ではありますが危険度は訓練コースよりも当然高いです。ここをまずは行って帰ってくるだけの簡単な演習です」


親潮「簡、単…」


不知火「距離はありますが最前線はもっと遠く、場合によっては半日かかることもありますよ。そろそろ泊地の建設も目途に入れてほしいところですが…まぁそれは別の話です。とにかく、今日はこのルートを通ります。弾は実弾ですね?」


親潮「はい、実弾です」


不知火「では行きましょう。旗艦は陽炎、補佐は不知火、随伴を親潮とします」


親潮「が、がんばります…!」グッ


陽炎「そんな緊張しなくてもいいわよ~。直近の情報では海は安全だし、輸送する物資もないし。直近の情報では深海棲艦も見られず、だったし」ヒラヒラ


不知火「陽炎は少しは緊張してください」


陽炎「してるしてる。見つけ次第ぶっ殺せばいいんでしょ?」


不知火「まったくあなたは…」ハァ


陽炎「じゃあ行きますか!仮設訓練隊旗艦陽炎!出ますッ!!」ザッ…!


不知火「陽炎隊不知火、出ます!」ザッ…!


親潮「か、陽炎隊親潮!出ますっ!」ザッ…!


ザザーッ…


………


……




ザザーッ…


那珂「はぁ~!楽しかった!」


嵐「…ソッスネ」グッタリ


舞風「全部はけましたねぇー」


野分「ファンも増えましたね」


嵐「ねー、帰りに一戦やりましょうよ~」


那珂「血生臭くなったねぇアラジン。溜まってる?」


嵐「溜まってませんよー」


那珂「うーん、ってもそばにいないよ?あと燃料も心配」


嵐「ンむー」プクー


萩風「海が平和でいいじゃない」


嵐「そーだけどー。ひまー」


舞風「すっかり川内さんに染まっちゃって…」


那珂「あんまり良くないよ~?バトルジャンキー」


嵐「川内さんみたいになってるわけじゃないっすけど、でもお仕事したいのも本音っす」


那珂「アイドルもお仕事!」


嵐「う゛~」


野分「那珂ちゃんさん。こういうのはこれで片付きます。嵐、それだと司令に嫌われますよ」


嵐「ン゛~~ッ!!」ジタバタ


野分「司令は、私たちが「兵器」であることを疎んでいますよ」


嵐「ン゛ーーーーーッ!!」ジタバタ


舞風「へぇー。「そう」なんだ?」ニヤニヤ


嵐「違うって!オレは別に司令を……!ほら、「司令」としてはいいじゃん?よく理解してくれてるってゆーかさ!?よく遊んでくれるし!」アセアセ


萩風「嵐の「まともスイッチ」って…司令なんだ」


舞風「いつから?」


嵐「いつだっていいよっ!!」


那珂「わー。甘酸っぱーい」


萩風「……そういえば、那珂ちゃんさんはどうなんですか?」


那珂「うん?」


萩風「その、司令のこと…」


那珂「あーないない!アイドルは清らかでなくっちゃ!」


嵐「え、でもアイドル業界って闇が深いんじゃ…」


那珂「あんなのアイドルじゃないもん。那珂ちゃんがアイドルだもん」


嵐「しれっと業界敵に回しましたね」


那珂「かかってこい、ダンスでもラップでもバトってやる」


嵐「ひゅー♪そうこなきゃ!」


萩風(踊らされてる…)


舞風(単純だなぁ)


野分(川内型が苦手って言ってるけど、やっぱ根は同じなんだなぁ)


那珂「…………提督みたいな、「アイドル」になりたいのかもなぁ」ボソッ


嵐「えっ?」


那珂「んーん!何も言ってない!」


野分「もうすぐ鎮守府の通信圏内に入ります。今日も無事でしたね」


萩風「最後まで気を抜いちゃダメだよ」


舞風「大丈夫だよ。直近ではここら辺に敵艦隊の反応はなかったって」


萩風「でも直近であって未来では…」


コポッ…


萩風「ッ」ピクッ


コポポッ……


嵐「反応が……なんだって?」ニヤリ


舞風「っちゃぁ~。あ゛ーこれ、嵐のせいだかんね」


嵐「なんでさ」


舞風「よく言うじゃん?噂をすればなんとやら」


嵐「幽霊かなんかかい」


野分「深海棲艦です」


嵐「知ってるって」


ガシャ…


ガシャコンッ!


嵐「さぁ…始めようぜ」


野分「那珂さん、あの、準備を」


那珂「……」


萩風「那珂…さん?」


舞風「あのー。うちら準備できたっすよー」


那珂「……」


嵐「隊長ォ。ぱっぱと交戦許可くださいよォ」


那珂「ねぇ~?みんなお耳悪いのぉ?」ハァ


萩風「えっ?」


那珂「お姉ちゃんたちの「心音」も聞き分けられないのー?」


ザザーッ…


舞風「……あら」


オーイ


嵐「うげっ」


オーイ


萩風「あっ」


オーイ…


野分「あれは…」


オーイッツッテンデショ!


那珂「うん…」


ザザッ


陽炎『ちょっと!返事してよ!!』


嵐「うわっ。無線に割り込んできた…」


舞風「どうやったの?」


嵐「さぁ?」


野分「周波数を瞬時に特定しましたね…高等技術ですよ…」


陽炎『挨拶返されないなんてお姉ちゃんショックじゃない!手を振りなさいよっ!』


那珂「おっはー!」


陽炎『おっはー!』


嵐「……」


野分「……」


舞風「……」


萩風「……」


陽炎『おっはーーーーーー!!!!!!』


嵐「聞こえてるよッ!!」


陽炎『だったら返事しなさいよ!!おっはー!!』


嵐「おっはー…」


野分「おはようございます…」


舞風「っす」


萩風「おはよう…ございます…」


陽炎『え、なんでそんなテンションなの!?』


嵐「徹夜だったんだよぉ戦うアイドルのせいで」


陽炎『え?』


嵐「徹夜路上ライブ…」


陽炎『あ~…』


那珂「ねぇちょっと!変な納得しないでよ!」


嵐「愚痴っていい?」


陽炎『聞きたくないや。ばいばーい』ブチッ


野分「回線の周波数を変えましょう」カチカチ…


那珂「え、変えるの」


野分「徹夜明けで彼女に付き合うのはつらいんですよ…」


舞風「しょーじき、川内さんたちよりキツイ」


嵐「ああ。疲れる」


萩風「そ、そんなこと言わなくても…」


嵐「え、じゃあハギはいいの?」


萩風「そ、それは…ちょっとアレかなとh」


陽炎『ちょっと!!周波数変えんじゃないわよ!!』ザザッ


嵐「えっ!?」


野分「…嘘でしょ?」


舞風「なんで分かったの!?」


陽炎『のわっちがダイヤル回してるのが見えたわよッ!!』


野分「み、見えてましたか…」


嵐「マジかよ数キロ離れてんだぜ?」


陽炎『おねーちゃんの視力なめんじゃないわよ。あ、那珂ちゃんさん綺麗な衣装ですね!新しいやつですか?』


那珂「そーなのー!綺麗でしょー?」


陽炎「ばっちりですねっ!」


嵐「ね゛ー。なんでかけ直したンすかー。お゛姉ェさまー!」


陽炎『あ、そうそう。あんたたち今帰りでしょ?ここら一帯で深海棲艦いたー?』


野分「往復ともにいませんでしたよ。痕跡もなしです」


陽炎『よっしゃっ』


萩風「どうかしたんですか?輸送任務ですか?」


陽炎『ちがーう。ほら、これこれ。親潮見えるー?ちょっと自主練で大島まで遠征してるのー』


親潮『お、おはようございます』ザザッ


嵐「お。おはざっす親潮姉ぇ。精が出るなっ!」


野分「自主練ですか。さすがですね」


舞風「いなかったよー!安心して進んでねー!」


萩風「頑張ってください!」


那珂「がーんば!」


親潮『はいっ!』


陽炎『応援ありがとー!そっちもお疲れ様ー!』ザザッ


舞風「嵐みたいな人だなぁ」


嵐「え?」


舞風「あんたじゃない」


ザザーッ…


陽炎「ふぅ。やっぱり安全そうね。よかったよかった」


不知火「それでも慢心はいけませんよ」


陽炎「分かってるってば。でも情報があった方が親潮も安心でしょ?」


親潮「すいません…」


陽炎「いいのよいいのよ。どっちにしろ挨拶してたんだし」


不知火「さ、大島はこのまま南東にまっすぐです」


………


……




利根「のじゃ~。疲れたのじゃ~」ノビー


Warspite「今日は何もしていないでしょ」


利根「眼精疲労じゃ。絶対視力落ちとるのじゃ」ゴシゴシ


筑摩「蒸したお手拭き持ってきましょうか?Warspiteさんと大淀さんも」


利根「頼むのじゃ」


Warspite「あら。ありがとう」


大淀「どうもー…。私はもう目悪いですけどね」


利根「視力いくつじゃ」


大淀「2.0です」


Warspite「悪くなったわね」


利根「いやじゃ~。目は悪くなりとうないのじゃ~」


大淀「2.0でも陸で生活する分には十分なんですけどね」


Warspite「じゃあなんで眼鏡を?」


大淀「やっぱり「かつて」のような視野でいたいのと、あとアレです。キャラ付けになるからです」クイッ


Warspite「はぁ?」


大淀「世の中には眼鏡フェチなる嗜好があるらしくてですね?なんでも眼鏡をかけると知的な雰囲気と同時にセクシーさも強調されるという効果が付随されてるそうなんです」


利根「ほぉ…?」


大淀「提督も、もしかしたらこういうのが好きな方かなと思いまして」


Warspite「どうかしら。そういうの「も」好きなんじゃないかしら」


利根「肯定的過ぎるからの、あれは」


大淀「ふっふっふ。これで二歩リードです」


Warspite「二歩?」


利根「一歩はどこじゃ」


大淀「そりゃあ私、提督にヘッドハンティングされましたらね。その一歩です」フフーン♪


Warspite「そうなの?」


大淀「表向きは大本営からの「ご褒美」でしたけど。……色々あったんですよ、色々」ドヤッ


Warspite「腹立つ顔ね」


利根「そういう意味じゃ吾輩もヘドハンかの?いきなり指名されたし」


Warspite「えっ」


利根「そりゃそうじゃろ。作戦立案もオペレーターも、求められる技能は艦娘の領分から大きく逸脱しておる。あるいは視力のように大切な部分を削ぎ落すこともやむなしじゃ。艦娘から司令部に携わる面々を選ぶのにも、「目利き」が必要なんじゃろうよ」


Warspite「そう…私だけじゃ、なかったのね。ちょっとがっかり」


利根「なんじゃ、勝負でもしとったんかお主ら」


Warspite「いいえ別に」


大淀「そういうわけでは。え、Warspiteさん「そう」なんですか?知りませんでした」


Warspite「別に隠しているわけじゃないけれど。でも彼に求められたいとは…思ってはいるけど、そうでない方が魅力的よね」


大淀「なんでですか」ムッ


Warspite「恋だ愛だを語る彼は素敵だけれど、恋だ愛だに生きる彼は無様だからよ。見てられないし見たくもないわ」


利根「一理あるのぅ。あれがどんなにお茶らけていても一定の格を保っているのは、最終目標をしっかりと睨んでいるからじゃ。それがどんな野望かは知らんが、そうでなくては男児たりえん」


Warspite「……貴方も?」


利根「吾輩はそういうのに興味がない。勝手にやっとれ」


筑摩「お手拭きです」カコン


利根「筑摩よ。二歩、リードされとるぞ」


筑摩「はい?」


Warspite「……なるほど」


利根「……そういうことじゃ。ほれ、こうするんじゃ」


Warspite「目に乗せるの?」


利根「そうじゃぁ。効くぞぉ~」キクー…


Warspite「へぇ、どれどれ……あ、すごい、これ…いい……」


大淀「楽しそうでいいですねぇ立案係は。作戦行動外ではお仕事なしですか」


Warspite「部隊指揮もしてるわよ。それに貴方も今はお仕事ないでしょう?」


大淀「「お仕事がない」を確認しなきゃいけないんですよ。各海域ごとの危険度をチェックするのも、オペレーターの仕事ですから」


Warspite「今日も平和?」


大淀「ええ、喜ばしいことに。ここ最近は安定していますね」


Warspite「でもそろそろじゃない?誰か…ああ、向かっていたわね」


大淀「はい。結果も上々、現在帰還中です」


利根「そこの海域は?安定してたかの?」


大淀「海底の探知機では反応ありませんね。海中を進んでいる深海棲艦はいないみたいです」


利根「海上は?」


大淀「言う必要あります?」


Warspite「いるかもしれないし、いないかもしれない?」


大淀「はい。いつも通りです」


利根「難儀じゃのう」


大淀「じゃなかったら今が戦時だなんて言われませんよ」


………


……




ザザーッ…


親潮「お、おお…」


陽炎「はーい。ここが観光名所、大島よ」


親潮「名所なんですか?」


陽炎「一般人だと来るのに最低でも数百万かかるわね!このご時世だと」


不知火「クルーズ船の手配だけでなく、護衛の不知火たちも必要ですからね。……もっとも離島に用がある人なんて、調査の学者様くらいしかいませんよ」


親潮「そうですか。それにしても……ひどい…」


陽炎「見ての通り瓦礫の山。こういう離島は開戦時にかっこうの的になったらしくてね?世界中の島がこんな感じよ」


シーン…


親潮「静かですね」


陽炎「人は避難済みだからね。無人島よ。一応、軍関係の仮設キャンプはあるけど…あるだけ。誰も使っちゃいないわ」


親潮「どうしてですか?」


陽炎「だって艦娘しか深海棲艦に対抗できないんだもん。島に籠って徹底抗戦しても、ジリ貧だからよ。ここに仮設されてるのは私たち以前…いえ司令が着任する以前の世代の名残よ」


親潮「司令の…。司令が、たしか最初の…?」


陽炎「そ。あの人が最初の「司令」。艦娘という「兵器」を操り海を奪還する任を帯びた、最初の「司令」。「提督」でもいいけど」


不知火「世界最初の「司令」であり、世界最高の戦果を挙げている「司令」です。…あんなナリですが」


陽炎「まんざらでもないくせに」


不知火「ヌィ。だから……司令は知っているんです。私たち艦娘が生まれる前の…あいつらに勝利し海を奪還する前の……敗北と撤退と破壊と屈辱の時代を。これらの建物が、島が生きていた時代を知っていました。そして、それが無残にも蹂躙されていく光景を見ています。既存の兵器では歯が立たず、なす術ないまま文明が崩壊していく悪夢を。あらゆる国の、あらゆる軍の信用が水底に沈む様を。人の目から光が消えていく、絶望を」


親潮「……」


不知火「人類の敗北を、あの人は身をもって経験しています」


ザザーッ…


ザザーッ…


不知火「そんな中、あの人は立ち上がりました。数少ない撃破数の中のさらに数少ない鹵獲品を流用し、基礎理論すら確立させずに生み出された「艦娘」という兵器未満の実験物を用いて。……そして、戦果を叩き出した結果が、今の私たちであり、鎮守府です」


親潮「……」


陽炎「だから、私たちは負けられないのよ。私たちが沈む意味は、そのまま通りじゃない。ようやく掴めそうな勝ち筋が、ようやく差してきた光が、潰えてしまうから。あの人の敗北は、他の「司令」のそれとはわけが違う。分かる?」


親潮「……はい」


陽炎「私たち艦娘が敗れれば、今度は本土が、人が撤退した内陸部が、沿岸部みたいになっちゃう。そうすれば今度こそ、国の崩壊よ」


不知火「そんなことにはさせない。絶対に、させない」グッ…!


陽炎「そうよ。親潮、あなたは私たちの妹であり、そしてそんなこと以上に、この鎮守府の艦娘よ。覚えておきなさい」


親潮「…はいっ!」


陽炎「…うん、いい目ね」


不知火「今日はこれを見せるために来ました。腹をくくってもらうために」


親潮「いい勉強になりました」


陽炎「じゃ、ぐるーっと回って帰りましょ。一応、見回りも兼ねてるから」


不知火「では時計回りに。行きますよ親潮」


親潮「はい!」


ザッ…!


陽炎「しかしいつ見ても変わり映えしないわねー」


不知火「人がいませんからね。それもやむなしです」


親潮「はやく復興してほしいですよね」


不知火「それを実現させるのは、私たちが勝ってからですよ」


陽炎「あはははは!もう勝った後のことを考えてるだなんて、景気いいわね」


親潮「でもだいぶ「前」とは違いますね。人のいない島でもちゃんと灯台が機能してて。あれも無人化、っていうやつですよね?」


陽炎「え?」


不知火「……灯台?」


親潮「ええ。ほら、あそこの山頂の光がチラチラ……動い、て………??」ユビサシ


陽炎「!」


不知火「!」


ゾク…ッ!


陽炎「あんなところに灯台はない!!」


不知火「あんな動きもしない…ッ!!」


親潮「え?じゃあ…あれって……??」


陽炎・不知火「「敵の艦載機ッ!!」」


ッ…!


陽炎「回避行動ッ!!」


不知火「親潮、蹴りますよ!!」ドンッ!!


親潮「きゃっ…!?」バシャッ…バシャバシャ…


ズドオオォォォォン!!


バッシャーンッ!


親潮「きゃあああああああああ!?」


不知火「大口径主砲…!!」


陽炎「この方角…!?」クルッ


不知火「海でなく…島!?」


陽炎「あの…ッ!!野郎……ッ!!島を家探ししてたかッ」ギリッ


不知火「上陸戦を?」


陽炎「しないっ!!親潮いるから撤退!それから司令部に通達!すぐにッ!!」


不知火「了解!司令部、司令部。こちら陽炎隊不知火。応答願います!こちら陽炎隊不知火…」


親潮「はぁ…!はぁ…!!」


陽炎「怪我は!?」


親潮「至近弾です!大丈夫、です!ちょっと、びっくりしただけです」


陽炎「実弾よね?体勢立て直してすぐに砲撃準備。私より後ろで動き続けなさい!!」


親潮「はいっ!」ザッ


チカッ…


陽炎「くるわよッ!!」


ズドオオォォォォン!!


陽炎「ッ」


不知火「ッ」


親潮「ッ」


バッシャーンッ!


陽炎「見えたッ!!戦艦ル級!!たぶんelite!!」


親潮「戦艦級…」ゴクリ


陽炎「気をつけなさい親潮。一匹見たら数匹いるからッ」


不知火「……はい、はい。了解しました。陽炎、司令部からです」


陽炎「なんて!?」


不知火「速やかに鎮守府まで撤退。それとできるなら敵編成の確認をと!」


陽炎「戦艦ル級eliteは確定!それとチラッと雷巡っぽいの!」


不知火「艦載機もいたから空母系もいるでしょうね」


チラッ


陽炎「バーカ!同じところから顔出してんの!」ズドンッ!!


戦艦ル級elite「ッ」ショウハ!


陽炎「痛いでしょバーカ!」


不知火「そこです!」ズドンッ!!


雷巡チ級「ッ」チュウハ!


親潮「て、ていっ!」ズドンッ


ヒューン…


ドコトンデクネーン…


親潮「あ、あれぇ…?」


不知火「無理に当てなくてもいいです!撤退が最優先です!」


陽炎「いい?私が合図を出したら蛇行しながら鎮守府へ走るのよ!?」


不知火「あなたはとにかく振り切ることを考えなさい!背中は不知火たちが!」


親潮「…ッ!!はい!!」


チカッ…


チカチカッ…


親潮「うん…?」


ズドオオォォォォン!!


ズドンッ!!


ズドンッ!!


陽炎「一斉射!!回避したら逃げるわよッ!!」


親潮(山の上の艦載機が…動いていない…?)ウーン…?


バッシャーンッ!


陽炎「いい?いッせーの…」


チカッ…


親潮(砲塔の背面の鏡に光…?あれ、でも太陽ってこっちの方角だっけ…??)


親潮「…っ!?違うッ!!」


陽炎「は?」


親潮「姉さん危ないッ!!」ガッ


不知火「!?」グラッ…


バシャンッ…バシャバシャ…


不知火「な、なにを…!?」


シャー…


不知火「雷跡…?」


親潮「後ろです姉sきゃああああああああ!?」ズドオオォォォォン!!


陽炎「親潮ッ!!」


親潮「ぁ……ぅ…」チュウハ!


不知火「後ろ…っ!?」


戦艦ル級「……」


空母ヲ級「……」


重巡リ級「……」


陽炎「挟まれてた…」


不知火「小癪な…」ギリッ


陽炎「親潮は?」


不知火「中破です。不知火に覆いかぶさったことで運よく装甲が盾代わりになりましたが…気を失いましたね」


陽炎「運がいいのか悪いのか」


不知火「曳航するにも起きてもらわないと。ほら、気絶してる暇はないですよ!」ペチペチ


親潮「ぅ…??……っは!!」


陽炎「おはようさん。よく眠れた?」


不知火「先ほどはどうも。回り込まれてることに気づけなかったのは、不知火の落ち度です」


陽炎「かっこ悪ィ。私たちさっきあんな啖呵きったのにね」


不知火「まったくです。よくも顔に泥を塗ってくれましたね」


親潮「よいしょ…ウワッ」グラグラ


不知火「装甲がはがれたことで左右のバランスが傾いているんです。腰を落として安定させてください」


親潮「は、はい…」


不知火「航行は?」


親潮「たぶん、可能です…」


不知火「陽炎」


陽炎「いいよ」


不知火「……はい。親潮、これを」ポイッ


親潮「これは…?」キャッチ


不知火「通信機です。使い方は習いましたね?」


親潮「い、一応…」


不知火「周波数はそのままで鎮守府につながります。それで鎮守府に通達を」


親潮「え、えと……現状を、ですよね」


陽炎「そ!撤退できなくなっちゃったから応援お願いって!なるべく媚びるのよ?」


不知火「悲壮な感じを出せればなお良しです。嘘泣きのやり方は習いましたか?」


親潮「い、いえ…」


不知火「じゃあ目いっぱいすがるんですね」


陽炎「ま、本当にそうなるかもだけどね。この数じゃ」


不知火「ふふっ、怖いですね」


フフッ。フフフ…


アハハハハ…


親潮「姉さん…?笑って…??」


スゥ…


陽炎「陽炎隊ッ!!これより交戦に移るッ!!」ガシャンッ


不知火「私たちを逃げられないようにしたのが間違いでしたよッ!!」ガシャンッ


陽炎・不知火「「ぶっ潰すッ!!!!」」


………


……




ガタンッ!


スタスタスタ…


提督「状況は?」


大淀「陽炎隊、撤退できなくなったとのこと。確認されていた以上の戦力と遭遇した模様」


提督「陽炎隊は陽炎、不知火、親潮だけか。通信は誰が?」


大淀「親潮です。彼女だけ中破しています」


提督「そうか。ってことはあいつら交戦を始めたな。見える限りでいい。敵戦力と配置を細かく」


大淀「大島北部の沿岸部を中心に、陽炎隊が南北から挟まれたようです。北には戦艦ル級、空母ヲ級、重巡リ級。南には戦艦ル級elite、雷巡チ級が現在確認されています」


提督「南?」


大淀「はい。どうやら敵は島に上陸していたようです」


提督「空き巣とはふてぇ野郎だ。そいつらが海に戻るまでには時間がかかりそうか?」


大淀「聞いてみます」


Warspite「……どうするつもり?」


利根「強引な撤退か、援軍を出すか。それとも両方か」


Warspite「後者は必要じゃないかしら。たしか親潮はまだ訓練段階でしょう?」


利根「うむ、それがネックじゃ。あやつら二人だけなら、どうにでもなりそうなんじゃがの」


提督「那珂隊は…さっき帰ってきたか」


Warspite「現在補給中よ。出す?」


提督「……。あいつは?ちょうど出てただろ」


Warspite「あいつ…?あ、ああ!ちょっと待って。聞いてみるわ」


大淀「応答貰いました。もうまもなく海に戻りそうです。あと、重巡リ級は撃沈しました」


提督「はえーよ」


大淀「当然です。あなたが手塩にかけてボロ雑巾にした彼女たちですよ?神通さんを使って」


提督「言い方」


大淀「……援軍、いりますかね」


提督「いるわい」


大淀「冗談ですよ」


………


……




不知火「~~ッ。フゥ~…」ガシャンッ


ズドンッ!!


戦艦ル級「ッ」ショウハ!


不知火「やはり正面からは…ならッ!!」ザッ


ザー…ッ!


不知火(側面に回り込んで射線を重ねて…!)ガシャンッ


空母ヲ級「!?」


不知火(戦艦以外を狙うッ!!)


ズドンッ!!


空母ヲ級「ッ」チュウハ!


ズドオオォォォォン!!


ズドンッ!!


ギャアアアアアアアアン!!!


陽炎「ほらほら、もっと狙いなさいな。そんなんじゃいくら撃っても弾かれるし、海にも戻れないわよ~」


戦艦ル級elite「……ッ」ギリッ


陽炎「へぇ?あんたらにも悔しがること出来たんだ。初めて知ったわ」


雷巡チ級「!」ズドンッ


陽炎「ほい」ズドンッ


ギャアアアアアアアアン!!!


陽炎「はいまた相殺。ちゃんと狙ってる?魚雷撃ってみなさいよほら!陸から撃てるんならね!このお馬鹿さん!!」


親潮(すご…。砲弾を砲弾で弾いてる…)


ザザッ…


提督『どう?すごい?』


親潮「あ!し、司令!はい、すごいです!」


提督『そうかすごいのか。何についてすごいのかはまだ聞いてなかったんだけど…』


親潮「え、あ!姉さんたちです!」


提督『うん。まぁオレの子たちだからな。じゃなくって、戦況はどんな感じ?』


親潮「わ、私だけ中破で…姉さんたちは小破以下、です。でもちょっと押され気味…?攻めあぐねてます」


提督『おっけー。じゃあちょっと耐えられそう?』


親潮「耐える?」


提督『そ。具体的には三十分くらい』


親潮「さ、三十…!?」


提督『三十分待って。そしたら助かるから』


親潮「きゅ、救援ですか?」


提督『そゆこと。できるよね?』


親潮「……頑張ります」


提督『いい子だ。二人にも伝えて』


親潮「はいっ!」


提督『もう少しの辛抱だ。頑張るんだよ』ブチッ


親潮「はいッ!!」


ズドオオォォォォン!!


不知火「親潮!」


親潮「っ!!」バシャンッ…ゴロゴロ…


バッシャーンッ!


親潮「司令から通達です!!三十分待てと!!」フラフラ


陽炎「三十?」


不知火「了解…!」


陽炎「それなら楽勝ね!このまま抑えk」ズドオオォォォォン!!


不知火「ッ!!陽炎ッ!!」


親潮「陽炎姉さん!!」


陽炎「生きてる!!側面ッ!!」チュウハ!


親潮「側面…!?」


軽巡ホ級「……」ガシャンッ


軽巡ヘ級「……」ガシャンッ


陽炎「わらわら来るわね…!」ペッ…!


不知火「陽炎」


陽炎「分かってるわ。親潮、あんたも参戦なさい」


親潮「は、はい!」


陽炎「こうなったら火力を集中させて一方に穴を開けるしかないわね…。そこから突破して穴を開けるわよ」


不知火「ですが親潮は全速を出せません」


陽炎「分かってるわ。逃げ切らなくても、三十分だけやり過ごせればいいのよ。まず側面、軽巡連中を蹴散らすわよ」


不知火「了解」


陽炎「不知火、親潮!私を最前に単縦陣。突撃するわよ」


不知火「親潮。不知火の後ろに」


親潮「は、はい!」ザッ


陽炎「ひるまず突っ込むわよ~!!かかれッ!!」


軽巡ホ級「ッ!」ガシャンッ


陽炎「親潮ッ!!私たちを盾になさい!!戦艦からの両ばさみは前後運動で躱す!空母は中破してるからそんなに飛ばせないはず!けど注意してッ!!」


軽巡ホ級「!!」ズドンッ!!


陽炎「ッ」ズドンッ


ギャアアアアアアアアン!!!


陽炎「弾いたッ!!装填中!!」


不知火「任せてくださいッ」ガシャンッ


ズドンッ!!


軽巡ホ級「!!?」タイハ!


陽炎「おまけよ!遠慮はいらないわッ!!」パシュンッ


シャー…


ボカアアアアァァァァァン…!!


軽巡ホ級「」ブク…ブクブクブク…


不知火「撃破!」


陽炎「止まらないで次!」


軽巡へ級「!!」


不知火「どうもこんにちは」ガシャンッ


陽炎「そして、さようなら」ガシャンッ


ズウゥゥゥン…!!


親潮(立て続けに二隻撃破…。速い…!!)


陽炎「っしゃ!これで包囲網は抜けた!!」


不知火「親潮、今度はあなたが最前列です」


親潮「はいっ!」ザーッ…


陽炎「ッ!?まっず!!不知火!!避けてッ!!」


不知火「!?」


ズウゥゥゥン…!!


不知火「グァ…ッ!?」


親潮「姉さん!!」


戦艦タ級「……」ニヤリ


陽炎「うっそでしょ何匹いるのよ」ウンザリ


不知火「察する限り…島を占領しようとしていたよう、です…ね……」フラッ…


親潮「不知火姉さん…!」


不知火「大丈夫ですよ。これくらい」フルフル


陽炎「直近では見かけなかった、っていうのはそういうわけね」


不知火「ええ。島の中にいたんです」


陽炎「蜂の巣つついちゃったかぁ。運が悪かったわね」


不知火「いえむしろ良いほうです。まだ手を付け始めたようですし、鎮守府近海への影響も少ないうちに発見できました」


陽炎「…これ、全部やる?」


不知火「無理ですね。火力不足です」


陽炎「だよねぇ」


戦艦ル級elite「…」


戦艦ル級「…」


戦艦タ級「…」


陽炎「でも、素直に逃がしてくれそうにないし」


不知火「形勢は不利なままですが…ひとまず、包囲網は崩れました。狙うなら大将首では?」


陽炎「頭を叩く。戦の基本ね。それで、頭頭頭…。ね、どれが大将首?」


不知火「偉そうなのがそうかと?」


陽炎「全員不遜よ」


不知火「ですね。未だ統制が取れているところを見ると、まだやれていませんね。一番強そうなのは…やはりeliteですか」


陽炎「……おっけ」ガシャンッ


不知火「親潮。砲撃の訓練ですよ」ガシャンッ


親潮「砲撃…?」ガシャンッ


不知火「ええ。あそこの強そうな戦艦が見えますね?そう、あいつです。あいつに向けての砲撃です。できますね?」


親潮「や、やってみます!」


不知火「前に教えた通りです。狙い、測り、撃つ。あなたは最後列ですから、被弾確率は一番小さい。落ち着いて撃っていいですよ」


陽炎「深呼吸深呼吸」


不知火「陽炎。「弾き」は?」


陽炎「……」スゥ…


不知火「…そうですか。ではフォローは不知火が」


陽炎「……。いくわよ」


不知火「撃ちますよ…!!」ガシャンッ


ズドンッ!!


ズドンッ!!


ズドンッ!!


バッシャアアァァァァァァン…!!!


戦艦ル級elite「……?」


戦艦ル級「……?」


戦艦タ級「……?」


空母ヲ級「……?」


雷巡チ級……?」


親潮(姉さんたち…海面を撃った…??)


バシャ…ッ!!


親潮「!!」


親潮(あれ…陽炎姉さんが…消えた…??)


不知火「親潮ッ!!派手に撃ちなさいッ!!」ガシャンッ


親潮「は、はいッ!!」


ズドンッ!!


ヒュウゥゥゥ…


戦艦ル級elite「ッ」ガンッ


親潮「当たった…!」


不知火「装甲にですけどね。いいですよ、その調子で狙ってください!」


ズドンッ!!


ズドンッ!!


ズドンッ!!


戦艦ル級elite「~~ッ!!」ガシャンッ


ズドオオォォォォン!!


不知火「ッ」ズドンッ


ギャアアアアアアアアン!!!


戦艦ル級elite「~~!!!!!」ブンブン


戦艦タ級「…」ガシャンッ


戦艦ル級「…」ガシャンッ


ズドオオォォォォン!!


ズドオオォォォォン!!


陽炎「あのムカつく奴らを狙い撃て、ってところかしら?何言ってるか分からないけど」


戦艦ル級elite「!?」


陽炎「はぁい♡後ろから失礼」


戦艦ル級elite「…ッ」グルンッ


陽炎「ああ、はいはい。こっちよこっち。私はここ。あなたの背面よ~。挟まれちゃったわね♡」


戦艦ル級elite「~~ッ!!」


陽炎「ホントはさぁ?妹たちを使って「固定」させたくなかったんだけど…。こういう使い方もあるわよねぇ」


戦艦ル級elite「…!!」


陽炎「撃たないのか?バカにしやがって!!って感じ?お気遣いどーも。でも心配には及ばないわ」


戦艦ル級elite「ッ!!」ガシャンッ


陽炎「だって…」


ヒュウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ…


陽炎「もう投げちゃったから♡」


戦艦ル級elite「!?!?」


カッ


ズドオオォォォォン……!!


戦艦ル級elite「」プカーン


陽炎「……旗艦、撃破」


戦艦タ級「…!!」ガシャンッ


ズドオオォォォォン!!


陽炎「……ッとぉ!?」ヂリ…ッ


空母ヲ級「…」ツイッ


ヒュウゥゥゥン…


艦載機「……」ダダダダダダダ!!!


陽炎「ちょちょちょ!?こっちなの!?えーっ!!一人狙い!?」


キャーッ!


不知火「……余裕そうですね」


親潮「あの、姉さんはどうやって…?」


不知火「後ろに回り込んだか?説明すると長くなるんですが…一言で言えば手品、ですかね」ズドンッ!!


親潮「手品?」ズドンッ!!


不知火「最初に派手に海面を撃ち飛沫を上げ、陽炎が姿を眩ます。そして不知火たちが動かず派手に撃つことで敵の注目を集める。その隙に、陽炎が気配を消して回り込んで…とまぁこんな感じです。気配の消し方は特異技術ですが…やり方自体は、夜戦を参考にしたものですよ」ズドンッ!!


親潮「……。す、すごいですね…」


不知火「夜戦自体はすぐに覚えることになりますよ。陽炎のあれは…まぁ曲学阿世です。艦娘の枠にとらわれず色んな事を取り込んだがゆえの到達点ですね」ズドンッ!!


戦艦タ級「ッ!?」ガンッ


不知火「ッチ。また装甲」


キャアアアアァァァァァ!!


チュウハ!


親潮「あっ」


陽炎「ちょっと不知火ーッ!!助けなさいよーッ!!」


不知火「援護射撃してるじゃないですk……!!こっち来ないでください!!」


陽炎「いじわる!!妹がみんなして私を毛嫌う!!」ウワァァァァン


親潮「わ、私は好きですよ!?」


不知火「なんで来たんですか!?これじゃ射線が一点に…」


陽炎「ちょっ。見て、これ見て!!装甲はがれたの!!これ以上食らうと航行できなくなるの!!」ボッコボコ


不知火「……旗艦をやれはしましたが…手妻が切れてしまいましたか」


戦艦ル級「……」ガコン


空母ヲ級「……」


戦艦タ級「……」


陽炎「…えへっ」


ズドオオォォォォン!!


ズドオオォォォォン!!


ズドオオォォォォン!!


………


……




陽炎「……ッハァ…。くっそ、痛ァい…」ボロッ


不知火「……ック」ボロッ


親潮「…ッハァ、ッハァ…!」ボロッ


陽炎「親潮~?まだ生きてる~?」


親潮「死んでません…」


陽炎「そ。なら大丈夫ね」


親潮「でもこれっ…三十分なんて…!」


不知火「……フフッ。どれくらい経ちましたかね」


陽炎「……大丈夫。絶対に、大丈夫よ」ニコッ


親潮「でもこれ…」


陽炎「司令が、私たちの司令が、「三十分待て」と言ったのよ。なら信じて耐えるのよ」


親潮「……っ」


陽炎「大丈夫。あの人は、「私たちなら三十分もつ」と信じてくれてる。だったら私たちも信じるのよ」


親潮「…打破、できるんですか…?」


陽炎「そう。司令が、あの司令が「三十分待て」と言った。……なら、三十分後。私たちの勝利は確定よ」


親潮「……はい」


陽炎「まーだ信用してないわね?この姉を。自分の司令を」


親潮「……」


不知火「…司令は」


親潮「?」


不知火「司令は、嘘は言わないお方です。あの人は「やる」と言ったら万理を覆してでも「やる」人です」


親潮「姉さん…」


不知火「そうでなかったら、もうとっくにこの国は滅んでるんです。このくらいの修羅場、この先いくらでもありますよ。新人」ガシャンッ


陽炎「そーゆーことっ!どーせ数時間後には、執務室で裸体見られるのよっ!今のうちにポージング考えておきなさい、新米!」ガシャンッ


親潮「……ッ。はいっ!」ガシャンッ


戦艦ル級「……」ガコン


ズドオオォォォォン!!


ズドオオォォォン…!!


陽炎「この音…」


不知火「敵のじゃない…」


親潮「これって…どこから…?」


陽炎「島で見えないわね…。あ。あっちか」キョロキョロ


ズドオオォォォン…!!


ズドオオォォォン…!!


陽炎「…あは」


不知火「あの人影…」


ヒエーィ!


陽炎「親潮。もう砲おろしていいわよ」


親潮「えっ?」


陽炎「私たちが出るまでもないわ。だってあれ…」


不知火「比叡さんです」フッ


陽炎「……うん!勝ったわね!!」アハハ!


………


……




戦艦ル級「」プカーン


戦艦タ級「」プカーン


空母ヲ級「」ブクブクブク…


親潮「お、終わっちゃった…」


不知火「反撃すらさせないワンサイドキル。さすがは比叡さんですね」


親潮「そ、そんなに強かったんですか、比叡さん…」


陽炎「最古参組よ?うちの主戦力だし司令とツーカーよ?来たら勝ちに決まってるじゃない」オーイ


比叡「ここにいましたか!皆さん無事ですか!?」ザサーッ


不知火「はい。無事です。救援、ありがとうございます」


比叡「何言ってるんですか!中破じゃないですか!」


不知火「このくらい、怪我ではありませんよ」


比叡「また神通さんの悪い癖を見習って…もう!親潮ちゃん、大丈夫ですか?」


親潮「あ、はい…大丈夫です」


陽炎「でもどうしてここに?三十分じゃ鎮守府から間に合わないわよ?」


比叡「三十分?いえ、私たちはこの先の海域で掃討戦をやっていたんです。さっき終わって、今帰り道でして。司令からの入電で、私は隊を離れてちょっと寄り道しただけです!」


不知火「そうでしたか…」


比叡「いやー、でも事前に潰せてよかったです!これでしばらくここも安泰ですね!」


親潮「事前…?」


比叡「ええ。あっちの方で、深海棲艦の「野良」が群れを作ろうとしてたんですよ。ほっといたら勢力作っちゃうところでした」


不知火「なるほど。じゃあこれもその一派だった可能性がありますね」


比叡「ですね」


親潮「……??」


不知火「深海棲艦も、一枚岩じゃないんですよ。海域ごとに「縄張り」が存在し、強個体がそれを支配する原始的な階級社会のようなものが確認されています。五未満の数隻からなる「はぐれ」、それが寄せ集まり、海を放浪し海賊行為を繰り返す「野良」、そして「野良」が集結し一つの勢力になると「群れ」。「群れ」くらいになると、一定範囲の「縄張り」に定住し、まとまった行動をとり始めます」


陽炎「大きい「群れ」になると姫級みたいなのも出てくるわ。だいたい場所は決まってるんだけど…潰しても潰しても月一くらいでまた「群れ」になっちゃうのよねぇ」


不知火「ひとえに「敵艦隊」と言っても、数による危険度は馬鹿にできないですし、当然、攻略難度も上がります。司令は便宜上このように深海棲艦を分類し、私たちの練度に合った出撃を命じているんです。あなたのような新人は「はぐれ」の掃討を、比叡さんのような主戦力は「群れ」を。このように采配すれば、効率よく敵を排除でき、そして艦娘の育成にもつながるという算段です」


陽炎「鎮守府近海ほど「はぐれ」が多いのはそういうことよ。波状式に出撃していけば近海では深海棲艦は勢力を拡大できず、「はぐれ」どまり。湧いても少数で、目的意思のないうちに潰せればイージーモード。海の奪還は、この「はぐれ」をいかに多く、連続して潰すかにかかってるのよ」


親潮「なるほど…」


比叡「…でも逆に、放っておくとどんどん規模が拡大していくんです。「群れ」が集結し、さらに大きくなると…。複数の姫級による海域の封鎖。攻略難度は跳ね上がって通常の艦隊では対処できなくなります。純粋なパワーでは深海棲艦の方が艦娘より上ですからね。打開にはさらなる艦娘の投入、より緻密で大胆で効果的な作戦と、長期間の連続出撃に耐えうる備蓄が必要になってきます。……いわゆる、大規模作戦ですね」


陽炎「ここまでくるともう「戦争」。や、いっつも戦争やってるんだけどさ」


不知火「主戦力と主戦力の真っ向勝負、という意味です。比叡さんは、この大規模作戦にいくつも参加しています。さっきほどの艦隊なら、単独でわけなく潰せるんです」


比叡「そんなことないですよぉ…」テレテレ


不知火「謙遜を。現にやってみせたではないですか」


比叡「えっへへ…。……ついでに、司令はこうも予想しています。かつて、人類を海から追いやった深海棲艦の大進撃…。私たちが「生まれる」直前の時代ですね。あれは、姫級たちがさらにさらに集結し…一つの「クニ」を作ったのではないか、と。軍事国家のような巨大な「群れ」となり、一斉に人類に襲い掛かった。単純な理屈ですけど、構造が原始的ゆえに純粋で、人間よりもまとまりがあり、人間よりも力がある。だから人類は、海から撤退を余儀なくされたんだ、と」


陽炎「あら、そうだったの。じゃあどうして今はこんなにまとまりがないの?」


比叡「内部崩壊説を唱えています。大きくなり過ぎた組織の内部で、いくつかの勢力による対立が起こったのではないかと。たとえば領土…領海問題や、部下の取り合い、もしかしたら戦利品の奪い合いかも。皮肉にも人類史と同じ変遷をたどることで大きな「クニ」は崩壊。結果として、いくつかの海域で「縄張り」が点在する今に至っているんだそうです」


陽炎「なるほどねー。じゃあまた集まるかもしれないってことね」


親潮「え?」


陽炎「それだけ大きな組織が存在したなら、それだけ強大な個体が存在したんでしょ?まさか議会制だとかじゃあるまいし。そんなのが存在したなら、また現れる可能性があるじゃない。実力による上下関係で成り立ってるなら、それ以上かも。また大規模な進撃をするかもしれないってことでしょ?」


比叡「ありえますねぇ。このまま大人しく消えていきそうにもないですし」


親潮「そんな…。どうするんですか…?」


比叡「でもあの時と違う点があります!」


陽炎「そ!大きく違う点が、ねっ!」


親潮「大きく…。私たち艦娘、ですか?」


不知火「いいえ。私たちよりよほど重要なファクターですよ」


親潮「…??海、軍…??」


陽炎「司令よ」ニッ


親潮「司令…」


陽炎「不知火が言ったじゃない。あの人が司令じゃなきゃ、もう敗戦まっしぐら!最初の「司令」があの人じゃなかったら、私たちだってただの使い潰しの「消耗品」だもの。私たちをあの人が指揮して、初めて深海棲艦と「五分」なのよ」


親潮「……あは」


陽炎「なーにーぃ?まーだ信用できないー?」


不知火「普段が「ああ」ですから。訳もないかと」ハァ


比叡「あははははは!司令の自業自得だぁ」ケラケラケラ


不知火「…っふふ。ふふふふふ」


陽炎「あはははははは!」


親潮「ぁ、ぅぅ…」オロオロ


陽炎「さぁ、帰りましょう?砲戦より騒がしい、「我が家」へ」


………


……




陽炎「たっだいまー!」バーン


提督「おっかえりー」


妙高「ノックをしてください」


不知火「ただいま戻りました」コンコン


比叡「開けてからノックは意味無いんじゃ…ただいま戻りましたー」


親潮「も、戻りました!」


陽炎「遠征隊旗艦陽炎、以下僚艦、全て戻りました!」バーン!


提督「おかー。災難だったね」


陽炎「親潮にはいい経験になったんじゃないかしら?ね、どう?」ポージング


提督「経験…ね。ふふっ、まーそうだな。親潮、これが不意遭遇戦ってやつだ。島や霧なんかで視界の悪いところでは、まぁそこそこの頻度で起こる。覚えといてな」


親潮「はい…!」


陽炎「ちょっと。ね、どう?」ズイー


提督「比叡もすまんな。進路と編成を変えちまって」


比叡「はい、比叡は大丈夫です!なんちゃって。……親潮ちゃんに大事がなくてなによりです」


親潮「足手まといで、すいません…!」


比叡「いいんですよ!いつか私も、親潮ちゃんに頼っちゃいますから!」


親潮「はいっ!」


陽炎「ちょっと!無視しないでよ!どうよこのポージング!セクシーでしょ!?」


提督「脇見せ手ブラはいいが、下半身がまだ甘い。25点」


陽炎「ひっく!」


提督「腰に捻りがないのと、この場合は尻よりも太ももを強調した方が魅力的。足はクロスさせて、鼠径部を片方だけ見せる方が蠱惑的」


陽炎「でも低くない?」


提督「ドヤ顔なのが中破姿にミスマッチなのと、一ヶ所もポロリしなさそうなくらいガード堅いからな」


陽炎「じゃあ見せてあげますー!ほらー美少女のおっぱい!このロリコン!」バッ


提督「つつましいけど慎みがない。15点」


陽炎「下がった!?」


提督「当たり前だ」


妙高「提督?」キリリ…ッ


提督「オレのせいです…??」


不知火「陽炎もそういうことはやめてください」


陽炎「嫉妬しちゃう?」


不知火「しませんッ!」


提督「さて、あまり長居をしてもつまらんじゃろう。そこのお菓子を持ってさっさと休憩めされい」


陽炎「はーい!じゃあ遠慮なくー」ガサッ


不知火「本当に遠慮のない量を…」


陽炎「うちは人数いるからいーの!」


スタスタスタ


比叡「じゃあ私も失礼しますね」


スタスタスタ…


パタン


………


……




トボトボ…


神通「……」


親潮「!?」ビクッ


神通「常在戦場の話は昨日したはずなんですがね」スタッ


親潮「……ごめんなさいっ!」


神通「聞きましたよ。不意遭遇戦があったこと。そして比叡さんが救援に来てくれたこと。無様に転げまわったようですね」スッ


親潮「っ…」


神通「よく、やりました」ポンポン


親潮「えっ…?」


神通「傷を見ればわかります」スリスリ…


親潮「い、いたっ…」


神通「生きて帰ってくる。それがどれほど尊くて、難しいことか。あなたはそれを成し遂げた」グリグリ


親潮「は、はい゛…」ズキズキ


神通「これからも精進なさい」


スタスタスタ…


親潮「……えへ」ニヘラ


………


……




親潮「ただいま帰りまし…たー……」ガチャ


陽炎「ちょっと!!喧嘩しないの!!」


不知火「分け合えばいいでしょう!」


時津風「がるるるるるる!!」


雪風「うぐるるるるるる!!」


初風「ちょっと!じゃんけんでもなんでも決めればいいじゃない!」


時津風「やだ!不公平だもん!!」


天津風「まぁ雪風が相手だとそうよね…」


雪風「でも早い者勝ちもどうかと思います!!」


嵐「ね゛ー。うるさいんだけど!!眠れねーじゃん!!」


舞風「ごめ、マジでうるさい…」ネムネム


野分「迷惑です…」


萩風「音量を、下げて…」


谷風「なー。姉さんたち先に風呂行かなくていいの?」


浦風「カーペット血で汚さんといて!」


浜風「ンモラァモヘホッヘェ」モッシャモッシャ


磯風「何を言っているんだ。飲み込んでから話せ」


島風「ねぇ!また秋雲また吊るされてるの!?」


秋雲「いいところに来たねぜかまし!!おろして!!一晩中吊るされてたの!!」


島風「うっけるー!」


秋雲「……それだけ!?」


Libeccio「わー!すごいお菓子!今日って何のお祭り!?」


陽炎「執務室からかっぱらってきたのよ。食べていいわよ」


Jervis「わーい♪」


夕雲「今日はいつもに増して元気ね…」


巻雲「巻雲は秋雲を見れて満足です」フンス


秋雲「おろして!!いい加減、あれだよ!?もー完全にあれだからね!!マジあれ!!」ジタバタ


親潮「ただ…いま…」


黒潮「あ!おかえり親潮。大変だったらしいなぁ?そういう日もあるよ。こっち来て休み」


親潮「……ふふっ」クスッ


黒潮「どした?」


親潮「……いえ。色々学ぶことが多かったので」


黒潮「…そか。ええやん」


親潮「はい、とても充実した日でした」ニコッ


黒潮「これから先、こんな日も増えるよ。日記見てようやく思い出すようなそんな日が、いっぱい」


親潮「楽しみです」


陽炎「あ!戻ったわね親潮!はやく選んで!ちょっと大変なんだから!」


親潮「あ!はーい!」


キャイキャイ…


………


……




後書き

はい、こんな感じで。

比叡改二丙の色気がすごい…。姉よりすごいんじゃないかn(手記はここで途切れている)。
思わず姉より先に指輪を渡してオコトワリされてきm(大量の血痕)。
比叡って美人だよn(切れ味の悪そうな包丁)。

自業自得ですけど、登場人物が多い…。諦めませんけど。

とりあえずこのお話は以上です。いかがでしたでしょうか?楽しんでいただけたなら幸いです。
今後も、また不定期でサイドストーリーやってみたいです。今度は誰にしましょうかね。なるべく普段は日の目を見ない子とか(そんな子はいない)面白そうだなと思っていたり。

これからもよろしくお願いします!


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このSSへのコメント

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1: SS好きの名無しさん 2020-05-22 04:33:41 ID: S:twlZ0Y

陽炎リクした者です。ありがとうございます、前後楽しませてもらいました!

2: エクシード 2020-05-22 19:51:12 ID: S:pPJyIw

今回も楽しく面白く素晴らしいと思いました!

最近わかったのが、この作品が尊すぎて僕の語学力じゃ語れないって

3: ポチという名のネコ 2020-05-22 21:09:03 ID: S:jENKw7

評価、応援等をくださり、ありがとうございます!

最高の褒め言葉を下さり、本当にうれしいです。今後も色々書いていきたいと思っていますが、読んでくださった方の中で「この子の話とかやって」等のリクエストがあれば、コメントや目安箱(作品として投稿しています)にて受け付けております。文章力向上のために、可能な限りお応えしたいと考えています!

次は潜水艦編です!よろしくお願いします!

4: ぴぃすう 2020-05-22 23:39:42 ID: S:bC4TR6

今回もさすがの一言ですね!!

それにしても雪風に株させる提督には爆笑ですね(笑)

雪風なら宝くじで5億くらい軽い軽い~(笑)

5: ポチという名のネコ 2020-05-23 13:11:49 ID: S:NzK4tx

ありがとうございます!

6: sei 2020-06-10 15:02:25 ID: S:aQzGzY

はぐれや群れ…

いやはや相変わらず世界観が作り込まれてて面白い!


ところで雪風?ここに宝k(ここで途切れている)

7: ポチという名のネコ 2020-06-14 21:42:41 ID: S:i_baro

ありがとうございます!励みにさせていただきます!


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