2020-08-08 23:18:47 更新

無能と言われた提督


提督「・・・即日帰郷ですか」


元帥「そうだ」


提督「除隊との事で間違いないのでしょうか」


元帥「そうだと言っている。艦娘からの無能さを問う内容の書状が多く届いた。よって身体的、知的的に欠如していると判断し、即日帰郷(クビ)の処分とする。処分は大本営から各地に通達され、二度と泊地には足を踏み入れるは出来ん」


提督「・・・分かりました。これまで大変お世話になりました。わたくしの不手際により大本営、長官(元帥)に多大なるご迷惑をお掛けしたことは恥ずべきものとして受け止め、命令に従います」


元帥「残念な結果だが、ふっ、陸式※1ならまだ道はあるだろう。あきつ丸も来たことだしな」


提督「彼女は非常に優秀です。これから重要な局面でさらなる活躍をすることでしょう」


元帥「貴様の意見など聞いてはいない。もういい、さっさと支度をしたのちに出ていきたまえ」


提督「はっ!」敬礼



ガチャッ、パタン。



元帥「前に見たときは・・・いや、考えすぎか」ボソッ



――――鎮守府、執務室。



提督「長官のご下命を賜り、本日付で提督を解任される」


金剛「やっと辞めるですか?おそすぎだよネー!」


高雄「遅すぎるぐらいです、馬鹿め…と言って差し上げますわ」フフッ


提督「二人にはいつも迷惑を掛けてすまなかった。すぐに別の者が来ると思うから――」


金剛「御託はいいデース、早く出ていかないとFire~!するかもネー!」


提督「あ、ああ。艤装を出さなくてもすぐに出ていく、幸い私物は少ない」


高雄「当たり前ですわ、私達が頑張っているのに提督が贅沢をするのも可笑しいですもの」フフッ


提督「そう・・・だな。それでは失礼する」礼


金剛「・・・」


高雄「・・・」



ガチャ、パタン。



金剛「仕事がいつも遅くてこっちの身にもなってほしいデース!」


高雄「新しい提督は素敵な方がいいですね」



――――数日後、とある街。



男「ふぅ(提督を除隊され、それなりに頑張ったと思っていはいたが、それは慢心だと今でも自問自答する。結果が伴われければ努力とは意味をなさず、自己満足でしかないのだろうか?)」


男「・・・(歳を考えれば深海棲艦との戦いで、今の状況では、就職も厳しいだろう。蓄えはあるとしても厳しい。アルバイトをしながら就職を探していかないと、贅しないとしてもすぐに尽きる。世知辛い世の中だ)」


男(求人雑誌に目を通しても女性の求人が多いのは、除籍した艦娘が働きやすいようにしてあるからだったな。これからの事を考えると恥を忍んで実家に帰るのも手だろうか?)


男(資格もない、人を惹き付けるものもなく、コネもない。自分はいったい何をしていたんだ)


男(匿名で海域の戦略情報を流し、高い評価を受けることで満足していたが、殆どの艦娘達には理解されなかった。意味のない出撃をどうして繰り返すのかと何度も怒られた。大切な燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトを意味もなく消費していたと思われていたのかもしれない。最初は説明していたが、途中から聞いてもらえなくなった。最終的には情報が出てから出撃すべきと言われていたな。その情報の殆どは・・・いや、止めよう)


男「独り身ではナーバスになるだけだ。こんな私でもケッコンカッコカリしていたら変わっていたのだろうか」ボソッ


?「キュー」テヲフリフリ


男「ん?妖精?アパートにも妖精が居るのか」スッ


妖精「キュッキュ」テノヒラノ、ウエニノル


男「提督でなくなったら見れなくなると思っていたが、関係ないようだな」


妖精「キュ」ピョンピョン


男「艦娘なら何を言っているかは分かるはずだが、すまない。妖精語はさっぱりなんだ」


妖精「キュー」ユビサシ


男「求人雑誌を指差してる?」スッ、ザッシニチカヅケル


妖精「コレ、ヤレヤ」


男「今、喋ったよな?」


妖精「…」ユビサシ


男「気のせいか、何を指差して・・・こ、これは!?」



――――とある場所。



?「お次の方どうぞ」


男「失礼します」


?「面接によく来てくださいました。まず最初に私の名前ですが」


男「あ、失礼を承知で、大淀さん。ですね」


大淀「え!?あ、はい!そうですよ!もしかして経験者の方ですか!?」


男「恥ずかしながらそうです。経験不問、経歴不問。との募集から応募させていただきました男と申します」


大淀「そうでしたか、ふふっ、経験者の方が来るのは、まずないかなと思っていたので嬉しいです」


男「そう・・・ですよね(確かに提督が辞めるなんて聞かない話だ)」ドンヨリ


大淀「あ、ごめんなさい。経験、経歴は不問ですので踏み込んだ話はしません!」アセアセ


男「察していただきありがとうございます。大淀さん」


大淀「敬称はいりませんよ?」


男「申し訳ありません、面接ですのでどうしても」ペコッ


大淀「あ、それもそうですね・・・んー」


大淀は右手の人差し指を唇にあてて考える素振りをした。


大淀「アルバイトを始めたら敬称はなしでお願いします」フフッ


男「・・・はは、そうですね。その時はよろしくお願いします」


大淀「それではアルバイトの内容ですが、経験者の方なら方法は分かりますね」

     ・・

男「ええ、提督と変わらなければ」


大淀「はい!変わりませんよ」フフッ



――――一週間後。アルバイト提督が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮に入ります!



提督(バイト)「ああ、どうしてこうなった」



 着任早々、頭を抱えて数分。世が世紀末でも、なかなかお目にかかれない。荒れ果てた鎮守府を見てから数分が数時間に感じられた。

いや、門を潜る前から嫌な予感はしていた。片方の門扉は外され壁に立て掛けられていた。もう一つは内側からとてつもない力で捻じ曲げられ、数メートル先に落ちていた。どうしてこうなった。いったい何があったんだ。

 そう言えばここまで送ってくれた運転手が、なにかに怯えながら「ご武運を」とか言ってた。

その時点で察するべきだった。ここは死地かと。



提督(バイト)「と、とにかく執務室に向かわなければ」


ズオォオオ!!


提督(バイト)「うおっ!?」



歩こうとした瞬間、目の前を何かが飛んでいった。数秒後に腹に響くような轟音とともに、壁には錨が突き刺さっていた。



?「あら、外しちゃった」


提督(バイト)「・・・生きねば」



 心の底からそう思った。あの後ろ姿は雷だろう。

突き刺さった錨が、鎮守府を囲っている崩れた壁とともに、外に落ちていくのを見つめながら、ついボヤいていた。

 いや、泣き言を言っている暇はないと首を振る。アルバイトは時給でお給金を頂いている。タイム・イズ・マネー、一分計算でお金になるアルバイターに止まってる事なんて出来ない。



提督(バイト)「!うぉおおお」ウズクマル



今日一番のシックスセンス、第六感が冴え渡る。明らかな殺意が頭のすれすれを掠って行った。

ついでに軍帽も連れて行った。貴重な髪の毛も数十本ほどなくなったかもしれない。



加賀「大淀から話を聞いてるわ。航空母艦、加賀です。貴方が私の提督なの?それなりに期待はしているわ。」


提督(バイト)「よ、よろしくおねがいします」



何をよろしくするんだろうか?

どれだけ長く生きられるかどうかだろうか?

去っていく加賀さんの後ろ姿より、壁に突き刺さった。矢と軍帽を見ながら静かにそう思った。



――――執務室前。



提督(バイト)「・・・」



 大きく息を吸い、そして吐く。先程の九死に一生を得た心臓を落ち着かせるためだが、落ち着くわけがない。ここに来るまで様々な艦娘とすれ違ったが、その殆どは殺意に満ちた目をこちらに向けてくる。前提督は何をしでかしたんだ。

提督のバイトと一見ふざけたような内容に一抹の不安を覚えてはいたが、なんとなくこの鎮守府の現状から察することは出来る。

     ・・・・

 きっと、自分以上に艦娘に無理をさせていたんだろう。鎮守府海域で自信を付けさせるため※2に、近海警備を一人で行ってもらったりしたに違いない。特に怖がっていた山風もあれで少しは自信がついたんだが、最終的には自ら海域に突っ込んでいくバトルジャンキーになってしまった。あれはきっと失敗だろう。すまない山風。ただ、ソロモンの悪夢と鬼神のトリオで勝手にどっか行くのだけは止めてほしかった。特に演習。



コンコン



提督(バイト)「・・・うん?」



 面接の話では大淀さんが執務室で迎えてくれる手はずであった。しかしノックをしても反応はなく。ノックの音だけが不気味に響く。ただでさえ異常な鎮守府でこの静かさは怖い。緊張で額から汗が流れ落ちる。ハンカチで額の汗を拭い。意を決して、ドアノブに手をかけた。



ガチャ。



 鍵はかかっていないようだ。しかし油断してはいけない。少しだけドアを開けて中の様子を見る。トラップ類もなしのようだ。知らずに開けて砲撃を食らったり、脳天にショットガンも食らいたくもない。

 安全を確認し、人ひとりが入れるぐらいに開けると足早に入る。執務室に入るのに、おっかなびっくり覗いてるだけでも相当不審者に見えるからだ。なんでそんなこと?と問われても、死にたくないと答えるだけだ。


――――執務室。



提督(バイト)「・・・」



 執務室の中はかなり豪華だった。薔薇レリーフの高級石壁、床は真っ赤な高級絨毯、提督の書斎机は知っているデザインと少し違い、大理石が使われ、どちらかと言えば、プレジデントデスクの様だった。が、机の上には書類が無造作に山のように置かれ、椅子は見えなかった。

きっと座り心地の良い高級の椅子があるに違いない。バイトではない提督をしていた頃は、ダンボール机だった。世知辛い。

ゆっくりと近づいて見る。プロはその時も足元や周囲のトラップを警戒する。もちろん警戒中だ。


ジリリリ。


提督(バイト)「ンヒッ!?」



 変な声が出た。恥ずかしい。誰かに声を聞かれたり、見れられてないか周囲を見渡す。誰にも見られてないようで安心した。

音の発信源は古いアンティーク電話のベルだった。アルバイトで出ていいか迷ったが、電話に出てみる。



提督(バイト)「はい、アルバイトの提督です」


?『あー、君が雇われ提督の?』


提督(バイト)「そうなります、神路 心※3と申します」


?『ブーッ!!』


?『わっ!やだっ!提督!』


?『す、すまんすまん。いやね、知ってる名前かと思って』


提督(バイト)「あの、なにか?」


?『いや、行方不明になった奴の後釜兼後輩になるかもしれないからね。着任時間だから連絡したんだ。しかし知ってる人の名前と一緒だったからびっくりしたよ』


提督(バイト)「それほど驚く方なのですか?」


?『ああ、俺にとっては目標にしたいくらいの憧れって言うかな、いきなり提督を辞めてしまってびっくりしちゃってなー』


提督(バイト)「そうでしたか、有能な方だったのですね」



自分とは正反対だなと思う。電話の相手は若い声で、何かを吹き出したときに艦娘の声もした。あの声は蒼龍だと思う。



?『有能の一言で片付けられないほど凄い人だったんだぜ!ってこの話すると長くなるからまた会ったときにでも話すわ、とりあえず挨拶でってことでよろしくな後輩君』


提督(バイト)「お忙しい中、わたくしに連絡を下さり誠にありがとうございます」


笹葉『はは、お堅いな。俺は笹葉 蓮司※4って言うんだ。よろしくな』


提督(バイト)「はい、宜しくおねがいします」


笹葉『それじゃあまたな』


提督(バイト)「はい、それでは失礼します」



 電話を切り、ふと、目の端で何かを見たような気がする。電話は山積みになった書類の机に備え付けられており、その書類の山の中に何かがいる気がした。再び額にどっと汗が出る。不用心にも近づいてしまった。もし仕掛けられたら避ける自信のない距離だ。



?「すー、すー」



 寝息?瞬時に身構えたが、すぐに気が抜けた。聞こえてくるのは可愛らしいと言うのもどうかと思うが、静かに、それでいて規則正しい呼吸音。世紀末鎮守府とは思えない音に、癒やしを感じる。

ゆっくりと回り込んで書類の山の裏側に行くと、机の上に突っ伏して寝ている大淀さんが居た。

 トレードマークのメガネが無造作に机の上にあることから、書類整理中にあまりの眠気に耐えきれず。なんとかメガネだけ外したといった印象だ。

普段見ることのできないであろう、彼女の姿に、娘が居たらこんな心境なのかと父性本能をくすぐられる。魔法使い童貞だが。



大淀「う…うん」


 机から上半身を上げ、寝ぼけた顔で書類に触ろうとするが、再び力尽きて今度は椅子に寄りかかる。相当疲れていたのかと思いつつ、椅子を見ると、丁度いいと思った。椅子はリクライニングチェアで後ろに倒せば足を伸ばして、そのまま寝れるタイプだった。

 彼女に触らぬように、椅子を触ってみると、程よい固さで少しぐらい寝ても腰や背中は痛くはならないだろう。

キャスター付きでやはり椅子も高級な事もあり、起こさずに窓側に移動できた。もちろん日当たりが良い所ではなく、やや日陰側だ。

 

窓を少し開けてみると潮の香りと心地よい波の音が聞こえる。風も入ってくるが、静かでこれもまた良い。椅子を倒し、机に向かう。

机に仕掛けがあり、机の下にあるボタンを押すと鎮守府全体に指示ができるモニターが、机の中から出てくる。

 これは前の仕掛けと一緒だと安堵しつつ、模様替えの項目を押した。すると殆どの家具が揃っており、よりどりみどりだなと、思いながらも、シンプルなものを選んだ。

数秒もしないうちに、仕掛け壁が静かに開き、妖精達が模様替えアイテムを持ってきた。未だにこのシステムだけはよく分からない。



妖精達「キュ」「ユッ」「ミュ」



やはり妖精語はさっぱりだった。


 妖精達にお礼はいらないが、なんとなく持っていたかりん糖を渡すと手を振ったり、サムズアップしながら帰っていく。

個性的な妖精はちらほら見たこともあるが、ここもかなり個性的だなと思った。受け取ったアイテムを持って彼女に近づく。怪しいが怪しくはない。

 妖精達から受け取ったものを慎重に彼女に掛けた。もちろん掛け布団だ。

 心なしか微笑んでるようにも見える。相当な激務だったのだろう、書類の山を見ればすぐに分かる。

この量は彼女ひとりでは難しいだろう。

とりあえずはと書類を確認していく、内容は鎮守府の修繕工事許可や、入渠、補給申請など、様々なものがあるが、この書類の山はそれが全部だった。

                         

 提督が居ない今では、書類を同じ内容の書類を整理整頓した上で、大本営に申請内容の説明報告してから許可を得なければならない。もちろんそれでは遅くなるし、いつ返答が来るかもわからず、デスクワークに齧り付けとなる。

真面目な彼女の性格なら、殆どをこなしていたんだろう。


・・・・・・・・・・・・

見た目よりも分かりやすくなった書類の山は、自分が許可を出していくだけですぐに終わると思った。



提督(バイト)「・・・」



 が、そうでもなかった。

 入渠申請の殆どは中破や大破で占められていたからだ。こればかりは入渠できるドックが二つしかない鎮守府での効率は悪いし大本営が許可を出すのは一回の申請で一つだけだ。それを申請して待っていたのであればと考えれば、自分の表情が歪んでいく感覚も理解できる。本当に・・・本当に前任は何をしていたんだろう。

 自分らしくもない嫌な感情に嫌悪しながらも、人生で倹約家として生きてきた自分自身の人生を振り返っている、自分がいたのも確かだった。



妖精達「ミュン」「ヌイ」「デス」


提督(バイト)「ありがとう」



妖精達に自分の私物が届いてないか確認すると、すぐに持ってきてくれた。普段より早く感じる。

足早に戻っていく妖精達に今度は飴を渡してみると、驚いた顔で体の一部ほどの大きさの飴を抱え、ペコリと頭を下げた。頭を上げたときの笑顔は生涯、忘れることは出来ないだろう。そんな気分にさせてくれた。

孫ができたらこんな気分だろうな。童提督(バイト)なんだが。


早速ダンボールの中身を取り出して作業に入る。そう、目的は中身じゃない、ダンボールだ。

ダンボールは良いぞ、机にも寝具にもなる。プレジデントデスクの横にダンボールを置いて正座し、背筋を伸ばして書類にサインを始めた。



?「・・・あ、あの」



どっと汗が出る。またやってしまった。落ち着くんだ。

どうしたらいい?


1 大丈夫、何もせず、相手を刺激しない。

2 相手との距離を置く。

3 マジかよ、相手から近づいてきた。すべて台無しだ。対策を立てる暇もない。

4 書類に気を取られるなんて、この書類はお前の人生だ。

5 色んなことを始めるが、後悔せず何一つ進化しない。

6 誰もお前を愛さない


違う、落ち着け。そうじゃない、落ち着くのは自分のほうだ。

 先程回収しておいた穴開き軍帽をまぶかにかぶっていたおかげでゆっくりと盗み見るように声の相手を見る。


吹雪「大丈夫ですか?」


やはり吹雪だった。声では分かってはいたが、書類の内容に集中しすぎていて周りが疎かになっていた。

そんな心境を知らずに、怪訝そうに吹雪はこちらを見ている。距離は二メートルくらいか、ダンボールを挟んでいるとはいえ防御は出来ない。目眩ましして窓から飛び降りればあるいは、駄目だ、ここは三階。飛び降りてどうこうなる高さでもない。詰んだ。



吹雪「あの、こ、この状況は?」



 吹雪は日陰の窓際で幸せそうに寝ている大淀。先ほど大淀さんに話しかけた時の書類の山だった書斎机が、今では半分まで減っていたこと。その横で、みかんが描かれたダンボールを机代わりにしている男が、ペンを持ったまま、背筋を伸ばして正座し、固まったようにコチラを見ている。

左から右へと見ても、はっきり言って意味がわからない状況だった。

 どうして真ん中の机を使わないのか?

 ダンボールの落書きが可愛いなとか?

 みかんの文字の後に?と疑問形の落書きを見て吹き出しそうになる。

一言で言えば、その光景はシュール過ぎた。



提督(バイト)「大淀さんは疲れている。寝かせておいてほしい」


吹雪「は、はぁ」


提督(バイト)「・・・」


吹雪「・・・え?それだけですか」



その通りです。

 特型駆逐艦の1番艦、吹雪。彼女は前の鎮守府にも在籍していた。正義感がとても強く、自分が駆逐艦の子と話していると、いつもそばに居た。あれはきっと犯罪者を見る目だったのだろう。目のハイライトが無くなっていた気がする。

その後に話しかけても笑顔なのに目が笑っていなかった。殺意を込めた目線よりもまた別の恐怖をよく感じていた。

 しかし、この吹雪は殺意を向けてこないどころか積極的に話しかけてくるなと思う。何か裏があるとも思えず、興味があって話しかけてきたといった感じか。



提督(バイト)「失礼した、この鎮守府に着任したばかりの神路と言う。」


吹雪「し、司令官!?ごめんなさい!そうとは知らずに」


提督(バイト)「正式には着任の挨拶も済ませていないし、知らなかったのだから失礼なのはこちらだ」


吹雪「え?そういうもの…ですか?」



吹雪が混乱しているのは分かっている。だが、この鎮守府の内情が分からないからこそ勢いでなんとか推し進めたかった。

 目を泳がすようにオロオロとしている吹雪を前にして、対策を考えていた。



提督(バイト)「・・・そういうものだ」


吹雪「…」



 いかん、会話が終了した。対策を考える前に会話に集中することを優先するのを忘れてしまっていた。

自分が口下手なのは十分理解している。前鎮守府でも必要最低限の会話しかしていなかった気がする。なんとか会話を続けなければ・・・娘との会話が出来なくなった父親はきっとこんな感じだ。自分が賢者と呼ばれる日もそう遠くはないだろう。

 なにか、何かないのか。話題、どんなことでもいい。話題を考えねば。



提督(バイト)「最近、どうだ?」


吹雪「え?」



 バカなの?完璧、父娘の会話だ。違うそうじゃない。

もっといい感じに話しかけたかっただけだ。殺伐とした殺意の波動鎮守府でどうだ?とは珍事でしかない。吹雪も流石に何いってんだこいつって顔していた。



吹雪「実は、長門さんに様子を見てくるように言われて来たんです」


提督(バイト)「長門に?」



 長門なら、今頃は入渠中だ。ここに来て身銭を切る事でドックを増やしたから、ドックが増えた事と長門自身が最初に入渠したことを疑問に思ったのかもしれない。前の長門とは作戦をよく話し合っていた間柄だった。

 世間話は苦手でも作戦などの会話なら話せるのだがなと、我ながら難儀な性格だと思う。それでも長門は笑っていてくれた気がする。

最後の挨拶も出来ずに、出て来てしまったことを今でも引きずっているくらいだ。

 同型艦とはいえ、長門に殺意を向けられたら色々と思うところはあるだろう。

全く影響がないとは言えないな。




吹雪「あ、あの…辛そうですけど大丈夫ですか?」


提督(バイト)「・・・すまない」




顔に出ていたらしい、吹雪は本当に心配してくれてるようだった。だからこそ、この吹雪はなぜ殺意を向けないのか疑問に思う。

向けて欲しいわけでわないが殺意がないということは、何かしらの害を受けてはいないのだろう。




吹雪「・・・」


提督(バイト)「基本的には大破している艦から優先してドックに入ってもらった」




嘘は言っていない。思うところがあるとは言っても、長門が大破の状態が深刻だったから優先した。本来なら高速修復材を使ってすぐにでも修理したいところだが、何故か一個も無かった。これだけの大規模な鎮守府で一個のないのは異常だ。

     ・・

だとすると故意に――となる。そんなことをする理由は分からない。

中破、大破を放置し、艦娘達からは明確な殺意を一身に受ける。こんな鎮守府の話は数回だけ聞いたことがある。思い出したくもない話だが。



吹雪「そう…ですか」



自分以上に辛そうな表情から吹雪の今の思考は分からない。ただ、握りしめた両手はスカートをぎゅっと掴んでいた。

なんとも言えない悔しそうな表情が印象的だ。自分の目線に気づいたのか吹雪は拳を緩めてシワの付いたスカートを伸ばすように軽く叩くと、姿勢を正して敬礼をした。




吹雪「ワシントン条約制限下で設計された、世界中を驚愕させたクラスを超えた特型駆逐艦の1番艦、吹雪です」


提督(バイト)「神路 心、只今をもってこの鎮守府に着任した」



吹雪の姿勢に、こちらも立ち上がり、答礼をした。自然と互いに自己紹介をする。

同時に懐かしさも感じる。初めて着任した時の艦娘が吹雪だったからだ。彼女もまた、犯罪者を見るような目になるのだろうか?いや、今からそんなことを考えていたら駄目なんだ。ここはあの鎮守府とは違う。

脳内で言い聞かせるように言葉を繰り返す。吹雪が敬礼を解くと続いて自分も解いた。



吹雪「えへへ、なんだか久しぶりに自己紹介しました」



 可愛い――じゃなくて久しぶり?どういうことなんだろうか。照れるように両手を後ろで組んで、顔を赤くしている吹雪を見て疑問に思う。

 確かに個人的な意見を言えば練度は低く感じる。

歴戦の艦娘は改になるときなどのタイミングは、何かしらのアクション※5がある。原因は分からないが大抵の提督はそれで改の判断をしたりする。他にも艦娘からの助言でも改にしたりするがあえてしない提督も居るのも確かだ。

 人それぞれの考え方があるのだろう、そういった提督は演習のときは強かったり、あえて単艦で挑んでくる時もある。

 無謀に見えて、こちらは練度の低い艦娘を出撃させることで相手の艦娘から様々な事を学ぶことが出来る。

そういった提督はとてもありがたい存在だ。口下手で略式なお礼しか言ったことしかないが、とても笑顔だった。

 中には単艦に出された艦娘に殴られたり罵倒される提督も居たが・・・「我々の業界ではご褒美です」と言っていた。業が深いとしか思えないが。

三隻の駆逐艦――例トリオで戦艦二隻、航空母艦一隻を大破、駆逐艦三隻を中破させて帰ってきたとき、相手の引きつった顔はいまだに覚えている。

 正直、申し訳なかった。

模倣して二隻だけ出したつもりが勝手に出撃した三隻であそこまで荒らし回るとは思わなかった。



吹雪「あの…司令官?」


提督(バイト)「ああ、すまない。しかし大淀さん、全然起きないな」


吹雪「たしか、四徹?って言ってましたよ」


提督(バイト)「四轍も!?それは、こんな椅子で寝るよりちゃんと寝てもらったほうがいいな」


吹雪「…司令官」


提督(バイト)「いや、もちろん起こさない」


吹雪「い、いえ、それは嬉しいのですけど…」



吹雪の言いたいことと違ったようだ。吹雪は恐る恐る言おうとしているようで、もしかしたら失礼なことを言ってしまうかもしれないと、戦々恐々といった感じだった。



提督(バイト)「なにか言いたいことが?」


吹雪「は、はい!その…司令官は私達をどう思います?」



 過去にとある艦娘に問われたことがある。私達は兵器だと、それなのに少しでも疲労が分かるとすぐに出撃させないのはどうしてだ、と。

人として扱うより、兵器として扱ってほしいと言われた。

有無を言わせない、戦艦クラスの眼光にビビった私は、その時、艦娘が兵器だと思ってなかった為に焦ってしまい、普段絶対に言わないであろう「可愛い女の子だよね」とか言ってしまった。

 その日の夜はセクハラで訴えられないか心配で眠れなかった。その艦娘は何も言わずに一礼だけすると出てってしまったからだ。

 眠れぬ夜を頭の中で考えることは、あの艦娘が私を訴える算段をしているのかと怯えていた。

次の日に「私が秘書艦を務めます」と言ってきた時は、いよいよ終わりの始まりだと思ったのだ。だが、習慣と化している提督の食事の準備がいつもより念入りで、美味しく大満足だった。

 結果的に別の意味で訴えられ、職を追われた身ではあるのだが・・・。

鎮守府を出るときに振り返って一礼した。その時に遠くで私を見ていたのは、きっとあの子だろう。唐突な事で彼女にも挨拶は出来なかったが、敬礼だけもと、彼女に送った。答礼してくれたのがせめてもの心の救いになったのかもしれない。



提督(バイト)「そうだな・・・どう思ってるかだな」


吹雪「は、はい!」


提督(バイト)「・・・」


吹雪「…」


提督(バイト)「・・・(何も思いつかん、なんだ?どういう意味で聞いたのだ??なんかこう・・・評価的な事なんだろうか?)」


吹雪「…あ、あの、そんなに見つめないでください」


提督(バイト)「うん、かわいい(失礼した、これからの事を考えたらまずは練度をと言いたいが現状が分からない以上――)」


吹雪「え?」


提督(バイト)「え?」


吹雪「え?えっ??」


提督(バイト)「なにか?」


吹雪「な、なんでもありません!続けてください」



吹雪の顔がみるみる真っ赤になっていく。おかしな事は言っていないはずだ。

柔らかそうなほっぺを赤く染めながら両手で抑えて嬉しそうに顔を左右に軽く振ると笑顔を向けてくる。

 同じ艦娘を同型艦とは言うが、個性がそれぞれにある。

某罵倒が挨拶なような駆逐艦が三人居たとする。一人は罵倒の後で心配していることをちゃんと伝えるタイプ。もう一人は罵倒の中に心配してることを伝えるタイプ。とりあえず罵倒するタイプ。しかしどことなく優しさが垣間見えるが、自分が在籍していた鎮守府は罵倒よりもただただ優しい言葉を伝えてきた。

 とても珍しいと他の提督からはよく言われていたが「あ、はい」としか言えなかった。

今思えばどうして優しい言葉を自分に掛けてくれたのか分からない。そう言えば別の鎮守府の叢雲が、自分の所属していた鎮守府の叢雲※6を見て白目になっていた。あれも実は同じ意味だったのだろうか?



提督(バイト)「そうだな、まずは近海域で装備は――」


吹雪「え?」



あからさまにガッカリしたような顔をしている。なんなのだ?やはり女性、いや乙女の心情は男の自分には分からないものなのだろう。



提督(バイト)「…すまないな、いきなり危険な海域は嫌だ」


吹雪「いえ、大丈夫です」


提督(バイト)「そう辛そうな顔をしないでほしい、吹雪君なら大丈夫だ」


吹雪「吹雪です」


提督(バイト)「う、うむ。吹雪君」


吹雪「吹雪です」


提督(バイト)「吹雪…」


吹雪「はい!」



ムスッとしたかと思えば、呼び捨てにすると笑顔になる。

 すまない、乙女心はさっぱりなんだ。

吹雪を近海域に送り出し、状況を把握するために危険ではあるが鎮守府を調査する。既に気づいてはいたがいたる所が傷んでいて、修復が最優先であることが分かる。

 食堂は使われている形跡はあるが、調理場のボロさは許容できるものではなかった。

 アルバイト提督としての責務を全うすべく、妖精達に復旧の指示を出す。と言っても言葉が分からないのでジェスチャーでなんとか伝えてみる。本当なら艦娘を通して伝えるのだが…。


妖精「…シズメ!」


提督(バイト)「え?!」


妖精「シズメ!」


提督(バイト)「あ、はい」


 いつの間にか、目の前の調理場のテーブルにピンク髪の小さな妖精が立っており、鋭い眼光でいきなり沈めと言ってきたからやられると思った。ただの返事だったのか、とある艦娘に似た妖精は既に始まっている調理場の復旧作業に参加した。ピンク髪の妖精を遠巻きに見ると鎮守府を出ていく時のあの瞬間、遠くで敬礼した時を思い出した。

 すぐに首を振り思い出す癖を律する。思い出に浸ってる場合ではないここは戦場以上に危険なところだからだ。

 思った以上のスピードで調理場が修復されていく。この速さなら数時間と思っていたのが数十分後には綺麗になると予測できた。


妖精達にその場を任せ、周囲を警戒しつつ食堂から移動する全体的に傷んだ鎮守府の完全な復旧はもう少し掛かるようだ。

 一階の窓際の廊下をやや中腰で歩いていく、窓の金具を確認していつでも脱出できるようにしておく、最悪突き破ってでも逃げられればよかろうなのだ。


提督(バイト)「ん?」


 何かとてつもない違和感を感じた。廊下の前後を確認する。――居ない。海側に面した窓の外を確認する。補給を下ろすための入り江とクレーンが見えるだけだ。それでも心拍数は上がっていくのを感じる。見られている感覚がどうしても感じられる。

 嫌な予感がする、そういった予感は大体当たるものだ。

 上か…額の汗が右頬を伝わるのを感じながら恐る恐る上を向く。


…居ない。



提督(バイト)「ふぅー、ん?う、うわぁあああああああああ」



油断していた。よくあることだ上に居ないなら下だろう…と、前後を見たところで足元を見ていないのだから『ソレ』に気づくことも出来ない。

小さな体をしゃがむことで更に小さくして下から自分を見上げていた。思わず大きな声を出して尻餅をついた。

同じ目線の高さになった事でゆっくりと近づいてくる。目は開いたままで瞬きもせず、しかもよつん這いで近づくものだから恐怖でしかない。



提督(バイト)「あ、朝潮さん?」



敬称の上に疑問形が何とか言えた一言だった。


朝潮「…」


 尻餅をついて後ずさりも出来ずに驚いている自分に、覆いかぶさるくらいに近づいた朝潮は何も言わず、ただ見つめていた。

 そんな彼女の目を見ると、酷く淀んでいた。何もかもを諦め、そして受け入れ、感情すべてを無くしてしまったかのような目はとても恐ろしく感じる。

何をしてしまったらこんな目をできるのだろうか?想像もできない。



朝潮「あなたは司令官ですか?」


提督(バイト)「ば、バイトです」


逃げたわけじゃない――、朝潮は少し首を傾げた。何を言ってるのかわからないと言った感じだ。

安心してほしい、自分もわからん。

 アルバイトで来てみてそうそう殺されそうになった鎮守府でなにかできるとは思ってはない。

 朝潮に何かあったとは察することは出来るが、察するだけだ。


朝潮「バイトとはなんですか?」


提督(バイト)「アルバイトだ、有期限雇用として雇われてここに来た」


朝潮「有期限雇用?」


この時、初めて朝潮が瞬きをした。


提督(バイト)「一定の成果が出なければ雇い止め、つまりクビだな」


朝潮「クビ?」


提督「アルバイトとクビって言葉の意味は?」


朝潮「聞いたことがありません」


提督(バイト)「そ、そうか…」


朝潮「…」


提督(バイト)「どうした?」


朝潮「いえ、司令官だったら何時ものように私に指導をして頂けるので」


指導と言われても、アルバイトと言って逃げ…否定したようなものでなんとなく言いづらい。



提督(バイト)「指導と言われても、どの様な指導だったのだ?」


朝潮「はい、司令官はいつも駄目な私を気にかけて下さり、廊下などですれ違うときは平手打ちを下さいます!」



平手打ち?平手打ちって…なんだ?知ってる単語でいいのか?いやいや、まさか違うだろ…それじゃあまるで変わってないじゃないか。

忌むべき昔の間違った軍隊式教育なんてのは。



提督(バイト)「すまないが、私は朝潮さんに指導することは出来ないと思う」


朝潮「…」


明らかに朝潮の目のハイライトが消えた。すべてが終わってしまったかのように。


提督(バイト)「か、勘違いしないでほしい。指導は出来なくても助言は出来る」


朝潮「…助言」


ボソリと朝潮がつぶやく。反応があるだけまだ希望はある。



提督(バイト)「ああ、そうだ。見たところ吹雪君同様、練度が低いように見える」


朝潮「確かに私は未熟者です」


一瞬、朝潮は目を伏せたが感情が無いような状態からこの反応は好ましく、思いつく方法を考える。


提督(バイト)「分かっているなら話が早い先ずは」


朝潮「はい!」



――入り江で朝潮と共に数分待っていると単艦で近海警備をしていた吹雪が帰ってきた。



吹雪「あれ?お迎えしてくれたんですか?」


提督(バイト)「おかえり、吹雪君」


吹雪「…」


吹雪がジト目になるのを見て慌てて吹雪と言い直した。


朝潮「…」


吹雪「え、朝潮ちゃん?」


自分の後ろに居た朝潮を見て吹雪は驚いたようだった。

驚くほどのことなのだろうか?と思いつつ聞いてみる。


提督(バイト)「驚くほどなのか?」


吹雪「え?んー、ど、どうでしょう?」



歯切れが悪いようだ。確かに司令官としてではなくバイトとして朝潮と接してしまったため、吹雪はその事を知らないだろうし、司令官として接していたと思っていたなら、『指導』で連れてきたと思ってるのかもしれない。



提督(バイト)「偶然、廊下で会っただけだ。すぐに入り江に来たから何もしていない」


吹雪「何もしていない?ですか…長門さんとは?」


提督(バイト)「あ、」



正直、朝潮の件が強烈過ぎて忘れていた。吹雪は再びジト目で見てくる。



吹雪「何をしていたんですか?」



吹雪の言葉に何処と無く棘がある気がする。というよりチクチクと目線も相まって責められているのは分かる。



提督(バイト)「食堂がぼろぼろだったから、妖精達にお願いして修繕工事していた」


朝潮「妖精が、協力してくれたのですか?」



 自分の言葉に、少し目を見開いて驚いたとも取れるような表情で朝潮が言葉を発した。自分も驚いて後ろを振り向く。



提督(バイト)「あ、ああ、この鎮守府に来てからも、そして来る前からも妖精に協力してもらっている」



と、感情が出てきた朝潮を見ていると背中をちょんちょんと突かれ、首だけで後ろを見た。

すると吹雪が右手を口に当てて、自分の耳元で小さな声で話しかけてくる。



吹雪「朝潮ちゃんに何もしてませんよね?」


提督(バイト)「ど、どういう意味かな?むしろ色々、怖かったんだが」



本当に怖かった。それだけは本心から出た言葉だ。吹雪は少しムスッとした顔になったが、すぐに朝潮を見て。



吹雪「朝潮ちゃん、一人で近海警備に行くの?」


朝潮「はい、この駆逐艦朝潮、出撃します!」



 キリッとした顔で敬礼した彼女に思わず答礼してしまう。と、吹雪も敬礼していた。吹雪の顔が本当に嬉しそうな笑顔だったのが気になったが、空気を読んで黙っておく。大人は空気を読むものなのだ。本当はなんて声かけたら良いか分からなかっただけだが。

 装備を整え、朝潮が出撃する。

 二三回深く深呼吸すると朝潮は先程の感情のない顔を忘れてしまったかのように、険しい表情で出撃していく。

あの顔は知っている。前の鎮守府に居た朝潮と同じ顔だ。ただ違うのは、あの子は帰ってくると膝の上に乗りたがり、周りの目を気にしつつ頭をなでてほしいと言うくらいだったか。他の艦娘がそれを見ると出撃するときの顔と一緒になったが、次の出撃で必ず勝利してくるので何も思わなかった。

 前任者を見つけたらどうしてくれようか…ハッ、自分は何を――。



吹雪「司令官?どうしました?」



一緒に朝潮の出撃を見ていた吹雪が驚いていた。



提督(バイト)「な、なにかな?」


吹雪「えーっと、よくわからないのですが、やっちゃってもいいかな?って顔でした」



その言葉に返答することは出来ない。頭を掻くふりして、笑ってごまかした。

 この鎮守府に染まってきたのだろうか?今はまだわからない。


――吹雪と一緒に鎮守府の廊下を歩きながら戦果報告を聞くと、はぐれた敵戦力と交戦して見事に倒してきたらしい。

 素直に褒めるといい笑顔ではいと答えた。娘が居ないのが悔やまれる。もし居たらこんな生活を送ってみたかった。



吹雪「司令官?」


提督(バイト)「どうした?」


吹雪「着きましたよ」


ほのぼのしてる場合ではなかった。着いたと言われて周囲を見ると入渠と看板が書かれていた。

 oh…着いちゃったな。汗が出てきた、足も震えてるかもしれない。


男は震えていた、入渠という文字にか、それともその先にいる『者』にか、ゴクリとつばを飲み込み歩こうとしたら。


吹雪「でも入居中って裸ですよね?入るんですか?」


提督(バイト)「…」



意を決して歩き出した提督がたった一言で硬直したのを見て吹雪は思う。なぜこの人が鎮守府に来たんだろう?と、悪い人ではないのはすぐに分かった。それでも信用できるかと言われれば否定する。

                  ・・・・   

とは言え、あの朝潮に暴力を振るわずに彼女自身の判断で出撃させた。それを見せられると思うことがある。

 切れ者か抜けてる人なのか今は分からない。でも、また裏切ることがあるなら今度こそ、と、吹雪は静かに、そして深く、決意した。

 目の奥に淀んだ何かを潜ませながら。


後書き

※1 海軍が駄目なら陸軍でも行けばいいとの皮肉。
※2 キラ付け(イキュウイジメ)
※3 かみじ しん
※4 ささは れんじ
※5 なんか光る 不思議。
※6 自分自身の豹変ぶりに脳が追いつかずショートした。


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1: SS好きの名無しさん 2020-04-02 22:49:48 ID: S:xlUzlr

激しく期待してます。
頑張ってください!

2: SS好きの名無しさん 2020-04-03 22:08:01 ID: S:V-pwI6

面白そうなタイトル。
かなり期待してます!


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1: SS好きの名無しさん 2020-08-06 14:26:09 ID: S:dEBb6F

面白い!続き楽しみに待ってます


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