2020-07-04 14:30:32 更新

概要

注意事項

エロ本よ

この物語は18禁です
この物語はフィクションです
実在の氏名、団体、あとなんやかんやとは一切合切関係がありません
また、すべてのエロい人達の為に理想と現実の区別は付けてくださいね
まぁ、現実なんてしょーもないものだけど一応ね





がたんごとん…


がたんごとん…


がたんごとん…



少女は電車に揺られていた


それは毎朝の繰り返し

朝起きては学校に行く、学生であれば当たり前で、面倒だと思うことはあっても

定まったルーチンワークに、それ以上の不満が挟まる隙間もなかった


慌てて駆け込んだ駅のホーム


通勤通学でごった返す人混みに何とか並べはしたものの

遅れた十数分は、いつもの列からは大分遠ざかってしまった


到着する電車


開いたドアから溢れ出す人


それが途切れたと思えば、入れ替わる空気の様に雪崩込む人々


流される体を何とか向こうへと向けるものの

小柄な少女の体では、人を押しのけるだけの力もなく、強引にそれをする度胸も彼女にはなかった


ベルが鳴る…


扉が閉まる直前に、誰もが体を電車の中へと押し込んでいく

まるで、乗り遅れたら人生が終わるような必死さだった

その流れに押し流されて、少女も扉の中へと押し込まれてしまっていた





失敗した


少女、相沢 ななの は人混みの中で嘆息する


別に遅刻をしたというわけじゃない

いつも通りに起きて、ご飯を食べて、朝の占いだってチェックもできたし、いつもの電車にも乗れている


たまたまだ…


家を出て数分、忘れ物に気づいて数分、慌てて戻って慌てて家を出る

せいぜい10分かそこらの誤差ではあったのに、駆け込んだホームは人でごった返していて

いつも並んでいるホームに辿り着く前に電車が到着し、移動を開始した人たちに流されて電車に押し込まれる


けれど…


こうなるのが嫌で、早めに家を出るようにしていた ななの にとっては、これはもう明らかな遅刻だった



動けない…


何とか自分の立ち位置は確保出来てはいるもののそれだけだ

比較的に空いている先頭車両に移動しようにも、人混みを押しのける勇気は ななのにはなかった

次の駅で降りて先頭に向かおうかとも思ったけれど、降りる駅までこの扉は開かない


がたんごとん…


がたんごとん…


揺れる電車に合わせて人混みも揺れている

当然、他人が意図しないでも自分にぶつかってくる体を嫌って、ななの はもっと奥へと扉に寄りかかった


僅かに出来た隙間に人心地を付いていると、せっかくの隙間に直ぐにも誰かの体が入り込んでくる


狭い、息苦しい…


それに…


周りはみんな男性だらけだった事がまた、ななの の気分を悪くしていた

恐怖症…ではないが、苦手ではあった

そうでなくても、知らない男の人に囲まれて気分が良くなる女の子なんていないだろう


結果的にそういう子たちは空いている先頭車両に集まって、無用なトラブルを嫌った大人たちとの棲み分けは出来ていた



周囲を見回す


同級生の一人でもいればまだ気分も紛れるかとも思った

けれど、周りはみんな自分より背の高い男の人ばかりで、たまに見かける制服も男の子のものばかり


「はぁ…」


仕方がないと諦めるより他はなく

後はもう、手すりを強く握りしめて、なるべく誰かと触れ合わないように体を縮こませるしかなかった


がたんごとん…


がたんごとん…


がたんごとん…


電車が揺れて、電車が止まる


扉が開き、捌けた人混みに多少の余裕も出来るが、それもまた直ぐに誰かの気配が埋め尽くし

扉がそれに蓋をすると、すぐにもまた次の駅へと向かい始める


馴れ…というよりは油断だった


人間、そういつまでも緊張はしていられない

これだけ人がいたって誰も私の事なんか気にもしないし、多少肌が触れ合おうが壁に当たったような反応しかしなかった


こんなものか…


このまま降りる駅まで、ちょっと不快な気分を我慢するだけ

明日からは気をつけようとか、今日の反省をしながら電車が到着するのを何の気もなくまっていた


また、電車が揺れた


また、誰かの肌が触れた


他人の肌の不快感に顔を顰めはしたものの、こんな場所じゃしょうがないと諦める


けれど…


揺れが収まり、また皆してマネキンみたいに佇んでいるのに


その…手の感触だけは無くならなかった


最初は掠めるだけだった

それぐらいならと耐えていると、次は太ももに感じる違和感

指でなぞられているみたいで、膝の裏辺りからスカートの手前まで、そっと線を引かれてしまう


痴漢…


頭を過ぎったのはその二文字だった

自分がと、考えないでもなかったし。それを嫌って、いつもは先頭車両を利用していた

しかし、いざ自分の身に起こってみれば、その不快感は想像よりも酷い


自分が性的に見られているのもそうだし

実際、それを目的に体を弄られるのはたまらなく気持ちが悪かった


痴漢への対応…


一応、学校でもマニュアル的にそんな話も聞かされた


例えば、相手の手を掴んで声を出すだとか…


簡単で、当たり前のこと

実際、クラスの子達も『私だったらぶん殴ってやるわ』とか『私だったら…』とか言って笑っているのも多かった

そういう私も話半分で、そもそも会わなければ良いじゃんと適当に聞き流していたのも事実

そもそも、会いそうな場所に、そんな格好でいくのが悪いと馬鹿にしている節もあったのだ


では…今の自分はどうだろう?


満員電車の中で、学生服の女の子が一人

折り悪く今は夏服で、軽めの制服では人目を隠すのには頼りない


じゃあ、痴漢に会いそうな場所で、こんな格好でいる私が馬鹿なのか

そんなの、そんな訳がない。する人が悪いんであって私が悪い訳なんかないのに


それでも、声なんか出なかった


体は震えるばっかりで、手すりを掴む手に力ばかりが入っていく


もしも声が出せない時は…


先生の教えに習うように、私は太ももに触れる誰かの手を、なけなしの勇気で振り払う

気づいていると相手に知らせることで、それ以上してこなくなる人も多いという言葉を信じて


「ちっ…」


けれど、見当違いの方角から聞こえる舌打ちに私は身を竦めるしかなかった


「ご、ごめんなさい…」


慌てて謝罪を口にした自分が、弱く思えてますます体が萎縮してしまう


誰? 誰なの?


横目で周りを確認する、恐る恐る振り返ってみる


けれど見つからない、検討もつかない


人混みの中から伸びてくる手は、その先を失くした様に思えてしまう


満員電車の中、扉の片隅で身動きも取れず、周りは人で埋め尽くされている

何処を見ても、似たようなスーツを着た男の人が立ち並び、まるでマネキンにでも囲まれているような気味の悪さ

頭上を流れるクーラの風が頭だけを冷やして、誰かや何かで埋まった足元は言いようのない熱気で淀んでいた


はぁ…と、誰かが漏らしたため息が私の肩口にかかる


そんな間近に知らない男の人が立っている


そう、明確に意識するともうダメだった


右からも、左からも、聞こえてくる誰かの息遣い

違うはずなのに、同じ様に見える誰かに囲まれる私


太ももをなぞってくる指先

荒い指先の感触が肌から伝わってくると、それが不快感となって背筋を震わせる

それを嫌って体を逃がすと、今度は別の方から手が伸びてくるみたいだった


きっと錯覚…だとは思う


けれど、逃げ場のない場所で、似たような男の人達に囲まれて


右からも左からも後ろからも下からも手が伸びてくる


誰かじゃない、皆に触られている

そんな自分を幻視すると、弱っていた心が潰れていく

悲鳴を上げるでもなく、か細い吐息が喉が流れ出た

命綱のように捕まった手摺に縋り付き、ひたすらに電車が駅に付くのを待ち続ける


指先が手の平へと広がっていく


私の抵抗が止むと、太ももを撫でていた彼らの手が大胆になってきた

叫ぶなんてもちろん出来なくて「やめて」と小さく呟いた所で、電車の騒音に流されていく

触れている手なら間違えないだろうと、撫でてくる手に指を伸ばすが、自分の手が掴まれそうになり慌てて引っ込める


逃げ場もない中で、唯一自由になっている手を掴まれたらと思うと

本当に何もできなくなりそうで、何も出来ない自由と引き換えに、私は自分の太ももを差し出していた


誰かの手の平が、私の太ももを撫でている


後ろから擦られながら、表の方へと回ってくる手の平

落とした視線の端に映る誰かの手、その先を振り返っても同じような背格好の誰かに阻まれる

緩く揉まれながら形を変える私の太もも。性的に触れてくる手の平が、男の人に対する恐怖を一層に増していく

縮こまる心臓が早鐘を打ち始め、湧き上がる不快感に体を震わせた

震える体を抑え込み、飲み込み続けた不快感がお腹の奥が濁らせ、電車の揺れにも吐き気を感じ始める


誰かの手の平が、私の太ももを撫でている


緩く揉んでいたその手は後ろに戻り、今度は内側へと滑り込んでくる

そうして、太ももの内側をまた緩く揉みながら、次第に、次第にと、スカートに近づいてくるのに気づく


「っ…」


ここが最後の抵抗とばかりに

空いた手の平で、スカートの端を強く握りしめた


些細で、僅かな、そして無駄な抵抗


スカートの片っぽを抑えた所で、誰かの手は反対側の太ももへと場所を変えただけ

どころか、私の些細な抵抗をも楽しんで、スカートの裾の手前で動きを止めていた


がたんごとん…


がたんごとん…


がたんごとん…


電車の揺れに負けないように、私は必死で手摺にしがみついていた

あと少しでも体が揺れたなら、誰かの手は確実にスカートの中へと入り込んでくる


それだけは嫌…そんなの我慢できない…これ以上は無理…


震える体を手摺に預けながら、祈るように私はギュッと目を閉じた

誰に祈るでもなく、今は時間こそが神様だと信じて


はやく、はやく、はやく、はやく…


祈りの言葉は私を焦らし、秒針以上に私の心臓を急かす


がったん…ごっとん…


きぃぃぃぃ…


幸い、この街の電車は正確だった


ベルの音、何処かで聞いたような音楽

扉が開き、我先にと溢れ出す人々に押されるまでもなく、私はホームに飛び出した


カシャリ…


まるで、何かを切ったような音

身近に溢れていて、普段は気にもしないのに、電車と人との雑音の中で、その音は私の足首を掴んでいた


振り返る…


けど、誰もいない


ちがう、誰かが分からない


みんな同じような格好をして、皆同じ場所を目指して歩き、みんなスマホを手にとっていた

慌てて電話をする誰か、何気なく時間を確認する誰か、夢中で画面を見ながら歩く誰か

みんなスーツに学生服、たまの私服が目立つほどに誰が誰だか分からない


立ち止まる私に、迷惑そうな視線が突き刺さる


やがて、人混みに負けた私は、流されるように その場から逃げるしか出来なかった





きーんこーん、かーんこーん…



「でさー、思うんだ。隣の車両に移ったら私モテモテなんじゃないかって」

「あははは…そう、かもね?」


気づけば学校だった


あんな事があっても、習慣は体を動かすものらしい

いつものように靴を履き替え「おはよう」の言葉に気のない返事を返しながらも席につく

カバンを開き、荷物を片付け、手持ち無沙汰になった頃になって、ようやく私は息を吐いていた


前の席で、椅子にもたれかかりながら友達が笑っている


彼氏が欲しいだの何だのと、いつもは適当に相槌を打っているような話題でも、今はあんまり男の人の話はしたくなかった


「そいや、ななの? 今日は電車で見なかったけど、違う電車乗ってたの?」

「え、と…」


違うと言おうとした口を閉じる

いつもの電車には乗っていたと、そんな事を言ったとして

男の人の中に混ざってどうだった? なんて事を聞かれるのが目に見えていた


別に彼女が悪いわけではないんだけど…


今そんな事を聞かれたら、声を上げてしまいそうで怖い


「うん。少し遅れちゃって…」

「そっか」


それが曖昧な答えでも、何気ない質問にそれ以上の疑問は返ってこなかった





そんな事があった後では、もう電車なんか乗れなかった

どころか、人混み自体を、それも逃げ場のない人混みに入るのが怖くて仕方がない


電車も、バスもダメとなると

いつもより早く起きた私は、家族にはダイエットだと言い訳をして歩いて学校に向かう

別に、歩いて歩けない距離じゃない、部活も何もしていなかったし

丁度いい運動だと自分に言い聞かせて、そんな生活もしばらくすれば慣れてくるものだった



ぴこん♪



朝、早めに家を出て学校までを歩いていると、カバンの中から聞き慣れた音が聞こえてくる

よくあるSNSの通知音で、友達の誰かからの連絡だろうと、手癖の様にカバンに手を伸ばし画面を覗き込む


足が止まった


思い出した嫌悪感に全身を舐められ、体の震えが止まらなくなる


短いメッセージと一緒に貼られていたのは一枚の写真だった


なに、べつに何の事はない

スカートの中を写した盗撮の写真

見たことがない訳じゃないし、そういう事があるのも知っている


そして、そのスカートの中も私は良く知っていた

だって、痴漢にあったあの日に履いていた自分の下着だったから



ガタンゴトン、ガタンゴトン…


それだけだ…ただそれだけ…


そう自分に言い聞かせ、何度頭を振っても拭えない不安感


ガタンゴトン、ガタンゴトン…


スカートの中が写っているだけ、下着に名前が書いている訳でもない

これで、これが、私だって誰に分かる訳じゃない


ガタンゴトン、ガタンゴトン…


でも、もし…


そう考えると震えは止まらなかった


スカートの柄で学校が分かるかもしれない、撮影した日付で電車が分かるかもしれない

そしたら、あんな男の人だらけの中、一人でいた私はどれだけ目立っていたことだろう

自分から、男の人の間に割り込む変態だとか思われたらどうしよう

痴漢もされて当然だと、後ろ指を刺されたら、友達に、学校に、親に、こんな写真が見つかったら



ガタンゴトン、ガタンゴトン…


気づけば、私は電車に揺られていた

早めに出たその足で、いつもの駅に向かい人目を避けて電車が来るのを待つ

早いとはいっても、それは学生にとってはってだけだったようで

先を急ぐ人の列に流されるように、私も電車の中に押し流されていた


偶然か、無意識か


混み合った車内の中、あの日と同じ場所に立っていた

それでも、学生の列がなかった分だけ車内は空いていて、息を付く場所があるだけでもマシに思う


ー今から来てー


写真に添えられたメッセージはそれだけだった

場所も時間の指定もない、それだけの言葉に怯えて電車に揺られている私

そんな弱気な自分が、酷く情けなく思えて自ずと視線は足元に落ちていく


このまま何事もなく学校に着けばいいのに


そんな願いが叶えられるはずもなく、後ろに立った誰かの気配が私の心に影を落とす


ぴこん♪


通知音に脅されて、スマホの画面を覗き込む


ーよく来てくれたねー

ーありがとうー

ー今日も可愛いねー


続けざまに入るメッセージに視線が画面の上を泳いでいた

何を言っているのかが分からない、私を怖がらせて何が楽しいの?

それでも、震える指で返信のボタンを押すと、あの写真に付いて問いかけるしかない


なるべく刺激しないように、消して欲しいとも付け加えて


ーもちろんー


快く返ってきた返事に、少しばかり気を軽くした自分を馬鹿だなと思うしかなかった


ーただし、学校に着くまで僕の言うことを「ななのちゃん」が聞いてくれたら、だけどー


指が固まる、視線が画面に釘付けになった

教えてもいない名前を知られていることに、私はもうどうしようもない所まで来ているのだと自覚する


「…はい」


頷いていた


泣きそうになりながら、震える指は短いメッセージを送り返す


ぴこん♪


またの通知音、添えられていたのは今日の私のスカートの中

短いメッセージにはただ一言、動かないで、それだけだった



太ももに、誰かの手が伸びてくる

女の子の手とは違う、太くて荒っぽい、あの日と同じ、カサついた指先の感触が私の肌をなぞっている


ただなぞる、ただ撫でる、それを続けるだけ


ずっとこうならまだ耐えられると、恐怖と嫌悪感に震える体を持ち直すけれど

私の反応が落ち着いてきたのを見計らったのか、時折り くすぐるような仕草が混ざってきた


「…っ」


不意打ちに揺れる体、漏れそうになる口を引き結びなんと声を抑え込む

膝の裏を弄られて力が抜ける、太ももの内側を撫でられると、なんとも言えない刺激に背中が震えてしまう

鳥肌が立ったような肌のざわめきを、それでも優しく撫でられているうちに、胸の内がもやもやと曇ってきた


手摺を握りしめ硬直する体

誰かに触られる恐怖に体を縛られ、心臓が潰されそうだった


それでも、時折りくる優しい刺激に体は反応してしまう


くすぐったい…


ただ それだけ、生理的な反応だったのかもしれない

心理的な緊張に対して贈られる肉体的な弛緩は、ほんの僅か、息抜きのような隙間でも体の疲れを逃してくれる


それが言い訳だった


緊張し続けるなんて出来るわけがなかった

これ以上相手に弱みは見せたくないけれど、体の疲れは逃したい

そんな曖昧な私の意思は、その刺激を好意的に受け止めてしまう


くすぐられる瞬間に息を吐いては吸い直す


これは生理的な反応だからと、聞かれもしない言い訳を頭の中に浮かべてしがみつく


くすぐられる瞬間が待ち遠しかった


息を吐く隙間が欲しい、早く私を許して欲しい、そんな風にも考えながら

吸っては吐いて、吸っては吐いて…深呼吸の様に繰り返される刺激に、私の体からは力が抜けていった


太ももを くすぐられる感覚が短くなっていく


それに合わせて私の呼吸も荒くなっていく


吸っては吐いてを繰り返し、呼吸でさえ相手に縛られているのにも気づかない


増えた呼吸に頭の中が白く曇っていく

力の抜けた体に足が震え、手摺を掴んで立っているのがやっとだった

くすぐられる度に跳ねる心臓。どきん、どきんと脈を打って、一緒になって震えるお腹にまで熱が籠もる


傍から見たらどうだったんだろう?


誰かに足を触られながら、息を荒げている女の子

くすぐられる度に体を震わせて、上がりそうになる声を必死に飲み込んでいる女の子

それも人前で、電車の中で、それでも誰も気づかない


雑誌で顔を隠すか、スマホで視線を塞ぐ、イヤホンで耳栓をして、いびき混じりの寝息を数える


人一人、女の子が一人、多少息を荒げた所で誰一人気にはしない

これだけ人がいるのに、まるで密室のような閉塞感


いっそ、そうなら良かった

誰もいない場所なら、声を上げて、必要以上の我慢もしないで、泣くことだって出来たのに

ここで声を上げてしまったら、誰かの視線が私に向いたりなんかしたら


カシャリ…


聞こえもしないその音が、私の心を縛っていた


「…いや」


他の誰かに撮られでもしたら、本当にどうしようもなくなってしまう


カシャリ…


「…やめて」


後少し、後少しだけ、我慢をしたら、もうおしまいなんだから


カシャリ…


「私を…みないで」



扉が開く


入れ替わった空気に人が増え始めると、私は更に奥へと追い込まれる

見上げた掲示板。あれだけ我慢したのに、電車はまだ一駅しか動いてはいなかった


逃げようか…


当然にように頭に浮かぶ願望

「おります」と大声をだして、駆け出せば間に合うと、きっと今なら逃げられる…


ぴこん♪


「…ぅ」


通知音に体が震える

恐る恐る覗き込む画面には、増えた私の写真が続けざまに貼られていた


「…ぁ」


何より私の心を折ったのは、自分の顔写真

うつむき加減の顔、弛緩した表情、染まった頬に、薄く開いた口

それがどんな表情に見えるのか、少なくとも鏡の向こうでさえも知らない自分の表情だった


ガタンゴトン、ガタンゴトン…


扉が閉まる、電車が再び揺れ始める


誰かの手の動きが再開される


太ももの内側を撫でられながら、手の平は上へと昇っていく

くすぐったさが広がっていくのが止められない、お腹が竦み、心臓が跳ねる

堪らず息を飲んで、遠のく刺激に息を吐かされていた


すっかり、体は誰かの言いなりだった


落ちた視線の先で形を変える太もも、震える体に視線が揺れてしまう


すぅっと、太ももの奥がクーラーの風に撫でられる


揺れるスカートの中に入り込んでくる誰かの手

誰にも見せたことが無いような場所を、誰かに触られる刺激は驚きも含んで私の体を震わせていた


ぴこん♪


また、画面に伝えられるメッセージ


ー触るねー


意味のない宣言

嫌だと言っても聞かないだろう言葉は命令にも等しい


どこを?


なんて疑問を浮かべるほど子供でもなかった


これだけ体を弄られて、何もされないなんて思うほど幼くもない

漠然と浮かぶ、この後の自分の姿に「まって…」と、思わず出しかけた声は、そこからの刺激に掻き消されていた


「あっ…!?」


一際大きく、この電車に乗って初めて出した声らしい声


慌てて口を塞ぎ、急いで辺りを見回す

けれど、みんな私の方には目もくれず、誰かが誰かの真似をして並んでいるだけだった


じっとりとした感触


下着越しに割れ目をなぞられ、鈍い痺れがお腹から伝って頭を濁らせる


それは…明確な快楽だった


くすぐられるだけの焦れったさとは違う、体の奥から震える刺激

どれだけ嫌だって思っても、もう私の体は誰かの言いなりで

くすぐられて、力が抜けていく体に重ねられる快楽は、押し止める暇もなく全身に伝わっていく


ゆっくり…ゆっくりと…


その快楽が体に馴染むまで、最初に太ももでそうされた様に、誰かの指が割れ目をなぞる

下着越しに感じる固い指先、それが異性のものだと認識して体は性の予感で震えだす


「…ゃっ、ゃっ…ぅっ」


ぐずるような声が止められない、手摺を掴む手から力が抜けていく


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


揺れる電車にバランスを崩し、後ろにいるであろう誰かに寄りかかってしまう


「あっ…ごめんなさい…っ」


また舌打ちをされるんだろうと身構えて、慌てて体を起こす

けれど、何もは言われなかった。つまり、後ろにいる人が犯人で…

いま声を上げれば、手を捕まえてしまえば、こんな状況からは逃げられると


「…ぁっ…」


ぞわり…


一瞬出かけた勇気は、お腹の奥から湧き上がってきた刺激に溶かされる

全身に広がる快楽に、だんだんと抗うことが難しくなってきて

逃げ出したい一心とケンカをしては、私を混乱へと追い込んでいった


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


扉が開く


空気と人が入れ替わる僅かな合間、私が逃げられる唯一の瞬間だった


「…え」


振り返ろうと足を動かし、擦れあった太ももが ぬるりと粘ついていた

そこに気づけば、下着も濡れていて、張り付いているみたいで気持ちが悪い

誰かの指が私の太ももをなぞり、その水っぽさを肌の上へと広がっていく


ぴこん♪


通知音に掴まれた視線がスマホに落ちる


ー前を見てー


言われるままに顔を上げると、ガラスの向こうには透けるように自分の姿が映っていた

見るからに上気した顔で、寄る辺なく誰かにもたれかかる自分の姿

不自然に膨らむスカートが不意にうごめくと、お腹の奥から熱い刺激が全身へと流てくる


「…っ」


歪む自分の表情に、心が潰れそうになる

どれだけ違うと言っても、今の私の状態は好き好んで痴漢を受け入れてしまっているんじゃないか


カシャリ…


音が聞こえた気がした


透けたガラスの向こうに映る自分

さらにその向こうには、電車を待ち、ホームに並ぶ人々

そして、その誰もがスマホを手に持っていた


「…ぃゃ」


そんな訳ない、そんな訳が無いと思いながらも、心は潰れていく


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


滑り込んでくる電車が、ガラスの向こうの私を轢き裂いていく

ホームの向こうが電車に隠れた代わりに、今度は電車に乗った誰かのスマホが私を捕らえていた


手摺を掴み直す私


そのまま体を引き寄せて、ガラスから隠れるように角へと縮こまる


その瞬間、背中越しに扉が閉まっていた



ガタンゴトン…ガタンゴトン…


再び動き出す電車


縮こまった私に誰かの影が覆いかぶさってくる


もう逃げ場なんてなかった


多少はあった人目さえも、影に隠されてしまえば誰かの動きはより明確に、私に快楽を植え付けるみたいだった


スカートが捲られる


自分の目の前に晒される下着の上に、誰かの手が被さってくる

指先沈み、薄い下着の布が伸びていく。出来た皺を伸ばすように、誰かの指が割れ目にそって上へ下へと動き出す


撫でられるだけでは得られなかった刺激


下着越しにでも、誰かの感触が私の中に入り込んだだけで、大げさに震える体が他人事の様に感じてしまう

気づけば、愛液が絞られるように外へと溢れていた。誰かの指を伝い、下着の隙間から滲み出す

扉の向こうの隙間風が、私の足を撫でると、太ももの内側から濡れた冷たさを感じる

その冷たさが糸を引き、膝の裏にまで雫を作っていた


いや…いや…


堪らず、膝をすり合わせる

快楽の残滓が自分の体を汚しているのに耐えられなかった

それなのに、愛液は後から後から流てくる、嫌がって膝を太ももをすり合わせても伸び広がっていくばっかり

どころか、ぬちゃぬちゃと音を立て始め、ついには膝を越えると伸ばした靴下にまで染みを作り始める


ぽた…ぽた…ぽた…


「ぁぁ…っ」


最悪だった


垂れてくる愛液だけでも嫌だったのに、誰かの指に感じさせられた私の体は

その指先にまで雫を作り、電車の床に染みを広げていた


ぽた…ぽた…ぽた…


なにも出来ない、耐えるにしても耐えられない

零れた涙が、愛液に混じって広がるのを見つめながら、膨れ上がっていく快楽に耐え続ける



割れ目から、愛液が滴り初めた頃


今度は制服の、白いブラウスの隙間から誰かの手が入り込んできた

やさしく、ゆっくりと、私のお腹を撫でる手の平。その刺激が、割れ目からの快楽と重なっていく


熱くなっていくお腹の奥、もやもやとした刺激は全身へと塗り拡げられるみたいで

やがてそれは、急かすように私の体を浮つかせる

熱っぽくなる視界、ぼやけていく頭の中は、自分が犯されていることへの認識さえも薄れさせていた


胸元へ伸びていく誰かの手


ブラジャーの隙間に入り込み、それを押しのけ、直接私の胸に触れていく

荒い手の平に胸を包まれる、下から持ち上げるように揉まれて、押し付けられるように撫でられた


短い裾が捲られて、晒された自分の横腹

胸に覆いかぶさる誰かの手の平が、ブラウスの中で蠢くのを見下ろすしか出来ない自分

いやらしく動く誰かの指に胸を弄ばれていると、胸の奥から割れ目とは違った快楽が広がってくるのに気づく


嫌だと思いながらも、発情させられていく自分の体が恨めしい


ブラジャーをずらされ、ブラウスの中で裸になっている私の胸

揉まれる度に形を変えて、その刺激が快感を引きずり出される


ちりちりと…


膨らんだ快楽が、急かすように先端に集まってきていた

乳首が固くなり始め、その先端が薄いブラウスの布を持ち上げ始める

それと同時に、胸を揉んでいた誰かの指は、固くなった乳首を弄り始めると

そこから今にも快楽が吹き出してきそうな感覚に背中が丸くなる


固くなった乳首を突かれて、摘まれて、胸の中へと沈められる

そのまま胸と一緒にこねくり回されて、背筋が震え上がり体から力が抜けていってしまう

震える体に、引っぱられるブラウス。空いた乳首の先端がブラウスの布と擦れて、それがまた私を急かしていった


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


収まっていく電車の揺れ、減速と同時に感じる浮遊感

雑音混じりのスピーカーから、次の駅を知らせる声が車内に響く

その音に紛れて、私は途切れ途切れの嬌声を吐き出させていた


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


お腹が熱い、もやもやとした熱に全身を浮かされる

乳首の先から飛び出しそうなほどに膨らんでいく快楽が、私の理性を削いでいく


「ぁっ…あっ…ぁひっ…!?」


艶を増した声が、口から飛び出しそうになる

もういっそ、声を上げられたらどんなにか…


見られることも忘れて、自分の痴態を晒せたら、どんなに楽になれるんだろう


ガタン、ゴトン…ガタン、ゴトン…


手摺に縋り付いて快楽に耐える私

気を抜けば声を上げそうになる中、電車の揺れが不意の刺激になって私の快楽を高めていく


電車に揺られ、ブレる視線に映る誰か

席に座ったまま頬杖を付き、耳に当てたイヤホンからは何かの曲が零れてきている


お願い、起きないで…


願うのそんなことばかり

早く終わってと、早く降りる駅についてと願うことも忘れて

今は、その場しのぎの安心しか見えなくなっていた


ぴこん♪


通知音に視線が落ちた

取りこぼしそうになるスマホを何とか握りしめ、画面を覗き込む


ーイカせてあげるね?ー


「ぇ、ぃゃ…」


それが何を意味するか、考える暇もなく


突然、大きくなる快楽の刺激

腰が揺れて、背筋が震え上がる


くちゃくちゃと、割れ目から響く水音が耳にまで飛び込むと、お腹に中に溜まっていた熱が出口を求めて渦を巻き始める

纏わりつく快楽が全身に広がっていく。乳首をより固く膨らませ、それが潰されただけで、力が抜けるような開放感に包まれた


絶頂の予感が止まらない


我慢が出来ない


鼻にかかった声を必死で飲み込む


ぴこん♪


「…ひぅっ…!?」


靄のかかっていく視界にスマホの画面が映る


表示されたていたのはカウントダウンだった


ぴこん♪ 


ぴこん♪


ぴこん♪


音が鳴る度に減っていく数字

それに合わせるように高まっていく快感に息が詰まりそうになる


ぴこん♪ ぴこん♪ ぴこん♪


0になったらイカされる


連なっているだけの数字を、絶頂に近づく体を裏付けているようだった

それは私の思い込み。たとえそうだとしても、それを信じさせれらた私には止められない

どころか0になる瞬間を待ちわびて、はやく…はやく…と、自分で自分を焚き付けてもいた


終わって欲しい、終わらせて欲しい…


解放されたい一心で、せめてと口から声が溢れないように、唇を噛み締めながら次の瞬間に目を閉じるしか出来なかった


がたん…ごとん…が、たん…ご…とん…




「◯◯駅、◯◯駅…お降りの方は…」





気づいたら、私は駅の事務所で事情を聞かれていた


隣には女性の駅員さんがいて、何故かしきりに私の心配をしている

なにより不思議だったのは、事情聴取をされていたのは私ではなく、隣りにいた男の子だった


それもそうか…


何も考えずに ぼーっとしている私に話を聞いても埒なんて開かないだろう

他に事情を知っている人がいるなら、そっちに聞いたほうが良いし私だってそうして欲しい


「…っ」


いっそ、目なんて覚めなければ良かったって思う

そしたらもう、恥ずかしい思いも、怖い思いも、全部なくして忘れられて


涙も流れない、声も出ない、身を捩れば快楽の残滓に からかわれる


あんな事をされたのに、あんな風にされたのに、それで感じてしまった自分が情けない

そうやって、どれだけ自分を否定したって、ふと思い出した あの瞬間は私の体を熱くしていた



大事にしないで欲しい、親にも誰にも知られたくないと


多分そんな風に答えたんだと思う


警察は、経過観察という現状維持の体裁をとって

何かあれば、家族や、適切な医療機関に相談するようにと念を押して返っていた


結局、私を犯していた誰かは、何処かの会社員だったようで

それ以上も、それ以下も、私には知るよしもなかった


「相沢…その、大丈夫か?」

「うん…ありがと…」


まるで生返事


自分を助けてくれた男の子に随分な対応だとは思うけど、いちいち相手にしている程の余裕は私にはなかった


彼に送られて家に帰る途中


その子がクラスメイトだと気づいたのが、ようやく駅を出た辺りで

場を和ませるためか、聞いてもないことを彼が喋り始めてからだった


名前は、そう…佐久間くん、佐久間 虎太郎くん


朝練があったとか、たまたま早めの電車に乗ってたとか


「助けるのが遅れてごめん…」


結局それが言いたかったのだろう

何も答えない私にそれ以上の会話は続かず

最後に悪くもないことを、謝ったきり佐久間くんも口を閉じてしまった


きっと、いい人なんだろうな


「送ってくれて、ありがとう…」


そのまま逃げるように家に返った私を、扉が閉まるまで見送っていた彼の顔を思い出していた


お母さんは?


おかえりなさいの声はなかった、買い物にでも言ってるのだろうか?

靴を揃える余裕もないまま、誰もいない家に上がると、体は勝手に自分の部屋に向かっていく

扉を開け、カバンを片付け、よろよろと脱ぎ散らかした制服と一緒に、また拙い足取りでお風呂場に向かっていた


目いっぱいにシャワーを出して、空っぽの湯船の中に体を沈める


ざー…っとそれっきり


風呂場の中に反響したその音が、私の耳を塞いで一人ぼっちにしてくれる

何も考えたくなかった、もうどうでもいいって投げ捨てたい

犯人は捕まったんだ、私には関係ないじゃない


終わったこと、終わった話…


自分の不注意が招いただけ、自業自得だと必死に言い聞かせているうちに

たまり始めたお湯は、私の唇を塞いでいた


ぶくぶく…ぶくぶく…


吐いたため息が泡になって崩れていく

いっそ、この胸に溜まったもやもやも、こんな風に崩れていけば楽なのに


ぶくぶく…ぶくぶく…


流した髪を浮かせたまま、私は湯船で丸くなる

お湯に抱かれ、湯船に浮かび、全身が温まってくると、多少心持ちも軽くなっていく


「あ…そっか…」


そこで初めて、私は彼に意識を向けたんだと思う


助けてもらったんだもんね…


同じ日に、男の人に襲われて、男の子に助けられる

そのままなら、男の人に対して恐怖以上の感情は抱けなくなってたかもしれないけど


いい人もいるんだな…


私の手を引いて歩いてくれた彼の事を思い返していた


「虎太郎くん…か…」


どれだけ思い返しても、それ以上の思い出はなかった

だってクラスメイトだもん、ただのクラスメイトで、それ以上でもそれ以下でもない

隣の席だってこともないし、グループ活動で一緒になったこともない

私にとってはクラスの男の子の一人ってだけで、覚えやすい名前がたまたま頭に残っていた程度


「お礼…しなきゃ…」


条件反射的には、口にしていた覚えはある

けれどそれは、私を慰めていた女の駅員さんにも言っていたし、警察のお姉さんにも言ったような気がする


ちゃんと言わなきゃいけないと思う


仕事でも、そんな義理もないのに、大人の人に向かっていった彼


「プレゼント…っているのかな? お菓子とか? 男の子って何を食べるんだろ?」


失礼ながら、ファーストフードでハンバーガーでも頬張らせて置けば

満足するんじゃないかと、一括に考えている自分が恥ずかしい


結局、返ってきたお母さんに

出しっぱなしをシャワーを聞き咎められるまで、私は湯船から動けないでいた





その寝苦しさは今朝の事件のせいで、夢見の悪さに目を覚ました私の体は汗ばんでいた

肌に張り付くパジャマの鬱陶しさと、乱れた自分の格好は折も悪く、夢の内容を思い出させる


知らない誰かに体を弄られる恐怖

自由にならない自分の体を恨んでも、感じさせられて「早く…」と求めてしまった事実は無くならない


アレは違う、あんなの私じゃない…


どれだけ首を振って否定しても、思い出した快楽の波に じわじわと体が浸っていく


自分で触っても ああはならなかった


少し胸がもやもやして、お腹がむずむずして、くすぐったいような恥ずかしいような

気持ちは良いんだけど、それも途中で満足して眠ってしまうような程度


けど、あの快感は、あの快楽は…


気持ちいいとかそういうんじゃなくて、もっと別の

まだ子供だと、自分でも思っていた体に、刻まれた女のそれ


目が覚めるほどの快感だった


体から力が抜けて、誰かに身を預けてしまいたくなる感覚

高まる快感に頭の中まで塗りつぶされて、全部投げ出したくなる


溺れていた、忘れていた、逃げられないことの言い訳を探していた


忘れよう、忘れよう、どれだけ思っても頭から離れない、体が覚えてしまっている

ついさっき今朝のこと、今日一日の朝の数時間が、今までの私の全部を崩していく


忘れられないなら、せめて別のことを考えよう


今日のこと、お母さんの事、出しっぱなしのシャワーを怒られたこと…


虎太郎くんのこと…


とくん…


心臓の音が熱くなった気がした



衣擦れの音がする


パジャマと布団が擦れる音、肌とパジャマが擦れる音


指先が、パジャマの向こうを擦る音


途端に、呼吸が熱くなっていく

湿った吐息が、段階を飛ばしながら粘ついてくるのが分かる


「佐久間…くん…虎太郎くん…ぁっ」


名字じゃない、名前を口にした時に一段と気恥ずかしさを感じていた

その気恥ずかしさが胸に広がると、むずむずとした感覚に一段と快感を押し上げられる


虎太郎くん…虎太郎くん…虎太郎くん…


忘れられないなら…別のことで埋め尽くしてしまいたい

ならせめて、少しでも自分に優しくしてくれた人のほうが良い


それで何が変わる訳でもなかった


大人になり始めた自分の体を強く自覚する程度

傷口を自分で広げて、塩を塗りたくるような行為であっても、傷口は少しでも綺麗な方が良い


パジャマの上から割れ目をなぞると、窪みの中に指先が沈んでいく

ムズムズと割れ目の奥から広がっていく快感を抱えるように体が丸まっていった

熱に浮かされて、高鳴る鼓動に急かされる

広がっていく快楽に遊ばれて体を動かす度に、パジャマにくすぐられた肌がもどかしい


ピリリとした感覚が胸を過った


覚えたての快楽に固くなった乳首がパジャマに焦れている

お腹から広がる快楽が、乳首の先から滲み出そうな錯覚

でも、もしそうなったらどれだけ気持ち良いかを想像すると、自ずと指は乳首へと向かっていた


パジャマの上からでも、その膨らみを探すのは簡単だった


胸を撫でると、手の平に感じる引っかかりと僅かな痺れ

そこを目指して指を伸ばせば、指先を押し返す乳首の感触


手の平を広げて胸を覆う


自分の小さな手には余るけど、誰かの手の平に包まれていた感触を重ねていた

それに虎太郎くんの手だと、指だと、勘違いをして、胸を揉み始めると、不思議と体から力が抜けていく

もっとして欲しい、胸を差し出すように伸びていく背中

彼の手の平で形を変える自分の胸を想像しながら、指先で乳首を弄るだけで体が震えだす


胸から、乳首から広がる快楽に、割れ目を弄る指が止まっていた


慌てて、そこを動かせば、今度は胸への刺激が弱くなっていく

ままならない、どうにもならない。割れ目も、おっぱいも、弄られて、どうにも出来なくて、どうでも良くなりたいのに

中途半端な快楽と、予定調和な刺激に体はムズがるばかりだった


それでも、弄り続けていると次第に快感は増していった


熱に浮かされ、息が荒くなり、頭が白くなる

自分が何をしているかもボヤケてきて、気持ちよさばっかりが体の中に溜まっていく


ぬるり…


指先に感じる湿り気に、自分の高まりを自覚する

より固くなった乳首を弄る度、上がりそうになる声を必死で押さえつけた


「ごめんなさい…ごめんなさい…」


意味もなく謝罪を繰り返す


自分が情けなかった


それでも、自分を慰めなきゃしょうがなかった


お母さんに謝る。こんな子供でごめんなさいって

自分にも謝る。自分の体なのに、汚してしまってごめんなさいって

虎太郎くんにも謝る。こんな想像してしまってごめんなさいって


でも、最後までして欲しいってお願いせずに居られない


体は勝手に動いていた


都合の良いことばかりを考えて、自分が被害者でいれば、どこまでも落ちていけた

体を弄り続ける指の動きが強くなる。膨れ上がる快感に耐えきれず、手近にあった布団を手繰り寄せる


虎太郎くんに抱かれている、抱きしめられている


太ももを閉じ、割れ目を布団に押し付ける。手繰り寄せた布団を抱きしめれば、膨らみ始めた自分の胸を布団に押し付けていた

もっと強くと布団を抱きしめ、ベッドに体を沈めていく

押せば返す、規則的なベッドの揺れでも、自分以外の刺激を受けて弾む体を止められない


「んっ…ぅっあっ、やっ…わた、わたし…っ!?」


溢れそうになる声を枕に埋めて押し込める


体を弄る手が止められない


抱き寄せた布団の上からでも乳首を探し当て、無理矢理にでも押しつぶす

閉じた太ももの間に手を滑り込ませると、その指先を求めて腰が吸い寄せられる


気持ちいい、気持ちがいい…


体が震える、頭が真っ白になる


自分で自分を慰める、こんな最低な行為でも、その背徳感に溺れていく自分に私は酔っていた


「ああっ…!?」


堪らず声が出た


抱きしめた布団が皺を深め、その快楽に体が震えがる

体から力が抜けていく、お腹の奥から広がる気持ちよさに息を吐き

潰れた胸に押し出された快楽が乳首の先から滲み出す


「こた…ろう…くん…はぁ…」


優しかった彼の手の平を思い出す

そんな彼の手を想像して、全身を浸す快楽に体を横たえた


ぼうっとする、呆けていた


荒い息が落ち着いてもまだ、私の体は快楽に浸っている


ぬるりと湿る指先を、閉じた太ももの間から引き抜く

火照っていた体から離れた指先に、ひんやりとした雫を感じ、薄明かりの中広げたそれは、自分の快楽の程を示していた


まだ、乳首の先が痺れている


割れ目の奥はむず痒いままだった


でも、体は動かない


ぐったりと力が入らない


満足? 


言われれば確かにそう


あの瞬間、頭が真っ白になって私は全部を忘れていた


「ぁぁ、こたろうくん…」


しがみついた妄想の名前を呼ぶ

それがズレた想いだったとしても、私が初めて男の子に向けた好意だった





「相沢」


翌朝、家を出ると声をかけられた

男の人の声に強ばる体。恐る恐る振り返ると、それが見知った顔である事に肩の力が抜けていった


「あ…虎太郎…くん?」


思わず口にした名前

その名前に掛かる昨夜の行為に、恥ずかしさが喉元までこみ上げてくる

けれど、私の羞恥とは別に、虎太郎くんもまた気恥ずかしそうに視線を彷徨わせていた


伺うような仕草はお互い様のようだ


どっちもどっち


顔を合わせた途端、気恥ずかしそうに目を背ける私達は、初恋のもどかしさを共有してたのかもしれない


「えっと…じゃあ、俺も…ななの、で良いか?」

「へ…?」


体の緊張が解けた代わりに、今度は頭が固まった

自分の名前が呼ばれた意味を考えて、出会い頭に口にした名前に思い当たると

昨夜の行為も忘れるほどに、頭の中は真っ白になってしまった


「え、いや…ちが…くて…その…」


否定はする。けれど、今更なような気がした

ここで改めて「佐久間くん」などと言い直して、変な感じになるのもいやだったし

彼がそれで良いのなら、わざわざ言い直す事の程でもないと思う


それに…


呼ばれた自分の名前が、こんなにも胸を打ったんだから

それを自分から失くしてしまうのも、少しもったいない


「ううん。いいよ、ななの…で。虎太郎くん…」

「お、おう…じゃあ、それで」


気恥ずかしい…のはお互い様か

けど、それも直に慣れるだろうし、こんな時間もこれっきりだと思えば、少しくらい浮かれても良い気がした


「とりあえず、行くか…」

「うん…」


彼に促されて歩き出す

2・3歩と足を進めるうちに、私を追い越しかけた彼の歩幅が隣で落ち着いていくのを感じる


横に並んだ虎太郎くんの顔を覗き見ていた

緊張とか警戒が半分、残りの興味が視線を上げさせる

ガッチリとした体、自分より頭ひとつも高い背格好に異性を感じると同時に

あの電車の中で、それが自分に向けられていたのを思い出す


「朝、早いんだね…」


苦し紛れの問いかけだった

たとえそれが、不快感から始まっていても

それが快感に変わり、あまつさえ彼に身代わりを求めて自分を慰めたのは変わらない

まして、その彼が隣で歩いていたら、緊張の鼓動が行為の高鳴りへと混ざっていきそうだった


「部活、あるからな…ななのだって、なんでこんな時間に?」

「私は…その、歩きだから」

「あ…いや、悪い…」

「ううん、大丈夫…」


やっぱりいい人なんだろうな、とは思う

だから、謝って欲しくはなかったって思うのは、きっと私の我儘で…

途切れた会話に横たわる沈黙に、躓きそうになりながらもなんとか次の一歩を踏み出した



「その…少し、時間ある?」


昨日のお礼、にしては安っぽいけれど

男の子の事なんて分からないし、彼のことはもっと分からない


となれば…


他に出来ることがあったら言って欲しいと伝えつつ

とりあえずという体で、遠慮する虎太郎くんを先導し、半ば無理やりファーストフードのお店に引きずり込んでいた

朝食待ちの列が捌け、レジの前に来る頃には彼も諦めたようで

ワンコインで頼める程度に注文をすると、最後にはお礼を言って受け取ってくれた


「なぁ…あんまり見られると、食べづらいって」

「え? あ、ごめん…なんとなく? えっと、美味しそうに食べるなって?」


本当に、それ以外の感想はなかった

私だって食べた事が無いわけじゃないし、だからって不味いとも取り分け美味しいとも思ってなかったけど


やっぱり男の子ってこういうの好きなんだな…


そんな事をとりとめもなく考えるくらいには

頬張ると、その表現がよく似合う食べっぷりに、奢ったかいもあったかと少し嬉しくもなっていた


「ななの も食べるか?」

「え、いいよ。それにそれ、私が奢ったやつ…」

「じゃあ、これは俺のおごりな?」

「それじゃ意味ないじゃん…」

「じゃ、また奢ってくれ」

「なにそれ…」


笑顔と共に差し出されたポテトの一つを仕方もなく口に加えさせられた私は、不満そうに唇を尖らせているみたいでもあった



「あんた達付き合ってるの?」


教室に入って朝一番。友達にそう言われるのも不思議はなかった

結局、虎太郎くんは電車に乗らずに最後まで私と一緒に歩いていたから


その気遣いが嬉しくなかった訳じゃない

学校までの距離は一人で歩くには長すぎて、誰かと歩いた分だけ少し短くも感じられた

ただ、学校に近づくに連れ、増えていく制服姿に、並んで歩いている私達はどう見えたのか


自分でもそう思わなかった訳じゃない


彼の優しさに、私が浮かれてるだけって自制はしてるつもりだったけど

他人からそう言われると、やっぱりかと…茶化されてしまうのは覚悟しないといけないみたいだった



それから毎朝、虎太郎くんは私に付き合って学校に行ってくれた

寄り道に、朝食を奢ったり奢られたりしているうちに、その時間は高校生らしく昼食に変わっていって

「付き合ってる」と言われても、否定もできない状態になっていた


別に、そんなんじゃ…


冷やかしには、そう答えていたけれど

実際だって、告白もしてないしされていないのだから

私の心情がどうだったとしても、結果的には異性の友達同士って部分で足踏みしているだけだと思う


それに、あんな事があったあとだもん…

虎太郎くんだって、私に気を使っているだけで…


こんな時間はそんな長くは続かない

この初恋は、きっと もやもやしたまま終わるんだろうって、遠巻きに今の自分を眺めている私もいた



そんな日が続いたある日


「部活の大会があってさ、良かったら来てくれないか?」

「うん…分かった…頑張ってね」


なんか、そんな感じの言葉を返した気はする

少なくとも、行くと、約束だけはしたのは覚えている


これでも、まだ付き合っていないと言える自分の図々しさに呆れないでもない

きっと、大会の後に彼が私じゃない誰かに告白でもしたら泣いてしまう自信はある


ちょうどいい機会なのかもしれない


たぶん虎太郎くんもそうなんじゃなかって、漠然とした共感に感じていた

大会が終わったら、ちゃんと告白しよう。そうしたら、少しだけ前を向けるかもしれないって





早い話が遅刻だ


弁当を作っていって上げようかな? とか、何を着ていけば良いんだろうとか?

押し付けがましくはないか? とか、勘違いして気合い入れてるみたいで変じゃないかだとか?


経験の無さは時間を奪い、気づけば差し迫った時刻になっている


弁当は諦め、着の身着のまま、学校の大会だという体を信じて制服を着込んだ私は家を飛び出す

場所は学校の体育館。いつも歩いていっている場所なだけに、もう間に合わないことは肌に感じていた


開会式は過ぎるだろうし、試合だって始まっちゃう


せっかくの大会。私のせいで彼に変な気を持たせたくはないし

できれば、試合の前にでも「頑張って」と声を掛けるくらいはしたかった



ガタンゴトン…ガタンゴトン…


走り出した電車に私は揺られていた

休日の朝だ人こそは並んでいても、満員という程でもない

ちらちら見かける制服姿。大会に参加する人たちの列に紛れていれば多少の安心感も生まれていた


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


景色が流ていく

いつも歩いている道のりが過ぎ去り、こんなにも遠くなっていた


やっぱり便利だな…


とは思いながらも、流石にまた満員電車に乗れるほどの勇気は出ない


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


スマホを手に取り、時間を確認する

この電車なら試合前には到着するだろうと、胸を撫で下ろした時だった


ぴこん♪


SNSの通知が鳴る


虎太郎くんかなと思い、もうすぐ着くと返信しようとして画面を開く


「…っ!?」


スマホの画面を隠すように、私は慌てて体を丸めていた


うそ、なんで…


頭の中は分からない事だらけで、力が抜けていく体はスマホを取り落しそうになる


画面に映っていたのは自分の写真

それも、あの時の下着の写真でも、私の背中越しに撮れるものでもない

あの人混みの中、まったく別の方向から写されたものだった


誰かの手に体を弄られながら、泣きそうになる私の姿

崩れ落ちそうになる体を、震えながら必死に支えている私の姿

人混みの中、人前で、今にも達しそうになっている自分の姿が鮮明に写し取らている


ホームの向こうから、ガラスの向こうから、人混みの隙間から


捲られたスカートから覗くショーツ、ズレた制服から覗く胸元

汗で滲んだ肌が透けて見え、ブラジャーの線が浮き上がって見えている


その写真たちは、決して一人で取れるものじゃなかった


何人いるかも分からない、もしかしたら乗客全員がとかバカなことも考えてしまう


写真の下、通知と共に添えられたメッセージに私は絶望する


乗らなければ良かった


後悔に心が潰れていくのを感じる


次の駅で降りようとか、警察に相談しようとか、そんな考えも浮かばない

ただ、嫌だと、強い否定が私の選択肢を塞いでいく


メッセージ欄に浮かぶ文字列

ここ最近、何度もやり取りした履歴に並ぶ文字は、虎太郎くんのアドレスだった

なぜか知られていた彼のアドレス

ここで私が逃げたら、この写真が彼の元に届くのが容易に想像ができてしまう


ううん、彼だけじゃない


友達にも、親にも、まして知らない誰かに、私の痴態が晒される恐怖には耐えられなかった



ガタンゴトン…ガタンゴトン…


スマホを閉じ、揺れる電車の中、重めの扉を開けて私は車両を移動する

指定されたのは、最後尾の車両だった


1つ2つと扉を重い扉を開けて、揺れる電車に足を取られながら奥へと進んでいく


その途中、もしかしたら犯人が見ているんじゃないかと辺りを伺うもそれらしい姿はない

平日と違って、制服やスーツよりも ざっくばらんと纏まりのない私服姿の目立つ車内

そんな中で怪しい人を探してみても、誰もが怪しく見えるし、そうでないとも思えてしまう


ただ一つ、変わらないのは


誰も彼も他人には無関心なこと

相も変わらず、スマホや雑誌、居眠りに、誰かの視界には誰も映ってはいないみたいだった



ガタンゴトン…ガタンゴトン…


最後の扉を開けて最後尾の車両にたどり着く


そこは、閑散としていた


それもそうだ

ホームから一番遠い車両なんて、満員電車ならいざ知らず

空いている休日の朝になんて誰もは使わない


ブラインドで遮られる車掌室

空席の中、一人二人と見かける人も、イヤホンとスマホ、いびきと居眠りで目と耳が塞がっている


寝ている誰かに気付かれないように、スマホで顔を隠す誰かに見られないように

私は車内を移動していた。最後尾の最奥、人の少ない車内で一番人から遠い所に立つと

震える体を支えるように、ぶら下がった吊り革に手を伸ばしていた


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


電車が揺れて、電車が止まる


開いた扉からは空気が逃げていき、そのまま何もなかったように扉が閉まっていく

再び動き出した電車に感じる違和感。何も起きないことへの疑心が膨らんでいく


ただの悪戯だったんだろうか?


やっぱりこんな、誰に見られるかも分からない所で痴漢だなんて

そんな都合のいい考えも、満員電車でされたことを思えば心許ない

それならもっと、私が大人しく言うことを聞くのかを何処かで見ていると考えるのが自然だった


ぴこん♪


不用意に鳴るSNSの通知

それに驚いた心臓が背筋を伸ばし、震える指が画面に灯りをつける


こんにちは


そんな、何気ないメッセージに私は凍りついていた

不意に現れた人の気配。顔を上げると、ガラスに映る私の後ろに誰かが立っているのが分かる

振り返ろうとした所に、誰かの手が置かれて動きを遮られる

そのまま肩越しに掛かる吐息と共に「そのまま」と声がした


「もう、やめて…ください…」


初めて口にした抵抗の言葉、精一杯の小さな声

これからの虎太郎くんとの事を思えば、これ以上こんな事をされる訳にもいかない

彼に守られるばっかりじゃ、自分の事は自分でしないと…


吊り革を掴む手に力が籠もる


「警察…呼びますよ…」


相手に見えるようにスマホを持ち直し、110の番号と通話のボタンに指をかけて見せた

同時に気付いたのは、真っ赤になったバッテリーの残量と、もう数%の文字

指が震える、脅しを掛けたつもりが、急に仕掛けられたタイムリミットに体が固まってしまう


なんでと考えれば、昨日の自分が充電し損ねただけで

いつも無意識でやっているような動作も、今日の日を思えばおざなりになっていたと責める訳にもいかなくなる


「SNSって結構バッテリー使うよね…」


誰かの声が耳に掛かる


葛藤はもちろんある、けれどもう形振り構っている時間もなかった


ここで警察を呼んだら きっと試合開始には間に合わない

それどころか、大会にだって行けないかもしれない


だけど…だけど…だけど…


迷う間に時間は過ぎる

見る見ると減っていく数字に、急いた心は自棄を引き起こして指を動かす


ぴこん♪


SNSの通知音


聞き慣れた音と共にスマホの画面が切り替わり、見慣れたメッセージ欄へと飛ばされる

折り悪く、伸びた指がボタンを掠め、未読から既読へと、メッセージ欄が切り替わっていた


発信者の名前、虎太郎くんの名前が目に焼き付く


ぴこん♪


既読に変わって少し、また通知音が鳴る

メッセージの受信中、見る見るとバッテリーの残量が減っていく


3…2…1…


画面が暗転する


切れかけだったバッテリーは、その操作を最後に電源を落とした

慌てて電源を入れ直すけど、申し訳に表示された画面には電池のアイコンが点滅し、すぐにもまた暗くなってしまう


「もう、良いかな?」

「あ、あぁ…」


絶望、とか言うんだろうか?

もう何も考えられなくなっていた。ただ、これから、自分の身に降りかかる事から目を背けるのが精一杯で

その恐怖に身をすくめて、早く時間が過ぎて欲しいと目を瞑る



誰かの手が私の体を弄っている

吊り革に伸ばした手、無謀になった脇腹に手が触れて、制服の上からくすぐられる


くすぐったい…


生理的な反応に怯む体が身を捩らせる

それに構うことなく誰かの指は脇の下へと伸びると、さっきよりも強い刺激に体が勝手にはねてしまう


せめての抵抗は、人形みたいに、何も考えないでいること…


唇を噛み、吊り革を掴む手に力を込めて瞼を閉じていた

けれど、体を這い回る誰かの指先が肌を泡立たせ、意識しないようにと意識する程に、その感触を追ってしまう


脇の下をくすぐられている


声が漏れそうになる

くすぐったさに負けた体はどうしても傾いて、どれだけまっすぐ立とうとしても体が引きつって仕方がない


ふっ…


誰かの吐息が耳に掛かる

脇の下に、脇腹に、傾いていた意識の反対側。全くの不意打ちに背筋が伸び


「あっ…!?」


押し出された空気が、堪らず声の形になって飛び出てしまう

慌てて周りに視線を向ける。そうして、誰にも気づかれていないことに安堵をして

それでも、気づいてくれた誰かが助けてくれる事を期待している自分がいた


そんな事、そんな訳あるはずもなく


甘い私の期待は、スカートの下から感じる刺激とないまぜになって私の中へと溶けていく


傾いた私の意識は、目を閉じながらも誰かの指先を追いかける

脇腹のくすぐったさ、脇の下から感じる刺激に息を吐き、徐々に呼吸が乱れ初めていた


また、同じ、あの時と同じようにされていく…


強制的に乱された呼吸が空気を求めて口を開く

鼻からだけじゃ物足りず、噛み締めていた唇を離してまで私の口を開かせる


感じてない、何も感じてなんかない…


どれだけ自分に言い聞かせても、体からくるくすぐったさは全身に広がって

呼吸をしようと緩んだ体は逆に息を吐き出してしまっていた


自分の体を好きにされる恐怖


呼吸でさえも相手に握られて、私の心とは裏腹に体は勝手に折れていく

息苦しい、空気が欲しい、その許可をだしてくれる誰か、その刺激をくれる指先

息苦しさに耐えかねて、やっと息を吸わせてもらえて、安心する、胸が一杯になる


頭が、考えるのをやめていく…



太ももをなぞる指先の、その行き先を理解していながら、私は抵抗できなかった


ただ、掴んだ吊り革に力を込め直しただけ

その刺激に耐えるようにしながらも、実際は消極的に受け入れていただけだった


脇腹を撫でられる


くすぐったさに息が詰まる


上げたくても上げられない声に、息苦しさは増していき

逃げ場を探して敏感になった肌は、指先がスカートの中に潜り込んでくるのを見つめていた


太ももの裏側に、その付け根に、下着の上を辿って…


「はぁ…はぁ…ああっ…」


やっと許してもらえた

大きく息を吸うと同時に、力の抜けていく体

そうして、無防備になった体に入り込んできたのは割れ目から広がる刺激だった


むず痒いようなもどかしさ


くすぐったいのとも違う息苦しさ


そんな刺激がお腹の奥に溜まっていくと、体が一段と熱くなっていく



スカートの中、下着の上、私の割れ目を探るように動く誰かの指先


やがて、くぼんだそこへと指が沈み込み、押し付けられた下着から感じる湿り気に快感の予感を感じていた

ありあわせの抵抗に太ももが閉じる。零れないように、溢れないようにとどれだけ力を込めても

力の入ったお腹は、その奥から私の愛液を押し出してしまう


愛液が、溢れてくるのが分かる


割れ目の中、膣の向こうから、その壁を伝って

汗が肌を辿るような感覚が、涙が溢れそうな瞬間が、止めどもなく私の割れ目の外へと向かっていた


誰かの指先が下着に沈み込む


押し込まれ指に、押し出された愛液が滲み、下着に広がっていく


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


機械的な電車の音に、くちゅくちゅと、生々しい水音が混ざり始めていた

それが、自分のスカートの中から聞こえてくる事に気付くと、堪らず顔が熱くなる


お願い、お願いと…


誰も気づかないで欲しいと、頭はそればっかりを考えて、抵抗をするのを忘れていく



「我慢してね?」


その言葉が何を意味するものだったのか

私の中から零れてくる愛液と、疼き始めた快感に耐えるばっかりだった私は気づかなかった


「え、や…、うそ…?」


あまりの感触に目を丸くする

快感に流されかけていた体は叩き起こされて、直ぐにもその刺激から逃げようと強張っていた

薄い快楽の刺激に散漫になっていた意識が割れ目に集まっていく


ずらされた下着、愛液で濡れた肌が感じる冷たさと、それを温める熱い刺激


指先よりも太くて、それよりも熱い肉の棒


それが男性の、男の人のおちんちんだと理解して


「やっ…んんっぅぅ…!?」


上げそうになった鳴き声は誰かの手で塞がれた


いやっ、いやっ…


どれだけそう言っても、口ごもるばかりで出ない声

もがく口の中に誰かの指先が入り込み、舌を抑え込まれると何も言えなくなってしまう

指を退かそうと動く舌先に、粘ついた液体が垂れてきた

その手が、さっきまで何処にあったのかを想像して、その液体が自分の愛液だと自覚する


味なんて分からない


けれど、誰かの手の平を濡らすほどに

口の中に溜まるほどに感じて、溢れさせていた自分が信じられなかった


自分が自分じゃないみたい、私と自分がずれていく


溜まった愛液を吐き出そうとする私

涎と愛液が混ざって口の周りをベタベタと汚してしまう


それでも…


たとえ、自分の口の周りにベタつくそれが気持ち悪くても、飲み込んでしまうのだけは嫌だった

そんな事をしたら、こんな事をされて感じているのを認めてしまうみたいで

触られるだけでも嫌なのに、受け入れてしまっているのが気持ち悪くて


涙が溢れてくる…


どれだけ否定しても、勝手に感じてしまう自分の体が気持ち悪い

もうこんな事は終わりで、彼と一緒になれたらって、そう思いかけていたのに


誰かの指先が私の鼻を捕まえる

辛うじて呼吸を続けていた所を塞がれると、息苦しさに耐えかねて口が勝手に開いてしまう


くちゅ…くちゅ…くちゅ…


スカートの中から聞こえていた水音が、今度は口の周りから聞こえてくる

自分の溢した愛液が、口の中に流てくるのを止められない


呼吸を続けようと舌を動かし、溜まった愛液をかき分ける

誰かの指先はそんな私の邪魔をして、異物に反応した体は涎の量を増していった


涎と愛液が混ざり合い、口の中が溺れていく


息を吸う度に喉に落ちていく愛液の雫。飲み込まないように、吐き出そうとして、それも手で塞がれて

ついには一杯になった愛液と涎が息を詰まらせていた


「んっ…ぅぅ…」


苦しい…飲み込みたい…飲み込んだら楽になれるのに…

刻々とましていく息苦しさ。回りきらない空気に頭の中が濁っていく


「んく…ぅっ」


最初は少しのつもりだった、少しだけでも隙間ができればと飲み込んだ愛液

けれど、それが呼び水となって粘ついた愛液が喉奥へと落ちていく


「んっ…んっ…んんくぅっ…!?」


吐き出そうと喉を鳴らす

愛液はドロドロと喉を伝って落ちていく

気持ち悪い、吐き出したい、思えば思うほどに、体の中に落ちていく愛液を止められない


ごっくん…


一際、大きく動いた喉、一緒になって流れる涙

愛液の感触がお腹の中に溜まり、崩れたような熱が広がっていく



視線が落ちる


もう、立っているのか、吊り革にぶら下がっているのかも分からない

私を覆う誰かの影。僅かな抵抗と、丸まった体は誰かの体の隙間に埋まっている

捲り上げられたスカート、ずらされた下着の感触

電車の中を吹き抜ける雑な冷房が、火照った肌を撫でていく


割れ目の入り口が押し広げられていた


最初に大きく広がって、その先端を押し込むように続く何か

初めて挿入される異物の感覚。痛いとも苦しいとも付かない気持ちの悪さ


けれど…


肉棒を招く様に濡れ始める割れ目と

肉棒の刺激に熱を増すお腹の奥が、私に快楽の予感を感じさせている


肉棒の先端が動きを止めた


ようやく終わったのかと思えば

まだ余裕のある肉棒の感触に、それが自分の処女膜だと気づかされる


「ぃゃ…」


言えたのはそれだけ、それがどれだけ無駄なことだと分かっていても

私は違うんだって、自分に言い聞かせる以外に出来ることもない



ガタンゴトン…ガタンゴトン…



揺れる電車に合わせて、私の中で肉棒が擦れていく

処女膜を破るわけでもない、ただ僅かに引っ張られる感触を残し、誰かの肉棒は電車の動きに合わせて揺れていた


電車が停まり、扉が開く…


まばらな乗客達が入れ替わり、思い思いに席を下ろしていく中、私の心臓は早鐘を打っていた


誰も降りないで、誰も乗ってこないで、私に気づかないで…



ガタンゴトン…ガタンゴトン…



扉が閉まり、再び動き出した電車に私は安心してしまう

身動きも出来ず、声も出せず、割れ目の中に肉棒を許していてまで、私は心底胸を撫で下ろしていた


揺れ始める電車に合わせて、割れ目の中で擦れる肉棒


温い刺激


何もされない事に感じる不安と言いようのない焦れったさ

快感にも近いその熱は、お腹の奥から湧き出して私の膣をざわつかせる


肉棒に対する嫌悪感が、早く終わって欲しいと焦燥感に塗り替わっていく


逃れたい一心で、現実逃避のように快感を受け入れていく自分の体




言ってしまいそうだった


早くしてと…どうして何もしないのかと


置かれている立場も忘れて、まるで、恋人のように求めてしまいそうになっていた



ずるり…


押し込まれる息苦しさの割に、引き抜かれる刺激は切なく、空っぽになった割れ目の中が寂しいとも感じる

ゆっくりと、肉棒の太い所で割れ目の中をなぞられながら、その刺激に背筋を震わせる私

痺れるような感覚。肉棒と一緒に体の中から力が抜けていくと、自分の中が空っぽになっていくみたいだった


くちゅり…


空っぽになった私の中に、空っぽになった割れ目の中に、肉棒が入り込んでくる

ゆっくり、ゆっくりと、肉棒の形に広がる私の割れ目、満たされていく私の心と身体

処女膜が肉棒に引っ張られ、身構えると同時に引き抜かれていく肉棒


緊張と開放…


息をするように繰り返される刺激に慣れていく私の体

電車にゆすられ、肉棒に擦られて、割れ目の中に感じる刺激は 刻々と大きくなっていた

お腹の中に溜まる熱が私を急かし始め、溢れた愛液が割れ目の隙間から溢れていく


だんだんと、早くなっていく肉棒の動き


一定の刺激を刻まれ、渦を巻くように私の中で膨れ上がっていく快感

熱くなっていくお腹の奥は、それでも単調な刺激に慣れ始め、次第にもどかしく感じてくる


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


揺れる電車が繋がる私達を揺らして、肉棒が予想外の方へと突き進む


「っ…!?」


大きく引っ張られる処女膜に感じる僅かな痛み

それでも、予想外の刺激を快楽と受け止めて私の体は快感を増していた


意識が沈んでいく、お腹の奥へと飲み込まれていく


割れ目の中で蠢く誰かの肉棒


嫌だと思いながらも、感じている自分の体


お腹の奥で大きくなるもどかしさ、くすぶった快楽に全身を舐め回されているみたいで焦れったい



もっと強い快楽を、絶頂の達する刺激を求めて、想像してしまう


あの日に、満員電車で感じた感覚

あの夜に、自分を慰めて達した快感


体が求めていた


それが誰かの肉棒であっても、高まった快感はこのままではいられない


このまま虎太郎くんに合うなんで出来なかった


せめて一度でも、ならこのまま、イッてしまわないと

彼の顔を見た途端に、あの夜のことを思い出してしまいそうだった



誰かの手が、私の体を弄り始めていた


割れ目の中に肉棒を受け止めたまま、高まりきった快感を塗り拡げるように肌の上を撫でられる

制服の隙間からお腹を撫でられ、その手は胸へと伸びていく

すでに固くなっていた私の乳首が下着を持ち上げている

そのまま手の平に包まれ、胸を揉まれると、下着と擦れた乳首からむず痒いような快感が広がっていた


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


雑なスピーカーの音が次の駅を伝えてくる

近づいてくる時間、学校の最寄駅、私が降りる駅、もう少しも時間がない中、私の体は焦ったように快感を高め始めていた


「早く…早く終わって…ください…」


イカせて下さい


そういうのにも等しいような懇願だった


もとより人の多い最寄り駅。いくら休日の朝とは言え、誰の目につかない訳がない

まして、部活の大会で増えた需要は向こうの車両にも人を増やしている


人混みを嫌った誰かがここに来るかもしれない、次の駅にでも乗り込んでくるかもしれない


見られる、見られたら、警察を呼ばれて…


私が犯されて、感じているのが皆に知られて…


イケないまま、もどかしいまま、放り出されるなんて…



下着の上から乳首を摘まれる

それだけで、私の頭の中は真っ白になっていた

絶頂にも等しい快感、力が抜けていく私の体


震える太ももの隙間から滴り落ちる愛液

吊り革にぶら下がり、無謀になった脇の下から、入り込んできた誰かの手が私の胸を揉みしだく

崩れた姿勢は、いつの間にか折れ曲がり腰を誰かに差し出しているみたいだった


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


揺れる電車に刺激され、不規則になった肉棒の動きが乱暴になっていく

ゆっくりと、処女膜に気を使っていたのが程遠く、次の瞬間にでも私の初めてを犯してしまいそうだった


けれど…


それが気持ちいい


乱暴にされて、高まり続ける快感

処女膜の向こう側で疼き始める私の子宮

そこを肉棒で刺激されたらイッてしまう、そんな予感が私の体を震わせる


もうひと目なんか気にしてなかった


もしかしたら声も出てかもしれない


誰かの手の中で胸が潰されて、下着にこすりつけられた乳首が快感で震え上がる

力の抜けた体が電車に揺られ、誰かの背中にもたれ掛かった

不意に、真下から肉棒で突き上げられる。お腹の奥に、鈍い痛みが広がっていく


焼け付くような痛み


さっきよりも深くにまで入り込んでくる肉棒


突き上げられた子宮が、声を上げるように膨れ上がる快感


失っていた処女膜にも気づかずに、私は私を犯す快楽に耐えるのに必死だった


もう何をされても感じる自分の体が分からない

服が擦れ、狂ったような冷房の風に撫でられるだけでも快感が増していく


非日常の快楽に包まれた私

絶頂の瞬間を夢見た私は、抵抗するのも忘れて誰かの肉棒を受け入れている



肉棒に突き上げられる子宮


お腹の奥に感じる痺れが快感に変わり全身へと流れ込む

真っ白になる頭の中。お腹の奥から広がる熱がさらに私の感度を高めると、全身で快感が弾けたみたいだった


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


脈動する肉棒と、それに合わせて震える私の体

射精を繰り返しながら割れ目の中を擦られ続け、絶頂に達した体になんども快楽の爪痕を刻みつけられた

誰かの手が私を強く抱きしめると、肉棒がより深くへ沈み込む


最後に大きく震えた肉棒


お腹の奥に広がった熱


精液の感触を感じて、女の体が私の意思とは勝手に喜んでいた






ガタンゴトン…ガタンゴトン…


あなたは電車に乗っている

満員電車に揺られていた


理由は別に、なんでもいいしどうでもいい

仕事か、学校か、そうしなければ行けない用事とか


ただ一つ


今回に限って言えば、ここ最近を考えるなら

そんな満員電車の中でも、ちょっとした楽しみは出来ていた


ぴこん♪


届いたSNSのメッセージを確認して、あなたはほくそ笑む

差出人には、相沢ななの の名前。それは、付近に通う学生の名前であり、ここ最近の楽しみの一つ


電車に乗る前に、あなたは彼女を呼び出していた


脅したわけじゃもちろんない

会えないかと、そんな感じの事を言っただけ

ただ、彼女があなたの言葉に逆らいづらい状況にあるのは知っていたけれど


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


電車が開き、乗り降りで人が入れ替わる

発車のベルを合図に、滑り込んできた少女を飲み込んで扉が閉まっていく


「はぁ…はぁ…」


駆け込んできた少女が肩で息をしていた

そう、女の子。年端もいかない制服姿の女の子

まだ幼さの残る容姿にも、膨らみ始めた胸が慎ましく制服を持ち上げている姿は、少女に女性の影を抱かせている


「お、おはようございます…」


拙い朝の挨拶


スマホを握りしめながら、視線は逸したままに、ななのは あなたを見上げてくる

きっと、これから自分の身に起こることを理解しているんでしょう

その態度こそ、拒絶の表情を崩さないが、縮こまった小さな体はその予感に期待するように赤らんでもいた


あなたは手をのばす


ななの の肩を越え、その壁際へ少女を押し込める

傍から見れば、それは彼女を庇う彼氏のような構図ではあった

だからといって、過分に取られたスペースに周囲が咎める気配もない


誰も彼もが他人に無関心で、共通していることと言えば、早く電車を降りたいと言う心情くらい


ぎゅっと、ななのが目を閉じる


押し込んでくるあなたを押し返すでもなく、むしろその小さな体物陰に押し込もうと必死にみえた

けれど、逃げ場なんて何処にもない

ななの の後ろは閉じた扉で、それは ななの が降りる駅まで開かない


つまり…


その時間まで、あなたは少女を好きにできるということ


周りの視線? 一体誰が見てるというの?

抵抗される? いまさら、彼女にそんな勇気があると思うの?


だってあの日…


あなたに電車で犯されて、イッてしまうような女の子なのに


だってあの日…


貴女の精液を抱えたまま、彼氏に会いに行ってしまうような女の子なのに


バレたくない、心配を掛けたくない、捨てられたくない、一人になりたくない

怖い、怖い、怖い、怖い、そればっかりで


自分が我慢をすれば済む


そんな逃避を自己犠牲と間違えて、かさぶたを剥ぐみたいに自分を慰めている女の子なのに



ほら、空いた手を伸ばして、ななのの体に、太ももにでも触れてみて


「…っ」


上がった悲鳴を飲み込んで、小さく体を震わせた ななの

触れる あなたの手を払うでもなく、体を支えるみたいに壁に体を預けるだけ


柔らかい、女の子の肌の感触


温かくて、滑らかで…


閉じる太ももの内側に手を忍ばせて、ゆっくりとその内側を撫でていく


手の平から感じる ななの の震え

彼女の肌を撫でているうちに、汗ばみ初めた少女の肌が、しっとりとあなたの手に吸い付いてくる


触っている内に、熱くなってくる 体温を感じながら、あなたの手はゆっくりと 彼女の中心へと向かっていく

ずっと触っていたいと思える太ももの感触も、やっぱりその誘惑には敵わない

スカートの中に手を忍ばせて、申し訳程度に彼女を守る下着に触れる


薄い布地の感触を越えて、僅かに出来た窪みに指を添えると

そこには、汗とは違う湿っぽさが滲み始めていた


「ぁっ…」


小さく声を上げた ななの

慌ててそれを飲み込んでも、視線は見えないスカートの中を覗き込もうとしているみたいだった


ゆっくりと、あなたの指で 小さな割れ目をなぞってみて?


布地を伝わり、湿り気を増してくる少女の割れ目

見えないことが余計に気になるのか、もどかしそうに焦れる少女の体

足りない性感を補うように、無意識に太ももをすり合わせ始める


ぎゅっと…


スカートの裾を握りしめる ななの

どうせ誰も見てはいない。それはもう諦めてはいても

それでも残った少女の羞恥心は、人前で下着を晒すことを躊躇わせていた


だったら、試してみましょうか?


ななの がどれだけ あなたの言うことを聞いてくれるのか


すこしだけ…ね?


下着を見せて? スカートを持っていて?

言い方はなんでも、軽くお願いして見るだけでいい


驚く ななの の顔

唇をかみしめた後、一瞬だけあなたを見つめた視線は力なく落ちていく


やがて、スカートを握りしめた手はそのままに…


少女の肌色が広がっていった


靴下との間に出来た無防備な肌色は、その手によって広がっていく

膝の上から、太ももが顕になり、下着が見えそうになる手前で躊躇うように留まる


あなたの肌に、感じる ななの の視線


許しを乞うようで、それでいて泣き出しそうな少女の視線

無視を決め込むでも、促すでも、あなたの態度に諦めた ななのは、最後にもう少しだけスカートを上に持ち上げた


全部、とまではいかない


けれど、あなたの視界に、持ち上げられたスカートの下で

擦り合わされた太ももの隙間を隠す白い下着

くぼんだ割れ目の間をなぞるあなたの指が、たしかに見えていた


そう、あなたにも見えているんだから、もちろん ななの にも見えている


晒された自分の下着、触れられている自分の割れ目を少しでも庇うように

ななの はより強く太ももを閉じてしまう


あなたの手が、割れ目と太ももに挟まれる


思わず沈んだ指先が割れ目に押し込まれ、そこに溜まっていた愛液を滲ませる

下着越し、それでも感じ始めていた ななの 体は、それを通してでもあなた手を汚すのには十分だった


指先を伝い、手の平の窪みに雫を溜める ななの愛液


満員電車の中、こんな状況で あなたに愛撫をされて感じている

だったらもう少しくらい、可愛がって上げてもいいよね?

だって感じているんだもの、そうさせたのがあなたなら、最後までしてあげないと可愛そう


ななの下着にあなたの指を掛けて?


少女のお腹と、下着との間に出来た僅かな隙間

そこに愛液で汚れた あなたの指先が掛かると、少女の下着に染みを増やす


めんどくさい? ずらして挿れてしまいたい?


でも今回は…


そのまま下へと 少女の下着を下ろしていく


ほら、泣きそうな ななの の表情に あなたの心の内が震えたりしない?


スカートを握る手を震わせるばっかりで、そのままじゃ止められない、どうしようもない

ただされるがままに、あなたの手の動きを泣きそうな顔で見つめている少女


ゆっくりと…見えてくる ななの の割れ目


下着で隠れていた部分が糸を引き、濡れた少女の割れ目が満員電車の中に晒される


するり…


支えを失くした下着が落ちる

ななの の膝の辺りに 引っかかったそれは、まるで彼女の足を縛っているみたいだった


さあ、もう良いかしら?


ズボンのファスナーに手をかけて?


そろそろ我慢の限界でしょう?


そもそも我慢の必要も無いんだけど


多少不自由なくらいが盛り上がる事もあるわ


こうしてみると、女の子のスカートが少しばかり羨ましくも思える

布一枚、少し持ち上げただけで、すぐに用意が出来るんだから

まるで、誰かがそのために考えたみたいじゃない?


落ち着いた色の制服と、少女の肌色のコントラストがまた性欲を煽ってくるのも不思議

年端もいかない女の子でも、その女性を切り取っているみたい



あなたの、固くなった肉棒が、ななの の視線に晒される


窮屈なズボンの中から飛び出して、びくんっと元気よく跳ねるそれは、その先端をしとどに濡らしていた


「ぁ…あの…今日は、もう…」


小さな声を上げる ななの。それは、今日はじめての、弱々しい拒絶だった


だからって、辞める理由がない


むしろ、それで元気になるのが あなたの肉棒でしょう?


びくんっ、びくんっ…


泣きそうな彼女の声を聞くだけで、刺激された嗜虐心が今すぐにでも彼女をイジメたくて疼き始めてる


きっと、これから彼に合うんでしょうね?

もしかしたらダメな日なのかもしれないね?


それならなおさら…


してあげないといけないね?


近づいてくるあなたの体を「だめ…」と声を上げながら、弱々しく押し返してくる ななの

離れたスカートが再び割れ目を覆い、それでも近づいてくる肉棒の気配に ななのが身を捩る


肉棒の先端が、少女の肌をつつく

太ももの内側、柔らかい女の子の肌に、先端から溢れた先走りの涎でキスを繰り返すように


1つ、2つと…


汚れていく肌の先には、確かに少女の割れ目があった


「ぁっ…」


そうして、焦らすように ななの の肌を堪能した あなたの肉棒は、その割れ目を見つけ出す


愛液で濡れそぼった割れ目に、同じ様に先走りで濡れた先端が擦れ合う

お互いの湿り気で滑り合い、それでも触れ合った部分が新しい性感を生み出した


腰を押し付ける


少し持ち上げただけで、肉棒の先端が ななの の内側へと入っていく


柔らかい少女の感触に包まれる

先端から伝わる快感に、あなたの肉棒が震え上がる


すぐにでも射精してしまいそうな程の快感が

肉棒から体の芯を貫くように、あなたの頭を揺さぶった


一瞬、遠のくあなたの視界


まるで、別のスイッチが入ったみたいに、腰が勝手に ななの の奥へと進んでいく


「ぃ…ゃ…おねがい…」


耳に響く ななの の声が、あなたの耳を逆なでして、逆上しそうな快感を頭に響かせる

頬を伝う涙の色、鼻に掛かるような甘い泣き声

いやだと懇願しながら、あなたにしがみつくしかない小さな手


そのどれもが、あなたの心を逸らせた



ガタンゴトン…ガタンゴトン…


ガタンゴトン…ガタンゴトン…



揺れる電車の中、ななの のすすり泣く声が聞こえてくる

すでに無くなっている処女膜は、あなたの肉棒を受け止めず

少女の体は、男の肉棒を、その最奥、子宮の入り口にまで招き入れている


ざわつくような膣の感触に撫でられる あなたの肉棒


急かすように蠕動する膣内に溢れ出す愛液


揺れる電車に押されて、あなたの肉棒が ななの の奥を突き上げると

飲み込んだ嬌声が、少女の喉を鳴らした


動く、動かす…


体が勝手に、腰が勝手に、肉棒が勝手に暴れだし ななの体を犯し始めていた


腰を押さえつけ、そのまま体重を掛けてななのを 壁へと押さえつける あなた

無垢な白い下着で拘束されている足の間に体を押し込むと、滑る様に肉棒が少女の中へと沈んでいく


スカートの裏側から卑猥の水音を感じ、その感触があなたの肉棒を苛む


満足に身動きが取れない電車の中

あなたに押され、ななの 小さな体が浮いていく


すとん…


膝からずり落ちた ななの下着が足首に引っかかる

開いた太ももの間にあなたの体が入り込むと、より深く少女の中へと肉棒が沈んでいった


満員電車の中、その壁際で、ななの を犯しているあなた


あなたに突き上げられ、逃げるように伸ばした 少女のつま先が少しずつ浮き上がる

揺れる電車の壁と、あなたの肉棒に挟まれて、足場を失くした少女の体

視線の上がった視界から顔を隠すように、ななの が あなたに抱きつくと、そのまましがみついてくる


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


揺れる満員電車の中

満足に身動きは取れないけれど、人に電車に、挟まれた体は ななの奥と繋がり続ける

抜かれることの無い肉棒、抜かれないままかき混ぜられる膣内

繰り返し、子宮口を犯し続ける あなたの肉棒の先端が、ほんの僅かに沈み込む


「ひぅっ…ぁっ、ぁっ…あっ!?」


ななの のすすり泣きに混ざる甘い声

抱き返した少女の体が小刻みに震え始め、より深いところへ招かれた肉棒がその瞬間を感じ取っていた


ぎゅっと…


ななの があなたにしがみつき、熱を帯びて震える少女の体

頼りなげに揺れていたつま先が伸び切って、僅かに引っかかっていた下着が床に落ちる


ななの に抱きしめられた あなたの肉棒

精液を求めて蠢く膣内と、あなたの肉棒の動きが重なっていく


ぴこん♪


何処かで聞いた通知音

異常な快楽の中、どこか間の抜けた音に はっと ななの が意識を取り戻す


「ごめん…ごめんなさい…」


震える手でスマホを持ち直し、泣きそうな声で謝罪を繰り返す少女


その宛先の予想が付けば、少しの意地悪もしたくなる

返事を返すように、そう あなたに言われた ななの の瞳が揺れている


今にも絶頂しそうな体で、もう何度も軽い絶頂を繰り返した体で、一体彼に何を返すのか


それは明らかな裏切りで


痴漢をされているんだから、許してくれる子もいるかも知れないけれど、彼がそうだとも限らない


「あっ、あっ、あぁぁっ…」


甘い声が熱を上げていく

ここが電車の中だと忘れているみたいに、ななの視界は狭まっている


映っているのはきっと


あなたと、自分を犯す肉棒と、スマホの向こうの彼の笑顔


ごめなさい と、繰り返しながらも嬌声を止められない女の体が、ななの心を壊していく


震える指でスマホを操作する ななの

会話をするように弾む通知音。謝罪を繰り返す口から漏れる嬌声


一体何の話をしているのだろう?


たしょう気にはなっても、あなたの肉棒もそろそろ限界だった


下腹部に溜まった精液が行き場を求めて肉棒を熱くしている

射精の予感に体を支配され、あなたの欲望が少女の中で震え始めた


小さな ななの の割れ目の中を突き上げる あなたの肉棒


激しさを増した あなたの動きに、射精の予感を感じ取った ななのが拙い抵抗を強くする


「きょう…は、今日だけで、いいです、から…ぬい、て…」


必死の懇願


挿れられたことよりも、中に出されることを嫌がって、ななの の腰が逃げようとしていた

けれど、満足につま先も付かない状態で、壁に押さえつけられたままで、大した抵抗もできないまま

そのうちに快楽に負けた 少女の体は、ずるずると、あなたに寄りかかってくる


じゃあ、最後に一つ遊んでみましょうか?


イクって、言わせてみたくない?

イクって、彼に伝えさせたくない?


「むり…むりぃ…ゆるしてぇ…」


涙を溜めて、首を振る ななの

それでも、止まらない絶頂の予感に、突き上げてくる射精の瞬間に手を引かれて

ななの の小さな指が、スマホの画面を這い回る


震える指で何度も打ち直し、その度にごめんなさいと繰り返す


「ぃく…イ、く…もういっちゃう、から…」


そんな鳴き声と共に、送信のボタンを押す ななの

ぴこん♪ と、遅れてきた通知音に一体何と言い訳をしたのか邪推もするが


それよりも、彼の前で彼女を犯しているような錯覚が、あなたの興奮を高めてしまう


早く射精したい

気持ちよくなりたい

この娘を滅茶苦茶に汚してしまいたい


「ぬい…て…」


ここまでだった


最後まで射精を嫌がる ななの の声

泣きそうでイキそうな、快楽で震えた声


そんなもの、抜けるわけもなかった


より強く、より深く、どうせ出すなら奥が良い


ななの小さな体を抱き寄せて、腰を押さえつけて、あなたの肉棒は 割れ目の奥を突き上げた

絶頂の瞬間、開いた子宮口、精液を求めて蠕動する少女の膣内、その奥へとあなたの肉棒が沈み込む


少女の体を貫いて、小さな子宮に精液が吐き出された


「あっ…!?」


ぎゅっと、あなたにしがみつく ななの


溢れ出した嬌声が、あなたの胸の中でくぐもって響く


どくんっ、どくんっ、どくんっ…


ななの の中で、なんども跳ねて、その度に精液を吐き出す肉棒


あなたの頭が真っ白になる


肉棒から伝わる快楽に、腰が勝手に震えてしまう

少女を犯す快感が胸を震わせ、その真っ白なお腹の中を白濁で汚す喜びに打ち震えるあなた


「あぁぁ…っ、ゃっやっ…!?」


止まらない絶頂の震え、歓喜を上げるお腹を抱えて首を振り続ける ななの

頭ではどれだけ嫌がっても、少女の体はそれを押しのけてでも絶頂と、受け止めた精液に喜んでいた


心が潰れていくみたいで、心が満たされていくみたいで


やがて…


絶頂を繰り返し、力の抜けた ななの の体があなたに寄りかかってくる


荒い呼吸を繰り返し、あなたの胸の中で果てている ななの

その手に、最後まで握られていたスマホが ぴこん♪ と音を立てる


興味本位で覗き込んだあなたの目には


ただ…


ーまってるー


そんな短いメッセージが残っていた





ガタンゴトン…ガタンゴトン…


電車が停まり、扉が開く

体を預けていた扉が突然開き、ななのがたたらを踏むと

その小さな体を押しのけるように人混みが電車の中から流ていく


この後、彼女がどうするかなんてのはどうでもいいわね


あなたが彼にバラして、関係を滅茶苦茶にするのも面白いし

ハメ撮りでもして動画を送りつけてやっても楽しい

まあ、それをするにしても、彼女の弱さに付け込んで、もう少し遊んでからでも良いかもしれない


だって、想像したら楽しいでしょう?


ぎこちない笑顔で彼に会う彼女も、精一杯に作り笑いを浮かべて、気付かれないように明るく振る舞う彼女も

汗ばんだ制服の意味を誤解する彼も、上気した体の意味を知らない彼も


なにより


彼女のお腹を満たす精液が、歩く度に張り付いた下着から、汗ばんだ太ももに流れ出てくるのを


ねぇ、想像すると楽しいでしょう?



ーおしまいー


後書き

迷ったのよ

満員電車の痴漢イベントなんて、そうはならんやろと思うけど
それを言ったらエロ本なんて、だいたいそうはならんのも分かる

いっそ、車内の個室トイレを使おうかとも思ったけど
それなら別に電車じゃなくても良いじゃんってなるし

ま、結局非日常を楽しむのがエロ本かと、痴漢イベントを楽しむ感じに落ち着いたわけよ
でも、気づいたNTRになっていたわ…属性のてんこ盛りは失敗フラグだというのに、困ったものね

さて、今日はここまで
いっぱい楽しめたかしら? 少しでも気が晴れたのなら何よりね

それじゃあ、また、次の夜にでも…


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SS好きの名無しさんから
2021-08-12 22:27:16

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