2020-06-26 06:02:22 更新

概要

オリジナルss 炎の神は咲き誇る。


暫しの沈黙が続きやがて2人は今聞いた発言を理解する。


エリアス「…は?」


カイゼル「……っ」


私の正体を知った2人は対照的な反応を示した。エリアスという男は目を丸く驚きを露わにし、カイゼルに関しては驚きはしたものの反応が妙に薄い。

あれ、もしかしてカイゼルさん気付いてたのかな…?


エリアス「くくく…あっはっはっは!!!!!」


クレハ「…?」


驚きの後に、何故だか爆笑されてしまった。割と真面目な場面だったと思うのだがどこがそんなにツボったのだろうか。


エリアス「何言っているんだか知らんが、神剣の使い手だろお前は」


クレハ「…はい?」


エリアス「くく…その言い方だとよ、お前がまるで神剣そのもの見たいじゃねぇかよ、面白い冗談だったが俺には通用しないぞ?」


クレハ「……」


…あれ?この人もしかして信じてない?私を神剣の使い手だと勘違いしている?


あーでもそうか、そもそも"神剣が人の姿"をしているのは普通じゃないしね。そう思われても仕方ないか。


エリアス「まぁいい、とにかくほしいもんは見つかった。おら女、その神剣早くこっちに寄越せよ」


クレハ「嫌ですけど」


エリアス「…聞き間違いか?俺はさっきのお前の攻撃で割と腹立ってるんだよ…俺の気が変わらない内に早く寄越せよ」


クレハ「嫌、ですけど?」


エリアス「く…このくそあまが!!」


私の拒否の言葉についに我慢できなくなったのか、今までよりも桁違いの黒炎を放出させた。もはや黒炎の熱だけで周りの空気も焼かれて空気が薄くなるのがわかった。


相変わらずとてつもない魔力だ。どう見ても人が持てる魔力保有限界量を超えている気がする…どうやってこんな規格外の魔力を身につけたんだろう。


これが炎の固有魔法持ちじゃなければ万が一にでも勝てなかっただろうけど…相手が炎使いならば、私に分がある。


エリアス「俺の炎を甘く見るなよ、くそあまぁぁぁ!!!」


拳を前へ突き出しそれと同時に黒炎を噴出させる。地面を軽く熱で溶かしながらこちらに一直線へ向かってくる。


カイゼル「なっ、クレハ殿…!」


エリアス「大丈夫です」


カイゼルさんが身の危険を感じ呼びかけるが無用な心配だ。


神剣を振りかざし、神力を込める。


クレハ「棘火<いばらび>!」


剣先から真紅の炎が生み出されそれが巨大な棘のように生い茂り炎の壁と化した。


そしてそれは黒炎を軽く受け止めた。


エリアス「ば、バカな…」


互いの炎が晴れ完璧に受け止められた様を見せつけられエリアスはそう言葉を漏らした。


クレハ「残念ですが、私に炎の魔法は効きません。そして…貴方の炎では私の炎も防げません」


エリアス「くそ…やっぱりその炎…!神剣の力、神法か!?」


神剣の力はさすがに知っているみたいだ。ならばこちらから質問してみようか。


クレハ「…貴方の目的は、神剣の入手ですか?」


エリアス「…あ?だったらなんだ」


クレハ「なんのために神剣を求めるんですか」


エリアス「はっ、そんなこと知ってどーすんだ?」


クレハ「答えてください」


エリアス「……はぁ」


エリアスはため息を吐き、嫌々ながらも話を始める。


エリアス「俺らが神剣を求める理由…それは、世界平和のためだ」


クレハ「…はい?」


空耳だろうか、今この人からは似つかわしくない言葉が聞こえたような。


エリアス「だから、世界平和だっての。それを実現させるために神剣が必要みたいでな…」


クレハ「…仮にそれが本当だとしても、軽い気持ちで人の命を奪う貴方達を信用などできるはずなどありません」


エリアス「はは、そうだよな。だが平和を築くためには多少の犠牲も仕方ないんだよ…」


クレハ「なにを…」


エリアスは目頭を覆うように手を置き、悲しむ素振りを見せる。


エリアス「俺も良心が傷むぜ、好き好んでこんなことやっているように見えるか…?」


クレハ「……」


小刻みに肩を震わせ、そう訴えてくるが…この人の今までの発言を省みると、嘘なのは明白だ。


エリアス「く…くく…はっはっはっ!!!!はぁーダメだ、こんなのキャラじゃねぇわ」


案の定、すぐに大声で笑い出し不敵な笑みを浮かべる。


エリアス「正直俺は世界平和なんてどうでもいい!戦い、蹂躙できればそれでいいんだよ!!多少の犠牲?だからなんだよ?」


クレハ「ッ…」


わかっていた…この人はそんな崇高な理由で動いているわけがないと。だけど…万が一にでもその可能性があるのならばと、期待してしまった。


そんなあらぬ期待をする方もする方なのだが、これでようやく決心がついた。


この人は……敵だ。


エリアス「むしろこの俺に殺されることを光栄に…」


クレハ「もういいです」


エリアス「あ?」


これ以上この人と話す意味はない。大人しく退いてくれないのなら、私が倒すしかない。


クレハ「貴方が屑で良かったです、これで聖堂の皆さんの仇をなんの迷いもなく取れそうです」


エリアス「へぇ…本気で言ってんのか?」


ビキビキと額に血管が浮かび出し、イラついているのが見てわかる。


人の命をなんとも思わないこの人は、もはや存在しているだけで悪。


クレハ「本気ですよ、貴方は私が祓います」


この炎で、断罪する。



クレハ「…カイゼルさん」


カイゼル「っ…な、なんだ?」


クレハは後ろにいるカイゼルに目だけを向けて小声で話す。


クレハ「そこらに倒れてる4人をどこか避難させてください」


その頼みを聞いたカイゼルは目を丸くしていた。


カイゼル「それは…だがそれではクレハ殿が1人で…」


クレハ「私が"隙を作ります"。そのうちに早く」


カイゼル「っ…!」


ものの数秒の間カイゼルは思索していたが、やがて納得したのかこくりと頷く。


カイゼル「わかった…任せてくれ」


クレハ「はい、お願いします」


カイゼルは立ち上がり、まずは1番近くにいたゼブラを抱えて後ろへ下がった。

そんな光景を見ていたエリアスは大層不思議そうにしていた。


エリアス「まさか、そいつらを助けるのか?」


クレハ「…いいえ、少し邪魔だっただけです」


半分は本当だ。ここで戦うにあたって他人を巻き込んでしまったらそれこそ被害が大きくなる。それでは夢見が悪く戦闘中に気が散りそうなのでどけてもらうことにした。


だが敵のことを気にかける時点で甘いと思われたくないのでここでは言わないこととする。


エリアス「邪魔ね、ははっ、まぁいいや」


クレハ「……」


エリアス「お前は少し痛い目に合わせなきゃ気が済まなくなったんでな。これでそっちも本気になれんだろ?来いよ」


エリアスは手を前に突き出し挑発するように手を上向きにして手招きをする。


エリアス「俺に生意気な発言をしたこと、後悔させてやるよ!」


拳を握ると例の如くそこから黒炎が噴き出してきた。さっきから思ったがこの人の魔法の出し方は独特だ。


まず魔法というのは魔法陣を形成し陣を通じて放たれる。汎用魔法の場合その出し方がほとんどだと言っていい。

だがエリアスの炎は身体から直接出ているように見える…いや、実際に出ているのだろう。固有魔法というのは常識では測れないので、そういうものと認識する他はない。


でも今のクレハにはそれはどうでもいいことだ。例えどんな魔法だろうと相手が炎を使うのならば、彼女には有利にしか働かない。


エリアス「試してみたかったんだよ!俺の固有魔法と神法で出される炎、どっちが上なんだってなッ!!」


黒炎が膨れ上がり、今にもそれを放とうと拳を振るおうとする。


エリアス「固有魔法、獄炎ッッ!!」


炎の渦を撃ち放ち、クレハへと迫りくる。だがそれを避ける素振りを一切見せることなく、冷静に神剣を構え神力を込める。


クレハ「棘火ッ!」


剣先から出た炎が大きな棘の姿を形取り、最初に防いだ時と同じように黒炎を難なく遮る。

それとは別にもう一方で違う神法を発動させた。


クレハ「炎仙花<えんせんか>!」


紅い炎が無数の花びらのように散り、それがそのまま弾丸みたいに飛んでいった。


エリアス「そんなもの…俺の炎で燃やしてやるッ!!」


拳から黒炎を撃ち放ちエリアスは抵抗してみせるがクレハの放った炎は止まることを知らず、黒炎を打ち消しながら突き進んでいった。


エリアス「バカな…!くっ!?」


このままでは止められないと悟ったのか攻撃を中断し横へとそれを避けていく。


クレハ「逃しはしません!」


連続で炎仙花を繰り出し、反撃の隙を与えず攻撃し続ける。

それでも、中々思うようには当たらずじまいだった。見た目に反してとても器用に避ける人だ。


エリアス「チッ、こんな女に…!ならこれはどうよ!!?」


両手の拳を強く握りしめ、両方に黒炎を噴射させる。

そしてその両方の黒炎を1つに纏めあげ、巨大な黒炎の塊を作り出した。


エリアス「この魔法を止められるか?まぁ止めなきゃ後ろの王城まで突き進んで吹き飛ばしちまうかもしれねぇけどな!」


クレハ「……!」


どうあってもあの黒炎を食らわせるつもりらしい。ここで避けようなどしようものならば王城はもちろん、王城に行くまでの過程で建物がいくつも塵になってしまう…それだけはさせない。


まぁはなから避けるという選択肢は頭にはないのだが。


エリアス「いくぜ…大黒炎<メラドエクリシス>!!」


まるで黒い太陽のようなそれは地面を軽く溶かしながらクレハのもとへと放たれた。

ものすごい魔法だ、災厄級と言っても過言ではないほどの威力…並の魔法使ならば対抗できる手段などほぼないだろう。


だが目の前にいるのはあらゆる魔法を圧倒する神法が使える神剣。災厄級の魔法だろうがそれを覆す力がある。


クレハ「神法…」


神剣を掲げ、炎を生み出し一ヶ所へと集め始める。その一瞬で迫りくる黒炎の塊と同等の神炎の塊を生成した。


クレハ「蓮獄<れんごく>!!」


巨大な神炎を撃ち放ち、黒炎と正面衝突させる。炎と炎がぶつかり合い、やがて大きな爆発と共に対消滅してしまった。


自分の大技を受け止めるどころか相討ちさせてしまったことに相当驚いているのかエリアスからは冷や汗が伺える。


エリアス「チッまじかよ、これもダメか」


あっさり防がれたことに苛立ちを覚えたのかエリアスは軽く舌打ちを鳴らす。


エリアス「思ってたより何倍も厄介だな神法ってもんは。しかもその炎…まるで生きてるみてぇに自在に動きやがる」


炎を操ること自体はさして珍しくもないが、クレハの炎はそれとは違う。明らかに汎用魔法とは異なる、固有魔法と同系統の力。


神法と魔法では決定的な違いが一つある、それは…相性の差だ。

神法は言わば魔法を壊すことに特化したアンチスキルだ。魔法であるならば属性関係なく浄化させることができる。それが同系統の炎属性だとすれば…自ずと神法の方が有利に運んでしまう。


…ある例を除いては。


エリアス「正面からでは打ち勝てねえが…くくっ」


エリアスは不敵な笑みを浮かべながら両手に魔力を込め黒炎を生み出す。


エリアス「そろそろあのくそアマにわからせてやらねぇとな」


両手の黒炎を合わせ、また炎の渦を生み出しそれを撃ち放った。


クレハ「何度やっても同じです!」


またも同じように巨大な炎の棘が黒炎を遮った。同じことを繰り返してくるエリアスの意図がわからない、なにがしたいのだろうか。


だがそれはすぐにわかった。黒炎を受け止め、棘の炎が晴れた直後に、エリアス本人が眼前に迫っていたからだ。


エリアス「バカがっ…!」


クレハ「っ…ぐぅっ!?」


零距離まで迫ったエリアスは脚に黒炎を纏いクレハの腹目掛けて横蹴りを繰り出す。

クレハはなんとか反応し腕で防ごうとするがあまりの威力に吹き飛ばされてしまった。


クレハ「っ…!いたっ…」


神炎での防御が若干遅れたせいか、腕に強烈な痛みが走る。見てみると少し青く腫れているのがわかった。


クレハ「ぐっ…!」


腫れた箇所を触ってみるが案の定痛みを感じる。だが幸いにも動かせないほどではなく、骨までは折れていないみたいだ。

もう少し反応が遅れていたら、この程度では済まなかっただろう。


エリアス「はっはっは!!予想通りだぜ!」


蹴り飛ばされたクレハを見るやそう高々と声を上げる。そして続けて見下すかのような目で睨みつけきた。


エリアス「お前………戦ったことないだろ?」














後書き

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