2020-08-08 16:37:39 更新

概要

艦娘「艦娘殺しの提督」の後日談です


前書き

この話は以前に書いた"艦娘「艦娘殺しの提督」"の後日談の話ですので、注意して下さい
ここから読んでもさっぱり意味が分からないと思います

バチギスものからまったりまで書いていきます
時系列はバラバラです



 【不知火と翔鶴の確執】



コンコンコン



翔鶴「提督、報告書をお持ちしました」



シーン…



翔鶴「また、なのね……」



ガチャ



不知火「……」カキカキ


翔鶴「……」


不知火「……」カキカキ


翔鶴「……提督はいつものように不在みたいですので、報告書はここに置いていきますから」


不知火「……」カキカキ


翔鶴「……」



翔鶴「……不知火さん。口も聞きたくない程にあなたが私を嫌っている、という事は重々承知しています。当たり前です。不知火さんにここまで敵視されてしまう程の事を私は犯してしまったのですから。なので、そこについて何かをとやかく言うつもりは一切ありません」


不知火「……」カキカキ


翔鶴「ですが、私と提督を引き離そうと画策するのはもう止めて頂けませんか?」


不知火「……」カキカ…


翔鶴「あの件があってから、私が執務室に来るタイミングを見計らったように提督がここを不在にしているのは、あなたがそう仕向けているからですよね?」


不知火「……あなたは司令にとって危険な存在です。不知火は秘書艦として、当たり前の責務をこなしているだけです」


翔鶴「不知火さん。私の事を信用して欲しい、とまでは言いません。しかし私は、提督に危害を加えるような真似は、もう二度としないと誓いました。どうかこれだけは信じては貰えないでしょうか?」


不知火「出来ません。あなたの取った行動や考え方は、あまりにも危険過ぎます」


翔鶴「……そう、ですよね。私の犯した罪はそれほど大きいものでしたから……」


不知火「……」



不知火「……私があなたを最も危険視している事は間違い無いです。ですがこれは、あなただけに限った話ではありません。筑摩さんや金剛型の皆さんも、決してその例外ではありませんし、勿論、事情を知らないここの大多数の艦娘達もそうです」


翔鶴「筑摩さん達もまだ警戒されているんですね……」


不知火「当たり前です。今回の件で言えば、隠していた秘密が漏れた事によってなんとか事無きを得る事が出来ました。ですが、また似た様な事件が起きれば、あなた達は再び司令に牙を向くでしょうから」


翔鶴「! それは有り得ません!何があったとしても、今度こそは提督を信じ抜きます!」


不知火「……では仮に、司令が瑞鶴さんを撃ったという情報があなたの耳に入ってきたとしましょう」


翔鶴「……はい」


不知火「瑞鶴さんは胸を撃ち抜かれ瀕死の状態。その話を聞いて、あなたは急いで現場へ向かいます。すると目の前には、瑞鶴さんの返り血を浴びたと思われる司令の姿が目に飛び込んできます」


翔鶴「それって……」


不知火「そうです。あの時に私が陥っていた状況です。……それでもあなたは、その引き金を引かずに司令の事を信じる事が出来ますか?」


翔鶴「ええ。今度こそは信じます」


不知火「……口先だけなら何とでも言えますからね」


翔鶴「それでもです。誰に疑われようと私は提督を信じます。疑うような真似すらしません」


不知火「……あなたのそれは、信頼と呼べるような代物では無いみたいですね。信頼とは似ても似つかないそれは、狂信や妄信の類いなんでは無いんですか?」


翔鶴「……ええ、そうでしょうね。それは自分でも分かっています。ですが、そうなってしまう程に私は、多大な恩を提督に感じているのです。これは誰に何を言われたとしても変える気はありません」


不知火「どうやらあなたは、どちらに転んだとしても厄介な存在になり得るようです」


翔鶴「……」


不知火「……」



不知火「……良いでしょう。少なくとも今の時点では、司令に危害を加えるような事態にはならないみたいですから。警戒レベルを金剛さん達と同程度まで下げてあげます」


翔鶴「!」


不知火「それに不知火がこうしていつまでも不貞腐れていると、司令の拳骨が飛んできます。あれは中々に痛いですから」


翔鶴「提督の拳骨ですか……。羨ましいです」


不知火「……」ジトーッ


翔鶴「……」



不知火「そういう事ですので暫くの間、私が翔鶴さんへ抱いている不信感や憎悪の気持ちは、不知火の胸の奥底に閉まっておくようにします」


翔鶴「ありがとうございます……」



不知火「ただし条件が1つだけあります」


翔鶴「? なんでしょうか?」


不知火「司令の周りをちょろちょろと動き回るのは止めて下さい」


翔鶴「それは出来ません。どんな些細な事だとしても、提督のお側で何かのお役に立つ。それが私なりに考えた恩返しの方法なのですから」


不知火「……それは少し傲慢な考えなのではないですか?翔鶴さんはもう少し謙虚になるべき、不知火にはそう感じます。まずは司令から一歩引いた場所で、静かに見守る事から始めてみてはどうですか?」


翔鶴「謙虚な姿勢でいては、この積もりに積もった恩は到底返し切れませんし、それでは罪を償う事すら叶いません。勿論、提督からそうしろ、と言われれば喜んで従いますが」


不知火「……筑摩さんや金剛型の皆さんは、節度を持って接しています。翔鶴さんもそれを見倣うべきでは?」


翔鶴「あれは提督への態度が急変する事によって、他の艦娘達に気取られるのを避ける為、とお聞きしましたが?」


不知火「そうです。翔鶴さんも司令の足は引っ張りたくは無いでしょう」


翔鶴「ではその点に関して問題はありません。これまでも私は、最低限の礼儀だけは欠かさないよう装ってきたつもりですから。むしろ、提督を避けるような動きをした方が却って怪しまれます」


不知火「……」


翔鶴「その気遣いだけは受け取っておきますね?」ニコッ



不知火「……ここの秘書艦は不知火です。司令の事は不知火に任せておいて下さい」


翔鶴「不知火さん1人では限界がありますからね。私も出来る限り、提督のサポートをさせて頂くつもりです」


不知火「不知火だけでも問題はありません。お構い無く」


翔鶴「では不知火さんでは足りない、任せておけない。そう感じた時は今まで通りにちょろちょろとさせて頂きますね」ニコッ


不知火「……どういう意味ですか」キッ


翔鶴「どういうも何もそのままの意味ですが?」


不知火「……」


翔鶴「……」


不知火「……」ニタ…


翔鶴「……」ニコッ


不知火「……」


翔鶴「……」


不知火「……」ギロッ


翔鶴「……」シレッ




提督「は、入りづれぇ……」



          ~不知火と翔鶴の確執 おわり~





 【吹雪と翔鶴の雑談】



翔鶴「吹雪ちゃん、こんにちは」


吹雪「! 翔鶴さん!来てくれたんですね!」


翔鶴「ええ。少し話したい事があってね?それで寄ってみたの」


吹雪「ええっと。今の時間だったら瑞鶴さんは多分、利根さんの部屋にいると思いますよ?」


翔鶴「ううん、違うの。今日は吹雪ちゃんに用があって来たのよ。勿論、後で瑞鶴の所にも寄っていくけどね」


吹雪「ありゃ?そうだったんですか。でも嬉しいです!ここではなんですし、私の部屋にでも行きましょうか?」


翔鶴「そうね。有りがたくお邪魔させて貰うわ」




 ―吹雪の部屋―



吹雪「粗茶ですがどうぞ」コトッ


翔鶴「いただきます」


吹雪「ふぃ~。お茶はやっぱり熱いのに限りますね~」ズズズッ


翔鶴「ふふ、私もお茶は熱い方が好きよ」


吹雪「ですよね~」


翔鶴「ところで吹雪ちゃん。ここでの暮らしはもう慣れたかしら?」


吹雪「はい!快適そのものですよ。必要な物は全部、司令官が手配してくれてますから」


翔鶴「……確かに見た感じだと、物には不自由してないみたいね」チラッ


吹雪「知ってますか?ここの食費や日用品、雑貨類、それにお小遣い、その他もろもろは司令官のポケットマネーからなんですよ?」


翔鶴「え……?」


吹雪「榛名さん達も一度は断ったみたいなんですけど、司令官が、"俺がお前達をここに閉じ込めているんだ。責任を取らせてくれ"って半ば強引に押しきられたらしいです」


翔鶴「そうだったの……。提督らしいわね」


吹雪「ここの生活に不自由してないっていうのは間違いないんですけど、その分、司令官に申し訳無いなって気持ちがあるのも本音なんですよね。今の私達の状況だと、司令官のヒモって言われたとしても反論は出来ませんから」


翔鶴「……提督にはそんな事、絶対に言っちゃ駄目よ?」


吹雪「言いませんよぉ。司令官に言ったら絶対謝ってきますもん。こんな所に閉じ込めてすまん、って」


翔鶴「きっとそう言うでしょうね。……でもたまになら外出だって出来るのよね?」


吹雪「はい。他の艦娘達のスケジュールと照らし合わせて、ばったり出くわさないような時間帯にのみ、ですけど。きっちり変装付きで」


翔鶴「その日が待ち遠しいって瑞鶴が言ってたわ」


吹雪「中々そんな日は来ないですからね。瑞鶴さん達もいつも退屈そうにしてます。私と榛名さんと古鷹さんは、外に出れない事が特に苦に感じた事は無いんですけど、他のお三方は我先に外出していきますね」


翔鶴「ふふ、そういう所にも性格が出るのね」


吹雪「私も今度、瑞鶴さん達とどこかに行ってみようかな……?」


翔鶴「そうして貰えると、瑞鶴もきっと喜ぶと思うわ」


吹雪「それじゃあ何か予定を建てないとですね。う~ん、無難に食べ物屋さんか買い物かなぁ。瑞鶴さんならアクティビティ系とかの方が良いのかな?」


翔鶴「……」



翔鶴「ねぇ、吹雪ちゃん。吹雪ちゃんは何か無理をしてたりしてるの?」


吹雪「え?…………はぇっ!?私ってそんなに風に見えてるんですか?」


翔鶴「いいえ、全くそうは見えないわ」


吹雪「へ? じゃあなんで急にそんな事……?」


翔鶴「あの時の吹雪ちゃん、泣いてたわよね?」


吹雪「あの時?……あー、執務室の前での事ですか?」


翔鶴「ええ。吹雪ちゃんはあの時に、全てを提督から聞いたのよね?」


吹雪「そうですね。司令官から聞いた時はびっくりしましたよ」


翔鶴「……それを聞いても泣いてたって事は、やっぱりここには来たくなかったのかな?なんて思っちゃって。今日はその事を聞きにここへ来たの」


吹雪「あぁ、なるほど。……違いますよ。司令官がここの話をしてくれなかったら私は今頃、廃棄処分か海の底ですよ?嫌な訳無いじゃないですか」


翔鶴「でも……」


吹雪「うあーっ!これ以上翔鶴さんに心配させたくないので言っちゃいますが、私、不知火さんに啖呵を切った事があるんですよ!」


翔鶴「啖呵?不知火さんに……?」


吹雪「えっとですね?不知火さんが"司令官の秘書艦は心労がたくさんあって大変"、なんて事をのろけ半分で嬉しそうに愚痴っていたんですよ。それでちょっとイラッとしてしまいまして……」


翔鶴「……確かにそれは色々と来るかもしれませんね」


吹雪「ですよね?それでその時に言っちゃったんです」


翔鶴「何を言ったの?」


吹雪「……不知火さんから秘書艦の座を奪います、みたいな事をですかね?」


翔鶴「ふ、吹雪ちゃんって意外と野心家だったのね……」


吹雪「ち、違いますって!野心とかでは無いんです!断じて!」


翔鶴「でも秘書艦の座は狙ってたのよね?」


吹雪「うぅ……。だって羨ましいじゃないですか。いつも司令官の側に居られるんですよ?今回の件の事だって、不知火さんは始めから知らされていたんですよね?」


翔鶴「言われてみれば……確かにそうね」


吹雪「そんな事を思ってた矢先に、司令官からのこのお誘いでしたから。秘書艦なんてのは私には分不相応なもので、結局は届かない夢だったんだな、なんて思ったら、自然と涙が止まらなくなっちゃって……」


翔鶴「……」


吹雪「だから本当に無理をしてるとかじゃ無いんですよ!むしろこの話をしてる事の方が無理をしているというか、恥ずかしい訳でして……」


翔鶴「……なるわ」


吹雪「へ?」


翔鶴「吹雪ちゃんの代わりに、私がその秘書艦の座を狙うわ!」


吹雪「えっ?いや、そういう事じゃ……」


翔鶴「安心して。私はこうと決めたらしつこいの。何年かかってでも必ず、あの人の隣に座ってみせるわ」


吹雪「隣、ですか?あのですね?私としてはそうなられると更にややこしい事態になりますし、翔鶴さんもあまり無理はしない方が……」


翔鶴「無理なんてしてないわ!これは吹雪ちゃんの為でもあり、私の為でもあるんだから」


吹雪「んん……?えっと、翔鶴さんってもしかして尊敬以上の念を司令官に抱いてたり?」


翔鶴「……ええ。叶う事なら、私の最期を隣で看取って欲しい。その位には想っているわ」


吹雪「あ、そっかぁ……。なるほどなぁ……」



翔鶴「吹雪ちゃん。もし秘書艦になれたら、真っ先にここに来て吹雪ちゃんに伝えに来るからね。それも瑞鶴より先に、よ」


吹雪「ア、ハイ。光栄デス」


翔鶴「それじゃあ私は、そろそろ行くわね。やらなきゃいけない事が出来たから」


吹雪「ハイ。オ疲レ様デス」


翔鶴「またね、吹雪ちゃん。……見ていて頂戴。必ずやり遂げてみせるわ!」



ガチャ パタン



吹雪「…………ぬ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!んもうぅぅぅ!やっちゃったよぉ!!!」




          ~吹雪と翔鶴の雑談 改め 吹雪の新たな恋敵・爆誕 おわり~





 【筑摩の夜食係】



 ―提督の自室前―



提督「あー、つっかれた……。小腹は空いてるが、今日は風呂に入ったらさっさと寝るとするか」ガチャ



筑摩「お帰りなさいませ、提督」スッ



提督「……何故ここに筑摩がいる?」


筑摩「お夜食を作って来たのでここで待たせて貰いました」


提督「そうじゃない。いや、外で待っていられるよりはマシなんだが、前回の時といい今回といい、お前はどうやってここに入ってきてるんだ?」


筑摩「ふふっ。大胆なピッキングは乙女の特権ですから」


提督「筑摩。お前の認識と一般常識とでは、どうしようもない大きなズレがあるぞ」


筑摩「他所は他所、うちはうちです」


提督「……便利な言葉だな。つい、騙されそうになる」


筑摩「ささっ、お料理が冷めてしまいます。中へどうぞ」ツツイ…


提督「自分の部屋を他人に案内されるというのは、何故か不思議な気分になるな……。心がざわついてくるよ」




 ―提督の自室・リビング―



筑摩「では召し上がれ♪」


提督「召し上がれ、と言われても、これはどう見ても夜食って量では無いんだが……」


筑摩「品数が多いだけで量自体はそうでもないですよ?それに余ったら余ったで明日の私のお弁当になるだけですから、安心して残して下さい」


提督「残すのはちょっとな……。お前も一緒に食べる、というのはどうだ?」


筑摩「宜しいんですか?」


提督「良いも悪いも俺が頼んでるんだ。それに筑摩を目の前にして、1人だけ食べるというのもどうかと思うしな」


筑摩「……ふふっ、明日からの楽しみが増えそうです」


提督「ん?明日から?」


筑摩「いえ、何でもありません。では改めて、召し上がれ♪」


提督「ん、いただきます。じゃあまずはこれを……」モグモグ


筑摩「お味は如何でしょうか?」


提督「……うまいな。俺好みの味で箸が進むよ」モグモグ


筑摩「提督の味の好みは調べておきましたから。お夜食という事でやや薄めの味付けにしてみましたが、どうやらそれも正解だったようですね」


提督「本当にうまいぞ。筑摩もほら、そこに座って一緒に食べよう」


筑摩「では失礼しますね?」ススッ


提督「……ん?いや、俺の横に座らなくたって向かいの席が空いてるぞ?」


筑摩「配膳はこちら向きです。それではお行儀が悪くなってしまいます」


提督「1つの席に2人で座る方が行儀が悪くはないか?」


筑摩「では頂きますね?」モムモム


提督「……筑摩?聞いてる?」


筑摩「味見した時よりも美味しく感じますね。ふふっ、提督と一緒だからでしょうか?試しにもう少し寄らせて頂きますね?」ズイッ


提督「距離は関係無いだろ」


筑摩「あら?やっぱり美味しくなるみたいですね。では更に」ズズイッ


提督「お前のその有無を言わせぬ迫力はなんなんだ……?」




 ~数十分後~



提督「ご馳走様でした」


筑摩「お粗末様でした」


提督「筑摩の言う通り、見た目のインパクトはスゴかったが、量はそれほどでも無かったな」


筑摩「これはあくまでお夜食ですから。お腹に少し溜まる位がちょうど良いんです」


提督「しかし、この品数では作るのだって大変だったろ?」


筑摩「慣れればそうでもないですよ?」



提督「……なぁ、筑摩」


筑摩「はい?なんでしょうか?」


提督「お前が俺に罪悪感を感じてしまっている、という事は痛いほどに感じてるよ」


筑摩「……」


提督「でもな?俺はお前に、そんな事で縛られて欲しくは無いんだ」


筑摩「……これはただの自己満足なんです。罪の意識を少しでも軽くする為の……。だから私の我が儘だと思って、どうかお付き合い下さいませんか?」


提督「しかしな……。俺に費やしているこの時間、その分を使って利根との時間に充てがった方が良いんじゃないか?」


筑摩「あ、それなら大丈夫です。利根姉さんの所には早朝、既に様子を見に行って来ましたので」


提督「え?あ、うん……」


筑摩「このお料理も、利根姉さんの所へ持っていく料理を作った際に一緒に下拵えは済ませていたので、手間としてはそう大した物では無いんです」


提督「そ、そうか。てっきり無理をさせてしまっているのかと思って心配したぞ」


筑摩「提督と利根姉さんのお世話は私の生き甲斐ですから、無理とかとは無縁です。私にしてみれば、止めろ、と言われてしまう方が堪えてしまいます」


提督「利根と同じ扱いか。光栄な事だな」


筑摩「……同じではありませんよ?」


提督「いや、その辺は流石に弁えてるさ。お前にとっての利根が別格だというのは知っているからな」


筑摩「……」


提督「どうしかしたか?」



筑摩「……提督、気付いていましたか?」


提督「何がだ?」


筑摩「このお料理、利根姉さんの所に届けた物と具材自体は同じなんです」


提督「まぁ、同じ料理ならそうだろうな」


筑摩「ただ、中に込めたモノは全くの別物なんですよ」


提督「ん?具材は一緒なんだろ?」


筑摩「はい。何が違うのか当ててみますか?」


提督「クイズか?良いだろう。受けて立とうじゃないか」


筑摩「さて、当てられるでしょうか?」


提督「……ああ、なるほど。調味料だろ?好みとかもあるもんな」


筑摩「確かに味付けは少し変えましたが、それでは無いですね」


提督「ふむ。……そうなるとまるで分からんな」


筑摩「ヒントは、お料理を美味しくする為には一番欠かせないモノ、です」


提督「俺は料理には疎いからな。ますます分からん」


筑摩「ふふっ。答えは愛情、です♪」


提督「ああ、なるほど!料理は愛情が基本とか言うもんな」


筑摩「ええ」


提督「……ん?どっちも愛情なら同じじゃないか」


筑摩「違うんです♪」


提督「?」


筑摩「明日からが楽しみですね♪」


提督「……え?」




          ~筑摩の夜食係 おわり~





 【金剛の誓いと思い出】




 ―提督の自室前―



金剛「……」


提督「金剛?」


金剛「あっ、提督……」


提督「こんな所で突っ立ってどうした?何かの相談か?」


金剛「相談、では無いのデスけど、話したい事があって……。少しだけワタシに付き合ってもらえないデスカ?」


提督「……軽い話ではなさそうだな。じゃあ執務室で話すか?」


金剛「皆にはなるべく聞かれたくない話なのデス。……提督の部屋では駄目デスカ?」


提督「それでこんな所で待っていたという訳か」


金剛「ハイ……」


提督「……分かったよ。本当はまずい事なんだが、ここでなんだかんだやってると余計に怪しまれるからな。ほれ」ガチャ


金剛「ありがとうございマス……」




 ~提督の部屋~



提督「それで?何かあったのか?」


金剛「スカーフ……」


提督「ん?」


金剛「提督が今巻いているスカーフ……。それを取って、首筋をワタシに見せて欲しいのデス」


提督「……そういう事か」


金剛「……」


提督「これはもう過ぎた事だから良いんだよ。そもそもの話、お前達の姉妹愛を侮っていた俺の責任でもあるんだ。おあいこって事で手を打ってはくれないか?」


金剛「出来まセン……」フルフル…


提督「……その様子を見るに、引く気はさらさら無いみたいだな」


金剛「お願いしマス……」ジッ


提督「もう誤魔化す事も出来ないと思うから先に言っておくが、この痣は暫く間、残ってしまうらしい」


金剛「ソウ、でショウネ……」


提督「医者が言うには色素が定着してしまった場合、うっすらとではあるものの、鬱血痕として一生涯に渡って残る可能性もあるみたいだ。正直、見た目だけで言えば大分酷い事になってる。それでも見るんだな?」


金剛「覚悟は決めてきましたカラ」


提督「ハァ……。分かったよ。ほら」シュルッ


金剛「っ!?」


提督「良いか?酷いのは見た目だけで痛みはとっくに引いてるからな?だからあまり思い詰めるなよ?」



金剛「……」ソッ…


提督「!」ピクッ


金剛「……」ツツ…


提督「そう優しく撫でられると擽ったいんだが……」


金剛「こんなに酷いなんて……。ワタシはなんて事を……」スッ…


提督「金剛……」



金剛「ワタシは取り返しの付かない事を仕出かしてしまいマシタ……。提督にはもう、謝る事しか出来まセン……」


提督「……どうした?金剛らしくもない。これはもう済んでしまった事なんだ。いつもの様に、前向きな金剛でいればそれで良いんだ」


金剛「何をしても、どこにいても、どんな時でも、きっとワタシはこの痣の事を思い出してしまうデショウ。今までのような前向きなワタシには戻れまセン……」


提督「……」


金剛「ごめんなサイ……。ごめんなサイ……。ごめんなサイ……」



提督「……なぁ、金剛。皆と思い出を作っていこうか」


金剛「……思い出、デスカ?」


提督「そうだ。こんな痣の事なんて思い出す暇が無いくらい、沢山の楽しい思い出を、だ!」


金剛「……無理デス。出来る気がしまセン」


提督「何を言ってる!金剛の周りには、お前を大切に想っている者達で溢れているんだぞ?比叡に霧島、翔鶴や筑摩達だってそうだ。それに今は榛名だっているだろ」


金剛「それは……」


提督「そんな姉妹や仲間達に囲まれて暮らしているんだ。嫌でも楽しい思い出は増えていくはずだ!」


金剛「……その思い出には、提督も入っているのデスカ?」


提督「ん?俺か?」


金剛「……ハイ」


提督「金剛がそれを望んでくれるなら思い出の1つや2つ、喜んで作りたい、そう思ってるよ」


金剛「……でもワタシは、自分の恋心も踏みにじってしまったのデス。ワタシにはもう、その資格すらありまセン……」


提督「……あの時の事か」


金剛「ハイ……。あの時に言ったはずデス。恋するワタシとはお別れしたって。提督にはもう二度と、ポジティブな感情は抱かないって……」


提督「……」


金剛「だから提督との思い出は作ってはいけないんデス……。これはワタシ自身が科した罰でもあるのデスカラ」



提督「……撤回しろ」


金剛「へ……?」


提督「今すぐあの時の言葉を撤回しろ」


金剛「そ、そんな簡単に撤回出来るような発言じゃ無いヨ!あの宣言はワタシにとっては苦渋の選択で、凄く重い言葉だったんダカラ!」


提督「知らん!金剛と思い出が作れんなんて冗談じゃない!良いから撤回しろ!」


金剛「……」ポカーン


提督「撤回するまでここからは出さんからな。覚悟しておけ!」


金剛「ウフフ……」


提督「なんだ?」



金剛「提督は優し過ぎるんダヨ」ボソッ



提督「ん?」


金剛「全くもうっ!提督はちょっと頑固過ぎるヨ!」


提督「そう言われても譲れんモノは譲れんからな」


金剛「分かりマシタ。撤回してあげマス!恋するワタシとお別れなんてしないし、提督にもどんどんポジティブな感情を向けてくカラ!覚悟して下サイ!」


提督「そうか!じゃあ今度時間が会った時にでも、お忍びでどこか遊びにでも行くか」


金剛「……今すぐがイイネ!」


提督「それは無理があるだろ……。他の艦娘に勘繰られるぞ」


金剛「外に出なくても出来る事は色々ありマス。それに言ったはずデス。覚悟して下サイって」


提督「いや、時と場所くらいは考えて欲しいんだが……」


金剛「この部屋にはワタシと提督の2人ダケ……。シチュエーションは完璧デース」ジリッ…


提督「……なにやら雲行きがおかしくなってきたな」


金剛「もう我慢も遠慮もしマセン!」ニジリジリ…


提督「おいおいおいおい、そうにじり寄られると怖いんだが……?」


金剛「提督ゥーーー!!バーニング、らぁーーーーーぶ!!!」ガバッ




          ~金剛の誓いと思い出 おわり~





 【加古と波止場】



提督「……」スタスタ



加古「あ、おーい!提督ー!」


提督「ん?」


加古「こっちこっち!」ヒラヒラ


提督「おお、加古か。誰かと思ったぞ」


加古「こんなとこに居るのなんてあたし位しかいないでしょ」


提督「それはそうなんだが……」


加古「ほら!そんなとこで立ってないで、ここに座って。あたしとちょっとだけお喋りしていこーよ!」ポンポン


提督「ふむ、たまには良いか。……それじゃ少しだけお邪魔させて貰おうかな?」トスッ


加古「へへ」


提督「なんだか嬉しそうだな。何か良い事でもあったのか?」


加古「まぁね♪それよりも提督は何しにここに来たのさ?この前みたいにまたサボり?」


提督「ちょっと古鷹達に届け物をな?」


加古「え?でも提督だけじゃあそこには行けないハズでしょ?」


提督「いや、この先に明石達に作って貰った縦穴があるんだよ。このくらいの小物を送れる程度の、小さめの穴だけどな」


加古「もしかしてこの前、ここを通ってたのも?」


提督「そうだ。毎回の様に明石達に届けて貰うのも悪いからな。大した量じゃない時はこうやって運んでたって訳だ」


加古「へぇ~。今ならあたし達だって居るんだから、言ってくれれば良かったのに。今度からはあたしがついでに届けようか?」


提督「俺の気晴らしも兼ねてるから問題無いよ。これがいい気分転換にもなるんだ」


加古「提督はいつも執務漬けだからね。それで?古鷹達はどんな物を頼んできたの?」


提督「プライバシーの侵害だぞ、と言いたいところだが、大した物なんて無いぞ。なんなら見てみるか?」


加古「見る見る!」


提督「ほら、こんな感じだ」パカッ


加古「調味料に洗剤、刺繍道具etc……。見事に日用品ばっかりだね」


提督「生活費とかその他の雑費は俺持ちだからって、みんな遠慮してるんだろうな。必要最低限の物しか頼んでこないんだよ」


加古「あっ、でも雑誌なんてあるじゃん!」


提督「ああ、前にちょっとな。暇潰し用にどうかと思って、適当に本を見繕って買ってきた事があってな。それからは各々のお気に入りの雑誌をこうして定期的に買ってきてるんだよ」


加古「へぇ~。……ん?ゼクシィ?」


提督「それは榛名のお気に入りの本だな」


加古「……なるほど、納得したよ」


提督「だよな?花嫁に憧れるとか、榛名らしいよなぁ」


加古「はいはい、そうだね~。んじゃ他は……っと」ゴソゴソ


提督「何か持ち物検査されてるみたいで妙に落ち着かんな……」


加古「え?……は!?べ、ベビーブックって……。まさか提督?」


提督「ん?何の事だ?」


加古「う、ううん。あたしの勘違いだったみたい。……ちなみにこれは誰のなの?」


提督「古鷹のだな」


加古「…………ふ~ん」


提督「世話好き過ぎてそっち方面に興味が向かっちゃったんだろうな。古鷹なら良い母親になれると思うよ」


加古「……これはあたしもうかうかしてられなさそうだね」ボソッ



提督「そういえば加古の方こそなんでこんな場所にいたんだ?ここはもう、加古には必要無い場所のハズだろ?」


加古「そうだけどさ。でも今まで散々お世話になってきたんだよ?必要無くなったから来ない、っていうのはどうなのって思ってね」


提督「……そうか。加古らしい考え方だな」


加古「ここには辛い思い出しかないからね。だからこれからは、少しずつでも楽しい思い出を加えていけたら良いなって」


提督「なるほどな……。よし!それなら俺も手伝うよ。何か俺に出来る事はあるか?」


加古「……それ、本気で言ってくれてる?」


提督「勿論、俺の本心だぞ。お前には随分と世話になったからな」


加古「あたしゃ何かした覚えは無いけどね」


提督「お前がそう思っていたとしても、俺は何度も加古に救われてきたんだ。恩返しくらいさせて貰えないか?」



加古「……じゃあさ、ちょっとだけで良いからあの水平線の向こうを見ててくんない?」


提督「水平線?別に構わないが……。こうか?」


加古「うん。そのままでいてね……?」


提督「……」


加古「……」


提督「……」


加古「……」



提督「なぁ、これっていつまで――」


加古「隙あり!」チュッ


提督「!?」


加古「へへ、良い思い出が1つ出来たよ!」


提督「え?今のって……」


加古「ほら!古鷹達に届け物があるんでしょ?皆待ってるよ!」


提督「あ、ああ。でも」


加古「ボサッとしてないで早く行ってあげなよ!」


提督「お、おお……?そ、そうだったな」


加古「あたしゃもう少しここで涼んでいくからさ。ほら行った行った!」


提督「い、今行くよ。じゃあな、加古」


加古「ん。またね」


提督「???」スタスタ




加古(古鷹達には負けてらんないからね!…………今のあたし、この夕陽に負けないくらい、顔が真っ赤なんだろうな)カァァァッ





          ~加古と波止場 おわり~





 【青葉、真相、性癖】




青葉「あの~……。青葉はどうしてここに呼ばれたのでしょうか……?」


提督「ん?ああ、説教とかじゃないから楽にしてくれて構わないぞ」


青葉「ホッ、そうだったんですかぁ。青葉、焦っちゃいましたよ!」


提督「なんだ、説教されるような心当たりでもあるのか?」


青葉「それでそれで?用件は一体なんなんでしょうか?」


提督「……まぁ、いい。お前を呼んだのは衣笠の事でだ」


青葉「ガサーがどうかしたんですか?」


提督「衣笠の所には会いに行ってるのか?」


青葉「……忙しくて忘れてました」テヘペロ


提督「あっ、かわいい。じゃなくてだな?俺にあれだけ難癖付けてくるくらいに大事な妹なんだろ?会いに行ってやれよ」


青葉「難癖?……あっ!ち、違いますよぅ。あれはその……悔しかったというかなんというか……」


提督「悔しかった?どういう事だ?」



青葉「実は青葉、今回の一件の全てを知ってたんですよ」


提督「は?全てってどこからどこまで?」


青葉「全ては全てですよぉ」


提督「冗談だろ……?」


青葉「青葉はこういう冗談は言いません!」


提督「……いつからだ。いつから気付いてたんだ?」


青葉「割りと最初の方ですね。匿う場所を掘削、拡張してたのも知ってましたから!」


提督「oh……。じゃあ衣笠達を匿った頃にはもう……」


青葉「はい!それはもう見事に、疑惑が確信にへと変わりました!」


提督「それじゃあ翔鶴達の様に衣笠の所へ出向かないのはもしかして?」


青葉「青葉にしてみれば死に別れとかじゃなくて、ただ単にガサーが近場に転勤しただけって感覚だったからでしょうね~」


提督「ああ……。転勤感覚なら姉妹と1年会えないくらいは幾らでもある話だからな。そこまで寂しくはなかったって訳か」


青葉「そういう事です!」


提督「衣笠にその事は話したのか?」


青葉「……えへへ」


提督「お前は……。他の姉妹達と違って、青葉だけ全く顔を出さないって衣笠が寂しがってたぞ。早めに会いに行って事情は話しておけよ?」


青葉「了解です!」ビシッ



提督「……しかしこう聞いてみると、お前は本当に優秀だったんだな」


青葉「司令官直々のお褒めの言葉!青葉、感激です!」


提督「……ん?じゃあなんで俺にあれだけの執拗な質問責めをしてきてたんだ?」


青葉「だから言ったじゃないですかぁ。悔しかったって」


提督「……もしかして仲間外れにされた、とか思ってたのか?」


青葉「そうですよぉ!酷いじゃないですか!?こういう情報統制の類いなら、きっと青葉の事も呼んでくれると思ってたのに!」


提督「だからってああも質問責めにする事は無かったろうに……」


青葉「あれは青葉の有能さを見せ付けて、仲間に入れて貰おうとしてただけですよぉ」


提督「自分から言えば良かっただけだろ?全部バレてますよって。それなら俺だって色々と考えてたぞ」


青葉「司令官の考えてる事の邪魔だけはしたくなかったんですよぉ。あくまでも司令官の意思で。じゃなきゃただの青葉のワガママになっちゃいますから……」


提督「……」


青葉「……司令官?」


提督「……青葉って意外と健気だったんだな。もう少しで抱きしめてしまうところだった」


青葉「えっ!?受け入れ体制はいつでも整ってますけど!?」バッ


提督「冗談だよ」


青葉「あっ。な~んだ……」ショボン



提督「しかしそういう事だったなら、今までの青葉に対する俺の悪態は謝っておかないとな」


青葉「良いですよぉ。これは青葉が蒔いた種ですから。青葉も自分でねちっこいなぁとは思ってましたし……」


提督「いや、お前の気持ちも考えずに厄介者だと決めつけ、時には口汚く罵りさえもしたんだ」


青葉「……」


提督「お前の温かい厚意を踏みにじってしまった。すまなかったな」ペコッ



青葉「……青葉も謝らないといけない事があります」


提督「?」


青葉「司令官が翔鶴さんに撃たれる原因を作ったのは青葉だったんですから……」


提督「それはどういう……?」


青葉「情報をリークして、翔鶴さん達を煽っていたのは青葉だったんです」


提督「!!?」


青葉「あの時も、吹雪さんが単艦で出撃した情報を皆さんに伝えたのは青葉です」


提督「……それであれだけ早くに露見してたのか」


青葉「それだけじゃないんです……。不知火さんとの合流地点に誘導したのも青葉です。匿ってる場所への道順や扉の箇所、それに開き方も全部然り気無く教えました」


提督「……」


青葉「ごめんなさい……。青葉が勝手な事をしたせいで、司令官や翔鶴さんにまで迷惑を掛けてしまいました……」



提督「……何か訳があったんだろ?」


青葉「え?」


提督「青葉が面白半分ではこんな事をしない、という事は、さっきのお前の話で気付かされたからな」


青葉「!」


提督「何故そうしたのか、良かったら俺に教えてはくれないか?」


青葉「はい。……青葉、言いましたよね?全部知ってますって」


提督「言ったな」


青葉「それは金剛さんや筑摩さんの事も例外では無いんです」


提督「それも知ってたのか……」


青葉「はい。お二人の司令官への殺意と行動力、それに翔鶴さんの危うさ。青葉はそれに焦っていたんだと思います」


提督「……」


青葉「司令官の邪魔をしたく無かったというのは本当なんですよ?でも、それで司令官が死んでしまっては元も子も無いです。ですから直接ではなく、翔鶴さん達に気付いて貰うという形でお手伝いをしたつもりだったんです」


提督「なるほどな。お前の今までの行動にも合点がいったよ」


青葉「誤算だったのは、翔鶴さんが吹雪さんの後を追ってくれなかった事でした。その時は何とかなると思ってそのままにしていきましたけど、青葉は甘く見てたんです。翔鶴さんの怨み辛みの強さを……」


提督「それであの襲撃に繋がった、という訳か」


青葉「はい……。だからあれは全部、青葉のせいだったんです。明石さんのペンダントが無かったら今頃、司令官はもちろん、今回の件に関わった大半の方が、この世からいなくなっていたかもしれません。本当に……すみませんでした……」


提督「……皆には謝っておけよ?特に翔鶴辺りは今回の件で大分堪えてるみたいだからな。それと明石には感謝の言葉の一言でも述べておけ」


青葉「はい……」


提督「ん。罰としてはそんなとこだろ。それで?ご褒美は何が良い?」


青葉「……え?」


提督「良いか?お前が動いたからこそ、翔鶴達は大切な姉妹に再び会う事が出来たんだ。だったら、お前にはそれ相応のご褒美がいるだろ?」


青葉「で、でも青葉は……」


提督「まぁ、秘密が漏れた事で憂慮すべき事が色々と出来てしまったが、それはそれ。これはこれだ」


青葉「し、司令官……!青葉は……!青葉は一生、司令官に付いていきますから!」


提督「はは、そういうのは良いって。ほら、ご褒美は何が良い?」


青葉「ご褒美……」


提督「ああ。度を過ぎた願いじゃなきゃ何でも良いぞ?休みが欲しいとか、欲しい物があるとか」


青葉「……欲しいです」


提督「ん?何をだ?」


青葉「司令官に罵って……欲しいです」


提督「……は?」


青葉「青葉、司令官に罵られる事が癖になっちゃったみたいなんです!」


提督「えぇ……」


青葉「ほっぺたクローされた時とか……凄くゾクゾクしました!」


提督「ほっぺたクローってあれか?いつぞやの食堂での事か?」


青葉「はい!今思い返しただけでも……青葉、ゾクゾクします!」ゾクゾクッ


提督「oh……」




青葉「青葉をこんな風にしたのは司令官なんですから、責任は取って下さい!あと、ご褒美も下さい!」




           ~青葉、真相、性癖 終わり~





 【比叡の初恋】



提督「……」スー スー



比叡「司令?」ヌッ



提督「……」スー スー


比叡「寝てるんですか?」フリフリ


提督「……んぅ?」スー ス…



比叡「ん~、困りました。それじゃあどうしようかな……?」ウーン


提督「え……?は? うおあっ!?な、なんだなんだ!!?」ガバッ


比叡「あ!司令、おはようございます」


提督「えっ……?比叡、だよな?」


比叡「はい!比叡です」


提督「……1つ聞いても良いか?」


比叡「はい?なんでしょうか」


提督「……ここは俺の自室だよな?」


比叡「はい!司令のお部屋です!」


提督「……はぁ。筑摩といい比叡といい、お前らは少し神出鬼没が過ぎるぞ」


比叡「えへへ」


提督「貶しては無いが、褒めてもないぞ。それで?比叡もピッキングか?」


比叡「ピッキング?オリンピックの親戚か何かですか?」


提督「……あれ?じゃあお前はどうやってここに入って来たんだ?」


比叡「? 明石さんと夕張さんから聞いてないんですか?」


提督「……一体何の事だ?」


比叡「司令のお部屋にも秘密の通路を繋げて、執務室から行き来出来るようになったんですよ?」


提督「は? 何やってんの!?あの2人はなにやっちゃってくれてんのっ!?」


比叡「あれ?そういえばこれって、司令には秘密って言われてたんでしたっけ?」


提督「俺に聞くなよ……。ていうかこんな真夜中に何の用だ?おはようございますったって早すぎるにも程があるだろ……」


比叡「あ、そうでした。司令にぜひ聞きたい事がありまして」


提督「それは日中じゃ駄目なのか?」


比叡「私、考え出すと答えが出るまで寝れないタイプでして。出来れば今日中にお願いしたいです……」


提督「今日中って日付はもう既に変わってるんだが……。まぁ、寝付けないなら仕方無いか」


比叡「ありがとうございます!」



提督「それで聞きたい事ってのは何だ?」


比叡「えっとですね?榛名達が居なくなって1年経った時に、金剛お姉さま達と皆で司令の所に行きましたよね?」


提督「あー……。榛名達に謝って欲しい、ってヤツだよな?」


比叡「そうです!それです!」


提督「今となっては別段、気になるような事も無いはずだが……?」


比叡「司令、あの時に言いましたよね?"黙祷だけはしない"って」


提督「言ったぞ?」


比叡「あれはなんでだったのかなぁ?って。気になっちゃって」


提督「いや、ただの黙祷なら構わないんだが、お前らが望んでいた黙祷は榛名達を偲ぶ為の黙祷だったろ?榛名はああしてピンピンしてるからな。そんな縁起でもない事は出来ないよ」


比叡「でもあれだけ険悪な雰囲気だったんですよ?翔鶴さんに至っては艤装まで向けてましたし……」


提督「あの時の翔鶴と不知火には、誰かを撃とうとする気なんて無かったと思うぞ?2人とも、トリガーに指すら添えて無かったしな」


比叡「だとしても黙祷ですよ?それくらいしてあげれば良かったんじゃないんですか?」


提督「……匿っているとはいえ榛名達の事が大本営に漏れれば、あいつらは即刻処分される。榛名達も今はああして平和に過ごしている様に見えるが、その実、未だに生死の境目に立たされている事には変わりないんだ」


比叡「それはそうですけど……」


提督「例えそれが取るに足らない縁起やジンクスの類いだとしても、榛名達にとって、不吉の兆候と為り得るモノは避けておきたかったんだよ」


比叡「はぇ~……」


提督「そうやって呆れられても、この考えは変えんぞ?俺の頑固さはあの不知火でさえ認める程だからな。諦めるんだな」



比叡「……司令」


提督「なんだ?」


比叡「私、初恋をしてしまったかもしれません!」


提督「…………ん?なんの話?」


比叡「胸の辺りが凄いドキドキしています!でも嫌な感じじゃなくて、こう元気が出てくるような……。そうです!きっとこれが恋なんです!」


提督「深夜に無断で部屋に入ってきたり、話が急に飛んだり……。お前は少し自由奔放が過ぎるぞ?」


比叡「部屋に無断で入ったのは事実ですけど、話は飛んでませんよ?」


提督「いや、初恋がどうのって話がガラッと変わったろ」


比叡「だから司令に初恋をしてしまったみたいなんです」


提督「ああ、そういう。……え?」


比叡「そうだ!金剛お姉さまにも知らせなきゃっ!きっと喜んでくれます!」


提督「あ、いや、それは止めておいた方が良いんじゃ……」


比叡「という訳ですので、私は金剛お姉さまの所に戻りますね!」ガチャー


提督「あっ、隠し通路ってそこにあったのね」


比叡「司令、夜分遅くに失礼しました!」パタン




提督「じゃじゃ馬過ぎる……。金剛のなんとも言えない表情が目に浮かぶようだ」


提督(……とりあえず寝とくか) トフ……





          ~比叡の初恋 おわり~





 【霧島の思惑】




提督「……」カリカリカリ


不知火「……おかしい」


提督「……」カリカリカリ


不知火「おかしいです」


提督「……」


不知火「……」



提督「……急にどうした?寝不足で見えないモノが見えてるのか?」


不知火「馬鹿にしてますか?」キッ


提督「いや、心配してるんだって。で、何がおかしいんだ?」


不知火「霧島さんの事です」


提督「霧島が?どこからどう見ても模範的艦娘って感じだろ」


不知火「いいえ。あの秘密を知った艦娘達の中で唯一、霧島さんだけが司令と距離を置いたままです。これはきっと何かあります」


提督「ん~……。金剛達が特殊なだけで、普通の上司と部下ならこんなもんだろ」


不知火「金剛さんや青葉さんの例もあります。きっと本心では司令に対して良からぬ思惑を抱いているに違いありません」


提督「そんな大袈裟な……」


不知火「無いとは言い切れません」


提督「まぁ、人の感情なんて自分でも分からん場合もあるしな。……いや、しかしなぁ」


不知火「ですから今は霧島さんと距離を取るべきだと思います。なので、今度の休みは少し足を伸ばして、鎮守府の外へ出向いてみてはいかがですか?」


提督「……俺の次の休みって確か不知火も休みだったよな?」


不知火「……はい」


提督「……」


不知火「……」


提督「……どっか行きたいとこでもあるのか?」


不知火「……はい」


提督「……」


不知火「……」


提督「霧島をダシにしないで最初から素直にそう言いなさい」


不知火「……はい」


提督「……ハァ」


不知火「」ビクッ


提督「どこに行きたいんだ?近場なら構わないぞ?」


不知火「!」ニタァァ


提督「いい笑顔?だな」



提督(とはいえ、ここ最近の霧島に元気が無いのも確かだしな。近況報告を聞くついでに、それとなく聞いてみるか)




 ~金剛型の部屋の前~



提督「霧島~?いるか~?」コンコンコン


霧島「はい!」ガチャッ!


提督「うぉっ!?……っくりしたぁ~。どこかに出掛ける最中だったのか?」


霧島「いえ、その、提督の声が聞こえたもので……」


提督「そ、そうか。俺も霧島に少し話したい事があってな?寄ってみたんだよ」


霧島「! では中へどうぞ」ススッ


提督「いや、長居する気はないからここで良いぞ」


霧島「大丈夫ですから!」ズズイッ


提督「お、おう……。じゃあお邪魔させて貰うよ」



提督(あれ?思ってたより元気だな)




 ~金剛型の部屋~



提督「金剛達は席を外してるんだな」


霧島「ええ。金剛お姉さまと比叡お姉さまは買い出しに行ってます」


提督「それじゃあ丁度良かったか」


霧島「?」


提督「いやなに。不知火のちょっとした一言で心配になってな。近況を聞きがてら、様子を見に来たって感じだよ」


霧島「……そうですか。不知火さんでしたか」シュン


提督「まぁ、最近のお前は何となく元気がない、というより、どこか寂しそうにしている感じだったからな。ちょうど良い切っ掛けにはなったよ」


霧島「!……提督は私の事も気に掛けてくれているのですか?」


提督「? 当たり前だろ?」


霧島「そう、ですか。……ふふ」


提督「それがどうかしたのか?」



霧島「実は私、提督を試していたんです」


提督「……ん?もしかしてお前が最近、妙に寂しげにしてたのってそれのせいなのか?」


霧島「はい。私は提督と距離を置いてただけのつもりでしたけど、提督には私のその行動がそう見えたんでしょう」


提督「あ~、なるほどな。それで、俺が様子を見に来るか試したって訳か」


霧島「はい。こんな試す様な真似を提督にしてしまってすみません」


提督「いや、霧島に問題が無いのなら俺は構わないのだが……。でもなんでそんな事をしたんだ?」



霧島「……私は金剛お姉さまの様に、提督を信じようとさえしませんでした」


提督「……それを言ったら金剛と加古以外は皆そうだったろ。それにお前が悪い訳じゃないしな」


霧島「提督は知らないのでしょうね」


提督「何がだ」



霧島「比叡お姉さまは金剛お姉さまが心配なあまり、最初こそ提督の事を目の敵にしてきました。しかし金剛お姉さまが持ち直してきた頃からは、徐々にですが提督の事を信じようとする素振りを見せてたんですよ?」


提督「……気付けなかったな」


霧島「それは仕方ありませんよ。比叡お姉さまにとっての一番の優先順位は金剛お姉さまです。なので同調だけはしてましたから。ただ、二の足を踏んでいる事は確かでした。金剛お姉さまもそれには気付いていたと思います」


提督「比叡は良くも悪くも純粋なんだろうな。固定概念や思い込みが無いから、物事をフラットにして考えられるんだろう」


霧島「そうですね。比叡お姉さまは本来、怨恨の感情とは程遠い性格をしていますから」


提督「……だからといって霧島が気に病む事では無いからな?ここだけの話だが、霧島よりも筑摩や翔鶴の方が何倍もドギツかったからな」


霧島「……」


提督「今ではその筑摩や翔鶴とも良好な関係を築けてるつもりだ。それなのに、霧島だけを除け者にする訳無いだろ」


霧島「でも私は、お二人の様に提督と積極的にお話出来ませんでした!」



提督「へ?」


霧島「……ぁ」


提督「……もしかして俺との距離を縮めたいが為に、距離を置いてたのか?」


霧島「……」


提督「……」


霧島「……」


提督「……霧島はあれだな。意外とザ・末っ子って感じなんだな」


霧島「なっ!?た、確かに末っ子ですけど……」


提督「いや、決して悪い意味じゃないぞ?霧島はなんでも出来るキャリアウーマンみたいなイメージだったからつい、な?」


霧島「キャリアウーマンのイメージが末っ子になるってどう考えても悪い意味じゃないですか……」


提督「ち、違うって!末っ子って愛らしいイメージとかあるだろ?なんか霧島が妹みたいに思えてきてだな?」


霧島「……妹?」


提督「あ……。待った!今のはつい口が滑って!」


霧島「……」


提督「す、すまん。流石に気持ち悪いよな。聞かなかった事にしてくれ」



霧島「……お、お兄さま」


提督「ちょっ!?だから聞かなかった事にって!」


霧島「お兄さまと呼んでは失礼でしょうか?」


提督「失礼とかそういう話じゃなくてだな?」


霧島「私は……提督がお兄さまになってくれたら、その、嬉しい、です……けど」カァァ


提督「……」


霧島「……」モジモジ



提督「……今日から俺が霧島のお兄ちゃんだ」キリッ


霧島「! お兄さま!」ギューッ



提督(仕方無い。霧島が可愛いから、これは仕方無い事なんだ)





 ~翌日の執務室~



金剛「提督ゥー!皆が出払っている今の内にランチにしちゃいまショウ!」ガチャー


不知火「司令はまだ執務中です。大人しく食堂で食べてきて下さい」


比叡「司令、時間はまだかかりそうですか?」ヌッ


提督「あ~、すまんな。急ぎの仕事があってもう少し掛かりそうだ」


金剛「oh,shit!折角のチャンスガッ!」


比叡「これだけの数の艦娘達が居ないなんて中々無いですもんね。残念です……」


不知火「そういう訳なのでお引き取りを」


金剛「仕方無いデスネ……。それじゃあ比叡、霧島!提督の邪魔にならないように食堂に行くヨ!」


比叡「そうですね。司令!先に食べてきちゃいますね!」


提督「ああ、しっかり食べてこいよ」


霧島「……」


金剛「霧島?」



霧島「お兄さま。今日の夜におやつを持って、お兄さまの部屋に遊びに行っても良いですか?」


提督「ちょっ!何言って!」


金剛「what!?霧島はいつ提督の妹になったのデスカ!?じゃあワタシの立ち位置はどこになるノ!?」


比叡「私達って4姉妹じゃなくて5兄妹だったんですね!あれ?5姉弟の方なのかな?」


不知火「」チーン




霧島「提督は私のお兄さま、なんですよね?」


提督「…………うん、そうだな!」




          ~霧島の思惑 おわり~





 【吹雪との出会い】




翔鶴「提督、少しお願いしたい事があるのですが……」


提督「翔鶴がお願いなんて珍しいな。なんだ?」


翔鶴「……吹雪ちゃんに会ってあげて欲しいんです。あの件からまだ一度も会いに行ってませんよね?」


提督「んー……。会いに行きたいのは山々なんだが、吹雪達と会うのは極力控えてるんだよ」


翔鶴「それは秘密が漏れるのを防ぐ為、という事ですよね?」


提督「そういう事だ。俺がノコノコと会いに行ったらバレかねん。なにせ瑞鶴達でさえもまだ会えてないんだからな」


翔鶴「提督が海側のルートなんて通っていたら不審がられますものね」


提督「だろ?秘匿所と執務室も繋がったらしいが、俺がここを留守にする事なんてそうそうは出来んからな」


翔鶴「吹雪ちゃんにこちらに来てもらう、というのはどうでしょうか?」


提督「……それはまずい。俺が執務室にいる間は基本、鍵は掛けない。些細な事ではあるが、他の皆に違和感を与えるような真似はしたくない」


翔鶴「では小会議室なら鍵を掛けても不自然ではありませんよね?」


提督「……ん?なんだか嫌な予感がするぞ?」


翔鶴「明石さんと夕張さん、お二人のご尽力のお陰でこの度、小会議室とも開通する事が出来ました。おめでとうございます!」ペコッ


提督「全然めでたくないよ!?明石ぃい!?夕張ぃい!?ちょっと来てくれるぅううう!!?」




 ~小会議室~



提督「ここで待ってれば良いんだな?」


翔鶴「はい。吹雪ちゃんに伝えたら跳び跳ねるように喜んでましたよ」


提督「そ、そうか……」ソワソワ


翔鶴「提督?どこか落ち着きが無いようですけど、どうかしましたか?」


提督「……自分でも分からんが、変な高揚感があってな。久し振りに子供に会う親もこんな気持ちなんだろうか?」


翔鶴「ふふ、提督ならきっと良いパパになれますね。……こ、この場合のママはわたs」



ガチャン……



提督・翔鶴「!」



吹雪「こうかな?よいしょっ、と」ギギギ



提督「久し振りだな、吹雪」


吹雪「! 司令官!」タタタ ギューッ


提督「おかえり……。おかえり、吹雪」ポンポン


吹雪「! ただいまです!吹雪型駆逐艦・吹雪、ただいま帰りました!」ギューッ


提督「どうだ?あっちでの生活にはもう慣れたか?」


吹雪「はい!皆さん、良い方達ばかりで良くしてもらってますよ」


提督「そうか。……あんな所で息苦しくは無いか?」


吹雪「あんな所なんかじゃないですよ。快適そのものです。心配は要りません」


提督「なら良いんだ」


吹雪「えへへ。……司令官」ギューッ



翔鶴「ふふ、良かったね。吹雪ちゃん」ニコニコ



 ~数分後~



翔鶴「提督、どうぞ」コトッ


提督「ん、ありがとう」


翔鶴「はい、吹雪ちゃんも」コトッ


吹雪「ありがとうございます。それと私のワガママを聞いてくれてありがとうございました!」


提督「ワガママ?」


翔鶴「実はこのお願い、元々は吹雪ちゃんのお願いだったんですよ」


提督「なんだ、そうだったのか」


吹雪「えへへ。直接会って聞きたい事があったので」


提督「聞きたい事か。なんでも聞いてくれて構わないぞ。遠慮せずに言ってみてくれ」


吹雪「それじゃあ……。あのですね?司令官が匿っている方々って、他の鎮守府から引き抜いてきた欠損艦達じゃないですか」


提督「そうだな」


吹雪「それも、瑞鶴さんが翔鶴さんの妹であるように、全員ここに所属してる艦娘達の姉妹艦ですよね?」


提督「……まぁな。欠損艦全員を助けてはやりたいのは山々だが、それをやりだすと際限が無くなるからな」


吹雪「そこなんです!私が聞きたいのは!」


提督「ん?」


吹雪「私の姉妹艦はここには居ないじゃないですか。なんで私を引き抜いてくれたのかなーって疑問に思いまして……」


提督「ああ、なるほどな。そういう事なら翔鶴に聞いた方が早いと思うぞ?翔鶴、話してあげなさい」


翔鶴「……?」


提督「……翔鶴?どうした?」


翔鶴「あの、すみません。何の話だか、私にはさっぱりなのですが……」


提督「あれ?翔鶴のあの時の言葉ってもしかして自覚無しで言ってたのか?」


翔鶴「あの時……ですか?」


吹雪「あの、司令官?私もさっぱり分からないんですけど……」


提督「ふむ。じゃあ話していくとするか。あれは1年近く前に大本営に呼ばれた時の事だ」


翔鶴「……それは覚えてますね」


提督「あの時のお前は誰が見ても憔悴しきっていたからな。少しでも気晴らしになってくれればと思って連れていったんだよ」


翔鶴「そうだったのですね……。随分と無礼な振る舞いをしていた記憶はあります……」


提督「それは気にしなくて良いぞ。無理に連れて行った俺が悪い訳だしな。それで話は戻るんだが――」




 ――1年近く前――



提督「すまないな。ここへ来る時は最低でも1人、艦娘を護衛として連れてくる事が義務付けられているんだ」


翔鶴「……それくらいなら知っています」


提督「本来なら秘書艦を連れて来るべきなんだが、不知火は別件の用事でな。すまないな」


翔鶴「……」


提督「……」


翔鶴「……」


提督「……会議が始まるまでは自由に行動していても良いぞ?少し散歩でもしてきたらどうだ?」


翔鶴「結構です」


提督「……そうか」


翔鶴「……」


提督「……」


翔鶴「……」


提督(……ん?あの子、あんな慌てて何してるんだ?ってこっちに来たぞ)



吹雪「あ、あの!道をお尋ねしても宜しいでしょうか?」


提督「ああ、迷子か?ここは広いからな。俺も詳しい訳では無いが、どこに行きたいんだ?」


吹雪「助かります!えと、第2会議室というのはどこにあるんでしょうか?」


提督「ああ、それならこの通路を行った突き当たりにあるよ」


吹雪「あれ?こんな目の前にあったんですね」


提督「はは、あとちょっとで行けたのにな。惜しかったな」


吹雪「……」ジーッ


提督「……すまん。少し馴れ馴れしかったな」


吹雪「あ、いえ。そういう訳じゃ無くて……」


提督「そういえば随分と急いでるみたいだったけど、早く行かなくて良いのか?」


吹雪「そ、そうでした!あの、ありがとうございました!」ペコッ


提督「あまり急いで転けたりするなよー」


吹雪「はい!は、早く行かなきゃ!また皆に迷惑かけちゃう……!」タタタタッ



提督「……随分と元気な子だったな」


翔鶴「……似てる」ボソッ


提督「ん?」


翔鶴「瑞鶴に……」


提督「……」




 ―回想シーン終了―




提督「まぁ、そんな感じだ。翔鶴のあの一言で、吹雪を引き抜こうって決めたんだよ」


吹雪「えっ?あの時の優しそうな人って司令官だったんですか!?」


提督「ん?吹雪は覚えてたのか?」


吹雪「いえ、こんな人が司令官だったらな、って印象に残ってただけで人相までは……。すみません……」


提督「謝る事でもないだろ。覚えてるだけでも充分に凄いしな」


吹雪「でも今は私の司令官なんですよね?えへへ、嬉しいです!」


提督「はは、俺も吹雪がここに来てくれて嬉しいぞ~」クシャクシャ


吹雪「きゃーっ♪」キャッキャ



翔鶴「……提督」


提督「ん?どうした、翔鶴?」クルッ


翔鶴「提督!」ギューッ


提督「……へ?」


吹雪「」



翔鶴「提督……!提督……!」スリスリ ギューッ!


提督「お、おい!ちょっと落ち着いて!」


翔鶴「落ち着けません!発言した本人の私でさえ覚えていない様な何気無い一言、その為にここまで動いて下さっていたんです……。もう自分の気持ちを抑えられません」ギューッ


提督「……別に感謝される様な事でもないよ。良かれと思ってやった事ではあったが、結果として翔鶴から瑞鶴だけではなく、吹雪までをも取り上げてしまったんだ。大事な者を二度も失わせてしまった。辛かったろ?」


翔鶴「それでもです!それでも……今だけはこうさせて下さい。お願いですから……」ギューッ


提督「……そうだな」



吹雪「……あれ?じゃあ司令官は私が欠損艦って知らなかったんですか?」


提督「救援を申し込んだ時は知らなかったな」


吹雪「えっ?じゃあいつ気付いたんですか?」


提督「お前がこっちに着任して来る少し前だ。あっちの提督がギリギリまで知らせなかったんだよ」


吹雪「なんでそんな事……」


提督「吹雪を借りる見返りとして、それなりの物資を送ったからな。大方、その量を吊り上げる為じゃないか?」


吹雪「でも最後は教える事になるんですから、結局は一緒の事じゃないんですか?」


提督「誓約書に捺印もしてしまっていたし、階級としての格はあちらの方が上だ。あそこまで話が進んでいた以上、何を言っても無駄だよ」


吹雪「姑息ですね……」


提督「まぁ、こっちにはこっちの考えがあったし問題は無いよ」



吹雪「……じゃあなんで司令官は私を引き抜いたんですか?救援の期限が切れた時にそのままにしてれば良かったじゃないですか。私はここの艦娘の姉妹艦でもないし、私が残っちゃったら翔鶴さんに辛い思いをさせる事も分かってた訳ですよね?」


提督「……」


吹雪「司令官……?」


提督「……笑わないか?」


吹雪「た、多分……」


提督「……情が移ったんだよ」


吹雪「え……?」


提督「半年も一緒に居たんだぞ?吹雪が死に戻るのをただ見送るだけ、そんな事出来る訳無いだろ……」


吹雪「……」


提督「さっきも言った様に、翔鶴には悪い事をしたと思っている。しかし生きてさえいればきっとまた会えるはずだからな。現にこうして会えてる訳だ。だから許して下さい!翔鶴さん!」


翔鶴「ふふ、大丈夫です。私は怒ってませんから。ね?」ギューッ


提督「はぁ~、翔鶴やさしい……」



吹雪「司令官……」


提督「ん?なんだ?」


吹雪「司令官!」ギューッ


提督「うおっ!?吹雪?」


吹雪「司令官……!司令官……!」ギューッ



提督「……なんだこの既視感は?」


翔鶴「さっきの私みたいですね」ギューッ


吹雪「あの状況で私を匿うなんて、そうするだけの何かがあるんだって思ってました。でも司令官は私を救う為だけに匿う決意をしてくれてたんですね!」


提督「それはそうだけど……。一旦、落ち着こう。な?」


吹雪「嫌です!今日だけはワガママ言わせて下さい!」ギューッ


翔鶴「私も嫌です♪」ギューッ



提督「前門の鶴に後門の吹雪か。これは逃れられないな……」




          ~吹雪との出会い おわり~





 【お騒がせコンビ】




 ―小会議室―



提督「……どうしてここに呼び出されたか、分かってるよな?」


明石「大方、これの事ですよね?」ガチョッ


夕張「凄いでしょ!作るのに苦労したんですよ~?」ギギギギ


提督「……俺はお前らのそういう、屈託が無くて楽天的な所に好印象を抱いてはいるが、今回ばかりはアウトだ。流石に見逃せん」


明石「うわ~……。2人同時に口説くなんて提督も中々やりますね~」


夕張「えっ?今のって口説かれてたの?てっきり説教が始まる流れかと思ってたんだけど」


提督「……頭のネジがより足りてないのはやはり明石の方だったか」


夕張「ほら~」


明石「あれ?おかしいですね。ここで3人は幸せなキスをしておしまい的な感じかと思ったんですが」


夕張「どう考えたらそうなるのよ。明石には後でちゃんと言っておきますね?それじゃあ行くわよ。明石」スタスタ


明石「うぅ~……。待って下さいよ~」スタスタ



提督「おい」


明石・夕張「……はい」ピタ


提督「座れ」


明石・夕張「……はい」ガタ



提督「それで騙せるとでも思ったのか?」


明石「まぁ提督ならこれでイケるかな?って。えへへ」


夕張「提督って結構流れやすい所あるからね」


提督「はぁ……。お前らと話してると怒る気力すら無くなってくるよ」


明石・夕張「イエス!」グッ



提督「しかしこればっかりは駄目だ!」


明石・夕張「ですよね~」


提督「こんなのがそこかしこにあったらいずれバレるっていう事くらい、お前らなら分かるだろ?」


夕張「それは、まぁ……」


提督「お前らはその場のノリで作ってるのかも知れんが、榛名達にしてみれば堪ったもんじゃないぞ!」


明石「え~?榛名さん達が一番喜んでましたけどね~」


提督「確かに吹雪も喜んではいたな……。しかし、駄目なモノは駄目だ!」


夕張「大丈夫ですって。提督に無断で作ったりするのはここの隠し扉で最後にしますから」


提督「……そう言いながら俺の自室の方にも作ってあるよな?」


明石「あり?誰か話しちゃったんですか?」


提督「夜中に比叡が来てな?口が滑ったとかじゃなくて、秘密って事自体を失念してたみたいだぞ」


明石「あちゃ~」


夕張「もうっ!だから言ったのに~。比叡さんとか利根さんとかのやらかしそうな人には秘密にしておこうって!」


明石「ですね~。でもまさか比叡さんが夜中に出向くとは……」


提督「あれは怖かったぞ……。真っ暗闇の中、何かの物音で目覚めたら俺以外はいない寝室のはずなのに、誰かが目の前に立っていたんだからな」


夕張「もしかして提督、寝込みを襲われてたり……?」


明石「えっ!?そういうのに使うのは禁止ってあれほど言ったのに!何してるんですか、もうっ!」


提督「それが今まさにお前らに抱いてる俺の素直な気持ちだよ!」


夕張「あ、あはは~。……すみません」


明石「それで!?寝込みは襲われたんですか!?どうなんですか!?」ズイッ


提督「比叡がそんな事するわけないだろっ!」ポコ


明石「あいたっ!」


夕張「まぁ、冷静に考えればそうだよね~」


提督「はぁ~……。お前らと話してるとなんでこう脱線してしまうんだ……」


夕張「あはは、やっぱり提督ってば流されやすいんだ~。かわい~」


提督「兎に角だ!作ってしまった物に関しては仕方無いが、これ以降は絶対に許さんからな!」


明石・夕張「は~い」


提督「お前らの返事はどうにも気が抜けるな。心配過ぎる……」


明石「大丈夫ですよ。仕掛けを施してる壁には細心の注意を払ってますし、見た目では絶対にバレません」


夕張「開ける手順もあるし、私達の方からロックも掛けれるからね。空洞があるって気付かれないように中の反響音にも工夫してますし、滅多な事じゃ違和感すら持たれないと思いますよ?」


提督「確かにここに入り口があると言われても全く分からんが……」


明石「ですよね?我ながらいい仕事をしました!」


提督「……本当にもう作るなよ?」


夕張「需要ももう無いですし作りませんよ」


提督「需要……?まぁいい。分かってくれたならそれで良いんだ。じゃあ俺はそろそろ戻るよ」



明石「あ、待って下さい。これ、お預かりしてたお守りです」チャリッ


提督「ん?俺が渡したお守りの面影すら残って無いんだが……。焦げたアメーバみたいな見た目だったろ?」


明石「仮にも提督の座に座っている方に、あんなみっともない物を付けさせる訳にはいきませんからね」


提督「……前のお守りはどうしたんだ?悪いんだが、あのお守りを持ってきてくれないか?」


明石「あ、元の素材はちゃんと使ってますよ?ある程度の付け足しはしましたが、全くの別物ではないですから安心して下さい」


提督「そうだったのか。……ありがとうな。また肌身離さずに付ける事にするよ」


明石「と言っても前の様な隠し要素はもう無いですからね?過信しないで下さいよ?」


提督「前にも言っただろ?俺はお前のその心遣いが嬉しくて付けてるんだって。そこは関係無いさ」


明石「て、提督ぅ~……」キューン



夕張「ちょっと!私の前でイチャイチャするのは止めてって言ったでしょ!?」


明石「はっ!?すみません、つい……」


夕張「もうっ!明石ばっかりっ!確かに今回のMVPは明石のお守りだったわけだけど、私だって凄く心配してたんだからね?」


提督「知ってるよ。金剛の時も筑摩の時も、お前を抑えるのは大変だったって明石から聞いてたからな」


夕張「え?あ、明石?話しちゃったの……?」


明石「へへ、すいやせん……」ペコペコ


提督「何やら勘違いをしている様だが、俺が感謝しているのは明石にだけではないんだぞ?夕張にも同じ様に感謝しているんだ。心配を掛けさせてしまってすまなかったな」


夕張「わ、私は別に……」


提督「お前の気持ちも充分に伝わってるからな?ありがとな」


夕張「て、提督ぅ~!」ギューッ



明石「ふむ、やっぱり口説きに来てましたか。はは、こやつめ」




          ~お騒がせコンビ おわり~





 【陰口】



 ~食堂~



筑摩「このメンバーが休みの日にこうして会うなんていつぶりでしょうか?」


翔鶴「確かに久しぶりですね。今までは休みが一緒だったとしても、こうして会う事はありませんでしたから」


金剛「私達にもそうするだけの余裕が出てきたという事デース」


加古「だね。ところで比叡さんと霧島さんは?」


金剛「今日は2人とも出撃ダヨ。2人がいないのは寂しいですけど、戦艦は数が少ないからネ。ワタシ達姉妹も休みの日なんて中々合わないんダヨ」


加古「艦種によってそういうのもあるんだねー」




??「あの~、筑摩さん。ここの席って空いてますか?」



筑摩「ええ、空いてますよ?」


艦娘A「もし良かったら相席とかってお願い出来ますか?」


筑摩「ここで良いのなら私は構いませんよ。皆さんはどうですか?」


翔鶴「ええ、歓迎しますよ」


金剛「皆で食べた方が美味しいからネー。何人でもウェルカムダヨー」


加古「あたしの隣も空いてるから座んなよ」


艦娘B「ありがとうございますぅ~。少し来るのが遅くなっちゃった上に、今日に限って満席で困ってたんですよぉ」


筑摩「確かにお昼にしては少しだけ遅いですね。何かあったんですか?」



艦娘C「提督の機嫌が悪くて説教食らってたんですよ……」ブスッ


加古「機嫌……ね。心当たりは無いの?」


艦娘A「その、午前中の出撃の際に深追いをしてしまいまして……。それで提督から、"緊急時以外は何をするにしてもまずは連絡をしろ"、とのお叱りを受けてしまって……」


筑摩「それは仕方無いですね。提督で無くとも、きっと同じ様に言われていたでしょうから」


艦娘C「そうは言ってもその深追いのお陰であれだけの戦果が得られたのに……。きっと僻んでるんですよ。自分の指示じゃ無かったからって!」


翔鶴「……」ニコ…


筑摩「……提督は以前から安全第一の慎重派でしたから。きっと利よりも人命を取ったのでしょう」


艦娘B「あの提督がですかぁ?それは無いですよぉ」


艦娘C「そうですよ!そんなのは筑摩さん達が一番分かってるじゃないですか。仮にそうだとしたら今頃利根さん達だって―」


艦娘A「ちょ、ちょっと……」


艦娘C「え? ……あ。す、すみません……」


筑摩「大丈夫ですよ。そこは気にしていませんから」


艦娘A(……そこは?)



艦娘B「あぁ!提督の話で思い出しましたけど、提督のスカーフ!見ましたかぁ?」


筑摩「ええ。数ヵ月前からずっと身に付けていらっしゃいますね」


金剛「……」


艦娘B「お気に入りなのかなんて知りませんけど、毎日同じ物を付けてくるのはどうなんでしょうねぇ?」


筑摩「同じ物では無いと思いますけど……。いつも綺麗にされているようですから」


艦娘B「だとしたらあれを何枚も持ってるって事ですかぁ?……うわぁ」


加古「物の良し悪しは人によりけりだしね」


艦娘B「でもあの色はちょっとぉ……。もっと何とかならなかったんですかねぇ?センスが悪いにも程がありますよぉ」


金剛「……提督は目立たない色を選んだつもりなのでショウ」


艦娘B「軍服は真っ白なのに、あの色は余計に目立ちますよぉ」


艦娘C「ああ、あのばあちゃんの風呂敷みたいな色のやつね」


艦娘B「へぶぅっ!!」ブフゥ


艦娘C「ちょっ!吹き出さないでよ、汚いでしょ!?」


艦娘B「おばっ、おばあちゃんの……っ……っ!…………っふぅ……。止めてよぉ。これ絶対に思い出し笑いしちゃうヤツぅ」


金剛「……」


艦娘A「金剛さん?どうかしましたか?」


金剛「! わ、笑いを堪えてたんデース!」


艦娘B「ですよねぇ~?まったくもぅ。誰かさんのせいで金剛さんまで巻き込んじゃってるじゃない」


艦娘C「そう見えるんだから仕方無いでしょ。金剛さんもそう見えますよね?」


金剛「そう、ですよネ……」



加古「……じゃあさ、金剛さんが代わりのを買って来てあげたら?」


金剛「……え?」


艦娘A「それは……。金剛さんも嫌でしょうし……」


加古「だってこのままじゃ朝礼とかで吹き出しちゃうかもなんでしょ?後で何か言われるよりはマシだと思うけど。ね、金剛さん?」パチッ


金剛「! 確かに加古の言う通りデス!」


艦娘A「金剛さんがそれで良いなら何も言いませんけど……。嫌では無いんですか?」


金剛「渋々デスヨ?渋々ですが、ワタシが代わりの物を買って来るだけで全て解決ですからネ」


艦娘B「ほっ、助かりますぅ~。私はあのスカーフを今度見てしまったら、堪えられる気がしませんからぁ」


艦娘C「それもこれも提督があんなダッサイスカーフを毎日欠かさずに付けてくるからだよ。サボるのだけは得意な癖に、そういうどうでも良い所は真面目なんだからめんどくさいよね~」


筑摩「……サボる?提督が、ですか?」


艦娘B「あれぇ、知らないんですかぁ?噂になってますよぉ?」


艦娘A「なんでも波止場の方にふらっといなくなる事があったみたいですよ。実際に見かけた人もいますし」


加古「……なるほどね」


艦娘A「上に立つ者ならそういう行為は控えて欲しいです。今までの行いが酷いだけに、執務くらいは真面目にして欲しい、とは思っていますから」


加古「……だね」



艦娘A「そうでした。この話の流れで翔鶴さんにも聞きたい事があるんですけど、聞いても良いですか?」


翔鶴「……」ニコォ…


艦娘A「……あの、翔鶴さん?」


翔鶴「はい、なんでしょう?なんでも聞いてくれて構いませんよ」


艦娘A「え?あ、その、この前の暴発事件の事なんですけど、懲罰とかは免れたのかなって」


翔鶴「……ええ。軽い説教はありましたけど、口頭注意だけでしたね」


艦娘B「良かったですぅ~。提督の次の標的は翔鶴さんなんじゃないか、って噂にもなってたから心配してたんですよぉ」


艦娘B「正直、期待はしちゃってたしね。そしたら2、3日でけろっとして帰ってくるんだもん。これじゃあ新たな被害者も出て来ちゃうんじゃない?」


筑摩「それは無いですよ。提督が狙っているのは今のところ、欠損艦だけですから」


艦娘A「そうだと良いのですが……」






ジリリリリリリッ



艦娘A「! 予鈴ですね」


艦娘B「ああっ、もう!あいつの説教のせいでもう終わりだよ!」


艦娘C「まぁまぁ、運が悪かったと思って諦めようよぉ」


艦娘A「そうですね。筑摩さん達のお陰で昼食は取れましたし」


艦娘B「そうだった!相席ありがとうございました」ペコッ


艦娘C「お話楽しかったですぅ~」


艦娘A「では私達は行きますね。お世話になりました」ペコ




筑摩「あれだけ居た艦娘達も、予鈴が鳴ったら一斉に居なくなりましたね」


金剛「……加古」


加古「ん?」


金剛「さっきはサンキューネ」


加古「あんな今にも泣き出しそうな顔されたらそりゃあ、ね?詳しくは聞かないけど、何かあったんでしょ?」


金剛「……はい」


翔鶴「……加古さんも様子がおかしかったですが、波止場で何かあったんですか?」


加古「まぁね。行っとくけど提督はサボったりはしてないからね?」


翔鶴「ふふ、そこは疑いもしてませんよ?」


筑摩「私は翔鶴さんがいつ暴れだすのか、気が気でなかったですよ……」


翔鶴「あ、暴れたりなんかしませんよ!?」


金剛「アー……。翔鶴のあの意味深な笑みには、ワタシも背筋が凍ったヨ」


翔鶴「違いますからね?私はただ笑顔でやり過ごそうとしただけですから!」


加古「えー?にしては顔が引きつってたけど?あの3人もきっと、内心ではビビってたよ」


翔鶴「た、確かに思う所はありましたけど、私は何かを言えるような立場では無いですから。……つい最近まではあちら側でしたし」



青葉「むしろ、もっと過激な事をされてましたからね~」ヒョコッ


金剛「青葉っ!?いつからそこにっ!」


筑摩「私達が席についた時には既に居ましたよ?」


青葉「筑摩さんにはバレていましたか。青葉もまだまだですね」


加古「それで何しに来たの?」


青葉「あらま、冷たい。いえ、皆さんが下手な事を言ってやらかさないかを見張ってたんですよぉ」


翔鶴「……それは提督の指示ですか?」


青葉「そう心配しなくても翔鶴さんの事は司令官も信頼してますよ」


翔鶴「そうですか。……ふふっ」ニコ


筑摩「……その言い種だと、提督から信頼されていない方もいるという事ですか?」


金剛「! き、きっと青葉の事デース!そうに違いありまセーン!」


青葉「私ですかぁ?……えへへ」ニヘッ


筑摩「……随分と幸せそうなお顔ですね?」


青葉「あっ、分かっちゃいますかぁ?実は青葉も先日、司令官から労いの言葉を頂いたんですよ!」


金剛「う、嘘デース!そんなの適当、デタラメ、嘘八百に決まってマース!」


青葉「いやまぁ、今までの青葉の記者魂の軌跡を見たらそう言いたくなるのも分かります。青葉でさえまだ夢見心地ですからね~。……えへへ」ニヘラッ


加古「はいはい、そういうのは良いから。それで提督から信頼されてないってのは誰なの?……あ、あたしじゃないよね?」


青葉「はは~ん?加古さんもそういうのは気になるんですね~。ふむ、これがメスの顔ってやつですか~」


加古「良いから早く教えなって!」ペチーン


青葉「痛いっ!もう~、せっかちですね~。それじゃあ言いますよ?提督に信頼されていないのは~?」



筑摩・金剛・加古「……」ゴクリ



青葉「明石さんと夕張さんです!」


筑摩・金剛・加古「……あ~」


青葉「あれ?急に食い付きが悪くなりましたね?」


加古「だって、ねぇ?」


金剛「てっきりこの中の誰かかと思いましたヨ。青葉も人が悪いデース」


筑摩「明石さんと夕張さんなら、既に周知の事実ですしね」


青葉「あれ~?」


加古「そもそも明石と夕張さんを信じてる人なんているの?」


青葉「あっ、今のは重大発言ですよ!?良いんですか?リークしちゃいますよ!?」


翔鶴「青葉さんが考えてる信頼と、加古さんが言いたい信頼は、多分ちょっと違うと思いますよ?」


筑摩「そうですね。明石さんも夕張さんも提督からの信頼は厚いと思いますが……」


金剛「ただ、工作が絡んでくるとネ~」


青葉「あっ、なるほど。そういう事ですか」


加古「ちょっと青葉ぁ~。記者としては相手の真意まで汲み取れないと、一流とは言えないんじゃない?」


青葉「ん~。……でも誤解だったら誤解で、それはそれで面白そうなので青葉的には問題無いですね!」


金剛「そんな事ばっかり言ってると、本当に提督の信頼を失いマスヨ?」


青葉「なんでっ!?」


加古「むしろそれでなんで信頼してもらえるって思えるの……」





          ~陰口 おわり~





 【不知火へのご褒美】



提督「不知火、ちょっと良いか?」


不知火「なんでしょうか?」


提督「一段落もついた事だし、この前のご褒美でもあげようと思ってな」


不知火「それは貰えません」


提督「まぁ、そう来るとは思ってたけどな。一応聞いておくが、理由は?」


不知火「不知火は司令を守れませんでした。それに貰えるような事もしていません」


提督「吹雪を秘匿所まで案内する、それが俺の下した命令だったはずだぞ?その最中に俺を守るなんてのは誰であっても不可能な話だ」


不知火「その命令でさえ、吹雪さんが尾けられている事に気付けず、筑摩さん達まで案内してしまった形になりました」


提督「あの日は嵐で視界が悪かったし、その上、筑摩達があそこまで早く吹雪の後を追ったのも想定外だった。不知火は充分に良くやってくれたよ」


不知火「確かに予想外の事は重なりました。ですが、それで喜び勇んでご褒美を貰うほど、不知火は恥知らずではありません」


提督「どうしても受け取って貰えないのか?」


不知火「はい」



提督「……そうか。俺はただ、不知火の喜ぶ顔が見たかっただけなんだけどな」


不知火「……」


提督「不知火がそこまで嫌がるのなら、俺としてもそれは望むところではない。仕方無いな……」


不知火「……」


提督「そうか……。受け取ってすらくれないか……」


不知火「…………ご褒美ではなく、あくまでも贈り物としての範疇でなら、不知火もやぶさk」


提督「良し!で、何が欲しいかは決めてあるのか?」


不知火「……さてはハメましたね?」


提督「こうでもしないとお前は受けとらんだろ」


不知火「……」


提督「お前に日頃の感謝を込めて贈り物をしたいという思いに嘘や偽りは無いんだ。このまま受け取っては貰えないか?」


不知火「……司令の気持ちを踏みにじるような真似は、不知火もしたくはありません。ですからありがたく頂く事にします」


提督「! そうか!それじゃあ何が良い?前にも言ったが、俺の出来る範囲でなら何でも買ってくるぞ」



不知火「……司令とお揃いの物が欲しいです」


提督「お揃い……?もしかしてこの軍服か?いや、これは軍の物だからちょっとな……」


不知火「軍服を貰ったとしても不知火はそれを活用する術なんて持っていません」


提督「だ、だよな。でも他のでお揃いって言ったって……。この時計か?これ男物だぞ?」


不知火「……スカーフ」


提督「へ?」


不知火「そのスカーフは駄目なんですか?」


提督「いや、俺は構わないが、こんなので良いのか?これ、艦娘の間で糞ダサスカーフって呼ばれてるんだぞ?」


不知火「知っていたんですか……。というより知ってて付けてたんですか」


提督「お前こそそんな散々な批評がされてるこれを欲しがってるじゃないか」


不知火「……それでくれるんですか?くれないんですか?」


提督「あ、あげるよ!あげるけどさぁ……。思ってたのとなんか違ったから……」


不知火「不知火はそのスカーフが良いんです。そもそも司令の気持ちさえ込もっていれば不知火はそれで良いですから」


提督「……不知火、お前は本当に良い子だな」ジーン


不知火「は、話は済みましたね。仕事に取り掛かって下さい」


提督「そうだな!気合い入れて頑張るか!スカーフは明日持ってくるから!」カリカリカリカリ


不知火「司令は分かりやすいですね。……フフッ」




 ~翌日~



コンコンコン



提督「入れ」



ガチャ



不知火「おはようございます」ペコッ


提督「おはよう、不知火。待ってたぞ!これがご褒美のスカーフだ」


不知火「………………ありがとうございます」


提督「あ、あれ?なんか嬉しそうじゃないな?」


不知火「司令。司令が今、身に付けているスカーフは何ですか?」


提督「これか?これは昨日、金剛から貰ったんだよ。折角だから付けてみたんだが、どうだ?似合ってるか?」


不知火「……似合っています。ですがその話、詳しく聞かせてもらっても?」


提督「構わないが、なんか怒ってないか?」


不知火「良いから聞かせて下さい」


提督「え?う、うん……。あれは仕事を終えて自室に戻った時だったな」




 ―回想シーン―



提督「ふぅ、今日も無事に1日が終わったぞ、っと」ガチャ


金剛「ご飯にスル?お風呂にスル?それともワ・タ・シ」


提督「ササッと済ませて寝るか~」スタスタスタ


金剛「スルー!?提督ゥー、それはあんまりダヨ~!」


提督「……しょうがないだろ。お前も誰かしらに毎日の様に不法侵入されててみろ。いい加減慣れてくるから」


金剛「what!?誰デスカ!そんな羨ましい事をしてるのは!?」


提督「……」ジトーッ


金剛「……犯罪を犯しているのは、デシタ」


提督「訂正しても大元が間違ってるんだよなぁ……。まぁ良いか。それで何しに来たんだ?」


金剛「oh.そうデシタ!これ、ワタシからのプレゼントデース!」


提督「プレゼント?嬉しいのは嬉しいが、今日は俺の誕生日じゃないぞ?」


金剛「これはワタシの感謝の気持ちデスカラ、気にしなくても大丈夫デース」


提督「そうか。……ありがとうな。素直に嬉しいよ」


金剛「喜んで貰えてワタシも嬉しいデス!」ニパッ


提督「早速だが、開けても良いか?」


金剛「勿論デス!開けちゃって下サイ!」


提督「では……」パカッ


金剛「プレゼントは送る方もドキドキしますネー」ドキドキワクワク


提督「ん?これはスカーフか?随分と沢山あるな」


金剛「そうデス。今のスカーフでも悪くはないと思いマスガ、たまには変えてみるのも良いかと思いマシテ」


提督「はは、お世辞は良いよ。俺が付けてるのって、艦娘達の間ではすこぶる不評なんだろ?」


金剛「……知ってたのデスカ?」


提督「まぁ艦娘の中には面と向かって不平不満を言ってくるのもいるからな」


金剛「ごめんなサイ……」


提督「何でそこで金剛が謝る?そもそもの話、これが不評なのは当前の事だしな」


金剛「?」


提督「だってこれ、スカーフじゃなくて俺のばあちゃんの風呂敷だし」


金剛「へ?」


提督「いや、首に巻ければ何でも良かったし、あの時は緊急だったからな。ばあちゃんが持たせてくれた風呂敷を小さめに切ってチョチョイとな」


金剛「ほ、本当に風呂敷デシタ……」ボソッ


提督「ん?」


金剛「な、何でも無いデース」


提督「?」


金剛「それならなんでちゃんとしたスカーフを買わなかったのデスカ?」


提督「確かに見た目はあれだが肌触りは抜群で、わざわざ買う必要も無いかと思ってたんだよ。でもこうして金剛から貰えた事だし、この風呂敷には本来の役割に戻ってもらう事にするよ」


金剛「yes!それが良いデース」


提督「これは大切に使わせてもらうからな。改めてありがとう、金剛」


金剛「エヘヘ。提督のお役に立つ事が出来て光栄デース!」




 ~回想シーン終了~




提督「そんな訳でこの数枚の風呂敷スカーフとはおさらばしたという訳だ。勿論、小包み入れとしてまだまだ使わせてもらうが」


不知火「……」


提督「不知火……?どうかしたか」


不知火「……不知火も風呂敷として使わせて頂きます」


提督「それが良い。スカーフだと見た目があれだしな。もうそれは不知火の物だから好きに使ってくれ」


不知火「……予定は狂いましたが、これでお揃いです」ボソッ


提督「?」


不知火「ふふっ」ニコッ


提督「! し、不知火!もう一回だけ今の表情をして見せてくれ!」


不知火「こうですか?」スンッ


提督「全然違うよ!?」


不知火「ではこうですか」ムーン


提督「もっとこう、ふにゃっとした感じで!」


不知火「これはどうでしょう」シレッ


提督「お澄まし顔も可愛いけど!」


不知火「こう」ヘケッ


提督「……やっぱ無理かぁ」


不知火「不知火に何か落ち度でも?」





          ~不知火のご褒美 おわり~





【由々しき事態です!】




榛名「由々しき事態です!」ガタタッ


瑞鶴「っ! ……ビックリしたぁ。さっきまで楽しく会話してたのに、急にどうしちゃったの?」


古鷹「榛名さん、声のボリュームはもう少し下げてね?」


榛名「あ、ごめんなさい。榛名、不安が臨海点を突破しちゃいました……」


吹雪「私は大丈夫ですけど。でも榛名さんが大きな声を出すなんて珍しいですね」


榛名「声も出したくなります……。このままではきっと、取り返しのつかない事になっちゃいますから……」


利根「なんじゃ、悩み事かの?」ムグムグ


衣笠「古鷹さんの唐揚げはいつ食べても美味しいね!榛名さん、唐揚げ食べないなら貰っても良い?」


榛名「ええ。榛名は今、食欲も湧かないくらいに焦っていますから。どうぞ食べちゃって下さい」


衣笠「やった!」ヒョイ


吹雪「平和ですね~」ホッコリ



榛名「……緊張感が足りてません。どうやら皆さんには、今、私達が置かれている状況を再認識して貰う必要があるみたいですね」


衣笠「じゃあプリンも貰って良い?」


榛名「プリンは駄目です……。それは榛名も大丈夫ではありません……」


利根「……緊張感の欠片も無いのぉ」


古鷹「衣笠さん、真面目な話みたいだからちょっとだけ、しーっ、ね?」


衣笠「プリン……」ショボン



瑞鶴「話は戻るけど、いま置かれてる状況がどれだけ危機的だとしても、私達自身がここから動いちゃったら提督さんに迷惑掛けちゃうだけじゃない?」


榛名「榛名も提督に迷惑は掛けたく無いですが、そうも言ってられない所まで来てしまっているんです」


古鷹「それってまさか……」


榛名「そうです。今現在、私達は後手に回されている状況です」


瑞鶴「……その情報の出所はどこなの?」


榛名「提督や金剛お姉さま達です」


利根「金剛はともかく、あやつからの情報では信憑性はあるようじゃの。しかしだからと言って、我輩達だけではどうしようも無いじゃろ」


古鷹「私達の場合、敵は身内だからね……」


榛名「敵……ですか。榛名はそうは思いたくはありません……」


瑞鶴「敵に決まってるでしょ。そんな甘い考えしてたらこの先は生き残っていけないよ?」


榛名「そう……ですよね」



古鷹「……それで榛名さんは何か打破出来るような案を思いついたの?」


榛名「はい!でなければこうしてお話しません!」


利根「おお!それはどんな策じゃ!?」


榛名「敵地へ行ってアタックあるのみです!」



利根・瑞鶴・古鷹・衣笠・吹雪「……」



榛名「皆さん、どうされました?」


瑞鶴「いや、それはさすがに、ねぇ?」


古鷹「う、うん……」


利根「返り討ちに合って終わりになるじゃろうな。我輩達だけでなく、ここに所属している者、全員が何かしらの罰を受けるじゃろう」


吹雪「私も賛成は出来ないかもです……」


衣笠「大本営に突撃なんて、榛名さんって凄い事考えるんだね!」



榛名「大本営?なんの話ですか?」



利根「何って敵陣に突撃とお主がそう言ったのじゃろう?」


榛名「榛名が突撃するのは提督のお部屋にですよ?」


利根・瑞鶴・古鷹・衣笠・吹雪「え?」


榛名「え?」


瑞鶴「えっと、これって私達が大本営に見つかって殺されちゃうとか、そういう話じゃ無かったの?」


榛名「違いますよ?榛名は提督の事を心の底から信じていますから。そんな事は一切心配していません!」ムフー


衣笠「それじゃあこれって……?」



榛名「勿論、提督のお嫁さん争奪戦のお話です!」フンス



利根「……夕飯も食べた事じゃし、我輩は自室に戻るとするかのぉ」ガタッ


衣笠「き、衣笠さんももう戻ろっかな~」ガタッ


瑞鶴「待って!これは私達の将来の話なんだから、ちゃんと話し合うべきだと思う!」バンッ


利根「瑞鶴はそう来ると思っておったが、この様に意見が割れた時は前々から多数決と決めておったな。古鷹、言ってやるのじゃ!」


古鷹「これは聞くべきだよ!」バンッ


利根「古鷹もそっち側じゃったか……。これでは意見が3:3で割れてしまうの」


吹雪「え?私も聞いた方が良いと思ってますけど?」


利根「……あやつは既に吹雪も陥落しておったのか。……仕方無いのぅ」


衣笠「……」ソロー


利根「衣笠、皆で決めたルールなのじゃ。諦めるしかあるまい」


衣笠「ちぇっ、ダメか~」



古鷹「それで今の状況は!?加古はそういう話、あんまりしてくれないから気にはなってたんだ」


榛名「残念ながら最初に話した通りですね。不知火さん、明石さん、夕張さんは勿論の事、金剛お姉さまを始めとしたここにいる皆さんの姉妹も、お嫁さん候補になるべく猛アタックを始めているようです」


古鷹「……やっぱり加古もだったんだね」


榛名「これは青葉さん情報ですが、加古さんは提督と2人でふらっといなくなって秘密の会瀬を重ねているとの事です」


古鷹「ええっ!?そんなに進んじゃってるの?何かの間違いじゃなくて?」


榛名「青葉さんは大袈裟に言う事はあっても、まるっきりのデマは言わないはずです」



瑞鶴「……突撃しよう!深夜に行けば、夜戦してる子以外なら寝てるはずだよ!」


榛名「深夜は駄目です。提督を夜中に起こすなんてそんな事は榛名に出来ません。狙い目は提督が自室に帰る頃でないと」


古鷹「だ、駄目だよ。基本的に外出は禁止されてるのに、そんな見つかりやすい時間帯に堂々となんて……」


榛名「その様子だと、皆さんはご存知無いのですね」


古鷹「何の事ですか?」


榛名「榛名、前々から明石さんに要望を出していたんです。提督の自室に直接出向く事は出来ませんか?って」


吹雪「えっ?もしかして……」


榛名「はい!ここから提督の部屋まで、直通で行けるようになりました!」


瑞鶴「これからは提督さんにいつでも会いに行けるって事?」


榛名「そうです。榛名、提督と会うのは久し振りなので、今からどきどきが止まりません」


古鷹「でも万が一って事は無いの?」


榛名「明石さんが金剛お姉さま達でテストプレイした結果、特に問題は無かったみたいですね」


瑞鶴「じゃ、じゃあ今夜にでも!」


榛名「今はまだ時間帯が早いですね。もう少ししたら皆で行ってみましょう」


吹雪「あ、あの~……」


榛名「なんでしょうか?」


吹雪「利根さんが飛び跳ねながら行っちゃいましたけど……」


榛名「……抜け駆けはしないって約束だったのに。榛名、悲しいです……」


衣笠「さっきまで乗り気じゃ無さそうだったのに、我先に飛び出していったね」


古鷹「利根さんに遅れは取っちゃったけど、私達も後を追って提督が来るのを待って驚かせちゃおうよ」


榛名「……それも一興ですね。少し早いですが、提督の帰りを待つのも良妻になる条件。榛名、気合い、入れます!」




 ―提督の自室―



提督「……」モグモグ



ガコッ ゴゴゴゴ



提督「はぁ……。この時間帯なら来ないと思ってたのに。今日は誰だろうな」


利根「提督!待たせたの!」ゼェハァ ゼェハァ


提督「ほあっ!?」


利根「なんじゃ、呆けた顔をしおって。そんなに我輩に会いたかったのか?ういやつじゃの」


提督「と、とととと利根!?」


利根「ほれ、前を空けんか。お膝だっこが出来んではないか」グイ


提督「なんでお前がここにいるんだよ!」


利根「なんでも何も、秘匿所とここが繋がったんじゃ。ならば来るしかないじゃろ」


提督「……」





 ―秘密の通路―



榛名「……何故だか嫌な予感がします」


瑞鶴「急にどうしたの?早く開けて中に入ろうよ」


榛名「……そうですね。榛名、入ります!」ガチャー




利根「いふぁいいふぁい!いふぁいのじゃ!」ジタバタ


提督「利根!駄目だろ、こっちに来ちゃ!」グニー


利根「やじゃやじゃ!我輩だってずっと会いたかったのじゃぞ」


提督「利根……」


利根「提督……」


提督「まだ反省が足りてないみたいだな」グニニー


利根「いふぁいいふぁい!はめてほひいのじゃ!」



榛名「利根さんズルいです!そこを変わって下さいっ!」ババッ


提督「ん?はうぇ!?榛名まで!?」


瑞鶴「あたし達もいるわよ」


古鷹「提督、お久し振りです」


衣笠「衣笠さんも忘れないでね」


吹雪「私は先日振りですね!」


提督「おおぅ……。どうしてこうなった……」


榛名「訳は提督の膝の上で話しますね?」


提督「……榛名は随分と逞しくなったな。取り敢えず奥の部屋に行こうか」




 ―応接間―



提督「で?これは一体どういう事だ?」


榛名「榛名がどうにかして提督に会えないか、明石さんに相談した結果、こうなりました」


提督「ここの隠し扉は、榛名の要望だったのか……」


榛名「はい!」ニコニコ


提督「褒めてないからね?」


榛名「え……?榛名、勘違いしてしまいました……」シュン


提督「あのな。お前達が今置かれている状況は、かなり逼迫してるんだぞ?それは分かってくれてるよな?」


榛名「はい……」


提督「ならどうしてここに来たんだ?」


榛名「提督の部屋なら大丈夫だと思ったんです……」


提督「確かに俺の部屋に来るのは金剛達みたいな、榛名達の事情を知っている艦娘達だけだ」


榛名「それなら!」パァァ


提督「だがな、万が一って事があるだろ」


榛名「はい……」シュン


提督「……榛名ってこんなに感情豊かだったっけ?」


瑞鶴「最近の榛名さんはずっとこんな感じよ?」


提督「そうなのか……。子供を叱ってるみたいで気が乗らないが、こればっかりはな」


吹雪「榛名さんを膝に乗せながら言っても説得力は無いと思いますけど……」


提督「いやまぁ、俺だって皆には会いたかった訳だし」


衣笠「細かいことは今は良いじゃない」


提督「細かい事では無いんだよなぁ。それと榛名。ちょっとじっとしてて貰えるか?落ちそうで危なっかしい」


榛名「提督の膝は大変素晴らしいものです!榛名、感激です!」ユサユサ


瑞鶴「つ、次は私だからね?」


古鷹「そ、それじゃあ私はその次でお願いします」


衣笠「衣笠さんはその次で良いよ!」


吹雪「最後尾は私ですね」


利根「我輩ももう一度並ぶとするかの」


提督「…………」



瑞鶴「(あれ?提督さん、怒ってる?)」ヒソヒソ


古鷹「(少しはしゃぎすぎちゃったのかな?)」ヒソヒソ


利根「(我輩の頬っぺたはもう限界じゃ。誰か代わりに怒られてはくれんかの?)」


衣笠「(提督ってそういうの嫌うから、余計怒られるんじゃない?)」


利根「(じょ、冗談じゃよ)」


吹雪「(こんな状況なのに、榛名さんは司令官の膝の上でご満悦にしてますね……)」



提督「……言いたい事は山程あるし、この場合は小言の1つや2つは言わなきゃならない」


利根・瑞鶴・古鷹・衣笠・吹雪「……」ビクッ


提督「だがこれだけは言わせて欲しい」




提督「皆、良く頑張ったな。おかえり」




榛名「はい!ただいま帰りました!」ニコニコ


衣笠「う、うわぁぁぁぁん!提督ぅーーー!」ギュウゥ


提督「……よしよし」サスサス


瑞鶴「ちょっと、ここで泣かないでよ……。私まで泣きたくなっちゃうじゃない……」


提督「あまり大きな声を出されては困るが、来てしまったものは仕方無い。こんな時くらいは良いじゃないか」


瑞鶴「じゃ、じゃあ私も!」ギュウゥゥ


提督「榛名が潰れてしまうから、皆ほどほどにな?」


榛名「榛名、提督の胸に押し潰されるのなら本望です!」


提督「榛名は本当に変わったな……」


利根「我輩もまだ抱かれ足りないのじゃ!」


提督「……間違っても筑摩の前でそんな事は言うなよ?後生だから」


吹雪「あはは、それも面白そうですね!」


提督「……榛名といい吹雪といい、戦場から離れると真面目だった子ほど緩くなるのか?」


吹雪「あれ?私もですか?何かの冗談ですよね?」


提督「う、う~ん……」


吹雪「あ、あれ?」



古鷹「提督」


提督「なんだ?古鷹」


古鷹「古鷹、ただいま戻りました!」ビシッ


提督「……ああ。おかえり、古鷹」


古鷹「私、こうしてまた提督と会う事が出来るって、ずっと信じていました」


提督「俺も信じていた、と言いたい所だが、俺の方は願っていたという方が近いだろうな」


古鷹「……私は信じて、提督は私と同じ事を願う。これって凄い素敵な事だと思いまs」


瑞鶴「待った!無理矢理良い雰囲気に持ってかないでよ!」


古鷹「あ、やっぱり駄目?」アチャー


提督「えっ?古鷹?」


吹雪「とりあえず皆さんも一旦、離れましょうか」


榛名「……名残惜しいですが、仕方ありません」




提督「そういえば何か用事でもあったのか?」


榛名「それは勿論、正妻戦s」


瑞鶴「寂しかったから!寂しかったからだから!」


提督「……そう言われると弱いな。お前達を軟禁しているのは俺な訳だし」


榛名「提督が榛名を軟禁?……はうっ!?」ビクンッ


提督「うおっ!?急にどうした!大丈夫か?」


古鷹「気にしないで下さい。ただの発作ですから」


提督「発作って……。病でも患ってるのか?」


榛名「病?……そうですね。榛名はこの病のお陰で、世界がより美しく見えるようになりました」


提督「……榛名、病院に行こう。俺がバレないようになんとか手を回すから」


利根「お主は気にせんで良い。病と言っても、これは良い意味での病じゃからの。薬と毒が表裏一体なのと同じ様なものじゃ」


提督「本当だな?本当に大丈夫なんだな?」


榛名「榛名は大丈夫です!」


提督「……確かに顔色はすこぶる良いな。とりあえず様子を見るか」



古鷹「それで提督、私達はこれからもここへお邪魔しに来ても良いんですか?」


提督「それは駄目だ。ここでは何があるか分からない」


瑞鶴「それを言ったらあそこの秘匿所だってそうじゃない」


提督「こことあそこではリスクが段違いだ。許可は出来ん」


吹雪「やっぱり駄目ですか……」シュン


提督「……すまないな。お前達の要望は出来るだけ叶えてやりたいが、これは余りにも無謀過ぎる」



衣笠「……私、もう耐えられないかも」



提督「お、おい、衣笠……」


衣笠「今までは頑張ってこれたよ?だって皆の為だもん。それに提督もそれを望んでたから」


提督「だったら―」


衣笠「でも提督にこうして会っちゃったんだもん。もう一度離れるなんて出来ないよ……」


利根「……そうじゃの。痛みを一度でも覚えると恐怖心が生まれてしまうように、お主と会えない辛さもきっと倍増してしまうじゃろうな」


瑞鶴「ねぇ、提督さん。毎日なんては言わない。週に一回。ううん、月に一回、提督さんの都合の良い時間帯で良いから来ちゃ駄目かな?」


提督「…………駄目だ」


古鷹「何かあれば直ぐに出ていきますから……。お願いします……」


吹雪「私も、司令官とまた離ればなれになるのは嫌です……」


提督「……」



榛名「皆さん、帰りましょう」



衣笠「え……?」


榛名「ここに来るまでは提督もきっと許してくれる、なんて甘い事を考えていましたが、提督の足枷になってしまうのなら話は別です」


瑞鶴「それはそうだけど……。榛名さんはそれでも良いの?」


榛名「提督に会えないのは辛いです。でも榛名は信じていますから。これは今生の別れなんかじゃないって」


古鷹「そうだね……」


利根「では帰る事にするかの」


吹雪「はい……」


衣笠「……」



榛名「皆さん、今回は私の突発的な行動に付き合って頂きまして、ありがとうございました」ペコッ


瑞鶴「ううん、私達も楽しかったし」


利根「久々に興奮したの」


榛名「そう言って頂けると私も救われます」


榛名「それでは提督、私達は帰りますね。ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした」ペコッ


古鷹「それじゃあ今度こそ帰ろっか」


吹雪「では司令官、また会う日まで!衣笠さんも行きましょう?」


衣笠「……そうだね」



提督「……」


衣笠「……」トボトボ


提督「……月1だ」


衣笠「え?」


提督「月に1回、俺が安全と確認が出来れば、そっちに連絡を入れる。その場合のみ、ここに来る事を許可する。それでどうだ?」


衣笠「! 提督ぅーーー!」ガバッ


榛名「……宜しいのですか?」


提督「はっきり言えば、提督としても、お前達の保護者としても失格となる判断だと思う。しかし榛名達の落ち込んでいる顔を見ながら送り出せるほど俺は人間が出来ていないんだ」


瑞鶴「えへへ、提督さんのそういう所、大好き!」ギューッ


利根「そんなお主だからこそ、我輩達はついてきてるのじゃ。欠点だとは思わず、直さずにいて欲しいのう」


提督「自分で後々の事までフォロー出来れば良いが、俺のこれはただ単に甘いだけだからなぁ」


古鷹「提督がそういう風に切り捨てられるような人だったら、私達はもうここにはいないんです。私達の為にも誇って下さい」


提督「……そうだな。しかし月1とかいう中途半端な判断は間違ったかもしれん」


古鷹「……年に1回とかはやですよ?」


提督「う~ん。お前達にもある程度我慢させながら、尚且つこの事がバレたりしたら最悪だからぁ」


衣笠「じゃあ毎日だね!」


提督「それは論外だ」


吹雪「でも毎日よりも月に1回の方がロマンチックではありますよね」


瑞鶴「……確かにそうかも」


古鷹「離れてる時間が想いを育む……。うん、素敵!」



榛名「でしたら2年近くも離れ離れで、積もりに積もった榛名のこの想い、提督に受け止めて頂きましょうか」ジリッ


提督「あー……。これ、金剛と同じパターンっぽいなぁ」


古鷹「勿論、逃げたりはしませんよね?」スッ


瑞鶴「ま、逃げようとしても逃がさないけど」スッ


提督「入り口も出口も封鎖済みか。流石は軍人、立派なもんだ」


利根「侵入路、脱出路の確保は基本じゃからの。後は殲滅するだけじゃの」


提督「確認の為にも言っておくが、俺は味方だからな?お前らは一体、何を殲滅しようとしてるんだよ……」


衣笠「この場合はもう決まってるじゃん!」


吹雪「え?え?何が始まるんです?」


提督「悪い事は言わないから吹雪はもう帰って寝なさい」


吹雪「……嫌です!」


提督「嫌かぁ……」




榛名「では提督、参りますね?」





            ~由々しき事態です! 終わり~


後書き


私事で忙しくなってきたのでここで一先ず終わりです
ここまで読んでくれた方々、ありがとうございました


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1: レブロン 2020-07-21 00:12:32 ID: S:LLFHVP

面白かったです!!
お疲れ様でした!

2: キジトラ 2020-07-21 20:12:53 ID: S:8ph8xA

コメントありがとうございます

もう少し続きますので、時間が空いた時にでも読んで頂けると嬉しいです

3: 頭が高いオジギ草 2020-07-24 13:17:36 ID: S:PB5DFh

振れ幅がw傾斜復元不可能な振れ幅がw
面白いなぁw

4: キジトラ 2020-07-25 11:59:01 ID: S:j3E8Ax

コメントありがとうございます

暗い方に話を引きずり過ぎると、艦娘達がいつまでも吹っ切れなくなると感じてこうしてみました
勿論、吹っ切れる要素に提督や姉妹達の尽力があったという事でご容赦下さい

5: 桃蜘蛛 2020-07-28 00:18:17 ID: S:7V77TK

霧島からのお兄さま呼びはやべぇなぁ・・・笑

6: キジトラ 2020-07-28 21:54:24 ID: S:cUYRd5

コメントありがとうございます

金剛姉妹は上3人の個性が強すぎて隠れぎみですが、霧島も可愛いです
お兄さま呼びは榛名と霧島が似合いそうですよね
だから2人にお兄さま呼びして貰う為に、提督は金剛と結婚してあげるべきデース

7: 蒼天 2020-08-01 23:09:36 ID: S:U2bo86

ほっこりストーリーやっぱり良いよね、って思いながら読んでいたらメインストーリー思い出して泣けてきました。
熱かったですね……
良い作品をありがとうございました!!








……霧島のは破壊力絶大でした。

8: キジトラ 2020-08-02 19:24:27 ID: S:L5c38Y

コメントありがとうございます

こちらこそ読んで頂いてありがとうございました
もう少しだけ続くので、お時間があれば読んで頂けると嬉しいです


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