2014-09-12 13:52:08 更新

22話のおまけ



 まくらが、雪姫へと電話をかけた時の一幕──


「昨日の話を聞きたくって。なんか随分と失礼なこと言われたんでしょう」

「えっ、計佑くんが話したの?」


「ちょっとだけですけどね。一昨日まで先輩の気持ちを疑ってたとかなんとか聞いちゃって。

なにその失礼な話と。なんで先輩がそれで許せてるのか不思議で仕方なくて」

「あ……えっと。それは……」


「だって。昨日、センパイ部活の時すっごい怒ってたでしょ? そっから更にそんなこと言われてどうして……」

「あ、それは。続けてそういうことがあったわけじゃなくて、合間にまた色々あってね……」


「そもそも、昼間はじゃあなんで?」

「……んと。笑わないでね?

その、計佑くんの反応がちょっとみたくて……アリスの格好して、みせたんだけど……」


「え!? こっコスプレってコトですか?」

「……うん」


「……え。それってその……やっぱり、一昨日の夜のことで……ヤキモチ焼いて、とかですか」

「……んと。まあそんな感じで……」


……まくら絶句。


「とっとにかくそれでね! 見せて、マネしてみせたら、計佑くんがその……すっごい笑っちゃって」

「……まあそれはそうでしょうね……」


「ちょっ、まくらちゃん! ひどいよぉ……」

「あっ、ごめんなさい! ……といっても、それは、うぅ~ん……」


「わ、わかってるよう……私だってバカなことしちゃったってのは……

でも、本当に、すっごくすごく笑ったんだよ計佑くん!? それも酷いでしょう!?」

「……まあ……先輩の立場からしたら、怒るのも確かにわかりますけど」


「まあともかくそれで部活の時は……あの時は、まくらちゃんにも気をもませちゃって本当にごめんなさい」

「いえっ、そんなのはもういいんですけど……それでそのあと、あいだの色々っていうのは?」


「……うん、でワタシも怒りすぎだったかなって思って。

でも、一昨日のその……計佑くんのあれこれからのストレスがたまってて、どうしてもこっちからは謝れなくって」

「そうですよ! 一昨日の夜もひどかった! あんな事があったら、それは仕方ないですよ」


「……うん。でも、昼間の様子からすると、私が激怒したままって思って、怖がって連絡くれないのかと思って。

ちょっとだけ拗ねたメール送ったのね。そしたら返事が来たんだけど、

それに「おまえなんかきらいだ」って書いてあって」

「えっ!? うっうそ! 計佑がそんなこと──」


「うん。あとで、それは子供のイタズラってわかったんだけど──

まくらちゃんも計佑くんの家にいるんならその……一応しってるんだよね?」

「えっ、あっ、ええとまあ一応……」


「私は詳しくは聞いてないけど……なんかちょっと大変な事情があるんでしょ?

それでとっさに私に隠そうと思って「冗談です」って言い訳してきたみたいなのね」

「あちゃー……」


「それで私、もうその時はわけがわかんなくなって。

だって、キライなんて言われてすっごいショックで、そしたら冗談なんていって笑うんだよ?

そうなるのは仕方ないよね?」

「まあそうですよね……それは当然ですよ!! (ホタルちゃん……!! なんてことを……!!)」


「でもね、それで私が泣き出しちゃったら……計佑くんがすぐにかけつけてきてくれてね。

……それは、すごく嬉しかったんだけど、

でもその時点では、まだコドモのイタズラなんて私は知らなかったから、やっぱりまだちょっと怒ってて。

でまあその、ちょっと私が泣……拗ねた振りをしてたら、

……そしたら計佑くん、すっごく優しくて!!

すごく、すっごく!! うれしくなるようなこと言ってくれて!!」


「……は、はあ……」


「あのね、あのね!!  私のこと、『好きにきまってるでしょう!!』なんて怒鳴ってくれて!!

もちろん、そういう意味じゃないことはわかってるんだけど!!

でもでも、あの計佑くんが、そんなセリフを、私の手を握りながら言ってくれたんだよ!?

これってすごいことだよね!!」


「……ま、まあそうですね……」


「それでねそれでねっ、私が嬉しくて嬉しくて、

つい身体が震えちゃったら、まだ傷ついてるとでも思ったのか、

ぎゅうう……! って! 私の手を握りしめてくれてね!! もうもう!!

抱きついちゃいたい気持ちになっちゃったんだけど!!」


「……そ、そうですか……」


「でもでもっ、もっともっとそういう言葉、聞きたくなっちゃうじゃないっ?

だからまだガマンして、泣いてるフリ続けたんだけど!!

そしたらねっ、私のことを「特別な人」「そんな人は先輩だけだから」とかね!!

も~~~!  もうね!!

『一昨日のことなんて、アリスなんてただのおまけだから」とか、

「コドモと、先輩は全然違う」とか、

「特別に意識してる女のコは先輩だけなんだから、普通になんて出来るわけありません」

とかも~~~~!!!」


(……電話なんてするんじゃなかった……)


~~色々続いて~~


『──あとねあとね!

もし私に仲のいい男の子がいたりしたら、計佑くんもすっごくヤキモチやいてくれるって!──」


~~~まだ続いて~~~


「──それからねっ、私のためならアリスと距離とっていいよなんて言ってくれて!

本当に私のこと、一番に想ってくれてるんだなあって──」


(も、もう電話きっていいですか……)


──そうして、まくらがついに耐え切れなくなって。

とにかく話を変えようと、自分が知らない出来事──雪姫が計佑に告白した時の事でも聞き出そうとするも、

やっぱり、


「計佑くんが、私のこと、見とれるくらい綺麗なんて言ってくれたの!!」

「私が不安がったら、急にスイッチ切り替わったみたいに、

すごく優しい顔して私の手をにぎってくれてねっ、それも一晩中!!」


などと、結局、惚気続けられる羽目になり……

結果、まくらは随分とげっそりした状態で、計佑の部屋を訪れる事になったのだった──


─────────────────────────────────


<おまけのあとがき>


一応、こちらの会話劇をみて頂ければ、

本編中にまくらが「ツボは押さえてんのね~」みたいなコトを言ってた理由も、

納得しやすくはなってるとは思うんですけど……どうでしょうか?



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