兵器と呼ばれた艦娘
タイトル変更しました。何番煎じかもわからないブラ鎮立て直し物ですが頑張って書きます。
「よーし!今日から俺も提督だ!」
大きな独り言になってしまったがしょうがない。俺は遂に念願の提督になれたのだ。
俺が着任する鎮守府の前提督はなにやらとても優秀な方だったらしく、その手腕を買われて大本営から重要な海域に近い鎮守府を新たに任せられることになったんだとか。
そんな前提督の穴埋めとして着任しなければならないのは正直気が重いが、仮にも俺は誇り高き日本軍人の端くれ。先人が繋いできたものを俺は責任を持って受け継ぐ義務がある!
とか、お堅いことを語ってみるが、やはり柄にもないことを言うのはやめよう。誇り高き日本軍人なら自分の心に正直になることが大切なはずだ。
そう...正直になろう......正直になるべきだ。
俺は!艦娘ハーレムを!築く!
*
「見つからん......」
どこを見渡してもそれらしき場所はない......この付近にあることは確かなんだがな。
「ねぇねぇ。おじさんって、てーとくさん?」
「む?そうだよ。お兄さんは今日からここの鎮守府で仕事をするんだ」
この町の子供か?つーか、おじさん?俺そんな老けてる?
まだ二十代なんだけども......
あーいやだ。艦娘にもおじさん呼ばわりされるのだろうか......
「そーなんだ。前の優しそうなおじさん辞めちゃったんだぁ。わたし好きだったんだけどな~」
前提督のことか。この少女の反応を見る限り、前提督の町での評判は悪くはないのだろう。
「それでおじさん、ここでなにしてるの?サボってるの?」
なんかこの子、ぐいぐいくるなぁ...
「恥ずかしながら道に迷っていてね...お嬢さん、鎮守府の場所を知っていたりしないかな?」
「知ってるよ!ちんじゅふ?はね、あそこだと思う!」
少女が指さす方向には遠めにもわかるぐらい汚いボロボロの建物。なんだあれ...廃校になってしばらくたった校舎とかじゃねぇの......さっき見たときに反射的に鎮守府ではないだろうとスルーしてたんだが。
「えーと、ね。ほんとにあれ?お兄さんのこと騙してない?」
「ほんとだよ!前のおじさんがあそこから出てくるのみたことあるもん」
「お、おう。じゃあ行ってくるわ...教えてくれてありがとな」
「またね!おじさん!」
こ、こいつ......あくまでおじさん呼びをやめないつもりか!
まあいい。とりあえず鎮守府(仮)だ。なにかの間違えと信じたいが......
*
「ここが鎮守府ってことに間違えはなさそうだな」
鎮守府の正門を開けると、大きな建物が正面に見えた。
「お待ちしていました、提督。着任にあたっての手続き、鎮守府内の案内を務めさせていただきます。白露型駆逐艦、時雨です。どうぞよろしくお願いします」
駆逐艦?もしかしてこれが艦娘か。
「敬語は堅苦しいからやめてくれ。これから共に戦っていく同志だろう」
いや、それより....
「なんだその傷は?」
目の前に立つ時雨の服はところどころ破け、傷ついた肌が露出している。
さっき転んだとかそういうレベルじゃない。古傷とも少し違うだろう。
まるで、傷ついたまま時間が止まっているかのような......
「うん、敬語はやめるよ。提督が望むのなら」
「それとこの傷のことだけどね。これは僕ら艦娘にとっては普通のことだから提督には気にしないでほしいんだ。まあ、すぐに慣れると思うよ」
普通のこと?慣れる?
「そう言われてもな。仕事中に傷だらけの女の子を見るのに慣れるとは到底思えん。それに艦娘は『入渠』をして傷を治すものじゃないのか?そんな状態じゃ出撃どころか普通の生活すら困難じゃ──
「『入渠』は基本的には駆逐艦はしないものなんだよ。知ってる?提督。駆逐艦は低コストで使い勝手がいいんだ。空母や戦艦に比べたら僕たちなんていくらでも変わりを作れる、いわば捨て駒なんだ」
「それに普通の生活といったかな?兵器の僕たちは人間と比べて体も精神も丈夫なんだ。最低限の燃料があれば動くさ」
俺がおかしいのだろうか。艦娘を人間と完全に同一視することは不可能だ......だが、完全に兵器としてみることもまた不可能だろう。それにこの目の前の少女が自分を兵器だと言っている様子は.......
「そんなの...あんまりだろ」
「.........さっきも言ったけどすぐに慣れるよ」
「この話は終わりにしようか......鎮守府の案内に移ろう」
そういって背を向ける時雨の姿はどこか寂しさを感じさせるものだった。
*
「ここが工廠。艦娘の建造や解体、装備の開発をするところだよ。工廠に関しては僕はあまり詳しくないから、後で中にいる工作艦の明石に聞くといいよ」
「わかった。入渠についても聞いてみるわ」
「.........」
*
「ここは食堂。提督が食事の時に利用する施設だね。だけど、前提督が利用しているところは見たことがないな」
「提督一人のスペースにしては随分と広くないか?」
「艦娘にも利用を許可する物好きな提督が過去にいたんだろうね」
*
「最後は司令室。提督は基本的にはここで執務をするみたいだよ。伝令をするときはここのスピーカーから放送ができるからね。あとはそこの机にある前提督が用意したマニュアルを───
「ここ押せばいいのか?」
ポチッ
「えっ?ていと────
「えーーーー司令室より、鎮守府内の全艦娘に伝令。直ちに一階の大食堂に集合!」
まずは全員集合しなきゃ始まんないだろ。
*
伝令して五分経ったが、大食堂には既に十数人の艦娘が集まっていた。
「これで全員か?時雨」
「そうだね。抜けた人数分を差し引いたらこれで全員だと思うよ」
「抜けた?以前はもっといたのか?」
「うん。以前いた戦艦、空母なんかは軒並み前提督についていったよ」
それでこの少なさか......けど、俺にはちょうどいいのかもしれないな。前提督が積み上げたものを丸ごと引き継ぐのは荷が重い。
「じゃあ、全員揃ったということで......俺が今日からこの鎮守府の提督を務めることになった。まだ、右も左もわからない新米提督だが、よろしく頼む。世界平和もとい深海棲艦の撲滅するためにこれから君たちと共に戦っていきたいと思っている。」
シーーーーーーーーーーーーーーン
あれ?俺なんかおかしいこと言っちゃった......初顔合わせで滑るとか俺の提督ライフ詰んだか?
「提督、さっきも言ったけど僕たちは兵器なんだ。共に戦う仲間とは思わないでほしい、提督に使われる道具だと認識してもらいたいな」
「そうだぜ、提督。オレ達は兵器だ。だから早く出撃させろ!世界水準を軽く超えるオレの力を見せてやるよ!なぁ?龍田」
「天龍ちゃんの言う通りよお~。提督の仕事は艦隊の指揮、私達の仕事は戦闘。貴方はただ出撃命令を出せばいいのよ~」
天龍と龍田......確か軽巡洋艦にいたはずだ。そして、言葉を聞く限りこいつらも時雨と同じ考えか。
「あ~、左が天龍、右が龍田であってるか?さっきも言った通りの俺は新米提督で、お前ら全員の名前もまだ把握できてない。このままだと碌な指揮も取れん。だから、出撃はもうしばらくないと見てくれ。幸いこの付近の海域は深海棲艦の出現も少ない。だが、出撃が大切だというのは事実だ。その時がきたらぜひ頼らせてもらおう」
「チッ、せっかく出撃できると思ってたのによぉ。じゃあ、もう用はねぇな。いくぞ龍田」
「そうねえ。次に話すのは通信機越しかしら?さよなら~」
あいつら、勝手に帰りやがったよ......それに残ってる奴らも残ってる奴らだ。俺たちの会話に全く興味を持った様子もなく、虚ろな目でぼんやりと俺を見ている。天龍や龍田にはなんというか覇気を感じられたがこいつらからは気力すら感じられない。この感じはそう......今俺の隣に立っている時雨と同じだ。今の状態じゃあ俺が何を言っても無駄か。
「よし、短い時間だったが集まってくれてありがとう。さっき言った通りお前たちの出撃はもう少し後になるだろう。各々、思い思いの時間を過ごしてくれ。じゃあ解散!」
解散を言い渡されると、艦娘たちはぞろぞろと大食堂を出ていった。
「なんかゾンビみたいだな、あいつら」
「兵器だよ」
*
次の日、司令室にて
「前途多難だな......」
艦娘ハーレムだとか言ってる場合じゃねぇよこれ...艦娘みんな死んだような顔してるし、天龍と龍田は戦闘狂っぽいし...
「この鎮守府の現状はわかってきたかい?」
こいつはなぜか司令室にいるし......
「なんでいるんだよ」
「このまま提督が何もしなかったら兵器として困るからね。出撃する予定がないなら、ここで提督を監視するのが有意義だと思うんだ」
全くこいつは口を開けば兵器としか言わねーな
「決めた!俺は今から鎮守府大清掃作戦を決行する!」
「随分と急だね...だけど、提督一人で鎮守府を掃除しきれるとは思えないな」
「一人じゃないぞ」
「誰が手伝うのさ」
「時雨」
「ええ!?」
「おっ、兵器の割にはいい表情するじゃねーか」
「い、いや!これは予想外の攻撃をされた際に危険を周りに伝えるための顔の変形だから!プログラムってやつだよ!」
「お、おう」
こいつ結構チョロそうだな。
「それと!僕は手伝わないからね。提督がやりたいなら提督一人でやってよね」
「ふーん、まあいいや。さっさと始めるか!」
*
「よし、とりあえずこれでいいか」
雑巾 ×2
水入りバケツ×1
ホウキ ×2
塵取り ×2
「ホウキと塵取りがなんで2個あるかきていいかな......」
「いやあ、時雨が参加したくなるかもしれないだろ?」
「......」
*
~10分後
キュッキュ ゴシゴシ サッサッサ
「こんなもんか......」
「提督って掃除したことないの?全然綺麗になってないよ」
「んー、そうか?なら、時雨がやってみるか?」
「流れで僕に手伝わせようとするのやめてくれないかなぁ...」
「じゃあ、命令しよう。白露型駆逐艦時雨。これよりこの司令室の清掃任務をお前に与える!」
「...うん、もういいや。もう何言っても無駄だよね。ちょっとだけだからね」
~30分後~
キュキュキュキュ!ゴシゴシゴシゴシ!サササササササ!
随分気合入ってんなぁ...つか、これいつ終わるんだ。もう相当綺麗になってるけど......
「なぁ時雨」
「......」
「おーい」
「......」
~30分後~
「うん、こんなものかな」
「すごいなお前。初めて見たときとは見違えるほどの綺麗さだ」
「提督の掃除が酷すぎただけだよ。こんなのできて当然───
「兵器として当然か?」
「!......うん、そうだよ」
「俺にはどうしてもお前がただの兵器には見えない。お前も本当はわかってるんじゃないのか?自分がただの兵器じゃないってことぐらい」
時雨は顔を曇らせ俯くが、俺は構わず話を続ける。わからず屋の小娘にはちゃんと教えてやらねばならない。
「俺を正門で迎えてくれたことも、鎮守府を案内してくれたことも......時間を忘れて掃除に夢中になったのも全部兵器だからか?」
このまま自分の気持ちを理解できないまま生きるのはつらいだろう?
「俺は違うと思う。お前は監視と称して俺を心配してくれたんだ。部屋がどんどん綺麗になっていくのが嬉しかったんだ」
「.........わからないよ。前提督に建造されてから今までの間、ずっと僕はこうだったんだ。今みたいに提督と普通に会話することなんてなかったし、掃除をしたこともなかった......出撃命令が来なければ僕はずっと一人だった。ほかのみんなも同じだよ」
「戦うのは嫌いじゃないよ?だけど、さっきみたいに掃除をするのも嫌いじゃない...と思う」
時雨はぽつりぽつりと言葉を紡いでいく。
「ねぇ、提督。僕の部屋はね...窓から町が少し見えるんだ。町にいる人はみんな笑っていてね、楽しそうで...なんでか目が離せないんだ」
なんだ。こいつは前からわかってたんじゃねぇか。
「羨ましかったんだろう」
「そうなのかな...だけど、僕は兵器だから───
「お前は気付いてなかったけど、掃除してる時のお前は楽しそうに見えたよ」
「時雨にもちゃんと自覚できる時がきっとくる。俺がこれから鎮守府をどんどん楽しくするからな。その中でお前は俺と一緒に笑うんだ」
「は、ははは......僕にできるかなぁ。僕はただの兵器じゃなくていいのかなぁ」
ぽろぽろと時雨の頬に涙が流れる。
「ははは、ただの兵器が涙なんか流すかよ」
*
「よし!時雨が泣き止んだことだし次は別の場所掃除するとするか!」
「な、泣いてないし!」
「次はそうだな。この棟の隣に艦娘寮がある別棟があるだろう。そこの廊下を掃除しよう」
「せめて反応してよ...それになんで次の清掃場所が艦娘寮なの?」
「掃除仲間を増やすためだ。俺達が部屋の近くで掃除してればもしかしたら出てきてくれるかもしれないだろ?」
これに関しては時雨みたいな艦娘が他にもいてくれることを祈るだけだが......
*
艦娘寮廊下にて.........
案の定きったねぇな...ネズミとかたくさん沸いてんじゃねーのか?
「それにしてもなんで前提督はわざわざ別棟を艦娘寮にしたんだろうか。司令室の下の二階には空き部屋がたくさんあるだろ?」
「艦娘と会わないためだよ。前提督は艦娘との接触を避けていたんだ。出撃命令は司令室からでもできるからね」
どんだけ艦娘のこと嫌いなんだよ、前提督は...
「じゃあまずは一階からだ!一階には誰が住んでるか知ってるか?」
「一階は駆逐艦が住んでるよ。全員は把握できてないけど、僕と同じ白露型の夕立と...暁型、睦月型、それと綾波型の何人かがいた気がするな。ちなみに僕の部屋はあそこ。その右隣が夕立の部屋だよ」
じゃあ、まずは夕立だな。白露型なら時雨と気が合うんじゃないだろうか。
コンコン
「おーい!夕立ー」
「提督って心の準備とか全くないんだね」
ガチャ
「...出撃っぽい?」
「違う。今人手がとにかく足りなくてな。夕立に鎮守府の掃除を手伝ってほしいんだ」
「掃除?それってもしかして時雨も一緒にやるっぽい?」
「う、うん...そうだよ」
「なんで?まえの提督さんがいた頃はそんなことしてなかったっぽい」
「......前の提督を否定する訳じゃないけどね、僕はこの提督についていきたいんだ。艦娘はただの兵器じゃないって信じたい。普通の人間みたいに笑って...泣いて...提督と、みんなと仲良くなりたい」
少し声を震わせながらも時雨ははっきりと自分の意思を口にした。あとは夕立がこれに答えてくれるか......
「それって夕立とも?」
「うん、僕は夕立とも仲良くなりたい......できないかな?」
「できるっぽい!」
夕立の声が廊下に響き渡る。
「えっ?えと、夕立?」
「夕立も!あたしもみんなと仲良くなりたいっぽい!」
「もしかして夕立。それは前提督がいたときから?」
「はい...前の提督さんがいた頃は言えなかったけど、夕立はずっとみんなと仲良くしたかったっぽい。」
俺の問いかけに遠慮気味に答える夕立。前提督の影響か、時雨と同じように接する...というのはまだできないよな。だけど、この答えは夕立の心の底から出た言葉だろう。なら、俺がいうことは一つ......
「楽しみにしとけ、夕立。俺は夕立のみんなと仲良くしたいっていう思いを全力で肯定する。今はこんな殺風景で笑い声一つ聞こえない鎮守府だけどな、俺が絶対に変える。その為には夕立の助けも必要だ。力を貸してくれるか?」
「...はいっぽい!これからは夕立が精一杯提督さんの手助けをするっぽい!」
さっきの遠慮気味な表情はどこにいったのか、夕立は溢れんばかりの笑顔で答えてくれた。
*
「よーし!この調子でいくぞー!」
「ぽい!」
「さっき会ったばかりなのにすっかり意気ぴったりだね、二人とも」
時雨がとっつきにくいってわけじゃないけどさ...夕立の『ぽい』がいい味を効かせてるというか、なんか接しやすいんだよなこいつ
「それで、提督。さっきからこっちに向けて視線を感じるけど気付いているかい?」
「視線?」
「ぽい?」
ササッ
「出てきなよ。」
カチャ
「バレてしまいましたか。私は睦月型駆逐艦の睦月です。扉越しにうっすらと提督と夕立の会話が聞こえたので、つい聞き耳を立ててしまいました」
.
中途半端ですが一旦終わりです。自分のペースでしこしこ書いていけたらなと思います
ブラ鎮立て直し,応援します!
早く続きを寄越せェェェェェ!
またブラ鎮かよ、皆同じようなの書くよな
今後の展開に期待しています!
続き待ってます!