2015-06-02 04:29:23 更新

概要

提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です

注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
ちょっと長いかもしれない
EXパートは艦娘はあんまり出てこないよっ、
読まなくても本編には支障はないよっ


前書き

15回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね

それではこの番組は

睦月「ドッジボールするよッ!」
望月「めどい」
睦月「即答かっ」
三日月「あははは…こっちは良いから、ね?」
卯月「むっつー、引きこもり達は置いといてさっさといくぴょーん」
提督「引きこもりだってさ皐月」
皐月「いや、司令官でしょ…」

長月「なんで急にドッジボールなんだ…」
弥生「そうはいっても参加するんだよね、結局」
長月「…まあな」
菊月「ドッジボール…どっじ?どっじってなんだ?」
文月「ボールに中てられるドジな人から来てるんだよー」
菊月「なるほど、そうだったか」
夕張「なに嘘教えてるのよ…」
瑞鳳「教えて金剛さんっ」
金剛「OK♪dodge(ドッジ)は日本語で言うと素早く避けるって意味になるデース」
如月「漢字で書くと避球とかになるんだけど、一般的じゃないわね」
菊月「…文月」
文月「てへ♪」
大井「それっぽい嘘って一番やっかいよね」
北上「嘘を吐いて吐かれて大人になっていくんだよ」

球磨「木曾の懐にあるMVPをもぎ取ってでも、球磨が勝つクマぁぁっ!」
木曾「てめぇっ、横から掻っ攫ってんじゃっ」
多摩「どっちでも良いから、さっさと終わらせて…多摩は帰りたいにゃ…」

少女「大和っ、今回予告よっ」
大和「はい、おひいさまが可愛いお話ですね」
少女「ふんっ、当然ねっ」
大淀「ええと…。私達、別の鎮守府と接触する感じになります…宜しくお願い致します」

以上のメンバーでお送りします

設定とか

御代 みつよ
大本営付きの提督。階級は元帥。小柄で黒髪ロングの勝ち気な娘。秘書艦は大和
結構な自信家、で相手を選ばずに偉そうな態度をとる(実際偉いから厄介
愛称はおひいさま(お姫様って意味)本人が呼ばせたのかどうなのかは不明

大和
御代 みつよ の秘書艦。みつよ とは以心伝心の間柄。みつよ が何か言う前には既に動いてるレベル
大和自身もかなり溺愛してる。みつよ が白といえば黒も白に変えられる程度には…
ケッコン済み、そうでなくてもかなり強い

大淀
御代 みつよ の艦娘の1人
みつよ の世話に追われて仕事しない大和に変わり、秘書業務はだいたい大淀の仕事
実質的にはこっちが秘書艦。護衛という意味では大和が適任なのは確かなので、適材適所なのかもしれない
立場も弁えずうろつき回る みつよ に振り回されるのが日課。大和は止めてくれないし
ケッコン済み、後方支援がメインなので練度はそこそこ


↑前「提督と球磨」

↑後「提督と大鳳」



提督と大本営



ー大本営・執務室ー


少女「大和っ、ここよっ、やっぱりここがいいわっ」


机一つとっても、豪華な調度品に囲まれた室内

その机の上に広げられた地図。その一箇所を指差し、彼女はそう言った

長い黒髪を揺らし、勝ち気な瞳を輝かせ、小柄な体を目一杯使ってアピールしていた


大和「そうですね、おひいさま」


傍に控えていた大和が、くすり と優しい微笑みを浮かべる


少女「大淀っ」

大淀「はい。そうおっしゃると思いまして、先日手紙を出しておきました」


名前を呼ばれた大淀が、目を通していた書類から顔を上げてそれに答える


少女「流石は大淀ねっ」

大淀「のですが…その」

少女「なによ?はっきり言いなさいっ」


言いづらそうにしている大淀に、少女が怪訝そうな顔を向ける


大淀「返答がなく…係の者が秘書艦に直接手渡したので、誤配ということは無いのでしょうけど」

少女「ふぅん…。大本営からのお手紙を無視するなんて、相手は羊か山羊かしら?」


「食べちゃったのかしらね」なんて口にして、少女が悪戯っぽく笑う


大和「艦娘でしょう」


ネタにマジレスする大和


少女「そうねっ、その通りだわ。けどそうじゃ無いのよ大和っ」

大淀「ふふふ。まあ、大本営に媚を売る気もコネを作る気もないともなれば…」


基本的に大本営からの通達は優先事項ではある

しかしそれは、自艦隊の資材状況、艦隊編成を鑑みて可能であれば、という話である

つまり最優先事項は艦娘の安全であり、大本営の通達なんて二の次だった

とはいえ、大本営に貸しをコネて恩で着せれば美味しいと思う人も少なくはなく

二つ返事でOKなんて事はよくある話だった


少女「私が行くわっ」


次の手を考え始めた大淀を少女が遮る


大淀「おひいさま?」

少女「私が行くわっ」


再度少女が宣言する


大淀「いえ、聞こえています。ですが…」

少女「わ・た・し・がっ、い・く・わっ!」


自分が行くとさらに強調して、大淀の口を塞ぎにかかる少女


少女「大和っ」

大和「はい…」


その先を言われるまでも無く、大和が壁にかけてあった外套を手に取る

袖を通しやすい様に広げられたそれに、少女がすっと袖を通した

白い制服の上から、更に白い外套が合わさる

小柄な少女の体に外套が幅を持たせ、若干ながらも威厳がプラスされた


大淀「大和、貴女まで…」

大和「私が護衛に付きます、それで良いのでしょう?」

大淀「良いも何も…止めたって行くのでしょう,貴女達は…」

少女「そうねっ、その通りだわっ」


言うやいなや、外套を翻し少女が扉に向かう

大和が扉を開き少女に道を譲る

その横を通り過ぎた少女の足が止まり、肩越しに後ろを見やる


少女「大淀っ、行って来ますっ」


小さな体に似合わず、大きな声で彼女はそう言った


大淀「行ってらっしゃいませ、おひいさま。道中お気をつけて…」


立ち上がり、その小さな背中に頭をさげる大淀

少女の後に大和が続き、ゆっくりと扉が閉まる

元気な足音と静かな足音が廊下に響くが、それも次第に小さくなり消えていった


大淀「ふぅ…いつも突然なんだから」


肩の力を抜いて、椅子に体を預ける大淀

もう少し自分の立場を考えてほしいと思うが、言うだけ無駄だろうというのも分かっていた


大淀「大淀です…」


通信機を手に取り、相手に呼びかける

すでに思考は切り替わり、次善の作を模索する


大淀「ええ…そう…またなの…」


2,3のやり取り、いつもの事かと相手にもそれは伝わったようで


大淀「護衛には大和が入ります…貴女達には…はい、お願いします。お気をつけて…」


そんなやり取りの中「周辺海域を制圧すればいいのね…」なんて物騒な声が通信機から漏れていた



ー鎮守府・校庭ー


もともと廃校を改装した鎮守府

残された校庭。そのだだっ広い空間は、子どもたちが遊ぶにはちょうど良すぎる広さだった

そんな中で動き回る睦月型の制服…これがよくある体操服なら本当に小学校のようにも見えたろうか


文月「いっくよ~むつきぃ」


ボールを構えた文月が、それを睦月に向かって投げつけた

勢い良く飛んで行くボールが、吸い込まれるように睦月に向かい…


睦月「いたいっ!」


避けようと身を捻った睦月のお尻に命中した


文月「ふふーん。睦月はこれで外野だね」


とぼとぼ とコートの外に向かう睦月


菊月「安心しろ睦月、敵は取ってやるっ」


その背中を見送り、菊月が ぐっと構えてみせた


睦月「むむぅ…ここで私を倒してもすぐに第2第3の睦月が…」

長月「そんなにいらんわ」


最後まで言わせず、ばっさり切り捨てる長月


睦月「えー、お姉ちゃんが一杯だよ?長月嬉しくないの?」

長月「1人で十分だろう、そんなの」


睦月がいっぱいコレクション…まぁ、卯月が一杯よりはマシかもしれないけれど

トラブルが起こる未来しか想像出来ない長月だった


睦月「そんにゃぁ~、睦月は長月の事こんなに愛してるのに、3分の1も伝わらないなんて…」(さめざめ


およよよー…わざとらしい効果音を振りまきながら、睦月がその場にへたり込む


卯月「あーあ、泣かしたぴょん、いけないんだぴょん」

文月「先生に言いつけてやるー」


睦月に乗じて長月を煽りだす2人


菊月「先生って誰だ?」

長月「あぁ、もう…」


面倒臭そうに頭を抱える長月、その隣で菊月の頭に疑問符が浮かんでいた


睦月「好きだと言ってよっ長月!」


びっくりするほど迫真の泣き真似で睦月が叫ぶ


長月「わかったわかった、好きだから、な?ほら?」


睦月の側に寄り、手を差し伸べる長月


睦月「ほんとに?」

長月「ああ」

睦月「ほんとにほんと?」

長月「ほんとにほんとだから…」

睦月「うん♪」


ごしごしと涙を拭う睦月


睦月「睦月も長月のこと大好きにゃしー!」


差し出された長月の手をとらずに、そのまま本人に飛びついた


長月「うわっとっ。急に抱きつくな、危ないだろう」


倒れそうになる体を何とか地面に縫い付ける長月だったが


文月「わたしも長月の事好きだよー♪」

卯月「うーちゃんもーうーちゃんもー♪」

長月「って、おまえらっちょっとまてって、うわぁっ!?」


両サイドから姉2人が追加され、あえなく尻もちを付く長月

そんな事はお構いなしのお姉ちゃん達に、頭を撫でられ、頬ずりされて、揉みくちゃにされていった


菊月「むぅ…」


そんなお団子状態になった姉たちを、ちょっと羨ましそうに菊月が眺めていた

大好きな長月お姉ちゃんを取られてちょっと拗ねてた


弥生「菊月…」

菊月「ん?…なにを、しているんだ?」


呼ばれて菊月が顔を向けて見れば

いつもの無表情で弥生が出迎えた…なぜか両手を広げていたが


弥生「開いてるよ?」


首を傾げてみせる弥生


菊月「いや、別に…そういうのでは」

弥生「いいから」

菊月「いや、だから…」

弥生「い・い・か・ら」

菊月「むぅ…」


有無を言わせる気は無かったらしい

無言の圧力に菊月が折れて、弥生の腕の中に収まる


弥生「うん、いい子いい子」

菊月「何がしたいんだ、姉さんは…」

弥生「愛情表現」

菊月「そうか…」

弥生「そうなの…」


結局、弥生が満足するまで撫で回される菊月だった


長月「いいかげんにしろーっ!」


「きゃー♪」「長月が怒ったぴょん♪」「逃げるにゃしー♪」

長月の咆哮が空気を揺らす

だというのに、楽しそうにきゃーきゃー言いながら蜘蛛の子散らす姉たちだった


ドッジボール中だったのよ?




仕切りなおして再開されるドッジボール


菊月「では…いくぞっ」


菊月の手からボールが離れ飛んで行く


文月「きゃ~♪」


わざとらしい悲鳴を上げ、文月がさっさと射線から逃げ出した

と、その後ろ。射線上に弥生の姿


弥生「あ…卯月、危なーい」(←棒読み

卯月「ちょっ、やよいっ何するぴょんっ!?}


弥生の手が伸びる…

その手が逃げ出そうとしていた卯月を掴み、自分の前に引き寄せた

弥生の特殊能力、卯月でガード。もちろんそんなもの無いけれど…


勢い良く直進するボールが、弥生に捉えられ上手く動けないでいる卯月の胸を打った


卯月「ぴょんっ!?」


卯月の悲鳴に弾かれるように、ボールが軌道を変え空に飛んで行く

やがて失速したそれが地面に向かい、弥生の手に収まった


弥生「…」(←きらりん


弥生がキメ顔で菊月を見やる


「…」


菊月、長月、文月の3人が閉口する、そして…

「えげつないな…」

とは、口にせずとも同じ意見だった


卯月「うぅぅ…弥生ひどいぴょーん、胸ぶつけたぁ、潰れたらどうするぴょーん、瑞鳳以下ぴょん、そんなの悲惨ぴょん」


言いたい放題だった


弥生「うん、大丈夫だよ卯月」


弥生が卯月の頭を撫でる、そして…


弥生「潰れるほど無いから…」


バッサリと切り捨てた


卯月「ひどいっ」


端的な卯月の抗議だった




校庭の一角、大きな木の木陰にて…


瑞鳳「…(ガタッ」(←聞こえてた

如月「はーい、ストップ」


飛び出そうとした瑞鳳の肩を、如月が抑えて座らせる


瑞鳳「けどっ!」

如月「そうやって飛び出しても卯月が喜ぶだけよ?」

瑞鳳「むっ」

如月「まあ、卯月と追いかけっこしたいのなら良いんだけれど…」


そこに、「いつも楽しそうですものね?」なんて付け加えられては

それを認めたくない瑞鳳はしぶしぶ腰を下ろすしか無かった


如月「そんなに気にすることもないのに」

瑞鳳「そりゃ分かるけど…」


と言いつつも、納得はしきれて無さそうな瑞鳳


夕張「じゃあさ、こう考えれば?」

瑞鳳「こうって?」

夕張「世の中の艦娘が、皆おっぱい星人だったらどうかってっ」

瑞鳳「おっぱい星人って…あなたね…」


ぐっと力を込める夕張


如月「んー…こうかしら?」


如月が手近にあったタオルを丸めて自分の胸に押し込んだ

少女の胸が膨れ上がる…

睦月型の中では大きい方だった如月の胸

華奢な体躯ながらも。きれいな曲線を描いていたそこに、無理にタオルが押し込められ歪に盛り上がる

なるほどどうして、おっぱい星人と形容すればその通りといった有り様だった

まぁ、そのアンバランスさが良いんじゃないかって意見もあるにはあるけれど…


瑞鳳「ぷふっ…あ、うん…ふふふふっ」


笑いをこらえて口元を抑える瑞鳳


夕張「ほらっ、似合わないでしょう?…くくくく」


夕張も釣られて笑みをこぼす


如月「あら、二人共そんなに笑うなんて酷いんだー」


わざとらしく口元を尖らせた如月が、押し込んだタオルをしゅっと引き抜けば

空気が抜けたように胸がしぼんだ


瑞鳳「あ、ごめんっ、ちょっとむり…」


なにかツボに入ったらしく、瑞鳳が後ろ向きお腹を抱えて肩を震わせる


如月「さすがに、そこまで笑われると、こっちも恥ずかしいじゃないの…」

瑞鳳「ご、ごめん…くふふふ。急に萎むから…つい、あの…あはははは」


堪え切れず、ついには声を上げて笑い出した


如月「ちょっと、夕張。どうするのよ、これ?」

夕張「ま、まあ…いいんじゃない?…ふふふふ」


夕張の視線が如月の胸元にいき、すぐさま目をそらして笑いを噛み殺す


如月「あーんもー」


今更ながらにちょっと後悔する如月

すかすかになった自分の胸元をみて…

「もう少しあってもいいかしら…」

なんて思わずにはいられなかった




卯月「ふふっ、まあ良いぴょん。こうなったら、皆ぺったんこにしてやるぴょん」

弥生「あ…」


弥生が持っていたボールが卯月に奪われる


卯月「まずは菊月っ、貴様からぴょん!」


びしぃっと指先を菊月に向ける卯月


菊月「いや…潰れるほどないだろう、お互いに」

卯月「うっさいぴょんっ、黙ってボールを食らうぴょんっ!」


卯月が思いっきりボールを投げる


菊月「ふんっ、そう簡単にあたっては…」


身を翻し、さらりとボールを避ける菊月

狙いを外したボールがあさっての方向へ飛んで行った


長月「はぁ…あまり強く投げすぎるなよ…取りに行く方も…あ」


ボールを追って長月が振り返るがその動きが止まる

何かにぶつかったボールが跳ね返り、長月の直ぐ横に転がってくる


大井「うっふっふっ~♪」


空から舞い降りた天使のイメージを持って、ゆっくりと大井がコートに入る

その胸元は円形に砂埃が引っ付いていた…

そう、ボールがぶつかればこんな後も付くだろうかと…


大井「このボール。誰に返せばいいかしら?」


ボールを拾い上げニコッと笑みを浮かべる大井


卯月「菊月ぴょん」

菊月「卯月だっ」


「…」

二人して相手の名前を呼び、しばし固まる


卯月「菊月が避けるからいけないぴょんっ」

菊月「卯月がノーコンだから悪いんだろうっ」


お互いを名指ししてぎゃーぎゃー騒ぎ始める2人


大井「いいわ、2人纏めてぶつけてあ・げ・る❤」


大井がボールを構えた


卯月「菊月」

菊月「卯月」


「逃げるぞ(ぴょん」

その言葉と駆け出すのはほぼ同時だった


大井「逃さないわっ!」


二人を追ってボールを構えたままの大井も駈け出した


弥生「…いっちゃった」

睦月「…にゃしぃ」


見る見る内に遠ざかっていく3人の背中


文月「ボール取ってくる?」

長月「いや、折角だ。少し休もう」


「Hey,Girls♪Tea Timeの時間だヨー」

話していると、後ろから耳をふさいでても聞こえてきそうなほどに、元気な金剛の声が聞こえてくる

振り返ってみれば手には魔法瓶とバスケット


北上「あれ、大井っちは?場所取りしてるって…」

長月「ああ、あいつらなら…」


長月が校庭の隅に目を向ければ走り回ってる3人の姿


北上「ああ…うん。わかった」


いつもの事だった



ー正門前ー


走っていた…追いかけていて追いかけられていた

一見 不毛とも思える逃走劇だが、しかしてその実態は不毛の塊だった


大井「まちなさいっても、待つわけ無いでしょうねっ」

菊月「ははっ、良くわかっているな」

卯月「もう諦めるぴょんっ、しつこい女は嫌われるぴょんっ!」

大井「お生憎様っ、北上さんにモテてれば良いのよっ」


ついに大井の手からボールが離れる

豪速球と言っても差し支えないほどの勢いでボールが射出される


菊月「卯月っ」

卯月「任せるぴょんっ!」


卯月が地面に足を叩きつけブレーキをかける

その勢いのままに反転し、飛んでくるボールと向かい合った


卯月「ふんっ、卯月に飛び道具を使うなどと片腹痛いぴょんっ!」

菊月「なんだ…お腹が痛いのか?」

卯月「しゃらっぷっ!」

菊月「むぅ…」


的はずれな菊月の問いをピシャっと遮り、卯月が向かい来るボールを見据える…

そして、タイミングを合わせて腕を横薙ぎに振るった


卯月「ふふーん♪」(ドヤァ


無い胸を張り勝ち誇る卯月

弾かれたボールは、的を失いあさっての方へと飛んで行った


大井「って、バカっ!そこの人避けなさいっ!」

卯月「バカとは何ぴょんバカとは」

菊月「いや、不味いかもしれん…」

卯月「ぴょん?」


卯月がボールの行く末を確認したその先、人が歩いていた…

1人は小柄な少女の様で、外套が風にヒラヒラと揺れている

もう一人は長身の女性のようで、少女の傍らに立ち傘を広げて陽の光から影を作っていた


卯月「あ…」


卯月が事態に気づき言葉をなくすが、それで飛んでいったボールが減速なんてするはずもなく

新たな的を見つけたとばかりに一直線に飛んで行く


少女「そこの人?私ねっ…あら?」


呼ばれて少女が顔を上げる

目の前には勢い良く飛んでくるボール

大井の手から離れた時に比べれば大分勢いは削がれているものの

当たれば痛そうな速度だった


少女「大和っ」

大和「はい…」


名前を呼ばれた時にはすでに動いていた

少女の前に一歩進み出て、傘を盾にするように前に出す

そして、間を置かずにボールが傘にぶつかった

傘の骨が軽く弾み、ボールの勢いを飲み込む


大和「えいっ♪」


大和がくるりと傘を回す

すると、ボールが傘の上を滑り空中に持ち上げられる

傘の上で弾むボール。それをもう一度受け止めると、さらに傘を回す

くるくるくる と傘が回る。その傘の上で、ころころころ とボールが転がり出す


卯月・菊月「おおっ」(ぱちぱちぱち


大道芸ぜんとした行動に卯月と菊月が拍手を送る


大和「あなた達、元気なのも良いけれど回りはよく見なさいね?」

卯月「ごめんなさい…ぴょん」

菊月「す、すまなかった…気をつける」


笑顔で窘める大和の雰囲気に押されて珍しく2人が素直に謝った


大和「よろしい、それじゃあ返すわ…はいっ」


大和が傘でボールを弾くと、ちょうど菊月の頭上に飛んで行く


菊月「むっ、ありがとう」

大和「どういたしまして」


お礼を述べる菊月に笑顔で応えると、すっと少女の傍らに戻る大和


少女「ふふふっ、貴女達元気がいいわねっ。気に入ったわっ、私の元で働きなさいっ」


ぴしぃっと指を突き付けて少女が宣言した


菊月「何を言って…」

少女「だって、貴女達艦娘でしょう?」

卯月「それは、そうぴょん…」

少女「待遇は保証するわっ。三食昼寝付きよっ、間宮よっ、よろこびなさいっ」


どっから湧いてきているのか、無駄に自信に満ち溢れた言葉を投げかける少女


卯月「菊月」

菊月「皆まで言うな」


2人で目配せをして頷き合う


「お断りだ(ぴょん」


そして断固拒否の言葉を返した


卯月「うーちゃんには司令官がいるぴょん。他の人の所なんてぷっぷくぷーだぴょん」

菊月「あんなんでも私の司令官だ。はいそうですかと、裏切るわけがないだろう」

少女「…」


2人の返答を少女が静かに受け止めた


少女「ふふふっ。大和っ、振られたわっ」

大和「そうですね、おひいさま」


何故か満足そうに笑いだす


卯月「ぴょん?」

菊月「何だ?」


状況が理解できずに2人が顔を見合わせる


大井「そこまでよ。ボールを投げつけたことには謝罪するけども…それ以上戯言を続けるなら」


間に割って入った大井が、卯月と菊月を庇うように前に出る


大井「あんた達、皆のところに戻ってなさい…」

卯月「大井…」

菊月「しかし…」


少女「大和っ」


2人が まごついていると、少女の声が割って入り、大和が一歩前に出る


少女「戯言…続けるならどうするのかしら?」


不敵な笑みを浮かべる少女


少女「雷巡大井。分かるでしょう?こっちには大和がいるのよ?うしろの小娘2人を束ねたって…」

大井「だったら何?引く理由にはならないわ」

大和「…」


とはいえ、相手が言う事も最もである

海上でならまだしも、陸の上では魚雷が使い辛いのも確か

たださえ薄い勝ち目が、さらに潰されたようなものだった


大井「…」


ギリっと歯噛みをする大井

感情的に対応したことに失敗したとは思うけれど

自分の提督を裏切れ、何て言われて平静でいられるほど、薄情な艦娘になったつもりもなかった


大和「…おひいさま」

少女「ふふ。そうねっ、大和っ」

大井「…」


少女の声が響く。なにか仕掛けてくるのかと大井が身構えるも

特になにがあるでもなく、大和が一歩下がり少女の傍に戻るだけだった


大和「ふふふ、ごめんなさい大井さん。少々冗談が過ぎました」

少女「そうねっ。悪かったわっ、ごめんなさいっ」


ゆっくりと大和が頭を下げる。その横で少女も元気よく頭を下げた


大井「…で、結局何をしに来たの貴女達は…来客の話なんて聞いてないのだけれど」


あっけらかんとした謝罪に、大井も毒気を抜かれて、とりあえずながらも当初の疑問を口にした


少女「それはそうよっ、アポなんて取ってないんだものっ」

大和「突然の来訪で申し訳ありません…」


軽く会釈をする大和と、無駄に自信満々の少女が対照的だった


大井「…見た所どこかの提督でしょうか?」


大井の頭に浮かぶ一つの疑問

大和を引き連れているのだから、提督には違いない…違いないのだが

あの外套…ただの将官が付けるには余りにも上等すぎた

その中に隠れているであろう、階級章に嫌な想像を迫られていた


少女「ふふんっ、それを聞くのねっ。いいわっ、これを見なさいっ」


少女が羽織っていた外套の襟首をずらすと…


大井「げっ…」

菊月「なっ…」

卯月「ぴょん…」


3人が言葉を失った

大井からしてみれば、嫌な想像が顔を出したという所か


大和「…」


大和が傘を畳むと、少女が一歩前に出る

少女が外套の襟首を直し、その場でくるっと回って外套をなびかせた


少女「畏れ敬いなさいっ、私の名前はっ…」


陽の光が少女を照らしあげる、その姿はとっても輝いていた




言いたいことだけ言いまくって、去っていく少女の背中を3人で見送った後

ようやっと硬直が溶けたのか、卯月が口を開いた


卯月「なんで…あんなのがここにいるの…」

菊月「分かるわけ無いだろう…」

大井「どうせ、提督がやらかしたんでしょ…」


「やらかした」別に何をとはいってないし、大井も冗談のつもりだったのだが

その言葉は駆逐艦2人の耳に響いたようで


卯月「やらかしたっ!?」

菊月「司令官がかっ!?」


「大変だっ!?」

二人で声を揃えて慌て始めた


大井「え、ちょっと、あなた達冗談よ?」


なんて大井が制しようとするも


卯月「大変ぴょーん!司令官がやらかしたぴょんっ!」


卯月が大声で上げながら走りだし、菊月もその後に続いていった


大井「…私、悪く無いわよね?」


残された大井が1人ごちる



ー執務室ー


提督が今日も今日とて皐月に執務を丸投げしてソファーで寝っ転がっていた

とうの皐月はそんな事はお構いなしに、淡々と書類をまとめ上げる

今日は三日月が手伝ってくれてる分いつもより順調そうだった


提督「ねーねーもっちー」


暇を持て余した提督が、反対側のソファーで寝っ転がっていた望月に声をかける

じゃあ手伝えって言ったら寝たふりするので悪しからず


望月「んだよー、私だって忙しいんだぞ?」

提督「休むのにか?」

望月「わかってんじゃーん」


そういってゴロリと寝返りをうつ望月


提督「みんなと外で遊んでこればよかったのに」


「ドッジボールするよっ」って元気よくやってきた娘の事を思い出す


望月「…あたしは司令官と一緒が良いんだよ」

提督「あらかわいい」


冗談めかした望月の言葉に、茶化して返す提督

とはいえ、内心二人してちょっとドキっとしていたり


望月「って、三日月が言ってたぜ」

三日月「ちょっとっ!?そんなこと言ってないから」

皐月「…(あ、はじまった」


作業の手を止めて三日月が慌てて否定する


提督「えー…私と一緒にいるの嫌なの?」


その否定に提督がしゅんっと肩を落としてみせれば、後は泥沼だった


三日月「えっ…いや、じゃ、ないです、はい…」


だんだんと言の葉をフェードアウトさせながらも、何とか最後まで口にする三日月


望月「なんだよー、「私司令官と一緒がいいの❤」くらい言ってやれよー」


妙な猫なで声だった


三日月「そんなこと言うわけ無いじゃないっ」

提督「えー…言ってくれないの?」


再度しょぼーんとする提督


三日月「え、あ…も、もうっ、からかわないでってばっ!」

提督「…(かわいい」

望月「…(かわいい」


顔を真っ赤にしてる三日月を、提督と望月がニヤニヤと眺めていた


皐月「はぁ、しょうが無いだから…」


コンコンコンコン…

執務室の扉が叩かれる


三日月「あ、はい、どうぞっ!」


話を逸らす絶好の機会とばかりに、三日月が力いっぱいノックに応えた

その瞬間…「頼もうっ」その声とともに


ドーンっ!と扉が開かれる、いっそ弾き飛ばされたのかと思えるほどに(←1カメ

キラーンっ!と勝ち気な笑みを浮かべた少女が立っていた(←2カメ

デデーンっ!とドアを弾き飛ばしたであろう右手を前に突き出し、左手を腰にそえ、由緒正しき高速戦艦のポーズを取った少女が立っていた(←3カメ


少女「私よっ、来てやったわっ」

望月「いや、誰だよ」


あまりにも当たり前な疑問を望月が返す


少女「そうねっ、正しい反応だわっ」


「…」

言葉を失ってる4人を置いてけぼりにし、少女がさらに言葉を続ける


少女「それじゃあ名乗ってあげるわっ、大和っ」

大和「はい」


大和が少女の傍に立ち、さらに少女が大きく息を吸い込んだ

そして、一気に吐き出すように宣言する


少女「畏れ敬いなさい、私は大日本帝国、大本営の大元帥。「御代 みつよ」よっ」


少女が名乗り終えた後、大和が自身の指輪に触れる…

すると、辺り一面に桜の華が吹き荒れ少女の登場シーンを彩りだす


みつよ「親しみを込めて「みつよ様」と呼ぶがいいわっ!」


そして無い胸を張る みつよちゃん


三日月「…(大が多い…」

皐月「…(あれ、もしかしてそれだけの為に指輪使ったの?」

望月「…(うるさい」

提督「…おまえバカだろう?」


提督が口を滑らせた、直球だった


みつよ「バカって誰がよっ」

提督「鏡見ろ、鏡」

みつよ「大和っ」

大和「はい」


大和がすっと手鏡を差し出す


みつよ「ふふんっ、今日も可愛いわねっ私」

大和「はい、そうですね♪」


鏡の前でキメ顔をする みつよに、笑顔で同意する大和


みつよ「ふんっバカなんていないじゃないっ、もしかして貴方ってバカなの?」

提督「…」


そして閉口する提督


望月「なぁ、三日月。少しくらいあれ見習ってもいいんじゃね?」

三日月「うん、無理」


即答だった。確かにあの無駄な自信と度胸は見習うべき点もあるだろうが、即答だった




言いたいことを言い終えた みつよが、立ち位置を大和に譲り、望月が転がっていたソファーに腰を下ろす

寝床を追い出された望月がそのまま提督の側に逃げ込んだ


大和「さて、それでは本題ですが」

皐月「う、うん…」


本題に入る前にどっと疲れた気がする皐月達一行


大和「まず、こちらの…大本営からの手紙は届いていたと思いますが」

皐月「あ、うん…それなら司令官に、渡したって…司令官?」

望月「おい、隠れてんじゃねーよ」

提督「…」


皐月の言葉が終わるより先に、提督が布団を頭から被って隠れていた


みつよ「ふふ、羊は見つかったようねっ」

三日月「羊さん、ですか?」

みつよ「ええっ」

三日月「?」


一人納得する みつよに首をかしげる三日月


皐月「あ、うん…ごめんなさい、大和さん」

大和「いえ、構いません…珍しくもないので」

望月「それもどうなんだよ」


割と変人率の高い提督達には、手紙を送るよりいっそ出向いた方が早い事もあると、大和が付け加えた


大和「ではまず、日頃よりの近海警備ご苦労さまです。お陰様でこの海域は高い治安を確保できているようで」


実際、深海棲艦の発生率の低さ、またその際の即応力は大概な事になっていた、いっそ病的と思えるほどに


大和「そこで一つお願いです、警備の幅を周辺海域にまで広げては頂けないでしょうか?」

三日月「あの、質問いいですか?」

大和「どうぞ」


すっと手を上げた三日月に大和が先を促した


三日月「周辺海域になにかあったのでしょうか?深海棲艦が増えたとか?」

大和「いえ、今はまだ…現在私達は補給路の拡張を考えていまして、その一環です」

皐月「安全に通過できる海域は多ければ多いほど良いってことかい?」

大和「はい」

望月「だってよ、司令官」


望月が隠れてるつもりになってる提督を突っつく


提督「長い、3行で」


布団から提督の声が漏れた


大和「はぁ、仕方ありませんね…」

皐月「ごめんなさい、ごめんなさい」

大和「いいですよ、皐月が悪いわけではありませんから…それでは端的に」


「引き篭もってないで」

「いい加減に」

「外洋に出なさい」

「あと、布団からも出なさい」


4行だった


提督「拒否権は?」


もぞもぞと布団から頭を出す提督


みつよ「あるけど無いわっ」


それを認めた上で真っ向から否定された


提督「横暴だろ」

みつよ「そうよっ、それが私の権利であり権力よっ」(きらーんっ


力を力と認めたうえでそれを振るうのなら、いっそそれは暴力的だった


皐月「んー、ボクは大丈夫だと思うけどな…外洋ってもそんなに離れてるわけじゃないし」

三日月「はい、いざともなればコレも…ありますから」


三日月が自分の首に下がっていた指輪に手を触れる


みつよ「あら、いい指輪ねっ。私も持ってるのよっ。大和とお揃いよっ」


大和の左手を取り指輪を見せつける みつよ

一体何と張り合ってるのかと


望月「へへーん、それならこっちにも有るぜ」

皐月「あ、ちょっと望月」


望月が皐月の左手をとり、自分の分と合わせて指輪を見せつける

一体何と張り合ってるのかと


みつよ「むぅ…大和っ」

大和「はい」


一瞬不満そうな顔をしたが、それも直ぐに破顔し、大和に左手を差し出す みつよ

そしてその指に、大和が追加で指輪を添えた…5本全部に


みつよ「ふんっ、勝ったわっ」(ドヤァ

皐月「それさ、なんの意味があるの?」

みつよ「ないわっ」

望月「無いのかよ…」

三日月「無いんだ…」

大和「ふふふ…」


無意味なことに全力投球する自分の主に、大和が笑みを浮かべていた


大和「さて、提督。先ほどの件、考えては頂けないでしょうか?」


そのまま きゃいきゃいし始める みつよ と駆逐艦勢を放っておいて

大和型戦艦の馬力を持ってして強引に話を元に引き寄せる


提督「…」


補給路の拡張…成功すればこっちにも流入する資材の量も上がるんだろうけど…

何より自海域の防衛が、手薄になるのが気になる提督だった

とはいえ、このまま深海棲艦が手をこまねいてる保証もなし…

確かに皆の練度は高いけれど…なんの準備もなしに姫だの鬼だのに湧かれては不安な点もある

ならいっそ、ココで吹っかけるか?

この間5秒


提督「条件付き賛成」

大和「飲みましょう」

提督「私、まだ何も言ってないんですが、それは?」

大和「そのくらいの用意はあります、容易です…」


彼女は笑顔のままでそう言った


提督「おまえそれ、ひょっとしてギャグで言ってるのか?」

大和「はい、笑ってもいいんですよ?」

提督「はぁ、提督が提督なら艦娘も大概か…」

大和「ねぇ、提督。私のことは構いませんが、おひいさまの事を悪く言うなら…ね?」


彼女は笑顔のままでそういった


提督「…(この娘怖い)」




みつよ「それじゃあ、提督。条件は飲んだんだからちゃんと仕事なさいよっ」

提督「みつよ様こそ、へたなもの送りつけたら…」

みつよ「ふんっ、あり得ないわっ、私は大元帥よっ」

提督「ま、今はその階級を信頼しておくよ」

みつよ「結構な答えねっ、直ぐに心酔させてやるんだからっ」

大和「浸水(物理)で良ければ今直ぐにでも…」


彼女は笑顔のままでそういった


望月「あれはひょっとしてギャグで言ってるのか?」

三日月「た、たぶん…」

大和「笑ってくれてもいいんですよ?」

みつよ「大和っ面っ白く無いわっ」

大和「むぅ」


ばっさり切り捨てる みつよ様だった


みつよ「それじゃあっ帰るわっ」


立ち上がり外套を翻して出口に向かう みつよと大和


皐月「あ、帰りの護衛は?」

みつよ「不要よっ、大和がいるわっ」

三日月「お見送りは…」

みつよ「不要よっ、笑顔で送り出してくれたら満足よっ」

望月「お土産は?」

みつよ「不要よっ、目的は果たしたのだし、いい手土産が出来たわっ」

提督「お前ら…仲いいな」

みつよ「当然よっ、全ての艦娘は愛してしかるべきだわっ」


自信満々にそう言い残すと外套を靡かせ 大和を引き連れ退室していった


提督「疲れたぁ…」


だらーんっとソファーに寝っ転がる提督


皐月「ボクは司令官が逃げ出さなかったのがすごいと思うよ」

望月・三日月「あー…」

提督「納得してんじゃねーよ、二人して…」


確かに、と口を揃える2人に、提督が口を尖らせて抗議する


提督「だって…あんな訳の分からんの前にして、お前らほっといてどっかいけないでしょよ…」


それはぽつりと独り言のような呟きだった


「…」

3人が閉口する。どことなくほっぺが赤くなっていた


皐月「そんな司令官ったら、ボクらの事そんなに好きなのかい?」

提督「そんな事言ってないだろう…」

三日月「嫌いなんですか?」

提督「そうも言ってないだろう…」


いつもの仕返しとばかりに三日月までも乗ってくる


望月「大人しく大好きっていいなよ?」

提督「…大好き」


そっぽを向いてぶっきら棒に、提督がI love youと口にした


皐月「なんか…」

三日月「あらためて言われると…」

望月「なんで、あたし達のが照れてんだよ…」


しばらく微妙な空気が流れる室内だった



ー執務室前・廊下ー


ガールとレディが廊下を歩く

合わない歩幅の足音が、簡素な廊下に かっつんこっつんと響いていた


みつよ「いい鎮守府ねっ」

大和「はい…提督は、ちょっとアレでしたが…」

みつよ「あれぐらい癖が有る方が楽しいわっ」

大和「ふふふ、そうですね」


楽しそうな主の言葉に微笑みで返す大和


大和「時におひいさま?」

みつよ「何かしら?」

大和「もし、あの時…卯月と菊月がこちらに付いたらどうしてました?」

みつよ「ああ、そんな事。そのまま帰ってたに決まってるじゃないっ。艦娘に信頼されない提督に話すことなんて無いわっ」

大和「道理ですね」

みつよ「まあ、その点を言えばここの提督は安心ねっ」


大和「?」

みつよ「大井に懐かれる提督に悪い奴はいないわっ。ま、うちの大井のが100倍素敵だけれどねっ」


無い胸張って宣言する みつよ

暗に大井に懐かれる私は良い奴なのだって言いたげだった


大和「ふふっ、おひいさまの方が100倍素敵ですよ」

みつよ「ふんっ、当然よっ。だって貴女達の提督なんですものっ」


素敵な娘達の提督ならば、素敵な私でいなくてはならない、そんな少女の矜持だった


得意げな主の顔をみて大和が微笑む

歩幅の合わない足音が、かっつんこっつん廊下に消えていった

ー食堂ー


「提督がやらかした」そんな不明瞭なくせに、不安をかき立てる言葉が漂っていた


球磨「提督、ついに皐月に手を出したか…ま、よく持った方クマ」


ぶくぶくとオレンジジュースに息を吹き込んで球磨が遊んでいた


多摩「ま、いつかはやると思ってたにゃ」


お茶を啜ながら多摩がその言葉に同意する


金剛「待つデスっ、提督が皐月に無理やりだなんて、そんな…」


続く言葉が口に出来ずに、そのまま黙りこんでしまう

皐月が云々はおいておいても、元帥がこんな場末の鎮守府に急に現れた事

さらには、卯月と菊月に引き抜こうとしたなんて事実が不安を掻き立てていた


多摩「誰も無理やりなんて言って無いにゃ…」

球磨「きっと金剛の趣味だクマ」

金剛「うぐっ…」


ネコとクマに好奇の視線を向けられ言葉に詰まる金剛


木曾「無理やりじゃなきゃ良いのかよって話になるけどな、それだと…」


そんな姉たち2人を呆れ顔で眺める木曾さん


球磨「提督と艦娘のやることクマ、別に珍しくもない」


わかってないなーって風体で首を横にふる球磨


多摩「きっと味わい深かったはずにゃ」


訳知り顔で頷く多摩


金剛「やめるデースっ!そんなfreshな話聞きたくないデスっ」


ついに耳を塞いで聞かざるの体勢に入った金剛さん


多摩「昨晩もお楽しみだったはずにゃぁ…」

球磨「きっと今頃は…褥の上で…睦言の真っ最中クマぁ…」

木曾「会議中だろ…」


金剛の耳元でネットリと言葉を重ねる姉2人

木曾の突っ込みなんてどこ吹く風だった


金剛「Noooo!!」

多摩「にゃししししっ♪」

球磨「くまくまくまくま♪」


球磨達の言葉を掻き消そうと声を上げて、ついには丸まってしまう金剛さん

ニヤけ顔のネコとクマに転がされて、角が削れていくダイヤモンドだった


木曾「やめてやれよ…ただでさえテンパってるのに」


木曾が姉2人の首根っこを引っ掴み金剛から引き剥がす


多摩「何にゃ?木曾はもう少し騒いでくれてもいいのよ?そんなんじゃ多摩達の弄り用がないにゃ」


最初から猫じゃらし扱いされてた木曾さん


木曾「騒ぐかよ、この程度で」

球磨「くま?一度はデートに行った仲だろう?」

木曾「買い物に付き合っただけだってつーのっ…それになんだ」


なんとなく執務室の方角に目を向けて先を続ける


木曾「あいつの心配するだけ無駄って気がしてなぁ…なんかしらんが…」


呆れとか諦めとかそんなマイナスな感情ではない

だからといって、信用だとか信頼だとかそんなんでもない、なんとも言えない感覚だった


多摩「き、木曾が女の顔をしている…」

球磨「一皮向けたと思ったら、階段すっ飛ばしてたクマっ」


お互いの両手を合わせてガクブル始める姉2人


木曾「もうお前らは口閉じてろっ!!」

「にゃー♪」「くまー♪」


怒られてるのに、満足そうな姉2人だった




北上「でさ、大井っち。元帥ってどんな人だったよ?」


こっちもこっちで提督の心配なんてこれっぽっちもしておらず

どちらかといえば、急に現れた元帥閣下の人となりが気になる模様


大井「どんなって…そうね」


記憶の中の元帥像を組み立てなおして言葉に変える


大井「瑞鳳くらいの身長で、綺麗な黒髪が腰くらいまであって…」

北上「ふむふむ」

大井「木曾さん見たいな外套を羽織ってたわ」

北上「外套って…なに?そっち系の人?」


そっち系…眼帯つけてたり外套羽織ってたり、要は中二病とか言われそうな人種の事


大井「あれはどっちかって言うと、仕事着って感じだったけれど」

北上「ふーん。で、隣に大和を従えてたと…いやーおっかないねぇ」

大井「おっかないなんてもんじゃ無いわよ…規格外よ、あれ」


大和と対峙した時のことを思い出し、今更ながらにちょっと冷や汗が出そうになっていた


夕張「それにしたって…どうしてその元帥閣下がこんな場末の鎮守府に…」

北上「さぁねぇ…お偉方は何時だって唐突だし」


貧乏くじは何時だって現場だよぉっと嘆く北上様


瑞鳳「よくあるお話だとあれよね…昇進に見せかけた左遷とか…むぐぅ」

夕張「瑞鳳すとっぷ…」


にやり と冗談めかしてそんな事を口にする瑞鳳、その口を慌てて夕張が塞いだ…が


卯月「瑞鳳…司令官、どっかいっちゃうの?」


左遷=司令官とお別れ…ばっちり聞かれてた


夕張「あちゃぁ…」


提督よりも瑞鳳がやらかしていた


瑞鳳「え?いや冗談…なんだけど…」


いつも笑顔の絶えない娘が、寂しそうな顔で見上げていた


菊月「なぁ瑞鳳…司令官とはもう逢えないのか?」


そこにもう一人も加わって…


卯月「瑞鳳」

菊月「瑞鳳」

瑞鳳「あ、ちょっと…冗談だってのに…」


困り顔の瑞鳳が、ゆっさゆっさと2人に体を揺すられる




長月「ん?如月…泣いて…いや、なんでもない…」

如月「え、あらやだ…ちょっと目にゴミが…あーんもぅ…ほんとに…もう…」


ふと、長月が如月の方を見てみれば、すっと頬を伝う何か

それを見ないふりをして、ポケットからハンカチを取り出し如月に差し出した


長月「…ほら」

如月「…」


それを如月が無言で受け取る


長月「…(まったく、いらん時にはいるくせに)」


さっさと顔を見せに来い、なんて内心悪態を付く長月だった


睦月「よしっ、睦月ちょっと覗いてくるしっ」


ガタッと睦月が席から立ち上がる


弥生「だめだよ、睦月」


その手を弥生が握り引き止めた


睦月「どうしてっ、気にならないの?」

弥生「なるけど…元帥とお話中…」

睦月「こっそり行くよ?」

弥生「…バレたら、司令官とほんとに会えなくなるかも?」

睦月「う…」


その言葉に取り敢えず、自分の席にリターンしたものの


睦月「やーだーきになるしーしー!しー!!」


机の上で手足をジタバタを振り回し始めた


弥生「うん、そうだね、気になる気になる」


そんな睦月をなだめるように、弥生が優しく頭を撫でていた


文月「…ずーいほーさーん…」

瑞鳳「ひっ…な、なに?」


現在進行形で体を揺さぶられてる瑞鳳の耳元に届く文月の声

その声はどこから出したのか、恐ろしく底冷えしていた…


文月「あんまり~変なコト言うと~…私、怒るよ?」

瑞鳳「は、はいっ!気をつけますっ」


あまりの威圧感に瑞鳳の背筋が伸びた


文月「うん…次は聞かないからね…えへへ~♪」

瑞鳳「…」


最後の笑いこそいつもの調子だったが

それ以前とのギャップのせいか、余計な恐ろしさが付加されていた

文月だって、別に司令官の心配をしてたわけではなく

そのせいで姉妹たちがヤキモキしてるのが面白くなかった

その上に瑞鳳の不用意な言葉か重なって、ちょっとお冠だったらしい


夕張「余計なこと言うから…」

瑞鳳「ごめん…」


そして2人に芽生える共通認識

あれは怒らしちゃいけないタイプだって




それから少しして、食堂の扉が開く

ガタッ音が立つくらいに一斉に顔を上げ、皆が扉の方を見つめた


皐月「あ、みんなここに居たんだね」

提督「探す手間が省けたよ…:」

金剛「提督!一体皐月にナニしたデースっ!」


開口一番に金剛の大声が食堂に響く


皐月「はい?」

提督「なんじゃそりゃ…」


皐月と提督二人の頭に浮かぶ疑問符


望月「なに、この空気?」

三日月「さあ?」


あとから食堂に入った2人

部屋の中をぐるっと見渡せば皆揃ってるようで…揃ってはいるようだけれど…珍妙な空気に包まれていた




皐月「はいはい、なんか知らないけどちゃんと説明するから皆落ち着いて」


皐月が手を叩き注目を集める


皐月「司令官、ほらちゃんと説明したげなよ」

提督「そうね、皐月」

皐月「え、なに?ちょっとっ…」


そのまま皐月を抱き寄せる提督


提督「私達ケッコンしましたっ」

皐月「はいぃぃ!?」


ぼふっと顔が赤くなるのと同時に、逃げ出そうと暴れだす皐月

それを逃がすまいと、ぎゅーっと提督が皐月を抱きしめた


「…しってる」

しばし呆れたような間のあと、何をいまさらとばかりにこの言葉

語尾こそ銘銘思い思いにだったけれど


皐月「司令官…ボクまで滑った感じになってるんだけど…」

提督「ウケると思ったんだけどねぇ…」


白けた空気に提督と皐月がさっさと我に返っていた


木曾「いや、それを言ったら俺たち皆ケッコンしてるだろうが…」

多摩「ジュウコンカッコ仮にゃ」

球磨「提督はよくばりクマー」

北上「ていうか提督…そろそろ真面目に答えないと…」


北上の視線の先、金剛が艤装を展開していた


金剛「提督、5秒待つわ…答えなさい…」


金剛の怒気の篭った視線と46cm砲の大穴に提督が睨みつけらた

ちょーマジだった、怖い


提督「落ち着け、とりあえず落ち着け」


何とか金剛をなだめて、先ほどの話をかんかんこれこれと説明した




種明かしの後は、馬鹿らしいとばかりに一気に空気が弛緩した


夕張「ま、こんなオチよね」

木曾「ったく、だれだよ「提督がやらかした」何て言い出したのは」

大井「…」(←こいつ


やれやれと呆れ気味に2人が肩をすくめるその横で

大井が居心地悪そうに口を噤んでいた


北上「ま、騒いでたのが うづきく(←卯月と菊月の略)の時点で疑うべきよねぇ」

大井「ほんとうよ、人騒がせなんだから…」

北上「…」


すっと大井の隣へ身を寄せる北上。そして、そっとその耳元で囁いた


北上「大井っち、沈黙は金だよ」

大井「う…」


大概バレてた




金剛「私は提督の事信じてましたけどネっ」


どの口が言ってるのか、事の真相を知った金剛に怖いものはないようで

優雅に紅茶を嗜んでいた


球磨「くまぁ?」(威圧

多摩「たまぁ?」(威圧

金剛「…ほ、Why?何が言いたいデス?」


両サイドを球磨と多摩に挟まれる金剛

その2人がジリジリと金剛に顔を寄せていった


球磨「言いたいことは無い…が」

多摩「思う所はあるにゃ…」

金剛「…」


思う所…皐月の云々は冗談にしても、さっきまで悶々としてた奴の台詞じゃないなぁって

そして、言いたい事は無いとの言葉どうりに、何もは言わないが

二人して金剛との距離を詰め、威圧感だけを増大させていく


金剛「…ま、間宮でどうデス?」

球磨「クマー♪」

多摩「にゃー♪」


ダイヤモンドだって砕けるよ…


木曾「やめてやれって言うに…」

夕張「木曾さんが構ってあげないからでしょ?」

木曾「俺のせいかよ…」




卯月「瑞鳳っ、これはどういうことぴょんっ」

瑞鳳「いや、だから冗談だって…あなたが聞かなかったんでしょう…」


種明かしの結果、左遷ってのが嘘だと気付いた卯月が瑞鳳に詰め寄っていた


卯月「嘘つきは瑞鳳の始まりって学校で習わなかったのっ」

瑞鳳「習うわけ無いでしょっそんな言葉っ!」

菊月「…なぁ、卯月」

卯月「?」


ちょんちょんっと卯月の服の裾を引っ張る菊月


菊月「私も嘘をついたら軽空母になれるだろうか?」


「…」

あまりにもあんまりな質問に言葉を失う2人、そして…


瑞鳳「なれるわけ無いでしょ」

卯月「なれるわけねーぴょん」


仲良く息を合わせて回答する


菊月「なんだ、やっぱり嘘だったのか…」

瑞鳳「そりゃ…」

卯月「ぴょん…」

菊月「ふふっ…」


少し肩を落とすも、すぐに一転して不敵な笑みを浮かべる菊月


菊月「なら二人共瑞鳳だな」


したり顔の菊月だった


卯月「それは嫌ぴょんっ!」

瑞鳳「嫌ってどういう意味よっ!」


そのままきーきーきゃーきゃーと不毛な争いが始まった




如月「ふふふっ…」


そんないつものやり取りを見て、如月の顔に笑顔が戻る


長月「ゴミはとれたのか?」

如月「ええ、ばっちり…これ、ありがとね」


綺麗に折りたたんでハンカチを長月に返した


長月「ん…」


受け取ったハンカチをポケットにしまう長月


長月「…(まったく、戻ったら戻ったで騒がしくなるな…まぁ、良いか)」


多少やかましくはなったが、この喧騒にも慣れてしまったものだと、1人微笑む長月だった




提督「ていうか君ら…ほんとに良いの?外洋だよ?敵強いよ、きっと?」


皐月の小さな肩から顔をのぞかせて、提督が心配そうな顔をする


北上「はぁ…提督さぁ、心配してくれるのは嬉しいけど、度が過ぎると信用されてないみたいで結構傷つくのよ?」

提督「うっ…べつにそういうわけでは」


やれやれとばかりに北上が肩をすくめる


大井「本当に…金剛さん、言ってあげなさいな」

金剛「OK,それじゃー提督」

提督「はい…」


ガシッと提督の肩を掴む金剛さん


金剛「Hey、Everyone!お耳を拝借デース!」


金剛が皆の衆目を集めると先を続ける


金剛「提督、私たちのこと信頼してくれてますネ?」

提督「はい…」

金剛「なら一言で良いです、Sortieと…出撃しろって言って下さい…そしたら何処にだって行くネ」


提督の肩を掴む金剛の手に力が込められる


金剛「私達は軍艦デス、戦うのがお仕事デース…戦えるのに戦うなって言われるのはちょっと…悔しい…」

提督「…」

皐月「ほら、司令官。みんな待ってるよ?」


皐月に小突かれ顔を上げてみれば皆と目が合ってしまう


提督「ん…分かった」


提督が諦めたように首をふる


金剛「さーていっとっくー♪。気合入れて行くネー!」


金剛に背中を押され提督が皆の前に立つ

全員分の視線が少し重かった

とはいえ、その重さがちょっと誇らしいなんて…

そして、大きく深呼吸をして口を開いた


提督「提督より、全艦娘へ…出撃だ」


「了解っ!」

語尾は銘銘思い思いに、しかしその言葉と思いは皆一緒だった



ーおしまいー






EX その日の深夜


深夜。護岸に腰掛け、波間に反射する月明かりを眺めながら

提督がぼーっとしていた


提督「出撃しろか…」


思い出されるのは昼間の出来事…


提督「何処にだって行く…なんて言われるから余計言い辛いんだっての」


自分の采配で、彼女たちの命に係るなんて考えたら、おいそれと言えるような事ではなかった


提督「軟弱モノ…なんて言われるのかね」


それがそうなら別にそれでも良いとさえも思う


幽霊「すこし…おはなしよろしいか?」

提督「ん?」


なんて提督が物思いに耽っていると、一匹の幽霊がふわふわと近づいてくる


提督「ふぅ…」


ため息一つの後、指を弾く。甲高い音が波間に溶けて消えていった


幽霊「ああ、助かるよ。あのままでは話しづらかったからね」


手のひらサイズだった幽霊さんが人の形を取り戻す

感触を確かめるようにクルクルと肩を回してみたりしていた

その姿は、軍人=ガチムチの熊みたいなのをイメージしてたのなら随分と小柄に見えるけれど

均整のとれた体格に、落ち着いた物腰からは、それなりに鍛えてるのだろうと見て取れる

とはいえ、優男といったその顔つきからはあんまり威厳は感じられないけれど

すくなくとも、提督よりは軍人然としていた


提督「で?なに?」

幽霊「頼み事を、さ?」

提督「神様に頼み事とか…」

幽霊「僕の命で良ければ、残りカスみたいなものだけれど」

提督「要らねーよ…」

幽霊「そうか、随分親切なんだね」


どこかで見たことあるかと思えば、鎮守府を開けと説得してきたあれか


提督「バーカ、面倒だったらやらねーからな」

幽霊「多分簡単さ…これを」


そういって、一本の万年筆が提督の前に


提督「なに?くれるの?」

幽霊「いや、妹に届けて欲しい」

提督「妹だ?」

幽霊「昼間来てたろう?」

提督「ぷっ…あれかよ…」

幽霊「あははは、じゃじゃ馬ですまない…あれでも昔はお兄様お兄様って、僕の後をついてきたものだけれど」

提督「そんなブラコンが良くあの立場に立てたねぇ」


手の中の万年筆を弄びながら提督が感慨にふける


幽霊「家の力さ、やりたい放題やったんだろうね…」

提督「…まあ、やりそうではあったな」

幽霊「おかげで敵も多いはず…よければ彼女の力になってほしい」

提督「万年筆届けるのとどっちが大事?」

幽霊「そうだね、それを海に投げ捨てても良いくらいには後者だね」

提督「シスコン」

幽霊「妹思いって言って欲しいな」

提督「ま、なんでも良いけど…んっ」


パチンッと提督が指を弾くと万年筆がすっと消え去った


提督「後者の方は確約は出来ないわ…」

幽霊「構わない、君の出来る範囲で」

提督「いや、あのテンションについてく自信ない」

幽霊「あ、あはははは…」


幽霊さんが苦笑いをする


幽霊「君には願いを叶えて貰ってばかりだね」

提督「そうかい?」

幽霊「本当なら僕がこの鎮守府に着任するはずだったのに…」


艦で向かう道中、深海棲艦にやられてこの有り様だった


提督「なんだ、やに薦めてくると思ったら…半分自分の為かよ」

幽霊「ああ、でも君で良かった。艦娘達も楽しそうにしているし」

提督「あんまりプレッシャーかけるなよ、投げ出したくなる…」

幽霊「あははは…まあ、気休めにもならないだろうけど、言わせて欲しい」

提督「ん?」

幽霊「ありがとう」

提督「ん」


なんて小さなやり取りの後、提督ふとした疑問に口を開く


提督「なあ、あんた名前は?」

幽霊「僕かい?まさるだよ」

提督「漢字は?」

幽霊「大って書くね。ま、名前負けしちゃってるけれど、それがどうかしたのかい?」

提督「いや…うん。合点はいった…」


大日本帝国大本営大元帥、おまけに大和を従えて態度もでかいと…

昼間に会った少女のことを思い出す

1人含み笑いを零しながら、納得する提督だった





ー大本営・執務室ー


みつよ「…ふぅ、やっと終ったわっ」

大淀「お疲れ様です、おひいさま」

みつよ「ふんっ、当然よっこの程度っ」

大淀「とはいえ、随分と遅くなってしまいましたけれど」

みつよ「私が起きてる間は昼間なのよっ、なにも問題はないわっ」


随分な暴論だった


みつよ「ん?」


ふと彼女の手に何かが触れる

気になって拾い上げてみれば古びた万年筆


みつよ「これ…」


目を閉じていても分かるほど、見慣れていた万年筆だった

欲しいとさえせがんだ事もあったろうか

そして、ダメ押しとばかりに「大」の文字が刻まれていた

あの日あの時追いかけていたあの背中、その人の名前だった


大淀「おひいさま?それは?」

みつよ「ふふっ、なんでもないわっ」


ありがとう神様っと内心つぶやく みつよだった




ーEX:その日の深夜 おしまいー


後書き

はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです

それではこの番組は

文月「はっ、瑞鳳が2人になってる…」
瑞鳳「なるわけ無いでしょっ」
睦月「そんなバカなっ」
如月「まぁ、ウソだしねぇ…」
菊月「ふふ、これで文月も瑞鳳だな」
弥生「また、増えた…」
長月「量産するなよ…」
卯月「瑞鳳と駆逐艦が同じに見えるなんて…そんなの普通じゃ考えられないぴょんっ」

望月「司令官がやらかしたねぇ…」
三日月「それで変な空気になってたのね…」
提督「私がやらかす訳無いだろう」
夕張「え?」
北上「ん?」
大井「は?」
球磨「けっ」
多摩「にゃ?」
金剛「oh…」
提督「んだよ…」
皐月「司令官、鏡鏡」
提督「実は私、鏡には映らないんだ」
木曾「ウソをつくと瑞鳳になるらしいぜ…」
提督「まじかよ…瑞鳳すげーな」

瑞鳳「なる訳あるかーっ!」

みつよ「大和っ」
大和「はい、次回予告ですね」
みつよ「次回は…大和っ」(←聞いてない
大和「はい…えっと…大淀」(←同じく
大淀「貴女達ね…えー、次回は提督の要求を飲んだ、という事で新しい艦娘の追加です」
みつよ「それよっ」
大和「そうでしたね」
大淀「まったく…今思い出したみたいに言わないで下さい…」
みつよ「大淀の知識は私の知識よっ、何も問題はないわっ」
大淀「…」
みつよ「今回はここまでよっ。読んでくれてありがとうっ」
大和「また次回もお会いできれば嬉しく思います」

以上のメンバーでお送りしました


ー以下蛇足に付きー


♪教えて皐月ちゃんのコーナー♪

皐月「はい、15回目終了だね」
提督「日増しに増えてく文章量」
皐月「EX抜けば…2万切るから…」
提督「改行と句読点抜けばもっと減るねっ」
皐月「…」
提督「…」
皐月「どうすんのさ?SS(ショートストーリー)だったよね、これ?」
提督「だって、キャラが増えたし…」
皐月「そんな事言ったら日増しに増えるしか無いじゃん…」
提督「登場キャラは7,8人くらいが良いってどっかで聞いたけど、割と実感する瞬間ね」
皐月「全員出したいのは分かるけどさ…メインぐらい絞ったら?」
提督「大丈夫だよっ、皐月はいつだって私のメインだよっ」
皐月「そんな心配はしてないよ…でも、ありがと…」

皐月「はい、それじゃ、今回は」
みつよ「私よっ」
提督「なんかでた…」
みつよ「呼ばれなくても来るのがモットーなのっ」
皐月「えーと…というわけで、ゲストの みつよ様です」
みつよ「ゲストじゃないわっ、VIPよっ。そこんとこよろしく頼むわっ」
皐月「あ、あははは…(疲れる)」
みつよ「で、どうして私はここにいるのかしらっ」
提督「しらんがな…」
皐月「えと、今回のお話の解説に必要かなって」
みつよ「そう、解説ねっ」
皐月「お願いします…」

みつよ「いいわっ、任せなさいっ。元々は好きな艦娘は全員だそうって思ってたんだけど
一つに鎮守府に纏めると、相関図とか何やらがゴチャゴチャになりそうだから切り分けたのが始まりねっ
そして、お呼びがかかったのが私よっ
始まりは大日本帝国、大本営、大提督、大が3つで三大なにがしだったわっ、けどそれじゃ名前っぽくないから
三大→三代(さんだい・みしろ)→御代となったわけね。ちょうど偉そうな苗字に変換できて好都合だったのもあるわっ
名前は三代をみつよって呼んだ時に決まったわね、3文字の名前は発音しやすくて提督は好きみたいねっ
小柄で黒髪ロングで偉そうな小娘なのは提督の趣味よっ、巨乳よりバランスが良いのが好きみたいねっ
大は小を兼ねるって言葉もあるのに、奇特なことだわっ。きっとロリコンねっ。以上よっ」

提督「…(長い)」
皐月「あ、ありがとうございました…(どうしよう、いままで一番真面目に解説してくれてる気がする)」
みつよ「どういたしましてっ、役に立てた見たいで何よりねっ」
提督「…登場させたは良いけれど、思った以上にこいつ うるさいって思ったのは内緒」(後ろ向きながら
みつよ「なにか言ったかしらっ」
提督「別に…」
みつよ「まあ、いいわっ。私はレギュラーじゃないけれど、たまに出てくるかも知れないわっ
その時はよろしく頼むわねっ。オリキャラ嫌いって人はたまにしかでないからスルーしてくれると助かるわっ」
皐月「オリキャラがダメな人は、そもそも提督がでてるのも嫌がりそうだし…」
みつよ「それもそうねっ。それじゃあ、私のことが苦手な人は少し我慢なさいっ」
「そんな人いませんっ」(←大和の声
提督「なんだ今の…」
皐月「さぁ?」
みつよ「…。解説はここまでねっ、次に行くわよっ」
皐月「はーい」
提督「すっかり乗っ取られたな…」

♪皐月ちゃんラジオ♪

皐月「お手紙というなのコメント返しだよ」
みつよ「こんなネットの海の端っこにまでコメント寄越すなんてねっ、感謝するわっ」
提督「偉そうに…」
皐月「まぁまぁ…それじゃあ今回は」

・皐月と文月の改二はよ
・イケメンの球磨の姉御、提督との関係
・後書きで砂糖吐いた

みつよ「3つもあるのねっ。豪勢じゃないっ」
皐月「じゃあ、いつも通り上からだよ」

・皐月と文月の改二はよ

みつよ「皐月と文月を選ぶなんて、あなたロリコンねっ」
皐月「え、いや…ボクらが好きだからってロリコンって事は…」
みつよ「間違いないわっ」
皐月「あ、うん…」
提督「とりあえず、睦月と如月はアニメ化記念だろうし」
みつよ「にゃしーって言わない方の睦月ねっ」
皐月「でも…武功艦からってなると後回しにされそうでは」
みつよ「貴女は十分頑張ったわっ、胸を張りなさいっ」
皐月「うん…ありがと」
提督「気長に待つしか無いわな…改2艦の数のが少ないって思えばまだまだ余裕だろう」
皐月「それもそうだね。それじゃ、次ぐ行くよっ」

・イケメンの球磨の姉御、提督との関係

みつよ「貴方、節操が無いわねっ」
提督「人聞きの悪い…」
皐月「球磨さんがカッコイイって思ってくれたなら、ボクとしては満足だけど」
みつよ「さぁ、球磨との関係を洗いざらい吐くのよっ」
「洗いざらいって あざらしみたいですね…」(←大和の声
みつよ「大和っ、面白く無いわっ」
提督「次行っていいか…」
皐月「もうちょっと頑張ろう」
提督「球磨との関係って別に…」
皐月「んー、ボクもなんて言ったら良いのか…」
みつよ「なによっ、口づけまで交わしておいて、愛してるくらい言えないのっ」
提督「当たり前だろう、そんなの…」
みつよ「ふんっ、当然ねっ。全ての艦娘は愛して然るべきだわっ。というわけで次よっ」
皐月「…(愛情ってもいろいろだけどね…)」

・後書きで砂糖吐いた

皐月「うっ…改めて言われると恥ずかしいね…」
みつよ「やっぱりロリコンねっ、間違いないわっ」
提督「違うな、間違ってるぞ」
みつよ「何が違うのよっ、何故違うのっ」
提督「ロリでもいけるだけだって」
みつよ「余計悪いじゃないっ。皐月こいつ変態よっ」
皐月「ごめん司令官。否定出来ない…」
提督「必要ないっす」
皐月「ごめんなさい みつよ様。こんなんでもボクの司令官なんだ…」
みつよ「…そう、ね。口が過ぎたわっ、ごめんなさいっ」
皐月「うん」
提督「とはいえ、砂糖吐いてくれる人がいるとはね。クドいかとも思ったけれど」
皐月「もう、いいじゃんかー。恥ずかしいこと思い出させないでよ…」
みつよ「やったかいはあったってわけねっ。いいことだわっ」

皐月「それじゃあ、今回はここまでだね」
みつよ「この作品を読んでくれた全ての人に感謝するわっ」
提督「やっと、静かになる…」
みつよ「世の中声がデカイ奴が勝つのよっ、貴方はもっとしゃんとなさいっ」
皐月「あははは…。それじゃあ 今回のお相手は、皐月と」
みつよ「みつよ様よっ」
提督「提督でーす」
皐月「以上のメンバーでお送りしました。また会おうね、ばいばーい」
みつよ「達者になさいっ」
提督「ばいばーい」

皐月「お疲れ様、みつよ様」
みつよ「ええ、皐月もお疲れ様っ。あと大和っ、撮影中くらい静かになさいっ、私が恥ずかしいじゃないっ」
大和「だって…」
みつよ「大和っ」
大和「はい…ごめんなさい、おひいさま」


ーおしまい


このSSへの評価

4件評価されています


SS好きの名無しさんから
2017-08-09 20:05:46

keyさんから
2016-04-29 23:29:51

山椒さんから
2015-05-21 23:16:09

SS好きの名無しさんから
2015-05-21 11:59:11

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SS好きの名無しさんから
2017-08-09 20:05:49

山椒さんから
2015-05-21 23:16:12

SS好きの名無しさんから
2015-05-21 12:00:21

このSSへのコメント

2件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2015-05-21 12:00:12 ID: wxU4oeCL

次も楽しみにまってる
提督たまにかっこいいw

2: 山椒 2015-05-21 23:26:40 ID: vYTuViU7

濃ゆいお方が来ましたねー
幼女大元帥とか萌える
何で長門型以上の戦艦ってロリコン率高いんですかね...?(白目)

ここのもっちー本当に好きです
可愛いくてぐっと来ます
結婚してくれ(直球)

くまとねことダイヤモンドの行はぞくっとしました
脱帽、尊敬です

自作期待です


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