2015-08-26 13:53:15 更新

概要

とある魔術の禁書目録✖貧乏神がっ!のクロスssです
両作品内ぶっちぎりの不幸者上条当麻と箕輪胡桃が一緒にいたら?というお話で少し大袈裟だったり無茶苦茶だったりするかもしれませんがご容赦ください
やっと完結!


上条「どうかしたのか?」



箕輪「あんたこそなんかあったんじゃない?」



上条「俺は卵一個無料引換券を無くしてしまいましてね?」



箕輪「偶然ね…私もなのよ…」



上条「おぉ、俺と同じような不幸なやつがいるとは驚きだ」



箕輪「その台詞そっくり返してやるわよ」



上箕「………………」



上条「なぁ、一つ提案があるんだけど」



箕輪「私も一つあるわ」



上条「俺は所持金が八十円しか無くて家にはもやしが一袋しかないんだ」



箕輪「私も所持金が八十円で家には魚肉ソーセージがあるわ」



上箕「対して卵は一パック百六十円……」



上条「一緒に買わない?」



箕輪「乗った」



箕輪「それで、今日の晩御飯は魚肉ソーセージのモヤシ炒めにしない?」



上条「乗った。俺の名前は上条当麻だ」



箕輪「私は箕輪胡桃よ」



上条「よろしく」



箕輪「こちらこそ」




二人は強く、硬い握手を組み交わした



ただ単に、スーパーの前で同じ独り言をした相手にここまで思うのはおかしいかもしれない



でも二人は互いに思っていた



こいつには会うべくして会ったんだと



これが、世界一不幸な男と女の初会合だった




[とある不幸者の幸福歌劇 ]





俺こと上条当麻は不幸な男である



今でこそマシになった(それでも非常に運が悪く、高い頻度で揉め事や厄介事に巻き込まれたり、不幸な事態に見舞われたりするのは日常茶飯事。福引きでもことごとく外れクジ)ものの

小さい頃はとても酷かった



その不幸故に陰湿ないじめに遭い、大人たちからも『疫病神』と言われ、命に関わるような出来事や見世物扱いされることもあった



それを見て俺の親父、上条刀夜は俺のことを迷信を信じない科学の街『学園都市』に俺を行かせたのだった



それ以来、友達に不幸の避雷針として重宝されたり、不幸だからこそ、事件に巻き込まれて苦しむ人を助けることができるんだと前向きに考えながら生活を送れている。親父には感謝してもしたりない



しかしそんな俺も自分並み、いや、それ以上の不幸者に会うのは初めてだった




上条「あのぉ……何してるんでせう?」



箕輪「見てわかんない!?トラックに跳ねられそうになって避けたらごみ捨て場に突っ込んじゃったのよ!」



上条「んなもんわかるか!そんなことなかなか起こるわけ……あるな」



箕輪「でしょう!?」




頭にバナナの皮を乗せながら俺に同意を求めてきた彼女の名前は箕輪胡桃



彼女もまた不幸な女である



俺のような生まれつき不幸というわけではないのだがその不幸は折り紙つき



俺が先天性。胡桃が後天性で、だいたい中学校に行くぐらいから不幸になりだしたらしい



まぁ神様というのは随分勝手なようで不幸なぶん『立ち向かう能力』を与えてくれたようだ



そんなもの糞喰らえなんだが




箕輪「まったく……『私じゃ無かったら』死んでたぞあの運ちゃん…」




バナナをごみ捨て場に戻し、ご立腹な様子の

胡桃



俺も胡桃もレベルは0判定



ただ、俺には『幻想殺し』



胡桃には『危機回避能力』が宿っている




上条「隕石も避けてたしなぁ……それでレベルが出ないとか反則だろ」



箕輪「あんたのほうが反則よ!なによ異能力なら全部打ち消すってどこぞの探偵事務所の太宰治か!」



上条「俺のは右手首から先だけだしこの街で役に立つことなんて殆ど無いですぅー!無能力者のスキルアウトとのエンカウント率が高すぎて役に立たんわ!」



箕輪「何言ってんだ七人しかいないレベル5の第三位を軽くあしらうやつの台詞じゃねーよ!

この馬鹿!」



上条「馬鹿とは何だそもそもあいつが勝手に俺に襲いかかってくるから」



箕輪「はっ!?ヤバい!」バッ!




ヒートアップし、ほぼ息継ぎ無しで罵りあっていた胡桃が突然、その場で綺麗にムーンサルトで回転しだした



いい忘れていたが、『危機回避能力』の他にそれを行う為のずば抜けた運動及び反射神経を持っている



故にその場で助走も勢いも無しにムーンサルトをすることぐらい彼女にはなんてことはない



はてさて問題



そんな彼女が回避行動をとっています



そして俺の思考はそんな一瞬のムーンサルトを実況できるくらい周りをゆっくりに感じています。例えるなら走馬灯ってやつかな?



そこから導きだされる答えとは




上条「死の気配!」バッ!




俺は右手を咄嗟に突き出した



とたん、目も眩む雷撃が到来した




御坂「また避けられたし打ち消された!あんたら一体どうなってんのよ!」



箕輪「私からも一ついい?あんたの思考回路どうなってんだ!」



上条「不意討ちで襲ってくるなこのビリビリ中学生がっ!」




答え『マジの死ぬ寸前。ガチの走馬灯』



そんな答えの主、先程の話にも出ていた学園都市の第三位様は俺たちの抗議などまるで相手にしなかった




御坂「私には御坂美琴ってちゃんとした名前があんのよ!ビリビリ言うな!」



上条「じゃあビリビリって呼ばないならもう襲ってこないか?」



御坂「それとこれとは別よ!あんたは手足の四

、五本折ってやらないと気がすまない!」



箕輪「それで襲わないなら仕方ないわね…当麻

ちょっと折られなさいよ」ニコニコ



上条「仕方ないなんて全然思ってねぇだろその笑顔!てか五本目って何!?俺首の骨まで持っていかれるの!?」



御坂「そっか。首の骨もあるのか…背骨のつもりだったんだけど」



箕輪「ねぇ、六本目もやっちゃっていいから私を追っかけるのもやめてくれない?」



上条「最低だこの人たちー!」




相も変わらず理不尽度MAX。これこそ不幸



胡桃の野郎。裏切りやがって後で覚えてろ



御坂も常磐台中学のお嬢様という設定(事実)は何処へやら



今はただの暴行犯と成り果てている




御坂「あんたは別よ!私の攻撃を受けて五体満足でいる時点で私の復讐リストに入ってるんだから!」



上条「復讐って…俺がなにをしたと?」



箕輪「えぇ~…何様なのこの子……」



御坂「私に目をつけられた不幸っぷりを呪ってなさい!か弱い乙女のように鳴かせてあげるわ!」



白井「おねぇさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



御坂「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?黒子!?」




しかしそんな理不尽女帝御坂美琴でも、突如として現れた影に襲いかかれ、か弱い乙女のような悲鳴をあげた



お手本を見せてくれる所、一応常磐台としての良心は残っている模範的暴行犯である




箕輪「いや、あれは素で悲鳴あげてるだけで見本とかそんなのはないと思うの」



白井「さぁおねぇさま!もっと触らしてくださいませ!もっと舐めさせてくださいませ!」



御坂「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



白井「動かないでくださいまし!パンツ脱がしにくいですの!」



御坂「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」バリバリバリッ!



白井「あばばばばばばばばば」ビクンビクン


上箕「うわぁ……」




目の前で行われるHENTAI行為に思わずドン引きする俺たち



この襲いかかってきた影の正体は御坂の後輩の

白井黒子。これで風紀委員だというから恐れ入る



彼女いわく、『わたくしがこの愛の方向を向けるのはおねぇさまだけであって何をいいたいかと申しますとおねぇさま最高!』とのこと



あと、『わたくしはHENTAIではございませんの!HENTAIと言う名の淑女ですの!』とも言っていたと思う。なんだHENTAIと言う名の淑女って



因みに御坂の電撃をくらって生きているのは今までで三人らしく、彼女がその三人目だ。ほんとなんで死なないんだろ




白井「あぁ……懐かしいこの全身を走る衝撃……おねぇさまを感じますの」ビクンビクン



御坂「なんであんたがここにいんのよ!象すら二秒で昏倒する薬を飲ませたのになんで生きてるの!?」




なんて物を飲ませるんだ君は




白井「ふふふ……わわわたくしの愛の力の前ではそ、しょのような薬などももも問題ではありませんでしゅの」ガクガクブルブル



上条「今にも倒れそうじゃねぇか」



箕輪「生まれたての小鹿みたいね」



御坂「無事じゃないのはわかったけど耐えれてるあんたが凄いわ」




もう白井は人間という枠組みから外れた超生物になっていた。愛の力って凄いね




御坂「なにが愛の力じゃ!そんな猟奇的な一方通行の愛、私は欲しがった覚えはない!」




君たち。さっきから地の文読みすぎじゃない?

俺の心にフィルタリング無いの?




御箕「じゃあ地の文で会話するな!」




怒られてしまった。しかも二人に




御坂「まったくあんたは相変わらずなんだから

ほんとムカつく」



箕輪「ねぇねぇ」



御坂「なによ」



箕輪「あれ、ほっといていいの?」クイクイッ



御坂「?」クルッ



白井「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!おねぇさまの

!おねぇさまの匂いが私を包み込んでんほぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」クンカクンカ



御坂「なっ!?あれは私の短パン!?いつの間に盗りやがった!」



上条「うわぁ……ありゃもう履けないな」



箕輪「変色してるわね。涎でべっとべとよ」



御坂「もう決めた。殺す!」バッ!



白井「んにゃあああああああああ!?」



上条「……帰るか」



箕輪「そうしましょう」




触らぬ神に祟りなし



人通りの絶えない街の往来だというのに子供向けカエルパンツ丸出しで後輩にロメロスペシャルをかますお嬢様をなるべく他人のふりをしながらいそいでその場をあとにしたのだった




さて



改めて俺たちの出会いについて少し話しておこうと思う



卵購入後、胡桃を俺の家に招待し晩飯を共にし

、自分たちの話をして俺たちは意気投合し、これからも色々やっていこうということになった



不幸という理不尽極まりない物の中で生きてきた俺にとって胡桃の存在は無くてはならないものになった



自分と同じ境遇のやつがいると思えば頑張れたし、自分の不幸をわかり会える相手がいるだけで心が全然軽くなった



俺としてはもう今すぐにでもアタックしたいのだが、前に胡桃は『私は彼氏とかつくる気はないよ?ちょっと昔色々あってさ……私は幸福になるわけにはいかないのよ。それが私のけじめなの』と言っていたので我慢している



昔何があったとかも聞くつもりはない



自分の不幸に他人を巻き込むべからず



それが俺たちの約束でもあり、自分自身に誓ったものだ。ならば何も言うまい



ただ、そんな感じながらも今俺たちは同棲している



いや、ちゃんとこれには理由があって……



数ヶ月前にガス爆発で胡桃の寮が消し飛んだとき、約数十名が家無き子となったのだが、すぐに新たに住む場所を確保し事なきを得ているのだが不幸の化身たる胡桃にはどんなに頑張ってもそれができなかった



胡桃の不幸具合はそこら中に広まっており、様々な人が胡桃の入居を拒否していたのが現実だった



困った教師たちは最終的に『上条当麻と一緒に住ませてしまえば?』というふうに考えて現在にいたるということだ



不幸なやつらは不幸なやつ同士でその不幸を擦り付けあっていろというわけだ



事実その作戦は功を奏したようで回りの人々に対する不幸な被害というものは極端に減った



その分俺達の不幸が倍増したが



マイナスとマイナスはかけたらプラスになるけれどマイナスとマイナスを足したらマイナスだ



疫病神と貧乏神。二人会わせて災厄



そんなあだ名が付けられたのはごく最近の話である



回想終了




箕輪「ちょっと当麻ー!?また扉直したんでしょ!直さなくていいってば!」



上条「いくらすぐ壊れるからって言っても最低限扉は必要です!お前女子だろ!?」



箕輪「そんなものは知らん!そりゃぁ!」




綺麗な回し蹴りによって蝶番がその役割を終え、扉が吹き飛んだ




上条「………修理大変だったのに」



箕輪「壊れるなら意味がないじゃないの。その辺に立て掛けて置きなさいよ」



上条「………不幸だ」



箕輪「今日は当麻が家事当番の日でしょ?いい天気だし布団も干しといてくれる?」



上条「ちょっと待て、留守番電話聞いてからすっからさ」



電話『上条ちゃーん、バカだから補習なのですよー♪お昼までに学校に来てくださいねー』



上条「………聞かなきゃよかった」



箕輪「げぇ!?冷蔵庫が止まってる!電撃か!

さっきの電撃のせいなのか!?不幸だわー!」



上条「………空はこんなに青いのに、お先真っ暗だな。俺達」



箕輪「言わないで。鬱になりそう」




はぁ、と聞いているこっちが鬱になりそうなため息をシンクロさせながらつく二人



胡桃は冷蔵庫の中の食べられそうな物を物色し、俺は布団を両手で抱えた



二人の心は一つ。せめてなんかいいことでもないと死んでも死にきれん



胡桃は食べられる全ての食材を使った豪華な食事、俺は布団をふかふかにすることに全力を注ぐ



そんな時、ふとベランダに既に白い布団が干してあるのが目に止まった



いや、白い布団ではない。干してあったのは白い服を着た女の子だった



上条は静かに後退りし、そっと布団を置いて、胡桃の方に駆け寄った




上条「なぁ、胡桃さんや」



箕輪「今モヤシずくめの晩ごはんを考えるのに必死なのに………なに?」



上条「あれ見てどう思う?」



箕輪「………」




それを見た瞬間、胡桃はベランダに向けて猛然とダッシュ。扉の鍵を閉めようとした



俺達の不幸具合は常軌を逸脱しているのであんな風にベランダにも引っ掛かったことがある



その理由が『怪しげな組織に追われて、逃げるためにビルから飛んだら失敗した』という理由だ



と、いうことはあの女の子もその可能性が高いわけで、胡桃は不幸に巻き込まれないように迅速に動いたというわけだ




箕輪「ぐっ………この!………………なんでこんな時に限って扉の鍵まで壊れてんのよ!」



上条「ですよね~………ははっ、不幸だ」




迅速な判断もむなしく



俺達の予定は誰かに追われる謎のシスターとの関わりに埋め尽くされたのだった




上条「………で?君の名前は?」



インデックス「私の名前はね?インデックスっていうんだよ」バクバクバク



箕輪「あぁ…私たちの晩ごはんが消えていく」



上条「仕方ねぇだろ。腹減った女の子を餓死させる訳にもいかないし」



箕輪「………そうよね。一日くらい食べなくても大丈夫よね」



インデックス「なんだか食べてて申し訳ないんだよ…とうまとくるみも食べる?」



上条「いや、大丈夫だ。それよりもインデックスがベランダに干されてたのは『怪しげな組織に追われて、逃げるためにビルから飛んだら失敗した』と俺は予測するがこれいかに?」



インデックス「………見てたのとうま?」




やっぱりか~………とため息を再びシンクロさせる二人。どうせ今すぐこの子を外へ叩き出したとしても怪しげな組織の人が現れて『あの子を何処にやった?』的な感じで言わなかったら言うまで拷問みたいな最悪な未來予想しかできなかった



だがそこは不幸のどん底に生きる者たち。ただで終わるわけにはいかない。不幸なのは自分たちだけで充分だ



この子だけでも絶対幸せにしてみせる。そう心に決めて上条たちは取り調べを開始した




上条「じゃあ聞くけど、何に追われてんだ?」



インデックス「魔術結社だよ」



箕輪「魔術結社っていうと『明け色の陽射し』

とかその辺?」



インデックス「そうそう………ってえぇっ!?

な、なんでそんな黄金系の魔術結社を知ってるの!?」



上条「俺がそこのボスと知り合いなんだよ。よく魔術関係の仕事の手伝い頼まれるし」



箕輪「何が友達よ。あんた初対面のとき殺されかけてた癖に」



上条「いやぁ、あのときはホントに死を覚悟しましたですはい」



インデックス「あなたたち、何者?」



上箕「ただの高校生」



インデックス「絶対嘘なんだよ………」



信じられない物をみるかのように目を見開いて驚くインデックス。まぁここは科学の街であり魔術とは全く程遠い所であり、そもそもその存在を言われたところで信じない者しかいないのだろう



でも俺達はその存在を知っている



その力を目の前で堂々と見せつけられたし



科学では説明できないことを見せつけられたし



それを操る存在のことも沢山教えられた



俺達は単なる不幸な高校生。たまたま世界の裏側を見てしまった不幸な高校生なのである




箕輪「あなたの組織はどこ?服装から予想して恐らくイギリス清教のほうだとは思うんだけどバチカンだったらごめんなさいね?」



インデックス「イギリス清教で合ってるよ。で私の所属してるのは『必要悪の教会』(ネセサリウス)って所」



上条「イギリス清教第零聖堂区?」



インデックス「詳しすぎなんだよ」



上条「そこまで解ればあとはいかにインデックスを守りながら魔術と科学の戦争にならないようにするかだけだしな。簡単簡単」



インデックス「全然簡単じゃないんだよ!?そもそも私のインデックスって名前の意味は」



上条「あ、やべぇ!そろそろ補習に行く時間じゃねぇか!後のことは頼んだぞ胡桃!」



箕輪「頼まれた。いってらっしゃ~い」ノシ



インデックス「………なんかとんでもない家に来てしまった予感がするんだよ」




はぁ…とため息をつくインデックス。だがその顔はどこか安心に満ち溢れていた




箕輪「しっかしインデックスねぇ………どっかで聞いたことがあるような無いような~」



インデックス「そういえばくるみは補習?っていうのは無いの?」



箕輪「私?私は防火扉蹴破ったら謹慎処分くらっちゃって学校にしばらく行かなくていいのよ。まったく、私は閉じ込められたから仕方なく壊しただけなのに」



インデックス「防火扉はなんとなくどういう物なのかはわかったけど私の予想が正しければ蹴破れる代物ではないと思うんだよ」



箕輪「蹴りに関しては免許皆伝の自信があるわよ?私が何度閉じ込められたと思って?」



インデックス「……何て言うか不幸なんだね」



箕輪「ホントにそうよねぇ………この不幸具合で行くともう家の前にその追っ手が来てたりして」



インデックス「えぇっ!?」



箕輪「あはは、冗談だってインデックス。そんなすぐに追っ手が来るわけ…」




軽く冗談を飛ばしながらなんとなく外に出てふと階段の方を見てみると



?「………………」




いかにも追っ手っぽいやつがいた





箕輪「………不幸だわぁ」



インデックス「く、くるみ!あの人!私の追っ手なんだよ!」




見りゃ解ると突っ込みたいところだったがそんな訳にもいかないだろう



現れたのは白人の男。身長は二メートル近く、髪の毛は真っ赤。指にはメリケンサックのように指輪がぎっしり。顔にはバーコードの形をしたタトゥーが刻まれている



あまりに不思議な格好をしているもののあれは魔術師だと確信することができた。これは私の経験による



男は静かに話し出した




ステイル「僕の名前はステイル=マグヌス。そこの女の子を『保護』しにきた」



箕輪「嘘つきなさいよ魔術師さん。インデックスは渡さないわよ」



インデックス「逃げてくるみ!いくらくるみが魔術を知ってるからって勝てる相手じゃないんだよ!」




インデックスは焦る。彼女を今まで追ってきた相手のことは自分が一番知っている。その強さも、恐ろしさも



箕輪「私は逃げない」




だが、胡桃はその場を動こうとはしなかった




ステイル「色々知ってるくらいで僕に勝てると思われるとは少々腹立たしいね…Fortis931」




ステイルが何か呟くとその手に真っ赤な炎が宿る




ステイル「手加減などしない。『巨人に苦痛の贈り物を』!そのまま灰になれ!」



箕輪「!!」




その手から放たれた火球を前に箕輪は慌てずに、まずインデックスを部屋の中に突き飛ばし、立て掛けてあった扉でその火球を防いだ。

防がれた炎はドーム状に辺りの物を焼き付くし

直ぐ様そこから手を離す。するとこんどは扉が真っ二つにドロドロに溶けながら切断された




箕輪「あっぶねー!死ぬかと思ったじゃないのこのバカヤロー!」



ステイル「まさか避けられるとは思わなかったよ…何者だい?君は」



箕輪「単なる不幸な高校生よ」



ステイル「あくまでも自分の身分は隠すか。さてはどこぞの魔術結社の者だな?」



箕輪「あ、いや、そんなつもりは全然無いんだけど?ちょっと私の話を」



ステイル「その子は絶対に渡さない!ーー顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ【魔女狩りの王】!」



箕輪「話を聞けって言ってうひゃぁ!」




降り下ろされたステイルの手を合図に天井まで届く火柱が立ち上った



そのあまりの熱量と光に思わず驚いた箕輪だったがすぐに体勢を立て直す



だが、目の前に現れたそれは立て直した体勢を崩すには充分過ぎるものだった




箕輪「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ!」



インデックス「気をつけて!それに触ったらなんでも溶かされちゃうんだよ!」




現れたのは巨人



マグマが人の形を作っているかのような、そんな印象をもつ四メートルほどある巨人は手に持っていた体長半分程の大きさの十字架を箕輪に向けて降り下ろした




箕輪「う、うぉわぁぁぁぁぁぁぁ!」




インデックスからの身の毛も弥立つアドバイスもあり、横に飛び退いて回避する



巨人の持つ十字架は、そのまま地面を抉り取り下の階の地面が見えるくらいの大穴を開けた



空いた所はマグマのように煮たっており、それがインデックスの言っていたことが本当なんだと思い知らされることとなった




箕輪「ちょっ!?あれ何よ!あの人魔術師じゃなくて召喚師だったの!?」



インデックス「あれは召喚じゃなくてれっきとした魔術だよ!【魔女狩りの王】って言ってその意味は」



ステイル「『必ず殺す』だ。行け!【魔女狩りの王】!」



箕輪「御高説どうも!インデックス!逃げるよ!」



インデックス「ほえ?きゃぁあ!?」



箕輪は巨人の攻撃が始まる前に直ぐ様インデックスを脇に抱え込んで手すりを飛び越えた




ステイル「何!?ここは七階だぞ!」




飛び降りた方を見てみるとなんということだろうか。彼女たちは一階下の手すりに捕まって下の階に逃げ延びていた



階下の通路を走り去る足音が一つ、ステイルの耳に届いた




ステイル「………なんて命知らずなんだろうか彼女は。【魔女狩りの王】」




ステイルがそう呟くと、巨人は先程開けた穴にナメクジのように穴を広げながら下の階に降りていった




ステイル「【魔女狩りの王】は自動追尾だ。必ず殺す、その言葉の意味を味わって死ぬがいい」




箕輪「何とか逃げれたわね…やっぱり七階から飛び降りるのは慣れるもんじゃないわ」



インデックス「くるみはもう何処かの国のスパイと言われても私は信じるんだよ」



箕輪「生憎ホントにただの高校生だってば」



インデックス「というか速く逃げないと!あの【魔女狩りの王】は自動追尾なんだよ!」




その瞬間、天井を突き破りながら【魔女狩りの王】が降ってきた




箕輪「ねぇ、あれ何とか消す方法ないの?魔道図書館様」



インデックス「私のこと知ってたの!?」



箕輪「今思い出したが正解かな」




インデックスを抱き抱え、再び走り出すが今回は逃げるのではなくそのまま突進する



【魔女狩りの王】はそれに対して横薙ぎに十字架を振るってきた



それを箕輪は膝を地面につき、ブリッジの姿勢でゴールを決めたサッカー選手のようにかわすと再び走り出した




箕輪「攻撃としては大振りで、あんなに熱そうだけどこっちにまで熱はこない…科学の法則ぶち壊しまくるね、魔術って」



インデックス「……それが魔術だもん」




インデックスはその脅威的な箕輪の力に対して突っ込むのを諦めたようだ。【魔女狩りの王】を消す方法を語りだした




インデックス「【魔女狩りの王】は教皇クラスの高度な炎魔術でルーンっていう」



箕輪「ルーツとかその辺はいいから対処法を教えて下さいお願いしまってきゃぁあ!?髪の毛ちょっと焦げた!」




思いの外速く追い付いてきた【魔女狩りの王】に髪の毛を少し焦がされながら涙目で箕輪は走る速度をアップさせる




インデックス「術者を直接倒すか辺りのルーンを消すしか無いんだよ」



箕輪「ルーンってこれ?さっきからそこら中に耳なし芳一みたいに貼ってあるカード」




走りながらカードの一つを剥がし、手に取ってみる




インデックス「うん。それ」



箕輪「何枚あんのよ!一瞬スプリンクラーで濡らしてやろうと思ったけどラミネート加工してあるじゃん…ホントに魔術師なの!?」



インデックス「最近の魔術師は科学も取り込んでる人が多いんだよ。多分これもルーンは印刷機か何か使ってるんだと思う」



箕輪「魔術師なら魔術しか使うなよ!」




イライラして、箕輪はその場にルーンを叩きつけた




インデックス「この場合もう術者を倒すしか無いかも」



箕輪「どうやってあの魔術師を倒せっていうのよ…魔術師の出した魔術に苦戦してるっていうのに………」




そこで箕輪は何故か口を閉ざした




インデックス「どうしたのくるみ!まさかもう疲れて走れないとか!?」



箕輪「そんな柔な足はしてませんよ…思い付いた。あの魔術師を倒す方法」



インデックス「えぇっ!?」




その顔は喜びたいのだろうがどこか罪悪感を感じているかのようなそんな顔をして




箕輪「ごめんね当麻。今からあんたの家、ぶち壊すわ」




この場に上条がいたら泣き崩れそうなそんな一言を言い放ったのだった




ステイルはまず驚いた




ステイル「【魔女狩りの王】を振り切るのは予想通りだったけれどここに戻ってくるとはどういう考えがあって戻って来たんだい?」



箕輪「あんたを倒しに戻ってきたのよ」



ステイル「ほざけ!【魔女狩りの王】!」




ステイルのその掛け声とともに某神様が泊まる温泉宿の怪物のように壁を張って【魔女狩りの王】が箕輪に迫ってきた




ステイル「そいつを倒さない限り君を死ぬまで追いかける!大方インデックスに対処法でも教えて貰ったのかな?その程度で僕の【魔女狩りの王】は破れないぞ!」



箕輪「破るつもりなんか毛頭無いっつーの!」




直接来るか、とステイルは身構えた



だが、そんなステイルの予想とは裏腹に箕輪は扉の存在しない、自分の部屋の中へと入っていった




ステイル「………何を考えている?」



わざわざ行き止まりの個室に逃げ込むとは。ステイルは前もって調べた情報で、この部屋から他の場所に逃げられそうな所はない。詰まるところ袋のネズミということだ。先程のようにベランダから飛び降りれば逃げられるだろうがそれだと戻ってきた意味がわからない



ステイルは一瞬追うべきか迷ったが、すぐに追いかけることに決め、【魔女狩りの王】を操作する



罠とは思いつつも自分には【魔女狩りの王】という絶対魔術。かたや相手は少女一人を抱えた女だけ



玄関を完膚なきまでに破壊し、わずかな抵抗とばかりに閉められていた部屋の木の扉を燃やし尽くす



その瞬間



閃光と爆音が迸り、ステイルの意識は簡単に刈り取られ【魔女狩りの王】は消失した




インデックス「いててて………」



むくりと起き上がるインデックス。その起き上がった場所は既に上条の家ではない




インデックス「………ホントに倒しちゃったんだよ」




インデックスが見る方向には見事に意識を無くし黒焦げになっているステイルがいた



そう。黒焦げ



なんと箕輪は自らの部屋を爆発させ、その爆風を利用しながら隣の寮へと飛び移ったのだ



爆発した理由は至って単純。先程料理をした際に、ガス栓の閉め忘れで部屋にガスが充満していたからだ



勿論料理をした箕輪はガス栓の閉め忘れなどしていたら直ぐ様死ぬような人生を送っている為そのようなボンミスはおかさないだろう



しかしそこはだからこそ閉め忘れたというべきなのだろう。不幸が故に『炎の魔術師が襲ってくるから』という理由で



事実ステイルが最初に炎を出した時点で箕輪たちもろとも吹き飛んでいておかしくはなかったのだ



そんな不幸を箕輪は利用した



いつもこうなのだから今回も絶対そうだ。大丈夫、自分はいつだって不幸なのだから。そう自信をつけながら



結果は大成功。部屋に入ってガスが充満しているのを確認し、だめ押しとばかりにもう一つのガス栓も全開にしてベランダにダッシュ



自慢の足と爆風を利用して飛び、隣の寮の窓を突き破って避難に成功した



相手を倒して自分も逃げる。これ以上完璧な作戦はないだろう




インデックス「す、凄いんだよ!ホントに倒しちゃったんだよ!」




砕け散ったガラスまみれの部屋というにも関わらず飛んで喜ぶインデックス


しかしそこで気付いた



自分はこの絶対防護服である『歩く教会』を着ているからこんなガラスまみれの部屋で跳び跳ねても、爆風を利用して飛んでも無事なのである



何も身を守るものを身に付けていなかったくるみは…




インデックス「………っ!くるみ!」




辺りを見渡し、箕輪を見つけたインデックスが駆け寄るとその姿は悲惨な物となっていた



体の皮膚の殆どが火傷によって、ぐじゅぐじゅという効果音が響いてきそうなほどに腫れ上がっていた



一番酷かったのはその背中。もはや服は燃え尽き、焼き焦げ、 様々な欠片が突き刺さった背中は血で紅に染まっていた




インデックス「っ!くるみ!ねぇくるみ!起きてよくるみ!」ユサユサ



箕輪「………………」




必死に声をかけるも返事は帰ってこない



そうしている間に血が地面を染めていく



最早一刻の猶予もなかった



インデックスはその部屋にあったカーテンを何とか引きちぎり、傷口を押さえるが、全く関係ないかのように血の勢いは止まらない



インデックスの手に何か固い物があたる



服の中をまさぐってみると出てきたのは携帯電話だった



インデックスはそれの使い方を知らない。だが

一年間逃げ続けたことにより、それは誰でも持っていて、誰かと話すことができる物ということは知っていた



インデックスは無我夢中でボタンを押す。やがて通話という画面が出て来て更にボタンを押す



普通携帯や家電に電話をかける場合、090などの決められた番号でなければ繋がるものも繋がらない



だがそれは普通の電話ならば、だ



通話画面に辿り着けたこと、がむしゃらにボタンを押したこと



偶然が偶然を呼び、たまたま電話帳に登録されていたある人物の元へと繋がった




?「なんのようだ?今のところ困ったこともないしわざわざ電話をかけるようなことも」



インデックス「お願い!くるみを助けて!」



?「………何があった?」




世界一不幸な女に



世界最高の幸福が舞い降りる




箕輪「はっ!?」




箕輪が目覚めたそこはどこか見覚えのある木造の天井



横には転がる空き缶の群れ



それで気付いた。ここは上条の担任の先生、月詠小萌の家であると




箕輪「あれ?私確か…」




爆風を利用して飛ぼうとしてタイミングを誤り爆風に巻き込まれたはず



だが今の自分には怪我も汚れも何一つついていなかった。それは服も同様である



そこで自分の上に覆い被さるように眠っているインデックスに気が付いた


彼女の目が少し腫れている。きっと泣いて、疲れて眠ってしまったのだろう



そんなインデックスを箕輪は優しく撫でた




箕輪「心配かけてゴメンね…ありがとう」




そこに何人かの足音が響いてきた。先生かな?と思いそちらの方を振り向いてみると



?「はっ。貴様にはまず感謝する相手がいるだろうが。瀕死のお前を治したのは私だぞ?」




自分を助けてくれた最高の幸福が立っていた




箕輪「なるほど…ならこの状況も頷けるわ。ありがとうございます、バードウェイ、マークさん」



バードウェイ「おい何故マークにまで礼を言っている?治したのは私だと」



箕輪「どうせここまで運んでくれたのはマークさんでしょう?バードウェイはそういうこと絶対自分でしないもん」



バードウェイ「ぐっ…」



マーク「流石胡桃さん。ボスのことをよく解ってらっしゃる」



バードウェイ「お前は黙ってろ」ボカッ!



マーク「あべしっ!」ドカーン!




そう言って笑い、壁に突き刺さっているのは魔術結社『明け色の陽射し』の構成員、マーク=スペース



そして図星を突かれ、思わずマークを殴り付けた小柄な少女こそ、『明け色の陽射し』のボス。レイヴィニア=バードウェイだった



外見十二歳前後の容貌とは裏腹にボスと言うだけあってその実力は計り知れないものがある



箕輪たちが魔術に触れるきっかけを作った魔術師であり、魔術の凄さを教えてくれた魔術師であり



命を救ってくれた魔術師である




バードウェイ「それよりも事の説明をしろ。私としてはいきなり呼び出されたら死にかけのお前を治せとか言われて驚いているんだ。インデックスはすぐに寝てしまったし………ホントにこれだからお子様は」




あんたも充分お子様だよ?



そう言いたかったけれど、言ったが最後マークのように壁に突き刺さる運命しか無いと直感した箕輪は大人しく事情を説明した



説明後バードウェイが抱いた感想は哀れみだった




バードウェイ「………コントでもやっとるのか貴様ら」



箕輪「言わないで!大事なのは最後のほうだから!私とステイルなんとかさんの闘いがメインだから!」



バードウェイ「にしてもマヌケ過ぎるわ!何で部屋を爆発させる必要がある!?それに貴様も巻き込まれりゃ世話ないな」



箕輪「だ、だってあのときはインデックスだけでも助けようと必死になってて…」



バードウェイ「インデックスが着ているのは『歩く教会』だぞ。前に説明してやっただろうが」



箕輪「えぇ!?あのチート機能つきの法王級絶対防護服があれ!?なんだよ庇った私がバカみたいじゃないの」



バードウェイ「安心しろ。お前は普通にバカだ」



箕輪「なんて失礼な!バカって言う方がバカなのよ!?」



バードウェイ「バカにバカって言われる貴様の方が大馬鹿者だ!」



箕輪「ほらぁ!そうやってムキになるところがバカでお子様なのよ!」



バードウェイ「何だと!?」




子供扱いするなぁ!と激怒するバードウェイを部下のマークは孫を見るお爺ちゃんのような目線を向けていた



ここだけの話ではあるが、死にかけの箕輪を見た瞬間、一番青ざめて慌てたのは他ではないバードウェイなのだ



マークは今まで彼女があれほど慌てた姿を見たのは初めてだった



口ではあぁ言っているものの、安心してにっこりしているのがマークには伝わってきた



マークは思う。やっぱりうちのボスはお子様でかなりのツンデレなんだなぁと




バードウェイ「さて、それじゃあお子様扱いし挙げ句のはてにツンデレとか言う謎の属性を私に付けた部下に鉄槌を下すとしようか」



マーク「あ、あれ?ボス、いつのまにテレパシーなんて能力身につけてたんですか?それともそういう魔術?」



箕輪「口に出てましたよ?マークさん」



マーク「oh…」



バードウェイ「一体どうしてくれようかこの野郎。覚悟はいいな?」



マーク「えっと…ワタシは一体これからどうなるんでしょーかー?」



バードウェイ「死刑」



マーク「ひぃっ!?ちょっとそれは極端過ぎると言うかなんと言うかってボス!その外から持ってきた得たいのしれないブツは一体なんですか!?」



バードウェイ「見て分からんか?可愛いお馬さんのエクササイズマシーンだ。じゃーん。スーパーキューティクルウルトラ可愛いミラクル虐殺ミンチ機能付きラブラブプリティデンジャラス白馬通称『男根殺し』(ポコチンブレイカー)だぞ☆」



マーク「キュートな台詞の中に物騒な言葉が宝石箱のように敷き詰められている!?しかも最後のやつなんですか!俺を男として殺すつもりですか!?」



バードウェイ「バードウェイ、お子様だから何のことかわかんなーい☆」



マーク「こんな時だけお子様のフリするんじゃねぇよ!絶対分かって言ってるだろ!」



バードウェイ「もともとこれはブレイカー繋がりでツンツン頭の馬鹿に使ってみようと思っていたんだが良かった良かった。ヤツに使う前に実験台が一人できたか」



マーク「いつもなら同情するところですが今はしない!何故なら自分の事だから!いや、ちょホントにやめ」



アーッ!と



何かが超高速振動し、猛烈に叩いたらいけない所を連打する激しい音ととある成人男性の愉快な絶叫が小さな部屋いっぱいに響き渡ったのだった




バードウェイ「そう言えばそのツンツン頭はどこに行ったんだ?同居人がこんなんになっとるというのに音沙汰無しとは」



箕輪「補習って言ってたからね…携帯の電源でも切ってるんじゃないの?」




マークの叫び声がこだまする中、まるで聞こえないように会話する二人の耳に微かにベルの音が聞こえた



これは不味い、とポコチンブレイカーの電源を切るバードウェイ。恐らく帰って来たのは元々のこの部屋の持ち主である月詠小萌だ



居ないことをいいことに瀕死の箕輪を無理矢理家の中に入れさせたりしたのだ。かなり迷惑をかけているといっていいし、そんな彼女の家で成人男性一人の男としての機能を潰していると知られれば追い出されるかもしれない



まぁ、ちょっとよだれを垂らしてぶっ飛んだ顔になっているマークがいる時点で追い出されるような気はするが



さてどう説明したものか…と頭を捻りながら箕輪は扉を開けた




箕輪「あ、先生お帰りなさ…ってあれ?先生じゃない…」



?「夜分遅くに失礼します」




目の前に立っていたのは月詠小萌とは似ても似つかないスレンダーな大人な女性だ



だが、履いているジーンズの片足側を切り取っていたり、服を縛って露出度を高めている辺りかなりぶっ飛んだ危ない女な気配がした




?「わ、私は好きでこんな格好をしているわけではありません!これには魔術的な意味合いが込められているんですよ!」



箕輪「当麻ごめん。今やっと地の文読まれて困惑してた当麻の気持ちがわかったわ」




口ではそういいつつも箕輪は警戒心をMaxまで引き上げる



今この女は魔術的な意味合いと言った。つまりは魔術師。ステイルなんとかさんの仲間である可能性が高い



何とか奥にいるバードウェイを呼ぶ手段は無いかと考えていると、どこからか水滴が滴るような音が聞こえてきた



その水滴音はその魔術師の手に持っている物から滴った水が下に落ちる音だった



いや、それは水では無い。そして持っているのは物でもない



それは人間だった。血まみれで、誰なのかが見当もつかない程に顔が腫れ上がっている



ただその人間が持つ特徴はまるでウニのようなツンツンした黒髪で…




箕輪「………………っ!当麻!」




謎の魔術師を払いのける箕輪。魔術師は特に何もしてこなかった




?「死んではいません。交渉の結果、反発されたためやむ無く無力化し、こちらに連れてきました」



箕輪「な、何が無力化よ!こんなの一方的な虐殺に等しい諸行じゃないの!」




箕輪が爆風に巻き込まれた時も悲惨な物であったが上条は更に悲惨な物であった



前述したように顔面は腫れ上がり誰かも判断出来ないような状態であり、体中に何かに斬られたかのような切り傷。特に右手が酷かった



恐らくこの魔術師に上条は勇敢に立ち向かったのだろう。その絶対的な右手で



だが結果は見ての通り。その心に秘めた意志は一人の魔術師に完膚なきまでに叩き潰された




?「………そんなになるまで、彼は立ち上がって私に攻撃してきたのですよ。私だってこんな風にはしたくありませんでした」



箕輪「何よ偉そうに………っ!そもそもあんたは一体誰なのよ!」



神裂「私の名前は神裂火織。魔術師でインデックスの回収に参りました」



箕輪「………絶対に渡さない、私の命に変えても!」




キッと神裂を睨み付ける箕輪。先程ステイルを倒したときとは訳が違う。相手から漂うオーラも段違いだ。勝てるわけがない



だがインデックスは彼がこんな姿になってまで守ろうとした存在だ。自分がここで退いたら上条は無駄死にだ



所詮無くなるはずだったこの命。もう失うことに何の未練は無い




バードウェイ「何を馬鹿なことを言っとるんだ命をもっと大切にせんかい!」



箕輪「ばうっ!?」




表の騒ぎを聞き付けたのだろう。バードウェイがやって来てその小さな体から箕輪に向けて踵落としが炸裂した。後ろから踵落としを頭頂部にくらい、悶絶する箕輪。命を捨てる覚悟はあれどやはり痛いものは痛いのだ



バードウェイはそんな箕輪を無視し、上条の状態を確認すると、マークを呼んだが今しがた自分が再起不能にしたことを思いだし、他の黒服たちを呼んで上条を病院に連れていくように指示をだした



表面上の怪我だけで、致命傷が無いことに安心するバードウェイ。彼の場合、右手が邪魔でどんな回復魔法をかけようと無効化されてしまうため致命傷の場合はそこで人生の幕が閉じるところであった




箕輪「さて、この落とし前はどうつけて貰おうかな?聖人様よ」



神裂「レイヴィニア…バードウェイっ!?」




聖人と聞いて身の毛が逆立つ箕輪。バードウェイから聞いた世界に数十人しかいない人の力を越えた存在。それが彼女だという



だがそんな彼女に名前を知られ、一歩後退りをさせるところをみると我らがボスの知名度もかなり高いことが見てとれた




神裂「何故あなたのような方がここに…?」



バードウェイ「それはこちらのセリフだよ。インデックスと同じ組織に所属する貴様が何故インデックスを追う?」



神裂「っ……あなたには関係の無いことです」



バードウェイ「あぁそうか。関係無いか。なら今しがたその関係のない理由で私の大切な部下が痛め付けられたことに関しては関わってもいいんだよな?」




周辺の空気が一辺する



その手にはいつの間にか杖が握られていた



いつの間にかバードウェイは離れていた距離を一瞬で詰めていた



その顔は憤怒に彩られていた




神裂「~~~~~~~っっっっ!!!」




ぶわっと滝のように汗を流して神裂は少し大袈裟な位距離をとった



とったつもりだつた。しかし自分のすぐそばにバードウェイはぴったりくっついて来ていた




バードウェイ「殺すぞ?聖人」




怒りに満ち溢れたその顔に先程のようなお子様ムードは一切存在しない



ド怒り。完全に堪忍袋の尾が切れている




箕輪「ま、待ってバードウェイ!」




箕輪の一言で何とかその動きが止まり、神裂はようやくバードウェイから距離を取ることができた。その顔は青ざめている




箕輪「私たちは部下でも無いし殺された訳でもないんだからいいじゃない!今はインデックスを守ることが最優先よ!」



バードウェイ「貴様……っ!上条があんな風にされて何とも思わんのか!」



箕輪「死にかけるのぐらい当麻も私も慣れっこよ。死んでなければなんとでもなる!」



バードウェイ「貴様それでも人間か!不幸な故に己の心まで捨てたのか!」



箕輪「私だって悔しいに決まってるじゃないの!出来るならそこのやつを何百回でも殺してやりたいわよ!でもバードウェイもボスならわかるでしょ!?勝手な行動は死を招くし感情のままに動いたところでさらに悪化させるだけよ!」



バードウェイ「確かに…それはそうだが」



箕輪「ならそんな事に力を使わないで。やるべきことを…当麻が守りたかった物を守ってあげて」



バードウェイ「………」




チッと舌打ちをしながらバードウェイは杖をしまい、部屋の奥へと入っていった




箕輪「神裂さん………でしたか、今はこの通りです。インデックスは渡すことはできませんから今の所は引いてください」



神裂「………では引く代わりと言ってはなんですがお話ししたいことがあります。出来るならバードウェイにも聞いていただきたいインデックスの現状です」



箕輪「つまり………家に入れろと?」



神裂「この部屋の住人からは許可は取れています。今ごろ何処かのレストランで優雅に食事でも行っているのでしょう」



箕輪「どーりで帰ってこないわけだ、あの先生……」



神裂「私の武器であるこの刀もバードウェイに預けます。インデックスには一切触れないことを約束します」



箕輪「あのステイルとか言うやつは?」



神裂「彼なら爆発に巻き込まれ現在意識不明の重体で病院で絶対安静です。ここに来ることはあり得ません」



箕輪「………なんだか申し訳ない」



神裂「いえ、あなたも怪我を負ったのですらか恨みっこ無しです。私たちもそういうことになれています」



箕輪「いいよ、話だけだからね」



神裂「ありがとうございます」




扉を開け、中に入る。するとどこからか現れた黒服の男が神裂様と声をかけてきた



神裂はそれに驚く訳でもなく静かに自分の刀を差し出した



ありがとうございます。と言って男は静かにまたどこかへと消えたのだった



恐らくバードウェイの部下だろう。バードウェイの組織はこのような連携的なことに関しては抜きん出て凄いものがある



居間には静かに眠るインデックスと、仏頂面したバードウェイがいた




バードウェイ「話は聞いている。さっさと言いたいことだけ言って帰るがいい、関係の無い私たちに喋ってな」



箕輪「根に持ちすぎだよバードウェイ」




先程は申し訳ありませんでした、と深々とお辞儀する神裂に対し、もうはる意地など無いと判断したのだろう。



お茶を差しだし話をするように促した



神裂「ありがとうございます。ではまずもう一度しっかりとした自己紹介が必要ですね。私は神裂火織、『必要悪の教会』に所属しています」



箕輪「あ、あれ?『必要悪の教会』ってインデックスの所属してるところでもあるんじゃ?」



神裂「………そうです。私は彼女の同僚で親友だったんですよ」




気持ち良さそうに眠るインデックスを悲しげな表情で神裂は見ていた




バードウェイ「だったとはどういう意味だ?」



神裂「…聞いているかどうかは分かりませんがインデックスには一年以上前の記憶がありません」



箕輪「あ~ちょろっと聞いたけどそれが何だっていうのよ」



神裂「その理由は至極簡単です。私が…私たちが彼女の記憶を消したからです。そしてそれが今の私の仕事でもあります」



箕輪「何でそんな事すんのよ…」



神裂「私だってそんな事はしたくありません。ですがそうしないと…インデックスが死んでしまうんです」



箕輪「はぁ!?」



バードウェイ「………」




衝撃発言に思わず叫んでしまう箕輪とは対極的にバードウェイは何故か怒っているように渋い顔をして押し黙ってしまった




神裂「全ては彼女の持つ『完全記憶能力』にあります。あなたはバードウェイとお知り合いということはインデックスの事を知っていると考えてよろしいですよね?」



箕輪「いや、そんな詳しい訳じゃ無いんだけど確か原典って言う見たら死ぬ感じの本を十万三千冊一字一句漏らさず記憶させられた魔導図書館ってことぐらいで」



神裂「それで結構です。つまり彼女の完全記憶能力とは言ってしまえば『見たもの全てを完璧に覚える』という能力なんです」



箕輪「うわ何その能力、そんなのテストとか超楽勝じゃないぜひ欲しい」



神裂「あげられるのなら是非あなたに差し上げたい位なのですが…逆にいえば忘れることが出来ないんですよ。ラッシュアワーの一人一人の顔や雨粒一つ一つの形まで…」



箕輪「それは…何とも言えないわね」



神裂「にも関わらず彼女は十万三千冊という膨大な魔導書を記憶してしまっている…これにより脳の85%を魔導書が占めてしまい、残りの15%だけだと彼女は一年で記憶に圧迫されパンクしてしまうのです」



箕輪「それはマジな話なの?」



神裂「この目で何度も見てきました。彼女が一年毎に苦しむその姿を」



箕輪「つまり………彼女を死なせない為にわざと敵の振りをしながら一年周期でインデックスの記憶を消してるんだ」



神裂「三日後がちょうど一年になります。そろそろ兆候が見え始め頭痛がしだす頃でしょう」



箕輪「それ以外に助ける方法は無いの?」



神裂「ありません。幾度となく私や様々なジャンルのプロフェッショナルが方法を探し続けましたが…見つかりませんでした」




本当に悔しそうに顔を歪める神裂。その握られた拳からは血が流れ出していた



結局箕輪が神裂の話を聞いて得たもの。それは絶望でしかなかった




箕輪「そんな…ねぇバードウェイ!あなたなら何か分からないの!?凄い魔術結社のボスなんでしょう!何とかならないの!」




ずっとしかめっ面で黙っているバードウェイにしがみつき駄々をこねる子供のようにすがる箕輪



その姿は最後の希望を求める地に堕ちた者のようでもあった



そんな箕輪をバードウェイは




バードウェイ「取り敢えずバカを殴りまーす☆」ボカッ!



箕輪「モルスァ!?」ズザァ!




殴った。これには神裂も驚きで目を見開いた




バードウェイ「もう一人バカを発見したのでこっちも殴りまーす☆」バキッ!



神裂「モバッ!?」ゴロゴロゴロ



箕輪「な、何すんのさ!」



バードウェイ「えぇい黙って聞いておればバカな事をずっとペラペラペラペラと…!胡桃!貴様にもう一度言う!コントでもやっとるのか!」



箕輪「ば、バカな事って…一体今の話のどこがバカだと」



バードウェイ「インデックスの記憶は消さなくてもいいんだよ、この馬鹿共」




一瞬時が止まったのかと思った




神裂「ど、どういう事ですか!」



バードウェイ「そもそもこれは科学的な部分が絡むから胡桃が気付くべきなのだがな」



箕輪「へ?私?」キョトン



バードウェイ「胡桃、脳の構造について言ってみろ」



箕輪「あ~…それについての授業は出席してないからわかんないや」



バードウェイ「貴様の不幸というやつか」



箕輪「うん、あのときは確か落ちてきた人工衛星から必死に逃げてて…」



バードウェイ「想像以上だな、人工衛星が一人の人間めがけて落ちてくるとは…待てよ?確かあれは海のど真ん中に落ちた筈だが」



箕輪「海のど真ん中まで逃げましたけど何か問題でも?」



神裂「凄い人生を送ってらっしゃるんですねあなたは…」



バードウェイ「まぁそれなら仕方がないか。脳の構造について教えてやる」



バードウェイ「まず人間の脳というものは全ての記憶を脳という一つの場所に留めている訳ではない」



バードウェイ「記憶にしても色々種類があり別々の場所に記憶ごとに整理されている」



箕輪「えっと…タンスに服とズボンを分けていれるみたいな感じ?」



バードウェイ「それで間違いは無い。例えば思い出を司るエピソード記憶と運動の慣れを司る手続記憶などは別々の場所で記憶している」



バードウェイ「お前らは記憶喪失になったことのある人間の話は何度か聞いたことがあるだろう?その中で一人でも全てを忘れ、赤ちゃんのように何も出来なくなったという話を聞いたことがあるのか?」



箕輪「た、確かに無いわね……」



神裂「インデックスも記憶の消去後にそのようになったことは一度もありませんね」



バードウェイ「それがこの記憶を分けている証明だ。そんな整理までしているというのに何故インデックスの脳は圧迫される?脳というのは元々百四十年分の記憶が出来るのだぞ?」



神裂「……その記憶を司るエピソード記憶…でしたか?その記憶する部分が極端に圧迫されてしまうのではないのですか?」



バードウェイ「そんな事は絶対に起きない。沢山容器を並べて、一つの容器を水で溢れさせようと隣の容器に水が入るだろう?それと同じで

全ての部分を圧迫せねば溢れることなどない」



バードウェイ「それに脳というものは優秀で神経細胞が状況に応じて進化するから限界が来たとしても死ぬことは絶対に無い。あるとしてもアルツハイマーのように何も覚えられなくなるぐらいのことしか起きない」



バードウェイ「第一お前はどこからそんな85%なんて数字を持ってきた?その計算では元々インデックスは六年位しか生きられないことになる。そんな珍しい物ならもっと世の中に浸透しているだろう」



箕輪「そう言えばどこかのカジノで出禁になった人がいるってニュースでやってた!確か完全記憶能力を使ってイカサマしてたとか」



バードウェイ「今のはなしからもわかるように普通に大人のやつもいる。科学的に考えれば記憶を消す必要などどこにもない」



神裂「なん…ですって…」ガクッ



箕輪「ねぇバードウェイ?どうしてそんなに科学に詳しいの?」



バードウェイ「妹が興味を持って調べたらしくてな?三時間永遠と語られて死ぬかと思っただけにすぎん」



箕輪「あんたの家系天才過ぎて気持ち悪い」



神裂「そんな………私はなんのために彼女の記憶を消し続けてきたというんですか」



バードウェイ「なんか一つ勘違いしてないか貴様。科学的にはなんの問題は無いがこのままいくと普通にインデックスは死ぬぞ?」



箕輪「はぁ!?どういうことよ!」



神裂「まさか………インデックスの体に何か細工がされていると!?」



バードウェイ「だろうな。インデックスはいわば魔術界における核爆弾、そんなものが敵の手に渡れば何が起きるかわからない。細工さえしておけば一年でインデックスは死ぬし、死なせない為の名目として聖人であるお前をインデックスの守護という任務に就けさせられる」



箕輪「ねぇ………さっきから聞いてればあんたらのボス、ゲスすぎない?」



神裂「あの雌狐め………っ!」ギリギリギリギリ




悔しさからか、自分の近くにあった柱一つを握り潰す神裂。それにより家全体が軋むようになり、これどうやって小萌先生に説明しておけばいいんだ…!と頭を抱える箕輪



神裂の気持ちもわかる。だからこそバードウェイは冷たく言い放つ




バードウェイ「そうやって悔しがれば何か解決するのか?話によればもう三日もない。悔しがって解決するのならずっとそうやっていればいいがな」




神裂は少し戸惑うような表情を見せたが、すぐに顔を引き締め、バードウェイの方に体を向けるとその頭を地面につけた




神裂「お願いします。インデックスを助けてください。どうか……どうか、私の親友を、長年傷付けてしまった人を、助けてください」




そういう神裂の背中は震えていた



その背中を箕輪は複雑な面持ちで見つめていた



バードウェイはただじっとその背中を見ていた



彼女は今、どのような気持ちでいるのだろうか



信じてきたものが全てウソっぱちで



救う為に行っていたことが全て相手を傷付ける行為で



自分が一番救いたい人間を、ぽっと出の誰かに横取りされる気分は




バードウェイ「ふん。そんなもんは知らん」




バードウェイは呟いた



思わず顔をあげる神裂。その顔は今にも泣き出してしまいそうだった




バードウェイ「貴様がどんな気持ちでいるかなど知らん。一番辛いのはインデックスだ」



神裂「………………わかっています」



バードウェイ「全て終わった後、絶対に嫌われるだろうな、そりゃもう親の敵の如くな」



神裂「構いません。私は彼女が助かればそれだけで充分です」



バードウェイ「そうか。なら助けてやる」




軽く言った一言にその場にいた全員が(インデックスとマークを除く)が呆気にとられた顔をした




箕輪「え……?助けられるの?」



バードウェイ「ああ。助けられる」




それこそ簡単にな。とバードウェイは自慢気に胸を張った




バードウェイ「ただ今すぐは無理だ。お前がこてんぱんにしてしまったあいつがいないことにはな」



神裂「……あの少年がなんだというんですか」



バードウェイ「その少年がお前の救いたい人間を救う人間だ。覚えておくといい」




バードウェイは誇りを持ってその名を口にした




バードウェイ「やつの名前は上条当麻。世界一不幸で、世界に一つだけの右手を持ったただの高校生だよ」



上条「呼んだ?」




ヒョコっと玄関から顔を出した人物に今度はバードウェイが固まった




箕輪「と、当麻ぁぁぁぁぁぁぁ!」ガシッ!



上条「や、ちょっと待って!俺まだ全然怪我治ってないぎゃあああああああああ!」ミシミシ



箕輪「心配したんだから!戻ってくるのが遅すぎんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」ギュー!



上条「おうふっ!?たわわに実った二つの果実が俺の顔に押し当てられ…ってやっぱ駄目だぁ!痛いもんは痛い!はははははやく放してくれ俺の体が限界にぃぃぃぃぃぃぃぃ!」




シリアスな雰囲気から一転。夫婦漫才を繰り広げる彼らを神裂は信じられない目で見つめていた




神裂「そんな馬鹿な……私の全力で痛め付けたんですよ!?少なくとも常人なら三日間は寝ているはずです!」



上条「なに、こんな怪我で三日間も寝てたら一生寝たままになるような怪我を何度もしてるってだけでってあ、ちょとヤバイ痛たたた…」



箕輪「無理しないで!ほら、こっち来て座ろ?

ね?」



上条「誰のせいで今こうなってると…」




よっこらしょっと座る上条の体にはそこら中に包帯がぐるぐる巻きで点滴のチューブがついたままになっている。恐らく目覚めた瞬間に引きちぎって病院から脱走してきたのだろう



体がボロボロなのは見てのとおり。しかし先程とは違い、バードウェイの口角が某マッハ20で飛ぶ先生のようにつり上がっていた




バードウェイ「無理するな…と叱るべきなのだろうがここは誉めておこう。ナイスタイミングだ当麻」



上条「え?幼女に叱られるってなにそれご褒美ですか?それとも新たなプレイ」



箕輪「空気読めよこのスカポンタン!」バシッ!



上条「ひでぶっ!?」ゴロゴロゴロ



神裂「わ、私が言うのも何ですがそれ以上痛め付けないほうが…」オロオロ



箕輪「大丈夫だ。問題ない」キリッ



バードウェイ「イー◯ックやめろ」



上条「取り合えず状況を説明してくれない?俺今来たばっかで何が何だかわかんねぇから一番いいのを頼む」キリッ



バードウェイ「神は言っている…ここで死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」バコーン!



上条「びぶるちっ!?」ドカーン!



神裂「あぁ!私の最後の希望っぽい人がお星様にぃ!?」



箕輪「ねぇ、エルシ◯ダイネタやめましょうよ

話が進まない」



上条「それもそうだな」



神裂「え?あれ?あなたさっきお星様に」



上条「時間が無い。三行で説明してくれ」



バードウェイ「とりま。インデックス。助けられる」



上条「よし、俺は何をすればいいんだ?」キリッ



神裂「ホントにこの人たちに任せて大丈夫なのでしょうか…」



上箕バ「大丈夫だ。問題n」



神裂「ぶっ殺すぞド素人ども!」クワッ!



上箕バ「すいませんでした」




本当は何とか神裂をリラックスさせるつもりで悪乗りした三人だったが、この後、インデックスが起きる三時間後まで仲良く正座でお説教を喰らったそうな




そして現在。起きたインデックスに対し、神裂は全てを打ち明けたのだった



この辺に関してはリラックスさせた彼らの手柄もあるとは思うのだが………




インデックス「………そういうことがあったんだね」



神裂「ごめんなさい、インデックス…」



インデックス「いいんだよ。こんなに私のことを思ってくれている人を恨む理由なんてどこにもないんだよ…もう一回、友達になってくれるかな?かおり」



神裂「………えぇ!インデックス!」グスッ



上条「あの、シリアスな雰囲気の中申し訳ありません。正座解いてよろしいでしょうか?」



神裂「駄目です」



上条「」orz




依然正座のままだった




箕輪「もう駄目だ…お仕舞いだぁ」プルプル



バードウェイ「まだ余裕ありそうだなお前…私はもうホントにヤバイんですけど」プルプル



インデックス「そ、そろそろやめさせてあげて欲しいんだよ!バードウェイなんか口調が変わっちゃってるかも!」



神裂「仕方ないですね…解いていいですよ」



マーク「はっ!?私は一体」



箕輪「あ、マークさんが正気に戻った」



バードウェイ「なんで助けるはずの私達がこんな目に会わねばいかんのだ…」グスン



上条「悪ふざけした俺たちが悪い。諦めろ」



神裂「でも…有難うございました。あなたのお陰でこうしてまたインデックスとしっかり話すことができました」



バードウェイ「何を言ってるんだか…勝手に話さなかったのは貴様だろうが。私は関係ない」



上条「 はいはいツンデレ乙ツンデレ乙」



バードウェイ「トラップカード発動!ポコチンブレイカー!」



上条「あbbbbbbbbbbbbbbbbbb」ビクビクビクビク



バードウェイ「さてと。取り合えず何をすればインデックスを助けられるのかを具体的に説明していこうじゃないか」



箕輪(もう駄目だ…突っ込んでたらこの話いつまでたっても終わらねぇ………)




色々悟ってしまった箕輪をよそにバードウェイはいくつかの予測を立てていることを話した



なんでもインデックスには防御込みで脳を圧迫させるそれこそステイルが得意なルーンが体の何処かに刻まれている可能性が高いらしい




インデックス「そ、そんなの見たことが無いんだよ!」



バードウェイ「それはそうだろうな。バレては意味がない」



神裂「でも、三年ほど前に体を隅から隅まで愛撫してみましたが何もありませんでしたよ?」



インデックス「えぇ!?///」カァ…



箕輪「おい愛撫って何だよ愛撫って」



バードウェイ「無視しろ。体の表面上にはそういうものは絶対にお前らのボスは仕掛けないだろう。だとすればあるのは体の中で、尚且つ簡単に触ることが出来ないけれどルーンが刻める場所にあるということだ」



箕輪「えっと………つまりそれは」



上条「ゴクリ」



バードウェイ「おい貴様今何処を想像した?私が言っているのは口の中だぞ?」



上条「へ?いやいや!?上条さんはちゃんとわかっておりましたよ?口の中だって」



バードウェイ「ジロリンチョ」ジー



上条「はは…本当だってば………」



一同「ジロリンチョ」ジー



上条「………………すいません。実はおま」



箕輪「死ね変態」



上条「アーーーーーッ!」




少々お待ち下さい



上条「し、死ぬかと思った………」ボロッ



バードウェイ「とにかく………その口の中にあるルーンをお前の右手で触れ」




えぇ!?とまた驚いているインデックス。上条の手は巨大と言うわけではないものの男子高校生としてはちゃんとした物である。そんな物を自分の口に突っ込まれるというのだからそれは驚くであろう




神裂「彼の右手に何かあるのですか?」




興味津々で上条の手を突っついてみる神裂。だが特に変化は見られないので首を傾げていた




バードウェイ「こいつの右手に宿る能力の名前は『幻想殺し』科学も魔術も関係なく異能的な力ならばなんでも打ち消すという優れものだ」




そう言われてインデックスは改めて不思議そうにその今から自分の口に突っ込まれる物をマジマジと眺めた




インデックス「それは科学の能力なの?魔術ではそんな能力は聞いたことないかも」



マーク「先程の文章で何かを感じた人は少し寝ることをオススメします」



箕輪「何を言ってるの?」



マーク「気にしないでください」ニコニコ



バードウェイ「科学でもないぞ。なんでも基準点とかそんなんだった気がするな…ただ安心しろ。この能力は莫大過ぎる場合は完全に打ち消すことができなかったりするから無敵と言うわけではないんだ」



上条「え、なにそれ始めて聞いたぞ俺の右手そんなんなの?」



バードウェイ「アレイスターが教えてくれた」



上条「なんだ、確かにアレイスターならなんでも知ってるよなwww」



神裂「え、アレイスター?え?」



バードウェイ「気のせいだ。忘れてくれ」



箕輪「ねぇマークさん…情報規制がユルユル過ぎると思うんだけど」ヒソヒソ



マーク「しょうがないですよ…この街の警備自体ザルですから」ヒソヒソ



インデックス「私でもすんなり入れたんだよ。どうかしてるかも」ヒソヒソ




ヒソヒソと話をする三人に対し、バードウェイは軽く咳き込みその話をやめさせる



簡単に彼女らは語っているが、本来それは誰も知ることができないはずのトップシークレットである



不幸であるがゆえに、闇に身を置くがゆえに、運命を宿命ずけられたがゆえにその情報を知るだけなのだ。彼女らは特殊過ぎる



なるべく知らない人をそんな世界へ連れ込んではいけないのだ。たとえそれが世界に数人しかいない聖人であったとしてもだ




バードウェイ「とにかくこいつの右手を使ってインデックスの中にあるだろうルーンを…そういえばあるかどうかも確認せずに話を進めていてしまったな」




少し口を開けろ、とインデックスに指示を出すバードウェイ



言われたとおりに口を開けたインデックスにバードウェイは携帯片手にその口の中を覗き込んだ




バードウェイ「えっと…多分私の予想が正しければこの辺にあるはず…」ピカー




携帯のライトを見事に駆使し、歯医者のように口の中を除き見る魔術結社のボスがそこにいた



なんかとってもシュールだった




バードウェイ「お…これだこれだ。ちょっと写真撮るぞインデックス」チロリーン



インデックス「ほぇ?」



バードウェイ「もう閉じていいぞ」




えっとこの辺をもうちょい加工すれば綺麗に見えるはず…とスマホをちょいちょい動かすバードウェイ



科学の街に住む自分たちよりも携帯を使いこなすのはいかがなものか、と上条と箕輪は思ったが、そもそも自分たちの場合、使おうとして砕け散る気しかしないので気にしないでおくことにした



やがて編集が終わったのかバードウェイが携帯をこちらに突き付けてきた。皆でそれを見ると




インデックス「………私の口の中にこんなのがあるんだ…」




皆は終始無言。インデックスだけがそのルーンに対して感想を述べた



そこに写し出されていたのは、だいたい喉の奥の部分だろうか。そこにまるでテレビの星占いで見かけるような不気味な紋章がどす黒い光を放ちながら刻まれていた



ステイルが使っていたようなルーンとは違う



もっと根本的何かが違う、呪いじみたようなそんな印象を受ける紋章だった




神裂「本当に…あった」




本当に自分が間違っていることを再認識したのだろうか。神裂の表情は沈んでいる



だがそこで首を振り、雑念を飛ばす。もうこれ以上インデックスを傷付けない為に




神裂「これを上条当麻の右手で触れば全て終わるんですか?」



バードウェイ「終わると思うか?」




意を決して聞いてきた神裂に対し、バードウェイは質問で返した



神裂は渋々、といった様子で認めたくないであろうその考えを口にした




神裂「………思えませんね。この紋章が壊されること=魔導図書館の使用権が手に入ることと同義でしょうから」




彼女は一度見たことがある。インデックスには『自動書記』というものががあり、万が一その身に危険が訪れた場合、魔導書を使って現状を変えるところを



昔見たときには何も思わなかったが今は違う



喉奥に刻まれた紋章を消せば、必ずや『自動書記』が発動するだろうという確信がある



自分、聖人というボディーガード。『歩く教会』という絶対防御服。そして『自動書記』という最強の攻防一体手段



二重三重にガチガチに固められた存在。それこそがインデックスであり、魔導図書館であった




バードウェイ「その通りだ。恐らく何かの防御術式が発動するだろうな」



神裂「『自動書記』…魔導図書館内の魔導書保持の為に図書館内の知識を使って侵入者を迎撃するであろうことが予想されます」




その発言に上条は息を飲んだ




上条「ちょっと待て。そりゃなにか?俺がその紋章破壊したら俺に核爆弾クラスの攻撃が来るってことか!?」




魔導図書館は魔術界における核爆弾のような物であると聞いた。ならばその知識を用いて迎撃してくるなら核爆弾を相手に戦うつもりでいなくてはならないということだ



だが現実はそんな信じられない事の更に上を行く




インデックス「図書館内の知識を使ったらそれぐらいじゃ済まないかも。とうまの場合、その右手が訳がわからなさすぎるから多分地球が滅びるレベルの何かをされると思うよ」



上条「」orz



箕輪「話のスケールがでかすぎる…」




上条は絶句する



これこそが魔術界の最高峰。やはり自分たちとは住む世界が違うのだと思い知らされる




神裂「地球が滅びるレベルの攻撃ということは『竜王の殺息』…でしょうね」



マーク「伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃を再現した極大消滅呪文…ドラゴン◯エストで例えるならメド◯ーアでしょうか」



上条「その例えが分かりやすすぎて俺の心が零になりそうなんですけど…」



神裂「文字どおり全てを消し去る絶対の一撃です。普通当たれば塵すら残らないのですが…あなたの右手は本当に大丈夫なのですか?」



上条「だ、大丈夫だぁ。おおおお俺は俺の右手を信じる」ガクガクブルブル



バードウェイ「だが完全に宛にしないほうがいいだろうな。神裂との戦いで右手もズタボロになっている訳だし恐らく防ぎきれん」



上条「………」



箕輪「あの、当麻が真っ白に燃え尽きたんだけど」ツンツン



バードウェイ「何を勘違いしている?紋章を壊すだけがお前の仕事であってそこから先は私達プロに任せろ。おいマーク!象徴武器の整備は済ませてあるんだろうな?」



マーク「ボス。象徴武器の製造と聖別は本来使用者自らの手で行うべしとあるはずですが」



バードウェイ「整備して無かったのか…もう一回ポコチンブレイカーの出番が」



マーク「今すぐやって来まーす!」ピュー!



バードウェイ「神裂。貴様も準備をしておいてくれ。確かワイヤーを使えるんだったな?それならワイヤーでいくつか結界を張って欲しいんだが」



神裂「ステイルを叩き起こして来ます」ピュー!



インデックス「………結界張るの苦手なんだねかおりは」



上条「こんなに不安しかないプロ始めて」




涙目になる上条に対してバードウェイは溜息をついた




バードウェイ「皆まで言うな。こっちまで不安になってくるわ…」




ここまで1日にこんなに溜息をついたのは始めてだぞ………とまた深い溜息をつくバードウェイ



齢12歳にして苦労というものの真髄を知るのは彼女くらいであろう



そんな苦労を知る少女は今度は不幸を知る少女に対して命令を下した




バードウェイ「そういえば胡桃。お前は何処かへ避難しておけ」



箕輪「嫌だ」




即答だった




バードウェイ「わからんのか?今からここは地球が滅びるレベルの攻撃が飛び交う激戦区になるんだ。能力を持つ当麻ならともかくなんの能力も持たない貴様はただの役立たずにしか過ぎん」



箕輪「私今からまたバードウェイが溜息つきそうな一言を言おうと思うのだけれど言ってもいい?」




真剣な目でバードウェイを見つめる箕輪に対してバードウェイは箕輪が何かを言う前に溜息をついた




バードウェイ「………言わんでいい。いたければ好きにしろ」



箕輪「うん!」



バードウェイ「言っておくがこれは遊びではない。本気の戦争だ。覚悟を決めておけ」



上箕「おう!」




科学の街で魔術界の最高峰の頂上決戦が幕を開ける




マーク「ボス。象徴武器の調整が完了致しました。どうぞお納めください」



バードウェイ「うむ。何が起こるか分からんから全ての状況に対応できるようにお前も準備を進めろ」



マーク「かしこまりました」



ステイル「人払いのルーンと【魔女狩りの王】の配置、出来たぞ」



神裂「有難うございます。わざわざすいません絶対安静だと言われていたのに…」



ステイル「なに。インデックスの為ならこの身の一つや二つ、壊れてしまって構わない。だが【魔女狩りの王】はちゃんと操れる自信が無いのが現状だ。だから操縦指揮は君が取ってくれ。やり方は…」



神裂「ふむ………なるほど」



バードウェイ「人払いを済ませたからと言って油断するな!恐らく最終局面に入った場合辺り一面を焼け野原にする可能性がある!ここから半径三キロ以内の住人に適当に理由をつけて避難させろ!」



黒服たち「はっ!」ビシッ!



バードウェイ「防御結界に関しては歩く教会をベースにしながら特定魔術を組み上げたほうがいいな…できるか?インデックス」



インデックス「えっと…それなら第十六章三節と第八章二十三節と第七章十七節を組み合わせて魔方陣を書きながら物に神話的意味合いを持たせれば…」カキカキ




狭い空間で様々な人間が慌ただしく動いている



上条たちにとってそれは正に別世界。本当に自分はここにいてもいいのかという気分になってくる



だが必要なのは確かなのだ(胡桃は見学者だけれど)。そう思うと何だか誇りに思えた



作戦としてはまず右手を使って紋章を破壊しバードウェイと神裂が攻撃を凌ぎつつインデックスの『自動書記』そのものを破壊するらしい



一応無差別攻撃が来る可能性があるため、紋章を壊す役目が終わっても油断は出来ない。胡桃の回りには先程インデックスとバードウェイが協力して世界に一つしかない最強の防御結界を制作中だ。俺の右手だと一瞬で壊れてしまうらしいので距離を取っておく



そしてインデックスの服にも触らないようにも念押しされた。触ればその場で一人の少女が素っ裸になってしまうので助ける云々の話が何処かへ飛んで行ってしまうだろう



針詰められた空気の中で、たった一人の少女を救うために、魔術界最高の兵器を壊す計画がついに始まった




バードウェイ「………頼んだぞ。壊した後はすぐに後ろに下がれ」



上条「へへ、言われなくともそうするさ」




軽く笑う上条であったが、その額からは汗が滴り落ち、息は荒い




インデックス「…よろしくなんだよ」




あぁんと大きく口を開けるインデックス



ちょっと苦しいかも知れないけどごめんな…と一言言って中を覗き込む



写真にあったように紋章が不気味にどす黒く輝いている。写真で見るよりもその異常さが伝わってきた



意を決して少しでもインデックスの負担を減らせるようにその右手の人差し指と中指だけが奥に届くようにその手を突っ込んだ



インデックスが少しえずいた、次の瞬間




上条「がっ………!?」ドン!



バードウェイ「!!大丈夫か!」




つんざくような、それでいてガラスを叩き割るようなそんな音が響いた瞬間、上条は壁に叩きつけられた



積み上げられていたビールの空き缶の山が音を立てて崩れ落ちる。そのあまりの衝撃に一瞬息が出来なくなる。しかしその衝撃が嘘のようにインデックスは静かに倒れこんだ



何とか呼吸を整え、自分の右手を見てみると防いで貰った傷口が開き、ポタポタと滴る血液が畳を赤く染めていた




神裂「………っ!!」




神裂が刀を構え、バードウェイがその手に杖を構える



インデックスの体が爪先を支点に一気に起き上がる。人間離れした動きだった



足が地面から数センチ浮いている。だがそこは気にするところではない



見開かれた目には真っ赤な魔方陣が浮き出ていた




自動書記「ー警告、第三章第二節。Index-Librorum-Prohibitorumー禁書目録の『首輪』、第一から第三まで全結界の貫通を確認。再生準備…失敗。『首輪』の事故再生は不可能、現状、十万三千冊の『書庫』の保護の為、侵入者の迎撃を優先します」



バードウェイ「………上手くいったようだな。だが本番はここからだ」




全員の目をインデックスの目の中の魔方陣が射ぬく



それは眼であって目ではない



そこに人間らしい光はなく、そこに少女らしいぬくもりは存在しない




自動書記「ー『書庫』内の十万三千冊により、防壁に傷をつけた魔術の術式を逆算…失敗。該当する魔術は発見できず。術式の構成を暴き、対侵入者用の特定魔術を組み上げます」




インデックスは、糸で操られる死体のように小さく首を曲げて




自動書記「ー侵入者に対して最も有効な魔術の組み込みに成功しました。これより特定魔術『聖ジョージの聖域』を発動、侵入者を破壊します」



バードウェイ「行くぞ!!」




バードウェイが言った次の瞬間



凄まじい音を響かせながらインデックスの両目の魔方陣が一気に拡大し、直径二メートル強の魔方陣が重なるように配置された



バードウェイと神裂が走り始める



先にインデックスにたどり着いたのは神裂。その恐るべき速度のまま、インデックスに刀を降り下ろした



魔方陣の一つが粉々に砕け散る




インデックス「ー警告、第一章第五節。術式発動前に物理的な魔方陣の破壊を確認。修復開始…完了。『聖ジョージの聖域』、再発動まで残り二秒」



バードウェイ「………っ!喰らえ!」




続いてバードウェイ。その手に持った杖を魔方陣に向けて振るった瞬間、光の爆発が起き今度は魔方陣を全て吹き飛ばした




自動書記「ー警告、第三十三章第十八節。敵兵を多数確認。現在の術式では発動前に阻止されます」



神裂「やはりこの程度では駄目ですか!」



バードウェイ「魔力切れを狙うしかないな。当麻の話だと昼にモヤシ炒め以外に何も与えていないらしい…なら魔力切れが絶対起こる!」




悔しそうにしながらも、勝機を見出だすバードウェイ。簡単そうに言っているものの、少しでもタイミングがずれれば命が無い。そしてインデックスの魔力切れがいつ起こるかもわからない



だがそれに全てをかける。それが彼女を救う道で、彼女を助けられる希望の光だ



だがここで、大きな大きな誤算が起こる




自動書記「先頭思考を変更、戦場の検索を開始…完了。多大なる『天使の力』と『不幸エナジー』を感知。現状、最も多大な力を持つ対象、『箕輪胡桃』の破壊を最優先します」



バードウェイ「なん………だと!?」



箕輪「へ………私?」




思わず目を見開くバードウェイ。名前を呼ばれた箕輪もキョトンとしている



本来の予定通りならば、狙われる確率が一番高いのは紋章破壊を行った上条当麻。次に術式の発動を阻止するバードウェイか神裂火織のはずだった




自動書記「対象者に高濃度の魔術結界を確認。該当する霊装を検索。完了、『歩く教会』を元に作られたオリジナルの物と推測されます」



バードウェイ「ま、まずい!神裂!」



インデックス「対抗術式を組み立て中………第八式、第六式、第三十式。命名、『全てを知る宵の明星』即事発動」



バードウェイ「インデックスの体勢を崩れさせろ!速く!」



神裂「………っ!!!」




神裂が刀を抜く。しかしそれよりも速く術式は展開され、その一撃が箕輪に向けて放たれた



神裂のワイヤーがインデックスに辺り、その体勢を僅かに崩れさせる



インデックスが放った一撃が箕輪の前の防御結界に接触する。その光景はまるで目の前にどんどん夜が広がっていくかのようだった



そんな様子が箕輪にはとてもゆっくり、かつ明確に見ることが出来た



そして



本などに包装されているセロファンを剥がすかのように、二人の天才が作り上げた最強の防御結界はいとも容易く引きちぎられた




箕輪(………あ、駄目だこれ。死んだ)




いつもならば容易く避けられるであろう攻撃



それでも全てが規格外であったが故に意識はともかく体が追い付かない



遠くの方でバードウェイが何かを叫んでいるが何を言っているのか認識することはできなかった



何もできないまま、何も言えないまま目の前にまで迫る『死』という存在を前に彼女は一人の少女の事を思い出す




箕輪(ごめんね…市子ちゃん。謝りに行けなかったよ………)




そして




箕輪(当麻………………今までありがとう。今度また会えるなら…私は………)




何かが



聞こえた気がした




………………………………ぃ



箕輪(………?)



………………………ぃぃぃぃ




上条「胡桃ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」



箕輪「当麻!」




不測の事態で誰一人として動けなかったこの状況下でただ一人。彼女の最愛の人が



箕輪を突き飛ばした




箕輪「………え」




上条の右手が、この世界から消失した



やがて時は正常に動きだし、インデックスが倒れ、その動きに合わせありとあらゆる物を塵一つ残さず消し去っていく




上条「ぐっ………あああああああああああああああああああああああああああああ!!!」




余りの激痛にその場に倒れ、絶叫する上条。上条の右手。というよりも右腕は肩の部分から先が綺麗さっぱり消え去っていた




箕輪「当麻!」




もう術式も関係ない。肩を抑え、転がる上条に走り寄る箕輪はその無くなった右腕の部分を思わず見る



血は出ていない。それもそのはずで真っ黒に彼の肩は焦げ付いて本当に人間の体なのだろうかと思うくらいである



マークが急いで駆け寄って来て、容態を確認する。ただ、確認したところで今この場で回復魔術を行える暇などない。例え右手が無くなったとしても幻想殺しの効果が残っており、魔術が掛けられない可能性もゼロではない



つまりどうしようも無かった



一方インデックスはというと先程の攻撃もなにもなかったかのように最初の時と同じく起き上がってきた




自動書記「術式の効果を確認、敵兵上条当麻及び箕輪胡桃の無効化に成功。これより残存兵力の破壊に戦闘思考を変更します」



自動書記「聖人の力を感知、こちらについては体に宿る『天使の力』を取り除いた上でこの場から退場させることにより破壊できると思われます。成功率85パーセント」



自動書記「象徴武器を確認、同一の動きを繰り返すことによって発動する物ということが予想されます。動きを封じた上で象徴武器を破壊すれば完全に無効化させることができると思われます。成功率79パーセント」




全ての歯車が崩れだした




バードウェイ「何!?もう術式を解析されただと!?」



自動書記「ー警告、第八十二章第六十三節。魔力吸収術式の制作を開始…成功。命名、『暴君王の悪食』即事発動」




インデックスが、神裂の前に瞬間移動したかのように現れた




神裂「なっ!?」




神裂が刀を抜く前にインデックスが神裂のおでこに軽く触れる



ただ、それだけで神裂の力という力が吸いとられ、一瞬でミイラのようになってしまった




神裂「………………………」パクパク



最早刀を抜くことはできない。話すことすらもできない



インデックスが今度はでこぴんをするかのようにもう一度神裂のおでこに手を添えた



それだけで壁を突き破って元神裂だった物は夜の街に消えていった




自動書記「聖人、『神裂火織』の破壊に成功。次の行動に移ります」



バードウェイ「なめるなぁぁぁぁぁぁぁ!」




インデックスが先程箕輪に放った一撃をバードウェイに放った



バードウェイの象徴武器が杖から短剣に、短剣から杯に、杯から円盤に、目まぐるしく変化しながら振るわれ、回転し、掲げられ、それに合わせるように水で出来た短剣の豪雨が降り注ぎ、炎の壁が迎え撃ち、風の剣が空間全体をも引き裂くかのように唸る



目も眩むかのような光の爆撃が連続して起こりあの防御結界を一瞬で破った一撃とバードウェイの攻撃が拮抗する



しかし




自動書記「ー警告、第六章第十一節。術式同時展開。命名、『断絶葬咆哮』即事発動」



バードウェイ「ぐっ!?」ビギィ!




インデックスが何かを唱えた瞬間、象徴武器を振るっていたバードウェイの右腕が嫌な音をたてながら不自然に固まった。まるで筋肉がつってしまったかのようにも見えるが違う。バードウェイには痛みは無いようで辛そうには見えない




バードウェイ「神経回路を断絶させられた…ここまでか」




それだけ言い残して



バードウェイが闇に呑み込まれた




マーク「………っ!ボス!」



箕輪「そんな………」




これが魔術の頂点『魔導図書館』



神裂はステイルから託された【魔女狩りの王】を使う暇もなく



魔術結社のボス、バードウェイもいとも簡単に葬り去り



絶対の右手を持った当麻は今、自分の目の前で右腕を無くし息も絶え絶えである




マーク「………………」スクッ



箕輪「マーク…さん?」



マーク「上条さんを連れて逃げてください。ここは私が食い止めます」



箕輪「無茶よ!勝てっこない!マークさんも一緒に………っ!」



マーク「それは出来ませんね。そうですね…あなたの言葉を借りるならボスがああまでして守ろうとしたあなたたちを私は守りたいんです」



箕輪「………っ」



マーク「幸いここには使われなかった【魔女狩りの王】があります。私でも一分は耐えられるでしょう」



箕輪「………………絶対に死なないで。約束」



マーク「……………はい。約束です」




小さくその場で交わされた約束は儚く脆かったがそれが彼女の最後の希望となる




マーク「………………こい!」



自動書記「新たな敵兵を確認。排除します」




だがここで信じられないことが起こった




上条「………待てよ」



箕輪「と、当麻………」



自動書記「………?不可解。上条当麻の無力化には成功したはずです。この状態で立ち上がれる訳がありません」




上条が立ち上がった



思わずマークも、インデックスですら立ち止まる



右手が無くなってバランスが取れないのかかなりぐらぐらしている。息も乱れ、汗が滴り落ちている




上条「………心配すんなって。これぐらい…なんともねぇよ…そんな顔すんな」



箕輪「………!!」




それでも上条は笑った




上条「いつも言ってんだろ…自分の不幸に他人を巻き込まないって…なら今の状況はそれを守れてねぇよな…」



箕輪「な、何を言って…」



上条「俺が…俺がこんなことにならなけりゃ皆死なずにすんだんだよ…お前が…そんな顔しなくてすんだんだよ」




それなら私が一番悪い………そう言いたかったが上条の気迫の前に言葉がでなかった




上条「だから俺が全て終わらせてやる!行くぞインデックス!お前の…お前の中にいるその腐った幻想をこの俺がぶち殺す!」




もう絶対の右手はないというのに。抗うものも何も持ち合わせてはいないというのに上条当麻は立ち向かう




自動書記「…………ー警告、第九十九章九十九節。『上条当麻』の復活を確認。再び戦闘思考を変更し、『聖ジョージの聖域』を発動。再び『上条当麻』の破壊を行います」




インデックスが再び上条当麻に視線を合わせる



魔術師として実力のあるマークを無視して虫の息の人間に矛先を向ける




自動書記「完全発動まで三…二…一…発動」




先程の夜のような攻撃とは違う、純白に輝く一撃が上条に放たれた



それを




上条「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」




一匹の龍が



その絶対の一撃に食らいついた




箕輪「………なに………あれ」




上条の無くなった右腕の部分から龍が現れている。あれは一体なんなのだろうか



一匹だけでは終わらない。様々な形の牙、角を持った龍がまるで鯉の滝登りの如く光線を引き裂きながらインデックスに迫る




自動書記「ー警告、第六十八章五十五節。敵兵の能力の解析………失敗。該当する魔術は発見できず。龍一体が『聖ジョージの聖域』と同等の威力を持つことを確認、これより現状解決まで拮抗することが最善策と思われます。術式制作中………完了。命名『竜神王達の殺息』即事発動」




インデックスが上条の右手から出現した龍の数だけ同じ一撃を放った



いや、見ると光線の一つ一つの色が違う。その光線の一つには先程の物と思われる夜のような光線もあった



だが全てと拮抗する。一進一退の攻防が続いている。最早箕輪も、マークですらも何が起こっているのかすらわからなかった



だが驚くのはまだ早かった




バードウェイ「あれが基準点というやつか…やれやれ、始めからあれさえあれば簡単だったというものを………」



箕輪「なっ!?バードウェイ!生きて…っ!」




そこで息を飲む




バードウェイは上条と同じように右肩から先が無くなっていた




バードウェイ「私の超最終手段………自ら象徴武器を破壊することによってどんな攻撃も一度避けることができる……ただ発動が少し間に合わなかったようでな、右腕が無くなってしまった」



マーク「ボス!今すぐに回復術式を」



バードウェイ「いい。あいつが発動した『断絶葬咆哮』は指定した体の部位の神経を別次元に飛ばす術だ………治したところで回復魔術だろうが現代医療の最高峰だろうがもう右腕は動かすことは出来んよ。むしろこうなって好都合だ義手でもつける」



箕輪「バードウェイ………」



バードウェイ「何、神経がもう無いからな。痛みも感じんし言ってしまえばダメージゼロだ」




当麻ともお揃いだしこれはこれで………と自分の肩を少し撫でた所でバードウェイは振り向いた




バードウェイ「とはいえ私は義手をつけるまで魔術を使うことはできないし…最悪な状況には変わりないな」



マーク「現状インデックスと戦えるのは上条さんだけです。ですがあの状況がいつまでも持つ保証もありません」



バードウェイ「下手に援護すればあの拮抗状態が崩れる可能性もあるし…どうしたものか」




インデックスは今も術式を次から次へと発動させて上条の龍の突破手段を探している。一方上条は自分の肩を抑え、踏ん張るのに必死だ



なんとかしなければ…今度こそ当麻が死んでしまう



足りない頭ながら、魔術の知識も科学の知識もほとんど知らないながら箕輪はこの状況を何とかできる方法を考える



方法を考えていると、先程のインデックスの行動に何か引っ掛かりを感じた




箕輪「そういえばバードウェイ」



バードウェイ「どうした?」



箕輪「さっきは何でバードウェイよりも、神裂よりも、実はあんな力を持っていた当麻よりも私が真っ先に狙われたんだろう?」




そう



世界に数人しかいない聖人よりも



魔術界で上から数えた方がダントツ早い実力の魔術結社のボスよりも



右手からあんな龍を出して現在インデックスと張り合うことのできている上条よりも



多大な力を持っているとインデックスは判断したのだ




マーク「………それは……箕輪さんの回りにボスとインデックスが作った世界最強の防御結界があったからでは?」



箕輪「いや、インデックスは私に狙いをつけてから術式の解析をやってたし…何より『不幸エナジー』って言葉がどうも私に関係あるとしか思えないんだけど…そもそも不幸エナジーって何?」



バードウェイ「あぁ、不幸エナジーと言うのは最近誕生した考え方の一つだ。人には幸福エナジーと不幸エナジーの二つの力が宿っていてだいたいこれが人によって多くなったり少なくなったり…」



マーク「陰陽師などの陰と陽のようなものでしょうか」



バードウェイ「待てよ………おい胡桃!」




急にバードウェイが声を張り上げた




箕輪「な、何!?」



バードウェイ「いくつか質問するぞ!お前は確かに聞いたんだな!?インデックスが不幸エナジーと言ったのを!」



箕輪「え?あ、うん、そうだけど」



バードウェイ「インデックスは確かに言ったのか!?多大な力だと!ここにいる誰よりも!」



箕輪「うん………」




バードウェイの余りの剣幕に圧される箕輪。なぜ彼女がこんな風になっているのかが全くわからなかった




バードウェイ「最後の質問だ!お前はいつもずっと当麻と一緒に過ごしていた!そうだな?」



箕輪「うん。でも当麻も不幸だったから私たちが住み始めてから心なしか不幸具合が大きくなっていたけど………もしかして当麻も不幸エナジーが多いのかな?」




その言葉を聞いて




バードウェイ「………………ふふっ」



箕輪「バードウェイ?」



バードウェイ「あぁっはははははははははははははははははは!!!」




バードウェイは高らかに笑った




バードウェイ「勝った!これは勝ったぞ!」



マーク「どういうことですかボス!?」



バードウェイ「インデックスに勝てるぞ!胡桃の力で!良くやった!よくぞそこに気が付いたな!やっぱりお前ら大好きだ!」ガバッ!



箕輪「ちょっ!バードウェイ!腕無いんだから無茶しないで!そもそも勝てるってどういうことよ!」



バードウェイ「あぁ、すまない。ちょっとテンションが上がってしまった」




バードウェイはマークに命じてちゃぶ台を持ってこさせ、その上に腰かけた



その様子はとても優雅で、余裕があって、今の現状を忘れてしまいそうな程だった




バードウェイ「じゃあまずは神裂の特性について話をすることにしよう。マークはさっき吹っ飛ばされた神裂を助けに行ってこい」



マーク「かしこまりました」



箕輪「神裂さん………あんなことになっていたけど生きてるの?」



バードウェイ「生きてる。その特性故にな」



バードウェイ「あいつの特性は『幸福すぎること』つまり幸福エナジーを大量にその身に宿しているんだよ。そうだな……多分人間千人分位の幸福エナジーを持っている」



箕輪「せ、千人分って………どんだけ幸福なのよ………」



バードウェイ「宝くじを引けばいつでも一等を取れるし身に付けたい動きや動作があった場合すぐに覚えられるとかそういった感じか」



箕輪「あれ?そんなにすごいんなら最初からインデックスは救えたんじゃないの?」



バードウェイ「しょせん千人分の幸福エナジーだ。利用されてしまえばそれまでだし『助けることができない』と思い込んでしまえばもう助けることはできないんだよ」



箕輪「成る程………そういうことね」



バードウェイ「このように人には殆ど同じ配分で幸福エナジーと不幸エナジーが配分されているが時たまその量が間違った人間が生まれるんだ。それを覚えておいて欲しい」



バードウェイ「次にお前だ、お前の場合は不幸エナジーの量が極端に多い。それこそ神裂と比較するのも可笑しいくらい…ざっと数万人分の不幸エナジーを持っているだろうな。下手すればそこら辺の神様よりは全然持っているだろう。まさに貧乏神だ」



箕輪「び、貧乏神って………」



バードウェイ「更に私の見立てが正しければお前はただ不幸エナジーが多いだけで無く、更に不幸エナジーを吸収する能力と不幸エナジーを放出する能力を持っているはずだ」



箕輪「吸収と放出?それってプラマイゼロなんじゃないの?」



バードウェイ「そうだ。でも考えてみろ?確か前に寮が爆発しただろ?あれは放出された不幸エナジーのせいで起こったことで、お前以外の住人がすぐに家を見つけることが出来たのは吸収のせいで不幸エナジーを吸いとったから」



箕輪「………すごいいい迷惑じゃない」




私のせいで回りの人間が傷付いている。その事実は私の心を大きく削り取った



そんな私の頭をバードウェイは優しく撫でた




バードウェイ「そんな顔をするな………いわばこれは神様のミスだ。お前に罪はない。むしろお前は被害者だ」




それは違う。私にそんな力があるがゆえに今バードウェイの右腕は無くなってしまっているのだ



バードウェイ「そしてここでもう一人の被害者当麻についての話をしよう」




インデックスと激戦を繰り広げる上条をチラッと見て、急いだ方がいいかもしれんな…と呟いたバードウェイ



ここからはかいつまんで、少し早口でしゃべるぞとバードウェイは言った




バードウェイ「実をいえば当麻のエナジー量は一般人と何ら変わらない。違うのは幻想殺しだけなんだよ」



バードウェイ「当麻の幻想殺しは異能力を打ち消すだけでは無い。幸福エナジーを打ち消す力を持っていた。だからあいつは不幸なんだよ」



バードウェイ「しょせんあいつの不幸はよく不良に絡まれるとかそんなものだろう?それが人並みということの照明だ」



バードウェイ「さて、ここまで踏まえてしつこいようだが質問だ。最近…具体的に言えば当麻と住むようになってから不幸具合が大きくならなかったか?」




バードウェイは本当にマシンガンを連想させるかのように、私に質問させる機会すら与えずにこちらに質問をしてきた



ただ、ここまで言われてしまえば私にも分かる



私たちの身に起こっている重大な事実について




箕輪「それはつまり………『私が不幸エナジーを吸収して、幸福エナジーを当麻が全部打ち消している』からどんどん不幸になっているってことなの!?」



バードウェイ「大正解だ。不幸エナジーを放出する力については今出てるあの龍のような…本能的な部分が身を守る為に無意識に打ち消していたんだろう」




だから二人で住むことによって



回りの人に対しての不幸が減り



自分たちに対する不幸が増幅したのだ




バードウェイ「最早お前の不幸エナジーの量は数万人分ごときではない………数百万、数千万もしかしたら数億人分ぐらいまで膨れ上がっているかもしれない」



バードウェイ「もうお前の願いが叶うことは一生無い。全ての願い事は叶うことなく毎日が死と隣り合わせで、一度死んでしまえばどんな惨たらしい死に方をするのかも想像できんほどになっているだろう」



箕輪「………不幸だわぁ」




私はもう不幸すぎて涙も出なかった。ただただ呆れるしか無かった



こうなってしまってはいつか当麻も巻き込まれて死ぬ可能性があるだろう。心のなかでこの戦いが終わった後は当麻から離れようと決意した




バードウェイ「そんな決意捨てちまえ」