2015-07-27 19:44:08 更新

概要

車を通して成長していく女の子たちの話です。


前書き

前回の続き。第2部となります。





梓「連絡がないとは思ってましたけど…これのためですね?」


唯「うん、ごめんねー。びっくりさせたくってさ!」


梓「ほんと、びっくりしましたよ。親に許可もらえたんですね」


唯「昨日納車したんだけどさー、苦労したよー…新しい車にしろって怒られて…」


梓「当然の反応ですね…」


唯「でも本気でお願いしたらお父さんもわかってくれた!」


梓「よかったですね。この子も唯先輩が乗ってくれて嬉しがってると思いますよ」


唯「そうかなー。だといいんだけど」テレテレ


梓「じゃあ…ヴィヴィオがどんな車かわかってあげることから始めましょうか」


唯「それなりに自分で調べたよ!」


梓「例えばなんですか?」


唯「この子は4WD!!」ドヤァ


梓「…他には?」


唯「す、スーパーチャージャーがついてる!」


梓「…その様子だと調べたけど理解してないって感じですね」


唯「あはは…ばれちゃった?実は憂に調べてもらったんだー」


梓「憂も可哀想に…。唯先輩に関しては冷や汗でてますもん」


唯「えへへ…それにしてもあずにゃん、車屋さんのお店の人と同じ格好だね?仕事かえたの?」


梓「え…ああ、これは``つなぎ``といいまして、最近自分で車いじるようになってきたんで買ったんです」


唯「へー、不思議な服だね。上下繋がってるんだー」


梓「高校生の時にホームセンターで着てなかったですか?」


唯「あー…なんかそんなことあったかも」


梓「それはともかく、これは作業をするために動きやすく作られたものなんです。汚れても私服じゃないし気になりませんしね。それにファスナーなどの突起物がないんです」


唯「なんで?」


梓「作業中にファスナーなどでボディを傷つけたりしないようにしたり、機械などに巻き込まれたりしないようにみたいですよ」


唯「なるほどー。なんだかかっこいいね!」


梓「…そうだ!車を買った記念に今度プレゼントしてあげます!」


唯「え!いいの!?」


梓「はい!これで一緒に車いじりができますよ!」


唯「わーい!あずにゃんだいすきー!」ギュー


梓「あ、こら!……もう」


唯「あーずにゃん♪」ギューーー


梓「ほ、ほら!ヴィヴィオの話に戻しますよ!」バシバシ


唯「い、痛いよあずにゃん…」



梓「自業自得です。というかさすがに自分の買ったヴィヴィオのグレードはわかってるんですよね?」


唯「それも憂が調べてくれたんだー。RX-Rっていうらしいよ!」


梓「自分で調べてください!…それで何が違うかわかりますか?」


唯「ぜーんぜん?」ポケェー


梓「はあ…んー、この赤いメーターを見る限りたぶん初期のRX-Rですかね」


唯「そうそう、車内もシートも赤でかわいいんだよー!インテグラみたいでいいよねー」


梓「たしかメーターが赤いのは初期型のA型とB型だけだった気がします。それ以降のC型からE型まではコスト削減のために白のメーターに変わってしまったんです」


唯「そんなに種類あるの?」


梓「はい、俗にいうマイナーチェンジですね」


唯「聞いたことあるけど意味はわかんない…」


梓「小さな手直しって思ってもらえれば。前期の車に手直しや新しい装備をつけて新たに販売することをいいます」


梓「それの他に、パッと見でわかるほどの大幅な変更はフルモデルチェンジっていうんですよ」


唯「へー…ヴィヴィオはグレードも多いの?」


梓「んー…代表的なグレードのRX-Rとは別にRX-RAというのもありまして、パワーウィンドウとかエアコンをなくして軽量化した、よりスポーツなグレードもあるんですよ」


唯「パワーウィンドウ?」


梓「…窓がボタン1つで開け閉めできますよね?それはモーターのおかげでウィンドウが動いてるんです。モーターがついてないのは手動で開け閉めするタイプがあります」


唯「へー。そんなのあるんだ」


梓「大抵古い車にしか回すタイプはないんで、新しい車しか知らない人は知ってなくて当然かもしれませんね」


梓「そのモーターも重いので余計なものは外して軽くする…それがRAの強さですね」


唯「でも私のはRX-Rでしょ?」


梓「内装見る限りそうみたいです。この前も見ましたけど」


唯「ところであずにゃん」


梓「はい、なんですか?」


唯「スーパーチャージャーってなに?ターボとはなにが違うの?」


梓「ああ、それの説明もありましたね。

じゃあまずは自然吸気と過給機の違いを説明しますね」


唯「うん、お願い!」


梓「まず自然吸気のことを簡単にNAといいます」


唯「NA?」


梓「ナチュラル・アスピレーションの略です。エンジン本体の力だけを使って走っている車のことをいいます」


唯「じゃあターボが過給機がついてる車ってことだね!」


梓「まあそうなんですけど、前にターボの説明しましたよね?」


唯「うん。排気の力を利用してるんだよね!」


梓「当たりです。ターボは排気タービン過給機というのですが、スーパーチャージャーは機械式過給機といいます」


唯「機械式?」


梓「ターボはタービンが排気で回る力を利用して空気を圧縮してますが、スーパーチャージャーはエンジンの出力を使って圧縮してるんです」


唯「うんうん…じゃあターボとスーパーチャージャー、どっちのほうがいいのかなあ?」


梓「んー私はどっちもどっちだと思います。

ターボは排気を使うので効率はいいんですが、低速だと排気が少なくて効果が出づらく高速になっても効果がでるまで少し遅れがあるんですよ。

…あ、これをターボラグといいます」


梓「その分、スーパーチャージャーは低速からでもエンジン出力を使って過給するので加速はいいですね。

エンジンの出力を奪ってしまうデメリットがありますがそれを上回るエネルギーを得られるので対して気になりません」


唯「ふんふん…つまりターボとスーパーチャージャーはお友達なんだね!」


梓「そうですね。でもスーパーチャージャーというのは過給機の英訳なのでターボもスーパーチャージャーの一種なんですよ」


唯「へー…っともう1つ聞いていい?」


梓「なんですか?」


唯「4WDってなんですか?」ポケェー


梓「……」


唯「あうう…そんな目です見ないでよお。わからないものはわからないの!」


梓(本当によく免許とれたなあ…)


梓「えーと、車には駆動方式があるのはわかりますか?」


唯「えっと…たしか車がどこのタイヤで走ってるか……だったかな?」


梓「そんな感じです。車には大きく五種類の駆動方式があります」


梓「FF、FR、RR、MR、4WDですね」


唯「えふ……あーる…えむ……???」


梓「FFというのはフロントエンジン・フロントドライブの略で前にエンジンがあり前のタイヤで動いて走る車のことです。ちなみにミラはFFですよ」


唯「エンジンって前にあるもんじゃないの?」


梓「ゆっくり説明していきますから。次はFRですね。これはフロントエンジン・リアドライブの略で前にエンジン、後輪で車を動かしています」


梓「さて次のRRなのですが、そこでクイズです。今までの流れでRRとは何エンジン何ドライブでしょうか?」


唯「えーっと、Rはリアってことだから…リアエンジン・リアドライブ…?」


梓「正解です!」


唯「わーい!やたー!」


梓「先ほど唯先輩がいってたように基本的にエンジンは前にあることがほとんどなんですが、エンジンが後ろに来てる車もあるんですよ」


唯「ええ!じゃあ前のスペースはなにが入ってるの?」


梓「荷物入れなどのトランクルームだったと思います」


唯「ちょっと見てみたいかも~」


梓「次にMRです。MRはミッドシップエンジン・リアドライブの略です」


唯「ミッドシップ?」


梓「車体の真ん中辺りにエンジンがある車です」


唯「え!それじゃ人が乗れないよ?」


梓「その通りです。必然的に2シーターになります」


唯「つーしーたー?」


梓「二人乗りってことです。エンジンで後ろにスペースがなくなるので」


唯「おもしろーい!さて次は待ちに待った4WDだね!」


梓「流れで言うとわかるかと…。4つのタイヤで走ってる車のことを指します」


唯「おお!予想通りだよ!」


梓「4WDにも大きく二種類ありまして、パートタイム4WDとフルタイム4WDがあります」


梓「パートタイムは通常は2輪駆動で走行して駆動してないタイヤが滑りそうになった時だけ4WDに切り替わることができるんです」


唯「じゃあフルタイムはずっと4輪駆動ってことだね?」


梓「その通りです。ヴィヴィオはフルタイム4WDですよ」


唯「でも駆動は統一すれば修理とか楽なんじゃないの?」


梓「それもそうなんですが、それぞれに長所と短所があって作られた理由もちゃんとあるんです」


唯「どんな?」


梓「FFはプロペラシャフトがないので車内が広く、必要な部品もその分減るので安く仕上がります。その代わりあまり馬力を出せないんです」


唯「プロペラシャフト?」


梓「それはFRと4WDに言えることなんですが、その2つの駆動はエンジンからプロペラシャフトから後輪に力を伝えているんです」


梓「高級車やスポーツ車などに多いのがこの駆動ですね。乗ってて安定します。運転の楽しさがわかる駆動かもしれませんね」


唯「じゃあMRとRRは?」


梓「MRは先ほどいった通り2シーターになる分、ボディが軽くなってよりスポーツ向きの駆動と言えますね。F1などの車もMRが主流です」


梓「そしてRRなんですが、マニアックな駆動なのであまり採用されてないんです。ほぼMRと同じな感じだと思ってもらっても大丈夫だと思います」


唯「これで駆動に関しては完璧だね!」


梓「基本知識だけなので完璧ではないですけどね…。話はこのくらいにして山に行きますか?」


唯「うん!行こう行こう!もう運転したくて仕方がなかったんだー!」


梓「じゃあ行きましょうか。付いてきてください」


唯「ほーい♪」





ヴォーンドドドドドド

キュゥイーンヴォボボボ


梓「うわ…けっこうたくさんいますね」


唯「ほんとだー、さすが土曜だね!」


梓「今日は他に誰か来るんですか?」


唯「うん!和ちゃん明日仕事だけど来てくれるって!澪ちゃんも来るっていってた!」


梓「ヴィヴィオ、お披露目のためですね?」


唯「えへへー。ご名答!」


梓「…噂をすれば、ですね」


ヴォヴォヴォヴォ

ブーン


澪「二人とも、おまたせ」


和「あら…?この車…」


澪「ん?これは…」


梓「ヴィヴィオですね」


澪「ヴィヴィオ?」


和「それはわかるけど…唯がニコニコしてるってことは…」


唯「そうです!私の車、ヴィヴィオでございます!」


澪「え!唯、車かったのか!?」


唯「うふふー!買っちゃいました!」ピースピース


和「音沙汰なしだったけど、今日呼ばれたのはこの事だったのね」


唯「びっくりさせたくてねー」


和「それにしても…渋い選択したわね」


梓「ですね。最近はなかなか見ないですし」


澪「これも速いのか?」


梓「速いですよ。``超高密度スポーツ集積マシーン``というキャッチコピーがつけられるほどですから。スバルの本気を感じられる車の1つです」


澪「なんかすごそうだな…今日は走ってみるのか?」


唯「うん、そのつもりだよ!」


澪「私もそこそこ予習してきたけど、やっぱりやってみないとわからないな」


梓「澪先輩も走ってみるんですか?」


澪「あ、ああ。動画とかみてたらどんどん興味でてきて…」


和「最初は何本も走って身体でおぼえるといいと思うわ」


梓「あ、その前に基本事項の確認をしておきたいです」


和「…先輩におまかせするわ」フフッ


梓「そ、そんなつもりは」


和「いいのよ。私も聞いてみたいし」


梓「そ、それじゃあ…」


梓「まず走るにあたって大前提は事故らないことです」


梓「なので車の限界、タイヤの限界、路面状況の把握など…そういうことを常に頭の中に入れておきましょう」


澪「でも限界とかは走ってみないとわからないじゃないか」


梓「はい、そうです。最初は誰しも車の限界を知らず、スピードを出しすぎてしまって壁に突っ込むパターンが多いです」


唯「じゃあどうすればいいの?」


梓「和先輩が言った通り何本も走るにあたって一本走るごとに徐々にスピードを上げていくのがいいと思います」


梓「そうすることによって自分の走れるペースもわかって、おのずと限界もわかってくると思います」


梓「あくまで持論ですが…」


澪「なるほどな…最初はゆっくり走ってみることにするよ」


梓「はい。最初の頃はかっこよく走りたい気持ちからついついアクセルを踏んでしまうので」


唯「気をつけよう!」


澪「はい!質問!」


梓「なんでしょう?」


澪「スポーツ走行の基本のヒール&トウってどうやるんだ?ネットで見たが文字だけだとどうにもイメージ湧かなくて」


梓「いい質問です。車に乗りながら説明しますね」ガチャ


梓「あ、まずなぜヒール&トウをするかですが、コーナー進入手前における減速とコーナーを脱出する際の加速に備えてあらかじめシフトダウンを済ませておくのが目的です」


澪「コーナーを抜けた後の立ち上がりをよくするってことか?」


梓「そういうことです。シフトダウンは高速段から低速段に入れるために回転数を合わせなくてはいけません」


澪「そのためにアクセルを煽るって表現があるんだな」


梓「澪先輩、予習は完璧ですね!」


澪「あ、ありがとう///」


唯「結局どうやるの?」


梓「まず右足のつま先、つまりトウでブレーキペダルを踏みます。


次に左足でクラッチペダルを踏みます。


そしてブレーキペダルを踏んだまま、右足を少し捻って踵、ヒールのことですね。


そのまま踵でアクセルペダルを踏みます。と同時に減速シフトに入れてクラッチをつなげます。この動作を一瞬でやることがヒール&トウです」


梓「回転数はその時の車速に合わせるので、これはやって慣れろですね」


澪「難しそうだな……梓、となりに乗って教えてくれないか?」


梓「いいですよ。まだみなさん準備中で走ってないですから上って下りてくるくらいなら練習できると思います」


澪「さっそく行こう!」


唯「和ちゃん、私にも教えてー!」


和「いいわよ、隣、お邪魔するね」


唯「それじゃいってみよー!」






澪「な、なんだか緊張するな。下手でも笑わない…?」


梓「笑いませんよ。誰もが通る道です」


澪「う、うん。それじゃあやってみる…!」ブーン


梓「……」


澪(ええっと…クラッチをきってアクセルを煽る…)ブーーーン!!!


澪(あ、踏みすぎた!)


梓「澪先輩、落ち着いてゆっくりやってみましょう」


澪「あ、ああ…」


梓「アクセルコントロールは難しいですから、あまり力まずにいきましょう」


澪「わかった!」


澪(これで、どうだ!?)ブンブン


カックンカックン


澪「あれぇ!?」


梓「まだ回転数が多いみたいですね。それとクラッチを離すのが遅すぎます」


澪「む、難しい!!」


梓「あはは。両手両足が違う動きになるんで難しいですよね」


澪「律なら上手いんじゃないか?」


梓「なんでですか?」


澪「ドラムも似たようなもんじゃないか?」


梓(違う気が…)


澪「とにかく、もう一回!」ブーン





澪「はあ……うまいかなかった…」


梓「気をおとさないでください。最初から出来る人なんていませんよ」


澪「ありがとう…もうちょっと練習したいな」


梓「そろそろ他の人たちも走り始める頃なので、その後ですね」


澪「そうだな…そういえばまだ唯たちが戻ってきてないな」


梓「もうすぐじゃないですか?ライトが見え隠してるんで」


澪「ほんとだ」


キュゥイーン


梓「ヴィヴィオのエンジン音は聞き慣れないなあ……飛行機みたい」


澪「あ、ほんと…壊れそうな音だな」


梓「それは言っちゃいけません」


澪「そ、そうだな」


キュイン‼キュゥイーン‼


梓「あれ?」


キィインキィイン‼


澪「唯のやつ、ヒール&トウ出来てるぽくないか!?」


キュゥイーン キィ


唯「わーい!和ちゃん、出来たよできたー!」


和「そうね。最初にしては上出来だと思うわ」


梓「すごいですね。やっぱり唯先輩はやって覚えるタイプでしたか」


和「元々変なセンスだけはもってるから、この子は」


唯「えへへー」


澪「私なんて私なんて…」シクシク


梓「あ…」


和「澪はうまくいかなかったの?」


澪「ひうう!」


梓「大丈夫ですよ!いっぱい練習しましょう!」グッ


澪「ありがとう、梓!」ダキッ


梓「ひゃあ!//」


唯「澪ちゃんずるい!」ギュー


梓「ひょわあ!?///」


和「あらあら」クスクス






梓「まったく…周りに笑われちゃったじゃないですか」


澪「ご、ごめん」


唯「私たち有名人だね!」


梓「そんな有名人いやです!」


梓「……そういえば先輩たちは来ないんですか?」


和「明日仕事らしくてパスされたわ。まあ私も仕事だから今日は帰るけど」


梓「あ、そうなんですか」


和「ええ。あとは任せてもいい?」


梓「はい、大丈夫ですよ」


澪「和、帰っちゃうのか?」


和「ええ。また来週末に」


澪「ああ。私も来るよ」


唯「えー。和ちゃんもう帰っちゃうのー?」


和「後の事は梓ちゃんにまかせたから色々教えてもらいなさい」


唯「むー。気を付けて帰ってくるね?」


和「ありがとう。それじゃあね」


梓「お疲れ様です」


澪「それじゃあな」


ヴォヴォヴォヴォーン


梓「…さて、うまい人たちの走りでも見学しましょうか!」


唯・澪「おー!」






キュキャ!!!ボボーン


梓「今日はグリップがメインみたいですね」


唯「グリップ?」


梓「走り方は大きく2つに別れてるんです」


澪「グリップとドリフトだな!」


梓「はい。唯先輩、違いはわかりますか?」


唯「グリップはなんとなく…いま私達がやってるタイヤが滑らないように走ることでしょ?」


梓「その通りです。ドリフトはわかりますか?」


唯「よく聞くけど、わかんないや…」


梓「まあ私達には今のところ縁のないことですし…ドリフトとは後輪が空転してる状態で車をコントロールして滑らせながら走行することです」


唯「え!?空転してたらまともに走れないよ?」


梓「それをステアリングとアクセルなどでコントロールするんです。やり方もたくさんあって慣性ドリフトやパワースライド、ブレーキングドリフトなどその他諸々です」


唯「へー、なにが違うの?」


梓「…説明は面倒くさいので気になった時に自分で調べてください」


唯「あり?珍しいね、いつもなら説明してくれるのに」


梓「ドリフトは好きですけど、興味はないんで…あと私自身もあまり詳しくないです」


唯「帰ったら憂と調べてみるよ!」


キャキャー


澪「それにしても速いなー…」


梓「私も早くうまい人たちの仲間入りしたいです」


澪「梓はもう入れるんじゃないか?」


梓「いえいえ、私はそんな!」




「そうだよ、走ってみないか?」




梓「え?」


「ああ、いきなりごめんね。いつも君たちのこと見かけてたからつい話しかけちゃったよ」


梓「ああ…いつも走ってる…えと赤いセリカの人ですよね?」


「そうだよ。君、速いのにいつも初心者組と走ってるからもったいないなって思ってたんだ」


梓「え、ええ。そうなんですか?」


「うん。うちのチームだとそのミラ、話題にもなってたし」


梓「はあ…ありがとうございます」


「だから今日、どうだい?一緒に走ってみないか?一本でもいいから」


梓「あ、いえ、私は…」


唯「いいじゃん!やりなよあずにゃん!」


澪「そうだぞ!せっかくのチャンスじゃないか!」


梓「ええ?」


梓(でもEG先輩にはバトルはまだ早いって言われてるしな…この前の私と走ったこと和先輩おこられてたし…)


「お友達もそういってることだし、どうだ?」


梓(一本くらいなら……いいか)


梓「い、一本だけなら…」


「よし、決まりだ!先行と後追いどっちにする?」


梓「…先行で」


「わかった。さっそく行こう。下りでいい?」


梓「あ、上りはきついんで下りでお願いします」


澪「先行でいいのか?」


梓「はい。自分のペースで走りたいので」


唯「がんばってあずにゃん!」


梓「それじゃあ行ってきますね」


「おーい!ミラの子が走るらしいぞ」


梓「…恥ずかしい//」







ドドドドドド


梓「…」


ボボボキィ


「おまたせ。じゃあ行こうか」


梓「あ、は、はい」


梓(き、緊張する…あ、ハザード)カッチカッチ


梓(…スタート!)ヴォーンパシュ‼





(やはり速いな…でもついていけないってわけじゃない)ヴォーン‼


(ラインも綺麗でうまく軽の小ささを使ってるな)


(うちのチームにほしいくらいだ…)ヴォーン‼




梓(プレッシャーは感じるけどミラーは見ない…自分ができる精一杯の走りをするだけ)パシュ‼




(道が広くなった…この辺でいかせてもらう…!)ヴォーン!!!


(頭半分だせばこっちのものだ)




梓(やっぱりきた…!並ばれる…!)


梓「くっ……!!!」


梓(これ以上、端に詰められない!)キィ!




(衝突の恐怖からブレーキを踏んだか…)


(意外とあっけなかったな…健闘したほうだが)




梓(どんどん離れていく…やっぱり私にはまだ早かったんだ)パシュ‼


梓(ついていけない…もうテールが見えなくなった…)


梓(諦めてこのコーナー出たらアクセルを抜こう…)キャリ!


梓(……あ!!!)


「」ヒュ


梓(猫…!?しまった…!間に合わない…!?こういうときは…!)




初めての出来事で頭ではわかっているのに私の身体は動いてくれませんでした。


道を横切る動物を避けることしか考えられなかったのです。


アクセルを踏み、カウンターステアをあてていればなんなく避けることができたはずですが、このとき私はただブレーキを踏むことしか出来ませんでした。


キャキャ!!!


その事にようやく頭で理解した時には

私の目の前にガードレールが迫っていました。








唯「あれ?セリカの人だ」


澪「ほんとだ…梓はどうしたんだ?」


唯「すみませーん。あずにゃ…ミラはどうしたんですか?」


「俺が抜いてそのまま走ってきたけど…そろそろ来るんじゃないか?」


澪「梓、抜かれちゃったのか…」


「いい走りしてたよ。これからがもっと楽しみだ」


澪「伝えておきます!」




ごふんご!


澪「なあ…さすがに遅くないか?」


唯「うん…もう一回聞きにいってみよう」


「ああ、君たちか!いまミラの子の話をしててね…今から見に行くんだが君たちも来てくれ!」


唯「あ、は、はい!」


澪「わ、私もいく!」


「わかった!君はあっちのインプに乗ってくれ!それと…もしものことを考えておいてくれ」


「そこの黒髪の子か?こっちだ!こっち!」


澪「あ、はい!」


唯(も、もしものこと…?)





「嫌な予感がする…」ボォーン


唯「あ、あの…もしものことって…大丈夫ですよね?」


「わからない…」


唯「………」


「……!!!」


唯「あ!!!」


私が見た光景。

それはぐしゃぐしゃになったミラが横転して道の端に転がっていました。


私の頭は真っ白になり、


唯「あずにゃん!!!!」


無我夢中でミラに走りよりました。


唯「あずにゃんっ!!あずにゃんっ!!」


ミラに上り、力を振り絞りドアを開け、その先の光景に目を見開きました。

そこには頭から血を流し、ぐったりしているあずにゃんがいたのです。


唯「あずにゃん!起きて!あずにゃん!」


「おい!あんまり触るな!」


唯「あずにゃん!あずにゃん!しっかりして!」


「お、おい!誰かこの子を押さえてくれ!」


澪「あず…さ…」ガタガタ


「救急車よべ!救急車!」


唯「あぁずにゃあああああん!!」







ふつかご!


梓「………」


ミラ__ボロボロ


梓「……ごめんね」


梓「もっと一緒に走りたかったね…」


唯「あずにゃん!!」


梓「ゆい、せんぱい…」


唯「はあはあ…ここにいるってあずにゃんのお母さんに聞いて…はあはあ」


梓「……」


唯「怪我、大丈夫なの?」


梓「打撲とむち打ち程度ですから…」


唯「仕事は?」


梓「明後日まで休みをもらいました」


唯「そっか………ミラ、直るんだよね?」


梓「……フレームも歪んでますし、修理は不可能だと思います」


唯「で、でも、いまお金かければ直るって、店員さんが言ってたよ!」


梓「現実的じゃないですよ…お金もないですし」


唯「で、でも、あずにゃん、み、ミラが……」ポロポロ


梓「なんで唯先輩が泣くんですか…」


梓「こうなること、わかってて走ってるんですから悲しんでられません…」


唯「だってえ…だってぇ……」ポロポロ


梓「そんな…泣かなくたって…」ポロポロ


唯「うえーーん!」ポロポロ


梓「うえ、ひっく、うわああん」ポロポロ





唯「て、店員さんに迷惑かけちゃったね…」


梓「…なんだか泣いたらちょっとだけすっきりしました」


唯「…ミラどうするの?」


梓「…廃車にします。それしかないので」


唯「そっか…ごめんね」


梓「なんで唯先輩が謝るんですか?」


唯「あの時、私が調子に乗って勝負しろなんて言っちゃって…」


梓「すべては私にテクニックがなかったばかりにあの子をあんな風にしてしまったんです。謝らないでください」


唯「ありがとう…車は新しいの買うの?」


梓「………」


唯「あずにゃん…?」


梓「私、走るのやめようと思ってます」


唯「……え?」


梓「もう、こんな気持ちにはなりたくないなって…思ったんです」


唯「え…え、でも」


梓「なにも言わないでください。もう…決めたことですから」


唯「う、うん…」


梓「帰りましょ?」


唯「歩きで来たんでしょ?送ってくよ」


梓「じゃあ、お言葉に甘えて。ありがとうございます」





キュゥイーンボボボ


唯「ついたよ、あずにゃん」


梓「助かりました。それじゃあ…また」ガチャ


唯「ねえ、あずにゃん…」


梓「はい?」


唯「……ううん、なんでもない!またね!」


梓「…はい、また」バタン


ヴォンキュイーン


梓(…なにも言わないでくれて、ありがとうございます)ペコッ






和『そうなの…残念ね…』


唯「うん…どうにもならないのかな?」


和『これは私達がどうする問題じゃないわ。私達がすることは梓ちゃんが決めたことを受け入れることよ』


唯「で、でも…」


和『唯がそんなんでどうするの…しっかりしなさい。一番つらいのは梓ちゃんなんだから』


唯「うん…」


和『私は休みだけど、唯はお昼休み使って梓ちゃんの所に行ったんでしょ?そろそろ仕事の時間じゃない?』


唯「あ、そうだった…じゃあね」ピッ


唯(……あずにゃん)









なかのけ!


梓(ミラと出会ってこの9ヶ月、あっという間だったな…)


梓「……」グスッ


梓「な、泣いちゃダメ!」ゴシゴシ


梓「……はあ」


梓(ミラとの出会いも…あの人のおかげだったよね…)






―――――――


ヴーンヴーン

梓『純から…?』


ピッ


梓『もしもし?』


純『あ、もしもーし?梓、今夜空いてる?』


梓『空いてるけど…どうしたの?』


純『私、やっと車買ったんだー。ドライブ行こうよ!』


梓『いいけど』


純『憂は残念ながら不参加…』


梓『そうなんだ』


純『明日早いんだってさ』


梓『忙しそうだもんね』


純『だねー。あ、じゃあ9時頃迎えにいくよー』


梓『はーい』



ピンポーン


梓(きたかな…?)スタスタ


ガチャ


純『やっほー』


梓『それじゃあ行こっか』


純『いやー運転たのしーよ』


梓『なに買ったの?』


純『ラパン!ほらかわいいでしょ?』


梓『んーそうだね』


純『絶対おもってないでしょ』


梓『おもってるおもってる』


純『なげやりすーぎー』


梓『ほら、ドライブ行くんでしょ?乗って乗って』


純『運転するのは私なのになんで我が物顔!?』




ブーン

純『でさー、結局やりもくだったんだよね、あいつ』


梓『過ぎた事とやかく言うものじゃないよ。次はいい出会いになると期待してたら?』


純『それね。あーあ、なんで女とドライブなんかしてるんだろ』


梓『純が誘ったんでしょ!』


純『あはは!で、梓はどうなのよ?』


梓『彼氏?』


純『うん。上手くやってんの?』


梓『……微妙かな。なんか連絡こないし。自然消滅寸前って感じ』


純『もしかして私といっしょのパターン?』


梓『たぶんね、もういいかなって』


純『まあ男の半分は身体目的っていうしねー』


梓『はあ…なーんか、夢中になれることないかなあ』


純『ギターは?』


梓『気分かえて他のこともやってみたいってこと。働いてお金も稼ぐようになったしさ』


純『他のことかー…私はいま車にハマりそうかも』


梓『え?なんで?』


純『んーやっぱり買ったからかな。毎日使うから自然と好きになるし、自分好みにしていきたいっていうか』


梓『へー…』


純『梓は車買わないの?』


梓『うーん、あんまり詳しくないし、それにほしい車がなくって』


純『まだあれ乗ってるの?』


梓『ビーノのこと?』


純『わかんないけど、とりあえず原付』


梓『ビーノがあるから車買ってないってのもあるしなあ』


純『車のことも一回調べてみたら?けっこう面白いよ』


梓『うーん、そのうちね』


梓(車、ねえ)




―――――――


梓(そういえば純の言葉がなかったら車のことなんて調べてなかったよなあ…)


梓(タバコ…あれ、ライターどこだっけ?)


梓(あったあった)シュボ


梓(……でもまあ)スー


梓(車のこと調べたら止まらなくなるとは自分でも思わなかった)フー


梓(というかタバコがおいしいと思うようになってきたなあ…これはEG先輩のせいだ)モクモク



―――――――


こんびに!


シャセー


梓(不意にポッキーが食べたくなった)


梓(ああかーみさーまおねーがいーふたりーだーけーのー♪……ん?)


【買うなら今でしょ!あなたのカーライフにこの一冊】


梓(………)


アリャシター






梓『ただいまー』バタン


梓(ためしに中古車雑誌を買ってしまった)


梓『とりあえず読んでみよう』


梓(あ、ポッキーポッキー)ポリポリ


梓(うわ、いっぱいある…あ、この車かわいい)パラパラ


梓(コペンっていうんだ…高いなあ)


梓(それにこの車マニュアルだからAT限定の私には最初から無理…)


梓(んーでも見てるとあんまりマニュアルってないもんなんだなあ)


梓(でも何が良いとかよくわかんない…)


梓『調べてみよう…かな』







梓(へー…そうなんだ。あれ、じゃあピストンってこれのことだよね…?)カタカタ


梓(うんうん!なるほど!コンロッドと繋がるんだ、おもしろーい!)


梓(じゃあクランクシャフトってなんなんだろ?)カタカタ


さんじかんご!


梓(…さすがに疲れた)ゴロン


梓(…不覚にも熱中してしまった///)


梓(………)


梓(ああああ…車がほしくなってしまったあ…!)パタパタ


梓『あ、どうせなら…』





いっしゅうかんご!


梓(よし!AT限定解除できた!)


梓(講習も4時間だけだったし、路上教習もないしけっこう楽に解除できるもんなんだなあ)


梓『教習代はお母さんに借金しちゃったけど、はは…』


梓(でもでも!これでマニュアルだあ!)


梓(やった!やった!)ピョンピョン


梓(あとは帰りに車屋さんに寄ってみよう!)


梓(いくよ、ビーノ!)トペペペペ






梓『うわあ、けっこうあるなあ…』


梓『車種はまだあんまり覚えてないんだよねー…』テクテク


梓(あ、なんだっけこれ…ええと…あー…見たことあるんだけどなあ)ウーン


「それはスカイラインだね」


梓『え?』


「スポーツカー、好きなの?」


梓『あ、いえ、そういうわけじゃなくて…お店の人ですか?』


「ああ、違うよ。俺も君と一緒のただの客さ」


「ここの店員とは知り合いで、今日はセッティングを手伝ってもらってるんだ」


梓『…こういう速そうな車に乗ってるんですか?』


「ん、まあ。胸はって速いって言える車じゃないけど…」


梓『…?どんなのですか?』


「ああ、あれだよ」


「ダイハツ、シャレード・デトマソさ」


―――――――――


梓(あれがあの人との出会い…)


梓(走る素晴らしさを教えてくれた人)


梓(…思い出さないようにしてたのにな)スパー


―――――――――




梓『え?今夜?』


「うん。今夜俺たちのチームが近くの峠を走るんだ」


梓『そ、そうなんですか』


「よかったら見に来ない?車の楽しさを伝える良い機会だと思うんだ」


梓『さっきも言いましたけど、私車もってないんで…』


「無理強いはしないよ。来たいっていうなら迎えに行くし」


梓(色々話を聞かせてもらって、ちょっと行きたくなってる自分がいる…)


梓(…それに悪い人じゃなさそうだし)


梓『い、行ってみたいです』


店員「おっと、またナンパか?」ニヤニヤ


「誤解を招くような言い方するなよ…」


梓『ま、またなんですか?』


店員「ジョークよ、ジョーク。安心していいよ、お嬢さん。こいつ童貞だから」


「おいおい…」


梓『……』アトズサリ


店員「わはは!引かれてやんの!まあ本当に堅物だから安心していいよ」


梓『…ほんとうですか?』ジトメ


店員「ほんとにほんと」


梓『なら、行っても、いいです』


「誤解が解けたようでなにより…」


「今夜迎えにいくよ。場所はーーー」






まよなか!


梓(早く来すぎたかな…)


梓(あう…身体冷えてきたかも。上着もってくればよかった)ブルッ


梓(……あ、きたかな?)


ブォーン


「おまたせ。道が混んでて」


梓『いえ、全然まってないです!』


「…ならよかった。さっそく行こうか」


梓『は、はい』ガチャストン


「………」スッ


梓『ひゃ?!』ビク


「手が冷たい。やっぱり待たせてちゃったみたいだね、ごめん」


梓『あ、その、えと…』


「上着、これしかないけど、よければ使って」ファサ


梓(あったかい…)


梓『ありがとう、ございます…//』


「ん、それじゃ出発するね」ブーン





キィ


「ついたよ、ここだ」ガチャ


梓『あ、はい。ありがとうございます』


「お、みんな集まってるなー」


\オツカレーッス!!!/


梓『うわあ…すごい。車がいっぱい』


「大丈夫?寒くない?」


梓『あ、大丈夫です!こ、この上着があるんで…//』


「ならよかった……あ、ちょっと待ってて!」タタタ


梓(……?)


タタタ


「はい、これ」


梓『あ…』


「ココアでよかったかな?身体あったまると思って」


梓『ありがとうございます。頂きます』


「ん」ニコ


梓(……!///)ドキッ


「…おっと、おいでなすった」


ヴォン‼ヴォンヴォン‼パーンパパパパパ!!!


梓『誰ですか?』


「ここの△峠を仕切ってる連中さ。…チームのリーダーとは昔の知り合いでね」


梓『へー…』


「最近有名になるにつれて、なにかと悪い噂がこっちまで耳に届いていて…そろそろ誰かがお灸をすえないと」


梓『悪い噂、ですか?』


「うん…あいつらと勝負するときはルールがあるんだ」


梓『ルール…』


「自分達のチームステッカーを賭けて勝負をするんだ」


「チームステッカーは走り屋にとっては大事なもの…それをあいつは負けた奴の目の前で切り裂いて自分の車に貼ってる」


梓『ええ!?』


「あいつなりの強さの表現なんだろう」


梓『え、あの、もしかして』


「ああ、想像してる通り。俺はいまからあいつらと一本勝負してくる」


「あいつらも負ければ少しは大人しくなるだろう…」


梓『そ、そう簡単な話ですかね?』


「…わからない。でもこのまま野放しにしとくのもなんだと思ってね」


「俺にはやらないきゃいけない理由があるんだ」






ヴォンヴォン


敵リーダー「久しぶりじゃねえか、元リーダーさんよ。遠いところからわざわざご苦労なことで」


「お前が□峠を去ってからなにしてるかと思っていたが…噂は聞いてるぞ。賭けのバトルなんてやめるんだ」


敵「お前からそんなこと言われる筋合いはねえよ」


「…お前はすこしやりすぎた。ここいらで杭を打たせてもらう」


敵「けっ、すかしやがって。前々からその態度が気に食わなかったんだ」


「…なんで、こんなこと始めたんだ?」


敵「……」


「なあ、戻ってこいよ。またあの日みたいに一緒に走ろう」


敵「…うるせえ。そのステッカーを俺の車に貼って恥を晒してやるぜ」


「…やれるもんならやってみろ」


敵「もうお前のケツを追っかけてる時の俺とは違う。□峠じゃあんたが速かったかもしれんが、ここじゃあ違う!俺が最速だ!」


敵「…一時間後にスタートだ。準備しとけ」






(あいつの車はミラージュ サイボーグ…車の性能は遥かにあっちのほうが上だがダウンヒルなら…後追いでプレッシャーをかけてミスを待つ)


「△峠は久しぶりだな…何本か走ってくるか」









梓(あ、戻ってきた…)


「一人にさせて悪かった。退屈じゃないかい?」


梓『いえ、大丈夫です』


「そしてこれから俺は練習してくるんだが…」


梓『本当に大丈夫ですよ。気を付けていってきてくださいね!』


「…ああ、ありがとう!」



ブォーン‼


梓(うわ、すごい…あんなに速くはしれるんだ)


キャリリリリ‼


梓(かっこいい…)








いちじかんご!


敵「ステッカーを切り裂く準備は出来たぜ」


「そっちも吠え面かく準備は済ませといたほうがいい」


敵「てめえ…」


雑魚「あ、車並べてくださーい」


敵「うるせえ!わかってんよ」ボォン‼


「………」ブォンブボボボボ


雑魚「…準備はいいか!?」


ボォン‼

ブォン‼


雑魚「5…4…3…2…1…」


雑魚「スタート!!」















敵「く、くそっ…!!」ドン!


「車は悪くない。無闇に殴るな」


敵「う…ぐ!あああ…!くそ!くそくそくそくそくそ!!!」


「悔しがるのは後にしろ。ステッカーを渡すんだ」


敵「……ッ」


「たしかに受け取った。…そして話がある」


敵「話…だと?」
















「ただいま」


梓『おかえりなさい!勝ちましたね!』


「運がよかっただけだよ」


梓『すごくかっこよかったです!』


「ありがとう。さてと、今日の仕事も終わったし…乗ってみるかい?」


梓『あ、隣にですか?乗ってみたいです!』


「いや、運転席にだよ」


梓『………』


梓『ふえ!?運転なんて、とてもとても!』


「ははは。別に速く走れって言ってるわけじゃないよ。ただ君に乗ってほしいと思って」


梓『い、いいんですか?』


「ああ。こいつも今日は調子が良い……女の子にはかっこいいところを見せたいらしいな」


梓『あはは// じゃ、じゃあ運転してみたいです』


「うん、行こうか」ガチャ







「そうそう、中々うまいじゃないか」


梓『ど、どうも//』


「こいつ、いい車なのに人気がないのが悲しくてさ」


梓『そうなんですか?すごく乗りやすいです』


梓『この車と一つになった気がして…すごく楽しいです』


「はは、それならよかった」


梓『…わ、わたしも!』


「ん?」


梓『私も、この車がほしいです!』


「嬉しいこと言ってくれるね。けどこの車なかなか台数がないんだよ」


梓『そ、そうなんですか』シュン


「見つけるのはなかなか難しいと思う…あ、それなら」


梓『…?』


「これがそのまま小さくなったような車があるんだ」


「名前はーー」









「とは言ったけど、本当に買うとは思わなかったよ。ミラの調子はどうだい?」


梓『…男さん、先週ミラを見に来るって言ってたのに来てくれないんですもん』


「ほんとに申し訳ない!色々やることがあって…」アセアセ


梓『えへへ。嘘です、怒ってません』


「会うたび、俺の扱い方に慣れていく梓ちゃんが怖いよ…」


梓『あはは!…―――ですもん』ボソ


「え?なに?」


梓『な、なんでもないです!』


梓『きょ、今日も△峠で走り方を教えてくれるんですよね?』


「あ、ああ。そうだよ」


店員「…なんでもいいけど、毎回俺の店を集合場所にするのやめてくれない?」


「いいだろ、減るもんじゃないし」


梓『本当は来てくれて嬉しいんですよね?』


店員「すっごい邪魔なんですけど!?」


梓『あはは』


店員「笑わない!」


「あはは」


店員「おいこら!」


店員「それに梓ちゃんも水くさいよなー、うちで買ってくれればよかったのに…」


梓『ここに頼もうかと思ったんですけど、親が知り合いのところで買えってうるさくて…ごめんなさい』


「ここ、作業適当だからやめて正解だったよ」


店員「営業妨害なんですけど!?」


店員「…あ、そういえば」


梓『どうしたんですか?』


店員「いや、男はあのこと梓ちゃんに言ったのか?」


「ああ、実はまだなんだ」


「先週はその準備で来れなくなってしまってね」


梓『…??』


「実は…」








ブォン‼キャリー

プァアアン‼ヴォン


「シャレード乗ってる時にも思ってたけど、どんどん上手くなってるね。もう基本で教えることはない。あとは自分で考えて、自分の車で走って、成長していくと思うよ」


梓『……』


「……梓ちゃん?」


梓『あ、はい!…ありがとうございます』


「……」


梓『……』


梓『ほんとにもう、走らないんですか?』


「…うん。今日で最後にする。生まれてくる娘のために辞めるって奥さんと約束したんだ」


梓『……』


「ごめん。もっと一緒に走っていたかったんだけど」


梓『謝ることないですよ。仕方がないですし…』


「梓ちゃんと出会って本当に楽しかった。でももうこうして会うことはないと思う。今日はお別れを言いにきたんだ」


梓『引っ越すんですもんね』


梓『…あの、私』


「ん?なんだい?」


キィィーキャリリリリ

ブォンブォン‼


梓『男さんのこと、すブォンブォン‼プァ‼した!!』


「え?ごめん、車の音でよく聞こえない!」


梓『なんでもないです!私、もう一本走ってきます!』ガチャバタン


「え!?い、いってらっしゃい!」


ブォンブォン


梓『』ポロポロ


梓『うえええええん』ポロポロ


それから私は毎日、ミラと走りました。


あの人を忘れるためじゃなく、思い出さないように車に没頭することに決めたのです。


△峠にも、店員さんのお店にもずっと顔を出していません。


『あの事は最初からなかった』

そう自分に言い聞かせましたが、霧の中にいるような、そんな感覚は消えなかったのです。



ーーーーーー



梓(見事に思いだしちゃったなあ…)ス-


梓(…やば、ちょっと泣きそう)フー


梓「ああ、だめだめ。久しぶりにビーノでドライブいこっ」スクッ




トペペペペ


梓(原付は楽だなあ。あんまメンテしなくても走るもんなあー)


トペペペペ


梓(どこ行こう…)


トペペペペ


梓(あ…いつの間にか店員さんのショップの近く来ちゃってた…)


梓(も、戻ろう…)


トペペペペ


梓(……!!)


梓(いま…駐車場にデトマソが見えた…)


梓(………っ)


梓(帰ろう…)


トペペペペ








しゅうまつ!


澪「やっぱり梓は来ないよな…」


唯「一応誘ったけど、返信なくって…」


和「残念ね…。今日は梓ちゃんの代わりに私が色々教えてあげるわ」


唯「…うん!」


澪「いつでも戻って来られてもいいように、上手くなってびっくりさせてやろう!」


唯「そうだね!あずにゃんより速くなってやるぞー!」


和「そ、それは無理だと思うけど…」


唯「むー!和ちゃん、それはその場のノリだよぉ!」


澪「梓より速くなるのは別として、速く走るためにどうするかを聞いてみたいな」


和「走り方ってこと?」


澪「そうそう。ヒール アンド トウも会社までの行き帰りで練習したから自信あるぞ!」


和「ヒール アンド トウに関わってくるのがエンジンブレーキなのは言ったかしら?」


唯「エンジンブレーキ?普通のブレーキとは違うの?」


和「アクセルを離したりギアを落とすことでエンジンで止まる力が働くの」


和「アクセルを離すということはエンジンが動きを止めるってこと。

空気が入ってこなくなるから燃えなくなって必然的にピストンの動きが止まってタイヤが回りにくくなる=結果的にスピードも落ちるってわけ」


和「注射器をイメージすると早いわ。注射器の先に指をつけて引っ張ると中々ひっぱれないでしょ?」


唯「うん、理科の時、そうやって遊んでたからわかる!」


澪「なんとなく想像できるな…」


唯「でもピストンってなぁに?注射器と関係あるの?」


和「やっぱりその説明もほしいのね…」


澪「わ、私はわかってるぞ!」


澪「ああ、その前に。ギアが低いとエンジンブレーキは強くなるよな?」


和「そうよ。それはギアの大きさが関係していて1速は一番大きいギアで力が強いけど回転数が少ない。その逆に5速(6速など)は一番小さいギアで回転が速いってわけなんだけど」


澪「ギアを落とすと強制的に回転数が制御されて、それで止まろうとする力も大きくなるってことだよね?」


唯「うー。よくわかんない」


和「たとえばギアが1分間に1000回転してるとするわね?

1分間で1000回転できる小さいギアから、700回転くらいしか回転できない大きなギアに変えたら強制的に700回転まで下げられるからスピードも下がるのよ」


唯「そっか!ギアもそれぞれここまでしか回らないよ!ってあるもんね」


澪「それがレッドゾーンってやつだな」


唯「そのエンジンブレーキは速く走るために必要なの?」


澪「コーナー手前とかの減速で使うんじゃないのか?」


和「残念ながらその逆よ。基本スポーツ走行は極端にいうと全開と全制動の繰り返しだから」


和「アクセルを踏んでない時はブレーキを踏んでいる時。つまりエンジンブレーキの状態は極力つくらないこと」


和「そこを勘違いする人が多いのよ。ヒール アンド トウはスピードを落とすためにするんじゃなくて、コーナーの立ち上がりをよくするためだしね」


唯「あ!じゃあじゃあ、和ちゃんの運転を横でちゃんと見てみたい!」


澪「わ、私も!」


和「そうね。言葉だけじゃなんだし、乗りながら説明するわ」


和「でもその前に唯にはエンジンはどうやって動いてるか説明しないとね」


唯「よろしくお願いします!」


和「4サイクルガソリンエンジンっていって「吸気・圧縮・燃焼・排気」の4つ行程あるの」


唯「ふむふむ」


和「これは一言で説明するのは難しいわね…スマホで画像検索しながら説明するわ」


唯「助かるよ~♪」


和「まず使う各々の名称ね…エンジンは大まかに言えばシリンダー、カム、ロッカーアーム、吸気バルブ、排気バルブ、バルブスプリング、ピストン、クランクシャフト、プラグを使って運動してるの」


唯「ち、ちんぷんかんぷんだよ!」


和「ほら、この画像よ」


唯「み、見てもちんぷんかんぷんだよ!」


澪「カムはこれ。卵みたいな形してるやつ」


和「正解。まず吸気側のカムが回ってロッカーアームを押して吸気バルブか開くの。はい、画像」


唯「おー!これね!えーと、つまり…カムのとんがってるほうがロッカーアームを押してスプリングも押されて…えっと、バルブが開いて混合気が吸気されるってこと?」


和「逆に排気側はカム山が低い状態だから排気バルブは開かないの」


澪「筒状のシリンダーの中でピストンが上がってきて混合気を圧縮して、プラグが火花をとばすんだよな」


和「そうそう。混合気が爆発して、その勢いでピストンを下に押し戻すの」


唯「あ!それでクランクシャフトがくるくる回ってるんだ!」


澪「お、自分のスマホで調べだした」


唯「動いてる画像みつけたよ!」


和「じゃあそれを見ながら聞いて。そして今度は排気側のカムが回って排気バルブを開いてマフラーから外に排気するってわけ」


唯「なるほどー。エンジンってすごいなあ」


和「簡単に説明したけど、この4行程を繰り返してエンジンっていうのは動いてるの」


唯「私、もっともっと車のこと知りたくなったよ!」


和「それはよかった。じゃあ次は…」






ヴォヴォヴォヴォヴォヴォ

ヴォーーン


唯「今度は速い走り方についてだね!」


和「うーん、なにから言ったらいいかしら…」


和「そうね、アウト・イン・アウトの話からしましょう。速く走るためには基本のことだから」


和「まず曲がるコーナーに対して道幅の一番遠いところから進入するの。これが最初のアウトね」


和「そしてコーナーの中間あたりで一番内側に寄っていくの」


唯「それがインだね!」


澪「その一番内側の所をクリッピング・ポイントって言うんだよな!」


和「ふふ、理解がはやくて助かるわ。そしてコーナー終盤は自然に外側にふくらんでいくわ。これが最後のアウト」


和「とりあえずやってみるから見てて」ヴォーーン


和「まず左側によってアウトから進入。」


和「少し減速してブレーキをゆっくり離しながら内側に寄っていって、ここでシフトダウン」ヴォン


和「ハンドルをきってコーナーの出口あたりでアクセル全開」ブォーン


澪「おお、綺麗に曲がっていくもんなんだな」


唯「いまはゆっくり見せてくれてるけど、この動作を速いスピードでやるのは難しそう…」


和「そこは慣れね。ここで気を付けてほしいのがブレーキをギリギリまで遅らせないこと」


唯「どうして?ギリギリまで突っ込んだほうが速くない?」


和「ただスピードを出して度胸ばかりある走りは遅くなるだけよ。しっかり減速しっかり加速、これが速く走るためのコツね」


和「それにブレーキの意味はスピードを落とすだけじゃなくて減速に使ってたタイヤのグリップを今度は曲げる方向の力に変えてあげるためなの」


唯「アクセル踏みながらじゃだめなの?」


澪「アンダーがでて事故るぞ…」


和「ブレーキを戻す時が一番まがりやすい状況なのよ」


唯「ええ…な、なんで?」


和「ブレーキを踏むと体が前のめりになるわよね?」


唯「うん、そうだね」


和「その逆でアクセルを踏むと体がシートに押し付けられるわよね?」


和「あとはハンドルを左右に動かすと体も左右に揺れるでしょ?それを荷重っていうの」


唯「へー」


和「正確には荷重移動っていんだけど…何て言えばいいかしら」


唯「かじゅう…果物?」


和「言うと思った…」


澪「こう書くんだよ」スマホチラッ


唯「荷重…これがなんなのー?」


和「タイヤにかかる重さ、といったほうが早いわね」


和「前、後ろ、左右、4つのタイヤにどれだけ車体の重さがかかってるか、そしてどれだけ荷重を移動させるか、これが大事になってくるわ」


澪「ようするにタイヤは押し付けられて、グリップが強くなるってことだよな?」


和「そう!コーナー手前でブレーキを踏んで荷重を前輪に移動させることで前輪のグリップをあげて曲がりやすいようにするってこと」


唯「なるほど!だからブレーキ踏んだ直後が曲がりやすいんだ!」


和「わかってくれて嬉しいわ。ほんとに簡単な説明で悪いけど自分で調べることも大事だから」


唯「うん!ちゃんと調べてみるよ!」


澪「な、なんか私も走りたくなってきた!和、駐車場に戻ってくれ!」


唯「私も私も!」


和「はいはい、わかったから」クスクス







唯(コーナー手前…この辺かな?)キィィーンガコッキャリー


唯「うわっととと!!」


唯「し、しぬかと思った…まだブレーキが遅いのかな?」


唯「もっかい!」キュィィーン!







澪(荷重を意識して…)ガコッ


澪(内側による…)クイックイッ


澪(シフトダウンして…)ブン!


澪(アクセル全開…)ブーーン!


澪(うんうん!いけてるいけてる!)







唯「ふいい~…ちょっと走っただけなのに疲れたー」


澪「やっぱり緊張して変な力がはいっちゃうな…」


和「お疲れ様。はい、ジュース」


唯「わーい、ありがとー♪」


澪「ありがとう」


唯「…あ、そういえばブレーキを思いっきり踏むとタイヤがおかしいんだけど、壊れてるのかな?」


和「え?ABSが作動してるんじゃない?」


唯「えーびーえす?」


和「アンチロック・ブレーキ・システムの略よ。あれ?でもヴィヴィオにABSなんてついてなかったような…」


唯「その、あんち…しすてむ?ってなに?」


和「アンチロック・ブレーキ・システム。一回で覚えなさい」


唯「えへへ~」


和「急ブレーキとか路面が凍ってる時とかにタイヤのロックを軽減してくれるシステムのことよ」


和「1度タイヤがロックして滑り始めると、ステアリング操作が効かなくなって制御不能になってしまうの」


唯「おおう、それは怖いね…」


和「これを防ぐためにブレーキを一気に踏み込むんじゃなくて徐々に踏み込み、


滑り始めたら少し緩めて再び踏み込む動作を繰り返すポンピングブレーキっていうのがあるんだけど、


この動作をコンピュータ制御により自動化したものがABSってわけ」


澪「…調べてみたら、当時ヴィヴィオはオプションでABSつけられたらしいけど、つける人はあんまり居なかったみたいだな」


唯「ええ!?そんな大事な機能がヴィヴィオにはないの!?」


和「古い車はしょうがないのよ…」


唯「じゃあポンピングブレーキしながら走るといいの?」


和「うーん、一概には言えないわね。それよりもロックするギリギリのところをコントロールするほうが速く走れると思うわ」


唯「うええ!そんなの出来ないよ!」


和「慣れとしかいいようがないわね…何度も走って感覚をつかむといいわ」


唯「ううー…私もっかい走ってくる!」


和「ふふ、いってらっしゃい」







唯「ほっ!よっ!」クィッキャリー


唯「わっとと!」


唯「うー!難しいー!」


キュイィィーーン


澪「唯、熱心だな」


和「最初はあのくらい走ったほうがいいのよ」


澪「…私もいってこようかな」


和「私はそろそろ帰るわ。明日も仕事だし」


澪「あ、そうだよな。じゃあみんなで帰るか?」


和「澪も練習するんでしょ?それに唯、ああなると中々帰らないとおもうし」


澪「それもそうかも…」


和「唯1人だとなにかと心配だから澪がいてくれると安心して帰れるわ」


澪「で、でもなにかトラブったりしたらどうすればいい?」


和「そういうときに交流を深めるのよ」


澪「ええ!?わ、私にはムリダ…」


和「ほとんどはいい人たちだと思うから、大丈夫だと思うけど」


ワハハ イケイケー

ブォン‼ブォン‼


澪「うう、わかったよ…大丈夫だとおもう」


和「うん。それじゃあ私は帰るわね」


澪「ああ、じゃあな。お疲れ様」


和「お疲れ様。唯にも言っておいて」


ヴォヴォヴォ ヴォーーン


澪「…私も走ってこよ」ササッ







唯(なんとなくロックするところがわかってきたかも…!)キュイィィーーン


唯(これでー、どうだ!)クィッ


唯(っとと。でもさっきより安定してるかも!スピードだしすぎちゃうと焦って操作があたふたしちゃうし…)


唯(ブレーキ遅らせることがこんなにも怖いなんて…そんな状況で車をコントロールできるわけないよね…)


唯(しっかり減速しっかり加速の意味!わかってきたよ!)キュイィィーーン‼











澪「ふう!今日は成長した気がするな!」


唯「うんうん!前よりずっと速く走れるようになったね!」


澪「いやあ、こんなに走るってことが楽しいなんて思わなかったな」


唯「ほんとほんとー。ずっと走ってたいけど今日はもうガソリンないから帰ろ」


澪「そうだな。私もすっからかんなんだ」


唯「澪ちゃんは来週またくる?」


澪「ああ!また来週な!」






梓「おつかれさまでしたー」


オツカレー マタネー


トペペペペ

梓(仕事つかれた…帰って寝たい)


梓(…あ、そういえばお母さんにおつかい頼まれてたんだった)


梓(めんどくさいけど、行かないとなあ…)


トペペペペ


梓(やっと着いた…)


梓(って、ええ!?売り切れ?)


梓(えー…じゃあどうしよ)プルルル


梓「…あ、お母さん?売り切れだけどどうする?」


梓「…えー。じゃあ一軒だけだよ?」


梓「…うん。そこになかったら今日は帰るからね」


梓(あれ…でもあの店ってたしか)



トペペペペ

梓(…やっぱりだ)


梓(店員さんのショップの近くだったよね…)


梓(見ないみない…)トペペペペ


梓(……)チラッ


梓(…あ)


梓(また…停まってた…)


梓(見てない見てない!)トペペペペ



シャセー


梓(あ、あった!)


梓(寝たいし早く買って帰ろ)


梓「あ、あと…タバコで82番ひとつ」


アリャシター


トペペペペ

梓(………)


梓(あ。違う道いけばよかった)


梓(いいやもう…)トペペペペ


梓(お店、見えてきた)


梓(………!!!)


梓(シャレードにナンバーついてなかった…)


梓(……)チッカチッカ


梓(………気になってついお店に入ってしまった)


梓(や、やっぱり帰ろう)


「ちょ、ちょっと待って!」


梓「えっ」


店員「あ、梓ちゃんだよね!?帰らないで!」


梓「あ、えと、その、」


店員「ひ、久しぶりだね」


梓「あ、はい…久しぶり、です…」


店員「ちょっとお茶でも飲んでかない?」


梓「じゃ、じゃあちょっとだけ…」


店員「うん。よかった。じゃあ事務所に」


梓「お邪魔します」


店員「……」


梓「……」


店員・梓「あ、あの!」


店員・梓「お、お先にどうぞ!」


店員・梓「……」


梓「えと…あそこのデトマソって」


店員「俺もそれを言おうとしてたんだ」


梓「や、やっぱり男さん、結婚して手放しちゃったんですね」


梓「いい車なのに、もったいないなあ」


梓「ずっと乗る!とか言ってたのに、いい加減だなあ、あはは」


店員「…そのことなんだけど」


梓「お、男さん、もうここには来てないんですか?」


店員「……」


梓「きっと毎日ラブラブで店員さん、かまってもらえなくて寂しかったりして!」


店員「……だんだ」


梓「なんですか?」


店員「あいつは、死んだんだ」





梓「………え?」









店員「2ヶ月前、仕事の現場で事故にあって…即死だった」


店員「それで奥さんからあのシャレードを引き取ってほしいと電話があった」


店員「元々俺があいつに奥さん紹介したから顔馴染みってのもあって俺に頼んできたんだ」


店員「奥さんからはあの人を思い出してしまうから家に置いておくのが辛い。なので処理はまかせるって電話でね」


店員「受け取ったのはいいが、俺もどうしようか迷ってて…」


店員「…いまにでもシャレードからあいつが降りてきそうでさ」


店員「俺にとっても思い出の車だし…廃車にはしたくない」


梓「…売るんですか?」


店員「それもどうしようかと…知らないやつに乗られるのは嫌なんだ」


梓「そう、ですか…」


店員「…梓ちゃん、ミラはどうしたの?」


梓「え…」


店員「ビーノで来てたけど…ミラは?」


梓「じ、実は…かくかくしかじか」


店員「そんなことが…残念だったね」


梓「私が悪いんです。もう走るのもやめようかとおもって…」


店員「え、やめるの?」


梓「はい…。もうあんな思いはしたくないなって」


店員「……提案がある」


梓「提案?」


店員「いや頼みがある」


店員「梓ちゃん。シャレードに乗ってくれないか?」


梓「…え?」


店員「事故があってからこんなこと頼むのは身勝手かもしれないが…」


店員「これも何かの運命というか、なんていうか…」


梓「………」


店員「あいつの代わりにこのシャレードに乗ってほしい」


梓「…」


店員「こいつ、まだ走りたがってるんだ…俺にはわかる」


店員「たのむ!…こいつのためにも男のためにも乗ってくれないか?」


梓「きゅ、急にいわれても…」


店員「返事はいつでもいい。いつでも乗れるようにメンテはしておくから」


梓「…わかりました。すこし考えさせてください」


店員「…わかった」


梓「それじゃあ…」


店員「ああ。"また"」



トペペペペ


梓(私があのシャレードに…?)


梓(…無理だよ、そんなの)








なかのけ!


カチッシュボ


梓(……うまい)フー


梓(シャレードか…)


『梓ちゃん』


梓(また、思いだしちゃってる…)


『乗りこなすの早いね!センスあるよ』


梓(男、さん…)ポロッ


『梓ちゃんはもっと速くなるよ。俺が保証する!』


梓(男さん…男さん…)ポロポロ


『また一緒に走ろう、梓ちゃん』


梓(……!)


梓(一緒に…走る…)


『こいつも梓ちゃんと走りたがってるから』


梓(………)









しゅうまつ!


澪「今週も梓は来ない、か…」


唯「来るって返信あったんだけどな…」


和「しょうがないわよ。すぐすぐ立ち直れないわ」


唯「うん…」


澪「気を取り直して今日も走ろう!」


和「そうね。なんだか先週は成長したみたいだし」


唯「そうなんだよ!スムーズに安定してコーナーに入れるようになった!」


澪「私もブレーキポイントわかってきたぞ!」


和「楽しみだわ…ってあれ?」


澪「どうしたんだ?」


和「いや、見たことない車だなって」


唯「んーどれどれー?」


和「あれよ。車種はなにかしら…」


澪「あの青のハッチバックのやつか?」


和「え、ええ。見たことなくて」


唯「うわー!かっこいいねー!」


ブォンフブォンフ


キキィ


和「あ、あれ?」


ガチャ


唯「あ、あ、」


唯「あずにゃん!!」


梓「こ、こんばんは」


唯「あずにゃん!あずにゃん!」ギュー


梓「もう…唯先輩ったら」


唯「だって…走るのやめるって…ええ?」


梓「ちょっと色々ありまして」


澪「この車は買ったのか?」


梓「いえ。…受け取ったんです」


和「受け取った?」


梓「はい!」




梓「この子が一緒に走ろうって言ってくれたんです」ニコ



2部 完





後書き

2部はこれで終わりです。
ぐたぐたしてて申し訳です。でも続けます。
3部も読んでくれたら嬉しいです


このSSへの評価

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SS好きの名無しさんから
2019-02-09 11:41:56

せれねさんから
2015-07-27 23:39:55

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せれねさんから
2015-07-27 23:39:55

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1: せれね 2015-07-27 23:41:00 ID: Lo3Z8Mmt

面白いし勉強にもなります!
第3部待ってます!


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