2015-07-25 10:53:14 更新

概要

モブリットさんの切ない片想い。


前書き

モブリットの過去捏造です。
重症でもハンジさんを見つめるモブリットさんが切なすぎて…





俺の上官は少し変わっている。

「モブリットー!なんで起こしてくれなかったのさ!」

「あなた分隊長ですよね?自分で起きましょう!」

「冷たいなぁ…」


いや、ここまでは許容範囲なのだけど。


「おはよう、アルベルト!おはよう、チカチローニ!会いたかったよーーーー!!」

「分隊長下がってください!!」

アルベルト、チカチローニ。

彼らは人間ではない。

人間の天敵のはずの━━━━━

巨人である。

「今日はちょっと痛いかもしれないよ…耐えるんだ、二人共!」

彼女は、巨人を前にしてとても陽気だ。

一切の恐怖心を感じさせない。

「ごめんよぉーーーーッ!」

でも、ブレードを持った手元に迷いは無い。



━━━何故貴方は、巨人に対し愛を感じるのですか?

副長になったばかりの頃、俺はすぐにハンジさんに聞いた。うん、人を頼るという事をしてみたかったからだ。

開拓地で孤児として暮らした過去があり、人を頼るのが怖かった。


「愛?」


無表情に固まったハンジさんの顔は、普段の笑顔からは想像がつかなかった。

「私が愛を感じているとでも思ったか」

乱雑に書類の置かれたデスクにつかつかと歩み寄り、手で払う。

書類が宙を舞う。

死亡報告書、始末書、実験報告書…

すべてを拾い、たんたんと角を揃えると、分隊長は笑顔を見せてくれた。

でも、その目は虚ろで。

「殺したいほど憎いよ」

「でもね…いくら仲間を喰われたとしても、憎しみを原動力に巨人を駆逐するのは…何十年も、試されてきたんだ。」

ごくり、と生唾を呑み込む。

「私だって少し前までそうだった。狂ってた。ある日のことだった…巨人の生首蹴り飛ばしてやったの。軽かったんだ…異常に。部下思いの英雄と出会って、それから本当に狂った。」

「愛を感じているように振舞うことで、溢れる殺意を畳んで、仕舞って置いているんだよ」

そして、いつもの咲くような笑顔に戻って。

「私の巨人への愛は、殺意と表裏一体なんだよ?」


「…そう、なんですか…」


「モブリット…?ごめんよぉ、怖い話して。まだ新兵だってのに。」

「いえ!」

右腕の拳を、心臓に叩きつける。

━━心臓を捧げよ━━

「私の心臓は、もう公と貴方の物です」

一気に、分隊長のレンズ越しの瞳が開く。

「…ありがとう」

わしゃわしゃ頭を撫でられる。

背伸びした貴方が、愛しくて…

きっと、この時だ。

俺がハンジ分隊長を、永遠に、守りたいと思ったのは。



「あんた何徹目ですか?!もう寝てください!」

「むにゃぁ…アルベルトの報告書が、まだぁ…」

「私がやっておきます!」

「モブリットぉ…」

書類を抱えて歩き出すと、脚のベルトを掴まれた。

「ハンジさんのお悩みを聞ぃておくれぇ~」

「…分かりました。その代わり、ベッドに寝てくださいッ!」

「ベッドどこぉ〜」

……本の山に埋もれてる。

避けて、積んで、避けて。

「ありましたよ、ベッド」

「ふにゃあ…」

のそのそと這い上がる。

そして、メガネを外す。

メガネ外すと可愛いんだよなぁ…


「アルベルトとねぇ…チカチローニを殺しちゃってねぇ…わたし、元気でなくて…リヴァイのお部屋に突撃したのぉ…」

俺でも良かったんですよ?と、思う。気が滅入ったときは、いつも分隊長は兵長の部屋に行ってしまう。

「リヴァイ…紅茶、出してくれてね。ずっと話を聞いてくれたの。いつもは逃げられんのに━」

すん、と鼻を啜る。なんであんたそんな可愛んですか。

「それでハンジさん、気付いちゃったの…」

予想がついた。聞きたくない。耳を塞ぎたい━━━

「私は、リヴァイの事が…好きなのかもしれないね」

やっぱり━━━━━━


「あの壁外調査の時から、ね。鈍感すぎるよ、私…」

ホントですよ。鈍感すぎますよ。

俺の事、気付いてくださいよ。

伝えない俺が悪いのか?


「これからハンジさんはどうしたらいいんだい?」

「…なんで」

きょとん、と見つめてくるカラメル色の瞳から、視線を外す。

「…俺に、聞くんですか…」

本の山を簡単に通り抜け、ドアノブを引っ掴んでガチャっと回す。

「モブリット?」

俺の名前を呼ばないでください。

その瞳で見つめないでください。

もう、これ以上…

俺を、追い詰めないでください。

「…相談は終わりです。」

その声は、自分でも判るくらい掠れていて。

顔を見せないように、自分の部屋に逃げた。



気付いてない、振りをしていた。

貴方は無自覚でも。

兵長に対する貴方の視線は…

俺と、そっくりだったから。


「分隊長…」

分隊長、ともう一度呟く。 


伝えるべきか、否か。

今なら、貴方を取り戻せる。

まだ、貴方が兵長に伝えていない、今なら…

いや、貴方が望むのは、兵長だ。

俺はただの副官、だから。

女々しいな、俺。

こんなことで悩むなんて、な。




「おはようモブリット!」

「おはようございます、分隊長。」

━━あれから数ヶ月。

分隊長は依然として、気持ちを伝えていない。

俺は、さり気無い形で兵長と分隊長の仲を深めようとしている。

「今日も張り切って壁外調査だ!兵舎に帰るまでが壁外調査です!」

貴方の明るい笑顔に、束の間の安心を覚える。

「そろそろですよ?行きましょうか、分隊長。」

「逝かないようにね?ふふふっ。」

全く、冗談じゃありません。




「ハンジはどこだ…?」

「兵長!それが、見当たりません!何やってんですか分隊長…」

分隊長が行方不明。

何度も経験したが、これは壁外の出来事。もし何かあれば、俺の責任だ。

「…っ!ハンジさん!ハンジ・ゾエ!返事をして下さい!」

「おい、モブリット!」

ハンジさんを、失いたくない。

貴方の名前を叫ぶ。

貴方を探し、飛ぶ。

ハンジ・ゾエ…神の恵み、そして命。

貴方にピッタリだ。


捨て切れていなかった。

貴方への気持ち。

貴方が望むのは俺じゃないと知っても。

やっぱり、貴女が心配で、大切で、愛しい。


「…ッ?!」

ワイヤーを掴まれ、宙にぶら下げられた貴方。

このままでは、喰われる。

「ハンジ分隊長!!!!」

巨人の注意を十二分に引き、視線を分隊長から外す。くるりとうなじに回り、殺る。貴方が落下するその前に。

その身体を、抱き締める。


「?モブリット?!苦しい!離してくれー!」

「分隊長、分隊長…」

「ぐるじいー!離せー!」

慌てて離す。

「ごめんなさい」

「…ッ」

血塗れのポニーテール。

血のこびりついたゴーグル。

「怖かったですよ…」

「よかった…貴方は、人類の…」


俺の記憶はそこで途切れた。


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2019-06-14 11:34:34

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