2015-07-25 11:15:38 更新

概要

モブ→ハン→リヴァ↔ペト
      ┗━━━━┛
        ↑の話。


前書き

モブリット「大事な片翼ですから」
↑の続きです。
ハンジ分隊長の恋する兵長の大人の両想いです。
前の話を読んでいると面白いと思います。


翼を支えたい



「兵長!」

「なんだ、ペトラか」

「どこに居るのかと思ったら…」

ぷりぷり怒っているのは部下のペトラである。

「黙れ。モブリットとハンジが起きるじゃねえか」

「ッ…!」

口を手で抑えなくてもいい。

目の前でスヤスヤと二人は眠る。

こいつらデキてんのか。

「…むにゃ、ハンジ、さん…」

奇行種には勿体無い部下である。

「…んにゃ?!」

奇行種が起きた。

「ええと、モブリットは?」

「てめえを心配して倒れたんだぞ?黙れ」

慌ててメガネを掴み取り、モブリットを見つめる。真っ直ぐな、カラメル色の瞳で。

「ごめんなさい、モブリット…」


✧✧✧


うう、寒い。

冷たい調査兵団兵舎の廊下を走る。

兵長、兵長、兵長。


壁外調査から帰ってきて、2日目のことだった。

「兵長がいらっしゃらねぇ!」

声を上げたのはオルオ。

「うるさい、オルオ!で、兵長は?」

「いらっしゃらねぇって言っただろうが、話を聞け…」

こんな時に至って真似を続けるオルオを蹴ってから、走りだした。

まさか。

兵長は死んでなんかいない。

…士気を下げるのを防ぐため話されていない?

…仲間の身代わりに?

…死んではいなくても、大怪我とか?

最悪の事態が脳裏をよぎる。


「兵長!」


✧✧✧


気が付いたモブリットは、ハンジに土下座。

ハンジもモブリットに土下座。

医務室での土下座大会が始まった。

「ごめんなさい!」

「すみません!」

「…」

「やめてください…」

ペトラの声が耳に入っていない。

「…お前等。その汚え減らず口を閉じて、汚え身体を洗って来い」

「「っひゃい!」」

ドタバタと風呂に追い出す。 


ペトラが肩を叩く。

「…兵長、あのお二方は付き合っているとお思いですか?」

「…あ?お前はどう思う、ペトラ」

「私ですか?私は、上司部下以上、恋人未満、というふうに見えますね。」

ふふふっ。と花が咲くように笑った。

小麦色の髪が揺れる。

「…そうだな。さっさとくっつけばいい。じれってぇ」

「?!」

ペトラの手が止まる。

「…兵長も、恋愛とか興味あるんですね」

「する方はねぇ」

女を作る気にはならない。

自分より大切な人ができてしまったら、選択を間違うことは許されない。約束を果たせないかもしれない。人類の為にそいつを切り捨てることになるかも知れない。でも、そいつを失うのは怖い。

「…死人を見るのは、もう沢山だ。」

「…?」

肩を労るように叩き続けるペトラの手を握った。

「お前も大切な人が出来たなら…生きてる間に…伝えておけ」

「…分かりました。兵長も、ですよ?」

道端の花のような、切ない笑顔だった。


✧✧✧


うは。手、握られちゃった。洗いたくない…

でも兵長に怒られるな。

『お前も大切な人が出来たなら…生きてる間に…伝えておけ』

思わせ振りな態度取らないでください…

私の大切な人、貴方なんですよ?

…でも。調査兵団に入った以上、命の保障はない。ハンジさんから聞いた。

『リヴァイさあ…マントの自由の翼の裏に、戦死者の名前刺繍してんのよ。部屋にも、拡大版のタペストリー飾ってて…

ほんとにあいつは、死んだ奴らの名前を背負ってんだなぁ。』

貴方は、背負ってしまうから。

私と変わんないくらいの背中には重すぎる、たくさんの名前。“人類最強“の名。

兵長の責任。

全部背負ってしまうから…

その上におぶさることなんて、出来ない。

私は。貴方の横でその重い翼を、半分でも支えたいだけなんです。


「おはようございます、兵長!」

また、アールグレイで朝が始まる。


✧✧✧


ベッドにぶっ倒れた。眠い。

いろんな記憶が、表れては消える。

人間の死に顔が、現れては消える。


…もう 疲れた


人類最強なら、何故誰も救えない。

何故巨人を駆逐出来ない。

何故誰も守れない。


人類最強なんて嘘っぱちだ。


お前を守れないのが、怖い。

ペトラ。



✧✧✧


今、兵長のドアの前にいます。

深呼吸。ふー。

やっぱり、伝えなきゃ。生きてる間に。


ガチャ


ん?!


ゴンッ


額に鈍い痛み。うう。

「ペトラ…?」

あ、兵長の目が一瞬三白眼から四白眼になった。

「大変申し訳ありません!」

土下座だ土下座。怖い…

「ペトラ」

へ…?

「立て」

「ひゃい!」

こけた。踏ん張って、立つ。

「…ペトラ。俺の大切な人を当てろ」

「えっ…?えっ?」

「ペ…トラだ」

どこぞの少女漫画━━?

少女漫画ならこのままキス。しかし、兵長は俯いて震えていた。表情は見えない。

「へい、ちょ?」

「怖い…」

涙を堪えていることにやっと気付く。

「お前を…俺の選択で…殺したくねぇ…怖い…だから」

「大切にしたら…もっと辛れぇよ」


私だってそうですよ、兵長。

「兵長」

きゅっと、硬いけれど崩れそうな身体を抱きしめた。

「やめろ」

「兵長」

「兵長!!」

ダメだ。私が、貴方が

壊れてしまう。

「その翼を半分貸してください」

「なんだ」

「貴方は、背負い過ぎです。」

「当たり前だろうが、人類最強は」

自嘲気味に笑う貴方。

「そんな無理しないで下さい。」

私が苦しい。

「やめろ、ペトラ…」




ファーランやイザベルが死んで、調査兵団にちゃんと入団して。

俺は、どれだけの約束を破って

どれだけの信頼を裏切って

何人の兵士を見殺しにしたんだ。

「俺は、愛される資格がねぇんだ」

「愛なんてもんは与えた事も与えられた事もねぇ」

ガキの頃母さんが死んで、なんだか知らねえケニーに育てられた。

そのケニーにも捨てられて、ゴロツキで生きて。

愛される資格がない。

その言葉は何度も咀嚼して、反芻して、身体に染み込ませた。

「そんな事無いですよ」

「…ありがとう、ペトラ」

ぴしゃり。

ドアを、閉めてしまった。


後書き

大人の恋愛って難しい!


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SS好きの名無しさんから
2018-12-23 23:48:25

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2015-08-15 10:26:51

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2018-12-23 23:48:27

SS好きの名無しさんから
2015-08-15 10:26:57

このSSへのコメント

1件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2016-02-22 22:32:41 ID: rGEdbcZx

切ない…!


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