2015-08-24 21:21:54 更新

概要

提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です

注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
長い
EXパートは思いつき小ネタです


前書き

21回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね

それではこの番組は

菊月「おお、見ろ長月。この骸骨しゃべるぞ。偉そうだなっ」(←テレビ見てる
長月「ま、しゃべるだろう…骸骨くらい」(←お茶飲みながら
大鳳「なぁに?最近はこういうのが流行っているの?」
皐月「まさか、司令官の趣味だよ」
夕張「人気があるってのは間違っても無いともうけどね…」(←実況中

提督「金剛にもこれをやろう」(←指輪持ってる
金剛「何を、でしょう?…よっしゃぁぁっ!」(←指輪受け取ってガッツポーズ

多摩「で、あれは何にゃ?」
北上「ごっこ遊びらしーよー、詳しくはしんないけど」
大井「毎度毎度…」
木曾「子供かっての…」

文月「UDK♪」
睦月「はいっ♪」
文月「UDK♪」
如月「はいっ♪」
卯月「UMAじゃないよー、う・づ・き♪」

三日月「どうしよう、望月。Uしか合ってない」
望月「ほっときなよ…」

球磨「瑞鳳…さっさと始めるクマ」
瑞鳳「そうね…」
弥生「はい、おしまい…」

もろもろのメンバーでお送りします


↑前「提督と木曾さん」

↑後「提督と肝試し」



提督と夏休み


ー執務室ー


開かれたカーテン、窓から差し込む陽の光

ソファーの上で寝ていた提督と望月が、朝の光から逃げ出すように布団を頭からかぶり直した


皐月「ま、いつもの事だけどさ…」

三日月「あははは…」


呆れる皐月と苦笑する三日月


皐月「けど今日は。いつものボクとは違うよ、三日月?」

三日月「うん」


ぴこっ♪

ありきたりな電子音

皐月の合図を受けた三日月が、エアコンのボタンを操作する

三日月からの指令を受けて、低く唸っていた機械音が止まった

動いているうちは気にもならなかったけれど、こうして止まってみれば静かなものだった


皐月「最後はこうして…」


窓を開いてみれば、朝の風がどっと室内に押し寄せて

部屋の中に溜まった冷気を根こそぎ掻き出していった

夏とはいえ朝の空気だ,、それ相応に涼しくはある


「すぅ~はぁ~…」


皐月と三日月、2人で深呼吸

清々しい空気が体中に行き渡ると

体の隅に残っていた眠気を攫っていった


皐月「それじゃ、今日も頑張ろうね三日月」

三日月「うん」


2人で小さく微笑み合うと、仕事に取り掛かる


「…」

しばらくして、もぞもぞ と丸くなっていた布団が動く

皐月達が仕事を初めて、小一時間はたったろうか

すでに、エアコンが生み出した冷気は霧散し

変わりにと、夏の空気が部屋を満たす

暑くて湿った日本の夏。そんな空気が部屋中に纏わり付いていた


「…あちぃ…」

程なくして、2つの布団の塊から生物が顔をだした


皐月「おはよ、司令官」

三日月「おはよう、望月」


「ぐるるるる…」

夏の空気とは正反対に、涼し気な顔で「おはよう」などと口にする2人

そんな2人に恨みがましい視線が向けられはするものの

そんなもの何処吹く風といった様子の、皐月と三日月だった




そんな夏の朝

完全に布団を蹴っ飛ばし、暑さにやられた望月と提督がソファーで伸びていると


金剛「さまぁぁぁぁぁっ!」(←1カメ

金剛「しぃぃぃずんっ!!」(←2カメ

金剛「到来デースっ!!!」(←3カメ


執務室の扉が開け放たれる、そこに立っていたのは金剛さん

腰に手を当て、手の平を突き出して、由緒正しい高速戦艦のポーズ

それと同時に、異様に気合の入った声が、だらけた2人の空気を吹き飛した


「…」

いきなりの事に固まる皐月達

勢い良く開いた扉が、バネに負けて閉まり始めるその前に

金剛が一歩踏み出し、提督の傍まで歩み寄る


金剛「Hey♪ていとっくー♪デートに行きましょうっ!」


ソファーの上で伸びている提督を上から覗き込み、ご機嫌な声での逢瀬のお誘い


提督「やだ」

金剛「…」


金剛の笑顔が陰る

が、それも束の間。直ぐに気を取り直してTryAgain(もう一度


金剛「提督っでー…」

提督「やだ」


金剛の台詞を遮り、却下と返す提督


金剛「最後まで言わせてっ、せめてせめてっ!」


先ほどまでの満開の笑顔とは一転して

今度は涙目で提督を揺さぶりだす金剛さん

もう、デート云々より構ってもらえない事の方が深刻そうだった


金剛「なにゆえっなにゆえっデスかっ、金剛のナニが不満なんですかっ!」


揺さぶられている提督がその振動数を次第に上げていく


提督「だって、望月との先約が…」

望月「ねーよ」


振られた


提督「…三日月~」

三日月「私はまだ仕事がありますから…」


振られた


提督「さーつーきー」

皐月「金剛さん、提督のことお願いね」


追い出された


金剛「さぁっ、提督っ保護者公認デスっ!Letts・GO!」

提督「やだぁ」

金剛「そんな言葉は聞き飽きましたっ!」


聞く耳持たず


提督「だって暑いし…」

金剛「金剛のLOVEより涼しいデスッ!」


Hotとより熱いHeatなHeart


提督「だって、まだ眠いし…」


不意に金剛の顔が提督に近づく


金剛「Good Morning♪…」


耳元で優しげに囁かれるお早うの言葉

そして、そう囁いた唇が提督の口元へと向かい

触れ合う…その一瞬に横にずれて、そのまま頬にと口付る

おはようのちゅー…

強引なくせに、妙な所で奥手になる金剛さんだった


提督「…へたれ」

金剛「オダマリっ!さぁっ、次はっ、まだ何が不満なんデスかっ!」


照れ隠しにと、さらに声を荒らげて次の要求をする金剛さん


望月「司令官…諦めて行って来なって」


にやにや、されていた

望月様が実に楽しそうに ニヤつかれてらっしゃった

完全に楽しんでやがりました


提督「んな事言うけどよ…どうせ水着売り場に連れ込まれて、あられも無い水着の品評会させられるんだぜ…」

金剛「それの何が不満なんですかぁ~、美少女の水着ですよっ!」

提督「自分で言うなよ…」


少女か?って疑問も浮かぶけど、お口にチャック。口は災いの元、触らぬ神に祟りなし

綺麗どころである事 事態は否定しようもないけれど


金剛「あられが嫌なら かすみにしますからぁ~」

提督「うぇー…」


ガタガタと金剛に揺さぶられる中で

駆逐艦なら皐月達で間に合ってるしなぁ

なんて、どうでもいい事が頭をよぎっていた


三日月「うふふふ。かすみも無い水着って、どんなのかな」


そんな2人を笑顔で眺めていた三日月


望月「紐だろ?」

三日月「ひもっ!?」


ニヤついていた望月がその視線を三日月に移す

紐+水着=○○○

そんな図式が三日月の頭の中で組み上がる

○○○+金剛さん=❤❤❤

導き出された結論は、たいそう過激なお姿で

いっそ裸の方がまともにすら思えてくるほどに…

❤❤❤ ー ○○○=


三日月「ぁぅ…」


止まらない自分の想像に、頬を染める三日月

動悸と動揺で目の焦点も定まらず、呼吸も少し荒くなっていた

○○○+三日月・・・

似合うわけはない、そんなのわかっている、けど…

アレは服どころか水着ですらない、ただの紐を巻きつけただけのような…

けど、けれど…少しくらい、想像の中くらいならと、恐る恐る水着の様な紐に手を伸ばす

そしてそれを、ゆっくりと、自分の体に…


皐月「でも司令官。ああいう紐みたいな水着嫌いみたいだよ、品がないってさ」

三日月「…」


投げた、投げ捨てた。ただの紐なんぞに用はないとばかりに、全力で


望月「マジか、食い付きそうなもんなのにな」

皐月「これで、リボンなら好物だって言うんだから、わっかんないよねぇ」

三日月「リボンって…そんな皐月まで何を言って…」

皐月「ん?何って…」


皐月がそっと机を手で押すと

座っていた椅子がコロコロと床を滑っていく

すると、皐月のその後ろ、その窓ガラスにうっすらと三日月の顔が反射していた


望月「顔に描いてんじゃん?」

三日月「っ!?」


慌てて、ガラスの向こうの自分から目を逸らす三日月

向こうの自分はどんな顔をしていたろうか

ほほ染めていた?ニヤついていた?…どうあれ思い出すのも恥ずかしい

しかし、その逸らした先でバッチリと望月と目が合う


望月「ま、お年ごろよな。三日月「姉」も、さ?」

三日月「ぅぅぅぅ…」


普段、姉さんなんて呼びもしないのに…

慣れない呼ばれ方に、からかうような望月の声音

ついでに強調された「姉」の言葉に、嫌でも自分が姉であることを自覚させられる

お姉さん風を吹かせたかった訳ではない

けれど、姉として生まれたのだ、多少の威厳とか矜持とか…格好つけたくもなるじゃない

だが、これである

あられも無い水着を想像して、かすみの無いリボンを妄想して頬を染める…

しかも、それを悟られ、妹にからかわれて…

姉の威厳なんてあったもんじゃなかった


三日月「だってぇ…」

望月「にひひひひ」


そのまま、へたっと床に崩れ落ちる三日月

顔を俯かせて、肩を震わせて、か細い声を口から漏らしていた


皐月「望月、その辺にしときなよ」

望月「へーい」


皐月がしょぼくれてる三日月の傍に寄ると、その頭をそっと撫でた


三日月「お姉ちゃん…望月がぁ」

皐月「ああ、うん。よしよし…」


なんかすごい勢いで幼児退行してる気もするけど

彼女もわりと下から数えたほうが早いくらいには、妹だった


「てーいーとーくーっ!」


そんな光景を覆い隠すように、金剛の声が執務室に響く

あっちもこっちも大騒ぎだった




ー鎮守府・砂浜ー


空にはさんさんと輝く太陽、足元には広がる白い砂浜

端の方とはいえ、鎮守府の敷地内にある以上

一般人が入れるわけもなく、完全にプライベートビーチになっていた


誰が言い出したのか、何時の間にやら皆で遊ぶ事が閣議決定され

提督が外に引っ張りだされていた

砂浜にビーチパラソルを立てて陰を作り、レジャーシートを引いて寝っ転がる提督

その上、着替えてる間に準備宜しく。などと押し付けられてもいる

波の音が静かに寄せては返す、時より肌を撫でる潮風が火照った体に心地良い


如月「しれいかん♪お待たせ…」

提督「ん…きさら か…」


寝っ転がってる提督の隣に、如月が静かに腰を下ろした


如月「どう、かしら?」

提督「んー…」


期待の混じった瞳で提督を覗きこむ如月

そんな彼女の姿を上から下まで眺めてみる

スクール水着。紺色でワンピース型の水着

何処にでもあるその水着は、何処にでもあるが故に郷愁を誘う

子供時代の象徴のような その水着は、如月の少女らしさを引き立たせるには十分過ぎるほどだった


如月「司令官…そんなに見られると、ちょっと恥ずかしいわ…」


提督の視線がくすぐったいのか、隠すように自分の体を抱きしめる如月

紺色の水着と白い肌のコントラスト

水着の合間から伸びる細い手足と、柔らかな腰つき

そして、服の上からでは分かりづらかった その小さな胸の膨らみが

ささやかながらもしっかりと水着を押し上げて、綺麗な流線を描き出す

そんな少女らしい体付きが、水着のラインに沿ってしっかりと浮かび上がっていた


提督「うん、綺麗だな」


正直に言えば、見惚れそうではあった

いや、多分に見惚れてはいただろう


如月「うん…ありがとう司令官」


照れたように、はにかんだ笑みを浮かべる如月


如月「そ・れ・じゃ・あ♪」


如月が提督に背を向けると、そっと水着の肩紐をずらす


提督「…なにしてんの?」

如月「日焼け止め、塗ってくれないかしら?」


定番でしょう?なんて、肩越しから悪戯っぽい笑顔を見せる如月


睦月「あーっ睦月にも塗って欲しいしっ」


ひょっこりと提督の後ろから顔をだす睦月


提督「終わったらな…」

睦月「はーい♪」


素直の娘だった

こちらもご多分にもれず、スクール水着だが

詳細は同上、違うとすれば胸の標高が低いくらいか

しかし、あることにはあるようで

ささやかながらも、少女らしさが見て取れた


提督「…」


如月から受け取った日焼け止めの蓋を開けた提督の手が止まる

隣には、何故か正座して自分の番を待ってる睦月

尻尾でも生えてりゃパタパタ振ってそうなくらいに、上機嫌に見える


提督「…(くいくい)」

睦月「?」


提督が自分の口元に指先を立てて、お静かにのポーズを取りながら、睦月に手招きをする


提督「…(ちょいちょい)」


近寄ってきた睦月の手に、日焼け止めを握らせると

指先で、背を向けている如月の方を指し示す


睦月「♪(こくこく)」


それを見て、しっかりと頷く睦月

どうやら意図は伝わったらしい


如月「司令官…ひょっとして照れてるのかしら?」


中々手を出してこない司令官が、焦れったいのか

からかうように先を促す如月


提督「そうだな、あんまり綺麗な肌してるもんだから…」

如月「ん、それはだって。司令官に見られても良いようにって」

睦月「♪」


如月が喋ってる合間に、日焼け止めを手に塗り広げる睦月

そして、日焼け止めでベトベトになった手を如月の肌へと押し付ける


如月「んっ…」


日焼け止めの感触か、それとも提督に触れられてるという羞恥のせいか

如月の口から小さく声が漏れた


睦月「♪♪」

提督「如月の肌、柔らかいなすべすべしてて気持ちいい」

如月「もぅ…そんなに褒められると、ちょっと恥ずかしいじゃない…」


楽しそうに如月の肌に日焼け止めを塗り広げていく睦月

その後ろから、バレないようにと適当に感想を並べる提督

目視情報でしかないが、概ね間違いでは無さそうな感想ではあるけれど


如月「…」


司令官って意外と肌柔らかかったのね…

自分の背中を這いまわる司令官の指の感触に想いをはせる

細くて、小さくて、そう、まるで女の子の指みたいなその感触

まるで気づく気配の無い如月

冷静だったのなら気づいたかもしれない、いつも握っているその指の感触に

しかし、のぼせ上がった頭ではそんな、繊細な情報など直ぐに沸騰してしまうようだった


撫でられる度に思う、自分で誘っておいてなんだけれど…


如月「…(どうしましょう、思った以上に恥ずかしいわ、これ)」


羞恥に頬が染まるのが嫌でも分かる

心臓がドキドキしてしょうがない

司令官の指先に伝わってしまってるんじゃないかと不安になる


提督「如月?」

如月「な、なにかしら…」


提督に呼びかけられて、ちょっと上ずった声で返す如月


提督「いや、急に黙りこむものだから」

如月「そ、そうかしら…そ、それより」

睦月「♪♪♪」


調子に乗った睦月の指先が、如月の背中を滑り、水着の隙間に入り込んで腰の近くまで伸びていた

睦月の指に引っ張られて、下にずれていく水着を胸元の方で何とか押しとどめる


如月「そ、そんな所まで塗らなくても…その、ねえ?」

提督「わるい、気持ちよくってつい…」

如月「そう…それなら仕方ない、わね」

提督「…」


仕方無いって、んな訳ないだろう

羞恥のせいで完全に頭が回らなくなっていた


如月「司令官の指も…その、思ったより柔らかいのね」

提督「それはだって、如月の肌を優しく撫でるために」

如月「そうなの…そんなに気持ちいいかしら…」

提督「うん」

睦月「♪♪♪♪」

如月「ひゃっ!?し、しれいかん…そこは…だ、め…」


いつもと違う如月の反応が面白いのか

さらにさらにと調子に乗る長姉

睦月の指が腰回りから這い出して、横腹を撫で、脇の下を通り

そして、その小さな膨らみを掬い上げる様に、下から手を回し…


如月「っ!?」

睦月「おっとっ」

提督「おおっ」


弾けるように睦月達から体を離す如月

頬を染め、肩で息をしながら、脱げかけの水着を胸元で抑えている その姿は…

なんとも言えない背徳感が漂っていた


如月「ご、ごめんなさい司令官。ただ、ちょっと、そのやりすぎじゃ…って。あら?」

睦月「にゃしー♪」

如月「…」


そこでようやっと睦月とご対面

ネタばらしとばかりに、日焼け止めでベトベトになった手を広げてみせる睦月

如月の羞恥で染まった頬から、さっと血の気が引いていく


提督「くっ…くくくくくく」

如月「ふっ、うふふふふふ」

睦月「にゃっししししし」


3人でどちらからともなく笑い出す


ばかぁぁぁぁっ!


少女の叫びが木霊した




球磨「ビーチバレーするクマぁぁぁっ!」

「おーっ!」


海で水着で砂浜で、選べる遊びは多々あれど

今回はそういうことに落ち着いた

ちなみに全員スクール水着


木曾「ひぃふぅみぃ…全部で10人か」

皐月「班分けはどうする?」

文月「あっさり~♪」

睦月「しっじみー♪」

卯月「はまぐりだぴょんっ!」


どこから持ってきたのか、開いた二枚貝を並べてみせる3人


大鳳「それじゃあ、貝の会う娘とペアって事でいいわね?」


大鳳の手でバラバラにされる二枚貝


菊月「…ちょっと勿体無いな」


綺麗だったのに、とまでは口には出さないけれど


長月「あとでまた集めるか?」

菊月「いや、そこまで子供では…」

長月「そうか…」


見つけたら拾っておくか、なんて思う長月だった


瑞鳳「…」


二枚貝でくじ引きやってるその最中、なにやら難しい顔をしている瑞鳳


大鳳「どうしたの?」

瑞鳳「いや…なんていうか」


瑞鳳の視線が自分の胸と大鳳の胸を行き来する


大鳳「…ああ、なるほど」


その視線に気づくと、合点がいったと大鳳が頷いた

回りを見れば、駆逐艦と軽巡

対して、自分は軽空母なのにと


大鳳「ふふっ、胸囲の格差社会かしらね?」


小さく笑みを浮かべる大鳳


瑞鳳「大鳳は…その、気にならないの?」

大鳳「ならないといえば嘘だけど…」


そこで一つ間を置いて


大鳳「皆おっぱい星人ばっかりじゃ、ね?」

瑞鳳「ぷっ…な、なによそれ…」

大鳳「提督が言ってたわ。だから、気にしない事にしたの」


見て欲しい人が見てくれてるなら、良いかなって


瑞鳳「…ぞっこん?」

大鳳「どうかしら?」


その問には笑って誤魔化す大鳳


大鳳「それに、前の鎮守府で…大和と龍鳳と一緒だったからね…諦めたわ…」

瑞鳳「ああ…」


「諦めたわ…」その言葉に含まれた感情、それには瑞鳳にも覚えがあった


球磨「よっしゃーっ!始めるクマァァっ!」

「おーっ!」


球磨の掛け声に全員で応える


大鳳「それじゃ、行きましょうか」

瑞鳳「うんっ、負けないからねっ!」




第1回鎮守府杯、ビーチバレー1回戦


文月・菊月 VS 睦月・大鳳


4人がコートに入り、準備体操を始める中


球磨「どーして、球磨達は決勝戦までお預けをくらってるクマ」

皐月「あはははは…まあ、がまんがまん」


不満を露わにする球磨と、苦笑する皐月

厳正なくじ引きの結果、ペアになった皐月と球磨…鎮守府で一番練度の高い2人で最初期の2人

そのせいで、消化試合を避けるために決勝戦までお預けを食らっていた


文月「あー、菊月ってば長月と一緒が良かったーって顔してるよー」

菊月「む、そんな事は無いぞ…」

文月「顔に描いてるよ~」


ちょんちょんっと菊月のほっぺを指先でつっつく文月


菊月「や、やめないか…」

文月「えへへへ~♪」


くすぐったそうに、文月から顔を背ける菊月


文月「それじゃ、がんばろうねぇ…大丈夫、お姉ちゃんにまっかせて♪」

菊月「む、むぅ」


笑顔で抱きついてくる姉を、困り顔で受け止める菊月だった


睦月「ふっふっ、大鳳さん準備は宜しくって?」

大鳳「ふふっ。ええ、よくってよ?」


芝居がかった睦月の態度に、大鳳が微笑みながらもそれにこたえる

とはいえ、駆逐艦3人の中に正規空母が1人

果たして本気を出してしまっていいものかと、悩みはする

別に手を抜くつもりはないけれど…

ハンデとは、健全な試合運びのために利用されるものじゃないかとも思う


そして始まる第1試合


文月「いっくよ~♪」


ボールを持った文月が手をふって対角にいる睦月に合図を送る


睦月「さぁっ!かかって来るが良いぞ、妹達よっ!」

文月「まっけないからね~♪…そーれっ!」


ぽーんっ軽い音を立てて、ボールが睦月達のコートをへと飛んで行く


睦月「お、とっとっと…」


睦月の頭上を飛び越えていくボール

コートの外に出そうにも見えるが、ギリギリ入りそうな絶妙な力加減だった


大鳳「ん、睦月前に出てっ」

睦月「うむっ」


大鳳が走りだし、コートラインギリギリのボールを睦月の頭上に送り返す


睦月「とったっ!」


その場で飛び上がる睦月。大きく手を振りかぶって…スカッ!


睦月「なんとっ」


虚しく宙を切った睦月の腕。その横からボールがすり抜け砂浜へと落ちていく


大鳳「もう一回っ!」


駆けつけた大鳳が、更にもう一度と睦月の頭上にボールを返す


睦月「今度こそっ」

菊月「させんっ、文月っ」

文月「はーい」


今度はしっかりと文月達のコートに叩き返されるボール

それを菊月がしっかりと受け止め、文月の方へ

そして文月がそれを受け止めて、トスを菊月へと返す


菊月「行けっ!」

睦月「ほわっ!?」


睦月の横をすり抜けて、勢いのついたボールが砂浜へと突き刺さった


菊月「ふっ」

睦月「むぅぅぅ」


悔しがる睦月に、不敵な笑みを浮かべる菊月


文月「さっすがだねぇ、菊月は」

菊月「この程度、威張れるものでもないがな」


そういって、2人でハイタッチ


大鳳「ごめんなさい、流石に間に合わなかったわ」


睦月の零したボールを無理に打ち上げたせいで体勢を崩していた大鳳

その反対側にボールが返されたのでは流石に返し様もなかった


睦月「大丈夫だよっ大鳳さんっ。試合はまだ始まったばかりだしっ」

大鳳「ええっ、そうね。頑張りましょう」


そうして、繰り返されるボールの応酬

積み重なっていくお互いの点数

一見しては、菊月と睦月のスパイクの打ち合いに見えはするが

その水面下では、文月と大鳳が器用に立ちまわってボールを2人に集めていた


瑞鳳「へぇ、やるじゃない。睦月と菊月。大鳳さん無双になると思ってたのに」(←瑞長チーム

長月「そうみえるか…」(←瑞長チーム

瑞鳳「ん?」

長月「いや…」


点差が開きそうになる度に

乱数調整入れてくる大鳳と文月が一番怖い気がしている長月だった


木曾「お、そろそろ決着だな」(←木卯ペア

卯月「たいほー、むつきー、ふみづきー、菊月ちゃーんっ、がんばるぴょーんっ」(←木卯ペア

菊月「ちゃんはやめないかっ!」

卯月「おぅ、良い反応ぴょん」


菊月「ちゃん」はしっかりと否定していく菊月ちゃん

その反応速度が試合に活かされるかどうかは別として


そして大鳳のサーブで始まる最終局面

大鳳のサーブを受けて、綺麗に菊月へと返す文月


菊月「礼は言わぬ、だからっ」


結果で返そうと、鋭いスパイクを砂浜に撃ちこむ菊月


睦月「見切ったしっ」

菊月「むっ!」


菊月がスパイクを放ったその一瞬

伸び上がった睦月の手がボールを抑えて、菊月達のコートへと押し返した


文月「おっとっ…」


文月が走りこむも、拳一つ分届かずにボールが砂浜に転がった


ぴーっ!

笛の音が鳴る。これにて試合終了

勝者、大鳳・睦月ペア


睦月「ふっふっふっ。姉の威厳の前にひれ伏すが良いぞっ」

菊月「むぅ…次は勝つから…」


えっへんと、勝ちほかった睦月が無い胸を張る


文月「大鳳さん、おつかれさまぁ」

大鳳「ありがとう、文月もお疲れ様」

文月「ねぇ、大鳳さん。次は2人でやろっか♪」


どこか挑発的な声音を偲ばせる文月


大鳳「負けないわよ?」

文月「あたしだって」


握手を交わして、再戦の約束をする2人だった



ーパラソルの下ー


提督「まだ怒ってるの?」

如月「怒ってなんかないもん」


もん…って

その言葉を素直に信じるにしても、ごきげんは斜めのままのようだ


パラソルの下で寝っ転がってる提督

その隣で如月が、肌を隠すようにタオルを羽織って体育座りのまま いじけていた

なんのかんの言いつつも提督の傍で座ってるあたり、本気で怒ってるわけでは無さそうだけれど


提督「はぁ…あれ、そいえば金剛は?」


今更ながら

真っ先に水着自慢してきそうな娘の姿見えないのは、奇妙に思う


多摩「金剛ならあっち…」

提督「あっちって…」


シートの隅で丸くなっていた多摩が、視線だけを動かしてその場所を告げる


金剛「…」(どよーん


多摩とは対角にあるシートの端っこ、そこに彼女はいた

如月以上に体を丸め、タオルを上から羽織って体を隠し

ついでに、なにやら重い空気が漂っていた


提督「金剛?」

金剛「…っ」


提督に呼ばれた金剛の肩が跳ねる


提督「なに?水着買いにいけなかったのがそんなに嫌だった?」

金剛「non、それくらいなら別に…ただ…」

提督「ただ?」


ただ、何だというのだろう?

口をもぞもぞ動かして、何かを呟いてはいるようだけど


金剛「笑いませんか?」

提督「笑う…った」


欠けたサンゴの残骸が飛んできた


金剛「…」


恨みがましい視線を向ける金剛さん


提督「内容も分からんのに保証できんだろう、そんなの」

金剛「わ・ら・い・ま・せ・ん・かっ!」

提督「努力はする」

金剛「ぶー、素直じゃありませんね、まったく…」


不満気ではあったが、その場から立ち上がる金剛

肩から掛けていた、タオルが さらりと流れ落ちレジャーシートの上に広がる

そして、隠すものの無くなった金剛の体があらわになった


提督「…」


例の如くスクール水着ではある

とはいえ、この場に集まってる大半が軽巡と駆逐艦サイズ

となれば、金剛の体型は実に目立っていた

水着の中で窮屈そうにしてる谷間と、くびれた腰つき

それは、満開の花の様で。女性として色気が存分に見て取れた

場所が場所なら、それは注目の的になりうる体型なのだけれど


提督「えーと、なんだ…」

如月「流石に…凄いわね」


気恥ずかしそうに、視線を彷徨わせる提督

如月も、同じ艦娘としては素直に賞賛を送るしか無いのだけれど


金剛「凄くないデスっ、あっち見てから言っテ!」

「?」


如月と顔を見合わせた提督が、金剛の示した先へと視線を移す

そこには、きゃっきゃっと黄色い声を上げてビーチバレーを楽しむ娘達

小柄な体にスクール水着が重なって、見た目相応、歳相応

実に健康的でよろしい感じだった


提督「ああ…そういう」

如月「司令官?」

提督「うん、見てろ…」


パチンッ

提督が指を弾くと一瞬、乾いた音が広がった

周囲に特に変化は見られないけれど…一つだけ


  ん う 

こ   ご


金剛のスクール水着。その正面で主張してる大きな胸

そこには、さっきまでは無かった名札が貼り付けられていた

ご丁寧にひらがなで書かれた文字が、金剛の胸に押されて歪んでみえる

その文字がスクール水着と相まって、その幼児性を不要なまでに増大させていた


「…ぷふっ」

そこで事態を理解する、そして思わず吹き出した如月と多摩


金剛「やめてっ!」


サッと自分の胸を両手で隠す金剛


提督「あはははは。つまりアレだろう?」

金剛「デスよっ!私だけコスプレみたいじゃないデスカっ!」


つまりはそういう事だった


ーバレーコートー


第2試合:瑞鳳・長月VS木曾・卯月


瑞鳳「卯月、今日こそギャフンって言わせてやるんだからっ」


瑞鳳のサーブから始まった第2試合


卯月「うぷぷぷぷ、胸囲の差が戦力の決定的な差では無い事を教えてやるぴょんっ!」


スクール水着に身を包んだ2人

なるほどどうして、そうしてみれば瑞鳳の方が多少あるようには見えるけど、けども…


木曾「大差ねぇじゃねーか…」


多分このコートの中で一番大きい人の突っ込みが入った


瑞鳳「やっかましいわっ!」

長月「あ、おいっ…」


長月が止めるよりも早く、瑞鳳が手にしたボールをそのまま木曾に向かって投げつけた


瑞鳳「あ…ごめん」

長月「馬鹿者が…」


ボールごとサーブ権を相手に投げつけた瑞鳳だった

そうして始まるバレーボール、だったはずなのだが…


「だいたいあんたはいつもいっつもっ!」

「だって瑞鳳がっ!」

「人のせいにしてんじゃないわよっ!」

「うーちゃんが悪いっていうのっ!」

「そう言ってんのよ、バーカっ!」

「バカって言う方がバカぴょんっ!」

「あんただって、言ってんでしょうがっ!}

「これは瑞鳳の真似ぴょんっ」

「私はもう少し可愛げがありますぅーっ!」

「あ、ごめーん聞こえなかったぴょーんっ!」

「卯月は可愛くないって言ったのよっ!」

「うーちゃんが可愛くなかったらっ、瑞鳳だって可愛く無いぴょんっ!」

「聞こえてんじゃないのよっ!」

「やーい、騙されたぴょーん。ぷっぷくぷー♪」


ボールの応酬と共に交わされる会話のキャッチボール

罵詈雑言というには余りにも程度が低すぎて…小学生の喧嘩といえば見たまんまに思える


木曾「…」(←呆れてる

長月「…」(←頭痛い


なんとなく疎外感を感じる2人

もう、お前らだけでやれよとはきっと共通認識


長月「瑞鳳っ」

瑞鳳「これでっ終わらせるんだからっ!」


長月が打ち上げたボールを追って瑞鳳も飛び上がる


卯月「きぃぃそぉぉぉ、そこ動くんじゃねぇぴょんっ!」

木曾「ちょっ!?お前っ…ってぇっ!?」

卯月「とうっ!」


木曾を踏み台にして飛び上がる卯月


瑞鳳「うそっ!?」

卯月「うぷぷぷぷ。絶望がお前のゴールぴょんっ!」


ボールを追ってほぼ同時に飛び上がった2人だが

木曾踏み台にした分だけ、卯月が高度を上回り

瑞鳳の手が届くよりも早く、ネット際ギリギリに叩き落とした


ぴーっ!

これにて試合終了


勝者:木曾・卯月ペア


卯月「ほーれ、瑞鳳。うーちゃん可愛いって10回位言って見るぴょん、そしたら許してやらんでも無いぴょん」


うぷぷぷ、と勝者の笑みを浮かべて瑞鳳の頬をペシペシと叩く卯月


瑞鳳「その態度の何処に可愛げがあるってのよ…」

卯月「負けたくせに口答えするとか、これだからひんにゅーは」

瑞鳳「あんたの方が小さいでしょうがっ!」


眉間に青筋浮かべて、卯月の胸を鷲掴みにする瑞鳳

こうしてみれば、つかめる分くらいはあるらしい


「いったーい!何するぴょんっ!」

「揉めば大きくなるっていうじゃないのっ」

「はぁ、必要な瑞鳳の方っ」

「いったいわねっ、これ以上減ったらどうすんのよっ!」

「減るほど無いくせに何言ってるぴょんっ!」


試合が終わった所で状況に大差は無いらしい


木曾「はぁ…まあ、おつかれ長月」

長月「あぁ…お前もな、木曾」


疲れた顔を浮かべるチームメイト

試合というか、喧嘩に巻き込まれただけ気がしていた



ーパラソル周辺ー


北上「よっこいせっと」


どこからか、バーベキューセット一式を持ちだした北上様


提督「…北上様?そんなのどうするのさ?」

北上「どうってそりゃねぇ、海と言ったら海の家でしょうよっ」

提督「まあ、分からなくはないけれど」


スクール水着の上から白いパーカーを羽織って、頭には麦わら帽子

そんな夏楽しんでます的な格好の北上様が得意気に答えた


弥生「北上さん、この看板は…」


北上と同じような格好をした弥生が、ヨタヨタと重そうに大きな板を運んでくる

【海の家

     北上様】


北上「ああ。弥生、ありがとねん。それはこっちに置いといて」

弥生「ん、分かった」


BBQセットの前に立てかけられた看板

どうにも本気で海の家ごっこをする気らしかった


提督「弥生まで巻き込んで…」

弥生「司令官…どう?」


麦わら帽子を手で抑えて、その場でクルッと回ってみせる弥生

白いパーカーの裾が綺麗に広がり、スカートのようにも見える


提督「ん、似合ってる。可愛い」

弥生「…ありがと」


照れくさかったのか、麦わら帽子を目深にかぶり直す弥生

いつもは物静かな彼女でも、こういう時くらいは はしゃぎたくもなるのかと少し意外に思う


大井「北上さん、取り敢えず肉でも焼きますか?」


多分肉の山であろうクーラーボックスを抱えた大井さん

こちらもまた白いパーカーに麦わら帽子と言った具合で

どうやら、海の家の制服って設定の様だった


北上「んー、そうだね。提督、なにかリクエストあるかい?」

提督「「北上様が欲しい」

北上「お、私かい?高いよ?」

提督「自分を安売りするより余程いい」

北上「なぁに?カッコいいこと言うじゃーん」


提督の冗談に、にひひーっと笑って返す北上様


大井「て・い・と・く?」

提督「ん?」


名前を呼ばれ振り向いて見れば、笑顔の大井さん

笑顔とは言ったものの、あれは絶対笑ってなかった


大井「当店では、店員へのおさわりは禁止されてますのでー」

弥生「司令官、ご注文は?」


笑顔と無表情が並んでいるってのに、笑顔の人が余程怖いという現実だった


提督「そうだな…じゃ焼きそばで」


定番といえばそうだし、無難といえば無難な注文


弥生「ん、ちょっと待ってて。北上さん…」

北上「あいよー」


注文を受け取って、焼きそばを作り始める北上様

なにやら、鉄板から派手に火が出てるのが気にはなるけど


提督「で、これは何の企画なんだ?」

大井「さあ?北上さんが急にやりたいって言い出すんだもの…」

提督「ふーん…大井はさ、毎日海に出てるのに今更海で遊ぶのなんて、とか思ったりしない?」

大井「なに、急に?」

提督「別に、なんとなく」


不意に浮かんだ疑問をそのまま口に出しただけ

何か答えを期待してたわけでもないし、思う所があったわけではもっとない


大井「提督は…仕事で私達と付き合ってるんですか?」


何かを探るような大井の問い

そんな大層な疑問だったろうかと思いはすれど

ここは、素直に答えておくことにする


提督「…いや、そんなつもりは無いけれど」

大井「じゃ、そういう事ですよ。…北上さん、私も手伝います」

提督「…」


どういう意味だよと、問い直そうと思った頃には

その背中は既に離れて、北上のところへと向かっていた




ーバレーコートー


球磨「大鳳。勝て、勝ってここまで来るクマ」


試合前、コートに入る大鳳を呼び止める球磨


大鳳「約束は出来ないわ。善処はするけれど」


立ち止まり、振り返らずに答える大鳳


睦月「大鳳さーん、早く早くー」

大鳳「ええ、今行くわ。それじゃ…」


小走りで睦月の元に向かう大鳳を、つまらなそうに見送る球磨


球磨「…1人ならもっと動けるだろうに」

皐月「しょうがないよ。大鳳さん、試合の勝敗は睦月に任せてるみたいだし」


相手との点差が開き過ぎるなら補うし、逆に放し過ぎたなら様子もみよう

先の試合中、大鳳の動きは終始そんな感じであった

それも、一見すればバレないようにこっそりと

別に手を抜いてるわけでも、手加減してる訳でもなく

ただただ睦月が楽しい試合が出来るようにと、そちら側に全力をかけているだけだった


皐月「それに、大鳳さんがこっちに来たからって、全力で戦ってくれるとは限らないんじゃない?」

球磨「なに、戦場に立つのならやりようは幾らでもあるクマ」


そんな光景を想像してか、球磨が愉しそうに笑みを浮かべる

出さぬなら、出させてみせよう、その本気。球磨ちゃん心の俳句

相手がホトトギスだろうが七面鳥だろうが、化けの皮剥ぐ気まんまんの球磨ちゃんだった


皐月「さて、それじゃボクもそろそろ…」


立ち上がり、体を伸ばしてウォームアップを始める皐月


球磨「なんのかんの言いつつ、皐月もやる気じゃないか」

皐月「そりゃね。シード枠に放り込まれたんだし。期待には応えないと」


司令官にもカッコいいとこ見せたいし

なんて理由も無くはないけど


球磨「くまくまくまくま♪その通りだな、球磨達が勝って皆に思い知らせてやるクマ」


試合前のコートに球磨の笑い声が響いていた


木曾「あいつ、もう勝った気でいるな…」

卯月「きそー、球磨ばっかり見てないでちゃんと前見るぴょん。そんなんじゃ勝てるもんも勝てなくなるぴょん」


試合前だというのに

球磨のことばかり気にしてる木曾に、頬を膨らませる卯月


木曾「…正論だが、お前に言われるとなんかムカつくな」

卯月「どういう意味ぴょんっ!」

木曾「ほら、前向け前向け」

卯月「うぐぐぐぐ…」


食って掛かってくる卯月の頭を抑えて、強引に正面に向ける木曾


睦月「いっくよー二人共♪」


卯月が正面を向かされた時には、ボールを持った睦月が手を振って合図をしていた


第3試合:卯月・木曾VS睦月・大鳳


ぴーっ!

笛の音が鳴り響き、試合開始が宣言される


試合が始まりしばらくは動きの無い展開が続いていた

というのも、睦月は卯月を抜けないし

木曾達も大鳳を抜けないわで、延々と続く膠着状態

それでも積み上がっていくお互いの点数は、時折起こるサーブミスが主だった


睦月「はぁはぁ…」

大鳳「…」


試合が長引くにつれて、睦月の呼吸がどんどん荒くなっていく

今のペースだと試合が終わるより前に睦月がバテる方が早いだろう

そんな睦月の背中を見つめる大鳳

そろそろ自分が動くかどうかの選択肢が頭の中を回っていた

球磨の思い通りに動かされたみたいで、あまり面白くは無いのだけれど…


睦月「大鳳さん」

大鳳「ん?」


ふと、睦月に呼ばれてそこまでの思考を中断する


睦月「はりきってまいりましょ~♪」

大鳳「…ええ、もうひと頑張りしましょうか」

睦月「おうともさっ」


にゃしっと笑顔で大鳳を気遣う睦月

自分もいい加減辛い頃だろうに、その屈託のない笑顔はどこから来るのだろうか

ならばと、腹決める大鳳


大鳳「睦月、木曾さんの方狙ってっ」


卯月の方にボールを流してたら拉致があかないと


睦月「任せるしっ!」


大鳳から送られたボールを追って睦月が飛び上がる


卯月「その時を待ってたぴょんっ!」


睦月達が狙いを木曾に絞ったのに感づいた卯月が、木曾へと向かって駆け出した


卯月「木曾っ!アレを使うぴょんっ!」

木曾「またかよ…しゃーねーなー」


2度目となれば慣れたもので

飛び蹴りでもしそうな勢いで 飛び込んでくる卯月に向き直る木曾

両手でその足を受け止めると、思いっきり上へと放り投げた


ネットの直上。ボールに手を伸ばす睦月と、その上から叩き落とそうとする卯月


卯月「うぷぷぷぷ。頭が高いぴょんっ、お・ね・え・ちゃんっ!」


睦月も全力で手を伸ばすが、すでに卯月の手がボールに触れ叩き落とす体勢に入っていた


睦月「てぇぇぇっ!?このままだと睦月に当たるしっ」


睦月の目の前には目いっぱいに広がった まあるいボールと、卯月の勝ち誇った笑顔

取り敢えず顔面レシーブだけは避けようと、両手で顔を隠してみる


大鳳「ほいっ」

卯月「へ…ぴょふっ!?」


大鳳の軽い声と、少し遅れて空気が抜けたような卯月の声

卯月の手がボールに触れた瞬間

睦月との間に割りこむように入ってきた大鳳の手が

あっさりとボールを弾き、ネットの向こう側に落としていた


睦月「ほへ?…おととと…」


ボールが飛んでくるよりも前に、砂浜に足がついて転びそうになる体を何とか支える


大鳳「その必殺技、防御が甘くなるのが欠点ね」


睦月の隣には、涼しい顔して立ってる大鳳と


卯月「ぴょーん…」


布団みたいにネットに干されてる卯月


木曾「マジかよ…」


そして、木曾さんの足元にはボールが転がっていた


ぴーっ!

笛の音が試合終了を告げた


木曾「はぁ…なんとか、勝ったな…」

卯月「し、死ぬかと思ったぴょん」


卯月と木曾が砂浜に体を投げ出して転がっていた


あれから、もうしばらく続いたボールの応酬

延々と続くかと思われた膠着状態から脱したと思えば

今度は様子見は終わりとばかりに、お互いにスパイクの撃ち合いが始まっていた

息つく間もなく打っては返してを繰り返し、徐々に嵩んでいく点数

しかし、終わりはあっけないものだった

勝敗を決めるだろう最後の1球

睦月がサーブを打ったその瞬間

疲れのせいか、体勢を崩し狙いがそれてコートの外へ


睦月「ごめん、大鳳さん。外しちゃったし…」


しゅんっと肩を落とす睦月


大鳳「いいのよ。睦月もよく頑張りました」


そう言って睦月の頭を撫でる大鳳


睦月「えへへへ♪」

大鳳「ねえ、睦月。楽しかった?」


撫でられて、ご満悦な様子の睦月に問いかける


睦月「うんっ♪」

大鳳「そう」


返って来たのは、睦月の満面の笑みだった

それならば良い、流石に睦月にさせすぎたかとも思ったけども


大鳳「…(私が思ってるよりも強い娘だったみたいね…)」


勝者:木曾・卯月ペア




ービーチパラソル周辺ー


夕張「はーい、お待たせ。スイカ持ってきたわよ~」


例に漏れず、スクール水着な夕張さん

その手には、先程まで冷水にでも突っ込まれていたのだろう

ひときわ大きなスイカが夏の暑さで汗をかいていた


文月「わーい♪スイカ割りしよ、スイカ割り~」


夕張の足元にまとわりついて、遊んでくれと ねだる文月


弥生「…夕張さん、そこはメロンを持ってくる所」

夕張「いやいや、そんなベタなことしないって」

弥生「えー…」


なんか不満そうな弥生だった


北上「そうねぇ。それにほら、メロンならここにっ2つもっ」


北上が大井の後ろに回り、その大きな胸を下から掬い上げる


大井「ちょっと、北上さん…おっさん臭いです」

北上「あー…それはちょっとやーねー…」


北上の手が離れると、重力に負けて下へと弾む大井の胸

回りのメンバーのせいか、一際大きく見える大井のそれ


大井「それに、メロンだのスイカだの言うなら,あっちの方が…って、なによあれ?」


大きい小さいの話をするのなら

一番大きい人を矢面に立たせるのが良いかと思い、金剛に視線を向けては見たものの


金剛「しくしく…しくしく…」


体を隠すように体育座りをして、すすり泣いている金剛さん


北上「あーあれねぇ…一歩間違えれば、大井っちもきっとああなってたねぇ」

弥生「大は小を兼ねない良い事例」

大井「何の話よ…」


うんうんと頷きあう2人と、事情が飲み込めない大井さん


夕張「はぁ、提督。まーた金剛さんいじめたの?」


呆れ顔の夕張が、そのへんで寝っ転がってる提督に視線を投げる


提督「またって、人聞きの悪い。それじゃまるで私がいつも…」

夕張「してるじゃない」


提督の言葉を遮り、その口を塞ぐ夕張さん


提督「いや…金剛なら何着ても似合うかと」

夕張「そりゃ、似合うでしょうけど…」


このメンバーの中でスク水なんてコスプレじゃない…

などと言っては金剛に追撃が入りそうなので口には出さずに


菊月「で、スイカは割らないのか…」


そんな喧騒など気にもせず

焼きそばを片手にデザートの心配をしだす菊月


長月「はぁ…青のり、ついてるぞ」

菊月「おっ…すまない」


菊月の頬に付いていた青のりを

長月の指がつまみ上げ、そのまま自分の口へと運ぶ


夕張「っと、そうだったわね。スイカ、割りましょうか」

文月「まってましたー♪」


文月が夕張からスイカを受け取り砂浜を走って行く


菊月「ふふん、まあスイカの一つや二つ…」


残っていた焼きそばをさっさ食べ終える菊月

急いで食べ終えたせいか、その頬にかつお節が張っ付き風に揺られていた


長月「かつおぶし…」

菊月「むっ、すまない…」


こういう場面で行儀よくしろとまでは言わないけれど

も少しどうにかならんのかと思う長月だった




そんなこんなで始まるスイカ割り


菊月「…」


バットを構え、タオルで目隠しをした菊月が、ゆっくりと白い砂浜を歩いて行く

その歩みの先には大きなスイカ

素直に歩けば無事に到達しそうなものだが

おぼつかない足取りが、だんだんと横にそれ始める


文月「ちょいみぎ~♪」

菊月「こっちか…」

文月「そのまま真っすぐ~♪」

菊月「うむ…」


文月の誘導にしたがい

ぎこちないながらもだんだんとスイカへと近づいていく


文月「5・4・3・2・1…そこだよっ」

菊月「ここかっ!」


スイカの前で足を止める菊月

手にしたバットを振り上げて、全力で振り下ろした

砂浜に突き刺さるバット

スイカに当たる予定だったそれが狙いを外し、大量の砂を巻き上げた


目隠しをしたままでは気づき様もなく

急に降りかかってきた砂をもろに受け止める菊月

口にまで飛び込んできたのか、軽く咳き込んでいた


菊月「けほっ…な、なんなのさ…」


目隠しを外し状況を確認する

スイカの真横。その白い砂浜にバットがのめり込み穴を開けていた


菊月「外したか…」

文月「おしかったねぇ」


口惜しそうにスイカを睨んでいる菊月

その隣から、文月がポニーテールひょこひょこ揺らして顔を覗かせる


文月「もっかいいってみる?」

菊月「いや、折角冷やしてるんだ…温くなっては、なっ!」


そう言って菊月が再びバットを持ち上げると、そのままスイカへと叩きつけた

乱雑に振り下ろされるバット

そう、きっとこれは多分八つ当たり

格好良くスイカ割るはずだったのに

頭から砂をかぶる羽目になったのがご不満のようだった


菊月「ったぁい…!」


割れるはずだったスイカの代わりに

菊月の口から悲鳴が上がり、その場にしゃがみ込む

その隣には転がるバットと、寝返りでも打った程度に向きを変えたスイカ


文月「うわぁ…痛そぅ」


文月はバッチリ見ていた

スイカを割るはずだったバットが、逆にスイカに弾かれた瞬間を

それどころか、勢いのついたバットが菊月の手を離れ、そのおでこに命中していた


菊月「もぅ…なんなんだよぉ…」


涙声で己の不幸を嘆く菊月

その両目からは涙がこぼれて、赤くなったおでこを両手で擦る

何が悪かったと言われれば

まず、握り方が悪かったし、当たりどころも悪かった、ついでに運も悪かった

要するにただの自爆である

自棄になってはいけません、皆も気をつけましょう


長月「はぁ…まったく何をやってるんだ」


呆れ半分、心配も半分。そんなため息を吐く長月

ともあれ、今にも泣き出しそうな妹の元に向かうため

重い腰を持ち上げるのだった


菊月「な、泣いてなんか無いからな…」

文月「うん。そうだねぇ、えらいねぇ」


文月に頭を撫でられてる菊月が必死に何でもないアピールをするものの

その頬にはくっきりと涙が流れた跡が見て取れる

最初の一筋以降、耐えてるのは褒めるべきなのかどうなのか




ーバレーコートー


ビーチバレーも決勝戦

一回戦から勝ち抜いてきた、木曾・卯月チームと

大人の事情でシード枠に放り込まれラスボス扱いにされた、皐月・球磨チーム


木曾「くまぁぁっ、今日は俺が勝つからなっ!」


対面のコートに入っている球磨に、拳を突き出す木曾

気合は十分の様だった


卯月「うへぇ…うーちゃんは流石にちょっと疲れてきたぴょん」


闘志を燃やしている木曾に対して、卯月はちょーっとお疲れモードだった

まぁ無理もない。休憩をはさみながらとは言え、3連戦もすればそりゃ疲れる


木曾「だらしねーぞ卯月。もっとぴょんぴょんしやがれっ」

卯月「木曾の中でうーちゃんは どんなイメージになってるぴょん…」


ぐーっと背伸びをして、体の疲れをほぐす卯月

私だってそんな毎日ぴょんぴょんしてるわけじゃないのに

そんなにして欲しいなら楽しみの一つや二つ用意すべき

例えばそう…


卯月「木曾、後で間宮おごってくれるぴょん?」

木曾「いいぜっ、間宮でも何でもおごってやるさっ」

卯月「…なんでも?」


「なんでも」その言葉に、卯月の耳がぴくっと反応する


木曾「おう、なんでもだ」

卯月「うぷぷぷぷぷ♪きそぉぉぉっ、勝つぴょーん♪」

木曾「ったりめーだっ」


卯月の買収に成功した木曾さん

今月分のお小遣いが無くなるなんてことは

つゆ程にも思っていないだろう


皐月「気合入ってるねぇ、木曾さん」


そのはしゃぎようといったら、試合の前から勝った気でいるように見えるほど

負ける気で来られても つまらないからそれはそれで良いんだけど


球磨「弱い木曾程よく吠えるっていうクマ。勝利の予兆に酔わせておけばいい」


今だけはな、とニヤリを不敵な笑みを浮かべる球磨


木曾「くーまー、さっさと始めるぞーっ!」

卯月「かかってくるぴょーんっ!」

皐月「…」


待ちきれないとばかりに、せっついて来る木曾達


皐月「球磨さん…サーブ、ボクから行くよ」

球磨「…ま、別に構わんが」


いつもより一段ほど低く聞こえる皐月の声に押されて

言われるままにボールを回す球磨


皐月「ありがと」


球磨から回されたボールを片手で受け止めると、そのまま位置に付く


皐月「準備は良いかな…」


答えを待たず、ボールが皐月の頭上に放られる

そして、皐月も飛び上がると

その小さな手を、思いっきりボールに叩きつけた


木曾「おうっ、いつで、も…っ!?」


その口を塞ぐように、木曾の頬を掠めて砂浜に突き刺さるボール

その威力に砂が弾き飛ばされ、小さなクレーターが出来上がった


卯月「ぴょーん…そうだった、そうでした…」


今更思い出した様に戦慄する卯月


球磨「お前たちは一つ勘違いをしているな…球磨は一人じゃないクマ」

木曾「…」


呆れるように首を振る球磨

何も この球磨が2人も3人も居るとかいう怪奇現象ではなく


皐月「ほんとにね、少しはボクの事も見てくれないと」


サーブを打ちを終えた皐月が、綺麗に砂浜の上に着地する

その背後からは、夏の日差しが降り注でいた

逆光のせいか、暗く沈んで見える皐月の表情

言葉だけを聞くならば、構ってもらえずに拗ねてる女の子な訳だけれど

その表情も手伝ってか、なにか別のものを抱えてる風にも見える


球磨「皐月、久しぶりにアレやるクマ」

皐月「うん、それじゃ…」


「ボク達と…」

「球磨達と…」

「やり合う気なの?可愛いね♪」


皐月と重なる球磨の声

そして、その自信と勝利への確信が

一陣の潮風に運ばれて木曾達に叩きつけられる


木曾「っ…やべっ」

卯月「お家帰りたいぴょん…」


今更ながらに思い出す、あいつ初期艦だった…

そうだった、球磨がいるからシードに置かれたんじゃなかった

球磨といるからシードに放り込んだのだった…


試合開始直後からのボールの応酬は

点数を重ねるごとに激しくなっていった

木曾達も何とか食らいついてはいるものの

時間が経つにつれて、点差はどんどん開いていく


球磨「むぅ…流石に卯月の頭の上は固いな」


防空駆逐艦を任されてるというプライドも手伝ってか

卯月の頭上を飛び越すボールは無く、そこはきっちりと抑えていた


皐月「木曾さん狙う?」


そっちのほうが早く片付きそうだと


球磨「皐月…それでは球磨達が卯月に負けたみたいじゃないか」

皐月「ふふっ。まあ、そうだね」


不敵な笑みを浮かべる球磨に、小さく笑って同意する皐月

まあ、そういう建前もあるけども…


球磨「そぉらっ、いくぞ卯月っ」

卯月「かかってこいやー!」(←自棄


半ばやけっぱちに叫びながらも

球磨からのサーブをしっかりと受けて、木曾にボールを回す卯月

そのボールを空中でしっかりと捉えると、球磨たちのコートに叩きこむ

だが、ボールが砂浜に突き刺さるその直前に

球磨の足が伸び、ボールを蹴り上げる

強引に返したせいか、狙いを外しコートの外へと飛んで行くボール

それに皐月が追いすがり、コートの中、球磨の頭上へと押し戻す

球磨が飛び上がって、返って来たボールに手を伸ばすと

その腕をムチの様にしならせて、ボールへと叩きつける


球磨の手から弾丸の様に打ち出されるボール

風を切り裂き、空気を震わせ、一直線に木曾達のコートへと飛び込んでいく


卯月「そうはとんやがおろさないぴょんっ!」


ボールがネットを越える直前、卯月の小さな手がひょいっと生える

それで十分

ネット ギリギリを飛翔していたボールが卯月の手に引っかかり、その勢いが急激に落ちる

後は簡単。ネットの向こう側に落ちるようにと、少し向きを変えてやれば


皐月「っと!」


卯月の手によって弾かれたボールが

コートの間際のネットの真下と、何とも嫌な位置に落ちていく

慌てた皐月が、ヘッドスライディングでもする様にボールに飛びつくも

すんでで届かず、卯月達の得点に加わった


卯月「ま、ざっとこんな所ぴょん」

木曾「やるじゃねーか、卯月」

卯月「ところで、木曾?」

木曾「ん?」

卯月「 「とんや」って何屋ぴょん?」

木曾「おまえ…」


不思議そうな顔をして そんな質問してくる卯月に、閉口する木曾

別に「とんや」の意味が分からなかったわけでは断じて無い

ただ、呆れ半分ともう一つ…


木曾「豚肉屋だよ…」


とんや→豚屋。なんて、ちょっとしたダジャレ

いくらなんでも信じないだろうけども

たまには悪戯したくもなる


卯月「なるほどっ」(←信じた

木曾「…」


信じたのか…信じるとは思わなかったが

訂正するのも少々馬鹿らしい気もしてくるし…バレたらバレたで弥生や長月達が怖そうでもある…

さて、どうする?


球磨「おらーきそー、さっさとサーブするクマー」

木曾「ちっ、ほらよっ!」


せかされるままに、サーブを送る木曾

結論・どうもしない

問屋を下ろす機会なんてそう多くは無いだろうし

それ以前に、クマに勝つ。そっちの方が大事だなっと


それから、さらに進んでいく試合

その中で溜まっていく木曾のフラストレーション


木曾「…」


ボールが来ない

先程から卯月から回されたボールを叩き返しているだけだった

それはそれで役割分担としては正しいのかもしれないが


木曾「…」


そして、またしても卯月の方へ飛んで行くボール


木曾「っ!さ・せ・る・かぁぁぁっ!」

卯月「ぴょんっ!?」


1・2の3っで踏み込み飛び上がると、卯月とボールの間に強引に割り込む木曾

皐月から放たれたスパイク

その勢いのあるボールをネットの間際で受け止めると、そのまま球磨たちのコートへと押し返した


木曾「よっしゃっ!」


内心ガッツポーズを決める木曾


皐月「て、思うじゃん?」

木曾「!?」

球磨「だーから貴様は木曾なのだーっ!」


木曾が木曾なのは当たり前って、思うじゃん?

だれだってそうだ、木曾だってそうだ


目の前には球磨の顔

木曾の視点で見るならば、ネットの下から突然生えたきたようにも見えたろうか


球磨の拳がボールを殴りつける

跡がつくんじゃないかって位にボールが凹むと、その弾性を持って打ち出された


木曾「のはっ!」


木曾が背中から砂浜に落ちた

砂の上なのが幸いしてか、大した事はなさそうだったが

その顔には、赤々とボールの跡が印刷され

その際の衝撃のせいか、いつもの眼帯が弾け飛んでいた


卯月「木曾…大丈夫ぴょん?」


腰をかがめて、木曾の顔を覗き込む卯月

その顔に手を伸ばし、ほっぺたを突っつく


木曾「大丈夫、だが…それをやめろ」


卯月の指を鬱陶しそうに払いのける木曾


卯月「♪」


つんつんつんつんつん

そんな態度をとられたせいか、卯月の悪戯心に火が付き更に突っつき出す


木曾「しゃーっ!」

卯月「ぴょーん♪」


木曾が猫の見たいな声を上げて威嚇してみると

兎みたいな声を上げて、その場から逃げ出す卯月

いや、兎は鳴かないけども


球磨「くまくまくまくま♪ いつかは痺れを切らすと思っていたが…くくくくく」

皐月「結構我慢した方だったかもね」


ボールを卯月に集めていた理由

負けたみたいに見えるじゃないか、それもあったが

もう半分は、木曾の反応が面白そうだったから

そして、案の定飛び込んできた木曾は、待ち構えていた球磨の餌食になったのでした


ぴーっ!

笛の音が鳴り響き、試合の終了を告げる

勝ったのは無論


皐月「やったー、かったかったー♪」

球磨「ま、とーぜんの結果だクマ」


球磨に飛びついて、素直に勝利を喜ぶ皐月

そんな皐月を腰にぶらさげ、ささやかな胸を張って、えっへんと自慢げな球磨ちゃんだった



ーパラソル周辺ー


バレーの決勝戦が終わる頃には

黄昏の水平線に夕日が沈み始めていた

日が暮れてみれば、夏とはいえ濡れた水着のままでは少々肌寒く

風邪を引く前にと、一旦着替えの時間となった

目の保養タイムは終了です


そして、球磨が着替えから戻ってみれば

お祭り屋台だった北上様の海の家が、焼肉屋に様変わりする事となる

先ほどまで、ソースの焦げる匂いを漂わせていた鉄板からは

肉の焼ける香ばしい匂いが上がりだす


提督「夕張、アレは準備出来てる?」

夕張「か・ん・ぺ・き♪」


自信満々にウィンクをされた


提督「よろしい。それじゃあ…金剛さん連れてってあげて。そろそろ、いたたまれないわ」


提督が、レジャーシートの隅っこ。そこで置物になっている金剛さんの方に視線を向けてみれば…


金剛「しくしく…しくしく…」


膝を抱えて黄昏れてる金剛さん


夕張「自分でイジメておいて…」

提督「言うほど、なんもしてないと思うけど…」

夕張「いじめっ子は皆そういうのよ」

提督「さいで…」


夕張が金剛の傍により、その耳元に顔をよせて話しかける


金剛「夕張っ!直ぐ行きましょう、さあっ今直ぐにっ!」

夕張「ちょ、ちょっとひっぱらないでって~…」


急に立ち上がった金剛が、夕張を引きずって鎮守府の方へと駆けていった


提督「何を言ったのやら…」


ま、元気が戻ったならそれでよし、かな




北上「ほい、瑞鳳。北上様 特製の焼き鳥だよーん」

瑞鳳「さんきゅっ」


北上からアツアツの焼き鳥を受け取る瑞鳳

その隣には、「瑞鳳」なんて書かれた一升瓶が転がっていた


瑞鳳「いっただきまーす♪」


酒のせいか、お祭り気分にでもなったのか

やに上機嫌に焼き鳥を口に運ぶ瑞鳳

小さな口を目一杯広げて、かぶりつこうとしたその時


瑞鳳「っぅ。な、なに?」


突然、砲撃音

それに遅れて、夜の帳が降り始めた砂浜が 真昼の明るさを取り戻す


瑞鳳「おととと…」


突然の事に、手から零れそうになった串を慌てて掴み直す瑞鳳


「Burning!Fireworks!!(花火)」


2度目の砲撃音

今度は金剛の威勢の良い掛け声と共に


瑞鳳「へぇ…」


食べるのも忘れて、空を見上げる瑞鳳

その横顔が、空に咲いた大きな花火の燐光に色とりどりに照らされる


球磨「うーづーきーっその肉は球磨のクマァァァっ!」

卯月「うっさいぴょんっ!こんなん食べたもん勝ちぴょんっ!」


打ち上げ花火のその下で、軽巡と駆逐艦が壮大な肉の取り合いをしていた


弥生「花火…綺麗なのに…」


花火の灯りに照らされる弥生

拗ねたような、イジケたような視線を卯月に向けては見るものの


卯月「木曾に食わす肉などっ!」

球磨「あんまりないクマっ!」

木曾「てめえらっ、きたねーぞ二人がかりでっ!」


肉の取り合いは、主に木曾の分から差し引かれているようだった


弥生「はぁ…」


花より団子、それはそうか…卯月だもの


長月「お前も独り身か?」

弥生「長月…お前もって、菊月は?」

長月「あそこだ…」


弥生の隣へ寄り添うように立つ長月

その視線が指し示す方では、レジャーシートの上で横になってる菊月

お腹にはタオルケットが掛けられて、さも気持ちよさそうに眠っていた


弥生「…ふふっ。可愛い…」

長月「まったく。遊ぶだけ遊んだらこれだ、子供じゃあるまいにな」


苦笑する長月

そうは言うものの、菊月を見つめる瞳は随分と優しげだった


弥生「子供だよ、まだ。私も…」

長月「?」


卯月と一緒に花火を見れなくて、ちょっと拗ねたりもしてるのだから

本当に、自分の感情だけはままならない

それが表情に出なくたって…あるいは、出せるようになったら大人になれるのか


長月「…まあ、姉さんが子供だというなら、私もそうなってしまうな」

弥生「長月?」


長月から珍しく 姉さん なんて呼ばれて、不思議に思いそちらをみる

花火の上がる夜空を見上げる長月

自分も子供だと言った長月

普段は強気に振舞っている長月

そんな彼女でも、たまには弱音を零したくもなるのかな


長月「綺麗だな…」

弥生「うん。でも…」

長月「ん?」


長月の手をそっと握る弥生

指と指を絡ませて、恋人にでもするように、優しく大事に握りしめる


弥生「長月の方が綺麗だよ?」


ふわりと、表情を崩して小さく微笑みかける弥生


長月「な…ど、どこで覚えたんだ、そんな言葉」


突然の姉の言葉に、見るからに動揺する長月


弥生「ふふっ。どこって、司令官…皐月にいっつも言ってた」

長月「…ああ、そうだったな」


呆れとも諦めても付かない ため息を零すと、再び視線を花火に向ける

花火に照らされる長月の横顔

その熱気にでも当てられたのか、ほんのりと頬が色づいているようにも見える


弥生「…綺麗だね」

長月「姉さんも、な」

弥生「うん、ありがと…」


弥生の方は見ずに そう言うと

そっと長月が弥生の手を握り返した




文月「わーい♪はなび、はなびー♪」


満開の花火に大喜びの文月が、その場でぴょんぴょんっと跳ねまわる


大鳳「文月、あんまりはしゃぐとコケるわよ?」

文月「はーい♪」

大鳳「あら」


ててっと、大鳳の方に駆け寄って抱きつく文月


文月「えへ♪」


下から大鳳を見上げると、にっこりと微笑んだ


大鳳「ふふ、甘えん坊さん」


そっと、文月の頭を優しく撫でる

大鳳の細い指が、文月の滑らかな髪の間をすぅっと通り抜けていく


文月「手、届きそうだねぇ」


手の平を目いっぱいに広げ、その小さな手を花火に向けてぐっと伸ばしてみせる


大鳳「そうね、それじゃあ…はいっ」

文月「わわっ」


文月を抱え上げると、軽々と自分の両肩に足を掛けて肩車をする


文月「おー、たかいたかーい♪」

大鳳「こらこら、あんまり暴れると危ないわ」


自分の肩の上ではしゃぐ文月を、そっと窘める


文月「はーい…でも、やっぱり届かないねぇ」


今度は両手を伸ばしてみても、夜空の花火には届かない


大鳳「そうね。空でも飛べたら、届くかもしれないけど…」


夜空の風は、さぞ気持ちが良いだろうと。そんな夢想をする大鳳


文月「あははは。大鳳さん、子供みたいだね」

大鳳「そうかしら?だれでも一度は考えると思うのだけれど」


それが、早いか遅いか、逃避か理想かの差はあれど


文月「じゃーじゃー。飛べるようになったら、あたしも連れてってね?」

大鳳「もちろん」

文月「わーい♪」


それがいつになるのかは分からないけれど

今は見上げる花火を楽しむ2人だった




提督「上手くいったな」

夕張「うん、初めてにしては上出来ね」


花火を見上げる、提督と夕張

その完成度にご満悦といった具合だった


夕張「花火作れ、なんて言われた時にはどうしたものかと思ったけど」

提督「そうなのか、嬉々として作ってたように見えたがな」

夕張「そりゃ、楽しくはあったもの…」


花火が空を彩る

その精彩に、しばし言葉がなくなった


夕張「提督も、案外と気が利くじゃない。皆に花火見せてあげるなんて、さ?」


提督との距離を詰めると、ちょんっと肘で提督を突っつく


提督「別に、私が見たかっただけ…」

夕張「こういう時は、ウソでもそうだって言っとくものよ?」

提督「そんな事言ったら、夕張が ときめくでしょう?」

夕張「いいじゃない?たまにはドキドキさせてくれても?」


からかう様な笑みを向ける夕張


提督「…ほいっ」

夕張「ひゃぁ!?」


突然、背中に走った感触に思わす変な声が上がり、ついでに背筋も伸びてしまう


提督「にひひひひひ」

夕張「こ、この…あなたねぇ」


背筋伸びた夕張の制服の隙間から、提督の手がすっと逃げ出してくる


提督「ドキッとしたろ?」

夕張「そういうんじゃないっ、でしょっ!」

提督「けふっ」


夕張の正拳突きが、提督の腹部に直撃する

とはいえ、見た目ほど力は入っていなかったけども


夕張「まったく、金剛さんも大変ね」


正拳突きの構えを解くと

呆れと同時に、こぼれるため息


提督「まったくだな…」

夕張「自分で言う?」

提督「だって、おまえ…アレでは労いに行きたくてもなぁ…」

夕張「あ…」


花火の発射点に目を向ける2人

当然といえば当然で、花火とはいえ主砲を撃ちまくってる戦艦に近づけるわけもなかった




望月「…けふっ」


レジャーシートに腰を下ろし、ぼーっと空を見上げる望月

夜空に浮かぶ花火を眺めながら、ラムネをちまちま飲んでいた

鼻から抜ける炭酸の刺激を味わうように、しばし目を細める


望月「…良いのかい?」


ふと、思い出したように口を開く

その隣には 膝を抱えた三日月が

同じように ぼーっと空を見上げていた


三日月「…別に」


何が、とは言わないし

何を、とも聞き返さない


三日月「望月だって…」

望月「別に…」


端的に繋がっていく、阿吽の会話


三日月「素直じゃないんだ」

望月「三日月が言う?」


そうして、顔を見合わせると小さく笑い合う

「司令官と一緒に見なくても?」から、はじまる一連の会話だった


望月「しゃねーなー。そいじゃ、行きますか」

三日月「うん」


一緒に立ち上がると、提督の姿を探して辺りを見回す


三日月「あれ…」

望月「なにやってんだ…」


直ぐに見つかったのはいいが、提督が夕張に正拳突きをかまされていた




北上「たーまーやー!」


持ってきた鉄板を、羆と肉食兎(アルミラージ)に占領されて手持ち無沙汰になった北上様

やることもないので花火が上がると同時に、声を上げたりしていた


多摩「呼んだ?」

大井「貴女じゃないわ、座ってなさい」


大井が立ち上がろうする多摩の肩を抑えて、座らせる


北上「なはははは。多摩っちだけにって?」

多摩「そうそう。艦隊のアイドル多摩ちゃんにゃー」

大井「アイドルって…」


そう言うなら、もう少し可愛げを持って欲しい所だけれど


北上「握手会とかやっちゃう?」

多摩「めどい…」

大井「…」


これである


多摩「…そうにゃ、握手をしない握手会をすれば良いにゃ」


「…」

こいつは妙案だとばかりに言いはするものの

妹2人には、動物園の客寄せパンダのイメージしか浮かばなかった


「あ、ちょっとそれはっ」

「そんなチマチマ焼いてる ずいほーが悪いんだぴょーん♪」

「いや、そうじゃなくて…」

「…うげ、生ぴょん…」

「だから止めたのに…ほら、お水」

「ぶー瑞鳳に騙され、けほっけほっ!」

「ちょ、急に吐き出さないでよっ」

「これっ、お酒だぴょんっ、何考えてるぴょんっ」

「あ、ごめん…」


なんてやり取りが横から聞こえてくる


大井「動物園の前に ここ…居酒屋じゃないの…」

北上「あ、大井っちもそう思った?」


「あ、多摩っお前、いつの間に」

「はぁ、怒りっぽい木曾はカルシウムでも取るがいい」

「骨だけじゃねーかっ」

「骨くらいでやかましい…」(←骨ごと食ってる


北上「…」

大井「…」


遠い目をして見ないふりをする北上と、頭を抱える大井

お酒と肉の匂いに包まれた花火会場だった




睦月「綺麗な花火ね♪」(←如月の真似

睦月「君の方が綺麗だよっ」(←提督の真似


だきゅっ…(←自分の体を抱きしめてる


夜空の花火を背景に、広がる爆音をBGMにして

あれやこれやと、身振り手振りを交えて、一人芝居を打つ睦月


睦月「て、やりにいかないの?」

如月「何処で、覚えてくるのよ、そんなの…それに…」


それをやろうと、日焼け止めを持ってきてみればあの結果だった


睦月「もしかして、まだ怒ってるし?」


おずおずと如月の顔を覗きこむ睦月


如月「怒ってないもん…」


ふいっと視線を逸らしてみせる


睦月「嘘だっ、如月ちゃんは「もんっ」なんて言わないよ」

如月「…」

睦月「いつもはもっとこうっ「にゃしーっ」って、言うんだよっ」

如月「…!?」


初耳だった、寝言の話かと思うくらいには見に覚えが無かった


睦月「怒ってないんだよねっ、ねっ」

如月「…はぁ」


怒ってないなら証明してみせろってことなのかしら…

本当に怒ってるわけじゃない、ただ拗ねてるだけなんだけど…

まあ、でも…睦月にとってはどっちも同じに見えるかも


如月「にゃしー…」


唇を尖らせながらも、とりあえず口にしてみる

これで、信じてくれるなら安いものかとも思ったけども


睦月「おおっ♪睦月にゃしーっ♪」


如月が乗ってきたのが嬉しかったのか、声を弾ませる睦月


如月「如月にゃしー…」

睦月「えへへ、おそろいだねっ♪」


ぐっと、拳を握り嬉しそうな顔をする睦月

「おそろいだねっ♪」それが言いたかっただけらしかった


如月「ふふっ…ほんとに、怒ってはいないから、ね?」


だんだんと へそを曲げてるのが馬鹿らしくなり

ついには口から笑いが溢れてしまっていた


如月「睦月ちゃん」

睦月「なになにー?」


手招きをして、睦月を招き寄せる


如月「髪、ボサボサになってるわ…」

睦月「はっ、また提督の仕業かっ!」


慌てて睦月が髪の毛を抑える睦月


如月「ふふっ、今回は違うわねぇ…」


どちらかと言えば、潮風の悪戯か

しかし、睦月でも学習するくらいには、提督にボサボサにされていたのかと思うと

あの人にも困ったものだと思ってしまう


如月「髪を直したら司令官の所へ行きましょうか」

睦月「はーい♪」


睦月を後ろから抱きしめるように抱え込むと

手櫛で優しく、ゆっくりと髪を整えていく如月だった




金剛「しくしく…しくしく…」


金剛が皆から離れた場所で独り、花火を打ち上げる


金剛「しくしく…しくしく…」


砲撃音の合間に忍ばされるすすり泣き


夕張は嘘つきデース…

「提督と2人で花火見れたら盛り上がると思わない?」

あの時の夕張の台詞が思い返される


金剛「これじゃ、提督どころか誰も近づけないじゃないっ!」


一斉射!!

金剛の憤慨を代弁するかのように、放たれる46cm砲

その花火弾が夜空に一斉に咲き誇り、真夏の風物詩を作り出す


だが、その代償に金剛の周囲には

骨の髄まで震えそうなほどの轟音と

肌を叩く熱風が常に吹き荒れていた


金剛「硝煙もっ、この痛みさえっ、金剛のドレスだと言うのデスカっ!!」


駄々をこねるような乱れ打ち

流れるように花開いていく光景に

皆のところから、歓声が聞こえてくる…


金剛「もうっ、もうっ!」


やめられなかった

皆がよろこんでくれてるのだ

この孤独を理由に途中で止める事だけは


金剛「Burning!ラーブっ!!」


ならば、せめてっせめてっ

皆がより楽しめるよう、引いては提督の心に残るようにっ


金剛「テイトクー、I・LOVE・YOU!!」


涙に濡れた金剛の告白も、花火の音に掻き消える


そんな夏の一日だった



ーおしまいー



EX:新米少佐の業務日誌 2ページ目


初めまして、御影いつき です

久方ぶりの方は、お元気でらしたでしょうか

此処から先は、ちょっとした小ネタになります

僕の鎮守府の一幕ですね

よろしければ、もう少しお付き合い下さい


ー執務室ー


天津風「それじゃ、私はこれ出してくるから」


書類をまとめた天津風が席を立つ


いつき「はい、今日はそれでおしまいですので。そのまま上がってくださいね」(←ここの提督、男の子

天津風「ええ。それじゃ、お疲れ様」


軽く手を振り、そのまま退室していく天津風


いつき「ふぅ…今日も何とか終わりましたね」


補給に整備に艦隊の強化、さらには海域の警戒と防衛…

新人だからと言って、状況は待ってくれるものではない

大元帥からは何時でも頼れ、なんて言われてはいるが

はいそうですかと、泣きつくわけにもいかないし…


いつき「僕、あの人苦手なんだよなぁ…」


思わず愚痴が漏れる

「困った時は何時でも頼りなさいっ、あいつにっ」

「あいつに」(←本編の提督さん

堂々と人に丸投げする大元帥もどうかとは思うが

とはいえ、素直に頼るのも悪くないとも思う…


いつき「でも、四の五の言ってられる余裕があるだけ、まだ良いんでしょうね」


そう結論して席を立つ

自分の都合が優先出来る この状況を今は喜ぶべきだろう

取り敢えずは、夕食を食べて風呂にでも入りましょう

疲れた体と頭では何が出来るでもないのだから


いつき「と、その前に…」


出口に向かっていた足を横にそらして

応接用のソファーに向ける


いつき「阿賀野、おーい阿賀野」

阿賀野「くかーzzzz・・・・」

いつき「困りましたね…」


眠ってらっしゃる

多少呼んだところで起きやしない

規則正しく上下する胸に、健康的に肉づいたお腹

そして、寝返りの度に太ももが擦り合わさり、スカートの中まで見えそうになる


いつき「…」


正直、目のやり場に困る

役得か、なんて思わないと言えば嘘になる

だが、露骨にそんな視線を向けるわけにもいかず

取り敢えずは目を逸らすことで急場を凌ぐ


昼下がりに遠征の報告に来た阿賀野

ちょっと休んでく、と言ったっきり気づけば寝息を立てていた

急ぎでやる事も無いので、放ってはいたものの

こうなるなら、天津風がいる時にでも起こしてもらえば良かったか

と、少し後悔してはみる


いつき「…しかた、ないか…」


了解もなしに、女性の体に触れるのもどうかと思うが

致し方ない。このまま置いて部屋を出るのも薄情だろう


いつき「阿賀野…阿賀野さん…」


恐る恐る、ほっぺたを突いてみる

柔らかかった…見た目通りに


阿賀野「んー…zzzz」


煩わしそうに顔をしかめるも、直ぐにまた眠りこける


いつき「ああ、もう…あーがーのーっ」


ちょっと語気を強めて、さらに両肩を掴んで強めに体を揺すってみた

起きた時に怒られはしないかと不安になるが

寝てる君が悪いんだろうって良い訳が通じることに期待しつつ


いつき「いい加減に起きてくださいって…」

雲龍「そうね、寝てるままというのも悪くはないけれど、初めては起きてる時がいいわよね、お互いに…」

いつき「いえ、別にそこまでする気は…」


そこまで口にして、ふと気づく。自分は今誰と喋ってる?

阿賀野が起き…てるわけはない


雲龍「据え膳よ?」


不思議そうに首をかしげる雲龍

暗に「食べないの?」と、言っているようだった


いつき「う、雲龍さん…いつから…」

雲龍「奥手な提督の毒牙が阿賀野さんを襲う辺りから、かしら?」


思い返すように遠い目をする雲龍

何処に目を向けたって、そんなシーンは見つかるはずもないのだが


いつき「そんなシーンは無かったでしょうっ」

雲龍「無いなら作ればいいのよ?作ってもいいのよ?」

いつき「…」


疲れる、正直に…

からかわれている事が分かっているだけに、余計疲れる

分かっているなら返しようもあるだろう、なんて思うかもしれないが

この状況で冷静になれるほど、女性に対して免疫はなかった


いつき「いえ、それより…阿賀野の事お願いします…」


とりあえず、雲龍がいるなら後を任せれば良いと

阿賀野から手を離す…そのつもりだったのだが


時津風「しれぇー何やってんの…」

雪風「ゆ、雪風は何も見てませんから…」


声の聞こえるままに顔を上げてみれば

開け放たれている執務室の扉…


そして、白い目をしている時津風と、両手で顔を隠している雪風


いつき「あ、え…」

雲龍「ま、そう見えるわよね」


ソファーの上で寝ている阿賀野の両肩に置かれている いつきの手

寝ている人間の肩に触れているということは、自然と体勢はお互いに平行に近づくわけで

平行に近づいているともなれば、押し倒してるようにしか見えないという現実


雲龍「違うのよ、時津風」

時津風「なーにが違うってのさ…」

雲龍「これはそう、若気の至なの…笑って、許してあげて」


ニッコリと微笑む雲龍。状況は更に悪化した


雪風「雪風は何も見てません、雪風は何も見てません、雪風は何も見てません」


両手で顔を隠し、うわ言の様に繰り返す雪風


時津風「まぁ、許してやんよ。時津風さんは心が広いからね」


雲龍に言われた通り、笑顔を浮かべる時津風


雲龍「いい子ね。さすが時津風「は」心が広いわ」

いつき「…」


嫌な予感しかしない

わざわざ、時津風「は」なんて強調するんだ、ろくな事にはならんだろうと


時津風「まぁ、後は若い人たちで楽しみなよ…いくよ、雪風」

雪風「はひぃ~…」


雪風の背中を押しながら、その場から退場する時津風

その足音が完全に聞こえなくなったと思いきや


時津風「あーまーぎーっ、やーはーぎーっ、しれぇぇぇlがぁーっ」


廊下を突き抜け、執務室まで聞こえてきた


いつき「…」


おわった…もう抵抗の余地もないだろう

天津風が弁明してくれることを祈るくらいか…


雲龍「さ、夕食の肴ができたわね…うふふふふ」


クスクスと笑いながら、扉の向こうへと消えていく雲龍


いつき「…はぁ」


いい加減に阿賀野から手を離すと、そのまま床に腰を落とした

男一人に、艦娘多数…補給だ戦線維持だの言う前に

こっちの方が何倍も手ごわかった


阿賀野「…」


ちなみに、ちょっと前には起きてたり阿賀野姉

狸寝入りは得意な方だったりする

この姉も大概だった



ーEX:新米少佐の業務日誌 2ページ目 おしまいー


後書き

はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです

ちなみにですが、バレーのチーム分けと、トーナメント表、勝敗の結果はダイスを振って決めてみました
面白い展開になるかとも思いましたが、ダイス神は球磨達の勝利を選んだみたいです

それではこの番組は

金剛「提督、提督…金剛は、金剛は、がんばりましたよね、ね?」(←燃え尽きてる
提督「ああ、うん。よくやったよくやった」
夕張「金剛さん、ほんとごめん…」(←平謝り

瑞鳳「ねぇ、卯月…好きって言って…」(←酔っ払ってる
卯月「うぇぇぇ…瑞鳳が気持ち悪いぴょん…」(←絡まれてる

長月「助けなくていいのか?」
弥生「大丈夫、これがいいの」

球磨「ふぅ、食った食った…」
多摩「たーまーはどこでも丸くなるぅ…」
木曾「だからって、俺に絡みついてんじゃねーっ」

北上「大井っち、姉妹艦ってなんだろうね…」
大井「私は…「北上さんと」お揃いなら、それで…」

文月「すぅ…すぅ…」(←寝てる
菊月「すぴー…」(←寝てる
大鳳「うふふ。おやすみなさい、ふたりとも」(←保護者

睦月「ていとくー、ほーめーてーっ!」
如月「ああ、睦月。そんな風にしたら、また提督に…」

三日月「あ、睦月…」
望月「まーた、やられてりゃ…」

もろもろのメンバーでお送りしました


ー以下蛇足に付きー


♪教えて皐月ちゃんのコーナー♪

皐月「教えることはあんまりないっ」
提督「開幕から随分だね…」
皐月「そうはいうけどね…」
提督「…ここまで、書いてきてふと思ったんだ」
皐月「なんだい?藪から棒に」
提督「設定なんて無駄に作るもんじゃねーな」
皐月「…」
提督「何かに使えるかと思ったけど、使う時に纏めるのが一番だと思ったよ」
皐月「…ま、今後の反省点ということで」

皐月「というわけで、特に言うこともないので、その代わりに今回は」
提督「誤変換という名の、NGシーン」
皐月「ちょっと面白かったからね…」
提督「まず一つ目…」

・さんさんと輝く大鳳→◯太陽

皐月「後光が見える?」
提督「もしくは背景のお日様が、大鳳になってたりとかな」
皐月「何それ怖い」

皐月「次は…」

・如月「日焼け止め、縫ってくれない…」→◯塗ってくれない

提督「手術かよって…」
如月「ラブコメが、行きなり医療漫画に代わったらある意味斬新よねぇ…」
皐月「次週の展開が気になりすぎるね…」

提督「ま、こんだけなんだけど」
皐月「気付かずに そのままOKだしてるものもあるかもしれないけどね、征服と制服とか…」
提督「そんな昔のことは忘れた」


♪皐月ちゃんラジオ♪

皐月「はい、それじゃーお手紙という名のコメント返しだよっ」
提督「いつもありがとうございます」
皐月「今回はねー…」

・木曾さんについて色々
・天龍とは偉い違い
・最高だなこの鎮守府
・リアル艦これ事情
・実際にあったやりとり
・睦月型=ロリコン
・睦月型とジュウコンしたい
・睦月型がいない艦これなんて
・次回もまってまーす

提督「では、例のごとく上から」

・木曾さんについて色々

皐月「木曾さんカッコ可愛いんだって」
提督「カッコいいと可愛いが合わさり最強にみえるなっ」
皐月「見えるだけで、弄られ続ける運命は変わらないけども」
提督「みんな木曾さんが好きなんだよ。嫌いな奴の事からかったりしないって」
皐月「それは分かるけど…ちょっとやり過ぎじゃない?スカートまで捲っちゃってさ…」
提督「それで木曾がめげるような性格だったら考えるけど…」
皐月「あー…うん。木曾さんの受難は続くんだね」
提督「いえす」

提督「それでも今回は頑張ったね」
皐月「引き分けまで持ってけたのは、凄いと思うけど…勝たせてあげられなかったの?」
提督「開幕で押し切ってればその目もあったろうけどね…あの時点じゃ意趣返しが限界」
皐月「次があったら?」
提督「どうだかな、球磨もそのつもりだろうし…ダイスでも振って決めようかっ」
皐月「メタなこと言わないの、そいじゃ次」

・天龍とは偉い違い

提督「天龍はきっと、初っ端に「フフ怖」なんて言っちゃったのが不味いとおもう」
皐月「あの台詞は確かに、そうもお思うけど。お前に最高の~って台詞も大概じゃない?」
提督「それだけなら、そうなんだけど…全体的な台詞の印象がねぇ…」
皐月「天龍さん…世界水準推しなんてするから…」
提督「木曾のがまだ落ち着いて見えるもんなぁ…」

・最高だなこの鎮守府

提督「ありがとうございます」
皐月「ま、ちょっと…いや、かなり騒がしいけどね」
提督「嫌なの?」
皐月「嫌じゃないけど…」
提督「好きっていいなよ?」
皐月「ラブコメなら後にしてっ!」
提督「ちっ」
皐月「まったく…」

提督「放っておくと、皆勝手に動き回るから。纏めるのが大変って点もあるけど」
皐月「卯月とか?」
提督「「あれは、声が大きいからまだマシ。文月とか何処に行ったのか分からん時あるもの」
皐月「あははは、気づけばその辺にいるからねぇ」
提督「三日月なんか、カメラ向けてないと画面の外に逃げたがるし…」
皐月「そりゃ…三日月の出てるシーンってだいたい…」
提督「私のせいか…」
皐月「無くはないんじゃない?」
提督「スカートめくりのシーンとか残ってるのに…」
皐月「泣かせたら、怒るよ?」
提督「うぃー」

・リアル艦これ事情

提督「司令部lv:103の万年少将だよ」
皐月「資材は各29万以上は維持するように心がけてるね…たまに倉庫に入らなくなって大型建造に回したりも」
提督「46cm砲の改修もちまちま始めたから、まるゆ増産と合わせれば、まぁそれなりに消費は出来るはず」
皐月「上限が、30万じゃなかったら今頃どこまで貯まってたんだか…」
提督「ちなみに、修復剤も2990~3000の間だな」
皐月「こっちはほんとに倉庫に溢れかえってるね…」
提督「計画的な使い道とか無いからな…」

皐月「大型建造も 出したいのは出してるし」
提督「ケッコン艦は、皐月と金剛、あと大鳳と瑞鳳だね」
皐月「睦月型のレベリングが終わってないって事実」
提督「これで、全員とケッコンしてたらネタにもなったんだろうけど…」
皐月「時間の問題でしょ?」
提督「ま、そのうち終わるとは思うけど」
皐月「ん、待ってる」

提督「ま、こんな感じです」

・実際にあったやりとり

皐月「んー、ボクらに装甲を求められたら、そりゃ、うん」
提督「いや、まて…」
皐月「ん?」
提督「装甲だの耐久値だと言うがな?
耐久値を上げた重巡はどうだ?カスダメが蓄積するばかりで気づけば中破してるじゃないか?
では、装甲を上げた戦艦はどうだ?やれル級タ級だ姫だ鬼だと、どうせワンパン大破の目は残ってる
君らとてあるだろう、その経験が。ボス前で大破撤退なんて珍しくもない
では駆逐艦はどうだ?カスダメがあっても些細なものだ、一発直撃したって、中破で止まってもくれる
結局、当たらなければどうということはない、これは至言だ。昔の人もそういっていたじゃないか」

皐月「司令官、司令官」
提督「ん?」
皐月「ながい」

・睦月型=ロリコン

如月「はぁい❤今回私の水着姿に興奮した人~、皆さん揃ってロリコンでーす。
    けーど、嫌なの?嫌じゃないわよね?ほら、何も問題なくなったわ」
皐月「如月…どしたの?」
提督「この世の真理を説いてるだけ…睦月型を好きだと言えない世界なんて、そっちのが間違ってる」
皐月「…」

・睦月型とジュウコンしたい

提督「すればいい。何を躊躇っておられる?
    ナンバーワンよりオンリーワンか?いいや、それでは足りないよね?
    だったら、オールインワンに手を伸ばすしか無いでしょ?全部叶えてしまうがいい」
皐月「なんか、今日の司令官…いつも以上に黒い…」

・睦月型がいない艦これなんて…

皐月「こっちはオススメコメントだね」
提督「睦月型のいない艦これなんて…肉のないステーキみたいなもんだろう」
皐月「…え、それ…なにもないじゃない?」
提督「ソースとグリル野菜くらいはあるかもね?」
皐月「…あーうん」

・次回もまってまーす

皐月「うん、今回も楽しんでくれてみたいで、ボクも嬉しいよ」
提督「ラブコメシーンで喜んで貰えているなら、私も妄想したかいがあったよ」
皐月「皆、ああいう文章好きなんだね…」
提督「ちなみに教科書は、ラノベだったり如何わしいゲームだったりです」
皐月「…ボクの前で突然始めるのはやめて欲しい」
提督「そう言ったって、気になるお年頃なんでしょう?」
皐月「なーらーなーいーっ!」
提督「そのうちなるなる」
皐月「うっさいっ。もう、閉めるからねっ」
提督「はいはい」

提督「それでは皆様。最後までお付き合い頂きありがとうございました
   また、オススメ・コメント・応援・評価して下さった方々、いつも励みになっております
   重ねて御礼申し上げます。よろしければ、また次回もお会い致しましょう」(最敬礼
皐月「またねー」

皐月「司令官さ…」
提督「ん?」
皐月「いつもああしてればいいのに」
提督「やだ、疲れる…」
皐月「あ、そう…」


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2017-08-10 12:10:56

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1: フラン 2015-08-11 23:03:10 ID: njNjZho4

今回も楽しかったですw
艦これは映画化決定しましたねどうなるんでしょう?(復活もあるんじゃないかと思ってたりしますドロップとかあるし、誰とは言えませんが...)
今回のイベントE-1菊月を編成してるとDに行ってくれるので助かりました。
ふと気になったのですがこの鎮守府の強さランキングはどうなっているんでしょう?私気になります!次回も楽しみにしていまーす!

2: Японский перец 2015-08-11 23:30:43 ID: XtvC80Hj

うまるちゃんブームがここにも
卯月はUDK姉貴だった...?

睦月型のスク水...睦月型のスク水...
ァッ

誘っといて初な如月ちゃん可愛い

コスプレにも需要はありますよ、金剛さん

北上さんが作る焼きそば、懐かしい味がしそう

皐月と球磨が同チームになるといい、卯月と瑞鳳が戦うといい、ダイス神は分かってますね

いつか大鳳さんと球磨ちゃん戦わせてみたい

やよなが...
ンア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙

瑞鳳さん完全に落ちてますねぇ

終始ニヤ付きが止まりませんでした、有難うございました
毎度長文サーセン、でも止まらんとです...

次回も楽しみに待ってます

3: SS好きの名無しさん 2015-08-15 17:31:01 ID: LtY012hG

提督の鎮守府では睦月型以外の駆逐艦は居ないのですか?

4: SS好きの名無しさん 2015-08-24 09:50:00 ID: lH4D4LyH

相変わらず、長月の可愛さね。
これには、気分が高揚します


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