2015-08-31 00:13:54 更新

概要

Twitter上で催されていた #キスの格言ミューズ 企画に勝手に参加させて頂いた際に書き上げた作品です。
キスの位置と意味がお題になっている企画で、勝手ながら 頬の上:満足感 で書かせていただきました。

お姉さんぶりたい不器用ポンコツエリーチカと、尽くすタイプの海未ちゃんSSです。
若干性的な表現があるので、苦手な方注意してください。
えりち:大学1年
海未:高校3年

pixivやTwitterにも同一の作品がありますが、より多くの方に見て頂きたいという思いと、pixivのアカウントを持っていない方への配慮から、コス苔本人による転載です。


真夏の夜。エアコンのタイマーもきれて、熱帯になる一室。ヒトが発する、むせかえるような濃い匂いの中で、汗か涎か、それとも潮かすらわからないほどくちゃくちゃになって息を整える2人。

「絵里、これで、眠れますか…?」

額に張り付いた髪を剥がしながら、鉛のように重い舌と唇で言葉を紡ぎ合う。

「ありがとう海未…ごめんね、遅くまで」

「いえ、私も気持ち良くしてもらいましたし」

「そう…良かった」

汗を拭いて、水が飲みたい。エアコンをつけ直して、抱き合って寝たい。でも、起き上がるのはだるいし、ずっとこうしていたい。そう思いながら、海未の胸に顔を擦り付けた。

「犬、みたいですね」

「…わんわん」

「汗かきましたし、タオルもってきますね。水飲みます?」

どうしてわかるんだろう。そうやって私の頭を撫でたら伝わるのか。私も、海未の頭を撫でればわかるんだろうか。喋る余裕が無かったから、無言でうなずいた。

「寝ちゃ、ダメですからね」

そういって私の頬にキスして、海未はベッドを下りた。私の方が年上なのに、お姉さんなのに、ちょっと情けなかった。せめてエアコンくらいはつけようとサイドテーブルに手を伸ばしたけれど、掴んだのはテレビのリモコンだった。

「エアコンはこっちでしたね、絵里」

いつの間にか見られていて、ますます情けない気持ちになった。バスタオルを手渡され、のろのろと起き上がって身体を拭く。氷水の入ったグラスを口元に出され、海未に飲ませてもらう。

「こぼさないようにゆっくり…あ、と」

うまく飲めなくて、水が顎から鎖骨へ滴りおちる。私のベッドだし多少こぼれても…と思ったら、海未が胸から鎖骨を舐め上げた。あぁもう、そういうの、上手だなって。

「…っそこまだ拭いてないわよ」

「絵里がこぼしちゃうのが悪いんです」

「破廉恥」

「誰にも言わないでくださいね…?」

「……酔ったら言うかも」

「ならあと1年は大丈夫ですね」

また負けた。ちょっと意地悪な顔を浮かべながら、私からバスタオルを取り上げて身体を拭いてくれた。尽くしてくれるのは本当に嬉しいけれど、このままでいいのかな。

「…私も海未の身体拭いてあげる」

「いいですよ、水飲んでてください」

そう言って身体を拭き始めてしまった。豆電球に照らされたしなやかな裸体に見惚れて、何も言い返せなくなった。

どうしてこうなんだろう。本当はうんざりしているのではないか。眠れないからって私からおねだりして、気持ち良くしてもらって、終わってからもこうだ。私は海未に何をしてあげられたんだろう。私のお世話するの、疲れてないかな。嫌われたりしてないかな。

「ねぇ、海未」

「なんですか?」

「こういうの、嫌じゃない?」

海未のバスタオルが止まる。はた、と目が合う。

「何故、です…?」

あぁどうしよう、頭の中、ぐちゃぐちゃなのに。年上なのに。きっとうまく言えない。

「だって私年上なのに…海未にしてもらってばっかりだし、セックスだって下手だし、子どもみたいに世話してもらって後処理だって海未がしてくれて、でもほんとは私がやらなくちゃいけないのに」

「絵里」

「私がリードしたいなって思っても、いつの間にかそんな余裕なくしちゃうし、それに、嫌いに思われちゃったら私、その」

「絵里」

俯いていたけれど、多分海未は泣きそうな顔をしていた。ベッドに力なく座る私の肩をちょっと乱暴に掴んで、私の太ももに跨がった。

「私が絵里を嫌いだなんて言ったこと、ありますか?」

射抜くような鋭い視線、怒っているのではなく、真剣な、まっすぐな目。同じ目線の高さになって、その視線から逃げられなくて情けなくて涙が出た。

「私がしたくてしてるんです。絵里を甘やかすのが楽しいんです。絵里に尽くすことで喜びを感じているんです」

「そん、な」

「リードしたいと思ってくれていたこと、嬉しかったですよ。本当に」

そう言って目を伏せると、さっきと反対の頬にキスをした。涙も舐めていった。

「…どうして、口にしてくれないの…?」

心からでた疑問だった。ちょっと前まで、唾液に溺れるほど貪るようにしてくれたのに。やっぱり思うところあるんじゃないかって、まだ疑っていた。海未はきょとんとした表情を浮かべた後、くすくす笑った。

「ちゃんと意味があるんですよ、キスにも」

「…え?」

「明日までに調べておいてください。私の伝えたいこと、わかってくれたら明日はなんでも言うこと聞いてあげます」

「なんでも…?」

「リード、してくれるんですよね」

「……えぇ、言うこと聞いて、くれるなら」

「約束です。絵里は明日1限ですし、もう寝ましょう。私も明日は朝練です」

きっと、私の言うこと全部素直に聞いてくれても、絶対勝てないと思う。キスの意味を調べる事を忘れないようにしないといけないなと思いながら、まだ脚の上にいる海未にしがみついて倒れこむ。海未が何か言っていたが体のだるさに全てを預けて、服も着ないで目を閉じた。


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