2015-09-10 18:47:13 更新

朝起きて、徐に体を起こしテーブルに置いてあるはずの煙草を探す。


昨夜のウイスキーが僕の体を動かすのを妨げる。


なんとか煙草を探しだし、窓を開けて、火をつける。外は相変わらずの雨が続く。


もう5日にもなるというのに、雨は止まる気配がない。それどころか勢いを増しているのじゃないかと思うくらいだ。


これでは授業にも出られない。仕方ない。自主休講だ。


決して、サボるわけではない。仕方なく。かと言って、家でやることがあるわけではないし、遊ぼうと思う友達もいない。


諭吉を握りしめて、雨の中パチンコ屋に向かった。


開店まで10分ほどあったが、店の前には何人かの定年を迎えたじいさまと雨で仕事が休みになった土木関係のおじさん。


年金でギャンブルなんかやりやがって。と思うものの、朝から学校をサボり、パチンコ屋に並びに行く僕も同類にあることに変わりない。雨の続いたこの連


日はほとんどここで過ごしている訳であるが、他に何もやることもないのでしょうがない。

僕の人生「しょうがない」ばっかりだ。


諭吉はあっという間に消え、欲しくもない、食べたくもないお菓子に変化を遂げた。午後にもなっていない。時間潰しにもならなかった。昼食を贅沢に取る


金もなく、牛丼を食べ、帰路につこうと思ったが、まだ午前。近くの古本屋で本を漁ることにした。立ち読みはあまり好きではない。一冊を購入し、何度も読


み返すのがとてもいい。友達の少ない僕にとって、読書は本当に良い会話相手だ。本が会話相手なんて人に言うと、大抵それで友達がいなくなることに


はもう慣れた。何冊か候補を絞り上げ、2冊の本を選別し、レジに向かった。レジは最近入ったバイトの子だろうか、同い年くらいの女の子だ。この辺に住


んでいるとなると、同じ大学の可能性は高い。本屋でバイトする女の子なんてよ余程変わっている子であろう。この時間に本を買っていく僕も大概だが。


家に帰り、珈琲はいい。その日の気温、湿度、お湯の温度、高さ、一つ違うだけで味が変わる。まるで生き物みたいに。形を変える。部屋一杯に広がった


珈琲の香りを体全体で受け止めながら、煙草に火をつける。これ以上にない至福の時である。買ってきた本を開き、本と僕との会話の時間だ。


 気づいたら時計の針は夕方を指す時刻になっていた。不意に携帯が鳴る。

 

夜飯どう?


短文だが、実にクリアでいい。面倒なお世辞や、飾りの文章なんかいらない。シンプルでいい。要件だけわかれば。

 

いく。いつものとこ、時間で。

 

りょ


さて、夕食に出かけるにも少し時間がある。パソコンを開き、大学の学生ネットにつなげる。

 本日の授業は大雨のため、休講です。


儲けた。行かなくてよかった。


特になんの考えもなしにネットサーフィンを続けていると、あっという間に待ち合わせの時間になっていた。


10分遅刻。


すでにビールを半分くらい平らげている奴のテーブルに向かった。


歩いて五分のなんでもない定食屋、居酒屋、カフェなんとでも呼ぼうと思えば呼べる、なんでもあるお店が僕らの大抵の夜ご飯のスポットだ。


自炊をしないわけではないが、誘われれば行かないこともない。


店の名前はなんでこの名前にしたのかほんとにわからないが


ポテチ


という名前だ。


店主に聞いてみたこともあるが、


さぁ


と煮え切らない回答を頂いただけである。


いつもの様に生姜焼き定食を頼んでた。


特に絶品と言うわけではないが、なんとなく、懐かしい味のする定食だ。ご飯もお代わり二杯まで無料ということもありがたい。


おかわり自由にしてしまうと、体育科の奴ら共がこぞって食べに来るのが嫌だ。

と店主は以前言っていた。


中村徳雄


目の前で美味しそうにハムカツとビールを頬張っているのが彼の名前だ。


いつも一緒にいる大の仲良し。というわけではないが、一緒にいても、特はないが、害もないやつなので


大学で会えば挨拶をするし、こうやって夕食を共にすることもある。



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