2014-11-29 06:22:31 更新

概要

とあるアプリに奔走される、上条さんや愉快な仲間達の物語です。科学側、魔術側問わずにワイワイやっちゃってます。


前書き

・初SSです。なので、殆ど我流です。また、様々なネタをぶっ込んじゃってます。あと、全体的に文章が拙いので悪しからず。結構読みにくいかもしれません…。
・全部で三部構成になってます。
・一応出来損ないのシナリオと戦闘シーンがあります。ちなみに全体のテーマとしては、『ヒーロー』、『青春』、『奇蹟』のつもりで書きました。
・前編のテーマは『それぞれの「上条当麻」』です。
・全体を通して、一応カップルは一組も成立しません。ただ、ペアのネタとしては、上琴や上食、あとは上一が多めだと思います。勿論、上インや上オティネタも一応入れてます。ただ、恐らく原作では考えられないようなペアができちゃいます…。また、恋愛関連では、やらかした感が結構あります…。
・禁書の原作や漫画超電磁砲の最新刊まで、あるいは劇場版禁書をチェックしてないと、良く分からない部分が出てくると思います。
・とある関係以外にも、途中からHOやインテリに出てきたようなネタも入れてます。特にインテリネタに関しては、物語の重要な鍵を握ってます。ただ、その二つを読んで無くても何も問題はないと思います。
・口調に関しては、基本的には出来るだけ原作に近づけたつもりですが、ちょっと自信がないです。また、禁書と超電磁砲両方に出てくるキャラに関しては、口調が混ざっちゃってるかもです。
・今後、原作に登場する可能性が高い兵器や霊装が出てきます。勿論自己解釈しまくってるので悪しからず。
・途中で意図的にキャラ変を起こすキャラが何人かいます。また、三人ほどの男性キャラに関しては、最初からちょっと上条さんへの想いが強いキャラになってます。
・全体的に、登場キャラの涙腺が脆いです…。
・新約10巻後の上条さんの扱いや、トールの過去、あるいは『全能』に関しては自己解釈が混じっちゃってます…。あと、オティヌスさんがやたら便利な解説役になっちゃいました…。
・前編における上条さんの庇護対象は、有る意味、原作では考えられないようなキャラかもしれません。
・上条信者が書いたので、全体的に上条さんマンセーが強いです。なので、上条さんが嫌いな方は嫌悪感が感じられるかもです。
・結構長くなっちゃいましたが、もし良かったら、暇つぶしくらいにはなるかなあ、とは思うんで、軽い気持ちで読んで頂けたら嬉しいです。


12月初旬のとある日より、物語は始まる


(午前7時、上条の寮)


禁書「とうま!もう朝なんだよ!さっさと起きて朝ごはん作って欲しいかも!」


上条「……うーん…もうちょっとだけ…」


禁書「何言ってるんだよ!早く起きないと遅刻しちゃうかも!」ドンドン


上条「…分かった!分かったからお風呂場の壁を叩かないでえええ!この前直したばかりなんだよおおおお」


オティヌス「こいつは甘やかすとすぐ二度寝して学校サボるかもしれんからな。おら、壁の破片を目ん玉に入れてやろうか?」


上条「やめて!上条さんのお目目が潰れちゃう!というかオティヌスさん怖い…」


オティヌス「なら、さっさと起きるんだな」


上条「起きる、起きます、起きるから!暴力だけは勘弁して!」


禁書「わーい。やっとごはんが食べられるんだよ!よかったねー、スフィンクス♪」


スフィンクス「ニャー♪」


上条「…ぐすん…朝から不幸だ」



(午前8時半、とある高校)


上条「ようやく学校についたのはいいものの、もう既にボロボロじゃねえか…

…というか学校に来るの久しぶり過ぎてちょっと怖い…オティヌスの改編地獄もあったしな…」


ちなみに上条は、車に轢かれそうな子供を助けた時に大怪我をしたため、今まで入院していたことになっている。また、魔神オティヌスとの決着時には、世界中でライブ中継がなされたが、その時上条はシルビアやトールとの戦闘で受けた傷によって、顔の至るところが腫れ上がって原型を止めていなかったため、あれを上条だと気づいた者は少なかったようである。ちなみに、公式記録では、その人物は学園都市の少年とだけ発表されている。


上条「(ツンツン頭と学ランでバレるかもってオティヌスが言ってたけど、多分大丈夫だよな?…っていうか大丈夫であってくれ!)」


青ピ「あれ?カミやん、今日はきちんと学校に来たんやなー。もう怪我は大丈夫なん?」


上条「!!ま、まあな」


吹寄「まったく貴様は!先月に入る前から既に冬休みの補習祭り確定してたのに、また懲りもせず休むとはいい度胸ね!!」


上条「俺だって休みたくて休んだんじゃねえよ!?

…吹寄さんや、理不尽てのは、自分の想像以上に近くに蔓延っているものなのですよ?」


姫神「上条君なら。実はケンカで大怪我した理由で。休んでてもおかしくない。」


上条「(ギクッ)まさかぁ?上条さんはそんなにヤンチャではありませんことよ?」


土御門「そう言えば『例の』ヒーローがカミやんにそっくりじゃなかったかにゃー?(本当は全て知ってるけどにゃー)」


上条「(…土御門テメェ…!っていうか、こいつ『人的資源』プロジェクトの後どうなったんだ?…まあ、ここにいるってことはそんなに気にする必要もねえ…のか…?)」


吹寄「中学生レベルの英語もまともにできないような馬鹿が、デンマークなんかに行ける訳ないじゃない!」


上条「(ほっ…)そうだよ、上条さんはそんなに賢い人間ではありません!…でも吹寄さん?上条さん、ちょっと傷ついたかも…」


吹寄「ふん…」ガラガラ


小萌「さーて皆さん、朝のホームルームを始めますよー…って…上条ちゃん、今日はきちんと学校に来てくれたのですねー。せっかくだから今日から補習なのですー。一緒に頑張りましょうね?」


上条「…あはは…不幸だ…」



(お昼休み)


上条「(…やべえ、全然授業についていけねえ…これはガチで留年の危機なんじゃあ…)……まあ今は飯でも食うか!腹が減ってはいい糞ができぬって言うしな!」


青ピ「…それを言うなら戦ができぬちゃうの?…それにしてもごはんと梅干しだけなんて、えらい寂しい昼飯やなー。もしかしてダイエット中なん?」


上条「…度重なる入院費と理不尽な食費、そして部屋の修理費で金がねえんだよ」


青ピ「…なんかごめんな…」


土御門「そんなカミやんにとっておきのニュースがあるぜい!しかも楽してお金が手に入る方法だにゃー」


上条「…テメェの言うことだから、どうせロクなことにはならねえだろうな…だけど、状況が状況だ…一応話だけは聞いてやる」


土御門「(…カミやん哀れぜよ…)ならとりあえずこれを見て欲しいにゃー」スチャ


上条「スマホ?」


土御門「いや、重要なのはこのアプリ(仮)の方ですたい」


上条「…いちゃいちゃイマジンブレイカー?…何やら既に不幸になる予感しかしないのですが…」


土御門「カミやんも例のヒーロー(勿論カミやんのことだにゃー)に関しては、ニュースくらいは見ただろう?…実はそのヒーローが今、世界中で話題になってるぜよ」


上条「な!?」


土御門「そして巷では、彼に関する新しい噂が広まっているんだにゃー。…彼はこの街の都市伝説に出てくる『イマジンブレイカー』ではないかとな」


上条「!」


青ピ「イマジンブレイカー?えらい厨二くさいヒーローやな」


上条「(青髮ピアス後でぶん殴る!)…っていうか公式には、学園都市に住む学生とだけしか発表されてなかったんじゃないのか?なんでそんな奇妙な噂が…」


土御門「そのイマジンブレイカーと例のヒーローの特徴が類似してるっていう噂が、SNSや裏情報によって学園都市の『外』にまで爆発的に広がってしまったんですたい」


上条「(…マジかよ…)ち、ちなみにそのイマジンブレイカーの噂ってのは?」


土御門「都合よく女のピンチに現れ、ありとあらゆる女性の心を奪い、その女性に好意を寄せていた男性の幻想を破壊してしまうヒーロー…それがイマジンブレイカーだにゃー!(要は幻想殺しとは違った形で噂が広まってるぜよ)」


青ピ「うわあ、そいつ最低やないかい!ぶん殴ってやりたいわ!」


上条「(俺は今すぐにテメェを殴りてえよ!…っていうか、何だよその都市伝説!現実と全然ちがうじゃねえか!俺に対するイジメかよ…)…イマジンブレイカーについてはよくわかった。その話の続きを頼む」


土御門「実は結構前から、とある企業が、様々な目撃談で手にした情報(主にオレと雲川のクソ野郎調べ)をもとに、イマジンブレイカーの『女殺し』の能力を、リアルに味わってもらうためのアプリを開発してたらしいんだが、今回の件で、世界中の人々がそのアプリに興味を持ってしまったらしいぜよ」


上条「(幻想殺しに女殺しの能力なんてねえよ!)…ちなみにそのアプリってどんな感じなんだ?」


土御門「3Dでボイス付きのイマジンブレイカーと共に日々生活して、そいつの好感度をあげたり様々なイベントをこなすゲームぜよ。特徴としては、画面をタッチして操作することよりも、声を使って操作する方が中心てところかにゃー。ちなみに、その3Dイマジンブレイカーは、かなりリアルに表情を変化させたり、現実の人間みたいに様々な行動を取るみたいだぜい」


上条「…もう突っ込む気にもならん」


土御門「そして、このアプリのもっとも恐ろしいところは、世界中のスマホに適応してるってことだにゃー。なんでもアメリカ大統領が政府を通して大手企業に働きかけてるらしい。『世のガールは皆あのヒーローに酔っちまいな』とか言ってたらしいぜよ」


上条「(何やってんだよあのおっさん!!)」


土御門「このアプリ、システム関連やイベント内容等はほぼ完成済みなんだが、肝心の顔のモデルがまだ決まってない。そこで、ライブ映像に映っていた、ツンツン頭や学ランの似合う高校生にモデルになってもらおう…って感じだぜい。それなら、やっぱりカミやんがうってつけだと思ったんだにゃー(そりゃあ本人なんだから当たり前ぜよ。…ちなみにもうモデルもほぼ完成していて、あとはカミやんに許可とるだけだにゃー)」


上条「なるほど。だけど、そんなのやっちまったら、知り合いにそのモデルが俺だってバレちゃうんじゃねーの?」


土御門「その点に関しては心配いらないにゃー。外見については業者がサンプルをもとに改造してくれるし、ボイスについては何人かの声優を起用してるぜよ。ちなみに、その外見も元のモデルを改造して数パターン用意するみたいだけど、どれも本人にそっくりってことにはならないみたいだぜい」


上条「!!それは本当か?まあ、ノットイケメンの上条さんをそのまま使うのは具合が悪そうだし当然か」


土御門「(…確かにトップアイドル級ではないが、十分イケメンだと思うけどにゃー)…マジですたい。ちなみに、モデルになってくれてたら前金も出るし、アプリの売れ行き具合で追加の金も出るらしいぜよ。これならバイトする余裕なくても稼げるって訳だにゃー。今まさにお金に困ってるカミやんには悪くない話だろう?」


上条「たしかに悪くないな。…だけど、なんで土御門がそんなに熱心なんだ?」


土御門「!!…実はこれ、雲川先輩が持ちかけてきた話なんだにゃー」


上条「えっ、先輩が?」


土御門「先輩はどうやら開発者とも深い交流があって、それならば是非、信頼してる後輩をモデルにして欲しいと考えてたみたいぜよ。だから、オレにカミやんの許可をとって欲しいと相談してきたにゃー」


上条「(何故先輩が土御門を通して?)…でも、雲川先輩が関わってるなら問題なさそうだな!よし、今後の食費のためにも上条さんが一肌脱いでやりましょう!…ところで俺は何すればいいの?」


土御門「(ほっ…)今日カミやんは補習があったよな?その後空き教室で撮影させてもらう。あとは、学園都市最先端の技術を駆使した業者にお任せあれだにゃー」


上条「なんだ、簡単じゃねえか。…まあ、とりあえずこれで当面は少しはまともな飯が食えそうだな!」


土御門「ちなみにアプリの配信予定日は今週の土曜日。前日にはCMも流させてもらうぜい」


上条「なんか色々と早くない!?」


土御門「…学園都市の科学力を舐めるなってことぜよ」


上条「…な、なるほど。…ただ売れ行きが良くなくてもあまり上条さんを責めないでくれよ?」


土御門「大丈夫、そこら辺はカミやんが気にする必要はないぜい」


上条「そっか。なら良いけど…」


青ピ「…なんや、カミやんがえらい遠い存在になってるような気がするんやけど…」


そして、再び青髮ピアスと談笑しながら昼食の続きを始めた上条を後目に、土御門は一人思索していた。


土御門「(…とりあえずなんとか、カミやんを説得できたようだな。…実はカミやんそっくりのモデルで遊べる特殊モードがあるんだが、本当はそっちの方がメインぜよ。雲川のクソ野郎曰く、『世界中には上条当麻の側にいたくてもいられない人間が多勢いる。そいつらのガス抜きのためにも、このアプリは完成させる必要があるけど。もしも彼の説得に失敗したのなら、お前の学校生活は奪われ、私の椅子になってもらうだけだけど。』だと。あいつの言いなりになるのは癪だが、舞夏をこれ以上心配させないためにも、なんとしてもこのプロジェクトを完遂させる!)」



(数日後、とあるファミレス)


佐天「へっへー、実はあたし最近気になってる都市伝説があるんです!」


白井「…またですの?いい加減懲りてるかと思ってましたのに…」


美琴「都市伝説ねえ…」


初春「…もしかして例のイマジンブレイカーについてですか?」


美琴「ぶふっ!?」


白井「…お姉様?」


美琴「ねえ佐天さん、ちょろっとその都市伝説について教えてもらえるかしら?」


佐天「(急に興味を持ってどうしたんだろ?)で、では説明しますね…皆さんも多分知ってると思うんですけど、この前世界を救ったヒーローがいたじゃないですかー」


白井「例の『魔神』とやらの事件ですわね。なんでも、とある宗教団体が生み出した能力者の暴走を止めるために、学園都市の能力者が派遣され、その能力者が事件を終結させた…。公式発表ではそうなっておりますが、どこまで本当なのか信憑性に欠けますの」


美琴「(私も詳しくはわからないけど、実際にあの馬鹿が解決した事件なのは間違いないのよね…)」


佐天「で、そのヒーローが、学園都市にまつわる都市伝説に出てくるイマジンブレイカーじゃないか?…って話になってるんです!」


白井「…イマジンブレイカー?」


初春「ええっと、一応私が『書庫』で調べた結果では、該当する学生は見つかりませんでした。しかし、どうやらありとあらゆる女性の心を奪ってしまう特殊な力があるヒーローがいるみたいです」


美琴「(それって間違いなく、あの馬鹿のことよね…あらゆる異能を打ち消すとかなんとか言われないのはなんとも悲しいところだけど…)」


佐天「そして、そのイマジンブレイカー問題に新たな動きがあったんです!」


美琴「新たな動き?」


初春「ああ、前々から言われていたアプリのことですね。…白井さん、御坂さん。これを見てもらえますか?」スチャ


美琴「どれどれ………………………って…はあァァァ!!!!???」


初春が差し出したパソコンに映っていたのは、普段よりもスタイルが整っていて多少顔立ちの整った、上条らしき人物が出演したアプリのCMだった


美琴「な、なんなのよこれ!!、」


初春「どうやらこれは、イマジンブレイカーの『モテモテ能力』を実際に体験してもらうためのアプリのようですね。このアプリを使えば、かなりリアルに、イマジンブレイカーとの生活を楽しめるそうです」


美琴「(つ、つまりイマジンブレイカー=あの馬鹿ってことなら、このアプリを使えばアイツの実生活について研究できるってことよね?…外見が少し違うのがちょっと気になるけど…)」


白井「…くだらないですわね。今時こんなチャラチャラした殿方が流行になるとは思えませんの。ねえ、お姉様?

…お姉様…?」


美琴「へっ!?…ああ、そ、そ、そうね。なんだかあいつの紛い物みたいで気に入らないわ!!」


初春「…あいつ?」


美琴「(し、しまったぁぁ!!)」


佐天「あいつって誰のことかなー?(ニッコリ)…ところで白井さん、この人誰かに似てると思いません?」ニヤニヤ


白井「…あの忌々しい類人猿…。

……ですが、アレが世の淑女の憧れとなることはまずありえませんの。恐らく気のせいでしょう」


佐天「…まあ実際、上条さんと何か関係しているのかはさておき、御坂さん!どうするんですか!?勿論このアプリやってみますよね!?」ニヤニヤ


美琴「ば、馬鹿にしないでよ佐天さん!な、な、なんでこの私がこんなのをやらなきゃにゃらにゃいにょよ…」


初春「(うわぁ…)」


佐天「(こりゃあ重症だねー)ちなみにこのアプリ通常モードと特殊モードがあるみたいですよ。なんでも特殊モードは通常とは特別な外見が出てくるとかなんとか……って御坂さん?」


美琴「(…そのアプリをやるためにはスマホを買いに行く必要がありそうね。も、勿論私はあの馬鹿が何かに巻き込まれてるのか確認したいだけであって、内容が気になるとかあいつとの生活を楽しみたいとかそういうんじゃないけど…でも仕方ないわよね!)」ブツブツ


白井「…お姉様…またですのね…。

…それはさておき、今日はこの辺でお開きにしましょう。もうすぐ完全下校時刻ですの」


その後美琴は専用のスマホを購入して帰宅した。



(同時刻、イギリス清教)


建宮「た、大変なのよな!みんな集まって欲しいのよ!!」


神裂「何です、騒々しい…。用件は手短にかつお静かにお願いします」


アニェーゼ「どうしたんです?敵が来ちまったんですか?」


建宮「いや、そんな物騒なことではないのよ…」


五和「…もしかして上条さん絡みのことですか?」


建宮「流石五和!お察しが早いのよ。とりあえず、これを見て欲しいのよな」


例のCM


一同「…」


オルソラ「まあまあ、建宮さん。お話は落ち着いてからになさいましょう」


対馬「(今はその話じゃないでしょ!)」


神裂「…これは何です?建宮?」


建宮「土御門曰く、世界中の人間が上条当麻のヒーローっぷりを味わえるように作られた、スマホ用のアプリらしいのよな」


神裂「…すまほ??あぷり??」


諫早「(初老の私ですら知ってるのに…)」


建宮「…まあともかく、こいつがあればいつでもどこでも上条当麻の声が聞けるようになるらしいのよ。そして土御門が言う限りでは、全く奴に危害が及ぶ様な可能性はないらしいけどよ、万一て場合が考えられるのよな。皆もわかってると思うが、我々の奴に対する恩義ってのは計り知れないものよ。そこで、このアプリに何か裏がないか確かめるのが我々の使命だと思うのよ」


香焼「…どうせ皆の反応を楽しみたいだけすよね?」


建宮「(ギクッ)…………おほん。と、とにかくこいつは男がやっても友情と言う形で楽しめるようになってるのよな。つまり、男女問わず明日から暇な時間はこのアプリを遊…いや、調査して欲しいのよ。ど、どうなのよな女教皇様?」


神裂「なるほど。建宮の意見には一理あります。たしかにそのあぷり?とやらに何らかの魔術的記号が組み込まれてるかもしれませんからね。それに、私達の上条当麻に対する恩義というものは…」ブツブツ


建宮「」


五和「(……ふふふふふふふふふ……あはははは!!!!…遂に誰にも邪魔されず上条さんと二人きりになれる時が来たようですね。うふふふふふふふ…)」


アンジェレネ「い、五和さん。こ、怖すぎます…」


ルチア「シスター・アンジェレネ!見てはなりません!」


建宮「ま、とにかく、スマホはこちらで用意するから、そういうことで頼むのよな!」


そんな陽気な彼らの様子を、離れた所から見つめる少年(?)がいた。


ステイル「(…まったく、『必要悪の教会』の連中もあの男も、一体何をやってるんだか…)」シュポッ


マリーベート「師匠!ここでタバコ吸わないでくださいよ〜!空気が汚れちゃいます!」


ジェーン「そうですよ!そんなの臭いだけじゃないですか!」


ステイル「……僕にとってニコチンは酸素みたいなものなんだよ」


メアリエ「(…やっぱり、やたらカッコつけたがる師匠ってば可愛いなあ♪)」



(そして世界中で例のCMがその日何度も流れた)


「あらあら、これは当麻さんかしら?イメチェンしたい年頃なのかしらね」


「あれ?これ上条当麻君に似てるわね…何だか美琴ちゃんをからかえそうな予感がするわ♪」


「と、当麻!?一体お前は何をやっているんだ!?」


「…遂にミサカ達の『ターン』が来ました、とミサカはここに宣言します」


「…おい騎士団長。これはどーゆーことだし?」


「…なあ、シルビア、フィアンマ…これには一体どんな思惑があると思う?」


「…これは大変です…。上条当麻はイギリスのために働くべき人材なんですよ!?こうしちゃいられません、私達『新たな光』全員でアプリの研究しなくては!」


「何をやっているんだあの馬鹿者め!

おい、マーク!直ぐにでもこのアプリをおとせるように準備しておけ!」


「あれ?これ上条ちゃんじゃね?…よく分からねえけどなんか面白そうだから試しにやろうぜ、マリアン、『投擲の槌』!」


「…これ上条か?やっぱ大したもんだ、あいつの根性は!!」


「これ…上条…だよな?そういえば、俺あいつのこと詳しくは知らねえし、暇つぶしにアイテム全員でやってみるか!」


「クキキキクカカカ!面白ェ、面白ェぞ、ヒーロー!!!イイぜェ、最も血に濡れたこの両手でオマエの中身をぶちまけてやるから覚悟しやがれェ!!」



(同日午後7時、上条の寮)


禁書「見て見てとうま!いつもよりエレガンスなとうまがてれびーに映ってるんだよ!」


オティヌス「どういうことだ?世界変動の兆候は感じられなかったが、突然この人間に対する見方が変わってしまったのか?この男はこんなに美男子ではないだろう…」


上条「さ、流石の上条さんもそこまで言われると傷ついちゃいますよ?…ていうかこれ、知り合いに見られたらバレるかもしれない程度には俺に似てるじゃねえか!…あのにゃーにゃーサングラスめ…あとでぶん殴ってやる!」


禁書「で、結局このしーえむは何を伝えたかったの?」


上条「あん?ようはスマホ用のゲームだよ。特権として2台スマホ借りてきたからお前らもやってみたら?」


禁書「すまほー?…よく分からないけど、まあ一応考えておくんだよ」


オティヌス「しかし、このアプリの提案者は一体何を考えているんだ?下手にお前や幻想殺しの情報を漏らすととんでもない悲劇を生むことになりかねんぞ?」


上条「(確かに、言われてみれば…。…雲川先輩はこのアプリを広めて何がしたいんだろ?…でも、雲川先輩なら信じられる…よな?)」


オティ「…本当に大丈夫なんだろうな」



(午後9時、とある学生寮近辺)


食蜂「(…ぜえ……ぜえ……もう、歩き疲れちゃったじゃないのよぉ!)」


雲川「やっと来たか。待ちくたびれたけど」


食蜂「一体こんな所に呼び出してなんの用なのよぉ?…まさかまた私の身体を触りたいとか言うんじゃないでしょうね?

残念だけどそれは彼だけの特権なんだゾ☆」


雲川「悪いが、彼にこそ到底不可能な行為だと思うけど。まあいい。そんなくだらないジョークに付き合うために、危険なお前をわざわざここに呼び出したわけではないけど」


食蜂「じゃあ、何なのよぉ…」


雲川「いいからこれを見ろ」スチャ


食蜂「なぁに?…………はァーーーッ?はァーーーッ??何なのよぉこれぇ!?」


雲川「…お前のような、『幾らそれを望んでも、決して上条当麻の側にいられることが叶わない』連中に対しての、私からの些細なプレゼントだけど?…まあ、彼の近くにいる人間も須く興味を持ってしまったようだけど」


食蜂「!!」


雲川「このCMに出てるのは、あくまで彼を参考に改造されたモデルだけど、特殊モードでは彼と全く同じ容姿や声で楽しむことができる。私にとっては自信作だけど、まあ所詮おもちゃと言われてしまえばそれまでだ。気に入らなかったらこの話はなかったものにしてくれて結構だけど?」


食蜂「…どういう風の吹き回しかは知らないけど、一応感謝しておくわぁ」


雲川「そうか…あと一応教えておくけど、このアプリは日付が変わった直後にダウンロードできるようになる。…伝えたいことは全て伝えた。あとは好きにしろ」


そう言って雲川はあっという間に暗闇へと消えて行った。ただ一人残された食蜂は、その場に立ちすくみながら苦笑いしていた。


食蜂「(…こんな訳がわからないモノに手を差し伸べてまで、彼に依存してしまうなんてねぇ…我ながら呆れてしまうわぁ。…でも、それでも、私の名前を呼ぶ彼の声が再び聞けるというのなら、試してみる価値はあるかもしれないわねぇ)」



やがて時は過ぎ、時刻11時50分



美琴「もう!!まだ日付が変わらないのかしら!?早くこのアプリでアイツを研究したいのよ!」




一方通行「さァて、無能力者!オマエが嫌というほど、オマエの全てを俺に吐き出す時間はもう直ぐだぜェ!!」




そして日付が変更され、学園都市内でアプリ配信開始



(午前0時、常盤台中学女子寮)


美琴「よっしゃあ!ようやく日付が変わってダウンロードできるようになったのよね?…ええと、こうして……よし、ダウンロード終了っと♪」


白井「(お姉様の声で眠れませんの…)」


美琴「早速始めるわよー!ええと、まず通常モードか特殊モードを選択するのね…。通常モードは、『あの馬鹿擬き』の外見や声のパターンを選択して、そいつに名前をつけてあげてからプレイするモード。…なら、特殊モードってのはどんな奴なのかしら?…試しにやってみましょうか…」


『特殊モードをプレイするためにはパスワードが必要です』


美琴「パスワード??」


『「イマジンブレイカー」を、漢字を含む4文字に変換してください』


美琴「…漢字4文字?…ああそういうことね…。ようは『レールガン』を『超電磁砲』に変換するようなもんでしょ?

…あの馬鹿曰く…ええと…たしか『幻想殺し』だったかしら!」


『……パスワードを認証しました。それでは特殊モードをお楽しみください』


美琴「よし!さすが美琴センセー、アイツのわからないことなんて何もないのよー…って何を言ってんのよ私は///

……今はそれどころじゃない……って、ええええええええええ???」


美琴が見たものは、美琴にとって『憧れ』の上条当麻が、いつもと変わらぬ姿で、画面越しにこちらを向いている姿であった


美琴「(…なんで本物のあの馬鹿が出てくんのよ!?……まさか、あいつまた何がの事件に巻き込まれてるんじゃ…

…でも今はこんな時間だし、悩んでいてもしょうがないのかな…。…よし、日が明けたら現実のあの馬鹿をとっちめるとして、今はこのアプリを調査しなくちゃ!)」


『ええと、俺上条当麻って言うんだけど、お前の名前も教えてくんねえか?』


美琴「(こ、声までそっくりじゃない!しかもやたら流暢に喋るし…。これとんでもなく高性能じゃないかしら!?

……と、とにかく今は話を進めましょう。えっと、たしか私の声に反応してくれるのよね?)み、美琴よ!御坂美琴!」


『みさか、みこと?ちなみに漢字はどう書くんだ?』


美琴「(なるほど、このアプリはあの馬鹿の声が出る他に、テキストも画面に出るのか。これはどうもON、OFF切り替えられるみたいだけど……そして今はキーボードを使って入力して欲しいみたいね。まだ、スマホには慣れてないけど…ええと…)これでいいのかしら?」


『ふむふむ、御坂美琴か。なんとなく、知ってるような気がするなあ…』


美琴「(!!も、もしかして特定の名前の人間のデータがアプリに入ってるわけ!?どんだけ高性能なのよ!?)」


『そんなことよりお前は俺になんて呼んで欲しいんだ?』


美琴「(…!!!!????…そ、そ、それは予想外だったわ……そうね、やっぱり1番落ち着くのは『御坂』なのよね。『ビリビリ』は論外!…だけど、名前で呼んで貰うのは、ちょっとね…。…現実のあの馬鹿も『美琴』って呼んでくれることがたまにあるけど、毎回呼ばれたらおかしくなっちゃいそう…でも、本当は名前で呼んでもらうのが1番嬉しいし…)」ブツブツ


『お〜い、聞こえてますかー?なんだったら上条さんが決めてやろうか?…そうだな、なんとなくだけどビリビ…』


美琴「!?わ、私のことは名前で呼びなさいよ!!」


『…??…姫はなんで怒ってるんでせうか?…まあ、いいや。これからよろしくな、美琴!』


美琴「う、うん、よろしく///」


『では、お互いの自己紹介も終わったし、これからはそっちの時間に合わせて行動させてもらうけど、いいよな?』


美琴「わ、わかったわ…」


『ありがとう美琴。それじゃあ、早速…』


美琴「(…!!??…こ、この時間に2人きりとか…ま、ま、まさか『おもちゃ』の分際であんなことやこんなことを望んでるんじゃないでしょうね!?…だ、ダメよ!わ、私達まだ付き合ってるわけでもないし、私なんかまだ中学生だし…で、でもアンタがどうしてもっていうのなら、わ、私///)…あ、アンタのす、好きにし…」


『なんか疲れちまってるみたいだからもう寝るわ…。とりあえずアラームは設定してないみたいだし、朝なったら起こしてくれ。じゃあ、おやすみ美琴!』


そういうと、『上条』は画面先のベッドの中にそそくさと入り込んでしまった


美琴「……まさかおもちゃのこいつにまで華麗にスルーされるとはね……明日起きたら覚悟してもらうわよこんのクソ馬鹿!!!」


白井「(お、お姉様声が大き過ぎますの!このままだとわたくしも寮監のペナルティを食らう羽目になりますのよー(泣)」



(同時刻、黄泉川のマンション)


一方通行「はァ?こンな時間にもう寝ちまうとか、オマエは何処ぞのいい子ちゃンですかァ?…いいぜェクソ野郎!目が覚めたら地獄のショーをたっぷり見せてやるから、せいぜい今のうちに愉快な夢でもみてやがれェ!!」


打ち止め「うう〜…いつもより一方通行の独り言が多いかもー、ってミサカはミサカは嘆いてみたり」


番外個体「ギャハ☆あの人のこんなキモいところが見れるなんて、ミサカの体のあちこちで鳥肌が立っちゃいそう」



(同時刻、アイテムのアジト)


麦野「オイオイ、もう終わりかよ?どんだけ早漏なんだよ…。これは明日起きたらブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」


浜面「(麦野のストレス解消のためにやらせてみたら、余計ストレスが溜まってるみてえじゃねえか!…う、恨むぞ…大将…!!!)」


滝壺「大丈夫。はまづら。私は麦野に八つ当たりされる予定のはまづらを応援してる」


絹旗「…しかしこの上条とかいう奴、本当にかの超有名な幻想殺しなんですかね?浜面と同じく超使えなさそうな顔してますけど…」


浜面「…うう…みんなが俺をいじめてくる…助けてええ大将ー!!」




そして同時刻、皆が嬉々と(?)アプリを楽しんでいる中、街の片隅にて人知れずただひたすらに涙を流し続けていた少女がいた。


『俺の名前は上条当麻ってんだ。お前は?』


『しょくほう、みさき…?なんかとんでもない字を使ってるっぽいな』


『よし、これからはお前のこと操祈って呼ぶからな!…それにしても、食蜂操祈か…。なんとなく会ったことあるような気もするけど…。まあ、いいや。これからよろしくな操祈!』


『俺はもう寝ようと思うんだけど、何と無くお前を一人にしたら心配になるんだよ…何かあったら鳴り物かなんかを使ってでもいいから、何時でも俺を呼び出してくれよな。そしたら何時でも何処でも駆けつけてやるからよ。…まあ、とりあえず…おやすみ、操祈』


スマートフォンから聞こえてくるのは、何の変哲もない、何処にでもいそうな少年の声だった。だけどそれは、「俺はお前の側にずっといるから安心しろ」と言わんばかりに、途轍もなく優しい、優しい声で、少女の名を何度も繰り返し呼んでいた。それは今まで少女にとって、ずっと恋い焦がれてたけど、決して叶わぬ願いだったに違いない。

また、その声が例え本物の少年の声ではなかったとしても、彼女の涙を止める理由にはならなかった。そこで涙を流している少女は常盤台の女王だとか、学園都市の第五位だとか、心理掌握だのような大仰な言葉で形容すべきではないのかもしれない。何処にでもいそうな恋する乙女、と表現しても何の差し支えないもないような少女は、くちゃくちゃになった顔で無理やり笑顔を作り、


「ありがとう、そしておやすみなさい…私だけの王子様☆」


と一言だけ告げ、静かに目を閉じた…



(午前7時、常盤台中学女子寮)


美琴「…う〜ん…何だか昨日はあまり良く眠れなかったわ……っていうか、あの馬鹿が人様を置いてけぼりにして勝手に寝やがったのがすべて悪いのよ!

…それにしても黒子はまだ寝てるのね…。いくら休日とはいえ、いつもはこの時間には起きてたのにどうしちゃったんだろ?…まあいいわ、とりあえず朝のルーチンをとっとと済ましてあの馬鹿を教育しなくちゃね!」



(1時間後)


美琴「さ〜て…あの馬鹿を起こす前に軽くアプリのおさらいをしておきましょうか。まずこのアプリにはあの馬鹿からの好感度が上下する機能がある。好感度は主に『あの馬鹿からの信頼度』、『あの馬鹿からの庇護欲』、『あの馬鹿にとっての、プレイヤーとの居心地の良さ』の3点が考慮され、表情やセリフ、イベント内容などに影響を与える。好感度はランク制で、総合ランクとその日限定のランクに分かれる。1日の最終ランクが決定されるのはアイツが就寝した時で、それまでの暫定ランクは何時でも確認することが可能。これを使って他人と競うこともできるらしいけど、あくまでおまけの機能らしいわね。また、このアプリはGPS連動機能に対応しており、デートスポットの選択は主に2種類ある。一つはスマホに搭載されたマップを利用し、特定のスポットを指定する方法。要は、家の中にいても(勿論画面越しだけど)様々な場所でデートすることが可能。二つ目の方法は、実際にプレイヤーが足を運んだ所でデートする方法。基本的にはこちらの方法でやるみたいね…。

…まあ今はこれくらいにして、そろそろ起こすとしましょうか!」


『……ぐう…ぐう……むにゃむにゃ…』


美琴「(…!…こ、こいつの寝てる姿をこんなにまじまじと見るのは初めてかもしれないわね…

……意外とあどけなくてカワイイじゃない///

……って、今はそれどころじゃないでしょ、私!)…お〜い、アンタ、起きなさいよー。さっさと起きて私とで、で、デートに出かけるわよ///」


『……………………ぐぅ〜……』


美琴「…ほほう。アンタは私とデートに行くくらいならまだ寝てた方がマシとか言っちゃうのねほほーう………いいから起きろって言ってんのよクソ馬鹿!!!!!」


その時なぜか画面先では電気のようなモノが迸り、『上条』は飛び起きて右手を前方に突き出した。右手にそれが触れた途端、一瞬で消し飛ばされ、『上条』の右手からは、心無しか煙が出てるようだった。


美琴「(!!…私が声を張り上げた途端、『雷撃の槍』みたいな演出がなされた!?…もしかしてお仕置き機能までついてんのこれ?…ちょっと高性能過ぎないかしら?……ていうかこのアプリを作った奴なんで私とこいつのやり取りに詳しいのよ!?)」


『み、み、美琴さん!?い、幾ら何でも今みたいな起こし方はあんまりじゃないでせうか!?これじゃあ上条さんの心臓に悪過ぎます!!』


美琴「アンタがとっとと起きないのが悪いのよ!!!」


『そんな理不尽な……まあいいや、上条さんはお腹が減ったんで朝飯にしようと思うのですがよろしいでしょうか?』


美琴「(…!…ええと…たしか、食事の方法は主に2種類があるのよね…一つはプレイヤーが提案したものをあの馬鹿が食べる方法。あいつの好みにあった料理を選べば好感度が上がるみたいね。もう一つは、あいつが自分で作って一緒に食べようとする方法。勿論所詮アプリだから実際にこっちの方に食べ物が出てくるわけではないけど…。…ちなみに、こっちの方法は庇護欲云々に影響するみたい)」


『…み、美琴?』


美琴「(!!?そ、そんな不安そうな声で名前を呼ばないでよ!…何だか体がむずむずしてくるじゃにゃいにょよ〜///

……とりあえず朝ごはんを食べさせてあげましょう…。適当にメニューを言えばいいのよね?…ええい、ままよ!)…と、とりあえず今日はフレンチトースト、コーンスープ、ウインナー、シーザーサラダ、オレンジジュースよ!」


『!?…うおおおお、朝からめっちゃ豪華なメニューじゃないですか!さ、さすが美琴さん…上条さんは朝からハッピーな気分になれそうです!』


美琴「そ、そう?良かったわ(…って、本当に指定したメニューが画面先のテーブルに出てくるのね…あれ?)…でも、これくらいで豪華っていうなら、アンタ普段は朝ごはんに何食べてんのよ!?」


『上条さんはバタートーストを一枚食べていくのが基本です!…ちなみに朝食抜きの日も結構あるのよ…?』


美琴「(どんだけ惨めなのよ!?…現実のあの馬鹿もこんな感じなのかしら?だ、だったら今度私が朝ごはん作りに行ってあげようかな///

…って、今はこっちを相手してあげなきゃ!)ま、まあいいわ。さっさとお食べ」


『よっしゃあ!サンキュー、美琴!』


美琴「な、なんだか照れくさいわね///」



(同時刻、上条の寮)


『どうだ、インデックス?おいしいか?』


禁書「…そんなこと言われたって、実際に食べてないんだからわからないんだよ…」


『??』


上条「ダメだろインデックス!あっちの上条さんがごはんを作ってくれた話になったら、きちんと感想言ってあげなきゃ!」


禁書「…いつも通りおいしかったんだよ」


『そ、そうか…よかったこれで噛みつかれないですむ…』


禁書「むむ〜とうま!私はそんな獣みたいに野蛮じゃないんだよ!」


『ははは…』


オティヌス「しかし特殊モードとやらのこいつは実際のお前にそっくりだな。…しかも特定のプレイヤーに関しては、名前を登録した時点でそいつの実際のデータが、ある程度初期値として適用されるのか…」


上条「…俺も特殊モードに関してはアプリが配信された後に教えられたんだけどな…。あのシスコン軍曹曰く、特殊モードってのは俺の知り合い向けのサービスらしい」


オティヌス「…なるほどな」


上条「それはさて置き、すまねえが俺、今日は休日だけど補習があるから、そろそろ行くなっ!」


禁書「待ってよとうま!私達の朝ごはんは!?」


上条「…お前はそれしか言えんのか…。そっちにもうできてるのがあるから、それを食べてくれ。じゃあ行ってくる。悪いけどオティヌスは、インデックス達をよろしく頼むわ」


オティヌス「わかった。お前もそそっかしいんだから事故に気をつけろよ」


上条「おう、サンキュー!そんじゃなー」バタバタ


禁書「…今のオティヌスよりも頼りにされてないってのは心外かも…。…いいもん!こっちのとうまに慰めてもらうんだから!」


『な、何だかとても不幸な予感がするのですが…』



(午前8時半、黄泉川のマンション)


『ぶはーっ!!たらふく食えたわー。上条さんは朝からもう大満足です。それにしても、あーくんは以外といいところがあるんだなあ。上条さん、見直しちゃいましたよ』


一方通行「よせよォ。俺はそンなに褒められるよォなタマじゃねェ(こンな笑顔で喜ばれると、流石にイイ気分になってきやがるなァ…)」


『そんな謙遜するなって。

…まあ、いいや。朝飯も食い終わったし、これからどっか遊びに行こうぜ!』


一方通行「…イイねェ!最っ高だねェ!!」



カブトムシ「あ、あれは本当に一方通行なんですか?正直毒が抜け過ぎて、別人にしか見えません…」


打ち止め「思ったよりあのアプリが高性能だったんだよー、ってミサカはミサカはあの人に相手にされないからぷんぷんしてみる!」


フレメア「にゃあ。大体浜面にやらせてもらったけど、なかなかおもしろかった!カブトムシもやってみるといい!!」


カブトムシ「はあ…」



(午前9時、とある研究所)


食蜂「///」にへー


ドリー妹「あれ?みさきちゃん、きょうはとてもうれしそうだねー。なにかあったの?」


食蜂「実は、私のところに王子様が帰って来てくれたんだゾ☆」


ドリー妹「おうじさま?…あっ、わかった!みさきちゃんのすきなおとこのひとでしょー?」


食蜂「うん、そうなのよぉ///…それでね、あなたは私の『ともだち』だから、特別に私の王子様を見せてあげるわぁ。…はい☆…どうかしらぁ?」スチャ


ドリー妹「ありがとう!……うわぁー、すっごくかっこいいひとだねー。いいなあ、みさきちゃん。すごいうらやましい…」


食蜂「(勿論私も特殊モードで始めてるから、外見は彼のままなのにこの反応…やはり遺伝子レベルで逆らえない何かがあるのかしらぁ?)」


ドリー妹「ねえ、みさきちゃん。わたしもしょうらいおうじさまにあえるかな?あえたらうれしいなー」


食蜂「ふふ☆そんなドリーに今日は私からのプレゼントがあるんだゾ」


ドリー妹「ぷれぜんと?」


食蜂「それは、このスマホよぉ!これがあればあなたにも、私のとは少し違った王子様に会えるわぁ☆」


ドリー妹「ほんとに!?ありがとうみさきちゃん!うれしいなー!」


食蜂「(ふふ☆私達をこんなに幸せな気持ちにさせてくれるなんてぇ、やっぱり彼は、私にとってのかけがえのないヒーローだわぁ。さっきのイベントもなかなか忘れられない思い出になりそうだったしぃ…)」



(食蜂の回想)


食蜂「(彼と話すのに少し夢中になり過ぎてたわぁ。…そういえば、今日はあの子に会う予定があるのよねぇ。まだ予定には一時間ほど早いけど、彼のことをできるだけ早く紹介したいし、近道でも使っちゃおうかしらぁ)」


『…!…おい、操祈!こっちの道はスキルアウトに襲われるかもしんねえぞ!』


食蜂「(!!…ああ、なるほどねぇ。GPS連動機能ってやつかしらぁ?)…大丈夫よぉ。こう見えて私は、学園都市第五位の心理掌握サマなんだゾ☆…それに今は、あなたが側にいてくれるから怖いものなんて何も……って、あらぁ?」


食蜂が路地裏に足を踏み入れた途端、現実世界では何も起こらなかったものの、アプリの方では画面が急に切り替わり、数人の男に囲まれた『上条』がこちらに背を向けていた。


『よう兄ちゃん。朝からこんなところに彼女と来るとは、ませてるじゃねえか』


『テメェらこそこんな狭い道で男同士群がって楽しそうじゃねえか』


食蜂「(…これはプレイヤーと彼が暴漢に襲われるイベントねぇ。たしか私の発言によって戦闘の進め方が違ってくるのよねぇ?…それなら!)あなたは下がっててぇ。私の能力でちゃちゃっと洗脳してあげるわぁ」


彼女はスマートフォンに向かって、いつも通りに能力を発動するかの如く語りかけた。だが、しかし、


『くっ…!?こいつ高位能力者か!!

…だが残念だったな姉ちゃん…ここはAIMジャマーで満たされた空間なのよ。能力なんか使えねえよ』


食蜂「!!!!!何よそれぇ!?」


『…正直、無能力者同士のカップルだったら手を出すつもりはなかったけどよ、片方が高位能力者ってんなら話は別だ。悪いがその女は殺させてもらうぜ』


『ふざけんな!操祈にはテメェらの指一本触れさせねえよ!!!』


『ここで平然と立ってられるってことは、てめえも無能力者か。…なあ、無能力者?てめえは高位能力者と一緒にいて不満を感じたことはねえのか?』


『あん?』


『だってよ、俺達無能力者はどいつにもこいつにもクズ扱いされちまうんだぜ?それは学生からだけじゃねえ…。エリート様を抱える学校の教師なんかは、俺達のことを、そこらへんに落ちてるようなゴミ以下の扱いをしやがる。ちょっと人より可笑しなことができねえかどうかしか差がねえのによ』


食蜂「…」


『…だけど高位能力者様はそうじゃねえだろ…?』


食蜂「!」


『そいつが高位能力者なら、特に何をするでもなく、ただ道を歩いてるだけで多くの人間に持て囃される。…俺も学校に通ってたころはセンコーによく言われたよ…。お前らは出来損ないなんだから人一倍努力しろ!世の中には弛まぬ努力によって、低能力者から超能力者まで登りつめた成功者がいるんだぞ!…とかな。…そうさ、奴らにとって高位能力者こそ至高の存在であり、それ以外は論ずるに値しねえんだよ!!』


『…』


『…それでてめえは高位能力者の側にいて何を思った?てめえは散々クズ扱いされてんのに、となりにいるこいつはやたら褒めちぎられる…。

…気に入らなくねえか?こうして何もしねえで突っ立ってたら、お互い普通の人間にしか見えねえのにな…。

…ははっ、まったく高位能力者ってのは残酷だよなあ!?てめえが何もしてなくても、側にいるだけで他人を不幸にしちまうんだからなあ。…それなら俺たち無能力者の方が100倍マシじゃねえか!!

…なあ、無能力者?そろそろ俺達の言いてえことが分かっただろ?お前は見逃してやるから、とっとその女置いて何処かへ消えちまいな』


食蜂「……あ…あ…(こ、この展開…あの時と恐ろしいほど似てる!!………………ワタシノセイデマタカレヲコマラセテシマッタ…)…ああああああああああああああああ」ガタガタ


『…言いたいことはそれだけか?』


『…あぁ?…』


食蜂「…あ…え…?」


『言いてえことはそれしかねえのかって聞いてんだよ!!!』


『…てめえ…』


『…ふざけやがって…。無能力者と高位能力者の関係っていうのを、テメェらの物差しだけで測るんじゃねえよ!!世の中にはな、お互いが助け合う関係になってる連中ってのは少なくなんかねえんだよ!!…それだけじゃねえ。テメェらがやってんのは、『高位能力者ってのはこういう人間だ』っていう考えを、一方的に押し付けてるだけじゃねえか!!』


『!!』


『だからテメェらは、そいつのことを理解しようって努力を今までしたことがねえんだろ。高位能力者にも、俺達無能力者に理解できねえような悩みがあるかもしれねえのによ。…それこそ、無能力者が羨ましく見えるくらいのなあ』


『…だったらてめえはどうなんだよ!!さっきから偉そうに御託ばかり並べやがって…てめえはその女のことをきちんと理解できてるってのか!!??』


食蜂「…えっ…?」


『…たしかに俺はこいつの全てを知ってるわけじゃねえし、むしろ知らないことばかりかもしれねえ…』


食蜂「…」


『だけど俺は、こいつの側にいて本当に不幸だと思ったことは1度もねえんだよ!!』


食蜂「!!」


『むしろ俺は、こいつの側にいられて嬉しいんだ。だから俺は、こいつのこともっと知りたいし、俺のことをもっと知って欲しいと思ってる。そして片方が困ってたら、もう片方が助けられるような関係になりてえんだよ!

…なあ、分かるかチンピラ?テメェの考えてたような無能力者と高位能力者の関係とは、少し違った関係を持った連中が既にここにいるんだぜ?』


食蜂「…あ…あ…」


『…この野郎…言わせておけば調子に乗りやがって!!!

…はっ!!ならよ、その女は今困ってる状況だ。そいつが困ってたらてめえはそいつを助けてえんだよなあ?』


『当たり前だ。だったらどうした?』


『それじゃあナイト様…一つ質問させてくれよ。…この圧倒的人数差を前にして、たかが無能力者のてめえに何ができるってんだよ?』


『…そんなこと決まってんだろ…』


『…何?』


『無能力者が一方的に馬鹿にされるのが気に入らねえ? 高位能力者と一緒にいると不幸になる? 何の取り柄もねえ無能力者が、大人数相手にするのは理にかなってねえ? …そんなもんは今の俺と操祈にとってはどうだっていいんだよ。

…誰かさんに配慮して、『助けて』の一言も言えないくせに、本気で困っている女の子が目の前にいるんだ。…だったら、やるべきことは一つしかねえじゃねえか!!』


『もしもテメェらが、そのくだらねえコンプレックスを他人に押し付けても構わねえって思っているのなら…』


『それでなんの罪もねえ操祈を傷つけて、その挙句俺達の確かな繋がりまで奪おうっていうのなら』


『まずは、その幻想をぶち殺す!!!!!』


食蜂「……当麻ぁ…」


『…はははははははは!!!!!フツーこの絶望的状況でそんな勝気な台詞が吐けるかよ!?

……なら覚悟してもらうぜこの偽善者野郎!』


『おうよ。テメェらこそ死ぬ気でかかってきやがれ、ゴキブリ野郎ども!!!』


そう言うと、『上条』はたった一人で複数の男相手に立ち向かっていった。幾らボロボロになろうとも、絶対に少女だけは傷つけさせまいとするその姿は、賞賛すべきものであっただろう。少女はそれを祈るように見つめていた。



そして、




『いやあ、今回はちょっと無茶し過ぎちゃいましたね…全治1時間だってよ…参ったなあ…』


と、画面は病院へと移り変わり、そこには、手術衣を纏ってベッドから上体を起こしている『上条』の姿があった


食蜂「(…さっきのイベントがあまりにリアルだったから忘れてたけど、これはあくまでアプリなのよねぇ…。そして、このアプリの絶対のルールとして、彼はいくら大怪我することがあっても、命を落とすことや記憶を失うことはなく、一定の期間休むとどんな傷でも完治する。ちなみに全治1時間というのは、現実換算で全治1週間相当らしいわぁ。現実の彼もこんなにタフなのかしらぁ?)」


『これじゃあ今は操祈と遊べないそうにないかあ……マジでごめん…』


食蜂「…!!…グスッ…あなたは本当にずるいわぁ。私の不安を優しさで埋めてくるなんてぇ…グスッ…」


『わっ!操祈どうしたんだよ!?

……よし決めた!!この傷が治ったら直ぐにでも、操祈専用の愛玩奴隷上条当麻があなた様のご要望になんでもお応えしましょう!!……だから、泣くなよ…』


食蜂「…うん☆期待してるわぁ」


『おう任せとけ!!…じゃあ悪いけど上条さんもうボロボロなんで、少し休ませてもらうな?』


食蜂「わかったわぁ。…お疲れ様!そして、ありがとう…当麻ぁ」





ドリー妹「みさきちゃん!みさきちゃん、だいじょうぶ?」


食蜂「…はっ!?…私としたことが、少し物思いに耽ってしまったわぁ」


ドリー妹「?…それってもしかしておうじさまのことかんがえてたってこと?みさきちゃんはほんとうに、そのおうじさまのことがすきなんだねー!」


食蜂「そうよぉ!だってぇ、私だけの王子様なんだからぁ///」にへー




(午前10時半、第7学区のとある鉄橋)


『おし、これで全部みてえだな。…それにしてもやっぱあーくんは強えなあ。そちら側から来た『ファイブオーバー』をまとめて全部片付けちまうなんてよ』


一方通行「あン?オマエこそ反対側から来た『魔獣』とやらの大群を一匹残らず塵にしてるじゃねェか…」


『まあ、普段から不幸の連続の上条さんにとってはこれくらい朝飯前ですよ。

…それにしても、通常の物理法則に則った相手に対しては無敵のお前と、ありとあらゆる異能を打ち消す右手を持った俺が組んじまったら、もはや敵なしだな!』


一方通行「お互ェ尖ったチカラを持ってるからなァ…。もっとも、俺の場合はオカルト相手でもそこそこは戦えるはずだが、こういうモンは適材適所でやればいい」


『へっ、さすが第一位様!言うねえ』


一方通行「その第一位を何度もぶっ倒したオマエが何言ってンだよ」


『ははっ、それもそうだな。…なあ、俺達がタッグを組んだらさしずめ『幻想通行』といったところか?なかなかかっこいいじゃん!』


一方通行「まァタッグを組ンだらの話だけどなァ」


『そんな冷てえこと言うなよ、あーくん。俺とお前はもう仲間なんだ。困った時はお互いに助け合っていこうじゃねえか!』


一方通行「(…思った通りこいつは、俺のことを対等な友人として見てくれるようだなァ。あンだけ殺戮をして来た俺に手を差し伸べて友達になろうとしてくれる。…やっぱこいつは俺にとって最高のヒーローだぜェ!)そうだなァ、あンがとよ」


『へへっ、どういたしまして。それはともかく、遊びの続きに行こうぜ!』


一方通行「…オウ!」




(午前11時、第7学区のとある公園)



『なあ、美琴…。お前まだ怒ってんのか?』


美琴「…ふん」


『…さっきは上条さん、言い過ぎたよ…。謝るから許してくれよ…なっ?』


美琴「(さっきここへ来る途中に、複数の能力者に襲われるイベントがあったから、私は普段能力を使う時のように声を出した訳。そしたらアプリが過剰反応して、仮想の私とやらが、どうやら必要以上に強力な『雷撃の槍』を撃ってしまったのよ。だから、それはやり過ぎだろとこいつが説教して来たの。…今はその説教によって私が不貞腐れてると勘違いしてるみたいね。私がイラついてるのはこのアプリ開発者の不備なのに…)」


『…美琴?』


美琴「…私がちょっとイラついてるのは、別にアンタに説教されたからじゃないわよ?だから、アンタは気にしなくていいのよー」


『それでもよ…。うまく言えねえかも知れねえけど…とにかく、俺はお前に笑っていて欲しいんだよ』


美琴「!!」


『なんとなく俺はお前のいろんな表情を見てきたような気がするけど、やっぱお前は笑ってる顔が1番似合ってると思う。だから、笑っていてくれねえか?』


美琴「(こ、こいつ〜…!真顔というか超かっこいい顔で何言っちゃってくれてんのよ!?…そんなこと言われたら顔がふにゃけちゃうじゃにゃいにょよ〜このばかぁ〜///)」ふにゃー


『おっ?思ってたより不気味な感じになっちまったけど、それでも笑顔は笑顔だ!ありがとな、美琴』


美琴「こ、こちらこそ…その…あ、ありがとう…と、と、とうみゃあ///」



佐天「(あれ?あそこにいるのは…)…御坂さ〜ん、おはようございます!」


美琴「ふにゃー///」


佐天「(電気を漏らしながら、不気味にニヤニヤしてる…近くのは怖いけど、ここから大声で呼べば!)み、御坂さん!御坂さ〜ん!」


美琴「ふに……ってあれ!?佐天さんじゃない。一体いつからそこにいたの!?」


佐天「(やっと気づいてくれた…)ついさっきからですよー。それにしても御坂さんはここで何をしてたんですか?」


美琴「へっ?…いや、その…」


佐天「…!…その手に持ってるのはスマホですよね!?さては、予想通り御坂さんも例のアプリをやってるんですね!」ニヤニヤ


美琴「うぐっ…!?……そうよ。結局やることにしたのよ。…って、私『も』ってことは、佐天さんもやってるの!?」


佐天「(あれ〜?意外とあっさり認めた)もちろんです!こういうおもしろそーなことに敏感なのが涙子ちゃんなんです!ちなみに御坂さんは、どっちのモードでやってるんですか?」


美琴「一応特殊モードでやってるわ」


佐天「え!?じゃあ、御坂さんはパスワード知ってたんですね!凄いなあ。あたしはパスワードがわからなかったんで、もちろん通常モードでやってますけど…」


美琴「そ、そうなんだ」


佐天「そうだ、せっかくだから御坂さんに紹介しますねー。ジャジャーン、あたしの『初晴』です!どうですか!?」スチャ


美琴「初晴?…あっ、そうか。通常モードだと名前をつけてあげられるんだっけ」


佐天「ええ!?どういうことですか?たしか噂によると、通常モードと特殊モードは外見が違うだけだって話を聞いてたのに…。…御坂さん、試しに御坂さんのを見せてもらえませんか?」


美琴「い、いや駄目よ!!これには、何らかの事件が関わってるかも知れないんだから!!佐天さんも巻き込むわけにはいかないの!」


佐天「(事件…??)でも、あたしのは見せてあげたのに御坂さんのは見せないってのはちょっとずるくないですか?超能力者の矜恃ってヤツを見せてくださいよー」ニヤニヤ


美琴「ぐっ…!?…わかったわよ…もう好きにして…」


佐天「さっすが御坂さん!それでは早速……って、ええ!?これ、上条さんそのものですよね!?」


美琴「うん、どうもそうみたいなのよ。あの馬鹿にメールで聞いたら、どうやらこっちのモードは、あの馬鹿の知り合い向けのサービスらしいわ…開発者の思惑が本当にその通りなのかは知らないけど…」


佐天「(なるほど、だから何かの事件に巻き込まれたとかなんとか言ってたんだ)へえー、そうなんですか…。

……そうだ!御坂さんはもう彼からの評価ってのは見ました?」


美琴「…怖くて見れない…」


佐天「そんなに気張るようなことでもないみたいですよ。この好感度機能ってのは、あくまでおまけみたいなものらしいですし…」


美琴「(妙にやり取りがリアルだから怖いのよ!)」


佐天「ちなみにあたしの場合、信頼度がD、庇護欲がB、居心地がBで、総合ランクがC+みたいです。このランクはそれぞれE〜Sまであるらしいですよ。ちなみに私は、『そこそこ仲のいい年下の女の子』って評価されてます」


美琴「(お、思ったよりも高い…)」


佐天「まああたしの分はこれくらいにして、御坂さんのをチェックしましょうよー」


美琴「い、いや…でも…」


佐天「大丈夫ですって!どうせまだサービスが始まったばかりで、半日分の大まかな評価しかまだ出ませんし。そんな気にしなくても…

…ってあれ?あの人は……」


美琴「…?…」



食蜂「あらぁ?御坂さんじゃない。こんな所で何やってるのかしらぁ?」


美琴「…げ……まさか休日なのにアンタに会う羽目になるとわね…。もしかして今日は厄日なのかしら?」


食蜂「ひっどぉーい。そんなことばかり言ってると上条さんに嫌われちゃうゾ☆」


美琴「…!……なんでそこであの馬鹿の名前が出てくんのよ…」


食蜂「なんででしょうねぇ?…って、あらぁ?御坂さんが今手に持ってるのはスマホよねぇ。ってことは御坂さんも例のアプリをやっているのかしらぁ?」


美琴「!!…なんでアンタがそのアプリに詳しそうなのよ」


食蜂「そんなの簡単よぉ。私もそのアプリやってるからなんだゾ。…ほらぁ☆」スチャ


美琴&佐天「!!」


食蜂「どうかしらぁ?」


美琴「(これ特殊モードよね?…どうして食蜂が、幻想殺しについて知ってんのよ!?…………まさか…)

…ねえ、食蜂?一つ聞きたいことがあるんだけど?」


食蜂「なぁに?」


美琴「アンタ、まさかこのアプリの開発に関わってるんじゃないでしょうね?

…返答次第ではアンタをここで黒焦げにするわよ?」


食蜂「…なぁんだ…。そんなことぉ?」ピッ


佐天「…!…………」バタッ


美琴「ちょっと佐天さん、大丈夫!?

………食蜂…アンタは……私の友達に何をしたぁぁァァァァァアア!!!!!!!」バチバチ


食蜂「…安心しなさい。ここから先の話には、彼女の理解力ではついていけそうにないから眠らせただけよぉ」


美琴「…!……アンタねえ…」


食蜂「それで、御坂さんの質問の答えだけどぉ、…それは半分正解で半分不正解…ってとこかしらぁ?」


美琴「はぁ?ちょっと何言ってるのか分からないんだけど?」


食蜂「私はそのアプリの開発には、一切関わってないわぁ。そのアプリの存在力を知ったのも昨日のことだしねぇ…。だけど、そのアプリが開発された目的の範疇に私も入ってるから、全くの無関係ではない…ただそれだけよぉ」


美琴「…余計訳が分からなくなってきたけど、取り敢えずアンタはこのアプリが開発された目的を知ってんのよね?だったら、それを教えなさい」


食蜂「御坂さんにとってはすごく気に入らないことだと思うけどぉ?」


美琴「いいから、さっさと答えなさい!」バチバチ


食蜂「…上条当麻を愛していながらも、諸々の理由で彼の側にいられないような人間が、それでも彼の声を聞くことで彼の温もりを感じられるようになること…。…それがこのアプリの作られた理由よぉ」


美琴「…は…?」


食蜂「あなたもよく知ってることだと思うけどぉ、彼には凄まじい行動力があるじゃない?だから彼は、世界中で多くの乙女の命を救い、そしてその乙女心を奪っていっちゃったらしいわぁ。

…まったく呆れちゃうわよねぇ…。当人にそんな自覚力は全くないんだもの」


美琴「…まあ、その点に関しては私も手を焼いてるからよく分かるわ」


食蜂「…そういう惚気話聞かされると嫉妬力が働いちゃうんですけどぉ…。

…でもねぇ、あなた達とは違って、世界各地に住み、所属が各々違う乙女達にとって、学園都市に住んでいる彼との恋愛は、恐ろしく困難力の高いモノなのよぉ」


美琴「…」


食蜂「そんな乙女達を救済しようと、どっかの優しいおバカさんが頑張って工作してくれたって訳。…ただそれだけのことなんだゾ☆」


美琴「…なるほどね」


食蜂「ふふ☆ やっぱり当たり前のようにいつも彼の側にいられるあなたには気に入らない話だったかしらぁ?表情がキツくなってるわよぉ?」


美琴「…取り敢えずこのアプリが作られた目的ってのは大体理解できたわ。

…だけど、一つ気に入らないことがあるとすれば、それはアプリの作られた目的じゃない」


食蜂「!」


美琴「それはアンタのことよ、食蜂!」


食蜂「…どうゆうコトぉ…?」


美琴「とぼけても無駄よ。…あまり認めたくもないし、それがどんなものだったのか正直想像もつかないけれど、アンタとあの馬鹿には何らかの繋がりがあった!しかもそれは、学園都市最強の精神系能力者であるアンタが、あいつに好意を寄せるほどのものであった」


食蜂「…」


美琴「…でもそこまでは別に大きな問題じゃない。問題なのは、何であの馬鹿と同じ学区に住み、同じ学区の学校に通ってるアンタが、あの馬鹿の側にいられないのかってことよ!!」


食蜂「………まあ、そこに疑問を持っちゃうのは当然よねぇ…」


美琴「…答えてくれるのかしら?」


食蜂「……世の中にはねぇ、彼との距離力や己の所属力のせいで彼の側にいられない人間もいれば、もっと残酷な理由で側にいられない人間もいる…。…例えば私みたいにねぇ…」


美琴「!」


食蜂「あなたにその理由を話す義理はないけどぉ、とにかく私は御坂さんみたいに、彼の側に笑って居続けることが、現状絶対に不可能なのよぉ」


美琴「…」


食蜂「…それでも彼を諦めることは決してできなかった…。

…未練タラタラで見苦しいでしょう?笑ってくれて結構よぉ。

…だけど、そんな私でも、あの女からこのアプリの話を持ち掛けられた時は内心、自分の正気力を疑ったわぁ。こんなおもちゃに頼ってまで彼に依存するなんてねぇ…」


美琴「…食蜂…」


食蜂「…でも実際にこのアプリを試して、彼…いや、当麻の優しい声が、私の名前を呼んでくれたのを聞いた時、私は確かに救われたような気がしたの。それが例え偽りの声だったとしても、ひたすら『奇跡』を待っているだけの私に、十分生きる希望力を与えてくれたのよぉ!」


美琴「…!…」


食蜂「…私の話はざっとこんなもんよぉ。

…ところで、御坂さんは、万一の場合には、このアプリの開発に携わった人間を取り押さえようとしてたわよねぇ?…別にあの女の肩を持つわけではないけどぉ、あいつが当麻を自ら不幸に貶めようとする筈はないから、一応アプリの安全性は保証できると思うわぁ」


美琴「…何が言いたいのよ?」


食蜂「…もしもあなたが、それでも気に入らないからっといって、開発者を問い詰めてアプリのサービスを停止させようって言うのなら、私は例えあなたとシングルスで戦う羽目になったとしても、あなたを全力で止めさせてもらうわぁ!

それだけは覚悟して頂戴!!」


食蜂はそこで、美琴を鋭い目つきで睨みつけていた。そこには、強い信念が宿っているように見えた。




美琴「……!…………………はぁ…そういうことなら仕方ないわね…」


食蜂「?」


美琴「本当はね…アンタにこのアプリが作られた目的を聞いた時、私はこのアプリをアンインストールしようと思ったの。…だってそうでしょう?私やあの白いシスターなんかは、その気になればいつでもあの馬鹿、いえ…当麻の側にいられるのは否定できない。そんな人間がこのアプリに熱中するなんて、アンタ達のような人間を侮辱してるみたいじゃない!」


食蜂「…」


美琴「…でもそれは、私が本当にすべきことではないと思った」


食蜂「!」


美琴「アンタの言う通り、私やシスターは当麻の側にいつもいられるけど、そこには多くの女の子達の想いが犠牲になってるのよね…。

…だったら、私達はその想いを理解する必要があるはずよ!そうでなければ、当麻の側で笑っていられる権利なんか、私達にあっていいはずがない!」


食蜂「……御坂さん」


美琴「勿論、私やアンタ達は立場が違いすぎるから完璧に理解できるとは思わない。食蜂の想いを理解するのにも、私がアンタと全く同じ経験をする必要があるのかもしれないし、それでも理解できないかもしれない。それだけ難儀なことは何と無く分かる!…だけど、お互いこのアプリを通して似たような経験をすれば、私がアンタ達のことを少しでも理解できるチャンスがあるかもしれない!」


食蜂「…」


美琴「だから私は、今はこのアプリを手放すわけにはいかないし、開発者をとっちめるわけにもいかない!!

…これが私の出した、アンタ達の想いを汲んだ答えよ!」




食蜂「…………………クスクス…」


美琴「…!…何笑ってんのよアンタ!?」


食蜂「本当はまだこのアプリで遊んでいたいだけじゃないのぉ?」


美琴「なっ…!?せっかく人が、らしくもない真似をしたって言うのに!!

……まあいいわ。アンタなんかより私の方が当麻に気にかけて貰ってるていうのを、このアプリで証明してあげるんだから!」


食蜂「はァーーーッ??御坂さんのように、やたら野蛮力の高い割には貧相な女を、当麻が恋愛対象に入れてるわけないじゃない!!」


美琴「!!?だ、黙りなさいよ!減らず口と胸の脂肪の塊だけは一丁前の運痴女!!…どうせその運動神経の無さ故に、当麻の足を引っ張ったこともあるんでしょ?」


食蜂「!?…こんのぉ…言わせておけばぁ。

…フン、いいわぁ。ならこのアプリの当麻の好感度で勝負しようじゃない!」


美琴「望むところよ!!」



佐天「(さっき目が覚めたけど、2人とも怖くて話しかけられない…)」



食蜂「じゃあまず私のから見せてあげるわぁ☆」



信頼度C

庇護欲A

居心地A 総合B+


総評:最近結構気になり始めた年下の女の子


美琴&佐天「!?」


食蜂「ふふ☆どうかしらぁ?」


美琴「(し、信じられない…)」


佐天「(これ、御坂さん結構やばいんじゃ…?)」


食蜂「さっきのイベントでヘマしなければ、もっと上だったかもしれないけど、まあざっとこんなもんかしらねぇ。…さあ次は御坂さんの番よぉ。まあ、絶望力に怖じ気づいて降参してもいいんだゾ☆」


美琴「!?…だ、誰が降参なんかするかっての!…いいわよ、私と当麻の絆を見せてあげる!!(当麻お願い、私に力を貸して!!!)」




信頼度A

庇護欲C

居心地C 総合B-


総評:信頼はかなりしてるけど、もう少しか弱いところを見せて欲しい…



食蜂「あらぁ?どうやら私の勝ちみたいねぇ☆」ニッコリ


美琴「…………なんで信頼度以外が軒並み低いのよ…?」


食蜂「大方理不尽な暴力でもしちゃったんじゃないのぉ?」


美琴「……あ…」


佐天「(御坂さん…)」


食蜂「まあいいわぁ。どうせ超能力者でこのアプリをやってるのは私達だけなんだしぃ、これで1番当麻に気に入られてる超能力者ってのはこの私だって結論になるわよねぇ?」


美琴「…ぐっ…」







「いやァ…そいつは違ェなァ…」


美琴&食蜂&佐天「「「…え!?…」」」


美琴「(…って、佐天さん、起きてたの!?…いや今はそれどころじゃない!)」


美琴達は声の発信源である、頭上の空へと目をやった。そこには純白の巨大な翼を羽ばたかせながら、獣のように獰猛な笑みを浮かべてこちらを見下ろしている白髪の少年がいた。


美琴「!!あ、一方通行!!?」


食蜂「!?…じゃあひょっとしてぇ、アレが第一位なのぉ?」


美琴「…なんでアンタがこんなとこにいんのよ!!私達になんか用でもある訳?」


一方通行「理由?そンなもン簡単さァ…クソ低レベルな争いをしてやがる格下の超能力者どもに、第一位の俺とオマエらとの間にある、絶対的な壁って奴を教えに来てやったぜェ」


美琴「…良く分かんないけど、取り敢えず佐天さん!!さっきの反応からして起きてるんでしょ!?だったら今のうちに逃げて!!こいつは正真正銘のバケモノなのよ!!!」


佐天「…へ…?…あ、わ、わかりました」


一方通行「あン?何やらとンでもねェ勘違いをしてやがるなァ…。

…まあイイ。こっちの女が第三位ってのは知ってるが、となりのオマエは第五位だそうだなァ?」


食蜂「…だったらなんなのよぉ!?」


一方通行「くっくっ。丁度イイ。今からオマエも、そこのオリジナルとともに絶望の淵にぶち込ンでやるよォ!!

…こいつを見やがれェ!!!」




信頼度S

庇護欲A

居心地A 総合A+


総評:最高クラスの親友



美琴&食蜂「「……は…!?」」


一方通行「どうだァ?これが俺とあの無能力者との絆って奴だ」


美琴「じ、冗談で…しょ…?」ガタガタ


食蜂「…そんな…ぁ…」


一方通行「(ンンーう?イイねェ!こいつらの反応最っ高だねェ!!やべェよ!!!朝当麻が起きてからひたすらアプリを弄ってた甲斐があったぜェ)さァて、三下共。これで痛ェほどよォく分かっただろ?『当麻』に最も気を許されている超能力者ってのは、誰のことなのかがなァ!!」


美琴&食蜂「「…ぐぬぬ…」」


一方通行「まァ、あいつのお寝ンねの時間まではまだたっぷりと時間はあるから、精々それまで無駄な努力をすればイイ。それじゃァ、俺は帰らせてもらうぜェ。あばよォ」


それだけ言って満足した少年は、純白の翼を利用して、瞬く間に虚空の彼方へと消えていった。


美琴「な、なんなのよあいつ!!?先月は金髪の無能力者とかと一緒に、やたらニヤニヤしながらあの馬鹿とつるんでたみたいだったけど、もしかしてあいつホモだったの…?

…それにしてもあんな奴に負けてるなんて、これ以上にない屈辱だわ」


食蜂「…」


美琴「…食蜂?」


食蜂「…むきィーーーッ!!あんな変態力の高過ぎる白モヤシに当麻を渡してなるもんですかぁ!

…さあて当麻ぁ…?今から蜂蜜のようにドロドロでぇ甘い、あまぁ〜い2人だけの時間を過ごしましょうねぇ…ふふふ☆」


美琴「」



(日本時間で正午、イギリス清教)


建宮「ようやく学園都市の外でも、アプリがダウンロードできるようになったのよな…って五和、なんでそんなに早いのよ!?」


五和「ふふっ、ダウンロード完了です♪さあ、早く声を聞かせてください!あ・な・た♡」


神裂「ちょっと五和早すぎませんか!?…畜生、すまほとやらの操作方法がいまいちわかりません…。た、建宮!私のも直ぐに上条当麻の声が聞こえるようにしてください!」


建宮「ち、ちょっと待って欲しいのよな、女教皇様!まだ自分の分が…」


神裂「ごちゃごちゃうるっせえんだよ、この似非ウニ頭野郎が!!!」ドンッ!!!


アンジェレネ「…ひ、ひっ、ひぃ〜!?」ガタガタ


ルチア「大丈夫ですか!?シスター・アンジェレネ…シスター・アンジェレネ!!!!!」


アニェーゼ「…まったく皆揃って何をやってやがるんだか…。ちなみに学園都市内でこのアプリを遊ぶ場合とその『外』で遊ぶ場合の最大の異なる点てのは、『外』ではGPS連動機能の正確性が若干劣っちまうことらしいですね。また、イベントの内容も少しグレードが落ちちまうようです」


建宮「呑気に説明なんかしてないでこっちを助けて欲しいのよな!!

…おし、お、終わりましたのよ、ぷ、女教皇様…」


神裂「ではこれで、私もようやく上条当麻の声が聞けるのですね…?

建宮、貴方はこの件に関してはもう必要ありません。お好きになさい」


建宮「あ、あんまりなのよな…」


五和「(まったく、本当にやかましい人達ですねえ…!せっかく愛しの当麻さんと2人きりになれたのに…!!)」イライラ


『…どうしたんだよ五和たん?五和たんが怒ってるなんて相当珍しいな…』


五和「!!…ごめんなさい、あなた。ちょっと仕事の疲れでイライラしてしまったみたいです。だからあなたが心配する必要はありませんよ」ニコッ


『そうか…。なら良かった。…なあ、お互い疲れてるみたいだし、今日は少し休もうぜ。また、起きたら色々と話そう』


五和「分かりました♪それでは、おやすみなさい、あなた♡」


『うん、おやすみ五和たん』


五和「ふふ。なんだか新婚夫婦みたいでいいですね、これ♪」



(同時刻、上条の寮)


禁書「う〜ん♪やっぱまいかの料理は最高に美味しいんだよ!」


舞夏「当然だろー。…なあ、ところでお前は上条当麻のアプリをやってるのかー?」


禁書「あぷり?…ああ、とうまとお話しできる機械のことだね。それなら私もやってるんだよ」


舞夏「ちょっと見せてみろー。…って、お前、こっちの上条当麻に何したんだよー?」


禁書「?」


『…うう。上条さんはインデックスさんに振り回されてヘトヘトなんです…』


舞夏「こいつ、尋常じゃないほど疲れてるみたいだぞー?」


禁書「う〜んとね、とうまと一緒に色んなお店に行きたいかも、って言ったの。そしたら機械の画面がぐるぐる動いて、おうちの中にいるのに色んなお店を見て回れたんだよ!」


舞夏「それだけかー?」


禁書「あとは、色んな魔術師や能力者達が襲って来たんだけど、全部とうまがやっつけてくれたの。その度にお医者さんのお世話になってたけど、それがあにめを見てるみたいでとても面白かったんだよ!」


舞夏「…なるほどー、肉体労働させまくったのかー。これこそ純粋さ故の残酷さって奴だなー。現実の上条当麻も色々と苦労してるけど、アプリの上条当麻も頑張るんだぞー」


『…ふ、不幸だ…』


ちなみにその頃オティヌスはというと、土御門舞夏に見つからないように、小さく千切られたジャムパンを頬張りながら、アプリの『上条』を相手していた。


『それにしても、オティヌスさんはどうしてそんなに上条さんの好みが分かるんでせうか?』


オティヌス「幾ら私が小さくなってしまい、魔術が使えなくなったからといって、別に魔神から人間になった訳ではない。知識自体はそのままなんだよ。だから矮小な人間の考えることなんて全てお見通しさ」


『…たしか、今のお前は15センチくらいなんだよな?そんな小さな体躯で凄まれてもイマイチ迫力が…』


オティヌス「あぁ…!?」



(午後1時半、とあるファストフード店)


{…なあ、クウェンサー。急に黙り込みやがってどうしちまったんだよ?…おいまさか、テメェ!?}


{…ごめん、ヘイヴィア。俺はやっぱりお姫様の応援に行くよ。ここの環境だとお姫様の『ベイビーマグナム』では、あの『第二世代』のオブジェクトと相性が悪すぎる。このままだとお姫様がやられちまうかもしれない。それを黙って見過ごすことなんて俺にはできない!!}


{…またいつものアレが始まったよ…。テメェの辞書にはオブジェクト同士の『クリーンな戦争』てのは載ってねえのかよ!!?なんで毎度毎度このご時世で、生身の人間があの巨体をどうにかしようっていう、とんでもねえ発想に辿りつくんだ!?…ああもう、爆乳との連絡は途絶えたままだし、どいつもこいつもこの超美形天才富豪貴族ヘイヴィア様を放ったらかしにして、やりたい放題やりやがって!!}




食蜂「(相変わらずここの店内放送では変な番組を流してるのねぇ…今度これアニメ化するからその宣伝らしいわぁ)

…まあ、いいわぁ。さ、今はちょっと遅いけどランチを楽しみましょう。ここは私のオススメのお店なんだゾ☆」


『見たところ普通のハンバーガーてところだな。…なあ、操祈?上条さんはもうお腹がペコペコなんです!これを頂いちゃってもよろしいでせうか?』


食蜂「どうぞぉ☆…ちなみに見た目は普通でも、味は格別なんだゾ」


『…う、う、うめぇ!うますぎる!…さすがお嬢様御用達の店…!上条さんが普段食べるハンバーガーとは天と地ほどの差がありやがる…』


食蜂「ふふ☆お気に召されたようで私も嬉しいわぁ。…だけど、あまりお嬢様とか特別扱いしないで欲しいんだゾ」


『悪りい、悪りい。…ところで、操祈。一つ質問してもいいか?』


食蜂「なぁに、当麻ぁ?」


『さっきから二人してひたすら喋ってばかりな気がするんだけど、色んな所に遊びに行かなくてもいいのか?それでお前は今、本当に楽しめているのか?』


食蜂「大丈夫よぉ。…私はね、こうして当麻とお話しができるだけで十分過ぎる程幸せなんだゾ☆」


『そ、そうか…。何だかちょっと照れくさいな…。でも、まあ操祈が楽しめてるなら上条さんも本望です!それなら、操祈に満足して貰えるまで、ひたすら話しまくってやるからな!』


食蜂「ふふ、ありがとう☆」



(午後2時、とある高校)


上条「や、やっと本日の補習が終わった…。…災誤の野郎、朝からぶっ通しで扱きやがって…。何が生徒指導を兼ねた補習だよ!?幾ら何でも限度ってモンがあるだろうが!今日ばかりは普段温厚な上条さんもちょっとばかしバイオレンスな気分に……って、あそこに集まっているのは…」


小萌「あれ上条ちゃんじゃないですかー。災誤先生との補習はもう終わったんですー?」


上条「…はい。い、一応。…ですがもう俺、現在進行形で何もする気にならないくらいに打ちのめされちゃってます…。

…ところで皆さんは、こんな所で何をしてらっしゃるのでせうか?」


姫神「勿論。これ。いちゃイマ。」


上条「…いちゃイマ?あ、ああ例のアプリの略称か」


吹寄「しかしこの男、外見はいいけど中身が貴様に似ててイライラしてくるのよね…」


上条「吹寄さん落ち着いて!…てか何でお前らがこのアプリやってんだよ!?」


姫神「土御門君が。SNSを使ってクラスの皆に紹介してくれたから。」


上条「…あの変態サングラスめ…またしても余計なことを…!

…ってあれ?も、もしかして小萌先生もやってるんですか?」


小萌「勿論なのです。今日朝イチで結標ちゃんと一緒に始めちゃいました♪…ちなみにこのアプリは、雲川ちゃんと食蜂ちゃんのお墨付きなんですよー」


上条「…しょくほう?」


小萌「それにしても、このアプリに出てくる男の子は、外見も結構上条ちゃんに似てると先生は思うんですけど、どうですー?」


上条「(ギクッ)な、何を言ってらっしゃるんですかー、先生。上条さんはこんなイケメンではありませんことよ?」


小萌「(先生、本当は特殊モードでやってるからバレバレなんですけどねー)」


上条「(やべ、このままここにいてはまずい気がする…)そ、そうだ…!か、上条さん、そう言えば土御門や青髮ピアスと遊ぶ予定だったの思い出しちゃいましたー。で、ではそろそろこのへんで失礼しま〜す!…」バタバタ


小萌「あ、は〜い。お疲れ様なのです、上条ちゃんー」


姫神「…ちなみに。実は私も。特殊モードでやってる。」



(とある高校、下駄箱付近)


上条「…はぁ、はぁ…ここまで来ればもう大丈夫かな…。しかし、まさか先生達まであのアプリを手にしてるとは…。実は案外結構売れ行きが良かったりして。…いや、それはない…よな…?」


雲川「いや、今お前が薄々勘付いているように、私の想像以上に需要があったみたいだけど」


上条「うわっ!?先輩そこにいたんですか!?」


雲川「私は一応ここの生徒だし、ここにいても何の問題もないと思うけど?」


上条「…まあ、そりゃあそうだけど…。…ところで、一つだけ質問してもいいですか、先輩?」


雲川「別にいいけど。…もしかして私のスリーサイズについてか?お前が望むなら教えてやらんこともないけど」


上条「違えよ!?…いや、勿論知りたいけども!…そうじゃなくて、先輩はこのアプリの作成に関わってるんですよね?なら、このアプリが作られた理由は、ヒーローの都市伝説云々以外にも、実は特別な目的がある…、とかそういう話を開発者から聞いてたりなんかは?」


雲川「…その質問に答える前にはまず、お前は今までに一体どれほどの女の子を、泣かせてきたのかを自覚して貰う必要があると思うけど?」


上条「…は…?」


雲川「まあともかく、このアプリは、世界中の人間に希望を与えるために作られたものだけど。だから、お前が心配してるように、誰かを悲劇に陥れるようなウラがある訳ではないから安心しろ」


上条「…世界に希望を与える、ねえ…」



(同時刻、とある喫茶店)


『そう言えば母さんもう直ぐ誕生日だよな?…当日忘れちまうかもしれねえから今言わせてくれ。誕生日おめでとう!』


詩菜「あらあら。やはりアプリとは言えども実の息子に面と向かって言われると少し照れくさいわねえ。でも当の本人は、今朝アプリについて電話で教えてくれた時にはまったく気にかけてなかったようだけどうふふあらやだ私ったら当麻さんにスマホ投げ飛ばしちゃいそううふふふふふ」


美鈴「(…上条さんから何やら不穏なオーラが出てるような気がする…)そ、それにしても特殊モードだと本当に、当麻君にそっくりになるんですね」


詩菜「さすが学園都市の科学力と言ったところですかねえ…。

…ってあら?その話ぶりから言って、もしかして御坂さんもこのアプリをやってらっしゃるのかしら?」


美鈴「はい!ただ私はパスワードを知らなかったんで通常モードでやってますけど…。

…実は私も、学園都市で当麻君のお世話になったんで、ちょっと気になってたんですよね(本当は、美琴ちゃんの未来の旦那さん候補NO.1の彼を研究したかっただけなんだけどね♪)」


美鈴「まあ、当麻さんてばいつの間にか人妻にまで手を出しちゃって。しっかりと刀夜さんの血を受け継いで育ってることに私ったら妬いちゃいそううふふふふふふふふふ」



刀夜「へっくしょい!!」


田中「大丈夫すか上条さん?風邪でも引きなさったんすか?」


刀夜「いやあ、大方日本にいる妻が私の噂話でもしているんだろう(勿論負の意味で…)」


田中「駄目だ!この人仕事中なのにのろけやがった!!」



(午後2時半、とある交差点)


『なあ、操祈。さっきから上条さんのこと気にかけてくれるのは嬉しいんだけど、あまり余所見をして周りの注意を怠るなよ?ここは車の通りも結構多いんだし…』


食蜂「ふふ、当麻ってばぁ心配症過ぎるんだゾ。このパーフェクトな食蜂操祈サマにそんな心配力は無用なのよぉ」


『…だってお前色々とトロいじゃん』


食蜂「なぁんですってぇッッッ!!!?………て、あら…ぁ……?……」


その時食蜂は、スマートフォンの画面に夢中になり過ぎて赤信号を無視してしまい、横断歩道に飛び出していた。そして、当たり前のように、車両専用の青信号に従ってスピードを上げていた大型トラックが、食蜂の体を突き飛ばしてしまい、彼女のひ弱な体など一瞬で粉砕してしまう。






しかし、




その




直前に、




上条「ふう。あっぶねえなあお前。俺があと少しでも助けるのが遅れてたら、完全にアウトだったかもしんねえぞ」


食蜂「…あ…あ……あ」


上条「その制服を着てるってことはお前、常盤台のお嬢様だよな?お嬢様がスマホに夢中になって車に轢かれちまったなんて言ったら、示しがつかねえぞ?」


とある高校を離れた上条は、赤信号を無視して横断歩道に進入しようとした少女を偶然見つけた。上条は横断歩道の上で呆然と立ちすくんでしまった少女を、自然と抱き締めるような形で、安全地帯へと移動させることに辛うじて成功していた。


上条「…でももう大丈夫だ。これからはきちんと周りに注意しろよ?」


と言って、上条は優しく抱き締めていた少女から離れようとした。だが、


上条「……??な、なんでお嬢さんは上条さんの背中に腕を回して、抱き締める力を強くしてるんでせうか?…てか、当たってる!当たってるから!おっきなお胸が上条さんに当たってるんだってばーっ!!」


食蜂「…もう少しだけ…もう少しだけでいいから私のこと抱き締めてもらえるかしらぁ?…お願い…」


上条「え…?でも、さすがの上条さんだって、初対面の女子中学生をこれ以上抱き続けるのはちょっと…。

…って、なんでお前はそこで抱き締める力を強くするんだよ!?みんなの視線が痛いのよーっ!!」


食蜂「…あったかぁい…。…何だかこうしてると凄く落ち着くし、本当に幸せな気持ちになれるわぁ。

…ずっと…ずっとぉ…こうしていられたらどんなに幸せになれるのかしらねぇ…」


上条「…は?……って…あれ…?……この蜂蜜の様な髪の匂いは、間違いなく最近嗅いだことのあるような…あれ?…」


食蜂「う〜ん☆ でも、今はとりあえずもう満足できたわぁ。

…助けてくれてどうもありがとう、当麻ぁ。またいつか、今みたいに抱き締めてくれたら嬉しいんだゾ。それじゃあねぇ☆」チュッ


そう言って少女は、上条の頬に口付けをすると、後ろを振り返らずにそのまま横断歩道を渡っていった。何が起きたのか全く把握できていない上条は、今度は自分が安全地帯で呆然と立ちすくむ形になってしまった。ただそこに残された蜂蜜の香りに浸りながら…。


上条「(何故俺のことを…?記憶喪失前に出会った知り合いだったのか?)……………………………………………………あれ?…………俺は今さっき、車に轢かれそうな『誰か』を助けたような気がするけど、どんな人だったっけ?

…おかしい…。全く思い出せねえぞ…」




『おい、操祈!大丈夫だったのか!?…まさか怪我とかしてねえよな!?』


食蜂「ふふ☆大丈夫。怪我ひとつないわぁ。だから心配はしなくてもいいって言ったでしよぉ?私には、困ってたらいつだって駆けつけてくれる、私だけのヒーローがいるんだからぁ☆」


『…??…まあ、操祈に怪我がなかったんだったら何よりだ!』


食蜂「ありがとねぇ。…今日は当麻のおかげで最高に幸せな1日になりそうなんだゾ☆」


『……そっか。なら俺も、今日は幸せな1日になれるかもしれねえな!』


食蜂「ふふ☆そうねぇ、きっとそうなるわぁ」



(午後3時、セブンスミスト)


『それにしても、美琴はファンシーグッズが本当に好きだよな。俺には各々の違いが良く分かんねえ世界だけど…』


美琴「別にいいじゃない。私だって一応女の子なんだもん!」


『そうだな…。意外と可愛げな趣味があっていいかもしれねえな』


美琴「…か、可愛いって…///何言っちゃってくれてんのよアンタは!?乙女に軽々しく言うんじゃないわよ、もう!」


『はっはっは。何を言ってるのか良く分かんねえけど、嬉しそうで何よりです』


美琴「うう〜///」



婚后「(あら?あそこで顔を真っ赤にしてお立ちになられているのは…)おーほっほっほ、御坂さんではありませんか。ここで何をしてますの?」


美琴「(…!…婚后さん!?)え、えっと、スマホで面白いアプリを見つけたからそれをやってただけよ?」


婚后「…もしかして、いちゃイマではなくて?」


美琴「(いちゃイマ…?あ、このアプリの略称ね)そ、そうそれよ!

…って、あれ?何で婚后さんもこのアプリのこと知ってんの!?」


婚后「わたくしもやっているから当然でしてよ?…その反応からするとどうやら、このアプリが『学舎の園』中で話題になっていることをご存知なかったようですわね。わたくしも湾内さんや泡浮さんに教えて頂くまでは知りませんでしたけど…。

なんでも、まるで実際に、殿方とお話しをしてるような気分になれるアプリがあるとかないとかで…。今では、園の内部でアプリをまだ手に入れてない淑女を見つける方が難しいそうですわ」


美琴「(じ、冗談でしょ!?…外見は違って見えるはずだから、以前『学舎の園』で問題を起こしたあの馬鹿がモデルだと気づくことはないとは思うけど、ピンチの時にはいつでも駆けつけてくれて、どんな絶望的状況でもボロボロになりながら自分を守ってくれるヒーローなんて、純粋培養のお嬢様には刺激が強すぎる!このままではライバルがまた増えちゃう可能性が…)」


婚后「それにしてもこの殿方、想像以上に頼り甲斐がありますの///。この常盤台の婚后光子に向って、『お前はたしかに凄い力を持ってるし、とんでもなく強い。だけど世の中には、1人じゃ解決できねえ問題ってのがある。誰だってそういう問題の一つや二つ抱えてて当たり前なんだ。だからお前が何かに困った時には、遠慮なく俺を呼んでくれ。そうしたらいつだって駆けつけてやるから!』などと仰るなんて。実際このような殿方がいらっしゃるのか不透明ではございますけれど、もし実在してらっしゃるのであれば、是非1度お会いしたいですわね」


美琴「(もう既にここに1人、暫定ライバルができちゃってるんですけど!?

…これは私もうかうかしていられないわね)そ、そうなんだ。…あっ、そう言えば私、これから用事があるからもう行かなくちゃ!!

じゃあまたね、婚后さん」バタバタ


婚后「あら、まあ、それでは御機嫌よう」


美琴「(…私がぐじぐじしている間に、新しいライバルがどんどん出てきてしまったら、近い将来、私の今のポジションが誰かに取られてしまうかもしれない。ただでさえ私は食蜂や一方通行に負けてるんだから。…あれはあくまでアプリの結果だけど、今のあいつらは当麻のことを、直接目を見て名前で呼べる気がするのよね…。

…そろそろ私も当麻に対して素直になる必要がある時なのかな。…いきなりは多分無理だと思うけど、幸い今の私の手元には、お誂え向きのアプリがある!こいつを練習に有効活用して、少しずつでも素直になってやるんだから!)」



(同時刻、冥土帰しの病院)


『へー、この店には色んな猫がいるんだなあ。上条さんは猫の種類なんて、三毛猫と黒猫とシャム猫くらいしか分からねえけど…』


御坂妹「いや、三毛猫と黒猫は種名じゃなくて特定の毛色を持った猫の総称なのでは?、とミサカは冷静にツッコミしつつ自身の博識ぶりをアピールしてみます」


『さ、左様でございますか…。それにしても御坂妹は本当に猫が好きなんだな。2人で遊びに行くのにペットショップを選ぶ奴って結構珍しいんじゃねえの?』


御坂妹「猫と戯れるのも好きですが1番好きなのはあなたと一緒にいることです、とミサカはしれっと本音を大暴露してみます」


『あ、ありがとう、御坂妹。…ところでお前は猫以外に好きな動物はいるのか?』


御坂妹「適当に流してんじゃねえよ、とミサカは悪態をつきつつ実は子犬も好きであることをこっそり口にしてみます」


『ふ〜ん。子犬か…いいなそれ。…ちなみに動物好きの女の子はカミジョーさんにとってポイント高いですよ?、とカミジョーは自分の好みを少しバラしてみます』


御坂妹「ミサカの口調を真似しないでください、とミサカは自分のアイデンティティーを守りつつ衝撃的な発言を聞いてしまったので少し照れてみます」


『はははっ。やっぱお前と話すのって面白えな!上条さん、何だか楽しくなってきちゃったぜ』


御坂妹「あ、あう…、とミサカはあなたの素敵な笑顔に見惚れてしまいます///」モジモジ



(同時刻、イギリス清教)


神裂「か、上条当麻。そろそろ起床の時間です。起きてください。」


『………う…う〜ん…もう少し寝かせてくれよ…火織…』


神裂「(か、火織だなんて///…って聖人であるこの私がこの位で狼狽えてどうするんです!)で、ですが貴方はこれから私とロンドン巡りをする約束があったでしょう。いいから起きなさい」


『………ぐぅ………ぐぅ』


神裂「…」ビキビキ


野母崎「ぷ、女教皇様!それ以上力を入れたらスマホが!?」


対馬「そ、そうよ!女教皇様、とりあえず五和を見てください!」


神裂「…五和?」チラッ


五和「あらぁ♪きちんとベッドから出てきてくれたんですね!…それでは、改めておはようございます、あ・な・た♡」


『おう、おはよう。それにしても何だか新婚夫婦みてえで少し照れるな///…新婚夫婦が実際はどんなもんなのかは知らねえけど』


五和「まあ、新婚夫婦だなんて。あなたも私と同じことを考えてくれてたんですね♪…私、朝から最高に嬉しいです///」


『そ、そりゃ良かった///』


建宮「(流石五和なのよな。あの女泣かせに百戦錬磨の上条当麻をデレさせるなんてよ…。最近はやたら奴に飢えて、今後の数少ないチャンスでアピールするために、様々な妄想と特訓を繰り返してきた今の五和に隙はないのよ。ただでさえ、元からお嫁さんとしてのポテンシャルはずば抜けてたからな。

…それに比べて…)」チラッ


神裂「……五和、ちょっと宜しいでしょうか?」


五和「(イラッ)……何です、女教皇様?」


神裂「…貴方は如何様にして、上条当麻を起こすことに成功したのですか?」


五和「(そんなこといちいち聞いて来ないで欲しいです!)…簡単ですよ。上条さんに起きるメリットを与えてあげればいいんです」


神裂「……メリット?」


五和「(私の場合は、『早く起きてくれましたらキスしてあげますよ?』って言ったら飛び上がるように起きてくれました。勿論、画面越しで当麻さんの頬にキスしてあげましたよ///)…そこから先は女教皇様がご自身で考えるべきです」


神裂「…メリット…メリット……メリット?……そうだ、あの手がありました!」


建宮「(…!……まさか…)」


神裂「あのう、上条当麻?もし貴方が直ぐに起きて頂けるのであれば、私からのご褒美を差し上げても構いませんが、どうです?」


『……う〜ん……ご…ほう…び…?』


神裂「あ、貴方が望むのであれば、私が例のメイド服を着て差し上げましょうか?///」


『…!!!!!!?????……うう……』ガクガクブルブル


神裂の提案を聞いた『上条』は、掛け布団に潜りこんで体全体を覆いつつ、何故か震え始めてしまった。


神裂「(ブチィッ!)…もう我慢なりません!!いい加減にしろやこのど素人がああァァァァァァッッッ!!!!!」グシャグシャ


建宮「イヤァァああああああああああああ!!せっかく苦労して手に入れたスマホがぁぁぁあああああああ!!粉々なのよぉぉぉおおおおおおおおおお」



オルソラ「あらまあ、皆さん朝からお元気そうで何よりでございます」


『オルソラ…、上条さんは不吉な何かを感じ取ってしまったのですが…。そちらは大丈夫なのでせうか?』


オルソラ「??…皆さんいつとも変わらぬ様でございますけど?

…まあまあ、そんなことより朝ごはんにいたしましょう」


浦上「…この人の呑気さが本当に羨ましい…」



(午後3時半、とある公園)


『どうしたんだよ、美琴?何で急に借りてきた猫みたいにそわそわし始めたんだ?』


美琴「(…うう〜…。何で所詮おもちゃのこいつ相手にさえ、面と向かって名前を呼ぶことができないのよ〜私!

…こんなんじゃ食蜂達に置いてけぼりにされるってのに、何やってんのよ!)」


『なあ、本当に大丈夫かお前?』


美琴「ちょっと静かにして!」


『??お、おう…』


美琴「(…こんなこともできないで何が常盤台のエースよ!このまま現実のあの馬鹿が誰かに取られてしまってもいいの?…そんなの絶対イヤだし認めたくないでしょ?だったらここで根性見せなさいよ御坂美琴!!)…あ、あのさ…と、と、当m…」


『あっ、分かったぞ!…さてはお前、ションベンに行きたかったんだろ?上条さんはそんなの気にしませんからさっさと済まして頂いて結構ですのよ?……て、あ、あれ?…み、み、美琴さん!?何であなたから不穏な空気が醸し出されてるのでせうか!?』


美琴「…このおもちゃ、学園都市第三位の私が正直ぶったまげるくらいには、よ〜くできてるとは思うけど、私にとって物凄く肝心な要素が抜けてんのよね…。

…そう、私のイライラを乗せた電撃を、いとも簡単に打ち消すあの訳の分からない右手。……今はこの怒りどうしてくれるつもりだゴラァ!!?」バチバチ


『ひっ、ヒィ〜!?…すみません、美琴さん!何故あなた様が怒っているのか分かりませんが、な、何でもしますから許してください!』


美琴「!!…言ったわね!?それなら一つ言うことを聞いて貰うわよ!!」


『…か、上条さんにでもできる範囲でお願いします…』


美琴「………じ、じゃあ……今から私はアンタのこと名前で呼ぶけど、絶対に笑わないこと!」


『そ、それだけはお許し…を…って、それだけでいいの!?』


美琴「それだけとか言うな!…今の私にとっては至上命題なのよ!」バチバチ


『うわぁ、ビリビリは勘弁してええ!

…と、とにかく上条さんは、お前に名前で呼ばれたくらいで笑うような器の小さな人間ではありません!お前の好きなように呼んでくれよ』


美琴「本当ね!?…よし、じゃあ…いくわよ…!?」


『お、おう』


美琴「と、と、と…う………ま?」


『うん』


美琴「…当………ま、……当………麻」


『うん、うん!』


美琴「…当…麻、…当麻?…当麻!」


『おおおおお、よく言えました!!

…な?1度言っちまえば名前を呼ぶことくらい、わけなんかねえんだよ』


美琴「で、でもまだ恥ずかしいかも///」


『これでいいんだよ。美琴は美琴なりのペースで、段々と素直になっていけばいいのです!上条さんはいつでもお前の側で応援しててやるからな!!』


美琴「…ん…ありがとう、当麻///」




この時美琴は浮かれ過ぎていて、とある『莫大なチカラを持った何か』が近づいていたのに気づくことができなかった…。



(同時刻、とあるスポーツジム)


『…ハァ……ハァ……。さ、流石の上条さんも、もう限界が見えてきた…かも』


削板「む…!これ位で音をあげるとは、まだまだお前も根性が足りてねえな」


『か、上条さんはあくまで普通の高校生レベルの身体能力なんです!超能力者のお前の基準で語られても…』


削板「オイオイ、オレにとって学園都市に7人しかいない超能力者とかナンバーセブンだとかいうのは、おまけでしかない。オレには煮えたぎる根性さえあればそれでいい!…かつて共に、第三位に関する事件を解決したお前だったら、分かってくれると思ったんだけどな…。あの時のお前の根性は、確かにすげえもんだったのに…」


『……いや…確かにお前の言う通りだな。俺も別に、今まで右手に不思議なチカラが宿っていたからこそ、誰かを守るために戦ってきた訳じゃない。仮に幻想殺しがこの右手に宿ってなかったとしても、俺は今までに起きたあらゆる事件に首を突っ込んでいたに違いねえ。

…結局、何がいつも俺を動かしてきたのかって言ったら、軍覇みたいに根性になるのかもしれねえな』


削板「…上条…」


『だったらここでへこたれるのは俺らしくもねえよな。自惚れてる訳じゃねえけど、この根性で救われた人間は少なからずいると思うんだ。だったら、そいつらを救った何かを俺自身で台無しにする訳にはいかねえ!!

…いいぜ、軍覇。俺の情けねえ幻想をぶち殺すために、もう一度特訓を開始しようぜ』


削板「…ハッ…やっぱおもしれーなオマエ!…ならもう一度お前の根性をオレに見せてみろー!」


『おらああああああああああああああ!!!!』


削板「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


モツ鍋「…やっぱりあいつ馬鹿だろ…」



(同時刻、???)


食蜂「はぁい☆ご機嫌いかがかしらぁ?」


蜜蟻「…何しにここに来たの…?」


食蜂「ふふふ。今、情報隔離されているあなたに、『とっておき』を教えに来てあげたんだゾ☆」


蜜蟻「はあ…?何言ってるのよお」


食蜂「いいから、これを見なさい」スチャ


蜜蟻「!!!!……何よ…これえ…?」


食蜂「何時でも、何処でも、誰でも上条当麻の声を聞くことのできるアプリよぉ。例えばこんなふうにねぇ」


蜜蟻「?」


食蜂「ねぇ、当麻ぁ?ちょっといいかしらぁ?」


『ん?何か困り事か?だったら上条さんに何でも相談してくれよな』


蜜蟻「…!!……な…ん……で…」


食蜂「ありがとう☆…実はねぇ、あなたに紹介したい人がいるんだゾ。

…こちらにいるのは蜜蟻愛愉さんよぉ」


『あ、ああ。俺は上条当麻ってんだ。ええと、その…何だ…とりあえず、よろしくな蜜蟻!』


蜜蟻「…!!!………う、ん…よろ…しく……上…条……クン…」グスッ


かつて記憶を失う以前の上条当麻が、『救う』のに失敗し、彼と敵対する羽目になってしまった少女にとって、それは夢か現か把握できない事態だった。ずっとずっと想いを寄せていた彼が、自分の名前を久方ぶりに呼んでくれた。ただそれだけなのに、しかもそれは、例えいくら酷似しているからといって、本人そのものではない偽りの声であるはずなのに、彼女の目から自然と涙が零れていた。

上条当麻は記憶喪失であり、かつ自分の知らないところで新しい人間関係を構築していた。だからもう既に、自分が取り入る隙はないと思い込み、僅かな希望を押し殺して生きてきた。だけど、だけどそれは、


食蜂「…彼は本当にずるいわよねぇ。私達は何度も何度ももう諦めてしまおうと思ったのに、いつも最後の最後に、私達の胸に空いた大きな穴を、彼自身の優しさで埋め合わせしてくれるの。私達に微かな希望を残すような形でねぇ」


蜜蟻「…」


食蜂「まるで彼は、私達にとって彼を忘れるということは、絶望と同義だということを知っているみたいじゃない?…だって、彼のことを諦めかけて絶望に沈み込もうとする私達を、いつもギリギリのところで助けてくれるんだもの。『別にお前が俺を諦めて苦しむ必要はねえだろ』、ってねぇ。…だから、きっといつか彼は私達の想いにも応えてくれる。私は今もこれからもずーっと、そのように信じていくつもりよぉ」


蜜蟻「……何で、あなたはそんなに前向きでいられるのよ…」


食蜂「…そんなの分かりきってることじゃない…」


蜜蟻「…え…?」


食蜂「彼は私の『ヒーロー』だからよぉ。決して彼は、私達を恐怖や絶望に陥れようとする悪の大魔王なんかじゃない。だから、どんなに彼が来るまでの道のりが辛いものであっても、彼が来てくれたら、それまでの苦痛が一気に吹き飛んでしまうくらいにとことん救ってくれる。

…確かに今私達が置かれている状況は、辛いものでしかないかもねぇ。けれど彼は、絶対に私達のことを笑顔で迎えに来てくれるわぁ!

…だから、今私達がすべきことは、彼が完璧に助けてくれるまでどんなに辛くてもその絶望に抗うことなのよぉ!!」


蜜蟻「…」


食蜂「このアプリはね、そのことに希望力を与えてくれるの。不思議なことに、彼の声が聞けるだけで、私達は幾らでも前向きになれるわぁ。…開発者に関しては、ちょっと気に入らないところはあるけど、それでも『俺はお前を完璧に救ってやるから待っててくれ。それまでは、このアプリを通して俺がお前を支えてやる』って言ってくれてる気がするの。これは私だけじゃなくて、他の女の子にも言えることだと思うわぁ。

…だからぁ、あなただって彼のことを諦める必要なんかこれっぽっちもないんだゾ。この前の事件のゴタゴタが解決したら、あなたももう一度このアプリを通して彼に救われるといいわぁ☆」


蜜蟻「……グスッ……そ…うね……」


…それは…彼を諦めたまま生きていくということは、蜜蟻という少女にとって、辛い道から逃げようとして、1番辛い選択をしてしまったことに他ならなかった。だけど、久方ぶりに自分の名を呼ぶ彼の声を聞くことができた時、彼女の心に蟠っていた幻想が崩れていくような気がしていた。


蜜蟻「…私もずっと待ってるんだからあ……当麻…クン…」




(同時刻、イギリス国内処刑塔)


『…あっ、あっ、ああん…や、やめてぇ!上条さん、もう壊れちゃう!壊れちゃうからぁ…あん…も、もう許してくださいまし、王女さまあ…あん…もう、ムチで叩くのやめてぇ!』


キャーリサ「…ふふふ、これ中々気に入ったし。1度でいいからあいつを私の思いどーりに調教したかったの。

…ほら、もっといい声で鳴くの!!」


『あ、ああああああん…』


騎士団長「(…まさかこのようなアプリで、SMプレイを楽しむ人間がいようとは…。しかもそれが一国の王女様などとは、一体誰に想像できようものか…。

…これからこの国はどうなってしまうのだろう?)」


『なあアックア、何故あなたは上条さんを体操服に着替えさせたのでせう?』


アックア「ふん。大したことではない。普段日頃から、魔術戦に首を突っ込んでくる貴様に、プロの世界の厳しさを体で教えてやろうと思っただけである。その服装ならば動き易いであろう?」


『…一国の騎士様が、そこら中何処にでもいそうな高校生に何しようって言うんだよ?』


アックア「…何度言わせる?私は騎士ではない。私は傭兵崩れのごろつきである。…貴様が普通の高校生だとは笑わせてくれるのであるな。貴様には十分素質があると見受けられるのだから、私が貴様を立派な傭兵に鍛えてやるのである」


『…ま、マジであるか…』


アックア「(それにしてもこの男、思ったよりもいい身体をしているのである。これは中々鍛え甲斐がありそうなのである)」



騎士団長「(…こっちはこっちでホモホモしいことやってるし、何故今の私の周りには、HENTAIしかいないのか?)…おいウィリアム、幻想殺しに現を抜かすのも構わんが、あんまりハメを外すとヴィリアン様にチクっちゃうぞ?」


アックア「ふごっ…!?き、貴様何くだらないことを言っているのであるか!?」


騎士団長「や〜い、ウィリアムのホモ〜。ショタコ〜ン」


アックア「…貴様、幽閉生活で頭がイカれてしまったのであるか?」


騎士団長「…それはキャーリサ様に言ってくれんか?」チラッ


キャーリサ「ふひひ☆どーだ、そろそろお前は気持ち良くなってどーしよーもなくなってるはずなの。感想を言えし」


『あん♪は、はい上条さん気持ち良くなってきちゃいましたぁ♪も、もっとぉ』


キャーリサ「んー、良い返事なの。私もゾクゾクしてきたし♪」


アックア&騎士団長「「…ダメだこいつ。早く何とかしないと…」」



(午後3時45分、とある公園)


美琴「………で、なんでアンタがこんなところにいるのよ?」


トール「そんなに邪険にするなよー、ミコっちゃん。このトールさんとミコっちゃんは、上条ちゃんを助けるために一緒に戦った仲じゃないのー」


美琴「ミコっちゃん言うな!…まったく、アンタてばやたら一方的に馴れ馴れしいわね!…ていうか、今アンタ何も無いところから急に現れたわよね?もしかしてアンタって黒子と同じ空間移動系の能力者なの?…でも『一端覧祭』の時にアンタがメイドさんと戦っているところをチラッと見た時には、発電系の能力を使ってたような…」


トール「あん?フロイライン=クロイトゥーネ争奪戦の時に言わなかったっけ?俺は魔術師であって能力者なんかじゃねえよ。…まあ、今の現象を説明してやってもいいけど、超オカルト否定主義のアンタには理解して貰えなさそうだけどな」


美琴「…(魔術師、ねえ…)」


トール「でもまあ、せっかくだし一応簡単に説明しておいてやるよ。俺は具体的に大きく分けて2系統の魔術を使うことができる。一つはミコっちゃんが以前見た時のように、端的に言うと電気系統の魔術、すなわち『雷神』としての魔術て奴よ。もう一つは『全能神』としての魔術だ。後者については、俺は特定の対象との戦闘において、自分が絶対勝てる、あるいは絶対に敗北を避けれるように、世界そのものを変動させるチカラを持っているのさ。今回はそれを応用して学園都市にやって来た訳」


美琴「……はあ?」


トール「ハハッ、予想通りの反応して貰えるとなんか嬉しいな。まあ一応補足させてもらうと、さっきアンタは俺のことを空間移動系の能力者だと勘違いしたよな?実際ミクロレベルで確認できる現象ってのは、空間移動とそんなに変わる訳じゃねえから、あながち全くの間違いっていう訳でもねえんだろうけど、俺の場合は演算だの座標指定だの連続移動時のロスだのは一切関係ねえ。とにかく相手をぶっ潰せる位置に移動できるように、世界そのものを変動させちまえるのさ」


美琴「…」


トール「そして厳密に言うと世界の変動させ方ってのは2種類ある。一つ目は、『俺の攻撃が相手の弱点に当たってくれるように世界を変動させる』方式だ。簡単に言っちまえば、俺の攻撃が絶対当たるように、相手のいる位置の方を移動させちまう感じだな。二つ目は、『俺が戦闘において有利な場所に潜り込めるように世界を変動させる』方式。こっちは俺のいる位置の方が移動してるようなモンかな。あと、こっちの方式だと相手の攻撃を回避し続けることも可能。要は、絶対に敗北を避けることにも使えるって訳だ。まあともかく俺は、特に意識をしなければ、この2つの方式を自動的かつ自由に切り替えて、世界を俺の都合のいいように移動させちまうことができる訳よ」


美琴「…」


トール「そして今回使ったのは後者の方。言っちまえば、『御坂美琴との戦闘において、俺がアンタを必ず潰せる位置に潜り込めるように、世界を変動させた』ってことよ。勿論俺にアンタを殺す理由なんかなかったから、攻撃はしなかったけどな。まあ、俺の『全能神』としてのチカラってのはこんなもんよ」


美琴「……な…に…よ……それ…?」


トール「…それが今のアンタにとって1番妥当な感想だろうな。まるで、そんなとんでもねえ理屈が罷り通ってしまうことを知らない…というか納得できない感じって奴?」


美琴「…」


トール「おっと、別に俺はアンタの無知を馬鹿にしてる訳じゃねえよ?寧ろそう言われてすんなりと受け入れられちまった方がおかしいんだよ。それならば、学園都市第三位のアンタが魔術戦に頻繁に参加してることになる。それの持つ意味は、多分アンタが想像してるのよりもずっと重い。まあ実際にそうなってねえのは、ひとえに上条ちゃんのおかげだから後でこっそり奴に感謝しておくといい。

…それにしてもこの俺が、『あの女』みてえにペラペラと魔術について語るってのは、結構珍しいモンだから少しは感謝してくれよな!」


美琴「(…納得できない部分が多すぎるけど、とりあえず当麻が今まで戦ってきた世界てのは、私なんかじゃ到底理解できないレベルなのは何と無く分かったわ。正直めちゃくちゃ悔しいけど…。)」


トール「さてと、一応数週間ぶりの再会なんだからこうやってミコっちゃんとだべってんのも悪くはねえけど、残念ながら俺にも目的ってモンがある。そろそろお別れの時間だ」


美琴「…!…それよ、それ!肝心なことを忘れてたわ。アンタ、この街に何しに来た訳?…もしも当麻に手を出そうってんなら、私も容赦しないわよ?」バチバチ


トール「…おーおー、ミコっちゃんてば愛する彼のために、命懸けで戦える美少女って訳か。…良いねえ、上条ちゃんが羨ましいわー」


美琴「ちょ、な、何言ってんのよアンタ!?あ、愛する彼とかふざけたこと言ってんじゃないわよ///」


トール「あはは、そんなに顔を真っ赤にしちゃって。もう、ミコっちゃんたら乙女なんだからあ♪

…そういえば、ハワイでの『F.C.E.』で、俺も、アンタと上条ちゃんのやり取りを見せて貰ったけど、まあ何だ、その…青春って良いよなあ?」


美琴「………………………え………?」


トール「確かミコっちゃん、ペアリングか何かを買ってなかったっけ?それはもう渡せたの?」


美琴「………………い………」


トール「い?」


美琴「…いやァァァあああああああああああああああああああああああ!!」バチバチバチバチ


トール「…オイオイ、こんなところで電気を漏らすとか…。超能力者様がテメェ自身の能力をコントロールできねえでどうすんだよ…まあ、俺も詳しいことは良く分かんねえけど」


美琴「う、うるさい!!!!…アンタは今すぐにその記憶を忘れなさいよ!!!…どうしても嫌ってんなら、あの第五位のクソ野郎に頭を下げてでも記憶消去させて貰うわ!!!」


トール「…見てたの俺だけじゃねえし、無駄だと思うぜ?…ちなみに、上条ちゃんにもバラした時アンタと似たような反応してたけどな」


美琴「!!?…あ、あいつはどんな反応してたのよ!!!??」


トール「うーんと、確か…、『俺の青春がぁぁぁああああああ』とか何とか言ってたような…」


美琴「…へ?……せ、……せい…しゅん…?……私…と…いる…のが…青…春…?………えへ……えへへ……………………ふにゃー///」バチバチ


トール「うわぁ、すっげぇ。とんでもねえほどの電気を漏らしてやがる。こんなの俺の場合だと、『投擲の槌』に接続しなきゃ到底出せねえほどの総量だぞ?

…学園都市製の能力者ってのは、結構すげえ量のエネルギーを生み出せるもんなんだな」


美琴「えへへ。青春だなんて///………って、ちがーう!!だからアンタの目的が何なのかって聞いてんのよ!!!」


トール「おお、そうだ。そういやそんな話してたっけな。…たしか俺が上条ちゃんに手を出したらミコっちゃんは容赦しない、だっけ?」


美琴「そ、そうよ。何か文句ある訳!?」


トール「……はっきり言わせて貰うと、文句があるどころのレベルじゃねえよ…」


美琴「!!…それはどういう意味よ?」


トール「…さっき俺はアンタの無知について馬鹿にしてる訳じゃねえって言ったよな?それはあくまで俺とアンタが戦う予定がない状態での話だ。だがもしもアンタが、俺と本当に戦うつもりなのであれば、アンタは俺の術式についてきちんと理解し、それなりの対策を練る必要がある。それこそアドリブの天才である上条ちゃんでもねえ限りな。

…だけど、さっき俺が説明したにも関わらず、心の奥底で、『そんなのありえない』って思ってるような今の状態のテメェじゃあ、はっきり言って周回遅れどころの騒ぎじゃねえ。悪りいけど俺に勝てる道理なんか微塵もねえよ」


美琴「…!…」


トール「ようは要らねえケンカを吹っかけて、わざわざ自分の命を落とすような真似はするなってこと。アンタが死んじまったら、それこそ上条ちゃんも相当悲しむだろうしな」


美琴「…必要なケンカかそうでないかはこちらで判断するものだと思うけど…?」


トール「あはは。それもそうだな。よくよく考えてみると、侵入者ってのは俺の方だもんな。まあ、今回の俺の目的ってのは、実は上条ちゃんじゃねえから一安心してくれよ。勿論、できたら挨拶ぐらいはしときてえけど」


美琴「…?…じゃあアンタの目的は何なのよ?」


トール「…今回の目的は学園都市第一位さ…」


美琴「!?…一方通行!?…まさか、アンタ戦争でもしに来たの?」


トール「いやあ、そんな大仰な戦争じゃねえよ。今回奴に吹っかけようとしてるケンカもかなり特殊なモンだしな。一般人に被害を出すつもりは一切ねえ。…俺の邪魔をしない限りはな…」


美琴「…もし邪魔をしようってんなら?」


トール「そりゃあ悪りいけど、諦めて貰うまではこちらもそれなりに対応はさせて貰う。…ただ今回は、何があったとしても『殺し』はしねえつもりだ。今回は、誰かの命が掛かってるとかそういう類の話じゃねえし…。まあ何であれ、俺を止めようとかそういうのは下手に考えねえ方がいい。こっちも個人的なケンカをしてえだけなのに、無駄な犠牲ってのは極力出したくねえのさ。勿論それはアンタに対しても言えることだ。

…それで納得してくれたか?」


美琴「(…こいつはあくまでも、無駄な犠牲は出すつもりはないから、余計な手出しは無用だと言うつもりね…。

とりあえず私がこいつに勝てるかどうかだけど、学園都市第三位である私の実力をある程度認知しつつ、先程自分の力についてネタバレして尚も、この余裕の態度…。正直、こいつの言ってたような、世界そのものを直接変動させる方式についてはまだ信じられないけど、それが本当ならば、私ではこいつに勝てないのでしょう。

…こいつの目的は一方通行だって言ってるけど、途中で変更して他の誰かを襲うかもしれない。…だけど、その場合どうすればいいの?

…何か他に考えうる対策は…………………


…って考えた時に真っ先に当麻のことを考えちゃう私ってば何なのよー!?)」


トール「ありゃ?だべってんのに本当に結構時間食っちまった。ミコっちゃんをからかうの面白えからなー。

…まあいいや。『下準備』もしなきゃならねえし、そろそろ本当に出発させて貰うわ」


美琴「ま、待ちなさいよ!」


トール「何だよ?まだ何か用があんのか?

……もしかして、俺に愛の告白か…?オイオイ、流石の上条ちゃんもビッチには興味ねえんじゃねえの?」


美琴「アンタになんか、死んでもしないわよ馬鹿!!

…アンタの言う通り、私はアンタに勝てそうもない。だけど、所詮負け犬の戯言に過ぎないかもしれないけれど、それでもアンタに一つだけ忠告させて貰うわ」


トール「?」


美琴「…もしもアンタが、この街で、当麻の気に食わないことをやろうって言うのなら、当麻はアンタの幻想なんかあっという間にぶち壊しに来るんだから!!

……それだけは覚悟しておきなさい…」



トール「……………はは……あはは」


美琴「!?…な、なによ?」



トール「はははははははははははははははははははははははは!!…良いねえ。良いねえ!一端の女子中学生を心酔させてここまで言わせるなんてな!!

…すっげえなオイ。やっぱすげえよ俺の『戦友』てヤツは!!」


美琴「…は?」


トール「…やっぱ上条当麻てのはすっげえ存在だよなってことだよ、ミコっちゃん。まあとにかく、俺はもう行くから、ミコっちゃんも精々頑張れよー」


美琴「(ブルッ)…!!?…(この身震いのするような感覚は、つい最近にも味わったことがあるような…。

…確か、今朝一方通行に出くわしてしまった時だった!!

…と、とりあえず、当麻が、性的な意味で危ないかもしれない!!)」



(同時刻、上条の寮)


オティヌス「(先程間違いなく、この学園都市を中心とした、世界変動の兆候を感じられた。…この感じからすると、十中八九ヤツの仕業だろうな…)」


禁書「…どうしたの?オティヌス?」


オティヌス「…おい、禁書目録。お前は北欧神話に関しては、ほぼ完璧に魔道書を記憶しているんだろうな?」


禁書「当たり前なんだよ!北欧神話って言ったら数ある神話の中でも、メジャー中のメジャーな神話なんだから!…まあ勿論、魔神に至るまでの知識に限られちゃうけどね。…でもそれがどうかしたのかな?」


オティヌス「…恐らく今の学園都市には、『元グレムリン』の直接戦闘役のトールがやって来ている。さっきそれと思しき兆候があった。

…『全能神』のあいつに何ができるのかは、お前ならすぐに理解できるだろう?」


禁書「…世界そのものを自分の都合良いように変動させてしまう術式…」


オティヌス「そうだ。…デンマークであの人間は一応トールを退けることに成功したが、奴は当時『雷神』としての力は出せないでいた。奴はマリアンや『投擲の槌』と再び合流したようだから、今は再び『雷神』としての力を取り戻しているはず。また、あの人間は、戦闘に無関係の列車を利用して『全能』を突破したが、その手段は1度限りしか通じないだろう。…だから、今度は『雷神』としても『全能神』としても100%の力で戦うことができるトールと、あの人間が一対一で真っ向から激突した場合、あの人間が勝てる可能性はほぼ0だ」


禁書「……なるほど。だから私の10万3000冊の叡智が必要な訳なんだね」


オティヌス「そうだ。とりあえずまだ、奴の目的はさっぱり分からんが、万一の場合に備えて、今のうちにトールの使用する術式について解析しておけ!」


禁書「任せて。…今回は私が、とうまを助けてあげる番なんだから!」



(午後4時半、とあるスーパー入り口付近)


上条「ふぅ〜。今日は誰にも邪魔されることなく、特売で色んな食料を買うことができたぜ。結構な前金が手に入ったおかげでちょっと調子に乗っていつもより多めに買い物してしまったけど、まだまだ余裕があるのよ?正にあのアプリ様様と言ったところですな。

…今日は災誤との補習があったのがちょっとマイナスだけど、それ以外は幸福なことばかり!上条さんにもたまには今日みたいにハッピーな1日があってもいいと思うのですよ!………て、あれ?」


チラッ 、チラッ 、ジーッ、キャーッ!!


上条「(…?…気のせいか?さっきから俺の方にやたら視線が集まって来てるような気がするんだが…)」


青ピ「あああ!?こんな所におったんかカミやん!!やっと見つけたわ。今日という今日は絶対許さへんからな!!!!」


上条「(!!…あ…お…がみ…ピアス…?…この体全体に伝わる嫌な感覚…。

…そうだ、俺は確かにこいつや吹寄、そして小萌先生に襲われて殺された経験がある!!ま…まさか…)…何か、用か…?」


青髪「とぼけんなや!!!!」


上条「!!…いや、悪りいが、マジでお前の話が見えてこねえ…。すまねえが、きちんと説明してくれ」


青ピ「……ええか…?……カミやんのせいでな…ボク達世の男子はな…………………


…皆めちゃめちゃに『イマジンブレイク』されてしもうたんや!!!!悪いけどこの責任は絶対にとって貰うでえ!!!!」


上条「…………は……?」


青ピ「知らんとは言わせんでカミやん!カミやんはあのアプリに関わっているやろが!!!」


上条「ちょっと落ち着けよお前!!?…とりあえずもっと具体的に説明してくれ!」


青ピ「…あのアプリのせいでな……世の女の子にとってのな……カッコ良い男の基準点とやらがな………全てあのアプリ出てくる、イマジンブレイカーとやらに移ってしもうたんや!!!」


上条「……はい…?」


青ピ「この街を見渡せばどの女の子も例のアプリに夢中になってんねん。

…なんやねん、あれ!!!!???自分のピンチの時にはいつでも駆けつけてくれる『ヒーロー』だあ?ここが少女漫画の世界でもあるまいし、そんなに都合のいい『ヒーロー』なんかがおるわけないやろが!!!!」


上条「…」


青ピ「…さあて、ボクの言い分はもう理解できたやろカミやん!ここらがアンタの年貢の納め時や。ボクらのナイーブな心を弄んだ罪を償って貰うで!!!!」



上条「…………………………………………………ねえ、俺ほとんど関係ないよね?」


青ピ「な、何やて!!!??」


上条「だってさ、俺が直接関わってんのは外見に関するモデルだけだし、しかもそれはある程度改造されてるんだから、最早俺とは呼べないじゃん。そんな状況なのに、俺にどうしろって言うんだよ!?」


青ピ「た、確かに言われてみればその通りかもしれん…。で、でもそれならボクらのこの怒りを鎮めるためにはどないせいっちゅうねん!?」


上条「…よし、青髮ピアス君。心優しい上条さんが今テメェにすべきことを教えてやるよ」


青ピ「な、何や?」


上条「…このアプリの開発自体に関わっている可能性の高い、あの変態シスコンにゃーにゃーサングラス軍曹をぶん殴りに行けばいいんだよ。…大丈夫、俺を含め全ての世の男子が、テメェの行為を祝福してくれるはずだ。いいから思いっきりやってあげなさい」


青ピ「…なるほど!開発に関わってる人間に復讐すればええんやな。サンキューカミやん、ボクは目が覚めたでえ。…さあてつっちー、とんでもないクソアプリを生み出してしまった罪を償って貰うから覚悟しとき!!!!」バタバタ


そう言って青髮ピアスは、どこかに走り去ってしまった。


上条「…いやあ、青髮ピアスが馬鹿で助かった。変わらぬ親友の調子に上条さんは一安心しましたよ。やっぱデルタフォースはこうでなきゃな。…正直今のところ、このアプリに対しての不満はあまりねえけど、今まで散々俺のこと出し抜いてくれたお礼だよ土御門君。親愛なる上条さんからとっておきのプレゼントを贈っておいたから感謝したまえ。

…さて一仕事終えた上条さんは早速帰らせて貰おうか……ってあの見慣れた後ろ姿は……?」



美琴「…あれえ?いつも休日だったらあいつは、この時間にここで買い物を終わらせてるはずなのに、何で今日に限って見つからないのよ!!?」キョロキョロ


上条「(…アカン。御坂を見ただけで上条さんの不幸センサーがビンビンに立ってきた…。…だってえ、あいつが何かしようとすると、いつも上条さん死にかけちゃうんだもん…。まあ、あいつと一緒にいると退屈しないですむし、いつも楽しくて良いけど、何か今日奴は上条さんにとんでもない不幸をプレゼントしてくれそうな気がする…。ここは見て見ぬ振りをして逃げよう!)」


美琴「…!!……あ…」


上条「(あちゃー。み、見つかってしまいましたかー、そうですか。…さて、御坂さん今日はどんなプレゼントを上条さんにしてくれるのかな?楽しみだなー、うふふ)」


美琴「やっと見つけたわよ、当麻!」


上条「………は?」


美琴「良かったまだ無事なのね。…もう、さっきからずっと探し回ってたんだから!」


上条「(こいつ、何で急に俺のこと名前で呼ぶようになったんだ?)…とりあえずどうしたんだよ、御坂?俺にはさっぱり話が見えてこないんだけど…」


美琴「と、とにかく今は安全な場所に移るわよ!!」


上条「おい、御坂。腕を引っ張る前にまず事情を説明してくれって!」


美琴「早く移動しないと、当麻が危ないのよ!!」


上条「…美琴!!」


美琴「!!」


上条「…とりあえずお前が落ち着けそうな場所に移ろう。そこで話をしてくれるな?」


美琴「う、うん…」



(同時刻、とある研究所)


研究員A「おい!まだ侵入者を排除できないのか!?」


研究員B「それが、敵は既存の超能力とは違った方式の何かを使用しているようでして、全く対応ができません!」


研究員A「超能力ではない?…まさか、まさか…!?」


その時、研究室の壁から『溶断ブレード』が飛び出し、人一人通れるくらいの大きさの穴が切り抜かれ、外から一人の少年が部屋に入りこんできた。


トール「…よう。そのまさかだよ。北欧の魔術師トールちゃんの登場だぜ!」


研究員A「ま、魔術師?…いや、それはともかく貴様ここの連中はどうした?」


トール「いやあ、高圧電流をスタンガンのように使って、ちょっと眠って貰ってるだけだから安心してくれよ」


研究員B「…そ、そんな…ここは最高クラスの『駆動鎧』だって数体配備されてたんだぞ?」


トール「オイオイ、あんなおもちゃにこのトールさんの相手が務まるわけねえだろうがよ」


研究員B「…お、おもちゃ…?」


研究員A「…く、くそ!とんでもないバケモノめ!!貴様の目的はなんだ!?」


トール「何とぼけてんだよ。この俺が、こんなインテリ坊ちゃんの住処に好んで遊びに来るように見えるか?

…だったら決まってんだろ。ここで管理されてる『アレ』をちょっとばかり借りに来たって訳よ」


研究員A「…!!…何故貴様のような部外者がそれを知っている?」


トール「そりゃあ、一時的であれ『ここで取り扱ってるモノ』を預かっていたのは俺達だったんだ。その経過後を気にしても問題ねえだろうが」


研究員A「…俺達?」


トール「…『グレムリン』…。今ではその前に『元』って入るけどな。でもそこまで言えば十分だろ?」


研究員A「…!!……なるほど。しかし、貴様のような他所者に、あの貴重な研究材料を渡す訳にはいかないのだよ!『アレ』は今後、この街の研究に大いに影響をもたらすことのできる、大切な逸材なんだぞ!!それこそ医療だのスポーツだの教育だの、『人に希望を与える分野』で新たな道を切り開ける一手になるはずだ。科学の『か』の字も知らないような貴様一人の都合で、勝手に取り扱ってもよい代物ではないのだよ。だから、今回は見逃してやるから、『風紀委員』や『警備員』が集まって来る前に消えたまえ」




トール「はぁーーーーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。本当に、この街の研究者とかいうのは小せえ野郎しかいねえようだな。…余りにも小さ過ぎて反吐が出そうだ」


研究員A「…な、何を言っている?……ご…はっ!?……き、きま…な、に…を」


トールは研究員Aの首を掴み取り、そのまま背中から研究員Aを強引に壁に叩きつけた。


研究員B「ひ、ひっ…」


研究員Bは震えながら、白衣のポケットから武器を取り出そうとした。しかし、


トール「おっと、無駄な抵抗はやめておいた方がいいぜ?例え数メートル離れてても、溶断ブレードを使ってテメェの首を一瞬で狩るなんざ俺にとって朝飯前なんだよ。そこで大人しくしておけ」


研究員B「…!……うぅ…」


研究員A「…き…さ……ま…!」


トール「…さて、それじゃあ話の続きをしようじゃねえかお偉いさんよ!!」


研究員A「!」


トール「…『アレ』が今後の研究に大いに役に立つだって?『アレ』が人の希望になり得るだあ?…ふざけたこと言ってんじゃねぇよ!!だったら、テメェらが地下倉庫で蝶よ花よと面倒を見てるあの『バケモノ』共が、まともな意味で人の役に立つとか抜かすんじゃねぇだろうな!?」


研究員A「!!…き…貴様…そ…こ…まで…知って……いた…のか?」


トール「だからここに来たんだよボケ。テメェらの本当の目的が、『7人の超能力者の抹殺を可能とする兵器』の開発だってことも良く知ってるぜ?…その中には俺の知り合いも入ってんだ。流石にそれをやすやすと見逃す程耄碌したつもりはねえよ」


研究員A「…くっ…!!…な…なる…ほ…ど……き…さ…ま……は……ヒー…ロ…ー…き…ど…り……か」


トール「…ばーか。そういうのは上条ちゃんの領分だろうが。俺はただの悪人だよ。俺は間違ってもヒーローなんかじゃねえし、俺なんかがヒーローを名乗るなんて烏滸がましいぜ」


研究員A「…な…」


トール「俺はあの『バケモノ』を、アンタ達よりかは幾分マシな使い方で利用してやろうってんだよ。それも、テメェの望む自分勝手な戦争で、余計な犠牲者を出さねえためにな。…な?とてもヒーローと呼べる訳がねえだろ?」


研究員A「………は…は…はは」


トール「…?…何笑ってやがんだよ?」


研究員A「…ま…じゅ……つ…し……だ…か…なん…だか……し…ら…ない…が……き…さ…まに…あ……れ……を……こん…と…ろー…る……で…き……る…はず……が…な…い」


トール「ハハッ、何だよそんなことかよ!?」


研究員A「…な……に…?」


トール「オイオイ、まさか俺が『アレ』をコントロールできる自信がねえのにシャバに放すとでも思ってんのか?そんなことしたら冗談抜きに、余計な犠牲者を出しまくるだけじゃねえか」


研究員A「…な…ら…ど…う……やっ……て?」


トール「ふふん、そんなもん北欧の戦神を司るこのトールさんには朝飯前よ。

…なあ、アンタ。あの『バケモノ』は『戦車』に見えなくもねえよなあ?」


研究員A「……は…?」



(午後4時45分、とある公園)


上条「(取り敢えず買い物袋は全て小萌先生のとこに預けて、今はいつもの公園に来た)…ここならお前も落ち着けるだろ。さあ、話してくれ御坂」


美琴「…あまり、驚かないでよ?」


上条「(神妙な面持ちで、少し体全体が震えている。…御坂がここまで不安そうになるなんて…。まさか、この街の暗部がまた何かやらかしてんのか!?)大丈夫。俺は大丈夫だから、お前は俺に遠慮せずに話を続けてくれ」


美琴「…ありがと。…ねえアンタはトールってのを良く知ってるわよね?」


上条「…は?…トール?…何でお前の口からあいつの名前が出てくるんだ?」


美琴「…実はね、今あいつはこの学園都市にやって来ているの」


上条「…!…(てことは『グレムリン』関係で何かあったのか?)」


美琴「あいつが今回やって来た目的は、第一位とケンカするためらしいんだけど…」


上条「(何故トールが一方通行と?

…いや、あいつのことだから経験値の獲得云々で戦いを挑んでもおかしくねえな…。一方通行は学園都市最強の能力者だし………って、あれ?)とりあえず、トールがこの街に一方通行と戦うために来たってのは理解できた。だけど、さっきお前は、『俺が危ない』とか言ってたよな?どういうことだ?」


美琴「……実は……」


上条「うん」


美琴「…実は…トールって奴が、当麻にそっちの気がありそうなのよ…」


上条「…う…ん……?…………は?」


美琴「…いや、今朝の一方通行も正直怪しかった!!きっと二人とも当麻のこと狙ってんのよ!!」


上条「(…オイオイ、本当に大丈夫かこの子?…もしかしてBL本の読み過ぎで趣味がそっち系に移ったとか…?

…腐女子美琴タン、ここに爆誕!

…いやそれはそれで困るけど…)」


美琴「…当麻、聞いてる?」


上条「(…きっと、自分が通ってるのが女子校だから、男の子に対する憧れとかそういうのがねじ曲がってしまったのだろう。何せいつもこいつの周りにいる男子が俺くらいしかいねえから、普通の女の子とズレてしまったんだろうな。だから、とりあえず知ってる俺や一方通行達を文字通りの意味でくっ付けようと…。…ごめん、そんなのやっぱ俺には無理です!)…すまん、御坂。悪いけど俺は男に気はないのです」


美琴「…!……良かったあ。気があるとか言ってたらアンタをぶっ飛ばすところだったわ」


上条「…へ…?御坂は俺が、一方通行やトールとかとイチャイチャして欲しいんじゃないのか?」


美琴「…!!!??…ちょ、な、何馬鹿なこと言ってんのよ、アンタ!?な、何で私がそんな気持ち悪いことを考えなければならないのよ!?」バチバチ


上条「うわわわ!?」パキーン


美琴「(!!やっぱあの右手があると私の本調子が出てくるわ)」


上条「ありゃ、何だ俺の勘違いだったんか。悪りい、悪りい」


美琴「(…ホントのこと言うと、当麻が一方通行にいいようにされてしまうシーンを想像して、正直ありだなと思ってしまったけど、そんなこと死んでも言えない…)」


上条「…うーん、それにしても何か引っかかるような…。…待てよ…?」


美琴「?」


上条「なあ御坂?さっきお前あいつらが俺に気があるとか言ってたけど、なんでそんなのお前に分かるんだ?」


美琴「…!!!??…い、言わなきゃ、だ、ダメ…?」


上条「(!?な、何でこいつ急に顔真っ赤にして上目遣いになったんだ?少しドキッとしちまったじゃねえか…)ま、まあお前が言いにくいなら別にいいけど…」


美琴「…い、いや一応言っておくわ。だって今回は当麻が危ないかもしれないんだもん。私も恥ずかしがってる場合じゃない!」


上条「そ、そんなに無理しなくても大丈夫だと思うけど…」


美琴「……私……実はね、他人の仕草や表情を見て、その人が当麻に好意を寄せてるかどうかが、何と無くだけど分かるの。だから、そういうのをあいつらから感じとれたのよ」


上条「………………………………………は、い?」


美琴「うう///」


上条「(な、なるほど。これが超能力者の思考世界って奴か。万年無能力者の上条さんには全く話についていけん…。

…ていうか、こいつ本当に正気なのか?

…そういや、常盤台のもう一人の超能力者は精神系だっていう話を聞いたことがあるような…ないような…。…あるいは誰かがこいつに化けてるとか。

…もしかして、トールが御坂になりすまして俺をからかってるんじゃあ?

…とにかく誰かが美琴を利用しようとしてる可能性が高い。そんなのは絶対許さねえ!!)」


美琴「当麻?」


上条「…ようやく、少しは分かってきたぞ」


美琴「?」


上条「…考えてみたら、今日最初に、御坂に会った時点から何かがおかしかったんだ」


美琴「え?」


上条「そもそも何故、普段俺のことを絶対に名前で呼ぼうとしない御坂が、さも当然のように名前で呼び始めたんだ?」


美琴「…!…」


上条「…いつも馬鹿だの、アンタだのしか言わねえのにな。仮に名前を呼ぶようになるとしても、俺と御坂の間で、直接何らかのトリガーが発動しなければおかしい。だけど、そんなものはこれまでになかった。それなのに突然、俺と御坂の関係が変わるなんてありえない」


美琴「そ、それは、その…///」


上条「…それだけじゃねえ。御坂に、『上条当麻に好意を寄せている人間の仕草を見極める能力』があるっていうのも考えられねえんだよ!」


美琴「(…いや、それの『意味』に全く気づかないのは、幾ら何でも鈍感過ぎないかしら!?)」


上条「…果たして今俺の前にいる『御坂美琴』が誰かに操られているのか、あるいは誰かが成りすましているのかは知らない。ただ、目の前にいるこいつが普段俺の良く知っている御坂美琴じゃねえってのは分かる!!あいつは俺のこと『絶対』に名前で呼ぶような奴じゃねえんだよ!!」


美琴「…!!…」


上条「…だから…」


美琴「…」




上条「『御坂美琴』を騙って、俺のこと『名前』で呼ぶんじゃねえよ!!!!」



美琴「…え?…(こいつ…もしかして…私に名前を呼ばれたことを、『怒ってる』…?)………」ブルブル


上条「…『御坂』?」


美琴「(……わ、私は正気なのに…。

…やっぱり私なんかがアプリに唆されて当麻のこと名前で呼んだのがまずかったのかな…。名前を呼んだことで怒ってるってことは、当麻にとって私はそんなに仲の良い関係じゃなかったの?


…そうだよね。普段から年下のくせにやたら生意気な態度を取った挙句、いつも理不尽にビリビリしてばかり…。それなのに、もっと当麻と仲良くなりたいから名前で呼ぼうなんて、流石に虫が良すぎたのかな…。

本当は嫌われてもおかしくないことをずっとしてきたのに、当麻が私の相手をしてくれたのは、きっとただ当麻が優しかったから…。本当は嫌々付き合ってたのかなあ…。

…それでも、少しでも当麻に気に入られようと今まで頑張ってきたけど、こんな我儘女じゃ当麻には相応しくないよね。当麻といつも一緒にいるシスターや、私よりずっと立場が悪いのにそれでも当麻を想っている食蜂達の方が、私なんかよりよっぽど相応しいじゃ…ない…の…


………はは、どうしたんだろ?当麻の幸せを思って諦めようとしてるのに、心も体もちっとも言うことを聞かないや…

…当麻の幸せを思ったら私は引き下がるべきなのに…。


…未練…って奴なのかな……私ったら本当に当麻にとっての厄介者でしかないんだね……




……………でも…でも!…やっぱりそんなのやだ…よ…)」グスッ


上条「(…!…)…み…さか…?」


美琴「……グスッ……グスッ……と……う……ま…グスッ」


上条「!」


美琴「(…ごめん…。それが決して当麻の幸せになんかにならないとしても、私は当麻にとって不幸な存在でしかなかったとしても、それでも私は…私は!……まだ…当麻の側にいたいよぉ)…と…う……ま……」グスッ


上条「…………」


美琴「……わ…た……し…の……そ…ば……に………い……え……?」


美琴が何かを言い終わる前に、上条は美琴を抱き締めていた。上条はまるで、「俺はここにいるから安心しろ!」と言わんばかりに力強く、だけどそれと同時に、すっかり冷たい気持ちに支配されてしまっていた美琴の心を底から温めてあげようと、彼女の全てを包み込むように優しく、優しく、華奢な少女を抱き締めていた。


上条「……美琴は…俺にとって大切な存在なんだよ…」


美琴「…あ…え……?」


上条「…正直、今のこいつの状態がどうなっているのかは、現状全く分からねえ。

…だけど、俺が今すべきことは分かる」


美琴「…」


上条「…もしもこの世界のどこかにいる誰かが。」


美琴「…」


上条「他人のために誰よりも一生懸命尽くせるような、心優しい女の子を利用した挙句に、そいつを泣かせても構わないって言うのなら。」


美琴「!!(…その…女の子…って、私の…こと…?)」


上条「…そんなクソみてえな幻想は、俺がこの右手で粉々にぶっ壊してやる!!」


美琴「…!…当……麻…ぁ…」


そういうと上条は、美琴を左腕で抱き締めたまま、右手を美琴の頭の上に置き、撫でるように動かした。


上条「(とにかく美琴に干渉している何かがあるはずなんだ!そいつを破壊して美琴を解放させてらねえと!!)…………………あれ?何の反応もねえぞ…おかしいな…」


疑問に感じた上条は撫でるスピードを無意識のうちに早くしていた。


上条「(…あれ?おかしい、おかしいぞ!?何時もだったら確かに、何かが砕けるような感触があるはずなのに…)…なあ、美琴?大丈夫か?」


美琴「……………ふ………」


上条「……ふ…?」


美琴の様子に違和感を感じた上条は、無意識のうちに、全神経を美琴から離れることに集中させてしまった。だから、


美琴「ふにゃー」


上条「!!!!!???」


美琴の感情が最大限に高まった時に生じる『漏電』に対して、上条はその『前兆』を感知することができなかった。故に右手でそれを防ぐことができずに、ほぼゼロ距離で彼女の電撃を受けてしまった。


美琴「…えへへ…大切な存在かあ…。

…なんだ…私の勘違いだったのね…。こんな私でも当麻はしっかりと受け入れてくれてたんだ…。

そりゃそうよね、私をこんなに優しく抱き締めてくれるほど器が大きいんだもの。変な勘違いしたせいで、勝手に不安な気持ちになっちゃって、やたら損した気分だわ。

…それに私の当麻に対する想いは幻想なんかじゃないのよ?つまり、当麻の右手でも絶対に壊せたりはしないんだから!!」


薄れゆく意識の中で、少女の力強い笑みを見ていた上条は、確かに自身の内にあった、何かしらの幻想が破裂するのを感じていた。そして意識が落ちる直前に一つ決心した。


上条「…もう上条さんはこの子を泣かせないようにしよう…。でないと、上条さん死んじゃう!!」


そう何かを恨むように言って、上条の意識は完全に落ちてしまった。


美琴「…へ?…ちょっと、当麻。大丈夫なの!?当麻!!!??」



(同時刻、風紀委員一七七支部)


『あの…飾利ちゃん?あなたがデートスポットに選択した場所は、男同士で愛し合うためによく利用される場所なんですけど…?』


初春「ふふ、勿論知ってますよ『上一』さん♪これからあなたを秘密の花園へとご案内してあげます!」


『や、やめてえ!俺は同性愛には興味ないんだよおおおお』


初春「駄目ですよー。これからが面白いところなんですから♪」





固法「…ねえ、白井さん?初春さんの将来はどうなってしまうのかしらね?」


白井「私に聞かれましても回答に困りますわ、先輩。殿方同士の恋愛などと、邪道過ぎてお話になりませんの」


初春「ええー?何言ってるんですか、白井さん!誰がなんと言おうと、私にとってボーイズラブこそ至高なんです!!…って言うか、日頃からお姉様お姉様ばっかり言ってるような百合少女には、文句を言われたくないです!」


白井「ぶほっ!?何を言ってますの、初春?私は淑女全般に興味があるのではなく、お姉様ただ一人を愛してるだけですの。それを履き違えないでくださいまし」


固法「(…中一の時から異常な性癖。果たしてこの子達が、ノーマルな恋愛をするようになる日が来るのかしら?)」



(午後5時、とある操車場)


『ははは、やっぱこうやってあーくんとお喋りしてんの楽しいな。何て言うか、色々タメになる話を聞けて、上条さん賢くなった気分になれますことよ?』


一方通行「ハッ、それは俺が、普通の男子高校生がするような会話ができねェから自然と薀蓄を語っているだけだァ」


『…そんな自分を卑下すんなよ、あーくん。確かにお前と話す内容ってのは、普通の男子高校生同士のそれとは違うかもしれない。だけど、だからこそ、貴重な経験ができるお前との会話は、俺にとって特別なんだよ!』


一方通行「…!…オマエ…」


『…それに俺は薄々気づいてんだよ』


一方通行「!」


『お前が俺に求める友情ってのは、どちらかと言うと普通の高校生にとって当たり前のようなものだってな』


一方通行「…」


『お前はとことん「普通」ってのを求めてる。それもそうだろ?第一位の存在であるお前にとって、「普通」とは全く無縁なんだからな。…だから、まさに右手以外は「普通」の上条さんの存在はうってつけって訳だ』


一方通行はそこで、頭上を見上げながら目をつぶっていた。そして、暫くした後、アプリの『上条』に答えた。


一方通行「……オマエの言う通りだァ……。物心ついてから『普通』じゃなかった俺は、『普通』ってのが羨ましくて仕方がねェ」


『…だからお互いが必要な関係なんだよ』


一方通行「!」


『実は俺は少し「普通」ってのに飽きてきてる。…お前から見れば、相当腹立つ話かもしれねえけどよ。だけど俺は、逆に「普通」じゃないお前がちょっと羨ましいのさ…。だから、お前との価値観を共有できることに、俺は特別な意味を見出しているんだよ』


一方通行「…なるほど。まさにお互ェが正反対な特徴を持っているからこそ、相手の存在を羨む関係って奴かァ」


『その通り。もし俺とお前が似たような関係を持っていたら、それこそとんでもねえ喧嘩をしちまうかもな。だから、喧嘩しないで仲良くしていられる今のお前との関係は、すごく落ち着くんだよ』


一方通行「そうだなァ…。俺もオマエと一緒にいられて楽しいぜェ」


『ははは』


その時一方通行は、『何処にでもいるような高校生』の如く笑っていた。本当に、心から友達との会話を楽しむように。こんな些細な会話をこれからもずっとしていけたら、と淡い期待をこめて笑っていた。






しかし、




それは決して





叶わなかった。



一方通行「…あァ?」


一方通行はその時完全に油断していた。だから、謎の存在が接近していたのに気づくことかできなかった。何が起きたのかを完全に把握した時には既に、『謎の閃光の刃』によって、彼の携帯電話が粉々に飛び散っていた。

その携帯電話は、彼にとって大切な『友人』との思い出が詰まっていたものだった。それはたった1日にも満たない関係だったのかもしれない。だけど、確かにそれは、彼にとって絶対失いたくない関係だった。だから、


一方通行「……ふザけンナ。ふザッケンじゃネェぞ!!クソがァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


一方通行は首のチョーカーのスイッチを入れると、閃光の発信源へと目をやった。そこには、


トール「いやあ、アンタが『お友達』と本当に楽しそうに会話してたから、思わず邪魔しちまったよ。悪りい、悪りい」


一方通行「……オマエ…。何しにここに来やがった?はっきり言って、もう既にオマエは、学園都市第一位のこの俺に消される理由を作ってンだぜェ?…クソみてェな理由を吐きやがったら一瞬で愉快なオブジェにしてやる!!」


トール「…そりゃあ、決まってんだろ。ケンカだよケンカ。俺はアンタと一体一で戦うためにわざわざ来たんだよ」


一方通行「(…この体の疼きから鑑みるに、こいつは間違いなく能力者じゃねェ。だとすれば魔術師だろうけどよォ、魔術師が俺と戦って何のメリットがあるって言うンだ?)…オイオイ、想像以上にブっ飛ンでる返答じゃねェか。それで、魔術師のオマエが俺と戦ってどォするつもりなンだァ?」


トール「何、簡単な話だよ」


一方通行「あン?」




トール「果たして、テメェみてえな野郎が、『上条当麻』の親友を名乗る資格があるかどうかを見定めてやるぜ!!」



(同時刻、とある公園)


上条「(………あ……れ……?……いつの間にか俺は気絶しちまってたのか?…っていうかここは何処で、何をしてたってけ?)…うう…」


美琴「…あ…と、当麻…目を覚ましたんだ…。…よ、良かったあ。私のせいで死なせちゃったかと思ったじゃない!

…本当に良かったあ」グスッ


上条「……!?(美琴の泣き顏を見ただけで体中にとんでもない拒否反応が…。何だよこれ…?…って、俺は今こいつに膝枕してもらってる状態なのかよ!?)…と、とりあえず上条さんはもう大丈夫だから。…ごめんな美琴、なんか俺お前を泣かせてしまったみたいだけど、許しておくれ」


そう言って上条は、美琴の髪を少し撫でてから、優しく微笑みながらゆっくりと起き上がった。


美琴「…こっちこそごめんね、当麻。私また漏電して当麻に迷惑をかけちゃったみたいで…」


上条「…漏電?……あれ…れ……?」


美琴「ど、どうしたの?」


上条「…さっきここの公園に来るまでの記憶は残ってるんだけど、それ以降の記憶がイマイチ思い出せない…」


美琴「…!…(ってことはさっきのやり取りも忘れてるってことね…。ちょっと安心したような、残念なような…)」


上条「…だけど、何故か知らねえけど」


美琴「?」


上条「…お前を悲しませてると思うと、痛烈な拒否反応を起こすようになってた。あと何と無くだけど、お前とは名前で呼び合わなきゃならねえ気がするんだよ…。でないと、とんでもなく恐ろしいことになるような気がするんだ…」


美琴「………へ……?」


上条「…どうなってんだこれ?…まあいいや。でも肝心なことを忘れているような……て、あれ?」


立ち上がろうとした上条だったが、さっきのダメージの影響で、バランスを崩して倒れかけてしまった。それを見た美琴はとっさに彼を支えた。それはまるで抱き締めるかのように…


上条「わ、悪りい美琴。何故だか良く分かんねえけど、上条さんにとんでもないダメージが…」


美琴「…いいのよ。…それに、当麻は私にもっと甘えてくれていいんだよ?私だってこんな風に当麻を支えてあげられるんだから!!(…本当は私のせいでダメージを受けてるんだけどね…)」


上条「そ、そうか。ありがとう、美琴」


美琴「…うん!!」





禁書「…ねえとうま?これは一体どういうことなのかな?なんでとうまは短髪に抱き締められているんだよ?」


上条「…!?…い、い、インデックスさん!!!??」


オティヌス「まったく、こっちはずっとお前の心配をしていたのに、お前はそんなこと露知らずに相も変わらず女の子とのラッキーイベントをこなしているとはな…。今度ばっかりはきつめのお仕置きをせねばならんか?

…そうだいっそのことハサミを使って、お前の股間に生えてるアレをぶった切ってやろうか?」


上条「や、やめてえオティヌスさん!そんなことしたら『上嬢』ちゃんになっちゃう!!」


危機を感じた上条は、勢い良く美琴から離れた。その時美琴は、どこか寂し気な表情を浮かべてしまった。


美琴「(な、何よ!せっかく良いところだったのに!!)……ってあれ?おてぃぬす?」


オティヌス「何だ人間?」


美琴「…は?…えっと、この人形みたいにちっこいのが、この前まで私達と殺し合いをしていたオティヌスなの!?」


オティヌス「…人間には到底理解できないような事情というものが、神にはあるんだよ…」


美琴「そ、そうなの…(…やばい、このサイズだとめちゃくちゃ可愛いかも…)」


オティヌス「……一応言っておくけど、私はお人形さんじゃないぞ?」


美琴「…!?…わ、わかってるわよ!」


禁書「…で、とうま。なんで短髪に抱き締められていたのか説明して欲しいかも!」


上条「…いやぁ、それが上条さんにもさっぱりなんです」


禁書「…は?」


美琴「ふふん。きっと、アンタにはないような、私のお姉様としての抱擁力に、ころりとやられちゃったのよ!」


禁書「……とうま……」


上条「はい?いやどう考えても今の会話だと怒りの矛先は美琴に向かうべきですよね?あなたを馬鹿にしてるの美琴じゃん!そうだろ。そうですよね?そうなんですうぎゃあァァァあああああああああああ…っていうかオティヌスもついでに噛み付くとか聞いてねえんだけどォォォおおおおおおおおおおおおおお」


禁書「せっかくとうまを心配してたのに!

…もう知らないんだよ!」


上条「うう。良く事情を把握できてないけど、とりあえずすみませんインデックスさん。…今日は上条さん特製の豪華な鍋を振る舞ってやるから、機嫌直してくれませんかのう?」


禁書「むっ、考えてやらないこともないかも」


美琴「(この子あっさり食べ物に釣られちゃうのね…。ていうか、今の会話だと当麻はこの子と同棲してるってこと!?話の流れから言ってもオティヌスも一緒に住んでいるのかしら?……いいな…この子達がすごい羨ましい…)」


上条「流石インデックスさん!物分かりがよろしい!……でお前達がそんなに焦る理由ってのは何だ?」


オティヌス「…『元グレムリン』のトールが、この街に潜入している」


上条「…!!…そういえば、さっき御坂ともそんな話をしてたような気がしてきた…」


美琴「…うん。どうやら第一位とケンカしに来たみたいなのよ」


オティヌス「……何だと!?…なるほど…。そういうことか」


上条「…?…もしかして、トールが一方通行と戦おうとする理由が分かったのか?」


オティヌス「…簡単なことだよ。…根底にあるものは自己嫌悪だろう」


上条「…自己嫌悪?」


オティヌス「…質問を質問で返すようで悪いが、かつて第一位はこの街でどんな実験に参加していた?」


上条&美琴「!!」


禁書「?」


オティヌス「それはある意味では、神である私よりも、お前やそこの第三位の方が詳しいかもしれんな。如何せんお前達は、あの実際の実験の当事者なのだから」


上条&美琴「…」


オティヌス「あの実験で第一位は、無敵の強さを手に入れようとして、その過程で多くの命を奪ってしまった。…本人としては途中で嫌気がさしてしまっていたかもしれんが、目の前の一つ一つを積み重ねていく過程で、確かに自身の成長を感じていたはずだ。

…今までにできなかったことができるようになる喜び…。それについては、特に第三位だったら、良く分かるだろう?」


美琴「…」


オティヌス「またそれは、自分とは何者かを決定ずける重要なファクターとなりうる。自分には何ができて、何ができないのか?そしてこれから何ができるようになるのか?…それは普段、何かと戦い、何かを破壊することしかできなかった第一位にとって、自分とは何かを証明できる数少ない要素だった。…だから第一位は、自分の成長にこそ存自分の在意義を見出して、望まない実験を繰り返していたのだろう。無論それは、あくまで数ある理由の中の一つであり、例えば、無敵になって誰も近づけさせないとかいったような、別の理由もあっただろうがな…」


上条&美琴「…」


禁書「(…さっきから何の話をしているのかさっぱりなんだよ)」


オティヌス「…だけど、それはトールにも言えることであった」


上条&禁書&美琴「…!…」


オティヌス「お前も知っていると思うが、トールの出身としては、普通の何処にでもいるような魔術師だ。奴に生まれもっての特殊な力なんぞは一切無かった。だけど、コツコツと努力を重ねて行く上でついに『全能神』と呼ばれる存在にまで登りつめた」


禁書「……普通の魔術師がそのレベルにまで到達できるなんて、正気の沙汰じゃないんだよ…」


オティヌス「確かに普通のやり方ではまず不可能だろう。だからこそ、その過程で多くの犠牲があったはずなんだよ。それが自分自身に関わる『何か』なのか、あるいは他人の生命そのものなのかはさて置きな。…ただ一つ確かに言えるのは、その犠牲の中には、自分の全く望まないようなものも多くあったはずだ」


上条「…なるほど。『犠牲』と『成長』を天秤にかけて、後者を選んでしまったという点で、二人の歩んできた道のりってのはそっくりという訳か…」


オティヌス「…ところが両者には決定的な違いがある」


上条「…え…?」


オティヌス「…あの実験を通して第一位は、それの最大目標である前人未到の『絶対能力者』への進化はできたか?…幸か不幸か、奴はそこまで辿り着くことができなかった。しかしそれは、『実験は完遂したものの、当初に予測されていたような結果にならなかったから』、という類の理由ではない。…では何故か?」


美琴「…当麻が途中で阻止してくれたから…」


上条「!」


オティヌス「…そう。そこの人間が介入できた、あるいはできなかったという点が、両者の『成長』に関しての最大の誤差となってしまった」


上条「…」


オティヌス「…ここで一つ問題だ…。さて、誰かさんに途中で実験を止められてしまった第一位は、それからどのように生きてきたのか?」


上条「…どう…って…(そういや俺も詳しくは知らねえな)」


オティヌス「そいつは憧れの『ヒーロー』を追いかけるようになった」


上条「…ヒーロー?」


オティヌス「自身の『成長』に関して、自分以外の『犠牲』を必要としない存在。あるいは全ての物事を天秤にかけて、真っ先に他者の命を選べるようなもの。しかし、同時にそれは、甚大な『犠牲』を重ねて、最高点に限りなく近いところまで登りつめた自分達のはるか上をいく存在。…それが『上条当麻』って奴だろ?」


上条「…!…俺…?」


オティヌス「そう、血みどろの実験を終わらせた存在。…お前達は勘違いしてるかもしれんが、救われたのは第三位とそのクローンである、妹達だけではなかった。…第一位も確かに、お前の手によって救われていたんだよ。何かを『犠牲』にしていくことしかできなかった自分に、新しい道を提案する形でな」


上条&美琴「…」


オティヌス「…だから第一位は、お前に少しでも近づけるようにもがき続けてきた。…自分が本来『犠牲』にするはずだった妹達を護る道を選んでな…」


美琴「…え?」


オティヌス「一見すればそれは、ただ罪滅ぼしをしているように見えるかもしれんが、根底にあるのはやはり『上条当麻』に追いつきたいという思考だろう。

…なあ『ヒーロー』?お前は悪人が似合わない人助けをしていたらどう思う?」


上条「…んなもん関係ねえよ。善だとか悪だとかなんて二の次でも三の次でもねえ。重要なのは、自分が守りたいと思った人間を守れるかどうか、ただそれだけだろうが!!」


美琴「…当麻…」


オティヌス「…こいつの持論だったら、まずそう言うだろうな。そうさ、第一位は、自分が善の道から離れていると自覚していても、あるいは『それは偽善だよ』と他人に鼻で笑われたとしても、それでも何かを守ろうとする努力をやめることができなかった。それがどんなに辛い道のりであったとしても、奴にとっては目標とすべき存在があり、しかもそいつは、自分が間違った道を進もうとしたら矯正してくれる。その存在があっただけで第一位は、どんな絶望にでも立ち向かうことができた。

…だから今も、最終信号や番外個体といった妹達が笑っていられるのさ」


上条「…」


美琴「…(そうだったんだ)…」


オティヌス「…だけどトールの場合はそうではない」


上条「!」


オティヌス「結局奴は『全能神』に辿り着いてしまった…」


上条「あん?何かそれに問題でもあるのか?」


オティヌス「大有りだよ。トールは、『では次に自分は、何を目指せばいい?』、って話になった時、すぐに答えられなかった。何故ならば、奴には明確な目標がなかったからだ」


上条&禁書「…」


美琴「ん?…だったらアンタみたいに『魔神』を目指せば良かったんじゃないの?アンタがトップだったんでしょ?」


オティヌス「…残念ながら魔神っていうのは、努力さえすればどんな人間でも辿り着つけるってような存在ではない。人間が天使になれない、あるいは他の哺乳類が人間にはなれないのと同じように」


美琴「…」


オティヌス「…だから結局、次の明確なステップとやらを見つけられなかったトールが選んだのは、今までと全く同じ道を歩むことだった。『力』を求めるためにサイクルを回し、その過程で助けられるものには手を差し伸べる。それの繰り返ししかできない。…だから、途中で明確な新しい目標を見つけることができた第一位が羨ましかったんだろう」


上条「…なるほど。しかし俺にはまだ、トールが一方通行と戦う理由が完璧には見えてこない…」


オティヌス「…結局『自身にとっての最高点へと辿り着くことができた者』と『最高点には辿り着くことができなかったものの、新たな道を見つけられた者』は、果たしてどちらが正しかったのか…。あるい、一方通行が上条当麻に助けられたことは、果たして正しかったことなのかどうか。…それらを決着つけたかったんだろうな。」


上条&禁書&美琴「…」


オティヌス「まあ、あくまで個人同士のケンカでお互い納得できるのであれば、別に看過しても構わない話かもしれんがな…。……ただ一つ大きな問題がある…」


上条「…問題?」


オティヌス「それはお互いの通ってきた道のりだよ。…例えば最初は全く殺すつもりのなかった人間を、急に心変わりして殺してしまった経験がある、とかな」


上条「!!」


オティヌス「恐らくあいつらは、一度『殺したい』って思ってしまった場合、自身の意思では止められなくなるはずだ。それこそ、誰かに止められない限りはな…。そういう考え方が体に染み込んでしまっている。

…なあ、このことが持つ意味は分かるよな?」


上条「…誰かに止められない限り、このままケンカの成れの果てに、片方が相手を殺してしまう恐れがある…」


禁書&美琴「!?」


オティヌス「そういうことだ。…まあ聞くまでもないが、一応聞いておこう。

…じゃあ、この話を聞いてしまったお前はどうするね?」


上条「…決まってんだろ!あいつらを止めに行く!!…これはあいつら自身のためだけを思ってる訳じゃねえ。あいつらを心の拠り所とする存在、要は打ち止めや番外個体、あるいはマリアンやミョルニルなんかのためにもな!」


禁書&美琴「…」


上条「…悪りい。インデックス、美琴。そういう訳だから今回もまた戦場に行かせて貰う」



禁書「…大丈夫だよ、とうま。私はもうとうまが無茶なことしようとするのに文句は言わない。だって言って聞くような人じゃないでしょう?」


上条「!」


禁書「…だけど今回は私も行かせて貰う!!とうまには悪いけど、とうまをいつも一人で危険な場所に行かせて黙っていられるほど、私は我慢強くはないんだよ!!!」


上条「…インデックス…」


美琴「…っていうか、今回の件には当麻だけじゃなくて最終的には妹達まで辿り着いちゃう問題なんでしょ?だったら勿論私も行かせて貰うわ。例え当麻がどんなに拒否しようともね」


上条「……美琴……」


オティヌス「…やれやれ、こんな展開になるのは神でなくても容易に想像できてしまうな…」


上条「…みんな、すまねえな…。

…良し、話してる時間がもったいねえ!早速出発しよう!」


オティヌス「おい、ちょっと待て!」


上条「あん?何だよ?」


オティヌス「…お前、そんな風に勢い良く飛び出そうとしたんだから勿論、目的地の場所は把握できているんだろうな?」


上条「…………………あ。……たすけてオティヌスちゃん」


オティヌス「…やっぱりまた『神頼み』か…。…おい第三位。お前は妹達と連絡を取ることが可能か?」


美琴「…へ?私…?一応できるけど。」


オティヌス「私も詳しくは知らんが、第一位と妹達は『ミサカネットワーク』とやらで繋がっているらしい。ならば妹達に協力して貰えば何とかなるかもしれん」


美琴「…なるほど。とりあえずやってみるわ」


上条「さ、流石オティちゃん。頼りになりますな」


オティヌス「だからオティちゃんと呼ぶなって言ってんだろうが!」


上条「へへんだ!そんな小さいなりで攻撃しても痛くはありませんよ?」


オティヌス「ほう?ならこれならどうだ?」


上条「!?い、痛い!上条さんの弱点を狙うのはやめてえ!!」


禁書「ちょっと!?こんな時なのに2人で何いちゃついているんだよ!?もういい、とりあえずとうまに噛み付く!!」


上条「ぐぎゃァァァああああああああ」


美琴「(な、何で私だけが真面目に仕事してんのよ…。私だって本当は当麻といちゃつきたいのにー!!)…ってあら?場所のデータが来たわよ」


上条「!それはどこなんだ?」


美琴「…どうやら最後にあの実験が行われた操車場みたいね…」


上条「…なるほど、少し離れてるな。…とりあえずサンキュー、美琴」ナデナデ


美琴「!!?……ん……///」


禁書「むむう〜!」



(一方通行サイド)


一方通行「ハァ?何を言い出すかと思えば、俺があいつの親友に相応しいかどォかだと?」


トール「そゆこと。…まあ戦闘を始める前に少しお喋りしてえから、とりあえず首のチョーカーのスイッチを日常モードに変更しろよ。戦闘中に電池切れで動けなくなりましたじゃあ、俺は欲求不満になっちまうぜ」


一方通行「…!!…(こいつ何故そのことを!?)」


トール「まあ、とりあえずこれを見てくれよ」


一方通行「あン?…!…」




信頼度A

庇護欲A

居心地S 総合A+


総評:最高クラスの親友


一方通行「…なン…だ…これは?」


トール「オイオイ、こんな状況でとぼけんなよ。俺も例のアプリで遊んでたってこと。それとも俺みたいな奴が高評価を叩き出していることがショックか?

…まあデレトールさんにかかればこれくらい余裕って訳よ」


一方通行「…」


トール「…そんでよ、実はこのアプリには世界規模でのランキングシステムがついてんのさ」


一方通行「!」


トール「一応、女部門と男部門に分かれてんだけどな。勿論俺達は男部門で争う訳。…いや、アンタの場合、正確には、『争ってた』か?」


一方通行「…!…オマエ…!!」


トール「良いねえ!その好戦的な眼差し。俺も今すぐに、テメェの首を刈りに飛びかかりてえくらい興奮してるんだけどよ…。まあ、せっかくだ。話に最後まで付き合ってくれよ」


一方通行「…」


トール「…実は『最高クラスの親友』レベルに辿り着いている奴は世界で3人程いる」


一方通行「!!…つまり俺とオマエともう一人って訳かァ」


トール「そのもう一人に関しては何故か消息が掴めねえんだけどな。

…だが、もう一人については今はどうでもいい」


一方通行「…」


トール「…気に入らねえんだよ。テメェが平然とこのランクにのさばってんのがよ!!」


一方通行「!!」


トール「…テメェからすれば俺のことを知る由なんぞ全くなかっただろうが、俺は前職の職業柄、テメェのことはそれなりに調べさせて貰ってる」


一方通行「…前職?」


トール「…そういや、肝心の自己紹介もまだだったな。俺は『グレムリン』の元直接戦闘役の、トールさんだ。これだけ言えば、何故俺がアンタのことに詳しいか分かるよな?」


一方通行「…一応なァ」


トール「…そしてテメェのこと調べた感想としちゃあ、…こいつはとことん俺に似てやがる…ってところか」


一方通行「…な……に…?」


トール「テメェはその力を磨く過程で多くの犠牲者を出してきた、違うか?」


一方通行「……チッ」


トール「いや、別にその点に関しては俺はテメェを責めるつもりなんざ微塵もねえよ。だって俺も似た様な経験してるし」


一方通行「…オマエ…も…?」


トール「これでも俺個人のケンカが、戦争の域にまで達するって称されてるんだ。あとは察してくれよ」


一方通行「…」


トール「だから問題はそこじゃねえ。問題なのは実験が終わった『後』だよ」


一方通行「…あン?」


トール「…俺は気に入らねえのさ。テメェみてえなクズが『表側』の仲間をつくり、その仲間と楽しくワイワイやってんのがよ」


一方通行「…」


トール「…特に気に入らねえのが、テメェみてえなのが『親友』を求めてるってことだよ。…そう、上条当麻の親友になりてえと心の奥底で思ってやがる」


一方通行「…!……」


トール「あいつのことだ。老若男女、あるいは善悪問わずに、救いを求める者に対しては自ら手を差し伸べ、そして目についた人間を片っ端から救ってしまう」


一方通行「…だろうなァ…」


トール「あいつはすげえよ本当に。あいつの信念てのは、本当にいい意味でイカれちまってる。どんなクズにでも手を差し伸べ、挙句の果てに自分の進むべき道を提示してくれる。…事実、テメェはそれで相当救われてんだろ?」


一方通行「…」


トール「…俺は、それがどうしても気に入らねえんだよ」



一方通行「……………………あは」


トール「あん?」


一方通行「あははははははははははは!!」


トール「!!てめ、何が可笑しい!!!」


一方通行「…いやァ、オマエの言ってることが余りにもくだらねェから、思わず笑っちまったンだよ」


トール「…何だと…?」


一方通行「…オマエが本当に気に入らねェのはアプリ云々じゃねェ…

…要は、オマエはただ俺とあいつの関係に『嫉妬』してるだけじゃねェか!」


トール「!」


一方通行「…確かに俺は、現実のあの無能力者と、少なくとも連絡先を交換するくらいの仲にはなってる。…まあ、お互ェ『助けて』の一言があれば、すぐに駆けつけ合うくれェの関係ではあると思うけどなァ」


トール「……チッ」


一方通行「…いやァ、今まで超能力者としての順位や能力の強度で嫉妬されることは数え切れねェくらいあったけどよォ、まさか俺みてェなクズの『表側』の関係で嫉妬されることになるとは、夢にも思ってなかったぜェ。これも全てあの『ヒーロー』のおかげだなァ。…俺ってのはあいつに本当に救われてるなァ?あいつと一緒に過ごせて楽しいなァ?」


トール「!!…くそったれが…。調子に乗りやがって…。

…でどうすんだよ?俺のケンカは買ってくれんのか?

…じゃなきゃ『もう一人の親友』の仇は取れねえぜ?」


一方通行「!!…オーケー。…良いぜェクソオカマ野郎。…今から、最もこの世界であの『ヒーロー』に憧れ続けてきた男の実力って奴を見せてやる!」カチッ



(上条サイド)


上条「とにかく、場所も分かったんだ。もうここに立ち止まっている理由はねえ!行くぞ、みんな!!」


美琴「…!…当麻!待って!!」


上条「あん?」


上条が公園から足を踏み出そうとした時、突如空中に巨大なシルエットの『何か』が現れた。その巨大な『何か』は、上条を目がけて、砲弾のようなモノを射出した。


美琴「チィッ!!!!!」


美琴は膨大な磁力を操り、近くで活動していた清掃ロボットを空中で砲弾に激突させ、その軌道を無理矢理変更させた。


上条「…な……なんだよ…一体?」


美琴「…一体何が攻撃して来たって言うのよ!?」


一同が見上げると、まるでヘラクレスオオカブトに似ているような、特異なシルエットをした兵器がこちらの様子を伺っていた。その兵器の腹には、アルファベットでこう刻まれていた。


Five_OVER

Model_Case_“DARK_MATER”


オティヌス「!!野郎、学園都市は既に第二位のファイブオーバーまで拵えてやがったか!!」


美琴「…!!?…第二位ですって?」


上条「なんでこのタイミングで学園都市製の兵器が出てくんだよ!?」


オティヌス「知るか、そんなこと!!」


美琴「…まあともかく私達の邪魔をしよってんなら容赦しないわよ!!」


そう言うと美琴は、スカートのポケットから一枚のコインを取り出し、ファイブオーバーに突きつけた。


オティヌス「待て、第三位!!まだ撃つな!!!」


美琴「!な、なんでよ!?」


オティヌス「見ろ!あいつは何故か『2発目』を撃つのに躊躇してる。恐らく私達がここの公園から動こうとしない限り、攻撃はしてこないのだろう。下手に攻撃するより今は対策を見出す方が先決だ!」


美琴「…いや、そんなの簡単よ。前デンマークにやって来てた、私の能力を真似たポンコツ共にやったように、ハッキングしてしまえばいいのよ!」


上条「!!そ、そうか!その手があった」


美琴「…今やるからちょっと待っててよ。………あ……れ…?何これ…?ハッキングができない!?…まさかこいつら既存の電子的ネットワークを活用してる訳ではないの!?」



『残念ですが、幾らあなたの能力でも「アレ」のコントロールを奪うことはできませんよ、第三位』


一同「!!?」


上条達が声の発信源に目をやると、そこには、ヘリコプターサイズの白いカブトムシがこちらの元へと飛んでくるところであった。そしてそれが着陸すると、その外殻が粉々に砕け散り、中から美しく白い少年が現れた。


上条「…!!…アンタは確か、『人的資源』の時に力を貸してくれた、第二位だっけ?」


垣根「はい。その兵器と同じく『未現物質』を操る学園都市第二位の超能力者、垣根提督です」


美琴「…なんで第二位やそれ擬きの兵器が出てくるのかは知らないけど、どうして私の能力でハッキングできない訳!?」


垣根「アレも私達と同様に、『未現物質』を介した独自のネットワークを構築しているようです。だから『未現物質』抜きでの通常の方法では、ハッキングは不可能なんです」


美琴「…この街は懲りずに、本当に面倒くさい物を作ってやがるわね」


上条「おい、待てよ。それならアンタだったらあいつにハッキングすることができるんじゃないのか?」


垣根「…通常でしたらね」


上条「…え?」


垣根「アレのネットワークには『未現物質』とは全く別のフォーマットの何かが混じっています。それが私の介入を阻害しているようです」


上条「別のフォーマット?」


垣根「…非常に悔しいのですが、それは『未現物質』使いである私にも、理解できないレベルのモノのようです…」


上条「…そんな…」


オティヌス「……やはり、そうか」


上条「…え?」


オティヌス「…それならばトールの、『歯を研ぐもの(タングニストリ)と歯ぎしりするもの(タングニョースト)』が用いられてる可能性が高い」


上条「…タン…何だよそれ?」


禁書「…2匹の羊を用いて戦車を動かすための術式だね。あるいは羊を模した何かでも十分だと思うけど…。実際に羊に引っ張らせるのではなく、羊を取り付けた『戦車』を自由にコントロールできる術式。それは、『戦車を駆る者』とも称されるトールの得意とする術式の一つなんだよ」


オティヌス「…考えてみれば最初からおかしかったんだよ。何故、一介の魔術師トールを止めるためだけに行動しようとする私達が、学園都市のファイブオーバーに襲われる必要があるのか。…答えは至ってシンプル。このファイブオーバーをコントロールしているのがトール自身なのさ」


上条「そんな簡単にできるものなのか?」


禁書「『戦車』って言ってもその時代や地域ごとに指し示す物は異なってくるはずなんだよ。明確に『戦車』とは何かを説明することはできないの。だからトールが『戦車』だと思ったものをコントロールできる術式なんだよ…」


上条「逆に言うとトールが『戦車』だと思えるものは何でもコントロールできるって訳か!…でもそれだったら、今度はインデックスの『強制詠唱』が効くんじゃねえのか?」


禁書「さっきからやろうとしてるんだけど、何故かこのカブトムシからは魔力を感じることができないんだよ」


上条「…な!?ど、どういうことだ?」


垣根「アレをコントロールするための能力や『強制詠唱』とやらは分かりかねますが、それは恐らく本体そのものに干渉する必要があるのではないでしょうか?」


上条「…え?」


垣根「アレのネットワークシステムと私達のそれとの最大の違いは、主体の有無でしょう。アレのシステムはどちらかと言うと『ミサカネットワーク』に近いようです。…恐らく核となるものは別の場所にあり、目の前にいる個体は言わば子機のようなものみたいです」


美琴「(ミサカネットワーク…ねえ…)」


オティヌス「つまり、奴のネットワークは科学と魔術両方のシステムが使われており、現状片一方のみを駆使したハッキング方法では、奴のコントロールを奪うことが不可能って訳か」


上条「…なら最悪、直接戦闘するしかねえのかよ!?

…なあ、垣根。とりあえずお前の知ってる奴の情報を教えてくれ」


垣根「…分かりました。…まず、アレは私の元の体の内臓を利用して『未現物質』を生み出しているようです」


オティヌス「私達が『主神の槍』を作るために学園都市から奪った奴か。それを東京湾の『船の墓場』から回収したという訳だな」


垣根「恐らくそれを搭載した本機なるものが、この学園都市の何処かにあるはずです。…ですが今のところ確認できていません」


オティヌス「その気になれば魔術で幾らでも隠せるからな」


垣根「…なるほど。その魔術とやらはイマイチ良く分からないのですが、私が理解できないからこそ本機を見つけることができなかったのですね…。

ちなみに子機についてですが、10体ほど存在するようです。また仕組みとしては、例の如く、能力の『噴出点』として機能しているようです。黒夜海鳥、あるいは恋査のようなサイボーグに使われている技術に近いかもしれません。だから、恐らく奴らの攻撃は、あなたの右手で防ぐことができると思います」


上条「…それを聞いて少しは安心したぜ。ちなみに奴らはどんなことができるんだ?」


垣根「恐らく主な攻撃手段は『未現物質』によって構成される砲弾を射出することと、高速で突進する方法の2択だと思われます。ただ、1番厄介なのはダメージを『未現物質』で修復することでしょう。流石に分裂はできないようですが…。ゆえに、奴らを抑えるためには現状本機を潰さない限りかなり厳しいかと」


上条「マジかよ…。ちなみに、奴らが攻撃対象認定のトリガーとしている行動は?」


垣根「とりあえずあなたがこの公園から出た場合、黒幕によるコントロールが解かれない限り、奴らはあなたをずっと追いかけるでしょう。ちなみに、上条当麻以外の人間に対しては、上条当麻への協力行動を確認した時点で攻撃対象とするようです」


オティヌス「まあ、この街で何かをやろうと言うのならまず、この人間の行動を制限する必要があるからな。まさにこのファイブオーバーはうってつけって訳だ」


上条「ちくしょう…」


垣根「…ただ、二つほど気になる命令があります」


上条「…?」


垣根「対象を絶対に死亡させない。また、対象との戦闘終了確認後、直ちに対象の傷を『未現物質』を駆使して治療する、といった命令がなされているようです。…これは何の意図があるのでしょうか?」


上条「…あくまでも無駄は犠牲者を出すつもりはない。…あいつらしい考え方だ」


美琴「…で、結局どうすんのよ?話を聞く分だと、この兵器達との直接戦闘は避けられないみたいだけど!?」


オティヌス「このファイブオーバー共を始末するためには、とりあえずトールの元に近づき、奴から魔術の使用権を奪うしか方法はない。その後第二位がハッキングしてコントロールを奪えばいい」


上条「オイオイ、簡単に言うけどそんなこと本当にできんのかよ?仮にトールの元に辿り着くことができても、『雷神』と『全能神』の掛け合わせでこられたら俺なんかじゃあ対応できねえぞ!?」


オティヌス「そんなものは簡単だよ。

…あいつは確かに『全能』の力を保有している。ただそれは、所詮は人に想像できるレベルの『全能』でしかない」


上条「…??…何が言いたいんだよ?」


オティヌス「それならば、人に想像できるレベルを越えた領域に片足を突っ込んでしまっているような奴の力で対処すればいい」


上条「!!……まさか…」



その時、『少女』は自信満々に答えた。



禁書「そうだよ、とうま!私だったらトールの『全能』を崩すことができるんだよ!ふっふーん♪」


上条「…ははは…あははははは!まさかこんなにインデックスが頼もしく見える日が来るなんてな!」


禁書「むむ、それははっきり言って心外かも!」


上条「…いいぞ…!希望が見えてきた!!」


美琴「ちょっと、人様を置いてけぼりにして納得しちゃってるみたいだけど、まずあのファイブオーバーを何とかしなきゃでしょ!?」


上条「…!!…そうだった…」


垣根「…とりあえずここは私が引き受けます。あなた達は先へ向かってください。…私は一人で大丈夫です。私は本物の第二位なのですから、あんな紛い物に負けるはずがありません!」


上条「…!…すまねえ…」


垣根「あと、このカブトムシのストラップを持っていってください。これがあれば私と連絡を取ることがいつでもできます。『未現物質』のことで何か困ったことがあれば、これを使って私に相談してください」


上条「…何から何まですまねえ…。恩に着るよ!」


垣根「礼はいりませんよ。第一位が死亡することで『あの子』が悲しむ姿を見たくありませんから。

…そして第三位、皆さんが第一位の所までに辿り着けるかどうかはあなた次第です。くれぐれもよろしくお願いします!」


美琴「アンタに言われなくたっても大丈夫よ!!私だって当麻の力になれるってことを見せてあげるんだから!!」


そう言って、上条達が出発するのを確認した垣根は、背中から純白の巨大な翼を噴出させ、上条達を狙おうとするファイブオーバーの元へと音速以上の速度で激突した。


垣根「これはいい機会です。本物の超能力者と紛い物のあなた達との、確固たる違いって奴を、たっぷりとお見せしましょう!!」



(一方通行サイド)


一方通行「そういやァ、オマエは俺と『一対一』の戦闘を望ンでいるンだったよなァ?その場合、俺のミサカネットワーク云々てのはどうなンだァ?」


トール「いやあ、何の問題もねえよ。結局能力を使うのはお前自身だもん。要は力を借りてるってくらいな話だろ?

…それに俺だって『手加減』するためには他人の力を借りなきゃなんねえからな」


一方通行「…手加減だァ?…なめてンじゃねェぞ!!」


トール「だったら口じゃなくて、ケンカで示してくれよ。テメェは俺に本気を出させてくれるレベルの力を持っているってな!!」


一方通行「…チッ」


会話を一通り終えた一方通行が、まず手始めに実行したのは、風のベクトル制御。

轟!!!っと吹き荒れる烈風の『向き』を制御し、雷神トールへと風速120メートルの塊を叩きつけた。


トール「(…なるほどねえ、これがかつて上条ちゃんを瀕死に追い込んだ烈風って訳か。…だが!)ミョォォォォォォォォルニィィィィーーーーーール!!!!!」


雷神トールの叫びと同時に、トールの十指から20メートルほどの溶断ブレードが噴出し、直後彼は両腕を思いっきり振り下ろした。それだけで、一方通行の烈風は、トールの溶断ブレードによって切り裂かれた。


一方通行「(…ミョルニルだァ?…良くは分からねェが、外部から何らかの影響を受け始めたという訳か。奴の眼や髪に急激な変化が見られる。そして魔術に関してだが、見た所、要は電気系みてェだなァ)」


トール「…ふう。なかなか良い攻撃じゃねえか」


一方通行「…オマエ、もしかして電気系統の魔術師だってのかァ?

…オイオイ、電気系って言ったら俺の最も得意とする相手だぜェ?似た様なンとどンだけやりあってきたと思ってンだよ。…本当に手加減してて大丈夫かァ?

…何だったらハワイでオマエらの仲間が俺にしたみてェに、呪い系の魔術を使ったって構わねェぜ?」


トール「どあほ!このトールさんがそんなインチキをする訳がねえだろうが!そんなもん俺のケンカには必要はねえよ」


一方通行「…そうかい。なら勝手にくたばってろ!!」


そう言うと、一方通行は再び風の『向き』を制御して、その背に竜巻のようなものを四つほど接続し、その力を持ってトールの元へと音速以上の速度で襲いかかった。そう、『必殺』の両手で触れるために。


トール「くっ!?」


猛烈な危機感を覚えたトールは四肢から爆発的に溶断ブレードを噴出し、空気を爆発的に膨張させ、自身の動きを無理矢理に加速させる電子ブースター代りに利用し、一方通行の『魔の手』をギリギリで回避することに成功した。


トール「(…ふう。あっぶねえ。少しでも触れられたらアウトとか地味にキツいぜ!

…だけど、次はこっちの番だ!)」


回避に成功したトールは、そのまま左腕を野球のサイドスローの要領で動かし、溶断ブレードを一方通行に叩きつけた。



(上条サイド、目的地まで15キロ地点)


美琴「!!ファイブオーバーが来たわよ!!」


上条「!!とりあえず美琴は時間稼ぎしつつ、こっちを追ってくれ!!インデックス達への流れ弾は俺が対処する!!」


美琴「了解」


そう一言だけ言うと美琴はコインを取り出し、即座に『超電磁砲』を解き放った。結果ファイブオーバーのボディーを貫くことができたものの、すぐさまその空洞を埋めようと、『何か』が蠢いているのが確認できた。


美琴「(!!こいつらの回復速度は思ったよりもかなり早い!こりゃあ間違っても、相手を倒すとか考えてる余裕はなさそうね!!)」


ファイブオーバーが美琴への砲撃を行う素振りを見せたため、美琴は自身の周りに大量の砂鉄を集めた。砲撃を『砂鉄の剣』で捌くためだ。


…だが、しかし…


美琴「(…!?…急に方向転換した?本当の狙いは当麻達の方か!!)」


ファイブオーバーは美琴への砲撃を諦め、上条達の元へと猛烈なスピードで突進した。


…だが、上条達に激突することは無かった。


美琴「(!!…何…あれ?…『蜃気楼』……?)」



ステイル「…まったく…君はどうしてもこの子を危険な目に合わさないと気が済まないみたいだね…。正直今すぐにでも消し炭にしたいくらいだよ」


上条「…ステイル!?何故お前がここに!?」


ステイル「そんなくだらない話をしてる場合じゃないんだろう?いいから僕に構わずに先に行け!」


上条「!!お、おう。サンキュー」


ステイルは、自分の元を離れようとする上条達には一切目もくれずに、ファイブオーバーを睨みつけていた。しかし、とある少女は、その背中に向けて一言告げていた。


禁書「…助けてくれてありがとう。でも、今回『助ける側』なのは私の方なんだよ。だから、あなたは心配しなくても大丈夫かも!」


そう言って、インデックスも上条達と共に先へと進んで行った。


ステイル「(…なるほど…。この学園都市に来てから彼女も、他に洩れずに成長しているという訳か…。…なら僕も成長の証を存分に披露させて貰おうか!!)

…Fortis931…行くぞ『魔女狩りの王』…我が名が最強である理由をここに証明しろ!!」



(一方通行サイド)


一方通行「(…!?…『反射』がうまく機能してねェだと!?)」


トールは一方通行に溶断ブレードを叩きつけた。だが一方通行には、学園都市最強に相応しい『反射』能力があるため、特に身構えもしなかった。しかし、一方通行の想定通りには『反射』が行われず、一方通行の顔を不完全に弾かれた溶断ブレードが掠めてしまった。


トール「…おお、痛ってえ。そいつがかの噂の『反射』って訳か。なるほどトールさんの溶断ブレードを弾くとは、噂通り恐ろしい性能を持ってやがる」


一方通行「(ロシアの時と同じって訳か。…それにしてもかなり『反射』角度が甘かった。こりゃァ下手に『反射』すると、自分自身の首を刈りかねねェかもなァ…)」


トール「…でもデータと多少違うみてえだな。お前さんの頬から血が出てるぜ?…恐らく俺のブレードは、正常に反射しきれねえって言った所か」


一方通行「…そうみてェだなァ」


トール「…へー。まだ余裕あるみてえだな。ほんじゃ、これならどうよ?」


直後、轟音と共に、トールの溶断ブレードが、およそ200メートルまで伸長した。


一方通行「!!…オイオイ、すげェな。こんなのウチの第三位でもできるかどうか分からねェレベルだぞ?」


トール「…第三位ねえ。正直意外とやるなあとは思ったけど、あいつは所詮『小娘』なんだ。プロを相手に生き残るにはまだちと物たりねえかな。

…それに俺はこれが限界ってな訳じゃねえ。この十倍は行ける。ただ、それにはここのフィールドがちょっと狭過ぎるって訳さ」


一方通行「(…なかなか厄介なモンを持ってやがる。ともかくさっきのやり取りから鑑みるに、防御に関しては『反射』に頼り切らねェ方が良さそうだ)」


トール「…それじゃあ、早速パワーアップした俺のブレードの実力を見せてやるよ!!」



(上条サイド、目的地まで10キロ地点)


上条「…!…くそっ、今度は二体同時に来やがった!?」


美琴「じ、冗談でしょ!?一体相手にするのもしんどいのに!!」


オティヌス「とにかく今は、何とかやり過ごすことだけ考えろ!」