2019-03-13 21:46:33 更新

概要

20XX年・・・とある海洋国家(日本)に危機が差し迫る状況で、上層部はある1人の男に希望を託した・・・


前書き

どうも!艦これSS新作品でございます!MinaMizukiです!


ある日突然、「ゴルゴ13と艦これ・・・いけるんじゃね?」と何かのインスピレーションが働いたので鉄は熱い内に叩くのが一番!
なので、いても立ってもいられず、書いちゃいました!!

なお、今作品は、架空の艦娘や架空の兵器、艦これでは出てきていない現代兵器が多いに出てくる事があります!
そちらの承知の上で御観覧ください!


それではどうぞ!!




null 依頼




?「……そろそろ約束の時間だな」



?「奴はホントに現れるんでしょうか?約束の時間まであと1分もありませんが……それに高原のど真ん中に建っている廃屋を指定する事も無かったのでは?……」




?「現れるさ、彼はそういう人間だ。それにここなら何処から敵が襲ってきても360度直ぐわかる、ここは高原、敵が隠れるところはないからな」



?「しかし……」



ゴルゴ「……約束の時間だ」



?「おぉ!ゴルゴ13」



?「な!い、いつの間に背後に、車の音はしなかったのに……」



ゴルゴ「あんたらが話に夢中で気がつかなかっただけだ……海軍No2.No3……」



大将「む……流石に私たちの事は知っているみたいですな」



ゴルゴ「……一般人でも調べれば分かることだだ……用件を聞こう」



中将「は、はい、その方は私から」スッ



ゴルゴ「ゆっくりだ」中将「え?」「胸ポケットからはゆっくり出せ」「は、はい……」



中将「て、手短に申し上げますと、この写真に写っている相手を抹殺してほしいのです」



ゴルゴ「……」フーッ



大将「ふむ……抹殺と言うよりは、轟沈……ですな」



ゴルゴ「……轟沈?」



大将「信じられないかもしれないがね、その写真に写っている者は、形こそは人のなりはしているが、人間ではないのだ」



ゴルゴ「……どう言うことだ?」



中将「あなたは、『艦娘』という存在はご存知でしょうか?」



ゴルゴ「……」フーッ



中将「信じられないかもしれませんが、わが海軍には、世間には公表されていない存在、『艦娘』という者がいます、『艦娘』というのは、昔存在していた艦の魂を少女に埋め込み第一線で戦うエリート員です、少女となれど船の魂を埋め込んだその力は底知れず、プロの格闘家が素手で戦ってもまず勝ち目はありません」



中将「この者等は、我が国に迫る海からの危機を排除することを目的に存在します、そして、その危機と言うものが」



ゴルゴ「……深海凄艦だな?」



中将「ご存じでしたか……そうです、その深海凄艦というのが我が国に差し迫る危機です、そしてその深海凄艦というものは化け物のような姿はしていますが上位種になると人の形を持つようになります、そして艦娘と同じように少女……と言うよりは女性の方が近いかもしれません、艦の魂を持っています」



ゴルゴ「こいつもか?」



中将「はい、フードを被ってるようでバッグを担いでるようなその姿からはとても深海凄艦と結びつけることは難しいと思いますが……」



ゴルゴ「……」フー



中将「そいつは「戦艦レ級」、化け物の形をした深海凄艦よりよっぽど化け物です、今回、そいつを抹殺もとい、轟沈させてほしいのです」



ゴルゴ「……ひとつ聞くが、何故お前らでやらない?」



中将「そいつは、我が国の主要シーレーンを支配しています、そこはシンガポールとマレーシアに挟まれた狭い海峡、そいつがそのシーレーンポイントにいる限り我が国に原油や物資が入ってきません、それではガソリンも重油もアスファルトも作れなくなる、軍も活動にろくに出来なくなる。そして今しがた申し上げましたように、そいつは正真正銘の化け物です、こちらの攻撃が全くといって良いほど効かないのです」



大将「……私たちは、そいつを倒すために何でもやった、無数の機雷を敷いたり、魚雷を何百本も撃った、砲撃も我が国の資材が尽き果てる寸前まで撃った……しかし、奴にはまったく効かないのだ……」



中将「そこで我々は……いえ、我が国は最後の望みを貴方に託したいのです」



大将「頼むゴルゴ13!この依頼、どうか引き受けてくれまいか!?」



ゴルゴ「……今、砲撃も効かないと言ったが、何故ミサイルを使わない?現代の戦闘艦において砲撃を使う機会など滅多にないはずだが?」



大将「確かに時代は進んでいる、一般の人間からしたら砲弾なぞ歴史の遺物だ……だがさっきもいったように、そいつは『戦艦レ級』……戦艦なのだ、現代の艦はミサイルが飛んできたら落とすことを前提に作られている、だから装甲なぞほとんど無いに等しい、ミサイルに当たってしまえば1発で轟沈してしまう、しかし戦艦はどうでしょうか?戦艦の装甲というのは、その艦の持つ主砲にも耐えられるように作られる、ゆえに自然と重装甲となる、ミサイルは表面だけを破壊する、そんなもので戦艦の装甲はびくともしない、だから相手の装甲さえも突き破ってしまう砲弾が適しているだ・・・」



中将「……以上です、ゴルゴ13、どうかこの依頼引き受けてくれませんか?」



ゴルゴ「分かった、引き受けよう……」



大将「おぉ!本当か!」



ゴルゴ「あと、俺が言うものを直ぐに揃えろ、そしてスイス銀行にも振込が確認でき次第、行動に移る……」



大将「わ、分かった!」



中将「よ、よろしくお願いします!」



ガチャ



中将「……彼は……彼は本当にやってくれるでしょうか」



大将「やるさ……彼はそういう人間だ」



eins 導入



大将「・・・それでは、くれぐれもお気をつけて・・・」



ゴルゴ「・・・」



ガチャ  バタン・・・



中将「・・・ついにこれから始まりますね、我が軍の快進撃が」



大将「あぁ・・・彼ならやってくれる、必ずな」



中将「しかし・・・驚きましたよ・・・依頼の翌日に「俺を臨時の提督にしろ」、なんて言ってくるとは」



大将「うむ・・・まぁ、確かにそれの方が彼にとっては動きやすいでもあるのだろう・・・それに、彼が指揮してくれる艦隊ほど心強い艦隊はないからな」



中将「えぇ・・・しかしあの艦隊は・・・」



大将「・・・」




・・

・・・

~回想~



ゴルゴ「・・・」



大将「これはゴルゴ13どうなされましたか、よもや昨日の今日でそちらから会いに来てくれるとは」



ゴルゴ「頼みがある・・・俺をシーレーン奪還のための最前線で動いている艦隊に配置して欲しい」



大将「提督にしろ・・・ということですか・・・理由を聞いてもよろしいですかな?」



ゴルゴ「・・・」



大将「あ、いや・・・気分が害されたなら申し訳ありません、可能な事は可能なのですが、しかしこちらとしてもあなたを最前線で急な人事異動となると、こちらとしてもそれなりに上の方に理由付けをしなくてはいけませんのであくまで、形式的な物としてです」



ゴルゴ「・・・俺1人では倒せない・・・どうしても仲間がいる・・・そう判断しただけだ」



・・・

・・


~回想終了~



大将(・・・彼なら・・・彼ならきっとやってくれるに違いない!)



zwei 着任



大淀「初めまして、人事異動で新しく配属されることになった東郷提督ですね?」



東郷(ゴルゴ)「あぁ、そうだ」



大淀「私は貴方の秘書を勤めます、大淀と申します、以後よろしくお願いします」



東郷「……」



大淀「……あ、あの?」



東郷「……すまないが、俺は利き腕を誰かに預けられるほど自信家ではない」



大淀「そ、そうでしたか、とても厳格な方なのですね、これは大変失礼致しました」



東郷「……」



大淀「あ、あの、それでは提督を執務室の方へとご案内いたします」



東郷「あぁ……」



提督が着任しました!



drei 戦況



大淀「……という訳で、本日付でこの泊地に着任することになりました、東郷提督です」



東郷「……よろしく頼む」



艦娘一同「はい!」



大淀「それでは各自、指示があるまで待機を、解散」



天龍「っけ、今度はマシなんだろうな」



大淀「天龍さん」



天龍「っは」



ガヤガヤ バタン



東郷「……彼女等は全員艦娘、という存在なのか?」



大淀「はい、私も含めてこの泊地に所属している女性等はすべて艦娘です」



東郷「わかった……とりあえず、現在の戦況、この泊地の状況、戦力全て教えてくれ」



大淀「はい、現在この泊地の目的は我が国におけるシーレーンの奪還、及びその後の維持です、戦力は戦艦1、軽空母1、軽巡洋艦5、駆逐艦4、潜水艦1、特殊工作艦1、現在泊地の士気は著しく低下しており、指揮系統も乱雑なものとなっています」



東郷「どういうことだ?……それに前線を任されている基地にしては戦力が少なすぎる」



大淀「前任の提督の影響です、初めこそはちゃんとしたものの、戦況が悪くなるにつれて指揮もサボるようになり、戦いで轟沈していく艦娘が増えていきました、今じゃ1/10程度しかありません……提督が着任するまでは、私が代わりに指揮していました」



東郷「……」



大淀「おそらくここにいる艦娘の皆さんは前任には愛想を尽きていたのだと思います」



東郷「お前たちの心情は俺には関係ない……俺は俺の仕事をするだけだ」



大淀「あ、こ、これは、また大変失礼をしました!」



東郷「とりあえずは分かった……」



大淀「大本営にも新しく戦力を要請したのですが、その余裕はないと……」



東郷「……その必要はない」



大淀「え?……」



東郷「必要はない、と言ったんだ……この戦力でいく」



大淀「し、しかし、それでは絶対にシーレーンを奪還なんて不可能です、自殺を敢行するようなものです」



東郷「必要はない……と言っている」



大淀「う……わ、分かりました」



東郷「……俺はシーレーンを奪還するためにここへ来た……お前が心配する必要はない」



大淀「しかし・・・シーレーンポイントにはとある深海棲艦がいます、深海棲艦にこの泊地の戦力をほとんど持ってかれているんです」



東郷「戦艦レ級・・・だな」



大淀「!知っているなら何故!」



東郷「……お前が心配する必要はない・・・」



大淀「・・・」



【シーレーンとは、通商上、政治上、戦略上重要な価値を有し有事の際、国家が確保して置くべき海上航路のことである。


日本も四辺を海に囲まれた島国であり、海岸線の長さは北方四島を含めると4842海里、つまり8967.496kmに及び世界第7位、排他的経済水域の面積は3861.1万km²に及ぶ。オイルショックなどの影響から産油国との外交関係、そしてシーレーンの安定化が不可欠と感じた日本は1982年(昭和57年)頃から外洋に伸びるシーレーン1000海里防衛構想を策定するなど、日本のシーレーン防衛のあり方が課題とされるようになった。


また今日において、国内経済もほぼ海上交易に依存し、日本の輸入依存度を見てみれば輸入量は石油2億トンをはじめ、7億5000万トンにも達しており、特にエネルギーは2001年(平成13年)時点の資源エネルギー庁調査において国内の輸入依存度の高さは石油が99.8%、石炭98.4%、天然ガス(LNG)96.6%、原子力(ウラン)に至っては100%を依存している。輸出はハイテク工業品だけで2000万トン、第1次産品を含めれば7000万トンにも及ぶ。こうしたことからも、日本も海洋国家のひとつとして、自国のシーレーン防衛の重要性が認識されてきた。日本人の食卓に並ぶ豆腐も蕎麦も「シーレーンの賜物」といわれ、いかに日本が輸入依存度が高いかを象徴している。海上自衛隊の戦術思想の原点はシーレーン防衛であり、対潜水艦戦、対機雷戦に重点をおいた訓練を行っている。】(一部wikiより抜粋)


strommitte 確認


在籍艦娘

【戦艦】

・長門(改)


【軽空母】

・隼鷹(改)


【軽巡】

・天龍(改)

・夕張(改)

・大淀(改)

・川内(改二)


【駆逐艦】

・吹雪(改)

・舞風(改)

・不知火(改)

・弥生


【潜水艦】

・伊号8


【特殊工作艦】

・明石


【練習巡洋艦】

・香取


vier 出撃



コンコン



隼鷹「失礼するぜ、何か御用で?あんたが着任してから1ヶ月間、何も指示がないから演習しかできなくて暇だったんだよ」



東郷「・・・頼みがある、出撃してほしい」



隼鷹「はいよ」



大淀「・・・あ、あの・・・隼鷹さん1人しか来ていませんが」



東郷「・・・1人しか呼んでいないからな」



大淀「・・・?えと、それは・・・」



加賀「・・・単艦出撃かよ、へーへー、それじゃ私1人で出撃してきまさぁ」



大淀「・・!そんな無茶です!隼鷹さんは最近改造したばかりですし、まだ装備も整っていません!」



隼鷹「いいんだよ、私もさっさと轟沈して先に逝ってしまった仲間の所に行きたいしな」



大淀「隼鷹もそんなこと……!」


東郷「悪いがその願いは聞き入れらない・・・場所はシーレーンポイントではない・・・」



隼鷹「・・・は?・・・じゃあどこの出撃なのさ」



東郷「・・・パプアだ」



【現在この国家のシーレーンポイントの途中には、シンガポールとインドネシアに挟まれた狭い海峡がある、戦艦レ級などはそこを支配し国家のシーレーンを断ち切っている状態である、しかしゴルゴは隼鷹を海峡に向かわせず、そこから東へ700キロ程離れたインドネシア、パプアへ出撃を命じた】


fuenf :隼鷹



隼鷹「・・・なんだってこんなところに私1人だけ・・・ここらへん1帯は奴らの縄張りだぞ・・・」



隼鷹「これならさっさとあいつの所へ差し出して轟沈させてくれよ・・・・・・ほうら、マルク海域だ・・・どこか陰になる場所はと・・・」



~回想~



隼鷹「パプ・・・ア?」



東郷「・・・インドネシアの最も東にあるマルク海域近海のパプアだ・・・」



隼鷹「・・・なんだってそんなところに・・・」



東郷「お前にはそこら辺を掌握しているパプアの敵拠点を奇襲してもらう」



大淀「いや・・・それはいくらなんでも無茶なのでは・・・普通空母には護衛をつけて出撃させるものです、海峡出撃では無いとはいえ、もし敵に見つかりでもしたらただでは・・・」



隼鷹「いいっていいって、どうせ最後の仕事さ、ま、死に場所を選べないのが辛いけどね。それじゃ、早速いってきますよ」



東郷「待て・・・艦載機は爆撃機主体にするんだ、それとこれを渡しておく・・・」



隼鷹「あ?・・・なんだこの封書」



東郷「向こうについてから開けろ・・・作戦内容が細かく書いてある」



隼鷹「なんだか知らないけど・・・まぁいいさ。それじゃ行ってきますよ」



~回想終了~



隼鷹「ここらはマルクの北海域か・・・そろそろ敵の拠点が見えるはずけど・・・あぁ・・・あれ・・・か・・・?・・・な!」



隼鷹「なんだあの壁!・・・ゆうに50メートルの高さはあるじゃないか・・・壁は・・・港湾を守ってる形のようだね・・・なるほど、あそこの狭い所から船が出入りしているのか・・・」



隼鷹「・・・はは、あれじゃ要塞じゃないか・・・上空からしか爆撃できないようになってるみたいだね・・・その代わり、壁の上にはいくつもの対空機銃らしきものが・・・わたし達が前線を下げられてから半年ほど経つかな・・・どうやら敵さん達の建設能力は馬鹿にならないみたいだね・・・あれじゃわたし達が総力上げても落とせやしないよ・・・」



隼鷹「・・・・・・死に場所か・・・・・・出来るならば、飛鷹。あんたと同じ場所が良かったけどね・・・」



隼鷹「・・・・・・・・・おっと!哨戒船か・・・」



チ級「・・・・・・・・・」



チ級「・・・・・・・・・」



隼鷹(・・・早くどっか行きなよ・・・・・・)



チ級「・・・・・・・・・」



隼鷹「・・・・・・・・・」



チ級「・・・・・・・・・」



チ級「・・・」



隼鷹「・・・ふー、危ないところだったぁ・・・」



隼鷹「ッカー・・・よくよく考えたらなんだってこんなところに私一人で・・・誰か1人くらい護衛つけてくれても・・・クドクドウダウダ・・・」



隼鷹「・・・あぁ、そういえばあの提督から封書貰ってるんだった・・・えーっと・・・何々・・・」



隼鷹「・・・ふんふん・・・」



隼鷹「は!?・・・・・・・・・あ・・・はは・・・とんでもないね・・・あの提督は・・・何考えてるのか・・・」



隼鷹「はぁ・・・やるっきゃないかぁ・・・どうせこんな前線にいる身じゃあ遅かれ早かれ殺られるだろうし・・・・・・だから装備を艦載機を爆撃機だけにしろって言ったのか・・・」



隼鷹「・・・・・・待ってな飛鷹・・・今すぐ私もそっちに逝くから・・・ふぅ・・・やるか・・・・・・・やるか!・・・」















隼鷹「商船改装空母!!隼鷹、出撃!!」



sechs 1度限り



―執務室―



大淀「・・・そう言えば提督・・・あの封書には何を書かれたのですか・・・?」



東郷「・・・」



大淀「あ・・・いえ、気分を害してしまったのなら申し訳ございません・・・ただ私も提督の下に動く身として、作戦内容は知っておくべきかと思いまして・・・」



東郷「・・・1回限りだ・・・」



大淀「え?」



東郷「あの封書には1回限りの作戦が書いてある・・・もし、それを失敗すれば・・・」



大淀「すれば・・・?」



東郷「・・・隼鷹はやられるだろうな・・・」



大淀「・・・」



東郷「・・・俺は出来る限りのことをやっているだけだ・・・あと運が左右する・・・」



大淀「・・・提督は・・・提督はわたし達艦娘のことをどうお思いでしょうか?・・・やはり前任と同じように使い捨てに過ぎないのでしょうか?」



東郷「・・・」



大淀「前任もそう言っていました、俺は俺の出来るだけのことをやるだけだと・・・ただ提督と違うのは・・・『もし負けてしまえば、それはお前らが未熟だからだ』と・・・」



東郷「・・・」



大淀「やはり・・・提督も・・・そうお思いですか?」



東郷「言ったはずだ・・・俺にお前らの心情は関係ない・・・あと運が左右する・・・とな・・・」



大淀「・・・」



東郷「・・・頼みがある・・・館内放送で艦娘を召集して欲しい・・・」



大淀「・・・分かりました」



Sieben:Air Strike



隼鷹「まず第一艦戦隊、発艦!」



隼鷹(どうせ遅かれ早かれ果てる身さ……それなら最後にすっぱり散らしてやるよ!)



隼鷹「敵の気をそらせ!できる限り!頼んだよ!烈風の皆!」



隼鷹(ほんの少し!ほん少しだけでいい、哨戒隊の奴等を気を引かせてくれるだけで良い!哨戒の奴等を出切るだけで遠くへ連れてって行ってくれ……)



ー鎮守府 執務室ー



天龍「何だよ、来てやったぜ」



東郷「……出撃だ」



天龍「大淀、次はどこで仲間を見殺しにすればいい」



大淀「……」



天龍「言っとくけど、俺は命令されれば動く、命令されれば撤退もする。それがどんな状況でもな、だからどんな命令でもしてくれていいぜ」



夕張「ちょ、ちょっと天龍さん……」



東郷「……編成は軽巡4隻全てに、駆逐艦不知火の5隻だ」



大淀「わ、私もですか?」



東郷「そうだ……それと川内……装備は全てに夜戦仕様にしておけ」



川内「悪いけど私は装備は1つもないよ……あんたは着任したばかりだから分からないと思うけど、私の装備は全部で妹が持っていっていなくなっちゃったから無くなったよ」



東郷「その心配はない、既に手配してある、他のものは余計な物は載せるな、全員にお土産がある……」



天龍「それは分かったとして、そんで、場所は?」



東郷「……」



acht 対敵



隼鷹「よし!烈風の皆が機銃の気を引いてくれている……後は哨戒が集まってくる前に……行くよ!艦爆隊!全機発艦!」



隼鷹「高さを30メートルで……いや、半分15メートルで目的地に飛行!」



隼鷹(気づくな……気づくな!!これは1度限りだ…1度で……1度で成功させる!)



隼鷹(頼む……気付いてくれるな……)



隼鷹「敵の港湾まで残り12000メートル……烈風の皆……あぁ…また1機やられた……頼む、彗星の皆がたどり着くまで持ってくれ……」



隼鷹「残り10000…9500………9000……8500………マズっ!敵の巡洋艦が陰から出てきやがった!しかもツ級2隻かよ!」



ツ級1「……!!…………!!!」



ツ級2「…!!!………!」



隼鷹「不味い不味い不味い!54機の彗星が落とされる!」



隼鷹「……仕方ない…………作戦変更!主目標、敵軽巡洋艦、ツ級2隻!艦爆の力でそっちを蹴散らしてからだ!」



【ツ級・艦これに最も対空能力の高いタイプである。艦これにおいて、ツ級1隻で正規空母2隻分の艦爆、艦攻を削ぎ落とす力を持ち、各鎮守府の提督を苦しめた。史実ではアトランタ級防空巡洋艦がモデルとされており、当時の日本を大いに苦しめた巡洋艦とされている】



neun KAMIKAZE


※今回からナレーション入ります

~回想~



2週間前



東郷「…大淀、インドネシア全域の地図はあるか?」



大淀「え、は、はい、棚のこちらに……これです」



大淀は資料棚の一角から地図帳らしき物を取り出し、東郷に手渡した



東郷「……」



大淀「……あの、提督?」



東郷「……今インドネシアの勢力はどうなってる、ここも敵勢力下だろう」



大淀「はい、半年ほど前までは私たちの支配下にありましたが、レ級の現れたこともあり、インドネシア近海の部隊を海峡へ回し、薄手になったところ敵に奇襲され、敵の手に落ちました」



東郷「……お前らが使っていた基地はどこにある」



大淀「えっと……ここ、パプアです。今はもう既に敵の補給基地になってるかもしれません」



~回想終了~



東郷「………フー……」



ーマルク近海ー



隼鷹「よっし!1隻撃沈!!………でもこっちも艦爆隊、半分以上は落とされちゃったしなぁ……残り21機……行けるか……?」



隼鷹は苦戦していた、何とか1隻は倒したものの、42はいた艦爆隊が半分まで軽巡洋艦2隻に苦しめられているのである



ツ級「………!!………!!!!!」



敵の対空の勢いは止まらず、このままでは全ての艦載機はなぶり殺しである。しかし、そこへ



隼鷹「ちぃっ!敵さんもしつこいねぇ!!…残り15………え?なんて!……………は?………いやいや待てえーっと、何番?26番!」



妖精搭乗員からの無線だった



彗星26「」



妖精からの無線は、隼鷹が絶対に厳として禁止していた事である



隼鷹「おいおいおいダメだって、そんなの許すわけ無いでしょ」



このままでは拉致があかず、単艦で乗り込んだ苦労も水の泡となってしまう、そうなってしまわぬよう1つの決意だった



彗星26「」



隼鷹「大丈夫だって、そんなことするな、な?そんな事する必要はない、それぐらいなら戻ってこい!」








特攻である








彗星26「」



500k爆弾を胴体に取り付けた爆弾が、敵艦船に向けて直上から落ちていく



隼鷹「おい!……おい!!」



そこへマイナスGがかかろうとも、機体がバラバラになってしまおうとも関係なかった、この機が隼鷹に無線をかけたときから既に準備段階には入っていた、敵軽巡洋艦が気づいたのは特攻に気づいたときには距離がわずか100メートルも切っていた。敵ツ級も即時に迎撃にかかる



ツ級「!!!!!」






彗星26「!!!」



時既に遅し



ツ級「!!!」



爆発



隼鷹「…」



隼鷹「……」



隼鷹「…敵、ツ級撃沈…艦爆、残り10機…総員、港湾を目指して」



敵1隻に21機、もう1隻に11機・・・しかし、片方は、1機の決意の覚悟によるものである



隼鷹「…あーっ…きついなぁ…特攻は…ダメだよなぁ…あの馬鹿…ん?……あぁ分かった…総員残り4000メートル、高度15メートルを維持」



敵を撃滅できたとはいえ、流石に望んでもいない特攻を行われた事は、隼鷹にとって精神的にきつかった



隼鷹「あたしは大丈夫、みんなは自分達のことだけ集中し…て…」



隼鷹「…んぁ?あ、あぁこっちは大丈夫、3500メートル、もう少しだよ」



隼鷹「……3000……2500……2000……もうそろそろだね……あぁ!烈風のみんな!」



できれば起きて欲しくない事が起きてしまった……陽動役の烈風が全て、港湾を守る対空機銃に打ち落とされたのである



隼鷹「……いや、大丈夫……気づくな気づくな」



しかし幸いな事に、こちらの艦爆隊にはまだ気づいていなかった。ツ級とのあれだけの戦闘を起こしても、烈風を落すことに躍起になっていたのだ



隼鷹「彗星の皆、高度15を維持!200メートルだよ。、200メートル時点で爆弾を投下!」



彗星12「!?」



彗星49「」



それは妖精、搭乗員たちにとっては異常な命令だった高さ、15メートルから放たれた爆弾では、敵の拠点を爆撃する事など出来ず、壁しか破壊する事が出来ないからだ、いやそもそも壁を破壊する事も出来るかさえ怪しい



隼鷹「低過ぎるって?大丈夫大丈夫、それが狙いだから……1000メートル!」



よもや気が狂ったか……搭乗員の皆はそう思えた。しかし



彗星`s「」



妖精は全員腹をくくっていた。むしろ前線を押し下げられて尚、敵にここまで反撃できた事が誇らしい。もはや隼鷹の命令に誰1人として異議を唱えるものはいなかった



隼鷹「そろそろいくよ!投下よーい!……って!まず!気づかれた!」



最悪な事が起きた

敵がこちらに気づいた、敵がすぐさま迎撃に取り掛かる



彗星12「!」



彗星03「!!」



しかし



隼鷹「500!全機、投下準備!」



彗星03「!!」



彗星12「!!」



彗星52「!!」



敵の弾は放たれてこなかった、ここに来て高度15メートルと言う低さが幸を成し、敵対空機銃はマイナスの仰角が足りないのだ。(実際の史実ではマイナスの仰角、もとい俯角はどこの国も-15度位までは取れたみたいだけど、まぁそこは都合のいい解釈ということで)



そして、その代わりに



隼鷹「いい!250!……200!爆弾投下!左右へ散開!」



10発の爆弾が放たれた



zehn:活路





【反跳爆撃】という爆撃方法がある。



【反跳爆撃】とは、爆撃機を水面、もしくは海面ギリギリまで低空飛行をし爆弾を投下、その後爆弾は水切りの要領で水面を跳ね、目標を爆撃する方法である。【反跳爆撃】は、ミサイルや誘導性能が発展した現代に置いてあまり活用される事のない爆撃方法だが、当時は敵にギリギリまで近づくため艦攻同様被弾率は高いものの、通常の爆撃や艦攻より命中率は高い。そして時限式爆弾でダムを決壊させるなどの、史実でも実際に記録が残っている爆撃方法である



そしてここにも反跳爆撃により突破口を見開いた艦娘がいた






隼鷹「……はー……はー……や、やったね……す……彗星の皆は……?」



彗星`s「}



隼鷹「……そう……1機は旋回が間に合わなくて壁に突っ込んだんだ……もう1機はこっちも特攻……8機残ったんだね……」



隼鷹「……しかし、これどうすっかなー……穴を開けただけじゃなー……」



結果としては、隼鷹は爆撃は成功だった、何十隻ものの艦船はなだれ込むには十分な大きさの幅が開き、穴の空いた箇所から亀裂が入ったところで崩れさり、壁は左右に分断され、中の港湾は丸見えである。しかし主目標敵拠点制圧をするまでに至らず、壁を破壊するのみに留まった。やはり数が足りなかった



隼鷹「……どうしようか……壁を開く事は出来たけど、敵さんの建築能力を考えたら撤退して次に拠点制圧するになっても、その頃までには元通りだろうしなぁ……」



隼鷹「……まぁ考える間でもないよね…………彗星の皆、戻ってきて……第二次爆撃始めるよ」



隼鷹は死ぬつもりだった、例え8機しかいないとしても最後の最後までできる事をすると。制圧まで出来なくても、せめて爆撃だけはしてやろうと、一矢報いてやろうと。



隼鷹「さて、みんな戻ってきたね。さぁさぁ、みんな大丈夫かい?奴らに……1泡吹かせてやるさ!!」



しかしそのときだった



???「残念だけど、それは今のあんたには無理だぜ」



隼鷹「え?……」



???「ここから先はわたし達の出番ですね」



後方からの声に反応し後ろを振り返ると、そこには天龍を旗艦とする水雷戦隊が来ていた



隼鷹「な、あんた達!なんでこんなとこにいるのさ!」



天龍「何でって、作戦指令だから仕方ないだろ」



隼鷹「作戦指令!?私はそんなもの聞いてないよ!」



不知火「えぇ、わたし達も隼鷹さんが出撃してから受けた作戦ですので仕方ありません」



大淀「私も……隼鷹さんがパプアへ出撃するってことは事前に知ってはいたのですが、わたし達水雷戦隊も出撃するとは思いませんでした」



隼鷹「……はー……こんなんなら、一緒に出撃すれば良かったじゃないか……」



大淀「いえ、今回の作戦は単艦の方が奇襲はかけやすかったですし、そして作戦指令は別々に渡されていると思いますが、作戦自体は、合同作戦です。ただ隼鷹さんには知らされていないだけですね……」



隼鷹「……まぁいいさ、それでどうするの?私の作戦は拠点制圧で、今から艦爆飛ばして拠点を爆撃してやろうと思ってたところだよ、ちょうど奴らの壁も取り払われたし」



そういって隼鷹は、自前のカタパルトを広げ、発艦準備を整えた。



天龍「んや、悪いけど隼鷹さんの出番はここまでだ、ここから先は俺達の独占場だ」



隼鷹「?どうするのさ、戦艦とかならまだしも、軽巡や駆逐艦が艦砲射撃したところで威力なんてたかが知れてるでしょ」



天龍「まぁいいからいいから、あんたはここでしばし休憩してな」



大淀「と言うわけで、わたし達ちょっと行ってきますね」



不知火「ご武運を」



夕張「いってきまーす」



そういって5人の艦娘はパプアに向けて進んでいった



elf:反攻



大淀「さて……天龍さん、タイミングは?」



天龍「ん……ここらへんで良いだろ。あまり近づきすぎて迎撃に合うかも知れんしな、ま、10kmも切って近づきすぎもクソもないが……」



そういうと天龍も含め、全員が艤装の準備を整えた



夕張「ちょっと楽しみですね、この装備、試し撃ちしてもいいかしら?」



川内「いーなー皆、そんな新しい装備つけられて」



不知火「あなたは夜戦要員ではありませんか……」



大淀「しかし……ほんと不思議な形してますよね。主砲がこんなにも連なってるなんて……」



大淀はそういって両脇に備え付けられた新装備を撫で下ろした



天龍「あぁそうだな、さて、みんな用意は良いか?」



全員が頷いた



天龍「……よし、反動には気をつけろよ。どんな代物なのかも分からないからな」



そして天龍は腕組をし



天龍「総員仰角37度、緯度0度と成せ!」



全員が構えた



天龍「目標、正面パプア敵拠点基地!」



旗艦天龍は人差し指を天に掲げて



天龍「総員、一斉射!!!」



その瞬間、全員の装備は後ろから文字通り火が吹いた



天龍「うおぉ!!」



大淀「きゃあ!」



夕張「きゃ!!」



不知火「う!」



新しい装備は、自分の意思とは関係なく、一度の発射で何発もの弾が次々と飛んでいく



天龍「大丈夫かみんな!」



大淀「は、はい大丈夫です」



夕張「は、はは、これすごいじゃない!!ねぇ!この『WG42』って装備、すごいと思わない!!」



天龍「あぁ、ホントにすげぇ!!まさか弾がロケット弾だとはな!!」



その装備、ロケット弾を使用するWG42から放たれたロケット弾は、次々とパプア基地に着弾していった。何十発、何百発ものロケット弾は敵基地の建物を次々と破壊していき、まともな形も残しも無いように



その光景はまさに、一方的ななぶり殺しであった


運用映像→https://www.youtube.com/watch?v=xtSTMYGEyaM&has_verified=1

【※・艦これにでてくるWG42は、ドイツ陸軍が使っていた『30cm NbW 42』(運用映像参照)を海軍仕様にした物で、ロケットモーターを使用しているため水中の中からでも発射する事が出来る】



zwölf:兆し



隼鷹「なんだってありゃあ……十二糎二八連装噴進砲か?」



隼鷹はその光景に唖然としていた。次々と発射されるそれは一目でロケット弾だと分かった。隼鷹も昔、似たような物を載せた事があった。

しかしそれは用途が対地ではなく、対空用防御兵器としてのものであり、名は「十二糎二八連装噴進砲」という。

それを対地兵器として運用しているものだから驚いているのである。【艦これだと12cm30連装噴進砲の事、艦これは十二糎二八連装噴進砲の後期30連モデル】



隼鷹「……圧巻だね……」



その光景はすごいものだった、敵基地がどんどん守る術も無くどんどん破壊されていく、流石に流れ弾で壁に当たっても破壊は出来ないようだが、拠点を制圧するには十分だった

そうこう見とれている内に、発射は終わったようだ



隼鷹「終わったか?……おーい!!」



隼鷹の呼び声に不知火が反応する



隼鷹「おいおいおい、なんだってんだありゃあ?」



不知火「隼鷹さん。いえ、あの提督から貰った新しい装備です」



隼鷹「新しい装備って……十二糎二八連装噴進砲じゃないのか?」



大淀「いえ、これは『WG42』といって、同盟国の作った兵器です。すごいですよこれ」



隼鷹「WG42?聞いた事ないねぇ……」



大淀「でしょうね、まぁそれはいいとして、あの拠点どうします?敵もこちらに感づいて近海で哨戒に当たっている敵艦船もここに集まるでしょうし、上陸するなら今ですよ」



天龍「そうだなぁ……よし、俺と大淀、夕張はあの拠点に篭城しよう。壁は崩れてしまってるけど、一方向しか壊れていないし、敵も奪還しがたいだろう。川内、不知火、隼鷹は鎮守府に戻ってこれを報告、戻ってすぐに援軍を寄越してくれ。」



旗艦天龍の指示を各員がこれを聞きすぐに準備に入る



隼鷹「分かった、艦載機も補充したら私もすぐに援軍に来るよ。」



天龍「おう、もう日も暮れる。夜になったら川内は夜偵を飛ばして常備警戒しながら鎮守府に戻れ。敵の行動範囲外だからって油断するなよ」



川内「分かった!!任せておいて!」



天龍「よぉーし!!弾はまだまだ余ってる。ここを取り戻すまでもう少しだ!大淀、夕張、死守するぞ!」



夕張「えぇ!」



大淀「はい!」



dreizehn:押し上げ



隼鷹「隼鷹帰投しました!」



東郷「……」



隼鷹「作戦結果を報告します!パプアにある敵基地を奇襲と空爆、港湾を守っていた壁を破壊し、現在天龍率いる艦隊がパプアの敵基地を奪還し、篭城中!速やかなる応援出撃を具申します!」



東郷「……分かった、もう準備はしてある……隼鷹、川内、不知火、ご苦労だった……隼鷹、お前はすぐに入渠して身体を休めるんだな……」



隼鷹「は、はい!失礼します!」



川内・不知火「失礼します!」



ガチャ



東郷「……」



―執務室前廊下―



隼鷹「…………」



隼鷹「…………」



隼鷹「……ふー……」



川内「いやー、上手くいって良かったね!」



不知火「えぇ、勝利を上げたのもいつ振りでしょうか」



川内「もしかしたらこれから快進撃が始まって、また前線を押し上げる事が出来るかもしれないよ!ね、隼鷹さん!」



隼鷹「……」



不知火「……隼鷹さん……?どうかされましたか?」



隼鷹「…………こんなに戦闘で興奮するのはいつ振りだろう……あいつがいなくなってからも……情勢は悪くなっていく一方で、もう何もかもがどうでも良くなって、もうすっかり死ぬ気でいたんだけどなぁ……」



隼鷹「でも、何故か新しく入ってきた提督……あいつなら……この現状を変えてくれる気がすんだよね……」



隼鷹「だからさ……だからもう少しだけ……あんたの所に逝くの……もう少しだけ待っててくれないかな……飛鷹……」



川内「……」



不知火「……」



隼鷹「……よっし!風呂行くか!!」



川内・不知火「……はい!」



vierzehn:希望



東郷「これからお前たちに、応援に向かってもらう。メンバーは、隼鷹、川内、舞風、不知火、伊8、弥生だ。場所はパプア敵拠点基地、今は大淀、夕張、天龍の三名が篭城している。そこへ援軍としてかけつけ、その拠点を奪還する」



弥生「あ、あの……」



東郷「なんだ?……」



弥生「何故わたしも参加なの……私は改にもなっていないしそんなに錬度も高くない……他のメンバーはそれなりの錬度を積んだり古株だったりするし」



東郷「なら今あげれば良い……この程度で弱音を吐くようなら間違いなく死ぬぞ……ここは前線基地だ」



弥生「……」



東郷「他に異論は……?」



東郷「……それならすぐに出撃しろ」



一同「はい!」



―出撃ロビー―



弥生「……」



不知火「怖いのですか?」



弥生「ひ!……不知火さん……はい、正直」



不知火「仕方ありませんよ、前任が大本営に送った最後の具申が叶っただけでもありがたいです」



弥生「……私は何も出来ないかもしれない」



川内「大丈夫、敵が来たら狙って撃つ。近くまで来たら魚雷を撃つ。夜戦に持ち込んだら敵を討つ!その時になればなんとかなるもんだよ」



弥生「川内さん……」



川内「大丈夫だって、わたし達もちゃんとフォローするから、始めての出撃の子に1人でやらせるほどわたし達だって悪魔じゃない」



弥生「……」



川内「よっし、じゃあぱぱっと行って、ぱぱっと片付けて、ぱぱっと終わらせちゃおうか!」



弥生「……はい……」



―パプア拠点基地―



天龍「あいつらそろそろこっちに向かってくる頃かな?」



大淀「そうですねぇ……隼鷹さんの入渠時間を含めても最低1日半は掛かると思いますでもうそろそろかと」



夕張「それにしても敵も中々にしつこいわねぇ」



天龍「でもこの壁のおかげでやつらは正面からしか攻撃できないしな、対空はこのWG42に追い払えばいいし」



大淀「そうですね、少しばかり敵艦載機も五月蝿いですが……」



夕張「あ、また敵が見えてきた、今度は5隻編成みたいだね。軽巡3、駆逐2」



天龍「なんてことねぇよ、壁を使いながら敵を追い払えば良い」



大淀「ふふ……」



天龍「どうした?」



大淀「いえ、また以前みたいに活気あふれる艦隊に戻れる日が来るのでは無いかと思うと少し嬉しくて」



夕張「そうね、仲間もたくさんやられちゃったけど、これからまだ出会うかもしれないし」



天龍「……そうだな……あいつのためにも絶対に以前の艦隊に戻してやるさ」



夕張「絶対にですよ!」



天龍「あぁそうだな、希望も見えてきたぜ!」



fünfzehn:上層部



中将「大将!前線からの暗号です!」



大将「なに!ついに来たか!」



中将「はい!内容は……『ハセ』……と」



大将「……そうか」



中将「……?……これは?」



大将「……分かった、もう下がってくれ」



中将「は!」



ガチャ



大将「……そうか、まずは篭城には成功したか……これからだぞ……」



~回想~



大将「暗号を?」



ゴルゴ「あぁ、あんたと俺だけが分かる即席かつ簡単な暗号だ……」



大将「は、はぁ……それは構いませんが……」



ゴルゴ「……」



~回想終了~



大将「……まずは前半戦はこちらの優勢だな……」



sechzehn:切りくずし



天龍「うーむ……」



天龍は壁の陰から顔だけを出し、様子を伺っていた



大淀「どうかされましたか?」



大淀のその問いに天龍が首をかしげる



天龍「なんだかおかしい……」



夕張「ちょっとやめてよ」



大淀「何か?」



天龍「敵の攻勢がちょっと緩みすぎだな」



夕張「良い事じゃないの、敵もそろそろ諦めてきたんでしょ、あとは応援が来るまで持ち持ち応えてここを奪還よ」



少し沈黙が通った後に天龍が口を開いた



天龍「……だといいんだがなぁ……」



夕張「きっとそうだって」



大淀「あ、また敵艦船です。どうやら駆逐艦ですね」



天龍「け、追っ払っちまえ」



夕張「はーい」



と、夕張が迎撃態勢に入る。しかし



夕張「……?あの駆逐艦急に止まったわね」



大淀「あ、反対の方向、2時の方角からも軽巡が2隻きました」



天龍「そっちは大淀に任せた」



大淀「はい」



と大淀も迎撃態勢に入る、しかしこちらも



大淀「……?あの軽巡も急に止まりました」



天龍「なんだぁ?あいつら攻撃もしてこないで」



夕張「どうする?とりあえずこっちから攻撃する?」



天龍「そうだな、威嚇射撃でもしてろ」



夕張「はーい」



大淀「わかりました」



合図と共に、夕張と大淀のWG42に火が噴き、敵に向かって飛んでいく



夕張「さぁ、いっきなさい!」



多数のロケット弾の着弾と共に、敵艦船は更に距離を離し、こちら側とのリーチは大きく開いた



大淀「やりました、敵もこれでは中々近づいて来れないでしょう」



夕張「えぇ敵も集まってきたけど、わたし達の兵器にたじろいで、沖合いで固まってなかなか近づいて来ないわね」



天龍「あぁ、これはかなり持久戦に持ち込めるな」



大淀「えぇ、これで応援を待つだけ……です」



その時、大淀は急に悩みだした



大淀「持久戦……?……持久……」



そして、大淀が何かに気づいた



大淀「……天龍さん……あなたの読み、どうやら当たりのようです」



天龍「あぁ?なんだよそれ」



大淀「……恐らく相手も持久戦を持ち込もうとしているのでしょう」



天龍「あぁ?なんのために」



大淀「多分……あれでしょうね……」



大淀は、敵艦船を指差した



夕張「敵が……どうしたの?」



大淀「恐らく相手は、後々、一気に蹴りをつけるつもりでしょう。見てください、敵がドンドン集まってます」



大淀「敵は小さい艦隊を連続ではなく、仲間を大勢集めて一点集中の攻勢に切り替えたんだと思います」



天龍「んー、それはまずいな」



大淀「えぇ……普通、篭城された場合、攻撃は守りの三倍の戦力を以って挑む、『攻撃三倍の法則』という言葉があります。意味は皆さんが想像しているそのまんまです。わたし達は敵に対してかなり有効な兵器を使用しています。それを敵は承知の上でもっと数を増やしてくるでしょう。おそらく10倍、いや15倍ほどで」



天龍「うっそだろ、それはなんとしてでも避けたい」



夕張「そんなの絶対勝てっこないって」



そうこういっている内に、敵艦船は沖合いの方でかなりの数が集まっていた



天龍「あー……敵が攻勢を緩めていたのはこれだな……」



大淀「これは……ちょっとピンチですね……」



夕張「この壁があるだけなんとかマシね」



天龍「っく、おいおいおい早く来てくれ、俺たちこのままじゃ奴らになし崩しになっちまう。応援はまだか!」



siebzehn 一転防勢



天龍「弾はそれなりに残ってるが……」



大淀「でも流石に……」



三人の視線の先にはおぞましいほどの数の深海棲艦が終結していた。その数、もはや観艦式が出来るほどである



夕張「あれは多すぎよねぇ……」



大淀「距離からしてやく20km……前後でしょうか?相手はこちらの様子を伺っているようですね……見た事の無い兵器に困惑しているようですが……」



20km-------重巡なら既に射程内である、しかしこっちは敵拠点を占拠している側であり、敵も自軍の補給拠点を潰すような真似はしてこなかった、ましてや射程内といっても20kmも離れれば誤差は大きくなる。1度ずれるだけで300m以上ずれる計算になる。ゆえに敵はこちらにどうしても近づいて近距離戦に持ち込む他なかった



天龍「あぁそうしてくれそうしてくれ!お互い持久戦に持ち込んでどっちに神が舞い降りるかさ」



夕張「こっちは援軍が来るまで、あっちは数が揃うまで……ってところかな?」



天龍「これの最大射程も出撃前に聞いた話しじゃ5kmほど位らしい、だけど弾はまだまだある、射程圏内に入ってきたらうかつに攻めてこれないように奴らの心理をかき乱してやれ」



夕張「お願いだから早く来てよ援軍!!」



大淀「こればかりは運ですからねぇ……」



天龍「早くこい……はやく!」



―海路―



隼鷹「あいつら大丈夫かなぁ?」



川内「どうだろうねぇ、いくら新兵器といっても篭城となると敵はどんどん集まってくるだろうし、まぁでもあの要塞だったし持久戦には持ち込めるだろうけど」



一方その頃援軍の隼鷹等の艦隊は援軍として動き、パプア補給基地を目指していた



不知火「天龍さんもいるなら大丈夫なのでは?あの人たちは全員改装もしてありますし、そんなに心配するものではないかと」



川内「そうやって慢心するから半年前堕とされたんじゃん」



不知火「ッ……」



川内「……いや、ごめん、言い過ぎた」



不知火「いえ……」



弥生「……」



隼鷹「……?弥生どうした?」



弥生「い、いえ……そのちょっと緊張しちゃって……」



不知火「……何も心配する事はありまんよ。フォローはしっかりするので」



川内「そうだって!……そうだ!夜戦楽しいよ!目標海域に到着したら夜戦しようか!」



弥生「い、いえ……」



彼女―――駆逐艦弥生は、前任の提督が解任された後の鎮守府に配属された艦娘である。彼女は水上艦としては特殊艦を除いて、唯一改装が施されていない。弥生は前任が解任される前に、前任の最後の具申が通り配属された艦娘である。故に実戦経験もなく全くの新人である



弥生「……」



隼鷹「……大丈夫だって、その時になればなんとかなる。海の上では戦闘になれば怖いものなんてなくなるよ。気がついたらそうなってるんだ。興奮状態と言うかなんと言うか……戦う事が楽しくなってる……?みたいな感じか、まぁ敵を倒さなくちゃと思ってるからだろうけど」



弥生「は、はぁ……」



川内「まぁその時はその時だよ」



弥生「……」






【現在の状況】



パプア敵補給基地・篭城中

・天龍

・大淀

・夕張

パプア敵補給基地に篭城中であり、援軍が到着するまでの間、敵艦隊と真正面に持久戦に持込中である



援軍支援艦隊・航行中

・隼鷹

・川内

・舞風

・不知火

・伊8

・弥生

現在、仲間が篭城しているパプア敵補給基地に向かって航行中である。

その中の弥生は実践のない新人の艦娘である。仲間と目標海域へ向かいながら彼女は1人不安を覚えていた



achtzehn:滑り込み



天龍「これは……正直駄目だな……援軍が来ても敵わねぇよ」



夕張「集まりすぎね」



大淀「集まりすぎですね」



先ほどからドンドン敵が集まってる。もう100はいってるだろうか



天龍「あいつらこんなにいたか?」



大淀「他の所からも集まってきているみたいですね。」



夕張「それだけ、ここを再奪還したいのかしら」



天龍「だけどいくら何でも多すぎだぜ、俺ならすぐに奇襲かけるっての」



大淀「……逆に……」



天龍「ん?どうした?」



大淀「逆に、絶対に取り返さなくてはいけないものがあるとしたら……?」



大淀が顎に手をかけ、神妙に考える



夕張「そんなもん、食料に決まってるじゃない。それに弾薬、燃料」



天龍「そうだぜ、ま、弾薬があるなら俺等でたんまり使わせてもらうがな」



大淀「……それだけなら……良いんですが……」



天龍「まぁ、なんにせよ、俺等がピンチである事には変わりねぇよ。今は早く援軍は来る事を待つばかりだ」



夕張「そうねぇ……あ!」



天龍「ついに動いたなぁ……よし!ぎりぎりまで引き付けろ!奴等を射程内に収めるんだ!」



大淀「はい!」



夕張「はい!」



                         ―航路―



隼鷹「……あいつら、大丈夫かな……」



不知火「あれから結構時間経っていますからね……」



心配する様子をよそに、川内と舞風は弥生をできるだけ落ち込ませないようにと励んでいた



川内「大丈夫だって!その時はその時だけど、やれば意外と何とかなるもんだよ。ほら私達もちゃんとフォローするし」



舞風「そうだって!それとも、それともちょっと休憩がてらにここらで少しダンスする?ちょっと気分が落ち着くよ」



弥生「いえ……結構です……」



そんな事を話しているよ、水中から伊8が顔を出してきた



伊8「ぷはぁ……」



隼鷹「お、はっちゃん。水中はどうだい?何も異常は無し?」



伊8「はい、今の所は何もないですね……ただ、やっぱり弥生さんかなり緊張されているみたいですね。水中にいると、ソナーが弥生さんの心臓音を拾っちゃいます」



川内「はは、まぁしちゃうものは仕方ないよ。ましてや、初陣がこんなんなんだから……」



川内がそういうと、皆一瞬黙ってしまった



そしてそのとき、川内に無線が入った



???『ppp……こち……ど……誰……答を……』



川内「!?皆無線が入ったよ。Unknow station This is river over」



大淀『river river こちら大淀、応答を』



川内「大淀さん!?こちらriver、状況を」



大淀『現在パプア基地にて篭城中、敵が猛攻をかけている。至急応援求ム!!』



川内「こちらriver、了解。現在に当海域に向け航行中、至急そちらへ向かう。over」



隼鷹「なんだって?」



川内「敵さんが篭城中のパプア基地に猛攻をしかけているだって、自分等も急ぐよ!」



一同「はい!」



neunzehn 切り札



天龍「よっし……徐々に近づいているなぁ……お前等準備は大丈夫かぁ?」



夕張「こっちは大丈夫よ」



大淀「私もです……ですが……」



天龍「どした?」



大淀の疑問を呈する声に天龍が反応した



大淀「……私達の装備しているこの『WG42』ですが……本当に深海棲艦に効くのでしょうか?」



天龍「……どういう意味だ?」



大淀「この『WG42』は確かにすごいと思います。相手も見た事無いでしょうからそれなりに相手はなかなか近づく事はできません。実際、制圧兵器としてもかなり優秀です……しかし、それは面攻撃を重点に置いていると言う事であって、点攻撃には向いていないということなのでは……」



大淀がWG42に手をかける



夕張「……つまり攻撃力を重点においた兵器ではないから深海棲艦が躍起になって攻め込んできたとき、対艦としては決定打にはなりえない……そういうこと?」



大淀「威嚇、牽制としてはかなり優秀だと思いますが……」



天龍「……まぁ、実際これでこの島を占領してた奴等は壊滅したから、駆逐艦、軽巡洋艦レベルなら何とかなるだろうな……だが重巡、戦艦レベルには実際に相手にぶつけて見るまでは分からないが、もしそうだった場合、こっちはいきなり不利になるな……」



……この場の空気が一気に冷たい物となった



天龍「まいったなぁ……こういうことなら、主砲を1つ位は持って来れば良かった俺の主砲ごときでなんとかなるとは思わないけど……おい大淀、この島に何か武器はないのかよ」



最初に空気を破ったのが天龍だった



大淀「それは……すいません、分かりません」



夕張「私もちょっと……」



その時だった



ドン!!



天龍「なんだ!……あ!」



大淀「ついに撃ってきましたね……」



夕張「あー……私なんか探してこようか……?」



ついに始まった敵の攻撃に3人はたじろいながらも、すぐさま臨戦態勢に入る



天龍「この際何でも良い!!おい大淀、夕張と何か探してきてくれ!ここは俺だけでいい、何でも良いから武器になりそうなものがあったら持ってきてくれ!!」


大淀「は、はい、分かりました!」



夕張「それじゃあ行ってくる!」



天龍「あ、待った!!」



駆け出そうとした二人を天龍が2人の艤装を指しながら言った



天龍「それは置いて行ってくれ、置砲台としてなら俺1人でも3つは扱える」



大淀「あ、はい」



2人は拠点基地の建物へと向かって行った



天龍「……さぁて……こっちも一仕事するかぁ……」



                                   ~パプア補給基地司令館内~



大淀「……まぁそういっても、私達のロケット弾のせいで建物もここまで見事にボロボロにしてしまいましたから」



夕張「ホントね、こんな半ば瓦礫と化した建物から何を探せって言うのかしら」



大淀「まぁ何もしないよりはマシです」



夕張「まぁね」



大淀「……武器庫の方へ行って見ませんか?」



夕張「……そうね、そっちの方が何かありそうだし行きましょうか」



大淀「分かりました」



                                       ー航路ー



川内「……うーん……」



川内が喉を鳴らす



不知火「どうかされましたか?」



川内「補給基地まであとどれくらい?」



不知火「あと……航行速度を考えて6時間弱と言ったところですか、それが何か?」



川内「うーん、なんかね。大事な物を忘れてるような……」



不知火「はい?」



川内「なんだったかなぁ……あそこの基地ね、確かなんかすっごいのあった気がするの」



隼鷹「なんだそりゃ?兵器か何か?」



川内「うん……兵器だったはずなんだけど……確か私が暇であそこの基地内を探索しているときに見つけたの」



隼鷹「お、何々?艦載機の類?」



川内「いや、飛行機じゃなかった」



隼鷹「ちぇ」



隼鷹が思わず舌打ちをする



不知火「それが何か到着時間と関係あるのですか?」



川内「いや、それだったら早く教えてあげたいじゃん?」



不知火「……まぁそうですね」



川内「うーん、なんだったかなぁ……なんかこう……船に載せるものでも無かったんだけどね……」



唯一1人頭を悩ませながら皆はパプア基地へと向かっていった



                                   ーパプア補給基地港湾内ー



天龍「くっそ、あいつらバカスカ撃ちやがって。大淀たちもまだか!?」



天龍「距離も約15kmと迫ってきてるな……有効射程距離もあと10ってところか……大淀たちがなにも見つけられなければもうこれだけで何とかするしかないが……」



天龍「いや、もうこの際玉砕覚悟だ。来れるものなら来てみろってんだ!!」



砲撃を続ける敵の攻撃を壁から少しだけ身を乗り出し、様子見しながら天龍にも敵の大群が押し寄せてきていた



                                    ーパプア補給基地武器庫内ー



大淀「……うーん、武器庫は弾薬もあるため頑丈に作られてはいるのですが……建物が壊れていないとしても……」



夕張「流石に相手も何かを残してくれるほど優しくはないわよね……艦載機の代物や単装砲や連装砲、それらの弾は全部使われてるわね……というか深海棲艦は弾の規格が私達と同じなのかしら……」



大淀「……陸戦隊用の小銃や小銃の弾は触れられてもいないようです、かなり埃被っていますね……ですが、これじゃ深海棲艦には歯が立たないでしょうね……夕張さん、何かここの武器庫の事、御存じないですか?」



夕張「ここは明石さんが担当してたからねぇ、明石さんとは仲は良かったけど、ここの事には一切触れなかったしなぁ……あ、これ明石さんが使っていた机だ。まだ残ってたんだ……私達がここを放棄した状態のままだ……」



大淀「……明石さんも共に戦った仲間ですからね……」



夕張「……うん……まぁ一緒にここを脱出したんだけど……」



大淀「……」



夕張「あ、そうだ……そういえば何かこの島に秘密兵器があるとかなんとか言ってました」



大淀「秘密兵器?……それ信憑性は?」



夕張「んー……まぁ飲んでて酔ってる時に言ってたからねぇ……酔っ払いの戯言か何か……かな」



大淀「……」



夕張「……」



つかの間の沈黙が流れると、外から大きな砲撃音が聞こえてきた



大淀「きゃ!……敵ももうだいぶ接近して来ているようです。それと残念ながらここにはもう何もないみたいですし、本館の方へ行ってみましょう」



夕張「えぇ、何か手がかりが見つかるかも……ん?」



大淀「……どうしました?明石さんの机を凝視して?」



夕張「これ……この地図……ここの武器庫の地図みたいなんだけど、なんか手書きで長方形に書かれてる」



大淀「……本当ですね……あとここに手書きの長方形に隣接して手書きで……これは……梯子?」



夕張「これどこかしら?……えーっと、今私達のいる場所がここだから……あれ?私達の場所とほぼ同じだ……ということは……真上!?」



その言葉で2人は同時に真上を見てみた



大淀「……何もありませんね、それどころか2階が作れるような高さもありません……」



夕張「なんだ……単なる落書きか……」



大淀「……これもしかして……真下……なのでは?」



大淀がそういうと、次に2人は地面に目を向けてみた、するとある物を見つけた



大淀「……夕張さん、ここ、なんか不自然な切れ込みが入っています」



夕張「ほんとだ……なんだが明石さんの机で隠しているかのような感じね。大淀さん、ちょっとそこを持ってもらっていいですか?」



大淀「はい……んしょ……」



2人して机を移動すると、机の下には開く事が出来そうな取っ手、もとい扉が出てきた



夕張「……」



大淀「……」



夕張「私、その秘密兵器とやらに賭けるわ」



大淀「私もです」



夕張が取っ手に手をかけ扉を開いた



                                ー鎮守府 工廠棟ー



東郷「……」



ピ、ピ、ピ……ガコン



東郷は1人、工廠棟で建造機器を操作していた



東郷「……」



そこに1人の艦娘が歩いてくる



長門「……貴様、何している」



東郷「……建造だ」



長門「……やったことは?」



東郷「ない……マニュアルを見ただけだ。特定の数値を入力し、このレバーを引けば建造できると書いてあったが?」



長門「そうだ、だがこの鎮守府には資源がもうない事も分かるはずだろう、私達の修理する分だけでも惜しいというのに、建造が出来るだけの蓄えなどない」



東郷「蓄えなら心配ない」



長門「何?」



東郷「大本営に言ってここ以外の各鎮守府から少しずつだが分けてもらった……もっとも、それこそ何度も出来るような数ではないがな」



長門「それなら何故それこそ建造なんてやっている。少しでも貴重な資源ならば私達に使うのが道理だろう!」



長門は少し声を荒げ、東郷に近づいて真横からだが睨み付けた



長門「……」



東郷はゆっくりと顔を横に向けた



東郷「……お前達は数が少なすぎる……正直言ってだが、よく今日まで生き残って来れたものだ」



東郷に言葉に長門は何度か首を縦に少し振り、言った



長門「……あぁ、前の提督の馬鹿のおかげでな。私達仲間がほとんど逝ってしまったよ……今のあんたみたいに後先考えず阿呆な事をやっていたからなぁ!!」



その怒号と共に長門を拳を壁に叩きつけた。鉄板で出来ているであろう壁がものの見事に拳の形が出来ていた



東郷「……悪いがお前等の心情は俺には関係ない。前任がどうであろうがそれは俺には関係のない事だ……俺は、俺が出来る限りのことをやるだけだ……」



長門「っ!貴様……!!」



東郷「……だからお前等も出来る限りのことをやるんだな……期待はしている……」



長門「……」



そう言われ、長門は何故か何も言えなかった



長門「……」



東郷「……おい、ところで……」



長門「……なんだ」



東郷「……この22分と言う表記は何だ?」



東郷は建造機器のモニターを指差した



長門「……時間によって建造できる艦種も変わる……22分なら白露型か朝潮型……もしくは……」



東郷「……伊号潜水艦か……」



長門「……そうだ」



長門がそういうと東郷は内ポケットからタバコを取り出し、長門の脇を通りぬけた



長門「おい!」



東郷「……なんだ?」



長門の突然の呼び声に東郷が振り向く



長門「……工廠棟は禁煙だ……」



東郷「……」



東郷はタバコをポケットに戻し、工廠棟を後にした



                               ーパプア補給基地 武器庫 隠し地下ー



夕張「……ビンゴね……」



大淀「えぇ……まさかこんなものがこの基地の地下に隠されていたなんて……」



夕張「というか……明石さん、私達が出撃するときに教えてくれてもいいのに……」



地下を降りた先、そこにあったのは大砲であった



夕張「しかしこれって、艦載砲……えっと……でもこれだけ大きいと私達に扱えないんじゃ……」



大淀「……あれ、夕張さん……この大砲、ここにプレートが付いています。多分これが名前じゃないでしょうか?」



しかし、ただの大砲ではなかった



夕張「ほんとうだ、うわ、全部漢字で書いてある……え、なんて読むのこれ?読みづらい……加農砲……加農?砲は分かるけど加農って何?」



大淀「加農砲?加農砲って確か陸軍運用の……ちょっとすいません、見せてください……」



大淀が文字プレートをみると、大淀がとっさに口を手で押さえた



夕張「え、何、どうしたの?」



大淀「……夕張さん、今回の防衛戦、勝機が見えました」



夕張「え、何、これそんなすごいものなの?」



大淀「…………砲塔四五口径四〇糎加農砲……簡単に言うと41センチ砲です!長門さんと同じ主砲です!」



かのビッグセブンとして世界に7隻しかいないはずの40cm超えの主砲が今の目の前にあるのである



夕張「……はぁ!?なんでよ、だって今陸軍運用っていったじゃない!」



大淀「ここ見てください、四号砲って書いてあるじゃないですか、と言う事は一号二号三号もあるのですが、これは長門型の2代後の天城型巡洋戦艦、赤城……ええと、空母の赤城さんに搭載される予定だったはずの主砲なんです……ただワシントン海軍軍縮条約で戦艦として作ることができなくなってしまったので、陸軍が40cm加農砲として運用する事になったのです、それから一から四号砲までは沿岸砲として使われる事になったのですが、ただ唯一四号砲だけは設置がされないまま、いつまにかどこかへ消えてしまったのです……ですが、まさかこんなところにあったなんて……」



夕張「あー……えーと、とりあえず、私達は今の危機的状況から脱するためのアイテムが手に入ったってことでOK?」



大淀「はい!しかも沿岸砲としての運用なので私達でもなんとかなります。砲弾も薬嚢もたっぷりそこのカーテンに掛かってるところに置いてあるみたいですし」



大淀が指差すところを見ると、カーテンが掛かってる横に砲弾、薬嚢のプレートがかけられていた



大淀「はやくこれを持っていきましょう!」



夕張「えぇ!!」



しかし、夕張には疑問が1つ浮かんだ



夕張「……これ、どうやって、上まであげるの?」



大淀「……」



そこからだった、しかしその問題はすぐ解決した



大淀「……ええと、でもここにこれがあると言う事は、いれる事ができたと言う事だから……」



大淀が回りを見渡した、すぐにお望みの物が目に入った



大淀「ありました、やっぱりここエレベーター構造になっているみたいです」 



大淀が「上」のボタンを押すと、地上からは地面が開くような形になり、地下のこの地面も上がり始めた



夕張「おぉ……」



大淀「はやく、天龍さんにもこの事を知らせなければなりませんね」



夕張「えぇ……さぁいよいよね、私達の逆襲は……この装備試してもみてもいいかしら!」



【砲塔四五口径四〇糎加農砲(砲塔式45口径40cm加農砲)について

・砲塔式45口径40cm加農砲は元々加賀型戦艦や天城型巡洋戦艦に搭載される予定だった主砲である。しかし当時ワシントン海軍軍縮条約により主砲を搭載する事ができなくなり、既に完成していた41cm主砲を破棄するものももったいないと言う事で、陸軍に沿岸砲として引き渡された。なお一~四号砲は次の通りである。


一号砲、戦艦土佐 2番砲塔、鎮海湾張子嶝砲台

二号砲、巡洋戦艦赤城 1番砲塔、壹岐黒崎砲台

三号砲、戦艦土佐  1番砲塔 、対馬豊砲台

四号砲、巡洋戦艦赤城 4番砲塔、設置されず


余談であるが、建造途中の加賀型は加賀を戦艦から正規空母に変更、2番艦の土佐は標的艦として使われた、そして天城型巡洋戦艦1番艦、天城も空母へ改装される予定だったが(雲龍型の天城とは何ら関係はない)、関東地震に襲われ大破してしまい解体処分となる、2番艦赤城はそのまま正規空母へ改装され、赤城型正規空母へ生まれ変わった。ちなみに、3番艦、4番艦に高雄、愛宕と巡洋戦艦として名を冠する予定だったが、条約締結後、翌年の1924年に両艦とも解体処分となり、名前のみ高雄型重巡洋艦に引き継がれるだけとなった


なお、この加賀型戦艦と天城型戦艦は、特徴として速力も速く、防御力も長門型をかなり上回る造りとなっていたため、もし就役していれば金剛型に次ぐ高速戦艦として名を馳せ、長門型より強い戦艦として後世に語り継がれていただろう(と、独自解釈でっす☆)】



zwanzig 一本の神の杖



天龍「敵との距離、約10キロ……こっちの有効射程はあと5キロか……」



天龍の独り言を置き去りにするかのように、敵が徐々に近づくにつれ、砲撃も徐々に激しくなってくる



天龍「あの2人……何も見つけられなかったか……?……そらそうか、元々ただの補給基地だし、敵に一度占領されてるんじゃあ何も残ってねぇよな……うお!?」



敵の至近弾がすぐ目と鼻の先で炸裂した、大きな水柱が上がり、天龍の周りが一時の雨天となる



天龍「……くそったれ!!あぁ、怖ぇ!!なんだって俺はこんな所で1人でいるんだ!大淀と夕張はどうした!大淀!!夕張!!俺はここだ!!」



壁を背にして身を守っても、大きな壁の向こうには大軍が目の前まで差し迫ってると言う事実、そして至近弾が引き金となり天龍は少しパニックになっていた



壁をすり抜けて入ってきた至近弾が多くなってきた



雨がやまない



天龍は屈む事しかできずロケットを発射する機会を完全に見失っている



そうこうしている内に敵との距離、残り5キロを切った



しかし、天龍はそれにも気づかず屈むだけ



 天龍「……くそがぁぁぁぁぁ!」



意を決し、身を壁から乗り出した瞬間



ドゴォォォォォォン



島を囲っている大きな壁が大量の砲弾を受けた事により、ついに崩壊してしまった



そして、身を乗り出したときに目の当たりにした敵との距離があまりにも近すぎて、天龍は愕然とした



近過ぎる……ただ、それしか思うことが出来なかった



そして海面に両ひざを着き、もう無理だと悟り、武装解除した天龍は雨ふる空を大きく仰いだ



視界の隅に、敵の主砲がこっちを向いてるのが見えた。



あの白い髪は確か……ル級……いや、タ級だったかな?前に龍田と一緒に勉強したんだけどなぁ……もうどちらでも……



天龍を目を閉じた






そして、天龍の耳に主砲の発射音が残り






大きな爆発音が聞こえた






聞こえたのである



聞こえた?



聞こえた!?



目を開けた天龍には今まさに沈まんとすタ級の姿が映っていた



何だ?何が起きている?



何故今目の前で敵が攻撃されている



タ級の周りにいた深海棲艦が動揺しているのははっきりと分かった



援軍が到着した?いや、早過ぎる。なら誰が?



そんな事を考えていると、また大きな発射音が聞こえた



次はタ級の隣を航行していたル級が大きな爆発を起こした



まただ



誰が撃っている



敵の周りを見渡したが誰もいない



次に後ろ、補給基地のある沿岸に視線を当てた瞬間、天龍の真横をかなり大きな砲弾が通り過ぎた



そして、背後から爆発音



目を当てた沿岸で大淀と夕張の2人が大砲を操作してるのが見えた



あの2人は何をしてるんだ?いや、それよりも何であんなものが



呆然としているとまた大砲から敵軍に向かって発射音が放たれる



そしてまた、爆発音



発射音、爆発音



発射音、爆発音



発射



爆発



発射



爆発



天龍にはただそこで何もせず、じっと大淀たちを見てるだけだった



そして一言、小さく呟いた



「神が……舞い降りた……」



天龍の目から流れるそれは雨などではなく、そして、再度放たれる砲弾の衝撃波で一緒にかき消された



einundzwanzig 戦果



結果として、パプア補給基地は奪還に成功した



突如として現れた41cm沿岸砲は深海棲艦の戦意を大きく削ぎ、数的に有利であるものの、敵としても補給基地として使っていた基地をむやみに攻撃する事など出来なかった、敵もパプア補給基地を大きく損害を与えずに取り返したかったらしく、時間をかけ躊躇している内に後方から川内率いる援軍、伊8と隼鷹による奇襲を含めた挟み撃ちにあってしまい、深海棲艦の大群は成す術も無くその場を離散する事となった



不知火「何ですかこれは……この基地にこんなものがあったなんて……」



夕張「私も驚いたわよ、ほんと、これがなかったら今頃どうなっていたか……」



天龍「……」



川内「……どうかしたの?」



天龍「別に」



舞風「川内さん、放っておきましょう。泣いてるんですよあれ」



川内「……あぁ……」



天龍「泣いてねぇよ!!」



舞風「聞こえてら」



川内「それじゃあ私は鎮守府に通信を送らなきゃだから、」



大淀「分かりました……さて、これから私達は?」



川内「あぁ、とりあえず数週間はここを死守しろって……あーあー、こちらRiver、応答を願います」



大淀「死守って……しかも数週間も……?」



                                             -鎮守府-



東郷「……分かった、食料は無事だな?指示どおり、数週間はその基地を死守しろ。以上だ」



東郷は川内からの報告を終え、無線機を戻した、机にもたれた状態で胸ポケットからタバコを取り出し一服しだした



長門「……無線室からコードを引っ張ってきたのか」



執務室のドアにもたれかかった長門



東郷「……奪還作戦は完了だ」



長門「皆は?」



東郷「無事だ」



長門「本当か?」



東郷「あぁ」



長門「なら私達も今すぐ向かわないと!」



東郷「ダメだ」



長門「何故だ!!」



東郷「今死守させている」



長門「だから何故だ!あいつ等だけ最前線に出して私達ははるか後方の安全圏でのうのうとしているのか!」



東郷「そうだ」



長門「……!貴様……!!」



弾丸のような言葉のキャッチボールに先に手が出たのは長門だった



しかし、大振り放たれる長門の右ストレートを軽い身のこなしで避けた東郷は、すれ違いに長門の額にタバコを押し当てた



長門「……あつ……ぁ!」



東郷「ここは誰が守るんだ」



長門「はぁはぁ……何!?……」



東郷「ここは誰が守るんだ、と聞いている」



長門「……」



東郷「お前しかいないだろう」



長門「……なら、何故数週間もあの基地を死守させる!わたしがいう言うのも何だが、あの娘たちだけで絶対に守りきれないぞ!目の前にシンガポール海峡があるし、そこにはレ級がいるし、そいつら艦隊がまたすぐに再奪還するに決まってる!戦力的にこっちが不利なのは目に見えてるだろう!」



東郷「手土産がある」



長門「何!?」



東郷「お前は気にせず、持ち場に戻れ。数ヶ月の間は残っている吹雪、明石、香取の4人で鎮守府近海警備に当たれ。安全とはいえ、用心に越した事はない」



長門「……くそ!!」



タバコの熱さに蹲っていた長門は地面を思い切り殴りつけるようにし、執務室を後にした。そして、東郷は今度は無線機ではなく、引き出しからケータイを取り出し、とある電話をかけた



東郷「……俺だ、話しは付いているか……?……あぁ、そうだ、あれはアメリカにあるはずだ……俺からの指示だと伝えろ……なら、シーレーン奪還の話しは無しだ……そうだ……それは好きにしていい、いないよりはマシだ……期間は……2週間だ」



どこの誰かに電話を終えると、長門の額に押しつぶして消えてしまったタバコの火をもう1度着け、次こそはゆっくりと一服に入った



zweiundzwanzig 帰還命令



奪還作戦完了から4日目、東郷は毎日大本営から送られてくる日報に目を通していた



東郷「……うん?」



何枚かの文書の中に気になる知らせが目に付いた



『大本営より

昨日〇〇時頃、△△中将が自宅にて自殺により死亡しているのが発見された。

解剖の結果、死因は窒息死によるだと海軍捜査局は断定……』



東郷「……」



あの時、自分に依頼をした時に合った大将と一緒にいた男だった



東郷はすぐにケータイを取り出し、自身だけが持っている直通電話をかける



東郷「……俺だ」



大将『これは……どうかしましたかな?』



東郷「今日の日報だが、あんたと一緒に依頼をした中将が死んだそうだな」



大将『あぁ……そのことですか……実に残念です……あいつがよもや自殺など……』



東郷「自殺ではない」



大将『え?』



東郷「自殺はあり得ない、あいつは殺された」



大将『な、何故他殺だと!?』



東郷「……」



                         ~回想 奪還作戦完了直後~



長門「……くそ!!」



東郷「……」



東郷「……俺だ、話しは付いているか……?」



中将『ゴルゴさん……51cm砲の件ですね……』



東郷「……あぁ、そうだ、あれはアメリカにあるはずだ……」



中将『それが、話しは何度かしているのですが、相手がアメリカだと流石に……』



東郷「俺からの指示だと伝えろ……」



中将『い、いや、しかし』



東郷「なら、シーレーン奪還の話しは無しだ……」



中将『わ、わかりました!何とかこぎつけます!……あ、あと、ついでの件なのですが、本当にアメリカの艦娘の応援は拒否されたとしてもいいのですか?』



東郷「そうだ……それは好きにしていい、いないよりはマシだ……期間は……2週間だ」



中将『2週間!?……あはぁ……わ、わかりました……なんとかします』



                                     ~回想終了~



東郷「……それはお前が知る必要はない、だが他殺だという事だけは確かだ、お前は俺に対して余計な事は詮索するな」



大将『わ、分かりました……』



東郷「それと、今からすぐに俺を本国に一時的に戻す手続きをしろ、理由は適当にな……」



大将『今すぐですか!?そ、それは構いませんが……』



東郷「頼んだ……」



プツッ



東郷「……」 



30分後、執務室に設置されているFAX機より本国からの指令書が届いた


『指令書 〇〇年〇〇月〇〇日

東郷提督 宛

貴官を、海軍規定書〇〇条乙種の定める規定の発令により、一時的に本国へ帰還を命じる。

即日、最短の便で帰還されたし

              発令者 日本国国務長官 並びに 日本海軍 大将 △△ △△ 』



東郷はそれを手に取らず、館内放送で長門を呼び出した



数分後、長門が執務室のドアをノックもせずに入ってきた



長門「何の用だ」



私はお前に数秒でも会いたくないんだ、と言わんばかりの態度で東郷に接する



東郷「俺は数日間、本国へ帰還を命じられた。FAXの上に指令書が来ている。その間、お前を秘書艦にするから提督代行を」



長門「帰ってくるな!!」



バタン!!



と容赦ない力で思い切りドアを閉めて長門は出て行った



東郷「……」



東郷はそれも気にせず、机の上を片付け、一日の行動を30分おきに指定したメモを書いた



すると、またドアからノックをした



東郷「……入れ」



吹雪「し、失礼します!」



ドア越しに元気な声で返事をしたのはこの鎮守府に残っている艦娘の1人の吹雪だった



東郷「……どうした」



吹雪「あ、あの、今執務室から長門さんがすごい剣幕で出来てたので何があったのかと思って……」



東郷「……なんてことはない……俺は今から数日間本国へ帰還を命じられたから長門に提督代行をお願いしただけだ……」



吹雪「え?今からですか……で、ですが、この鎮守府の主戦力を出払ったまま指揮をする提督が本丸を離れると言うのは……」



東郷「……」



東郷は少し動きを止めた後、執務室に引っ張ってきた無線機でパプア基地を死守している川内に無線をかけた



東郷「俺だ……俺は数日間、大本営の命令により鎮守府を離れる、その間は長門が提督代行だ、1日1度、夜9時には日報を口頭報告しろ、何時に何の艦種がどこに現れた等、事細かくにな、何かあれば長門を通じて報告しろ」



そういって、準備を全て済ました東郷はバッグを手に取った



東郷「さぁ俺はもう行く、この部屋に立ち入るのは自由だが、変なものには触るな、いいな?」



吹雪「は、はい!分かりました……あ、あとすいません、先日建造された58ちゃん……はまだ香取さんとの演習をさせていていいのですか?」



東郷「あぁ、それでいい」



そして2人は部屋を出て行った



【51cm砲の解説】

第二次大戦中、世界最大の大きさを誇る大和型1番艦、戦艦大和。2番艦、武蔵が存在した。その両艦に取り付けられた主砲46cm三連装砲はあまりにも強力で、発射直前、甲板には退避サイレンが鳴り響き、もし甲板にいると、発射の衝撃だけで圧死するほどだったという。

しかし、世界最強と謳われる大和であっても、この46cm三連装砲は世界最大の口径主砲ではなかった。

大和型には、実は後継艦が存在した。それは「改大和型戦艦」と「超大和型戦艦」の2種類である。


改大和は「大和型戦艦の装甲が「対46cm砲防御」として厚すぎると判断された結果、大和型の舷側410mm、甲板200mm(最大)に対しそれぞれ400mm、190mmと薄くなる一方、艦底の防御壁は大和型の二重から三重へと強化され艦首と艦尾の装甲も強化されている。(wikiより抜粋)」


超大和型は、大和型戦艦の強化発展型とされ、その主砲には51cm砲を搭載するというとんでもない計画だった


しかし、艦自体の計画は頓挫したものの、51cm砲自体は完成したとされていて、試製51cm砲がアメリカに接収されアメリカ本土に送られているが、その後の消息は不明となっている(アメリカ艦船に船積みされている写真が残されている(wikiより抜粋))


【余談】

「改大和」「超大和」って計画だけでもアホらしいのに、その前には「50万トン戦艦」なんて話しもあったらしいよ、頭おかしいよね☆



dreiundzwanzig 帰還命令2



大将「いやはや……何か大きなことが起きそうですな……」



横田飛行場に到着した東郷を迎えたのは大将自らだった



東郷「……」



航空機のタラップを降りた先で待っていたのは大将だった



大将「長旅ご苦労様です。指定されたホテルは予約しておきました」



東郷「分かった……迎えたくれたところ悪いが、ここからは俺1人で行く……」



大将「そ、そうですか……お気をつけて」



東郷は用意されていた車に乗り込むと、そのままアクセルを上げ走り去っていった



後ろから大将の部下が声をかけて来た



部下「上官、あの方はいったい……階級章は上官より下級のようですが……」



東郷「あの男については余計な詮索はするな、私も詳しい事は言えんし、詳しい事は知らんのだ。いいな」



部下「は、は!」



大将「ここにいる者全てに告ぐ、今見た男は絶対に他言するな。今見た事は全て忘れろ。お前達は何も見ていないし、何も聞いていない。いいな!」



部下「は!」



大将「……」



                                  ~とあるホテル~



ホテルに着いた東郷はフロントで鍵を貰うと、部屋には向かわず、地下のバーへと足を運んだ



東郷「……」



バーテンダー「お客様、お飲み物は?」



東郷「ジントニック……」



バーテンダー「かしこまりました」



バーテンダーが準備をしだすタイミングをある男が声をかけて来た



男「お久しぶりですね」



男はゴルゴの事を知っているのか、背後からではなく、横から声をかけてきた



バーテンダー「お飲み物は?」



男「いや、結構」



東郷「情報が欲しい」



男「何の情報でしょうか」



東郷「海軍の△△ △△という男を知っているか」



男「確か……数日前自殺したとかで 新聞にのってましたね」



東郷「死んだ経緯を調べて欲しい」



男「……他殺だと……?」



東郷「……」



男はそれだけ聞くと、指をこすり合わせるしぐさを見せた



すると、ゴルゴは内ポケットから札束の入った封筒をテーブルに置いた



東郷「期限は1日だ」



男「おまかせを」



それだけ聞くとゴルゴは荷物を手に取り、バーを後にした



バーテンダー「お待たせしました……あれ?」



男「あぁ、俺のだ」



男はバーテンダーからカクテルを貰い、一気に飲みほすとテーブルの封筒を内ポケットに仕舞った



                                    ~翌日、中佐宅~



東郷「……」



ゴルゴは死んだ中佐の自宅へ足を運んでいた



東郷「……」



ゴルゴはインターホンを鳴らした



……数秒待ってみたが出てこない



再度インターホンを押す



……やはり出てこないが、家の中から、カタン、カタンと音がする、かと思ったら今度はダン!ダン!と大きな音が響く、どちらにしろこれだけの音がするのでいるのは間違いない、そう思い、少し待っていると



「……プッ……どちら様でしょうか?」



女性の声が聞こえてきた



東郷「私、△△中佐の、同期の東郷と申します」



「あぁ、少々お待ちくださいませ……プッ……」



しばらくすると、玄関の扉が開き、中から割烹着姿の女性が現れた



中佐妻「これは……足を運んでいただき、ありがとうございます」



とても色白で、目が緑色の銀髪の女性だった



東郷「この度は、誠に御愁傷様でございます……葬儀は昨日執り行われたようで、参加できずに申し訳ありません。何分、外国で勤務しているものですから……」



中佐妻「とんでもございません、このように来て頂けただけでも夫は喜んでいると思います」



東郷「……線香をあげてもよろしいでしょうか?」



中佐妻「えぇ、どうぞ、お上がりください」



玄関に入り、靴を手で脇に置くと、東郷は仏壇のある和室へ案内された



家の中に上がると、魚を料理中だったのか、生の匂いが少しだけ鼻につく



中佐妻「どうぞ、こちらです……」



和室の壁の大きな仏壇には中佐の顔写真が置かれ、香炉にはまだ新しい線香が数本つけられていた



東郷「私の他に誰か……?」



中佐妻「あぁ、はい、先ほど友人だと言う方が来られて、海軍の方ではなかったですけど、なんでもフリーのジャーナリストとかなんとか……」



東郷「そうですか……」



多分あの情報屋だろう



東郷はそれだけ聞くと線香を手に取り、ろうそくで火をつけ香炉に立てると鈴を鳴らして合掌した



中佐妻「……」



東郷「……唐突で申し訳ありませんが、△△中佐の私室を見させていただけないでしょうか」



中佐妻「私室……ですか?」



東郷「はい、私が今回来たのは、線香を上げる事も兼ねて、△△中佐の仕事書類を回収するためなのです、もし、機密書類を自宅に保管していて、他に流れる事になる事はどうしても避けたいので」



中佐妻「……」



東郷「……」



中佐妻「……分かりました、こちらです」



東郷「ありがとうございます」



正座の状態で一礼し、そこから立つと中佐の私室へ案内された



中佐妻「こちらです」



東郷「……」



中佐妻が部屋の扉を開けると、部屋の中は綺麗に片付けられていた



中佐妻「本当はもう少しこの部屋をそのままにしておこうと思ったんですけど、でもいつまで経ってもそんなんじゃ気が滅入っちゃうかも、と思って、今日の朝、少し片付けたんです」



東郷「……」



中佐妻「あ、でも書類などには1つも触っていません。机は引き出しが鍵が掛かってるみたいで私にはどうしようもないのでまだそのままなんです」



机の上だけは、かなりの書類で溢れていた



東郷「分かりました……申し訳ありませんが、ご婦人は部屋を出ていただいてもよろしいでしょうか、機密書類が見られる事は避けたいので」



中佐妻「わ、わかりました」



東郷「御協力、感謝します」



そういうと中佐妻は一礼した後、部屋を出て行った



東郷「……」 



そしてゴルゴは、部屋を物色し始めた



vierundzwanzig 帰還命令3



ゴルゴは中佐の机から散らばっている書類全てに目を通したが、お目当ての物はなかった



書類の中にスマホも混じっていたが、ロックが掛かっていて中が見れない



次に鍵の掛かっている机の引き出しに手をかけ、ピッキングで鍵を開けた



一段目、二段目の引き出しを開けると、官品なのか私品なのか、拳銃が並べられて置かれていた、マニアなのか日本では普通では手に入らない拳銃まであり、拳銃毎の弾の箱も一緒に置かれている


ゴルゴはそれに目もくれず、三段目の引き出しをピッキングをしようとしたところ、三段目に鍵が付いてあらず、暗証番号でロックされているみたいだ



東郷「……」



ゴルゴは先ほどのスマホを手に取り、綺麗に吹いた後、表面のフィルムだけを取った。そしてそのフィルムを暗証番号のボタンに強く押し当てた



東郷「……」



フィルムにくっきりとついた指の油が規則的に並んでいた



ゴルゴはその規則的に並んだ油の場所を見ながら暗証番号を押した



ピー



ガチャン



東郷「……」



引き出しを開けると、中にはノートパソコンが入っていた



ノートパソコンを立ち上げると、再度暗証番号を求められたが、引き出しと同じ番号で開ける事ができた



東郷はノートパソコンの中からメールアプリを開くと、今回御目当ての物を見つけた



何十通と並ぶメールに、今朝、一番新しいメールを開いた



Mr △△ △△

Several days passed, why will not you reply?

(あれから数日経つが、何故返信してくれない?)

If you do not reply by this evening, I forget about this case as much as possible so please do not ask for such a request

(もし今日の夕方までに返信してくれないのなら、今回の件はさっぱり忘れるから、もうこんな頼みはよしてくれ)



ゴルゴはいままでのやりとりのメールを見ながら、返信した



Mr △△ △△

Sorry for the late reply

(返信が遅れてすまない)

There are people who want to match by all means in this matter. You still are in Japan?

(この件の事で、どうしても合わせたい人がいるんだ。まだ日本にいるんだったな?)

Can we meet this evening?

(今日の夜、会えないか?)



そう返信を打つと、数秒後、ゴルゴに返信が帰ってきた



Mr △△

ok

(分かった)

Waiting on Hotel New Otani's Bar

(ニューオータニのバーで待っている)



その文面を見てゴルゴはノートパソコンを引き出しの中に戻した



東郷「……」



ゴルゴは自身のケータイを取り出し、情報屋の男に電話をかけ、今日の夜ホテルで会う事を伝えると、部屋を出た



中佐妻「あの……」



部屋を出ると、中佐の妻が部屋の前で待っていたのか、お茶を持ってきてくれていた



中佐妻「……どうぞ」



東郷「……」



東郷は少し止まった後、コップをつかみお茶の一気に飲んだ



東郷「……ありがとう、部屋には機密書類なるものはできませんでしたので、あとはお好きになさって大丈夫です」



中佐妻「そうですか……」



東郷「……それでは私はこれで……」



ゴルゴは中佐宅をあとにした



                               ~数時間後、ニューオータニ~

(英語で話してるものだと思ってください)


夜、ゴルゴはバーに行くと、カウンターに1人の外国の男が飲んでいた



外国の男「……」



東郷「……」



ゴルゴは少し斜め後ろからその男を見つめてる、すると男がこちらに気づいた



外国の男「……何見ている?」



東郷「……△△だな?」



外国の男「何故俺の名前を知っている」



東郷「△△ならこない……お前を呼んだのは俺だ……」



外国の男「!……あのメール……お前が打ったのか、△△がこないとはどういう事だ」



東郷「死んだ……自殺した……らしい」



外国の男「何!……やはり死んだか……」



東郷「お前に会わせたいと言った男だが」



外国の男「……知ってるぜ、ゴルゴ13ってやつだろ?恐らく……あんただな?」



東郷「……」



外国の男「俺はあんたがどう言う男か知らない、死んだあいつが言うには余計な詮索はしない方がいいと言ってたからな、あいつが言う位なんだ、あんたがどういう男か知らんよ、知っているのは、日本を含め、各国で極秘となっている艦娘達の提督であると言う事」



東郷「……」



外国の男「……あいつからいきなりメールが来たのはびっくりしたよ……久しぶりだと言うのに、いきなり俺のコネを使って51cm砲を貸してくれないか、なんていいだすんだから」



東郷「……」



外国の男「もちろん断った、確かに俺はアメリカの膝元で働いてるが、流石にそんなことが出来る権限なんてないからな」



東郷「……ムダ骨だったようだな……」



外国の男「……だが、いいぜ。貸してやる、というか、あの男から『ゴルゴ13から俺の名前を使えと言われた』なんて言われた時は気が狂ったかと思ったが、この事を上層部に話したら一発でOKだったよ。上司がすっげぇ血相変えて望んでいるものがあるなら協力してやれだってさ」



東郷「……」



外国の男「まぁ、このこともあって、俺はあんたが何かすごい奴なんだと知って、余計に詮索しないことにした……実はもう手配はしてある。あとは電話一本でアメリカ本土からあんたが指揮している艦隊がいる基地に向かって出航する」



東郷「……」



外国の男「……ついでに……あいつから言われたお土産も手配済みだ」



東郷「……ありがとう」



外国の男は自身のショットグラスを一気に飲みほすと、カウンターにお金を置いて携帯を取り出し、振る仕草をしながら帰っていった



東郷「……」



入り口の扉を開いて出て行く外国の男とすれ違うように、今度は情報屋の男が入ってきた



男「……どうも、こんばんは」



東郷「……」



男「いろいろ仕入れてきましたよ~、まずあなたが一番聞きたいであろう死んだ経緯についてですが」



東郷「……」



男「あなたの言う通り、自殺の線は薄いみたいですね。死んだ前日、友人と共に居酒屋で楽しそうに食事をしていたところも、その友人から証言がとれました」



男「そして、職場の上司や部下との関係はかなり良好……流石海軍No3と言われてただけはあります。掌握術に長けてたのでしょう」



男「それで、ここからなんですがね。どうも1つだけ気になる事がありましてね」



東郷「……」



男「海軍の友人に聞き込みをしていたんですが、みんな口を揃えてこういうんです。『それにしても中佐の妻、かなり美人だよな』って」



男「普通に聞けばなんて事ないんですが、私はどうもこの奥さん気になって」



東郷「……」



男「その時、友人の方からコピーですが、中佐宅での飲み会の時に一緒に写した写真を貰いました」



男「ほら、これです。ここ、中佐の後ろに映ってる女性」



ゴルゴは男から写真を渡され、凝視した



男「それで今日の昼頃、中佐宅へお邪魔したんです。」



男「ただ、残念な事に、自分が訪問したときは留守だったみたいで、代わりに別の人が応対してくれました。なんか従姉妹とかなんとかで」



男「仕方がないので、その女性に中佐の妻について聞く事にしたんですが」



マシンガンのように喋る情報屋をシャットアウトするようにゴルゴが口を挟む



東郷「もういい」



男「え?……もういいんですか?」



東郷「あぁ……十分過ぎる位だ……」



ゴルゴはそういうと、内ポケットから札束をとりだし、男に渡し、バーを後にした



男「え、いいんですか!?……ラッキー、ボーナスって奴?って、おっとっと、写真が……」



男は落ちた写真を拾い上げた



男「今日はこの写真を肴に飲むかぁ……へへ、それにしても、本当に美人だよなぁ、いわゆる大和撫子ってやつ?



『髪 の 毛 も 瞳 の 色 も 真 っ 黒 で さ ぁ 』」



fünfundzwanzig 帰還命令 終



ゴルゴはその日の夜、バーを後にして住宅街を1人歩いていた



東郷「……」



ゴルゴが情報屋の男から写真を見たときから、疑問が全て解け、その答え合わせをするために



東郷(あの時……家を訪れたとき……)



『家の中から、カタン、カタンと音がする、かと思ったら今度はダン!ダン!と大きな音が響く』



東郷(カタンという音は指……ダン!という音は腕か足……)



『しばらくすると、玄関の扉が開き、中から割烹着姿の女性が現れた』



東郷(あの姿は……料理ではなく……死体の後処理……)



『家の中に上がると、魚を料理中だったのか、生の匂いが少しだけ鼻につく』



東郷(あの匂いは魚ではなく、死んだ人間の腐敗臭……)



東郷(俺は家の中に居ながらにして、すぐそこでは死んだ中佐の妻が解体されていた……)



東郷(……ギルティ……!)



東郷は中佐宅へ着いた



ゴルゴはジャケットからリボルバーとサイレンサーを取り出し、装着して中佐宅の裏口へと回った



東郷(……明かりがついていない……いや、ほのかに明かりが見える……)



中佐宅は周りの住宅よりは一層に明かりが乏しく、人の気配がまるでないようだった



裏口の扉を開け、中を確認すると台所に繋がってるようだったが、開けた瞬間、昼に訪れたよりは確かな腐敗臭が漂った



音を上げずに慎重に中に入り、ゆっくりと警戒しながら仏壇がある居間へと進むと、いきなり大きな声が響いた



???「くそっ!」



ゴルゴは拳銃を声のした方向へ向けると、そこは中佐の部屋があり、扉がかすかに開いていた。そこから光が漏れているようだ



東郷「……」



ゴルゴはゆっくりとその部屋に近づき、扉の蝶番の隙間から部屋を覗くと、そこには昼間の女性が部屋を物色していた、しかし、昼間ほどの清楚はなく、荒々しかった



中佐妻?「くそ……分かりやしない……ここの引き出しにあるはずだ……昼間のあの男もここの番号を……」



東郷「動くな」



中佐妻?「!?」



ゴルゴの声に反応し、引き出しに下げていた目線をゴルゴへと向ける



中佐妻?「……あら、あなたは……いや、こんな喋り方ももういいか……どうせ聞こえてたんでしょう?」



東郷「……お前が中佐を殺した犯人だな?そして中佐の」



中佐妻?「妻を殺したのも私よ、御名答……」



東郷「……」



中佐妻、もとい、女は中腰の体勢から立ち上がった



中佐妻?「よく分かったわね?どうして私が犯人だって?」



東郷「……今日の昼、俺がこの家に来る前に、ジャーナリストが来たと言ったな……」



中佐妻?「んー……なるほど、仲間か」



東郷「……何をしていた」



中佐妻?「……あなた……殺したの中佐の機密、手に入れたんでしょ?」



東郷「……」



中佐妻?「それ、私も必要なのよねー……教えてよ、どんなものだったのか……そしたら、特別に生かしてあげるわ」



東郷「無理だな……」



中佐妻?「やめときなって……どうあがいたって、私には勝てないよ……貴様等人間にはさ!!」



女は机を手をかけた



その刹那、ゴルゴは女に対して眉間に銃弾を1発撃ちぬいた



中佐妻?「……無理だって!」



女の目が緑色から赤くなり、炎のように揺らめいている。そしてそのまま机を扉の前に立っているゴルゴへと投げた



東郷(!……この特徴は……!)



横へジャンプし、机を避けたゴルゴに、そのまま女がゴルゴへと向かってきた



中佐妻?「拳銃なんて痛くもないんだよ!」



東郷「……くっ!」



『大将「プロの格闘家が素手で戦ってもまず勝ち目はありません」』



東郷「……!」



ゴルゴは銃弾を2発発砲した



中佐妻?「が?!」



発砲した弾は2発とも女の両眼に直撃し、女はひるんだ



その隙に、ゴルゴは女を思い切り前蹴りで蹴り飛ばし、間合いを大きく開いた



中佐妻?「っく……」



東郷「貴様……深海棲艦だな……?」



中佐妻?「……っはっはっはっはっはっは!!あんたさすがだねぇ!たかが人間が私を蹴飛ばしてしかも正体まで見破るなんて」



女は妻としての服を思い切り破り捨て、その下の本来の姿を露わにした



タ級「私は戦艦タ級……まぁ、この呼び名もあんたら人間共の呼称だけど」



タ級「だけど……あんたただの人間じゃないね?特別な人間だ……しかも海軍の人間じゃない……」



東郷「……」



タ級「私は長い事スパイとして入り込んでいたからねぇ、大体の重鎮なら顔は知っている。……だけど」



タ級「あんた雇われか何かだろう?」



東郷「……」



タ級「まぁ、いいさ、あんたなんかじゃ私に勝てないけど、今回は引くとするよ。陸上での身の動きだけは勝てそうにないし、それにあんたに正体がバレてたんじゃ、そろそろスパイも潮時だね」



タ級「機密を盗み出せなかったのは痛いけど……あんたのことはしっかりと仲間内に伝えといてやるよ!」



そしてタ級はそのまま部屋の窓から飛び出し、外へと逃げ出した



タ級「またあんたとは何処かで会うだろうねぇ!」



そう言い残し、タ級はそのまま闇夜へと消え去った……



東郷「……」



東郷「戦艦タ級……」



遠くからサイレン音が聞こえ、ゴルゴはそのまま中佐宅を後にした



                                      ~後日~



ゴルゴはその後、大将経由で大本営に中佐の死の真相、そして中佐妻の解体、全てを伝え、自身は鎮守府へとまた戻った



大将『まさか深海棲艦、しかも戦艦タ級が我が大本営にスパイとして入り込んでいたなんて……』



大将『これから、海軍に入り込んだスパイがまだいないかの掃除が始まるだろう……中佐も本当に他殺とは……しかもその未亡人も……』



大将『君がいきなり本土に戻してくれなんて言い出したときはびっくりしたが、まさか中佐経由でアメリカに要請を出していたなんてね』



東郷『……保険は数が多いほどいい……あんた1人に全てを任せて、あの戦艦タ級にやられれば、全てが台無しだからな……』



大将『……そうだな……これで、君の素性を知る者は私1人だけとなった……私もより用心せねばならんようだ……』



大将『……それじゃあまたなにかあったら連絡をしてほしい、最大限の支援はする』



東郷はタラップを上がり、航空機に乗って、本土を後にした



あの事件のあと、大本営が大騒ぎとなり、スパイのあぶり出しが始まったという



今の所、まだみつかっていないようだが……



東郷「……」



長門「……本土は大変な事になっているようだな……」



吹雪「本当ですね、まさか深海棲艦が本土上陸を果たしていたなんて……」



東郷「……本土の事は今となっては大本営の連中に任せるだけだ……」



東郷「……それより全員集まったな」



長門「あぁ」



吹雪「はい」



明石「はい」



香取「準備は完了です」 



伊58「いつでもいけるでち」



東郷「……準備は全て整った、長門、吹雪、明石、香取、伊58、これより総員、パプア基地へ出航する」



sechsundzwanzig 進軍撤退戦



吹雪「……あの、提督」



パプア基地へ向け航行中、無線を通じて吹雪が東郷に話しかける



東郷「……」



吹雪「本当にそんな小さなプレジャーボートで良かったのですか?上層部に言えば、水上機ぐらい手配していただけたのでは……パプア基地まで結構ありますし」



東郷「……構わん……パプア周辺には滑走路がない事は調査済みだが、依然として制空権がどうなっているかは不明だ、それに人間より力があるお前たちでも、まさか人間をおんぶしながら航行するわけにはいくまい……」



吹雪「そ、そうですか……」



長門「頼まれてもやらんけどな」



長門が無線に割り込んできた



明石「だいじょうぶですよ~、そのプレジャーボートは私が少し改造をして、エンジンは通常の3倍の性能ですから!航続距離も燃費も馬力も!そんでもって重量は据え置きですから、パプア基地ぐらいまでなら無補給でいけますよ、あ、一応念のために防衛火器も積んでおきました、12.7mmのGAU-19です。まぁ気休め程度ですけどそれぐらいなら単身でも扱えるかと思って海上保安庁から横流ししてもらいました、ただし、海保の物とはちがって遠隔操作ではなくて人力操作なので扱いは注意してくださいね」



明石も割り込んできた



【GAU-19は、アメリカ空軍のA-10に搭載されているGAU-8(アヴェンジャー)を開発した事で有名なゼネラル・エレクトリックの装備であり、日本では唯一、海上保安庁所属のかがゆき型巡視艇に搭載されている、ちなみに「日本海軍がいる世界線なのに海上保安庁があるのか……」なんて思ってはいけない(戒め)、アメリカにも海軍はあるのに沿岸警備隊があるだルルルォン!?】



香取「それなら私が手ほどきしましょうか?私は練習艦ですから、なんて、ふふ」



そうして話していると、水中の58から無線が飛んできた



伊58「提督、58だけどちょっといい?」



提督「……どうした?」



伊58「さっきから皆のスクリュー以外に、僅かだけど多数のスクリュー音が聞こえるでち」



提督「……総員、レーダーはどうなってる」



長門「こちら長門……レーダーには感なし」



香取「私も感ありません」



吹雪「こちら、吹雪も感はありません」



明石「わたしもです」



東郷も自身もプレジャーボートのレーダーを見るが、やはり何も映っていない



東郷「……総員航行を停止、スクリューを停めろ」



そういうと全員その場に停止し、風の音だけが聞こえるようになった



東郷「58、今はどうだ」



伊58「ええと……うん、やっぱり聞こえる、数は……細かくは分からないけど少なくとも10以上……あれ、音がどんどん大きくなってる……方角は……180度、真後ろでち!」



その無線で全員は真後ろを振り向くと、およそ数キロ先に大量の禍々しい形をした物体がこちらに急速に近づいている



東郷「総員、最大戦速!輪形陣で長門を中心!」



長門「な!何をっ!」



異を唱えようとした長門を無視し、東郷は喋る



東郷「香取は左、明石は右、吹雪は俺と一緒に長門の後方を重点的に守る、58は絶対に上がってくるな」



吹雪「は、はい!」



香取「わかりました!」



長門「待て!前ががら空きだ!こんなのは輪形とは呼ばん、どちらかというと鶴翼だ!そもそも敵はなんだ!輪形を指示すると言う事は敵機隊か!?未だレーダーに映らんぞ!」



東郷「敵はPT小鬼だ」



長門「何?PT小鬼?」



東郷「総員、使用する火器は対空機銃並びに対空砲だけだ、主砲は決して使うな、戦闘準備!」



明石「え!」



吹雪「主砲を使っちゃいけないって……」



長門「貴様!さっきからなんだその命令は!」



そうこうしてういるうちに、敵のPT小鬼は眼前まで迫っていた、東郷も船をオートクールズに切り替え、明石が取り付けてくれていたGAU-19を構えると、PT小鬼の1隻が機銃を撃ってきた



東郷「撃て!」



その合図で、艦娘、深海棲艦は一斉に対空砲、対空機銃を撃ちはじめた



一方は敵を追う追撃戦、一方はパプア基地へ向かう撤退戦となった



吹雪「う、動きが速いです!」



香取「的が小さくて全然当たりません、もう少し近づかないと……」



と言っている傍らで、東郷は1人で既に数隻を沈めていた



東郷「あいつらは動きが速いだけで、防御力はまったく無い。2.3発でも当たれば簡単に沈む、良く狙え」



香取「そうはいっても……」



明石「提督のそれは発射レートは速いから……」



話してる間も東郷は次々と小鬼を沈めていく、すると追跡する小鬼群は大回りしながら左右から攻めてきた



東郷「吹雪、明石と共に右を守れ」



吹雪「はい!」



東郷「左は俺がやる、香取も右に行け!」



香取「わ、わかりました!」



長門を中心に、右舷は吹雪、香取、明石、左舷に東郷1人だけの陣形



長門「なんだこれは……メチャクチャじゃないか……」



長門は歯軋りをして無線で怒鳴った



長門「おい貴様!!なんだこれは!メチャクチャにも程がある!」



東郷「お前は敵が近づいてこないかどうかを気にしてるだけでいい、あいつらは防御力こそは無いが魚雷を2本持っている。速度を生かして玉砕覚悟で突っ込んできたら、いくらお前でも魚雷2本を撃ち込まれればただではすまない、今ここでお前を失うわけにはいかないんだ、お前はこの艦隊の最主力艦だからな」



長門「……」



そういうと、長門は眼を伏せ黙り込んでしまった



吹雪「提督!敵の動きが!」



吹雪たちもそれなりの数を仕留めたが、残数5隻になった左右の全PT小鬼は速度を上げはじめ、東郷艦隊の前方の航行しながら単横陣の陣形を取り始めた、追撃戦と撤退戦は入れ替わったかのような



東郷「総員、長門の前と左右につけ」



明石「なーんか企んでるかのようですね……」



すると、前方の小鬼群から黒い煙が溢れだした



吹雪「な!」



香取「黒煙が……!故障でしょうか……」



東郷(いや……煙幕!)



東郷「全員そのまま微速前進!いつでも全速に出来る用意を」



明石「きゃ、これ、煙幕ですよ!!」



東郷たちは瞬く間に煙幕に飲み込まれてしまった



吹雪「まずいです……敵が全く見えません……」



香取「この状況、もしいきなり奇襲でもされたら……」



東郷「見えないのは敵も同じだ……無暗に煙幕を抜け出したところで奇襲される可能性の方が高い……煙幕を抜けた瞬間に用心しろ……」



明石「し、しかし……いつ抜けるか分からないんじゃ……」



東郷「いや、こっちからは敵の居場所がわかるはずだ……」



明石「え、そんな、どうやって」



東郷「ソナーを使えばいい……敵にこっちの潜水艦の存在は分からないはずだ」



吹雪、香取、明石は三人ではっとした顔で見合わせる



東郷「58、聞こえるか?」



伊58「聞こえるでち」



東郷「水上は煙幕は張られていて敵の姿が見えない、大体で良い、敵のいる方向はわかるか……?」



長門「……気にしているだけでいいだと……?」



吹雪「……長門さん、何か言いましたか?」



伊58「ええと……ほぼ前方、そこ以外にはなにもいないでち」



長門「魚雷2本を撃ち込まれればただですまないだ……?」



明石「え、長門さん?」



伊58「でも距離までは分からないでち」



東郷「分かった、総員、そのまま前方に銃砲を向けろ、煙幕を抜け次第、全速にして」



いきなり、東郷が指示している途中で長門が言葉を遮った



長門「失うわけにはいかないからだと!」



香取「ちょ、長門さん?何を」



明石「長門さん!勝手に1人で先に進んじゃダメですよ!」



東郷「長門、やめろ」



ここで伊58から無線がはいる



伊58「まずいでち!敵のスクリュー音がいきなり大きくなったでち!方向は変わって無いから、突っ込んできてるでち!」



長門は皆の前に立ち、1人で怒声を上げながら主砲を構えた



吹雪「長門さん!主砲はダメだって……」



長門「やかましい!!私を誰だと思ってる!!」



吹雪「ひ!」



長門「魚雷がなんだ!!1本や2本で沈むとでも思っているのか!!」



東郷「……」



長門「私は長門だぞ!……私は大日本帝国海軍の長門!!戦艦長門だ!!!」



怒声と共に、長門は煙幕で視界が見えないにも関わらず、41cm砲を前方へ向け一斉射した



吹雪「きゃ!!」



明石「うわ!」



香取「きゃ!!」



東郷「……」



41cmの砲弾が放たれた瞬間、発射の風圧で東郷たちを覆っていた煙幕は綺麗に吹きとび、砲弾は眼前にまで迫ったPT小鬼群全てに直撃、PT小鬼群は跡形も無く消え去った



長門「……!」



長門は振りむき、怒った顔を東郷に見せつけた、これが私だ、と言わんばかりに、提督に対する不満を全てPT小鬼群にぶつけてやったぞ、と言わんばかりに



東郷は、発射の風圧で大きく揺れる船の上で静かに一言だけ



東郷「……よくやった」



siebenundzwanzig 海外艦



東郷「……」



長門「……」



PT小鬼群の襲撃から小一時間、パプア基地へ向かう東郷たちは気まずい空気に包まれていた



吹雪「……き、気まずいですね」



明石「……PT小鬼群はほとんど無傷で殲滅できたから良かったけど、さすがにこの空気は……」



香取「……何か話してみては……」



吹雪「えぇ……あ、じゃ、じゃあ提督!お聞きしたい事が!」



その空気をやぶったのは吹雪だった、無線越しに東郷に語りかける



東郷「……なんだ?」



吹雪「さ、先ほどのPT小鬼群は殲滅できたからよかったですけど、何故あの深海棲艦はレーダーに映らなかったのでしょうか……?あれだけの数がいたにもかかわらず、1隻もレーダーに映らないというのは……」



東郷「……お前達は……艦娘は、過去の船の魂を埋め込まれた存在らしいな……」



吹雪「は、はい」



東郷「もしそれが深海棲艦にも当てはまるとしたら、PT小鬼群は正体は、過去にアメリカが開発したPTボートだ……」



長門「……」



香取「PTボート……ですか、それはどういった船なのですか?そもそもボートと言うと大きさ的にそんなに大きくないような……あのPT小鬼群も小さかったですし」



東郷「PTボートは船体が木製で作られている、レーダーに映らなかったのはそのせいだろう……そしてPTボートの最大の特徴はその速度と魚雷だろうな……最大で40ノット以上出す事ができて、魚雷を2本抱える事が出来る……」



長門「まて」



話が続いて空気が穏やかになったところで、長門のその一言でまたその場の空気が一気に凍った



長門「いくらなんでもその速度はあり得ないだろう、魚雷一本でも少なくとも1トン以上はあるんだ、それを2本ともなるとかなりの重さだ、普通の船舶で載せるようなエンジンではいくらなんでも馬力は足りないだろう」



東郷「……PTボートには普通の船舶用エンジンでは無く、航空機用のエンジンが備え付けられた……4基取りつけたものも合ったらしいが、ほとんどのPTボートが3基のエンジンで約3500馬力だったらしい」



明石「3500馬力!?……流石アメリカ様々……」



長門「……」



吹雪「……そ、それじゃあ、またあのPT小鬼群に出くわしたら、用心しなきゃいけませんね」



香取「そ、そうですね!」



明石「……」



また静まり返ってしまった



吹雪「……あ、レーダーに感です!」 



吹雪がいきなり叫びだすと、その場の皆が一気に警戒になった



東郷もレーダーを見ると、2つの点滅が見れた



東郷「総員、警戒しろ」



東郷がそういうと皆は各々に反応するレーダーの方向を見た



確かに何かが見えた、皆は艤装を構え戦闘態勢に入ろうとした



が、その瞬間、皆の無線に声が入った



隼鷹「……ピー……もしもーし、こちらパプア基地所属、隼鷹、そっちは誰か無線返せるのいないの?」



不知火「……隼鷹さん……少しちゃんとした交信をしたほうが……」



吹雪「……あ、隼鷹さん!それに不知火さん!」



レーダーに映っていたのは、周辺を警戒に当たっていた隼鷹と不知火だった



東郷「……こちらは東郷だ」



隼鷹「うぇ?吹雪……と提督?提督も一緒に航行しているの?」



不知火「……あぁ……そういえば、数時間前にパプア基地に向けて出航の知らせが入ってましたね」



東郷「隼鷹と不知火だけか……?」



不知火「はい、この時間帯は交代で哨戒しています」



東郷「わかった……これよりこちらの艦隊に加わり、パプア基地まで護衛してくれ」



隼鷹「かしこまりました!」



不知火「了解です」



それからして、数分後、不知火と隼鷹が東郷率いる艦隊に加わった



隼鷹「……うぇ?提督ボートで来たの?言ってくれればこっちから戦闘機をだして護衛でもしたのに」



東郷「……」



吹雪「制空権が分からない以上水上機でくる事も無いと言う事で……」



不知火「そうですか……それではパプア基地へ向かいましょう、ここらへんまでくるともうすぐそこです」



東郷「……わかった」



その後、一行は何事も無くパプア基地に到着した



                     -パプア基地 係留場-



大淀「提督、長旅お疲れ様です」



東郷「あぁ……早速で悪いが、執務室に案内してくれ」



大淀「はい、こちらです」



すると、いきなり大きな声が響いた



天龍「提督!今ついたのか!」



大きい声を出しながら天龍が近づいてくる



天龍「久しぶりじゃねーか!見ろよここ!こんなでっかい壁を作ってたんだぜあいつらよ!」



港湾の壊れた壁を指を指しながら提督に喋りかけてくる



提督「……すまないが疲れてる、後でもいいか」



天龍「んぁ?あぁそうか、じゃあ後からだ」



東郷は大淀と共にその場を後にした



天龍「……ん?なんだ?提督もしかしてボートで来たのか?」



不知火「そうみたいですよ……私達艦娘に護衛とは言え、自身はボートでくるとは……かなり肝が座っている方ですね」



天龍「ほんとうにな、普段まったく表情も変えずに喋るしなぁ、何を考えてるのかも全くわかんないし……」



長門「それがあいつなのだろう、あいつの考えなんて分かろうとも思わんがな」



長門が話しに入ってきた



不知火「長門さん……なんだか提督との間に確執があるように思えますが……」



長門「……あぁ、あるだろうな」



不知火「……長門さん、今私達はパプア基地まで押し返してきました、それはあの東郷提督だからこそだと私は思っていたます。あの壊滅的な艦隊だったにも関わらずです……長門さん……もし、提督との間に何があると言うのであれば、それは取り除いておくべきです。今後の作戦にも関わることで……」



長門は不知火が喋ってる最中に胸倉を思い切りつかんで引き寄せた



不知火「……!」



天龍「お、おいおい、長門さんなにやってるんだよ”!やめろって!」



眼前に引き寄せた不知火を見て長門は、大きな一息をついて不知火を離した



長門「……分かってる……すまない、お前に当たるべきではないのに……」



不知火「けふ……いえ、私は平気です……一応それだけは頭の片隅に置いといてください……」



長門「……あぁ……」



長門はその場を後にして歩いていった



天龍「……なんだかかなーり、複雑な事がありそうだな」



不知火「そうですね……」



天龍「ま、そんなの俺たちには関係ないってこった、今自分等に出来る事だけをやって、さっさとシーレーンを奪還するこったな」



不知火「はい」



すると2人で喋っている最中に、どこからか声が聞こえてきた



???「あのう……」



天龍「……んぁ?不知火何かいったか?」



不知火「いえ、私は何も」



なんだ?気のせいか?



???「あの、すいません」



天龍「あ?どこからだ?」



不知火「……ん?……あ、天龍さん」



天龍「どうした?」



周りを見渡している天龍の腕を引っ張り、係留場の下を見てみるとそこには見知らぬ艦娘が浮いていた



???「あの、どうも」



天龍「……?……あー……どちらさまでしょうか?」



不知火「あなた艦娘のように見えますが、所属はどちらですか?」



サラトガ「私、アメリカ合衆国の命令で今日付けでここに配属される事になった、レキシントン級2番艦のサラトガと言いますが、事前の通達はされていませんか……?」



天龍「……」



不知火「……」



天龍・不知火「は!!??」



2人は走って執務室へと向かった



achtundzwanzig 28 復旧



2人は執務室のドアを勢い良く開けた



大淀「きゃ!……2人ともノックぐらいは……」



2人は大淀の言葉を遮るように話す



天龍「おい提督!アメリカの艦娘が来てんぞ!!」



不知火「レキシントンです!アメリカのレキシントンが来てます!!」



大淀「はぁ……?」



提督「……いいタイミングだな……」



長くは使われていないであろう埃被った椅子に座っていた提督は、タバコに火をつけた



大淀「あの、提督……?」



東郷「俺がアメリカに応援を要請した……日本の他の鎮守府はどこもカツカツ、人員を割く暇は無いはずだからな……」



不知火「アメリカに要請って……一体何を……」



東郷は煙をふかして何も喋らない



すると執務室のドアから声から聞こえた



サラトガ「あの……こちらが提督の部屋でいいでしょうか……?」



天龍「あ、きた!」



不知火「この人がレキシントンさんです!」



大淀「……この方が?」



サラトガ「あ、いえ、私はレキシントン級2番艦のサラトガです……ってさっきも同じことを言ったのですけれども……」



東郷は椅子に座ったまま視線をサラトガに向け、タバコを手に話しだした



東郷「……サラトガ……か、長旅ご苦労だった……俺がここの提督をしている東郷だ……」



サラトガ「はい、提督、サラとお呼びくださいね。よろしくお願い致します」



東郷「ところで本命は持ってきたか……?」



サラトガ「はい!いわれた物もちゃんと輸送してきました。今は沖に停泊してあります」



東郷「……分かった……大淀、ここのドックはどうなっている?」



大淀「え?あ、はい、ここの基地は私達が奪還するためにロケット弾を使用したため、稼働率は半年前に比べ、約50パーセントほどになっています。ドックも損傷しており、大型船は5隻ほどなら停める事ができますが……」



東郷「よし……停泊している輸送艦をドックに受け入れろ、あるものを降ろしたら帰していい……」



大淀「え……はぁ……分かりました、それじゃあ手配するので、一旦失礼します」



大淀はそう言うと執務室を後にした



そこでやっと天龍達が話しだした



天龍「おいおいおい、ちょっと待ってくれよ、何がなんだかわかんねーよ!」



不知火「そうです、あるものをなんだとかかんとか……こうしていきなりアメリカの艦娘もやってきて……説明を求めます」



東郷「……さっき話した通りだ……アメリカに要請して応援に来てもらった……あるものに関しては……自分達で見てこい……」



東郷はそういうとまたタバコを吸い始めた



天龍「……まぁ、いいや、不知火、ちょっとドックに行こう」



不知火「え、は、はい……失礼します」



2人は執務室を後にした



東郷「……」



サラトガ「……」



部屋には2人だけになり、お互い何も喋らないまま、乾いた空気だけが部屋に充満している



サラトガ「……」



東郷「……しばらくは……」



サラトガ「は、はい!」



先に空気を割ったのは東郷だった



東郷「アメリカに比べると居心地は悪いかもしれんが、しばらくはガマンしてくれ……」



サラトガ「あ、いえ、そのことなら大丈夫です、パプア基地の事なら事前に聞いていました、ひどい状況だと。なのでもう1つお土産を持ってきました」



東郷「……?」



                          -パプア基地 ドック-



大淀「……はい、1番ドックは入れませんので3番に入ってください……はい、それでは」



大淀は無線で輸送艦とやりとりしていた



明石「何事!?」



大淀「あぁ明石……なんだかアメリカからの応援らしくて」



明石「え?なんでアメリカから?」



大淀「提督の口利きらしいです、何をしたのかは分かりませんけど」



後ろから天龍と不知火が追いついてきた



天龍「おーっす、気になったから見に来たぞー」



不知火「あれがアメリカからの輸送艦ですか……なんだがとても大きいですね」



皆の視線の先では、ちょうど輸送艦が港湾に入ってきた



不知火「……天龍さん」



天龍「ん、なんだ?」



不知火「提督って一体何者なんでしょうか……?」



天龍「何者って……さぁな……大淀ならなんか知ってるんじゃないか?秘書なんだし」



大淀「提督ですか……?着任されるときに大本営から送られてきた資料だと、提督の前歴は海軍省に勤務とは書いてありましたが……」



天龍「だってよ、不知火」



それを聞いて不知火は難しい顔をした



大淀「それがどうかされましたか?」



不知火「……あれだけ前任が大本営に具申したにも関わらず、送られてきた応援は弥生さんだけでした。ですが東郷提督はこんな数が揃っていない潰れかけの艦隊だけで、前線をパプア基地まで押し返し、それどころかアメリカに応援を要請する事が出来るほどの脈もある……そう考えると、東郷提督は一体何者なのかと……」



天龍「あー……まぁ確かにそう考えると不思議だわな」



大淀「……確かに少し変わったところはあると思いますが……握手をしないところだとか」



そうこう話しているうちに輸送艦がドックに横付けする態勢に入った



明石「さ、船からロープが投げ込まれるからどうせ見てるんなら手伝ってよ」



不知火「あ、はい、天龍さんやりましょう」



天龍「おおう」



                         ーパプア基地 執務室ー



東郷「資材を……?」



サラトガ「はい、日本の艦隊がここを奪還したと聞いて私が上層部にお願いしました。多分被害は甚大だろうから、少しでも早く復旧できるようにと思って、鉄、燃料、弾薬、ボーキサイト、各25000キロはあります。建造を急がなければそれなりに持つと思います」



東郷「そうか……感謝する」



サラトガ「あ、あと私のベットも持ってきましたけど、大丈夫ですか?」



東郷「あぁ……部屋もあいているところを好きに使ってくれ……」



サラトガ「ありがとうございます、それでは私もそろそろ失礼しますね」



東郷「あぁ……」



サラトガ執務室を出ると、東郷は燃え尽きたタバコを灰皿に捨て、2本目に火をつけた



東郷「……」



東郷は目を瞑り、部屋で1人乾いた空気を身に感じながら、パプア基地までの疲れを癒すように大きくタバコの煙を吐いた



                         -パプア基地 ドック-



天龍「なんだこりゃあ!置いてあった40cm砲よりでけぇぞ!」



不知火「お土産ってもしかして……」



2人が驚いている隣で、船から降りてきた米水兵と大淀が話していた



米水兵「これがあなた方御所望の51cm砲だ、それにしてもでかいよなぁ、俺たちも船に積み込むまではどんな物を乗せるのか分からなかったが、まさかこんなの物を……ひとまずは、あんたら日本に返すって形だな、上手く使って深海棲艦共をぶちのめしてやれ」



大淀「はい、わざわざありがとうございました。」



米水兵「あとは資材を降ろして終わりだ、資材はそれなりに量があるから少し時間がかかるかな、それまではこっちで勝手にやっとくよ」



大淀「資材を……?それは聞いていませんが……」



米水兵「……あーそうか、資材はサラさんが上層部にお願いして積み込んだんだ、まぁとにかくお土産として受け取っといてくれ」



大淀「はぁ……それじゃあそちらもありがたく受け取っておきます」



米水兵「おう、それはそうと……あんた中々美人さんじゃないか?」



大淀「え?び、美人だなんてそんな……」



米水兵「黒髪のストレートなんて俺の国じゃなかなか見かけないんだ、今日の夜、船に簡単なバーがあるんだが、一緒に……」



大淀を口説こうとしている米水兵と大淀の間にサラトガが割ってきた



サラトガ「Hey……Are you pick up Again?……」

       (またナンパしているの?)


米水兵「Ah……no no no……」



大淀「あー……それじゃあ私はこれで……」



米水兵「ま、待って!」



サラトガ「ごめんなさい、大淀……でしたか、迷惑をかけてしまって……Let`s Go!!」



米水兵「Y,Yesser Mam!!」



米水兵たちも大変のようだ……なんて考える大淀だった



大淀「……あぁ、明石、どうやら資材もたくさんあるみたい、少しは復旧も進むんじゃないかしら」



明石「え、まずはこのボロボロの基地を復旧かぁ……よっし、復旧は私でなんとかしておくわ、私は工作艦だしね」



大淀「えぇ、これでもっと前線を進めて早い内にシーレーンも奪還出来ればいいわね……」



大淀はどこか物思いにふけたかのような、どこか1段落したかのように大きく深呼吸をした



まだまだこれからだけど、あの提督なら、それも早く叶うかもしれないという安堵も混じっているのかもしれない



天龍「見ろよこの口径のでかさ!」



不知火「全長も他の物とは全然比べ物になりませんね……これが51cm砲……」



天龍「これ明石さんがまた艦娘用に艤装改修すんのかな……となったら誰が装備すんのかな……俺だったりしてー!」



不知火「天龍さん35cm砲すら積めないじゃないですか……」



大淀「……」



はしゃぐ2人を横目に大淀はくすりと笑った



neunundzwanzig 29 駆逐艦の弥生の憂鬱



東郷「……」



東郷はパプア基地に着任してから数日後、日々の海軍としての業務に勤しんでいた



東郷「……」



ノックがなる



東郷「……入れ……」



明石「失礼します」



入ってきたのは明石だった



東郷「どうした……」



明石「ドックやこの基地の修繕率の報告に来ました、前にアメリカから頂いた資材を使って修繕に掛かってから、現在この基地の稼働率は約80%まで回復してきました。ドックはほぼ修理が完了し、建造するための溶鉱炉や工廠、陸戦隊(※)の武器庫、クレーンもいつでも使えるとこまで来ました。あとは食堂や私達が寝るための宿舎を残すだけです。数日間は損壊の大きい状態で睡眠を取る事になっていましたが。宿舎が直れば、皆さんのコンディションも更に良くなるでしょう」


※ここでいう陸戦隊とは『特別陸戦隊』のことを指しますが、旧日本海軍には『海軍陸戦隊』と『特別陸戦隊』が存在し、前者は敵地に乗り込んで戦闘を行う部隊(今で言う海兵隊とほぼ同じ意味でした)、後者は鎮守府を警備に当たるための組織(今で言う基地警備隊)です。ところで最近陸自に第一水陸機動隊なんてのが出来ましたけど、メチャクチャかっこよくないですか?日本版海兵隊なんて胸熱



東郷「わかった……下がっていい」



明石「はい、失礼します」



明石がそう言って、執務室を出ようとしたところに、大淀がノックをしてきた



コンコン



大淀「提督、大淀です」



東郷「入れ……」



大淀「失礼します……っと」



明石「しつれい~」



明石は入ってきた大淀の脇を通りぬけて執務室を後にした



東郷「どうした……」



大淀「はい、今、近海の警備と皆さんの訓練を交代でしてもらってるのですが、その中の弥生さんの事でお話が……」



東郷「……」



大淀「弥生さんは提督が着任する前に、前任の提督が具申して最後に通った艦娘だと言うのは御存知かと思います」



大淀「それ故に錬度は一番低くて、他の皆さんに比べて訓練内容を少し大目にしているのですが……」



東郷「……なんだ?」



大淀「先日、改造できるほどまでに錬度が上がったはずなのですが、修理が完了した工廠で改造を施そうとしたのですが、改造ができないんです。こんなこと私の経験では初めてなもので……提督には報告しておこうかと」



東郷「……改造が……できない…?」




東郷は大淀の話を聞きながらタバコに火をつけた




大淀「一応、これが弥生さんの改造ができなかった時に出力された書類です。」




東郷「……」




そう言われて東郷は大淀が差し出した資料を手に取り、目を通した




東郷「……このレベルとはなんだ?」




大淀「あぁ、それは私達の錬度を示すための一つの指標です。これが高くなると改造ができるようになるんですが……ほとんどの駆逐艦の子は、大体10後半から改造できるようになるんです……ですが、今弥生さんのレベルは……」




東郷「……30」




大淀「はい、30になっても改造できない子なんて今までいなかったので、どうしようかと……」




東郷「……分かった……もう下がっていい」




大淀「は、はい」




東郷は資料を見たままそう言って、大淀は執務室のドアに手をかけようした所だった




大淀「……あの……提督……」




東郷「……なんだ」




大淀「……その……提督は……」




東郷「……」




大淀は何かを言おうとしていたが、言葉を詰まらせていた




東郷「……言いたい事があるのなら、はっきり言った方がいい……」




大淀「……あ……」




大淀「……提督は……私達を解体なんか……しないですよね……?」




東郷「……」




大淀「……いえ、で過ぎた真似でした……失礼しました」




大淀はそれだけ言って、執務室を後にした




東郷「……」




東郷は少しだけ扉に移した視線を資料に戻した




                       ーパプア基地 弥生の部屋ー




弥生「……」




弥生は1人、ボロボロの部屋で何も喋らずにいた、訓練や警戒、食事時間以外は殆どこんな感じで過ごしていた




弥生「……」




そこにノックは響く




弥生「……はい、どうぞ」




川内「やっほ」




入ってきたのは川内だった




弥生「川内さん……また来たんですか……」




川内「またってひどいなぁ、弥生ちゃんもこんな部屋を暗くして身体に悪いよ?まぁ、私は夜戦はすきだけどさ。外に出て、一緒に運動しようよ」




弥生「わ、私はいいです……」




川内は、弥生がこの艦隊に加わってからと言うものの、何かと気にかけてくれていた




川内「弥生ちゃんさ、艦隊にきてから前任の提督がいたときからずっとそんな感じだったよね。なんかこう……目に光がないと言うかなんと言うか……」




弥生は何も言わず、膝を抱えたままだった




川内「こんな暗い部屋ばかりだと性格も辛気臭くなっちゃうよ。ほら、たまには一緒に外に行こうよ!」




川内が弥生の腕に手を伸ばそうとしたときだった、川内の手が弥生の腕に触れようとした時




弥生「さ、触らないでください!!」




いきなりの怒号に川内は身体をビクッとして動きが止まり、硬直した




川内「……や、弥生ちゃん……?」




弥生「……」




弥生の目は大きく開き、こちらを威嚇するかのような目で見ていた




弥生「あ……だ、ダメなんです……私に触れたら……」




ハッとした弥生は、また川内から視線を外すように顔を伏せた




川内「……あー……」




川内は差し出していた手を引っ込めた




川内「分かった……じゃあ……またくるね……」




川内はそれだけいうと、部屋を後にした




dreißig 30 駆逐艦弥生の憂鬱2




東郷「……」




東郷は執務室で1人、資料を見ていた




東郷「……」




コンコン




東郷「誰だ……」




大淀「大淀です」




東郷「入れ……」




大淀「失礼します」




大淀は扉を開き、机の前まで来た




大淀「定時報告です。現在、哨戒に舞風、天龍、不知火を当たらせ、隼鷹、夕張、明石が訓練をしています。残りは非番で自由に時間を過ごしています」




東郷「……分かった……」




大淀「……それは、前に渡した弥生さんの資料ですか?」




東郷「そうだ……」




大淀「……弥生さんは、あれから何度か訓練を受け、更にレベルが上がり、現在35のはずですが改造がやはりできないですね……」




東郷「……」




東郷はタバコを灰皿に置いた




東郷「わかった、もう下がっていい……」




大淀「……わかりました……」




大淀は執務室を後にした




東郷「……」




東郷(……この資料によると、弥生のレベルはこの艦隊に加わった時点でレベルが1……そしてパプア基地に来た時に訓練を重ね、段階的にレベルが上がっている……)




東郷(だがそれより気になるのは……他の艦娘と違い、建造場所が明記されていない……)




東郷(天龍は本土の横須賀で建造された後に、レベル30でこの艦隊に配置…………舞風浦永田、不知火浦賀共で建造……)




東郷(……)




東郷は携帯を取り出し、大将に電話をかけた




                         -弥生の部屋-




弥生「……」




弥生は今日もまた部屋で1人膝を抱えていた




コンコン




弥生「……どうぞ」




開かれた扉からは川内が顔を出した




川内「……やほ、また来たよ」




弥生「……」




川内「いやー、ごめんごめん、やっぱ気になっちゃてさ」




弥生「……どうして……」




弥生「どうして川内さんは……私なんかに構うんですか……」




川内「うーん……やっぱ気になるって言うか、ほっとけないと言おうか、弥生ちゃんはこの艦隊に来たばっかだし」




弥生は顔を埋めた




弥生「……お願いですから……もうこれ以上私に関わらないでください……」




川内「そうは言ってられないよ、一応私はここで唯一の改二の艦娘だし、下の面倒は私が見なきゃいけないしね」




弥生「……」




弥生は何も喋らない




川内「……おーい弥生ちゃん」




弥生「……」




川内「……また来るよ」




そう言って川内を部屋を出た




弥生「……」




弥生「……」




弥生「……」




皆私から離れていく




弥生「……」




これでいい、これでいいんだ




弥生「……」




これで誰も傷つかずに済む




弥生「……」




まるで疫病神だな




弥生「……イヤ……」




死神




弥生「……イヤだ……」




お前のせいだ




お前のせいで皆死んだ




弥生「……違う……違う違う違う違う……」




お 前 が 殺 し た




弥生「違う!私じゃない!私は何もしてない!私は何もしていない!!」




お 前 が 殺 し た ん だ




弥生「うるさいうるさいるさい!!」




お 前 も 死 ね ば い い




弥生「うるさい!!」







死 ね







弥生「……ッヒ!……」




弥生は蹲った状態からその場に倒れた




そこへ川内がいきおいよく扉を開けた




川内「弥生ちゃん!!」




弥生は横に倒れ、白目を向きヒューヒューを呼吸困難に陥っていた




川内「なっ!」




川内はすぐに弥生を抱え工廠へと向かった




                         ー工廠ー




明石「……」




弥生はベッドで横になり、心電図でパッドに繋がり眠っていた




川内「明石さん……弥生ちゃんは……」




明石「一時的な発作でしょうね……持病かもしくは疲れがたまっていたか……」




川内「……」




明石「まぁでもさっきよりは結構安定してきたし、とりあえず心配する事は無いと思うわ。」




川内「そうですか……」




そういってると、工廠に大淀が入ってきた




大淀「弥生さん」!




明石「きゃ!……大淀さん、いきなりはいってこないでくださいよ」




大淀「す、すいません……それより、弥生さんが倒れたって」




明石「あぁ、それならもう大丈夫ですよ、今は結構安定していますから」




そういって明石はプリンターから出力された紙を手に取り、大淀に渡した




明石「あぁ、ほらこれ、弥生さんの現在の健康状態です……うん、脈も正常ですね」




大淀「はぁ……」




大淀「……といっても、脈の見方なんて私には分からないけ……ど……」




渡された紙を見た大淀は、数秒して驚愕した




明石「……大淀さん?」




大淀「明石さん、失礼します!」




大淀はものすごい勢いで工廠を出て行った




明石「あ、ちょ!……まぁいいか」




川内「……弥生ちゃん……」




仙台は膝立ちになり、弥生の手を握り締めた




                    -執務室-




東郷「……弥生は鹿屋基地で建造したんだな……?」




大将『えぇ、それからしばらくして大本営に所属していました』




東郷「……?大本営に?」




大将『はい、実は鹿屋基地は1年前位に1度全焼したんです。究明に当たらせた班からは放火魔の仕業ではないかという判断が下ったのですがね、弾薬庫付近から爆発物らしきものの破片が見つかったと言う事で』




大将『その時の火事で、そこの提督と建物の中にいた艦娘は全て死亡、訓練や哨戒で生き残った艦娘は全て大本営に1度引き取ったんです』




東郷「……」




大将『他の艦娘は結構早くから再配属される鎮守府や基地は決まったのですが、弥生だけはどうも決まらなくて』




東郷が携帯で大将と話していると、大淀がノックもせずに入ってきた




大淀「提督!!大変です」




東郷は携帯を耳に当てたまま、大淀に視線を当てた




大将『それで、あなたの前任が戦力増補の具申で、最後に残った弥生はそちらに配備されたわけです。』




東郷「……」




大将『あぁ、そうだ、ところで弥生はどうですかな?結構扱いやすいでしょう?なんせ弥生は……』




大淀「や、弥生さんが……弥生さんが……」




東郷「……?」










『レベル70の高錬度艦ですから』「レベル1になっています……」










東郷「……!」




東郷は視線を大淀に向けたまま、顔をしかめた




einunddreißig 31 駆逐艦弥生の憂鬱3




東郷「……ひとつ聞くが……」




大将『はい?なんでしょうか?』




東郷は携帯を耳にしたまま視線を大淀に向けている




東郷「艦娘といのうはレベルは下がるのか……?」




大将『レベルが下がる……?……いや、私はそういった事は聞いた事はありませんな』




東郷「わかった……もういい、ありがとう」




東郷はそう言って携帯を切った




東郷「……何があった?」




大淀「明石さんから弥生さんが倒れたと言う報せを受けて、すぐに工廠に向かったんです。そこで明石さんから弥生さんの状態の記されたこの資料を貰いました」




そういって大淀は明石から貰った資料を東郷に渡した




東郷「……」




大淀「……」




東郷「……わかった……もう下がっていい……」




大淀「は、はい」




大淀は執務室を後にした




東郷「……」




東郷(……どう言う事だ……?……弥生はレベルが上がり、改造できるレベルまで達しているはず……だが改造ができない……単に錬度不足かと思ったが、しかし、今レベルが下がっている……)




東郷(そして大将の話を聞くに、弥生は大本営に預かりでその時点ではレベル70……この艦隊に加わった時点でレベルが1に下がったか……?だが以前……)




~回想~




※vierzehn:希望




弥生「何故わたしも参加なの……私は改にもなっていないしそんなに錬度も高くない……他のメンバーはそれなりの錬度を積んだり古株だったりするし」




~回想終了~




東郷(弥生は錬度も高くないと自身で言っていた……鹿屋基地で火事が起きた事……それが関係している……?)




東郷「……」




東郷はタバコに火をつけた




東郷(……鹿屋基地の提督は死んでしまっている以上確認する術は無い……生き残りの艦娘にも会いに行く余裕も無い……)




東郷(……本人に聞くしかない……が……)




東郷「……」




                        -後日 弥生の部屋-




弥生「……」




コンコン




弥生「……川内さんなのなら来ないでください……」




川内「……」




川内は弥生が倒れたあの日からも毎日弥生の部屋に通っていた




川内「……あー……いや、ほら、今日は一緒の訓練日だからさ……」




弥生「……」




弥生は膝を抱えてた状態から立って歩きだし、ドアを開けた




川内「あ、よかった、ね、一緒に訓練に行こうよ」




弥生「……」




弥生は川内の声には耳も傾けず、そのまま脇を通りぬけた




川内「あ、そう言えばさ、昨日夜の哨戒中に深海棲艦に出くわしてね、不知火と一緒に撃沈してやったんだ!やっぱね、夜戦はいいよね!夜戦はさぁ」




川内は弥生の後を追いながら歩くが、弥生が眉1つ動かさない




最近の2人はずっとこの調子だった、弥生が歩いている時は川内が勝手に付いてきては勝手に喋る




訓練中に川内が弥生に何かを指示する位は、さすがの弥生も反応はするようだが




川内「ほら!やよいちゃん!ちゃんと見て!魚雷が右舷から来てるよ!」




弥生「……」




やはり弥生は反応するだけで何も喋らない




そして訓練が終わると、弥生は誰よりも早く自身の部屋に向かった




そこでもやはり川内は付いてくる




川内「今日の弥生ちゃん動き良かったよ!でもね、主砲を撃つときはもうちょっと反動に耐えられるようにするために姿勢を意識した方がいいかなー」




弥生「……」




バタン




川内「……」




いつまで続けるつもりなのだろうか




不知火「なかなか根性ありますね、川内さんも」




川内「あぁ、不知火ちゃんか……」




不知火「こんなに毎日毎日駆逐寮にきて、無視され続けていると、さすがに堪えませんか?」




川内「うーん、ただでさえ皆と溶け込めていない弥生ちゃんだから、私までもが手放しちゃうと、弥生ちゃんホントに1人になっちゃうから」




不知火「そうですか……では頑張ってください」




川内「うん、ありがとう」




そう言って私は弥生の部屋の隣である自室に入った




                        -後日 執務室-




コンコン




東郷「……入れ」




大淀「……失礼します」




大淀は扉を閉め、机の前まで歩くと、一呼吸を置いてから東郷に資料を渡した




大淀「……これを」




東郷「……」




東郷は大淀から渡された資料を手に取った




東郷「……」




東郷は何も言わず、資料を机の上に置いた




大淀「……弥生さんが倒れたあの日以来……弥生さんのレベルが……上がりません……ずっと1のままです」




東郷「……」




東郷は椅子から立ち、大淀の脇を通りぬけた




大淀「……どちらへ?」




東郷「……弥生の部屋だ……」




大淀「弥生さんの部屋……まさか……!」




大淀は執務室の扉を開けようとした東郷の腕を掴もうとした




が、東郷は半身に翻し、大淀はそのまま扉へ腕を着いた




大淀「……!……お、お願いします!どうかそれだけはやめてください……!」




大淀は扉の前に立ちはだかり、東郷の前に立った




大淀「お願いします……確かに弥生さんはレベルが上がらなくなってしまい、提督にとってはお荷物状態かもしれません……で、でもどうか……解体だけは……しないでください……」




東郷「……」




大淀「ぜ、前任が、戦局が悪くなっていくにつれて、資材が無くなっていくと艦娘を解体してまで資材を手に入れてました……それで艦娘、私達はいつか自分の番が来るんじゃないかって怯えながら戦いました……」




大淀「今でも忘れません……な、泣き叫びながら工廠に連れて行かれる艦娘の姿が未だに脳裏に焼き付いて離れないんです……き、昨日まで仲良くしてた子が解体されるとなって、わ……わ、私に助けを求めたのに、私は……い、いえ私達はそれを見て見ぬ振りをしたんです……」




大淀の声がどんどん涙声になっているのが分かる




大淀「戦いながら死ぬのが先か……それとも解体されるのが先か……もうそんなのは耐えられない……耐えれないんです……だから、どうか……どうか解体だけはしないでください……お願いします……」




東郷はそれを微動だにせずただ聞いていた




東郷「……」




大淀「どうか……どうか……おねがいしますぅ…………」




大淀はその場で泣き崩れてしまった




東郷「……タバコを吸ってくる」




東郷は大淀の横をすり抜けドアを開け、執務室をでた




大淀「……」




大淀「提督……そんなの……嘘です……」




大淀「タバコなんて……いつも執務室で吸ってるじゃないですか……」




大淀は涙でぐしゃぐしゃの顔を手で拭った




zweiunddreißig 32 駆逐艦弥生の憂鬱 終




                       ー指令棟 屋上ー




ちょうど夕焼けが沈んだ頃、ゴルゴは柵にもたれながら1人タバコを吸っていた




東郷「……」




そこに長門がゴルゴの横にやってきた




東郷「……」




長門「……」




東郷「……何か用か……」




長門「……」




東郷「……」




長門「……この前の航海で、私は独断行動を起こしただろう」




東郷「……」




長門「……謝りに来た……あの時は本当に申しわけなかった……」




長門はタバコを吸うゴルゴを横目に頭を軽く下げた




東郷「……」




ゴルゴは使われていないであろう壊れかけの弾薬箱にタバコを投げ捨てた




東郷「……謝罪が出来ると言うのは成長が出来る証拠だ……だが、戦闘はどんな事が起こるか分からん……あの時はお前を失うわけにいかないというのが俺の判断だった……結果的だが、敵を殲滅できたのならそれでいい……」




長門「……そうか……ありがとう」




長門はそれだけを言い残し、その場を後にした




東郷「……」




ゴルゴは2本目のタバコに火をつけとうとした




東郷「うん……?」




ゴルゴが屋上から下に目をやると、兵舎から弥生が1人で出来てた




東郷(……弥生は今日は夜間の哨戒、訓練は無いはずだが……)




弥生は兵舎から出て、どこかの建物に向かおうとする様子は無く、港とは真逆の雑木林へと歩いていくのが見えた




東郷(……雑木林には何もないはずだ……艦娘しか知らない何かが……いや、弥生はこの基地に来るのは初めてのはず、その線は薄い……)




東郷(……歩く足がおぼついていない)




ゴルゴは火を着けたばかりのタバコを弾薬箱に投げ捨て、その場を離れた




                        -指令棟 階段-




東郷(……)




大淀「あ、提督」




弥生を追いかけるため、階段を下りている最中に大淀が声をかけた




大淀「あ、あの、先ほどは申し訳ありません……その、みっともないところを……」




東郷「……構わん……」




階段を降りるゴルゴを大淀が追いかける




大淀「あの、そういえばまだお食事は取られていないのでは……」




東郷「結構だ」




大淀「あ、あの」




東郷「俺はまだやる事がある、今日はもう上がれ」




大淀「え、あの」




階段を降り、大淀が何かを言おうとしたところで東郷は扉を開け、出て行ってしまった




大淀「あ……」




そこにサラトガが入れ違いで入ってきた




サラトガ「HI,Oyodoさんどうしましたか?」




大淀「……あ、いえ……なんでもありません……サラトガさんは何を?」




サラトガ「私は訓練をしていて、今帰ってきたところです。これからご飯を食べに食堂に行きます。Oyodoさんも一緒にどうですか?」




大淀「……あぁ……それじゃあご一緒します」




サラトガ「……どうしましたか?」




大淀「いえ、今サラトガさん、提督とすれ違いませんでしたか?」




サラトガ「あー、すれ違いましたけど、礼をするだけで何も話しませんでしたよ?」




大淀「そう……ですか……」




大淀はサラトガに連れられるようにして、食堂へと向かった







                     ーパプア基地裏 雑木林ー




東郷(……足を踏み入れた事は無いが……前に見た地図だとここらへんは断崖、岬になっているはず……)




ゴルゴは足音を立てないように気を張りながら歩いた




東郷(足跡がまだ新しい……1人分しかないところ、弥生だな……この先か)




しばらく歩くと、少しだけ開けた所に出た、雑草だらけだがそこはまさしく断崖絶壁となっており、下は波が激しく打ちつけている




東郷「……」




周りを見渡すと、弥生は岬の先端に向かってゆっくりと歩いていた




弥生「……」




その弥生に少しだけ近づくゴルゴ




弥生は歩きながら靴だけを脱ぎだし、先端へと、弱く、弱く歩いた




そこで弥生は止まり、そこから動かなくなった




ゴルゴも弥生にあと5mといった所で止まった




弥生「……」




東郷「……俺は自沈命令を出した覚えはないが……?」




ゆっくりと、ゆっくりと弥生は顔をこちらに向けたが、その顔には、目には光が無く、うつろな顔になっていた




弥生「……なら、今命令してください……私をここから飛び降りろって……命令してください」




弥生は身体もゴルゴに向けた




弥生「もう……限界です……毎日、毎日声が鳴り響くんです……」




弥生「私に死ねと……声が鳴り響いて……」




弥生「前は夢の中だけでした……でも、今は……」




弥生「……今も鳴り響いてるんです……声が今も……」




弥生「……ああぁぁぁぁぁ!!」




弥生「うるさい!!うるさいうるさいうるさいうるさい!!!!」




弥生「うるさい!!!!!!黙れ黙れ黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」




弥生はその場で蹲り、頭を掻き毟りながら、地面の雑草を掻き毟りながら暴れだした




東郷「……」




弥生「はぁ……はぁ……」




弥生「お願いです……どうか……自沈命令を……」




弥生「じゃないと……私……もう気がおかしくなりそうです……」




東郷「誰の声だ」




弥生「……え?」




東郷「聞こえてる声は誰の声だ、誰に言われた」




弥生「……」




東郷はポケットに手を入れたまま弥生に話し続ける




東郷「弥生、お前は過去に鹿屋基地に所属していたな」




弥生「……」




東郷「その時、お前は訓練か哨戒かで建物にはいなかった」




弥生「……」




東郷「だが、その時に事件は起きた」




弥生「……や、やめて」




東郷「鹿屋基地で火事が起きたな」




弥生「違う!」




東郷「その火事で、建物にいた提督も含め、艦娘も全て消失、たった数隻だけは生き残った」




弥生「違う!違う!違う!!!あれは私のせいじゃない!!私の……私のせいなんかじゃ……」




弥生はまた地面を掻き毟り始めた




弥生「だ、だって私は……あの時……ちゃんと艤装を武器庫に入れて……」




弥生「で……でも最後に武器庫を出たのは私で……それから火事が起きて……」




東郷「お前じゃない」




弥生「……え」




東郷「お前ではない、究明に当たった調査班からは放火魔の仕業と言っている。そして火の出元は弾薬庫からだと調査結果も出ている」




東郷「そもそも、お前は艤装を武器庫に入れただけならば、最後に武器庫を出たと言うだけで何の因果関係はない、大体武器を武器庫に入れただけで火事などは起こらない」




弥生「……でもそんな」




東郷「大体弾薬庫と武器庫は別にするものだ。お前じゃない、お前は誰も殺していない」




弥生「……わ、私は誰も殺していない……?」




東郷「……もう一度聞くが、誰の声が聞こえるんだ」




弥生「……」




東郷「艦娘の誰かか?それとも鹿屋基地の提督か?」




東郷「もしくは大本営の将校か……?」




弥生「……ち、ちがう……あ、あれ?この声は……なんで」




弥生は混乱したかのように地面を這いずっている




弥生「……なんで……分からない……分からないよ……」




東郷「……弥生」




東郷「……お前の聞こえてるその声は、おまえ自身の声だろう」




弥生「……え?」




東郷「お前の聞こえてるその声は、お前自身の自責の念の物じゃないのか?」




東郷「お前は仲間を殺してしまった、それも何十隻も、そして提督までも」




東郷「だがそれは全てお前の単なる勘違いによるものだ」




弥生「……わ、私の声……」




ゴルゴはポケットからタバコを取り出した




東郷「……もう一度言うが、自沈命令を出す気はない……」




東郷「俺は心理士でもなければ、カウンセラーでもない……だが3日間休みをやる……しっかりと療養する事だな」




ゴルゴはタバコに火をつけ、一服してそう言うと踵を返そうとした、だが




ガッ




東郷「……」




弥生「……」




弥生がゴルゴに抱き付いてきた




東郷「……」




弥生「……わぁぁぁぁぁぁぁ!」




弥生「あぁぁぁぁぁぁぁぁ……ヒッヒッヒク……ヒク……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」




東郷「……」




ゴルゴは弥生を引き離そうとしたが、その手を引っ込めてポケットに入れた




この岬から見える海原で、何か動く影が見えた




東郷(……今日の哨戒は不知火と……川内か……)




ゴルゴは弥生が泣き止むまでその岬で海を見ていた




dreiunddreißig 33 何処かの1隻 ーFirst-




                        -??? ???-




???(……)




目が覚めれば私はベッドの上だった




???「……ッ……」




全身が痛い、そもそも此処はどこだろう、そんな事を考えていると部屋に男が入ってきた




男「あ、目が覚めましたか」




ヘルメットに作業服姿の技術者らしき男はそのまま話を続ける




男「えーと、どこから話したものか……まず今日はいつか分かりますか?自分が誰かは分かりますか?」




私は名前を告げるが、日付は分からないと答える




男「よかった、意識はちゃんとしていますね。それと今日は〇月〇日です」




???「……?ちょっと待って、意味が分からない、〇月ですって?」




男「はい、あなたは半年以上も眠っていたんです、倒れた時の事は覚えていますか?」




???「……確か私はあの時……敵艦攻の魚雷にやられて……そのまま沈んだはずで……」




男「やはりそうだったんですね……あなたは各国で機密扱いになっている『艦娘』という奴ですね、初めて見ました」




そうですか……と答え、ふと窓側に目をやると、テーブルに小さいボトルのミネラルウォーターが置かれたいたので、飲んでもいいですか?と聞くと彼はどうぞと答えた




???「……ん」




……?手が届かない、ベッドから離れているわけでもないのに




男「……あぁすいません、やっぱり艦娘と言えど腕がないと不便ですよね、お入れします」




……え?腕が……ない?




ここで初めて気づいた、私の左腕が無くなっていた




男「どうぞ、大丈夫ですか?右手は動きますか?」




???「は、はい、ありがとうございます」




私は動揺を隠しながら、男からボトルを右手で受け取った




男「……実はあなたを見つけたのは地元の人たちなんです、海岸で人が倒れていると警察に連絡が入って、その後1度病院に搬送されたのですが、少しあなたの身体が普通の人間とは違うと、その後まぁ色々あってここに運ばれたんです」




……ここは病院じゃない?それじゃあ此処は一体……




男「そう言えばまだ説明してませんでしたね、ここは……」



復帰しました



戻りましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!


コメントをくれた ID: xwkFoAlTさん、どうもありがとうございます!!!


ただ、34は消えてしまいましたがそれほど大きい損害でもないのでまた執筆し直します。

明日からまた再開します!!



vierunddreißig 34 邂逅



場所はブリトゥン島、この島はシーレーンの要所であるシンガポールの目と鼻の先にある島、パプアとは離れているが天龍と不知火はシンガポール海峡を奪還するだめの斥候として出撃していた



天龍「ここまでは順調に来れたな、敵艦もいなかったし」



不知火「そうですね、ブリトゥンまで来れたのは運が良かったと思います」



天龍「ここまで順調だと、海峡を取り戻すのもそんなに時間は掛からないかもな」



なんて話をしながら島の陰までくると、2人は休憩がてら少し上陸する事にした



不知火「少しここらへんで様子を見ましょうか、さすがにここまで海峡に近くなると、敵も巡回しているかもしれません」



天龍「あぁ、ここに2,3日ぐらい野営するか」



そんな事を話しながら野営を準備をしていると、不知火が沖に何かを見つけた



不知火「……?天龍さん、あれ……」



天龍「敵か?……ん?……あれは……船か……?」



沖に船が見えた、それもただの船じゃない、良くみると軍艦の様である



天龍「旗からして……シンガポール海軍の船だな」



不知火「しかし、シンガポールは今……」



シンガポールは今、深海棲艦の拠り所になっているはずである、そんな最中で海軍の船が自由に航行できるわけが無い



天龍「だとすれば隙を突いて逃げてきたか?」



不知火「その可能性もありますね、どうします、接近しますか?」



考えどころだが、あの船が進む方向はパプア基地だ、あのまま進めばいずれ基地の皆が気づいて保護するだろう、だが……



天龍「あの船がもし、深海棲艦の意思で動いてる船だとしたら?」



不知火「……その可能性もなくはないですね……」



天龍「艦種は分かるか?」



不知火「……あれはフォーミダブル級ですね、シンガポールの最新鋭ステルス艦です、形が特徴的なので見分けはつきやすいです」



天龍「そうか……ステルスと言う事は、レーダーには見つかりにくいが、自分等は運よく見つけられた……と言う事か……」



天龍は思考していたが、1つの疑問に気づいた



天龍「……なぁ、軍艦って普通単艦で動くか……?」



不知火「……練習艦とかでない限りあり得ないですね」



天龍「……なぁ、仮定だけど、仮にシンガポールが深海棲艦に落とされているとして、軍艦が単艦で海上を航行している理由って何が思い浮かぶ?」



不知火「……深海棲艦に単艦で哨戒しろと言われたか、もしくは……」



天龍「……俺は逃げてるほうに賭けるがどうする?」



不知火「賭けにならないじゃないですか」



天龍と不知火は野営の準備を中断し、すぐに船の元に航行を始めた



天龍「なぁ、逃げてるんだとすると保護するか?」



不知火「その方が良いでしょう、もしかしたら、今のシンガポールの状況をしているかもしれませんし」



天龍「やっぱそりゃそうだよなぁ……汽笛を鳴らそう」



不知火「はい」



不知火は背中のタービンに付いている紐を引っ張り、汽笛を鳴らして軍艦の意識をこちら側に向けるようにした



天龍「……お、気づいたか、横付けしてそのまま臨検がてら乗り込んでみるか」



不知火「言葉は喋れますか?」



天龍「頼んだ」



不知火「はぁ……」



船はこちらに気づいたのか、一旦停船し、中から軍人らしき人が数人出てきた



不知火「何人かはこちらに銃を向けてますよ」



天龍「効かないから大丈夫」



そう言いながら、船の横に着くと、中を持っている内の1人が話しかけてきた、どうやら怪我をしている



シンガポール水兵「何者だ!貴様等は!!」



不知火「私は日本海軍の艦娘、駆逐艦不知火と言います、こちらは同じく艦娘の日本海軍、軽巡洋艦天龍です」



水兵「な、日本の艦娘だと……!」



不知火「あなた方に聞きたいのですが、何故単艦で行動しているのです、あなたも怪我をしてるところを見ると、ただ事では無いようですが」



水兵「ば、馬鹿な……日本の艦娘は半年前の海戦で全滅しているはず……」



不知火「私達は生き残りです、ところで、ここで話しているのもあれなので、乗船させていただけると助かるのですが」



水兵「……」



話しかけてきた水兵は、別の水兵となにやら話しこんでいるようだったがやがて



水兵「……わかった、皆銃を降ろせ、ボートを降ろして引き上げるんだ」



不知火「上手くいきました」



天龍「俺、英語はさっぱりなんだよ……」



かくして2人は乗船に成功し、乗り込んだと同時に船は再び動き出した


後書き

ほんとバグふざけんな!!(声だけ迫真)


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このSSへのコメント

19件コメントされています

1: いちごオレ 2015-11-12 17:41:49 ID: aAPqzaTf

こういう雰囲気のss好きです
更新待ってます!

2: SS好きの名無しさん 2017-01-12 23:28:50 ID: NXUV7qo6

更新待ってますゾォ!!

3: SS好きの名無しさん 2017-09-06 08:29:01 ID: ZXiZLrbq

ゴルゴのクロスオーバーという事で、一発ネタと軽い気持ちで開いたけど… すごく面白いです…!

4: SS好きの名無しさん 2018-05-26 23:29:57 ID: rHdKY237

待っていました!!ありがとう!!

5: MinaMizuki 2018-05-27 01:29:49 ID: uUDdERbl

>>4

ありがとうございまぁぁぁぁ!!!

6: FLAN 2018-05-30 22:00:21 ID: 49xoocDA

面白いです
頑張ってください
応援してます!

7: FLAN 2018-05-31 12:16:33 ID: C9fSmbiL

恐らく誤字↓

事前の通達はされていまんか……?
になっています

8: MinaMizuki 2018-05-31 14:18:07 ID: a8cDFB7l

>6
ありがとうございまぁぁぁぁ!!!

>7
oh……ミス指摘、ありがとうございます!

9: SS好きの名無しさん 2018-06-06 22:25:18 ID: OcsdVgbK

ゴルゴ13ですか、コミック全巻持っています。面白かったです。でも駆逐艦大丈夫かな?あの顔で怖れないかな?続き楽しみにしてます。頑張って下さい

10: MinaMizuki 2018-06-06 22:55:16 ID: a-VTIQOv

>>9
ま、多少はね?
応援ありがとうございます!

11: SS好きの名無しさん 2018-06-07 00:23:15 ID: WyGSiUtB

久しぶりの更新、ありがとうございます。待ってました。

個人的に、長門がゴルゴ13の命令を無視した時は、「俺の命令以外、何もするな…」とでも言われて除隊させられそうだな…と思いましたが、まさかの「よくやった…」と褒めるという……

例え任務を遂行する為に欠かせない人物であっても、それにリードを付けられなければ危険と判断し、単独行動をとろうとするプロフェッショナルがゴルゴなので、裏をかかれたような面白い違和感がありました。

12: MinaMizuki 2018-06-07 00:44:09 ID: Q7kj6-Z9

>>11

コメントありがとうございまぁぁぁぁ!!!

こんなに長文貰ったのは初めてですよ……ヤベェヨヤベェヨ……

個人的には、ゴルゴは長門を制止が効かず危険と思ってるわけではなくて(伏線)、正義感が強すぎるがあまり只でさえ潰れかけの艦隊に所属する長門を喪失しないように配慮するんですが、これ以上失うものがない者ほど怖いと言うことを知っているゴルゴは、敢えて「押さえ付けすぎず、適度にストレスを発散させる事も必要」と判断した、という感じですね!

まぁ……確かに読み返してみたら自分も「ゴルゴこんなやつか?」何て思いますけど、ゴルゴ本作でも意外な一面を見せたりすることもあるので、まぁ多少はね?

13: SS好きの名無しさん 2018-06-07 14:40:52 ID: WyGSiUtB

>>12

返信ありがとナス!

皮肉ではなく、本当にいい意味で裏切られていいゾ〜これ状態だったので、
あんまり気にしなくていいですよ。。今回の更新も面白かったから大丈夫だって安心しろよ~。

だから更新早くしちくり〜

絶対エタッてはいけない(戒め)

14: ダイル・クライス 2018-06-13 06:39:20 ID: RJfv3w6w

良い作品です
更新期待しています
頑張ってください!

15: SS好きの名無しさん 2018-07-03 11:38:38 ID: UD15XFRS

ひたすら楽しみにしています!!
頑張って下さい!!
…レ級好きなのでそちらも期待しまくってます。

16: MinaMizuki 2018-07-03 11:43:33 ID: 9NuDdXY6

>>14
>>15

ありがとナス!
またお待ちしてナス!

17: SS好きの名無しさん 2018-07-08 23:09:00 ID: xwkFoAlT

作者さま

とりあえず手元にあるやつです。
お使いください~

s://www.evernote.com/shard/s48/sh/b2748fc9-48e0-4afb-bc4b-20cc4911b15d/1d6c4c33b1bc0ae4

18: MinaMizuki 2018-07-10 00:41:14 ID: WTgK8jxu

>>17

ファ!?ありがとナス!

もう少ししたら復旧しますのでもうしばらくお待ち下さい

19: SS好きの名無しさん 2018-07-17 20:26:36 ID: CkNPr9Ki

>>18
お役に立てたようで嬉しいです。
ぜひ続きをお願いいたします。


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1: SS好きの名無しさん 2017-01-12 23:29:15 ID: NXUV7qo6

ゴルゴさん強すぎひん?

2: ダイル・クライス 2018-06-13 06:38:38 ID: RJfv3w6w

なかなか面白い作品です!
ゴルゴ13のアニメなどは全然知らないですがそれでもわかりやすく、楽しませてくれる作品です
オススメです!


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