2015-12-01 00:13:48 更新

概要

いろはすSS始まるよー。三年になった八幡の激闘をお楽しみください。
社畜ライフで更新が遅くなった&またもや長くなっちゃったけど、ダラダラ読んでね!


シリーズものなので、初めての方は↓からどうぞ。


一色いろは・被害者の会 ~黎明篇~





※※※※※※※※※※※※


~前回までのあらすじ~


一色いろはの支配の元、策謀の嵐が渦巻く総武高校。

人を疑うことに疲れた八幡・戸部・副会長の三人は『一色いろは・被害者の会』を結成する。


だが何かいろいろあって、その被害者の会も一色の奸計により生みだされた

生徒会の下部機関に過ぎないという衝撃の事実が白日のもとにさらされる。


力なく笑う三人に明日はあるのか!?(反語)



前回 ~一色いろは・被害者の会3 ~雌伏篇(後半)~





※※※※※※※※※※※



ついにこの時が来てしまったか……


昼休みを間近に控え、俺は暗鬱な気分に沈んでいた


中間考査を間近に控えているにも関わらず、授業の内容は耳に入らず、板書からも目を離してしまう。


遠く離れた窓から見えるは、じとじとと陰惨に降りしきる雨。


……いや、これまで降らなかった事を、むしろ僥倖と捉えるべきかもしれない。


だがそんな無理矢理良かった探しなどしていても、所詮は欺瞞。気など晴れようはずもない。


はぁ……もう本当困ちゃったな……


ため息をつくと、いよいよ机に突っ伏してしまう。


何が困るって雨が降るとベストプレイスでお昼を食べることができない。


必然、普段はエスケープしているこの教室内で、独りランチをモグモグしなければならず、俺のぼっちが一際異彩を放つ事態に陥ってしまうのだ。


孤独を晒す、それ自体は別にどうということもないのだが、新しく変わったこのクラスは、前と違ってあまりウェイウェイしている奴がいない。


気性も穏やかな面子が多く揃っているため、ぼっちでいると憐憫とか同情とかそういう類の視線が集まりやすい。


そんな草食系な級友達の哀れみの視線を受けながらランチタイムを過ごすのは、想像するだに気が滅入ってしまう。


侮蔑や嘲笑ならどうということもない。


いっその事「あ、お前今日はここで食うの……え?マジで?」とか露骨な態度をとってくれた方が、こちらとしては嫌がらせのモチベーションも高まって、かえって開き直って昼食に挑めるのだが……


などと我ながら拗らせてしまった性根に、思わずフヒッと笑ってしまうと、隣にいた氏名不詳の女子(可愛い)がたまたま目撃していたようで、こちらに奇異な顔を向けつつ、無言で席を少し離してしまう


……あ、ちょ、ちょっと待って、今の無しで……



ますます居心地が悪い地合いを自ら生み出してしまい、忸怩たる思いに悶えていると、ブレザーの内ポケットでスマホがブブブと震え出す。


送信元はおそらくあいつだろう。


そういえば雨の日はどうするんだろうな……何かを期待し、授業中にも関わらず、こそこそスマホを覗く。


『今日は生徒会室で食べましょう(はぁと』


おお……いろはす……


普段、俺が脳裏に描く一色は、悪魔のようにおぞましい様であざとく笑っているのだが、今日ばかりは天使のように神々しく、あざとい笑顔を称えている。


うん、もう、しょうがないから……行ってあげても……いいかな?


フヒフヒ笑いながら、にわかに机の下でスマホを操作し始める俺を、隣の女子(可愛い)が怪訝そうに見ていた。み、見ないでぇ……



※※※※※※※※※※※



俺の中で生徒会の私物化が激しいと話題の一色だが、そんな専横も今日ばかりは有難い。


少し授業がずれ込んでしまったが、終わるとすぐさま、一色の待つ生徒会室に歩を進める。


階段を下り、廊下を曲がると、まもなく生徒会室が見えてくる。


一色は俺を待っていたのか、廊下の窓に映る雨を眺めながらドアの前に佇んでいた。


不覚にも、少し胸が高鳴ってしまう。


……こうして見ると一色も、そう大したことはないにせよ、そこそこの美少女に見えなくもないような気がしなくもない可能性について検討を考慮する必要性がハーフ&ハーフといえよう。


すぐにこちらに気付くと、笑みを浮かべて小さく手を振ってくる。


「……うす」


「こんにちはー、せんぱいっ」


「どした?こんなところで……入らねぇのか?」


「……いや、それがなんと言いますか……職員室に鍵を取りに行ったら、誰かが先に持って行ってたみたいなんですよねー……」


言いながら、その場を譲るようにドアから身を離す。つまりもう生徒会室に誰か居るということか……


「へー、まあ会計クンあたりじゃねぇの?悪いが入れてもらうとするか」


「あ……!ちょっと先輩、開けるんですか?」


「いや、そりゃ開けるだろ」


妙な質問をする奴だ。何の気なしに俺はドアに手をかける。


しかし、そこにはドアを開けたことを後悔するほどの、甘ったるい青春劇が展開されていた。


「わぁ、すごく美味しそうじゃないか!」


「あ、あの、私あんまり料理って慣れてなくて……その、男の人にお弁当作るのもこれが初めてで……」


「凄いじゃないか、書記は本当に料理が上手なんだな……こんな豪華な弁当を用意してくれるなんて……えへへ……」


何がえへへだ。


この呑気にアホ面下げて笑っているのが、総武高校生徒会の副会長を務める副会長である。


副会長は同好会「一色いろは・被害者の会」の副会長をも務めているので、まさに副会長の中の副会長ともいえる男だ。もうほんっと副会長。


だが一色奴隷界隈では伏竜と称されるほどの漢が、今はもう見る影もない……なんというアホ面だろうか……


「そ、そんな事ないですよ、これぐらい……でも副会長さんが好きだって言ってた唐揚げ……これだけは自信あるんです、その良かったら……」


恥ずかしげに俯く、この可憐な眼鏡っ娘は書記ちゃんである。


生徒会の書記を務め、様々な実務を陰ながらサポートする、まさに縁の下の力持ち的存在だ。


そして見ているだけで癒される、大変可愛らしい生命体なのだが、近頃はヒエラルキーを徐々に高めており、一色に次ぐ捕食者としてポジションを定着させつつある。


おかしいな……ちょっと前まで本当にただただ可愛い子だったのに……


「え!?それ……覚えててくれたのかい……?いや、なんと言ったらいいか……」


鼻の下を指で拭って、副会長も照れ照れと俯く。


やがて書記ちゃんは意を決したように顔を上げると、唐揚げを箸で摘み、ゆっくりと副会長の口に近づけた。


ま、まさか……やるのか?あれを……!


「副会長さんっ、ど、どうぞ……!あーーーーん」


「え、ちょ!?あ、あーーーん」


「……」


「……」


……と、そこまでやって二人は初めて俺達の存在に気付いた。


「あ、ああ……」


「あ……あ……」


二人共あんぐり口を開けながら、アホみたいな顔でこちらを見ている。


うん、あの……ごめんなさい……あとすっごい気付くの遅かったね……君たち……


「いろはちゃん!?比企谷先輩まで……、いや、あの、これは違うんです!」


「ち、違うんだ、これはその書記とお弁当を食べる約束していて、その、あーんというのも若さゆえの勢いで……」


「砕け散れ」


「え?」


「いや、ほたてしぐれ……美味しいよなって思って」


「ん?……ああ浦安のやつだろ。アレだけでご飯三杯は軽いよな……」


「あ、ほたて時雨煮のことですね、次のお弁当には入れてきますので!ってそうじゃない!本当に違うんですよ!」


「ごめんねー書記ちゃん、ちょっと先輩が空気読めなくて、いきなりドアを開けちゃったから……お邪魔しちゃいましたかねー?」


などと上っ面では謝っているが、一色はニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべながら、二人を思う存分に睨め回す。


ふむ、なるほど……このストロベリー空間を予期して、一色は入るに入れずドアの前で佇んでいたのだな……


なら止めてくれればいいのにとも思うが、まったくそんな素振りを見せなかった辺り、むしろ俺にドアを開けさせて罪をおっ被せるために待機していたんじゃないかしら……

このアマ……絶対に許さない。


それに近頃、この生徒会周辺では、とりあえず悪事は俺に押し付ければそれでOK!……みたいな風潮があるような気がする……

もう本当に絶対に許さんからな……こいつら……


「あ、いや、い、いろはちゃん、これは本当に違うんだって!」


「まあまあ、詳しくは放課後に聞くから……うぷぷ……」


うわー、一色さん本当にウザいな……


「さて、それじゃ豆腐の角に頭をぶつけて死んじゃうのは嫌なので……私たちはここで退散しますねー」


言って、一色は俺の袖をくいと引っ張って、退散を促す。


うん、この子、なにか重大な勘違いをなさっているので……あとできちんと教えてあげないとな……


ペガサス乗馬クラブとかに連れて行けば良いのかしら……?ほら、あの尻尾を掴んでごらん……


「ち、違うんだって!聞いてくれよ会長!」


「それじゃー副会長、失礼しますー☆」


はうはうあわわと狼狽したままの二人に、嫌な笑顔を向けたまま、一色はドアをぱたんと閉めた。


「……ふう、鍵の受取記録に書記ちゃんの名前があったから、こんなことだと思ってたんですよねー……ふふ、このネタで当分二人をからかえますね……」


「お、お前……」


「さー先輩!予定は変更して、今日は被害者の会の教室で食べましょうー、鍵はもう用意していますので!」


くりんと鍵を指で回して、ぺちこーんとウィンクをかます。


目の前の後輩が怖すぎた。



※※※※※※※※※※※※



本部に入ると、俺は早速定位置……長机の廊下側にどっかと座る。


一色も角を挟んだところに椅子を置き、ちょこんと腰掛けてはいそいそと可愛らしい弁当を広げた。


二人して誰にともなく手を合わせて、昼食を摂り始める。


「それにしてもあの二人……仲よさげでしたねー」


「ああ、まったくもってけしからん、爆発しろ」


「けしからんですよねー!あの様子じゃ昼休み……結構頻繁にお昼を一緒に食べてたんじゃないですかねー?」


「それな。……ったく神聖な生徒会室で一体なにやってんだか……仕事しろ仕事、あと爆発しろ」


「もう本当に私物化が激しいですよねー!でも、書記ちゃんも健気ですよ……お弁当作ってくるなんて、よっぽど気合入ってないと出来ないですもん……」


「もう本当それな。そんで副会長のあのアホ面。よっぽど爆発しろと思ったわ……」


いつになく弾んだ会話をしているつもりだったが、一色が俺に向ける目は虫を見るそれである。


「……なんか先輩と話してると、私まで非モテ側になっていく気分なんですけど……」


……あら、なぁにこの子……?人が盛り上がるように慣れない相槌打ってやってるってのに……


まあただ、爆発言い過ぎたところはある。今後の課題としたい。


「先輩はあります?お弁当とか、料理とか、女子に作ってもらったこと……この前のバレンタインは抜きにして……」


「ん……?まあ、あるような、ないような……」


言われて、いつだか行われた嫁度対決を思い出す。


確かあの時、女性陣の手料理を思う存分味わった気がする。


小町の肉じゃがに、雪ノ下のパエリア……平塚先生の肉ともやし丼~焼肉のタレ風味~……

そして、由比ヶ浜が作ったあの和風ハンバー……


思い出してはいけないものを思い出してしまい、俺はざわついた胸を抑える。


「……ぐっ、お前、食事中に何の話しやがる……いい加減にしろ、デリカシーゼロか」


「い、いや……料理の話してたんですけど……なんでそんな汗かいてるんですかね……?」


ハンカチで額を拭い、なんとか呼吸を落ち着かせて食事を再開するが、一色は会話の続きにご執心のようだ。


「じゃ、じゃあじゃあ、あーんはありますか?あーんしたことは!?」


「……あるんだな、これが」


「え……?嘘……」


一色は信じられないといった面持ちで、カラーンと箸を机の上に落とす。


……こんな失礼な反応は屈辱にまみれた俺史の中でも、そうそうお目にかけないのだが、しかしそんなことで怯む俺ではない。


あるったらあるのだ……それも世界レベルの。


「……妹さんはノーカンですよ?」


「あるわけねぇだろ、いい加減にしろよ。ちょっと考えりゃ分かるだろうが、さっきから喧嘩売ってんのかお前」


「なんか今日の先輩キレ気味ですよね……本当にキモいです……」


しみじみと言われてしまった……


そ、そうですか、本当にキモいですか……


「……書記ちゃんと副会長……あーんしてましたよね……」


「ん、まあ、してたな……」


思い返すも腹立たしい。


副会長が爆発する手立てはないだろうかと思慮する俺を余所目に、一色は先程からもじもじと落ち着かない。


何か思いつめた様子だったが、きっと眉を上げて常より強い視線を向けてくる。


「……ちょっとやってみましょう、私達も」


「え?なんで……?」


もう本当分かんない。


真面目な顔して何言ってるの……この子アホなんじゃないかしら……?


「それこそ葉山でやれよ、アホかお前は」


「いや、その、練習ですよ、練習!いざっていうとき経験が無いと違う穴に入れちゃうかもしれないじゃないですかー!」


「お、おう……」


一体どこ入れちゃう気なんでしょうね……この娘……


っていうか、もうどう好意的に見ても乙女の台詞じゃないんですが……


呆れ返る俺など我関せずと、一色はうんうん唸りながら自らの弁当を物色する。


「……せめてメインディッシュを差し上げます、このタンドリーチキンを……」


「いや、お前な……」


「はい、先輩っ、あーん!」


「……」


「あーーん!」


若干必死っぽい顔を向けながら、一色は程よく赤みがかったタンドリーチキンを俺の口元に寄せてくる。


色気もムードもあったものではないが、こうも一生懸命やられると心を動かされないこともないでもないと言わざるをえない可能性について検討することも吝かではない。


俺は甘いものが好きだが、辛いものだって食べられないこともない。


それに一色が、いざ葉山相手に「あーん」を決行する機会があったとして、研鑽が至らぬばかりに、うっかり変な穴に入れようものなら……何それ、すごく見たいんですけど……


とにもかくにも、そんな事になったら大変である。


ここはあくまで練習として、彼女の恋のステップアップを支援してやるべきではないだろうか。


それが責任というものだとも思う。……もう本当に嫌だけど協力してあげよう


「……あ、あーん」


こちらも意を決して口を開ける。


さあどんと来いよと待ち構えていると、突如、扉がガラシャーンと勢い良く開かれた。


「お兄さん!じゃなかった、比企谷先輩!こんにちわっ、俺っす、川崎大志っす!」


「え、ええ!?」


突然の来訪者に一色の手元が狂い、タンドリーチキンは名状し難い軌道を描き、無慈悲にも俺の眼球に押し付けられた。オウフ。


「ぬ、ぬお!目が、目が辛いっ!!」


「わわっ、すみません先輩!へ、変な穴に入れちゃいましたっ!」


凄いよこの子……タンドリーチキンというチョイスも、こうなると壮大な前振りとさえ思える……フッフフフ……負けだ……完全に俺の負けだ。


さすがは生徒会長、一色いろは……俺の敵う相手ではなかった(聖帝)


あと俺の眼窩を変な穴って形容したこと……絶対に許さないから……


「……あ、すいません……俺、お邪魔しちゃいましたかね……?」


やってきたのは川崎大志、我が妹に近づく毒虫である。


小町が受験時代に通っていた学習塾の友人にして、去年、俺のクラスメートであった川崎沙希の弟という事もあり、こいつが入学する前から何かと顔を合わせる間柄だったのだが……


「そ、そんなことないよ!?これは単に先輩の腐った目にスパイシー成分を入れたらどうなるかという野心的な化学実験の一環であって!」


「そうなんすね……さすが生徒会長っす!そういう地道な研究がノーベルに繋がるってテレビでやってました」


繋がるかアホ。


しまいには加速機で俺の眼球に色々ぶつけてきそうな勢いである。


「そ、それよりどうした……大志?なんの用があって、こんなしょうもないところに……」


「用があるのは俺じゃないっす!案内に来ただけっす!」


ん?どういうことだろう……?


見やると、大志の後ろから妙齢の女性がひょっこり顔を出す。


「あー、ここだったんだね……被害者の会って。生徒会の隣とは恐れいったなー……」


現れたるは生徒会兼、我が同好会の顧問。保健室の主としてお馴染みの養護教諭だった。


っていうか、あんた今まで、被害者の会の場所知らなかったんですね……道理で一回も来ないわけだ。


大丈夫か、この学校……


「先生、どうしたんですかー?珍しいですね、被害者の会に用なんて……」


「そうじゃないのよー、用があるのは被害者の会じゃなくて君。一色さんがここの鍵を取ったっていう記録があったからね……悪いけど、すぐに生徒会メンバーを集めてくれないかな?」


「あ、はい……」


一色と顔を見合わせる。普段は飄々とした顧問だが、今日はいつにない真剣さを孕んでいる気がする。


何かただならぬ事態があったのだろうか……?


「一色、携帯でみんなを呼……」


「皆さん!いますかー!?」


言いかける俺の言葉を遮って、一色が手をパンパンと叩くと、ドヤドヤと隣から副会長と書記ちゃんが訪れる。


「呼んだかい、会長?何かあったのか……?」


「どうしたの?いろはちゃん」


早速、隣から二人が駆けつける。え……?今の手拍子聞こえたの……?


ほとんどノータイムで現れた二人に戸惑っていると、窓を開けているわけでもないのに、教室に備え付けられたカーテンがふわりと揺れる。


その陰から現れたのは会計くんと、戸部であった。


え……ちょっと待って……?


「……珍しいね、昼休みに緊急招集だなんて……どうしたの?会長」


「どうしたよー?いろはすー……俺みんなと昼食べてたんだけどよー……」


そ、そっか……忍者スキル……とべっちも身に付けちゃったんだ……


他にもいろいろと突っ込みたいところはあったが、闇が深そうなので踏みとどまる。


「やっぱ生徒会って凄いんっすね……」


大志が若干引いていたが、とまれ、これで生徒会メンバーは全員集合である。


スピーディーな展開に、一色も顧問もウムと満足気に頷いている。……本当に大丈夫なのか?この学校……


あ、ちなみに今現れた二人は戸部と会計くんである。二人共ただのモブな。あと男。




※※※※※※※※※※※



「場所を間違えていた……?」


集まった俺達の前で、顧問は長机の上に書類を広げる。


内容になんとなく見覚えがある。それは生徒会が作成した保護者会案内のプリントだった。


「うん、正しくは第二会議室じゃなくて、視聴覚室だったんだ……間違えて書いてしまってるんだよー」


「視聴覚室……あんな広いとこでやるんすか?」


「保護者の方の参加者が今年は多くてね、会議室では手狭だから、今年はあそこでやろうって事だったんだけど……」


「……大変だ。これって、もうとっくに配布済みのプリントですよね?」


どうやら保護者向けに配布した書類に誤植があったらしい。会場は視聴覚室であったにも関わらず、第二会議室と記述して配布してしまったのだ。


それにしても、こんなものまで生徒会に作らせてんのか……この学校……


「す、すみません……これ私が作ったプリントです……先生にちゃんと事前に言われてたのに……」


彼女の所管だったのだろう、書記ちゃんは青ざめた顔で、両手を口に覆う。


一色も顔を険しくする。


「書記ちゃんじゃないよ……これ最終的には私が校正したから、私の責任だ……」


眉間に皺を寄せ、くっと唇を噛むその顔には悔しさが滲んでいる。


だが一色の言うとおり、控えの文書には確かに彼女の承認印がペタリと押されている。


……と言うより、たいがいの業務は何かあった場合、生徒会長である彼女に責任が向けられるように出来ている。


「ぬかったな……保護者会ってもう明日だろ?再度郵送する時間はないぞ……」


「私も見逃しててさー、ごめんね、ついさっき見直してて気付いたんだよねー……と、いうわけだからさ、とにもかくにも生徒会に対処して欲しいんだよね」


「はいっ、なんとかします!えーと……当日は道案内に人を出して……それから外部から招聘した人には電話して……」


「一色、やることリストにしていった方がいいんじゃねぇの」


「あ、比企谷先輩、それは私がやります。いろはちゃん続けて!」


うん、確かにこれは肩書通り書記ちゃんの仕事かもしれない。


「ううん、私の責任だし……私がやるよ」


「え?う、うん……」


ん……?なんだこいつ……


予想外の一色の反応に、書記ちゃんだけでなく俺まで呆気にとられる。


殊勝な態度と言えなくもないが、得も言えぬ、この違和感。


せかせかと鞄からノートとペンを取り出す一色に、思わず書記ちゃんと顔を見合わせてしまう。


「いろはすー、今からでも間違えた方を本会場にするのはできねーの?」


「……俺も考えたんだが……駄目だな、今端末で調べたけど、今年は図書委員が抑えちゃってるみたいだ……外部の図書センターの人を呼んでるらしくて……今から変更すると、彼らが困ってしまう」


戸部の提案に、スマホで施設の状況を確認していた副会長が言葉を挟む。


……折悪いことに、他の委員が会議室を抑えてしまったようだ。


「……それだけじゃない。俺達も今の今まで会議室でやるものだとばかり思ってたから……昨日、会場をセッティングしちゃったんだよな……椅子とかたくさん運んじゃったよ……」


「なんだ、もう設営しちゃってたのか……そりゃ面倒くさいことになっちまったな……」


「……すいません、それも私の指示です。すっかり思い込んじゃって……」


バツの悪い顔で一色がそう申告する。いつになく落ち込んだ顔に、思わず苦笑してしまう。


「なるほどな、早く仕事したのが仇になっちまったな……」


「う……」


皮肉のつもりは無かったのだが、思わず漏れた言葉に、一色は悔しそうに唇を噛む。


いかん、これは迂闊な発言だった。


「お、おい、気にすんなよ、こんなの」


「はい、大丈夫です」


急いでフォローするが、ふむん、なかなか大変そうな事になってしまったな……


これが先日行った小体育館での作業だったら……と思うとぞっとする。


「保護者の方は当日の対処でなんとかなる……と思います。問題は外部から呼ぶ人です。すぐに電話でお詫びして、改めて案内して……とにかく失礼のないようにしないと……」


「……会長、その電話、僕も手伝うよ。中等部の方からのお客も来るらしいし、独りじゃ大変だろう?」


会計くんが手を挙げて、助力を申し出るのだが……


「それも大丈夫、私がやります!」


咄嗟に一色が強い口調で返す。


会計くんも呆気に取られた顔になるが、すぐに落ち着きを取り戻すとこちらを見やる。


――会長、なにか悪いもの食べた?


という視線を俺に向けてくる。いえ、タンドリーチキンは大変美味しゅうございましたが……っていうか何故俺を見る……

……しかし会計クンが懸念するのも分かる。さっきから一色の様子が何かおかしい。


まあ確かに、今回の不手際、一色の責任には違いないのだろうと思う。しかし取り返しの付かない失態という程でもない。

この程度のミスなど、よくある事と言ってしまってもいいだろう。


なのに、何か大袈裟に思いつめた様子で、柄にもなく自分を責めているように見える。


助力を断られた書記ちゃんと会計クンは、心配そうな顔で一色を見ていたが、やがてその視線は俺達三人に向けられる。


……被害者の会の出番というわけだ。


副会長、そして戸部。


一色奴隷界隈では伏竜・鳳雛と畏れ称されている二人である(俺に)


こいつの様子のおかしさには、言われるまでもなく気付いているようだ。


俺たちは三人、視線を交わし頷きあう。


……よし、ちょっとカマをかけてみるか……


「会長、俺に出来ることがあったら言ってくれ。こんな時のためにいるんだからな」


「そうだべ~、いろはすー!俺も出来ることあったら何でもやるっしょ!?」


「そういうことだ、一色、遠慮しなくて良いんだぞ。分業を考えるのもお前の努めなんだからな」


一歩前に出て、口々に助太刀を申し出る。


ここで断るようなら、少し強く言い聞かせたほうが良いかもしれない。


……いや、むしろ一色のこの様子だと断る公算が高い……


こいつは、時に責任感を強く発揮することがある。


クリスマスイベントの時も、予算報告会の時も、スピーチの時も、結局、最後は自分の裁量で事を成し得ている。


それは一色の好ましい特性とも言えるのだが、同時にこいつは自分の限界もよく弁えている。


だから人に頼ることも躊躇しない。


自分に出来ないことは、ばっさり人に任せて目的の遂行を優先してのけるのだ。


……その辺りのバランス感覚が、こいつの持ち味だと俺は思っていたのだが……


何か良くない予感が、さっきから頭をもたげている。この違和感の出処は何なのだろうか?


つい先日の、自転車での帰路を思い出す。確か一色はこう言っ……


「そうですね、じゃあ副会長は大急ぎで視聴覚室のセッティングをお願いします!」


「え?」


「戸部先輩は当日の道案内……明日の昼休み全部潰れちゃいますけどお願いしますね?」


「……ちょ!いろ……はす……?」


「先輩は第二会議室の撤収作業をお願いしますー!あ、図書委員の人に一言お願いしますね!適当に上手いことやってください」


「……は?」


途端に鮮やかな指示を下す一色。


え……ちょっと待って……いろはす……


さっきまで君、むっちゃ思いつめた様子でいましたやん……?


「書記ちゃんと会計さんは、予定通り会報づくりを始めちゃってください。このせいで全体の仕事が遅れると、それはそれで困っちゃいますし……二人だけじゃ大変ですけど……」


「そ、そんな事ないよ……うん分かった!」


「了解……そうするよ」


いつもの調子に戻った一色に、安堵の表情を浮かべる二人だが、俺たち被害者の会は、三人して乾いた笑みを浮かべるのだった。


お、おかしいな……不穏な空気を確かに感じたんだけどな……


うだうだ長ったらしく考えてたこと全部無駄だったな!



※※※※※※※※※※※※※※※※※



何はともあれ、撤収作業を任された俺は、放課後になるやいなや第二会議室に足を向ける。


先日作業した小体育館と違い、会議室など小じんまりとしたものだ。大作業というほどのものでもない。


もっとも独りで行うには骨が折れる雑務なのだが、俺はもう独りではない……


そう、なんと驚いたことに独りではないのである。


最近利用するようになったライン。俺はそこに生徒会とは別にもう一つのグループを作っていた。


先だっての小体育館での作業後、マイ・エンジェル戸塚の提案により結成されたニューグループ「八幡組」(※設定は一色さんがやってくれました)


そこには俺の校内における全人脈が詰まっている。放課後を迎える前に、俺は彼らの助力を乞うべく檄文を送信していたのだ。


さあ集え、我が同朋達よ――蒼天既に死す……!


「……ほむん、ここが作業場か……我はどちらかと言うと頭脳労働でこそ、その真価を発揮するタイプなのだがな……」


「……」


「まあしかし、これも朋友の頼み。馳せ参じなければ剣豪将軍の義を問われようというもの。さあ遠慮無く指示を下すが良いぞ!八幡よ!」


材木座しか……来なかったとです……



『ごめんねー八幡。どうしても部活抜けられなくて……。また声かけてね!』


うん、まあしょうがないよね。試合は目前だし部長さんだもんね……テスト前なのに練習本当にお疲れさんです。



『ごめん……今日は食事当番で買い物して帰らなきゃだから無理……次はなんとか行けるようにする』


川なんとかさん……うん、まあしょうがないよね。家庭の事情なら……俺も知らない話じゃないし、その気持ちだけで、っていうか返事くれるだけで胸いっぱいですよ……本当によく頑張った。


っていうか、この人グループに入ってたんですね……それに一番ビックリした。



『お兄さん!すみません行けないっす!俺は姉ちゃんの代わりに妹迎えに行かなきゃならんです!ほんっと申し訳ないっす!』


ふざけんな毒虫が。妹迎えに行って、家帰って、姉に預けてから、再び手伝いに学校を訪れると何故言えん。


やはりこんな薄情な奴に妹を近づけるわけにはいかないな……本当に使えんやつだ……最後のチャンスを失ったね、君……


と、そんな事情があって……材木座しか来なかったとです……


……まあ、しかし、こんな奴でも来てくれるのは正直有難い。去年の体育祭然り、先のマラソン大会然り、体を張ったミッションでは存外頼りになるのだ、この男は。


「すまんな材木座……何、そう長くは拘束しない。とっとと終わらせてラーメンでも食いに行こうぜ」


「ふむ、それも乙だのう……我も貴様に見てもらいたい設定集があるし……」


うわ……嫌な話聞いちゃったな……慣れない誘いなどするものではない……


あと設定集に逃げるな。原稿書けよ、原稿。いや原稿も書かなくていいけど。


暗鬱とした気分に陥りつつも、会議室に訪れた図書委員に声をかける。撤収後の状態を相談するためだ。


話は事前に一色が通してくれていたらしく、スムーズに進む。彼らの要望としては、椅子を10個ほど余分に置いていって、あとは全て撤収して良いとのこと。


「……だ、そうだ。まあ楽なもんだな」


「えー……それでも何往復せんとならんのだ、これは……?我ってそれなりに力はあるが、持久力は圧倒的に不足しているのだが……」


「ん、そだな……確か小体育館の椅子入れが今なら空いてる。あれを台車代わりにすれば少々重いが一往復で行けるだろ。取りに行くぞ」


「ほむん、それは妙案。……にしても貴様、なかなか生徒会活動が堂に入ってきたな……」


「不本意ながらな……」


思わず乾いた笑みが漏れる。


先日、被害者の会が実は生徒会の下部機関に過ぎなかったという、衝撃的なような、別にそうでもないような事実が発覚したが、確かにいつの間にやら生徒会事情に詳しくなっている。


椅子入れを台車を使うアイディアも、小体育館の設営状況が頭に入ってるからこそ浮かんだものだし……すっかり「一色いろはと愉快な仲間たち」の一員になってしまった自分がいる。


ただ、それだけに昼間の一色の態度が気になった。すぐにいつもの調子に戻ったものの、さっきから違和感が頭を離れない。


「ふむ……しかしあの椅子入れを台車にするのは確かに効率が良いが……二人では少し心許ないな……あれ、ものっそ大きかったであろう?」


「ん?ああ……そうかもしれんが」


材木座の言葉に現実に引き戻される。フラッシュアイディアだったが確かに少し辛いか?


思案していると、後ろから声をかけられる。


「お兄さん!今からっすか!?あー良かった、間に合って……」


「うお、た、大志か?お前、妹を迎えに行ったんじゃなかったのか?」


「はい!なんで、妹迎えに行って、家帰って、姉ちゃんに預けてから、再び手伝いに学校を訪れたんす!」


……そ、そう……頑張ったのね……


ハァハァと息を切らせながらも、人好きのする笑顔を向けてくる。


恐るべき男である、川崎大志。


こいつ、なんとか小町に近づきたくて、必死に俺のポイントを稼いでんだろうな……


……なんという異常な性欲。やはりこんな野獣みたいな奴を、小町を近づけてはいけないな……改めてそう思いました。


「いやー、俺も話を聞いてたんで、実は昼からずっと気が気じゃなかったんすよー、微力ながらお手伝いするっす!」


……そ、そう……なかなか義に篤いのね……


とにかく小町には近づけないようにしないと……


※※※※※※※※※※※※



かくして撤収作業にとりかかった俺達だったが、材木座のパゥワーと、大志の助力のおかげもあって、作業は拍子抜けするほど早く終えることが出来た。


無理めな量を搭載した巨大台車には、一瞬、絶望しかけたが、懸念だった階段の昇降はゴムシートを駆使して滑らせるように運ぶことで、一往復で全ての荷物を撤収することができたのだ。


往復数を出来る限り少なくしたいという、俺と材木座の物臭な精神と、随所に見せる大志の気配りがシナジー効果を発揮した結果ともいえよう。


椅子や機材を全て返却して会議室に戻ると、顧問が机をウンショウンショと引きずっている。


俺達が椅子を運んでいる間に、会議室の復元を手伝ってくれていたのだろう。俺達も急いで顧問を手伝う。


「やーご苦労さん!椅子をもう撤去しちゃうとは……なかなか仕事が早いね、もっとかかると思ってたけど……」


「や、まあ助っ人もいたんで……」


くいくいと二人を親指で指すと、顧問は満足気に微笑む。


「うんうん、有能なメンバーも揃って生徒会も盤石になってきたなぁ……」


「いや、これ本来しなくていい仕事なんすけどね。あいつ、つまんねーミスして……」


「はは、そう言ってあげないでよ。一色さん、最近は例の行事の廃止に頑張ってるからねぇ……そっちに気が回って、今回の件はうっかりしちゃってたんじゃないかなぁ」


……そう、そんな話があったんだよな……いつかの書記ちゃんとの話を思い出す。


近頃、一色が妙にご執心の案件……職場見学会の廃止に向けての動きである。


今回のミス、やはりこの案件が絡んでいたか……


……なんでも、元々人間というのはマルチタスクが出来ないようになっているらしい。


一見出来ているように周りには映っても、同じ量を個々でシングルタスクでこなすのに比べると、遥かに生産性やらクオリティで劣っているのだとか……そんな事をネットの記事で読んだことがある。


要するに、人間そんな同時にたくさんの仕事は出来ないということだ。


生徒会のメンバーも例年より少ないらしいし、一色はその上サッカー部のマネージャーもやっている。単純に限界を超えてしまったのだろう。


しかし一色は、ただ寒いという理由だけでサッカー部をサボってのける逸材である。


キャパシティを超えてまで、廃止に熱意を燃やす、その動機は何なのだろう……?


これは一度、本人から話を聞いておく必要があるな……


……だがその前に、ある程度情報を仕入れておきたいところだ。机を並べながら、顧問に話を伺う。


「それって何処まで話が進んでるんすか?行事の廃止とか、生徒会で出来るもんじゃないと思うんすけど」


「いやいや、それがそうでもないんだよねー、あの行事は貴重な授業が二コマほど削られちゃうから、先生方にはあまり評判良くなくて……これまでも何度となく廃止が俎上に載ったこともあるんだよねぇ」


「……そうなんすか」


「月末の生徒総会で決を採って、生徒たちからの要望が多ければ廃止も検討していいかな……って流れになってるんだよねー……」


マジか……


驚いてしまう、そんな所まで話が進んでいたとは……こうなると一気に廃止の現実味が増してくる。


「八幡よ、さっきから何の話だ?何か廃止になる行事でもあるのか?」


あらかた作業を終えたのか、材木座と大志も興味深げに近づいてくる。


「あれだよ、去年やっただろ、職場見学会。大志にとっては来年の行事になるが……」


「職場見学……それって社会見学みたいなモンっすか?」


「おお、そんな感じだ。もっとも小中学校の時とは違ってグループ毎に行き先を選べるんだけどな。……お前は興味あるか?」


「……正直、あんま無いっす。あ、でも授業が潰れるなら嬉しいかもしれないっすけど」


てへへ……と照れ笑いする大志。ふむ、実に真っ当な反応のような気がする。


こいつ姉ちゃんと違って普通にリア充っぽいし、サンプルとしては絶好の素材かもしれない。


「お前はどうだ、材木座。去年の職場見学会は楽しかったか?」


一応、マイノリティにも意見を聞いておく。


「……クク、愚問だな八幡。我がその手のグループ行動で、なにか楽しい思い出が作れる男だと思っているのか?」


ですよねー。


威風堂々とこんな情けないことを言うなんて……やっぱり材木座さんはそうでなくっちゃ!


「だいたい班分けする必然性がまったくもって理解しかねる。グループにすることで確実に一人や二人、全く興味のない企業に回ることになるのだぞ?本末転倒も甚だしい、あんなやっつけ行事そうはあるまいて!」


もう本当それな。分かるわー……


もっとも俺の場合、去年はちょっとした事件というか、すれ違いもあって、それどころではなかったりもしたのだが……


葉山のチョイスで、確かどこぞの電子機器メーカーに赴いたのだったか。


展示されていたものは、そこそこ面白かったような気もするが、総じて印象は薄い。


はっきり記憶しているのは、むしろその後。


――目に涙を溜めながら俺に向けてきた、あの強い眼差しぐらいのものだろうか。


思い出して、ちくりと胸が痛む。


「まあ材木座くんのいうことは一理あるね。厳密に主旨を考えるなら、確かに班分けする意味は無いんだよねぇ……でも、いざ始まると多くの生徒は楽しそうにしてたような……?」


「どうすかねぇ……楽しみにしてるのは、その後にある打ち上げだったりで、職場見学会そのものは、みんなダルそうにしてましたけどね」


「へー!さっすが高校生っす!そういうのちょっと楽しそうっすね!」


そういうの、とは打ち上げを指しているのだろう。大志が感心したような声を上げる。


「弟君よ……打ち上げといっても、どうせサイゼでわいわい駄弁るだけであるぞ?別にそんなもの、職場見学会でなくても、いつでも出来るではないか」


「そうなんすけど……なんか特別な雰囲気ありそうじゃないっすか、集まるきっかけにもなりますし……」


あくまで否定的な材木座に、大志も食い下がる。


まあ、なんとなくわからんでもない。大人たちが何かと酒を飲む口実を探しているのと同じノリなんだろう。


「楽しいのは打ち上げか……うーん……なるほど、そういうものかもしれないね……」


言いながら顧問が最後の机を広げると、四人で端を持って設置を完了させる。


これで大方復元作業も完了だ。


「ウチは進学校だから、殆ど大学行くか、そうじゃなければ浪人だからねぇ……、ちょっとでも将来の意識を高めて勉強のモチベーションに繋げて欲しいんだけど……まああんまり有効な機会とはいえないか~」


机に腰掛け、にへへと呑気に笑う顧問。


「……先生から見て、どうすかね、廃止になりそうな感じですか?」


「先生方はほとんど廃止派なんだよね……保健室に来る生徒にも最近聞いたりしてるんだけど、君のいうようにダルそうにしてる子が多いね。7:3ぐらいで廃止が多いんじゃないかなー」


「改めて聞かれると、自分も廃止って答えちゃうかもです。真面目ぶったみたいに思われたくないっていうか……」


ふむん……やはり廃止派が多いな……


それに大志のいうことも分かる。そういうチャラけた態度を、咄嗟に人は取ってしまうものだ。


でもチャラけた奴に小町を近づけるわけにはいかないんだよなぁ……


「……材木座はどうだ?お前も廃止がいいと思うか?」


「……うーむ……」


即答が返ってくると思ったが、何故か材木座はウムムと考え込んでいる。


「さっきの話し聞いた限りじゃ、お前も廃止派っぽいが……」


「そうなのだが……今の教諭殿の話を聞くとな……そう簡単に廃止と言えぬようになった」


「……ん?どういうことだ?」


「いや、廃止派の方が多いのであろう?……なんか、こう大多数がそうだから廃止というのも面白く無いではないか」


大真面目な顔でふんっと鼻息を鳴らす材木座に、思わず目を見張ってしまう。


「お、お前、なんだそりゃ……」


「むぅ?貴様なら分かると思ったのだがな……」


「あはは!いやー面白い意見だね!」


一層へらへらと笑う顧問だが、思考の隅を突かれて、俺は内心動揺していた。


なるほど、確かに材木座の言わんとしていることは分かる。


内容も、その理非さえ置いて、ただ多数派だからというのが気に食わない。


その心理……俺にはよく理解できる。材木座の言うとおり、いかにも俺の考えそうな事なのかもしれない。



同時に、一色の姿が脳裏をよぎる。


……また一つ、違和感が朧気ながらも形をなしたように思えた。



こいつ、三十五回に一回ぐらい、良いこと言うんだよなぁ……


「姉ちゃんも、そういうの言いそうだな……八幡組の皆さんって、ちょっと捻くれてる人が多い気がするっす!」


何だとこいつ。


二人して睨みつけると、大志は誤魔化すように手を振りながら、一歩後ろに引く。


失礼なやつだ……やはり小町を近づける訳にはいかないな……重ねて、そう思いました。


「あはは、捻くれた意見には違いないよねぇ……ま、君も生徒会のメンバーなんだから、じっくり考えてね~」


笑顔を収めて、顧問はパンと背中を叩いてくる。


「まあ、あんまやる気ないんすけど……」


「……そんな姿勢が誰かを救うこともあるよ。でも、何より大事なのは、考えを尽くす事だね。やる気は見せなくていいから」


ぺちんとウィンクをかまして指を額に突き付けてくる。


歳相応の包容力を見せつつ、なのにどこか子供っぽい。そんな仕草に誰かの面影を見たような気がした。


……よく生徒を見ている人だったと思う。この顧問もあの人と年齢や立場は近い。


だからだろうか……勝手に姿を重ねて、柄にもなく少し胸が詰まってしまう。


「……さて、じゃあお疲れさん。会議室の鍵は私が預かるから、もう帰っていいよ、えーと……君、名前なんだっけ……?」


気のせいだった。


あと、多分この人も結婚してないわ……



※※※※※※※※※※※※



仕事も終え、三人してダラダラ昇降口まで足を運ぶと、背後からパタパタと足音が近づいてくる。


一色検定二級の俺には分かる……この足音はあやつ!


先日の主旨返しだ。呼ばれる前に、俺はぐりんと体ごと後ろに振り返ってやる。


そこには予想通り一色が居て、文字通り飛び上がって驚く。


「せんぱー……わっ!き、キモ!マジでキモいですっ!」


「……」


ふ、ふえぇ……


後輩が出会い頭に心抉ってくるよぉ……


ちょっとした茶目っ気が思わぬ心の傷になり、顔で笑って、心で泣いて……


「いきなり振り向かないでくださいよー!あー、もう本当にビックリしました……」


胸を撫で下ろす一色だが、落ち着きを取り戻すと、いつものように俺の袖をついと摘む。


そして、にまーと意地の悪い笑顔を向けてきた。


「それにしても、こうして近づいただけで気付くなんて……いやー困っちゃいますねー、よっぽど先輩って、わたしのことが……」


と、そこまで口にして、一色は初めて二人が居ることに気付いたのか、わたわたと慌てた様子で手を後ろに組み直す。


「……お、おう、そっちはどうだった?上手くできたか?」


「あ、はいっ、運良く全員に電話が繋がって……本当に良かったです……」


目を瞑り、両手を胸に当て、ほうっとわざとらしく肩で息をつく。


うむ、実にあざとい挙動ですね……すっかりいつもの調子に戻ったようで、内心で俺も安堵の息をつく。


「先輩はもう終わったんですか?手伝いに行ったのに、会議室が閉まってたので……」


「おう、ちゃんと図書委員の要望通りにしといた。……こいつらも手伝ってくれたしな、思いの外早く終わったわ」


言って、ちょいちょいと材木座を親指で差す。


「……あ、どもです」


「あ、うむ。別に……」


一色の視線は材木座に対して微妙に軸を外しており、結果、虚空を見上げている。


一方の材木座は俺の後ろにコソコソ隠れて完全に明後日の方を向いている。


うん、君達……ちゃんと目を合わせてお話しましょうね……?


「お疲れ様っす!なんとかなったみたいで良かったっす!」


「えーと……か、川、かわ…大志くんもありがとうねー、助かっちゃったな~☆」


一転、きゃるろん☆とあざとい仕草を大志には見せる。


ターゲット・ロックオンという感じで、思わず背筋に悪寒が走る。大志くん……このまま絡め取られてしまうんじゃないかな……


あと、こいつ絶対苗字覚えてないからな……「マグマ大使」みたいなノリで覚えると、記憶のフックにかかりやすいことを今度教えてやろう。


「じゃあ先輩、今日はもうお帰りなんですね……」


「ああ、まあこいつらには連続して世話になったし……ラーメンでも奢ってやろうと思ってな」


「ラーメン……」


一色はほわんと頬を緩める。一色検定二級の俺には分かる……こいつ、すげぇ食べたそう……


なりたけで味をしめちゃったかな……?


「……お前も来るか?奢ってやるぞ、ついでに」


言うと、一色はぽかんとこちらを見てくる。


「……なんだよ」


「え、い、いや!今日、サッカー部は練習の後にミーティングなんです……お誘いは有り難いですけど、今からでも顔出してきます……」


シュンと項垂れる一色。あらあらまあまあ、いろはすも大変ね……


やっかみでも飛んで来ると思ったが、本当に残念そうな顔に少し哀れみを覚える。


こちらとしても、しておきたい話があったので、来れないのは残念だが……


まあ、こいつとは昼休みなり放課後なり、いくらでも話す機会がある。


代わりと言ってはなんだが、今日のところは少しのお小言で勘弁してやろう。


けぷこむと一つ咳払いする。


「まあ、あんま無理すんなよ……今日ぐらいのミスならどうってこと無いが、忙しすぎると本当にアレがアレになるからな」


うん、あまり小言になっていませんね……なんでしょうね……アレって。


「……なんか、今日は先輩優しいですね」


「ば、ばっか、ちげぇよ何言ってんの、お前の無茶なアジェンダがキャパシティを超えてオーバーワークになってるから業務のシュリンクをサジェスチョンしてやってんじゃねぇか」


「せ、先輩、何言ってるんですか……」


俺のロジカルな弁明に、一色はドン引きしていた。


いかんな……特に今日は考え詰めで、気を緩めるとうっかり意識が高くなってしまう。


今日のところは早いとこ脂ぎったのを一発流し込んで、心の洗濯をしたほうがよろしかろう……オイルクレンジングってやつ?


「では先輩、名残惜しいでしょうけども、ここでお別れです。お二人も今日はすいませんでしたー!ありがとうございますー!」


う、うん、別に名残惜しくないんですけど……


ぺこりん☆とあざとく頭をさげる一色に、二人も靴をつっかけながら鷹揚に頷いて返す。


俺も、じゃあの、と目だけで返すと、一色の後ろから見覚えのある固太りの小汚い中年が視界に入った。


以前、予算報告会でターゲットになった野球部顧問だ。


……すいません、小汚いは言い過ぎました。ちょっと固ぽっちゃりなさっている野球部顧問だ。


「おう、一色!ちょうど良いところに居たな」


「はいっ、こんにちは。どうされたんですか?」


先だっての後ろめたさもあってか、若干、緊張気味に返す一色。


しかし顧問の方は全く引きずっていないようで、ニッカと笑って天井を指差す。


「ああ、そこの蛍光灯のタマが切れかかっててな、悪いんだが、取り替えの手配をしておいてくれんか?」


あら……どこかで見たようなシーン……


なんてことのない光景だが、既視感もあって目が離せなくなる。


一色は、一瞬迷ったような顔をして……


「あっ、はい……分かりましたー」


そう答えた。


「忙しいとこスマン!よろしく頼むぞー」


満足気に微笑む顧問をそのまま見送ると、一色は、はぁと一つ溜息をつく。


そしてやがてパタパタと、どこかに走り去ってしまった。



「なんだあいつ……」


……なんとも腑に落ちない。


以前に、さっきと同じようなやり取りを厚木と交わしていたことを思い出す。


あの時は眼前で見事なお断りを披露してくれたのだが……


安堵したのも束の間、また一つ、気がかりなピースが生み出され、脳裏に当てどころなく彷徨う。


「お兄さん!早く行きましょうー!」


「はっちまーーん!はやく、はやくぅー!我、もう、お腹と背中が引っ付きそうであるぞー☆」


「お、おう悪い、今行く」


しとしとと雨の降りしきる空を、傘の合間から覗くように見上げる。


きっと杞憂では終わらないだろうと、そんな予感を抱きつつ。



※※※※※※※※※※※※※※



昼休みを告げるチャイムが鳴った。


雨もすっかり上がって、今日はベストプレイスで昼食が摂れるのだが、俺はしばらく机に突っ伏したままだった


……授業中、一色からメールで連絡があった。


今日の昼休みは、これから始まる保護者会を手伝うため、一緒することができないとの由。


事情はだいたい把握している。今頃は戸部と共に、来訪する保護者達への道案内の役目に従事しているのだろう。


「……」


学年が変わってからこっち、なんだかんだで、ほとんど毎日一色と昼食を共にしていた。


そのため、独りで食べるのは本当に久しぶりである。


……別に寂しいというわけではない。断じて寂しくなどないに決まっているのだが……


しかしルーティンを乱されてしまったせいか、我ながら意外なほどに力が抜けてしまって、普段のようにさっさと体を動かす気になれない。


物臭に、しばらく机に突っ伏していると、後ろのドアから聞き覚えのある声が教室に響く。


「比企谷ー、ちょっといいかー?」


大きな声ではないが、よく通る声にクラスの何名かが視線を向ける……のを気配で察する。


……副会長が俺のクラスに訪れるとは珍しい……はて、なにか用でもあるんだろうか……?


顔を上げると、副会長が知り合いに挨拶しつつ、手刀を切りつつ、こちらに向かってくる。


途中で目が合うと、副会長は何故か怪訝そうな顔をする。そして俺から視線を離して、ぐるりと辺りを見渡した。


「噂は本当だったか……」


「……おい、どした?」


つられて、俺も周りを見渡すと、昼休みに入ってから結構な時間が立っていたようで、既に多数のコロニーが形成されている。


あ……いかん、早くベストプレイスに行かないと……


見やると副会長は少し眉をひそめて教室を眺めていたが、やがて何かを決意したのか、キリッと顔を引き締めて、教壇の前に立った。


え……何してるの……?副会長……?


そしてパンパンと手を打って、皆の注意を惹きつける。


何事かと教室に居るクラスメートたちが、一斉に副会長に視線を集めた。


……嫌な予感がする。


「……ランチタイムに失礼、生徒会の副会長です。皆さんにお願いがあります、そこにいる比企谷と誰かお昼を一緒に食べて――」


いやあああああああああああああああ!!


俺はすぐさま立ち上がると、教壇にダッシュして、副会長の首根っこを掴んで教室を脱出した。


級友たちの憐憫の視線が、矢のように背中を穿つ。


ふ、ふわあ……凄いよこれ……今季一番のトラウマだよ……


この後、わたしったらどんな顔して教室に戻ったらいいのかしら……こんなの、教科書にないっ!



※※※※※※※※※※※※



そんなわけで俺は副会長と二人、ベストプレイスに退避していた。


定位置に座り込み、はぁはぁと息も整わないまま、まずはこの偉大な同志を称える。


「……副会長、お前がナンバーワンだ」


「何言ってるんだよ比企谷、俺はナンバーツーじゃないか」


あははと照れ笑いする副会長に戦慄することしきり。なんと恐ろしい男だろうか……


伏竜・鳳雛……そのどちらか一人を手に入れれば一色奴隷界を制することが出来ると言われている(俺に)


その両方が我が掌中にいるのだ。この八幡……慎まねばならぬ……慎まねば……


っていうか、生徒会メンバーは、今後俺の教室の出入り禁止な。寄ってたかって人の尊厳を踏みにじりやがって……絶対に許さんぞこいつら。


「……で、どうしたんだよ、用があったんだろ?」


「ああ、そうなんだ。……今日は被害者の会は休みだけど、ちょっと手伝って欲しいことがあって……」


言いながら、副会長はクリアファイルから紙を抜き出し、手渡してくる。


「比企谷は文章書くの得意だろ?実は今進めてる『生徒会だより』のコーナーがぽっかり空いちゃってさ、そこをお前に埋めて欲しいんだよ」


副会長から受け取った少し大きめのプリントをかさかさと広げる。


そこには、大小様々な四角が書かれており、四角の中には「行事のお知らせ」「保健委員から」「部活情報」だのと、それぞれ見出しが振ってある。


ただ一つ「生徒会からのお知らせ」という区画だけ、赤い線で縁取られている。


「あー……生徒会の出してる会報誌か……んで、このお知らせの欄を書いてほしいわけだな」


「そうなんだ、いつもはみんなで埋めるんだが……俺は今日の放課後、保護者会の撤収作業をしなきゃだし、会長は今日はサッカー部の日だし……ちょっと人手が足りないんだよな……まあ、会長は居てもあんまり役に立たないんだけど」


ははと呑気に笑う副会長だが、結構酷いことを言っておられる。


うん、でも、あの子、そういうキャラじゃないですもんね……基本的にアホですし……


「……まあ良いけどよ」


B4用紙の簡単な作りで、しかもその一角を埋めればいいだけだ。


先のスピーチの原稿や、いつぞやのフリーペーパーのコラムに比べれば楽なものだ。


どうせ真面目に読む奴も少数だろうし……


「そうか!助かるな……早速今日の放課後なんだが、頼めるか?」


「分かった、空けとく」


なーんて見栄張っちゃいましたが、いつでも空いてますよ!


「会報づくりに関しては責任者は俺になってるんだ。ちゃんと校正するから気楽に書いてくれ」


「ん、了解だ」


交渉成立、というよりも元々断られるとは思っていなかったのだろう。


副会長は呑気な笑顔でウンウン頷くと、既に学食で購入していたのかパンを袋から取り出す。


「比企谷は、いつもここで食べてるのか?」


「ああ、まあだいたいな」


「風も吹いてて結構いいとこだな。こんな場所あるなんて知らなかったな……」


ほうっとテニスコートを眺める。その先には既に戸塚が自主練を始めていて、ぽこぺんすぽーんと壁打ちをしている。


「……確か、ここで毎日会長と食べてるんだよな?」


「……お、おう」


やだ……なんで知ってるの……?情報源はどこかしら……?


考えるまでもなく、戸部やら書記ちゃんの姿が脳裏をよぎる。これ、なんとかした方がいいのかな……


「なら何か気付いたことないか?ちょっと最近様子がおかしいんだよな、彼女……」


「ん、お前もそう思うか?」


「ああ、ちょっと入れ込み過ぎというか、昨日の件に限らず、ミスが多くなってるんだよ」


「……マジか?」


「あ、いや、どうって事無いものばかりだぞ?大体は未然に防げてるし、表に出てもたかが知れてるようなのばかりなんだけど……」


「それって、一色が週三で生徒会に出るようになってからじゃねぇか?」


「……ん、そうかも……しれないな……」


こうして改まって相談する辺り、実態は少し深刻なのかもしれない。


危険信号と見たほうが良いだろう。


「うーん……やる気があるのは良いことなんだが……上手く言えないんだけど、何ていうのかな……らしくないんだよなぁ」


……ほとんど俺も同じことを思っていた。


「こういう言い方もおかしいな、そんなに彼女の事を知ってるわけでもないのに……」


言って、副会長は自嘲めいた苦笑を漏らす。


普段はちょっと呑気なところのある副会長だが、おどけた笑顔の奥に、真剣に一色を案じているのが見て取れた。


「……わからんでもない。俺も似たように思ってる」


「この前のミスも関係していると思うんだ……、比企谷、ちょっと会長のこと気にかけておいてくれないか?」


真剣な顔で、あの子と写したように同じことを言う。


……似た者カップルというのだろうか。思わず笑ってしまう。


「……な、なんだよ」


「まあ、そうするわ……できる範囲でな」


「そうか、なら安心だな」


何が安心なのかはよくわからなかったが、副会長はにこりと笑う。


そう無条件に信頼されても困るのだが……


生徒会の話は一区切り、俺も袋からパンを取り出す。


初夏の陽気を受けながら、二人並んでモグモグとパンを齧る。


「……お前、今日は書記ちゃんと食べないのか?」


「ま、毎日食べてるわけじゃないぞ!……と言っても、また明日作ってくれる約束になってるんだけどな、えへへ……」


「……へ、へぇ……」


「それに……昨日はああ言ったけど……俺はどちらかというと、ほたてより、あさりしぐれ煮の方が好きなんだよなぁ……」


知るか、爆発しろ。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※



放課後、副会長の依頼に応じ、早速生徒会室に訪れる。なんか、ここのところ毎日働いてる気がするんですが……


「……うす」


「あ、こんにちはっ、比企谷先輩!ありがとうございます、助かりますー!」


部屋に入ると、書記ちゃんが待ってましたとばかりに、パタパタと笑顔で駆け寄ってくる。


このウェルカム・モード。……うん、大変可愛らしゅうございますね……


「ごめんよ比企谷、今日は被害者の会、休みなのに……」


言いながらも、会計くんはお茶やらお菓子やらをトレイに乗せて運んできてくれる。


うむ……行き届いておる……


二人の謝意に、俺は手だけで鷹揚に返す。


「よし、ちゃっちゃと終わらせようぜ……過去の会報見せてくれるか?どんなんか見たい……」


「はい、これです。去年のも参考になると思うので用意しておきました!」


「原稿はテキストデータで送ってくれたら良いよ。文体も過去のに合わせる必要はないから」


「いいのか?雰囲気変わっちまうと、まずいんじゃねぇの?」


「いや、いろいろな生徒が関わってるってイメージを出したいから……要望があるとしたら、ちょっと面白い感じにしてくれるといいかな。そういうのあると次も読んでくれるし……」


……ふむ、なるほど。


笑える文章というのは難しいので、出来るかどうかわからないが……まあなんとかやってみよう。失笑を買う方向でもいいんだよね?


しかし、本当こいつら有能というか、気配りがあるというか、いろいろとお上手である。


入って五分で、すっかり仕事モードになってしまった……なんか凄くやりやすい……


「比企谷先輩、原稿の方は来週明けでも十分間に合いますので、じっくり考えてくださいね」


……しかも余裕まで持たせてくれている。なんというホワイト職場……


俺が生徒会の仕事するときって、いつも一色が切羽詰まった案件を持ってくるもんだから、総じてブラックなのだとばかり思っていたのだが……


認識を改めねばなるまい……うふふ、一色がいないってだけで、こんなにホワイトになるものなんですね……


黙々と手を動かしている内に方向性も次第に固まり、いつもと違って気負う事なく筆が進んでいく。


しばらく執筆に没頭にしていると、会計くんが不意に声を上げた。


「……あ、これ、一色会長に確認取らないと駄目だな……」


「ひ、ひぃっ!?」


「比企谷先輩……そこまで……」


不意に出てきた不穏な単語に、思わず反射的に可愛い声が出てしまった。


もしかしたら、ちょっとだけ格好悪く見えた可能性があるかもしれない。


それを証拠に書記ちゃんの俺を見る目が、呆れるを通り越して、虫を見るそれになっている……昔はそんな目をする子じゃなかったのに……


「会計さん、確認って……?」


「保健委員会の会議の日取りだよ、前の会議ではあやふやになっちゃったから……」


ふーむと思案する二人。


聞けば、会報に各委員会の会議の日程表を書かなければいけないのだが、保健委員の会合だけ、まだ日取りが決まっていなかったらしい。


保健委員会といえば、その首魁は我らが顧問の養護教諭である。


だが先にあった会議は踊るに踊り、くわえて顧問のずぼらも合って、次の会議が未定のままだったのだ。


その後、一色が顧問と相談して次の会議を行う日にちを決めたらしいのだが、その日取りを二人はまだ聞いていないのだという。


……要するに、またも一色のミスである。


基本的なホウレンソウが出来ていない……というところだろうか。もう……あの子ったら……


とは言え、こんな不注意は可愛いものだ。携帯一つで解決することが出来る。


「じゃあ私、いろはちゃんに電話してみますね」


今頃はサッカー部でマネージャーをやっているのだろう。書記ちゃんは早速一色に電話で問い合わせる。


「あれ……?出ないですね……立てこんでるのかなぁ?」


小首をかしげる書記ちゃんだが、同時にブブブと低い振動音が近くから聞こえてくる。


もしやと思い、振動の音源を辿ると、一色の机の上で、見覚えのあるスマホがぶりぶり震えている。


「……あいつ、スマホを置き忘れたみたいだな……これ一色のだわ」


「あー……昼休み、ゴタゴタしてたから置き忘れたのかもね……鞄もここに置いたままだし…」


「部活終わったら、ここに戻るつもりだったのかも……」


とまれ、これでは連絡が取れない。どうするよ?と二人を見やると書記ちゃんが応える。


「私、いろはちゃんに直接聞いてきます。グラウンドに居るでしょうから」


「んー……そんなに急ぎでも無いから、明日でもいいけどね……」


「早いほうが良いですよ、私行ってきますね!」


書記ちゃんも先だってのミスを気にしているのか、挽回すべく張り切っているのが見て取れる。


まあ、早め早めに動くのが、結局ゆとりに繋がったりしますからね……


しかし、俺としてはどうにも気にかかってしまう。


由比ヶ浜同様、コミュ力の高い一色のこと。……スマホなんてのはマスト中のマストアイテムではないのだろうか?


俺じゃあるまいし、こんなとこに置き忘れるなんて……


どれもこれも他愛のない不注意だが、副会長の話も考慮すれば、一色は立て続けにこうしたミスを犯していることになる。

さすがにここまで行くと尋常ではない。


いそいそと準備をする書記ちゃんに俺は声をかける。


「……書記ちゃん、それ、俺も行っていいか……?」




※※※※※※※※※※※※



ずっと考えていた。


なぜ一色が、これほどまで職場見学会の廃止に拘っているのか?


この前は不可能だとたかをくくっていたが、昨日の顧問の話によれば、廃止の現実味は俄然高くなっている。


状況に恵まれたところがあるにせよ、現実的に廃止の筋道を作っていたというのは素直に驚いてしまう。


だが、それより何より気になるのは動機だ。


生徒会にサッカー部……そして今回の廃止工作……


今現在、一色は明らかにキャパを超えた仕事を抱え込んでいる。


要するに無理をしているわけだが、そこまで廃止に情熱を傾けるのは何故なのか……?


……行事を廃止して楽をしたいのだろうか?


……あるいは純粋に、生徒のため、学校のため、ニーズに応えて改革しようというのだろうか?


この二つはトレードオフではない。両方……ということも、もちろん有りえるのだが、何れにせよどちらかの動機にウェイトがあるはずだ。


前者なら良い。


楽をしたい一心で動いているのなら、この胸のもやもやは一気に霧散解消してしまうだろう。


実際には廃止にかけるエネルギーは膨大だ。廃止する方がむしろしんどいまである。


だが、たとえ実態はどうあれ、そこには業務量をコントロールしようという意志があるということだ。


廃止に割いたエネルギーの分、他の仕事のクオリティを落とせばいいだけのことだ。あるいは周りに仕事を押し付けても良い。


それに、この動機は俺がイメージする「一色らしさ」とも符合して座りが良い。


だが後者ならどうだろう……?


「……輩、比企谷先輩?」


「お!?……お、おう、どした書記ちゃん……?」


「いえ、もう着きましたので……それ以上進むと茂みに入っちゃいますよ?」


「はい……」


ちょっとお茶目な一面を見せてしまった。


「……フフ、付いてきたのは、いろはちゃんを気にかけてくれたからですか?」


「ば、ばっかちげぇよ、ここのところミスが続いてるから、ちょっと心配してるだけだ」


「……全然違わないと思うんですけど……あ、今、ゲームをやってるみたいですね」


苦笑を貼り付けたまま、書記ちゃんがグラウンドを指差す。


階段の上からグラウンドを見下ろす。サッカー部がチームを二つに分けて試合形式で練習に励んでいるようだ。


他の体育会系のクラブはテストが近いため、既に下校している。試合の最中にあるサッカー部だけが、特別にグラウンドの使用を許可されているのだ。


「……一段落するまで待っていましょうか?」


「ん……そだな」


グラウンドの縄張り争いは体育会系の風物詩のようなものだが、この独占状態を好機とばかりに、サッカー部はのびのびと広く使って練習している。


脇にはマネージャーが何人かいて、タイムを図ったり、声援を送ったり、なにやらノートに書いていたりと、それぞれ甲斐甲斐しく働いている。


その一人である一色もストップウォッチを片手に、健気に声を張り上げていた。


「葉山せんぱーい!八番がフリーですよー!あ、四番足止まってますよーファイトファイトー!」


……いや、一色さん……そこは名前言ってあげようよ……なんで番号で呼ぶの?


「葉山先輩!相手の二番コース狙ってますよ!回して回して!……あ、残り十分でーす!」


それとも、この場合はビブスの番号を言うのが普通なのかな?……あれ、でも葉山だけはさっきから名指しだよね……?もうこれ分かんねぇな……


ただ、一色が葉山にご執心なのも分かる。


サッカーといえば授業でしかやったことがないので、どいつこいつも大変上手に見えるのだが、そんな中でも葉山の技量は明らかに飛び抜けて見える。


所謂トップ下のポジションなのか、ボールを巧みにキープし、パスを的確に供給し、時には相手のバイタルエリアに果敢に切り込んでいく。


まさにチームのエースとも言える存在感で、ボールの支配率は葉山のチームが圧倒している。


……だが得点するには、今一歩至らない。肝心なところで攻め手が絶たれてしまうのだ。


その理由も、素人目といえど充分に明らかだった。


「お見通しー!」


通るかと思われた葉山のスルーパスだが、戸部のスライディングに遮られる。


すぐにキープすると、自ら前線にパスを兼ねてクリアする。葉山は悔しそうに両手で顔を覆う。


……うーむ、戸部もさるもの……先程から、葉山を相手になかなか見事な立ち回りである。防戦一方ではあるが、決定機を与えない。


「二番へのマーク遅れてますよー!ファイトファイトー!」


ちなみに、さっきから一色さんが二番二番と言っているのは戸部のことである。名前で呼んであげてよぉ……


「……戸部先輩、気配を絶つのが本当に上手くなりましたね……この前の生徒会の研修の時も、すごく飲み込みが早かったんです……」


試合を見ながら、感心したように書記ちゃんが漏らす。


……いろいろ突っ込みたいところもあったが、闇が深そうなのでスルーした。


生徒会の知られざる研修はさておき、こうして見ると戸部もなかなか格好いい。


運動量も豊富で、要所要所でパスを切ってくる。時にはドリブルで相手の陣内に深々と入り込んではクロスを上げて脅威を与えている。


たいしたもんだなー……普段はアホそのものなのにな……


などとぼんやり戸部を見ていたが、ボールは再び葉山に回り、脇にいる補欠と思しき選手やマネージャー達が、わっと沸き立つ。


トラップ時にすぐに激しいチェックを受けるが、葉山は難なくそれを躱す。


呼応した前線の選手がスペースに駆け込んでいくのを見計らい、今度こそ葉山のスルーパスが通る……!


……と思われたが、またもスルスルと後ろから走り寄っていた戸部が、パスの出際を遮った。


クリアされたボールは、場外に向けて大きな弧を描く。


これにはゲーム中の選手たちも感嘆の声を上げる。


「ナイカッ!戸部ー調子いいなー!」


「ナイスナイス!切れてるぞ戸部ー!」


「いいぞ!」


やだ……とべっち、今のはマジで格好いい……


いや、本当にすげぇな……これは見直さざるを得ない……この姿を、もし海老名さんが見れば、それなりに心打たれるものがあるのではないか……?


「あっはっはー、余裕っしょー!これ来てる!?俺の時代来ちゃってるーー!?」


調子に乗ってウェーイと走りながら皆の賞賛に応える戸部だが、勢いが止まらないのか、そのまま場外に置いてあったボールのカゴにぶち当たり、その拍子に頭から突っ込んでしまう。


勢いは留まらず、ドベーンと戸部と共に倒れたカゴからはボールが溢れ、ゴロゴロとそこいらに散らばった。


「あはは……戸部先輩、途中までいい感じだったんですけどね……」


「お、おう……」


うん……やっぱアホだ、あいつ……全然格好良くなかったわ……


戸部のせいで散乱したボールを、ゲームに参加していない選手やマネージャーが急いで拾いに回る。


「何やってんだ、調子のんな戸部!」


「よそ見して走んなや、真面目にやれ戸部ー!」


「殺すぞ!」


一転して皆に罵倒される戸部。


ちょ、ちょっと皆さん……酷いんじゃないですかね……?


一色の方を見やると、あの子ったら腹を抱えてゲラゲラ笑ってますし……もう分かってたけど本当いろはす最低だな……



……しかし、まあ、楽しそうで何よりである。


こうして見ると、一色はサッカー部にもしっくりハマっている。


生徒会で会長然と振る舞う姿も、こまっしゃくれていて魅力的なのだが、サッカー部にいるときの表情は、またそれとは異なる輝きを放っている。


飄々とした態度はそのままに、ここでは快活さも存分に現れているように思える。常よりも若干真剣な顔をしていることも多い。


それが、ここでの一色の仮面なのだろう。


人は誰しもいくつもの仮面を用意しており、その場にいる人物やコミュニティに応じて付け替えていく。


「ペルソナ」などと小洒落た言い方もあるようだが、俺が普段見ることの無い一色の顔が、そこにはあった。


「再開しますよー!残り三分です!」


すぐに切り替えて、真剣な顔を選手たちに向ける。


ウェーイという返事とともにゲームが再開され、再び選手たちがグラウンドを駆けまわり、激しくボールを奪い合う。


やがてボールを預けられた葉山は、相手の陣形の偏りを察知したのか、逆サイドに大きく蹴りだす。


そのボールに後方から前線に向けてサイドバックが走り込む。繋がると思われたが、しかしトラップに手間取ってしまったのか、もたついている内に対応したディフェンダーの激しいチェックを受け、ボールを奪われてしまう。


「ナイスカット!」


「戸部に回せ!」


声を出し合い、ボールを要求する選手たち。すわ反撃とボールは前線に送られていく。


しかしその影で、先ほどの激しい交差のためかサイドバックの選手が足を抱えてもんどり打っている。


あー……痛そう……あれは怪我しちゃったかな……


俺は上から俯瞰しているため、その様子にすぐに気付くことができたが、ゲーム中の選手や、脇にいるマネージャー達はまだ気付いていない。


そんな中、一色がデッキに置かれた冷却スプレーを取りに走る姿が視界に入る。


いち早く気付いた一色だが、しかし焦っていたのか、デッキに体をぶつけてしまい、上に置いてあった他の用具を、がしゃーんと地面に散らばせてしまう。


「きゃっ!?」


「いろはちゃんっ、なにやってるの!」


先輩マネージャーが、その姿を咎める。


……が、やがて選手たちが、怪我をした選手に気づき、ゲームは一旦中断される。


「マネージャー!スプレー早く早く!」


「よし、ここで一旦休憩だ!おい、大丈夫か……!」


葉山とマネージャーの何人かが、冷却スプレーを手に怪我した選手に走り寄る。


他の選手たちも心配げな顔を浮かべつつ、ぞろぞろと場外に出て行く。そんな中、一色はバツの悪い顔で散らばってしまった用具を、いそいそとデッキの上に戻していた。


「……」


……嫌なものを、見てしまった。


今のミス……一色がぼけーとして起こしたものではない。むしろ、反応は誰よりも早かった。


だからおそらく、さっきのは、入れ込み過ぎたが故のミスなのだ。


「いろはちゃん……どうしたんだろう……」


「……認知バイアスってやつだな」


「……え?」


忸怩たる思いに、思わず拳を握りしめる。


目が曇っていた。


――どうして気付かなかったのか。気付いてやれなかったのか。


なまじ俺達には遠慮がないものだから、かえって判断が遅れてしまった。


仮面には種類がある。……俺の見えないところで、きっと一色は気を張っていたのだろう。


サッカー部のマネージャーとしての一色は、ちらりと見た限りでも、たいそう魅力的である。


きっと彼女にとって、ここが大切な空間なのは、まず間違いない。


そこには苦楽を共にする同僚が居て、厳しくも優しい先輩が居て、今なら可愛い後輩もいる。縦割りの世界ならではの充実感があるのだろう。


しかし、そこには、いくら一色といえど、緊張感が絶え間なくあるはずだ。また、そうでなくては面白くもないのだろう。

要するに、俺は一色の負担を甘く見積もっていたのだ。


あざとくて、無遠慮で、小生意気で、先輩だろうがなんだろうが遠慮なく顎で使う、傲岸不遜な小悪魔ビッチ。


そんな一色「らしさ」など、俺の前だけで付けている仮面の一つに過ぎないというのに……


サッカー部の中では、もしかしたら戸部にだけ、俺に近い仮面を見せていたのかもしれないが……



とまれ、そんな当たり前の事に気付いていれば、もっと早くに動けていただろう。


今思えば兆候はいくらでもあったのだ。


GW明け、あいつが昼食時に居眠りしていた時。


俺達のスケジュールに妙に厳格だった時。


先日の保護者会案内の誤植が発覚した時。


野球部顧問への対応が、厚木の時と違っていた時。


気が付く機会はいくらでもあったというのに……




……早急に対処しなければいけない。多分、もうあまり余裕は無いだろう。


差し当たって行うべきは、すぐにこの場を離れることだ。



「――書記ちゃん、戻ろう。急いだほうがいい」


「え、えっ!?どうして……」


「いいから早くだ、会合の日取りは明日でもいいんだろ?」


「それは……そうですけど……」


書記ちゃんの腕を引いて、その場を退散しようとするが、ここで期待を裏切ってしまうのが一色である。


「あー、せんぱーい!書記ちゃん!どうしてここにー?」


もたもたしていると気付かれてしまった。


俺達の姿に驚きの顔を向けながら、ぱたぱたと階段を駆け上がってくる。


思わず片手で顔を覆う。


「どうしたんですか?お二人とも……」


「あ、その、会報の件で、いろはちゃんにちょっと聞きた……」


「いや、たいしたこっちゃねぇよ。気分転換に冷やかしに来ただけだ」


書記ちゃんの言葉に被せるように口を挟む。


しかし、かえって不信に思ったのか、一色は怪訝な顔を浮かべながら俺の袖をはっしと掴む。


「今、会報って、書記ちゃん言いましたよね……?」


「や、ほんとしょうもないことだからさ、今日はマネージャーに集中しとけって」


「気になるじゃないですかー!?かえって集中できません!」


まあ、そうだよなぁ……残った手で髪をガシガシと掻くも、そんなことで間が持つわけもない。


書記ちゃんも、なんとなく意図を察したのか、俺に代わって、できるだけ軽い感じで言う。


「本当にちょっとしたことなんだよ?ほら、来月の保健委員の会議の日取り、いろはちゃんが先生と調整してくれたから知ってると思って……」


「あ……日取りの件、みんなに言うの忘れてたね……ごめん……でも電話を入れてくれれば……」


「それは……それで電話しようと思ったんだけど、いろはちゃんスマホを生徒会室に忘れてたから……」


「あ、そっか……ケータイ生徒会室に忘れてたんだ……そういえば失くしちゃったと思って……ご、ごめんね……」


話せば話すほどドツボにはまる。


どうしましょうという顔で書記ちゃんが俺を見るが、もうこうなったらどうしようもない。


「……それに日取り……いつだったかな?確か手帳にメモしてたんだけど……生徒会室の鞄に入れたままかも……」


次々と自分の不手際を自覚してしまい、悔しそうに唇を噛む。


黙っておけば、こんなのはミスの内に入らない、どれも些細なものばかりなのだ。


傷口を勝手に広げていく一色が見るに堪えない。だから早く戻りたかったのだが……


「……おい、一色」


「ちょっと私抜けさせてもらいます!今から葉山先輩に相談するので、ちょっと待っててください……一緒に生徒会室行きましょう、先輩!」


「だから、今日は良いって言ってるだろ」


「ダメですよ、そんなの!」


ぎゃーぎゃー言い合っていると、横から声が飛んで来る。


「どうしたんだ?比企谷、いろはに何か用でもあったか……?」


……振り返れば奴がいる。


タオルで汗を拭いながら、葉山が俺達のいる高台まで上がって来た。


「……すまんな、練習中に。ちょっと生徒会のアレで、アレなんだよ。どうってアレじゃねぇ……それよりいいのか?怪我した奴は……」


「ああ、ただの打ち身……だと思う。腿に入っただけみたいだから心配いらないよ」


「あ、葉山先輩、申し訳ないですけど、ちょっと生徒会の仕事があって抜けさせて欲しいんですよー!」


「おい!」


思わず声を荒げてしまう。少し驚いた顔をする一色だったが、しかし、こいつが俺にビビるわけもなく……


「も、もう!すぐ終わらせますよー、ちゃっちゃと行って、ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう、会報早く終わると助かるんですー!」


「今日はやめとけ、昨日も言ったろ、いっぺんにいろんな事はできねーよ。生徒会に来たら、今度はサッカー部が気になりだす。結局どっちも疎かになるぞ」


「……そ、それは、そうかもですけど……」


……思い当たる節があるのだろう。一色は一瞬たじろくが、そっぽを向いて誤魔化してしまう。


そこに、思わぬ横槍が入った。


「……いいじゃないか、行っていいよ、いろは」


「え……?あ、はい……!」


一色にとっては助け舟に他ならない。葉山の言葉にぱあっと顔を輝かせる。


だが俺にとっては余計なちょっかいである……こいつ、何のつもりだ……


「おい、お前な……」


「今日はマネージャーも全員出揃ってるし、こっちは問題ない」


上っ面を捉えれば理解のある部長の優しいお言葉。……だがそうではない、この言葉は俺に対してのものだ。


葉山の目には、これまでも何度となく向けられた蔑みの色が含まれており、それはしっかりと俺に向けられている。


ぞっとするほどに冷たい視線は、あの人を彷彿とさせた。


「一色の心配をしてるんだよ、こっちは」


「……優しく見えるけど、人を信用していないのは残酷とも言えるな」


明らかに、俺の心に刺さるよう言葉を選んでいる。その洞察力で、その苛烈さで、斬りかかっているのだ。


思えば前の予算委員会で顔を合わせた時も、こいつは最初、妙に挑発的だった。


何故突っかかってくるのか……心当たりは、ないでもない。


しかし、それは今この場では、何の関係もないはずである。


言ってしまえば、今こいつがやっていることは八つ当たりに近い。


「……まあ、それが正しいのかもな。現状追認の良い言い訳にもなるし……今後の参考にさせてもらうわ」


皮肉の一つでも返さなければ、こちらとしても収まりが悪い。


おまけに下卑た笑いを熨斗に付けると、葉山はわかりやすく目に怒気を孕ませる。


……やはりこいつは陽乃さんではない。そんな事に少し安心する。


「あの、先輩……?葉山先輩も……お二人とも、なんか変ですよ?」


「ひ、比企谷先輩……」


思いもかけなかったのだろう。突然の剣呑な雰囲気に、二人も困惑の表情を浮かべている。


だが、そんな彼女らなどお構いなしに、葉山は言葉を続ける。


「お前には言われたくない。……そうだろ?」


一旦言葉を区切る。


依然、蔑みを含んだその眼に、冷たさと、苛烈さと……さらには、自嘲めいた色を付け足して告げる。


「もう同じじゃないか、――お前も、俺と」


かっと、こめかみが熱くなる。


――何を言う、こいつ……!




その言葉だけは看過できない。それが例え本心でなくても、安い挑発であったとしても。


去年の文化祭、特別棟の屋上で相模と相対した時、こいつに胸ぐらを掴まれ、壁に押し付けられたことがある。


どこまでが演出で、どこまでが本気だったのか……測りかねていたが、今になって思う。


あの時、こいつはかなりの部分、本気で俺に掴みかかったのではないだろうか?


「……アホかお前、全然違うだろうが」


言いながら、俺はポケットから手を抜いて、葉山に向かって一歩踏み出す。


それ以上を言わせてはいけない。勝手な総括は許さない。


「せ、せんぱいっ!」


だが、それ以上の行為は、体ごと間に入った一色に遮られてしまった。


気を削がれ、葉山から視線を逸らす。


「葉山先輩、で、では、お言葉に甘えて、少し抜けさせてもらいますねー、すぐ戻りますのでー!」


「……生徒会、結構忙しいんだろ?直帰してもいい、マネージャーたちにも上手く話を通しておくよ」


言って、最後にもう一度、冷ややかな視線を俺に向けると、体ごとグラウンドに振り返り階段を降りていく。


「ありがとうございます、助かりますー!」


前を向いたまま手を振る葉山を確認すると、一色は俺の腕を両手で抱きかかえるようにして、グイグイと引きずってその場を離れようとする。


腕を引かれながらグラウンドの方を見やると、どうも注目を集めてしまっていたらしい。


下からはサッカー部の面々が怪訝な顔つきでこちらの様子を眺めている。


その中には戸部もいて、あたふたとしながら『トラボー?トラボー?』と俺に目で問うてくる。


そんな戸部に手だけで鷹揚に返し、そのまま引き摺られてグラウンドを後にする。


隣では書記ちゃんが恨めしげに、こちらを見ていた。


……うん、いや、まったくもって面目ない……


こんな事をしに来たんじゃ無かったのになぁ……



※※※※※※※※※※※※※※※



生徒会室までの道程、一色は俺の腕を掴んだまま離してくれず、連行するように隣を歩いている。


だが、どこか落ち込んでいるようで、浮かない顔のまま、はぁとため息をついた。


「……先輩と、葉山先輩は、割と仲良しなんだと思ってました……」


何を言うのだろう……こいつは……


「あり得んだろ、それ……なんでそう思ったんだ?」


「……だって、なんか二人でダブルデートとかしてましたし……マラソンの打ち上げの時も、バレンタインの時も、よく二人で話し込んでましたし……」


……よく覚えてんな、こいつ……しかし、そういう風に映っていたのか。


なら、いい機会だ。教えておいたほうが良いだろう。


「俺はあいつが嫌いだし、あいつも俺が嫌いだよ。……分かるだろうが、そんなもん」


「……そんな風には見えないんですけど……」


「まあ、お前にゃ関係ねぇ。それだけ知ってりゃ十分だ。おい、それより……」


「謝ってください」


話を戻そうとした俺を遮って、一色はぷくっと頬を膨らませながら言う。


なんて理不尽な子なのかしら……


それに……それだけは絶対に、嫌だ。


「……なんで俺が葉山に謝らんといかんのだ。普通におかしいだろ、それ」


「違いますよ、葉山先輩じゃないです!私に謝るんです!」


「……あ?」


一瞬、頭が飛んでしまう。


もう本当にわかんない。何言ってんのこの子、アホじゃないかしら……?


「あ、いや、なんで……?」


「……だって、怖かったじゃないですか」


「お、おう……え?なんで……?」


反射的に相槌を打ってしまったが、まったく理由になっていない。


どういうこと?と書記ちゃんにも目を向けるが、彼女もふりふりと首を横に振る。


一色は俺に目を合わせないまま、口を尖らせる。


「……先輩は、普段から気持ち悪くて怖い時ありますけど……今日のは本当に怖かったじゃないですか。……だから謝ってください」


依然目を合わせないまま、真面目くさった顔でそんなことを言う。


……そ、そう……普段から気持ち悪かったですか……


相変わらず理由になっていないのだが、しかし、いつになく深刻な顔つきの一色に、言い返すのも憚られる。


「……そこは、すまん」


仕方なく謝ると、何故か隣で書記ちゃんが吹き出した。


な、なんで笑うんですかね……?


いろいろ意味がわからなかったが、ともあれ、それでようやく場の空気が弛緩する。


「今後は怖いの禁止ですから……二度目はないですよ?」


「はいはい、その代わり今後は普段よりキモめにいくからな」


「それでもいいです……その方が先輩らしいですし」


……そ、そう……私らしいですか……


一色の中で、俺は一体どういう存在になっているのだろう……?


あれかな、雛壇におけるキモ可愛い枠なのかな……


「……でも、比企谷先輩もキモ……じゃなかった、怖かったですけど、葉山先輩もなんだか様子がおかしかったですね」


書記ちゃんが口に指を当てながら言う。


不穏な一言を拾ったが、それは純粋な言い間違いであると信じたい。


「何か、あったんですか?」


「……まあ、なんだ、前からあいつとはあんな感じだ」


「私も葉山先輩とは何度かお話したことありますけど……いつも優しくて、あんなの初めて見ましたから……怖かったです」


「……まあ、すまん」


曖昧に返さざるをえない。しかし原因の一端が俺にあるのは、分かっている。


……だから、それは俺の責任なのだろう。


書記ちゃんだけではない、一色も同じく思ったのではないだろうか。


今こうして冷静になってみると、不用意だったと思う。


収まりがつかなかったとはいえ、あんな悔し紛れの反論などしてはいけなかった。


……何よりも一色の前で、あの葉山を見せるべきではなかった。


「……」


ちらりと一色の方を見やると、さっきまでずっと逸らしていた顔を、いつの間にか俺の方に向けていたようで、視線がかち合ってしまう。


「……何だよ」


「べ、別に……何でもないですし……」


こんな時、先に視線を逸らすのは大抵は俺の方なのだが、今日は一色が先に顔を背けてしまう。


そうこうしている内に、生徒会室が見えてくる。


一色は俺の腕を離すと、誤魔化すようにパタパタと生徒会室に駆け込む。


「会計さん、すみませんー!保健委員の日程、伝え忘れちゃって!」


取り残された形になった俺達だが、一色が部屋に入るのを見計って、書記ちゃんが小さく漏らした。


「なんか有耶無耶になっちゃいましたけど、……いろはちゃんも、やっぱりおかしいですよね……」


「……ああ」


……このまま行けば、早晩、一色は行き詰まってしまうだろう。


一色のミスが多いのは、明らかに自分の範囲を超えた仕事を抱え込んでいるからだ。


おそらく、見えないところでもっと大きなものを背負っているはずだ。


その直接的な原因は、職場見学会廃止にエネルギーを割いていることなのは、もはや疑いようがない。



では、何故、廃止にそこまで入れこむのか?


楽をしたいからではない。それを、さっきサッカー部で様子見した時に気付いてしまった。


生徒のため、学校のため……彼女は何かしらの大義のために動いているのだろう。


そして、この大義というのが厄介だ。


一旦掲げてしまうと、その遂行のために他方でサボる事を良しとしなくなる。厳しい誓約を自覚のあるなしに関わらず、己に課してしまうのだ。


それが自分の器に収まってるのなら問題はない。


だが、もしそうでないのなら、結果、作業量は器を溢れ、あっさり潰れてしまう。


あるいは本質からどんどんかけ離れた行動に終始するようになる。


惨めな空回りを続けるようになるのだ。


……まるで、いつかの誰かを見ているようではないか。



『……わたしも、本物が欲しくなったんです』


その大義は、決して本物などではない。そのことに彼女は気付いているだろうか?




『先輩のせいですからね、わたしがこうなったの』


そしてそのまま進むことで、知らずに失ってしまうものがあることを、彼女は知っているだろうか?




『責任、とってくださいね』


……いいだろう。焚き付けたのが俺なら、その義務も俺のものに違いない。


この期に及んで、もはや言葉は意味を為さないだろう。


なら俺に、比企谷八幡に出来ることは……




「それなんだけどな、書記ちゃん。例の職場見学会を廃止する件……」


「えっ?……あ、はい!」


少し唐突過ぎただろうか。


しかし彼女も何らかの形で、今回の事案と廃止の件を紐つけていたのだろう。


すぐに得心した顔を向けてくる。


「……比企谷先輩、手伝ってくれるんですね……いろはちゃんのこと……」


ぱあっと表情が明るくなる。


そのあどけない顔に、俺はニヤリと悪く微笑んでみせた。


「被害者の会は阻止に動く……一色の好きにはさせない」


「……」


「……」


「え、えええーー!?なんでそうなるんですかーーー!?」


……などと締まらないことを言う書記ちゃんですが……




覚悟しろよ一色……格の違いってやつを見せてやる。


次回、徹頭徹尾、俺のターン!






※※※※※※※※※※※※





一色いろは・被害者の会4

策謀編・前半 【了】


次回、激闘のような、そうでもないようなものが始まる……!


続き


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SS好きの名無しさんから
2015-10-26 09:24:29

SS好きの名無しさんから
2015-10-26 03:19:00

SS好きの名無しさんから
2015-10-26 03:17:45

SS好きの名無しさんから
2015-10-26 03:04:31

SS好きの名無しさんから
2015-10-26 01:55:25

このSSへのコメント

22件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2015-10-26 01:25:09 ID: Y446rfnE

静ちゃん…結婚したのかな?いや、無理か

2: SS好きの名無しさん 2015-10-26 03:17:36 ID: iV4QhRx5

更新待ってました
このSSのいろはすめちゃくちゃ可愛いけど八幡もかっけえ

3: SS好きの名無しさん 2015-10-26 09:24:16 ID: C-S0x3ya

時間忘れて読んだわ
ほんっとおもすれー

4: SS好きの名無しさん 2015-10-26 11:45:30 ID: HEZGZUXn

いやーマジで面白いですね。
 今回も副会長とのシーンとか大志に小町はやらんの件とか笑えるシーンが多かったけど、その分いつもよりシリアスな感じでしたね。特に八幡と葉山の関係とか奉仕部というより雪乃が関係してるんでしょうね。いろはもなんだか様子がアレですし。
 後半は被害者の会が活躍してくれるだろうから超楽しみにしておきます。

5: SS好きの名無しさん 2015-10-26 23:42:15 ID: y9fx0VvR

超更新されるの待ってました!
そして続き超待機してますよ!!

6: 黒焔 2015-10-27 01:41:05 ID: zrxYdaPQ

ほんと面白いです!これからも楽しみにしてます!

7: SS好きの名無しさん 2015-10-27 18:04:41 ID: tWdxpqFw

いろはす以外との絡みも楽しくて、
いい感じに世界つくっててすごいなーって思う。
本当に続きが楽しみ

8: SS好きの名無しさん 2015-10-27 23:16:54 ID: UeTJnQ_f

やたっ! 毎回楽しみすぎる。
笑いもシリアスも兼ね備えた筆力には感服しております。

9: SS好きの名無しさん 2015-10-29 17:07:46 ID: DSNt994j

銀英伝タイトルの人!今回もとても面白かったです!!

10: SS好きの名無しさん 2015-11-01 14:20:38 ID: iz1awk31

被害者の会とそれ以外のメンバーとの態度の差が面白かったけど
そういうことやったんやね

11: SS好きの名無しさん 2015-11-08 01:31:24 ID: q3rr_mBK

コメディとシリアスのバランスが良くて面白い。後半も楽しみ。

12: SS好きの名無しさん 2015-11-10 10:18:06 ID: 1336IzDe

続きはよ!

13: datsui_ss_club 2015-11-10 21:57:28 ID: 8klCSlu6

>>1-12
読んでくれてサンキュウ!

ちょっと社畜で忙しくて……
もうちょっと待ってね!

14: SS好きの名無しさん 2015-11-12 02:07:55 ID: V4KrtPn7

日本社会の闇に飲まれつつある作者さんがんばれ

15: SS好きの名無しさん 2015-11-21 15:12:56 ID: _tQThSdo

 うわー早く続きが見たい! 作者さん同じ社畜として応援しています

16: SS好きの名無しさん 2015-11-24 21:27:54 ID: _etmjYWS

毎日更新をチェックしてる

17: SS好きの名無しさん 2015-11-26 05:26:29 ID: KiYlTf8n

紙の本で出版されたら買いたいです。っていうかこのシリーズを13巻として出せばいいんじゃないでしょうか。

18: SS好きの名無しさん 2015-11-30 21:20:17 ID: YMmP5Qi0

今月は更新なしかな…?

19: SS好きの名無しさん 2015-12-01 12:36:55 ID: EsMVGHMx

相変わらずの高クオリティ
一色さん以外のSSも書いていいと思うのだけれど?
特に『メイン』ヒロインとかオススメするのだけれど?

20: datsui_ss_club 2015-12-15 00:13:53 ID: mxorcTQs

>>14-18
今更だけど、おまたせして申し訳ない……!続き書いてるので、まだだったら是非見てね!

>>19
「寝ているヒッキーに、いたずらしちゃおうっか?」っていうのを過去に投稿しててそこに登場してるから良かったら見てください。
切なくも心温まるハートフルコメディーだよ!

あと、ゆきのん超好きなんだけど書くの難しいんだよね(本音)

21: SS好きの名無しさん 2016-01-27 02:09:15 ID: Omxb1IED

話もまとまっているしとても読みやすく
伏線も所々散りばめられていて、
凄く面白いです!
ただ、とまれ、だけは
直していただきたい!笑
ともあれ、なんだと思いますが、
その度に頭の中にクエスチョンマークが
どうしても浮かんできます!

22: SS好きの名無しさん 2016-06-27 19:56:47 ID: ImgOLtva

とまれ、いいけどなぁ
なんだかんだで作者さんの言い回しが癖になったよ、俺は。


このSSへのオススメ

1件オススメされています

1: SS好きの名無しさん 2015-10-31 03:20:12 ID: vDOb-slZ

決してイロモノではないです!
面白いです!!超オススメですよ!!!


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