2016-01-25 09:40:43 更新

概要

提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です

注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
長い


前書き

28回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね

それではこの番組は…

文月「じんぐるべ~る、じんぐるべ~る♪」
睦月「すずやー、なるー♪」
卯月「とぉぉ↑おう↓」

三日月「…それ、熊野さん」
如月「怒られなければいいけれど…」

弥生「今日はーたのしい…」
望月「くりすまーす」
ゆー「とぉぉ↓おう↑?あってる?」
菊月「いや、アクセントか違うな…正しくは…」
長月「変なこと教えるんじゃなーいっ」

提督「クリスマス中止のお知らせ…」
金剛「え!?」
大鳳「あら…せっかくプレゼント用意したのに、残念ね?」
提督「…むぅ」
北上「お、効いてるねぇ」
大井「どうせ、言いたいだけでしょ?ほっときなさいな」
金剛「じゃ、じゃあ…クリスマスは…」
多摩「そんなもん中止に決まってるにゃ」
球磨「リア充は爆発するがいいクマ」
金剛「そこをなんとかっ」
木曾「遊ばれてやがる…」

瑞鳳「はぁ…クリスマスかぁ…」
夕張「ターキーの季節だものねぇ」
瑞鳳「言わないでよ…」

ー諸々のメンバーでお送りしますー


↑前「提督と秋の雨」

↑後「提督とお正月」




提督とクリスマス



ー執務室ー


いつもの執務室

机では皐月が書類を纏めていたり、三日月が資料を取り替えていたり

ソファには寝っ転がってる望月と提督、概ねいつもどおりの光景だ


望月「…司令官、狭いんだけど」


ただまあ、いつもと少し違うのは

提督が、望月を抱きまくら代わりにしていることくらいか

ベッドの代わりにするには、十分な程広いソファではあったが

流石に、二人が横並びになれるほど広くはない


提督「だって、寒いんだもんよ…」


秋も過ぎ、夏の残り香も消え失せて

季節はとっくに冬に入っている

日に日に早まっている日の入りが、年の瀬を感じさせる

しかし、寒いからといって悪いことばかりでもない

こうやって、合法的に望月に抱きついてられるのだから

夏場だとこうもいかない、ビバ冬


皐月「そういえば、今日は特に寒いね…」


作業の手を止めて、窓の外へと目を向ける皐月

絶賛の曇天、強くなる北風に海は荒れ模様


三日月「今年一番の寒さって、ニュースで言ってたっけ」


皐月につられ、外に目を向ける三日月

結露して白く曇った窓ガラス

指で線を引けば、落書きくらいは出来そうだ

例えばそう…相合傘とか描いてみたりして


皐月「窓もこんなに曇っちゃって…」


指先を曇った窓ガラスに押し付ける皐月

そのまま、つーっと横に逸らすと、細い指が窓ガラスに線を引いた


皐月「相合傘とか描けそうだねっ、なんてさ?」


それは何気ない冗談

窓ガラスに相合傘なんて、定番といえば定番だ


三日月「か、かいてないからっ、まだっ」


定番。だというのに

予想以上に大きな三日月の反応に、一瞬、部屋の中が静まり返る


皐月「え、えーっと、描きたかったのかい?」

三日月「へ?描くって…ああ!?ちがっ、描かないからっ、別に、なんにもっ」


いらん事を口走った事に気づき

誤魔化そうと、慌てて取り繕いだす三日月


望月「きっと片側は司令官だぜ?」(こそこそ

提督「いやん、提督恥ずかしぃ」(ひそひそ


声を潜めてる風の望月と提督

しかしその実、絶妙な声量でもって

バッチリ三日月の耳まで届いてたりもする


皐月「つまり、こうだねっ」


それを受けた皐月が、窓ガラスにさっと指を走らせて

傘を描き、その下に司令官と三日月の名前を書き足す


三日月「皐月までぇぇ…やめてぇ」


恥ずかしさのあまりに、声を震わせ

両手で顔を覆い、その場に蹲る三日月


皐月「あはは♪ごめんごめん」


楽しそうに笑いながら

制服の袖を伸ばし、さっと、相合傘を拭き取る

少し大きめに描いた相合傘

その片隅に、こっそり書いた自分の名前

「皐月」の文字を拭き取れば、証拠隠滅完了だ

そこは、寝っ転がってる二人からは見えない位置だし

蹲っている三日月には気づきようもない位置だった


皐月「…ふふっ」


1人、小さく笑いを零す皐月

相合傘、遊びのつもりで書いては見たが

意外とドキドキするもんだなって




金剛「HEY、ていとっくーっ!」


突然、というのも呆れるほどに元気よく、執務室の扉が開け放たれる


金剛「戦果resultがあがったヨー!」


室内に響き渡る聞き慣れた声

開いた扉が閉まり始めるその前に

カツカツと足音を鳴らして、執務室に入る金剛


提督「おかえりー…んしょっと」


抱き枕にしていた望月をのままに

よっこいっせと、気だるそうに体を起こす提督

なんとかソファに座り直す頃には

提督の膝の上に、望月がすっぽり収まってたりもする


金剛「はいっ、どうぞ♪」


にはっと笑顔を浮かべ、両手で書類を差し出す金剛

その中身といえば、当人の申告通り戦果報告だろう

無傷の金剛を見る限りでは、なんの事もなさそうだけれど


提督「そんなものより、金剛の口から聞きたいな?」


望月の頭にアゴを乗せて、改めて抱えなおすと

書類を一瞥した後、からかうように金剛に視線を送る

読むのが面倒ってのも、なくはなかったけども


「‥良くそんなセリフが言えるな」

とは、この部屋の駆逐艦勢の感想である


金剛「OK.OK。ラブレターより、ラブコールをお望みですネっ」


そう言って、勢い良く提督の隣に腰を下ろすと

ずぃっと、体を寄せてくる

短いスカートに、肩や脇を露出している、巫女服を思わせるようなその衣装

肌色が多いかと思えば、意外と胸元はキッチリ閉じられていた


提督がそんな事を考えている間にも

三式弾で、徹甲弾で、対空機銃で

偵察機が、攻撃機が、魚雷が、と

いかに自分達が頑張ったのかを

楽しげに、誇らしげに語る金剛さん


提督「うんうん」


金剛の話しを聞き流しながら、適当に相槌を打つ提督

手元には望月の温もりと、隣からは金剛の声が耳をくすぐってくる

正直、話の内容はどうでも良かった。何となく彼女の声が聞きたかっただけ

ラブレターより、ラブコールとはその通りだ


金剛「提督?聞いてますか?」


反応が薄いのが気になったのか

訝しげに、提督を覗きこむ金剛


提督「うん、大活躍だったんでしょ?」

金剛「はいっ♪」


花が咲いたようにな笑顔を向ける金剛

提督に話を聞いてもらえてご満悦の様だった




皐月「楽しそうだね、金剛さん」

三日月「うん」


提督の隣で、コロコロ笑いながら話しをしている金剛

その様子は、見ているだけでも微笑ましいものだった


ただ、提督と金剛の間に挟まれた望月が

ちょーっと面倒くさそうな顔をしてはいるが




金剛「それでね、提督?そろそろクリスマスデスヨネっ!」


どれだけ話し込んでいただろうか

戦果報告(自慢話)はとうに終わって

何やら雑談が始まり、暇を持て余した望月が、うつらうつらし始めた頃

クリスマス、そんな単語が耳に入ってくる


提督「あー、そういえばそうか」


年越し前の一大イベント

この国に浸透している、海外のお祭りでは多分に一番派手だろう

まぁ、派手というだけで本来の意味なんてどこにも残ってないのだが

騒ぐのが目的なのだから、お題目はなんでもいいんだろう


提督「なぁ、金剛」


クリスマス。好きか嫌いかと問われれば、嫌いな方ではあるけれど

なにせ、電飾で目が痛い、クリスマスソングで耳が痛い、人の流れだって煩わしい

けども、今回はまあ楽しめそうかな‥


金剛「あ、ダメですヨっ。プレゼントの中身はまだ教えませんからっ」


聞いてもない事を、ノンノンと指を振って内緒にする金剛さん


提督「うん。プレゼントは私ですって言うの禁止な?」

金剛「…」


したり顔のまま、揺れていた指の動きが止まる金剛さん


皐月(‥図星だね(←こそこそ)

三日月(‥うん(←ひそひそ)

望月(‥ふわぁぁ、ねみぃ(←あくび)


提督「ミニスカでサンタのコスプレも無しな?」

金剛「…」


皐月(‥図星だね(←こそこそ)

三日月(‥うん(←ひそひそ)

望月(‥くぅ‥zzz)


金剛「はっ、はは‥まさか、この金剛が、この私が、そんな破廉恥な‥」


なんて口では言っているけれど

カタカタと小刻みに体が揺れていた


提督「そう?でっかい袋に入って、ソファに転がるまで想像したけども」


寝息を立て始めた望月の頭を撫でながら

更に言葉を重ねる提督


金剛「うふふふふ‥面白い冗談ね。提督はそういうのが好きなのかしら?」


しまいには、張り付いていた笑顔が引きつり出す始末


皐月「(‥口調もどってるね(←こそこそ)

三日月「‥うん(←ひそひそ)

望月(zzzz‥)


提督「いや、どっちかといえば‥」


裸にワイシャツ一枚で、YSE・NO枕抱えて

ベッドの上で待機してくれたほうがグッとくる

確かに、あざとすぎる嫌いはなくもないが

これでグッとこないの奴は、きっと男色家


金剛「お待ちになってっ、それは、ちょっとっ‥いや、でもしかし…」


この後、滅茶苦茶何かするような光景でも想像したのだろう

ぼっと、顔を赤くして、否定しようとしては見たものの

提督がそれを望むならと、思わなくもない、が

だがちょっと待て、早まるな私…YSE・NOだぞ

いやもちろんそれは、YESだが…そうじゃない、そうではない

そうあるべきだが、かくあるべきだろう…云々かんぬん


皐月(…日本語までおかしくなっちゃって(←こそこそ)

三日月(…うん(←ひそひそ)

望月「ふあぁぁぁ…」


皐月たちが、ヒソヒソと話していると

望月がぐぅーっと伸びをして、目を覚ます


提督「おはよ」

望月「んー…妹の名前は神楽月な?」


とつきとうか後なら10月だけども

神無月では少々縁起が悪いだろうと、1月ずらしてみたりする


提督「金剛から見たら、娘か?」

金剛「妹っ!?娘っ!?」


起きたと思えば、妙なことを口走る望月

どうにも、途中から聞いてたらしい…あるいは最初からか


提督「この場合は…金剛型・駆逐艦?」

望月「いいな、それ。また金剛さんのコスプレでもしようか?」

提督「そういえば、そんな事もしていたね」


10月のとある一日、小さい金剛さんの様な格好をしていた望月

なかなか似合っていたなと、なんとなく思い返す


望月「ねぇ、ママ?望月そろそろ妹がほしいなぁ…」


提督が回想にふけっている間に、金剛に擦り寄る望月

甘えるように腰に手を回し、ぎゅーっと抱きついて頬ずりを始める


金剛「ママっ!?わ、わたしに、こんな大きな娘は…」


胸元から見上げてくる望月

それを、抱きしめるべきか、頭を撫でるべきか

どう反応していいか分からず、両手が変な位置で固定され

ふるふると、震えていた


提督「27-12は…15か、まあ一昔前ならギリギリ娘で通るか」

金剛「おだまりっ!」


金剛の進水日;1912年

望月の進水日:1927年


望月「ねぇ?どうやったら、出来るの?妹?」


上目遣いのまま見つめてくる望月

それは、童女のように純粋にまっすぐに…


金剛「も、望月…いいですか、娘というのはですね…」


口を開きかけて、そのまま動きが止まる

娘というのは、なんなんだ、何だというのだ

工廠で、燃料に弾薬を、鋼材にボーキサイトすればいいと言えばいいのか

意味がわからない?そんなの金剛にだってワカリマセンっ

きっと、子供の作り方を聞かれた親はこんな気分になれるのだろうか


金剛「そ、そうっ、コウノトリですっ、コウノトリを数えるのですっ!」

望月「こ、コウノトリって…」

提督「くふっ…あははははっ」


さんざん口ごもった挙句の金剛の答え

その隣で、堪えきれずに吹き出す提督と

呆れ半分の半笑いの望月


皐月「あははっ、随分とメルヘンだね」

三日月「キャベツ畑もいるのかな?」


遠巻きに金剛の答えを期待していた二人

意外と可愛らしい答えに、顔を綻ばせていた


「もっ、もうっ!キャベツでもレタスでも持ってこればいいじゃないですかっ!」


羞恥に染まった、彼女の声が部屋に響いたのでした



ー鎮守府近郊・裏山ー


鎮守府の裏側

そこには、聳え立つって程でもないが

そこそこには立派な山があった

一昔前には、山岳信仰の対象になったりもしていたし

木曾さんが、いつも釣りをしている川の源流があったりもする


「ある~ひ♪森のなか♪」

 「…ある~ひ、もりのなか…」


ザクザクと、落ち葉を踏みしめて歩く音が聞こえてくる

所々に日の光が落ちてくる程度の湿った森のなかに

アンバランスに響く陽気な歌声

ここが森林浴用の遊歩道なら微笑ましい限りなのだが

良くて獣道がいい所のこの場所では

ローレライの歌声にでも聞こえてくるだろうか


歩くたびに揺れる茶色のポニーテール

それに手を引かれる銀色の髪が、木漏れ日の中でも一際目立つ


文月「熊さんに~、出会った♪」

ゆー「…くまさんに…であった…」


足取りも軽く、歩きづらい獣道をサクサク進んでいく文月

それに続いて、たどたどしくも一生懸命ついて歩くゆーの姿


球磨「呼んだクマ?」

木曾「おめぇじゃねーよ」


少女二人の歌声に、横から言葉を挟む球磨

森の中を歩いている球磨さん、確かに歌のとおりではあるけれど


球磨「ああ,そうだったクマ。今は木曾のが熊さんだったな」

木曾「くっ…」


嘲笑するように、顔を歪ませる球磨

森に入るその前に、決定された本日の罰ゲーム

「今日一日、熊の着ぐるみでも被ってるといいクマ」

もこもことした茶色の体躯に、大きく開いた口

そこから、丸飲みにされる一歩手前のように

木曾の顔が覗いていた


ゆー「文月、文月…くまさんです…」


小さな指を、球磨の方に向けるゆー


文月「そうだねぇ、でもコッチも熊さんだよー」


そんな ゆーの手をとって、熊に食べられている木曾に向ける文月


ゆー「熊さん?」

木曾「んだよ…」


茶色くて、もこもこしてて、ずんぐりとした熊の着ぐるみが珍しいのか

じーっと、物珍しそうな視線を向ける ゆー


木曾「…がおー」

ゆー「ひゃっ」


そんな視線に耐えられなくなり

緩慢な動作で両手を持ち上げると、やる気のない奇声を発する木曾

とはいえ、自分より一回りも大きい人に、両手を上げて見下されると

それなりに威圧感はあるのだろう

驚いた ゆーがさっと、文月の背中に隠れてしまう


球磨「なーに、脅かしてるクマ。子供か、貴様は」


なんて言葉を残して、再び森のなかを歩き始める球磨


文月「子供は司令官だけで十分なのだー」

ゆー「そうなの?」

文月「そうだよー」


それに続き、ゆーの手を引いて歩き出す文月

手を引かれながらも考える

確かに、Admiralは子供っぽいけど…

ぱっと、思いつくだけでも …ひーふーみーっと3人ほど

子供っぽいのがいるような気がしないでもないなって

それとも、あれは大人に入るのだろうか?日本語は難しい


木曾「はぁ…誰が子供だっての…まあいいか」


ため息を一つ吐き出して

そんな娘たちの後を付いて行く、木曾(熊さん)でした




球磨「さて、これでいいか」


しばらく進んでいくと、一つの大きな木の前で足を止める球磨


ゆー「すっごく、おおきいですって…」


ゆーが見上げるほどに大きな木

一般的にモミの木と呼ばれるそれは

小柄なゆーからすれば、見上げてもまだ高い程に大きい


文月「でもこれ、どうやって持ってくの?」


ゆーと同じように木を見上げている文月

その疑問はもっともで、手ぶらの彼女たちが

この木をどうにかするのはちょっと厳しい気もする

まあ、いざともなれば彼女たちも艦娘だ


木曾「まさか、主砲で根本吹っ飛ばすとか言わねーだろうな?」


そんな手もなくはないが


球磨「はぁ…、そうやってすぐ艤装(手)を出そうとするのは、木曾の悪い癖クマ」


呆れるように、ため息を吐く球磨

そう言われてしまえば、木曾にだって喧嘩っぱやい自覚はある

大きな口で否定は出来ないが…けど一つ


木曾「お前が言うな」


それぐらいは言ってもいいはずだ

血は争えない、自分以上に喧嘩っぱやい奴に言われたくはない


球磨「くまくまくまくま♪まあ、みてろ…古今東西、大木と言うのはなっ」


木曾に妙な笑い声を返すと

おもむろに、中段に拳を構える球磨


球磨「ふんっ!}


裂帛の気合と共に、繰り出される球磨の拳

それはまるで、砲弾を打ち出す主砲のようであった

突然のことに、驚いた ゆーが小さく肩を震わせていたりもする


そうして、大木に穴が空く

抉れたように、削れたように、ではない

切り口はささくれ立つこともなく、切り取られたように綺麗な円を描いている


木曾「おいおい…冗談だろう」

球磨「ふぅ…もちろん冗談だクマ」


球磨が拳を振ると、付いていた木屑が風に舞って飛んで行く

それは、射撃後の主砲が吐き出す硝煙のようにも見えた


球磨「二重◯極み…きっとやったことある奴も多いはず」


子供に優しい必殺技だったクマと、付け足す球磨ちゃん

なんてやっていると、やがて自重を支えきれなくなった木が

どしーんっと反対側へと倒れる


球磨「さあ、木曾。運ぶがいい」


ピシっと倒れた大木を指差す球磨


木曾「いやいや…一人で運べってか…」

球磨「おいおい、まさか ゆー達に持たせるつもりじゃあるまいな?」

木曾「いや、それは…」


ゆーと文月に視線を向ける木曾

彼女たちだって艦娘だ…ビクともしないってことはないだろうが…

絵的にどうなんだ?


木曾「はぁ…わーったよ…これ、脱ぐぞ?」


気ぐるみを脱ごうと、頭に手をかける木曾


球磨「それを脱ぐなんてとんでもないクマー」


棒読みである


木曾「こいつは…」


言いたいことは山ほどあるが、罰ゲーム中な手前強くも出れず

結局一人、折れた大木をよっこいせと持ち上げる木曾


ゆー「おー…きっそは力持ち、すごいね」

木曾「ありがとよ…」


見上げてくる ゆーの視線がくすぐったく

ぶっきらぼうに返して歩き出す木曾


文月「ああ、木曾さんが行く…」

球磨「断れるわけもなく、森から折られた大木を動かすもの」

文月「それは、罰ゲームを受けるものの意地に他ならない…」

球磨「くっくっくっ…」

文月「ふっふっふっ…」


歩いて行く木曾の背中にかけられる謎の言葉

最後までやりとげ、顔を見合わせて笑い合うと

のっしのっしと、歩いて行く木曾を追いかける二人


ゆー「…いかるがー?」

木曾「…誰から聞いた…」

ゆー「Admiral…」

木曾「よし、後でとっちめる…」

ゆー「とち、める?」


言葉の意味が分からずに、首を傾げるゆー


木曾「仲良くするって意味だよ…」

ゆー「そう…」


素直に信じてしまってるが、まあ良いだろう

「とっちめる」なんて言葉、そうそう聞く機会はありはすまい

それより何より、貴重な真面目枠候補を失うわけにはいかない

提督が変なことを教える前に杭をささねーと…

なんて考えながら、のっしのっしと歩を進める

その横から、遅れないように ちょこちょこ付いて歩くゆーちゃんでした



ー鎮守府・食堂ー


金剛「うぅぅ…」


金剛さんが唸っていた、いつからそうしていたのだろうか

机の上に並べられたティーセット。お菓子の類には手はつけられておらず

カップに注がれた紅茶は、湯気を消していた


金剛「ん?」


ようやく手を動かし、カップを口に運んだ所で違和感


金剛「oh…」


冷めてる…なんということだ

せっかくのティータイムを、折角の紅茶を台無しに…

しかしこれは金剛が悪いわけではアリマセン

提督が素直じゃないのがイケナイ

だとしてもだ…だったらしかし…


金剛「どうしろっていうんですか…」


カップを机に戻して頭を抱える

日付はもう少しでクリスマスになろうかという頃

提督に渡すプレゼントが思いつかず、頭を悩ませていた

プレゼントは私です…確かに、あざといけどっ

分かってるなら貰ってくれても良いじゃないですか

サンタのコスプレが苦手だったりするのだろうか


北上「飲まないなら貰うよ~ん?」

金剛「へ?」


すっと、横合いから手が伸びる

遠慮もなしにカップを摘むと

冷め切っていた紅茶を、グビグビと飲み始める北上様


北上「あー…不味くはないけどなぁ…」


冬の空気に晒されて、もはやアイスティーと化していたそれ

冷たいだけならまだしも

肝心の香気まで飛んでしまっては、なんともはやと


金剛「もぅ、今淹れ直すネ」

北上「あ、お菓子ももらっちゃうよ?」

金剛「どうぞどうぞ」


悩みは一旦お預けか

ティータイムに客人が増えたとあれば、上の空というわけにもいかないだろう


大井「貴女は座ってなさいな」


金剛が立ち上がろうとした所で、大井の手が金剛の肩に触れる


大井「そんな顔してる人にお茶淹れられてもね?」

金剛「うっ…そんなひどいですか?」

北上「うん、ムンクの叫び見たいになってたねぇ」

金剛「マジでっ!?」


だとしたらそれは、由々しき事態だ、提督にそんな顔見せるわけにはっ

と、とりあえず鏡をっ

鏡よ鏡、世界で一番可愛いのは…金剛デース!

異論は後で聞く


大井「そこまでは言わないけどね…」


そこまでは言わないけども

さっきの驚いた表情は、ちょっとそれっぽかった




程なくして、お茶の用意が整う

3人の前には、湯気を立てるティーカップとそこから漂う紅茶の香り

その中に混じって、スコーンの甘い香りが食欲を唆る


大井「プレゼント、ね…」

北上「金剛さんも好きねぇ」


大井が紅茶に口をつけ

北上様が、もしゃもしゃとスコーンを食べ始めるそんな中

金剛の悩みを聞いてみれば

季節柄、当然の内容ではあった


金剛「Non.Non。好きじゃありません、好きでは足りません」


軽く指を振りながら好きの言葉を否定する

そうして、続く言葉は…

大好きです!、愛してます!!、BurningLoveデス!!!


ダンっと机に手をつくと

そのまま ぐぃっと、対面に座る北上に顔を近づける金剛


北上「近い近い…」

金剛「Oh,Sorry」


ドアップになる金剛から顔を逸らしながら

肩を押して、なんとか席へと押し込める北上


大井「何やってんだが…」


紅茶を飲みつつ

そんな二人の様子を横目に、頭を巡らせる大井

なんのかんのと言っても、提督とは短くない付き合いになっている

プレゼントの一つや二つすぐに思いつくだろうと…

そう思っていた時期が大井にもありました


大井「あれ…」


しかし、思いつくはずもものは思いつかず

代わりに、別の事実が浮き彫りになる


大井「ねぇ、北上さん…あの人の私物って見たことある?」

北上「んー…着物とか?」


提督が白い軍服の上からいつも羽織っている着物

私物といえば確かにそうなのだが

それ以外となればどうだろう…

私室なれば執務室がそうなるのだろう

けれども、あの部屋には食べ物と飲み物と

ちょっとした資料と望月が転がってるくらいだ

そんな中から、提督の趣味に合わせたプレゼントを選べなどと


金剛「ほんと、どうしろってんデスカ…」


となるわけだ


北上「そいじゃ、お米とかどうよ?」


難しい顔をする二人に対して

冗談交じりに微笑むと、割と本気でジャポニカ米を推してくる北上様

だって、前に提督が言っていた

プレゼントは食べ物に限ると

不思議に思い、「なにゆえ」と問うてみれば

余程じゃないかぎり外れない、食べてしまえば場所もとらんし

口に合わなさ過ぎて、捨ててしまってもバレづらい

究極を言えば米だな、と

日の本でこれを消費しない奴がどれ程いるか


金剛「く、クリスマスにお米デスカ…」

大井「北上さん、それはね…お歳暮って言うのよ」

北上「あっはっはっはっ、それもそうだ」


たしかにそれはそう

年末にお米などと、どうみたってお歳暮だ

ではだったら、どうすれば良いのか


北上「じゃあさっ、表紙に金剛さんのサンタコスの写真でも貼っ付ければ?」


私を食べてー、みたいな?

ちょっと前にそういうのが流行ってたような気がする


金剛「ふふっ…もとよりそのつもりでしたよ、ええそりゃもう」


自嘲気味に笑う金剛さん


大井「…過去形ね」

北上「なるほど、抜かりないわけか」


金剛の様子から、大体の事情を察する二人

つまりは、禁止令を発動されたんだなと

しかし、そこまで徹底してるとなると…


大井「はぁ…あの人はほんとに…」


状況は把握したし、提督の悪戯もだいたい理解した

つまりはあれだ、こうやって悶々としている金剛さんを眺めるのが

当面の目的というわけだ

だとすれば、彼女は十分にその遊びに付き合ったということになるが


金剛「てぇいぃとぉくぅ…」


ぐてっと、机に上に身を投げ出す金剛さん

だとしても、愛情表現しないと彼女は気がすまないらしい

確かに、好意は伝えてこそのものだ

提督も少しは見習えばいいのにと思う


北上「重傷だぁねぇ…」

大井「ほんとに…」


もしゃもしゃと、スコーンを食べ続けていたら

あら不思議、気づけばお皿は空になっていた

最後のスコーンをゴクリと飲み込むと

乾いた口を潤す為に、紅茶に口をつける北上様


そして、ほっと一息

冬の寒さに満たされた食堂に、吐息が白く広がって消えていく


大井「そういえば、北上さんは?」

北上「あたしかい?」


北上が一息付いたタイミングを見計らって

提督へのプレゼントはしないのかと、聞いてみる大井

その問に、少し悩むように視線を彷徨わせたあと


北上「毎朝お早うって言うのが、あたしからのプレゼントだよん」

大井「それって…」


にひっと、可愛らしい笑顔の北上様

それは確かに素敵なことだと思う

明日も明後日も、そのまた一年後も

そう言い合える日が続くのなら、悪いことではないだろう

け・ど・も


大井「何も考えてないのね?」

北上「失礼なっ、考えているよっ、大井っちが何とかしてくれるってっ」


ぽんっと、大井の肩に手を置く北上様

誰がどうみたって、完全に丸投げである


大井「はいはい、何とかしますよーん」


間延びした声を返す大井

とは言ったものの、どうしたものか

あまり奇をてらっても、しょうがないとは思うけど…

無難は定番、定番は鉄板か…やはり…そんな感じに落ち着くのだった



ー工廠ー


睦月「のびーるのびーる、すとっぷっ」


工廠の真ん中に聳え立つモミの木

木曾さんが運んできたは良いが

食堂に入らないだろう、これ…

という事で、工廠に押し込まれる事になる

外に立てなかったのは、単に寒いからって事情


そんな中、工作機械が音と立てて稼働している

普段は重い鋼材等々を釣り上げているクレーンが

今はその先端に少女を、睦月をぶら下げていた


夕張がレバーを引いてクレーンを操作すると

ワイヤーが巻き上げられ、括りつけられた睦月が容易く持ち上がっていく

お腹に巻きつけられたワイヤー

それを支えに、睦月の手足が重力に引かれて、ぷらーんと揺れている


釣り上げられる最中、時折楽しそうに手足をバタつかせる睦月

その度に…


夕張「こらー、危ないんだから暴れないのー」


なんて感じに夕張に窘められると

大人しく、てるてる坊主になる睦月


夕張「白、か…」


下から見上げる夕張が、ポツリと呟く

何が、とは言わないけども

提督もいないし、まあ良いかとも思う




文月「ぽーいっ」

菊月「ぽーい」


睦月がブラブラと揺れているその下では

文月と菊月が、木に綿を投げつけて飾り付けをしていた

ふわふわと、少女たちの手から離れては

モミの木の葉に引っかかる白い綿

緑色に重なっていく白色は、確かに降り来る雪の色にも見えた


長月「…」


そう、緑色に積もっていく白い綿

時折、狙いを外れた白い綿が

長月の緑色の髪に降り積もる

雪化粧といえば、聞こえは良いだろうか?


長月「ポイポイするなってっ、いってるだろうがっ」


耐えかねた長月が、声を荒げると

揺れる緑の髪に払われて、綿が足元に溶けていく


如月「ふふっ、ナイスツッコミね、長月」

長月「うるさいよっ!」


散った綿を拾い集めながら、如月が笑いを零す

そうして、綿を抱えて立ち上がると

それを一つ摘んで、長月の鼻の下

あるいは唇の上にそっと乗っける


如月「はい、おヒゲ」

長月「…」


長月の小さな口、その上に乗っかる白い綿は

確かにヒゲのようにも見えた

あるいは、牛乳を一気飲みしたあとの様とでも


長月「きーさーらーぎーっ!」

如月「うふふふ、はいはい、怒らない怒らない」


もぅっ、と顔を赤くして声を荒げる長月

可愛い顔が台無しよ?なんて、言っているのが

悪戯した張本人なのだから、説得力もありはしない


文月「菊ちゃん、菊ちゃん、似合う?」

菊月「うむ。姉さんはいつでも可愛いぞ」

文月「やったー♪」


何を思ったのか、自分の口の上に綿を乗っけて

おひげ~♪なんて、真似をしてみる文月

菊月に お洒落のことは良くわからないが

姉が楽しそうにしているなら

それで良いだろうと、素直に頷いていた


文月「じゃあ、菊月にもしてあげるねぇ」

菊月「ん?いや、まて…」


不穏な言葉に菊月が一歩後ずさる

私にもしてあげるって、何を?

何ってそれはきっと、文月が抱えている白い綿をアレするのだろう


文月「菊ちゃん。お姉ちゃんはねぇ、つくづく思っていたのだよ」


いつもカッコ付けてる菊月を可愛がりたいと

なんて本音はお口にチャックして


文月「菊ちゃんもたまには、可愛い事するべき」

菊月「遠慮するっ」

文月「させないよっ」


即答には即答で返すと

即行で逃走する菊月を、文月が追いかけ回す


菊月「ヤダって言ってるのにっ、こっちくるなぁっ」

文月「大丈夫っ、すぐに良くなるからっ」

菊月「しらないよっ、そんなことっ」


文月を威嚇しながら、逃げまわる菊月

しかし、後ろを見ながら走っていたせいで

目の前の如月には気付かずに


菊月「うぷっ」

如月「あらら、ととっ」


飛び込むように、如月の胸の中に顔を埋める菊月

その衝撃で、如月が抱えていた白い綿が舞い上がる


菊月「す、すまない、如月…」

如月「怪我はない?」

菊月「…うん」


ふわふわと、舞い降りてくる白い綿

それは降りしきる雪のようにも見える

そんな中で、抱き合う少女と少女、姉と妹

気まずさと、姉に抱きついている恥ずかしさで頬を染める菊月

そんな彼女の頭を、ゆっくりと愛おしそうに撫でる如月


菊月「そ、そろそろ放して…」

如月「やーだ」

菊月「むぅ」


放れようとすればするほど、力を込めて菊月を似がない如月


文月「長月、あれが大人の余裕だよっ」

長月「もうどうだっていいよ…」


がっくりとうなだれ、肩の力を抜く長月だった




睦月「うむ、よきかなよきかな」


モミの木の天辺に、睦月型のそれを少し大きくしたような

月の飾りを取り付けている睦月

眼下に広がるのは妹たちのじゃれ合い、それを満足そうに見下ろしてた


ふと思う

こうして見下ろしていると、まるで自分がお月様になったかの様

暗い夜道を優しく照らしてくれるお月様

では、自分はどうなのだろうか?

ちゃんと妹達を照らしてあげられてるのだろうか?

暗がりに怯えないように、道に迷わないように


睦月「ねぇ、夕張さん。睦月はちゃんと皆のこと照らしてあげられてるのかな?」


ふと、彼女の口からついて出たその問いは

普段、有り余るほどに元気な彼女にしては、随分と大人しいものだった


夕張「睦月…」


そんなこと、全然気にしてないように思ってたけど

いや、そうでもないのか…

普段やたらと元気なのは、彼女なりの長姉としてのあり方なのだろう

いや、そうでもないか…絶対自分が遊びたいだけだ、あれは

けど、けれども


夕張「安心なさい。十分よ、目が眩むくらいにね」


多少騒がしいのはそうだけれど

それでも彼女が、この鎮守府の明るさの一翼を担ってるのは事実だった

それはもう、妹達どころか私達皆を照らすほど


睦月「そっか♪」


安心したように、ほっと笑顔を浮かべる睦月

そうして、モミの木の天辺に、お月様の飾りが付けられる

睦月型の、睦月型による、睦月型のための月飾り


睦月「我らっ睦月型の光をあまねく世界にっ!」


睦月の宣言とともに、仕込まれた探照灯が光を放ち、月飾りが輝き出す


夕張「…」


世界征服でもする気なのだろうか、この娘は…



ー食堂ー


瑞鳳「はぁ…」


食堂、その奥にあるキッチンスペース

作業台の上に体を預けて、物憂げにため息を吐き出す瑞鳳

すでに粗方の調理は終えて

あとは、煌々と灯るオーブンに焼かれる肉塊を眺めていた


大鳳「どうしたの?お肉、嫌いだったっけ?」


湯のみを一つ、瑞鳳の前に置く大鳳

立ち上る湯気と一緒に、緑茶の香りが広がった


瑞鳳「ありがと…。嫌いじゃないんだけど、なんていうか、その…」

大鳳「?」


言い淀み、動かなくなった口

それを、誤魔化すように、解すように、湯のみに口を付ける

あったかい…その温もりに、ほぅっと息をはく


瑞鳳「だって、卯月が…」

卯月「呼んだぴょん?」

瑞鳳「げっ…」


キッチンスペース、その入口から聞こえてきた声に

次の言葉を塞がれて、顔を引きつらせる瑞鳳


卯月「なーに、してるぴょーん」


そんな瑞鳳の様子などお構いなしに、ぴょんぴょんと側に寄って行く


瑞鳳「別になんでも良いでしょっ」

卯月「ぶー、瑞鳳が生意気だぴょんっ」


しらないっ、と卯月から視線を反らす瑞鳳に

卯月が不満そうに頬を膨らませる


卯月「ぴょん?…おお…」

瑞鳳「…」


と、そこで卯月が温かそうな光の灯るオーブンに気がつく

中の物が気になり、覗きこむように顔を近づけていく

暖かな電球色とは裏腹に、顔を寄せてみれば

じんわりと、オーブンから漏れ出る熱が卯月の頬を赤くしていく

それでも、好奇心に誘われるままに、しげしげと覗き込んでいた


少女の瞳に映るもの、それは大きな肉塊

それが、オーブンの熱でチリチリとその身を焦がしていた

広がっていく焼色、滴る油が焦げついて、香ばしい匂いを漂わせる


卯月「…瑞鳳が焼けてるぴょん」


そう、その肉塊は鶏であった

そして、卯月がそれを口にした途端


スパーンっ!!


景気の良い音がキッチンに鳴り響いたのだった


卯月「いったーいっ!いきなり何するぴょんっ!」


次いで上がる卯月の悲鳴

オーブンから顔を離して後ろを向けば

瑞鳳がハリセンを、全力で振りぬいた後であった


瑞鳳「やっかましいっ、いらん事を言うのはこの口かっ、このっ」


ハリセンをその辺に放り投げると

両手を伸ばして卯月のほっぺを摘み上げる


卯月「ふょーんっ!?」


引っ張れば引っ張るだけ、横に伸びる卯月のほっぺ

指先に力を込めれば容易く沈み込み

そうかと思えば、グミの様に、やんわりと弾力を返してくる

もう少し触っていたいと思ってしまうくらいには

その摘み心地はとても良かった…癪だけど、すっごい癪だけど




弥生「七面鳥?」


卯月と瑞鳳が騒いでる中

そっと、大鳳の側によるとオーブンを見ながら問いかける


大鳳「それでも良かったのだけれど」


食べなれないだろうし、何より手に入れづらいので

無難な所で鶏肉にしてあった


「だいたいこれ鶏肉だってのっ」

「ぷぷぷぷっ♪そんなトサカ赤くして何言ってるぴょーん」

「あんたの髪の毛だって大概赤いじゃないのっ」

「ずーいほー。あんまり怒ってると、オーブン見たいぴょん」

「きしゃーっ!」

「ぴょーんっ!」


なんて話していると

次第にエスカレートしていく、二人の口喧嘩


大鳳「オーブン一つで、良くもまあ…」


ある意味関心ではある


弥生「ハリセン…」


その辺に転がっていたハリセンを拾い上げ、軽く振ってみる

厚紙を束ねて作られたハリセン

振る度に、蛇腹に折られた部分が、扇の様に開いては閉じる

弥生の手に余るほどの大きさの割に、重さを感じさせず

丁寧に織り込まれた蛇腹部分は、程よい弾力を返してくる

うん、これはとても良いハリセン…と、弥生のお墨付き


大鳳「こんなのまで用意しちゃって…」


思い出すのは、卯月が来る前の瑞鳳の姿

物憂げに、ため息を吐いていた瑞鳳

事情を知らなければ、陰鬱な風にも見えただろうが

事ここに至れば

恋人を待ち焦がれる、乙女の吐息にも見えてくる

「だって、卯月が…」ね…

その後は、絶対いらない事いうんだから、あたりだろうか


弥生「…うらやましい?」

大鳳「え?…そう、ね…」


自分では分からないが、そういう顔でもしていたのだろうか

いまだに口喧嘩を続けている二人

しかし、それを「うらやましいか」と言われれば


大鳳「少しだけ、ね?」


そう言って、ほほ笑みと一緒に答えを返す

喧嘩するほど仲がいいとは言うけれど

流石にあのじゃれ合いを続けるのは骨が折れそうだと

本音を言えばそんな所で、それゆえの「すこしだけ」だった


弥生「そう…大鳳さん」

大鳳「なぁに?」


大鳳の答えを聞き届けると

そっと弥生の指がオーブンに向けられる


弥生「大鳳さんが焼けてる…」

大鳳「…」


しばしの沈黙

じーっと、無表情のままに大鳳の反応を待つ弥生


大鳳「ふふっ、面白い冗談ね」

弥生「それほどでもない…」


すっと、腰をかがめて

弥生と視線をあわせる大鳳

そうして、その白いほっぺに手を伸ばすと

無表情に固定されている鉄面皮を解すように、横に引っ張った

意外、とは思う

だって、固い表情の割に、それは良く良く伸びるのだから


弥生「…いたい…」

大鳳「でしょうね」

弥生「おこってる?」

大鳳「怒ってなんか無いわ、怒ってなんか、ね?」

弥生「むぅ」


確かに笑顔ではある

表情が固いだけって、言い訳も聞かないほどに笑顔だ

しかし、下手な無表情よりも

笑顔のほうが怖いということもある、今回見たいに


大鳳「もぅ…。それ、瑞鳳には言わないでね?」


笑顔を崩し、息を吐く大鳳

それはだって、あっちにもこっちにも言われたら

彼女がパンクしてしまいそうだから


弥生「ん、わかってる」


だってこれは、大鳳さんの反応が見たいだけだったから

少しくらい顔赤くするかと思ったけども…ガードは固いようだ、残念


「だいたい、こちとら瑞鳳よっ、鳳(おおとり)よっ、フェニックスなんだからっ

 そんな焼き鳥なんかと一緒にしないでよっ!」

「瑞鳳(ふぇにっくす)とか…ちょっ、ちょっと待つぴょん、おな、おなかいたっ…ふひひっ」

「わらうなーっ!」


弥生たちの後ろの方で、変な方向に進んでいく口喧嘩


大鳳「…」

弥生「大鳳(ふぇに…」

大鳳「やめなさい」

弥生「はい」



ー工廠ー


部屋というか、施設の中心には

無駄に大きなモミの木が据えられている

平時には鉄と油の匂いを

白熱灯の灯りで照らしあげているような工廠施設だが

今日に限っては、肉の脂の匂いに

モミの木を取り巻く電飾の灯りが添えられている

それに混じって、ケーキやお菓子の甘い匂いや

お酒の香気なども入り乱れると

より一層混沌と、日本のクリスマスのそれになってくる

イエスもノーも関係ない、ただ騒ぎたいだけのお祭りに


夕張「で?貴女達はどうして、始まる前からそんなに疲れた顔してるの?」

睦月「また、喧嘩でもしてたのかにゃ?」


何やってんだか、と呆れ顔の夕張と

心配そうに覗きこむ睦月

そんな二人の前には、お互いに背中を預けあって

工廠の固い床の上にへたり込む、瑞鳳と卯月


瑞鳳「だって卯月がっ」

卯月「だって瑞鳳がっ」


問われるままに答えると、肩越しに視線交差させる二人

けど、それも一瞬

再び口喧嘩を始めそうでは合ったけども


瑞鳳「やめよ…」

卯月「ぴょん…」


浮きかかった体から、お互いに力を抜く

かれこれ小一時間以上騒ぎまくったおかげで

パーティーが始まる前から、ぐったりしてる二人だった


夕張「何やってんだか…」

睦月「仲良しかにゃぁ?」

夕張「かもね?」


喧嘩するほどのってやつの見本市みたいだと思う

睦月の言葉に反応して「ちがうっ」なんて言葉も返っては来てるけど


夕張「そう見える?」

睦月「ううん」





文月「じゃーん、サンタ菊月♪」

菊月「もう好きにしてくれ…」


いつもの黒い制服の上から

紅白の上着と、お揃いの帽子を被せられている菊月

その肩は力なく項垂れ

まるで、褥で花を散らされる…

とまではいかなくても、なにか諦めたような感じではあった


大鳳「あら、可愛いわね菊月」

弥生「うん、かわいい」

文月「でしょー」

菊月「この菊月に、そのような言葉など…」


次々と掛けられる、可愛いの言葉

それを聞いてる内に、顔が赤くなってくるのが自分でもわかる

可愛いよりは格好いいが良い

可愛いなんて、そんな言葉、不要だし、無用だし…

そうは思ってみるものの、全く嬉しくないといえばそれも否だった


菊月「もぅ、なんなのさ…」


その呟きは、煮え切らない自分に対してでもあったし

やたらと、可愛い可愛いと、褒めそやす

姉たちに対してでも合った




如月「ふふふ…可愛いわね、菊月」

長月「まあ、な…」


はしゃぐ姉妹達を遠巻きに眺める二人

サンタさんの格好をさせられて

服も頬も紅白になっているのが可愛らしい


長月「菊月は、どうしてああなんだろうな」


確かに、サンタ姿の妹は可愛らしい

というか、そうじゃなくても可愛いのだが

なぜ無駄に格好を付けようとするのか

もう少し、自然体でいればいいのにと思う


如月「わからない?」

長月「?」

如月「あれで、貴女の真似してるのよ?」

長月「…いや、わたし、あんなか?」


困ったような顔をして、菊月と如月を交互に見る長月

自分では分からないが、私もあんなふうに見えてしまっているのだろうか

だとしたらそれは…なんというか

私ももう少し、肩の力を抜いたほうが良いのだろうかと、思わなくもなくもない、が


如月「そうね、どっちも私の可愛い妹よ?」

長月「むぅ…」


そんな長月を微笑ましく見守る如月

まあ、確かに似てはいない

菊月的には、カッコイイ姉に追いつきたいから

カッコ良さそうな形をとってるだけなんだろう

背伸びをしたい年頃なのだ きっと、本当に愛らしい


如月「ねえ、長月…」


目の前に用意されていたグラス

透明なグラスは、注がれた液体で赤く染まっている

そこには、水に浮かぶ桜の花びらの様に

小さなサクランボが、可愛らしく浮かんでいる


如月「赤鼻のトナカイっているじゃない?」

長月「ん?ああ、歌の奴だな」

如月「ええ」


グラスに浮かぶサクランボ

それを摘み上げて、顔の前まで持っていくと

くるくると、意味もなく回し始める


如月「あの子の鼻、なんで赤いか知ってる?」

長月「なんでって…」


そんなもの、そういう体質だったとしか…

いや待て、でもトナカイだぞ…

他のトナカイは普通なのに、そいつだけ鼻が赤いとか…

たまたま色が付いてしまったとか、言ってしまえばそうなんだろうけど

けど光ってるって…そいつ、ほんとにトナカイなのか

って、ただの童謡に何を言ってもしょうがないか…


長月「そういう体質だったんだろ」


結局、答えは振り出しに戻っていた


如月「ふふ、リアリストね長月は」

長月「…じゃあ、姉さんは何だと言うんだ」


楽しそうに、サクランボを眺めながら微笑む如月

心なしか、その頬は赤く染まっていて

電飾に照らされるその横顔は、どこか大人びて見えた


妹の贔屓目を抜きにしても、それは綺麗だと言えるだろう

そんな彼女に微笑まれると、どこか子供扱いされたような気がして

知らず、ぶっきらぼうに返してしまう長月だった


如月「そうね、サンタさんの事が好きだったから、とか?」

長月「…」


なんだそれは、それはまた随分と


長月「ロマンチストだな、姉さんは」

如月「そうかしら?長月だって、好きな人の前では赤くなるでしょう?」


誰とは言わないけど

三日月なんて特にそうね

結局、あんな風に顔が赤くなるのは

気づいて欲しいから、なんて思うわけよ


長月「私は…別に」

如月「そう?…ん」


指先で弄んでいたサクランボに、キスをする様に口を付ける如月

そうして、サクランボに付いてていた赤い液体をぺろっと舐めとると


如月「はい、あーん?」

長月「なっ、姉さん、なにしてっ」


長月の方へ差し出し、その愛らしい唇にちょんっと押し付ける


如月「ふふっ、赤くなったわね。お姉ちゃんのこと、そんなに好きなの?」

長月「それは…」


言い淀む長月

そんな彼女に、なにか期待するように見つめる如月


言われたとおりに、顔が赤いのは自分でも分かっていた

というか、今までの話はこのための前振りだったのか

だとしたら、随分と回りくどい悪戯だ


如月「もしかして、嫌いなの?」

長月「いや…そうは言ってないだろう」

如月「そんな、お姉ちゃん大好きだなんて、照れるわね」

長月「そこまでも言ってないっ。飲み過ぎなんじゃないのかっ」


ふんっと、そっぽを向きぶっきらぼうに返す長月


如月「こんな日だもの、酔いたくもなるでしょう?」


子供みたいにそっぽを向いた長月を

ただただ、優しく見守る如月

そんな風にされては、そんな風に見つめられては


長月「まあ、好きだよ、姉さん…んっ」


根負けした長月が、ぶっきらぼうに呟くと

差し出されたサクランボを、その小さな口で奪い去る

味なんて分かんない、なんとなく甘い気がする

顔が熱いのはきっと、浸かっていた赤い液体のせいだろう

ドキドキと喧しい心臓を抑えるように

サクランボを種ごと噛みしめて、ゴクリと飲み込んだ


如月「私も好きよ、長月」

長月「うん…」


満足そうに微笑む姉に、妹が素直に頷いていた




望月「ふぃぃ~」

三日月「もう、食べ過ぎ」


工廠の片隅

三日月に膝枕をして貰いながら

すこし、ふっくらとしたお腹を撫で擦る望月


だって、しょうがない

普段の食事に不満があるわけではないが

並んだご馳走の前に、手が止まるほど老いてはいない

成長期なお年ごろなんだよと、意味もない言い訳でもしてみようか


望月「次は年越しそばだねぇ」

三日月「少し気が早いとも思うけど…」


クリスマス、年末、年始

わずか一週間でどれ程騒げば気が済むのかと

まあ、悪い気はしないけども、むしろ うぇるかむかもーんだ


そうして、満腹感に霞んでいく視界に

大人しく身を任せ、ゆっくりと瞼を下ろす望月

そんな彼女の頭を三日月が優しく撫でていた

どんどんと微睡んでいく意識

撫でられる度に、どんどんと眠りへ落ちていく

ふとももから伝わってくる彼女の体温が、それに拍車をかけていく


北上「おやおや、壁の花なんて勿体無いねぇ」


お姉ちゃんとお茶しないかい?

なんて、どこか浮ついた様子の北上様

あと一歩、そこで眠りに付くはずだった望月が

その声にうっすらと瞼を開ける


大井「ナンパじゃないんだから…」

三日月「あ、お疲れ様です。北上様、大井さん」


少々呆れ気味の大井

そんな二人に、軽く会釈を返す三日月


北上「まぁまぁ、可愛い娘には声をかけとくもんだよ」

三日月「あ、あのぅ、大井さん?」

大井「飲ませてはないんだけどね…」


なんか、テンション高めな北上様に

酔ってるの?と、問いかけてみれば、どうも違うらしい

強いて言うなら 、この空気にとでも言えばいいのだろうか


北上「でさぁ、金剛さん見なかったかい?」

三日月「金剛さん?私は…望月?」

望月「いやぁ…」


軽く首を振る三日月

次いで、お膝の上の望月に視線を落としてみるも

もぞもぞと、太ももが揺すられた


大井「どこ行ったのかしら…」


工廠の中を見回してみても、それらしい影はない

目につくものといえば、無駄にでかいツリーと

ぐったりしているバカ二人

あとは、哀れな程どうしようもない格好の木曾くらいか

とりあえず、鼻で笑っておこう


三日月「そういえば、今日一日見てないかも…」

北上「だーよねぇ…」


困った風に頭を指で掻く北上様


大井「プレゼント、決まったのかしら」


話を聞いた手前、放っとくわけにもいかないが

本人が見当たらないんじゃ、確認のしようがない

準備中でいないのなら、何も問題はないのだけれど


三日月「あぁ…いろいろ禁止されてたっけ」


ちょっと前の、執務室でのやり取りを思い出す

サンタコスに、プレゼントは私デースを禁止されていたっけか

なかなかに面白い顔をしていなぁ

なんて言ったら金剛さんに失礼だろうか


望月「大丈夫じゃねーの…」


此処にいないってんなら

今頃は自棄でも起こして

司令官のソファに潜りこんでる頃だろう、なんて


北上「なるほど、プレゼントはYES・NO枕だねっ」

望月「その回答、YESだぜっ」


響きあう二人の思考回路


三日月「いくら金剛さんでもそんな…」


裸YシャツでYESだなんて…

金剛型駆逐艦…いやいや、まさかそんな…


三日月「ね、ねぇ、大井さんっ」


桃色に染まりだす思考から

逃げ出すように、大井に同意を求める三日月


大井「どうだか、金剛さんだし」


なくはないか、とも思う

まあ、どうせ夜が明ければ分かることだ

塞ぎこんでいるか、やっちまったぜって顔をしているか

やっちまったなら、それはそれで良いのだけれど

前者なら、なにかフォローを入れないと…

たっく、あの提督は本当に…


三日月「否定してっ、お願いっ」


大井さんまでそんなこと言い出したら、ツッコミが追いつかないから

でも、本当に否定して欲しかったのは

自分の妄想だったりもする


大井「へ?え、ええ…」


本当に…と、繋げようとした所で

三日月の声に思考を中断される

なにか懇願されているように見えるが

その勢いに押されるように、首肯させられていた





ゆー「はい、たま…あーん」

多摩「にゃーん…むぐむぐ…」


差し出されたローストチキンを

促されるままに、口を開いて飲み込む多摩


ゆー「おいし?」

多摩「にゃん」

ゆー「そう、良かった…もっと、食べますって?」

多摩「にゃー…むぐむぐ」


要介護・軽巡多摩

そんなふうに見えなくもない光景だった

それでも、楽しそうに餌付けをしている ゆーが合わされば

だらし姉と世話焼きな妹な絵にまでは格上げされるだろうか

いや、良いとこペットと飼い主か


木曾「飯ぐらい自分で食えよ…」

多摩「ふっふっふっ。自分が出来ないことを人にやらせるもんじゃないにゃ」

木曾「ちっ…」


からかうように笑う多摩に、舌打ちで返す木曾

その格好は、割りとリアルな熊の着ぐるみに

丸呑みをされて、口から顔だけを覗かせているという

なんとも酔狂な格好であった

だって、罰ゲームなんだもん、しょうがないじゃない


そういう訳で、パーティーが始まってから

対して何も口にしてない木曾

全くじゃないのは、一応その手の、熊の手の、大きな爪で

肉を突き刺して食べてはみたが

滅茶苦茶手が汚れるのも手伝って

あんまりにもあんまりな気分になれたので、早々にやめていた


ゆー「…きっそ、きっそ」

木曾「あん?」


からかわれた上に

空腹も相まって、ぶっきらぼうに返す木曾

ゆーに視線を向けてみれば、ローストチキンが差し出されていた


ゆー「あーん?」

木曾「え、いや…」

ゆー「いらない?」

木曾「うっ…」


いらない訳はない、現にお腹だってなっている

しかし、なんというか、幼女にご飯をって…

流石にそれは、かなり恥ずかしい物がある

平然とうけとっている姉の正気を疑いたい…いや、そんなもん無いのかもしれんが


見上げてくる ゆーの視線

純粋に、親切心とか好意の塊の様な視線


ゆー「おなか、なってます」


聞こえてくるお腹の音に、首を傾げるゆー

お腹が空いてるのに、どうして食べないのか、と


木曾「あ、あーん…むぐむぐ…」


結局、子供のように、あるいは恋人のそれのように

口を開き、肉を受け取る木曾

熊(着ぐるみ)に餌付けする幼女の絵面、美女と野獣


ゆー「おいし?」

木曾「あ、ああ…」


正直、味なんか良く分かっていなかったが、頷くしかなかった


球磨「くまっ…くくくくくく…」

木曾「…」


後ろから球磨の忍び笑いが聞こえてくるが

とりあえず無視だ、あとで引っ掻いてやる

幸い、気ぐるみには、立派な爪が付いているのだから




皐月「華やかだね…」

提督「そうねぇ」


工廠の白熱灯、ツリーの電飾、テーブルの上のローソク

色とりどりの光が入り乱れている

それを、各所に飾られた装飾が乱反射させてみれば

部屋中が輝いて見えもする


正直言えば目が痛くもあるが

こうやって、一歩下がって眺めている分には

まぁまぁ綺麗だと思わなくもない


皐月「ボクらは、どうしようか?」

提督「どうって…ふむ」


提督の膝の上に座っている皐月が

顔を上に向けて、提督の様子を伺っている

その様子は、どこか楽しげであった


しかし、どうこう言われたとて、とりあえずは寒い

もう12月も末だ、いい加減寒いもの寒い

となれば、このまま湯たんぽか

抱きまくら代わりに、腕の中に収まってくれれば概ね満足ではある


提督「…こちょこちょこちょ」

皐月「ひゃっ!?やっ、ふふふっ、くすぐったいってっ」


かじかむ指先を、皐月の服の隙間に忍ばせて

その柔らかい脇腹をそっと撫ぜる

不意の冷たさに、皐月の体がピクっと跳ねる

それと同時に、随分と可愛らしい声が口から飛び出た

調子に乗って、更に脇腹を掻き回してみれば

面白いくらいに、体を震わせてくれる


皐月「もうっ、やめてってっ」

提督「おっと」


口をとがらせて、くいっと提督の方へ体重をかける皐月

さらに、後頭部で提督の胸元を小突く


皐月「ふぅ…」


提督の指先から開放されて、一息付く皐月

上がった吐息が、白くなり工廠の空気に溶けていく

心なしか色付いた うなじは

騒いだ事によるものか、あるいは羞恥か照れなのか


皐月「でさ、司令官。クリスマスだしさ、ボクも、その、ね?」

提督「ん?」


照れくさそうに、文節を区切りながら言葉を続ける皐月

そして、途切れ途切れの言葉に合わせながら

子供が揺れる椅子で遊ぶみたいに、提督に体重を預けてくる


皐月「プレゼント、用意したんだ」

提督「…」


そうは言っても、特に彼女が何かを持ってる様子はない

となれば、そういうことなのかと…


提督「ボクとかいう?」

皐月「言わないよっ、金剛さんじゃないんだからっ」


一際強く、体重を掛けて抗議してくる皐月


提督「別に私は、それでも良いんだけど」


そんな彼女を受け止めて、ぎゅっと抱きしめ返す


皐月「そんなの…」


もう上げてるもん…

もぞもぞと動く皐月の口

それが言葉になってるどうかは怪しいところだった


皐月「ちょっとまっててっ。取ってくるからっ」


ぴょんっと、提督の膝の上から降りると

逃げるように何処かへ駆けていく皐月


提督「…」


それをぼぅっと見送る提督

空っぽになった膝の上、入れ替わりに入ってくる空気が薄ら寒い

おもむろに、そっと自分の頬へ手を伸ばす


提督「…あの言い方は、卑怯だと思う」


変な顔してないだろうかと、軽く自分の頬を引っ張る提督

とりあえずは、大丈夫そうではあったけども

どうにも赤くなってるらしいのは、どうしようもないか


提督「ふぅ…」


ま、戻ってくるまでに、元に戻ってればいいか

力を抜いて、椅子に体重を預けた


皐月「しれーかんっ♪」

提督「ん?」


ふわりと、弾んだ皐月の声と一緒に、首から肩へかかる柔らかい感触

それが、胸元まで垂れてこれば、白いマフラーだと気づく


提督「皐月?」


椅子に体重を預けるままに、顔を後ろに向けてみれば

逆さまになった、皐月の笑顔が目に入る


皐月「メリークリスマスっ、司令官♪」


そうして、照れくさそうに「にひひっ」と、はにかんで見せる彼女


提督「…」


やられた、本当に卑怯だと思う

落ち着くまで どっかに隠れたい


提督「皐月」

皐月「?」


こっちゃこいと、膝の上を叩く提督

一瞬、首を傾げてみるも

すぐに笑顔を取り戻して、提督の膝の上に戻る皐月


皐月「あ…」


そうして、腕の中に彼女が戻った所で

その白い首筋を隠すように、もらったマフラーを巻きつける

提督の首にかかるマフラー、その余った両端が皐月の首に掛けられれば

過剰分はほぼ0に、ぴったりと二人の首を包み込んでいた


提督「ありがと…」

皐月「うん…」


提督に体を預ける皐月

そんな彼女を、しっかりと抱きしめる提督

クリスマスの夜のそんな一刻



ー執務室ー


微かな摩擦音を立てて、執務室の扉が開く

部屋の中は仄暗く、僅かな星明かりが入るのみ


提督「ふぅ…」


部屋に戻ってきたのは ここの主

勝手知ったるなんとやら

電気もつけずに歩を進めると

どっかりと、ソファに腰を下ろした


息を大きく吸って、吐き出す

冷たい夜の空気が体中に行き渡り

先程までの宴で浮ついた空気を冷ましていく


提督「それで?パーティにも出ずに、こんな所で何をしている?」


視線を横に逸らす

あるのは執務用の机と、その後ろには窓

そして、そこから入る月明かりに照らされて

薄っすらと、巫女服のような衣装が浮かび上がり

胸元の金色の飾緒が、薄暗がりの中に際立っていた


金剛「…」

提督「プレゼントは決まったのか?」


とは言ってみたものの、こんな所で塞ぎこんでるんだ

その限りでは、なさそうだけども


金剛「…ねえ、提督」


コツコツと、静かな部屋の中に金剛の足音が響く

そうして、提督の前までたどり着くと

その両肩を押さえつけるようにして手を置いた

それはまるで、逃がす気などないかのように


金剛「私じゃ、ダメですか?」

提督「ん?お前は、なにを?」


いつもと毛色の違う金剛の態度に、提督が返答に困っていると

その肩に置かれた手に一層力が込められる

正直そろそろ痛いくらいだ


金剛「ねぇ、提督。私が、金剛が、プレゼントでは不満ですか…」

提督「不満というか…どうした?」

金剛「どうもはしてません。私は何時だって、提督の事をお慕いしますし、そう伝えてきました」

提督「お、おぅ…それは、私だって…好き、だよ?」


ギリギリと強くなっていく力

それに抑えこまれて、どんどんとソファに沈んでいく提督の体

しかし、それも限界。やがてはソファの感触も固く感じるほどに抑え込まれる


金剛「ねぇ、提督。私が、金剛が欲しいのは、LikeYouではありませんよ?」


私が、金剛が欲しかったのは、いつだってLoveYouです

ねぇ、提督。私がプレゼントでは不満なんですか?

私は何時だって、貴方に見て欲しかった、目を離さないでいて欲しかった

提督が照れ屋でも、奥手でも、子供っぽくても、別にそれでも良かった

それで、からかわれたり、逃げられたりするのでも良かった


けどっ、けどもっ!

それはだってっ!構ってもらえないくらいならっ!

イタズラされるでもっ、からかわれでもしてる方が良かったからっ!

それでもだってっ、小さくてもっ、いっそ寝言でさえも良かったのにっ

好きってLoveYouって言ってさえくれれば金剛はっ!

なのに提督っ、貴方がっ、私に好きだと言ってくれたのはどれ程ありますかっ!

からかうばっかりでっ、本気でキスをしてくれた事あったんですかっ


ねぇ、提督…私は貴方の何なんでしょう?

私の話、ちゃんと聞いてくれてるんですか…

いつも生返事で、上の空で、私ばっかり喋っていて…

ねぇ、提督…私は貴方の何ですか?

ただの兵器ですか…ただのお友達何ですか…

それならそう言ってください…それでも、金剛は、頑張れますから

それでも、金剛はっ…


でも…でもね提督

分からないんですよ、分からないのは辛いんですよ

一人ではしゃいでるだけ何じゃないかって思うと、怖いんですよ

どっちにも行けないんですよ…

ただの兵器だって言うなら、剣にでも盾にでもなりましょう

身命を賭して、貴方を守り抜きましょう、神様だって殺してみせるわっ

ただのお友達だというのなら、遊び相手にでも喧嘩の相手にでもなります

貴方が困っているのなら、手を引いても、背中を押して上げも良いっ

それでも、もしっ…提督が、貴方が、私の事を愛してくれるというのならっ

私の全部を使ってでもっ…


ねぇ、提督…私の提督…MyLord…MyLover

貴方の中の私は何処にいるんですか…私は何処にいたら良いんですか

私の中の貴方は、こんなにも、私の中で、私の中を…

私には、金剛には、貴方しかいないんです…

貴方のためなら何でもできるの、何だって、何度だって…

けど、けどね…貴方が見てくれないのは嫌なの

どんな風にだって良いっ、貴方が見ててくれるのなら、私は、金剛はっ

けど、けどもっ、貴方が見てくれないのは辛いんです

貴方が見てくれない所で果てるのだけは…我慢できない、怖いの…


ねぇ、提督…金剛では不満ですか?

ねぇ、提督…金剛は邪魔ですか?

ねぇ、提督…金剛は側にいても良いんですか_

ねぇ、提督…金剛は、金剛は、金剛はっ、金剛はっ!


「どうしたら良いんですか…」




ー金剛の部屋ー


金剛「あ…ぁぁ…ぅぅぅ…」


朝の光に目を焼かれ、小鳥の囀りに目を覚ます

そして同時に思い出す、昨晩の出来事を

ついでに頭も抱えだす…やってしまったと


言うだけ言って、叫ぶだけ叫んで、泣くだけ泣いて、喚くだけ喚いて

結局…提督の答えが怖くて逃げ出して…

あんな事を言ってどうなるというのだ

あんな事を言ってどうするというのだ

あれでは、友達以上でも恋人未満でもいられない

というか、今日どうやって提督の顔を見ればいい

笑ってごまかせるレベルを超えている…


金剛「ていとく…」


呟くだけで胸が暖かくなるし、熱くもなる

同時に、ぎゅっと締め付けられもする


金剛「はぁ…どうしましょ…ほんと」


布団から出るのが億劫だ

ベッドに体を縛り付けられているみたいだ

それでも、起きないわけにはいかない

そうだ、自分で言ったじゃないか

たとえどうであれ、提督の事は守らないと


とりあえずカーテンでも開けよう

窓でも開いて、朝の空気を吸い込めば

少しは気も晴れるだろうと…


金剛「…へ?」


そうして、カーテンに手を伸ばそうと

顔を横に向けたその先に


提督「おはよ?朝から面白い顔をしているな?」


具体的にはムンクの叫び見たいな

決して、年頃の娘が意中の相手の前でしていい顔ではないと思う


当たり前の様に、ベッドの上に横になっていた提督

此処だけ切り取れば、昨日はお楽しみでしたねと言えるかもしれない


金剛「へひゃ、アハっ…」


自分でも分かるくらい変な声が出た

それが分かった所で、恥ずかしがる余裕すらないどころか

突然の事に、もんどりうって、すってんころりんになった感情は

喉を動かし叫んでいた




「きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」


大鳳「っ!?何事っ!?」


朝の早い時間

いつもの日課と外を走っていた大鳳が

まるで爆撃でもあったかのような叫び声に体をすくませると

慌てて声の上がった方に顔を向ける


大鳳「今の声は…金剛さん…」


そうして、顔を向けた先も彼女の私室だ


「てっ、ていとくっ!?なんで此処にっ!?」


大鳳「…そう。うん…じゃあ、いっか」


そうして再び走りだす大鳳

叫び声の通りに考えれば、どうにも部屋に提督がいるらしい

昨夜はお楽しみでしたねと、言いたくもあったが

あの様子では、部屋の主でさえ寝耳に水だろう

だからどうというわけもない、いつもの悪戯か

あるいは、それがちょっとマシになったくらいか


大鳳「今日も平和ね」


とりあえず、後でからかって見るぐらいは

してもいいのだろうかと考えながら、走りこみを続ける大鳳だった



ー執務室ー


いつもの執務室

机では皐月が書類を纏めていたり、三日月が資料を取り替えていたり

ソファには寝っ転がってる望月と、概ねいつもどおりだ


金剛「ね、ねぇ…提督…」

提督「んー?」


ただ、いつもと少し違うのは

提督に抱きまくらにされているのが金剛さんだったという事くらい

普段、睦月型の娘たちがそうされてる分には

微笑ましいとも愛らしいとも言えるのだが

提督の膝の上で抱えられている金剛の姿はどこか、そう

そろそろR指定でも掛りそうな、雰囲気を醸し出していた


金剛「みんな見てますから、その、ね?」

提督「目を離さないでって言ったのに?」

金剛「それは、そう言いましたが…時間と場所をデスネ?」


なんて言いつつ、皐月と三日月に助けを求めるように視線を送る金剛さん

望月は寝息を立てているので、あてにはならなそうだ


皐月「ん?ボクらの事なら気にしなくても良いよ?ね、三日月?」

三日月「ええ、お構い無く…」


司令官が静かになってるのなら、それはそれで仕事が捗るというものだ、と

なんて答えが、淡々した声と、割と生暖かい視線でもって返ってくる


提督「こーんごー。私の事邪魔かい?」

金剛「ふへぇっ!?いえいえいえいえいえっ!、けっしてっ、けっしてっそんな事はっ!?」


そんな提督の言葉に、抱きかかえられながらも

体全部を使って、否定する金剛さん

だって、それはない、それだけはありえない

ていうか、なんで、人のセリフばかりならべて…

意趣返しなのだろうか、やっぱりからかっているだけなのだろうか

もしかして…怒ってたりするのだろうか


提督「ねぇ、金剛…」

金剛「はっ、はいっ」


内心をグチャグチャにしていると、提督の声に背筋が伸びる

そんな彼女に、甘えるように耳元に口を近づける提督

首筋にかかる吐息に反応して、金剛の体がビクっと跳ねる


提督「…」

金剛「あっ、うっ…」


そうして、提督が耳元で何かを囁くと

途端に金剛の顔が赤くなり、それを隠すように身を縮こませる


金剛「Me,too…」


やや間を置いて後

小さな声で返ってくるのはそんな言葉だった


ーおしまいー




EX:メレークリスマス


私よっ、此処から先はオマケになるわっ

本編だけでお腹いっぱいって人は気をつけなさいっ

いや誰だよっ、なんて思ったそこの、貴方、貴女、あなた

良いツッコミねっ、褒めてあげるわっ、なんにも出ないけどね?

以上、御代みつよ でしたっ

それじゃっ始めるわっ、刮目なさいっ



ー大本営・執務室ー


豪華さを重厚感で押し固め、無理やり落ち着かせた様な部屋は

部屋そのものが年季の入ったアンティークの様であった

それは、この部屋の主が位の高いものであると示すのには

十分過ぎる程の威圧感を持って出迎えてくれる


そんな部屋の片隅

年季の入ったアンティークの中に、真新しく浮ついたモダンが置かれている

それは木であった

盆栽等であるのなら、まだ違和感も拭えたのだろうが

綺羅びやかな電飾、それを照り返す華やかな飾り物

子供の身長程度の植木にそれらはぎっしりと取り付けられている


みつよ「やっぱり、ツリーがあるとクリスマスって気がしてくるわねっ」


部屋の主が口を開く

名を御代 みつよ。大日本帝国大本営の大元帥

ちみっこい見た目のせいか人によっては幼女とも見える体躯

白い軍服に長い黒髪がよく映えている


大潮「あ、おひいさまも 飾り付け、しちゃいますか?」

みつよ「そうね、天辺のお星様だけ残しときなさいっ、あとは任せるわっ」

大潮「はいっ、大潮にお任せくださいっ」


ぴしっと、軽い感じで敬礼すると、ツリーに向き直る大潮

「アゲアゲでいきますよーっ」なんて、拳を突き上げると短めのツインテールがひょこりと跳ねた

そうして、威勢良くも元気よく作業を再開する

ただの植木が、彼女の手によって

だんだんと輝きを増していく様は、さながら魔法のようでもある


大淀「ふふっ」


そんなやり取りを眺めながら、ほほ笑む大淀

おひいさま とて、みつよ様とて、まだまだそういう年頃なのだろう

それは分かる。それは分かるが、軍服の上からそれを言うのは

なにかアンバランスな気がして、そのギャップが少しおかしい

これが平時なら、その衣装もコスプレだと愛でられもするのだけれど

今はまだそういう訳にはいかないし

そういう訳にもいかない書類を、今もこの手に抱えている


みつよ「どうしたの?」


微笑む大淀に、からかうような視線を向ける みつよ様


大淀「いえ何でも」

みつよ「そう?貴女も飾り付けしたいんじゃないの?」

大淀「それでは、天辺のお星様でも…」

みつよ「まちなさいっ。それは私の担当よっ」

大淀「はいはい。冗談ですよ、おひいさま」

みつよ「ふふん。わかってるなら良いのよ」


冗談交じりに視線を交わす二人、そうして…


みつよ「それで?」

大淀「それで…」


二人の声が重なる

それはお互いに先を促すものだった

同時に、和んでいた空気が消え失せ、二人の表情が引き締まる


大淀「はい。まずはこちらを…」


抱えていた書類から一つ抜き取り

みつよ様に差し出そうとした瞬間


「大変かもっ!」


そんな大声と一緒に、執務室の扉が勢い良く開け放たれる


みつよ「騒々しいわね。一体どうしたっていうの?」


差し出された書類を受け取りながら、咎めるように目を細める みつよ様

その視線の先、二式大艇を抱えた秋津洲が肩で息をしていた

しかし、大艇を抱えているということは、扉は蹴破ったということかしら?

後でちゃんと躾ないと…


秋津洲「だから、大変かもってっ!?」

みつよ「はぁ…秋津洲、深呼吸なさい」

秋津洲「そんな場合じゃっ!」


大変大変と、子供じゃないんだからまったくもう


みつよ「ほら、すって?」

秋津洲「で、でもっ」

みつよ「大和呼ぶわよ?」

秋津洲「すぅぅぅぅぅぅっ」


「大和」その一言を聞いただけで、赤くなっていた表情は青くなり

そうなったかと思えば、過剰なまでに息を吸い込む

どうにも、着任初日にコテンパンにされたのが余程効いてるらしい


みつよ「ほら、もっと吸いなさい?」

秋津洲「すぅぅぅぅぅ…ぅっっぅっぅ」


胸をいっぱいに膨らませる秋津洲

青くなっていた顔は、だんだんと赤みを増していた


みつよ「ふぅ。それで、大淀…」

大淀「はい」

秋津洲「!?」


そうして、何事もなかったかのように執務に戻る二人

取り残される秋津洲。胸は吸い込んだ空気のせいでハト見たくなっている

しかし、呼吸は吸い込んだだけでは成立しない、吐かなきゃいけない

というか吐けばいいのに、律儀に吸い込んだまま耐えている

それでも、だんだんと息苦しさは募るばかり


秋津洲「んっ、んんっ…んっ!」


そこで、何かに気づいたように喉を鳴らすと

抱えていた二式大艇を指でつついた


大淀「ん…失礼、おひいさま」


断りを入れ、自分の顔の横に手を添える


大淀「なるほど。おひいさま、二式大艇より通信です…」

みつよ「あら、面白いことするのね?」


こんな近くで通信してくるなんて

口が塞がってるのだから、手といえばそうなのでしょうけど

大人しく吐けばいいのに、とも思う


大淀「内容は…あまり面白くありませんよ?」


「野良レ級が出たそうです」

そう大淀が続けると、みつよ様の表情から余裕が消える


みつよ「なんでそんなのが彷徨いてるのよ?」

大淀「さて?サンタさん、にしては物騒ですね」

みつよ「血染めのクリスマスなんて笑えないわよ?」

大淀「まったく…」

みつよ「ふぅ…」


一つ息を吐くと、手にした書類に目を落とす

同時に、コンコンと細い指先が机を叩き始める

その音は、考えを纏めるようであり、決断を急かすようでもあった


みつよ「大淀っ」

大淀「はい」


書類を投げ捨て立ち上がる みつよ様

それに合わせて、大淀が金の飾緒の付いた外套を羽織らせる

そこに袖を通すと、扉に向かって歩き出した


みつよ「すぐに周辺海域に連絡を…レ級とやり合いたいバカ以外は下がらせなさい」

大淀「はい」


幸いというべきが、無色(ノーマル)の単艦って話だけれど

それにしたって、アレ一人に1艦隊が消されかねない危険は付きまとう

良くても、一人二人と引き換えに撃退できましたが良いところだろう

そんなものとまともに戦える戦力なんてどれ程あるかって…


みつよ「大潮っ」

大潮「ははっ」


飾り付けの手を止めて、みつよ様に向き直ると、さっと頭を下げる大潮

そうして差し出された手の平の上には、キラキラと金色に輝く星の飾り


みつよ「うん。良い出来ねっ。良くやったわ大潮」

大潮「ありがとうございますっ」


受け取った星の飾りを、ツリーの天辺に突き刺す

飾られた植木の頂点に輝く星の飾り

やはり、これがなければツリーとは言えないだろう

それを一瞥して、満足気に頷くと再び歩を進める


みつよ「…秋津洲?」


しかし、扉を開き外へ踏み出そうとした所でその足が止まった

振り返った先には、大淀、大潮と続き、息苦しそうな秋津洲の姿


みつよ「貴女、いつまで遊んでるのよ?」


なんて、白けた様子のみつよ様


秋津洲「けほっ、ちょっちょっと…理不尽かも」


ようやっと息を吐くと、絞るように声を出す


みつよ「理不尽じゃないわ、ただの不条理よっ。いいから支度なさい」


具体的には40秒位で


秋津洲「ちょっ、ちょっとまってー」


さっと、外套を翻し部屋の外へと向かう みつよ様

そして、通信機を手にそれを耳に押し当てる


みつよ「大和っ」


口にするのは彼女の名前

いつも呼んでるあの娘の名前

それは絶対的な信頼と安心を与えてくれる名前だった



ー海上ー


それは、荒れ模様と言うには十分な状況であった

それは確かに冬の海だ、多少なりと機嫌が悪い時もあるだろうが

しかしそれは、確かにそこにいた

暴風波浪津波etc.etc全ての気象警報が服を着て立っているかの様に

いるだけで最悪だと、災厄だと分かる程の威圧感

戦艦レ級…ニヤけた面を引っさげて、それはそこに立っていた


長門「なぜこんなものが此処にいる…」


南方の奥地でしか確認されてはいなかった筈なのに

単艦で回遊してるなんて話は聞いたことがない


長門「…」


吐き出しそうになる舌打ちを、握りこぶしの中に押し込める

歯噛みしてる暇など無い、嘆いてる暇なんてものはもっと無い

最悪の遭遇戦だった


長門「雲龍…走れるな?」

雲龍「ええ、それは、なんとか…」


いきなりの航空戦

それをどうにかこうにか、退けたまでは良かったが

雲龍は被弾し、他の艦娘達にも大なり小なり被害が出ていた

長門自身も例外ではなく


長門「矢矧、皆を頼む。殿は私が受け持つ」

矢矧「貴女だって、軽い傷じゃ…」

長門「だからな…あまり早くは走れんのだよ」

矢矧「っ…」


そう言って、苦笑する長門

そんな彼女に、歯がゆさと、申し訳無さに押されて

知らず、顔を俯かせる矢矧


我儘を言えるのなら、この場に残って自分もと…

しかしそうもいかない…相手が、タ級やル級ならまだいい

いっそ、赤(エリート)や黄色(フラグシップ)であろうとも

けれど、アレはレ級であった


単艦で一個艦隊を壊滅させれると、話になら聞いていた

同時に、なにかの冗談だろうとも思いもしていた

だが、そんな冗談は目の前で現実になっていた

一目で、あぁ…アレには勝てないと思ってしまっていた

私達のどれだけを犠牲にすれば追い返せるのかとも


矢矧「ごめんなさい…」

長門「謝るな。適当に片付けたら直ぐに追いつく」

矢矧「ん、待ってる」


叶うあてもない約束だと

そうは思っても、言わずにはいられなかった


矢矧「時津風っ、雲龍さんをお願い」

時津風「ほーい…」


矢矧の横を抜け、雲龍の隣に付く時津風

その途中、一瞬だけ長門の方を振り返るが

それっきり、彼女の背中を焼き付けるように一瞥すると

雲龍の手を引いて、後退していった


酒匂「長門ちゃんっ、私もっ」

矢矧「いくわよ…酒匂」

酒匂「でもっ」


矢矧に手を引かれ、引きずられるように後退していく酒匂

踏みとどまろうと試みるも、損傷した艤装では思うように抵抗もできずに

ずるずると距離を離されていく


酒匂「矢矧ちゃんっ」

矢矧「酒匂っ!…いい加減にして」

酒匂「ぅっ…ぅぅぅぅ…」


姉の怒声に口を塞がれ、その涙に力を失くす

せめてもの抵抗か、引かれる手を握り返し

八つ当たりでもするように、力を込めるしかなかった


長門「お前も…」

島風「うん…大丈夫。足は速いから、さ」


そういって、酸素魚雷の射線をレ級に向けると

ありったけ、撃てるだけ、バラ撒けるだけをバラ撒くと

直ぐに反転して、皆の後を追っていく


島風「早く戻ってきなよ、デカ女」

長門「ふんっ…さっさと行け、チビ助」

島風「べーっだ…」


去り際に舌をだして悪態を付く島風

冬の海風に凍える舌を引っ込めると

その冷たさを誤魔化すように、ぎゅっと噛み締めていた




島風の置き土産が命中して、派手な水柱を上げていた

しかしそれだけでも合った


長門「だめか…」


やはりというべきか、ほぼ無傷のようにも見える


レ級「…」


魚雷が命中したことなど、歯牙にも掛けずに

ニヤけた笑顔を貼り付けたまま、主砲を長門の後方へと向ける


レ級「ぉ…」


そこに一発

長門が放った主砲弾がレ級に直撃する

しかしその程度

服が煤けたか、多少装甲が歪んだ風なのがせめてもの救いか


レ級「ひひっ…ひひひひひひひっ」


何が楽しいのか、その笑顔はさらに深みを増して

口角は切り裂かれたように釣り上がり

狂気は狂喜に変わり凶器を持って、長門に照準を定めた


長門「まったく…あれで姫とか鬼とかでないのだから」


命名基準を見直してほしいものだ…

しかし、この距離で撃ってダメなのだ

いっそ至近距離まで近づくべきか…

そうなると、敵の魚雷に対応しづらくもなるが


長門「まぁ…その時か」


どのみち、損傷を負った艤装では

距離をとっても限界があるだろう、ならばコイン一個分に掛けるべきか


長門「ビッグ7の力。侮るなよっ」


そうして突撃を敢行する長門、それに喜々として応戦するレ級

海面を這って迫る魚雷を機銃掃射で叩き落とし

さらに、副砲・主砲をレ級に向けて次々に撃ち込んでいく

雨あられと交わされる砲弾の応酬、その一切を無視して突っ込む長門

甲高い音を立てて、長門の装甲に弾かれていくレ級の副砲群

その中に一発、重苦しい音が混じり

他の砲弾を蹴散らしながら、レ級の主砲が長門に迫る


長門「ふんっ!」


その砲弾を右手で弾き飛ばす

しかし、そうひらりといくものでもなかった

その過大な衝撃は、腕ごと持って行かれたかと思うほどのものであった

最悪、そのつもりでも合ったが

もう一度やれば、間違いなくそうなるであろう予感はあった


そうしてレ級の眼前へ

逃げるでもなく、距離を詰めるでもなく

ただその場で長門を待ち構えるレ級

その不動の姿勢が、ある種の余裕と不気味さを感じさせる


長門「この距離でならっ」


長門の主砲がレ級に向く

それと同時、主砲が発射される僅かの間に

レ級の艤装が口を開き、長門の腹に噛み付いた


長門「っぅ!…だが、これでっ」


長門の腹部に歯を突き立てるレ級の艤装

それを両手でがっちりと抑えこむ

そう、この距離で、この状態なら外しはすまいと


レ級「きゃはっ♪」


しかし、それはレ級にだって同じこと

噛みつく艤装の砲を動かし

お互いに至近距離からの発砲…




レ級「きゃはははははっ」


さすがに無傷とはいかないようだ

けれども、体の各所を焦がしながらも

笑い焦げるレ級の姿は、心底薄ら寒いものを感じさせる


長門「ぐっ…」


それに対し、膝を付き

海の上に浮かんでいるのがやっとの長門

まだ主砲は動く、もう一撃、撃ち込んでやりたくもあるが

目の前で口開くレ級の艤装と、見下ろすように向けられるその主砲群


ここまでか…と、諦めが鎌首もたげてくるには十分だろう

苦し紛れに主砲を撃った所で相打ちにもなりはしないだろう

けども、多少なりとダメージが通るなら

皆の逃げる時間が稼げるのなら、無駄なあがきも悪くはないか


「非は理に…」

長門が腹をくくったその時

風にのって届く凛とした声


長門「なんだ…」


「理は法に、法は権に、権は天に、そして天は…」


レ級「ぁぁ…」


レ級もその声に気づいたのか

薄ら笑いのままに、顔だけを声にする方へと向けた


大和「長門さん、避けてくださいね?」

長門「なっ!?」


長身の女性。その体を覆ってもまだまだ有り余るほどに巨大な艤装

その偽装をもってしても、巨大に映る主砲群が長門たちの方へ向けられていた

それは、見まごう筈もなく

史上最大の戦艦、大艦巨砲主義の頂点、超弩級戦艦大和であった


「主砲斉射、薙ぎ払え…」


私製51cm3連装砲

私製51cm3連装砲

私製51cm3連装砲

私製51cm3連装砲


海面が爆ぜた

着弾の衝撃で、ではない

ただ一度発射しただけで、海面は大和を中心に穿たれ

飛沫を散らして、ついには霧散していく


その轟音は、その衝撃は

先程までの、レ級と長門の交戦が

豆鉄砲のようにも思えるほどであった


そうして着弾する

そして、海が割れた

51cm砲によって開かれた海溝

その中に、巻き戻しのように水が雪崩れ込み

渦を巻き、ぶつかり合い、火山が噴火でもしたかのような、巨大な水柱を形成する

その上空には爆発の衝撃と熱気により

小規模ながらも、きのこ雲さえ浮かんでいた




大和「それでは、さようなら」


艤装は砕かれ、もはや浮くだけとなったレ級の体

それを冷たく見下ろす大和の瞳

それでも、ニヤけ面を崩さないその顔めがけて

大和手ずから徹甲弾を叩き込んだ


長門「けほっ、けほっ…おまっ、バカかっ!?」

大和「ああ、良かった無事でしたね?」

長門「無事なわけがないだろうっ、殺す気かっ」


間一髪といって良いものか

あるいは、ただ爆発の衝撃に押し出されただけなのかもしれないが

頭から盛大に水を被り、衝撃で艤装は完全にお釈迦になりはしたものの

とりあえずは、無事の長門。そう、文句の一つも言えるくらいには、無事だといえる


大和「はぁ…ていっ」


長門のそばに寄り、ため息を一つ吐くと

何の躊躇もなく、手にした傘を長門の頭めがけて振り下ろした


長門「たぁーっ!?な、なんだっ!?」


頭を抱え、涙目になりがら、大和を睨みつける長門


大和「心中する気だったくせに、何だもかんだもありますか」

長門「それは、しかし…」


あの状況ではしょうが無いだろうと


大和「ていっていっていっ」

長門「たっ、ちょっ、やめっ、やめんかっ」


口答えをする長門に対し

さらにさらに、傘を振り下ろし続ける大和


大和「死して屍拾う者なし…ですよ?」

長門「なにを…」

大和「長門さん、私達戦艦はね…」


誰よりも強力に、何よりも頑強に

艦としての臨界を極めたもののことです

故にその背中は、全ての艦娘達の羨望を束ね

その道標として立たねばなりません


大和「長門さん、死して屍拾う者なし、ですよ?」

長門「…」

大和「私達の後ろには、仲間が、人が、国があります…安易に没する等と考えませぬよう」


切に切に…

そうして言葉を区切る大和


長門「そう、だな…」

大和「はい。ご理解いただけたなら何より…まあ、とりあえず」




その後、女神様によってあっさりと修復が完了する長門


長門「良かったのか、女神なんて…」

大和「ボロボロのまま帰ったら心配させるでしょう?」


なんとかなります、大丈夫ですって顔をするのも戦艦の仕事ですよ


長門「大変だな…戦艦というのは」

大和「そうですね…では、そんな長門さんにクリスマスプレゼントです」

長門「ん?」


長門に差し出されたのは、試製51cm連装砲…

メガネを掛けた白衣姿の妖精さんが、可愛らしく敬礼をしていた


大和「次に合う時までに、使いこなしていてくださいね?」

長門「ふふ、了解した…」




長門から無事の連絡を受け、合流点で待機していると


島風「あっ、長門っ、おっそー…い?」


最初に長門の姿を認めた島風

嬉しそうに声を上げるが、それも一瞬で曇った


長門「…」


だんだんと近づいてくるシルエット

それは見慣れた姿であった

だが、それゆえにそれは異様な姿でもある


時津風「へぃ、ながとぉ、なーにやってんのさ?」


心配して損したとでも言いたげに、呆れたような時津風


長門「…」


それに返す言葉はない

だってそうだろう、頭の上には紅白の帽子

それと合わせるような、紅白のジャケットが目を引いている


「この借りは必ず…」なんて言ったのが運の尽きだったのだろうか

「それじゃ、この衣装を着て帰ってくださいね?」

なんて、サンタのコスプレをさせられたのが、今さっき


そりゃ、長門だって抵抗はした

しかし…あぁ、世界に誇るビッグ7が

この大和の先輩に当たる方が、そんな狭小だっただなんて

助けられ、女神の加護を受け、51cm砲を贈与までされて

コスプレの一つもしてくれないなんて、大和は悲しいです…

およよよよ…なんてわざとらしくも、嘘っぽく泣かれてしまった


そりゃ、長門にだってプライドはある

いくらクリスマスと言えど、そのような浮ついた格好をするなど

しかし、助けられ、女神の加護を受け、51cm砲を贈与までされた事実が重い

結局、嘘泣きを続けながら、ちらちらと盗み見てくる大和に押されたのが、この惨状


雲龍「あなたは…いったい何と戦ってきたの?」

長門「ぷらいど、かな…」


溢れない涙を、心のなかで拭う長門


矢矧「…」


少し視線を上げてみれば、矢矧の背中が映る

遠目からでも分かるほどに、小刻みに揺れるその背中

それは、いつかの日に見た背中にそっくりであった


長門「めりーくりすまーす…」


そっと、矢矧の側により、耳元で囁く長門


矢矧「ぷはっ…くふっ、やめ、ちょっと、ごめん、なさ…」


限界だったのだろう、耐え切れなかったのだろう

その場にへたり込み、お腹を抱えて、必死に笑いを堪える矢矧

その首筋、耳の先まで真っ赤に染まってるのが良く分かる


酒匂「やめて長門ちゃんっ、矢矧ちゃんが死んじゃうっ!」


ガバッと、うずくまる矢矧を庇うように覆いかぶさる酒匂


長門「…」


返す言葉はない、というかもうどうでもいい


長門「…ん?」


何か達観し始めた長門の元に通信がはいる


ーお疲れ様です、長門さん

 レ級が出現したとの報告がありましたが、その様子だと平気のようですね

 クリスマスの準備も整っています、お早いお帰りを願います

 あと、そのサンタさんの格好、とても似合っていますね、それではー


長門「…」


自分の家の提督からだった

戦況はともかく、なぜこの格好を…

なんて疑問は直ぐに溶ける


雲龍「送信っと…ふぅ」


やり遂げた感のある雲龍さん

端末を弄くり回していたかと思えば、どこかへ一斉に送信していた


長門「うんりゅーっ!」


冬の海に、長門の声が響き渡る


雲龍「まぁ、レ級より怖いわ…時津風ちゃん、助けて…」

時津風「そだねー、遊んでないで帰ろっかー」


雲龍の手を引いて、帰途へと付く時津風


島風「ふっ…」


去り際に嘲笑を残しつつ…

レ級よりも怖い顔をしている長門の横を島風が通り過ぎる

時津風たちと合流すると、はやくはやくーっと、雲龍の背中を押して先に進んでいく


長門「…」


ああ、そうか

次に大和とあった時は、51cm砲弾を撃ち込んでやろう

そう心に誓った長門さんでした




「大和っ」

入ってきた通信はいつもの声であった


大和「はい、今しがた片付きました」


クリスマスですので、苦しませずに…

なんて、ひとり笑みをこぼして見るも


大和「あっ…」


「おもしろくないわっ」なんて、一蹴されると同時に通信が切れた


大和「…むぅ」


昔はこれで笑ってくれたんですけどねぇ…

女の子の成長は早いというが…難しいものですね



ーEX:メレークリスマス・おしまいー


後書き

はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです

それではこの番組は

提督「あ、手袋だ…」
北上「片方はあたしからだよっ」
大井「作ったの私なんですけど…」
提督「大井って…割りと律儀よね」
北上「一家に一人どうですか?」
提督「えー…」
大井「あらぁ…私じゃ不満でしょうか?」
提督「不満というか…」

球磨「不安しかねークマ」
多摩「きっと、肩身の狭い休日を過ごす事になるにゃ」
木曾「ま、尻に敷かれそうではあるな」

夕張「酷い言われようね…」
瑞鳳「否定出来ないのもまた…」

皐月「でも、大井さんが秘書艦の時は結構仕事進んでるよね」
如月「あんがい、扱いが上手いのかもねぇ」
望月「脅してるだけだろ…」
菊月「怒らなくても怖いからな…」
三日月「あははは…」

睦月「おーほほほほほっ」
卯月「酸素魚雷を食らうぴょーん」
ゆー「…みんな、何してるの?」
文月「大井さんごっこだよっ」
長月「もう、怒られろ…」

大井「あーなーたーたーちー…魚雷、撃ちますね」


金剛「まさか、大井も提督LOVEでしたか」
大鳳「そんなんじゃないと思うけども…」

ー諸々のメンバーでお送りしましたー


ー以下蛇足に付きー


♪教えて皐月ちゃんのコーナー♪

皐月「というわけで、クリスマス回とか思ってたら、金剛さんのターンだったね」
提督「クリスマスまでに、金剛の不満度が一定値を超えると発生するイベント」
皐月「もう、金剛さんにあそこまで言わせちゃって…」
提督「いや、一度くらい問いつめられて見たかったんだよ…」
皐月「ボクもしたげようか?」
提督「やめて…提督死んじゃう」

♪皐月ちゃんラジオ♪ 

皐月「はーい、それじゃコメント返しだよっ。いつもありがとうねっ」
提督「今回はー…」

・長月のデレ
・五月雨可愛い
・大鳳さん可愛い
・ビス子さん…
・彩華の階級
・艦娘じゃんけん
・皐月の出番

提督「ざっと、こんな感じだな」
皐月「それじゃ、上からいこっか」


・長月のデレ

提督「うん、まあ。やり過ぎって言われなくてよかった…」
皐月「長月がいきなり ちゅーした時は何事かと思ったけどね…」
提督「ほんとにな…。まあ、長月の株が上がったみたいで何よりだけども
   あーそれと、あの場所は私のものだ、ここは譲れません」

・五月雨可愛い

提督「五月雨ちゃん可愛い、頂きました」
皐月「なんか、百合百合してたのは?」
提督「そりゃ、鎮守府ってどうしても女の子が多くなるからね、そういう事もあるよね」
皐月「まあ、姉妹同士やたら仲が良かったりする娘もいるけどもさ」
提督「本音を言えば、長月の王子様役も良いかとおもったの。嵐なんかにまけるなーっ」
皐月「どこと張り合ってるのさ…。確かに、嵐さんはカッコ良かったけども」

・大鳳さん可愛い

皐月「大鳳さん可愛い、貰ったよっ」
大鳳「うん、どうもありがとう。提督は言ってくれないのに、ね?」
提督「言えば良いってもんでも…」
大鳳「言われないよりは?」
提督「催促するようなものでも…」
大鳳「あーあ、私も問い詰めちゃおうかなぁ?可愛いって言われたいだけなのになぁ?」
提督「むぅ…」

皐月「イチャつきだしたね、次にいこうか」

・ビス子さん…

皐月「随分と愉快なことになってたね」
提督「オイゲンちゃんからの好感度が右肩下がりになっております」
皐月「レーベさんや、マックスさんからは?」
提督「前々から、手のかかる姉くらいには思われてたよ、オイゲンの期待値が高すぎただけだな」
皐月「ああ…そういう」
提督「でもほら、ドライは色々あったけど立ち直ったバージョンって言ってた気がするし、そのうち…」
皐月「いつになるんだか…」
提督「いつだろうねぇ…」

・彩華の階級

みつよ「ま、いろいろあるんだけどね…
     艦娘の練度だけで階級付けられるなら、今頃、私の隣に立ってるわよ?
     そうなってないのは、輸送任務ばっかり押し付けて目立った戦果がないのと…
     切り札は多いほうが良いでしょうって、個人的な理由よっ
     今回のオマケでいうなら、レ級の始末を任せても良かったし?ま、そんな所ねっ」

提督「つまり子飼にしときたいって訳だな」
皐月「それ、司令官も含まれてると思うんだけど…」
提督「引きこもってられるうちは何でもいい…」

皐月「ちなみに、ボクと夕立さん、球磨さんと長良さんを除けば大体練度は互角かな?」
提督「ビス子…」
皐月「言わないであげて」

・艦娘じゃんけん

球磨「いつから じゃんけんが対等な勝負だと錯覚してたクマ?
    あるのは公平なルールだけだクマ、勝ちたきゃ練度を上げればいい、簡単な話だクマ」
提督「以上、脳筋でした」
皐月「パー出せば握りつぶせるって、木曾さんも思ってた時期が合ったんだけどね?」



球磨「艦娘じゃんけん」
木曾「じゃんけんっ」

「ぽんっ」

木曾(なんだって良い、あいつの手を抑えて握りつぶせば勝ちだっ)

そう、同じ球磨型だ。単純なパワーなら木曾だって結構なものだ
確かに、球磨が手を出す前に握りつぶしてしまえば、そうなるはずだった
だが、次の瞬間。木曾の目の前には球磨の握り拳

木曾「なっ!?」

慌てて、手のひらを顔の前に広げ何とか受け止めはしたものの

球磨「たかが手を開いた程度でっ!」

振りぬいた。全力で振りぬいた。そして、球磨の拳が木曾をふっ飛ばした

木曾「たぁぁっ!?てめっ、少しは加減しろってっ」
球磨「やかましいっ。つべこべいってないでかかってくるクマ。それともう終わりか?負けを認めるのか?」
木曾「上等だこのやろーっ」

この後、全部グーで殴り飛ばされた



皐月「て事が合ってね?」
提督「一応、腐ってもじゃんけんだ
   「ぽんっ」って言った時点で、分かるように、グーチョキパーが出てないと負けってルールもなくはないが…」
球磨「つまり、言わせない、出させない、その上で負けを認めさせる、これが勝利の鍵だクマ」
皐月「じゃんけんって思った時点で負けなんだよ、うん」

・皐月の出番

皐月「ちょっと恥ずかしいね…」
提督「これなんだよなぁ…キャラが増えると、一人分のシーン減るっていうね。文字数も増えちゃうし」
皐月「文字数に関しては。読み応えが合って満足だよって、コメントも貰ったけどさ」
提督「うん。少し楽になりました、ありがとう。後は中だるみしないように気をつけないとね」

皐月「あと、うちの娘は「ろーちゃん」じゃなくて「ゆーちゃん」だよ」
提督「すまない、口調が紛らわしいよな…」
皐月「そこはほら、ゆーが「おにおこですって」ってやってる所想像してもらえれば」
提督「きっと、ろーと違った可愛さが見られる筈と信じて」



皐月「さて、今回はここまでだね。皆、コメントありがとう」
提督「つたない文章ではありますが、少しでも和んで頂ければ幸いに思います」
皐月「それじゃ、また遊ぼうなっ」
提督「それでは、良いお年を」



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SS好きの名無しさんから
2015-12-24 19:13:53

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1: SS好きの名無しさん 2015-12-24 16:37:39 ID: XJmjeQpT

またも大作更新、お疲れ様でした。
今回も大変楽しませて頂きました(*^▽^*)

実は三日月とタメを張るくらいに純で初な金剛さんが、紆余曲折の末にとうとう嬉し恥ずかしのお膝だっこ(≧∇≦*)
しかも…その前には同衾しちゃってるじゃないですか(//∇//)

提督にからかわれ、駆逐艦に揺すられと半ば弄られキャラ化していたのが、独戦艦撃破を皮切りに復活した感が有りますね。
代わりにビス子さんが面白、ゲフンゲフン…かわいそうなことになりましたが(笑)

次回も楽しみにしています。
筆者さんも良いお年を迎えられますよう<(_ _)>

2: SS好きの名無しさん 2015-12-26 21:41:15 ID: hIBnUiRT

長月は相変わらずの可愛さで………

クリスマスボイス実装は驚きと同時に喜びで頭わいた人になっちゃいましたw
ま、何度聴いても脳は溶けるし、危うく出血多量なんて……w

これからも頑張ってください。それと良いお年を!

3: SS好きの名無しさん 2015-12-31 19:41:50 ID: 6ZkQNccC

ゆーちゃんを間違えるなんて、なんてミステイク…泣
皐月は今回もやってくれましたね。

けど今回の1番は大鳳と弥生の のほほんとした絡みが最高でした

4: SS好きの名無しさん 2016-01-12 03:44:09 ID: GIXaodMZ

文菊長如のツリーの絡み、とっても可愛いです!


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