2017-11-04 23:01:36 更新

前書き

毎度おなじみ鎮守府シリーズです。
表題のとおり(だいたい)駆逐艦しか出てきません。
俺の嫁はこんなんじゃねぇ!ふざけんな!と言われても仕方ない表現もあるかと思います。
苦手な方は嫁艦の姿を思い描きながらお休み下さい。


汽車に揺られ1日半余り。


終点の駅に降り立ち俺は絶望した。


何もない。


帝都生まれ帝都育ちの俺の目に映るのは小さな集落と広大な海。


こんな所に軍の施設があるものなのかと不安に駆られる。


本営のお偉いさんの秘書艦から手渡された地図を見る。


地図と言っていいのかこれは。


駅から真っ直ぐ一本線しか描かれてない。


要するに行けばわかるということだ。


どうせ時間をつぶすところもあるまい。


諦めの念も含めその施設へと向かった。


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20分ほど歩きようやくそれらしき建物の前につく。


普通の鎮守府であればクレーンや通信アンテナなどがあり誰が見ても分かる。


だがここにはクレーンもアンテナもない。


廃旅館のような建物が周囲の景色に溶け込まずポツンと浮いていた。


提督「マジかよ・・・。」


流石にこれは落胆せざるを得ない。


提督「あのジジイ、何が念願の司令官生活じゃ・・・だ!こんなん・・・心霊スポット巡りに来たンじゃねぇ!」


沸々と怒りがこみ上げ叫んでいると一人の少女が現れた。


?「その制服・・・もしや本日着任された方ではありませんか?」


提督「んがぁぁぁ!ああそう・・・だ・・・よ。」


黒い髪をなびかせ怪訝そうに俺を見つめる彼女。


余りの美しさに怒りは消え去り言葉を失う。


?「やはりそうか。遠路遙々良く来てくれた。立ち話もなんだ、中へ案内しよう。」


提督「え、ちょ!」


俺の手を引き中へと連れ込まれる。


ーーー

ーー



?「ここが貴殿の執務室となる。」


提督「ほ~、外観はアレだが中は趣があっていいじゃん。」


?「そうだろう。前秘書艦のコーディネートだ、私も気に入っている。」


提督「前?ってことはもう・・・。」


?「多分轟沈したかと思っているだろうがそれは違う。疲れたからと言ってこの私に押し付けて今は悠々暮らしている。」


提督「そうか。・・・そういえば自己紹介が未だだったな。俺は《提督》、一応大佐だ。」


磯風「私は陽炎型駆逐艦十二番艦、磯風だ。宜しく頼む。」


提督「ああ宜しく。磯風君ー」


磯風「磯風でいいぞ。」


提督「・・・分かった。磯風、他の子はどうしている。物音がしないが。」


磯風「ああ、この時間は裏の畑にでも居るはずだ。」


提督「畑?」


磯風「そうだ。おおかた大根の収穫だろう。」


提督「ん~・・・。家庭菜園的なものか?」


磯風「自給自足・・・と言ったほうが正解にちかいだろうな。」


提督「自給・・・自足?」


磯風「うむ。司令は汽車でここへ?」


提督「ああ。」


磯風「なら話が早い。見てのとおりこの町は陸の孤島とも呼ばれるほど不便な所だ。」


提督「そんなに酷いのか?」


磯風「小さな商店ならあるが日用品を全て売っている訳ではない。取り揃えるには往復4時間ほど汽車に乗り移動せねばならない。」


提督「4時間だと。寝ている間にそんなに掛かっていたのか・・・。だが必要な物ならば補給申請を出せば良いンじゃないか?」


磯風「通常であればそれで問題ない。だがここはそうはいかない。」


提督「なんでよ?」


磯風「ここは・・・問題を起こした艦娘が集まる所だからだよ。」


提督「・・・は?」


磯風「だから問題を起こしたー。」


提督「いやいやいや、それじゃここは刑務所なのか、そうなんだな。」


磯風「いや・・・鎮守府だが。」


提督「宇都宮を過ぎ仙台を過ぎたころから左遷じゃないかと薄々思ってはいたがそうだったか・・・。で、磯風囚人はどンな事を?」


磯風「その言い方はやめてくれ。私は・・・だな。私の料理で数百人を病院送りにしてしまったのだ。」


提督「意外と軽い理由だな。」


磯風「普段であれば叱責や謹慎ですんだのかも知れない。だが運悪く観艦式、それも御召艦に出す料理だったのだ。」


提督「ってことは?」


磯風「ああ、軍のトップを病院送りだ。」


提督「おおぅ。よく解体されなかったな。」


磯風「失敗は誰にでもある。以後気をつけるようにとお言葉を頂いた。」


提督「ンで?」


磯風「その場はお咎め無しで終わったが後日転属命令が出たのだ。」


提督「それでここへか。」


磯風「まぁそうなるな。」


提督「短い間だったが楽しかった(?)じゃあな。」


ここに居ては命がいくつあっても足りないと直感しかばんを持ち部屋を出ようとする。」


磯風「まっ、待ってくれ!」


扉の前に立ちふさがる。


提督「済まないが未だ死にたくないンでね。」


磯風「辞めるのはいつでもできる・・・。だから少し時間をくれないだろうか?」


提督「その少しの間に死んだらどうするんだよ!?」


磯風「やっと・・・ようやく司令が来たのに、また居なくなるなんて嫌だ。」


飄々としていた顔には不釣合いの涙が瞳に浮かんでいた。


提督「やっと・・・だと?前任はいつから居なかったンだ?」


磯風「・・・3年前だ。」


提督「3年?深海と戦争が始まる前からじゃないか。」


磯風「ああ。先にも言ったが問題児ばかりの所だ。あまつさえ司令に暴力を振るう子も居た。」


提督「やっぱ俺死ぬじゃん!?」


磯風「だが更正しもう手を上げることはない。・・・多分。」


提督「多分って言ったな!?」


磯風「いや言っていない。その子は前秘書艦でもあるんだ。」


提督「・・・。」


磯風「あの花を生けたのも彼女だ。」


窓際に飾っている花瓶に視線を向ける。


提督「・・・きれいだな。」


磯風「ヤマアラシのように近づく者を傷つけていた彼女がだ。あんなにもきれいに生けるようになったんだ。信用してくれ。」


提督「だがな・・・。」


磯風「司令の命はこの身に代えても守る。だから・・・このとおりだ。」


跪き土下座をする。


提督「・・・磯風、止めろ。」


磯風「・・・。」


無言で続ける。


提督「俺は止めろと言ったンだ。提督としての命令だ。」


磯風「!  では・・・。」


提督「ああ、頼もしい騎士(?)にそこまで言われて断るなんて男が廃る。改めてよろしくな。」


磯風「・・・司令!」


提督「うわっと。急に抱きつくなよ。」


磯風「すまない。だが嬉しくて仕方がないのだ。」


先とは打って変わり笑顔で抱きつく。


提督「・・・ちょい、当たってる・・・。」


腕に柔らかな感触が伝わる。


磯風「ん?」


何が?と言う顔をしている。


提督「す、少し離れようか?」


磯風「それはできない相談だ///」スリスリ


?「なに・・・やってンのよ。」


提督「今、声しなかったか?」


磯風「いや聞こえなかったな。」


?「お姉ちゃんから離れろぉ!」


提督「ほらやっぱり!?」


?「このクソ提督!」


提督「敵襲か!?」


磯風「おや曙ではないか。」


曙「チェストォ!」


抜きたてだろうか土のついた大根を振りかざす。


提督「甘い!」


曙「なっ!?」


その大根をかわしながら勢いを生かし背負い投げをかける。


曙「あぅっ!」


磯風「見事。」


提督「はぁっ・・・はぁっ!これでも海軍じゃ武道において右に出る者は居ないと言われてたンだ。」


曙「うぐぅ・・・。」


磯風「大丈夫か?」


曙「大丈夫・・・じゃないかも。」


提督「・・・すまん、やりすぎた。で、磯風、この子は?」


磯風「ああ前秘書艦、そして私の妹の曙だ。」


提督「関取?」


曙「誰がお相撲さんよ!」


提督「大丈夫そうだな。立てるか?」


曙「・・・ええ。」


差し出した手を握り立ち上がる。


曙「いたた・・・。お姉ちゃんこの人は?」


磯風「今日から此処の指揮を執って下さる《提督》だ。失礼のないようにな?」


曙「制服を着ていたから反射的に提督って言ってしまったけどそうなのね。失礼しました。」


ペコリと頭を下げる。


提督(意外と礼儀正しいな。ん、曙?)


提督「失礼だが綾波型じゃないのか?姉妹ではないだろう?」


磯風「ああこれはだな」ムグッ


口を押さえられる。


曙「余計なことは言わなくていいの!」


提督(これは面白い・・・。後でこっそり聞くとしよう。)


提督「訳あり・・・か。ちょっと待て。磯風、さっきは俺を守るって言ったよな?」


磯風「ああ。」


提督「じゃあなんでただ見てたンだよ。止めろよ!」


磯風「なに、曙なら初対面の者に危害を加えることはない。そう信じている。」ナデナデ


曙「お姉ちゃん///」


提督「意味わかんねぇよ・・・。」


磯風「さて一件落着したところで何か甘い物でも食べに行こうか。歓迎の意味も込めて。」


提督「何が一件落着だ・・・。だがこの辺に甘味処あるのか?」


磯風「いや、無いぞ?」


提督「じゃぁどこで?」


曙「お姉ちゃんの手作りよ。」


提督「・・・俺、二階級特進?」


磯風「失礼な。ここに来て結構特訓したのだぞ?」


提督「・・・大丈夫?」


曙の耳元でささやく。


曙「私たちなら平気。人ならば・・・致命傷で済むと思うわ。」


提督「病院は?」


曙「歯科医が一人。」


提督「・・・何かあったら頼む。」


曙「・・・善処するわ。」


磯風「二人とも何をしている?食堂へ行こうではないか。」


二人「・・・はい。」


策士策に溺れる


秘書艦の甘味を食べた後の記憶がない。


気がついたら朝になっていた。


その甘味を食べる前にここの艦娘達と自己紹介を終えてあるのが唯一の救いだ。


秘書艦は何が悪かったのか執務をほっぽり出して研究に没頭している。


提督「・・・さすがに酷いな。」


現時点での備蓄量を確認した。


燃料3700・砲弾1400・鉄5300・ボーキ1000


この程度の鎮守府ならこれの10倍はあってもおかしくは無い。


提督「出撃どころか遠征も厳しいな・・・。」


鎮守府の規模や戦果に応じて支給量が決まっている。


戦果は無いにしろ規模で貰うべき量がない。


秘書艦の言っていた事が理解できた。


“通常であればそれで問題ない。だがここはそうはいかない。”


提督「・・・問題児ねぇ。」


?「違うもん。」


提督「ん?」


?「私達、要らない子じゃないもん。」


執務室の扉からヒョコっと顔を覗かせる。


提督「君は確か・・・。」


初雪「初雪です。」


提督「そうそう、そうだったな。」


初雪「貴方は《提督》。東京府大森区出身。」


提督「なっ!?」


初雪「子供のときのあだ名はシュヴァルツカイザー。」


提督「やめろ!黒歴史がぁ!」


初雪「決め台詞は俺の右目が疼く。」


提督「あ・・・。(放心)」


初雪「ふふふ。」


提督「・・・はっ!いやいやいや、何でソゲな事知ってますのでありますか?(混乱)」


初雪「知っている事は何でも知っているからね。」


提督「理由になってないぞ。」


初雪「私・・・諜報部にいたから。」


提督「諜報部・・・?もしかして大淀様も居たところ?」


初雪「うん。知り合いなの?」


提督「本営勤務の時にこってり絞られた・・・。」


初雪「絞られ・・・た。大人の関係?」


提督「馬鹿なことを言うなスットコどっこい!提出した書類にいっつも文句ばかり言って中々判子貰えなかったんだ・・・。」


初雪「へぇ・・・性格悪いモンね。」


提督「そう思うだろ?俺がここに飛ばされたのも大淀の所為だ(多分)。」


初雪「・・・ムッ。提督は此処嫌いなの?」


提督「・・・正直分からん。磯風にも聞いたが問題児が集まった鎮守府だってな。」


初雪「・・・外の人から見たらそうかもね。でも私はここの皆が好きだしこの街に愛着がある。」


提督「そう、それだ。住めば都と言う言葉があるように考え方次第で空気も美味いし静かでいい所だと思う。だが、人の上に立った経験がない俺が果たして上手く導けるのか不安でならん。」


初雪「努力に憾みなかりしか。」


提督「ん?」


初雪「始める前からそんなんじゃ上手くいくのも出来ないよ?」


提督「・・・。」


初雪「失敗は誰にだってある、私もそう。だからここにいる。でも過去の失敗を糧にどうすれば良いか考えられた。一人で出来ないならフォローはする。だから不安に思うことなんてないよ。」


提督「初雪・・・さん。」


初雪「・・・さん付けはやめて、恥ずかしい///」


提督「じゃあ初雪ちゃん。」


初雪「子供扱いしないで。」真顔


提督「はい。」


初雪「ん。」ニコ


提督(なんか可愛い・・・。)


提督「・・・初雪はどうして此処へ来たんだ?良かったら教えてくれないか?諜報部から異動なんてまず考えられないからな。」


初雪「・・・誰にも言わないでね。」


提督「分かった。」


初雪「とある国の情報を集めようとして逆に漏洩させてしまったの。」


提督「・・・重要な案件か?」


初雪「そこそこ。」


提督「機密漏えいは基本極刑だがよく無事だったな。」


初雪「・・・部長のお陰。」


提督「部長って吉松さんのこと?」


初雪「うん。私の事を必死に庇ってくれた。」


提督「もしかしてだが辞任と関係が?」


初雪「ある。部長は庶務部へ異動させられた・・・。」


提督「・・・成程。いや悪かった、余計なことを聞いて。」


初雪「ん、大丈夫。」


提督「そうか。初雪が良ければで構わないのだが此処でまた諜報活動をしてもらいたい。」


初雪「・・・いいけど、なんで?」


提督「みんなの為・・・か。すまんがそれ以上は今は言えない。」


初雪「みんなの・・・。任せて、頑張る。」


提督「ありがとう。」ナデナデ


初雪「ふぇっ!?」


提督「すまん、つい・・・。」


初雪「だい・・・じょうぶ。ちょっと驚いただけ。なんだか懐かしい感じ・・・。」


提督「紅くなって可愛いな。」


初雪「ちょぉ、マジ恥ずかしいンですけど・・・。」ニコニコ


御注文はウォッカです


備蓄が全くと言って良い程わが鎮守府には余裕が無い。


整備員の姿も無く艤装に不具合も出ている。


提督「いよいよヤバイことになったぞ。」


響「ろうしたんらい司令官?」


提督「磯風からの報告だが錆付いて機関が動かないだと。これじゃあ出撃できん。」


響「ほぉ~。」


提督「ほぉ~って・・・何で酔ってるんですかね?」


響「酔ってなんからいさ。」


提督「嘘をつくな。呂律が回ってないぞ?」


響「これはもとからなんらよ。」


提督「じゃあ手に持っているのは何だ!」


響「Столичная(ストリチナヤ)」


提督「は?」


響「Столичная」


提督「なんでロシア語はそんなに発音良いンだ。没収な。」


響「!?」


響の手から栓の開いているビンを取り上げる。


響「返してよ!」


提督「駄目だ。大体勤務中に呑む奴がどこに居るんだ。」


響「ここにいるぞ。」


提督「じゃかぁしいわ!」


響「ぐぬぬ・・・私がどうなっても言いのかい?」


提督「・・・良くは無いがどうなるんだ?」


響「・・・手が震えて見えちゃいけないものが見える。」


提督「アル中じゃねぇか。」


響「違うもん!燃料なんだもん!」


提督「燃料なら軽油か重油だろ普通。」


響「私は特型だから普通ではないんだ!」


提督「特型ってのはそういう意味じゃないと思うが。」


響「う~・・・。司令官のバカバカバカ!」ポカポカ


某姉のように駄々をこねる。


提督「いてて、やめろって。」


響「知らないもん!」プンスカ


提督「はぁ・・・。」コト


取り上げたものを机に置く。


提督「あまり小言は言いたくないンだがな・・・。」


響「な、なにを・・・。」


響を抱え上げだっこをする。


提督「あのな・・・響たちは少し俺たちより身体の性能が良いだけで殆ど構造は同じなんだ。」


響「えっと・・・。」


提督「響のように未熟な身体にアルコールは毒になる場合がある。それで病気をする可能性だって無いとは言い切れない。」


響「・・・。」


提督「全く呑むなとは言わないが時と場合を選んでな?少しくらいなら付き合うからさ。」


響「・・・。」


提督「・・・響?」


響「司令官は優しいんだね。」


提督「ん?」


響「前の司令官・・・前の前の司令官も飲んだくれの私を気にも留めなかったさ。たかが駆逐艦の私を気遣う司令官なんて初めてだよ。」


提督「・・・バーカ。」


響「なっ、」


提督「たかがじゃないだろ?同じ屋根の下で同じ釜の飯を食うンだ。家族だろ?家族を心配しないヤツなんてどこに居る?」


響「それは・・・。」


提督「だから自分のことをたかがとか言うな。分かったな?」


響「・・・うん。」


提督「でもまぁ、どうしても呑みたいなら酔拳が使えるようになったら考えなくも無い。」


響「酔拳か・・・。なるほどね。」


提督「・・・冗談だからな?」


響「いや、弾薬を使わないで敵を倒し、私はお酒にありつける。合理的だと思うよ?」


自分でも後悔している。


余計な事は言うものではないと。


響が酔拳を習得し天使のような悪魔と深海棲艦に怖がられたのはまた別の話である。


作戦開始


提督「本当に大丈夫なのか?」


初雪「うん、暗号化してるし盗聴はできないよ。」


提督「そんな機械でか?」


タバコの箱くらいの大きさの機械を通し電話線が繋がっている。


初雪「ヲタコンの力、舐めないで。」


提督「舐めるより関心している。そんな小さな機械でよく出来るンだと。」


初雪「ムフー。」


提督「・・・。この番号でいいのか?」


初雪「そう。」


提督「余り関わりたくないが致し方ない。」


浮かない顔でダイヤルを回す。


電話「・・・・・・・・・・・、はい?」


提督「・・・もしもし、大淀さんですか?」


大淀「その声は・・・《提督》くん?」


提督「はい、お久しぶりです。」


大淀「うん、元気にやってた?挨拶もしないで行っちゃうなんてね。」


提督「その節は申し訳ありませんでした。」


初雪(完全に尻に敷かれているね・・・。)


大淀「別に怒ってないわよ。ただ、ちょっと寂しいかなって。」


提督「すみません・・・。」


大淀「だから気にしないで。この番号を知っているって事はそこに初雪ちゃんも居るのよね?」


提督「え、あぁはいそうですね。」


大淀「可愛いでしょ?」


提督「まぁ・・・。」


大淀「手、出しちゃ駄目だからね。私の大切な後輩なんだから。」


提督「滅相もありません、そんな恐れ多い・・・。」


大淀「ふふ、冗談よ。それで、本題は何かしら?」


提督「折り入ってお願いがあります。」


大淀「言ってみて。」


提督「現在、当鎮守府における各資材の備蓄量は最低限以下です。このままでは運営が危ぶまれます。」


大淀「・・・私にどうしろと?」


提督「他の同規模の鎮守府と支給量に差があるのは一目瞭然です。そこでその差を是正して頂けないでしょうか?」


大淀「・・・兵站法14条、各鎮守府及び泊地ならびにその他の施設への適正なる資材の支給を怠ってはならない。15条、その支給量は施設の規模に応じ決定する。16条、戦果により支給量を増減する場合がある。この条文は知っているわよね?」


提督「はい。」


大淀「必要量に及ばないなら14条と15条に違反しているわ。だけどネックなのが16条ね。ここ3年間、戦果が全く無いならば引かれるのは当然のこと。」


提督「お言葉ですが16条で引かれ、14条に違反となるならば矛盾してませんか?」


初雪(面倒そうな話、眠くなってきた・・・。)


大淀「そう、そこ。この軍規は開戦前と開戦直後に色々変わったわ。よくよく考えると矛盾だらけなの。」


提督「でしたら・・・。」


大淀「ええ、私のほうで何とかするわ。」


提督「有難うございます。」


大淀「その代わり今度一緒にお出かけでもしましょ?」


提督「・・・喜んでお供致します。」


大淀「全然喜んでいるように聞こえないのだけど。」


提督「・・・気のせいですよ。大淀さんのような美しい方と並んで歩くなんて申し訳ないとは思っておりますが。」


大淀「あら、お世辞も上手くなったのね。」


提督「決してお世辞ではありませんので・・・。」


大淀「そういうことにしておいてあげる♪ あと初雪ちゃんとお話したいから変わってくれるかしら?」


提督「わかりました。初雪、大淀さんだ。」


初雪「うぇ!? ・・・もしもし?」


大淀「初雪ちゃん?大淀です。」


初雪「何か・・・用?」


大淀「ううん、初雪ちゃんの声が聞きたかっただけ。そっちの暮らしはどう?」


初雪「何もないところだけどみんなと楽しくやってる・・・かな?」


大淀「そう、良かった。それとね吉松さんのことなんだけど。」


初雪「部長がどうかしたの?」


大淀「昨日、辞表を出したの。」


初雪「え・・・どうして?」


大淀「初雪ちゃんが異動になって直ぐに体調を崩してそれ以降入退院を繰り返してたわ。」


初雪「・・・大丈夫なの?」


大淀「自分ではまだまだ若いものには負けないって言ってたらしいのだけれど体力の限界みたいだったわ。」


初雪「そう・・・。」


大淀「一応連絡先を聞いておいたけど教える?」


初雪「・・・いい。」


大淀「でも・・・。」


初雪「聞きたくない、聞く資格がないよ・・・。」


大淀「そう、ごめんなさい余計なことを言って。」


初雪「ううん・・・。」


大淀「初雪ちゃんのことだからこの電話も暗号化していると思うけど解析がかかり始まっているわ。」


初雪「そうだろうね。」


大淀「久しぶりで名残惜しいけど今日はこのくらいにしておきましょ?」


初雪「うん、わかった。」


大淀「それと、《提督》くんによろしく伝えてくれないかしら?」


初雪「任せて。」


大淀「それじゃまた。」


初雪「また。」


提督「なんだって?」


初雪「よろしく、だって。」


提督「それだけ?」


初雪「それだけ。」


提督「そ。だがあの腹黒様がこうもすんなりと聞いてくれるなんて予想外だった。」


初雪「なんか丸くなった感じがする。」


提督「だがあれは絶対裏があるな。初雪、引き続き頼むぞ。」


初雪「うん! ・・・ねぇ?」


提督「ん?」


初雪「なんで大淀さんと話すときは敬語なの?」


提督「・・・それを言わせるの?死ぬぞ。(俺が)」


初雪「なんかごめんなさい。」


提督「・・・気にするな。」ナデナデ


初雪「だから子供扱いしないでって///」


姉妹


この役立たず。


疫病神。


そんなに自分が大事なのか。


駆逐艦なら代わりは山ほど居る。


異動しては悪口を言われ、異動しては暴力をふるわれた彼女。


提督、いや人間に対して不信感が募り遂に怒りが爆発し手を挙げた。


幸いかどうか分からないが上官に手を挙げ解体にならずに済んだ。


いっそ解体された方がいいと思っていた彼女にはなお艦娘でいることに苦痛を感じた。


それが狙いだったのかも知れない。


そんなある日、小さな背嚢だけの荷物を持ち彼女はここへやって来た。


目に光はなく夢も希望も感じられない荒んだ顔だった。


?「君が****か。話は聞いている。」


*「・・・。」


?「見ての通り司令は居ないので私が代わりを勤めている。」


*「・・・そう。」


?「何も無い所だが希望に添えるよう努力はする。何か要望はあるかい?」


*「なら・・・・・して。」


?「ん、すまないが聞こえなかった。」


*「あたしを殺して・・・。」


?「・・・それは出来ないな。私にはその術を持っていないからな。」


*「・・・そう、言ってみただけよ。」


?「ふむ・・・。要望を聞いておいて言うのも悪いのだが君を秘書艦に任命したい。どうだろうか?」


*「あたしが・・・?なんで。」


?「君の事を早く知りたいしその手を見れば分かる。事務仕事は得意だろう?」


*「・・・なによそれ、でも提督代理なんでしょ?命令なら断らないわ。」


?「命令ではない、お願いだよ。」


*「・・・物はいいようね。まぁ働かざるもの喰うべからず・・・よね。あたしでいいなら使ってよ。」


?「ふふふ、頼んだぞ。」


これが彼女との最初の会話だった。


どこか闇を抱えている様子だったが会話応対は問題なく資料のような暴力をふるう艦娘には見えなかった。


実際、書類整理は私より手際が良い。


掃除や洗濯も率先して引受けココへ飛ばされる理由が見当たらない。


無口で自分から話す事は無かったが声をかけられたら応答はしコミュニケーションもまずまずだったが私には少し冷たかった。


e.g.1


?「なぁ秘書艦さんよ。」


*「なに・・・クソ提督代理。」


?「そのクソ提督と言うのはやめてもらえないだろうか?」


*「嫌よクソ提督。」


?「・・・。それならば私に考えがある。」


*「・・・。」


?「私も君のことをクソ秘書艦と呼ぼう。」


*「・・・勝手にすればクソ提督。」


?「・・・。」


e.g.2


?「本日の課業はこれにて終了だ。解散!」


*「・・・お疲れ様でした。」


?「あいや、待たれい。」


*「・・・なによ?」


?「この後時間はあるか?」


*「無いわよ。お風呂に入るもの。」


?「ならば一緒しよう。」


*「・・・勝手にすれば?」


?「うむ。」


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《脱衣所》


?「****君は綺麗な肌をしているな。」


*「なに見てんのよ変態。」


?「なにとは・・・君だよ。少しやさぐれてはいるがまるで天使のようにかわいい。」


*「はぁ!? バカじゃないのあんた。」


?「確かに頭はあまり良くないが。」


*「いや、そうじゃなくて・・・。」


?「ふむ・・・。そうだ、髪を洗ってやろう。」


*「いい、自分で出来る。」


?「まぁそういわずに。」グイ


*「ちょ、離して!」


嫌がる****の腕を掴みバスチェアへ無理やり座らせる。


?「うむ、コシも艶も申し分ない。普段の手入れが良い証拠だ。」ワシャワシャ


*「・・・。」


?「気持ち良いか?」


*「・・・ちょっと。」


?「そうか。」ワシャワシャ


*「んっ・・・。」


?「どうしたそんな声をだして?」


*「な、なんでもないわよ!」


?「そうか?」


*「・・・。」


*(懐かしい感じ・・・綾姉にしてもらったのいつだったかしら・・・?)


e.g.3


片田舎のココには都会のように遊び場はない。


1900を過ぎると街灯と民家の明かりがポツリとあるだけで真っ暗になる。


自室で本を読み過ごすもの、ラヂオを聞き夜更かしするものそれぞれの過ごし方がある。


だが彼女は夜に弱く2000には眠くなる。


?「では電気を消すぞ。」


*「ええ。」


?「お休み。」


*「お休み・・・。」


?「・・・。」モゾモゾ


*「何であたしの布団に入ってくるのよ、ウザいなぁ。」


?「今日は冷えるからな。君は暖かいから湯たんぽ代わりだ。」ダキ


*「へんなところ触ったら只じゃ置かないからね。」


?「へんなところとは?」


*「うっさい!」ゲシ


?「痛いではないか、お返しだ。」


*「ちょっと、やめっ!だめ・・・だって///」


パジャマの隙間から腋をくすぐる。


?「ふふふ、気持ちいいだろう?」コチョコチョ


*「んぅっ/// お姉ちゃん・・・やめて。」


?「お姉ちゃん・・・だと?」


*「・・・? はっ!」


?「お姉ちゃんか・・・いい響きだな。」ニヤニヤ


*「う・・・うわぁぁぁぁん!」


?「泣くこと無いだろう。」


*「今の゛わ゛すれ゛ろ゛ぉ!」ビュン


鋭い右ストレートを繰り出す。


?「おっと。」


それを難なくかわす。


*「きゃぁっ!?」


勢いあまりベッドの下へ転げ落ちる。


?「大丈夫か?」


*「煩い!」ビュン


またもや右ストレートだ。


?「落ち着け。」バシン


それを左頬で受け止める。


*「あ・・・う・・・。」


?「気は済んだか?」


*「あ・・・・ごめ・・・んなさい。」


?「謝るのは私のほうだ、すまなかった。」


*「うぅ・・・。」


大粒の涙が零れ落ちる。


?「・・・。」


無言で****を抱きしめ横になる。


?「調子に乗ってすまなかった。」


*「ううん・・・あたしが悪いのよ。」


?「久々に姉と呼ばれて嬉しかったのだ、許してくれないか。」


*「でも・・・提督には姉妹が沢山いた・・・ンじゃないのよ・・・?」


?「ああ居たさ。だが、雪風以外は沈んでしまったよ。」


*「・・・ごめんなさい。」


?「君が気に病む必要はないことだ。」


*「・・・提督は悲しくないの?」


?「それは悲しかったさ。でもいつまでも悲しんでいるわけにも行かない。十分悲しんだら彼女達の分まで生きねばならないからな。」


*「・・・強いのね。」


?「艦娘として生まれ変わった以上は最初から覚悟は出来ている。それを強いと思うのならそうなのだろう。」


*「ねぇ・・・一つお願いしてもいい?」


?「何だ?」


*「お姉ちゃん・・・って呼んでも良い・・・かしら?」


?「・・・ああ、妹よ。」


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磯風「と言うのが曙が私を姉と呼び始めた理由だ。酒が入っていたからなんでそうなったのかはあまり覚えてないのだがな。」


提督「そうか・・・。雨が降ってきたな。」


磯風「雨?雨など・・・。」


提督「いや、雨だよ。」


磯風「そうか・・・。」


窓から空を見上げるが雨は降っていない。


だが雫が落ちる音は聞こえた。


曙「・・・・こんのクソお姉ちゃん!」ドゴォ


提督「はわわ!」


執務室の扉を粉砕し吶喊してくる。


磯風「曙よ、入るときはノックをしてからだろう?」


曙「そんなのはどうでもいいのよ!あれだけ二人の秘密だって言ったのにそんなに簡単に言いふらすのよ!?」


磯風「そうだったか?」


曙「かぁ~!だからお姉ちゃんは残念美人とか言われるのよ!」


磯風「美人か・・・。少し気分がいいな。」


曙「う~。」


提督「なるほど、ケンカするほど仲がいいとはこのことだな。」



嗜好品


望月「お~い長ち~ん。」


長波「ん、何だ?」


望月「ほい、長ちんが欲しがってたもの手に入ったよ。」


タバコを差し出す。


長波「おぉ~サンキューもっちー。愛してるぜ。礼だ受け取ってくれ。」


懐から紙幣を出す。


望月「いいって、たまたま港に居た兄ちゃんに貰っただけだから。」


長波「もっちー・・・あんたまたヤったのか?」


望月「うん。気持ちよかったよ。長ちんも一緒にどう?」


長波「・・・いや遠慮しておく。」


望月「ヤることヤらないと身体に毒だよ?」


長波「あ、あたしにはまだ早くないか?」


望月「タバコを吸ってる子が何を言うのよ。」


長波「それはそれだろ! んで、今度来た司令官に手はまだだしてないのか?」


望月「うん。見かけはちゃらそうで直ぐ喰えるかな~って思ったんだけど、中は真面目でね。パンツを脱がそうなら全力で拒否られる。」


長波「その判断は正しいと思うぜ?」


望月「あたしの身体じゃ不満なのかな~長ちんみたいにバインバインな子好きなのかな?」ニシシ


長波「はぁ~!?何言ってんのよ!この淫乱メガネ。」


望月「えへへ///」


長波「褒めてないぞ・・・。」


提督「・・・あの、お二方?」


望月・長波「?」


提督「そういう話は本人が居ないところでしてもらうと助かるのだが。」


長波「ああ居たんだ?」


提督「ええ居ましたとも。ってかここ執務室ですが?」


望月「そういえばそうだったかもね。」


提督「はぁ・・・。」


望月「どう?シたくなった?」


スカートをめくり誘う。


提督「全然。」


望月「・・・イ○ポ?」


提督「違うわ!」


長波「・・・じゃぁガチムチ?」


提督「なわけあるか。」


望月「じゃあシようよ~。」


提督「・・・シたら多分消される。」


望月「誰が?」


提督「俺が。」


望月「誰に?」


提督「おおy・・・ゲフンゲフン。・・・幼馴染?」


望月「へぇ・・・その幼馴染とはヤったの?」


提督「黙秘する。」


望月「黙秘は肯定とみなすけど?」


長波「ヒュー、やっぱ男だねぇ。」


提督「煩せぇマセガキ共!ったく黙ってれば可愛いものの・・・。」


望月「ふふん♪」


長波「なんでドヤ顔なんだよ・・・。」


提督「・・・望月、言っても無駄だと思うがそう言うのは大切な人のために取っておきなさい。」


望月「急になんだよ・・・。」


提督「今の望月の身体にそれは負荷がかかりすぎる。場合によっては取り返しのつかない事になるだろう。」


望月「・・・。」


提督「将来愛せる人に巡り合ったときに渡しても遅くないと思うがな。」


長波(意外とロマンチストだな。)


望月「そんなの居ないよ。」


提督「なぜ言い切れる?」


望月「あたしは艦娘だよ?身体に興味はあっても、その・・・ケッコンとかまで行かないでしょ・・・。ましてや愛し合うなんて・・・。」


提督「そんなの心配するまでないだろ?」


望月「へ?」


提督「艦娘だろうが人間だろうが俺は好きになったらとことん付きまとうね。」


長波「なにそれきもい。」


提督「失礼な! だがこれだけは言わせて貰う。艦娘と人間の差なんて愛があれば関係ないのだ!」


目を輝かせ力説する。


望月「・・・あははは、意味分んないし!」


腹を抱えて笑う。


提督「望月?」


長波「もっちー?」


望月「そっか、司令官はそんな人なんだぁ、ははは。なんだがあたしがバカみたい。」


提督「ああバカだ。だがバカ故に学ぶことも多い。望月は将来素敵なお嫁さんになると断言しよう。」


長波「言うねぇ。」


望月「じゃあじゃあ、司令官が貰ってくれる?」


提督「ナヌ!?」


長波「に゛ゃ!?」


望月「あたしさ、バカやって色んな司令官に見捨てられたんだよね。でもこんなにもあたしのことを考えてくれる人初めて。キュンときちゃった。」


提督「いや~ははは・・・それはどうも。」


望月「あたし決めた!一生司令官についていく!」


提督「慕ってくれるのは嬉しいが・・・。」


望月「さっきの言葉は嘘なの・・・?」


提督「嘘ではない!」


望月「!?」ビク


提督「す、すまん。・・・10年。」


望月「へ?」


長波「ん?」


提督「この戦争が終わるまで5年。望月が成長し大人の身体になるまで5年。計10年、その気持ちが変わらなかったら考えておこう。」


望月「・・・うん!約束だからね!」


提督「お、おう。男に二言はない。」


望月「♪」


長波(・・・ナニガドウヤッテドウシテコウナッタ?コンナノゼッタイオカシイ・・・かもな。)


定義


コンコンコン


律儀に3回ノックをする。


この鎮守府において3回するのは一人しか居らず直ぐに誰が来たかが分る。


不知火「不知火です。入っても宜しいでしょうか?」


提督「ああ。」


不知火「失礼します。おや、秘書艦殿も居られたのですね。」


磯風「うむ。臨時資材搬入の件で計画を建てていたところだ。」


不知火「そうですか。司令、ご所望されていた海図です。」


提督「おぉ、ありがとう。・・・ふむ、なるほどね。」


不知火「どうかされましたか?」


提督「いや、なんでもない。」


不知火「はぁ。」


磯風「時に不知火。」


不知火「・・・。」


鋭い眼光で睨む。


不知火「・・・いくら秘書艦殿と言いましても呼び捨てを許可した覚えはありませんが?」


磯風「そうだったか?まぁ同じ陽炎型だ、固い事を言うでないヌイちゃんや。」


殺気立つ不知火に対してヘラヘラと微笑む磯風。


不知火「*******のですか?」


独り言のように言う。


磯風「ん?」


聞こえなかった磯風に一瞬の隙が生まれた。


不知火「シズメッ!」


電光石火の勢いで磯風に詰め寄り胸倉を掴みつるし上げる。


磯風「ぐぅ・・・!」


提督「不知火止めろ!」


不知火「不知火に何か落ち度でも?侮辱されたので制裁を加えるだけですが。」


磯風「かはっ・・・!」


襟で首が絞まる。


提督「命令だ!今すぐ磯風を離せ!」


不知火「・・・御命令とあらば。」


渋々手を離す。


ドン!


磯風は重力に逆らわず床に倒れる。


すかさず駆け寄る。


提督「磯風、大丈夫か!?」


磯風「・・・ああなんとか生きているようだな。」


提督「そうか・・・。全く、お前達はどうして仲良くできないンだ。同じ鎮守府(とこ)の仲間だろう?」


磯風「それはそうだが・・・。今のは私が悪かった、この通りだ詫びよう。」


頭を下げる。


不知火「・・・。」


無言でにらみつける。


提督「不知火もそんな事でいちいち怒ってたらきりが無いぞ?」


不知火「そんなこと?」ギロ


提督「ああそんなことだ。ヌイちゃんなんて可愛いと思うぞ?」


不知火「なっ、何を!?」


可愛いといわれ動揺する。


提督「俺なんかクソ提督とかT督とか七光りとかろくなモンじゃねえし少し羨ましいな。」


不知火「はぁ///」


身体がムズムズしているようだ。


提督「それに同じ姉妹同士・・・」


禁句を言ってしまった。


2人が反応する。


不知火「同じ・・・ではありません。」


磯風「・・・ああ、そうだな。」


資料を何度も読み返していたのに口が滑ってしまった。


磯風「同じ陽炎型でも実の姉妹ではないのだよ。」


知っている。


なんて自分は愚かなんだ。


不知火「司令は御存知無かったのですか?」


提督「あ・・・いや・・・。」


不知火「そうですか。」


何かを察したようだ。


磯風「私の姉妹は殆ど戦死したよ。不知火と出合ったのも此処が初めてだ。」


不知火「私の方の磯風ももう居ません。」


同じ陽炎型でも血のつながりは一切無い。


陽炎型の艤装に適合するということで入隊させられたまでだ。


幸いかどうか分らないが磯風の方は姉妹や従妹など一族の面識があった。


一方不知火は多くの実姉妹のうちから只一人選ばれた。


現在二人の状況を簡単に言うと陽炎型の艤装を使える少女が識別名だけで呼ばれ同じ部隊に居ると言うことだ。


提督「・・・すまない。」


不知火「司令が気にすることではありません。自ら志願したのですから轟沈など覚悟はとうの昔から覚悟していました。」


磯風「そうさ。沈んでしまったのなら仕方が無いことだ。だが彼女のようにまた逢えるやもしれんがな。」


提督「彼女・・・?」


磯風「目の前に居るではないか。」


提督「冗談はよしてくれ・・・。なぁ不知火?」


不知火「冗談ではありませんが?」


提督「おいおい・・・曰くつき物件なのか・・・ん?」


袖を何かに引っ張られる感触がし振り向く。


?「夕立、お呼びじゃないっぽい?」


涙目で見つめる。


提督「いぎゃあぁぁぁぁ!?」


今まで見えていなかった彼女が急に見え驚きのあまり飛び上がる。


夕立?「っぽい!?」


磯風「そんなに驚く事はないだろう?」


不知火「・・・。」


提督「ゆ、ゆゆゆゆゆ、幽霊! 磯風、塩だ!塩持ってきてくれ!」


磯風「任せておけ。」


夕立?「磯風ちゃん!」プンスカ


磯風「ははは、冗談だ。そうムキになるな。」ナデナデ


夕立?「♪」


提督「ちょっ、まっ・・・誰か説明を!」


磯風「何を慌てているのだ。幽霊でも見たような顔をして。」


提督「幽霊だろ!?」


夕立「夕立は幽霊じゃないっぽい!」がるる


不知火「・・・どちらかと言えば幽霊では?」


夕立「不知火ちゃん・・・。」シュン


不知火「ですが大切な仲間に違いありません。」


夕立「ヌイちゃん大好き!」ダキ


夕立に抱きつかれ満更でもない顔をする。


磯風(なぜ私がヌイちゃんと言うのは駄目なんだろう・・・。)


提督「・・・。ボノ!ボノちゃんは居らぬか!?」


こいつらでは埒が明かないと判断し曙を呼ぶ。


曙「うるさいわね、ここに居るわよ。」


丁度扉から顔をのぞかせる。


提督「ナイスタイミング!説明を3行で頼む!」


曙「説明?何のですか?」


提督「この幽霊!」


夕立を指差す。


曙「・・・ああ夕立ちゃんね。一つ、夕立ちゃんは轟沈しています。二つ、害はありません。三つ、撫でてあげると喜びます。以上よ。」


提督「・・・はい?」


曙「まぁあたしにも詳しい事は分らないわ。どうして轟沈したのに何事も無い・・・無くはないけど健在しているのか、ね。」


夕立「ぽい♪夕立、いつも提督さんの近くに居たのに気付かないしちょっと寂しかったっぽい・・・。」


提督「いつも・・・?」


夕立「そうだよ。夜も提督さんが安心して寝られるように警備してたの。」


提督「そうなのか?・・・・そうか、床が軋む音がしていたが足音だったのか。」


夕立「それに。」


提督「それに?」


夕立「もっちーと脱がし合いしててなんか楽しそうだったっぽい!」


提督「ぶっ!?」


磯風「ほう。」


不知火「・・・。」


曙「・・・。」


提督「な・・・何を言っている・・・?」


夕立「何って、裸になってもっちーが馬乗りしてたっぽむっ!?」


夕立の口を押さえる。


提督「ちちちち違うぞ!あれはだな!」


曙「何も言ってないわよ。」


磯風「まぁ溜まるのは仕方ないな。」


提督「誤解だ!?」


不知火「・・・・です。」


提督「え?」


不知火「どうしてもと言うのであれば不知火の身体をつかっても結構ですが?」


提督「な、ななななな何を言い出すンでしょうかねこの子は!?」


不知火「司令を慰めるのも私達艦娘の役目です。」


夕立「ぷはぁ。俗に言う愛玩動物っぽい!」


曙「うん、全然違うわね。」


磯風「そうだな。」


夕立「ぽぃ・・・。」


提督「第一、あれは望月に襲われそうになって抵抗したただけだし、お前達に手を出すつもりは毛頭ない!」


全員「・・・。」


磯風「それはそれで傷つくな。」


曙「まるで女としての魅力が無いような言い方ね。」


提督「だーかーらー!へんな方向に解釈しないでくれ。・・・って何故脱ぐ!?」


不知火「ですから処理の-」


提督「分った!皆まで言うな。気持ちだけ貰っておく!」


不知火「ですが・・・。」


曙「そのへんにしておきなさいな。」


溜息をつき制止する。


提督「ありがとう、助かった。」


耳元でささやく。


曙「べ、別にアナタの為じゃないわ。煩いから仕方なくよ。」フン


夕立「曙ちゃん赤くなってるっぽい~。」


曙「なってないわよ!」


磯風「ふむ、これがツン=デレと言うものか。」


曙「う~・・・お姉ちゃん達のバカァ!」


提督「あ、おい。」


部屋を飛び出すように逃げる。


不知火「全く、素直になればいいものの。」


夕立「それをヌイちゃんが言うの~?」


不知火「何か?」ギロ


鋭い眼光で睨む。


夕立「ぽいっ!?に、逃げるが勝ちっぽい~!」


すっと半透明になり消えてしまった。


提督「・・・やっぱ幽霊じゃん。」


磯風「だが食事も摂れるし物を持てる。不思議なものだ。」


不知火「・・・。」ムス


提督「そんなふくれっ面すんなよ。可愛い顔が台無しだぞ?」


不知火「からかうのはよしてください。」


提督「からかってなんかないよな。なぁ?」


磯風「ん?ああ、凛々しい顔立ちの中に可愛さもあるな。」


不知火「っ! 沈めっ///」


磯風「のわっ!?」


飛び掛り馬乗りになる。


提督「だから止めろって言ってるの!」


不知火「離してください!」


提督「だーめ。」


ネコを抱くように背中からかかえ引き離す。


提督「磯風、ここは何とかするから撤退だ。」


磯風「ふむ・・・お言葉に甘えて“転進”させていただくとしよう。」ガチャ


速やかに撤退、いや転進し二人が取り残される。


不知火「待ちなさい!」ジタバタ


後を追いたいが首根っこを掴まれどうにもならない。


提督「おっと、暴れんなって。」


不知火「ですが!」


提督「不知火!」


不知火「!?」


提督「・・・落ち着いたか?」


不知火「えっ・・・はい。」


提督「磯風にも言ったがどうして仲良くできないンだ?夕立と同じようにできないのか?」


不知火「それは・・・。」


提督「あえて言うが本当の姉妹でないのは知っている。だが、同じ所で暮らす仲間だろ?家族だろ?」


不知火「・・・。」


提督「・・・言いたくないのなら-」


不知火「・・・です。」


提督「ん?」


不知火「不知火は・・・怖いのです。」


提督「怖いってなにが?」


不知火「大切な人を失うことです。ここの彼女は見ず知らずの不知火にとても良くしていただきました。」


提督「ふむ。」


不知火「しかし親睦が深まった彼女を失ったとき、それは不知火には耐えられません。」


提督「・・・。それは無用な心配だな。」


不知火「えっ・・・?」


提督「俺が此処に来たからには轟沈者なんか出させないし他の所に異動させないね。」


不知火「司令・・・。」


提督「それとな、俺と不知火は見ず知らずか?」


不知火「・・・いえ、違うかと。」


提督「じゃあ磯風とも見ず知らずじゃないだろう?だから遠慮すんな。ケンカをするなとは言わないが程ほどにな。」


不知火「・・・はい。」ギュ


うつむきながら袖の裾を掴む。


提督「泣くことないだろ。」


不知火「泣いてなんかおりません。」グス


そっと不知火を抱き寄せ頭を優しく撫でる。


提督(成程、寂しさを隠す為に強気で居たンだな・・・。)


今日の一件の後、不知火の磯風に対する感情が穏やかになったのは言うまでもない。


ただ、急にどうしてと不思議に思う磯風の姿があったのもしかり。


援軍


A「話には聞いてましたけど本当に何もありませんね。」


B「でもとても素敵な景色ですね。山に積もった雪がまるで外国に居るかのようです。」


A「ですねー。東京だとこんなのはなかなか見れませんからね。」


一日あたりの平均利用者数が一人の駅に今日は珍しく二人もの人影がある。


改札を抜けおもむろにこの町で一番大きいであろう街道を歩く。


A「確かこの道をまっすぐ行けばあるはずですが・・・。」


B「ここじゃないですか?」


A「いえこんなに立派じゃないですよ。あれでは?」


B「これ・・・ですか?少しボロ・・・じゃなくて古いですね。」


A「うん、ここですよほら。消えかかってますが***鎮守府と書いてあります。」


B「本当だ。ごめんくださぁ~い!」


返事が無い。只の空き家のようだ。


A「留守でしょうか?」


B「え~誰かは居ると思いますけれど。ごめんくださぁ~い!」


初雪「お客さん・・・?」


物陰からヌッっと顔をのぞかせる。


B「あっ、ここの艦娘さんですか?」


初雪「そう・・・だけど、貴女は?」


B「申し遅れました、本日着任しました練習巡洋艦鹿島と申します。コチラは-」


A「明石だよ。初雪ちゃん久しぶり!」


初雪「ひさしぶり♪」


鹿島「二人はお知り合いなのですか?」


明石「はい、本営勤務のとき色々助けてもらったのよ。」


初雪「えへへ。」


鹿島「そうでしたか。初雪さん、提督さんはいらっしゃいますか?」


初雪「うん居るよ。案内するね。」


鹿島「ありがとう御座います。」


思わぬ来客にテンションが上がり鼻歌を奏でつつ執務室へと案内する。


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コンコン


初雪「司令官、お客さん連れてきた。」


提督「初雪か?お客さん・・・?まぁ良い入ってくれ。」


初雪「どうぞ。」


明石「失礼します!」


鹿島「失礼します。」


提督「・・・は?」


初雪「・・・?」


提督「ちょ・・・ま・・・。あ、明石は分るが何で・・・、何故に?」


鹿島「ふふふ、お久しぶりですお兄様。」


初雪(なん・・・だと・・・!?)


明石「ちょっとぉ妹さんにそれは冷たすぎやしませんかぁ?」


鹿島「いいのですよ明石さん。お兄様は少し照れ屋さんなのです。」


提督「ちがわい!」


初雪「司令官!」


提督「なんじゃ!?」


初雪「説明を求む!」


提督「何の!?」


初雪「ん!」


鹿島を指差す。


提督「・・・ワタシアノヒトシラナイアル。」


鹿島「お兄様!?」


提督「ダレカトカンチガイシテルネ。」


鹿島「そんなぁ~!意地悪しないでください!」ポカポカ


両手をグーにして叩く。


提督「アウチ!」


明石「・・・ぷっ、ははは!」


初雪「明石さん・・・?」


明石「いや~昔からこの二人は変わらないねぇ。初雪ちゃん、提督と鹿島ちゃんは兄妹なんですよ。」


初雪「リアリィー?」


提督「・・・イエス。」


初雪「何で言ってくれなかったのさ。」


提督「だってこれじゃん・・・。」


鹿島「?」


提督「ノーソンの制服着てるンだぞ。艦娘なのに。」


鹿島「・・・いけない!着替えるの忘れてました!」


提督「天然と言うか抜けていると言うか恥ずかしい。」


明石「女の子はちょっと抜けている方がカワイイのですよ、ねー?」


鹿島「ふふふ、ありがとう御座います♪」ニコ


提督(そこはバカにされていると気付けよ・・・。)


初雪(あ・・・可愛い。)


提督「て言うか辞令は?明石は申請していたから届いているがお前のは無いぞ?」


鹿島「それならここにあります。」


鞄を開き封筒を差し出す。


提督「どれどれ・・・。」


提督(お兄様お兄様と少し煩いのでそちらに異動させます、以上。おおよど。)


提督「・・・。」


鹿島「・・・?」


提督「来てしまったのは仕方ない。くれぐれも余計なことをするなよ?(また爆発でも起こされたらたまったモンじゃない・・・)」


鹿島「・・・?はい!お兄様のお役に立つことができるように一生懸命頑張りますね!」


明石「ほうほう、やっぱりいい子ですねぇ~。」


提督「どこがだよ・・・。」


初雪(艦娘の妹が居ると言う事は司令官は艦息(?)という可能性が微レ存?)



刺客


提督「うぃ~、喰った喰った。」ゲフ


夕立「提督さんおじさんっぽい~。」


提督「うるせー。」


夕立「それにしても鹿島先生の作ったご飯、とても美味しいっぽ~い。」


提督「うむ、悔しいが料理には文句のつけようが無い。」


夕立「とっても素敵なのになんで提督さんは先生に冷たいの?」


提督「冷たくねぇよ、普通だ普通。」


夕立「でも先生少し寂しそうだったっぽいよ。」


提督「んなわけあるかアイツに限って。」


夕立「ふ~ん。」


提督「てか先生ってなんだ?」


夕立「響ちゃんが間違って先生って呼んだらそのままあだ名になったっぽい。」


提督「また響か。酔ってたのか?」


夕立「ううん、素で間違ったみたい。」


提督「あっそ。そうだ夕立、もう夜間警備はいらないから消灯時間になったら寝て良いからな?」


夕立「でも~。」


提督「なにこんな所まで態々俺の命なんか奪いに来る奴なんかいないだろう。夜勤組もいるし大丈夫だ。」


夕立「う~~。条件があるっぽい!」


提督「なんだよ?」


夕立「夕立と一緒に寝るっぽい!」


提督「寝言は寝てから言えよ。じゃあな。」バタン


夕立「!?」


夕立を廊下に残し寝室へと入る。


夕立「いじわる~!」


提督「良い夢見ろよ~。」


扉越しに叫びあう。


その声を聞き通りかかった響が加わる。


響「夕立、大声を上げてどうしたんだい?」


夕立「響ちゃん!聞いて、提督さんが中に入れてくれないの!一緒に寝ようって言ったのに。」


響「あ~、それはだね。自家発電(意味深)をするからね。それを見せたくはないのだろう。」


夕立「自家発電?なにそれ、新しい遊びっぽい?」


響「自家発電と言うのは・・・」


提督「黙って部屋に戻れ!」


響「っ!」


夕立「ぽみゃ!?」


扉を開けチョップを脳天に食らわせる。


二人「・・・。」


響「戻ろうか?」


夕立「うん・・・。」


渋々部屋へと向う。


提督「ふぅ、やっと静かになった。報告書でも書きますかね。」ジッ


マッチでアルコールランプに火を燈す。


夕食前に残っていた書類を一気片付けよう。


と思っていた時が俺にもありました。


机の片隅に前任の提督が残していった小説があり好奇心から手を伸ばし読み始めてしまった。


これがなかなかに面白く、書類作成そっちのけで読み耽る。


イスに座ったままでは身体が痛くなるのでベッドの上で横になる。


満腹での読書は眠くなるのは既に承知。


残りは明日作ればいいと面倒くさくなり睡魔に負けまぶたを閉じる。


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どれくらい時間が経ったのであろうか。


降りしきる雨の音で意識が微かに戻る。


提督「ん・・・雨・・・か。」


就寝中の雨の音は心地が良い。


また深い眠りにつこうとしたときだった。


鋭い殺気と共に何者かが提督目掛けて突進してきた。


提督「甘い!」


持ち前の運動能力と感で回避する。


ランプの火が消え真っ暗な部屋の中で微かに窓の外の光が刃物に反射する。


提督(刃渡りは15センチ弱、出刃包丁だな。)


一瞬で武器を判断する。


?「なっ!?」


一撃必中だと思っていたのだろう。


かわされ動揺する。


提督「ふふふ、俺を舐めてかかっちゃあ困るな。怖いのか?来いよ。」


挑発する。


?「くそっ!」


提督「おっと。」


腹部や喉もとを目掛けて刺すが空を切るのみに終わる。


提督「なんだお終いか?来ないならコッチから行くぞ!」


?「あうっ!?」


電光石火の勢いで詰め寄り包丁を叩き落しそのまま足をかけ倒し柔道技の送襟絞をお見舞いする。


提督「観念しろ!」


?「かっ・・・くぅ・・・。」


力強く絞められ悶絶する。


提督(・・・やけに抵抗が無いな。それになんだか柔らかな感触が・・・。)フニ


?「んぅ///」


提督(それに男の声ではないよな・・・。)


怪訝に思いつつも締め上げる。


?「んぐっ・・・!」


化けの皮を剥ごうと電気のスイッチを入れるため立ち上がろうとしたときだった。


夕立「提督さん、物音がしたけど何かあったっぽい?」


扉の向こうから声がする。


さすがと言うか鋭くて助かる。


提督「夕立か、ナイスタイミング。入って電気のスイッチを入れてくれ。」


夕立「分かったっぽい!」


?「待って!」


制止も虚しくパチンと音がし部屋に明かりが燈る。


提督「さて誰がこんな真似を・・・時雨?」


夕立「あー!時雨ちゃん、居ないと思ったら此処に居たっぽい!」


時雨「くっ・・・!」


普段大人しい彼女とは別人のような、まるで中南米の資産家に仕えるメイドのようなをした時雨の姿があった。


提督「・・・。」


時雨「・・・。」


夕立「・・・?」


提督「時雨・・・どうして」


時雨「煩い!僕を殺せ!」


言葉を遮るように叫ぶ。


夕立「ぽひぃ!?」


提督「・・・。」ゴン


時雨「・・・へ?」


無言で拳骨をお見舞いする。


提督「俺はな、時雨も含めて家族だと思っていた。その家族を殺せといわれて殺す奴が居ると思うか?」


時雨「・・・だっ、黙れ!君は家族なんかじゃない!」


夕立「・・・。」


提督「・・・俺の事は嫌いでも別に構わないがそんなに嫌悪感を抱く理由を教えてくれないか?」


時雨「君はっ・・・!僕の大切な人に暴力を振るったじゃないか!」


提督「・・・いつのことだ?」


時雨「はん!寝たら忘れるのかい!夕食後、夕立を叩いたそうじゃないか。」


提督「あれか・・・。叩いたといえば叩いたが。」


時雨「ほらやっぱり。どうせ僕達艦娘のことなんかストレスのはけ口くらいにしか思っていない---」


夕立「時雨ちゃんいいかげんにして!」


時雨「・・・夕立?」


夕立「あれは夕立達が提督さんの邪魔をしたから怒られて当然のことなんだよ!」


時雨「でも・・・。」


夕立「でもじゃない!いままでこんなにみんなのことを大切に思ってくれた提督さんに出会ったことあるの!?」


時雨「・・・。」


夕立「夕立は一度沈んでるから今までの記憶はそんなにないけれど提督さんのことが大好きなの!提督さんを傷つけるようならいくら時雨ちゃんでも許さない!」


時雨「・・・。」


提督「・・・。」


夕立「どうしてもって言うならば夕立を倒してからにして。」


時雨「・・・分ったよ。僕の負けだ。」


遂に観念し溜息をつく。


抵抗の意思は無いとみなし時雨を開放する。


時雨「・・・。」


提督「・・・。」


夕立「・・・。」


しばし無言で見つめあい時雨が言葉を発する。


時雨「・・・大丈夫だよ、もう何もしないからさ。解体するなり殴るなり好きにしてよ。」


提督「上官を殺害しようとした罪は本来ならば重いものだ。」


時雨「覚悟はできているよ。」


提督「そうか。例外なくここでも罰を与えねば他のものに示しがつかない。」


時雨「・・・。」


夕立「提督さん・・・。」


提督「時雨、お前にはその顔は似合わない。」


時雨「?」


提督「その殺人鬼みたいな顔だ。よって毎日最低1時間は笑顔をつくる練習をやれ。」


時雨「ちょっと何を言っているか分らないのだけれど。」


提督「こうやって鏡に向ってだな。」


時雨「ら、らりほ?(な、なにを?)」


頬に手をあて引っ張る。


提督「女の子は笑顔が一番だからな。あ、それと毎日成果のレポートを出すように。」


時雨「へぇ~(えぇ~)」


提督「夕立、監視員役を頼めるか?一応罰だから厳正にする必要があるからな。」


夕立「うん、任せてっぽい!」


提督「お、口調が戻ったな。」


夕立「夕立、おかしかったっぽい?」


提督「い~や、格好よかった。」


夕立「ホントッ!?もっと褒めて褒めて!」


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数日後


時雨「ん~。」


時雨「んぅ?」


鏡に向かい難しい顔をしながら頬を引っ張る。


夕立「時雨ちゃん変な顔~。」


時雨「・・・。」


夕立「そんなんじゃ何時まで経っても(懲罰が)終わらないっぽ~い。もっと自然に笑えないの?」


時雨「いや満面の笑みのつもりだけれど?」


夕立「え~、前に読んだ漫画の“たいゆーきせいめいたいこんたくとよういんたー”なんとかみたいだよ。」


時雨「なんだいそれは?」


夕立「いつも無表情っぽい人物だよ。時雨ちゃんは素(もと)が可愛いのにそれじゃあ勿体無いっぽい!」


時雨「可愛い?僕が?冗談はよして欲しいな。」


夕立「冗談じゃないっぽい!こんなに可愛い下着を穿いているし相乗効果でとっても魅力的っぽい!」ヒラリ


時雨のスカートを捲る。


時雨「なっ、何をするのさ!?」


夕立「そう、それ!」


時雨「へ?」


夕立「恥じらいの表情が自然と出ているっぽい。」


時雨「あ・・・。」


夕立「感情を閉じ込めておくのは辛いでしょ?」


時雨「・・・。」


夕立「夕立と違って時雨ちゃんはまだ轟沈していないからそんなんじゃ勿体無いし日常が楽しくないでしょ?」


時雨「・・・。」


夕立「沈んでから後悔しても遅いからね?」


時雨「・・・。夕立。」


夕立「っぽい?」


時雨「ありがとう。やはり君には敵わないよ。」


夕立「?」


時雨「もっと自分に素直にしてみるよ。」


微笑みながら夕立を見つめる。


夕立「うん!それじゃあ早速報告に行くっぽい!」


時雨「えっ!?」


夕立「その笑顔を提督さんにも見せてあげないと。善は急げっぽ~い!」


時雨「ちょっとまっ-----」


抵抗もむなしく引きずられ執務室まで連行された。


いざ見せるとなると恥ずかしくなりそこから逃げ出したのは言うまでもない。



工作艦


春が目の前に迫り陸ではすごしやすい日々が続いた。


それとは逆に海では強風が吹きうねりもあり防波堤から外側に行くのは難しかった。


艦隊行動は自然と座学となり我が妹の鹿島が教鞭を振るっていた。


そちらを任せ港の片隅にある掘っ立て小屋に足を運ぶ。


提督「邪魔するぞー。」


ギィっと音がする動きの渋いドアを開ける。


明石「あっ、提督。いらっしゃい。」


提督「よ、順調か?」


明石「まぁそこそこですね。錆び付が思ったより酷いですが演習になら出ても問題ないでしょう。」


提督「ふむ。実戦には無理そうか?」


明石「そうですねー・・・出力が伸びませんしオーケーとは言えませんね。」


提督「分かった。」


明石「でも今週中には全ての整備が終わる見込みです。」


提督「ん、そうか。悪いな任せきりで。」


明石「いえいえ。これが私の仕事ですからね。」


提督「そういってもらうと助かる。そうだ、ほい。」


明石「何ですかこれ・・・チョコ?」


提督「疲れてる時には甘い物でもと思ってな。」


明石「え・・・でも。ここでは甘味が貴重なのでは?」


提督「気にするなって自費だし。」


明石「自費って・・・悪いですよぉ。」


提督「どうせ使い道のない金だ。ならばここの皆の為に使いたい。」


明石「提督・・・ありがとうございます。」


提督「ああ。・・・ん?」


ゴォォと風の音がする。


明石「今日は突風に注意したほうがよさそうですね。」


提督「そうだな。ここも飛ばされないか心配だ。」


明石「提督、もっと立派な工廠を建ててくれても良いンですよ?」


提督「無茶言うなよ。宿舎だって雨漏りしてるし傾いているのに新築できないンだぞ。」


明石「結構というかかなりボロいですねぇ・・・。」


提督「ボロとか言うな、風情があると言え風情が。」


明石「むー・・・。でも曙ちゃんのコーディネートはすごいと思います。あるものであんなに立派に作りますからねぇ。」


提督「そこは感心せざるを得ない。建物のことで思い出したが明石、風呂を何とかできないか?」


明石「お風呂ですか?」


提督「ああ。一人がやっと入れる大きさなんて入った気がしなくて。」


明石「うーん・・・体を伸ばして入りたいですもんねぇ。」


提督「資金は出すからさ。」


明石「と言われましても、モルタルやセメントは・・・無理ですし。」


提督「木なら?」


明石「木ですか?」


提督「そこらへんに生えてるのを使えば材料費もかからないだろうし。」


明石「まぁ道具さえあればできないことはないと思いますが・・・。でもどうして急に?もしかして一緒に入りたいンですか?」


提督「はぁ?」


明石「昔は一緒に入ってたじゃないですかぁ。提督がどうしてもと言うならばいつでも、ふふ・・・。」


提督「脱がなくて良い。明石に相談した俺がバカだった。じゃあな。」


明石「いけず~。私だって少しは大きくなったンですよ?今なら挟んだり擦ったりサービス(意味深)しちゃいますよ?」


胸に手をあて強調する。


提督「・・・明石さん解体ドックはあちらです。」


明石「さん付けは地味に傷つくからやめてください!冗談ですよ冗談・・・。」


提督「まぁ暫らくは我慢するか・・・贅沢は言ってられんしな。」


明石「すみません私に技術がないばかりに。」


提督「明石の所為ではない、気にするな。話に付き合ってくれたお礼に何か欲しいものはないか?」


明石「ふぇ・・・?いいですよお礼なんて。」


提督「いや、艤装を直せるのが明石しか居ない今、ここの運営は明石に係っていると言っても過言ではない。建て替えは無理だが何か無いか?」


明石「急に言われましても・・・バイク。バイクがあれば助かります。」


提督「バイクか・・・。んー、べらぼうに高いわけではないが・・・車じゃ駄目か?俺のでいいならやるが。」


明石「いや~二輪免許しか持ってなくて。私、体力があるとは言えませんし移動用の足でもあれば嬉しいかなって。」


提督「なるほど・・・、分った。直ぐにでも手配しよう。」


明石「本当ですか!?ありがとう御座います!」


提督「車種は何でも良いか?」


明石「はい!言ってみるものですねぇ~。」


まるで子供のようにはしゃぐ。


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数日後


提督「明石~居るか~?」


工廠に足を運ぶ。


明石「は~い居ますよ~。どうかしましたか?」


提督「おお居たか。ちょっちいいか?」


不敵な笑みで手招きをする。


明石「ん、なんでしょうか?」


手にしていた工具を置き小屋の外へ出る。


するとそこにはご丁寧に布が覆いかぶさった何かがあった。


提督「ふふふ・・・待たせたな!」


勢い良くその布を剥ぎ取る。


明石「へ・・・?」


提督「リクエストにあったバイクだ。どうよこのいかしたキャタピラは?」


明石「・・・。」


提督「あれま、お気に召さなかったか?」


明石「・・・・・・提督ぅ!」


提督「お゛ぅ!?」


明石「愛してます!もうっ・・・最ッ高ですよ!」フンス


鼻息を荒くし興奮する。


明石「安定性は抜群ですし物を積めて牽引までできるって神器みたいじゃないですか!」


提督「よ、喜んでもらえて何よりだが少し落ち着こうか。」


明石「これが落ち着いていられますか!見た目はゴツくても二輪免許で運転できるんですよ!?」


提督「どうどう。」


明石「それにしてもケッテンクラートなんてよく見つかりましたね。本国でもそんなに生産数が多いわけじゃないのに。」


提督「同級生で外務省務めの奴から融通してもらったンだ。どうせ乗らないし有効活用してくれるなら喜んで提供する、だと。」


明石「何気に交友関係広いですもんねぇ。」


提督「何気とは何だ。まぁ安全運転で頼むぞ。」


明石「はい。これで色々捗りますねぇ♪では早速活用しますか。」


提督「というと?」


明石「ええ、全艤装の整備が終わりましたので試験運用開始です。」


提督「おお、じゃあ1300訓練開始としよう。今日はベタ凪で丁度いいし。」


明石「分りました。ですが全員のを一度に見るのは難しいので数班に分けましょう。」


提督「だな。」


整備を終えた艤装を荷台に積み込み明石は岸壁に向かい提督は資料作成のため執務室へと戻る。


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鹿島「では最終班の皆さん、抜錨です。」


望月「ふあ~い。」


あくびをしながら応える。


曙「ちょっと、旗艦なんだからしっかりしなさいよね。」


磯風「まぁ望月でなくとも眠くなる天候だ。」


響「そうだね。」モグモグ


長波「だな。」モグモグ


曙「・・・貴女たちは何を食べているのかしら?」


響「何って。」


長波「チョコだけど?」


曙「チョコだけど、じゃないでしょ!訓練中なのわからないかしら。」


長波「まぁ固いことを言いなさんな。」


曙「なっ!?」ムグ


曙の口にチョコを投げ入れる。


長波「美味いだろ?」


曙「・・・ちょっとぉ!これお酒入ってる奴じゃない!」


響「もう一つ要るかい?」


曙「要らないわよ。勤務中の飲酒は禁止って言われてたでしょ!」


響「確かにそうだが。しかしこれは特別な許可を司令官から貰ったのだよ。」


長波「ああそうだ。あたしも居たから聞いている。」


曙「そうなの?」


響「酔って強くなれるのなら(程ほどに)摂取しても構わない、とね。」


長波「しかも態々取り寄せてくれたんだぜ。甘味が貴重なのにチョコって気が利くよなぁ。」


曙「気が利くのは分るけどさぁ・・・。まぁ良いわ、一升瓶を持たなくなっただけマシか・・・。」


鹿島「ん゛ん。皆さん、艦隊行動中は私語を慎んでくださいね?」


曙「あ、ごめんなさい。」


長波「ああスマンスマン。」


響「Да.」


鹿島「望月さんは起きてください。」


望月「鹿島先生がぁ抱きしめてくれたら起きる~。」


鹿島「もう、仕方ありませんねぇ。」ギュ


望月(おぉ~やわらけぇ~。マジでいい香りだわぁ~)ニヤニヤ


磯風「望月、あまり気色悪い顔をするな。」


望月「いつあたしがそんな顔をしたのよ。美少女に対して失礼じゃない?」


磯風「む、可愛いのは認めるが気色悪いモノは気色悪い。」


望月「うるせ~酸素魚雷ぶつけるよ?」


鹿島「はい喧嘩は駄目です、仲良くしてくださいね?」ナデナデ


望月「・・・うん♪」


磯風「・・・ああ。」


鹿島「それでは練習航海の開始です。提督さんご指示のほうよろしくお願いします。」


提督「あいよ。まずは鹿島を先頭に望月が旗艦となり縦一で5海里東進。ポイントαに到着次第停止し目標に向け砲撃。」


鹿島「了解です、皆さんも聞きましたね。ポイントαまでは航行訓練となります。徐々に速度を上げますが異常が出た場合は直ぐに申し出てください。」


一同「了解!」


提督「すまんな、お前だけ何回も出させて。」無線


鹿島「いえ、お兄様のお役に立つのであれば大丈夫ですよ。」無線


提督「そうか。」無線


明石「おや、優しいお兄様ですこと。」


提督「うるさい。バイク返してもらうぞ?」


明石「あ~っ、冗談ですって。」






望月「うぇ~、ちょっと寒いなぁ。」


曙「だから上着を着なさいって言ったでしょ。」


響「もっちーこれ食べるかい?ぽかぽかするよ。」つチョコ


長波「んーダメダメ。もっちー酒に弱いンだから。」


望月「そだねー。磯やん場所変わってよ~。」


磯風「む、私か?」


望月「風だけに風よけになるしぃ。」


磯風「・・・。」


望月「冗談だって、怒らないでよ・・・。」


磯風「いや、おもしろい駄洒落だ。使わせてもらうぞ。」


望月「え・・・あぁうん。」


鹿島「みなさんここで第二戦速に切り替えてください。」


望月「ん、りょーかーい。行くよ~。」


磯風「おい、加速しすぎだぞ!」


曙「わわっ。」


水しぶきが後続を襲う。


鹿島「望月さん!?」


鹿島をも追い抜く。


望月「わ~誰か止めて~!スロットルが戻らないよぉ!」


長波「ありゃまぁ~整備不良か?」


響「いや明石さんに限ってそれはない。おおかた入れ間違いだろうね。」


長波「ふ~ん。」


曙「あんたたち何を呑気にしてんのよ!追いかけるわよ!。」


長波「まじかよ・・・。睦月型とはいえあの艤装けっこう早いんだぞ。」


磯風「だが止めなければ危険だ。」


提督「そうだ漁船の往来もある。すまないが訓練だと思って追いかけてくれ。」無線


鹿島「は、はい!みなさん予定変更です!最大戦速での航行訓練です。目標は望月さんです、何が何でも止めてください!」


一同「了解!!!」


残された全員は駆動機関のスロットルを最大まで押し上げ黒煙を吐き加速する。


鹿島「あっ・・・。」


響「先生?」


鹿島「私の速度では追いつけません。済みませんが皆さんにお任せします。」


響「・・・分った。」


長波「あれ、鹿島ちゃんは?」


響「私達に任せるって。」


長波「へ、なんで?」


響「先生、航行は苦手らしい。」


長波「あぁ・・・なるほどな。お~い磯やんボノちゃん!」


磯波「何だ?」


曙「何よ?」


長波「先生が脱落したからなぁ。」


曙「は、なによそれ!」


磯風「む・・・。」


長波「先生は走るのが苦手、こういえば分るだろぉ~?」


磯風「うむ、大変分りやすい。」


曙「・・・そうね。」


駆逐艦たちは30ノット以上でるが鹿島はその艤装重量ゆえ20ノットがでるかどうかだった。


曙「みんな、あたしが臨時旗艦になるからついて来て!行くわよ!」


曙を先頭に全速力で望月を追いかける。


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望月「ワー、ダレカタスケテー(棒)」


全速間際の36ノットで航行する。


艤装自体は古いがまだまだ現役だ。


初雪「うわ・・・エグいなぁ。」


それを鎮守府の監視台から望遠鏡で観察している。


曙「ちょっと・・・なんなのよもう!」


磯風「仕方ないさ、こればかりはどうしようもない。」


望月が航行した後は波が立っており後続組は思うようにスピードを出せない。


響「おっと・・・さすがにコレはきついね。」


長波「だなぁ、どうしたもんか・・・。」


磯風「そうだ、私にいい考えがある。」


長波「えー・・・磯やんの思いつきってろくなことないジャン。」


磯風「なんと失礼な。」


曙「この際何でもいいわ言ってみて!」


磯風「む、そうか。君の主砲と魚雷を私達に預けたまえ。そうすれば身軽になり速度もでる、それに安定もするだろう。」


響「おぉ、いい磯やんにしてはいい案じゃないか。」


曙「そうね、偶にはいいこと言うじゃない。走りながら渡すから落とさないでよ?」


磯風「なにやら引っ掛かるところもあるが承知した。」


曙の後ろにいた磯風・響は横につき長波は背後から彼女を支える。


曙「んしょ・・・っと。」


担いでる艤装のバンドを外し体勢を整える。


響「っと、さすがに二人分となると重いね。」


磯風「だな。」


長波「魚雷はいいのか?」


太ももに結わえてあるソレを指差す。


曙「ええ、最悪の場合コレで止めるわ。」


磯風・響・長波(・・・曙には逆らわないほうが賢明だ。)


曙「ん? ・・・・じゃぁ行くわよ!」


長波「うわぁ!?」


目の前で機関を全開にされまともに水しぶきを受ける。


響「おお早いね。」


磯風「ふむ、我ながら良い考えだったな。」


長波「・・・むぅ。」


響「長波さんどうしたんだ・・・い? хорошо.」


磯風「うん? なるほど、眼福眼福。」オガミ


水にぬれた服は体のラインに沿って張り付き長波は一段と妖艶な姿になっていた。


長波「拝むなぁ! ったくどうしてこうもついてないのかねぇ。」


既に小さくなった曙の後姿を眺めながら溜息をつく。


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曙「うん、久しぶりの運用だけれど問題ないわね。」


こちらも全速間際の速度で航行する。


曙「見えた!」


接続水域まで来たとき望月の艦影を捉えた。


曙「お~い!望月さ~ん!」


大声で呼ぶ。


望月「ん、来たか。」


その声に反応し停止する。


曙「え、なに・・・。止った?」


狸にでも化かされたかのような顔をする。


望月「曙ちゃん一人?」


曙「え、ええそうよ。スロットルが壊れたんじゃないの?」


望月「ん?いーや、故障もないし絶好調そのものだよ。」


曙「え・・・じゃぁどうして?」


望月「久しぶりにシたくなったんだよねぇ。」


主砲を構える。


曙「ふぇ?演習を?」


望月「ううん・・・殺し合いをさ!」


曙「な!?」


砲弾が曙目掛け飛んでくる。


望月「・・・流石だねぇ。」


曙「なんなのよもう!」


紙一重でかわし距離をとる。


望月「でも次も避けられるかな?」


また主砲が火を噴く。


曙「ちょ!?」


これもかわす。


望月「凄い凄い!艤装なしでもそんなに動けるんだ!」


曙「正気なのあんた!?」


望月「勿論だよぉ。」


曙「そう・・・そっちがその気なら相手をしてあげるわ。」


望月「ははっ。主砲がないのにどうやって相手をするって言うのさ。」


曙「あんたはもう負けている。」


望月「え!?」


次の瞬間天高く水柱が立つ。


曙「殺し合いをしたいなら慢心しないことね。」


望月の砲撃をかわした際に一本だけ隠し持っていた魚雷を発射し命中したのであった。


数秒後に水柱が消え視界がはれた海原の上には気を失い横たわっている望月の姿があった。


曙「全く、世話が焼けるんだから・・・。」


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望月「うぅん・・・ここは?」


今はベッドで休んでいた。


望月「知らない天井だ・・・。」


曙「アンタの部屋でしょ!」ビシィ


望月「あいた!?曙・・・?殴ること無いじゃん!」


曙「うっさい!アンタのせいでこっちは良い迷惑よ!」


望月「ふぇ?」


提督「訓練での暴走を覚えてないのか?」


望月「司令・・・官?暴走・・・?そっか・・・またヤっちゃったんだ・・・。」


提督「過去の報告書を読ませてもらったが暴走する確率は高くはないと記載してあった。だが、暴走しないとは書いてなかった。今回は俺の責任だ、申し訳ない。」


望月がここに飛ばされた理由。


それは敵味方の見境が無くなり非情に危険で普通の鎮守府では運用できないからであった。


多重人格とでも言うのだろうか、暴走時の記憶は殆ど残らない。


曙「撃った私が言うのもなんだけれど痛い所ない?」


望月「これと言って・・・強いて言うなら今叩かれたところが痛いなぁ。」


曙「わ、悪かったわね!」


望月「冗談だよ・・・。」


提督「望月、今日明日は非番とする。ゆっくり休んでくれ。」


望月「でも・・・これ以上迷惑をかけられないよ。」


曙「あんたバカァ?」


望月「な!?」


曙「体調が万全じゃないのに出撃でもしてまた暴走とかされたらそっちのほうが迷惑なの。」


提督「ははは・・・いい方は悪いがその通りだ。ましてや疲労状態で出撃した場合轟沈のリスクが高まる。こんな所で望月を失いたくないからな。」ナデナデ


望月「司令官///」


頭を撫でられ布団で顔を隠す。


にやけていたのは言うまでもない。


愛しの妹


私には姉妹が3人居る。


いや、居たといった方が正しいかな。


泣き虫で臆病で一見頼りなさそうに見えるがここぞと言うときは誰よりも安心して背中を任せられる姉。


料理や洗濯、家事全般で彼女の右に出るものは居ないだろう。


小さいながらもまるで母親のような存在だ。


末っ子ながら努力家の彼女。


空回り気味だったけれど折れることのない心には敬意を表するよ。


君は常々“沈んだ敵も助けたい”って言っていたね。


その敵に沈められたら元も子もないだろう。


私は今でも信じられないよ。


そばに君が居ないなんてね。


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月明かりが差し込む部屋でかつて所属していた鎮守府からの手紙を読む。


玉には響の顔がみたいな。


偶にはのつもりなんだろう。


暁の字だ。


三周忌だけど帰ってこれるの?


この達筆な字は雷のものだ。


響「帰ってこれるのか・・・ねぇ。私にはその資格はないよ。」


手にしていた文を握りつぶしゴミ箱へと投げ入れる。


響「・・・Мне очень жаль.(ごめん)」


横になり目を閉じる。


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提督「珍しいな、響が寝坊なんて。」


不知火「ええ、恐らく初めてのことではないでしょうか。」


提督「二日酔って事は・・・。」


不知火「まさか、常時酔っているようなものですよ。」


提督「確かに。だがこのごろは飲酒も減ってシラフが殆どだがな。」


朝食の時間になっても起きてこない響を心配に思い起こしに行く。


コンコンコン


不知火「不知火です。響さん、起きていますか?」


返事はない。


提督「あれま。」


不知火「入りますよ。」


扉を開け部屋に入ると響はまだ寝ていた。


提督「おーい、響さんや。朝ですよ~。」


響「・・・司令・・・官?」


提督「もう7時過ぎだぞ?具合でも悪いのか?」


響「・・・いや・・・大丈夫だ。」


ゆっくりと起き上がる。


その響の枕元にあるものに気がつく。


不知火「これは・・・?」


手を伸ばす。


響「не трогать!(触るな!)」


提督・不知火「!?」


今までに聞いた事がないくらいの大声に驚く。


響「あ・・・ごめん、なんでもないよ。」


それを枕の下へそっと仕舞う。


提督「あ、ああ。メシが冷めないうちに来るんだぞ。」


響「うん・・・。」


不知火「では失礼します。」


そそくさと響の部屋を後にする。


響「・・・何をやっているんだ私は。」


自分で自分の頬を叩く。


二つの意味での戒めだ。


響「さて、行きますか。」


寝巻きから制服に着替え食堂へと向かう。


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鹿島「あっ、響さん。今日はお寝坊さんですね。」


響「先生は相変わらず早起きだね。」


鹿島「当然です。皆さんの朝食を用意しないといけませんから、ふふ。」


響「спасибо.今日のメニューは何かな。」


鹿島「今日はですねぇ出汁巻き卵と鰺の干物、ほうれん草のお味噌汁にナスのお漬物です。」


響「ナス・・・。悪いけれどナスは遠慮しておくよ。」


鹿島「あれ、お嫌いでしたか?」


響「そうじゃないけれど今日は要らない、ごめんなさい。」


鹿島「分かりました。代わりにきゅうりの浅漬けをどうぞ。みんなには秘密ですからね♪」


響「うん。」


ごはんが乗ったトレーを受け取り席につく。


響「Приятного аппетита(いただきます。)」


響「・・・うん、美味しい。」モグモグ


長波「よっ、ネボスケ。」


ニシシと笑いながら近づいてくる。


響「ここは禁煙席だよ?」


長波「火、ついてないからいいだろ?」ヨッコイショ


おばさんのような声を出し響の隣に座る。


響「なにか用かな?」


長波「あれ、今日の任務聞いてなかったのか?あたしと一緒の組だぜ。」


響「へぇ、このごろ一緒になること多いね。」


長波「そう言われればそうだな、この前の練習航海のときもそうだったし運命的な奴か・・・ってな。」


響「それで、任務は近海の警備かな。」


長波「ああ、このあと0800から午前中一杯だ。N島まで行ってみるか?」


響「N島・・・。そうだね、そこで折り返したら丁度よさそうだ。」


長波「オッケー、じゃあそれで。ってなんだ、きゅうり?あたしらはナスだったぜ。」


秘密がばれてしまった。


長波「一つも~らい!」パク


響「あ・・・。」


長波「・・・辛ぇえ!」


鹿島「響さんごめんなさい、間違ってカラシ漬けを渡して・・・長波さん?」


響「謝るなら長波にお願いするよ。」


口から火を吹いているのを見て理解する。


鹿島「わわわっ、直ぐにお水を持ってきますね!」


響「・・・大丈夫かい?」


長波「くぁwsrftgyふじこ!」


響「言葉になってないよ。」


鹿島「お待たせしました!」つお冷


長波「!?」


勢い良くコップを奪い一気飲みする。


長波「はぁ・・・はぁ・・・。先生!殺す気か!?」


鹿島「ご、ごめんなさい・・・。」ウルウル


長波「うっ・・・。つ、次からは気をつけてくれよ。」


鹿島「はい・・・。」


響「元はと言えばつまみ食いした長波が悪いよ。」


長波「なんも言えねぇ・・・。」


鹿島「お詫びと言ってはなんですけれど良かったらどうぞ。」


長波「ココアシガレット・・・。ああ、うん。間違いじゃないけれど駄菓子だぜ、これ。先生はタバコ吸わないのか?」


鹿島「以前、長波さんが吸っていたのを目にしてカッコいいなぁと思って試しに吸ってみたのですが・・・。」


長波「むせてしまった、っと。あたしが言うのもアレだが、体に悪いから吸わなくて正解だぜ。でもありがたく貰っておく。」


鹿島「はい・・・!」


響「・・・ごちそうさま。」


二人が会話しているうちに食べ終える。


成人男性から見ると本当にそれだけで足りるのかと思うくらいの小食であるため、食事の時間は短い。


鹿島「お粗末様でした。」


響「先生のつくるご飯はやっぱり美味しいね。きてくれて本当にありがとう。」


長波「先生が来る前は食事が拷問だったぜ。」


磯風(なにやらどこかで噂されている気がする・・・。)


鹿島「ふふ、皆さんに喜んでもらえるようもっと精進しますね♪」


長波「響も食い終わったし出撃してくる。」


鹿島「はい、お気をつけて。」


響「じゃあ先生、またあとで。」


鹿島「行ってらっしゃい。」ナデナデ


響「子供扱いはよしてくれないかな///」


長波「おぉ、照れちゃって可愛いな。」


響「うるさい。」


帽子を深く被り顔が見えないようにしながら小走りで艤装保管庫へ向う。


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長波「よし・・・っと。んじゃ、そろそろ出ますか。」


響「うん。」


艤装を軽くふかし内部に溜まった煤を飛ばす。


長波「さっきまで晴れてたのに急に曇ってきやがった。」


響「仕方ないさ。そういう季節だからね。」


長波「まぁな。波が高くならないうちにちゃちゃっと終わらせようぜ。」


響「まぁ、妥当だね。」


雑談もそこそこに沖へと向う。


最近の主な任務は領海の警備と軽い輸送任務である。


小さなことからコツコツと。


地道ながら確実な内容は大淀の指示だ。


こんな辺境の鎮守府でもやる事はやるのをアピールするのが狙いだ。


大淀のお陰で資材は増えたものの依然中央重視で配給されないこともしばしばある。


なにはともあれ大淀には感謝している。


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長波「なぁ響。」


響「ん、なんだい?」


長波「響は艦娘になって何年だ?」


響「3年さ。君は?」


長波「あたしは2年半。どこの出身だっけ?」


響「八戸だよ。」


長波「へぇ~青森か。その割には訛ってないなぁ。」


響「生まれは青森でも東京に居た方が長かったからね。君は?」


長波「焼津。ちょい大きな港があるだけの田舎町だよ。」


響「君は志願したのかい?」


長波「いんや、徴用。」


響「そう・・・。家族は皆無事なのかい?」


長波「・・・・・・ああ。疎開して無事だよ。」


響「それはなりよりだね。」


長波「そう言う響はどうなんだ?家族のこと一切教えてくれないじゃん。」


響「・・・話したくないんだ、それは。」


長波「あっそ。じゃあもう聞かない。」


響「・・・。きょうは随分とあっさりしてるね。」


長波「人間秘密の一つや二つくらいあるもんな。話したくないならいいよ。」


響「・・・うん。」


長波「・・・っと、霧が出てきたな。」


響「こんな昼間に珍しいね。」


突如発生した濃霧に視界を奪われる。


長波「全く、おかしな天気だ・・・。響、電探を積んでいるあたしが前にでるから場所変わって。」


響「・・・了解。」


先頭の響は速力を落とし長波と前後の持ち場を交代する。


長波「こりゃ一降りくるかもな。」


身に着けているポーチからタバコを取り出し火をつける。


これには響のお酒(ノンアル)も入っている。


長波「左舷灯の代わりってか。」


小さな赤い炎を舷灯に見立てる。


響「わっ!?」


長波「どうした!?」


響「波に足元をすくわれただけさ、心配ない。」


長波「そ、そうか。急に大声を出して少し驚いたぜ・・・。」


響「ごめん。」


長波「むぅ。それにしても三角波まで出てきやがったな。これ以上は危険だと思う。切り上げないか?」


響「・・・うん。司令官に聞いてみるよ。」


無線機のスイッチを入れる。


響「こちら紹介任務中の響だよ。応答を願う。」


返事がない。


響「司令官?」


長波「ん、どうしたー?」


響「ノイズが酷くて通信ができないみたいだ。」


長波「もしかすると雷雲の所為か?遠くで光った気がするが。」


響「かもね。」


長波「しょうがない。命令は出てないけど戻るか。帰ればまた来られるからな。」


響「そうだね。」


N島手前で針路を180度変える。


長波「んじゃ、これより酷くなる前に着くよう飛ばすぞ。」


響「了解。」


加速しようとした時だった。


長波の右舷後方からしのび寄る1本の白い線に気がつく。


響「あれは・・・。危ない!」


長波「ふぇ?」


飛び掛り長波を突き飛ばす。


次の瞬間爆炎と轟音が波の音を掻き消すかのようにこだまする。


長波「いてて・・・何が一体・・・響!」


艤装は炎上し意識を失いぼろぼろになった姿で横たわる響を発見する。


長波「響!おい、しっかりしろ!くそ・・・!」


電探に反応はなかった。


となると考えられるのは潜水艦しかない。


水上にばかり気を取られ対潜のことなど頭の片隅にも無かった。


ソナーも爆雷もない。


八方塞とはこのことだ。


長波「畜生・・・!?」


倒れた響を抱え視界をあげるともう1本の白い線が見える。


長波「おわっ!?」


間一髪でかわす。


長波「このままじゃ直ぐにやられてしまう・・・。」


逃げるにも意識を失ったものを担げば当然速力は落ちる。


長波「・・・明石さん、せっかく直してくれたけど・・・ごめん!」


壊れた響の艤装を海へ投棄する。


長波「これでいくらかは・・・。響、あたしが絶対連れて帰るから死ぬんじゃないぞ!」


背負い鎮守府へ向け航行を始める。


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?「・・・ちゃん。」


?「・・・き・・・ちゃん。」


響(なんだ・・・懐かしい声がする。)


?「響お姉ちゃん。」


響「電・・・。そうか、私は轟沈してしまったんだね。」


気がつくと薄暗い海底のようなところに居た。


そこにはかつて沈んでしまった妹の電の姿があった。


電「響お姉ちゃんはまだ沈んではいないのです。」


響「じゃあここは?あの世じゃないのかい?」


電「境目と言ったところでしょうか。」


響「そうか。ではすぐそっちに、」


電「お断りするのです。」


響「なん・・・だって?」


電「響お姉ちゃんはまだくるべき時ではないのです。」


響「どういう事だい?」


電「響お姉ちゃん。」


響「?」


電「響お姉ちゃんは新しく来た司令官さんのことをどう思いますか?」


響「・・・私達を人間として扱ってくれて嬉しい。それに、一緒に居て楽しかったさ・・・。」


電「その司令官さんを置いてこっちに来るのですか?」


響「それは・・・。」


電「それに今こちらにきてしまったらお友達の皆さんが悲しむのです。」


響「そう・・・かな。わたしに同情してくれる艦娘(ひと)は・・・。」


夕立「ここに居るっぽい!」


響「夕立・・・?」


夕立「電ちゃんに大至急きて欲しいって言われてきたけれど驚いちゃった。響ちゃんがここに居るんだもん。」


響「これは一体全体どういうことなんだ・・・。」


電「夕立ちゃんと電はお友達なのです。」


夕立「ねー♪」


響「意味が分らないよ。」


夕立「夕立は一度沈んでいるからこっちとあっちを自由に行き来できるっぽい!だから偶に遊びに来てるのよ。」


響「・・・。そういう設定あったね。」


夕立「設定とか言わない! でも、響ちゃんの事はみんな心配しているよ。さ、一緒に帰ろう?」


響「・・・分ったよ。すまないが先に行ってくれないか。電と少し話をしたいんだ。」


夕立「必ず戻ってくる?」


響「嘘はつかないよ。」


夕立「分かった・・・。先に行って待っているっぽい!」


響「うん。」


夕立はすぅっと消える。


響「・・・ごめん。」


電「なにがです?」


響「あの時、沈むのは本来私のほうだった。いらない気を利かせ場所を変えたのが全ての原因だ。」


電「響お姉ちゃん・・・。」


響「・・・。」


電「・・・のお馬鹿!」ポコン


響「!?」


軽く小突かれる。


電「艦娘になったときから轟沈は覚悟していたのです。だれに責任があるとかそういうのは無しにしようと言ったのはだれなのです?響お姉ちゃんなのです。」


響「・・・うん。」


電「確かに電が沈んでしまって責任を感じてしまうのはわかるのです。ですがそのことで生きている人、ましては自分の命を無駄にするようなことは絶対して欲しくはないのです!」


電「響お姉ちゃんは真面目で考えすぎるときもあるのですが、根を詰めすぎないのが気楽に生きるコツだと思うのです。少しは肩の力を抜いてもいいのですよ?」


響「電・・・。ありがとう・・・。ごめん・・・。」


大粒の涙がこぼれる。


電「辛いときは誰かに頼ってもいいのですよ?あ、でもお酒はまだ早いと思うのです。」


響「誰・・・から・・・それを・・・。夕立か・・・。」グスッ


電「御名答なのです♪」


響「・・・でも最近は控えめにしてるし(仕事中に)飲みたいときはアルコールフリーのものにしてるんだ。」


電「飲んでも怒らない司令官さんって寛容なのですね。」


響「飲んで力を発揮できるなら泥酔しなければ良いって言ってくれた。」


電「変わった司令官さんなのです。響お姉ちゃん。そろそろお別れの時間が来てしまったのです。」


響「えっ・・・。」


電「生きている人が長くここに居ると本当にお陀仏になってしまうのです。」


電は一歩後ろに下がるとその体が透け始める。


響「待ってくれ!」


電「?」


響「また・・・あえるんだよね?」


電「いずれは・・・なのです。」


響「必ず迎えに行くから待っていてくれ。」


電「・・・はい!電は首を長くしてまっているので急がないで来るといいのです♪」


遠まわしに長生きしろと言っている。


しばらくしてからそれに私は気付いたものだった。


電「それではまた逢う日まで。」


響「ああ!」



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響「・・・電。」


長波「響!」


夕立「響ちゃん!」


響「長波に夕立・・・それに司令官も。」


提督「お帰り。」


響「ただいま。」


長波「響、あたしの不注意だった悪い・・・。」


響「長波が気にする必要なんてないよ。旗艦を守るのが随伴艦の仕事さ。」


長波「でも・・・!」


響「良いんだ。それにお礼を言うのはこちらだ。ありがとう。」


長波「ふぁ!?」


長波のその豊満な体を抱き寄せる。


長波「ちょ、何を!?」


響「ロシアではハグをするのは一般的だけれど?」