2018-01-11 00:12:49 更新

前書き

毎度おなじみ鎮守府シリーズです。
表題のとおり(だいたい)駆逐艦しか出てきません。
俺の嫁はこんなんじゃねぇ!ふざけんな!と言われても仕方ない表現もあるかと思います。
苦手な方は嫁艦の姿を思い描きながらお休み下さい。


汽車に揺られ1日半余り。


終点の駅に降り立ち俺は絶望した。


何もない。


帝都生まれ帝都育ちの俺の目に映るのは小さな集落と広大な海。


こんな所に軍の施設があるものなのかと不安に駆られる。


本営のお偉いさんの秘書艦から手渡された地図を見る。


地図と言っていいのかこれは。


駅から真っ直ぐ一本線しか描かれてない。


要するに行けばわかるということだ。


どうせ時間をつぶすところもあるまい。


諦めの念も含めその施設へと向かった。


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20分ほど歩きようやくそれらしき建物の前につく。


普通の鎮守府であればクレーンや通信アンテナなどがあり誰が見ても分かる。


だがここにはクレーンもアンテナもない。


廃旅館のような建物が周囲の景色に溶け込まずポツンと浮いていた。


提督「マジかよ・・・。」


流石にこれは落胆せざるを得ない。


提督「あのジジイ、何が念願の司令官生活じゃ・・・だ!こんなん・・・心霊スポット巡りに来たンじゃねぇ!」


沸々と怒りがこみ上げ叫んでいると一人の少女が現れた。


?「その制服・・・もしや本日着任された方ではありませんか?」


提督「んがぁぁぁ!ああそう・・・だ・・・よ。」


黒い髪をなびかせ怪訝そうに俺を見つめる彼女。


余りの美しさに怒りは消え去り言葉を失う。


?「やはりそうか。遠路遙々良く来てくれた。立ち話もなんだ、中へ案内しよう。」


提督「え、ちょ!」


俺の手を引き中へと連れ込まれる。


ーーー

ーー



?「ここが貴殿の執務室となる。」


提督「ほ~、外観はアレだが中は趣があっていいじゃん。」


?「そうだろう。前秘書艦のコーディネートだ、私も気に入っている。」


提督「前?ってことはもう・・・。」


?「多分轟沈したかと思っているだろうがそれは違う。疲れたからと言ってこの私に押し付けて今は悠々暮らしている。」


提督「そうか。・・・そういえば自己紹介が未だだったな。俺は《提督》、一応大佐だ。」


磯風「私は陽炎型駆逐艦十二番艦、磯風だ。宜しく頼む。」


提督「ああ宜しく。磯風君ー」


磯風「磯風でいいぞ。」


提督「・・・分かった。磯風、他の子はどうしている。物音がしないが。」


磯風「ああ、この時間は裏の畑にでも居るはずだ。」


提督「畑?」


磯風「そうだ。おおかた大根の収穫だろう。」


提督「ん~・・・。家庭菜園的なものか?」


磯風「自給自足・・・と言ったほうが正解にちかいだろうな。」


提督「自給・・・自足?」


磯風「うむ。司令は汽車でここへ?」


提督「ああ。」


磯風「なら話が早い。見てのとおりこの町は陸の孤島とも呼ばれるほど不便な所だ。」


提督「そんなに酷いのか?」


磯風「小さな商店ならあるが日用品を全て売っている訳ではない。取り揃えるには往復4時間ほど汽車に乗り移動せねばならない。」


提督「4時間だと。寝ている間にそんなに掛かっていたのか・・・。だが必要な物ならば補給申請を出せば良いンじゃないか?」


磯風「通常であればそれで問題ない。だがここはそうはいかない。」


提督「なんでよ?」


磯風「ここは・・・問題を起こした艦娘が集まる所だからだよ。」


提督「・・・は?」


磯風「だから問題を起こしたー。」


提督「いやいやいや、それじゃここは刑務所なのか、そうなんだな。」


磯風「いや・・・鎮守府だが。」


提督「宇都宮を過ぎ仙台を過ぎたころから左遷じゃないかと薄々思ってはいたがそうだったか・・・。で、磯風囚人はどンな事を?」


磯風「その言い方はやめてくれ。私は・・・だな。私の料理で数百人を病院送りにしてしまったのだ。」


提督「意外と軽い理由だな。」


磯風「普段であれば叱責や謹慎ですんだのかも知れない。だが運悪く観艦式、それも御召艦に出す料理だったのだ。」


提督「ってことは?」


磯風「ああ、軍のトップを病院送りだ。」


提督「おおぅ。よく解体されなかったな。」


磯風「失敗は誰にでもある。以後気をつけるようにとお言葉を頂いた。」


提督「ンで?」


磯風「その場はお咎め無しで終わったが後日転属命令が出たのだ。」


提督「それでここへか。」


磯風「まぁそうなるな。」


提督「短い間だったが楽しかった(?)じゃあな。」


ここに居ては命がいくつあっても足りないと直感しかばんを持ち部屋を出ようとする。」


磯風「まっ、待ってくれ!」


扉の前に立ちふさがる。


提督「済まないが未だ死にたくないンでね。」


磯風「辞めるのはいつでもできる・・・。だから少し時間をくれないだろうか?」


提督「その少しの間に死んだらどうするんだよ!?」


磯風「やっと・・・ようやく司令が来たのに、また居なくなるなんて嫌だ。」


飄々としていた顔には不釣合いの涙が瞳に浮かんでいた。


提督「やっと・・・だと?前任はいつから居なかったンだ?」


磯風「・・・3年前だ。」


提督「3年?深海と戦争が始まる前からじゃないか。」


磯風「ああ。先にも言ったが問題児ばかりの所だ。あまつさえ司令に暴力を振るう子も居た。」


提督「やっぱ俺死ぬじゃん!?」


磯風「だが更正しもう手を上げることはない。・・・多分。」


提督「多分って言ったな!?」


磯風「いや言っていない。その子は前秘書艦でもあるんだ。」


提督「・・・。」


磯風「あの花を生けたのも彼女だ。」


窓際に飾っている花瓶に視線を向ける。


提督「・・・きれいだな。」


磯風「ヤマアラシのように近づく者を傷つけていた彼女がだ。あんなにもきれいに生けるようになったんだ。信用してくれ。」


提督「だがな・・・。」


磯風「司令の命はこの身に代えても守る。だから・・・このとおりだ。」


跪き土下座をする。


提督「・・・磯風、止めろ。」


磯風「・・・。」


無言で続ける。


提督「俺は止めろと言ったンだ。提督としての命令だ。」


磯風「!  では・・・。」


提督「ああ、頼もしい騎士(?)にそこまで言われて断るなんて男が廃る。改めてよろしくな。」


磯風「・・・司令!」


提督「うわっと。急に抱きつくなよ。」


磯風「すまない。だが嬉しくて仕方がないのだ。」


先とは打って変わり笑顔で抱きつく。


提督「・・・ちょい、当たってる・・・。」


腕に柔らかな感触が伝わる。


磯風「ん?」


何が?と言う顔をしている。


提督「す、少し離れようか?」


磯風「それはできない相談だ///」スリスリ


?「なに・・・やってンのよ。」


提督「今、声しなかったか?」


磯風「いや聞こえなかったな。」


?「お姉ちゃんから離れろぉ!」


提督「ほらやっぱり!?」


?「このクソ提督!」


提督「敵襲か!?」


磯風「おや曙ではないか。」


曙「チェストォ!」


抜きたてだろうか土のついた大根を振りかざす。


提督「甘い!」


曙「なっ!?」


その大根をかわしながら勢いを生かし背負い投げをかける。


曙「あぅっ!」


磯風「見事。」


提督「はぁっ・・・はぁっ!これでも海軍じゃ武道において右に出る者は居ないと言われてたンだ。」


曙「うぐぅ・・・。」


磯風「大丈夫か?」


曙「大丈夫・・・じゃないかも。」


提督「・・・すまん、やりすぎた。で、磯風、この子は?」


磯風「ああ前秘書艦、そして私の妹の曙だ。」


提督「関取?」


曙「誰がお相撲さんよ!」


提督「大丈夫そうだな。立てるか?」


曙「・・・ええ。」


差し出した手を握り立ち上がる。


曙「いたた・・・。お姉ちゃんこの人は?」


磯風「今日から此処の指揮を執って下さる《提督》だ。失礼のないようにな?」


曙「制服を着ていたから反射的に提督って言ってしまったけどそうなのね。失礼しました。」


ペコリと頭を下げる。


提督(意外と礼儀正しいな。ん、曙?)


提督「失礼だが綾波型じゃないのか?姉妹ではないだろう?」


磯風「ああこれはだな」ムグッ


口を押さえられる。


曙「余計なことは言わなくていいの!」


提督(これは面白い・・・。後でこっそり聞くとしよう。)


提督「訳あり・・・か。ちょっと待て。磯風、さっきは俺を守るって言ったよな?」


磯風「ああ。」


提督「じゃあなんでただ見てたンだよ。止めろよ!」


磯風「なに、曙なら初対面の者に危害を加えることはない。そう信じている。」ナデナデ


曙「お姉ちゃん///」


提督「意味わかんねぇよ・・・。」


磯風「さて一件落着したところで何か甘い物でも食べに行こうか。歓迎の意味も込めて。」


提督「何が一件落着だ・・・。だがこの辺に甘味処あるのか?」


磯風「いや、無いぞ?」


提督「じゃぁどこで?」


曙「お姉ちゃんの手作りよ。」


提督「・・・俺、二階級特進?」


磯風「失礼な。ここに来て結構特訓したのだぞ?」


提督「・・・大丈夫?」


曙の耳元でささやく。


曙「私たちなら平気。人ならば・・・致命傷で済むと思うわ。」


提督「病院は?」


曙「歯科医が一人。」


提督「・・・何かあったら頼む。」


曙「・・・善処するわ。」


磯風「二人とも何をしている?食堂へ行こうではないか。」


二人「・・・はい。」


策士策に溺れる


秘書艦の甘味を食べた後の記憶がない。


気がついたら朝になっていた。


その甘味を食べる前にここの艦娘達と自己紹介を終えてあるのが唯一の救いだ。


秘書艦は何が悪かったのか執務をほっぽり出して研究に没頭している。


提督「・・・さすがに酷いな。」


現時点での備蓄量を確認した。


燃料3700・砲弾1400・鉄5300・ボーキ1000


この程度の鎮守府ならこれの10倍はあってもおかしくは無い。


提督「出撃どころか遠征も厳しいな・・・。」


鎮守府の規模や戦果に応じて支給量が決まっている。


戦果は無いにしろ規模で貰うべき量がない。


秘書艦の言っていた事が理解できた。


“通常であればそれで問題ない。だがここはそうはいかない。”


提督「・・・問題児ねぇ。」


?「違うもん。」


提督「ん?」


?「私達、要らない子じゃないもん。」


執務室の扉からヒョコっと顔を覗かせる。


提督「君は確か・・・。」


初雪「初雪です。」


提督「そうそう、そうだったな。」


初雪「貴方は《提督》。東京府大森区出身。」


提督「なっ!?」


初雪「子供のときのあだ名はシュヴァルツカイザー。」


提督「やめろ!黒歴史がぁ!」


初雪「決め台詞は俺の右目が疼く。」


提督「あ・・・。(放心)」


初雪「ふふふ。」


提督「・・・はっ!いやいやいや、何でソゲな事知ってますのでありますか?(混乱)」


初雪「知っている事は何でも知っているからね。」


提督「理由になってないぞ。」


初雪「私・・・諜報部にいたから。」


提督「諜報部・・・?もしかして大淀様も居たところ?」


初雪「うん。知り合いなの?」


提督「本営勤務の時にこってり絞られた・・・。」


初雪「絞られ・・・た。大人の関係?」


提督「馬鹿なことを言うなスットコどっこい!提出した書類にいっつも文句ばかり言って中々判子貰えなかったんだ・・・。」


初雪「へぇ・・・性格悪いモンね。」


提督「そう思うだろ?俺がここに飛ばされたのも大淀の所為だ(多分)。」


初雪「・・・ムッ。提督は此処嫌いなの?」


提督「・・・正直分からん。磯風にも聞いたが問題児が集まった鎮守府だってな。」


初雪「・・・外の人から見たらそうかもね。でも私はここの皆が好きだしこの街に愛着がある。」


提督「そう、それだ。住めば都と言う言葉があるように考え方次第で空気も美味いし静かでいい所だと思う。だが、人の上に立った経験がない俺が果たして上手く導けるのか不安でならん。」


初雪「努力に憾みなかりしか。」


提督「ん?」


初雪「始める前からそんなんじゃ上手くいくのも出来ないよ?」


提督「・・・。」


初雪「失敗は誰にだってある、私もそう。だからここにいる。でも過去の失敗を糧にどうすれば良いか考えられた。一人で出来ないならフォローはする。だから不安に思うことなんてないよ。」


提督「初雪・・・さん。」


初雪「・・・さん付けはやめて、恥ずかしい///」


提督「じゃあ初雪ちゃん。」


初雪「子供扱いしないで。」真顔


提督「はい。」


初雪「ん。」ニコ


提督(なんか可愛い・・・。)


提督「・・・初雪はどうして此処へ来たんだ?良かったら教えてくれないか?諜報部から異動なんてまず考えられないからな。」


初雪「・・・誰にも言わないでね。」


提督「分かった。」


初雪「とある国の情報を集めようとして逆に漏洩させてしまったの。」


提督「・・・重要な案件か?」


初雪「そこそこ。」


提督「機密漏えいは基本極刑だがよく無事だったな。」


初雪「・・・部長のお陰。」


提督「部長って吉松さんのこと?」


初雪「うん。私の事を必死に庇ってくれた。」


提督「もしかしてだが辞任と関係が?」


初雪「ある。部長は庶務部へ異動させられた・・・。」


提督「・・・成程。いや悪かった、余計なことを聞いて。」


初雪「ん、大丈夫。」


提督「そうか。初雪が良ければで構わないのだが此処でまた諜報活動をしてもらいたい。」


初雪「・・・いいけど、なんで?」


提督「みんなの為・・・か。すまんがそれ以上は今は言えない。」


初雪「みんなの・・・。任せて、頑張る。」


提督「ありがとう。」ナデナデ


初雪「ふぇっ!?」


提督「すまん、つい・・・。」


初雪「だい・・・じょうぶ。ちょっと驚いただけ。なんだか懐かしい感じ・・・。」


提督「紅くなって可愛いな。」


初雪「ちょぉ、マジ恥ずかしいンですけど・・・。」ニコニコ


御注文はウォッカです


備蓄が全くと言って良い程わが鎮守府には余裕が無い。


整備員の姿も無く艤装に不具合も出ている。


提督「いよいよヤバイことになったぞ。」


響「ろうしたんらい司令官?」


提督「磯風からの報告だが錆付いて機関が動かないだと。これじゃあ出撃できん。」


響「ほぉ~。」


提督「ほぉ~って・・・何で酔ってるんですかね?」


響「酔ってなんからいさ。」


提督「嘘をつくな。呂律が回ってないぞ?」


響「これはもとからなんらよ。」


提督「じゃあ手に持っているのは何だ!」


響「Столичная(ストリチナヤ)」


提督「は?」


響「Столичная」


提督「なんでロシア語はそんなに発音良いンだ。没収な。」


響「!?」


響の手から栓の開いているビンを取り上げる。


響「返してよ!」


提督「駄目だ。大体勤務中に呑む奴がどこに居るんだ。」


響「ここにいるぞ。」


提督「じゃかぁしいわ!」


響「ぐぬぬ・・・私がどうなっても言いのかい?」


提督「・・・良くは無いがどうなるんだ?」


響「・・・手が震えて見えちゃいけないものが見える。」


提督「アル中じゃねぇか。」


響「違うもん!燃料なんだもん!」


提督「燃料なら軽油か重油だろ普通。」


響「私は特型だから普通ではないんだ!」


提督「特型ってのはそういう意味じゃないと思うが。」


響「う~・・・。司令官のバカバカバカ!」ポカポカ


某姉のように駄々をこねる。


提督「いてて、やめろって。」


響「知らないもん!」プンスカ


提督「はぁ・・・。」コト


取り上げたものを机に置く。


提督「あまり小言は言いたくないンだがな・・・。」


響「な、なにを・・・。」


響を抱え上げだっこをする。


提督「あのな・・・響たちは少し俺たちより身体の性能が良いだけで殆ど構造は同じなんだ。」


響「えっと・・・。」


提督「響のように未熟な身体にアルコールは毒になる場合がある。それで病気をする可能性だって無いとは言い切れない。」


響「・・・。」


提督「全く呑むなとは言わないが時と場合を選んでな?少しくらいなら付き合うからさ。」


響「・・・。」


提督「・・・響?」


響「司令官は優しいんだね。」


提督「ん?」


響「前の司令官・・・前の前の司令官も飲んだくれの私を気にも留めなかったさ。たかが駆逐艦の私を気遣う司令官なんて初めてだよ。」


提督「・・・バーカ。」


響「なっ、」


提督「たかがじゃないだろ?同じ屋根の下で同じ釜の飯を食うンだ。家族だろ?家族を心配しないヤツなんてどこに居る?」


響「それは・・・。」


提督「だから自分のことをたかがとか言うな。分かったな?」


響「・・・うん。」


提督「でもまぁ、どうしても呑みたいなら酔拳が使えるようになったら考えなくも無い。」


響「酔拳か・・・。なるほどね。」


提督「・・・冗談だからな?」


響「いや、弾薬を使わないで敵を倒し、私はお酒にありつける。合理的だと思うよ?」


自分でも後悔している。


余計な事は言うものではないと。


響が酔拳を習得し天使のような悪魔と深海棲艦に怖がられたのはまた別の話である。


作戦開始


提督「本当に大丈夫なのか?」


初雪「うん、暗号化してるし盗聴はできないよ。」


提督「そんな機械でか?」


タバコの箱くらいの大きさの機械を通し電話線が繋がっている。


初雪「ヲタコンの力、舐めないで。」


提督「舐めるより関心している。そんな小さな機械でよく出来るンだと。」


初雪「ムフー。」


提督「・・・。この番号でいいのか?」


初雪「そう。」


提督「余り関わりたくないが致し方ない。」


浮かない顔でダイヤルを回す。


電話「・・・・・・・・・・・、はい?」


提督「・・・もしもし、大淀さんですか?」


大淀「その声は・・・《提督》くん?」


提督「はい、お久しぶりです。」


大淀「うん、元気にやってた?挨拶もしないで行っちゃうなんてね。」


提督「その節は申し訳ありませんでした。」


初雪(完全に尻に敷かれているね・・・。)


大淀「別に怒ってないわよ。ただ、ちょっと寂しいかなって。」


提督「すみません・・・。」


大淀「だから気にしないで。この番号を知っているって事はそこに初雪ちゃんも居るのよね?」


提督「え、あぁはいそうですね。」


大淀「可愛いでしょ?」


提督「まぁ・・・。」


大淀「手、出しちゃ駄目だからね。私の大切な後輩なんだから。」


提督「滅相もありません、そんな恐れ多い・・・。」


大淀「ふふ、冗談よ。それで、本題は何かしら?」


提督「折り入ってお願いがあります。」


大淀「言ってみて。」


提督「現在、当鎮守府における各資材の備蓄量は最低限以下です。このままでは運営が危ぶまれます。」


大淀「・・・私にどうしろと?」


提督「他の同規模の鎮守府と支給量に差があるのは一目瞭然です。そこでその差を是正して頂けないでしょうか?」


大淀「・・・兵站法14条、各鎮守府及び泊地ならびにその他の施設への適正なる資材の支給を怠ってはならない。15条、その支給量は施設の規模に応じ決定する。16条、戦果により支給量を増減する場合がある。この条文は知っているわよね?」


提督「はい。」


大淀「必要量に及ばないなら14条と15条に違反しているわ。だけどネックなのが16条ね。ここ3年間、戦果が全く無いならば引かれるのは当然のこと。」


提督「お言葉ですが16条で引かれ、14条に違反となるならば矛盾してませんか?」


初雪(面倒そうな話、眠くなってきた・・・。)


大淀「そう、そこ。この軍規は開戦前と開戦直後に色々変わったわ。よくよく考えると矛盾だらけなの。」


提督「でしたら・・・。」


大淀「ええ、私のほうで何とかするわ。」


提督「有難うございます。」


大淀「その代わり今度一緒にお出かけでもしましょ?」


提督「・・・喜んでお供致します。」


大淀「全然喜んでいるように聞こえないのだけど。」


提督「・・・気のせいですよ。大淀さんのような美しい方と並んで歩くなんて申し訳ないとは思っておりますが。」


大淀「あら、お世辞も上手くなったのね。」


提督「決してお世辞ではありませんので・・・。」


大淀「そういうことにしておいてあげる♪ あと初雪ちゃんとお話したいから変わってくれるかしら?」


提督「わかりました。初雪、大淀さんだ。」


初雪「うぇ!? ・・・もしもし?」


大淀「初雪ちゃん?大淀です。」


初雪「何か・・・用?」


大淀「ううん、初雪ちゃんの声が聞きたかっただけ。そっちの暮らしはどう?」


初雪「何もないところだけどみんなと楽しくやってる・・・かな?」


大淀「そう、良かった。それとね吉松さんのことなんだけど。」


初雪「部長がどうかしたの?」


大淀「昨日、辞表を出したの。」


初雪「え・・・どうして?」


大淀「初雪ちゃんが異動になって直ぐに体調を崩してそれ以降入退院を繰り返してたわ。」


初雪「・・・大丈夫なの?」


大淀「自分ではまだまだ若いものには負けないって言ってたらしいのだけれど体力の限界みたいだったわ。」


初雪「そう・・・。」


大淀「一応連絡先を聞いておいたけど教える?」


初雪「・・・いい。」


大淀「でも・・・。」


初雪「聞きたくない、聞く資格がないよ・・・。」


大淀「そう、ごめんなさい余計なことを言って。」


初雪「ううん・・・。」


大淀「初雪ちゃんのことだからこの電話も暗号化していると思うけど解析がかかり始まっているわ。」


初雪「そうだろうね。」


大淀「久しぶりで名残惜しいけど今日はこのくらいにしておきましょ?」


初雪「うん、わかった。」


大淀「それと、《提督》くんによろしく伝えてくれないかしら?」


初雪「任せて。」


大淀「それじゃまた。」


初雪「また。」


提督「なんだって?」


初雪「よろしく、だって。」


提督「それだけ?」


初雪「それだけ。」


提督「そ。だがあの腹黒様がこうもすんなりと聞いてくれるなんて予想外だった。」


初雪「なんか丸くなった感じがする。」


提督「だがあれは絶対裏があるな。初雪、引き続き頼むぞ。」


初雪「うん! ・・・ねぇ?」


提督「ん?」


初雪「なんで大淀さんと話すときは敬語なの?」


提督「・・・それを言わせるの?死ぬぞ。(俺が)」


初雪「なんかごめんなさい。」


提督「・・・気にするな。」ナデナデ


初雪「だから子供扱いしないでって///」


姉妹


この役立たず。


疫病神。


そんなに自分が大事なのか。


駆逐艦なら代わりは山ほど居る。


異動しては悪口を言われ、異動しては暴力をふるわれた彼女。


提督、いや人間に対して不信感が募り遂に怒りが爆発し手を挙げた。


幸いかどうか分からないが上官に手を挙げ解体にならずに済んだ。


いっそ解体された方がいいと思っていた彼女にはなお艦娘でいることに苦痛を感じた。


それが狙いだったのかも知れない。


そんなある日、小さな背嚢だけの荷物を持ち彼女はここへやって来た。


目に光はなく夢も希望も感じられない荒んだ顔だった。


?「君が****か。話は聞いている。」


*「・・・。」


?「見ての通り司令は居ないので私が代わりを勤めている。」


*「・・・そう。」


?「何も無い所だが希望に添えるよう努力はする。何か要望はあるかい?」


*「なら・・・・・して。」


?「ん、すまないが聞こえなかった。」


*「あたしを殺して・・・。」


?「・・・それは出来ないな。私にはその術を持っていないからな。」


*「・・・そう、言ってみただけよ。」


?「ふむ・・・。要望を聞いておいて言うのも悪いのだが君を秘書艦に任命したい。どうだろうか?」


*「あたしが・・・?なんで。」


?「君の事を早く知りたいしその手を見れば分かる。事務仕事は得意だろう?」


*「・・・なによそれ、でも提督代理なんでしょ?命令なら断らないわ。」


?「命令ではない、お願いだよ。」


*「・・・物はいいようね。まぁ働かざるもの喰うべからず・・・よね。あたしでいいなら使ってよ。」


?「ふふふ、頼んだぞ。」


これが彼女との最初の会話だった。


どこか闇を抱えている様子だったが会話応対は問題なく資料のような暴力をふるう艦娘には見えなかった。


実際、書類整理は私より手際が良い。


掃除や洗濯も率先して引受けココへ飛ばされる理由が見当たらない。


無口で自分から話す事は無かったが声をかけられたら応答はしコミュニケーションもまずまずだったが私には少し冷たかった。


e.g.1


?「なぁ秘書艦さんよ。」


*「なに・・・クソ提督代理。」


?「そのクソ提督と言うのはやめてもらえないだろうか?」


*「嫌よクソ提督。」


?「・・・。それならば私に考えがある。」


*「・・・。」


?「私も君のことをクソ秘書艦と呼ぼう。」


*「・・・勝手にすればクソ提督。」


?「・・・。」


e.g.2


?「本日の課業はこれにて終了だ。解散!」


*「・・・お疲れ様でした。」


?「あいや、待たれい。」


*「・・・なによ?」


?「この後時間はあるか?」


*「無いわよ。お風呂に入るもの。」


?「ならば一緒しよう。」


*「・・・勝手にすれば?」


?「うむ。」


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《脱衣所》


?「****君は綺麗な肌をしているな。」


*「なに見てんのよ変態。」


?「なにとは・・・君だよ。少しやさぐれてはいるがまるで天使のようにかわいい。」


*「はぁ!? バカじゃないのあんた。」


?「確かに頭はあまり良くないが。」


*「いや、そうじゃなくて・・・。」


?「ふむ・・・。そうだ、髪を洗ってやろう。」


*「いい、自分で出来る。」


?「まぁそういわずに。」グイ


*「ちょ、離して!」


嫌がる****の腕を掴みバスチェアへ無理やり座らせる。


?「うむ、コシも艶も申し分ない。普段の手入れが良い証拠だ。」ワシャワシャ


*「・・・。」


?「気持ち良いか?」


*「・・・ちょっと。」


?「そうか。」ワシャワシャ


*「んっ・・・。」


?「どうしたそんな声をだして?」


*「な、なんでもないわよ!」


?「そうか?」


*「・・・。」


*(懐かしい感じ・・・綾姉にしてもらったのいつだったかしら・・・?)


e.g.3


片田舎のココには都会のように遊び場はない。


1900を過ぎると街灯と民家の明かりがポツリとあるだけで真っ暗になる。


自室で本を読み過ごすもの、ラヂオを聞き夜更かしするものそれぞれの過ごし方がある。


だが彼女は夜に弱く2000には眠くなる。


?「では電気を消すぞ。」


*「ええ。」


?「お休み。」


*「お休み・・・。」


?「・・・。」モゾモゾ


*「何であたしの布団に入ってくるのよ、ウザいなぁ。」


?「今日は冷えるからな。君は暖かいから湯たんぽ代わりだ。」ダキ


*「へんなところ触ったら只じゃ置かないからね。」


?「へんなところとは?」


*「うっさい!」ゲシ


?「痛いではないか、お返しだ。」


*「ちょっと、やめっ!だめ・・・だって///」


パジャマの隙間から腋をくすぐる。


?「ふふふ、気持ちいいだろう?」コチョコチョ


*「んぅっ/// お姉ちゃん・・・やめて。」


?「お姉ちゃん・・・だと?」


*「・・・? はっ!」


?「お姉ちゃんか・・・いい響きだな。」ニヤニヤ


*「う・・・うわぁぁぁぁん!」


?「泣くこと無いだろう。」


*「今の゛わ゛すれ゛ろ゛ぉ!」ビュン


鋭い右ストレートを繰り出す。


?「おっと。」


それを難なくかわす。


*「きゃぁっ!?」


勢いあまりベッドの下へ転げ落ちる。


?「大丈夫か?」


*「煩い!」ビュン


またもや右ストレートだ。


?「落ち着け。」バシン


それを左頬で受け止める。


*「あ・・・う・・・。」


?「気は済んだか?」


*「あ・・・・ごめ・・・んなさい。」


?「謝るのは私のほうだ、すまなかった。」


*「うぅ・・・。」


大粒の涙が零れ落ちる。


?「・・・。」


無言で****を抱きしめ横になる。


?「調子に乗ってすまなかった。」


*「ううん・・・あたしが悪いのよ。」


?「久々に姉と呼ばれて嬉しかったのだ、許してくれないか。」


*「でも・・・提督には姉妹が沢山いた・・・ンじゃないのよ・・・?」


?「ああ居たさ。だが、雪風以外は沈んでしまったよ。」


*「・・・ごめんなさい。」


?「君が気に病む必要はないことだ。」


*「・・・提督は悲しくないの?」


?「それは悲しかったさ。でもいつまでも悲しんでいるわけにも行かない。十分悲しんだら彼女達の分まで生きねばならないからな。」


*「・・・強いのね。」


?「艦娘として生まれ変わった以上は最初から覚悟は出来ている。それを強いと思うのならそうなのだろう。」


*「ねぇ・・・一つお願いしてもいい?」


?「何だ?」


*「お姉ちゃん・・・って呼んでも良い・・・かしら?」


?「・・・ああ、妹よ。」


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磯風「と言うのが曙が私を姉と呼び始めた理由だ。酒が入っていたからなんでそうなったのかはあまり覚えてないのだがな。」


提督「そうか・・・。雨が降ってきたな。」


磯風「雨?雨など・・・。」


提督「いや、雨だよ。」


磯風「そうか・・・。」


窓から空を見上げるが雨は降っていない。


だが雫が落ちる音は聞こえた。


曙「・・・・こんのクソお姉ちゃん!」ドゴォ


提督「はわわ!」


執務室の扉を粉砕し吶喊してくる。


磯風「曙よ、入るときはノックをしてからだろう?」


曙「そんなのはどうでもいいのよ!あれだけ二人の秘密だって言ったのにそんなに簡単に言いふらすのよ!?」


磯風「そうだったか?」


曙「かぁ~!だからお姉ちゃんは残念美人とか言われるのよ!」


磯風「美人か・・・。少し気分がいいな。」


曙「う~。」


提督「なるほど、ケンカするほど仲がいいとはこのことだな。」



嗜好品


望月「お~い長ち~ん。」


長波「ん、何だ?」


望月「ほい、長ちんが欲しがってたもの手に入ったよ。」


タバコを差し出す。


長波「おぉ~サンキューもっちー。愛してるぜ。礼だ受け取ってくれ。」


懐から紙幣を出す。


望月「いいって、たまたま港に居た兄ちゃんに貰っただけだから。」


長波「もっちー・・・あんたまたヤったのか?」


望月「うん。気持ちよかったよ。長ちんも一緒にどう?」


長波「・・・いや遠慮しておく。」


望月「ヤることヤらないと身体に毒だよ?」


長波「あ、あたしにはまだ早くないか?」


望月「タバコを吸ってる子が何を言うのよ。」


長波「それはそれだろ! んで、今度来た司令官に手はまだだしてないのか?」


望月「うん。見かけはちゃらそうで直ぐ喰えるかな~って思ったんだけど、中は真面目でね。パンツを脱がそうなら全力で拒否られる。」


長波「その判断は正しいと思うぜ?」


望月「あたしの身体じゃ不満なのかな~長ちんみたいにバインバインな子好きなのかな?」ニシシ


長波「はぁ~!?何言ってんのよ!この淫乱メガネ。」


望月「えへへ///」


長波「褒めてないぞ・・・。」


提督「・・・あの、お二方?」


望月・長波「?」


提督「そういう話は本人が居ないところでしてもらうと助かるのだが。」


長波「ああ居たんだ?」


提督「ええ居ましたとも。ってかここ執務室ですが?」


望月「そういえばそうだったかもね。」


提督「はぁ・・・。」


望月「どう?シたくなった?」


スカートをめくり誘う。


提督「全然。」


望月「・・・イ○ポ?」


提督「違うわ!」


長波「・・・じゃぁガチムチ?」


提督「なわけあるか。」


望月「じゃあシようよ~。」


提督「・・・シたら多分消される。」


望月「誰が?」


提督「俺が。」


望月「誰に?」


提督「おおy・・・ゲフンゲフン。・・・幼馴染?」


望月「へぇ・・・その幼馴染とはヤったの?」


提督「黙秘する。」


望月「黙秘は肯定とみなすけど?」


長波「ヒュー、やっぱ男だねぇ。」


提督「煩せぇマセガキ共!ったく黙ってれば可愛いものの・・・。」


望月「ふふん♪」


長波「なんでドヤ顔なんだよ・・・。」


提督「・・・望月、言っても無駄だと思うがそう言うのは大切な人のために取っておきなさい。」


望月「急になんだよ・・・。」


提督「今の望月の身体にそれは負荷がかかりすぎる。場合によっては取り返しのつかない事になるだろう。」


望月「・・・。」


提督「将来愛せる人に巡り合ったときに渡しても遅くないと思うがな。」


長波(意外とロマンチストだな。)


望月「そんなの居ないよ。」


提督「なぜ言い切れる?」


望月「あたしは艦娘だよ?身体に興味はあっても、その・・・ケッコンとかまで行かないでしょ・・・。ましてや愛し合うなんて・・・。」


提督「そんなの心配するまでないだろ?」


望月「へ?」


提督「艦娘だろうが人間だろうが俺は好きになったらとことん付きまとうね。」


長波「なにそれきもい。」


提督「失礼な! だがこれだけは言わせて貰う。艦娘と人間の差なんて愛があれば関係ないのだ!」


目を輝かせ力説する。


望月「・・・あははは、意味分んないし!」


腹を抱えて笑う。


提督「望月?」


長波「もっちー?」


望月「そっか、司令官はそんな人なんだぁ、ははは。なんだがあたしがバカみたい。」


提督「ああバカだ。だがバカ故に学ぶことも多い。望月は将来素敵なお嫁さんになると断言しよう。」


長波「言うねぇ。」


望月「じゃあじゃあ、司令官が貰ってくれる?」


提督「ナヌ!?」


長波「に゛ゃ!?」


望月「あたしさ、バカやって色んな司令官に見捨てられたんだよね。でもこんなにもあたしのことを考えてくれる人初めて。キュンときちゃった。」


提督「いや~ははは・・・それはどうも。」


望月「あたし決めた!一生司令官についていく!」


提督「慕ってくれるのは嬉しいが・・・。」


望月「さっきの言葉は嘘なの・・・?」


提督「嘘ではない!」


望月「!?」ビク


提督「す、すまん。・・・10年。」


望月「へ?」


長波「ん?」


提督「この戦争が終わるまで5年。望月が成長し大人の身体になるまで5年。計10年、その気持ちが変わらなかったら考えておこう。」


望月「・・・うん!約束だからね!」


提督「お、おう。男に二言はない。」


望月「♪」


長波(・・・ナニガドウヤッテドウシテコウナッタ?コンナノゼッタイオカシイ・・・かもな。)


定義


コンコンコン


律儀に3回ノックをする。


この鎮守府において3回するのは一人しか居らず直ぐに誰が来たかが分る。


不知火「不知火です。入っても宜しいでしょうか?」


提督「ああ。」


不知火「失礼します。おや、秘書艦殿も居られたのですね。」


磯風「うむ。臨時資材搬入の件で計画を建てていたところだ。」


不知火「そうですか。司令、ご所望されていた海図です。」


提督「おぉ、ありがとう。・・・ふむ、なるほどね。」


不知火「どうかされましたか?」


提督「いや、なんでもない。」


不知火「はぁ。」


磯風「時に不知火。」


不知火「・・・。」


鋭い眼光で睨む。


不知火「・・・いくら秘書艦殿と言いましても呼び捨てを許可した覚えはありませんが?」


磯風「そうだったか?まぁ同じ陽炎型だ、固い事を言うでないヌイちゃんや。」


殺気立つ不知火に対してヘラヘラと微笑む磯風。


不知火「*******のですか?」


独り言のように言う。


磯風「ん?」


聞こえなかった磯風に一瞬の隙が生まれた。


不知火「シズメッ!」


電光石火の勢いで磯風に詰め寄り胸倉を掴みつるし上げる。


磯風「ぐぅ・・・!」


提督「不知火止めろ!」


不知火「不知火に何か落ち度でも?侮辱されたので制裁を加えるだけですが。」


磯風「かはっ・・・!」


襟で首が絞まる。


提督「命令だ!今すぐ磯風を離せ!」


不知火「・・・御命令とあらば。」


渋々手を離す。


ドン!


磯風は重力に逆らわず床に倒れる。


すかさず駆け寄る。


提督「磯風、大丈夫か!?」


磯風「・・・ああなんとか生きているようだな。」


提督「そうか・・・。全く、お前達はどうして仲良くできないンだ。同じ鎮守府(とこ)の仲間だろう?」


磯風「それはそうだが・・・。今のは私が悪かった、この通りだ詫びよう。」


頭を下げる。


不知火「・・・。」


無言でにらみつける。


提督「不知火もそんな事でいちいち怒ってたらきりが無いぞ?」


不知火「そんなこと?」ギロ


提督「ああそんなことだ。ヌイちゃんなんて可愛いと思うぞ?」


不知火「なっ、何を!?」


可愛いといわれ動揺する。


提督「俺なんかクソ提督とかT督とか七光りとかろくなモンじゃねえし少し羨ましいな。」


不知火「はぁ///」


身体がムズムズしているようだ。


提督「それに同じ姉妹同士・・・」


禁句を言ってしまった。


2人が反応する。


不知火「同じ・・・ではありません。」


磯風「・・・ああ、そうだな。」


資料を何度も読み返していたのに口が滑ってしまった。


磯風「同じ陽炎型でも実の姉妹ではないのだよ。」


知っている。


なんて自分は愚かなんだ。


不知火「司令は御存知無かったのですか?」


提督「あ・・・いや・・・。」


不知火「そうですか。」


何かを察したようだ。


磯風「私の姉妹は殆ど戦死したよ。不知火と出合ったのも此処が初めてだ。」


不知火「私の方の磯風ももう居ません。」


同じ陽炎型でも血のつながりは一切無い。


陽炎型の艤装に適合するということで入隊させられたまでだ。


幸いかどうか分らないが磯風の方は姉妹や従妹など一族の面識があった。


一方不知火は多くの実姉妹のうちから只一人選ばれた。


現在二人の状況を簡単に言うと陽炎型の艤装を使える少女が識別名だけで呼ばれ同じ部隊に居ると言うことだ。


提督「・・・すまない。」


不知火「司令が気にすることではありません。自ら志願したのですから轟沈など覚悟はとうの昔から覚悟していました。」


磯風「そうさ。沈んでしまったのなら仕方が無いことだ。だが彼女のようにまた逢えるやもしれんがな。」


提督「彼女・・・?」


磯風「目の前に居るではないか。」


提督「冗談はよしてくれ・・・。なぁ不知火?」


不知火「冗談ではありませんが?」


提督「おいおい・・・曰くつき物件なのか・・・ん?」


袖を何かに引っ張られる感触がし振り向く。


?「夕立、お呼びじゃないっぽい?」


涙目で見つめる。


提督「いぎゃあぁぁぁぁ!?」


今まで見えていなかった彼女が急に見え驚きのあまり飛び上がる。


夕立?「っぽい!?」


磯風「そんなに驚く事はないだろう?」


不知火「・・・。」


提督「ゆ、ゆゆゆゆゆ、幽霊! 磯風、塩だ!塩持ってきてくれ!」


磯風「任せておけ。」


夕立?「磯風ちゃん!」プンスカ


磯風「ははは、冗談だ。そうムキになるな。」ナデナデ


夕立?「♪」


提督「ちょっ、まっ・・・誰か説明を!」


磯風「何を慌てているのだ。幽霊でも見たような顔をして。」


提督「幽霊だろ!?」


夕立「夕立は幽霊じゃないっぽい!」がるる


不知火「・・・どちらかと言えば幽霊では?」


夕立「不知火ちゃん・・・。」シュン


不知火「ですが大切な仲間に違いありません。」


夕立「ヌイちゃん大好き!」ダキ


夕立に抱きつかれ満更でもない顔をする。


磯風(なぜ私がヌイちゃんと言うのは駄目なんだろう・・・。)


提督「・・・。ボノ!ボノちゃんは居らぬか!?」


こいつらでは埒が明かないと判断し曙を呼ぶ。


曙「うるさいわね、ここに居るわよ。」


丁度扉から顔をのぞかせる。


提督「ナイスタイミング!説明を3行で頼む!」


曙「説明?何のですか?」


提督「この幽霊!」


夕立を指差す。


曙「・・・ああ夕立ちゃんね。一つ、夕立ちゃんは轟沈しています。二つ、害はありません。三つ、撫でてあげると喜びます。以上よ。」


提督「・・・はい?」


曙「まぁあたしにも詳しい事は分らないわ。どうして轟沈したのに何事も無い・・・無くはないけど健在しているのか、ね。」


夕立「ぽい♪夕立、いつも提督さんの近くに居たのに気付かないしちょっと寂しかったっぽい・・・。」


提督「いつも・・・?」


夕立「そうだよ。夜も提督さんが安心して寝られるように警備してたの。」


提督「そうなのか?・・・・そうか、床が軋む音がしていたが足音だったのか。」


夕立「それに。」


提督「それに?」


夕立「もっちーと脱がし合いしててなんか楽しそうだったっぽい!」


提督「ぶっ!?」


磯風「ほう。」


不知火「・・・。」


曙「・・・。」


提督「な・・・何を言っている・・・?」


夕立「何って、裸になってもっちーが馬乗りしてたっぽむっ!?」


夕立の口を押さえる。


提督「ちちちち違うぞ!あれはだな!」


曙「何も言ってないわよ。」


磯風「まぁ溜まるのは仕方ないな。」


提督「誤解だ!?」


不知火「・・・・です。」


提督「え?」


不知火「どうしてもと言うのであれば不知火の身体をつかっても結構ですが?」


提督「な、ななななな何を言い出すンでしょうかねこの子は!?」


不知火「司令を慰めるのも私達艦娘の役目です。」


夕立「ぷはぁ。俗に言う愛玩動物っぽい!」


曙「うん、全然違うわね。」


磯風「そうだな。」


夕立「ぽぃ・・・。」


提督「第一、あれは望月に襲われそうになって抵抗したただけだし、お前達に手を出すつもりは毛頭ない!」


全員「・・・。」


磯風「それはそれで傷つくな。」


曙「まるで女としての魅力が無いような言い方ね。」


提督「だーかーらー!へんな方向に解釈しないでくれ。・・・って何故脱ぐ!?」


不知火「ですから処理の-」


提督「分った!皆まで言うな。気持ちだけ貰っておく!」


不知火「ですが・・・。」


曙「そのへんにしておきなさいな。」


溜息をつき制止する。


提督「ありがとう、助かった。」


耳元でささやく。


曙「べ、別にアナタの為じゃないわ。煩いから仕方なくよ。」フン


夕立「曙ちゃん赤くなってるっぽい~。」


曙「なってないわよ!」


磯風「ふむ、これがツン=デレと言うものか。」


曙「う~・・・お姉ちゃん達のバカァ!」


提督「あ、おい。」


部屋を飛び出すように逃げる。


不知火「全く、素直になればいいものの。」


夕立「それをヌイちゃんが言うの~?」


不知火「何か?」ギロ


鋭い眼光で睨む。


夕立「ぽいっ!?に、逃げるが勝ちっぽい~!」


すっと半透明になり消えてしまった。


提督「・・・やっぱ幽霊じゃん。」


磯風「だが食事も摂れるし物を持てる。不思議なものだ。」


不知火「・・・。」ムス


提督「そんなふくれっ面すんなよ。可愛い顔が台無しだぞ?」


不知火「からかうのはよしてください。」


提督「からかってなんかないよな。なぁ?」


磯風「ん?ああ、凛々しい顔立ちの中に可愛さもあるな。」


不知火「っ! 沈めっ///」


磯風「のわっ!?」


飛び掛り馬乗りになる。


提督「だから止めろって言ってるの!」


不知火「離してください!」


提督「だーめ。」


ネコを抱くように背中からかかえ引き離す。


提督「磯風、ここは何とかするから撤退だ。」


磯風「ふむ・・・お言葉に甘えて“転進”させていただくとしよう。」ガチャ


速やかに撤退、いや転進し二人が取り残される。


不知火「待ちなさい!」ジタバタ


後を追いたいが首根っこを掴まれどうにもならない。


提督「おっと、暴れんなって。」


不知火「ですが!」


提督「不知火!」


不知火「!?」


提督「・・・落ち着いたか?」


不知火「えっ・・・はい。」


提督「磯風にも言ったがどうして仲良くできないンだ?夕立と同じようにできないのか?」


不知火「それは・・・。」


提督「あえて言うが本当の姉妹でないのは知っている。だが、同じ所で暮らす仲間だろ?家族だろ?」


不知火「・・・。」


提督「・・・言いたくないのなら-」


不知火「・・・です。」


提督「ん?」


不知火「不知火は・・・怖いのです。」


提督「怖いってなにが?」


不知火「大切な人を失うことです。ここの彼女は見ず知らずの不知火にとても良くしていただきました。」


提督「ふむ。」


不知火「しかし親睦が深まった彼女を失ったとき、それは不知火には耐えられません。」


提督「・・・。それは無用な心配だな。」


不知火「えっ・・・?」


提督「俺が此処に来たからには轟沈者なんか出させないし他の所に異動させないね。」


不知火「司令・・・。」


提督「それとな、俺と不知火は見ず知らずか?」


不知火「・・・いえ、違うかと。」


提督「じゃあ磯風とも見ず知らずじゃないだろう?だから遠慮すんな。ケンカをするなとは言わないが程ほどにな。」


不知火「・・・はい。」ギュ


うつむきながら袖の裾を掴む。


提督「泣くことないだろ。」


不知火「泣いてなんかおりません。」グス


そっと不知火を抱き寄せ頭を優しく撫でる。


提督(成程、寂しさを隠す為に強気で居たンだな・・・。)


今日の一件の後、不知火の磯風に対する感情が穏やかになったのは言うまでもない。


ただ、急にどうしてと不思議に思う磯風の姿があったのもしかり。


援軍


A「話には聞いてましたけど本当に何もありませんね。」


B「でもとても素敵な景色ですね。山に積もった雪がまるで外国に居るかのようです。」


A「ですねー。東京だとこんなのはなかなか見れませんからね。」


一日あたりの平均利用者数が一人の駅に今日は珍しく二人もの人影がある。


改札を抜けおもむろにこの町で一番大きいであろう街道を歩く。


A「確かこの道をまっすぐ行けばあるはずですが・・・。」


B「ここじゃないですか?」


A「いえこんなに立派じゃないですよ。あれでは?」


B「これ・・・ですか?少しボロ・・・じゃなくて古いですね。」


A「うん、ここですよほら。消えかかってますが***鎮守府と書いてあります。」


B「本当だ。ごめんくださぁ~い!」


返事が無い。只の空き家のようだ。


A「留守でしょうか?」


B「え~誰かは居ると思いますけれど。ごめんくださぁ~い!」


初雪「お客さん・・・?」


物陰からヌッっと顔をのぞかせる。


B「あっ、ここの艦娘さんですか?」


初雪「そう・・・だけど、貴女は?」


B「申し遅れました、本日着任しました練習巡洋艦鹿島と申します。コチラは-」


A「明石だよ。初雪ちゃん久しぶり!」


初雪「ひさしぶり♪」


鹿島「二人はお知り合いなのですか?」


明石「はい、本営勤務のとき色々助けてもらったのよ。」


初雪「えへへ。」


鹿島「そうでしたか。初雪さん、提督さんはいらっしゃいますか?」


初雪「うん居るよ。案内するね。」


鹿島「ありがとう御座います。」


思わぬ来客にテンションが上がり鼻歌を奏でつつ執務室へと案内する。


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コンコン


初雪「司令官、お客さん連れてきた。」


提督「初雪か?お客さん・・・?まぁ良い入ってくれ。」


初雪「どうぞ。」


明石「失礼します!」


鹿島「失礼します。」


提督「・・・は?」


初雪「・・・?」


提督「ちょ・・・ま・・・。あ、明石は分るが何で・・・、何故に?」


鹿島「ふふふ、お久しぶりですお兄様。」


初雪(なん・・・だと・・・!?)


明石「ちょっとぉ妹さんにそれは冷たすぎやしませんかぁ?」


鹿島「いいのですよ明石さん。お兄様は少し照れ屋さんなのです。」


提督「ちがわい!」


初雪「司令官!」


提督「なんじゃ!?」


初雪「説明を求む!」


提督「何の!?」


初雪「ん!」


鹿島を指差す。


提督「・・・ワタシアノヒトシラナイアル。」


鹿島「お兄様!?」


提督「ダレカトカンチガイシテルネ。」


鹿島「そんなぁ~!意地悪しないでください!」ポカポカ


両手をグーにして叩く。


提督「アウチ!」


明石「・・・ぷっ、ははは!」


初雪「明石さん・・・?」


明石「いや~昔からこの二人は変わらないねぇ。初雪ちゃん、提督と鹿島ちゃんは兄妹なんですよ。」


初雪「リアリィー?」


提督「・・・イエス。」


初雪「何で言ってくれなかったのさ。」


提督「だってこれじゃん・・・。」


鹿島「?」


提督「ノーソンの制服着てるンだぞ。艦娘なのに。」


鹿島「・・・いけない!着替えるの忘れてました!」


提督「天然と言うか抜けていると言うか恥ずかしい。」


明石「女の子はちょっと抜けている方がカワイイのですよ、ねー?」


鹿島「ふふふ、ありがとう御座います♪」ニコ


提督(そこはバカにされていると気付けよ・・・。)


初雪(あ・・・可愛い。)


提督「て言うか辞令は?明石は申請していたから届いているがお前のは無いぞ?」


鹿島「それならここにあります。」


鞄を開き封筒を差し出す。


提督「どれどれ・・・。」


提督(お兄様お兄様と少し煩いのでそちらに異動させます、以上。おおよど。)


提督「・・・。」


鹿島「・・・?」


提督「来てしまったのは仕方ない。くれぐれも余計なことをするなよ?(また爆発でも起こされたらたまったモンじゃない・・・)」


鹿島「・・・?はい!お兄様のお役に立つことができるように一生懸命頑張りますね!」


明石「ほうほう、やっぱりいい子ですねぇ~。」


提督「どこがだよ・・・。」


初雪(艦娘の妹が居ると言う事は司令官は艦息(?)という可能性が微レ存?)



刺客


提督「うぃ~、喰った喰った。」ゲフ


夕立「提督さんおじさんっぽい~。」


提督「うるせー。」


夕立「それにしても鹿島先生の作ったご飯、とても美味しいっぽ~い。」


提督「うむ、悔しいが料理には文句のつけようが無い。」


夕立「とっても素敵なのになんで提督さんは先生に冷たいの?」


提督「冷たくねぇよ、普通だ普通。」


夕立「でも先生少し寂しそうだったっぽいよ。」


提督「んなわけあるかアイツに限って。」


夕立「ふ~ん。」


提督「てか先生ってなんだ?」


夕立「響ちゃんが間違って先生って呼んだらそのままあだ名になったっぽい。」


提督「また響か。酔ってたのか?」


夕立「ううん、素で間違ったみたい。」


提督「あっそ。そうだ夕立、もう夜間警備はいらないから消灯時間になったら寝て良いからな?」


夕立「でも~。」


提督「なにこんな所まで態々俺の命なんか奪いに来る奴なんかいないだろう。夜勤組もいるし大丈夫だ。」


夕立「う~~。条件があるっぽい!」


提督「なんだよ?」


夕立「夕立と一緒に寝るっぽい!」


提督「寝言は寝てから言えよ。じゃあな。」バタン


夕立「!?」


夕立を廊下に残し寝室へと入る。


夕立「いじわる~!」


提督「良い夢見ろよ~。」


扉越しに叫びあう。


その声を聞き通りかかった響が加わる。


響「夕立、大声を上げてどうしたんだい?」


夕立「響ちゃん!聞いて、提督さんが中に入れてくれないの!一緒に寝ようって言ったのに。」


響「あ~、それはだね。自家発電(意味深)をするからね。それを見せたくはないのだろう。」


夕立「自家発電?なにそれ、新しい遊びっぽい?」


響「自家発電と言うのは・・・」


提督「黙って部屋に戻れ!」


響「っ!」


夕立「ぽみゃ!?」


扉を開けチョップを脳天に食らわせる。


二人「・・・。」


響「戻ろうか?」


夕立「うん・・・。」


渋々部屋へと向う。


提督「ふぅ、やっと静かになった。報告書でも書きますかね。」ジッ


マッチでアルコールランプに火を燈す。


夕食前に残っていた書類を一気片付けよう。


と思っていた時が俺にもありました。


机の片隅に前任の提督が残していった小説があり好奇心から手を伸ばし読み始めてしまった。


これがなかなかに面白く、書類作成そっちのけで読み耽る。


イスに座ったままでは身体が痛くなるのでベッドの上で横になる。


満腹での読書は眠くなるのは既に承知。


残りは明日作ればいいと面倒くさくなり睡魔に負けまぶたを閉じる。


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どれくらい時間が経ったのであろうか。


降りしきる雨の音で意識が微かに戻る。


提督「ん・・・雨・・・か。」


就寝中の雨の音は心地が良い。


また深い眠りにつこうとしたときだった。


鋭い殺気と共に何者かが提督目掛けて突進してきた。


提督「甘い!」


持ち前の運動能力と感で回避する。


ランプの火が消え真っ暗な部屋の中で微かに窓の外の光が刃物に反射する。


提督(刃渡りは15センチ弱、出刃包丁だな。)


一瞬で武器を判断する。


?「なっ!?」


一撃必中だと思っていたのだろう。


かわされ動揺する。


提督「ふふふ、俺を舐めてかかっちゃあ困るな。怖いのか?来いよ。」


挑発する。


?「くそっ!」


提督「おっと。」


腹部や喉もとを目掛けて刺すが空を切るのみに終わる。


提督「なんだお終いか?来ないならコッチから行くぞ!」


?「あうっ!?」


電光石火の勢いで詰め寄り包丁を叩き落しそのまま足をかけ倒し柔道技の送襟絞をお見舞いする。


提督「観念しろ!」


?「かっ・・・くぅ・・・。」


力強く絞められ悶絶する。


提督(・・・やけに抵抗が無いな。それになんだか柔らかな感触が・・・。)フニ


?「んぅ///」


提督(それに男の声ではないよな・・・。)


怪訝に思いつつも締め上げる。


?「んぐっ・・・!」


化けの皮を剥ごうと電気のスイッチを入れるため立ち上がろうとしたときだった。


夕立「提督さん、物音がしたけど何かあったっぽい?」


扉の向こうから声がする。


さすがと言うか鋭くて助かる。


提督「夕立か、ナイスタイミング。入って電気のスイッチを入れてくれ。」


夕立「分かったっぽい!」


?「待って!」


制止も虚しくパチンと音がし部屋に明かりが燈る。


提督「さて誰がこんな真似を・・・時雨?」


夕立「あー!時雨ちゃん、居ないと思ったら此処に居たっぽい!」


時雨「くっ・・・!」


普段大人しい彼女とは別人のような、まるで中南米の資産家に仕えるメイドのようなをした時雨の姿があった。


提督「・・・。」


時雨「・・・。」


夕立「・・・?」


提督「時雨・・・どうして」


時雨「煩い!僕を殺せ!」


言葉を遮るように叫ぶ。


夕立「ぽひぃ!?」


提督「・・・。」ゴン


時雨「・・・へ?」


無言で拳骨をお見舞いする。


提督「俺はな、時雨も含めて家族だと思っていた。その家族を殺せといわれて殺す奴が居ると思うか?」


時雨「・・・だっ、黙れ!君は家族なんかじゃない!」


夕立「・・・。」


提督「・・・俺の事は嫌いでも別に構わないがそんなに嫌悪感を抱く理由を教えてくれないか?」


時雨「君はっ・・・!僕の大切な人に暴力を振るったじゃないか!」


提督「・・・いつのことだ?」


時雨「はん!寝たら忘れるのかい!夕食後、夕立を叩いたそうじゃないか。」


提督「あれか・・・。叩いたといえば叩いたが。」


時雨「ほらやっぱり。どうせ僕達艦娘のことなんかストレスのはけ口くらいにしか思っていない---」


夕立「時雨ちゃんいいかげんにして!」


時雨「・・・夕立?」


夕立「あれは夕立達が提督さんの邪魔をしたから怒られて当然のことなんだよ!」


時雨「でも・・・。」


夕立「でもじゃない!いままでこんなにみんなのことを大切に思ってくれた提督さんに出会ったことあるの!?」


時雨「・・・。」


夕立「夕立は一度沈んでるから今までの記憶はそんなにないけれど提督さんのことが大好きなの!提督さんを傷つけるようならいくら時雨ちゃんでも許さない!」


時雨「・・・。」


提督「・・・。」


夕立「どうしてもって言うならば夕立を倒してからにして。」


時雨「・・・分ったよ。僕の負けだ。」


遂に観念し溜息をつく。


抵抗の意思は無いとみなし時雨を開放する。


時雨「・・・。」


提督「・・・。」


夕立「・・・。」


しばし無言で見つめあい時雨が言葉を発する。


時雨「・・・大丈夫だよ、もう何もしないからさ。解体するなり殴るなり好きにしてよ。」


提督「上官を殺害しようとした罪は本来ならば重いものだ。」


時雨「覚悟はできているよ。」


提督「そうか。例外なくここでも罰を与えねば他のものに示しがつかない。」


時雨「・・・。」


夕立「提督さん・・・。」


提督「時雨、お前にはその顔は似合わない。」


時雨「?」


提督「その殺人鬼みたいな顔だ。よって毎日最低1時間は笑顔をつくる練習をやれ。」


時雨「ちょっと何を言っているか分らないのだけれど。」


提督「こうやって鏡に向ってだな。」


時雨「ら、らりほ?(な、なにを?)」


頬に手をあて引っ張る。


提督「女の子は笑顔が一番だからな。あ、それと毎日成果のレポートを出すように。」


時雨「へぇ~(えぇ~)」


提督「夕立、監視員役を頼めるか?一応罰だから厳正にする必要があるからな。」


夕立「うん、任せてっぽい!」


提督「お、口調が戻ったな。」


夕立「夕立、おかしかったっぽい?」


提督「い~や、格好よかった。」


夕立「ホントッ!?もっと褒めて褒めて!」


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数日後


時雨「ん~。」


時雨「んぅ?」


鏡に向かい難しい顔をしながら頬を引っ張る。


夕立「時雨ちゃん変な顔~。」


時雨「・・・。」


夕立「そんなんじゃ何時まで経っても(懲罰が)終わらないっぽ~い。もっと自然に笑えないの?」


時雨「いや満面の笑みのつもりだけれど?」


夕立「え~、前に読んだ漫画の“たいゆーきせいめいたいこんたくとよういんたー”なんとかみたいだよ。」


時雨「なんだいそれは?」


夕立「いつも無表情っぽい人物だよ。時雨ちゃんは素(もと)が可愛いのにそれじゃあ勿体無いっぽい!」


時雨「可愛い?僕が?冗談はよして欲しいな。」


夕立「冗談じゃないっぽい!こんなに可愛い下着を穿いているし相乗効果でとっても魅力的っぽい!」ヒラリ


時雨のスカートを捲る。


時雨「なっ、何をするのさ!?」


夕立「そう、それ!」


時雨「へ?」


夕立「恥じらいの表情が自然と出ているっぽい。」


時雨「あ・・・。」


夕立「感情を閉じ込めておくのは辛いでしょ?」


時雨「・・・。」


夕立「夕立と違って時雨ちゃんはまだ轟沈していないからそんなんじゃ勿体無いし日常が楽しくないでしょ?」


時雨「・・・。」


夕立「沈んでから後悔しても遅いからね?」


時雨「・・・。夕立。」


夕立「っぽい?」


時雨「ありがとう。やはり君には敵わないよ。」


夕立「?」


時雨「もっと自分に素直にしてみるよ。」


微笑みながら夕立を見つめる。


夕立「うん!それじゃあ早速報告に行くっぽい!」


時雨「えっ!?」


夕立「その笑顔を提督さんにも見せてあげないと。善は急げっぽ~い!」


時雨「ちょっとまっ-----」


抵抗もむなしく引きずられ執務室まで連行された。


いざ見せるとなると恥ずかしくなりそこから逃げ出したのは言うまでもない。



工作艦


春が目の前に迫り陸ではすごしやすい日々が続いた。


それとは逆に海では強風が吹きうねりもあり防波堤から外側に行くのは難しかった。


艦隊行動は自然と座学となり我が妹の鹿島が教鞭を振るっていた。


そちらを任せ港の片隅にある掘っ立て小屋に足を運ぶ。


提督「邪魔するぞー。」


ギィっと音がする動きの渋いドアを開ける。


明石「あっ、提督。いらっしゃい。」


提督「よ、順調か?」


明石「まぁそこそこですね。錆び付が思ったより酷いですが演習になら出ても問題ないでしょう。」


提督「ふむ。実戦には無理そうか?」


明石「そうですねー・・・出力が伸びませんしオーケーとは言えませんね。」


提督「分かった。」


明石「でも今週中には全ての整備が終わる見込みです。」


提督「ん、そうか。悪いな任せきりで。」


明石「いえいえ。これが私の仕事ですからね。」


提督「そういってもらうと助かる。そうだ、ほい。」


明石「何ですかこれ・・・チョコ?」


提督「疲れてる時には甘い物でもと思ってな。」


明石「え・・・でも。ここでは甘味が貴重なのでは?」


提督「気にするなって自費だし。」


明石「自費って・・・悪いですよぉ。」


提督「どうせ使い道のない金だ。ならばここの皆の為に使いたい。」


明石「提督・・・ありがとうございます。」


提督「ああ。・・・ん?」


ゴォォと風の音がする。


明石「今日は突風に注意したほうがよさそうですね。」


提督「そうだな。ここも飛ばされないか心配だ。」


明石「提督、もっと立派な工廠を建ててくれても良いンですよ?」


提督「無茶言うなよ。宿舎だって雨漏りしてるし傾いているのに新築できないンだぞ。」


明石「結構というかかなりボロいですねぇ・・・。」


提督「ボロとか言うな、風情があると言え風情が。」


明石「むー・・・。でも曙ちゃんのコーディネートはすごいと思います。あるものであんなに立派に作りますからねぇ。」


提督「そこは感心せざるを得ない。建物のことで思い出したが明石、風呂を何とかできないか?」


明石「お風呂ですか?」


提督「ああ。一人がやっと入れる大きさなんて入った気がしなくて。」


明石「うーん・・・体を伸ばして入りたいですもんねぇ。」


提督「資金は出すからさ。」


明石「と言われましても、モルタルやセメントは・・・無理ですし。」


提督「木なら?」


明石「木ですか?」


提督「そこらへんに生えてるのを使えば材料費もかからないだろうし。」


明石「まぁ道具さえあればできないことはないと思いますが・・・。でもどうして急に?もしかして一緒に入りたいンですか?」


提督「はぁ?」


明石「昔は一緒に入ってたじゃないですかぁ。提督がどうしてもと言うならばいつでも、ふふ・・・。」


提督「脱がなくて良い。明石に相談した俺がバカだった。じゃあな。」


明石「いけず~。私だって少しは大きくなったンですよ?今なら挟んだり擦ったりサービス(意味深)しちゃいますよ?」


胸に手をあて強調する。


提督「・・・明石さん解体ドックはあちらです。」


明石「さん付けは地味に傷つくからやめてください!冗談ですよ冗談・・・。」


提督「まぁ暫らくは我慢するか・・・贅沢は言ってられんしな。」


明石「すみません私に技術がないばかりに。」


提督「明石の所為ではない、気にするな。話に付き合ってくれたお礼に何か欲しいものはないか?」


明石「ふぇ・・・?いいですよお礼なんて。」


提督「いや、艤装を直せるのが明石しか居ない今、ここの運営は明石に係っていると言っても過言ではない。建て替えは無理だが何か無いか?」


明石「急に言われましても・・・バイク。バイクがあれば助かります。」


提督「バイクか・・・。んー、べらぼうに高いわけではないが・・・車じゃ駄目か?俺のでいいならやるが。」


明石「いや~二輪免許しか持ってなくて。私、体力があるとは言えませんし移動用の足でもあれば嬉しいかなって。」


提督「なるほど・・・、分った。直ぐにでも手配しよう。」


明石「本当ですか!?ありがとう御座います!」


提督「車種は何でも良いか?」


明石「はい!言ってみるものですねぇ~。」


まるで子供のようにはしゃぐ。


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数日後


提督「明石~居るか~?」


工廠に足を運ぶ。


明石「は~い居ますよ~。どうかしましたか?」


提督「おお居たか。ちょっちいいか?」


不敵な笑みで手招きをする。


明石「ん、なんでしょうか?」


手にしていた工具を置き小屋の外へ出る。


するとそこにはご丁寧に布が覆いかぶさった何かがあった。


提督「ふふふ・・・待たせたな!」


勢い良くその布を剥ぎ取る。


明石「へ・・・?」


提督「リクエストにあったバイクだ。どうよこのいかしたキャタピラは?」


明石「・・・。」


提督「あれま、お気に召さなかったか?」


明石「・・・・・・提督ぅ!」


提督「お゛ぅ!?」


明石「愛してます!もうっ・・・最ッ高ですよ!」フンス


鼻息を荒くし興奮する。


明石「安定性は抜群ですし物を積めて牽引までできるって神器みたいじゃないですか!」


提督「よ、喜んでもらえて何よりだが少し落ち着こうか。」


明石「これが落ち着いていられますか!見た目はゴツくても二輪免許で運転できるんですよ!?」


提督「どうどう。」


明石「それにしてもケッテンクラートなんてよく見つかりましたね。本国でもそんなに生産数が多いわけじゃないのに。」


提督「同級生で外務省務めの奴から融通してもらったンだ。どうせ乗らないし有効活用してくれるなら喜んで提供する、だと。」


明石「何気に交友関係広いですもんねぇ。」


提督「何気とは何だ。まぁ安全運転で頼むぞ。」


明石「はい。これで色々捗りますねぇ♪では早速活用しますか。」


提督「というと?」


明石「ええ、全艤装の整備が終わりましたので試験運用開始です。」


提督「おお、じゃあ1300訓練開始としよう。今日はベタ凪で丁度いいし。」


明石「分りました。ですが全員のを一度に見るのは難しいので数班に分けましょう。」


提督「だな。」


整備を終えた艤装を荷台に積み込み明石は岸壁に向かい提督は資料作成のため執務室へと戻る。


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鹿島「では最終班の皆さん、抜錨です。」


望月「ふあ~い。」


あくびをしながら応える。


曙「ちょっと、旗艦なんだからしっかりしなさいよね。」


磯風「まぁ望月でなくとも眠くなる天候だ。」


響「そうだね。」モグモグ


長波「だな。」モグモグ


曙「・・・貴女たちは何を食べているのかしら?」


響「何って。」


長波「チョコだけど?」


曙「チョコだけど、じゃないでしょ!訓練中なのわからないかしら。」


長波「まぁ固いことを言いなさんな。」


曙「なっ!?」ムグ


曙の口にチョコを投げ入れる。


長波「美味いだろ?」


曙「・・・ちょっとぉ!これお酒入ってる奴じゃない!」


響「もう一つ要るかい?」


曙「要らないわよ。勤務中の飲酒は禁止って言われてたでしょ!」


響「確かにそうだが。しかしこれは特別な許可を司令官から貰ったのだよ。」


長波「ああそうだ。あたしも居たから聞いている。」


曙「そうなの?」


響「酔って強くなれるのなら(程ほどに)摂取しても構わない、とね。」


長波「しかも態々取り寄せてくれたんだぜ。甘味が貴重なのにチョコって気が利くよなぁ。」


曙「気が利くのは分るけどさぁ・・・。まぁ良いわ、一升瓶を持たなくなっただけマシか・・・。」


鹿島「ん゛ん。皆さん、艦隊行動中は私語を慎んでくださいね?」


曙「あ、ごめんなさい。」


長波「ああスマンスマン。」


響「Да.」


鹿島「望月さんは起きてください。」


望月「鹿島先生がぁ抱きしめてくれたら起きる~。」


鹿島「もう、仕方ありませんねぇ。」ギュ


望月(おぉ~やわらけぇ~。マジでいい香りだわぁ~)ニヤニヤ


磯風「望月、あまり気色悪い顔をするな。」


望月「いつあたしがそんな顔をしたのよ。美少女に対して失礼じゃない?」


磯風「む、可愛いのは認めるが気色悪いモノは気色悪い。」


望月「うるせ~酸素魚雷ぶつけるよ?」


鹿島「はい喧嘩は駄目です、仲良くしてくださいね?」ナデナデ


望月「・・・うん♪」


磯風「・・・ああ。」


鹿島「それでは練習航海の開始です。提督さんご指示のほうよろしくお願いします。」


提督「あいよ。まずは鹿島を先頭に望月が旗艦となり縦一で5海里東進。ポイントαに到着次第停止し目標に向け砲撃。」


鹿島「了解です、皆さんも聞きましたね。ポイントαまでは航行訓練となります。徐々に速度を上げますが異常が出た場合は直ぐに申し出てください。」


一同「了解!」


提督「すまんな、お前だけ何回も出させて。」無線


鹿島「いえ、お兄様のお役に立つのであれば大丈夫ですよ。」無線


提督「そうか。」無線


明石「おや、優しいお兄様ですこと。」


提督「うるさい。バイク返してもらうぞ?」


明石「あ~っ、冗談ですって。」






望月「うぇ~、ちょっと寒いなぁ。」


曙「だから上着を着なさいって言ったでしょ。」


響「もっちーこれ食べるかい?ぽかぽかするよ。」つチョコ


長波「んーダメダメ。もっちー酒に弱いンだから。」


望月「そだねー。磯やん場所変わってよ~。」


磯風「む、私か?」


望月「風だけに風よけになるしぃ。」


磯風「・・・。」


望月「冗談だって、怒らないでよ・・・。」


磯風「いや、おもしろい駄洒落だ。使わせてもらうぞ。」


望月「え・・・あぁうん。」


鹿島「みなさんここで第二戦速に切り替えてください。」


望月「ん、りょーかーい。行くよ~。」


磯風「おい、加速しすぎだぞ!」


曙「わわっ。」


水しぶきが後続を襲う。


鹿島「望月さん!?」


鹿島をも追い抜く。


望月「わ~誰か止めて~!スロットルが戻らないよぉ!」


長波「ありゃまぁ~整備不良か?」


響「いや明石さんに限ってそれはない。おおかた入れ間違いだろうね。」


長波「ふ~ん。」


曙「あんたたち何を呑気にしてんのよ!追いかけるわよ!。」


長波「まじかよ・・・。睦月型とはいえあの艤装けっこう早いんだぞ。」


磯風「だが止めなければ危険だ。」


提督「そうだ漁船の往来もある。すまないが訓練だと思って追いかけてくれ。」無線


鹿島「は、はい!みなさん予定変更です!最大戦速での航行訓練です。目標は望月さんです、何が何でも止めてください!」


一同「了解!!!」


残された全員は駆動機関のスロットルを最大まで押し上げ黒煙を吐き加速する。


鹿島「あっ・・・。」


響「先生?」


鹿島「私の速度では追いつけません。済みませんが皆さんにお任せします。」


響「・・・分った。」


長波「あれ、鹿島ちゃんは?」


響「私達に任せるって。」


長波「へ、なんで?」


響「先生、航行は苦手らしい。」


長波「あぁ・・・なるほどな。お~い磯やんボノちゃん!」


磯波「何だ?」


曙「何よ?」


長波「先生が脱落したからなぁ。」


曙「は、なによそれ!」


磯風「む・・・。」


長波「先生は走るのが苦手、こういえば分るだろぉ~?」


磯風「うむ、大変分りやすい。」


曙「・・・そうね。」


駆逐艦たちは30ノット以上でるが鹿島はその艤装重量ゆえ20ノットがでるかどうかだった。


曙「みんな、あたしが臨時旗艦になるからついて来て!行くわよ!」


曙を先頭に全速力で望月を追いかける。


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望月「ワー、ダレカタスケテー(棒)」


全速間際の36ノットで航行する。


艤装自体は古いがまだまだ現役だ。


初雪「うわ・・・エグいなぁ。」


それを鎮守府の監視台から望遠鏡で観察している。


曙「ちょっと・・・なんなのよもう!」


磯風「仕方ないさ、こればかりはどうしようもない。」


望月が航行した後は波が立っており後続組は思うようにスピードを出せない。


響「おっと・・・さすがにコレはきついね。」


長波「だなぁ、どうしたもんか・・・。」


磯風「そうだ、私にいい考えがある。」


長波「えー・・・磯やんの思いつきってろくなことないジャン。」


磯風「なんと失礼な。」


曙「この際何でもいいわ言ってみて!」


磯風「む、そうか。君の主砲と魚雷を私達に預けたまえ。そうすれば身軽になり速度もでる、それに安定もするだろう。」


響「おぉ、いい磯やんにしてはいい案じゃないか。」


曙「そうね、偶にはいいこと言うじゃない。走りながら渡すから落とさないでよ?」


磯風「なにやら引っ掛かるところもあるが承知した。」


曙の後ろにいた磯風・響は横につき長波は背後から彼女を支える。


曙「んしょ・・・っと。」


担いでる艤装のバンドを外し体勢を整える。


響「っと、さすがに二人分となると重いね。」


磯風「だな。」


長波「魚雷はいいのか?」


太ももに結わえてあるソレを指差す。


曙「ええ、最悪の場合コレで止めるわ。」


磯風・響・長波(・・・曙には逆らわないほうが賢明だ。)


曙「ん? ・・・・じゃぁ行くわよ!」


長波「うわぁ!?」


目の前で機関を全開にされまともに水しぶきを受ける。


響「おお早いね。」


磯風「ふむ、我ながら良い考えだったな。」


長波「・・・むぅ。」


響「長波さんどうしたんだ・・・い? хорошо.」


磯風「うん? なるほど、眼福眼福。」オガミ


水にぬれた服は体のラインに沿って張り付き長波は一段と妖艶な姿になっていた。


長波「拝むなぁ! ったくどうしてこうもついてないのかねぇ。」


既に小さくなった曙の後姿を眺めながら溜息をつく。


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曙「うん、久しぶりの運用だけれど問題ないわね。」


こちらも全速間際の速度で航行する。


曙「見えた!」


接続水域まで来たとき望月の艦影を捉えた。


曙「お~い!望月さ~ん!」


大声で呼ぶ。


望月「ん、来たか。」


その声に反応し停止する。


曙「え、なに・・・。止った?」


狸にでも化かされたかのような顔をする。


望月「曙ちゃん一人?」


曙「え、ええそうよ。スロットルが壊れたんじゃないの?」


望月「ん?いーや、故障もないし絶好調そのものだよ。」


曙「え・・・じゃぁどうして?」


望月「久しぶりにシたくなったんだよねぇ。」


主砲を構える。


曙「ふぇ?演習を?」


望月「ううん・・・殺し合いをさ!」


曙「な!?」


砲弾が曙目掛け飛んでくる。


望月「・・・流石だねぇ。」


曙「なんなのよもう!」


紙一重でかわし距離をとる。


望月「でも次も避けられるかな?」


また主砲が火を噴く。


曙「ちょ!?」


これもかわす。


望月「凄い凄い!艤装なしでもそんなに動けるんだ!」


曙「正気なのあんた!?」


望月「勿論だよぉ。」


曙「そう・・・そっちがその気なら相手をしてあげるわ。」


望月「ははっ。主砲がないのにどうやって相手をするって言うのさ。」


曙「あんたはもう負けている。」


望月「え!?」


次の瞬間天高く水柱が立つ。


曙「殺し合いをしたいなら慢心しないことね。」


望月の砲撃をかわした際に一本だけ隠し持っていた魚雷を発射し命中したのであった。


数秒後に水柱が消え視界がはれた海原の上には気を失い横たわっている望月の姿があった。


曙「全く、世話が焼けるんだから・・・。」


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望月「うぅん・・・ここは?」


今はベッドで休んでいた。


望月「知らない天井だ・・・。」


曙「アンタの部屋でしょ!」ビシィ


望月「あいた!?曙・・・?殴ること無いじゃん!」


曙「うっさい!アンタのせいでこっちは良い迷惑よ!」


望月「ふぇ?」


提督「訓練での暴走を覚えてないのか?」


望月「司令・・・官?暴走・・・?そっか・・・またヤっちゃったんだ・・・。」


提督「過去の報告書を読ませてもらったが暴走する確率は高くはないと記載してあった。だが、暴走しないとは書いてなかった。今回は俺の責任だ、申し訳ない。」


望月がここに飛ばされた理由。


それは敵味方の見境が無くなり非情に危険で普通の鎮守府では運用できないからであった。


多重人格とでも言うのだろうか、暴走時の記憶は殆ど残らない。


曙「撃った私が言うのもなんだけれど痛い所ない?」


望月「これと言って・・・強いて言うなら今叩かれたところが痛いなぁ。」


曙「わ、悪かったわね!」


望月「冗談だよ・・・。」


提督「望月、今日明日は非番とする。ゆっくり休んでくれ。」


望月「でも・・・これ以上迷惑をかけられないよ。」


曙「あんたバカァ?」


望月「な!?」


曙「体調が万全じゃないのに出撃でもしてまた暴走とかされたらそっちのほうが迷惑なの。」


提督「ははは・・・いい方は悪いがその通りだ。ましてや疲労状態で出撃した場合轟沈のリスクが高まる。こんな所で望月を失いたくないからな。」ナデナデ


望月「司令官///」


頭を撫でられ布団で顔を隠す。


にやけていたのは言うまでもない。


愛しの妹


私には姉妹が3人居る。


いや、居たといった方が正しいかな。


泣き虫で臆病で一見頼りなさそうに見えるがここぞと言うときは誰よりも安心して背中を任せられる姉。


料理や洗濯、家事全般で彼女の右に出るものは居ないだろう。


小さいながらもまるで母親のような存在だ。


末っ子ながら努力家の彼女。


空回り気味だったけれど折れることのない心には敬意を表するよ。


君は常々“沈んだ敵も助けたい”って言っていたね。


その敵に沈められたら元も子もないだろう。


私は今でも信じられないよ。


そばに君が居ないなんてね。


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月明かりが差し込む部屋でかつて所属していた鎮守府からの手紙を読む。


玉には響の顔がみたいな。


偶にはのつもりなんだろう。


暁の字だ。


三周忌だけど帰ってこれるの?


この達筆な字は雷のものだ。


響「帰ってこれるのか・・・ねぇ。私にはその資格はないよ。」


手にしていた文を握りつぶしゴミ箱へと投げ入れる。


響「・・・Мне очень жаль.(ごめん)」


横になり目を閉じる。


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提督「珍しいな、響が寝坊なんて。」


不知火「ええ、恐らく初めてのことではないでしょうか。」


提督「二日酔って事は・・・。」


不知火「まさか、常時酔っているようなものですよ。」


提督「確かに。だがこのごろは飲酒も減ってシラフが殆どだがな。」


朝食の時間になっても起きてこない響を心配に思い起こしに行く。


コンコンコン


不知火「不知火です。響さん、起きていますか?」


返事はない。


提督「あれま。」


不知火「入りますよ。」


扉を開け部屋に入ると響はまだ寝ていた。


提督「おーい、響さんや。朝ですよ~。」


響「・・・司令・・・官?」


提督「もう7時過ぎだぞ?具合でも悪いのか?」


響「・・・いや・・・大丈夫だ。」


ゆっくりと起き上がる。


その響の枕元にあるものに気がつく。


不知火「これは・・・?」


手を伸ばす。


響「не трогать!(触るな!)」


提督・不知火「!?」


今までに聞いた事がないくらいの大声に驚く。


響「あ・・・ごめん、なんでもないよ。」


それを枕の下へそっと仕舞う。


提督「あ、ああ。メシが冷めないうちに来るんだぞ。」


響「うん・・・。」


不知火「では失礼します。」


そそくさと響の部屋を後にする。


響「・・・何をやっているんだ私は。」


自分で自分の頬を叩く。


二つの意味での戒めだ。


響「さて、行きますか。」


寝巻きから制服に着替え食堂へと向かう。


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鹿島「あっ、響さん。今日はお寝坊さんですね。」


響「先生は相変わらず早起きだね。」


鹿島「当然です。皆さんの朝食を用意しないといけませんから、ふふ。」


響「спасибо.今日のメニューは何かな。」


鹿島「今日はですねぇ出汁巻き卵と鰺の干物、ほうれん草のお味噌汁にナスのお漬物です。」


響「ナス・・・。悪いけれどナスは遠慮しておくよ。」


鹿島「あれ、お嫌いでしたか?」


響「そうじゃないけれど今日は要らない、ごめんなさい。」


鹿島「分かりました。代わりにきゅうりの浅漬けをどうぞ。みんなには秘密ですからね♪」


響「うん。」


ごはんが乗ったトレーを受け取り席につく。


響「Приятного аппетита(いただきます。)」


響「・・・うん、美味しい。」モグモグ


長波「よっ、ネボスケ。」


ニシシと笑いながら近づいてくる。


響「ここは禁煙席だよ?」


長波「火、ついてないからいいだろ?」ヨッコイショ


おばさんのような声を出し響の隣に座る。


響「なにか用かな?」


長波「あれ、今日の任務聞いてなかったのか?あたしと一緒の組だぜ。」


響「へぇ、このごろ一緒になること多いね。」


長波「そう言われればそうだな、この前の練習航海のときもそうだったし運命的な奴か・・・ってな。」


響「それで、任務は近海の警備かな。」


長波「ああ、このあと0800から午前中一杯だ。N島まで行ってみるか?」


響「N島・・・。そうだね、そこで折り返したら丁度よさそうだ。」


長波「オッケー、じゃあそれで。ってなんだ、きゅうり?あたしらはナスだったぜ。」


秘密がばれてしまった。


長波「一つも~らい!」パク


響「あ・・・。」


長波「・・・辛ぇえ!」


鹿島「響さんごめんなさい、間違ってカラシ漬けを渡して・・・長波さん?」


響「謝るなら長波にお願いするよ。」


口から火を吹いているのを見て理解する。


鹿島「わわわっ、直ぐにお水を持ってきますね!」


響「・・・大丈夫かい?」


長波「くぁwsrftgyふじこ!」


響「言葉になってないよ。」


鹿島「お待たせしました!」つお冷


長波「!?」


勢い良くコップを奪い一気飲みする。


長波「はぁ・・・はぁ・・・。先生!殺す気か!?」


鹿島「ご、ごめんなさい・・・。」ウルウル


長波「うっ・・・。つ、次からは気をつけてくれよ。」


鹿島「はい・・・。」


響「元はと言えばつまみ食いした長波が悪いよ。」


長波「なんも言えねぇ・・・。」


鹿島「お詫びと言ってはなんですけれど良かったらどうぞ。」


長波「ココアシガレット・・・。ああ、うん。間違いじゃないけれど駄菓子だぜ、これ。先生はタバコ吸わないのか?」


鹿島「以前、長波さんが吸っていたのを目にしてカッコいいなぁと思って試しに吸ってみたのですが・・・。」


長波「むせてしまった、っと。あたしが言うのもアレだが、体に悪いから吸わなくて正解だぜ。でもありがたく貰っておく。」


鹿島「はい・・・!」


響「・・・ごちそうさま。」


二人が会話しているうちに食べ終える。


成人男性から見ると本当にそれだけで足りるのかと思うくらいの小食であるため、食事の時間は短い。


鹿島「お粗末様でした。」


響「先生のつくるご飯はやっぱり美味しいね。きてくれて本当にありがとう。」


長波「先生が来る前は食事が拷問だったぜ。」


磯風(なにやらどこかで噂されている気がする・・・。)


鹿島「ふふ、皆さんに喜んでもらえるようもっと精進しますね♪」


長波「響も食い終わったし出撃してくる。」


鹿島「はい、お気をつけて。」


響「じゃあ先生、またあとで。」


鹿島「行ってらっしゃい。」ナデナデ


響「子供扱いはよしてくれないかな///」


長波「おぉ、照れちゃって可愛いな。」


響「うるさい。」


帽子を深く被り顔が見えないようにしながら小走りで艤装保管庫へ向う。


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長波「よし・・・っと。んじゃ、そろそろ出ますか。」


響「うん。」


艤装を軽くふかし内部に溜まった煤を飛ばす。


長波「さっきまで晴れてたのに急に曇ってきやがった。」


響「仕方ないさ。そういう季節だからね。」


長波「まぁな。波が高くならないうちにちゃちゃっと終わらせようぜ。」


響「まぁ、妥当だね。」


雑談もそこそこに沖へと向う。


最近の主な任務は領海の警備と軽い輸送任務である。


小さなことからコツコツと。


地道ながら確実な内容は大淀の指示だ。


こんな辺境の鎮守府でもやる事はやるのをアピールするのが狙いだ。


大淀のお陰で資材は増えたものの依然中央重視で配給されないこともしばしばある。


なにはともあれ大淀には感謝している。


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長波「なぁ響。」


響「ん、なんだい?」


長波「響は艦娘になって何年だ?」


響「3年さ。君は?」


長波「あたしは2年半。どこの出身だっけ?」


響「八戸だよ。」


長波「へぇ~青森か。その割には訛ってないなぁ。」


響「生まれは青森でも東京に居た方が長かったからね。君は?」


長波「焼津。ちょい大きな港があるだけの田舎町だよ。」


響「君は志願したのかい?」


長波「いんや、徴用。」


響「そう・・・。家族は皆無事なのかい?」


長波「・・・・・・ああ。疎開して無事だよ。」


響「それはなりよりだね。」


長波「そう言う響はどうなんだ?家族のこと一切教えてくれないじゃん。」


響「・・・話したくないんだ、それは。」


長波「あっそ。じゃあもう聞かない。」


響「・・・。きょうは随分とあっさりしてるね。」


長波「人間秘密の一つや二つくらいあるもんな。話したくないならいいよ。」


響「・・・うん。」


長波「・・・っと、霧が出てきたな。」


響「こんな昼間に珍しいね。」


突如発生した濃霧に視界を奪われる。


長波「全く、おかしな天気だ・・・。響、電探を積んでいるあたしが前にでるから場所変わって。」


響「・・・了解。」


先頭の響は速力を落とし長波と前後の持ち場を交代する。


長波「こりゃ一降りくるかもな。」


身に着けているポーチからタバコを取り出し火をつける。


これには響のお酒(ノンアル)も入っている。


長波「左舷灯の代わりってか。」


小さな赤い炎を舷灯に見立てる。


響「わっ!?」


長波「どうした!?」


響「波に足元をすくわれただけさ、心配ない。」


長波「そ、そうか。急に大声を出して少し驚いたぜ・・・。」


響「ごめん。」


長波「むぅ。それにしても三角波まで出てきやがったな。これ以上は危険だと思う。切り上げないか?」


響「・・・うん。司令官に聞いてみるよ。」


無線機のスイッチを入れる。


響「こちら紹介任務中の響だよ。応答を願う。」


返事がない。


響「司令官?」


長波「ん、どうしたー?」


響「ノイズが酷くて通信ができないみたいだ。」


長波「もしかすると雷雲の所為か?遠くで光った気がするが。」


響「かもね。」


長波「しょうがない。命令は出てないけど戻るか。帰ればまた来られるからな。」


響「そうだね。」


N島手前で針路を180度変える。


長波「んじゃ、これより酷くなる前に着くよう飛ばすぞ。」


響「了解。」


加速しようとした時だった。


長波の右舷後方からしのび寄る1本の白い線に気がつく。


響「あれは・・・。危ない!」


長波「ふぇ?」


飛び掛り長波を突き飛ばす。


次の瞬間爆炎と轟音が波の音を掻き消すかのようにこだまする。


長波「いてて・・・何が一体・・・響!」


艤装は炎上し意識を失いぼろぼろになった姿で横たわる響を発見する。


長波「響!おい、しっかりしろ!くそ・・・!」


電探に反応はなかった。


となると考えられるのは潜水艦しかない。


水上にばかり気を取られ対潜のことなど頭の片隅にも無かった。


ソナーも爆雷もない。


八方塞とはこのことだ。


長波「畜生・・・!?」


倒れた響を抱え視界をあげるともう1本の白い線が見える。


長波「おわっ!?」


間一髪でかわす。


長波「このままじゃ直ぐにやられてしまう・・・。」


逃げるにも意識を失ったものを担げば当然速力は落ちる。


長波「・・・明石さん、せっかく直してくれたけど・・・ごめん!」


壊れた響の艤装を海へ投棄する。


長波「これでいくらかは・・・。響、あたしが絶対連れて帰るから死ぬんじゃないぞ!」


背負い鎮守府へ向け航行を始める。


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?「・・・ちゃん。」


?「・・・き・・・ちゃん。」


響(なんだ・・・懐かしい声がする。)


?「響お姉ちゃん。」


響「電・・・。そうか、私は轟沈してしまったんだね。」


気がつくと薄暗い海底のようなところに居た。


そこにはかつて沈んでしまった妹の電の姿があった。


電「響お姉ちゃんはまだ沈んではいないのです。」


響「じゃあここは?あの世じゃないのかい?」


電「境目と言ったところでしょうか。」


響「そうか。ではすぐそっちに、」


電「お断りするのです。」


響「なん・・・だって?」


電「響お姉ちゃんはまだくるべき時ではないのです。」


響「どういう事だい?」


電「響お姉ちゃん。」


響「?」


電「響お姉ちゃんは新しく来た司令官さんのことをどう思いますか?」


響「・・・私達を人間として扱ってくれて嬉しい。それに、一緒に居て楽しかったさ・・・。」


電「その司令官さんを置いてこっちに来るのですか?」


響「それは・・・。」


電「それに今こちらにきてしまったらお友達の皆さんが悲しむのです。」


響「そう・・・かな。わたしに同情してくれる艦娘(ひと)は・・・。」


夕立「ここに居るっぽい!」


響「夕立・・・?」


夕立「電ちゃんに大至急きて欲しいって言われてきたけれど驚いちゃった。響ちゃんがここに居るんだもん。」


響「これは一体全体どういうことなんだ・・・。」


電「夕立ちゃんと電はお友達なのです。」


夕立「ねー♪」


響「意味が分らないよ。」


夕立「夕立は一度沈んでいるからこっちとあっちを自由に行き来できるっぽい!だから偶に遊びに来てるのよ。」


響「・・・。そういう設定あったね。」


夕立「設定とか言わない! でも、響ちゃんの事はみんな心配しているよ。さ、一緒に帰ろう?」


響「・・・分ったよ。すまないが先に行ってくれないか。電と少し話をしたいんだ。」


夕立「必ず戻ってくる?」


響「嘘はつかないよ。」


夕立「分かった・・・。先に行って待っているっぽい!」


響「うん。」


夕立はすぅっと消える。


響「・・・ごめん。」


電「なにがです?」


響「あの時、沈むのは本来私のほうだった。いらない気を利かせ場所を変えたのが全ての原因だ。」


電「響お姉ちゃん・・・。」


響「・・・。」


電「・・・のお馬鹿!」ポコン


響「!?」


軽く小突かれる。


電「艦娘になったときから轟沈は覚悟していたのです。だれに責任があるとかそういうのは無しにしようと言ったのはだれなのです?響お姉ちゃんなのです。」


響「・・・うん。」


電「確かに電が沈んでしまって責任を感じてしまうのはわかるのです。ですがそのことで生きている人、ましては自分の命を無駄にするようなことは絶対して欲しくはないのです!」


電「響お姉ちゃんは真面目で考えすぎるときもあるのですが、根を詰めすぎないのが気楽に生きるコツだと思うのです。少しは肩の力を抜いてもいいのですよ?」


響「電・・・。ありがとう・・・。ごめん・・・。」


大粒の涙がこぼれる。


電「辛いときは誰かに頼ってもいいのですよ?あ、でもお酒はまだ早いと思うのです。」


響「誰・・・から・・・それを・・・。夕立か・・・。」グスッ


電「御名答なのです♪」


響「・・・でも最近は控えめにしてるし(仕事中に)飲みたいときはアルコールフリーのものにしてるんだ。」


電「飲んでも怒らない司令官さんって寛容なのですね。」


響「飲んで力を発揮できるなら泥酔しなければ良いって言ってくれた。」


電「変わった司令官さんなのです。響お姉ちゃん。そろそろお別れの時間が来てしまったのです。」


響「えっ・・・。」


電「生きている人が長くここに居ると本当にお陀仏になってしまうのです。」


電は一歩後ろに下がるとその体が透け始める。


響「待ってくれ!」


電「?」


響「また・・・あえるんだよね?」


電「いずれは・・・なのです。」


響「必ず迎えに行くから待っていてくれ。」


電「・・・はい!電は首を長くしてまっているので急がないで来るといいのです♪」


遠まわしに長生きしろと言っている。


しばらくしてからそれに私は気付いたものだった。


電「それではまた逢う日まで。」


響「ああ!」



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響「・・・電。」


長波「響!」


夕立「響ちゃん!」


響「長波に夕立・・・それに司令官も。」


提督「お帰り。」


響「ただいま。」


長波「響、あたしの不注意だった悪い・・・。」


響「長波が気にする必要なんてないよ。旗艦を守るのが随伴艦の仕事さ。」


長波「でも・・・!」


響「良いんだ。それにお礼を言うのはこちらだ。ありがとう。」


長波「ふぁ!?」


長波のその豊満な体を抱き寄せる。


長波「ちょ、何を!?」


響「ロシアではハグをするのは一般的だけれど?」


長波「ここは日本だ!あぁ~見るなぁ!」


提督「見るなと言われても・・・。」


夕立「ねぇ?」


長波「くぅ///」


響「ねぇ司令官。」


提督「ん?」


響「こんなときに言うのもなんだけれど1週間ほど休みをくれないだろうか?」


提督「・・・。」


響「ちょっと行きたい所があるんだ。」


提督「・・・ああ、許可する。行って来い!」


響「うん、Спасибо.」


夕立「夕立もお出かけしたいっぽい!」


提督「また今度な。」


夕立「ぶー!」


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雷「やっほ、久しぶり。」


暁「レディーを待たせるなんて失礼しちゃうわ!」


響「ごめんごめん。」


雷「でもまぁこれで4人揃ったわけだし。」


響「始めますか。」


暁「そうね。」


小高い丘にある墓地で3人・・・いや4人だけの墓前祭が行われた。


遠く離れた場所にあっても心は一つ。


元第六駆逐隊、そして姉妹の絆は永遠に消えることはなかった。


次から次へとまぁ


初月「・・・初月だ。お前が提督か・・・。」


これまた一目で分る問題児が来たようだ。


磯風「初月とやら、その物言いは失礼ではないか。」


初月「煩い、お前には関係ない。」


磯風「なに?」


普段冷静な磯風が怒るのは珍しい。


初月「○○提督か・・・。顔もそうだが名前も頼りなさそうだな。」


磯風「貴様ぁ!」


提督「待て。」


磯風「止めるな司令!こんな奴は営倉にでも閉じ込めておかねばならん!」


提督「磯風。」


初月「営巣だと?この場所が既に営倉ではないか。」


磯風「このぉ・・・!」


初月「僕とやるのかい?」


磯風「いいだろう、その減らず口を縫い合わせてやr」モゴゴ


犬の口を押さえるように少し黙らせる。


磯風「む゛ーむ゛ー!」


提督「少し頭冷やして来い。」ペイッ


執務室の外へ放り出す。


初月「・・・。」


提督「うちの秘書官が失礼した。なにはともあれ遠いところ来てくれて感謝する。」


初月「感謝?艤装を取り上げられ戦闘も遠征も出来ない僕をねぇ、君は馬鹿か?」


提督「馬鹿だろうな。じじいに騙されこんな所に居るんだ、そう思われるのも仕方がない。」


初月「貧弱の上に馬鹿ときた。どうしようもないな。」


提督「自分でもそう思う。だがここはいい所だ。中央のように堅苦しくも無く変なしがらみも殆どない。のんびり過ごすのには丁度良い。」


初月「ふん、軍人らしくない。畑でも耕しておくのがお似合いだな。」


提督「ん?あぁ耕しているぞ?」


初月「・・・は?」


提督「ここってかなり辺鄙だろ?だから物資が来ないときもあるし輸送中に腐敗することもしばしば。自分達で作った方が早いってことで皆協力しているぞ。」


初月「そ、そうか。」


提督「見ての通り設備も古いし正直快適とはいかない。甘味処もないし娯楽施設も無い所だ、大都会岡山出身の君にとっては退屈な場所だと思うが我慢してくれ。」


初月「・・・。」


提督「着任祝いと言ってはなんだがこれを。」つ金平糖


初月「・・・それで僕を釣ろうだなんてそうはいかないぞ。」


提督「要らないなら・・・。」


差し出した金平糖を引っ込めようとする。


初月「ま、待て。要らないとは言っていない。」


提督(おっ、これは・・・。)


提督「欲しいなら言うことあるんじゃないのかな?」


初月「なん・・・だと?」


提督「1袋3円の超高級だぞ~?」


目の前でちらつかせる。


提督「ほれほれ。3回まわってワン、だ。」


初月「ふ、ふざけるなぁ~!」


提督「あ、おい・・・。」


ドアを蹴破り逃げ出す。


提督「・・・ちょっとからかいすぎたかな?」


頭をかきながら壊れたドアを直そうとすると。


磯風「・・・。」


ふくれっ面の磯風が入ってきた。


提督「どうした、河豚みたいな顔して。」


磯風「い~や、決して怒っているわけではないぞ。」


提督「怒ってるじゃん。」


磯風「怒ってなどいない!」


放り出されたことを根に持っているようだ。


提督「はぁ・・・。あの時はお前がいたらややこしくなると思って追い出したんだ。理解してくれ。」


磯風「そうじゃない、私が怒っているのは司令が侮辱されたからだ。」


提督「やっぱ怒ってたのか。」


磯風「うぐ・・・。私をどうこう言うのは構わないが司令が、」


提督「みなまで言うな。その気持だけで十分だ。」ナデナデ


磯風「司令・・・。」


提督「そうだ磯風、一つ頼み事を受けてくれないか?」


磯風「ん、構わないが何だろうか。」


提督「これを初月に渡してくれ。」


磯風「・・・断る。」


提督「どうしてよ。」


磯風「あいつとはウマが合わない、絶対に喧嘩になるだろうな。」


提督「ふむ・・・では命令だ。渡すように。」


磯風「!? 司令、それは卑怯だぞ!」


提督「ご褒美にラムネを付けるからな!」


2本のラムネを押し付け窓から逃走する。


磯風「・・・はぁ。」


深い溜息が出るだけだった。


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初月「クソ・・・僕を馬鹿にしやがって・・・。どうせここでも僕の居場所なんてないんだ・・・。」


膝を抱え落ち込んでいる。


磯風「あのような態度ではそうだろうな。」


初月「誰だ!・・・なんだお前か・・・。」


磯風「くっ・・・!」イラ


初月「笑いたければ笑うがいいさ。」


磯風「笑いはしないが嘲笑しよう。」


初月「なんだと!」


立ち上がり詰め寄る。


磯風「冗談だ、これでも飲んで落ち着きたまえ。」


初月「・・・ふん!」


差し出されたラムネを奪い取りまた座り込む。


磯風「隣に座っても良いか?」


初月「ダメだ。」


磯風「そうか。」


拒否されても隣に座る。


初月「・・・。」


磯風「・・・。」


初月「僕に用が無いならどっかに行ってくれ・・・。」


磯風「用があるから来たのだ。司令からだ。」


初月「え?」


先ほどの金平糖を渡される。


磯風「司令が渡してくれだと。全くこんな役目を押し付けるとは貧乏くじを引いたものだよ。」


初月「・・・。何か入ってる。」


磯風「うん?」


小袋の中に白い紙切れが入っていた。


初月「なんだろう・・・。」


磯風「・・・。」


初月「ヨ・・・ウ・・・コ・・・ソ・・・?」


カタカナで4文字そう書かれていた。


磯風(やれやれ・・・。私が出る幕ではなかったではないか。)


初月「・・・提督に会ってくる。」


磯風「そうか。」


ラムネを一気飲みし走り去る。


磯風「・・・良い子じゃないか、後できちんと謝らないとな。」


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初月「提督!」


中庭の東屋で休んでいるところを発見する。


提督「ん?」


初月「はぁはぁ・・・。提督、先ほどはすまなかった。」


深く頭を下げる。


提督「・・・初月。」


初月「僕は總ての提督が悪い奴だと勘違いしていたよ・・・懲罰の覚悟はできている。煮るなり焼くなり好きにして欲しい。」


提督「・・・じゃあここに座ってくれ。」


自分の太ももを指差す。


初月「・・・え?」


提督「懲罰だ。」


初月「う、うん・・・。」


困惑しつつも指示通りに座る。


提督「君の転属報告書を読ませてもらった。よく耐えたね。」ナデナデ


初月「な、なにを!?」アタフタ


最新鋭駆逐艦として就役し大きな戦果を期待されたものの無謀な作戦に駆り出され多くの護衛対象が被害を受けた。


戦局が一番悪いときであったのでまともな訓練も受けられず出撃した彼女にとってその任務は生易しいものではなかった。


だが旧式装備の古株組よりも優先的に補給を受ける事ができた。


それが他の艦娘達にしては面白くなかったのだ。


陰口や暴言は日常茶飯事であったし水雷戦隊長の指示で虐めもあった。


元の提督は指導の一環故致し方なしと黙認していた。


初めのうちは反骨精神で何とか耐えていたが連日となるとさすがに限度がある。


そんなある日ついに堪忍袋の尾が切れ手を出してしまった。


普通の喧嘩ならばどうといわれることも無かっただろう。


しかし艤装を持ち出し艦娘に対して砲撃したのでは話が違う。


丸腰の相手は大怪我をしたが上長の戦艦が仲裁に入り命を奪うには至らずにすんだ。


私闘での艤装利用、それに係わりけが人を出した事は極めて重大な責任を負うこととなった。


武装解除は勿論、極刑も考えられたが先の理由から一概に初月だけが悪いのではないと判断され保留。


そしてここへと転属となった。


提督「初月は人の温かさを知らないだけだったんだろ?」


初月「・・・。」


提督「別に俺の事は嫌いでも構わない。だが他の皆とは仲良くしてもらいたい、一緒に居るのにいがみ合っているのは見ていられないからな。」


初月「・・・提督。」


提督「ん?」


初月「・・・僕は。僕はここに居てもいいのかな?」


提督「・・・昼間なのに寝言を言うなっての。」


初月「ふぇ?」


提督「問題を起こしたから~とか、他でお払い箱になった~とかそんなのは今更だ。ここは来るものは拒まずだし君みたいな男手が増えて助かる。」


初月「・・・うん。・・・男手?僕は女だけど・・・?」


提督「またまた御冗談を。」


初月「だってほらスカートはいてるし。」


提督「エゲレスでは男もスカートはくだろ?」


初月「胸だってほら・・・。」


提督「俺の方が(胸筋で)大きいし。」


初月「・・・生えてないよ?」


提督「何が?」


初月「何がって・・・ほら・・・あれだよ///」


提督「あれじゃ分らんなぁ。ぐへぇ!?」


初雪「真昼間からセクハラなんて絶許。」


口をヘの字にして佇んでいる。


提督「冗談を言っただけで殴ることないだろう。」


初雪「憲兵隊に言いつけるよ?」


提督「ごめんなさい。」真顔


初雪「うん。新入り。」


初月「・・・僕?」


初雪「そう。こんなのだけど誰よりも私達を大切にしてくれる。だから・・・」


初月「君の言いたい事はなんとなく分る、実感したよ。」


初雪「ならいい。私は初雪、よろしく。」


初月「僕は初月、こちらこそ。」


初雪「うん。じゃあはっつーだね。」


提督「うわ、直球すぎ。」


初月「はっつー・・・あだ名?僕の?」


初雪「うん。」


初月「でも君も初雪だからはっつーじゃ・・・。」


初雪「・・・しまった、この私とした事が。」


初月「・・・ユキちゃん・・・ってのはどうかな?」


提督・初雪(見た目とは反して可愛いこと言うなコイツ。)


猛暑


夕立「あつ~い・・・っぽい・・・。」


望月「うぅ~、マジ暑いし。もうダメだ、もうダメ。ラムネもないし、(司令官の)アイスないし・・・もうダメだ。」


休憩室で横になりうなだれている二人。


クーラーは勿論無いし扇風機には故障中の紙が貼ってある。


あるのは団扇だけ。


望月「夕立ぃ~扇いでよぉ~・・・。」


夕立「えぇ~自分で扇げばいいっぽい~・・・。」


望月「そんなことしたら暑くなるじゃん・・・。って何さぁ?」


夕立「枕にするっぽい、望月ちゃんのお腹は柔らかくて丁度いいっぽい。」


望月「乗るな~暑い、離れろぉ~・・・!」


夕立「拒否するっぽい~。あれ・・・もしかして太った?」プニプニ


望月「ふ、太ってないし!」


夕立「じゃあこのお肉は何?」


腹の肉をつまむ。


望月「・・・バルジ?」


夕立「・・・脂肪のっぽい。」


望月「・・・、しょうがないじゃん。先生のご飯美味しいし正直なところ食べすぎちゃうんだよ!」


夕立「それは分かる気がするっぽい。」


望月「それに司令官からは出撃するなって言われたし運動不足だよ。」


夕立「・・・じゃあ海に行くっぽい!」


望月「へ?だから海に行くなって・・・。」


夕立「海水浴!」


望月「えー・・・。」


夕立「露骨に嫌な顔をしないでほしいっぽい!善は急げよ?」


望月「ちょ!引っ張るなって~!」


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望月「ねぇ夕立?」


夕立「何?」


望月「あたしは今、干物にされる鯵の気持ちが分った気がする。」


夕立「ぽい?」


望月「分らないならいいよ。で、その水着はどこから?」


夕立「工廠にあったっぽい。」


望月「波・・・数字は見えないけど潜水艦のかなぁ。」


夕立「そうなの?でもとっても着心地がいいっぽい。もっちーは着替えないの?」


望月「面倒だし下着でいいよ。」


夕立「もっちーらしいね。じゃあお先に!」ドボン


望月「さすがぽ犬って言われるだけあるね。んじゃあたしも。」


メガネを外しゆっくりと海水に浸かる。


望月「ぬるい・・・けど生き返るわぁ。」


夕立「きて良かったでしょ?」


望月「ん・・・まぁね。」


夕立「バルジ付いてるから浮いてるね。」


望月「うっさい///」


夕立「ねえもっちー?」


望月「んぁ?」


夕立「まさかそのお腹、デキたっぽい?」


望月「何がー?」


夕立「子供?」


望月「・・・子供かぁ。まぁ将来的にはできる予定だけどまだ抱いてくれないんだぁ。お前には早すぎる、ってね。」


夕立「色話するなんておませさんね。」


望月「夕立が話させてるんでしょ~。てか子供の作り方分かるの?」


夕立「知ってるよ。竹を切ったら生まれるっぽい!」


望月「いや・・・。」


夕立「桃でもいいっぽい!そうしたらお腹に赤ちゃんが宿るの!」


望月「・・・夕立はまだそのままでいてくれ。」ナデナデ


純粋な顔をして力説する夕立の頭をなでる。


夕立「?」


望月「・・・それにしても暑いね~、もうすぐ秋だってのに。」


夕立「あ、でも週末には台風が来るっぽいよ。」


望月「台風ねぇ。飛ばされなければいいけど・・・あのボロ屋敷。」


年季の入った寮を皮肉る、いや事実を言ったまでだ。


夕立「いっそのこと防空壕にでも行く?」


望月「防空壕・・・その手があったか。」


夕立「ぽい?」


望月「あそこってさ何でか知らないけど涼しいじゃん?夏の間だけ引っ越そうか?」


夕立「・・・ヤダ!」


望月「へ?」


夕立「昼間だけなら良いけど夜はお化けが出そうだから無理!絶対無理!」


望月「半分お化けみたいな夕立が何を怖がってるのさ。」


夕立「怖い物は怖いの!」


望月「あたしはお化けより時雨の方が怖いよ。」


夕立「時雨ちゃん?どうして?」


望月「司令官が来たばっかりの時にさ、寝込みを襲ってきたじゃない?」


夕立「あぁ~そんなこともあったっぽい。」


望月「夕立、よく考えてみて。あたしたち艦娘は司令官に対して暴力を振るえないように設計されてある。それなのに時雨は事に及んだ。」


夕立「確かに、夕立は提督さんを(本気で)叩いたことないし嫌な感情もないっぽい。・・・あれ、なんでこのこと知ってるの?夕立たちの秘密だったのに。」


望月「だってベッドに下に潜り込んで合体の機会を・・・って図ったな!?」


夕立「合体・・・?ロボットみたいに?う~ん・・・。」


やはり何のことか分っていない。


曙「おーい、もっちー!夕立!スイカ冷えてるわよ。あがってらっしゃい。」


遠くの休憩室から呼ばれる。


夕立「スイカ!?すぐ行くっぽ~い!」


ご主人様に呼ばれた犬のようにかけてゆく。


望月(夕立は穢しちゃダメだね・・・うん。)


正体は?


ケース1


鹿島「あら・・・?ここに入れてたはずなのに・・・。」


冷蔵庫の棚を上から下まで見渡す。


明石「ん~、どったの鹿島っち?」


鹿島「ああ、明石さん。昨晩作ったお漬物が見当たらないのです。」


明石「ギン蝿じゃないの?疑いたくはないけど・・・響ちゃん、冷蔵庫にあった漬物食べてない?」


偶然通りがかり声をかけられる。


響「漬物?いや、知らないな。なぜ私に聞くんだい?」


明石「お酒の肴にと思って。」


響「生憎だけど今は禁酒中だよ。」


鹿島「そうなのですか?美味しいお酒が入ったので一緒に呑もうかと思っていたのに残念です。」


響「・・・と思っていたけど勘違いだったようだ、晩御飯と一緒に少し分けてくれないだろうか?」


鹿島「はい、よろこんで。」


響「そうか、楽しみだな♪」


明石「響ちゃんも随分と変わりましたよね~。昔は一升瓶を四六時中離さず酔っていたのに。」


鹿島「いい事じゃありませんか。」


明石「それはそうなんだけどね。このごろは酔拳を見れなくてちょっと寂しい気もしますが。」


鹿島「まさかお兄様の冗談を本気にするとは思いもしませんでしたね。それはそうと無くなってしまったのは仕様がないのでまた作るとしますか。」


明石「あ、じゃあリクエストしてもいい?」


鹿島「なんでしょう?」


明石「白菜とニンニクの塩漬けが良いですね~。ご飯のお供にぴったりです。」


鹿島「なるほど・・・。にんにくの香りが食欲をそそりますしキムチほど辛くなりませんので駆逐艦の子たちでもたべられますね♪」


ケース2


初月「提督・・・入ってもいいかな?」


提督「ん、いいぞ~。」


初月「失礼する・・・。」


提督「どうしたんだ、浮かない顔をして。」


初月「あの・・・その・・・。」


提督「何か相談か?」


初月「えっと・・・笑わないで聞いてくれるか?」


提督「ん?ああ。」


初月「・・・この鎮守府にはお化けって・・・出るのかな?」


提督「お化けねぇ・・・。まぁ居ると思う・・・いや、居る。」


初月「だよね・・・って居るのか!?」


提督「とは言っても夕立だがな。急に消えたかと思うと突然現れるし幽霊みたいなもんだろ。」


初月「な、なるほど。でも僕が言いたいのは夕立のことではないんだ。」


提督「ほう?」


初月「昨日・・・正確には今朝2時頃だったと思う。物音がして目が覚めたんだ。初めは誰かがトイレにでも行ったのかと思っていたんだけど・・・。」


提督「・・・(ゴクリ)」


初月「隣にはその夕立が寝ていたしトイレとは真逆の食堂で音がしたんだ。僕の部屋の隣が食堂だからそれは間違いないよ。」


提督「・・・で?」


初月「お腹が空いて何か食べに来たのかなって普通は思うだろ?」


提督「ああ。」


初月「食べたら如何する?」


提督「・・・寝る?」


初月「そうだろ?だけど食堂から部屋へ戻る足音がしなかったんだよ。」


提督「アカンやつや・・・。夢とかじゃないのか?」


初月「それから朝まで起きていたから違う。このクマが証拠だ。」


目の下のそれを指差す。


提督「Oh・・・。」


ケース3(対策)


明石「なるほど・・・。初月ちゃんの証言で確信が持てました。やはり誰かがギン蝿していると見て良いでしょう。」


提督「それが自然な考えだよなぁ・・・。」


鹿島「ご飯の量が少なかったのでしょうか?」


明石「そんなことないと思いますよ?おかわりも自由ですし。もしかして提督が犯人じゃないのですか?」


提督「なんで俺よ?」


明石「・・・夢遊病とか?」


鹿島「それはありえません。お兄様は一度眠ったら余程のことがない限り朝まで起きませんから。」


提督「そうだそうだ!」


明石「むぅ・・・。では外部の者による犯行でしょうか?」


提督「ザル警備・・・と言うか門番が居ないから入り放題だからなぁ。明石、なにか撃退用の道具とか無いのか?」


明石「そんな急に言われましても・・・。」


提督「まさか民間人相手に艤装を使うわけにもいかないし万が一凶器を持っていたら対処のしようがない。」


鹿島「包丁ならありますけど・・・。」


提督「とっ捕まえて捌けと?」


鹿島「むぅ・・・。」


明石「まぁ私もスパナとかバールのようなものならありますが。」


提督「なんだそれ?まぁいいや。じゃあ明石、今晩食堂で見張な。」


明石「ふぇえ!?私ですか!?」


提督「・・・?」


明石「お前以外誰が居る。って顔しないでください!」


鹿島「明石さん、お願いできますでしょうか?」ウルウル


明石「うぐっ・・・そんな目でみないでくださいよぉ。・・・分りました、見張れば良いんですね!(ヤケクソ)」


提督「さすが明石、頼りになる。」


鹿島「ですね♪」


明石(うぐぐっ、この鬼畜兄妹めぇ。)


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翌0225


明石「ふぁ~・・・さすがにこの時間まで起きていると眠くなりますねぇ。昨日の今日で現れないのでしょうか・・・。」


明石「少し小腹がすいたなぁ・・・何かあるかな?・・・ちくわしかありませんねぇ。(がっくり)」


冷蔵庫の扉を空け食材の無さに落ち込んでいると廊下から足音が響いてくる。


明石「!?」


すかさず物陰へと隠れる。


明石(来ちゃいました!どどどどどうしましょ!?)


ガラガラ・・・


静かに入り口のドアが開く。


明石(暗くて良く見えませんね・・・。)


正体不明の侵入者は迷うことなく冷蔵庫へ向い扉を開ける。


?「さて今日のはどのような感じだろう・・・なん・・・だと・・・。」


これまたちくわ入っていないことに驚く。


?「これは参ったわね・・・無いのでは比較ができないじゃないのさ・・・。」


明石(ずいぶんと小柄ですね。)


冷蔵庫の室内灯で少し明るくなりおぼろげにその影が見える。


明石(それに聞いたことのない声・・・部外者で間違いありません。となると手加減は無用です!)


明石「我らの安眠を妨害する者め!大人しくお縄に付きなさい!」


?「誰っ!?」


明石「貴女に名乗る名前はありません!覚悟!」


?「うわっ!?何を!?」


隠し持っていた塩を目の前の敵(?)目掛け振り掛ける。


何故塩かと言うと、幽霊なら塩が効くのでは?という思いつきで渡されたそうだ。


?「うぐっ・・・!目が・・・!」


明石(効いてる?なら揉んでやりますか。)


提督直伝の間合詰めて近寄り顔面に塩を塗りつけようと胸倉を掴む。


?「うっ、参った!やめっ・・・やめなさいっ・・・!」


明石「・・・本当に降参しますか?」


?「するって言ってるじゃないのさ!」


明石「・・・わかりました。」


胸倉を掴んでいた手を離すと床にへたりこむ。


明石「・・・電気、つけますね。」


?「・・・。」


明石「一体どんな悪ガキなんでしょうかねぇ・・・え?」


そこには黒い和服のような服を身にまとう色白な少女が居た。


明石「ま、まさか・・・深海棲艦。なるほど分りましてた。潜入・・・いえ、スパイですね。」


?「・・・いや・・・そういう訳じゃ・・・。」


明石「こんな辺境へ一体何しに・・・。まさか私を捕まえて薄い本みたいにあんなことやこんなことをする気ですね!?」


?「だから・・・。」


体をくねらせ妄想している明石を見て侵入者は少し引いている。


提督「初月・・・怖いなら無理をしなくても・・・。」


初月「ぼ、僕が無理をしていりゅって?じょ、冗談も大概にして欲しいな。」


物音を聞いて目が覚めたのだろう、提督を連れこちらに入ってくる。


提督「震えてるじゃん?」


初月「こ、これは武者震いだ!」


提督(やっぱ可愛いなこいつ。)


明石「提督、侵入者を捕まえましたよ。」


提督「おうご苦労。お顔を拝見・・・って・・・八百屋の看板娘じゃないか。」


明石「・・・はい?」


初月「なん・・・だって?」


?「・・・。」


提督「何してんだこんな時間に?」


?「・・・味見。」


提督「ん?」


?「漬物の味見。」


明石「漬物って鹿島っちの?」


?「そうよ。」


初月「で、でもなんで真夜中に?そもそも部外者は立ち入り禁止のはずだ!」プルプル


?「・・・真実を言わないといけない?」


提督「まぁ、言ってもらえれば助かるが。」


?「・・・分ったわ。以前そちらの鹿島さんが私の店に来てくれたときのことよ。彼女は私が作った野菜をとても褒めてくれたの。」


提督「それで?」


?「たくあんも販売していたのだけれどそちらを試食してもらったらこう言ったわ。“なにか物足りませんねぇ。”」


明石「それから?」


?「その時少し意地になっていたのだと思うわ。なら貴女の漬けたものを食べさせてみなさいと、言ったの。」


初月「それが不法侵入となんの関係が?」


?「招待されたのよ。」


3人「・・・。」


顔を見合わせる。


?「ああ、言い方が悪かったわね。ここへ来るように言われたの。」


提督「・・・ますます訳分らんぞ。」


?「鹿島さん曰く“普通は部外者の方は入れませんが夜でしたら皆さん寝てますし大丈夫です。お兄様には私のほうから伝えておきますので”・・・と。」


3人「・・・。」


提督「明石・・・。アイツが起きたらぶっ叩くから修理宜しくな。」


明石「・・・こればっかりは仕方ありませんねぇ。」


初月「か、鹿島先生を虐めては・・・ご飯が・・・。」


提督「大丈夫だ。(最大火力の)ゲンコツで済ませるからな。」


初月「そうか・・・。」


?「なにやら迷惑をかけてしまったようですね。申し訳ありませんでした。」


明石「いえいえ、こちらこそ暴力を働いてしまってすみませんでした。・・・あれ。提督、耳を。」


提督「うん?」


明石「この子、深海棲艦ですよ。」


提督「知ってる。」


明石「知ってましたか、なら安心ですね・・・って!知ってたんですか!?」


提督「そりゃあまぁ一目瞭然だし、俺の話し相手だからな。たしか分類は・・・駆逐古鬼だったか?」


古鬼「そうね、皆からはそう呼ばれていたわ。」


明石「こんなに幼いのに古鬼ですか?」


古鬼「おさなっ・・・!ちょっと貴女、年上に向ってそれはないのでは?こう見えても貴女より年上よ?」


明石「またまた御冗談を。」


初月「そうだそうだ。」


提督「本当だぞ。」


明石・初月「・・・え?」


提督「確か大正・・・。」


古鬼「それ以上は言わなくてもいいわ///」


明石「じゃあ今流行のロリババアというやつですね。」


初月「聴いたことがある、隙間の妖怪とか吸血鬼とかがそれだとか。」


提督「アニメかゲームかそれ?まぁいいか・・・。話を戻すけど俺と顔見知りだとしても勝手に入るのは許可できんなぁ。」


古鬼「・・・ごめんなさい。」


提督「だが・・・。」


古鬼「?」


提督「食料の納入業者としてなら今後お付き合いしたいがどうだ?」


古鬼「いいの・・・かしら?」


提督「ああ。いまどき無農薬で作る野菜なんて珍しいし何より美味い。搬入がてらお茶でも飲んでいっても良いしな。」


初月「良いのかい?」


明石「提督が良いなら文句は言えませんよ。(まぁ害はなさそうですし。)」


古鬼「・・・分ったわ。ありがとう、お兄様。」


提督「ああ。・・・お兄様?」


明石「提督ぅ?」


提督「いや知らんぞ!?」


初月「君たちは兄妹だったのか?」


提督「ンなわけあるか!」


古鬼「何か変なこと言ったかしら?」


提督「言った!お兄様って何ぞ!?」


古鬼「? あぁ、鹿島さんが貴方のことをそう呼べば喜んでくれると・・・。」


提督「・・・よし。2回叩く。」


明石「手加減してくださいよぉ。一応女の子なんですから。」


提督「任せておけ。(手加減はするが容赦はしない)」


古鬼「騒がせて置いていうのもなんだけれどそろそろ帰るわ。」


提督「ん?折角きたんだから泊ってけば?仮眠室使ってもいいし。」


古鬼「でも・・・。」


明石「そうです。最近は熊の目撃情報もあって夜は危険ですのでそうしてください。初月ちゃんもいいでしょ?」


初月「へ・・・あ、うん。いいんじゃないかな。」


古鬼「・・・ではお言葉に甘えて。」


提督「決まりだな。ひと段落ついたら急に眠くなってきた・・・。すまんが仮眠室まで案内してくれないか?」


明石「わかりました。では駆逐古鬼、う~ん・・・。コキちゃん、こちらです。」


古鬼「コキ・・・?ええ、それではお休みなさい。」


提督「う~い。」


初月「うん。」


提督「どれ・・・明日(お仕置き)に備えて寝るとするか。」


初月「て、提督・・・。」


提督「ん?」


初月「きょ・・・今日は僕の部屋で寝ないか?」


提督「・・・はは~ん。怖いんだな?」


初月「ち、違う!ただ・・・その・・・。」


提督「・・・まぁ俺の部屋に行くのも面倒だ。今日だけ邪魔するぞ。」


初月「・・・うん♪」


---

--

-


提督「という訳で今後えーっと・・・コキちゃんがここに出入りするンでくれぐれも攻撃しないように。」


古鬼「よ、よろしくお願いします。」


曙「へぇ~あなたがねぇ。」ジロジロ


古鬼「な、何かしら?」


曙「いつも美味しい野菜ありがとね。」


古鬼「え・・・?いえ買ってもらっていたのでこちらが御礼を言わなければ・・・。」


磯風「相場より安く提供してもらっていたんだ。予算が少ないここでは感謝しきれないくらい感謝しているぞ。」ナデナデ


古鬼「そ、そう。」


時雨「ところで鹿島さん。頭にコブを作って如何したのかな?ぶつけたの?」


鹿島「えっぐ・・・お兄様が・・・。」


提督「へぁ!?」


夕立「提督さん、暴力はいけないっぽい!」


初雪「パラハラ・・・。訴えるべし!」


鹿島「いいのです。今回は全面的に私が悪かったのですからお兄様を責めないでください・・・。」


夕立「でも・・・!」


鹿島「お兄様が今回の騒ぎの説教をするために起こしに来て、目が覚めたら目の前にいてそれに驚いてベッドに頭をぶつけたのです・・・。」


長波「・・・。」


望月「先生らしいと言えばらしいね。」


響「Да.」


不知火「ところで司令。初月さんの姿が見当たりませんが。」


提督「あぁ、昨日遅くまで起きていたからな。まだ夢の中だ。」


不知火「そうですか。」


明石「はい、コキちゃん。入場許可証と契約書です。私のほうで発行(改竄)しておきましたから常時持っててくださいね。」


古鬼「ええ分ったわ。何から何までありがとうございます。」


夕立「ねえコキちゃん。コキちゃんはどうしてそっちを抜けたの?」


古鬼「そうね・・・。嫌になったから、かしら。」


夕立「・・・ぽい?」


古鬼「戦闘なんて真っ平御免だし、ただ静かに暮らしたかったのに急進派の奴らが海を荒らすのなんて見ていられなかったわ。でも貴方達の言葉で言う穏健派は絶対数が少ないし抵抗もできない。だから海を出たわ。陸も案外悪くなかったしね。」


時雨「でも深海棲艦が地上にいるって知れたら連行されないのかな?」


提督「申請は出したンだろ?」


古鬼「ええ。」


長波「申請?まさか亡命とか?」


提督「正解、良くわかったな。」


長波「・・・冗談で言ったンだがな。」


提督「軍に協力を誓う代わりに観察の上で普通に暮らせる。だとか。」


古鬼「そうね。艤装の提供の代わりにあの住まいを頂いたわ。」


磯風「我らの知らないところでそんな取引があったのだな。」


提督「一応重要案件だから他言無用で頼む。」


一同「は~い。」


提督「そういえば朝飯まだだったな。喰っていくか?」


古鬼「いえ、開店の準備もあるからお暇するわ。」


提督「そっか。じゃあまた後でな。」


古鬼「ええ。では皆様ごきげんよう。」


夕立「うん、またね♪」


長波「今度遊びに行くからなー。」


時雨「しかし僕達が食べていたものを彼女が作っていたなんてねぇ。どうして教えてくれなかったんだい?」


提督「別に隠していた訳じゃないが聞かれなかったからな。」


初雪「なにそれ、言い訳っぽいね。」


提督「いやさ、深海棲艦が作った野菜って分ってたら食うか?」


磯風「私は食べるな。配給品とは格段に美味さが違う。真心を込めてつくってくれれば深海棲艦だろうが気にはしない。」


提督「そうか。磯風のそういうところはいいと思うぞ。」ナデナデ


磯風「し、司令///」


夕立「でも真心を込めて作っても磯やんのご飯は美味しくないっぽい・・・。」


望月「なー。」


長波「あたしに振るな。」


磯風「くっ!」


お届け物


ジッ・・・ジリリリリリン


備え付けの黒電話が鳴る。


不知火「はい、***鎮守府です。」


?「おるかー?」


不知火「はい?どちら様でしょうか?」


?「よーし、おるな。行くわ!」


不知火「・・・は?」


提督「誰から?」


不知火「さぁ。」


提督「?」


ピンポーン


今度はチャイムがなる。


?「きたで!」


不知火「電話口の声ですね。ちょっと行ってきます。」


提督「ん。」




不知火「お待たせしました。」


?「ここやで。」トントン(はんこ押すとこを指で叩きながら)


不知火「・・・。」


ドアを開けると中年くらいの男がダンボールと受領書を持って立っていた。


?「ここや、ここ。」


不知火「は、はい。」


?「ん、まいどおおきに!」


判子を押すとそのダンボールを渡し颯爽と駆けて行った。


不知火「・・・。」




不知火「戻りました。」


提督「おう、誰だった?」


不知火「伝票にはSAY-NO運輸と書いてますね。」


提督「・・・ああ。SAY-NOはやはり神だったか。」


不知火「はぁ?」


提督「分らないならいい。」


不知火「そうですか。司令宛の小包ですがどうしますか。」


提督「俺宛?誰からだ・・・って本営か。とりあえず開けるか。」ガサゴソ


提督「何だこれ・・・カーディガン?」


不知火「と、紙切れも入ってますね。」


提督「最近寒くなってきたので皆さんでお使いください。大淀より。・・・か。」


不知火「見てください、帝国綜合衣料製ですよ。」


提督「ほぉ結構値段するやつだな。んじゃ支給1番は不知火で、ほれ。」


不知火「いいのですか?」


提督「良いも何も不知火達が着るものだからな。大切にな。」


不知火「はい。」


提督「そういえば不知火の私服姿って見たことないが普段はどんなのを着るんだ?」


不知火「不知火は非番でも制服を着ていますね。」


提督「何で?。」


不知火「非番と言えどもしもの事があっても直ぐに対応できるからです。」


提督「ふ~ん。さすが艦隊一の真面目ちゃんだな。」ナデナデ


不知火「///」


提督「と言う事は私服を持っていないのか?」


不知火「そうですね。強いて持っていると言えば運動着くらいですかね。」


提督「そうか。なら今度壱ノ関(仮称)まで買いに行くか?」


不知火「いえ、お気になさらず。」


提督「いや行くぞ。折角の可愛い子がお洒落をしないなんて勿体無い。」


不知火「し、しかしそれでは皆さんに悪いです。」


提督「なに、日ごろの感謝の意をこめて何か一つずつプレゼントをしようと思っていたんだ。それならいいだろ?」


不知火「・・・。分りました、お言葉に甘えますね。」


提督「よろしい。」


不知火「でも不知火に合うようなお洋服はありますでしょうか・・・。」


提督「そうだな・・・本営附属の漣が言っていたのだが不知火みたいな髪の子は暗い色の服が似合うとか。その制服も似合っているが暗い色か・・・。メイド服とかどうだ?」


不知火「俗に言うこすぷれですか?」


提督「興味あるか?」


不知火「無いといったら嘘になりますがここでそのような服を着れば場違いもいいところですね。」


提督「そうか?新鮮味が合って逆にいいかもしれんぞ。」


不知火「そうでしょうか・・・。司令のお宅にはメイドさんや給仕係の人はいるのですか?」


提督「いや。アイツ(鹿島)が殆どの家事をしていたから居なかったな。」


不知火「さすが先生です。」


提督「まぁそれはさておき試着してみたらどうだ?」


不知火「そうですね。ではこれにしましょう。」


個別包装されてあるビニール袋を開け袖を通す。


不知火「・・・暖かいですね。」


提督「似合ってるぞ。」


不知火「ありがとうございます。」


提督「常々思っていたンだけどスカートで海に出るって寒くないのか?」


不知火「慣れた、と言うのもありますが艤装が発熱して程よく暖かいですので。」


提督「なるほど。じゃあ逆に夏は暑いな。」


不知火「ええ、ですから不知火はどちらかと言うと寒い方が好きです。」


提督「そっか。」


すっと立ち上がり外套を羽織る。


不知火「司令、どちらへ?」


提督「ちょっと古鬼のとこに先週分の支払いをしに行ってくる。」


不知火「でしたらお供致します。」


支給されたばかりのカーディガンが早速役に立ったようだ。



一歩前に


運転手「・・・きろ。」


?「・・・。」


運転手「起きろって言ってんだよこのガキ!」


?「ひゃう!?」


運転手「ったく、手間かけさせやがって・・・。」


?「ご・・・ごめんなさい。」


運転手「いいからさっさと降りろ!」


?「う、うん・・・。」


一緒に積んできた小さな鞄を持ち輸送車から降りる。


?「・・・。」


運転手「・・・チッ、艦娘ってのは礼の一つも言えないのかよ。」


アクセルを勢いよく踏み込みわざと排気ガスをかける様にして去っていった。


?「・・・もう、やだよぉ。」


守衛の居ない門の前に一人置かれ既に半べそをかいている。


曙「ん、あの子誰かしら?」


外出していたこの鎮守府の良心、曙が戻ってきた。


曙「ねぇアナタ、こんな所でなにして・・・(泣いている?)」


?「ふぇ?」


曙「ひょっとして迷子かしら?」


?「ううん・・・今日からグスッ・・・ここに行けって言われて・・・きたの。」


曙「えっ?じゃあ艦娘なの?待って・・・その制服・・・。夕立と時雨のに似ている・・・。ってことは・・・。」


山風「白露型・・・八番艦の・・・山風・・・です・・・。」


曙「偶然ね、あたしは綾波型八番艦の曙よ、よろしくね。」


山風「え・・・あ、はい・・・よろしくです。」


曙「それはそうとあなた何で泣いているのよ、艦娘なら・・・いえ何でもないわ。提督のとこに案内するから着いてきなさいな。」


山風「・・・はい。」


曙「それと、そんな顔じゃ笑われるわよ。はい。」


ハンカチを手渡す。


山風「でも・・・。」


曙「いいわよ別に、支給品だし。」


山風「・・・ありがとう・・・です。後で洗って返します。」


曙「そう。」


---

--

-


コンコン


曙「曙よ、居るかしら?」


提督「居るぞー。」


曙「ただいま戻ったわ。それと・・・。」


提督「うん?」


山風「失礼・・・します。」


提督「そちらは?」


曙「今日からここに配属になった子よ。」


提督「はい?そんな話聞いてないぞ?」


曙「はぁ!?」


山風「ひゃう!?」


曙「え・・・ちょ・・・。聞いてないってどういうことなのよ。」


提督「どうもこうも、聞いてないものは聞いていない。」


山風「・・・。」


曙「話が・・・見えないわ。」


提督「ふむ・・・俺はここで指揮を執っている○○だが君の名前は?」


山風「・・・山風、です。」


提督「山風ちゃんか・・・いい名前だね。前の所属はどこだったのかな?」


山風「・・・×△鎮守府・・・です。」


提督「・・・そうか。」


曙「何、どうしたの?」


提督「いや、あそこの提督の親父が内閣に入っていてな、嫌みったらしいというか威張るのが好きな奴でどうも好きになれない。」


曙「へぇ・・・。」


提督「それに俺とそんなに歳が変わらないのに中将だ。予算も権限も大きく、それで大砲巨艦主義と来た。絵に描いたような軍人だ。っと、悪い。貶すつもりで言ったわけじゃないぞ。」


山風「別に・・・良い・・・です。私・・・提督とお話したこと無かったから・・・。」


提督・曙「・・・。」


山風「戦闘が・・・夜が特に怖くて部屋に閉じこもっていたし・・・、他の艦娘の人の名前も顔も分らなかったから・・・。あの・・・提督さん・・・。」


提督「ん?」


山風「やっぱり・・・出撃しないと・・・ダメ・・・ですか?」


提督「んー・・・そうだなぁ。」


山風「あっ。」


提督「どうかした?」


山風「あたしの艤装・・・出撃しないなら戦艦の近代化改修に使う・・・って持っていかれたの・・・。」


曙「なによそれ、横暴もいいところだわ!」


提督「まぁ落ち着いて。」


曙「でも・・・!」


提督「夕立のがある。白露型適合者なら使えない事はないだろう。それにね山風ちゃん。」


山風「はい・・・?」


提督「怖いなら無理に出撃しなくても良い。だが、出来る事はやってもらうぞ。」


山風「・・・わかり・・・ました・・・。」


提督「そうだな・・・とりあえず夜の相手をしてもらおうか。」


曙「はぁ!?ちょっと何を!?」


提督「何って夜が怖くなくなるように話し相手でもと。書類整理が終われば俺も予定が空くからな。」


曙「あ・・・あぁ、そう///」


提督「ん?」


曙「なんでもないわ!」


提督「ふむ?それと少しでも早くここに居る子と仲良くなること。見て分るようにボノちゃんのように優しい子たちばかりだからそこは問題ないと思うが。」


曙「おだてても何も出ないわよ///」


山風「うん・・・、頑張り・・・ます!」


試食


磯風「全く、司令はいつも私に面倒ごとを押し付ける。まぁ信頼されているとでも言っておこうか。」


両脇に荷物を抱え廊下を歩く。


磯風「だがどうして私が秘書艦長なのだろうな。私より手際が良い奴は居るぞ・・・。まさか私のことを好いて・・・いや、どうだろう。」


自信家で少し自惚れな一面があるがそこが可愛い所である。


磯風「真昼間から何をかんがえているんだ私は。司令、頼まれていた物を持ってきたぞ。」


手が使えないので足でドアを開け執務室へ入る。


山風「ひゃう!?」


磯風「む?」


突然入ってきた磯風に驚いて声を上げる。


磯風「ああ君か、驚かせてすまないな。司令は?」


山風「・・・居ない。」


磯風「居ない?」


山風「ぎょぎょ・・・?へ行くって言ってた。」


磯風「漁協か、確か会議があるとかなんとか。それで、君はここで何を?」


山風「・・・日向ぼっこしてたの。この部屋・・・暖かくて好き。」


磯風「そうか。確かに冬でも晴れていれば暖房が要らないほどだ。今日は夕立と時雨とは一緒ではないのか?」


山風「ううん、コキちゃんの所へ遊びに行ったよ・・・。」


磯風「君は行かないのか?」


山風「・・・お外は怖い。ここに居た方が良い・・・。」


磯風「なにが怖いって言うのだ。治安は良すぎるし車も少ない。強いて言えば熊が出るくらいだが。」


山風「熊・・・。十分怖いよ・・・。」


磯風「そうか?熊なんぞこうやって・・・目玉を突けばなんてことはない。」


手をVの字にして目潰しのしぐさをとる。


山風「貴女の方が怖いかも・・・。」


磯風「ふむ?あぁそうだ、暇なら少し付き合ってくれないか?」


山風「え・・・何するの?」


磯風「新作の菓子の試食を頼みたいのだが。」


山風「お菓子・・・?うん、いいよ。」


磯風「おぉそうか!皆に頼んだのだが何故か全員に断られたのだ、いやありがたい!」


先ほど運んできた箱の一つから小皿を取り出す。


磯風「この磯風特製、ズンダ餅だ。」


山風「ズンダ餅?」


磯風「とある地方の郷土料理で“づんだもづ”とも言うらしい。茹でた豆を潰して餅と混ぜ合わせたもので比較的簡単に作れたぞ。」


山風「でもこれ・・・お味噌じゃ?」


磯風「あぁ、生の豆が無かったので代用した。同じ豆だからさして差はあるまい。まぁ食べてみてくれ。」


山風「う、うん。いただき・・・ます。」ハムハム


磯風「どうだ?」


山風「・・・。」


磯風「・・・。」ソワソワ


山風「少し甘いお味噌を焦がしてあって・・・香ばしくて・・・美味しい。」


磯風「おお!」


山風「だけど・・・焼き味噌おにぎりのご飯がお餅になっただけ・・・?」


磯風「ふむ・・・やはりそうか。私も調理の終盤でふとそう思ったのだ。どう考えても焼きおにぎりでズンダ餅ではないと。」


山風「ええ・・・。」


磯風「だから私はコレをズンダ餅もどきと命名した。」


山風「・・・みそ餅じゃダメ・・・なの?」


磯風「それも考えたが調べたところ山形に伝統料理としてあるそうだ。それでは失礼だと思ってもどきとつけたのだが。」


山風「そう・・・でも・・・。」


磯風「?」


山風「とても優しい味・・・。愛情がこもっている・・・?食べると幸せな気分になれる。」


磯風「!? そうかそうか!君は分ってくれたか!料理人(?)の気持ちが理解できる君とは仲良くやれそうだ!」


山風の手を握り大喜びをする。


山風「あぅ///」


夜食


初月「もう・・・ダメだよ・・・!」


望月「まだ我慢シテ。ほら、初月君のこんなに大きくなってる。」ツンツン


初月「あっ///さわ・・・らないで・・・!」


望月「ふふ・・・また膨らんだね。」ツンツン


初月「あぅ・・・。」


望月「それじゃぁ・・・いただきます。」


初月「ふぁあ!?」


望月「ん・・・おいひい。」


初月「あ・・・くぅっ!」


望月「ほら、こんなにトロトロしてるよぉ。」


初月「見せるなぁ!」


望月「んふふ。それにしても初月君が猫舌だったなんて意外。」


初月「意外で悪かったね!僕が焼いていた餅を食べるなんて酷いよ!」


望月「喰うか食われるか(?)の世界、早いもの勝ちだよ♪」


初月「ぐぬぬ・・・!」


望月「ほら、お姉ちゃんが冷ましてあげるから機嫌なおしてよ~。」


望月「・・・うん。」


七輪の上で焼いていた餅を小皿に取り息を吹きかけ冷ます。


望月「ふー・・・ふー・・・、醤油で良い?」


初月「うん。」


望月「はい、あーん。」


初月「さすがにそれは恥ずかしいよ///」


望月「い・い・か・ら!」


初月「むぐぅ!?」


強引に口の中へ押し込まれる。


望月「美味しいでしょ?」


初月「むぐむぐ・・・うん♪」


満面の笑みで咀嚼する。


望月「んはっ。初月君って美味しそうに食べるよね~。」


初月「そ、そうかな?」


望月「ほんと可愛いね。」ダキヨセ


初月「わわっ。」


望月「ほら、お姉ちゃんに甘えても良いンだぞ~。」ニシシ


初月「でも・・・。」


望月「ん?」


初月「赤の他人の僕が・・・。」


曙と磯風の関係を羨ましく思う一方、周囲から変な目で見られないか不安にも思う。


望月「大丈夫!」


初月「・・・え?」


望月「仮に周りが四の五の言うようだったらあたしが許さない。ま、ここにはそんな子は居ないけどね。」


初月「望月さん・・・。」


望月「違う。」


初月「へ?」


望月「お姉ちゃん。」


初月「望月・・・お・・・姉ちゃん。」


望月「うん、よく出来ました♪」ナデナデ


初月「えへへ///」


望月「あぁ^~弟サイコ-!」


初月「お姉ちゃんも提督と同じことを言う!」ポカポカ


望月「怒るなよぉ。」


提督「おう、二人して何騒いでるんだ?」


望月「げ・・・!」


初月「あ・・・。」


提督「・・・。」


机の上で香ばしく焼けている物を発見する。


望月「いや・・・これは・・・。」


提督「備蓄用の食材が減っていると思っていたが犯人はお前達か・・・。」


初月「提督、これは!」アタフタ


提督「まぁ腹が減るのは仕方ないよな。」


望月・初月「え?」


提督「それ、もう直ぐ期限切れで処分しようと思っていたからな。」


望月「ほっ・・・。」


提督「だが銀蝿には変わりがない。」


初月「ぐ・・・。」


提督「口止め料に俺にも一つ焼いてくれ。」


望月「ん、あいよ~。」


提督「おお、寒い寒い。」


餅が焼けるのを待つため炬燵に入る。


提督「あ゛ぁ、暖まるわ~。」


望月「ヤバイよねこれ。」


提督「そういえばもうこんな季節になったんだなぁ・・・。」


網の上で焼ける餅を見て1年はあっという間だということを実感する。


初月「もうそろそろ大掃除を始めないとね。」


望月「掃除したところでボロ屋敷はボロ屋敷のままだよ。」


提督「それは反論出来ないが気持ちがすっきりするだろ?」


望月「そりゃあそうだけどさ・・・ぶっちゃけ面倒。」


提督「ははは、望月らしいな。あ、そういえば磯風にズンダ餅(?)を勧められたけどさてはグルだな。」


望月「んー、まぁそうなるね。食べたの?」


提督「いや、逃げた。」


望月「カワイソー(棒)」


提督「命が惜しいからな。」


初月「だけど山風が食べたけど何とも無かったって。」


提督「なに!?何ということだ・・・!」


望月「司令官?」


提督「山風だけは何が何でも魔の手から救わねばならなかったのに・・・!」


初月「魔の手?なんだいそれは?」


提督「ここだけの話だが磯風は御自慢の料理で上層部を壊滅させた事があるんだ。」


初月「へぇ・・・。待てよ、僕がこの前お腹を壊したときは確か・・・あぁ、合点がいった。」


提督「食ったのか?」


初月「うん。小麦が手に入ったからうどんを作っていてそれを分けてもらったんだ。」


望月「で、味は?」


初月「・・・しなかった。」


提督「は?」


初月「いや・・・薄味(?)だったかな。ダシの香りもしないし・・・よく分からない。でも麺は美味しかった・・・かな?」


提督「・・・ご愁傷様でした。」


初月「僕はまだ死んでないよ!」


望月「ははは。それにしても司令官は山風ちゃんにダダ甘だよね。」


提督「そうか?」


望月「そうだよ。ご飯のときは必ず隣だし楽しそうに会話してるし・・・ちょっと妬けちゃうなぁ。」


提督「仕方ないだう。なんかこう・・・歩き出した赤ちゃんみたいな?親心を擽られるというか・・・。」


望月「あー・・・分る。あわあわしていてちょっと心配だよね。保護欲が湧く。あたしらに子供ができたらあんな子かな?」


提督「だと良いな・・・って!何を言わせるんじゃ!」


望月「何って、将来計画?」


提督「そういうことじゃない!」


初月「これが噂の夫婦喧嘩か。」


提督「違わい!」


望月「何も違わないじゃん。ほら、喧嘩するほどなんとやらだし。」


提督「くっ付くな!」


望月「んふーふ♪」


初月「・・・。」


望月「どしたの?」


初月「僕に・・・僕に父さんと母さんがいたら二人のようなのかな、と思ってね。」


提督・望月「・・・。」


初月「・・・あっ、変なことを言ってしまってすまない。」


望月「あぁ、やっぱ可愛すぎる!」ダキ


提督「俺のことを父さんと呼んでも良いんだぞ!」ナデナデ


初月(これは・・・悪くないな///)


短編 山風と夜①


提督「・・・よし、今回の報告はこんなものだな。」


毎月提出する資材備蓄数の書類を作っている。


提督「どれ、一区切りついたし・・・。」


コンコン


提督「ん?」


山風「提督・・・入っても良い・・・?」


提督「お、山風か。良いぞ~。」


山風「失礼・・・します。」


提督「どうしたこんな時間に。もうすぐ消燈だぞ?」


山風「コーヒー・・・淹れてきた。」


提督「おお、ちょうど一服しようと思っていたんだ。ありがとな。」ナデナデ


山風「別に・・・いい///」


提督「んじゃ冷めないウチにいただくぞ・・・うん、ちょうど良い甘さだ。」


いつもはブラックしか飲まないが疲れたときは甘いものが恋しくなる。


山風「えへへ・・・、あの・・・提督・・・。」


提督「ん?」


山風「今日・・・今日はとても・・・とても寒いね。」


提督「だな、今期一番の冬将軍らしい。」


山風「冬将軍?なんだか強そう・・・。」


提督「あぁ、冬将軍ってのは厳しい冬を擬人化したもので本当は存在しないぞ?」


山風「そうなの・・・?ひとつ勉強になった・・・!」


提督「そうだ、コーヒーのお礼に良いものをあげよう。」


山風「ふぇ・・・?」


提督「確かここに・・・あった。三葵造船の総力を挙げて作った(らしい)湯たんぽだ。保温効果が凄いとか。」


山風「あり・・・がと。大切に使うね。」


提督「おうよ。」


山風「あれ・・・?提督、何か降ってるよ・・・?」


提督「んぁ?」


窓の外を指差され振り返る。


提督「あぁ雪か。今年初めてだな。」


山風「雪・・・?あれは雪って言うの?」


提督「そうだが、もしかしてみたこと無かった?」


山風「うん、綺麗・・・だね。」


提督「そうだな。」


窓明かりに反射する雪の結晶はなんとも美しい。


山風「ねぇ提督・・・。」


提督「ん?」


山風「もう少しだけ・・・ここで見ていても良い・・・?」


提督「・・・。特別だぞ?」


山風「うん♪」


あと5分で完全に消燈時間となるが、初めて見る雪に目を輝かせている山風をどうこうする術は持っていない。


窓から次第にあたり一面銀世界になる様子を眺めつつ眠りについたのであった。



お熱


時雨「・・・37.5度。参ったね・・・。」


脇に挟んでた体温計を確認する。


連日の寒さと乾燥にやられたらしい。


時雨「気をつけていたつもりなんだけどね・・・。」


時雨「少しだるいなぁ・・・。」


起床時間が過ぎているが思うように体に力が入らず再度横になる。


コンコン


山風「しぐ姉・・・起きてる・・・?」


時雨「山風・・・?うん、起きてるよ。」


山風「朝ごはんできたよ・・・まだ着替えないの?」


時雨「ごめん。風をひいたみたいで具合が悪いんだ。」


山風「え・・・大丈夫なの?」


時雨「うん・・・ちょっとだるくて熱があるけど酷くは無い・・・かな。」


山風「ご飯は・・・お粥でも作ろうか・・・?」


時雨「悪いからいいよ。」


山風「ううん。困ったときはお互いさま・・・。食べられるならしっかり栄養をとならいと・・・!」


時雨「・・・それじゃお言葉に甘えてお願いしようかな。」


山風「任せて・・・!」


時雨(・・・全く、いい子だよ。本当にね。)


山風特製のお粥が出来るまで少しの間眠りにつく。


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---

--

-


山風「しぐ姉・・・?」


夕立「お顔真っ赤っぽい~。」


時雨「・・・うん?」


提督「大丈夫か?」


時雨「・・・提督に夕立も。熱がある位で他は大したこと無いよ。」


提督「そうか。風邪薬を持ってきたから飲むんだぞ。」


時雨「わざわざありがとう。」


山風「起きて直ぐだけど食べれそう・・・?」


時雨「うん、おなかは・・・空いているかな。」


山風「そう・・・、熱いから気をつけてね。」


時雨「ありがとう、頂きます・・・。って、見られているとなんだか恥ずかしいね///」


夕立「時雨ちゃんがご飯を食べている時の顔を見ているとこっちまで幸せになるっぽい。」


提督「そうだな。女の子が頬張っているのって何かいいよな。」


時雨「二人とも何言っているのさ///」


提督「まぁ夕立は頬張るというか貪るだがな。」


夕立「夕立はそんなにお下品じゃないっぽい!お上品にナイフとフォークも使えるっぽい!」


提督「ほー・・・。じゃあナイフはどっちの手だ?」


夕立「えっと・・・お箸を持つ方がこっちで・・・こう・・・ザクっと!」


右手でナイフを持ち切る仕草をする。


提督「じゃあフォークは?」


夕立「フォークもお箸を持つほうで・・・ブスっと!」


全員「・・・。」


時雨「夕立・・・?」


夕立「実は使ったことないっぽい・・・ぽい・・・。」


さっきまでの威勢はどこへやら。シュンと落ち込む。


提督「・・・ま、日本人なら箸が使えれば問題ないよな!」ナデナデ


夕立「っぽい♪」


時雨「はは、じゃあ気を取り直していただきます。・・・うん、美味しい。」


山風「♪」


夕立「時雨ちゃん夕立にも、あーん。」


提督「さっき朝飯食べたばかりだろ?」


夕立「だって美味しそうなんだもん!」


山風「ゆう姉、後で作ってあげるから・・・。」


夕立「やったー!」スリスリ


山風「あまり・・・くっ付かないで///」


提督「やっぱ犬みたいだよな、夕立って。」


夕立「夕立は犬じゃなくて幽霊っぽい!」


提督「あ、遂に認めたな。」


夕立「だって響ちゃんが中ニ病(?)みたいでかっこいいって言ってたんだもん!」


提督「あぁ・・・響ね。うん、まぁ・・・そうだな。さてと・・・風邪をうつされる前に退散しますか。」


夕立「っぽい!」


提督「時雨、食べ終わったら暖かくして寝るんだぞ?何かあったら内線で呼んでくれ。」


時雨「うん、そうするよ。」


提督「じゃあお大事に。」


夕立「お大事に~。」


山風「・・・。」


時雨「・・・ん。どうしたんだい?」


山風「元気になるおまじない・・・かけてあげる。」


時雨「おまじない?折角だしお願いしようかな。」


山風「うん。」


小さくうなずくと時雨に近寄る。


時雨「それで、おまじないってどういう・・・の・・・?」


一瞬お粥が入っている土鍋に視線を向け再度顔をあげると山風の顔が目の前にある。


山風は優しく時雨の頭に腕を回し自分のおでこと時雨のおでこを合わせる。


時雨「あの・・・えっと・・・。」


山風「目を瞑って・・・?」


時雨「え・・・あぁ、うん。」


山風「Αγαπώ・・・την・・・αδελφή・・・μου. Προσευχόμαστε・・・τόσο・・・νωρίς・・・κρύο・・・θεραπεύεται.」


時雨(何語・・・かな?意味は分らないけれどとても優しい響きだね。)


山風「これで・・・大丈夫。」


時雨「うん・・・ありがとう///」


山風「あれ・・・さっきより顔あかくなってるよ?」


時雨「あぁこれは違う意味でだから大丈夫。君も風邪がうつる前に出た方がいいと思うよ!」


山風「ん・・・そうする。」


時雨「・・・。不意打ちは得意じゃないなぁ///」


襲撃?


初雪「はぁ・・・はぁ・・・!」


いつもは歩くのも気だるそうな彼女が血相を変えて走っている。


初雪「司令官居る!?」


提督「おわっ!?何事だ!」


初雪「これ見て!」


提督「電報・・・?」


初雪「あわわわ・・・。」


提督「ウンヨク、マトマッタヤスミガトレマシタノデ、アソビニイキマスネ。オオヨド・・・はぁ・・・初雪。」


初雪「なに・・・?」


提督「後は任せたぞ!」


初雪「ちょ!?」


いつもの如く窓から逃げる。


初雪「どどどどどど、どうしよ・・・!来ちゃうよ・・・。」


大淀「誰が来るのですか?」


初雪「ぎゃぁあ!?出たぁぁぁあ!」


大淀「もうなんですか、まるで幽霊を見たかのように。」プンプン


初雪「いや・・・これは・・・その。まぁなんて言いますか・・・。」


大淀「変な初雪ちゃん。お久しぶり。」ナデナデ


初雪「うん・・・。」


大淀「ねえ初雪ちゃん。」


初雪「なぁに?」


大淀「一応私が出来る範囲で便宜を図っているけれど何か足りないこととかあるかしら?」


初雪「ううん・・・普通に暮らす分には大丈夫。」


大淀「そう、よかった-」


初雪「でも・・・。」


大淀「?」


初雪「圧倒的に甘味が少ない!」


大淀「甘味ですか・・・。間宮・伊良湖枠は規模の大きいところ優先で配備されていますし・・・現在は配備の予定は暫らくありませんね。」


初雪「・・・だろうね、言ってみただけ。」


大淀「・・・。そういえば《提督》くんは?」


初雪「逃げ・・・多分そのあたりに居ると思う。」


大淀「ふぅん・・・。」


初雪「・・・。」


大淀「そのあたりってどのあたり?」


初雪「・・・知らない。」


大淀「知らないわけないでしょ~?」ニコニコ


初雪「十中八九庭の東屋にいるかと思いマス!」


大淀「んふ、ありがと。」ナデナデ


初雪(・・・命の危険を感じた。)


---

--

-


提督「いや~マジ焦ったわぁ・・・まさか乗り込んでくるとはな・・・。」


大淀「誰が乗り込んできたのですか?」


提督「誰ってそりゃ・・・あ。」


大淀「お久しぶりです。」ニコニコ


提督「お久しぶりでございますであります!(混乱)」


大淀「変な《提督》くん。はいお土産、帝都名物の人形焼よ。」


提督「えっ!?・・・あ、ありがとうございます。」


大淀「いいえ~。」


提督「・・・本当に助かります。ここでは取り寄せるにも一苦労ですから。」


大淀「そう、喜んでもらえてよかった。あ、一つ気になる事があるのだけれど。」


提督「なんでしょうか?」


大淀「《提督》くんはどうして私に対しては敬語なの?昔は---ちゃんって呼んでくれたのに。」


提督「それは・・・。」


大淀「・・・?」


提督「・・・。」


鹿島「お兄様、朗報ですよ~!」


提督(助かった!)


鹿島「遠征先で資源を分けて・・・って大淀さん、お久しぶりです!」


大淀「あら鹿島さん、お久しぶりですね。」


鹿島「今日はどのような御用件でいらっしゃったのですか?」


大淀「用件って程じゃないの。たまたま休みが取れたから《提督》くんの顔を見に来たのよ。」


鹿島「そうでしたか。あっ。」


大淀「?」


鹿島「大淀さん、いつもお兄様を助けて頂いてありがとうございます。」


提督「ちょ!?」


鹿島「お兄様は常々、私たちの生活水準が向上したのは大淀さんのお陰だと仰っていました。私からも感謝を申し上げます。」


大淀「他ならない《提督》くんと皆さんの為ですもの、お礼を言われるほどでもないわ。」


提督「・・・いや、実際助かっています。もし御支援がなければ今頃どうなっていたか想像もつきません。私からも感謝の意を申し上げます。」


大淀「・・・なんだか面と向って言われると照れてしまいますね///」


提督「このご恩はいつか必ずお返しします。」


大淀「そう?でしたら一緒にお出かけでも、ね?」


提督「・・・考えておきます。」


鹿島「もう、お兄様ったらどうしてそこで濁すのですか?本当は行きたいのに-」


提督「誰が行きたいと言ったこのタコ!」


鹿島「ひゃう!?」


大淀「・・・行きたくないの?」


捨てられた子犬のような瞳で見つめる。


提督「いや・・・あの・・・その・・・。」


大淀「・・・ふっ、冗談ですよ?」


提督「っ!・・・はぁ、負けました降参です。どうです、何も無い所ですが一緒に散策でも?」


大淀「待ってました。と言いたい所ですけどそろそろお暇しませんと。」


鹿島「え、もうですか?」


大淀「ええ、3日間のお休みを頂いたのですが往復だけでもギリギリなんです。」


提督「でしたらお見送りでも・・・。」


大淀「それは遠慮するわ。一緒に歩くのはまた今度ね♪」


提督「・・・ええ。」


にこっと笑うと軽くお辞儀をし今来た道を戻っていった。


提督「・・・。」


鹿島「もう、お兄様はどうして大淀さんに他人行儀なんですか!」


提督「・・・煩い。」


鹿島「・・・何と仰いました?」


提督「じゃかあしいわ!何があってもお前だけには教えねーよ!」ビシィ


鹿島「あう!?」


着替え


長波「・・・。」ジー


古鬼「・・・。」


長波「・・・。」ジー


古鬼「・・・何かしら?」


長波「いや、コキってさぁ・・・。」


古鬼「・・・。」


長波「結構おしゃれだよな。」


古鬼「・・・私が?」


長波「あぁ。和服にブーツってハイカラさんみたいだし何かカッコいい。それにその髪飾りも良いアクセントになってるよ。」


古鬼「ふぅん・・・私はそういうのに疎いから分らないけれど貴女達の目から見ればそうなのね。」


長波「なぁその服以外って着ないのか?」


古鬼「そうね、これと予備の同じような服しかないわね。」


長波「へぇ・・・そうだ。あたしの制服と取替えっこしてみないか?」


古鬼「貴女のと?どうして?」


長波「一度着てみたかったんだ。和服となると値が張るしホイホイ買えるものじゃないからな。」


古鬼「・・・まぁ良いわ、交換してみましょ。」


長波「え、良いのか?サンキュー。」


扉の鍵とカーテンを閉め各々の服を脱ぐ。


長波「うわぁ~細せぇ。コキ、ちゃんと飯食ってるのか?」


古鬼「ええ3食欠かさず食べているわ。」


長波「へぇ~羨ましいな。あたしは食べた分だけ体についちゃうからなぁ・・・。」プルン


古鬼「貴女、それは嫌味かしら。」


大きく実ったものを揺らしながら貧相な体を羨む長波に問う。


長波「い~や、本心だよ。昔はさボンキュッボンッな体型に憧れていたけれど実際・・・胸だけ大きくなったけど邪魔でしょうがないんだぜ。」


古鬼「なら少し分けてもらおうかしら?」


長波「できればそうしたいぜ。」モミモミ


古鬼「ちょっと何を!?」


古鬼に抱きつき余り大きくないあれを揉む。


長波「バッテリーみたいに繋いだら移動できないかと思ってなぁ。」


古鬼「い、意味が分らないわ・・・あっ///」


長波「おっ、そんな声出せるんだ。」モミモミ


古鬼「う、うるさい・・・!いい加減にしなさい・・・って・・・んっ///」


長波「やべぇ・・・反応可愛すぎるだろ。」モミモミ


古鬼「んぁっ・・・ダカラ・・・イイ加減ニ・・・シナサイ!」


長波「わっ!?」


真っ黒な瘴気を放つとともに長波を振りほどく。


古鬼「貴女ハ痛イ目ヲ見ナイト分ラナイヨウネ・・・オ仕置キヨ。」


長波「待て!あたしが悪かった、スマン。この通りだ!」


古鬼「私ガ受ケタ辱メ・・・確リト返スワ・・・フフフ。」


長波「顔が怖いンだが!」


古鬼「大丈夫、痛ミハ一瞬ヨ。」


長波「話せば分る!落ち着こうぜ、なっ?」


古鬼「コノ期ニ及ンデ何ヲ話スト言ウノ?」


長波「お詫びの印にお納めください!」


戸棚の奥に隠していた四角い物体を差し出す。


古鬼「・・・コレハ?」


長波「日に3個しか作られていない幻のカステラだ、本営の奴らでも手に入らないものだぜ!」


古鬼「・・・まぁいいでしょう。」


長波(まぁ鹿島先生が焼いたヤツだからまず食えないよな。)


古鬼「何か言った?」


長波「いや、何も。それより早く着替えようぜ。」


古鬼「・・・ええ。(誰の所為だと思っているのよ。)」


それぞれ相手が着ていた服に袖を通す。


長波「あ・・・背中がキツイ。」


着られるが小柄な古鬼のもののためサイズが合わずつんつるてんの状態だ。


古鬼「・・・。」


逆にこちらは全体的にぶかぶかで袖が余っている。


長波「これじゃあ着物と言うより浴衣だな、ミニの。」


古鬼「自分の服を見て言うのもアレだけど・・・貴女、結構破廉恥ね。」


閉まりきらない胸元に袴のようなスカートから伸びる肉付きのいい太ももが何とも艶かしい。


長波「褒め言葉として受け取っておくぜ。そういうコキは・・・なんかウチの姉貴みたいだな。」


古鬼「あら、姉妹が居るの?」


長波「あぁ。上から下まで19人姉妹だ。」


古鬼「・・・貴女のご両親、頑張ったのね。」


長波「ん、あぁ違うそうじゃないンだ。」


古鬼「というと?」


長波「あたしは孤児でさ、本当の両親の顔が分らないのよ。」


古鬼「・・・ごめんなさい。」


長波「いいって気にしてないから。それで、あたしを引き取ってくれた○○夫妻ってのがこれまたいい人達でな、感謝してもしきれないぜ。」


古鬼「・・・そう。貴女のお姉さまも艦娘なのかしら?」


長波「ん、元な。」


古鬼「あっ・・・。」


長波「別に轟沈したわけじゃないからそんな顔しなさんなって。まぁ脱走はしたけどな。」


古鬼「えぇ!?」


長波「姉貴のダチに漫画家が居てな、そいつの手伝いをしていたんだがこのご時勢で発禁になったらしくそれに反抗して行方知れずだ。」


古鬼「・・・。」


長波「だけど時々サンプルとしてモノが送られてくるから生きてるのは確かだが。ほれ、その机の上にあるやつだ。」


古鬼「これね、結構薄いのね・・・読んでみても?」


長波「いいぜ。」


古鬼「題名は・・・まだ無いのね。」


長波「・・・。」


古鬼「・・・。」


黙々と読んでいるが徐々に顔が赤く染まる。


古鬼「ちょっと!こ、これは何なの!?男の人と女の人が・・・!」


長波「何って・・・同人誌だが?成年向けの。」


古鬼「そうじゃなくて!」


長波「じゃなくて?」


古鬼「え・・・あの・・・その///」モジモジ


長波「気になる?じゃああたしらもヤってみるか?」


古鬼「ふぇ!?こ、こういうのはお互いに好きな人達が・・・!」


長波「あたしはコキのこと好きだぜ?」


古鬼「わっ!?」


壁際に押し込み逃げられないようにする。


古鬼「わ、私に何をするつもりなの!?」


長波「言わなくても分るだろ?」


ニッっと不敵な笑みを浮かべる。


古鬼「あぅ・・・。優しく・・・してね・・・?」


長波「ああ。」


古鬼は震えながら目を閉じ受け入れようとする。


我、夜戦に突入す・・・?


《はい》  《いいえ》



邂逅


初雪「・・・寒い、もう帰りたい。」


磯風「おいおい、まだ予定航路の半分も過ぎていないぞ?」


不知火「ですがこのような風とうねりでは初雪さんの気持も解らなくもありませんね。」


今日の警備はこの3人組だ。


初雪「せやかて工藤、こんな時化じゃあ深海棲艦も休業しているでしょ?」


不知火「不知火は工藤ではありません。そもそも時化ているから出ないなどという確証はありません。その逆もしかりですが。」


磯風「そうだぞ、それに出撃回数が少ない君にとっていい運動の機会じゃないか。」


初雪「・・・何さ二人して。じゃあちょっと休憩しようよ、おなか空いたし。」


磯風「そうだな・・・そうするか。」


懐から取り出した懐中時計の針は正午を過ぎている。


不知火「ではあの島に投錨しますか?」


磯風「うむ。」


2海里ほど先に見える島へと針路を変える。


---

--

-


初雪「ふぅ~・・・やっと着いた。」


不知火「どこか腰掛けられる所は・・・あの岩なんてどうでしょう?」


磯風「濡れては・・・いないようだな、あそこにするか。」


波と風雨に削られちょうど良く平になっている岩に座り弁当箱を開ける。


初雪「おぉ、美味しそう。」


おにぎりと卵焼き、定番中の定番だ。


磯風「・・・。」ソワソワ


不知火「・・・いただきます。」


初雪「いただきます!」


竹串で卵焼きを刺し頬張る。


磯風「・・・。」ソワソワ


初雪「・・・うん?なんかいつもと味が違うような・・・。」


不知火「そう・・・ですね。甘みが少なく魚・・・いえ、出汁の香りが凄いですね。」


初雪「先生が作るのとはまるで別物・・・ってことは・・・!」


磯風「この私が作ったのだ!どうだ、美味いか!?」フンス


初雪「えっ・・・。ま、まぁ美味しいんじゃない?」


不知火「悪くはありませんね・・・。」


磯風「そうかそうか!練習した甲斐があったぞ!さぁ握り飯も私が作ったのだ、食べてみてくれ!あ、ゴマが振ってあるほうが昆布だぞ。」


初雪「・・・しょっぱ!・・・くない、ちょうどいい塩加減。」


不知火「これは驚きました。まさかここまで上達していたなんて・・・。」


磯風「山風に協力してもらったからな。彼女は私が作ったものの試食を喜んで引き受けてくれるのだ。」


初雪(カワイそう・・・。)


磯風「む、カワイそうとか思っただろう?」


初雪「うぇ!?そ、そんなことないし!」


磯風「そうか。いや、鹿島先生は料理の指導も上手い、日に日に上達していくのが分るぞ。」


不知火「なるほど先生ですか、納得です。」


磯風「いつかはまた食堂を任せてもらえるよう努力しよう。」


初雪・不知火「・・・。」


磯風「何だその眼は・・・っておい、今あの洞窟で何か動いていなかったか?」


100メートルほど先にある洞窟の入り口を指差す。


初雪「気のせいじゃないの?無人島だよここ。」


不知火「野生動物でしょうか・・・?」


磯風「いや間違いない何かが居た。確かめてくる。」


不知火「待ってください、単独行動は危険です。不知火達も行きます。」


初雪「ちょ!?」


不知火「・・・。」ジロリ


初雪「あたしも行きます・・・。」


主砲を構え臨戦態勢で向う。


---

--

-


初雪「や、やっぱり見間違えジャナイの・・・?」


磯風「いいや見たぞ。白っぽい何かだ。」


不知火「白・・・野ウサギでしょうか?」


磯風「違うな。少なく見積もっても人の背丈はあったはずだ。」


初雪「それ、マジで洒落にならないし!」


磯風「まぁ見てみれば分るだろう。」


洞窟の前につき、そっと中をのぞく。


磯風「暗いな。」


不知火「探照燈をつけますか?」


磯風「ああそうしよう。」


磯風「ふむ・・・。島の規模から考えるとそんなに奥深くはないな。」


探照燈の明かりが岩に反射し置くまで見えるようになった。


初雪「もう戻ろうよ・・・。」


磯風「なんだ、怖いのか?」


初雪「こ・・・怖くは無いけど薄気味悪い・・・。」


磯風「なら問題あるまい。」


初雪「だめだ、会話にならない。」


磯風「・・・?さ、進もう。」


再度前進しようと奥へ明かりを向けたときだった。


不知火「居ました!・・・え・・・?」


岩陰には2人の少女の姿があった。


磯風「不知火!構えろ!」


不知火「!?」


白い素肌に輝く瞳。


深海棲艦だった。


身の危険を感じ咄嗟に主砲を向けるよう指示を出す。


?「待って!撃たないでくれ・・・!」


腕を上げ戦う意思を持たないことを示す。


磯風「命乞いか・・・。」


初雪「ねぇ、あの子・・・もしかして艦娘じゃない・・・?」


磯風「なんだと?」


腕を上げている少女の後ろで横たわっていた者を指差し確認する。


磯風「・・・ほう、人質か。」


?「違う!あ・・・違います。」


3人「・・・。」


?「そう・・・この子は艦娘よ。」


不知火「・・・貴女は深海棲艦ですか?」


?「・・・人間の言葉で表せばそうよ。」


磯風「・・・。少しどいてくれ。」


横たわっている艦娘に手をあてる。


磯風「酷い熱じゃないか!?」


?「・・・昨夜からこうなのよ、私どうしていいか分らなくて・・・。」


磯風「どうしたもこうしたもない!不知火、初雪、司令へ要救助者を発見したと連絡だ!」


不知火「了解です。」


初雪「うん。」


磯風「心配するな、必ず助けるぞ。」


?「え・・・。」


磯風「スマンが君にも同行を願う、良いな?」


?「・・・分ったわ。」


この二人が使っていたとみられる小さな筏に乗せ曳航する。


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曙「・・・はい、お茶よ。」


?「あ、ありがとう・・・。」


提督「それで、容態は?」


磯風「明石が言うには栄養失調と過労で免疫が落ちていたらしい。少し休めば治るそうだ。」


提督「それは良かった。初雪は?」


不知火「疲れたから引きこもると仰っていました。」


提督「・・・さいですか。そういえば自己紹介がまだだったな。俺は提督の***だ。君は?」


?「私は・・・・・・・。」


提督「ふむ・・・。」


懐から手帳を取り出す。


曙「なにそれ?」


提督「これか?これはな深海棲艦の図鑑だな、一応最新版だ。」


磯風「それは便利だな、我々の分はないのか?」


提督「いや、これしかないな。見たいときは貸すから声かけてくれ。」


磯風「了解した。」


提督「ふむふむ・・・。」ジー


?「あの・・・///」


提督「容姿からすると軽巡・・・いや駆逐艦か。艤装はもってるの?」


?「艤装・・・?あれは捨てたわ。」


提督「・・・そうか。片方の髪を結い・・・Yシャツ、もしくはベストのような服を纏う・・・もしかしてこれかな、“駆逐水鬼”」


磯風「言葉を理解しているので上級クラスかと思っていたがやはりそうであったか。」


曙「鬼か・・・。コキちゃんと同類かしら?」


提督「さぁどうだろ?一応駆逐ってなってるけどこっちで勝手に判断したやつだからな、正直アテにならない部分もあるが。」


曙「ふぅん・・・。あれ、今音がしなかった?」


不知火「ええ確かに・・・廊下のほうですね。」


提督「ん?この声は・・・。」


明石「あぁ、だからまだ安静にしておかないと危ないですって!」


?「だ、大丈夫よこれくらい・・・!」フラフラ


明石「点滴もまだ終わってないんですよ、足元も覚束ないのに何言ってるんですか!」


?「直ぐに終わらせるから心配無用よ。」


明石「もう・・・。提督、例の艦娘の子が“どうしてもお話したい”そうですよ。私は倒れても知りませんから!」


提督「は?・・・あぁ入ってくれ。」


?「失礼します。」フラフラ


よろめきながら扉を開け入ってくる。


?「このたびは救助していただきありがとうございました。」


深々と頭を下げる。


提督「あぁ・・・体調は・・・まだ良くないようだね。」


?「いえ、こちらの工作艦さんに手当てをしていただき歩けるようになりました。」


曙「でも顔が真っ赤じゃない。熱が下がってないのでしょ。」


?「これくらい問題ないわ。クロ、出立よ。」


駆逐水鬼(クロ)「・・・うん。」


磯風「待て、どこに行くつもりだ。」


?「・・・それはいえないわ。」


提督「・・・。磯風、不知火。」


磯風・不知火「・・・。」


提督「二人を確保し、ソファに座らせるように。曙ちゃんは寒くないように羽織物の調達を。」


磯風「了解した。」

不知火「了解です。」

曙「分かったわ。」


磯風と不知火はそれぞれの手を引き無理やり座らせる。


?「ちょっとなにを?」


クロ「・・・。」


提督「すまないがこのまま外に出すわけには行かないのでね。」


?「なっ!?」


提督「君たちみたいな可愛い子が行き倒れになるなんて見過ごせないからな。」


磯風「・・・司令、もっと別な言い方があるのではなかろうか。」


不知火「全くです。」


提督「もぅ、二人ともお堅いなぁ。あ、クロ・・・ちゃんだっけ?君には済んでいるけど自己紹介が未だだったね。俺は提督の***、君の名前は?」


?「・・・陽炎型、いえ元陽炎型駆逐艦9番艦の天津風よ。」


磯風「なに、奇遇だな。我らも陽炎型で私は磯風で---」


不知火「不知火です。」


天津風「・・・そう。」


提督「それで・・・元、とはどういうことなのかな?」


天津風「・・・。」


提督「・・・言いたくないのなら無理には聞かないけれど。」


天津風「・・・これを見れば分ると思うわ。」


提督「うん?・・・なん・・・だと!?」


磯風「・・・これは驚いた。」


不知火「・・・。」


右の拳に力を入れ前に差し出すと真っ黒な甲冑のようなものが蒸着される。


提督「・・・深海棲艦か。」


天津風「・・・半分艦娘、半分深海棲艦。と言ったところかしら。」


磯風「と言うことはまさか・・・。」


天津風「ええ、沈んだわね。」


提督「・・・なるほど。」


不知火「司令?」


提督「艦娘が沈むと深海棲艦に変化する可能性があるという論文があるのは知っているだろ?」


磯風「ああ、私達自身のことだからな。」


提督「論文があるということは誰かが見たり聞いたりしたから研究に至ったわけで、実際に目の当たりにしたら証拠となるわけだ。だがどうも半分と言うところに腑が落ちないな。通常は艦娘だったころの記憶や精神は殆ど残らないそうだが・・・。」


天津風「それはね、私の最期が敵に沈められたからじゃないからよ。」


提督「・・・詳しく聞いても?」


天津風「構わないわ、事実だもの。私はとある作戦中に潜水艦の攻撃を受けて大破し艤装の半分と連装砲君を失ったけれど応急処置でなんとか持ちこたえたの。戦闘海域を離脱し入渠施設があるところまで退避している最中にまた攻撃を受けて敵の手に落ちて弄ばれるくらいなら、と爆雷を使って自爆したわ。」


磯風「なんと・・・。」


天津風「でもどうしてかしら。海底に沈んだらクロちゃんが居てね、貴女は死ぬべきじゃないって懸命に助けてくれたの。」


クロ「///」


天津風「だけどそれはクロちゃんの仲間に対して反逆的な行為で追われることになったわ。二人で逃げ回ったけれど私は既に除籍になっていてどこの鎮守府でも受け入れてもらえず海を転々としていたわ。それにこんな姿だし深海棲艦と一緒だなんてどう見ても襲撃に来たようじゃない。」


不知火「・・・まぁ事情を知らないほうからすればそうでしょうね。」


提督「・・・じゃあさ、ここに来る?」


天津風「・・・え?」


提督「行くアテ無いんでしょ?」


天津風「そう・・・だけれど・・・。」


提督「さっきも言ったけどこのまま出て行ったら行き倒れるだろうし。」


天津風「でも・・・私達深海棲艦よ?」


提督「いいじゃんかっこ良くて。そういうゴツい装備は響あたりが喜びそうだ。」


クロ「だけど私達を匿っているって知られたら御迷惑が・・・。」


提督「なぁに、おおよ・・・知り合いに頼んで亡命申請を出せば問題ナッシング。その代わり監視がついて少々窮屈にはなるが。」


天津風「・・・本当に・・・良いの?」


提督「だからそういってるだろ?ここのモットーは来るものは拒まずだからな!」


磯風「遠慮するな。」


不知火「ええ、歓迎します。」


天津風「・・・クロちゃん・・・。」


クロ「・・・うん。」


天津風「・・・お、お言葉に甘えてよろしくお願いするわ。」


クロ「・・・よろしくお願いします。」


提督「あぁ宜しくな。」


天津風「本当に・・・ありがとう。このご恩は必ず返すわ。」


提督「いいって気にしなくても。それより今は体調を治すことを最優先に、分かったね?」ナデナデ


天津風「・・・はい。」


提督「磯風、あまちゃんを静養室に連れて行ってくれ。」


磯風「承知した。さ、行くぞ。」


天津風「え、ええ。」


ペコリとお辞儀をして磯風の後をついて行く。


提督「不知火はクロちゃんを・・・そうだなぁ、小会議室へ案内してくれ。そこを二人の部屋にしよう。」


不知火「はっ、どうぞこちらに。」


クロ「・・・うん。」


提督「布団とかは後で運ぶから少片付けておいてくれると助かる。」


不知火「お任せください、塵芥一つ残さず掃除いたします。」


提督「ははは、程ほどにな。」


不知火「ええ。」


二人も執務室をあとにする。


提督「・・・怒られないかな?いや怒るだろうなぁ、こんな勝手都合で使われて・・・。何か美味しいものでも送っておくか・・・。」


面倒な仕事を作って頼むのは良いが後々のお小言が気に病まれる。


提督「すみません大淀さん・・・。」


曙「ごめん、探すのに手間取ったわ・・・ってみんなは?」


羽織るものを取りに行っていた曙が戻ってきた。


提督「解散したぞ?」


曙「はぁ!?」


提督「だって戻ってくるの遅いし。」


曙「しょうがないでしょ!お客さん様の立派なやつなんてないしアタシの部屋まで戻って持ってきたんだから!」


提督「スマンスマン、そう怒るなって。」ナデナデ


曙「・・・フン!それで、あの二人はどうなったの?」


提督「・・・家族が増えるよ、やったねボノちゃん!」


曙「はぁ・・・やっぱり、そうなるのね。」


提督「あれま・・・嫌だった?」


曙「・・・そうじゃないわよ。提督は優しい過ぎるのよ・・・嫌じゃないけど。」


提督「・・・ん。今なんて?」


曙「何でもないわよ!」


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数日後の深夜


提督「さてと・・・日誌も書いたし寝るとするか・・・うわ日付変わってるし・・・。」


部屋の明かりを消して横になったときだった。


天津風「あの・・・提督・・・、まだ起きてるかしら・・・?」


提督「んぁ?あまちゃんか?起きてるぞ、入ってくれ。」


天津風「し、失礼するわ。」


提督「おー、どうしたこんな時間に?」


天津風「あの・・・えっと・・・そのね・・・。」


提督「?」


天津風「ふぅ・・・初めに言っておくわね。私を助けてくれてありがとう。」


提督「ん。」


天津風「また艦娘として生活できるようになって感謝してもしきれないわ。」


提督「別に気にしなくても良いさ、あまちゃんがクロちゃんと共に新しい風を運んできてくれて更に楽しくなったからね。」


天津風「でもやっぱり私の気が済まないの。だから・・・!」


提督「・・・へ?」


制服のボタンを外し顕な姿になる。


提督「ちょっ・・・何のつもりだ!?」


天津風「私にはあなたにあげられるものなんて何も持っていない・・・だからこの体を捧げるわ・・・。」


顔を真っ赤にし涙目で訴えながら寄りかかる。


提督「やめっ・・・ダメだ!」


天津風「・・・どうして?私の貧相な体じゃ満足させてあげられないから?」


提督「違う、そうじゃない!」


天津風「じゃあどうして・・・?」


提督「どうしてもこうしてもあるか!と、とりあえず服を着てくれ!」


脱ぎ捨てられた制服を強引に押し付ける。


それを受け取り渋々着衣する。


---

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提督「・・・。」


天津風「・・・。」


提督「・・・ねぇあまちゃん。」


天津風「・・・なに・・・かしら。」


提督「その・・・なんだ。気持だけ受け取っておく。」ナデナデ


天津風「・・・。」


提督「女の子がさ、そんなこと言うなんてとっても勇気が要るってのは理解しているつもりだ。だけどやっぱりそれは受け取れないよ。」


天津風「・・・理由を・・・聞かせてくれる?」


提督「・・・あぁ。その行為自体はどういう意味なのかは分るよね?」


天津風「ええ・・・、男女の交じり合いは-」


提督「みなまで言わなくても良い。今のあまちゃんの体には負荷が大きすぎて将来支障をきたすかもしれないんだ。それに持論だが互いに愛し合っていない場合するべきではないと思っている。勿論他者の考えを否定しているわけじゃないけれどな。」


天津風「あなたは・・・私の事が嫌いなの・・・?」


提督「んなことあるか、大好きで、大切に決まっているだろ?」


天津風「・・・私も。出会って日が浅いけれどあなたを愛しく思うわ・・・、優しくしてくれるのも全身で受け止められるくらいね・・・。だったら・・・?」


提督「・・・それでも駄目だ。俺には・・・婚約者(?)が居るんだ・・・。」


天津風「・・・そう。」


提督「・・・分かってくれたか?」


天津風「・・・ええ。でも・・・。」


提督「うん?」


天津風「あなたにとっての2番でも3番でもいいの・・・隣に居ても・・・良い?」


提督「・・・ああ、勝手に離れるんじゃないぞ?」


天津風「・・・うん///」


提督「良い子だ。それとねさっきはあげられるものなんて持ってないって言ってたけどそんな事はないよ。」


天津風「・・・どういうこと?」


提督「こうやって過ごす時間も大切な思い出となって残るんだ。だからここで一緒に沢山思い出をつくろうな?」


天津風「・・・ええ。あなたってロマンチストなのね。」


提督「よく言われる、まぁメルヘンチックだとか妄想癖だとか中傷(?)も受けるがな。・・・あっ!」


天津風「きゅ、急にどうしたの!?」


提督「明日・・・ってか今日は5時起きで要港部まで行くんだった・・・。」


天津風「あ・・・睡眠の邪魔をしてごめんなさい・・・。」


提督「あぁ大丈夫大丈夫。3時間寝ればなんとか持つから・・・多分。」


天津風「・・・無理はしないでね?」


提督「おうよ、そういうわけだからお休み。」


天津風「・・・あのっ!」


提督「まだ何か?」


天津風「・・・今日だけでいいの、一緒に寝ても良い?・・・その、疚しい意味じゃなくて隣で・・・という意味で・・・。」


提督「・・・。」


早く寝たいのとこのまま返すのも忍びないという思いで決断する。


提督「・・・あぁおいで。」


天津風「・・・うん♪」


春になったとは言え夜は肌寒い。


知らずのうちに平熱が高い天津風を湯たんぽの代わりに抱いて寝ていた。


それを起こしに来た望月に発見される。


望月「ふぁ~~朝だぞ~起きろ~・・・ってアマツン?」


提督・天津「zzz...」


望月「あらあらまぁまぁ仲良く抱き合ってまぁ・・・。あたしはそういうのに寛大だからね、気にしてなんか・・・。」


少し羨ましくなり布団に潜り俺の背中に抱きついて夢の中へと戻る。


出発時間になっても起きてこないのを不審に思い様子を見に来て曙にたたき起こされるまでもう暫らく寝ていよう。



短編  山風と夜②


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山風「zzz........んぅ・・・げほっ・・・。・・・今何時だろ・・・?」


喉に違和感を覚え目が覚める。


山風「・・・まだ1時前だ・・・。ちょっとうがいしてこよう・・・。」


隣で寝ている時雨と夕立を起さないよう抜き足差し足で食堂へと向う。


山風(うぅ・・・やっぱり、少し怖いな・・・。)


建物が古いため床は軋んで音を出し風で窓ガラスが揺れいかにも出そうな雰囲気が漂う。


山風「・・・。」


食堂の隣が初月の部屋なのでここでも細心の注意を払い扉を開ける。


山風「あたしのコップは・・・あった。」


夕立らがコキの店へ遊びに行ったときに貰ったピスカルと文字が入っているガラス製のコップが彼女のお気に入りだ。


キュッっと蛇口をひねり溜める。


山風「ガラガラガラ・・・・ぺっ、ガラガラガラ・・・・ぺっ。」


最小限の音を立てうがいを敢行する。


山風「・・・うん、さっきよりはよくなった・・・気がする・・・。」


再度蛇口をひねりコップを濯ぎ部屋へ戻ろうとした時だった。


食堂の窓際に気配を感じ視線を移す。


山風「んぅ・・・?きゃあっ!?」


月明かりに照らされた人影があり深紅の瞳が輝いている。


駆逐水鬼(クロ)「あぁ、驚かせてしまってごめんなさい・・・。」


山風「ふぇ・・・クロ・・・ちゃん・・・?」


クロ「・・・うん。」


山風「こんな時間に何をしていたの・・・?」


クロ「・・・星を。星を見ていたの。」


山風「お星様?」


窓庭に寄り空を見上げる。


山風「・・・綺麗、だね。クロちゃんはお星様が好きなの?」


クロ「好きかどうかは分らないけれど海の中に居た頃はこんな風景見たことなかったし見ていると夜も平気な気がする。」


山風「あなた・・・もしかして夜が苦手なの?」


クロ「・・・うん、可笑しいでしょ?」


山風「そんなことないよ、あたしも余り好きじゃない・・・。でも怖くて不安な夜でもお星様を見ているうちに眠ってしまうの。」


クロ「なんだか魔法みたいね。」


山風「うん♪・・・ねぇクロちゃん?」


クロ「ん、なに?」


山風「クロちゃんの名前の由来ってなにから来ているの?」


クロ「由来・・・そうね。あれはわたしと天津風が初めて上陸した島に萩という植物が生えていたの。その時は互いに名前を知らなかったし私には名乗るものがなかったわ。それで天津風が萩を別の国の言葉でクローバーと変えて呼んでくれたわ。いつの間にか略してクロになっていたけれど。」


山風「へぇそうなんだ。てっきり黒い服を着ているからクロちゃんだと思っていた。ごめんなさい。」


クロ「別に謝らなくてもいいよ。」


山風「・・・うん。ねぇ、その格好寒くないの?」


曙に縫い直してもらったとは言え薄手の格好に気がかりになる。


クロ「う~ん、そういわれればそんな気もするけれど・・・。」


山風「じゃあ・・・。」


クロ「?」


山風「こうすれば暖かくなるね。」


食堂の座敷においてある昼寝用の毛布を引っ張ってきて二人で被る。


クロ「え・・・あの///」


山風「クロちゃんとなら夜も怖くない・・・かも。だからもう少しお話したいな・・・駄目・・・?」


クロ「・・・良いよ、私も山風ちゃんのこともっと知りたいし。」


山風「本当はいけないけど夜更かしもたまにはいいよね・・・?」


кто ты


曙「・・・キモイ。」


響?「ふぇ・・・?」


曙「それよ、あざといのがなんか気持悪いわ。」


響?「そういわれても僕は・・・。」


曙「僕って・・・はぁ、最近禁酒していたとばかり思っていたけれどまた真昼間から呑んでるのね。」


響?「えぇ・・・僕、お酒は呑めないし飲んだことないよ・・・。」


曙「はいはい、酔っている人はみんなそういうのよ。」


響?「うぐぅ・・・。」


やれやれと溜息をつく曙と涙目で何かを訴える響。


曙「全く・・・。提督は仕事を放っておいてどこに行ったのよ・・・。」


提督「俺が如何したって?」


曙「あっ、戻ってきた。ねぇ、響がまたお酒飲んで酔っ払っているんだけど?」


響?「だから僕は・・・!」


提督「まぁなんだ・・・程ほどにな?」


響?「・・・ぐすっ、なんだよぅみんなして・・・。やっぱり僕は要らない子なんだね・・・。」


提督・曙「・・・?」


曙「もしかして泣き上戸だったかしら?」


提督「いや、違うんじゃないか呑めば攻撃的になるし。」


響?「うぇっぐ・・・僕なんてあの時沈んでしまえば良かったんだ・・・!」


提督「おいおい・・・。」


曙「これだから酔っ払いは嫌いなのよ・・・。響、部屋にまで連れて行くから休みましょ?」


響?「僕に・・・構わないでよぅ・・・!」


提督・曙「・・・。」


響「おや、騒がしいようだけど何かあったのかい?」


提督「ああ、響。実は響が酔っ払って・・・はぁ!?」


曙「ちょ・・・なんで・・・!?」


響「私がなんだって?」


提督「え・・・あ・・・響が二人?」


曙「私まで酔っているのね、うん。(錯乱)」


響「何を言っているんだい君たちは・・・っと。ふむ。」


泣き喚いているものの容姿を見て納得する。


響「・・・私だね。」


提督「まさか分裂した。とかじゃないよな?」


響「まさか、アメーバーじゃあるまいしそんなこと出来ないよ。」


曙「じゃあどう説明するのよ?」


響?「ひっぐ・・・だから説明したでしょ・・・異動してきたって・・・。」


提督「異動・・・?ボノちゃん?」


曙「ふぇ?・・・たしかそんな事言ってたような・・・。」


提督「ジー。」


曙「・・・。」


提督「うーむ・・・。とりあえずお話を聞こうか。ボノちゃん、ミラクルCを淹れてきてくれないか?」


曙「ええ。」


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提督「・・・どう、おちついた?」


響?「はい・・・ありがとうございます。」


提督「見て分ると思うけどここで指揮している《提督》だ。君は響ちゃん・・・でいいのかな?」


響?「・・・間違ってはいないよ。だけど・・・。」


響「だけど?」


響?「今の僕の名前は・・・デカブリスト。」


曙「・・・鰤、お魚かしら?」


響「Декабрист.なかなかかっこいいじゃないか。」


響?(デカ)「・・・だけど僕はこの名前嫌いだな・・・。」


響「なぜだい?」


デカ「この名前のせいで・・・僕の居場所が無くなったんだ・・・。」


提督「・・・詳しく聞いても?」


デカ「・・・うん。僕は半年くらい前に響からВерныйに転換するために改修を受けたんだ。」


響「ほう・・・。」


デカ「だけど資材を間違ったのか工程を誤ったのか分らないけど改修は失敗・・・とまでは言わないけど、Верныйにはなれなかった。」


曙「改修に失敗って・・・。」


提督「妖精さんが絡むからまず失敗なんてありえない・・・いや聞いた事がなかったな。」


デカ「艤装はできたけど、うんともすんとも動かなくてВерныйと名乗ることさえ許されなかった・・・。それに響でもなくなってしまって暫定的にДекабристと呼ばれていたんだ・・・。」


デカ「初めのうちは僕に気を使っていろんなことをしてもらったけれど、出撃もできないしДекабристとしての運用例もなくどう使って良いか分らない僕を置いておくほど余裕は無くなって司令官も愛想をつかしたんだろうね・・・。僕みたいな産廃を引き取ってくれるところがあるって放り出されたよ・・・うぅ。」


曙「産廃ねぇ・・・ふざけんな!」


デカ「!?」


曙「どうして・・・!貴女は何も悪いことしていないのにこんな仕打ちなんで酷すぎるわ!」


提督「・・・。」


曙「使い道が分らないからハイさようなら・・・ってどんだけ自分勝手なのよ!」


響「曙、怯えてるから。」


曙「・・・え?」


デカ「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・。」


曙「え・・・あのっ・・・。」


提督「デカちゃん、辞令は持ってるんだよね?」


デカ「・・・は、はい。」


提督「まぁ無くても構わないけどようこそここへ。都会のように遊ぶところは無いけど変わり者・・・ゲフンゲフン。面白い子ばかりで退屈しないから自分の家のように羽を伸ばしてくれ。」


曙「その変わり者に提督も入ってるのでしょ?」


提督「・・・まぁそうだな。時間はたっぷりある、できること・出来ない事はデカちゃんのペースで見つけていくといいさ、ね?」ナデナデ


デカ「・・・はい!」


響「・・・どうしてこうも、司令官はタラシなんだろうね。」


曙「ま、そこが憎めないところなんだけど。」


提督「何か言ったか?」


曙「何も言ってないわよ!」


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-


何日か経って


デカ「鹿島さん。僕も夕飯作りお手伝いするよ。」


鹿島「あらデカちゃん、ありがとうございます。それじゃあお芋の皮を剥いてくれますか?」


デカ「うん、任せて。」


ピーラーではなく菜切を手にし薄く丁寧に皮を剥く。


鹿島「へぇ、上手いものですねぇ。」


デカ「なぜだか僕は刃物の扱いが得意らしい・・・と言っても唯一の取柄だけれど、はは・・・。」


鹿島「そんなことないですよ。率先してお手伝いしていただけますし書類整理も早いとか。デカちゃんのいいところはいっぱいありますよ?」


デカ「そんなことないですよぅ///」


初月「なに謙遜することはない。君が優秀なのは事実だ。」


鹿島「あら初月ちゃん。ご飯の時間はまだですよ?」


初月「うぇ!?か、鹿島先生!ぼ・・・僕がまるでつまみ食いに来たみたいに言わないでくれるかな!?」


鹿島「あらそうですか?味見をお願いしようかと思ったのですが・・・。」


初月「そ・・・それなら仕方ない、味見しようじゃないか///」


鹿島「ふふふ♪それじゃあお願いします。」


初月「う、うん・・・美味いよ。」


鹿島「しょっぱくありませんか?」


初月「いや、ちょうどいいと思うよ。」


鹿島「そうですか、ではそちらは完成ですね。」


初月「君は何を作ってるんだい?」


デカ「ふぇ・・・?えっと・・・材料から推測して・・・、肉じゃがかな?」


鹿島「はい、御名答です。」


初月「肉じゃがか・・・久しぶりだな。この肉は豚か、牛か?」


鹿島「ふふふ・・・イ級のお肉です♪」


初月「なるほどイ級か・・・珍しい・・・うん?」


デカ「えっと・・・イ級さんって食べられるんですか・・・?」


鹿島「はい、臭みが少なくて美味しいのですよ?」


初月「えっ・・・あっ・・・でも・・・!」


鹿島「・・・なーんて、冗談ですよ?正解は豚肉でした♪」


初月「・・・ははっ、だろうな・・・。先生、驚かさないでくれ・・・。」


鹿島「うふふ、ごめんなさい。一度言ってみたかたのです♪」


初月「心臓が止まるかと思ったぞ・・・おい・・・。」


デカ「うぅ・・・。」


鹿島「デカちゃんどうしたのですか!?」


デカ「うぇっぐ・・・よかったぁ・・・。イ級さん無事だったんですね・・・。」


初月「えぇ・・・そこかい?先生・・・泣かせるのはちょっとマズイのでは?」


鹿島「えっと・・・その・・・ごめんなさい!」ギュ


デカ「ふぇ?」


鹿島「大丈夫です、泣かないでください。イ級さんを虐めたりしませんから・・・ね?」


デカ「う・・・うん。」


鹿島「・・・。」ギュ


デカ「あの・・・。」


初月「先生?」


鹿島「デカちゃん私の妹になりませんか?」


デカ「・・・え?」


鹿島「もれなくお兄様も付いてきますよ?」


初月「・・・あっ。」


提督「誰がおまけ扱いじゃ。」ゴン


鹿島「あいたっ!?」


お盆で小突かれる。


提督「コイツの戯言に付き合うことないからな?」


デカ「え・・・あ、はい・・・。」


提督「でもまぁ俺のことをお兄ちゃんって呼んでくれても構わないぞ?実際コイツ(鹿島)より妹っぽいしな。」


初月「提督、君にそんな趣味があったとはね。」


提督「趣味って・・・だってデカちゃんみたいな健気で小動物みたいな可愛い妹って欲しいと思わないか普通?」


初月「まぁ可愛いとは思うが・・・。」


デカ「あぅ・・・あんまり見つめないでください///」モジモジ


深く帽子をかぶりなおし赤くなった顔を隠す。


初月「うん、激しく同意するよ。」


提督「だろ?」


初月「それと比べて先生には冷たいね?」


提督「だってウザイし。」


鹿島「もぉ~お兄様の意地悪。」プンプン


ほっぺを膨らまして拗ねる。


提督「そのあざといというかわざとらしいのがウザイ。」


初月「そうかな?僕は先生も可愛いと思うけど。」


鹿島「あら、ありがとうございます♪」ナデナデ


初月「・・・ん///」


提督(ま、黙ってれば可愛いとは思うがな・・・。)


初月「何か言ったかい?」


提督「いーや。そういえば初月、ボノちゃんが探してたぞ?」


初月「曙が?」


提督「たしか洗剤がどうのって。」


初月「洗剤・・・あ!」


提督「お、どうした?」


初月「お風呂の洗剤が切れたから買ってきて欲しいって言われてたんだ!ちょっと買ってくるよ!」


提督「お、おう。」


鹿島「あらあら・・・この時間にお店はあいてるでしょうか?」


提督「どうだかなぁ、田舎じゃ店じまいが早いし。」


時計の針は1750を指している。


デカ「あの・・・日用品を売っているお店って高崎商店のことですか?」


提督「ん、そうだな。」


デカ「今日は木曜日なので1830まで営業しているはず・・・です。」


提督「ほぉ~、よく知ってるなぁ。」


デカ「僕は情報を集めるのが好きでこの町のことの大半は覚えました・・・。」


提督「・・・。」


鹿島「・・・。」


デカ「・・・えっと・・・、ごめんなさい。」


提督「何で謝るんだ?」


デカ「だって余所者の僕が諜報活動紛いのことをして気持ち悪い・・・ですよね?」


提督「何を勘違いしてるんだ。感心していたんだ。」


鹿島「そうですよ、情報量は少ないですが一朝一夕でできるものではないです!」


提督「どこぞの慢心提督や無能な参謀達よりよっぽど凄い。そうだ、初雪ちゃんは知ってるよね?」


デカ「はい・・・。」


提督「もし良ければ彼女と一緒に色んな情報の収集を行ってほしい、一人じゃ難しい所もあるからな。」


デカ「・・・司令官のお役に立てるなら喜んでお手伝いします。」


提督「そうか、ありがとうな。」ナデナデ


デカ「・・・うん。」


お話しようか


こんな辺境の地に好き好んで来る人は居ない。


だが毎年必ず訪ねてくるものがある。


颱風だ。


年季の入った建物は暴風雨にさられて今にも倒壊しそうだ。


かの事件のように訓練を強行することはなく総員待機の日となった。


幸いにも停電にはなっておらずポツ、ポツと雨漏りの音が木霊する部屋で小さなお茶会が開かれている。


鹿島「ふふ、それは良いことを聞きました。今度試してみますね。」


望月「でもまぁ先生がこんな事に興味があるなんて意外だったよ。」


長波「だな。」


鹿島「私だって可愛いものは好きですよ?もちろんお二人も大好きです♪」


望月「っ!・・・面と向って言われると照れるね。」


長波「あぁ。」


望月「ねぇ、話が変わるけれど先生はシたことあるの?」


長波「ぶっ!ちょ、おま・・・!」


鹿島「何をですか?」


望月「何ってそりゃあーセッモゴゴ。」


長波「はい下な話はまた今度な。」


口を押さえて言わせないようにする。


鹿島「セ・・・?」


長波「気にしないでくれ。」


望月「なんだよもぅ・・・別にいいじゃん。未来の家族なんだからさぁ。」


長波「そういう問題じゃなくてだな・・・。先生はもっちーと提督がケッコンするって話聞いてどう思った?」


鹿島「そうですね・・・お兄様とよく楽しそうに話してますしとてもお似合いだと思いました。」


望月「でしょでしょ?運命の巡り合わせってやつ?」


長波「でもさ、この戦争が終わってからの約束でしょ?」


望月「だねー、それがどうかしたの?」


長波「いやさ・・・戦争が終わればもうここの皆と会えないのかなって・・・。」


鹿島「・・・どうしてそう思うのですか?」


長波「不要になった艦娘の処遇って聞いたことあるか?戦艦とか空母みたいに使い道のあるのは別として、あたしらみたいな木端は解体されて将校のお抱えになるのが多いって話だ。民間に戻ったって人間(ヒト)とは違う目で見られてそんなに自由にはなれないらしいぞ。」


望月「元は同じ人間なのにねー。長波様はどうして艦娘になろうと思ったの?」


長波「んー・・・金かな?」


望月「うわぁ・・・。」


長波「なんだよその眼は、別にいいだろ?」


望月「でも何でお金なの?」


長波「・・・ここってさ、あたしらでも民間の倍以上稼げるじゃん?」


望月「まぁね。」


長波「あたしを引き取ってここまで育ててくれた人達に少しでも恩返しができればって思ったんだ。金なら腐らないしあっても困らないだろ?」


望月「確かに合理的だね。先生は?」


鹿島「私ですか?そうですねぇ・・・私の父親も軍属でしたしお兄様もお国のために働きたいって姿を見て憧れたのかも知れませんね。」


望月「へぇ、お父さんもねぇ。今も元気なの?」


鹿島「はい、退役後は庭弄りが楽しいらしく毎日欠かさず手入れをしているみたいです。」


望月「そっか、そりゃあ良かった、家族は大切だもんね。今度紹介してよ?」


鹿島「ええ、きっとお嫁さんができたと知ったら喜びますよ。」


望月「えへへ///」


長波「で、もっちーは何で艦娘になったんだ?」


望月「・・・さぁ?」


長波「さぁ!?」


望月「いやさ、在学中に進路調査があったんだけど適当に丸をつけたら軍属希望だったみたいで気がついたらここ(海軍)に居た。」


鹿島「気がついたら・・・って、試験はどうしたのですか?」


望月「あたしってサボってばっかりいたからさ、学校の追試かなって思ってこれまた適当にやってたら合格してた。」


長波「・・・はぁ、天才ってもっちーみたいなのを言うんだな。」


望月「褒めたって何もでないよ・・・?二人は将来なにかしたいことあるの?」


長波「将来ねぇ・・・。あっ、中華料理屋でもしたいねぇ。」


鹿島「中華料理ですか?」


長波「ああ、全部じゃないけど和食にはない強烈な味じゃん?アレが好きなんだよな。料理もまぁそこそこできるしやれるならやってみたい。先生は?」


鹿島「そうですねぇ・・・。パン屋さんとかどうでしょう?」


望月「おー、先生に似合いそう。(主に服とか。)」


鹿島「地元の商店街の一角で小さなお店を出せたらな、と思います。」


長波「いいねぇ。だけどちょっちフラグっぽいね。」


望月「ねー。でも漫画とかゲームじゃないし大丈夫っしょ。」


鹿島「フラグ?旗がどうかしたのですか?」


長波「ん、いや何でもない。気にしないでくれ。」


鹿島「そう・・・ですか。あっ、いけない。もうこんな時間!」


望月「どしたの?」


鹿島「お夕飯のお米を研ぐの忘れてました。急がないと間に合いません。」


長波「っし、じゃあ今日はここでお開きだな。先生、手伝うよ。」


鹿島「あ、ありがとうございますっ。」


長波「ほら、もっちーも行くぞ。」


望月「え~・・・。」


長波「花嫁修業だと思えば・・・?」


望月「・・・やるっきゃないね!」


秘密のお仕事


A「ほぉ~、さすが大淀さんだ。書類と現物に差異があるのに不自然さが全く無い。」


B「本当に凄いですよねぇ。真似したくても出来ません。」


A「お、こいつはケッテンクラートじゃないか。珍しいねぇ、ふーん。登録は1500ccだけどこれは・・・3000オーバーだね。この小さい車体によくもまぁ。ここの工作艦は相当の腕を持っていると見た。」


B「見ただけで分るの?」


A「んぁ?だって書いてあるもん。」


B「あっ、ほんとだ。」


A「動かしてみたいねぇ~。」


天津風「ちょっと!そこで何をしているの!?」


偶然資材倉庫で動く影を見つけ駆けつける。


B「きゃっ!」


A「おっと、見つかってしまったか。」


天津風「女学生・・・?いえ、その制服は・・・。」


A「綾波型駆逐艦、五番艦の天霧だ。」


B「お、同じく六番艦の狭霧です。」


天津風「やっぱり艦娘なのね。だけど勝手に入って良い場所ではないわ。」


天霧「それはすまない、だけどこれは仕事でね。勝手に入らないと仕事にならないのさ。」


天津風「なんですって・・・!私を馬鹿にしているの!?」


狭霧「ごめんなさい!だけど本営の-」


天霧「狭霧!」


狭霧「あぅ・・・!」


天津風「本営?」


天霧「・・・まぁそういうことだ。重ねてわるいけど提督の所に案内してくれないか?ちょうど用事もあるし。」


天津風「・・・腑に落ちないけれどまぁいいわ。付いていらっしゃい。」


天霧「おぉ、ありがたいぜ。ほい、東京のお土産だ。みんなで食ってくれ。」


天津風「あら、ありがとう。」


浅草で買ったであろうお菓子が入った渋い柄の手提げ袋を受け取る。


---

--

-


天津風「提督、お客さんが来たわよ。」


提督「俺に?誰だろ・・・とりあえず入ってくれ。」


天霧「いよぅ提督。」


提督「え・・・?」


狭霧「お久しぶりです。」


提督「天霧に狭霧、急にどうしたんだ?」


天津風「あら、知り合いなの?」


提督「あ、ああ。あっちで一緒に仕事してたんだ。」


天津風「ああ、だから本営なのね。私は天津風、さっきは疑ってごめんなさいね。」


天霧「いいよ別に。」


提督「・・・? それで用件は?」


狭霧「本日は監査でやってきました。」


提督「あぁー・・・そっか。そんな季節だなぁ、忘れてた。あれ、とすると監査部に異動したのか?」


天霧「まぁね。だけど毎日座ってばっかでつまらないぜ。」


狭霧「もぅ天霧さん。お仕事なんだから仕方ないでしょう。」


天霧「そうは言ってもなぁ、実戦はまずないし体が鈍ってしまうぜ。」


提督「でも毎日筋トレしてるんだろ?」


天霧「そりゃそうさ。ほら、腹筋凄いだろ?」


上着をめくり見せびらかす。


天津風「ちょ!?破廉恥だわ!」


天霧「あん?お前さんがそれを言うか?」


少し透けている服に突っ込みを入れる。


天津風「これは熱を逃がすためのデザインよ!」


提督「はは、もう仲良くなったのか。それにしても凄いな、触っても良いか?」


天霧「おう、いいぜ。」


天津風「もう・・・!」


提督「じゃあ遠慮なく。」サワサワ


天霧「ん・・・。」


狭霧「どうですか・・・?」


提督「・・・はらしょー↑」


天霧「そういう提督はどうなんだ?」ムニムニ


提督「おっ!」


天霧「・・・なんだこれ?脂肪がこんなに・・・サボってるだろ?」


提督「・・・だって筋トレすると筋肉痛になるし。」


天霧「それが良いンだろ?もう歳だな。」


提督「ぐぬぬ・・・!」


天霧「あぁ~あ。昔は突いたり突かれたりした仲だったのになぁ。」


天津風「なんですって!?」


狭霧「あら///」


提督「言い方言い方ぁ!やっ、あれだアレ!ボクサーがトレーニングで使うボールを腹にぶつけることだ!」


天霧「提督が激しく突いてくれて気持よかったぜ?」


提督「しゃあおらぁ!黙ってろっ!」


天霧「なにを!?」モゴゴ


口を押さえ黙らせる。


提督「そっ、それで・・・監査は通りそうなのか?」


狭霧「あっはい。提督が大淀さんの指示通りに書類を作られましたので問題ありません。」


提督「そっか。すぐ戻るのか?」


狭霧「いえ、本日の監査終了を以って当鎮守府へ出向となり暫らくお世話になります。」


提督「なんとまぁ急に。」


狭霧「それと天津風さん、他2名の監視役も兼任となります。」


天津風「えっ?」


狭霧「先日の会議で反逆の恐れが無いと認められ監視の緩和に繋がりました。四六時中銃口を向けられているのも嫌ですものね。これから宜しくお願いしますね。」


天霧「ぷはぁ!よろしくな!」


天津風「え、ええこちらこそ・・・?」



перезапуск



コンコンコン


デカ「あの・・・デカブリストです。お呼びでしょうか?」


明石「あぁ来た来た、入ってくださ~い。」


工廠入り口の扉から申し訳なさそうに覗く彼女を満面の笑みで手招きをし招き入れる。


デカ「し、失礼します。」


響「やぁ同志、お疲れ様。一本どうだい?」


デカ「い、いえ僕は・・・。」


腰掛に座り渋くタバコを吸っているようにきめているが鹿島からもらったココアシガレットだ。


デカ「あの・・・僕に用事ってどのような件でしょうか・・・?」


明石「ふっふっふ・・・よくぞ聞いてくれました。これを見てください!」


ガバッと音を立て大きな布を捲りあげる。


デカ「え・・・艤装?」


響「だね。」


明石「苦節数ヶ月、多くの難題を越え二人の艤装が完成しました!」


響「見た目は変わってないね。」


明石「でも性能は良くなりましたよ。射程距離は1.22倍、航続距離は1.65倍にしました。」


響「ほぉ、それは凄い。」


明石「デカちゃんのもちゃんと動くようになりましたよ。さ、着けてみてください。」


デカ「は、はい。」


促されるまま装着する。


響「うん、なじむ。実に!なじむよ。」


デカ「わぁ・・・!砲塔が動きます!ありがとうございます!」


響「すぱしーば♪」


明石「喜んでもらえて何よりです♪」


響「あの起動の起の字もなかったのをよくも直せたね。」


明石「あ・・・それなんですけどね。」


響・デカ「?」


明石「実はデカちゃんの艤装は壊れてなかったんです。」


デカ「え・・・。それはどういう・・・。」


明石「壊れているといいますかヴェールヌイとしての艤装としては特に問題は見当たりませんでした。」


響「・・・分りやすく言うと。」


明石「問題はデカちゃんの方にありました。」


デカ「ふぇ・・・?」


明石「艤装は使用者と同期しその同期率を元に運用をします。一般的なヴェールヌイ適合者であれば問題なく使えたはずですがデカちゃんの能力が艤装に対して大きすぎたんです。艤装では処理できないほどの情報が流れ艤装は常にショート寸前の状態だと推測します。ショートすれば間違いなく爆発しますので妖精さんが気を利かせてくれたんでしょうね、ヒューズのようなものが組み込まれていました。それが切れてしまえば流れませんのでまぁ安心ですね。」


響「なるほど。私と違って優秀だったんだね。」


明石「はい!それも超がつくほどのです。」


響「・・・。」


明石「妖精さんと会話や意思の疎通は出来ませんので誰にも分らなかったのもうなずけます・・・。」


響「・・・?どうしたんだい?」


明石「さっき、完成したと言ったのですが本当はまだなんです。デカちゃんの艤装は単独での運用は非常に厳しいんです。今は強制的に受信量を5割ほどに落としていますがそれでは実戦には出せません。」


デカ「えっと・・・何か改善策はあるのですか?」


明石「あるにはあるのですが・・・。」


響「もったいぶらないで教えてよ。」


明石「ええ、不足している処理能力を響ちゃんの艤装から借りれば運用ができます。ですがデカちゃんの処理により響ちゃん分の能力が足りなくなり二人同時には出撃できません。」


デカ「・・・明石さん。だったら僕には必要ないです。」


明石「え?」


デカ「僕の艤装が動かなかった理由が分かっただけで十分です。響さんにまで迷惑をかける事はできませんので。」


響「・・・。」


明石「そう・・・ですか・・・。」


デカ「ごめんなさい・・・。」


明石「いえいえ・・・デカちゃんが謝る----」


言葉に詰まる。


理由はこれだ。


響がデカブリストの胸倉を掴んでいる。


響「Декабристов.Кто сказал, что они раздражают?」(デカブリスト。誰が迷惑だと言ったんだい?)


デカ「うぅ・・・」


響「Я думал о тебе, как о моей семье.」(私は君を家族だと思っていた。)


明石「あの・・・ちょっと・・・。」


響「Даже если это раздражает, я не против.」(仮に迷惑だとしても私は気にしないよ。)


響「Когда вы в беде, зависните от меня. Я также полагаюсь на вас. Название Верный не идеально подходит?」(困ったときは私を頼ってくれ。私も君を頼る。ヴェールヌイの名は伊達ではないのだろう?)


デカ「・・・благодарюеё.」(ありがとう。)


デカ「あの・・・明石さん・・・。やっぱり使わせていただいてもいいでしょうか?」


明石「勿論です、そのために整備したんですから。そうだこれから皆で試運転に行きませんか?」


響「同時に運用出来ないはずでは?」


明石「はい。ですが私の分も使えば普通に走る(航海)程度なら大丈夫でしょう。どうですか?」


デカ「は、はい!よろしくお願いします!」


明石「うん、素直な子は大好きだよ。さ、日が暮れる前に行きますか。」




このままで


天津風「・・・いい風ね。」


クロ「うん、そうだね。」


小さな波止場で潮風を受けながら感傷に浸る。


天津風「ここに来てもう半年、あっという間だったわね。」


クロ「・・・。」


天津風「・・・クロちゃん、どうしたの?」


クロ「・・・私達。私達は本当にここに居ていいのかなと思って。」


天津風「・・・じゃあ出ていく?」


クロ「それは・・・嫌。」


天津風「それはそうよねぇ。今出て行ったら今度こそ本当にお終いよ。」


クロ「だけど私は深海棲艦。どうしていいか分らないの。」


天津風「それは私も同じよ。ハーフだしもう何がなんだかさっぱりよ。」


提督「そうだぞ~。」


天津風「きゃあ!?」


クロ「ひゃう!?」


二人の背後からヌッっと現れる。


提督「俺も難しい問題すぎて何も分らん。が、ただ言えるのは二人とも大切な家族だ。」ナデナデ


天津風「///」


クロ「わっ///」


提督「勝手に居なくなるなよ?」


天津風「ええ。」


クロ「あの・・・提督。」


提督「ん?」


クロ「提督に・・・お返ししたいです。」


提督「お、それはありがたい。」


クロ「私は何も持っていないから・・・体で返すわ。」


提督(あれ、このやりとりは以前もしたような・・・。)


天津風「えっ、じゃあ私も!」フンス


提督「あっ、おい!?」


クロ「この前天霧さんと一緒にトレーニングしてたでしょ?」


提督「へ・・・あ、あぁ。」


クロ「私もトレーニングのお手伝いをしたいです。」


提督「・・・そういうことね。あれ、結構体鍛えてる?」


クロ「ええ。動くのは結構好きですから。」


提督「どうりで・・・いや、改めて見ると良い腹だな。」


クロ「そうですか・・・?あまり気にした事がないから良くわからないわ。」


提督「それに比べあまちゃんは・・・少しポッコリしてるな。」


天津風「えぇ!?」


提督「これは鍛え甲斐がありそうだ。一緒に引き締めような?」


天津風「え・・・あっはい。」


山風「みんな~。」


提督「お、どうした~?」


山風「鹿島先生がお芋を焼いてくれたの。みんなで食べよ?」


手渡された紙袋には大きな焼き芋が入っている。


提督「あぁ~もう!」


天津風「あ、あなた・・・?」


提督「こんなの食べたら太ってしまうぞ!だが食べないという選択肢はない!という訳でヨダレを垂らしてるクロちゃん!」


一番大きな芋を差し出す。


クロ「あ、ありがとう。」


提督「持ってきてくれたお礼に山風、ほい。」


山風「うん。」


一番良い焼き加減のものを渡す。


提督「んで、ダイエットを始めたあまちゃんと俺で半分こな。」


天津風「え・・・そ、そうね。」


小ぶりな芋を更に半分に分け頬張る。


難しいことは気にしすぎない。


それが自分の生き方。


今はおいしいものを皆で食べ笑顔に癒される。


その小さな幸せを噛みしめよう。















後書き

山風が可愛すぎて生きるのが辛い。


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29件コメントされています

1: 仁村 伊織 2016-01-24 17:22:22 ID: IMeEC55Q

凄い!!どうしてこんなに面白い話が書けるんだ。うらやましい!
くそぉ 俺はこの物語で輝く初雪がみたいです。
よろしくお願いします!

2: 銀のすけ 2016-01-24 21:47:42 ID: -0JjX4Ja

仁村伊織様
コメありがとうございます。
御期待に添えるかどうか分かりませんがメインキャラの一人として登場させたいとおもいます。

3: 名無しカッコカリ 2016-02-01 23:34:42 ID: -JDW6NBw

磯風が残念可愛いのが嬉しい。
中の人・・・
何処か影がありそうですが、どんなお話になるのか楽しみにしてます。

4: SS好きの名無しさん 2016-03-05 00:44:18 ID: 3pYd5Cf9

ノーソンって あの 〇ーソンかな?

時雨出てきてくれないかな?

5: 銀のすけ 2016-03-06 13:56:28 ID: 085h6fkS

あのロー○ンです。
時雨は次回辺りに登場予定です!

6: がっくら 2016-03-07 01:09:28 ID: 2T42H0SG

こいつぁ面白いssを見つけたぁ!
応援してます!

7: SS好きの名無しさん 2016-04-05 02:04:27 ID: 4IC0Qud1

すみません。
以前作者さんが書いてた田舎の鎮守府は続きが無いのでしょうか。
一週間ニ週間と間をおいては探し続けるくらい、あのお話がすきだったのでぜひ続きをみたいです。

8: 銀のすけ 2016-04-05 18:04:46 ID: 4iByU9n-

コメありがとうございます。書き溜めしていたパソコンが壊れ構想の練り直しをしています。近々更新する予定なのです。

9: SS好きの名無しさん 2016-04-09 09:43:27 ID: DLjc3mSb

田舎の鎮守府までの二か所に感想投稿すみません。

忙しいなか、更新ありがとうございます。

10: SS好きの名無しさん 2016-12-15 04:02:16 ID: c3PYofdm

山風は、うん・・・いいね
なんかこうオオサンショウウオと同じくらいセンシティブで守りたくなるね(いないけど)

11: SS好きの名無しさん 2016-12-24 02:49:25 ID: Z04vdt8R

さくさく読める、よいssですね

12: T蔵 2016-12-29 13:26:59 ID: aepeTdtg

更新お疲れ様です。

楽しく読ませていただきました。

続きゆっくりお待ちしております。

13: 銀のすけ 2017-01-01 00:03:41 ID: Q40UWO_b

c3PYofdmさん
煙が出るほど撫でてあげたくなりますよね

Z04vdt8Rさん
国語、特に作文が苦手な私ですが簡潔に読みやすいSSが書けるよう頑張ります

T蔵さん
いつも読んでくださりありがとうございます。更新速度が落ちますが今後もお付き合い頂ければ幸いです。

14: magnum 2017-01-21 19:58:12 ID: CNjFWLMr

すごく面白いです!
応援してます!

15: 銀のすけ 2017-01-22 10:29:37 ID: -QIJ4RuR

magnumさん

ありがとうございます!

16: T蔵 2017-02-26 11:04:50 ID: 1Y2AoqgK

山風の魅力に嵌る提督でしたら伊13lことヒトミちゃんにもやられますね。

間違いない。

中破は背後に注意ですが(笑)

17: 銀のすけ 2017-03-02 11:03:07 ID: CO8dXdmM

T蔵様
仰る通りあの破壊力に轟沈しました。

18: yazora 2017-03-09 23:37:39 ID: oNZEH2d1

いいセンス過ぎて夜更かししながら読んでいる期待の作品です!ちなみに我が嫁天津風の登場予定とかはございませんかね・・・?チラッチラッ

19: 銀のすけ 2017-03-10 00:09:12 ID: U-YQr9RU

yazora様
米ありがとうございます。
アマツン・・・実は一本構想でしたので近々登場する予定です!

20: yazora 2017-03-10 00:10:54 ID: tvt-i8ws

19≫見逃したくないっ!更新がんばってください!

21: 野方 2017-05-06 16:09:37 ID: 5Tnxj_sa

泣き虫響が可愛くてやばい

22: SS好きの名無しさん 2017-06-28 17:00:09 ID: U95MXuv7

良いですね。とても良い。
こういうほのぼの系でアニメを見たかった

23: 銀のすけ 2017-07-17 00:56:05 ID: -y4RPCho

野方様
響はクール・ボケ・フリーダム等、ナンにでも合いますよね。(要はどんな響でも可愛い!)

SS好きの名無しさん 2017-06-28 17:00:09 ID: U95MXuv7様
アニメはまぁ悪くはありませんでしたがどうしてこうなった・・・ってのが多々ありましたね。今度は日常系のモノをどこかで作ってくれませんかねぇ(切望)

24: SS好きの名無しさん 2017-08-04 07:37:57 ID: wLY6_BVZ

さあ提督よ。
男を魅せろ。
皆を引き取り国を起こすのだ!
戦後の子の子達の為にもな。

25: SS好きの名無しさん 2017-08-27 16:32:31 ID: UZeNegXE

面白いっすね、ただ大艦巨砲主義ですよ。

26: T蔵 2018-01-09 12:26:56 ID: Y86uFP6W

更新お疲れ様です
ゆっくりとした雰囲気が変らずいいですね

27: 銀のすけ 2018-01-11 00:10:52 ID: SoUkBiCT

T蔵様

いつもご贔屓?に読んでくださりありがとうございます!

28: SS好きの名無しさん 2018-08-06 13:42:39 ID: r-BOlEWX

続きよみてぇえ

29: SS好きの名無しさん 2019-09-09 02:59:39 ID: S:pUVrXi

続き….続き….…σ(´・д・`)


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