2016-02-03 19:07:56 更新

概要

ごちうさのみんながプロ野球ファンだったら。


ココア「チーノちゃんっ!」

チノ「わっ、ちょ、ココアさんやめてくださいよ、今ドリップしてるんです。危ないですよ」

ココア「でもチノちゃんテレビ見てたじゃん」

チノ「まあそうですね」

ココア「チノちゃんなに見てたの? 遠くてよくわからなかったんだけど」

チノ「ああココアさん、これはサッカーの五輪予選です。韓国との優勝決定戦です」

ココア「よくわからないけど、チノちゃんサッカーファンだっけ?」

チノ「浅野くんかっこいいです……!」

ココア「……あっそういう」

チノ「早々と失点してしまいましたが……浅野くん頑張れ……!」

ココア「そんなことよりチノちゃん」

チノ「そんなことってなんですか」

ココア「ここに二枚のチケットがあるよ!」

チノ「なんですかそれ? 映画ですか? 映画なら前見たじゃないですか雨の日に」

ココア「今度は映画じゃないよ?」

チノ「ならなんですか? あっ、わかりました」

ココア「お、当ててみて?」

チノ「浦安ネズミーランドですね? 前からいきたかったんです」

ココア「……」

チノ「……あっ、違うんですか」

ココア「……あっ、うん」

チノ「じゃあなんですか?」

ココア「巨人戦のチケットだよ!」

チノ「そろそろリゼさんが来ます。ココアさんも準備を」

ココア「チノちゃん!」

チノ「な、なんですかココアさん」

ココア「そんなに野球嫌い? 面白いよ?」

チノ「でも私、160km/hのジャイロボールなんて投げられません」

ココア(完全に『メジャー』の影響を受けてらっしゃる……)

チノ「あっ、佐藤さんっ……あー……キーパーうますぎ……」

ココア「チノちゃん」

チノ「なんですかしつこいですね」

ココア「新しいことに触れなきゃ、成長できないよ?」

チノ「成長…………あわよくば千夜さんくらいまで……」

ココア「?」

チノ「わかりました、行きましょう」

ココア「やった! 来週の日曜日ね!」



ココア「リゼちゃんは野球とか見ないの?」

リゼ「親父がたまに見てるなー。球場とかに行ったことはないけど」

チノ「リゼさんも野球見るんですね」

リゼ「いや、私はがっつり見てるわけではないぞ。基礎知識はあるけど、名前は知らないレベルってとこかな」

ココア「お父さんはどこファンなの?」

リゼ「親父が見てる試合によく出てくるのは青いチームだなー。よく親父が『98年』っていってる」

ココア「間違いなく横浜Denaベイスターズだね!」

チノ「えっ、それだけでわかるんですか?」

ココア「むしろ98年といったら横浜しかないよ。大魔神佐々木を要する横浜は打線が凄くて、98年の横浜を見てファンになったひとも多いんだよ」

リゼ「ココアは野球詳しいんだな」

ココア「私は現代も過去も大体は野球わかるよ!」

青山「おてんば女子高生の意外な趣味……まるでバックスクリーン三連発ですね」

ココア「青山さん!」

リゼ「青山も野球ファンだったのか!!」

青山「えぇ、バース掛布岡田に惚れてしまって……」

チノ「あの……さっきからバックスクリーン三連発とかバース……なんとかとかなんなんです?」

ココア「阪神の伝説だよ!! 当時のクリーンナップ……あっ、打撃の強い打順で言うと三番から五、六番の選手のことなんだけど、当時の阪神は三番からバース、掛布、岡田の三人がクリーンナップとして活躍してたの」

ココア「その三人が巨人の槙原ってピッチャーから甲子園球場のバックスクリーンに三本連続でホームランを放った試合のことだよ」

青山「その通りですー、詳しいんですねココアさん」

ココア「それほどでもないよー」

ティッピー「何歳なんじゃ青山……」



シャロ「プロ野球?」

チノ「そうなんです。今度ココアさんと『きょじんせん』とやらを見に行くことになって……」

千夜「あら、よかったじゃない。巨人の試合は刺激的よ」

チノ「そうなんですか?」

千夜「えぇ、東京ドームは連日四万人もの人が集まるの」

チノ「よんまんにん……」

シャロ「しかも東京ドームは相手チームの応援団が全体の一割から二割くらいまでしか来ないの」

チノ「どういうことです?」

シャロ「それだけ巨人ファンが多いってことよ。まずは球場の雰囲気に圧倒されるわ」

チノ「あの……千夜さんとシャロさんは球場行ったことあるんですか?」

千夜「昔シャロちゃんと行ったわ」

シャロ「私は巨人ファンで、千夜は広島ファンなのよ」

千夜「そう。カープ女子ってやつ?」

シャロ「和服で見に行ったくせに」

千夜「あら、悪いかしら」

シャロ「普通はユニフォームか背番号Tシャツ着るわよ」

千夜「シャロちゃんの坂本Tシャツどこで買ったの?」

シャロ「ドームで売ってるわよ」

チノ「あっ、あの……」

シャロ「あっ、ごめんチノちゃん、二人で喋っちゃって」

チノ「いえ、いいんです。あの、坂本って誰ですか?」

シャロ「巨人のイケメンの選手よ! かっこいいだけでなく打てるの。最近は守備もうまくなって、巨人史上最年少キャプテンになったわ」

チノ「す、すごいですね……かっこいいって……どんな人なんですか?」

シャロ「これよ!」

〈スマホのカメラロールを見る〉

チノ「あー……かっこいいですね!」

シャロ「でしょ?! ちょっと待ってて!」

チノ「あっ、シャロさん!?」

千夜「シャロちゃん、一回坂本選手に川崎で会ってサインもらってから一気にファンになっちゃったの」

チノ「へぇ……川崎?」

千夜「巨人の練習場は川崎のよみうりランドにあるの。オフシーズンになると選手に会えることがあるわ」

チノ「すごいですね、会えるって」

千夜「それも野球のひとつの魅力よ」

シャロ「チノちゃんお待たせ!」

チノ「シャロさん! その服は?」

シャロ「坂本の背番号がついた女性用ユニフォームよ! かわいいでしょ!」

チノ「こんなピンクのユニフォームなんてあるんですね!」

千夜「カープも女性向けグッズは多彩なんだけど」

チノ「ごめんなさい千夜さん、この試合巨人vs横浜なんです」

千夜「あらー、残念」

チノ「お二人とも、ありがとうございました」

千夜「楽しんできてね」

チノ「はいっ!」

〈チノちゃんが甘兎を出る〉

千夜「また見に行かない? シャロちゃん」

シャロ「そうね……いつかね」


マヤ「チノが野球観戦!?」

メグ「意外ー」

マヤ「お父さんと?」

チノ「いや……ココアさんが誘ってくれて」

メグ「ココアちゃんが?」

マヤ「そうかー。で、どこいくの?」

チノ「えと、東京の……えと」

マヤ「わかった、神宮だな?」

チノ「えっ」

マヤ「神宮球場だろ? 原宿とか代々木とかの。ヤクルトスワローズの本拠地」

チノ「あ、いえ、ヤクルトスワローズ……とやらではなく巨人と横浜の試合です」

マヤ「ちぇっ、なんだ、せっかく燕打線を見られると思ったのに」

メグ「燕?」

マヤ「swallowだよ。日本語訳してつばめ。各球団には愛称みたいな感じで、漢字一文字とか簡略化した名前があるの」

チノ「たとえばどんなものが」

マヤ「ヤクルトなら『燕』、中日なら『竜』、阪神は『虎』。パ・リーグだとホークスの『鷹』」

チノ「なるほど……読売ジャイアンツは『巨人』ということですか」

マヤ「そうだよ、その感じ」

メグ「じゃあ、横浜Denaベイスターズは『星』?」

マヤ「いい質問だね」

チノ「マヤさんが池●彰ばりに」

マヤ「横浜は『ハマ』って言われるんだ(※諸説あります)。ハマの番長なら三浦選手。ハマの大魔神なら佐々木選手のこと」

チノ「ココアさんも言ってましたが、佐々木選手とは誰なんですか?」

マヤ「えー、佐々木も知らないのかよー」

メグ「あ、私聞いたことあるよー」

チノ「メグさん!?」

メグ「6月ごろに横浜がセ・リーグ首位で折り返したときにニュースでやってた」

マヤ「ああ……そんな時期もあったね」

メグ「抑えの投手としては歴代最高とも言われるピッチャーで、160km/hのストレートに落差のあるフォークで98年のリーグ優勝に貢献したって」

マヤ「よく知ってるなー」

チノ「それで横浜ファンは98年を語るんですね」

マヤ「そそ。あれ以来優勝してないけどね。ちなみに98年の巨人の三番は松井秀喜、四番は清原。投手は桑田と斎藤の二枚看板だった」

チノ「私でも知ってるビッグネームばかりです……!」

マヤ「また、パ・リーグにはイチロー(オリックス)や松坂(西武)も日本でプレーしてたぞ」

メグ「イチロー選手はメジャーでも活躍してるんだよね。すごいなー。すごい時代だね」

チノ「……ところで、4番ってなんで大事なんですか?」

マヤ「一番バッターが出塁、二番三番で進塁、四番で得点というのが理想とされているんだ(※諸説あります)。初回先制は相手にプレッシャーを与えるし、一人出塁すれば高確率で打順まわってくるからね。ゆえに強打者をおく傾向があって、その球団の打線の象徴とも言える」

チノ「なるほど……勉強になりました」

マヤ「巨人vs横浜かー……乱打戦の予感……」

チノ「乱打戦ってなんですか?」

マヤ「お互いに二桁安打とかいっそ二桁得点とかしちゃう打ち合いの試合だよ」

チノ「楽しそうです」

マヤ「見てる方は楽しいけど、監督やコーチは投手のやりくりで大変なんだ」

メグ「確かに、嫌でもたくさん投げるからね」

チノ「なるほど……奥が深いです」



ココア(日曜日。間違ってないね)

ココア(今日の先発はルーキーの高木。対するDenaは山口)

ココア(乱打戦の予感がひしひしと……楽しみすぎる!)

ピリリリリ

ココア(電話?)

ココア「もしもーし」

モカ『あっ、ココアー!』

ココア「お姉ちゃん!!?」

モカ『チノちゃんから手紙が届いたのー! 東京ドームいくんでしょ?』

ココア「そだよ」

モカ『いつぶり?』

ココア「私がいくつの時だっけ……確か相手のピッチャーは山本昌だった気がする」

モカ『……現役が長すぎていつのことだか全くわからないわ』

ココア「あ、でも、巨人は高橋尚成さんだったよ!」

モカ『そうだっけー? いまいち興味なかったから覚えてないわ』

ココア「え」

モカ『でも、もしそうだとしたら大分前ね』

ココア「そうだね」

モカ『ねぇココア、知ってる? あなたが巨人ファンになった理由』

ココア「生まれたときからじゃないの?」

モカ『そんな中居正広みたいな理由ではないわ』

ココア「うん?」

モカ『あら、六番勝負見なかったの?』

ココア「見てないね」

モカ『』

モカ『あなたが巨人ファンになった瞬間は覚えてるわ』

ココア「なんで分かったの?」

モカ『だって――』



ココア「あっ、チノちゃん!」

チノ「お待たせしました」

ココア「あれ? チノちゃん普通のノースリーブじゃん」

チノ「ユニフォームなんて持ってませんよ。ココアさんなんて逆にユニフォームに帽子にタオルにとフル装備じゃないですか。恥ずかしいですよ」

ココア「総武線乗れば大丈夫」

チノ「なんですかその自信」

ココア「えっへへー、いこ?」

チノ「あっちょっ、待ってくださいココアさん」



チノ「すごい人数……」

ココア「そうでしょ? 今日は日曜日だからね。しかも優勝マジック2だし」

チノ「? なんですかそれ」

ココア「優勝マジックっていうのは、簡単には『あといくつ勝てば優勝』っていう指標。自チームが勝つか、二位チームが負けると1減る。自チームが勝って同じ日に二位チームが負けると2減る。今日二位は阪神。つまり……?」

チノ「…………巨人が勝って阪神が負ければ優勝……ですか?」

ココア「そう! 昨日マジック4から2になってテンション上がっちゃって」

チノ「そうなんですか」



チノ「な、なんなんですかあの回転扉」

ココア「ドームのなかは外の気圧と違う気圧だから、一気に出ると風にぶおわって煽られて危ないからああやってひとりひとり移動するの」



ココア「えーっと、一塁側の……ここだ。結構近いね。いい席だよ」

チノ「そうですね。……あっ、すみません、トイレどこにあるんですか?」

ココア「そこ出て左だよ。結構並んじゃってるかも」

チノ「そうなんですか。気を付けます」



ココア「2時試合開始だからあと10分くらいだ。始球式は小学生かー。小学生でも速いボールを投げるねー」

チノ「戻りました」

ココア「おかえりチノちゃうえーー?! どうしたのその服」

チノ「実はシャロさんに借りたんです。坂本選手について色々教えてもらったあと、借りました」

ココア「シャロちゃん……」

チノ「これ、結構かわいいですね。ピンク色で。気に入りむぐ!?」

ココア「ユニフォーム着たチノちゃんもかわいいよ!」

チノ「ちょっ、離してください……人前です」

ココア「ありがとね、チノちゃん」

チノ「……」

ココア「無理いって付き合わせちゃって」

チノ「いいです。サンフレッチェ逆転勝ちしましたし」

ココア「よかった……」

チノ「それに……」

チノ「ちょっと、面白そうです」

ココア「チノちゃん……ほら、試合始まるよ!」



観客A「おい、広島が阪神に勝ったってよ」

観客B「マジかよじゃあ勝ったら優勝じゃん」



チノ「ココアさん……」

ココア「三点ビハインドの九回裏ツーアウト満塁……新人王候補のヤマヤスを打てるかな……」

観衆「「最高の笑顔――」」

カキーン

チノ「あっ……」

ココア「あっ……」



チノ「すごかったです」

ココア「ね! 起死回生のサヨナラ満塁ホームランなんてね!!」

チノ「きれいだったです……」

ココア「選手みんなの気持ちが乗ったんだよ!」

チノ「優勝の瞬間に立ち会えたなんて」

ココア「もう何度もないよ!!」

チノ「そうですねねねね」

ココア「チノちゃん!」

チノ「なんですかこの強風は!?」

ココア「だから気圧が違うんだって」

チノ「それかー……」



チノ「……ココアさん!」

ココア「ん?」

チノ「あの、その……」

ココア「どうしたの?」



チノ「野球、面白かったです」



ココア「そう。よかった!」

チノ「4番バッターとは、強打者がつとめるものとマヤさんに教わりました」

ココア「……」

チノ「一人出塁したらそのランナーを帰せる強打者を置くと」

ココア「そうだね」

チノ「それって、背負う責任すごいじゃないですか。それでも……」

ココア「それでも?」

チノ「今日みたいな、そこしかない場面でみんなの……選手も、ファンも、みんなの夢をのせる打球が飛ばせるのって、なんか」


チノ「かっこいいな……って」


ココア「チノちゃん……」

チノ「ココアさんが来てるユニフォームの理由もわかりました」

ココア「えっ」

チノ「巨人の背番号十番は、不動の4番、阿部選手じゃないですか」

ココア「チノちゃん……」

チノ「ココアさん」

ココア「……」

チノ「連れてきてくれて、あ、……ありがとうございました。野球……楽しかったです!」



モカ『――阿部のホームランのとき、ココアの目、輝いてたよ』


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