2016-03-26 21:19:17 更新

概要

2nd 第1話「夜と雨」


前書き

これが最後の作品…かも










「…月が、綺麗だな」


「いい夜だ」





時刻は深夜1時を過ぎていた。

秋葉原はすっかり眠りにつき、人々は家の中…そんな中、彼1人は夜の街を彷徨っていた。



石川「橘(たちばな)!聞こえるか!?」



「…なんだよ、今向かってるって」



石川「お前さては歩いてんだろ!?走れって言っただろ!」



「はいはい、承知しました〜」



無線から入る連絡に、飽き飽きしていた”橘”と呼ばれていた男は小走りをし始めた。







〜秋葉原、某所〜





とある建物に、警察や機動隊が集まっていた。



「オラァ、早くしろ!金だ金だ!!」


どうやら建物に強盗が立て籠もっているらしい。マスクと銃を持った犯人が5階あたりの窓から叫ぶ。



警察「ほ、本当に機動隊を使わないのですか…!?」



石川「ええ、奴らに銃火器なんて効きませんし」


警察「しかし…このままでは人質が…」


石川「そのためのグール対策局です。戦闘に関してはどこかの傭兵と並びますよ」



警察「本当にそんな化物と、化物退治専門家がいるなんて…」



石川「そろそろうちの切り札が到着しますよ…お、橘?今どこだ」






橘「グールがいる建物の隣。窓空いてるからそこから入ろうと思う。」



石川「了解。狙撃部隊、準備しておけよ」



機動隊「「本当にあいつらで片付ける気か…?」」


機動隊「「どーせ無理だろ、すぐに俺たちの出番になるさ」」



石川「…ふん」



石川「普通の人間がグールと戦おうなんざ、不可能だ。特殊な訓練と経験を積んだグール対策局だからこそ、グールを駆逐できるのさ」







〜強盗たち〜



強盗「オオィ!!金はまだかよ!」




「アニキィ…もしかして捜査官の連中呼ばれているんじゃ…」



強盗「チクショォ…どいつもこいつもふざけやがって…!!」



強盗「そんな奴ら俺様がソッコーでぶっ殺」






轟音が強く鳴り響く。



木っ端微塵に、強盗の頭が吹き飛んだ。







「アニキ…?アニキィィ!?」



強盗はその場に倒れた。


大量の血しぶきの先に、銃を構えて立つ男がいた。


冷徹な眼差しから、無邪気な子供のように口角を上げて小さく笑う。



「テメェ!よくも俺のアニキを…!?」



橘「うっせーな、たかが頭が吹き飛んだだけじゃねーか」



「お、お前…グールなのか!?って事は…俺らの同胞じゃねーか!」



橘「ん?ああ…俺はグールだよ?」



橘「グールを殺すために今ここにいる…ちょうどお前らみたいのをね」



「ふざけんな!グールがグールを殺すなんて…しかもその銃…”普通”じゃないな!?」



橘「そうだな」


橘「”クインケ”は、捜査官にしか所持できないもんな」



「!?嘘だろテメェ…グールのクセに捜査官なのか!?」



橘は、手に持った銃を強盗の子分と思われるグールに向ける。



橘「全長42cm、重量11kg、15mm爆裂赫子弾、”スペルビア”」



橘「こいつを喰らって生きていたグールはいねぇな」



「待て、待って!人質が!人質がどうなっても…」



橘「もう終わってるよ、残ってるのはお前1人だ」


「はあ!?」




橘「援護射撃、感謝するぞ。仁美」




向かいのビルから仁美がスナイパーライフルを構えながら、無線に連絡を入れる。




仁美「お前は本当に人使いが荒いぞ、まったく」




橘「じゃあ終わりにしようか」



「嫌だぁぁー!!!」




強盗の子分と思われるグールが叫ぶと、背中から剣のような物体を出して攻撃してきた。



橘「甲赫のグール…新しいクインケには必要ないな」


「死ねぇええ!」


橘はグールの攻撃を全て紙一重でかわした。


グールの攻撃は、橘はかすりもせず、橘は攻撃態勢をとる。


片手で銃を構え、狙いをグールに合わせる。



橘「あばよ」




轟音とともに、グールの頭が砕け散った。


頭部を失ったグールは、その場に崩れ落ち、沈黙した。




橘「こちら橘。強盗のボスと子分らしきグールを駆逐。」



石川「お前な…事前に情報を聞いておけって何度も言っただろ…」



石川「高坂たちがいなかったら今頃どうなってたか…」




橘「いるのは知ってたよ、あいつらに任せたんだ」



石川「…ったく」



石川「高坂!そっちは平気か!?」











穂乃果「はい!大丈夫です!」




クインケを持つ3人の兵士が、多少の汗をかきながら無線に応答した。


にこ「これで全員…?随分とナメてかかってきたものね…」



海未「現在、グールを拘束して情報を聞き出してます。もう少しお待ちください」






石川「…了解。だってさ」



橘「だから言ったろ」





警察「ほ、本当に…人質も無事に終了してしまった…」



石川「それじゃあ私たちはまだ仕事があるのでお先に」



石川「残ったのはそちらで処理をお願いします」





颯爽と去っていく石川の背中を、警察達はただ眺めることしかできなかった…







ーーーー

ーー


ーーー翌日。


朝から穂乃果たちは対策局本部で会議をしていた。





海未「以上のことから、私たちが追っているグールとはなんの関連性も無いことがわかりました。」


石川「ふむ…報告ありがとう」



にこ「とりあえず全員”コクリア”に移送しといたわよ」


にこ「あと穂乃果、起きなさい」



スヤスヤと眠る穂乃果をさりげなく起こす。



穂乃果「…ふげっ?」


穂乃果「しゅ、しゅみません…」



石川「…次は気をつけてな」




石川「橘、例の”人体実験”の件については?」


橘「…まだなんも」



石川「行方が分からなくなった西木野先生と、関連性がありそうだ…他に何か報告は?」



にこ「…凛たちについて」



石川「…!」



にこ「先日、猫のマスクをつけたグールと捜査官が対峙。上等捜査官率いるチームで応戦するも全滅…」



にこ「以降、レートはSS。「キャット」と呼ぶことになりました」



穂乃果「…キャット」



石川「…小泉は?」


にこ「完全に不明…です」



にこ「”あの人”のところに行ってからこんな事態になったってことは、原因が”あの人”にあるってことじゃないの…?」



石川「…」



気まずい空気が会議室を包む。



少し、時間を遡る。


まだ石川率いる捜査官チームが7人だった頃だ。




ーーーーーーー



凛「かよちんと西木野先生のお手伝い?」


石川「ああ、先生から直々に連絡が入った。」



花陽「どうして私たちに?」



石川「…これは君たちにしか話せないのだが」


石川「”マキ”について話したい、とのことだ」



凛、花陽「ー!!」



石川「その話とついでに少し研究を手伝って欲しいって」


凛「行くにゃ!!」


花陽「行きます!」



石川「わ、わかった…」



ーーーーーーー





ーそれから、彼女たちからの連絡は途絶えた。


何度も何度も、携帯を鳴らしても。


彼女たちからの連絡は一向に来なかった…





穂乃果「…花陽ちゃん、凛ちゃん…」



会議が終わり、自分の椅子に深く座り込む。


ため息をこぼしながら、今までの事を整理していた。




…あの日から、随分と変わってしまった。




μ'sのメンバーも数が減り、今では3人まで減ってしまった。



真姫ちゃんはなぜかグールに。


ことりちゃん、希ちゃん、絵里ちゃんはグールに殺られてしまった…。


凛ちゃん、花陽ちゃんは…



さらに、SSSレート”羆”による大規模な戦闘によりグールの存在がこの世に明らかとなった。


しかし世間の人は簡単に信用する訳でも無く、その間でも裏で捜査官たちが戦っている。


捜査官たちにはそれぞれ階級がつけられた。

特等捜査官、

准特等捜査官、

上等捜査官、


一等捜査官、

二等捜査官、

三等捜査官、と


上位捜査官、下位捜査官にそれぞれ割り振られた。


下位捜査官は上位捜査官とともに行動することが義務付けられた。



危険な仕事故に、給料もそれなりに高いので職のなかった者、社会から外れた者、罪を犯した者…色んな人間が捜査官になり、死んでいった。


…全てグールによって殺されてしまったのだ。





捜査官になってからと言うものの、人としての感覚が完全に麻痺してしまった。


クインケを握るたびに伝わってくる謎の感覚が、いつも私を静かに”目覚めさせる”。


もう1人の自分が、まるで操っているようなー。


落ち着きと、微かな高揚感に包まれるあの感覚。



私は、穂乃果は一体…どうなってしまったのだろうか…








橘「考え事か?」



穂乃果「!!…びっくりした〜…」




椅子に深く座っていた穂乃果に、橘が話しかけた。


右手には缶ジュースを持っている。



橘「あいつらの事か?」



穂乃果「橘くんには関係ないでしょ…ていうかそれ、どうするの?」



穂乃果は橘の持っている缶ジュースを指差した。


穂乃果「橘くん、”コーヒーしか飲めない”ハズ…」



橘「当たり前だ、馬鹿野郎」


穂乃果「馬鹿野郎はないでしょ!」




橘「ひと息つけ、ってことだよ」



橘は缶ジュースを穂乃果に手渡した。



橘「午前の見回りは俺が行ってきてやるよ、今日は色々用事があるし」



穂乃果「…グールの時からずっとこんな感じだったんですか?」



橘「と、言うと?」



穂乃果「その…人に優しくしてたっていうか」



橘「グールだって、元は人間だよ。本質は変わらないはずだ」





橘くんが捜査官になったのも、つい最近だ。



グールで有りながらも、グールを強く憎んでいた橘くんは私たちに亡命してきた。



ーーーーー



「お前らの奴隷でもいい…俺はグールが憎い!」


石川「ならばどうする?…ここで死ぬか、クインケになるか」



「捜査官になる」


石川「…」



石川「ハア!?」



ーーーー



それはあまりに突然で、誰もが驚きを隠せなかった。


グールである彼が捜査官になるなど言語道断。絶対に許されないことだった。


けど石川さんは危険を承知で彼を認めた。


きっと、何か策があるのだろうけど…




穂乃果「ほ、穂乃果も見回り行く!」




橘「え〜…」



苦虫を噛み潰したような顔をした。


穂乃果「えーってなに!?えーって!!」




橘「いや、まあ…いっか」


橘「支度しろ、すぐ出るぞ」



穂乃果「(着いてくのが大変だよこの人…)」






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






〜秋葉原某所〜



穂乃果「どこまで行くの?」



橘「クインケ研究施設」



穂乃果「クインケ研究…?」



橘「依頼してるやつ、できたって言ってたから」



穂乃果「へ、へぇ〜」



…クインケを作る場所があるのを、今ここで初めて知った穂乃果であった。






〜クインケ研究所〜




「やあ〜橘くん!待ってたよ〜」


橘「地行(ちぎょう)博士〜お久しぶりっス〜!」


マッシュヘアーが特徴の彼は地行博士。

クインケの研究、製造を担当する科学者である。


2人は再開するなり、握手を交わした。

相当仲がいいみたいだ。



地行「あり?今日は高坂さんも一緒に?」



橘「着いてくるって言い出したから」



地行「まあ何でもいいや、さっそくクインケ見てちょーだい」




橘と穂乃果は、地行博士の後をついていった。





地行「そういえば高坂さんは最前線で戦ってる人だよね?」



穂乃果「そういうことに…なるのかな?」



地行「クインケがどーやって作られてるか知ってる?」



穂乃果「…えっと…?」



地行「じゃ、せっかくだし解説しよう」





地行「クインケってのはグールの赫胞(かくほう)を加工して作られた、捜査官専用の武器」


地行「材料がグールからしか取れないから、増産が困難だと言われてる」



穂乃果「そういえば…赫胞を加工した、って…あの尻尾みたいのが出てきちゃうんじゃ?」



地行「いいとこ気づくね」



地行「あのウニョウニョさせてるってのは相当エネルギーを消費してるの」


地行「グールはエネルギーを人間から摂取できるけど、クインケに人間を食べさせることはできない」


地行「クインケを展開するのにも電気信号を送らなきゃいけないし、クインケ製造はかなり手間が掛かる」



地行「基本的には省エネなのよ」


地行「だから形を1個に絞ってる」



地行「剣とかありがちな形にする人が多いね」



地行「グールの赫胞から作り出せる赫子のエネルギー量と、作りたいクインケの形をうまく調節して出来上がり。」




地行博士は語るなり、アタッシュケースを見せつけた。



地行「それがクインケ。わかった?」



穂乃果「…うん…うん?」


橘「後で復習でもしとけ」



地行「それじゃ、橘くん!頼まれたクインケだよ〜!」



大きなテーブルの上に置かれていたものは、アタッシュケースではなく小型のピストルだった。それも相当小さい。



地行「いや〜やっぱり橘くんのアイディアすごいよ!アタッシュケースを使わないなんて!」



橘「そうですか〜?短絡的な発想でしたけど」



地行「にしても今回の”スペルビア”の修復は難しかったよ。何かに使ったの?」



橘「…そんなに使ってないはず」



地行「ま、いいや」



穂乃果「…こんな小さいピストルが、クインケ?」


橘「…持ってみ」



穂乃果は橘にそう言われると、小型のピストルを手に持った。

大きさは10cm程度で、とても軽い。



穂乃果「こんな感じで…バーン!って」



すると橘はピストルに付いていたボタンのようなものを押した。



穂乃果「!?!!?」



小型のピストルから40cmほどの銃に変形した。


先ほど手に持っていたピストルの重さとは全く違い、ボウリング球のような重さが手に伝わってきた。



穂乃果「なに…これ…重っ!!」



地行「やっぱり橘くんしか使えそうにないな〜」



地行「”スペルビア”は赫胞のエネルギーを極限まで詰め込んだクインケなんだ」


地行「アタッシュケースを必要としない分、他に難点があるんだけど…橘くんには全く意味ないからね」



橘「まあ俺フツーじゃないし」



地行「デスよね〜!」



地行「あ、そうそう!”スペルビア”の銃弾、少しいじっといた」


地行「やっぱり時代は爆裂弾だね!拡散弾と比べると全然チガウ…!」


橘「爆裂弾だと仕事、楽ですもん」



地行「ら、楽だから、だったのね…」



地行「そうだ…あとこれ、高坂さんに」



穂乃果「穂乃果に?」



地行博士は穂乃果にアタッシュケースを差し出した。



地行「橘くんからのアドバイスで、高坂さんらしいクインケを作っといた」


穂乃果「穂乃果の…新しいクインケ…」



穂乃果はアタッシュケースの取っ手のスイッチを押した。


ケースが展開され、形が生成されていく。



穂乃果「…なにこれ」



生成されたクインケの形は、武器というより”棒”という感じだった。


全長はだいたい150cm程度。長い割には相当軽い。



橘「殺したくないとか前に言ってたじゃん?」



橘「それに女の子だからそれなりに振り回しやすく設計してもらったんだよ」



地行「全長155cm、重量0.5kg。材質は尾赫を使用したよん」



地行「さあ!高坂さん!そのクインケに名前をつけてあげて!」



穂乃果「…名前?」



橘「呼びやすいように名前をつけんだよ」



橘「石川さんとかは…えっと…”バルムンク”だっけ」


橘「漣(さざなみ)さんは”叢雲(むらくも)”とかつけてたな」



穂乃果「…後ででもいいですか」



地行「いーよいーよ!全然いーよ!」


地行「アトデって名前もいーよ!センスあるぅ!」



穂乃果「いや、あの”後で”です、”アトデ”じゃないです…」


橘「…テキトーに付ければいいじゃん」


そう言うと、橘はケータイを取り出し何か操作をしはじめた。





橘「”ILA”(イラ)とかどーよ」



穂乃果「…じゃあもうそれでいいや」



地行「”ILA”!いい名前だね〜!」









ーーー ーーーー ーーー




〜同時刻、グール捜査官本部〜



海未「穂乃果、大丈夫でしょうか…」



石川「心配なのか」


にこ「当たり前でしょ、誰と一緒にいると思ってんのよ」


にこ「相手はグールよ?元々、にこ達を殺す気でいたグールなのよ?」



石川「…そうだな、あれからもう1カ月か」


石川「橘 龍也(たちばな たつや)と出会ってから1カ月も経つのか…」



仁美「…龍也」


石川「君とも出会って1カ月、ってところか」


仁美「…」



海未「まさかグールから捜査官になるとは…思ってもみませんでした」



海未「しかし…1カ月と聞くと”マキ”も気掛かりです」


にこ「…どっかでうまくやってるわよ」



にこ「…きっとね」





ーーーーーー


ーーー


ーーーーー




〜同時刻、秋葉原某所〜



「ぐはっ!」


「げあ」



「つ、強い…」



大柄な男3人が1人のグールによって圧倒されていた。



「き、貴様が…”赤髪”」



「強い…」



赤髪「…私、そんな風に呼ばれてるの?」



赤髪「まあいいけど」



赤髪と呼ばれるグールは背中から赫子を展開した。魚の鱗を彷彿とさせる表面だった。



赤髪「質問。”グリズリー”ってグール、知ってる?”キャット”については?」



「し、知らない…我々は何も」


「ぎゃっ」



「けあ」


「ああ」


赤髪「なら、用は無いわ」


赤髪の赫子が、大柄な男3人の首を華麗に斬り飛ばした。



赤髪「…花陽、凛」



赤髪は歯茎が剥き出しになっているマスクを取り外し、深呼吸をした。



そのマスクの下は、かつてのμ’sのメンバーの1人。



西木野 真姫だった。




真姫「…必ず捜査官たちより先に見つけなきゃ」



真姫「でないと、2人が…!」




再びマスクをつけ、その場を離れていった。




後書き

うぷ主「最近、腕立て伏せ始めたんだけど」
橘「はいはい三日坊主、三日坊主」
うぷ主「」


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